(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-16
(45)【発行日】2024-10-24
(54)【発明の名称】組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 5/00 20160101AFI20241017BHJP
A23L 5/10 20160101ALI20241017BHJP
A23L 7/157 20160101ALI20241017BHJP
A23L 13/40 20230101ALI20241017BHJP
A23L 23/00 20160101ALI20241017BHJP
A23L 29/212 20160101ALI20241017BHJP
A23L 35/00 20160101ALI20241017BHJP
A21D 13/30 20170101ALN20241017BHJP
【FI】
A23L5/00 N
A23L5/10 E
A23L7/157
A23L13/40
A23L23/00
A23L29/212
A23L35/00
A21D13/30
(21)【出願番号】P 2021551323
(86)(22)【出願日】2020-09-29
(86)【国際出願番号】 JP2020036972
(87)【国際公開番号】W WO2021065930
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2023-08-10
(31)【優先権主張番号】P 2019180451
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020119206
(32)【優先日】2020-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020138938
(32)【優先日】2020-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】302042678
【氏名又は名称】株式会社J-オイルミルズ
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】堀金 智貴
(72)【発明者】
【氏名】山縣 海
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 采香
(72)【発明者】
【氏名】窪田 淳平
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 三四郎
【審査官】二星 陽帥
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/132534(WO,A1)
【文献】特開平08-009871(JP,A)
【文献】特表2005-508166(JP,A)
【文献】米国特許第06017388(US,A)
【文献】国際公開第2017/188089(WO,A1)
【文献】特開2018-174924(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 5/00 - 35/00
A21D 13/30
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
FSTA/WPIDS/WPIX(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分(a)および(b):
(a)アミロース含量5質量%以上である澱粉の低分子化澱粉、
(b)乳化剤
を含む組成物であって、
前記成分(a)のピーク分子量が3×10
3以上5×10
4以下であり、
当該組成物中の前記成分(a)の含有量が、当該組成物全体に対して3質量%以上45質量%以下であり、
当該組成物中の澱粉の総含有量が、当該組成物全体に対して75質量%以上99.5質量%以下であり、
当該組成物中の前記成分(b)の含有量が、当該組成物全体に対して0.5質量%以上11質量%以下であり、
前記成分(b)が、ショ糖と炭素数10以上24以下の脂肪酸とのエステルおよびグリセリンと炭素数6以上24以下の脂肪酸とのモノエステルからなる群から選択される1種以上であり、
示差走査熱量測定にて測定される、当該組成物のでん粉乾燥質量当たりのアミロース-脂質複合体遊離エンタルピーが、
1.2J/g以上であり、
当該組成物の25℃における冷水膨潤度が5以上20以下であ
り、
組成物の25℃における吸水時油保持率が175%以上400%以下である、組成物。
【請求項2】
当該組成物の25℃における可溶性画分量が、0.5質量%以上14質量%以下である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記アミロース-脂質複合体遊離エンタルピーが、1.8J/g以上である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
当該組成物中の目開き1.4mmの篩の篩上画分の含有量が0質量%以上10質量%未満であって、JIS K-6720に従って測定されるかさ比重が、0.25g/mL以上0.7g/mL以下である、請求項1乃至3いずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
請求項1乃至4いずれか1項に記載の組成物を含む、食品の品質改良剤。
【請求項6】
前記食品が練り食品または和え物で
ある、請求項5に記載の品質改良剤。
【請求項7】
前記食品が練り食品または和え物であり、
前記アミロース-脂質複合体遊離エンタルピーが、
1.8J/g以上である、請求項5または6に記載の品質改良剤。
【請求項8】
前記食品が畜肉練り食品、畜肉様練り食品、フィリングおよび練りわさびからなる群から選ばれる1種である、請求項5乃至7いずれか1項に記載の品質改良剤。
【請求項9】
フライ食品またはフライ様食品の衣材に用いられる品質改良剤であって、
前記成分(b)が、モノグリセリン脂肪酸エステルである、請求項5に記載の品質改良剤。
【請求項10】
フライ食品またはフライ様食品の衣材に用いられる品質改良剤であって、
前記アミロース-脂質複合体遊離エンタルピーが、1.8J/g以上である、請求項5または9に記載の品質改良剤。
【請求項11】
前記食品がルーとして用いられる食品またはパスタソースで
ある、請求項5に記載の品質改良剤。
【請求項12】
請求項5乃至11いずれか1項に記載の品質改良剤を食品に添加する工程を含む、食品の製造方法。
【請求項13】
請求項5乃至11いずれか1項に記載の品質改良剤を食品に添加することを含む、食品の品質改良方法。
【請求項14】
請求項1乃至4いずれか1項に記載の組成物の製造方法であって、
前記成分(a)を準備する工程と、
前記成分(a)および(b)を含む原料をα化処理する工程と、
を含み、
前記原料中の前記成分(a)の含有量が前記原料全体に対して3質量%以上45質量%であり、
前記原料に含まれる澱粉の合計量が前記原料全体に対して75質量%以上99.5質量%以下であり、
前記原料中の前記成分(b)の含有量が前記原料全体に対して0.5質量%以上11質量%以下である、組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は組成物に関し、さらに具体的には食品用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
澱粉を用いた食品素材として、特許文献1および2に記載のものがある。
特許文献1(特開2006-265490号公報)には、アミロース含量が25重量%以上で、粒径が250μm以上の未化工α化澱粉又は該α化澱粉を主要成分とする繊維感或いはパルプ感のある未化工α化澱粉について記載されており、α化澱粉が、ドラムドライヤーで糊化、乾燥後、粉砕して調製されたものであることが記載されている。
特許文献2(特開平8-9871号公報)には、馬鈴薯澱粉とハイアミロース澱粉あるいはアミロース含量の高い澱粉質を乳化剤と共にα化処理することにより保水性および保油性をあわせ持ち、さらに100℃以下で加熱して弾力のあるゲルを形成する、澱粉由来の食品用素材に関する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-265490号公報
【文献】特開平8-9871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、食品に利用した場合に、水分と油分を同時に保持し、食感の向上に優れる組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、以下の組成物およびその製造方法、食品の品質改良剤、食品の製造方法ならびに食品の品質改良方法が提供される。
【0006】
[1] 以下の成分(a)および(b):
(a)アミロース含量5質量%以上である澱粉の低分子化澱粉、
(b)乳化剤
を含む組成物であって、
前記成分(a)のピーク分子量が3×103以上5×104以下であり、
当該組成物中の前記成分(a)の含有量が、当該組成物全体に対して3質量%以上45質量%以下であり、
当該組成物中の澱粉の総含有量が、当該組成物全体に対して75質量%以上99.5質量%以下であり、
当該組成物中の前記成分(b)の含有量が、当該組成物全体に対して0.5質量%以上11質量%以下であり、
示差走査熱量測定にて測定される、当該組成物のでん粉乾燥質量当たりのアミロース-脂質複合体遊離エンタルピーが、0.9J/g以上であり、
当該組成物の25℃における冷水膨潤度が5以上20以下である、組成物。
[2] 当該組成物の25℃における可溶性画分量が、0.5質量%以上14質量%以下である、[1]に記載の組成物。
[3] 前記成分(b)が、ノニオン界面活性剤である、[1]または[2]に記載の組成物。
[4] 当該組成物中の目開き1.4mmの篩の篩上画分の含有量が0質量%以上10質量%未満であって、JIS K-6720に従って測定されるかさ比重が、0.25g/mL以上0.7g/mL以下である、[1]乃至[3]いずれか1項に記載の組成物。
[5] [1]乃至[4]いずれか1項に記載の組成物を含む、食品の品質改良剤。
[6] 前記食品が練り食品または和え物であり、
前記成分(b)が、モノグリセリン脂肪酸エステルおよびショ糖脂肪酸エステルからなる群から選択される1種以上である、[5]に記載の品質改良剤。
[7] 前記食品が練り食品または和え物であり、
前記アミロース-脂質複合体遊離エンタルピーが、1J/g以上である、[5]または[6]に記載の品質改良剤。
