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特許7572838化合物、組成物、膜、積層体および表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-16
(45)【発行日】2024-10-24
(54)【発明の名称】化合物、組成物、膜、積層体および表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20241017BHJP
   C09B 43/28 20060101ALI20241017BHJP
   C09B 67/20 20060101ALI20241017BHJP
   C09K 19/38 20060101ALI20241017BHJP
   C09K 19/60 20060101ALI20241017BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20241017BHJP
   H10K 50/86 20230101ALI20241017BHJP
【FI】
G02B5/30
C09B43/28
C09B67/20 K
C09K19/38
C09K19/60 A
G02F1/1335 510
H10K50/86
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020183803
(22)【出願日】2020-11-02
(65)【公開番号】P2022073665
(43)【公開日】2022-05-17
【審査請求日】2023-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100122297
【弁理士】
【氏名又は名称】西下 正石
(74)【代理人】
【識別番号】100145104
【弁理士】
【氏名又は名称】膝舘 祥治
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 京佑
(72)【発明者】
【氏名】吉川 栄二
【審査官】沖村 美由
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-228568(JP,A)
【文献】特開2013-101328(JP,A)
【文献】特開2017-037193(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105384693(CN,A)
【文献】米国特許第04687728(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
C09B 1/00-69/10
C09K 19/00-19/60
G02F 1/1335
H10K 50/86
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表され、極大吸収波長を370nm以上470nm以下の波長範囲に有する化合物と、重合性液晶化合物および液晶性の高分子化合物の少なくとも1種を含む液晶性化合物と、を含む組成物。
【化1】
[式(1)中、xは、1を表す。
およびRは、それぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基またはアルカノイルオキシ基を表し、これらの基が有する水素原子の少なくとも1つは重合性基で置換されていてもよい。
Ar、ArおよびArは、それぞれ独立に、ベンゾチアゾールジイル基および1,4-フェニレン基からなる群から選択される2価の芳香族基を表し、Ar、ArおよびArの少なくとも1つは、ベンゾチアゾールジイル基であり、これらの芳香族基は、ハロゲン原子、メチル基、ヒドロキシ基およびメトキシ基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい。]
【請求項2】
前記液晶性化合物が、スメクチック液晶性化合物である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記式(1)中、R およびRは、それぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基またはアルコキシカルボニル基を表す請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記式(1)中、少なくともArが、ベンゾチアゾールジイル基である請求項1から3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
下記式(1a)で表され、極大吸収波長を370nm以上470nm以下の波長範囲に有する化合物。
【化2】
[式(1a)中、yは、1を表す。
11およびR12は、それぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基またはアルカノイルオキシ基を表し、これらの基が有する水素原子の少なくとも1つは重合性基で置換されていてもよい。
Ar11、Ar12およびAr13は、それぞれ独立に、ベンゾチアゾールジイル基および1,4-フェニレン基からなる群から選択される2価の芳香族基を表し、Ar11、Ar12およびAr13の少なくとも1つは、ベンゾチアゾールジイル基であり、これらの芳香族基は、ハロゲン原子、メチル基、ヒドロキシ基およびメトキシ基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい。]
【請求項6】
前記式(1a)中、少なくともAr11が、ベンゾチアゾールジイル基である請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
請求項1から4のいずれか1項に記載の組成物を形成材料とする膜。
【請求項8】
請求項に記載の膜を含む積層体。
【請求項9】
請求項に記載の積層体を備える表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物、組成物、膜、積層体および表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像表示パネル等のディスプレイに対して薄型化の継続的な要求が存在しており、その構成要素の1つである偏光板、偏光子等に対してもさらなる薄型化が要求されている。このような要求に対して、例えば、重合性液晶化合物と二色性を示す色素化合物とを含む偏光膜を備える薄型のホストゲスト型偏光子が提案されている(例えば、特許文献1および2参照)。波長370nm以上470nm以下に吸収極大を有する黄色から橙色の二色性色素として、特許文献3には、1,4-ナフチレン構造を有するビスアゾ系色素が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2007-510946号公報
【文献】特開2013-37353号公報
【文献】特開昭56-104984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献3に記載の1,4-ナフチレン構造を有するビスアゾ系色素は、高次スメクチック液晶化合物と組み合わせた場合に、当該高次スメクチック液晶化合物から形成される密な分子鎖間に分散された状態では二色比が低く、偏光性能に劣る偏光膜しか得られない場合があった。
【0005】
本発明の目的は、370nm以上470nm以下の波長範囲に吸収極大波長を有し、二色比が高い偏光膜を形成し得る化合物、並びに該化合物および液晶性化合物を含み、二色比が高い偏光膜を形成し得る組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記[1]から[10]を提供する。
[1] 下記式(1)で表され、極大吸収波長を370nm以上470nm以下の波長範囲に有する化合物と、重合性液晶化合物および液晶性の高分子化合物の少なくとも1種を含む液晶性化合物と、を含む組成物。
【化1】
[式(1)中、xは、1または2を表す。
およびRは、それぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基またはアルカノイルオキシ基を表し、これらの基が有する水素原子の少なくとも1つは重合性基で置換されていてもよい。
Ar、ArおよびArは、それぞれ独立に、チアゾールジイル基、ベンゾチアゾールジイル基、チエノ[2,3-d]チアゾール-2,5-ジイル基および1,4-フェニレン基からなる群から選択される2価の芳香族基を表し、Ar、ArおよびArの少なくとも1つは、チアゾールジイル基、ベンゾチアゾールジイル基またはチエノ[2,3-d]チアゾール-2,5-ジイル基であり、これらの芳香族基は、ハロゲン原子、メチル基、ヒドロキシ基およびメトキシ基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい。
xが2である場合、2つのArは同一であってもよく、相異なっていてもよい。]
[2] 前記液晶性化合物が、スメクチック液晶性化合物である[1]に記載の組成物。
[3] 前記式(1)中、Ar、ArおよびArの少なくとも1つは、ベンゾチアゾールジイル基であり、RおよびRは、それぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基またはアルコキシカルボニル基を表す[1]または[2]に記載の組成物。
[4] 前記式(1)中、少なくともArが、ベンゾチアゾールジイル基である[1]から[3]のいずれかに記載の組成物。
[5] 下記式(1a)で表され、極大吸収波長を370nm以上470nm以下の波長範囲に有する化合物。
【化2】
[式(1a)中、yは、1または2を表す。
11およびR12は、それぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基またはアルカノイルオキシ基を表し、これらの基が有する水素原子の少なくとも1つは重合性基で置換されていてもよい。
Ar11、Ar12およびAr13は、それぞれ独立に、チアゾールジイル基、ベンゾチアゾールジイル基および1,4-フェニレン基からなる群から選択される2価の芳香族基を表し、Ar11、Ar12およびAr13の少なくとも1つは、チアゾールジイル基またはベンゾチアゾールジイル基であり、これらの芳香族基は、ハロゲン原子、メチル基、ヒドロキシ基およびメトキシ基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい。
yが2である場合、2つのAr13は同一であってもよく、相異なっていてもよい。]
[6] 前記式(1a)中、Ar11、Ar12およびAr13の少なくとも1つは、ベンゾチアゾールジイル基である[5]に記載の化合物。
[7] 前記式(1a)中、少なくともAr11が、ベンゾチアゾールジイル基である[5]または[6]に記載の化合物。
[8] [1]から[4]のいずれかに記載の組成物を形成材料とする膜。
