(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-16
(45)【発行日】2024-10-24
(54)【発明の名称】光学フィルム
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20241017BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20241017BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20241017BHJP
H10K 50/86 20230101ALI20241017BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20241017BHJP
【FI】
G02B5/30
B32B7/023
G09F9/00 313
H10K50/86
H10K59/10
(21)【出願番号】P 2022141657
(22)【出願日】2022-09-06
(62)【分割の表示】P 2020180835の分割
【原出願日】2014-08-07
【審査請求日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】P 2013165945
(32)【優先日】2013-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2013187026
(32)【優先日】2013-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2014017295
(32)【優先日】2014-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【氏名又は名称】森住 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100162710
【氏名又は名称】梶田 真理奈
(74)【代理人】
【識別番号】100172605
【氏名又は名称】岩木 郁子
(72)【発明者】
【氏名】幡中 伸行
(72)【発明者】
【氏名】横田 明
(72)【発明者】
【氏名】小林 忠弘
(72)【発明者】
【氏名】佐▲瀬▼ 光敬
(72)【発明者】
【氏名】小松 慶史
【審査官】池田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-092632(JP,A)
【文献】特開2004-118185(JP,A)
【文献】特表2012-523581(JP,A)
【文献】特開2006-268007(JP,A)
【文献】特開2003-121645(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0185267(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
H10K 59/10
H10K 50/10
H05B 33/02
B32B 7/023
G09F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光板、接着剤層、第一の位相差層と第二の位相差層とを有する光学フィルム、及び、粘着剤層をこの順に備える円偏光板
(ただし、表面反射抑止層を含まない)であって、前記接着剤層の厚みが2μm以下であって、
前記偏光板は、偏光子の片面に保護フィルムを有するものであって、前記偏光板の偏光子面が前記光学フィルムに前記接着剤層を介して貼合されており、
第一の位相差層が、
式(4)、(6)及び式(7)で表される光学特性を有する層Aと、
式(5)、(6)及び式(7)で表される光学特性を有する層Bとを有し、
層Aおよび層Bが、それぞれ1以上の重合性液晶を重合させることにより形成されるコーティング層であり、
第二の位相差層が式(3)で表される光学特性を有し、
前記光学フィルムが式(1)及び式(2)で表される光学特性を有し、
前記光学フィルムにおいて、第一の位相差層の上に配向膜を介するかまたは介さずに第二の位相差層が形成される、円偏光板。