[8] 前記食品が畜肉練り食品、畜肉様練り食品、フィリングおよび練りわさびからなる群から選ばれる1種である、[5]乃至[7]いずれか1項に記載の品質改良剤。
[9] フライ食品またはフライ様食品の衣材に用いられる品質改良剤であって、
前記成分(b)が、モノグリセリン脂肪酸エステルである、[5]に記載の品質改良剤。
[10] フライ食品またはフライ様食品の衣材に用いられる品質改良剤であって、
前記アミロース-脂質複合体遊離エンタルピーが、1.8J/g以上である、[5]または[9]に記載の品質改良剤。
[11] 前記食品がルーとして用いられる食品またはパスタソースであり、
前記成分(b)が、モノグリセリン脂肪酸エステルおよびショ糖脂肪酸エステルからなる群から選択される1種以上である、[5]に記載の品質改良剤。
[12] [5]乃至[11]いずれか1項に記載の品質改良剤を食品に添加する工程を含む、食品の製造方法。
[13] [5]乃至[11]いずれか1項に記載の品質改良剤を食品に添加することを含む、食品の品質改良方法。
[14] [1]乃至[4]いずれか1項に記載の組成物の製造方法であって、
前記成分(a)を準備する工程と、
前記成分(a)および(b)を含む原料をα化処理する工程と、
を含み、
前記原料中の前記成分(a)の含有量が前記原料全体に対して3質量%以上45質量%であり、
前記原料に含まれる澱粉の合計量が前記原料全体に対して75質量%以上99.5質量%以下であり、
前記原料中の前記成分(b)の含有量が前記原料全体に対して0.5質量%以上11質量%以下である、組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、食品に利用した場合に、水分と油分を同時に保持し、食感の向上に優れる組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、数値範囲の「~」は、断りがなければ、以上から以下を表し、両端の数値をいずれも含む。また、本実施形態において、組成物は、各成分を単独でまたは2種以上組み合わせて含むことができる。
【0009】
(組成物)
本実施形態において、組成物は以下の成分(a)および(b)を含む。
(a)アミロース含量5質量%以上である澱粉の低分子化澱粉
(b)乳化剤
成分(a)のピーク分子量は、3×103以上5×104以下である。組成物中の成分(a)の含有量は、組成物全体に対して3質量%以上45質量%以下である。組成物中の澱粉の総含有量は、組成物全体に対して75質量%以上99.5質量%以下である。また、組成物中の成分(b)の含有量は組成物全体に対して0.5質量%以上11質量%以下である。示差走査熱量測定にて測定される、組成物のでん粉乾燥質量当たりのアミロース-脂質複合体遊離エンタルピーが、0.9J/g以上である。そして、25℃における組成物の冷水膨潤度は5以上20以下である。
【0010】
本実施形態において、組成物は、成分(a)および(b)を含み、成分(a)のピーク分子量、組成物中の成分(a)および(b)の含有量、組成物中の澱粉の総含有量がそれぞれ特定の範囲にあるとともに、組成物の冷水膨潤度およびアミロース-脂質複合体遊離エンタルピーが特定の範囲にある。これにより、本実施形態における組成物は、食品の品質改良剤として好適に用いることができ、たとえば食感を好ましく改良することができる。
また、本実施形態における組成物を用いることにより、たとえば、食品の風味を増強することも可能となり、また、たとえば、離水の抑制、食感向上および風味増強の効果のバランスを向上することも可能となる。また、本実施形態における組成物を用いることにより、たとえば、保管後の食品の食感を向上することも可能となり、さらに具体的には、冷凍保存、冷蔵保存、常温保存または温蔵保存後の食品の食感を向上することも可能となる。
【0011】
以下、まず、組成物に含まれる成分について説明する。
組成物は、澱粉を含み、さらに具体的には、澱粉として成分(a)と成分(a)以外の澱粉とを含む。
組成物中の澱粉の総含有量は、吸水時油保持率向上および食感向上の観点から、組成物全体に対して75質量%以上であり、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、さらに好ましくは88質量%以上、さらにより好ましくは90質量%以上である。
また、吸水時油保持率向上および食感向上の観点から、組成物中の澱粉の総含有量は、組成物全体に対して99.5質量%以下であり、好ましくは99.4質量%以下、より好ましくは99.2質量%以下であり、また、たとえば99.0質量%以下または98.5質量%以下であってもよい。
ここで、吸水時油保持率とは、澱粉が水分を吸収した際に油分を放出せずに保持する比率のことである。吸水性を有する従来の澱粉(たとえばドラムドライα化処理のみ施した澱粉)では、水分を吸収すると油分を放出するため、吸水時油保持率が低いのに対し、本実施形態の組成物はこの吸水時油保持率が高く、すなわち水分と油分を同時に保持することに優れている。また、でん粉乾燥質量当たりのアミロース-脂質複合体遊離エンタルピーを特定の範囲とすることで、吸水時油保持率を高めることも可能である。
【0012】
なお、組成物の吸水時油保持率およびアミロース-脂質複合体遊離エンタルピーの測定方法については実施例の項で後述する。
【0013】
(成分(a))
成分(a)は、アミロース含量5質量%以上である澱粉の低分子化澱粉である。また、成分(a)は、その製造安定性に優れる観点から、好ましくは、酸処理澱粉、酸化処理澱粉および酵素処理澱粉からなる群から選択される1種または2種以上であり、より好ましくは酸処理澱粉である。成分(a)の製造方法の具体例については後述する。
【0014】
成分(a)の原料澱粉は、アミロース含量5質量%以上の澱粉であればよく、たとえば食品用の澱粉から、各種由来のアミロース含量5質量%以上のものを選択して用いることができる。
たとえば、原料澱粉として、ハイアミロースコーンスターチ、コーンスターチ等のとうもろこし澱粉;タピオカ澱粉;甘藷澱粉;馬鈴薯澱粉;小麦澱粉、ハイアミロース小麦澱粉;米澱粉;および、これらの原料を化学的、物理的または酵素的に加工した加工澱粉からなる群から選択される1種または2種以上を用いることができる。
吸水時油保持率向上および食感向上の観点から、成分(a)の原料澱粉は、ハイアミロースコーンスターチ、コーンスターチおよびタピオカ澱粉から選択される1種または2種以上であり、より好ましくはハイアミロースコーンスターチである。ハイアミロースコーンスターチとしては、たとえばアミロース含量40質量%以上のものが入手可能である。アミロース含量5質量%以上の澱粉は、より好ましくはアミロース含量が40質量%以上のコーンスターチである。
【0015】
成分(a)の原料澱粉中のアミロース含量は、吸水時油保持率向上および食感向上の観点から、5質量%以上であり、より好ましくは12質量%以上、さらに好ましくは22質量%以上、さらにより好ましくは40質量%以上、よりいっそう好ましくは45質量%以上、さらにまた好ましくは55質量%以上、とりわけ好ましくは65質量%以上である。また、成分(a)の原料澱粉中のアミロース含量の上限に制限はなく、100質量%以下であり、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下である。
【0016】
成分(a)のピーク分子量は、吸水時油保持率向上および食感向上の観点から、3×103以上であり、好ましくは8×103以上である。
同様の観点から、低分子化澱粉のピーク分子量は、5×104以下であり、好ましくは3×104以下であり、より好ましくは1.5×104以下である。なお、成分(a)のピーク分子量の測定方法については、実施例の項に記載する。
【0017】
(成分(a)以外の澱粉)
成分(a)以外の澱粉は、たとえば食品用の澱粉であり、各種由来のものを用いることができる。澱粉の由来として、とうもろこし、バレイショ、キャッサバ、小麦、米等の植物が挙げられる。
また、成分(a)以外の澱粉として、とうもろこし澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、小麦澱粉、コメ澱粉などの澱粉(未化工澱粉);およびこれらの澱粉を化学的、物理的または酵素的に加工した加工澱粉などから1種以上を適宜選ぶことができる。
吸水時油保持率向上および食感向上の観点から、成分(a)以外の澱粉は、好ましくはとうもろこし澱粉、タピオカ澱粉およびコメ澱粉からなる群から選択される1種または2種以上であり、より好ましくはとうもろこし澱粉およびタピオカ澱粉からなる群から選択される1種以上であり、さらに好ましくはとうもろこし澱粉である。
組成物中の成分(a)以外の澱粉の含有量は、具体的には、組成物中の澱粉の総含有量から成分(a)の含有量を除いた残部である。
【0018】
(成分(b))
成分(b)は乳化剤である。乳化剤としては、たとえば食品用の乳化剤が挙げられる。
乳化剤として、ショ糖脂肪酸エステル、モノグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、酢酸モノグリセリド、乳酸モノグリセリド、クエン酸モノグリセリド、コハク酸モノグリセリド、ポリソルベート、ソルビタン脂肪酸エステル等のノニオン界面活性剤;
ジアセチル酒石酸モノグリセリド等のアニオン界面活性剤;および
レシチン等の両性界面活性剤が挙げられる。
吸水時油保持率向上および食感向上の観点から、成分(b)は、好ましくはノニオン界面活性剤であり、より好ましくはショ糖脂肪酸エステルおよびモノグリセリン脂肪酸エステルから選ばれる1種以上である。
【0019】
ノニオン界面活性剤のうち、ショ糖脂肪酸エステルとして、たとえばショ糖と炭素数10以上24以下の脂肪酸とのエステルが挙げられ、さらに具体的には、ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖ミリスチン酸エステル、ショ糖オレイン酸エステル、ショ糖ベヘン酸エステル、ショ糖エルカ酸エステルが挙げられる。
ショ糖脂肪酸エステルにおける脂肪酸の炭素数に制限はないが、たとえば10以上であり、好ましくは12以上、より好ましくは14以上、さらに好ましくは16以上である。
また、制限はないが、ショ糖脂肪酸エステルにおける脂肪酸の炭素数は、たとえば24以下であり、好ましくは22以下、より好ましくは20以下、さらに好ましくは18以下である。
【0020】
ショ糖脂肪酸エステルにおける脂肪酸は、吸水時油保持率向上の観点から、好ましくは飽和脂肪酸または1価不飽和脂肪酸であり、より好ましくは飽和脂肪酸である。
ショ糖脂肪酸エステルは、脂肪酸のモノ、ジ、トリおよびポリエステルのいずれを含んでもよい。