[9] [8]に記載の膜を含む積層体。
[10] [9]に記載の積層体を備える表示装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、370nm以上470nm以下の波長範囲に吸収極大を有し、二色比が高い偏光膜を形成し得る化合物、並びに該化合物および液晶性化合物を含み、二色比が高い偏光膜を形成し得る組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。また、組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、本発明の範囲はここで説明する実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲で種々の変更をすることができる。
【0009】
<組成物>
本実施形態にかかる組成物は、下記式(1)で表され、極大吸収波長を370nm以上470nm以下の波長範囲に有する化合物と、重合性液晶化合物および液晶性の高分子化合物の少なくとも1種を含む液晶性化合物と、を含む。組成物は、例えば偏光膜の形成材料として用いられる。すなわち組成物は、偏光膜形成用組成物であってよい。組成物を形成材料として得られる偏光膜を有する偏光板は、優れた二色比を示すことができる。
【0010】
式(1)で表される化合物
組成物は下記式(1)で表される化合物(以下、化合物(1)ともいう)の少なくとも1種を含む。化合物(1)は、370nm以上470nm以下の範囲に吸収極大波長(λmax)を有し、例えば、組成物における色素化合物(例えば、二色性色素化合物)として用いられる。組成物が含む化合物(1)は、後述する式(1a)で表される化合物であってもよい。
【0011】
【化3】
【0012】
xは、1または2を表し、好ましくは1である。RおよびRは、それぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基またはアルカノイルオキシ基を表す。RおよびRは、それぞれ独立に、好ましくはアルキル基、アルコキシ基またはアルコキシカルボニル基であり、より好ましくはアルキル基またはアルコキシ基である。RまたはRにおけるアルキル基の水素原子、およびRまたはRで表される基が有するアルキル基部分の水素原子の少なくとも1つは重合性基で置換されていてもよい。重合性基としては、ラジカル重合性基が好ましく、例えば、(メタ)アクリレート基((メタ)アクリロイルオキシ基)、スチリル基(ビニルフェニル基)などのラジカル重合性基が挙げられ、中でも、(メタ)アクリレート基が好ましい。RまたはRで表される基が重合性基を有する場合、その数は、例えば、1または2個であり、好ましくは1個である。
【0013】
およびRにおけるアルキル基、ならびにアルコキシ基、アルコキシカルボニル基およびアルカノイルオキシ基におけるアルキル基部分の炭素数は、例えば1以上16以下であってよく、好ましくは1以上10以下であってよい。また、アルキル基またはアルキル基部分は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。アルキル基またはアルキル基部分の具体例としては、1-メチルエチル基、2-メチルプロピル基、ブチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、ヘキシル基、3,7-ジメチルオクチル基等が挙げられる。
【0014】
Ar、ArおよびArは、それぞれ独立に、チアゾールジイル基、ベンゾチアゾールジイル基、チエノ[2,3-d]チアゾール-2,5-ジイル基および1,4-フェニレン基からなる群から選択される2価の芳香族基を表す。Ar、ArおよびArの少なくとも1つは、チアゾールジイル基、ベンゾチアゾールジイル基またはチエノ[2,3-d]チアゾール-2,5-ジイル基であり、好ましくはベンゾチアゾールジイル基である。Ar、ArまたはArで表される芳香族基は、ハロゲン原子、メチル基、ヒドロキシ基およびメトキシ基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい。Ar、ArまたはArで表される芳香族基が置換基を有する場合、その数は、例えば、1または2個であり、好ましくは1個である。
【0015】
Ar、ArまたはArで表されるチアゾールジイル基は、チアゾール-2,4-ジイル基またはチアゾール-2,5-ジイル基であってよく、例えば下記式(2)で表されてもよい。Ar、ArまたはArで表されるベンゾチアゾールジイル基は、ベンゾチアゾール-2,5-ジイル基またはベンゾチアゾール-2,6-ジイル基であってよく、例えば下記式(3)で表されてもよい。Ar、ArまたはArで表されるチエノ[2,3-d]チアゾール-2,5-ジイル基は、例えば下記式(4)で表されてもよい。Ar、ArまたはArで表される1,4-フェニレン基は、例えば下記式(5)で表されてもよい。
【0016】
【化4】
【0017】
式(2)、(3)および(5)におけるXはそれぞれ独立して、ハロゲン原子、メチル基、ヒドロキシ基およびメトキシ基からなる群から選択される少なくとも1種を表す。式(4)におけるXは、水素原子、ハロゲン原子、メチル基、ヒドロキシ基またはメトキシ基を表す。m2は0または1を表す。m3は0から3の整数を表す。m5は0から4の整数を表す。
【0018】
化合物(1)の具体例としては、以下の式(1-1)から式(1-41)で表される化合物が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0019】
【化5】
【0020】
【化6】
【0021】
【化7】
【0022】
化合物(1)は、二色比の観点から、式(1-1)から(1-33)のいずれかで表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、式(1-1)から(1-23)のいずれかで表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種がより好ましい。
【0023】
化合物(1)は、極大吸収波長(λmax)を370nm以上470nm以下の波長範囲に有していてよい。化合物(1)の極大吸収波長の波長範囲は、好ましくは400nm以上470nm以下であってよく、より好ましくは420nm以上460nm以下であってよい。上記範囲において上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。なお、極大吸収波長は、化合物(1)のアセトニトリル溶液について、室温(例えば、25℃)で測定される。
【0024】
化合物(1)の極大吸収波長は、例えば、Ar、ArおよびArの骨格構造、Ar、ArおよびArにおける置換基、x、R、R等を適宜選択することで所望の波長に調整することができる。
【0025】
組成物における、化合物(1)の含有量は、例えば、組成物の固形分100質量部に対して、50質量部以下であると好ましく、0.1質量部以上10質量部以下の範囲がより好ましく、0.1質量部以上5質量部以下の範囲がさらに好ましい。上記範囲内であれば、化合物(1)の分散が十分にできる。これにより、化合物(1)を形成材料とする膜であって、欠陥発生が十分に抑制された膜を効率的に得ることができる。なお本明細書において、固形分とは、組成物から溶剤等の揮発性成分を除いた成分の合計量をいう。組成物は、化合物(1)の1種のみを含んでいてもよく、構造の異なる2種以上を組み合わせて含んでいてもよい。組成物が2種以上の化合物(1)を含む場合、それらは互いに異なる極大吸収波長を有していてもよい。
【0026】
化合物(1)を色素成分として含む組成物を形成材料として含む偏光膜を有する偏光板は優れた二色比(DR)を達成することができる。組成物を形成材料として含む偏光膜を有する偏光板の二色比(DR)は、例えば20以上であってよく、好ましくは25以上より好ましくは30以上、更に好ましくは35以上、40以上、45以上または50以上であってよい。なお、偏光板の二色比は、後述する方法で測定される。また、化合物(1)を含む組成物を形成材料として含む膜とは、化合物(1)を独立した分子として含む膜、および化合物(1)が他の化合物と反応して生成する化合物(1)に由来する部分構造を含む膜を包含する。
【0027】
組成物は、特定構造の化合物(1)を含むことで、例えば390nm以上510nm以下の波長範囲で優れた二色比を達成可能な偏光膜を形成することができる。これは例えば以下のように考えることができる。化合物(1)においては、Ar、ArおよびArのうち少なくとも1つがチアゾール骨格を含んでいる。この構造上の特徴により優れた二色比を達成できると考えられる。また、化合物(1)においては、RおよびRとして窒素原子を含まない特定の置換基を有している。これにより、例えば390nm以上510nm以下の波長範囲(例えば、燈色)、好ましくは420nm以上500nm以下の波長範囲、より好ましくは440nm以上490nm以下の波長範囲に極大吸収波長を有する偏光膜を構成することができると考えられる。
【0028】
化合物(1)の製造方法
化合物(1)は従来公知の合成方法を適宜適用することで製造することができる。具体的に、化合物(1)におけるアゾ構造(-N=N-)は、例えば、国際公開WO2016/136561号の段落[0220]から[0268]の製造例の記載等を参考に、1級アミノ基を有する芳香族アミン化合物を亜硝酸ナトリウムなどでジアゾニウム塩に変換し、芳香族化合物とジアゾカップリングさせることで構築することができる。また、チアゾール構造を含むアゾ構造は、例えば、J. Mol. Struct., 2011, 987,158.の記載を参照して構築することができる。
【0029】
またはRがアルコキシ基である化合物(1)は、例えば、ヒドロキシ基を有する前駆体にS2置換反応を適用することで所望のアルコキシ基を有する化合物(1)として製造することができる。S2置換反応は、従来公知の反応条件を適宜適用してもよいし、例えば、J. Am. Chem. Soc., 2008, 130, 13079の記載を参照してもよい。
【0030】
化合物(1)の製造方法における反応時間は、反応途中の反応混合物を適宜サンプリングし、液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィーなどの公知の分析手段により、原料化合物の消失の度合い、化合物(1)の生成の度合いなどを確認して定めることもできる。
【0031】
反応後の反応混合物からは、再結晶、再沈殿、抽出および各種クロマトグラフィーといった公知の方法により、或いはこれらの操作を適宜組み合わせることにより、化合物(1)を取り出すことができる。
【0032】