Re(450)/Re(550)≦1.00 (1)
1.00≦Re(650)/Re(550) (2)
nx≒ny<nz (3)
100nm<Re(550)<160nm (4)
200nm<Re(550)<320nm (5)
Re(450)/Re(550)≧1.00 (6)
1.00≧Re(650)/Re(550) (7)
(式中、Re(450)は波長450nmにおける面内位相差値を表し、Re(550)は波長550nmにおける面内位相差値を表し、Re(650)は波長650nmにおける面内位相差値を表す。nxは、位相差層が形成する屈折率楕円体において、フィルム平面に対して平行な方向の主屈折率を表す。nyは、位相差層が形成する屈折率楕円体において、フィルム平面に対して平行であり、且つ、該nxの方向に対して直交する方向の屈折率を表す。nzは、位相差層が形成する屈折率楕円体において、フィルム平面に対して垂直な方向の屈折率を表す。)
【請求項2】
第一の位相差層が式(1)及び式(2)で表される光学特性を有する請求項1に記載の円偏光板。
Re(450)/Re(550)≦1.00 (1)
1.00≦Re(650)/Re(550) (2)
(式中、Re(450)、Re(550)及びRe(650)は前記と同じ意味を表す。)
【請求項3】
光学フィルムがさらに第三の位相差層を有し、
第三の位相差層が式(5)で表される光学特性を有する請求項1又は2に記載の円偏光板。
200nm<Re(550)<320nm (5)
(式中、Re(550)は前記と同じ意味を表す。)
【請求項4】
第三の位相差層が式(6)及び式(7)で表される光学特性を有する請求項3に記載の円偏光板。
Re(450)/Re(550)≧1.00 (6)
1.00≧Re(650)/Re(550) (7)
(式中、Re(450)、Re(550)及びRe(650)は前記と同じ意味を表す。)
【請求項5】
第三の位相差層が1以上の重合性液晶を重合させることにより形成されるコーティング層である請求項3又は4に記載の円偏光板。
【請求項6】
第三の位相差層の厚さが5μm以下である請求項3~5のいずれかに記載の円偏光板。
【請求項7】
第三の位相差層が配向膜上に形成される請求項3~6のいずれかに記載の円偏光板。
【請求項8】
第二の位相差層が1以上の重合性液晶を重合させることにより形成されるコーティング層である請求項1~7のいずれかに記載の円偏光板。
【請求項9】
第一の位相差層の厚さが5μm以下である請求項1~8のいずれかに記載の円偏光板。
【請求項10】
第二の位相差層の厚さが5μm以下である請求項1~9のいずれかに記載の円偏光板。
【請求項11】
第一の位相差層及び第二の位相差層の厚さがそれぞれ5μm以下である請求項1~10のいずれかに記載の円偏光板。
【請求項12】
第一の位相差層が配向膜上に形成される請求項1~11のいずれかに記載の円偏光板。
【請求項13】
第二の位相差層が配向膜上に形成される請求項1~12のいずれかに記載の円偏光板。
【請求項14】
第一の位相差層または第三の位相差層を形成するための配向膜が、光照射により配向規制力を生じた配向膜である請求項7又は12に記載の円偏光板。
【請求項15】
第二の位相差層または第三の位相差層を形成するための配向膜が、垂直配向規制力を生じる配向膜である請求項7又は13に記載の円偏光板。
【請求項16】
配向膜の厚さが500nm以下である請求項12~15のいずれかに記載の円偏光板。
【請求項17】
第一の位相差層、第二の位相差層及び第三の位相差層をこの順に有する請求項3~7のいずれかに記載の円偏光板。
【請求項18】
層Aの厚さが5μm以下である請求項1~17のいずれかに記載の円偏光板。
【請求項19】
層Bの厚さが5μm以下である請求項1~18のいずれかに記載の円偏光板。
【請求項20】
層A及び層Bの厚さがそれぞれ5μm以下である請求項1~19のいずれかに記載の円偏光板。
【請求項21】
接着剤層が活性エネルギー線硬化型接着剤又は水系接着剤から形成される請求項1~20のいずれかに記載の円偏光板。
【請求項22】
請求項1~21のいずれかに記載の円偏光板を備える有機EL表示装置。
【請求項23】