ショ糖脂肪酸エステルのHLBは、吸水時油保持率向上の観点から、好ましくは0以上であり、より好ましくは0.5以上、さらに好ましくは4以上、さらにより好ましくは8以上である。
また、同様の観点から、ショ糖脂肪酸エステルのHLBは、好ましくは18以下、より好ましくは17以下である。
【0021】
モノグリセリン脂肪酸エステルとして、たとえばグリセリンと炭素数6以上24以下の脂肪酸とのエステルが挙げられ、さらに具体的には、グリセリンモノカプリン酸エステル、グリセリンモノパルミチン酸エステル、グリセリンモノステアリン酸エステル、グリセリンモノベヘン酸エステルが挙げられる。
モノグリセリン脂肪酸エステルにおける脂肪酸の炭素数は、吸水時油保持率向上および食感向上の観点から、たとえば6以上であり、好ましくは10以上、より好ましくは14以上である。
また、同様の観点から、モノグリセリン脂肪酸エステルにおける脂肪酸の炭素数は、たとえば24以下であり、好ましくは22以下、より好ましくは20以下である。
モノグリセリン脂肪酸エステルにおける脂肪酸は、同様の観点から、好ましくは飽和脂肪酸または1価不飽和脂肪酸であり、より好ましくは飽和脂肪酸である。
モノグリセリン脂肪酸エステルのHLBは同様の観点から、好ましくは0以上であり、より好ましくは1以上である。
また、吸水時油保持率向上の観点から、モノグリセリン脂肪酸エステルのHLBは、好ましくは16以下であり、より好ましくは9以下、さらに好ましくは6以下である。
【0022】
組成物中の成分(b)の含有量は、吸水時油保持率向上および食感向上の観点から、0.5質量%以上であり、好ましくは0.6質量%以上、より好ましくは0.9質量%以上である。
また、同様の観点から、組成物中の成分(b)の含有量は、11質量%以下であり、好ましくは9質量%以下、さらに好ましくは6質量%以下である。
【0023】
組成物は、成分(a)を含む澱粉および成分(b)以外の成分を含んでもよいし、成分(a)を含む澱粉および成分(b)から構成されていてもよい。
澱粉および成分(b)以外の成分として、たとえば炭酸カルシウム、硫酸カルシウムなどの不溶性塩が挙げられる。不溶性塩を添加することにより、組成物の気泡構造をさらに安定化し、製造安定性を改善することも可能となる。
【0024】
次に、組成物の特性について説明する。
(アミロース-脂質複合体遊離エンタルピー)
アミロース-脂質複合体遊離エンタルピーとは、アミロースと脂質成分の複合体が融解する際に発生する吸熱ピークである。アミロース-脂質複合体遊離エンタルピーは、組成物における澱粉および成分(b)の複合体形成量を反映する指標であり、この値が大きいほど複合体形成量が多いことを意味する。なお、上記脂質成分としては、具体的には、成分(b)における親油基(たとえば、脂質部分)が挙げられる。
本発明者らは、組成物が水分と油分を同時に保持し、食感を向上できることの指標として、アミロース-脂質複合体遊離エンタルピーが有効であることを新たに見出した。
でん粉乾燥質量当たりのアミロース-脂質複合体遊離エンタルピーは、食感向上の観点から、0.9J/g以上であり、好ましくは1.0J/g以上、より好ましくは1.2J/g以上、さらに好ましくは1.6J/g以上、さらにより好ましくは1.8J/g以上、よりいっそう好ましくは1.9J/g以上である。
また、食感向上の観点から、アミロース-脂質複合体遊離エンタルピーは、好ましくは10J/g以下であり、より好ましくは9J/g以下、さらに好ましくは8J/g以下である。
組成物のアミロース-脂質複合体遊離エンタルピーは、示差走査熱量測定により測定される。具体的な測定方法については実施例の項にて後述する。
【0025】
(冷水膨潤度)
組成物の25℃における冷水膨潤度は、食感向上の観点から、5以上であり、好ましくは5.5以上、より好ましくは6以上であり、さらに好ましくは6.5以上である。
また、同様の観点から、組成物の25℃における冷水膨潤度は、20以下であり、好ましくは17以下であり、より好ましくは15以下であり、さらに好ましくは12以下、さらにより好ましくは10以下である。
ここで、組成物の冷水膨潤度の測定方法については、実施例の項で後述する。
【0026】
(可溶性画分量)
組成物の25℃における可溶性画分量は、吸水時油保持率向上および食感向上の観点から、組成物全体に対して、好ましくは0.5質量%以上であり、より好ましくは0.9質量%以上、さらに好ましくは1.5質量%以上である。
また、吸水時油保持率向上および食感向上の観点から、組成物の25℃における可溶性画分量は、組成物全体に対して、たとえば18質量%以下であり、好ましくは14質量%以下、さらに好ましくは12質量%以下である。
ここで、可溶性画分量とは、組成物の糊っぽさ(べたつき)を示す指標である。可溶性画分量の測定方法については実施例の項で後述する。
【0027】
(形状、粒度)
組成物の形状は、たとえば粉粒状物である。ここで、粉粒状物とは、粉状物および粒状物のうち少なくとも一方を含むものであり、粉状物および粒状物の両方を含むものであってもよい。
【0028】
組成物の粒度については、たとえば組成物が配合される飲食品の形態、大きさなどを踏まえて調整することができる。
組成物中の目開き3.35mmの篩の篩下画分の含有量は、食感向上の観点から、組成物全体に対して好ましくは40質量%以上であり、より好ましくは45質量%以上、さらに好ましくは48質量%以上である。
同様の観点から、組成物中の目開き3.35mmの篩の篩下画分の含有量は組成物全体に対して100質量%以下であり、たとえば90質量%以下であってもよい。
【0029】
また、食感向上の観点では、組成物中の目開き1.4mmの篩の篩上画分の含有量を少なくすることが好ましい。具体的には、組成物中の目開き1.4mmの篩の篩上画分の含有量は、たとえば0質量%以上であり、たとえば0.1質量%以上であってもよく、また、好ましくは10質量%未満であり、より好ましくは8質量%以下である。
【0030】
また、食品のジューシー感をより向上する観点では、組成物中の目開き0.15mmの篩の篩下画分の含有量は、組成物全体に対して好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上、さらにより好ましくは20質量%以上であり、また、好ましくは95質量%以下であり、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは65質量%以下である。
ここで、組成物の粒度の測定に用いられる篩としては、具体的にはJIS-Z8801-1規格における各目開きの篩を用いることができる。
【0031】
(かさ比重)
吸水時油保持率を高める観点では、JIS K-6720に従って測定される組成物のかさ比重は、たとえば0.15g/mL以上であり、好ましくは0.25g/mL以上、より好ましくは0.30g/mL以上であり、また、たとえば0.8g/mL以下であり、好ましくは0.7g/mL以下であり、より好ましくは0.65g/mL以下である。
【0032】
ここで、組成物のかさ比重は、JIS K-6720に従って測定される。具体的な測定方法については実施例の項で後述する。
【0033】
また、食品に求められる食感を好ましいものとする観点から、組成物中の目開き1.4mmの篩の篩上画分の含有量は、たとえば90質量%未満であり、好ましくは0質量%以上10質量%未満であって、JIS K-6720に従って測定されるかさ比重は、好ましくは0.25g/mL以上0.7g/mL以下である。
【0034】
(吸水率)
組成物の25℃における吸水率は、吸水時油保持率向上の観点から、好ましくは500%以上であり、より好ましくは530%以上である。
また、同様の観点から、組成物の25℃における吸水率は、好ましくは1050%以下であり、より好ましくは900%以下、さらに好ましくは800%以下である。
なお、組成物の吸水率の測定方法については実施例の項で後述する。
【0035】
(吸水時油保持率)
組成物の25℃における吸水時油保持率は、好ましくは175%以上であり、より好ましくは180%以上、さらに好ましくは200%以上である。
また、組成物の25℃における吸水時油保持率は、好ましくは270%以下であり、より好ましくは260%以下である。
またさらに、組成物の25℃における吸水時油保持率は、好ましくは400%以下であり、より好ましくは350%以下であってもよい。
【0036】
(組成物の製造方法)
本実施形態において、冷水膨潤度およびアミロース-脂質複合体遊離エンタルピーがそれぞれ特定の範囲にある組成物を得るためには、たとえば、成分(a)および(b)の組み合わせおよび各成分の量を適切に選択するとともに、α化処理のタイミングと成分(a)および(b)を共存させるタイミングとを適切に選択することが重要である。
さらに具体的には、組成物の製造方法は、たとえば、成分(a)を準備する工程と、成分(a)および(b)を含む原料をα化処理する工程と、を含み、原料中の成分(a)の含有量が原料全体に対して3質量%以上45質量%以下であり、原料に含まれる澱粉の合計量が原料全体に対して75質量%以上99.5質量%以下であり、原料中の成分(b)の含有量が原料全体に対して0.5質量%以上11質量%以下である。
原料中の成分(a)および(b)の含有量ならびに澱粉の合計量を調整するとともに、成分(a)を含む澱粉と成分(b)とを原料中に共存させてα化処理することにより、冷水膨潤度およびアミロース-脂質複合体遊離エンタルピーが所定の範囲にある組成物を安定的に得ることができる。
【0037】
はじめに、成分(a)を準備する工程について説明する。
成分(a)は、たとえば、アミロース含量5質量%以上の澱粉を分解して低分子化澱粉とする工程を含む製造方法により得られる。ここでいう分解とは、澱粉の低分子化を伴う分解をいい、代表的な分解方法として酸処理や酸化処理、酵素処理による分解が挙げられる。中でも、分解速度やコスト、分解反応の再現性の観点から、分解方法は、好ましくは酸処理である。
【0038】
酸処理澱粉を得る際の酸処理の条件は問わないが、たとえば、以下のように処理することができる。
まず、原料であるアミロース含量5質量%以上の澱粉と水を反応装置に投入した後、さらに酸を投入する。あるいは水に無機酸をあらかじめ溶解させた酸水と原料の澱粉を反応装置に投入する。酸処理をより安定的におこなう観点からは、反応中の澱粉の全量が水相内に均質に分散した状態、またはスラリー化した状態にあることが望ましい。そのためには、酸処理をおこなう上での澱粉スラリーの濃度を、たとえば10質量%以上50質量%以下、好ましくは20質量%以上40質量%以下の範囲になるように調整する。スラリー濃度が高すぎると、スラリー粘度が上昇し、均一なスラリーの攪拌が難しくなる場合がある。