組成物は、化合物(1)以外のその他の色素化合物、例えば二色性色素の少なくとも1種を更に含んでいてもよい。その他の色素化合物としては、例えば、モノアゾ色素、ビスアゾ色素、トリスアゾ色素、テトラキスアゾ色素、スチルベンアゾ色素などのアゾ色素を挙げることができ、これらからなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。組成物は、その他の色素化合物を1種単独で含んでいてもよく、2種以上を組み合わせて含んでいてもよい。例えば塗布型偏光板材料として用いる場合では、組成物が含むその他の色素化合物は、化合物(1)とは異なる波長範囲に極大吸収波長を有することが好ましい。例えば塗布型偏光板材料として用いる場合では、組成物は、化合物(1)を含めて、3種類以上の二色性色素を組み合わせて含むことが好ましく、3種類以上のアゾ色素を組み合わせて含むことがより好ましい。組成物が極大吸収波長の異なる3種以上の色素化合物を組み合わせて含むことで、例えば、組成物から形成される膜によって可視光全域で吸収を得ることができる。
【0033】
組成物が、その他の色素化合物を含む場合、その含有量は、組成物の固形分100質量部に対して、50質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上10質量部以下の範囲がより好ましく、0.1質量部以上5質量部以下の範囲がさらに好ましい。上記範囲内であれば、その他の色素化合物の分散が十分に可能になる。
【0034】
液晶性化合物
組成物は、化合物(1)に加えて、重合性液晶化合物および液晶性の高分子化合物の少なくとも1種を含む液晶性化合物を含む。組成物は、重合性液晶化合物および液晶性の高分子化合物の両方を含んでいてもよく、組成物に含まれる重合性液晶化合物および液晶性の高分子化合物は、それぞれ2種以上であってもよい。組成物が重合性液晶化合物および液晶性の高分子化合物の少なくとも1種を含むことで、化合物(1)が重合性液晶化合物および液晶性の高分子化合物に分散した組成物を構成することができる。
【0035】
液晶性の高分子化合物は、サーモトロピック液晶型ポリマーを構成するものであってもよいし、リオトロピック液晶型ポリマーを構成するものであってもよい。液晶性の高分子化合物は、緻密な膜厚制御が可能な点で、サーモトロピック液晶型ポリマーを構成するものであることが好ましい。
【0036】
液晶の分類としては、液晶状態での分子配列の構造により、スメクチック液晶、ネマチック液晶、コレステリック液晶に分類される。なかでも偏光膜用途においてはスメクチック液晶が好ましく用いられる。したがって、重合性液晶化合物は、重合性スメクチック液晶化合物であることが好ましく、液晶性の高分子化合物は、スメクチック液晶性の高分子化合物であることが好ましい。
【0037】
スメクチック液晶性を示す重合性液晶化合物およびスメクチック液晶性を示す高分子化合物を用いることにより、配向秩序度の高い偏光膜を形成することができる。重合性液晶化合物および液晶性の高分子化合物の示す液晶状態は、好ましくはスメクチック相(スメクチック液晶状態)であり、より高い配向秩序度を実現し得る観点から、高次スメクチック相(高次スメクチック液晶状態)であることがより好ましい。ここで、高次スメクチック相とは、スメクチックB相、スメクチックD相、スメクチックE相、スメクチックF相、スメクチックG相、スメクチックH相、スメクチックI相、スメクチックJ相、スメクチックK相およびスメクチックL相を意味し、これらの中でも、スメクチックB相、スメクチックF相およびスメクチックI相がより好ましい。配向秩序度の高い偏光膜は、X線回折測定においてヘキサチック相やクリスタル相といった高次構造由来のブラッグピークが得られる。ブラッグピークとは、分子配向の面周期構造に由来するピークを意味する。組成物から得られる偏光膜が有する周期間隔(秩序周期)は、好ましくは0.3nm以上0.6nm以下である。重合性液晶化合物または液晶性の高分子化合物は、X線回折測定において高次構造由来のブラッグピークを示す、重合性スメクチック液晶化合物またはスメクチック液晶性の高分子化合物であってよい。
【0038】
化合物(1)は、スメクチック液晶性の重合性液晶化合物およびスメクチック液晶性の高分子化合物の少なくとも一方の化合物から形成された、密な分子鎖間に分散した状態であっても、高い二色性を示すことができる。従って、重合性液晶化合物および液晶性の高分子化合物の少なくとも一方の液晶性化合物、特にスメクチック液晶性の重合性液晶化合物およびスメクチック液晶性の高分子化合物の少なくとも一方の液晶性化合物と、化合物(1)とを含む組成物は、二色比の高い偏光膜を与えることができる。
【0039】
重合性液晶化合物
重合性液晶化合物とは、分子内に少なくとも1つの重合性基を有し、配向することによって液晶相を示すことができる化合物である。重合性液晶化合物は、好ましくは単独で配向することによって液晶相を示すことができる化合物である。重合性基とは、重合反応に関与し得る官能基を意味し、ラジカル重合性基であることが好ましい。
【0040】
重合性液晶化合物としては、少なくとも1つの重合性基を有し、好ましくはスメクチック液晶性を示す液晶化合物であれば特に限定されず、公知の重合性液晶化合物を用いることができる。重合性液晶化合物として具体的には、例えば、下記式(A)で表される化合物(以下、「重合性液晶化合物(A)」ともいう)が好ましく挙げられる。
-V-W-(X-Y-X-Y-X-W-V-U (A)
【0041】
式(A)中、mは1から3の整数である。X、XおよびXは、各々独立して、2価の芳香族基または2価の脂環式炭化水素基を表す。mが2または3である場合、Xは互いに同一であっても相異なっていてもよい。X、XおよびXからなる群から選択される少なくとも3つが2価の炭化水素6員環基を表す。Y、Y、WおよびWは、それぞれ独立に、単結合または2価の連結基を表す。mが2または3である場合、Yは互いに同一であっても相異なっていてもよい。VおよびVは、各々独立して、置換基を有していてもよい炭素数1から20のアルカンジイル基を表す。アルカンジイル基を構成する-CH-の少なくとも1つは、-O-、-CO-、-S-または-NH-に置換されていてもよい。UおよびUは、それぞれ独立に、重合性基または水素原子を表し、少なくとも一方は重合性基を表す。
【0042】
、XおよびXにおける2価の芳香族基としては、1,4-フェニレン基、1,4-ナフチレン基等が挙げられる。2価の脂環式炭化水素基としては、シクロヘキサン-1,4-ジイル基等が挙げられる。X、XおよびXにおける2価の芳香族基および2価の脂環式炭化水素基の少なくとも1つは、置換基を有していてもよい。置換基としては、メチル基、エチル基、n-ブチル基等の炭素数1から4のアルキル基、シアノ基、ハロゲン原子などが挙げられる。2価の脂環式炭化水素基を構成する-CH-の少なくとも1つは、-O-、-S-または-NR-に置換されていてもよい。ここで、Rは、炭素数1から6のアルキル基またはフェニル基を表す。
【0043】
、XおよびXにおける2価の炭化水素6員環基としては、置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基、置換基を有していてもよいシクロヘキサン-1,4-ジイル基等が挙げられる。
【0044】
、XおよびXにおける2価の芳香族基は、好ましくは置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基であり、より好ましくは無置換の1,4-フェニレン基である。また2価の脂環式炭化水素基は、好ましくは置換基を有していてもよいシクロヘキサン-1,4-ジイル基であり、より好ましくは置換基を有していてもよいトランス-シクロへキサン-1,4-ジイル基であり、さらに好ましくは無換基のトランス-シクロへキサン-1,4-ジイル基である。
【0045】
およびYは、各々独立して単結合または2価の連結基を表す。2価の連結基は、例えば、-CHCH-、-CHO-、-(C=O)O-、-O(C=O)O-、-N=N-、-CR=CR-、-C≡C-および-CR=N-からなる群から選択される少なくとも1種である。ここでRおよびRは、各々独立して、水素原子または炭素数1から4のアルキル基を表す。Yは、好ましくは-CHCH-、-(C=O)O-または単結合である。Yは、好ましくは-CHCH-または-CHO-である。
【0046】
およびWは、各々独立して、単結合または2価の連結基を表す。2価の連結基は、例えば、-O-、-S-、-(C=O)O-および-O(C=O)O-からなる群から選択される少なくとも1種である。WおよびWは、各々独立して、好ましくは単結合または-O-である。
【0047】
およびVは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1から20のアルカンジイル基を表す。前記アルカンジイル基を構成する-CH-の少なくとも1つは、-O-、-CO-、-S-または-NH-に置き換わっていてもよい。
【0048】
およびVで表されるアルカンジイル基としては、メチレン基、エチレン基、プロパン-1,3-ジイル基、ブタン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、ヘプタン-1,7-ジイル基、オクタン-1,8-ジイル基、デカン-1,10-ジイル基、テトラデカン-1,1-ジイル基、およびイコサン-1,20-ジイル基が挙げられる。VおよびVは、好ましくは炭素数2から12のアルカンジイル基であり、より好ましくは炭素数6から12のアルカンジイル基である。
【0049】
置換基を有していてもよい炭素数1から20のアルカンジイル基が任意に有する置換基としては、シアノ基およびハロゲン原子が挙げられる。当該アルカンジイル基は、好ましくは置換基を有していないアルカンジイル基であり、より好ましくは置換基を有しておらず、かつ直鎖状のアルカンジイル基である。
【0050】
およびUは、それぞれ独立に、重合性基または水素原子を表し、少なくとも一方は重合性基を表す。UおよびUは、好ましくは重合性基である。UおよびUがともに重合性基であることが好ましく、ともにラジカル重合性基であることが好ましい。Uで示される重合性基とUで示される重合性基とは、互いに異なっていてもよいが、同じ種類の基であることが好ましい。UおよびUにおける重合性基としては、重合性液晶化合物が有する重合性基として先に例示した重合性基と同様のものが挙げられる。中でも、UおよびUで表される重合性基は、ビニルオキシ基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、オキシラニル基、およびオキセタニル基からなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、アクリロイルオキシ基がより好ましい。
【0051】
重合性液晶化合物(A)の具体例としては、下記式(A-1)から式(A-17)で表される化合物が挙げられる。重合性液晶化合物(A)がシクロヘキサン-1,4-ジイル基を有する場合には、そのシクロヘキサン-1,4-ジイル基は、トランス型であることが好ましい。
【0052】
【化8】
【0053】
【化9】
【0054】
【化10】
【0055】