請求項1~22のいずれかに記載の円偏光板を備えるタッチパネル表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
フラットパネル表示装置(FPD)には、偏光板、位相差板などの、光学フィルムを含む部材が用いられている。このような光学フィルムとしては、重合性液晶を含む組成物を基材に塗布することにより製造される光学フィルムが知られている。例えば、特許文献1には、逆波長分散性を示す該光学フィルムについて記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の光学フィルムは、黒表示時の光漏れを抑制するという光学補償特性において十分ではなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は以下の発明を含む。
[1] 第一の位相差層と第二の位相差層とを有する光学フィルムであって、
第二の位相差層が式(3)で表される光学特性を有し、
該光学フィルムが式(1)及び式(2)で表される光学特性を有する光学フィルム。
Re(450)/Re(550)≦1.00 (1)
1.00≦Re(650)/Re(550) (2)
nx≒ny<nz (3)
(式中、Re(450)は波長450nmにおける面内位相差値を表し、Re(550)は波長550nmにおける面内位相差値を表し、Re(650)は波長650nmにおける面内位相差値を表す。nxは、位相差層が形成する屈折率楕円体における、フィルム平面に対して平行な方向の主屈折率を表す。nyは、位相差層が形成する屈折率楕円体における、フィルム平面に対して平行であり、且つ、該nxの方向に対して直交する方向の屈折率を表す。nzは、位相差層が形成する屈折率楕円体における、フィルム平面に対して垂直な方向の屈折率を表す。)
[2] 第一の位相差層が式(4)で表される光学特性を有する[1]に記載の光学フィルム。
100nm<Re(550)<160nm (4)
(式中、Re(550)は前記と同じ意味を表す。)
[3] 第一の位相差層が式(1)及び式(2)で表される光学特性を有する[1]又は[2]に記載の光学フィルム。
Re(450)/Re(550)≦1.00 (1)
1.00≦Re(650)/Re(550) (2)
(式中、Re(450)、Re(550)及びRe(650)は前記と同じ意味を表す。
)
[4] 第一の位相差層が、
式(4)、(6)及び式(7)で表される光学特性を有する層Aと、
式(5)、(6)及び式(7)で表される光学特性を有する層Bと、を有する[1]~[3]のいずれかに記載の光学フィルム。
100nm<Re(550)<160nm (4)
200nm<Re(550)<320nm (5)
Re(450)/Re(550)≧1.00 (6)
1.00≧Re(650)/Re(550) (7)
(式中、Re(450)、Re(550)及びRe(650)は前記と同じ意味を表す。
)
[5] さらに第三の位相差層を有する光学フィルムであって、
第三の位相差層が式(5)で表される光学特性を有する[1]又は[2]に記載の光学フィルム。
200nm<Re(550)<320nm (5)
(式中、Re(550)は前記と同じ意味を表す。)
[6] 第一の位相差層及び第三の位相差層が式(6)及び式(7)で表される光学特性を有する[5]に記載の光学フィルム。
Re(450)/Re(550)≧1.00 (6)
1.00≧Re(650)/Re(550) (7)
(式中、Re(450)、Re(550)及びRe(650)は前記と同じ意味を表す。
)
[7] 第三の位相差層が1以上の重合性液晶を重合させることにより形成されるコーティング層である[5]又は[6]に記載の光学フィルム。
[8] 第三の位相差層の厚さが5μm以下である[5]~[7]のいずれかに記載の光学フィルム。
[9] 第三の位相差層が配向膜上に形成される[5]~[8]のいずれかに記載の光学フィルム。
[10] 第一の位相差層が1以上の重合性液晶を重合させることにより形成されるコーティング層である[1]~[9]のいずれかに記載の光学フィルム。
[11] 第二の位相差層が1以上の重合性液晶を重合させることにより形成されるコーティング層である[1]~[10]のいずれかに記載の光学フィルム。