【0039】
酸処理に用いられる酸として、具体的には塩酸、硫酸、硝酸などの無機酸が挙げられ、種類、純度などを問わず利用できる。
【0040】
酸処理反応条件については、たとえば酸処理時の無機酸濃度は、酸処理澱粉を安定的に得る観点から、0.05規定度(N)以上4N以下が好ましく、0.1N以上4N以下がより好ましく、0.2N以上3N以下がさらに好ましい。また、同様の観点から、反応温度は、30℃以上70℃以下が好ましく、35℃以上70℃以下がより好ましく、35℃以上65℃以下がさらに好ましく、反応時間は、同様の観点から、0.5時間以上120時間以下が好ましく、1時間以上72時間以下がより好ましく、1時間以上48時間以下がさらに好ましい。
【0041】
次に、成分(a)および(b)を含む原料をα化処理する工程について説明する。
α化処理には、澱粉の加熱糊化に使用されている一般的な方法を用いることができる。α化処理の方法として、具体的には、ドラムドライヤー、ジェットクッカー、エクストルーダー、スプレードライヤーなどの機械を使用した方法が知られているが、本実施形態において、冷水膨潤度およびアミロース-脂質複合体遊離エンタルピーがそれぞれ前述の範囲にある組成物をより確実に得る観点から、エクストルーダーやドラムドライヤーによる加熱糊化が好ましく、エクストルーダー処理がより好ましい。
エクストルーダー処理する場合は通常、原料に加水して水分含量を10~20質量%程度に調整した後、たとえばバレル温度30~200℃、出口温度80~180℃、スクリュー回転数100~1,000rpm、熱処理時間5~60秒の条件で、加熱膨化させる。
たとえば、成分(a)および成分(a)以外の澱粉と成分(b)とを含む原料を加熱糊化する工程により、冷水膨潤度およびアミロース-脂質複合体遊離エンタルピーがそれぞれ特定の条件を満たす組成物を、造粒物として得ることができる。
また、加熱糊化して得られた造粒物を、必要に応じて、粉砕し、篩い分けをし、大きさを適宜調整して、組成物として所望の大きさの粒状物、粉状物またはこれらの混合物を得るとよい。
【0042】
(食品の品質改良剤)
本実施形態において、食品の品質改良剤は、上述した組成物を含む。かかる品質改良剤を用いることにより、たとえば、食品の食感を好ましく改良することができる。さらに具体的には、品質改良剤が配合された食品をフィリングとしたときの具材感を向上することも可能となる。
また、品質改良剤を用いることにより、たとえば、食品中の水分の保持性を高めることができ、具体的には、離水を抑制したり、これによる他の食材への水分移行を防止することも可能となる。
また、品質改良剤を用いることにより、たとえば、食品の風味を増強したり、食品の保管時、たとえば冷凍または冷蔵保管時の、香気成分の保持性を向上することも可能となる。
【0043】
品質改良剤は、組成物を、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上、さらにより好ましくは40質量%以上含む。また、品質改良剤中の組成物の含有量の上限は100質量%であるが、たとえば95質量%以下、あるいは90質量%以下でもよい。また、品質改良剤中の組成物の含有量はたとえば80質量%以下、たとえば70質量%以下、またはたとえば50質量%以下であってもよい。
【0044】
本実施形態において、食品の品質改良剤は、効果を阻害しない範囲において上述した組成物以外の成分を含んでいてもよい。具体的には、組成物の他に独立した成分として配合される澱粉(未加工澱粉およびこれらを化学的、物理的あるいは酵素的に加工した加工澱粉等);小麦粉、米粉、大豆粉等の穀粉;グルテンなどのタンパク質;卵類;粉乳、チーズ等の乳製品類;砂糖、果糖等の糖類;ペクチンやアルギン酸、キサンタンガム等の増粘多糖類;ベーキングパウダー等の膨化剤;塩、醤油、グルタミン酸等の調味料;成分(b)以外の乳化剤;油脂;色素;香料;抹茶、ココア等の風味パウダー等が挙げられる。
品質改良剤がキサンタンガム等の増粘多糖類を含むとき、品質改良剤中の増粘多糖類の含有量は、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上であり、また、好ましくは60質量%以下であり、より好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下、さらにより好ましくは20質量%以下である。
また、本実施形態において、品質改良剤は、好ましくは粉末である。
【0045】
本実施形態における品質改良剤の適用される食品として、たとえば練り食品、和え物、フライ食品、フライ様食品、スープ中具、焼成菓子、パン類等が挙げられる。また、品質改良剤の適用される食品の他の具体例として、カレー、シチュー等のルーとして用いられる食品;ミートソース、カルボナーラソース等のパスタソース;ラタトゥイユ等の煮込み等が挙げられる。
【0046】
練り食品の具体例として、ハンバーグ、ミートボール、ナゲット、ソーセージ、餃子、焼売、包子等の畜肉練り食品;畜肉練り製品の畜肉を植物タンパク質で代替した畜肉様練り食品;および
フィッシュボール、魚肉ソーセージ等の水産練り食品が挙げられる。
練り食品の他の具体例として、練りわさび、練り辛子、練り梅、練りごま等の植物素材由来の練り食品が挙げられる。植物素材由来の練り食品は、チューブ容器に充填されてなる練りチューブ製品であってよい。
和え物の具体例として、ポテトサラダ、ツナサラダ等のサラダ;およびツナマヨネーズ等のフィリングが挙げられる。
【0047】
品質改良剤の適用される食品は、それ自体で食品として提供されてもよいし、食品の一部として、たとえばパイフィリング等のフィリング、カレールー等のルー、または、パスタソース等のソースとして提供されてもよい。
【0048】
フライ食品の具体例として、唐揚げ;竜田揚げ;フライドチキン;チキンナゲット;豚カツ、メンチカツ等のカツ類;コロッケ;エビフライ等のフライ類;天ぷら;フリッター;カレーパン、ドーナツ等の揚げパン類が挙げられる。フライ食品は好ましくは唐揚げである。
フライ食品は、好ましくは衣材にブレッダーを含む。
また、フライ食品は、好ましくは衣材にバッターおよびブレッダーを含み、バッターおよびブレッダーの少なくとも一方に品質改良剤を含む。また、バッターおよびブレッダー両方に品質改良剤を含んでもよい。
また、衣材がパン粉を含むとき、パンは、たとえば、品質改良剤を含む生地を焼成してなるパンの粉砕物であってもよい。
また、フライ様食品として、上記フライ食品を油ちょう以外の(ノンフライ)製法で加熱調理して得られる食品が挙げられる。フライ様食品における加熱調理方法として、具体的には、油をひいたフライパンや鉄板上での加熱、オーブン等による乾熱調理、マイクロ波加熱調理(電子レンジ調理)、過熱水蒸気調理(スチームコンベクションオーブン調理)が挙げられる。
【0049】
以下、食品が練り食品または和え物である場合フライ食品またはフライ様食品である場合、および、ルーとして用いられる食品またはパスタソースである場合について、さらに具体的に説明する。
【0050】
(練り食品または和え物用の品質改良剤)
品質改良剤が練り食品または和え物用であるとき、成分(b)は、好ましくはモノグリセリン脂肪酸エステルおよびショ糖脂肪酸エステルからなる群から選択される1種以上である。
【0051】
また、練り食品または和え物に用いられる品質改良剤では、食感向上の観点から、アミロース-脂質複合体遊離エンタルピーが、好ましくは1.0J/g以上であり、より好ましくは1.2J/g以上、さらに好ましくは1.6J/g以上である。
また、同様の観点から、アミロース-脂質複合体遊離エンタルピーは好ましくは10J/g以下であり、より好ましくは8J/g以下である。
【0052】
食感向上および風味増強の観点から、品質改良剤が練り食品または和え物に用いられるとき、食品は、好ましくは畜肉練り食品、畜肉様練り食品、フィリングおよび練りわさびからなる群から選ばれる1種である。
本実施形態における品質改良剤を用いることにより、たとえば、練り食品や和え物の食感または風味を改善したり、かかる食品の保管後、たとえば室温保管、チルド保管後や冷凍保管後の練り食品の食感または風味を向上することや、保管後の離水等の成分の分離を抑制することも可能となる。
【0053】
(フライ食品またはフライ様食品用の品質改良剤)
品質改良剤がフライ食品またはフライ様食品用であるとき、品質改良剤は好ましくはこれらの食品の衣材に用いられる。また、成分(b)は、好ましくはモノグリセリン脂肪酸エステルである。
【0054】
また、フライ食品またはフライ様食品の衣材に用いられる品質改良剤では、食感向上の観点から、アミロース-脂質複合体遊離エンタルピーが、好ましくは1.8J/g以上であり、より好ましくは2J/g以上である。
また、同様の観点から、アミロース-脂質複合体遊離エンタルピーは好ましくは10J/g以下であり、より好ましくは8J/g以下である。
本実施形態における品質改良剤を用いることにより、たとえば、フライ食品やフライ様食品の食感を改善したり、かかる食品の保管後、たとえば室温保管後またはホッター保管後の衣の食感や中具の食感を向上することも可能となる。また、たとえば、フライ食品やフライ様食品をたとえば相対湿度50%以上の高い湿度の雰囲気下で保管した後の食感を向上することも可能となる。
【0055】
(ルーとして用いられる食品用またはパスタソース用の品質改良剤)
ルーとして用いられる食品やパスタソースがレトルトカレー等のレトルト食品であるとき、品質改良剤は、好ましくは、レトルト処理前に添加される。また、ルーとして用いられる食品やパスタソースは、レトルト容器に充填されてなるレトルト食品であってもよい。
品質改良剤がルーとして用いられる食品用またはパスタソース用であるとき、成分(b)は、好ましくはモノグリセリン脂肪酸エステルおよびショ糖脂肪酸エステルからなる群から選択される1種以上である。
【0056】
また、ルーとして用いられる食品またはパスタソースに用いられる品質改良剤では、食感向上の観点から、アミロース-脂質複合体遊離エンタルピーが、好ましくは1.0J/g以上であり、より好ましくは1.2J/g以上、さらに好ましくは1.6J/g以上、さらにより好ましくは3J/g以上、よりいっそう好ましくは5J/g以上である。
また、同様の観点から、アミロース-脂質複合体遊離エンタルピーは好ましくは10J/g以下であり、より好ましくは8J/g以下である。
本実施形態における品質改良剤を用いることにより、たとえば、ルーやソースの風味や食感を向上することも可能となる。
【0057】