中でも、重合性液晶化合物(A)は、式(A-2)、式(A-3)、式(A-4)、式(A-5)、式(A-6)、式(A-7)、式(A-8)、式(A-13)、式(A-14)、式(A-15)、式(A-16)および式(A-17)のいずれかで表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。重合性液晶化合物(A)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
重合性液晶化合物(A)は、例えば、Lub etal.Recl. Trav. Chim. Pays-Bas,115,321-328(1996)、特許第4719156号公報等の公知文献に記載の方法により製造することができる。
【0057】
液晶性の高分子化合物
液晶性の高分子化合物とは、前記重合性液晶化合物を重合させた化合物(以下、重合性液晶化合物の重合体ともいう)であってもよく、その他の液晶性の高分子化合物であってもよく、好ましくは、前記重合性液晶化合物の重合体である。
【0058】
前記重合性液晶化合物の重合体は、2種以上の前記重合性液晶化合物を原料モノマーとして用いてもよい。また、前記重合性液晶化合物の重合体は、前記重合性液晶化合物以外のその他のモノマーを原料モノマーとして含んでいてもよい。
【0059】
前記重合性液晶化合物の重合体における前記重合性液晶化合物の含有割合は、前記重合性液晶化合物の重合体を構成する前記重合性液晶化合物に由来する構成単位の合計量に対して、通常1モル%以上100モル%以下であり、前記重合性液晶化合物の重合体の配向性を高くするという観点から、30モル%以上100モル%以下であることが好ましく、50モル%以上100モル%以下であることがより好ましく、80モル%以上100モル%以下であることがさらに好ましい。
【0060】
前記その他の液晶性の高分子化合物としては、液晶性基を有する高分子化合物が挙げられる。例えば、母骨格となる高分子化合物としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン;ノルボルネンポリマーなどの環状オレフィン樹脂;ポリアルキレンエーテル、ポリビニルアルコール;ポリメタクリル酸エステル;ポリアクリル酸エステル;等が挙げられ、これらの高分子化合物が液晶性基を有する。中でも、液晶性基を有するポリメタクリル酸エステル、ポリアクリル酸エステルが好ましい。
【0061】
前記その他の液晶性の高分子化合物は、2種類以上の液晶性基を含んでいてもよい。液晶性基は、母骨格となる高分子化合物の主鎖に含まれていてもよく、母骨格となる高分子化合物の側鎖に含まれていてもよく、母骨格となる高分子化合物の主鎖および側鎖ともに含まれていてもよい。液晶性基としては、少なくとも2つの炭化水素6員環構造を有する化合物から1個の水素原子を除いて形成される基、または、該化合物から2個の水素原子を除いて形成される基が挙げられる。
【0062】
前記その他の液晶性の高分子化合物における液晶性基の含有割合は、前記その他の液晶性の高分子化合物の母骨格となる高分子化合物を構成する構成単位の合計量に対して、通常1モル%以上100モル%以下であり、前記その他の液晶性の高分子化合物の配向性を高くするという観点から、30モル%以上100モル%以下であることが好ましく、50モル%以上100モル%以下であることがより好ましく、80モル%以上100モル%以下であることがさらに好ましい。
【0063】
組成物において、2種類以上の重合性液晶化合物を組み合わせる場合には、そのうちの少なくとも1種類が重合性液晶化合物(A)であることが好ましく、そのうちの2種類以上が重合性液晶化合物(A)であることがより好ましい。2種類以上の重合性液晶化合物を組み合わせることにより、液晶-結晶相転移温度以下の温度であっても液晶相を一時的に保持することができる場合がある。組成物に含まれる重合性液晶化合物(A)の含有量は、組成物中の全重合性液晶化合物の総質量に対して合計で、好ましくは40質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上であり、全ての重合性液晶化合物が重合性液晶化合物(A)であってもよい。重合性液晶化合物(A)の含有量が上記範囲内であると、重合性液晶化合物が高い配向秩序度で並びやすく、それに沿って式(1)で表される化合物が配向することにより、優れた偏光性能を有する偏光膜を得ることができる。
【0064】
組成物における重合性液晶化合物および液晶性高分子化合物の合計含有割合は、重合性液晶化合物および液晶性高分子化合物の配向性を高くするという観点から、組成物の固形分100質量部に対して、例えば50質量部以上であり、好ましくは70質量部以上99.9質量部以下であり、より好ましくは70質量部以上99.5質量部以下であり、更に好ましくは80質量部以上99質量部以下であり、特に好ましくは80質量部以上94質量部以下であり、より更に好ましくは80質量部以上90質量部以下である。
【0065】
組成物における化合物(1)の含有量は、重合性液晶化合物および液晶性高分子化合物の合計量100質量部に対して、通常、0.1質量部以上50質量部以下であり、好ましくは0.1質量部以上20質量部以下であり、より好ましくは0.1質量部以上10質量部以下であり、さらに好ましくは0.1質量部以上、5質量部以下である。重合性液晶化合物および液晶性高分子化合物の合計量に対する化合物(1)の含有量が50質量部以下であると、重合性液晶化合物、液晶性高分子化合物および化合物(1)の配向の乱れが少なく、高い配向秩序度を有する偏光膜を得ることができる傾向がある。
【0066】
高分子化合物
組成物は、化合物(1)、重合性液晶化合物および液晶性の高分子化合物に加えて、高分子化合物を更に含んでいてもよい。組成物が高分子化合物を含むことで、化合物(1)が組成物中に分散し易くなる場合がある。組成物が含みうる高分子化合物としては、化合物(1)を分散可能であれば、特に制限はない。化合物(1)を均一に分散させやすい点から、ポリメチルメタクリレート(PMMA)などのアクリル系ポリマーが好ましい。また高分子化合物は、既述の重合性液晶化合物を重合した高分子化合物であってもよい。高分子化合物のポリスチレン換算の重量平均分子量は、例えば1万以上20万以下であり、好ましくは2万以上15万以下である。
【0067】
組成物が高分子化合物を含む場合、その含有量は、目的等に応じて適宜選択することができる。高分子化合物の含有量は、組成物の固形分100質量部に対して、10質量部以下であると好ましく、5.0質量部以下の範囲がより好ましく、3.0質量部以下の範囲がさらに好ましい。
【0068】
組成物は、好ましくは溶剤等の液媒体および重合開始剤をさらに含み、必要に応じて光増感剤、重合禁止剤、レベリング剤等をさらに含んでいてもよい。
【0069】
溶剤
溶剤は、化合物(1)、重合性液晶化合物、液晶性の高分子化合物、および高分子化合物を完全に溶解し得る溶剤であることが好ましい。また、重合性液晶化合物の重合反応に不活性な溶剤であることが好ましい。
【0070】
溶剤としては、アルコール溶剤、エステル溶剤、ケトン溶剤、脂肪族炭化水素溶剤、芳香族炭化水素溶剤、ニトリル溶剤、エーテル溶剤、塩素含有溶剤等が挙げられる。これら溶剤は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0071】
組成物が溶剤を含む場合において、溶剤の含有割合は、組成物の総量に対して50質量%以上98質量%以下が好ましい。換言すると、組成物における固形分の含有割合は、2質量%以上50質量%以下が好ましい。当該固形分が50質量%以下であると、組成物の粘度が低くなり、組成物から得られる膜、例えば膜の厚みが略均一になり、当該膜にムラが生じ難くなる傾向がある。かかる固形分の含有割合は、製造しようとする膜の厚さを考慮して定めることができる。
【0072】
重合開始剤
重合開始剤は、重合性液晶化合物の重合反応を開始し得る化合物である。重合開始剤は、より低温条件下で重合反応を開始できる点で、光重合開始剤が好ましい。具体的には、光の作用により活性ラジカルまたは酸を発生できる光重合開始剤が挙げられ、中でも、光の作用によりラジカルを発生する光重合開始剤が好ましい。
【0073】
重合開始剤としては、ベンゾイン化合物、ベンゾフェノン化合物、アルキルフェノン化合物、アシルホスフィンオキサイド化合物、トリアジン化合物、ヨードニウム塩、およびスルホニウム塩などが挙げられる。重合開始剤は、公知の重合開始剤から目的等に応じて適宜選択することができる。また、重合開始剤は、1種単独または2種以上を組み合わせて使用できる。
【0074】
組成物が重合開始剤を含有する場合、その含有量は、該組成物に含まれる重合性液晶化合物の種類およびその量に応じて適宜決定すればよい。重合開始剤の含有量は、重合性液晶化合物100質量部に対して、例えば0.001質量部以上、0.01質量部以上、0.1質量部以上または0.5質量部以上であり、例えば30質量%以下、10質量%以下または8質量%以下である。また重合開始剤の含有量は、重合性液晶化合物100質量部に対して、0.001質量部以上30質量部以下が好ましく、0.01質量部以上10質量部以下がより好ましく、0.1質量部以上8質量部以下がさらに好ましい。重合性開始剤の含有量が上記範囲内であると、重合性液晶化合物の配向を乱すことなく重合させることができる。
【0075】
光増感剤
組成物が光重合開始剤を含有する場合、組成物は、好ましくは光増感剤の少なくとも1種を含有してよい。組成物が光重合開始剤および光増感剤を含有することにより、重合性液晶化合物の重合反応がより促進される傾向がある。当該光増感剤としては、キサントンおよびチオキサントン等のキサントン化合物;アントラセンおよびアルコキシ基置換アントラセン等のアントラセン化合物;フェノチアジンおよびルブレン;などが挙げられる。光増感剤は、1種単独または2種以上を組み合わせて使用できる。
【0076】
組成物が光増感剤を含む場合、組成物における光増感剤の含有量は、光重合開始剤および重合性液晶化合物の種類およびその量に応じて適宜決定すればよい。組成物における光増感剤の含有量は、重合性液晶化合物100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上30質量部以下であり、より好ましくは0.5質量部以上10質量部以下であり、さらに好ましくは0.5質量部以上8質量部以下である。
【0077】
重合禁止剤
組成物は、重合禁止剤の少なくとも1種を含んでいてもよい。重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、アルコキシ基含有ハイドロキノン、アルコキシ基含有カテコール(例えばブチルカテコール)、ピロガロール、2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシラジカル等のラジカル捕捉剤;チオフェノール類;β-ナフチルアミン類およびβ-ナフトール類;などが挙げられる。組成物が重合禁止剤を含むことにより、重合性液晶化合物の重合反応の進行度合いを制御することができる。