[12] 第一の位相差層の厚さが5μm以下である[1]~[11]のいずれかに記載の光学フィルム。
[13] 第二の位相差層の厚さが5μm以下である[1]~[12]のいずれかに記載の光学フィルム。
[14] 第一の位相差層及び第二の位相差層の厚さがそれぞれ5μm以下である[1]~[13]のいずれかに記載の光学フィルム。
[15] 第一の位相差層が配向膜上に形成される[1]~[14]のいずれかに記載の光学フィルム。
[16] 第二の位相差層が配向膜上に形成される[1]~[15]のいずれかに記載の光学フィルム。
[17] 配向膜が、光照射により配向規制力を生じた配向膜である[9]、[15]又は[16]に記載の光学フィルム。
[18] 配向膜が、垂直配向規制力を生じる配向膜である[9]、[15]又は[16]に記載の光学フィルム。
[19] 配向膜の厚さが500nm以下である[15]~[18]のいずれかに記載の光学フィルム。
[20] 基材上に、配向膜を介するかまたは介さずに第一の位相差層が形成され、第一の位相差層の上に、配向膜を介するかまたは介さずに第二の位相差層が形成されている[1]~[19]のいずれかに記載の光学フィルム。
[21] 基材上に、配向膜を介するかまたは介さずに第二の位相差層が形成され、第二の位相差層の上に、配向膜を介するかまたは介さずに第一の位相差層が形成されている[1]~[20]のいずれかに記載の光学フィルム。
[22] 第一の位相差層、第二の位相差層及び第三の位相差層をこの順に有する[5]~[21]のいずれかに記載の光学フィルム。
[23] 第一の位相差層と、第二の位相差層との間に保護層を有する[20]~[22]に記載の光学フィルム。
[24] 第二の位相差層と、第三の位相差層との間に保護層を有する[22]に記載の光学フィルム。
[25] 基材の一方の面に、配向膜を介するかまたは介さずに第一の位相差層が形成され、基材の他方の面に、配向膜を介するかまたは介さずに第二の位相差層が形成されている[1]~[19]のいずれかに記載の光学フィルム。
[26] 層Aが1以上の重合性液晶を重合させることにより形成されるコーティング層である[4]に記載の光学フィルム。
[27] 層Bが1以上の重合性液晶を重合させることにより形成されるコーティング層である[4]に記載の光学フィルム。
[28] 層Aの厚さが5μm以下である[4]に記載の光学フィルム。
[29] 層Bの厚さが5μm以下である[4]に記載の光学フィルム。
[30] 層A及び層Bの厚さがそれぞれ5μm以下である[4]に記載の光学フィルム。
[31] 基材上に、配向膜を介するかまたは介さずに層Aが形成され、該層Aの上に、配向膜を介するかまたは介さずに層Bが形成され、該層Bの上に、配向膜を介するかまたは介さずに第二の位相差層が形成されている[4]に記載の光学フィルム。
[32] 基材上に、配向膜を介するかまたは介さずに層Bが形成され、該層Bの上に、配向膜を介するかまたは介さずに層Aが形成され、該層Aの上に、配向膜を介するかまたは介さずに第二の位相差層が形成されている[4]に記載の光学フィルム。
[33] 基材上に、配向膜を介するかまたは介さずに第二の位相差層が形成され、該第二の位相差層の上に、配向膜を介するかまたは介さずに層Aが形成され、該層Aの上に、配向膜を介するかまたは介さずに層Bが形成されている[4]に記載の光学フィルム。
[34] 基材上に、配向膜を介するかまたは介さずに第二の位相差層が形成され、該第二の位相差層の上に、配向膜を介するかまたは介さずに層Bが形成され、該層Bの上に、配向膜を介するかまたは介さずに層Aが形成されている[4]に記載の光学フィルム。
[35] 基材の一方の面に、配向膜を介するかまたは介さずに層Aが形成され、該層Aの上に、配向膜を介するかまたは介さずに層Bが形成され、基材の他方の面に、配向膜を介するかまたは介さずに第二の位相差層が形成されている[4]に記載の光学フィルム。
[36] 基材の一方の面に、配向膜を介するかまたは介さずに層Bが形成され、該層Bの上に、配向膜を介するかまたは介さずに層Aが形成され、基材の他方の面に、配向膜を介するかまたは介さずに第二の位相差層が形成されている[4]に記載の光学フィルム。