品質改良剤を食品に適用することにより、食感等の品質を改良し好ましいものとすることができる。また、本実施形態において、食品の製造方法は、上述した品質改良剤を食品に添加する工程を含む。
また、本実施形態において、食品の品質改良方法は、上述した品質改良剤を食品に添加することを含む。
たとえば食品が練り食品または和え物であるとき、たとえば品質改良剤をこれらの食品の原材料と混合し、練り込むことにより、食品改良剤を食品に添加することができる。
また、食品がフライ食品またはフライ様食品であるとき、たとえば品質改良剤を衣材の原材料と混合し、かかる衣材を中具に付着させることにより、衣材中に食品改良剤を含む食品を得ることができる。また、衣材中に食品改良剤を含む場合、衣材は好ましくはブレッダーである。
また、食品がカレーであるとき、たとえば品質改良剤をカレーの原材料または加熱調理済みのカレーに添加した後、加熱加圧(たとえば、レトルト)処理することにより、食品改良剤を含むカレーを得ることができる。他の食品についても、加熱加圧前に品質改良剤を添加して、レトルト食品とすることもできる。
品質改良剤の配合量については、たとえば食品の種類に応じて調整することができる。品質改良剤の配合量は、全食品原料中、組成物換算で、たとえば0.1質量%以上であり、また、たとえば35質量%以下である。
【0058】
本実施形態において、品質改良剤が適用される食品が練り食品または和え物であるとき、品質改良剤の配合量は、食感向上の観点から、組成物換算で好ましくは全食品原料中0.3質量%以上であり、より好ましくは0.6質量%以上、さらに好ましくは0.9質量%以上である。
また、同様の観点から、品質改良剤の配合量は、組成物換算で好ましくは全食品原料中30質量%以下であり、より好ましくは25質量%以下である。
また、植物素材由来の練り食品であるとき、品質改良剤の配合量は、離水の抑制、食感向上および風味増強の効果のバランスを向上する観点から、組成物換算で好ましくは全食品原料中10質量%以下であり、より好ましくは8質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。
【0059】
ここで、本明細書において、食品原料とは、最終的な食品を得る前の、原材料およびその混合物のことである。
【0060】
本実施形態において、品質改良剤が適用される食品がフライ食品またはフライ様食品用であるとき、品質改良剤の配合量は、食感向上の観点から、組成物換算で好ましくは食品原料中1質量%以上であり、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上である。
また、同様の観点から、品質改良剤の配合量は、組成物換算で好ましくは食品原料中30質量%以下であり、より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。
【0061】
本実施形態において、品質改良剤が適用される食品がカレーであるとき、品質改良剤の配合量は、食感向上および風味増強の観点から、組成物換算で好ましくは食品全体中0.2質量%以上であり、より好ましくは0.4質量%以上、さらに好ましくは0.6質量%以上である。
また、同様の観点から、品質改良剤の配合量は、組成物換算で好ましくは食品全体中5質量%以下であり、より好ましくは4質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下、さらにより好ましくは2質量%以下である。
【実施例】
【0062】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明の趣旨はこれらに限定されるものではない。
【0063】
原材料として、主に以下のものを使用した。
(澱粉)
コーンスターチ:J-オイルミルズ社製、コーンスターチY
ハイアミロースコーンスターチ:J-オイルミルズ社製、HS-7、アミロース含量70質量%
馬鈴薯澱粉:BP-200、J-オイルミルズ社製
リン酸架橋澱粉:アクトボディーTP-2、J-オイルミルズ社製
ワキシーコーンスターチ:ワキシーコーンスターチY、J-オイルミルズ社製
加工澱粉1:テクステイドA、日本エヌエスシー社製
酸化澱粉1:酸化タピオカでん粉、ジェルコールSP-3、J-オイルミルズ社製
酸化澱粉2:アセチル化酸化でん粉、ジェルコールSP-2、J-オイルミルズ社製
酸処理澱粉:ジェルコールR100、J-オイルミルズ社製
【0064】
(乳化剤)
モノグリセリン脂肪酸エステル1:エマルジーMS、構成脂肪酸C16(40%)、C18(60%)、理研ビタミン社製
モノグリセリン脂肪酸エステル2:ポエムP(V)S、構成脂肪酸C16(60%)、C18(40%)、理研ビタミン社製
モノグリセリン脂肪酸エステル3:ポエムM-100、構成脂肪酸C8(98%)、理研ビタミン社製
モノグリセリン脂肪酸エステル4:ポエムB-100、構成脂肪酸C22(77%)、C18(12%)、理研ビタミン社製
ショ糖脂肪酸エステル1:S-1170、構成脂肪酸C18系、HLB11、三菱ケミカルフーズ社製
ショ糖脂肪酸エステル2:S-1670、構成脂肪酸C18系、HLB16、三菱ケミカルフーズ社製
ショ糖脂肪酸エステル3:P-1670、構成脂肪酸C16系、HLB16、三菱ケミカルフーズ社製
【0065】
(その他)
ツナフレーク:ライトツナスーパーノンオイル、いなば食品社製
マヨネーズ:ピュアセレクトマヨネーズ、味の素社製
キサンタンガム:キサンタンFJ、丸善薬品産業社製
畜肉加工用品質改良剤製剤:ハイトラストTC-200、J-オイルミルズ社製
油脂組成物:牛脂(精製牛脂)、植田製油株式会社製
モランボン餃子の素:手作り餃子の素、モランボン社製
小麦粉:フラワー、日清製粉製
α化穀粉:ソフトコートEL、J-オイルミルズ社製
市販の唐揚げ粉:厨房王ジューシー唐揚げ粉、ダイショー社製
大豆タンパク質1:フジニックエース500、不二製油社製
大豆タンパク質2:ベジテックスSHF、不二製油社製
大豆タンパク質3:アペックス950、不二製油社製
卵白粉:乾燥卵白Wタイプ キューピー社製
ショートニング1:ファシエ、J-オイルミルズ社製
ごま油:AJINOMOTOごま油好きのごま油、J-オイルミルズ社製
ブイヨン:マギーブイヨン 無添加、ネスレ日本社製
キャノーラ油:AJINOMOTOさらさらキャノーラ、J-オイルミルズ社製
ベーキングパウダー:F-アップ、アイコク社製
強力粉:オーション、日清製粉社製
生地改良剤:ジョーカーキモ、ピュラトス社製
生イースト:レギュラーイースト、オリエンタル酵母工業社製
ショートニング2:アトランタSS、J-オイルミルズ社製
【0066】
(組成物の製造例1)
(製造例1-1~1-10)
表1に記載の成分および配合で原料を混合し、以下の方法で組成物を調製した。
まず、表1に記載の酸処理ハイアミロースコーンスターチを以下の手順で調製した。すなわち、ハイアミロースコーンスターチを水に懸濁して35.6%(w/w)スラリーを調製し、50℃に加温した。そこへ、攪拌しながら4.25Nに調製した塩酸水溶液をスラリー質量比で1/9倍量加え反応を開始した。16時間反応後、3%NaOHで中和し、水洗、脱水、乾燥し、酸処理ハイアミロースコーンスターチを得た。
得られた酸処理ハイアミロースコーンスターチのピーク分子量を以下の方法で測定したところ、ピーク分子量は1.2×104であった。
【0067】
(ピーク分子量の測定方法)
ピーク分子量の測定は、東ソー株式会社製HPLCユニットを使用しておこなった(ポンプDP-8020、RI検出器RS-8021、脱気装置SD-8022)。
(1)試料を粉砕し、JIS-Z8801-1規格の篩で、目開き0.15mm篩下の画分を回収した。この回収画分を移動相に1mg/mLとなるように懸濁し、懸濁液を100℃3分間加熱して完全に溶解した。0.45μmろ過フィルター(ADVANTEC社製、DISMIC-25HP PTFE 0.45μm)を用いてろ過をおこない、ろ液を分析試料とした。
(2)以下の分析条件で分子量を測定した。
カラム:TSKgel α-M(7.8mmφ、30cm)(東ソー株式会社製)2本
流速:0.5mL/min
移動相:5mM NaNO3含有90%(v/v)ジメチルスルホキシド溶液
カラム温度:40℃
分析量:0.2mL
(3)検出器データを、ソフトウェア(マルチステーションGPC-8020modelIIデータ収集ver5.70、東ソー株式会社製)にて収集し、分子量ピークを計算した。
検量線には、分子量既知のプルラン(Shodex Standard P-82、昭和電工株式会社製)を使用した。
【0068】
次に、得られた酸処理ハイアミロースコーンスターチを用いて組成物を製造した。すなわち、表1に記載の成分を充分に均一になるまで袋内で混合し、混合物を得た。2軸エクストルーダー(幸和工業社製、KEI-45)を用いて、上記混合物を加圧加熱処理した。処理条件は、以下の通りである。
原料供給:275g/分
加水:各表に示した数量
バレル温度:原料入口から出口に向かって50℃、70℃、100℃および130℃
出口温度:130~150℃
スクリューの回転数230rpm
このようにしてエクストルーダー処理により得られた加熱糊化物を110℃にて乾燥し、水分含量を約10質量%に調整した。
【0069】
次いで、乾燥した加熱糊化物を、卓上カッター粉砕機で粉砕した後、JIS-Z8801-1規格の篩で篩分けして、0.5mm篩下0.15mm篩上の画分を各例の組成物とした。ただしアミロース-脂質複合体遊離エンタルピーのみ、各例の0.15mm篩下の画分を測定に供した。
【0070】
(製造例1-11)
表1に記載の成分のうち、モノグリセリン脂肪酸エステル2以外の成分を混合して原料を調製し、製造例1-1~1-10に準じて加熱糊化物を得た。得られた加熱糊化物にモノグリセリン脂肪酸エステル2を表1の記載の量にて添加して混合し、本例の組成物を得た。
【0071】
(アミロース-脂質複合体遊離エンタルピーの測定方法)
DSC 7000-X(日立製作所社製)を用いて、Al簡易密封パン(メトクローム処理)に、組成物の0.15mm篩下の画分を2mgと水9.5mgを加えて封をした。室温(25℃、以下同じ。)で3時間以上放置し、吸水させた。リファレンスにはブランクセルを用いた。昇温は10℃から140℃まで3℃/minの速度で行った(測定点:0.5秒ごと)。得られたDSCチャートの80~125℃の間の吸熱ピークの面積より測定される熱量を澱粉乾燥質量当たりに換算し、澱粉乾燥質量当たりのアミロース-脂質複合体遊離エンタルピー(以下、単に「遊離エンタルピー」ともいう。)として定義した。
【0072】
(冷水膨潤度、可溶性画分量および吸水率の測定方法)