【0078】
組成物が重合禁止剤を含む場合、組成物における重合禁止剤の含有量は、重合性液晶化合物100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上30質量部以下であり、より好ましくは0.5質量部以上10質量部以下であり、さらに好ましくは0.5質量部以上8質量部以下である。
【0079】
レベリング剤
組成物は、レベリング剤の少なくとも1種を含んでいてもよい。レベリング剤は、組成物の流動性を調整し、該組成物を塗布することにより得られる塗膜をより平坦にする機能を有し、具体的には、界面活性剤が挙げられる。レベリング剤としては、ポリアクリレート化合物を主成分とするレベリング剤およびフッ素原子含有化合物を主成分とするレベリング剤からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。レベリング剤は、1種単独または2種以上を組み合わせて使用できる。
【0080】
組成物がレベリング剤を含む場合、レベリング剤の含有量は、重合性液晶化合物および液晶性の高分子化合物の合計量100質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上5質量部以下であり、より好ましくは0.05質量部以上3質量部以下である。レベリング剤の含有量が前記範囲内であると、重合性液晶化合物および液晶性の高分子化合物を水平配向させやすく、かつ、ムラが生じ難く、より平滑な膜、例えば偏光膜を得られる傾向がある。
【0081】
レベリング剤の含有量が上記範囲内であると、重合性液晶化合物および液晶性の高分子化合物を水平配向させることが容易であり、かつ、得られる膜がより平滑となる傾向がある。重合性液晶化合物および液晶性の高分子化合物に対するレベリング剤の含有量が上記範囲を超えると、得られる膜にムラが生じ易い傾向がある。
【0082】
酸化防止剤
組成物は酸化防止剤を含んでいてもよい。酸化防止剤は、組成物が本発明の効果を発揮し得るものであれば特に限定されず、公知の酸化防止剤を用いることができる。酸化防止剤は、化合物(1)の光劣化に対する高い抑制効果を有する観点から、ラジカルを捕捉して自動酸化の防止作用を有する、いわゆる一次酸化防止剤が好ましい。したがって、組成物に含まれる酸化防止剤は、フェノール系化合物、脂環式アルコール系化合物およびアミン系化合物からなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましい。酸化防止剤は、1種のみを単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0083】
組成物における上記酸化防止剤の含有量は、組成物100質量部に対して好ましくは0.1質量部以上15質量部以下であり、より好ましくは0.3質量部以上、さらに好ましくは0.5質量部以上であり、より好ましくは12質量部以下であり、さらに好ましくは10質量部以下である。酸化防止剤の含有量が上記下限値以上であると、化合物(1)の光劣化をより効果的に抑制することができる。また、酸化防止剤の含有量が上記上限値以下であると、重合性液晶化合物の配向をより乱し難く、かつ、化合物(1)の光劣化に対するより高い抑制効果を期待できる。
【0084】
組成物は、上記以外の他の添加剤を含有してよい。他の添加剤としては、例えば、離型剤、安定剤、ブルーイング剤等の着色剤、難燃剤および滑剤などが挙げられる。組成物が他の添加剤を含有する場合、他の添加剤の含有量は、組成物の固形分に対して、0%を超えて20質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0%を超えて10質量%以下である。
【0085】
組成物は、従来公知の組成物の調製方法により製造することができる。例えば、化合物(1)と、液晶性化合物と、必要に応じて酸化防止剤、レベリング剤などの添加剤とを混合、撹拌することにより調製することができる。
【0086】
<化合物>
本実施形態に係る化合物は、下記式(1a)で表され、極大吸収波長を370nm以上470nm以下の波長範囲に有する。下記式(1a)で表される化合物(以下、化合物(1a)ともいう)は、例えば、二色性色素として偏光膜の形成材料として用いられてよい。すなわち化合物(1a)は、二色性色素を構成する有効成分であってよい。化合物(1a)を含む偏光膜を有する偏光板は、優れた二色比(DR)を達成できる。
【0087】
【化11】
【0088】
式(1a)中、yは、1または2を表し、好ましくは1である。yが2である場合、2つのAr13は同一であってもよく、相異なっていてもよい。
【0089】
11およびR12は、それぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基またはアルカノイルオキシ基を表し、好ましくはアルキル基、アルコキシ基またはアルコキシカルボニル基であり、より好ましくはアルキル基またはアルコキシ基である。R11またはR12で表される基は、これらの基が有する水素原子の少なくとも1つが重合性基で置換されていてもよい。R11およびR12の好ましい態様は、RおよびRと同様である。
【0090】
Ar11、Ar12およびAr13は、それぞれ独立に、チアゾールジイル基、ベンゾチアゾールジイル基および1,4-フェニレン基からなる群から選択される2価の芳香族基を表す。Ar11、Ar12およびAr13の少なくとも1つは、チアゾールジイル基またはベンゾチアゾールジイル基であり、好ましくはベンゾチアゾールジイル基である。また、好ましくは、少なくともAr11が、ベンゾチアゾールジイル基である。Ar11、Ar12またはAr13で表される2価の芳香族基は、ハロゲン原子、メチル基、ヒドロキシ基およびメトキシ基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい。
【0091】
化合物(1a)の具体例としては、既述の式(1-1)から(1-36)のいずれかで表される化合物を挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。化合物(1a)は、二色比の観点から、式(1-1)から(1-33)のいずれかで表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、式(1-1)から(1-23)のいずれかで表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種がより好ましい。
【0092】
化合物(1a)は、極大吸収波長(λmax)を、例えば、370nm以上470nm以下の波長範囲に有していてよい。化合物(1a)の極大吸収波長は、好ましくは400nm以上470nm以下であってよく、より好ましくは420nm以上460nm以下であってよい。上記範囲において上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。
【0093】
<膜>
本実施形態にかかる膜は、化合物(1)と液晶性化合物とを含む組成物を形成材料とする。組成物からなる膜は、組成物を基材に付与し、成膜することで形成されてよい。また、組成物が、重合性液晶化合物を含む場合、該重合性液晶化合物を重合させて得られる硬化物を含む膜は、組成物を基材に付与し、成膜した後に該重合性液晶化合物を重合し、硬化させることで形成されてよい。
【0094】
組成物は、配向秩序度の高い膜、例えば偏光膜を形成することができる。したがって、本実施形態にかかる膜は、化合物(1)と液晶性化合物とを含んでなる組成物から形成される偏光膜であって、配向秩序度の高い偏光膜を包含する。
【0095】
ここで、配向秩序度の高い偏光膜では、X線回折測定においてヘキサチック相やクリスタル相といった高次構造由来のブラッグピークが得られる。したがって、組成物から形成される偏光膜は、重合性液晶化合物または液晶性の高分子化合物がX線回折測定においてブラッグピークを示すように配向していることが好ましく、光を吸収する方向に重合性液晶化合物または液晶性の高分子化合物の分子が配向する「水平配向」であることがより好ましい。ブラッグピークを示すような高い配向秩序度は、用いる重合性液晶化合物または液晶性の高分子化合物の種類、化合物(1)の量等を制御することにより実現し得る。
【0096】
膜を形成するために用いる組成物を構成する化合物(1)および液晶性化合物については、既述の通りである。
【0097】
膜は、例えば、以下の工程を含む方法により製造することができる。
工程A:化合物(1)と液晶性化合物と溶剤とを含む組成物の塗膜を形成すること、
工程B:前記塗膜から溶剤の少なくとも一部を除去すること、
工程C:液晶性化合物が液体相に相転移する温度以上まで昇温した後、降温して、該液晶性化合物をスメクチック相(スメクチック液晶状態)に相転移させること、および
工程D:必要に応じて、前記スメクチック相(スメクチック液晶状態)を保持したまま、重合性液晶化合物を重合させること。
【0098】
組成物の塗膜の形成は、例えば、基材、後述する配向膜などの上に組成物を塗布することにより行うことができる。また、偏光板を構成する位相差フィルム、その他の層上に組成物を直接塗布してもよい。
【0099】
基材は通常、透明基材である。なお、基材が表示素子の表示面に設置されないとき、例えば、膜から基材を取り除いた積層体を表示素子の表示面に設置する場合は、基材は透明でなくてもよい。透明基材とは、光、特に可視光を透過し得る透明性を有する基材を意味し、透明性とは、380nm以上780nm以下の波長範囲にわたる光線に対しての透過率が80%以上となる特性をいう。具体的な透明基材としては、透光性樹脂基材が挙げられる。
【0100】
透光性樹脂基材を構成する樹脂としては、ポリオレフィン;環状オレフィン系樹脂;ポリビニルアルコール;ポリエチレンテレフタレート;ポリメタクリル酸エステル;ポリアクリル酸エステル;セルロースエステル;ポリエチレンナフタレート;ポリカーボネート;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルケトン;ポリフェニレンスルフィドおよびポリフェニレンオキシド等が挙げられる。入手のしやすさや透明性の観点から、ポリエチレンテレフタレート、ポリメタクリル酸エステル、セルロースエステル、環状オレフィン系樹脂またはポリカーボネートが好ましい。
【0101】
基材に求められる特性は、膜の構成によって異なるが、通常、位相差性ができるだけ小さい基材が好ましい。位相差性ができるだけ小さい基材としては、ゼロタック(コニカミノルタオプト株式会社)、Zタック(富士フイルム株式会社)等の位相差を有しないセルロースエステルフィルム等が挙げられる。また、未延伸の環状オレフィン系樹脂基材も好ましい。膜が積層されていない基材の面には、ハードコート処理、反射防止処理、帯電防止処理等がなされてもよい。
【0102】