[37] 層Aと、層Bとの間に保護層を有する[31]~[36]のいずれかに記載の光学フィルム。
[38] 基材上に、配向膜を介するかまたは介さずに第一の位相差層が形成され、該第一の位相差層の上に、配向膜を介するかまたは介さずに第二の位相差層が形成され、該第二の位相差層の上に、配向膜を介するかまたは介さずに第三の位相差層が形成されている[5]に記載の光学フィルム。
[39] 基材上に、配向膜を介するかまたは介さずに第三の位相差層が形成され、該第三の位相差層の上に、配向膜を介するかまたは介さずに第二の位相差層が形成され、該第二の位相差層の上に、配向膜を介するかまたは介さずに第一の位相差層が形成されている[5]に記載の光学フィルム
[40] 基材の一方の面に、配向膜を介するかまたは介さずに第一の位相差層が形成され、該第一の位相差層の上に、配向膜を介するかまたは介さずに第二の位相差層が形成され、基材の他方の面に、配向膜を介するかまたは介さずに第三の位相差層が形成されている[5]に記載の光学フィルム。
[41] 基材の一方の面に、配向膜を介するかまたは介さずに第二の位相差層が形成され、該第二の位相差層の上に、配向膜を介するかまたは介さずに第一の位相差層が形成され、基材の他方の面に、配向膜を介するかまたは介さずに第三の位相差層が形成されている[5]に記載の光学フィルム。
[42] 基材の一方の面に、配向膜を介するかまたは介さずに第三の位相差層が形成され、該第三の位相差層の上に、配向膜を介するかまたは介さずに第二の位相差層が形成され、基材の他方の面に、配向膜を介するかまたは介さずに第一の位相差層が形成されている[5]に記載の光学フィルム。
[43] 基材の一方の面に、配向膜を介するかまたは介さずに第二の位相差層が形成され、該第二の位相差層の上に、配向膜を介するかまたは介さずに第三の位相差層が形成され、基材の他方の面に、配向膜を介するかまたは介さずに第一の位相差層が形成されている[5]に記載の光学フィルム。
[44] [1]~[43]のいずれかに記載の光学フィルムと偏光板とを備える円偏光板。
[45] 光学フィルムと偏光板とが活性エネルギー線硬化型接着剤又は水系接着剤で貼り合わされている[44]に記載の円偏光板。
[46] [44]又は[45]に記載の円偏光板を備える有機EL表示装置。
[47] [44]又は[45]に記載の円偏光板を備えるタッチパネル表示装置。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、黒表示時の光漏れ抑制に優れる光学フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図3】本発明の光学フィルムを含む円偏光板の断面模式図である。
【
図4】本発明の光学フィルムを含む円偏光板の断面模式図である。
【
図5】本発明の光学フィルムを含む有機EL表示装置の断面模式図である。
【
図6】本発明の光学フィルムを含む有機EL表示装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の光学フィルム(以下、本光学フィルムということがある。)は第一の位相差層と第二の位相差層とを有する。また、第三の位相差層を有してもよい。第一の位相差層、第二の位相差層及び第三の位相差層とは一定の光学特性を有する位相差層であり、第一の位相差層、第二の位相差層及び第三の位相差層はそれぞれ2以上の層から成っていてもよい。
本光学フィルムは、式(1)及び式(2)で表される光学特性を有する。本光学フィルムがかかる光学特性を有するためには、第一の位相差層、第二の位相差層若しくは第三の位相差層が式(1)及び式(2)で表される光学特性を有するか、又は、第一の位相差層、第二の位相差層及び第三の位相差層から選ばれる少なくとも2つを組み合わせることで式(1)及び式(2)で表される光学特性を発現すればよい。
Re(450)/Re(550)≦1.00 (1)
1.00≦Re(650)/Re(550) (2)
本明細書において、Re(450)は波長450nmにおける面内位相差値を表し、Re(550)は波長550nmにおける面内位相差値を表し、Re(650)は波長650nmにおける面内位相差値を表す。