1.試料1g(A)を50mLファルコンチューブに秤量し、質量をAとした。
2.ボルテックスをかけながら、チューブ目盛り50mLまで水を加えた。
3.5回転倒混和させ、沈殿を分散させた後、10秒ボルテックスして室温で30分静置した。
4.4000rpmで30分間遠心分離を行い、沈殿層と上澄み層に分けた。
(遠心分離機:日立工機社製、日立卓上遠心機CT6E型;ローター:T4SS型スイングローター;アダプター:50TC×2Sアダプタ)
5.上澄みをピペットで取り除いて、沈殿層の質量を測定し、これをBとした。
6.沈殿層を乾固(105℃、24時間)した時の質量を測定し、これをCとした。
7.以下式に基づき、組成物の冷水膨潤度、可溶性画分量および吸水率を求めた。
冷水膨潤度=B/C
可溶性画分(%)=(A-C)/A×100
吸水率(%)=(B-A)/A×100
【0073】
(かさ比重の測定方法)
各例で得られた組成物を篩い分けして0.5mm篩下0.15mm篩上の画分を得た。この画分80gを測りとり、JIS規格K-6720に従い、カサ比重測定器(蔵持科学器械製作所社製)を用いてかさ比重を測定した。
また、粒度が大きい(概ね3.35mmの篩上を含む)ものについては、組成物80gをシリンダー(500mL)に入れて嵩を読み取ることにより、かさ比重を求めた。
【0074】
(吸水時油保持率の測定方法)
以下の手順で組成物の吸水時油保持率を求めた。
1.組成物1gに対して、菜種油(J-オイルミルズ社製)4gを加えてプラカップで良く混ぜた。
2.水2gを加えて、生地が均一になるまで混ぜた。
3.平板に直径32mmのセルクルを置き、ここに生地が均一になるように入れた。
4.セルクルを外し、平板を約30度まで傾けた。
5.10分間静置した。
6.ドリップした油を良くふき取った後、吸水・吸油生地を回収し、質量を測定した(この量を(A)とした)。以下の式により吸水時油保持率を算出した。
吸水時油保持率(質量%)=((A-1-2)/1)/(1-水分%)×100
【0075】
【0076】
表1より、乳化剤をα化処理前に加えた製造例1-2~1-10では、アミロース-脂質複合体遊離エンタルピーが所定の範囲となり、乳化剤を加えない場合(製造例1-1)と比較して吸水時油保持率が高く、良好であった。また、製造例1-2~1-10は、粒度が0.5~0.15mmでのかさ比重が小さいという点でも良好であった。
使用する乳化剤がショ糖脂肪酸エステルの場合、HLBが11以上16のとき、アミロース-脂質複合体遊離エンタルピーが所定の範囲となり吸水時油保持率が良好であり、HLBが16の場合、より良好であった。またショ糖脂肪酸エステルで同じHLB16の場合、構成脂肪酸がステアリン酸のショ糖脂肪酸エステル2よりもパルミチン酸のショ糖脂肪酸エステル3のとき、吸水時油保持率がさらに良好であった。
使用する乳化剤がモノグリセリン脂肪酸エステルの場合、構成脂肪酸の炭素数が8~22のとき、アミロース-脂質複合体遊離エンタルピーが所定の範囲となり吸水時油保持率が良好であり、炭素数が16~22のとき、より良好であり、炭素数が18~22のときさらに良好であった
一方、α化処理後に乳化剤を加えても(製造例1-11)、アミロース-脂質複合体遊離エンタルピーが所定の範囲にならず、吸水時油保持率等の性能が十分ではなかった。
【0077】
(製造例2-1~2-8)
表2に示した配合および条件にて、製造例1-1~1-10に準じて組成物を製造した。得られた組成物の物性を表2にあわせて示す。
【0078】
【0079】
表2より、乳化剤の配合量を0.5質量%以上10質量%以下とした場合、得られた組成物はいずれも優れた性能を示した。
吸水時油保持率は、乳化剤の配合量が0.5質量%以上10質量%以下のとき、良好であり、0.8質量%以上10質量%以下のとき、より良好であり、2質量%以上10質量%以下のとき、さらに良好であった。
また、炭酸カルシウムを添加せずに製造した場合も、良好な吸水時油保持率を示した(製造例2-7)。
【0080】
(製造例3-1~3-5)
製造例2-3で得られた加熱糊化物を、卓上カッター粉砕機で粉砕した後、JIS-Z8801-1規格の篩で篩分けして、表3に示す配合割合で混合し、各例の組成物を得た。得られた組成物の物性を表3にあわせて示す。ここで、各例で得られた組成物の遊離エンタルピーは製造例2-3と同程度である。
【0081】
【0082】
表3より、粒度分布が異なる組成物においても、いずれも優れた性能を示した。
【0083】
(練り食品への適用例1)
(実施例1-1、1-2、対照例1)
本例では、組成物を二重包餡ハンバーグに適用した。表4にハンバーグの配合を示す。
【0084】
【0085】
(ハンバーグの製造方法)
1.表4に記載のA群の材料をすべてボウルに入れた。
2.ミキサーで繊維立って来るまで良く混ぜた。具体的には、ケンミックスミキサー(愛工舎製作所社製)の強度1で3分混ぜた。1分おき程度のタイミングで羽についた肉を落とした。
3.表4に記載のB群の材料を合わせて手混ぜで良く混ぜ、ハンバーグ用混合物を得た。
4.内層、外層に分けて、それぞれ、表5に示した配合で油脂組成物、各組成物と混ぜ合わせた。
5.成形は以下のようにした。内層30g、外層120g(1:4)ずつ計量し、たたいて空気を良く抜いた。内層を丸め、外層は手のひら位の大きさに広げた。そして、内層を外層で包みこみ、軽くたたきつつ楕円形に成形して、生地を得た。
6.5.で得られた生地を200℃のホットプレートで両面を1分ずつ焼成した。
7.さらに、コンベクションオーブンの鉄板に網を載せて、網の上に6.で焼成後の生地を置いて180℃8分焼成しハンバーグを得た。
8.得られたハンバーグを-50℃にて約2か月間冷凍した。
【0086】
(評価)
冷凍したハンバーグ3個を皿に並べてラップをし、電子レンジにて700W、3分間加熱した。得られたハンバーグの官能評価および肉汁量の評価をおこなった。
(官能評価)
得られたハンバーグのジューシー感をパネラー3名が以下の基準で採点し、3名の評点の平均点により評価した。平均点が3.5以上を合格とした。
5:非常にジューシーである。
4:ジューシーである。
3:ややジューシーである。
2:ややパサパサしている。
1:パサパサしている。
【0087】
(カットした時の肉汁量計測)
あらかじめ質量を測定しておいたキッチンペーパーを敷いておき、レンジアップ直後のハンバーグを置いた。そして、ハンバーグを包丁で中心から半分にカットした。カット時にあふれ出てくる液体量(g)をキッチンペーパーの質量変化を計測することで算出した。
各例について、N=3個の平均値を肉汁量とした。
【0088】
【0089】
表5より、実施例1-1および実施例1-2は、得られた二重包餡ハンバーグのジューシーな食感に優れ、カット時の肉汁量も多かった。食感の観点ではモノグリセリン脂肪酸エステルを用いて製造した組成物を用いたもの(実施例1-1)がより優れており、カット時の肉汁量についてはショ糖脂肪酸エステルを用いて製造した組成物を用いたもの(実施例1-2)がより優れていた。
【0090】
(和え物への適用例1)
(実施例2-1~2-3、比較例1、対照例2)
本例では、ツナのマヨネーズ和え(ツナマヨ)に組成物を適用した。各例で用いた組成物および評価結果を表6に示す。
(ツナマヨの配合)
原料 配合(質量%)
ツナフレーク 59.08
たまねぎ(茹で、水切り) 17.65
マヨネーズ 20.62
調味料 *1 1.85
組成物 0.8
合計 100
【0091】
*1 調味料:塩、砂糖および胡椒を1:1:0.1の質量比で配合したもの
【0092】
(ツナマヨの製造方法)
1.玉ねぎを5mm角にカットし、熱湯で2分ゆでた。
2.ゆで後の玉ねぎを、軽く水を切り質量を測定した。
3.2.の質量の75%まで玉ねぎを搾り、水を切った。
4.玉ねぎに表6に記載の組成物をあえた。
5.上記表に記載の他の材料を加え、よく混ぜた。
6.翌日の状態を、作業者1名が目視にて確認した。また、以下の方法で離水量(g)を測定したのち、喫食して食感を評価した。
(離水量の測定方法)
ツナマヨの入ったボウルを傾け、離水した水分を集めて質量を測定し、離水量(g)とした。
【0093】
【0094】
表6より、ショ糖脂肪酸エステルを配合し製造した組成物を配合した実施例2-1および実施例2-2のツナマヨは、離水が抑えられ、水っぽさがなく、食感が好ましいものであった。組成物に使用した乳化剤としては構成脂肪酸がステアリン酸のショ糖脂肪酸エステル2よりもパルミチン酸のショ糖脂肪酸エステル3の場合、離水の少なさの点でさらに良好であった。
また、モノグリセリン脂肪酸エステル2を2質量%配合し製造した組成物を用いた実施例2-3も、離水量が少なく優れていた。一方、モノグリセリン脂肪酸エステル2を0.3質量%配合し製造した組成物を用いた場合(比較例1)、対照例2と同じく離水量が多かった。
【0095】
(衣材への適用例1)
(実施例3-1~3-5、対照例3)
本例では、ブレッダーに組成物を適用して唐揚げを製造した。バッターの配合および唐揚げの評価結果を表7に示す。
(唐揚げの製造方法)
1.鶏モモ肉を約20gにカットし、マリネ液に30分つけた。
2.マリネ液をきり、バッター液に肉を入れ、良く混合したのち打ち粉(小麦粉)を鶏モモ肉に対して4%添加した。
3.各組成物と馬鈴薯澱粉を1対1で混合し、品質改良剤であるブレッダーを得た。
4.ブレッダーを付け(鶏モモ肉20グラム当たり約2~3g)、170℃で3.5分油ちょうし、唐揚げを得た。
5.得られた唐揚げの一部を、ホッター(65℃)で5時間保管した。
【0096】
(マリネ液の配合)
成分 配合(質量部)
畜肉加工用品質改良剤製剤 10
上白糖 2
食塩 2
醤油 5
菜種油 5
水 70
合計 94
【0097】
(バッターの配合)
成分 配合(質量部)
リン酸架橋澱粉 30
食塩 1.0
胡椒 0.8
ベーキングパウダー 0.1
キサンタンガム 0.1
水 70
合計 100.2
【0098】
(官能評価)
保管前後の唐揚げの食感を3名のパネラーが油ちょう直後およびホッター保管後に官能評価し、3名の評点の平均点により評価した。評価項目および各項目の評点の内容を以下に示す。
【0099】
(クリスピー感)
5:とてもクリスピー。
4:クリスピー。
3:ややクリスピー。
2:あまりクリスピーでない。
1:全くクリスピーでない。
(衣の食感の軽さ)
5:とても軽い。
4:軽い。
3:やや軽い。
2:詰まって重い。
1:とても詰まって重い。
(衣の曳)
5:曳が全く感じられない。とても歯切れが良い。
4:曳が感じられない。歯切れが良い。
3:曳があまり感じられない。歯切れがやや良い。
2:やや曳がある。歯切れが悪い。
1:強い曳がある。歯切れがとても悪い。