基材の厚みは、通常5μm以上300μm以下であり、好ましくは20μm以上200μm以下、より好ましくは20μm以上100μm以下である。前記下限値以上であれば強度の低下が抑制され、加工性が良好になる傾向がある。
【0103】
組成物を基材等に塗布する方法としては、スピンコーティング法、エクストルージョン法、グラビアコーティング法、ダイコーティング法、バーコーティング法、アプリケータ法などの塗布法、フレキソ法などの印刷法などの公知の方法が挙げられる。
【0104】
次いで、組成物から得られた塗膜に含まれる溶剤の少なくとも一部を乾燥等により除去することにより乾燥塗膜が形成される。また、該塗膜中に重合性液晶化合物が含まれる場合、該重合性液晶化合物が重合しない条件で、乾燥をおこなうことにより乾燥塗膜が形成される。前記塗膜の乾燥方法としては、自然乾燥法、通風乾燥法、加熱乾燥および減圧乾燥法等が挙げられる。
【0105】
さらに、液晶性化合物を液体相に相転移させるため、液晶性化合物が液体相に相転移する温度以上まで昇温した後、降温して液晶性化合物をスメクチック相(スメクチック液晶状態)に相転移させる。かかる相転移は、塗膜中の溶剤除去後に行ってもよいし、溶剤の除去と同時に行ってもよい。
【0106】
組成物が、重合性液晶化合物を含む場合、重合性液晶化合物のスメクチック液晶状態を保持したまま、重合性液晶化合物を重合させることにより、重合性液晶化合物の硬化物を含む膜が形成される。重合方法としては光重合法が好ましい。光重合において、乾燥塗膜に照射する光としては、乾燥塗膜に含まれる光重合開始剤の種類、重合性液晶化合物の種類(特に、重合性液晶化合物が有する重合性基の種類)およびその量に応じて適宜選択される。その具体例としては、可視光、紫外光、赤外光、X線、α線、β線およびγ線からなる群から選択される1種以上の光、活性電子線等が挙げられる。中でも、重合反応の進行を制御し易い点や、光重合装置として当分野で広範に用いられているものが使用できるという点で、紫外光が好ましく、紫外光によって、光重合可能なように、組成物に含有される重合性液晶化合物、光重合開始剤の種類等を選択しておくことが好ましい。また、重合時に、適切な冷却手段により乾燥塗膜を冷却しながら、光照射することで、重合温度を制御することもできる。このような冷却手段の採用により、より低温で重合性液晶化合物の重合を実施すれば、基材が比較的耐熱性が低いものを用いたとしても、適切に膜を形成できる。光重合の際、マスキングや現像を行うなどによって、パターニングされた膜を得ることもできる。
【0107】
前記活性エネルギー線の光源としては、例えば、低圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、カーボンアーク灯、タングステンランプ、ガリウムランプ、エキシマレーザー、波長範囲380nm以上440nm以下で発光するLED光源、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ等が挙げられる。
【0108】
紫外線照射強度は、通常、10mW/cm以上3,000mW/cm以下であってよい。紫外線照射強度は、好ましくは光重合開始剤の活性化に有効な波長領域における強度である。光を照射する時間は、通常0.1秒以上10分以下であってよく、好ましくは0.1秒以上5分以下、より好ましくは0.1秒以上3分以下、さらに好ましくは0.1秒以上1分以下である。このような紫外線照射強度で1回または複数回照射すると、その積算光量は、10mJ/cm以上3,000mJ/cm以下であることが好ましい。
【0109】
光重合を行うことにより、重合性液晶化合物は、スメクチック相、好ましくは高次のスメクチック相の液晶状態を保持したまま重合し、膜が形成される。重合性液晶化合物がスメクチック相の液晶状態を保持したまま重合して得られる膜は、二色性色素の作用にも伴い、従来のホストゲスト型偏光フィルム、すなわち、ネマチック相の液晶状態からなる膜と比較して、偏光性能が高いという利点がある。さらに、二色性色素、またはリオトロピック液晶のみを塗布したものと比較して、強度に優れるという利点もある。
【0110】
膜の厚みは、適用される表示装置に応じて適宜選択でき、好ましくは0.5μm以上10μm以下、より好ましくは1μm以上5μm以下、さらに好ましくは1μm以上3μm以下である。
【0111】
膜が、偏光膜として使用される場合、配向膜上に形成されることが好ましい。配向膜は、重合性液晶化合物および液晶性の高分子化合物を所望の方向に液晶配向させる、配向規制力を有するものである。配向膜としては、重合性液晶化合物および液晶性の高分子化合物の少なくとも一方の化合物を含有する組成物の塗布等により溶解しない溶剤耐性を有し、また、溶剤の除去や重合性液晶化合物の配向のための加熱処理における耐熱性を有するものが好ましい。かかる配向膜としては、配向性ポリマーを含む配向膜、光配向膜および表面に凹凸パターンや複数の溝を有するグルブ配向膜等が挙げられ、配向角の精度および品質の観点から、光配向膜が好ましい。
【0112】
<積層体>
本実施形態にかかる積層体は、化合物(1)と液晶性化合物とを含む組成物を形成材料として含む膜を含む。積層体は、基材と、基材上に配置される組成物を形成材料として含む膜とを備えていてよく、基材と、基材上に配置される配向膜と、配向膜上に配置される組成物を形成材料とする膜とを備えていてよい。組成物を形成材料として含む膜は、偏光膜を構成してよい。また、基材は位相差フィルムであってもよい。積層体は、例えば、偏光板を構成することができる。積層体は、例えば、上述した膜の製造方法に準じて、基材上に膜を形成することで製造することができる。
【0113】
積層体の厚みは、表示装置の屈曲性や視認性の観点から、好ましくは10μm以上300μm以下、より好ましくは20μm以上200μm以下、さらに好ましくは25μm以上100μm以下である。
【0114】
積層体が基材として位相差フィルムを備える場合、位相差フィルムの厚みは、適用される表示装置に応じて適宜選択できる。
【0115】
<表示装置>
本実施形態の表示装置は、前記積層体を備え、積層体は偏光板であってよい。表示装置は、例えば、粘接着剤層を介して、偏光板としての積層体を表示装置の表面に貼合することにより得ることができる。表示装置とは、表示素子を有する装置であり、発光源として発光素子または発光装置を含む装置である。表示装置としては、例えば、液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置、無機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置、電子放出表示装置(例えば、電場放出表示装置(FED)、表面電界放出表示装置(SED))、電子ペーパー(電子インク、電気泳動素子等を用いた表示装置)、プラズマ表示装置、投射型表示装置(例えば、グレーティングライトバルブ(GLV)表示装置、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)を有する表示装置)、および圧電セラミックディスプレイ等が挙げられる。液晶表示装置は、透過型液晶表示装置、半透過型液晶表示装置、反射型液晶表示装置、直視型液晶表示装置、および投写型液晶表示装置等のいずれも包含する。これらの表示装置は、2次元画像を表示する表示装置であってもよいし、3次元画像を表示する立体表示装置であってもよい。特に、表示装置としては、有機EL表示装置およびタッチパネル表示装置が好ましく、特に有機EL表示装置が好ましい。
【実施例
【0116】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0117】
合成例1
化合物(1-1)の合成
化合物(1-1)を合成するために、まず化合物(1-1-a)を経て化合物(1-1-b)を合成した。続いてアルキル化して化合物(1-1)を得た。
【0118】
化合物(1-1-a)の合成
6-メトキシベンゾ[d]チアゾール-2-アミン(9.01g、50.0mmol)、酢酸(30.0mL)、水(70.0mL)、および硫酸(4.0mL、75mmol)を混合して0℃から5℃に冷却し、そこへ40%ニトロシル硫酸の硫酸溶液(31.8g、100mmol)を滴下した。その後、0℃から5℃を保ちながら30分間撹拌し、さらにアミド硫酸(4.85g,50.0mmol)を添加してジアゾ液を調製した。一方、(フェニルアミノ)メタンスルホン酸ナトリウム(11.6g、55.0mmol)、および水(300mL)を混合して0℃から5℃に冷却し、先ほど調製したジアゾ液全量を滴下した。滴下終了後、常温まで昇温した後、析出した固体を濾取し、アセトニトリルで洗浄し黒色固体を得た。得られた固体、水酸化ナトリウム(5.96g,149mmol)、および水(300mL)を混合し、90℃で2時間加熱撹拌した。析出した固体を濾取して化合物(1-1-a)を得た(8.61g、収率61%)。
【0119】
【化12】
【0120】
化合物(1-1-b)の合成
化合物(1-1-a)(5.69g、20.0mmol)、35%塩酸(5.9mL,67mmol)、酢酸(48.0mL)、および水(8.0mL)を混合して0℃から5℃に冷却し、そこへ亜硝酸ナトリウム(4.14g、60.0mmol)の水(6.0mL)溶液を滴下した。その後、0℃から5℃を保ちながら30分間撹拌し、さらにアミド硫酸(3.88g、40.0mmol)を添加してジアゾ液を調製した。一方、フェノール(5.64g、60.0mmol)、酢酸ナトリウム(9.85g、120mmol)、および水(140mL)を混合して0℃から5℃に冷却し、先ほど調製したジアゾ液全量を滴下した。滴下終了後、常温まで昇温し、析出した固体を濾別して化合物(1-1-b)を得た(7.11g、収率91%)。
【0121】
【化13】
【0122】
化合物(1-1)の合成
化合物(1-1-b)(0.300g、0.770mmol)、p-トルエンスルホン酸2-メチルブチル(0.75g、3.1mmol)、炭酸カリウム(0.43g、3.1mmol)、およびN,N-ジメチルアセトアミド(5.0g)を混合し、90℃で2時間加熱撹拌した。反応溶液に水を加え、析出した固体を濾別し、メタノールで洗浄した。得られた固体を、クロロホルムを展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、化合物(1-1)を得た(0.28g、収率79%)。
【0123】
【化14】
【0124】
H-NMR(400MHz、CDCl):δ(ppm)=8.20-8.17(m,2H),8.08(d,1H),8.06-8.03(m,2H),7.98-7.94(m,2H),7.33(d,1H),7.14(dd,1H),7.05-7.01(m,2H),3.95-3.91(m,1H),3.93(s,3H),3.87-3.83(m,1H),1.98-1.86(m,1H),1.66-1.55(m,1H),1.37-1.26(m,1H),1.05(d,2H),0.98(t,3H).