(衣の油っぽさ)
5:全く感じない。
4:感じない。
3:あまり感じない。
2:やや感じる。
1:とても感じる。
(衣の口溶け)
5:とても口溶けが良い。
4:口溶けが良い。
3:やや口溶けが良い。
2:あまり口溶けが良くない。
1:全く口溶けが良くない。
(中身のしっとり感)
5:とてもしっとりしている。
4:しっとりしている。
3:ややしっとりしている。
2:パサつきを感じる。
1:とてもパサつきを感じる。
【0100】
【0101】
表7より、実施例3-1~実施例3-5は、得られた唐揚げの調理直後およびホッター5時間保管後の食感に優れていた。
調理直後および保管後の、クリスピー感、衣の食感の軽さ、衣の曳については乳化剤を0.5質量%以上5質量%以下配合して製造したブレッダーを用いた場合優れており、2質量%以上5質量%以下のとき、より優れていた(実施例3-1~3-3の比較)。
また、調理直後および保管後の、衣の口どけについては、乳化剤(モノグリセリン脂肪酸エステル)の構成脂肪酸の炭素数が8~22のものを配合して製造したブレッダーを用いた場合優れており、構成脂肪酸の炭素数が16~22のとき、より優れていた(実施例3-2、3-4、3-5の比較)。
また、調理直後および保管後の、中身のしっとり感については、乳化剤(モノグリセリン脂肪酸エステル)の構成脂肪酸の炭素数が8~22のものを配合して製造したブレッダーを用いた場合優れており、構成脂肪酸の炭素数が16~22のとき、より優れており、炭素数16と18のものがさらに優れていた(実施例3-2、3-4、3-5の比較)。
【0102】
(衣材への適用例2)
(実施例4、比較例2、対照例4)
本例では、(衣材への適用例1)と、ブレッダーに適用した組成物を表8のものに変えた以外は同じ方法で唐揚げを製造し、調理直後および保管後にパネラー3名で喫食して評価した。
【0103】
【0104】
得られた唐揚げは、実施例4のものは調理直後、保管後いずれにおいてもクリスピー感、衣の食感の軽さ、衣の口どけ感に優れていた。一方、対照例4および比較例2では、調理直後、保管後ともクリスピー感、衣の食感の軽さ、衣の口どけ感が実施例4より劣っていた。すなわち、成分(b)を、α化処理前に加えないと、好ましい性能が得られなかった。
【0105】
(品質改良剤の製造例1)
製造例2-2の組成物100質量部および、グアーガム(グアパックPF-20、DSP五協フード&ケミカル社製)100部およびキサンタンガム(キサンタンFJ、丸善薬品産業社製)100部を混合し、本例の品質改良剤を得た。
【0106】
(カレーへの適用例)
(実施例5、比較例3、4、対照例5)
本例では、以下の方法で組成物をレトルトカレーに適用し、評価した。
【0107】
(カレーの調製)
市販のレトルトカレー(宮城製粉社製、おとなの大盛カレー(レストラン仕様)250g)を開封してボウルに移し、カレーの具材を目開き1.2mmの網で濾した。その後、カレー250gをビーカーに測りとった。これに、添加剤の添加量が表9に記載の濃度となるように、各例における添加剤を加え、均一に分散するように良く撹拌した。なお、対照例については、添加剤を添加しなかった他は、同様の手順とした。
ビーカーの内容物をレトルト用透明シール袋に充填し、シールした。これをレトルト食品用オートクレーブ(平山製作所社製、HLM-36LBC型レトルト滅菌器)に入れ、121℃、30分間、加圧加熱処理した。加圧加熱処理後、シール袋をレトルト食品用オートクレーブから取り出し、室温まで冷ました。
そして、得られたカレーサンプル200gを200mLのトールビーカーに移してラップフィルムで蓋をし、60℃に加熱したウォーターバスに湯浴し、各例の食品としてのカレーを得た。
【0108】
各例で得られたカレーサンプルの味の感じ方(味の強さ)、口触りおよび口溶けを、5名のパネラーが表10に記載の基準で評価し、対照例5を2点とした場合の評点が平均点で2点超のものを合格とした。評価結果を表9にあわせて示す。
【0109】
【0110】
【0111】
表10において、味の感じ方(先味、中味、後味)、口触りおよび口溶けとは、それぞれ、以下である。
先味:口に入れてすぐに感じる味の強さ
中味:咀嚼中に感じる味の強さ
後味:飲み込んだ後に残る味の強さ
口触り:液体の舌触り
口溶け:口に入れた際の食感
【0112】
表9より、得られたカレーのうち、実施例5のものは、先味、中味、後味いずれにおいても対照例5と比較して味の感じかた(味の強さ)が向上しており、さらに口触りおよび口溶けにも優れていた。一方、比較例3および比較例4は、味の感じ方、口触りおよび口溶けの点で、実施例5より劣っていた。
【0113】
(練り食品への適用例2)
(実施例6、対照例6)
本例では、組成物を練りわさびに適用した。
【0114】
(練りわさびの製造)
粉末わさび(S&B社製、粉わさび)に水を添加し、元になるわさびベースを作製し、対照例6の練りわさびとした。実施例6については、その後、製造例3-2の組成物を添加し、混合した。各例の材料および配合を表11に示す。
【0115】
(評価)
各例で得られた練りわさびの製造直後(保管0日後)の離水状態、食感および食味を5名のパネラーが評価した。
また、練りわさびの冷蔵耐性(具体的には、離水状態、食感および食味)を確認するため、各例で得られた練りわさびの一部をろ紙(桐山製作所社製、桐山ロート濾紙 150mm No.5A)上に載せたものをバットに並べ、上からラップをして冷蔵庫で保管した。冷蔵保管7日後および冷蔵保管14日後に、製造直後と同様に評価した。評価結果を表11にあわせて示す。
【0116】
【0117】
表10より、得られた実施例6の練りわさびは、保管0日後、冷蔵保管7日後、冷蔵保管14日後のいずれにおいても、対照例6と比較して離水の無さ、食感の点で優れていた。食味の点では、冷蔵保管7日後および冷蔵保管14日後まで、実施例6ではわさびらしい辛味が保持されていた。
【0118】
(練り食品への適用例3)
(実施例7、対照例7)
本例では、組成物を練り餃子の餡に適用した。
【0119】
(餃子の製造方法)
1.表12に記載の材料をすべてケンミックスミキサー(愛工舎製作所社製)に入れ、メモリ1で2分混ぜ、餃子の餡を作製した。
2.上記1.の餡を、市販の皮(モランボン社製、餃子の皮、大判サイズ)に25gずつ包み、生餃子を得た。
3.上記2.の餃子を、IHヒーター(火力70%)でフライパンに8個並べて、1分加熱後、水75mLを加えて、フタをして4分間蒸し焼きし、さらに蓋を開けて1分間加熱することで、加熱焼成した焼き餃子を得た。
4.上記3.で得られた餃子をパネラー2名で喫食し、皮部分と中具の状態について評価した。評価は後述する基準で合議によりおこなった。
5.上記3.で得られた餃子のうち、一部を食品用ビニール袋に入れ4℃で1時間保管し、600Wのレンジで1分再加熱して喫食し、上記4.に準じて官能評価を行った。
6.3で得られた餃子のうち、他の一部を食品用ビニール袋に入れ急速冷凍したのち、-20℃で1時間保管し、600Wのレンジで3分再加熱した。再加熱後の餃子をパネラー2名が喫食し、上記4.に準じて官能評価をおこなった。
7.さらに、以下の手順で生餃子での冷凍保管後再加熱時の試験をおこなった。すなわち、上記1.および2.と同じ手順で得られた生餃子を、食品用ビニール袋に入れて急速冷凍し、-20℃で14日間保管した。その後、凍ったままの餃子をIHヒーター(火力70%)でフライパンに8個並べて、1分加熱後、水75mLを加えて、フタをして4分間蒸し焼きし、さらに蓋を開けて1分間加熱することで、加熱焼成した焼き餃子を得た。得られた焼き餃子を喫食し、上記4.に準じて官能評価をおこなった。
【0120】
(評価)
各例で得られた餃子の焼成直後(上記4.)、焼成後チルド保管し再加熱後(上記5.)、焼成後冷凍保管し再加熱後(上記6.)および生餃子を冷凍し焼成後(上記7.)について、皮部分のパリッと感または皮部分のもっちり感、および、中具のジューシー感を2名のパネラーが評価した。評価においては対照例を2点とし、以下の基準で合議により各例の評点を決定した。
1:対照例よりとても悪い
2:対照例と同等
3:対照例よりやや良い
4:対照例より良い
5:対照例よりとても良い
評価結果を表12にあわせて示す。また、表12において「N.T.」は評価なし(Not Tested)である。
【0121】
【0122】
表12より、得られた実施例7-1の餃子は、焼成直後、焼成後チルド保管し再加熱後、焼成後冷凍保管し再加熱後および生餃子を冷凍し焼成後いずれにおいても、中具のジューシー感に優れていた。また、中具から皮への水分移行が抑えられことにより、焼成直後はパリッと感に優れており、焼成後チルド保管し再加熱後、焼成後冷凍保管し再加熱後および生餃子を冷凍し焼成後はもっちり感に優れていた。実施例7-2で得られた餃子も官能評価結果に優れるものであった。一方、対照例7では、焼成直後、焼成後チルド保管し再加熱後、焼成後冷凍保管し再加熱後および生餃子を冷凍し焼成後いずれにおいても、中具のジューシー感が劣っており、かつ皮が水分を吸ってぶよぶよしており、好ましいものではなかった。
【0123】
(パイのフィリングへの適用例)
(実施例8-1~8-2、対照例8)
本例では、組成物をラタトゥイユフィリングに適用したパイを作製した。
【0124】
(フィリング入りパイの製造方法)
表13に記載の配合により、フィリング入りパイを以下の手順で製造した。
1.市販のラタトゥイユフィリング(業務用旨味広がるラタトゥイユ、田中食品興行所社製)および表13に記載のその他の材料を入れ、ボールに入れ均一になるように混合し、混合物(フィリング)を作製した。
2.上記1.で得られた混合物を30gずつ、長辺を1/2にカットした解凍済みパイシート(オーマイパイシート、日本製粉社製)に載せ、上から同じサイズのパイシートで覆い、周りをフォークで押さえ、中央に3本切込みを入れた。予熱したオーブンにて220℃、20分で焼成した。ただし対照例については、上記1.に記載のラタトゥイユフィリング30gをそのままフィリングとして使用した以外は、同じ操作でパイを作製した。
3.得られた各例のパイのうち、一部は食品用ビニール袋に入れ室温で1日保管した。その他の一部は食品用ラップフィルムでくるみ-20℃で3日冷凍保管し、6時間室温で自然解凍した。また残りは-20℃で3日冷凍保管し、電子レンジ(700W、1分)にて解凍後、オーブントースター(1000W、2分)にて再加熱した。
4.それぞれのパイをパネラー5名で喫食し、フィリングの具材感、パイのサクミ、フィリングの風味の強さを合議で評価した。評価結果を表13にあわせて示す。
【0125】
【0126】
得られた実施例8-1および8-2のフィリング入りパイは、室温1日後のもの、冷凍後自然解凍したもの、冷凍後再加熱後したもののいずれにおいても、対照例8と比較して、フィリングの具材感、フィリングの風味の強さにおいて優れていた。また、各実施例では、フィリングからパイへの水分移行が抑えられことにより、対照例8と比較して、パイのサクミが残っており、中でもキサンタンガムを併用した実施例8-2では、パイのサクミにおいてはより優れていた。
【0127】
(衣材への適用例3)
(実施例9-1~9-8、対照例9)
本例では、バッターおよびブレッダーの一方または両方に組成物を適用して唐揚げを製造した。バッターおよびブレッダーの配合ならびに唐揚げの評価結果を表14に示す。
【0128】
【0129】
(製造例4)
表14中、「加工澱粉」は、以下の方法で製造した。
コーンスターチ79質量%、前述の方法で得られた酸処理ハイアミロースコーンスターチ20質量%、および、炭酸カルシウム1質量%を充分に均一になるまで袋内で混合した。2軸エクストルーダー(幸和工業社製KEI-45)を用いて、混合物を以下の条件にて加圧加熱処理した。
原料供給:450g/分
加水:17質量%
バレル温度:原料入口から出口に向かって50℃、70℃および100℃
出口温度:100~110℃
スクリューの回転数250rpm
このようにしてエクストルーダー処理により得られたアルファー化処理物を110℃にて乾燥し、水分含量を10質量%に調整した。乾燥したアルファー化処理物を、卓上カッター粉砕機で粉砕し、JIS-Z8801-1規格の篩で篩分けした。篩分けしたアルファー化処理物を、以下の配合割合で混合し、加工澱粉を得た。
目開き1.4mm篩下、目開き0.0.5mm篩上:52質量%
目開き0.5mm篩下、目開き0.15mm篩上:30質量%
目開き0.15mm篩下:18質量%
【0130】
(唐揚げの製造方法)
1.鶏モモ肉(皮なし)を25~30gにカットし、ピックル液(対肉40%)中、タンブラー(VACONA社、ESK-60)に加え、5℃、90分間、真空率80%でタンブリングを行った。
2.ピックル液をきり、各例のバッターに肉を入れ、良く混合した。
3.バッターの付いた肉に、各例のブレッダーを付けた(鶏モモ肉25~30g当たり約5~8g)。
4.180℃で3分油ちょうし、唐揚げを得た。
【0131】
(評価方法)
各例で得られた油ちょう後の唐揚げの粗熱を取った後、唐揚げの「好ましい硬さ」、「サクミ」、「肉のジューシーさ」および「衣の曳」を2名のパネラーが官能評価した。2名のパネラーの合議により以下の基準で評点を付した。各項目について、3点以上を合格とした。
【0132】
(好ましい硬さ)
5:適度な硬さがある
4:ほぼ適度な硬さがある、またはわずかに硬すぎる
3:やや適度な硬さがある、またはやや硬すぎるが許容範囲である
2:あまり硬さがない、または硬すぎる
1:全く硬さがない、またはかなり硬すぎる
【0133】
(サクミ)
5:非常にサクミあり
4:サクミあり
3:ややサクミあり
2:あまりサクミなし
1:全くサクミなし
【0134】
(肉のジューシーさ)
5:非常にジューシーさに優れる
4:かなりジューシーさに優れる
3:ジューシーさに優れる
2:ややジューシーさに劣る
1:ジューシーさに劣る
【0135】
(衣の曳)
5:全く曳なし
4:ほとんど曳なし
3:少し曳あり
2:やや曳あり
1:曳あり
【0136】
(ピックル液の配合)
成分 配合(質量%)
畜肉加工用品質改良剤製剤 10.00
上白糖 4.00
食塩 1.00
胡椒 0.30
グルタミン酸Na 2.70
醤油 10.00
氷水 72.00
合計 100.00
【0137】
表14に示したように、バッターに製造例3-4の組成物を加えた場合、小麦粉のみのバッターと比べ、市販の唐揚げ粉をブレッダーとしたときの唐揚げ衣の好ましい硬さ、サクミ、肉のジューシーさ、衣の曳の無さの点で優れていた(対照例9、実施例9-1)。
実施例9-2~実施例9-6のように製造例3-4の組成物の含有量を増加させた場合、唐揚げ衣のサクミは濃度依存的に向上した。また、組成物の粒度分布が異なる製造例3-3の組成物を使用した場合(実施例9-7)、製造例3-4の組成物と同等に好ましい唐揚げが得られた。
実施例9-8のようにバッターに製造例3-4の組成物を配合し、ブレッダーに製造例3-2の組成物を配合した場合も、好ましい唐揚げが得られた。
【0138】
(組成物の製造例2)
(製造例5-1~5-4)
表15に記載の成分および配合で原料を混合し、以下の方法で組成物を調製した。
まず、製造例1-1~1-10にて前述した酸処理ハイアミロースコーンスターチの製造工程おいて、酸処理反応の時間を16時間から8時間(製造例5-1)および3時間(製造例5-2)にそれぞれ変更した他は、前述の手順に準じて各例の酸処理ハイアミロースコーンスターチを調製した。
得られた酸処理ハイアミロースコーンスターチのピーク分子量を前述の方法で測定したところ、製造例5-1で得られた酸処理ハイアミロースコーンスターチのピーク分子量は2.4×104であり、製造例5-2で得られた酸処理ハイアミロースコーンスターチのピーク分子量は4.4×104であった。
【0139】
次に、製造例5-1および5-2で得られた酸処理ハイアミロースコーンスターチを用いて、表15に示した配合および条件にて、製造例1-1~1-10に準じて組成物を製造した。得られた組成物の物性を表15にあわせて示す。
【0140】
【0141】
表15より、製造例5-3および5-4で得られた組成物は、良好な吸水時油保持率を示した。
【0142】
(練り食品への適用例4)
(実施例10-1、10-2、対照例10)
本例では、組成物をソイ餃子の餡に適用した。
【0143】
(ソイ餃子の製造方法)
1.表16に記載の材料をすべて均一になるまでケンミックスミキサー(愛工舎製作所社製)にて混合し、餃子の餡を作製した。
2.上記1の餡を、市販の皮(モランボン社製 大判餃子の皮)に20gずつ包み、餃子を得た。
3.上記2.の餃子を、IHヒーターで30秒間あたためた、油をひいたフライパンに9個並べて水100mLを加え、蓋をして強火で6分間蒸し焼きし、さらに蓋を開けて1分間加熱することで、加熱焼成した焼き餃子を得た。
4.上記3.で得られた餃子をラップに包んで室温で1時間保管したのち、電子レンジで500W、30秒再加熱した。再加熱後の餃子を9名で喫食し、合議により皮部分のパリッと感および中具の状態のジューシー感を評価した。評価基準は、練り食品への適用例3において前述した基準に準じた。評価結果を表16に示す。
【0144】
【0145】
表16より、各実施例において、餡に組成物を加えて作製したソイ餃子は、対照例10と比較し、いずれも好ましいものであった。実施例10-2のように、組成物3-3すなわち目開き0.15mmの篩の篩下画分の含有量が50質量%の組成物を配合した場合、中具のジューシー感がより優れていた。
【0146】
(製造例6)
本例では、製造例3-4の組成物を配合して以下の手順でパンを得、得られたパンを粉砕してパン粉を製造した。パンの配合組成を表17に示す。
1.表17に記載のすべての材料をミキサーボウルに入れ、パン用ミキサー(カントーミキサー HP-20M、関東混合社製)にて以下の条件でミキシングした。
ミキシング条件:フックにて1速で3分、2速で9分混捏
2.ミキシング後、ミキサーから生地を出して、26℃で70分間発酵させた。
3.生地を215gに分割し15分間休ませた後、モルダーで棒状にし3本でツイスト状にあわせた物を型に2本づつ入れ、成形した。
4.成形した生地を38℃相対湿度85%のホイロで50分間発酵させた。
5.発酵後、オーブンにて以下の条件と時間で焼成した。
焼成条件:上段180℃/下段190℃
焼成時間:50分
6.焼成後、室温(20℃)にて焼成したパンの粗熱を除去した。
7.冷凍庫(-18℃)に保管した。
8.得られた冷凍パンを室温(20℃)に戻し、パンの中身部分をミキサー(製品名:MiNi-PANKO PK-3、冨士島工機社製)で粉砕した。得られたパン粉中の製造例3-4の組成物の含有量は3.1質量%であった。
9.粉砕したパン粉を篩にかけ、目開き2.8mm篩下、0.15mm篩上の画分を回収し、後述の実施例11に用いた。
【0147】
【0148】
(衣材への適用例4)
(実施例11)
本例では、製造例6で得られたパン粉を唐揚げに適用し、評価した。バッターおよびブレッダーの配合を表18に示したものとした他は、実施例9-1~9-8に準じて唐揚げの作製および評価をおこなった。評価結果を表18にあわせて示す。
【0149】
【0150】
表18より、製造例3-4の組成物を配合したパンから製造されたパン粉をブレッダーに配合した実施例11において、好ましい食感の唐揚げが得られた。
【0151】
(衣材への適用例5)
(実施例12-1、12-2、対照例11)
本例では、組成物を天ぷらのバッターに適用した。
【0152】
(えびの天ぷらの製造方法)
1.えび(体長約10cm)10尾に、7~10g/1尾の打ち粉(薄力粉)をまぶした。
2.打ち粉をまぶしたえびに、各例のバッターを付着させた。バッターは、表19に記載の材料を混合して作製した。
3.バッターを付着させたえびを170℃にて3分油ちょうし、えびの天ぷらを得た。このとき、油ちょう開始から1分経過時に、追い衣として、1尾あたり8g程度の各例のバッター組成物をえびにかけ、さらに油ちょう開始から3分になるまで油ちょうした。
4.得られたえびの天ぷらについて、室温(25℃)にて粗熱除去後;室温(25℃)、相対湿度72%にて4時間保管後;および、室温(25℃)、相対湿度50%にて4時間保管後の食感を以下の方法で評価した。
【0153】
(評価)
えびの天ぷらのサクミ、歯切れおよび衣の曳を官能評価した。評価はパネラー2名にておこない、以下の基準で合議で評価し、3点以上を合格とした。評価結果を表19にあわせて示す。
【0154】
(サクミ)
4:非常にサクミがある。
3:ややサクミがある。
2:あまりサクミがない。
1:まったくサクミがない。
(歯切れ)
4:非常に歯切れが良い。
3:やや歯切れが良い。
2:あまり歯切れが良くない。
1:まったく歯切れが良くない。
(衣の曳)
4:ほとんど曳を感じない。
3:あまり曳を感じない。
2:やや曳を感じる。
1:かなり曳を感じる。
【0155】
【0156】
表19より、各実施例において、好ましい食感の天ぷらが得られた。
【0157】
この出願は、2019年9月30日に出願された日本出願特願2019-180451号、2020年7月10日に出願された日本出願特願2020-119206号および2020年8月19日に出願された日本出願特願2020-138938号を基礎とする優先権を主張し、その開示のすべてをここに取り込む。