UV可視光スペクトル:λmax=453nm(アセトニトリル中)
【0125】
合成例2:化合物(1-2)の合成
化合物(1-1-b)(3.70g、9.50mmol)、1-ブロモ-2-メチルプロパン(2.62g、19.1mmol)、炭酸カリウム(3.94g、28.5mmol)、およびN,N-ジメチルアセトアミド(47.5mL)を混合し、90℃で4時間加熱撹拌した。反応溶液にメタノールを加え、析出した固体を濾別した。得られた固体を、クロロホルムを展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、さらにクロロホルム/メタノールからの再沈殿により精製し、化合物(1-2)を得た(1.93g、収率46%)。
【0126】
【化15】
【0127】
H-NMR(400MHz、CDCl):δ(ppm)=8.21-8.17(m,2H),8.08(d,1H),8.06-8.03(m,2H),7.99-7.95(m,2H),7.34(d,1H),7.15(dd,1H),7.05-7.01(m,2H),3.93(s,3H),3.83(d,2H),2.19-2.09(m,1H),1.07(d,6H).
UV可視光スペクトル:λmax=452nm(アセトニトリル中)
【0128】
合成例3:化合物(1-3)の合成
化合物(1-1-b)(0.586g、1.50mmol)、1-ブロモ-3-メチルブタン(0.453g、3.01mmol)、炭酸カリウム(0.622g、4.50mmol)、およびN,N-ジメチルアセトアミド(7.5mL)を混合し、100℃で1時間加熱撹拌した。反応溶液にメタノールを加え、析出した固体を濾別した。得られた固体を、クロロホルムを展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、さらにクロロホルム/メタノールからの再沈殿により精製し、化合物(1-3)を得た(0.397g、収率57%)。
【0129】
【化16】
【0130】
H-NMR(400MHz、CDCl):δ(ppm)=8.21-8.17(m,2H),8.08(d,1H),8.06-8.03(m,2H),7.99-7.95(m,2H),7.34(d,1H),7.15(dd,1H),7.05-7.01(m,2H),4.10(t,2H),3.93(s,3H),1.92-1.83(m,1H),1.74(q,2H),1.00(d,6H).
UV可視光スペクトル:λmax=452nm(アセトニトリル中)
【0131】
合成例4:化合物(1-4)の合成
化合物(1-1-b)(0.585g、1.50mmol)、2-プロパノール(0.25mL、3.2mmol)、トリフェニルホスフィン(0.473g、1.80mmol)、1.9Mのアゾジカルボン酸ジイソプロピルのトルエン溶液(0.85mL、1.6mmol)、およびTHF(9.5mL)を混合し、室温で2時間撹拌した。反応溶液にメタノールを加え、析出した固体を濾別した。得られた固体を、クロロホルムを展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、さらにクロロホルム/メタノールからの再沈殿により精製し、化合物(1-4)を得た(0.268g、収率41%)。
【0132】
【化17】
【0133】
H-NMR(400MHz、CDCl):δ(ppm)=8.21-8.17(m,2H),8.08(d,1H),8.06-8.03(m,2H),7.99-7.95(m,2H),7.34(d,1H),7.15(dd,1H),7.05-7.01(m,2H),4.69(sep,1H),3.93(s,3H),1.41(d,6H).
UV可視光スペクトル:λmax=455nm(アセトニトリル中)
【0134】
合成例5:化合物(1-5)の合成
化合物(1-5)を合成するために、まず化合物(1-5-a)を経て化合物(1-5-b)を合成した。続いてアルキル化して化合物(1-5)を得た。
【0135】
化合物(1-5-a)の合成
6-エトキシベンゾ[d]チアゾール-2-アミン(9.71g、50.0mmol)、酢酸(70.0mL)、水(70.0mL)、および硫酸(4.0mL、75mmol)を混合して0℃から5℃に冷却し、そこへ40%ニトロシル硫酸の硫酸溶液(31.8g、100mmol)を滴下した。その後、0℃から5℃を保ちながら30分間撹拌し、さらにアミド硫酸(4.85g、50.0mmol)を添加してジアゾ液を調製した。一方、(フェニルアミノ)メタンスルホン酸ナトリウム(11.5g、55.1mmol)、および水(300mL)を混合して0℃から5℃に冷却し、先ほど調製したジアゾ液全量を滴下した。滴下終了後、常温まで昇温した後、析出した固体を濾取し、アセトニトリルで洗浄し黒色固体を得た。得られた固体、水酸化ナトリウム(6.00g、150mmol)、および水(300mL)を混合し、90℃で2時間加熱撹拌した。析出した固体を濾取して化合物(1-5-a)を得た(8.48g、収率57%)。
【0136】
【化18】
【0137】
化合物(1-5-b)の合成
化合物(1-5-a)(5.97g、20.0mmol)、35%塩酸(5.9mL,67mmol)、酢酸(48.0mL)、および水(8.0mL)を混合して0℃から5℃に冷却し、そこへ亜硝酸ナトリウム(4.14g、60.0mmol)の水(6.0mL)溶液を滴下した。その後、0℃から5℃を保ちながら30分間撹拌し、さらにアミド硫酸(3.89g、40.1mmol)を添加してジアゾ液を調製した。一方、フェノール(5.65g、60.0mmol)、酢酸ナトリウム(9.84g、120mmol)、および水(140mL)を混合して0℃から5℃に冷却し、先ほど調製したジアゾ液全量を滴下した。滴下終了後、常温まで昇温し、析出した固体を濾別して化合物(1-5-b)を得た(7.01g、収率87%)。
【0138】
【化19】
【0139】
化合物(1-5)の合成
化合物(1-5-b)(0.400g、0.991mmol)、p-トルエンスルホン酸2-メチルブチル(0.96g、4.0mmol)、炭酸カリウム(0.55g、4.0mmol)、およびN,N-ジメチルアセトアミド(5.0g)を混合し、90℃で2時間加熱撹拌した。反応溶液に水を加え、析出した固体を濾別し、メタノールで洗浄した。得られた固体を、クロロホルムを展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、化合物(1-5)を得た(0.24g、収率51%)。
【0140】
【化20】
【0141】
H-NMR(400MHz、CDCl):δ(ppm)=8.20-8.17(m,2H),8.07(d,1H),8.06-8.03(m,2H),7.98-7.94(m,2H),7.32(d,1H),7.13(dd,1H),7.05-7.01(m,2H),4.15(q,2H),3.95-3.91(m,1H),3.87-3.83(m,1H),1.98-1.86(m,1H),1.66-1.55(m,1H),1.49(t,3H),1.36-1.25(m,1H),1.05(d,2H),0.98(t,3H).
UV可視光スペクトル:λmax=455nm(アセトニトリル中)
【0142】
合成例6:化合物(1-6)の合成
化合物(1-6)を合成するために、まず化合物(1-6-a)を経て化合物(1-6-b)を合成した。続いてアルキル化して化合物(1-6)を得た。
【0143】
化合物(1-6-a)の合成
硫酸(12.0mL)に亜硝酸ナトリウム(1.04g、15.0mmol)を少量ずつ加えたのち、50℃で15分間加熱撹拌しニトロシル硫酸ナトリウム液を調製した。6-n-ブチルベンゾ[d]チアゾール-2-アミン(2.06g、10.0mmol)、酢酸(40.0mL)、水(10.0mL)、および硫酸(0.80mL、15mmol)を混合して0℃から5℃に冷却し、そこへ先ほど調製したニトロシル硫酸ナトリウム液全量を滴下した。その後、0℃から5℃を保ちながら15分間撹拌し、さらにアミド硫酸(0.86g,5.00mmol)の水(3.0mL)溶液を添加してジアゾ液を調製した。一方、(フェニルアミノ)メタンスルホン酸ナトリウム(3.14g、15.0mmol)、および水(40.0mL)を混合して0℃から5℃に冷却し、先ほど調製したジアゾ液全量を滴下した。滴下終了後、常温まで昇温した後、析出した固体を濾取し、アセトニトリルで洗浄し黒色固体を得た。得られた固体、水酸化ナトリウム(2.01g,50.3mmol)、および水(120mL)を混合し、90℃で2時間加熱撹拌した。析出した固体を濾取して化合物(1-6-a)を得た(2.36g、収率76%)。
【0144】
【化21】
【0145】
化合物(1-6-b)の合成
化合物(1-6-a)(1.20g、3.87mmol)、35%塩酸(0.60mL,6.8mmol)、酢酸(24.0mL)、および水(4.0mL)を混合して0℃から5℃に冷却し、そこへ亜硝酸ナトリウム(0.801g、11.6mmol)の水(3.0mL)溶液を滴下した。その後、0℃から5℃を保ちながら30分間撹拌し、さらにアミド硫酸(0.751g,7.73mmol)の水(6.0mL)溶液を添加してジアゾ液を調製した。一方、フェノール(0.558g、5.93mmol)、酢酸ナトリウム(1.91g,23.2mmol)、および水(25.0mL)を混合して0℃から5℃に冷却し、先ほど調製したジアゾ液全量を滴下した。滴下終了後、常温まで昇温し、析出した固体を濾別して化合物(1-6-b)を得た(1.54g、収率96%)。
【0146】
【化22】
【0147】
化合物(1-6)の合成
化合物(1-6-b)(0.623g、1.50mmol)、メタノール(0.35mL、8.6mmol)、トリフェニルホスフィン(0.592g、2.26mmol)、1.9Mのアゾジカルボン酸ジイソプロピルトルエン溶液(0.95mL、1.8mmol)、およびTHF(9mL)を混合し、室温で1時間撹拌した。反応溶液にメタノールを加え、析出した固体を濾別した。得られた固体をクロロホルムを展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、さらにクロロホルム/メタノールからの再沈殿により精製し、化合物(1-6)を得た(0.310g、収率48%)。
【0148】
【化23】
【0149】
H-NMR(400MHz、CDCl):δ(ppm)=8.23-8.19(m,2H),8.10(d,1H),8.07-8.04(m,2H),8。00-7.97(m,2H),7.71(d,1H),7.37(dd,1H),7.07-7.03(m,2H),3.92(s,3H),2.78(t,2H),1.70(quin,2H),1.41(sext,2H),0.95(t,3H).
UV可視光スペクトル:λmax=428nm(アセトニトリル中)
【0150】
合成例7:化合物(1-7)の合成
化合物(1-5-b)(0.606g、1.50mmol)、1-ヨードブタン(0.555g、3.02mmol)、炭酸カリウム(0.624g、4.51mmol)、およびN,N-ジメチルアセトアミド(7.5mL)を混合し、100℃で1.5時間加熱撹拌した。反応溶液にメタノールを加え、析出した固体を濾別した。得られた固体を、クロロホルムを展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、さらにクロロホルム/メタノールからの再沈殿により精製し、化合物(1-7)を得た(0.309g、収率45%)。
【0151】
【化24】
【0152】
H-NMR(400MHz、CDCl):δ(ppm)=8.20-8.17(m,2H),8.07(d,1H),8.06-8.02(m,2H),7.98-7.94(m,2H),7.31(d,1H),7.13(dd,1H),7.05-7.01(m,2H),4.15(q,2H),4.07(t,2H),1.86-1.79(m,2H),1.58-1.47(m,5H),1.01(t,3H).
UV可視光スペクトル:λmax=456nm(アセトニトリル中)
【0153】
合成例8:化合物(1-8)の合成
化合物(1-1-b)(0.391g、1.00mmol)、1-ブロモ-3,7-ジメチルオクタン(0.444g、2.01mmol)、炭酸カリウム(0.415g、3.00mmol)、およびN,N-ジメチルアセトアミド(5.0mL)を混合し、100℃で1時間加熱撹拌した。反応溶液に水を加え、析出した固体を濾別した。得られた固体を、クロロホルムを展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、さらにクロロホルム/メタノールからの再沈殿により精製し、化合物(1-8)を得た(0.128g、収率24%)。
【0154】
【化25】
【0155】
H-NMR(400MHz、CDCl):δ(ppm)=8.21-8.17(m,2H),8.08(d,1H),8.06-8.03(m,2H),7.99-7.95(m,2H),7.34(d,1H),7.15(dd,1H),7.05-7.01(m,2H),4.15-4.06(m,2H),3.93(s,3H),1.92-1.84(m,1H),1.75-1.46(m,3H),1.40-1.15(m,6H),0.97(d,3H),0.88(d,6H).
UV可視光スペクトル:λmax=452nm(アセトニトリル中)
【0156】
合成例9:化合物(1-9)の合成
化合物(1-1-b)(0.584g、1.50mmol)、1-ヨードヘキサン(0.637g、3.00mmol)、炭酸カリウム(0.622g、4.50mmol)、およびN,N-ジメチルアセトアミド(7.5mL)を混合し、100℃で1時間加熱撹拌した。反応溶液にメタノールを加え、析出した固体を濾別した。得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/ヘキサン=9/1)にて精製し、さらにクロロホルム/メタノールからの再沈殿により精製し、化合物(1-9)を得た(0.403g、収率57%)。
【0157】
【化26】
【0158】
H-NMR(400MHz、CDCl):δ(ppm)=8.20-8.17(m,2H),8.08(d,1H),8.06-8.03(m,2H),7.98-7.94(m,2H),7.33(d,1H),7.14(dd,1H),7.04-7.01(m,2H),4.06(t,2H),3.93(s,3H),1.83(tt,2H),1.53-1.46(m,2H),1.39-1.34(m,4H),0.92(d,3H).
UV可視光スペクトル:λmax=452nm(アセトニトリル中)
【0159】
実施例1:化合物(1-1)を含む組成物E1の調製
下記の成分を混合し、80℃で1時間攪拌することで、組成物E1を得た。
・重合性液晶化合物(A-6) 75質量部
・重合性液晶化合物(A-7) 25質量部
・化合物(1-1) 4.0質量部
・重合開始剤: 2-ジメチルアミノ-2-ベンジル-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン(イルガキュア369;BASFジャパン社製)
6質量部
・レベリング剤:ポリアクリレート化合物(BYK-361N;BYK-Chemie社製) 1.2質量部
・溶剤:o-キシレン 250質量部
【0160】
重合性液晶化合物(A-6)
【化27】
【0161】
重合性液晶化合物(A-7)
【化28】
【0162】
なお、重合性液晶化合物(A-6)は、Lub et al. Recl. Trav. Chim. Pays-Bas, 115, 321-328 (1996)に記載の方法で合成した。また、この方法に準拠して、重合性液晶化合物(A-7)を製造した。
【0163】
<実施例2から9>:組成物E2からE9の調製
化合物(1-1)の代わりに、化合物(1-2)から(1-9)をそれぞれ用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例2から9の組成物E2からE9をそれぞれ得た。
【0164】
<比較例1および2>:組成物C1およびC2の調製
化合物(1-1)の代わりに、下式で表される化合物(2-1)または(2-2)をそれぞれ用いたこと以外は実施例1と同様にして、比較例1および2の組成物C1およびC2をそれぞれ得た。なお、化合物(2-1)および(2-2)は、特開昭56-104984号公報の記載を参照して準備した。
【0165】
【化29】
【0166】
<偏光板の製造>
1.配向膜の形成
透明基材としてガラス基板を用いた。ガラス基板上に、ポリビニルアルコール(ポリビニルアルコール1000完全ケン化型、和光純薬工業株式会社製)の2質量%水溶液(配向層形成用組成物)をスピンコート法により塗布し、乾燥後、厚さ100nmの膜を形成した。続いて、得られた膜の表面にラビング処理を施すことにより配向膜を形成し、ガラス基板上に配向膜が形成された基材を得た。
【0167】
2.偏光膜の形成
上記で得られた基材の配向膜上に、上記で得られた組成物をスピンコート法により塗布し、120℃のホットプレート上で3分間加熱乾燥した後、速やかに70℃(降温時にスメクチック液晶相を示す温度)以下に冷却して、配向膜上に乾燥皮膜が形成された積層体を得た。
【0168】
次いで、UV照射装置(SPOT CURE SP-7;ウシオ電機株式会社製)を用い、紫外線を、露光量2400mJ/cm(365nm基準)で乾燥皮膜に照射することにより、乾燥皮膜に含まれる重合性液晶化合物を、組成物の液晶状態を保持したまま重合させ、乾燥皮膜から偏光膜を形成して偏光板を得た。
【0169】
<評価>
得られた偏光板について、以下のようにして二色比の測定を行った。偏光板の偏光膜の極大吸収波長(λmax)における透過軸方向の吸光度(A1)及び吸収軸方向の吸光度(A2)を、分光光度計(島津製作所株式会社製 UV-3150)に、偏光板を備えるフォルダーをセットした装置を用いて、ダブルビーム法で測定した。該フォルダーには、リファレンス側に光量を50%カットするメッシュを設置した。測定された透過軸方向の吸光度(A1)及び吸収軸方向の吸光度(A2)の値から、比(A2/A1)を算出し、二色比(DR)とした。結果を表1に示す。なお、表1中、化合物の極大吸収波長は、化合物(2-2)を除き、アセトニトリル溶液での測定値である。化合物(2-2)の極大吸収波長はクロロホルム溶液での測定値であり、参考値である。
【0170】
【表1】
【0171】
表1から、化合物(1)を含む組成物を形成材料とする膜を備える偏光板は優れた二色比(DR)を達成できることがわかる。