【0009】
[位相差層]
位相差層としては、例えば、重合性液晶を重合させることにより形成される層及び延伸フィルムが挙げられる。位相差層の光学特性は重合性液晶の配向状態または延伸フィルムの延伸方法により調節することができる。
【0010】
<重合性液晶を重合させることにより形成される層>
本発明においては、重合性液晶の光軸が基材平面に対して水平に配向したものを水平配向、重合性液晶の光軸が基材平面に対して垂直に配向したものを垂直配向と定義する。光軸とは、重合性液晶の配向により形成される屈折率楕円体において、光軸に直交する方向で切り出した断面が円となる方向、すなわち3方向の屈折率がすべて等しくなる方向を意味する。
【0011】
重合性液晶としては、棒状の重合性液晶および円盤状の重合性液晶が挙げられる。
棒状の重合性液晶が基材に対して水平配向または垂直配向した場合は、該重合性液晶の光軸は、該重合性液晶の長軸方向と一致する。
円盤状の重合性液晶が配向した場合は、該重合性液晶の光軸は、該重合性液晶の円盤面に対して直交する方向に存在する。
【0012】
延伸フィルムの遅相軸方向は延伸方法により異なり、一軸、二軸または斜め延伸等、その延伸方法に応じて遅相軸および光軸が決定される。
【0013】
重合性液晶を重合させることにより形成される層が面内位相差を発現するためには、重合性液晶を適した方向に配向させればよい。重合性液晶が棒状の場合は、該重合性液晶の光軸を基材平面に対して水平に配向させることで面内位相差が発現する、この場合、光軸方向と遅相軸方向とは一致する。重合性液晶が円盤状の場合は、該重合性液晶の光軸を基材平面に対して水平に配向させることで面内位相差が発現する、この場合、光軸と遅相軸とは直交する。重合性液晶の配向状態は、配向膜と重合性液晶との組み合わせにより調整することができる。
【0014】
位相差層の面内位相差値は、位相差層の厚みによって調整することができる。面内位相差値は式(10)によって決定されることから、所望の面内位相差値(Re(λ))を得るためには、Δn(λ)と膜厚dを調整すればよい。
Re(λ)=d×Δn(λ) (10)
式中、Re(λ)は、波長λnmにおける面内位相差値を表し、dは膜厚を表し、Δn(λ)は波長λnmにおける複屈折率を表わす。
【0015】
複屈折率Δn(λ)は、面内位相差値を測定して、位相差層の厚みで除することで得られる。具体的な測定方法は実施例に示すが、この際、ガラス基板のように基材自体に面内位相差が無いような基材上に製膜したものを測定することで、実質的な位相差層の特性を測定することができる。
【0016】
本発明では、重合性液晶の配向又はフィルムの延伸により形成される屈折率楕円体における3方向の屈折率を、nx、nyおよびnzとして表す。nxは、位相差層が形成する屈折率楕円体において、フィルム平面に対して平行な方向の主屈折率を表す。nyは、位相差層が形成する屈折率楕円体において、フィルム平面に対して平行であり、且つ、該nxの方向に対して直交する方向の屈折率を表す。nzは、位相差層が形成する屈折率楕円体において、フィルム平面に対して垂直な方向の屈折率を表す。
【0017】
棒状の重合性液晶の光軸が、基材平面に対して水平に配向した場合、得られる位相差層の屈折率関係は、nx>ny≒nz(ポジティブAプレート)となり、屈折率楕円体におけるnxの方向の軸と遅相軸が一致する。
【0018】
また、円盤状の重合性液晶の光軸が、基材平面に対して水平に配向した場合、得られる位相差層の屈折率関係は、nx<ny≒nz(ネガティブAプレート)となり、屈折率楕円体におけるnyの方向の軸と遅相軸が一致する。
【0019】
重合性液晶を重合させることにより形成される層が厚み方向の位相差を発現するためには、重合性液晶を適した方向に配向させればよい。本発明において、厚み方向の位相差を発現するとは、式(20)において、Rth(厚み方向の位相差値)が負となる特性を示すものと定義する。Rthは、面内の進相軸を傾斜軸として40度傾斜させて測定される位相差値(R40)と、面内の位相差値(Re)とから算出することができる。すなわち、Rthは、Re、R40、d(位相差層の厚み)、およびn0(位相差層の平均屈折率)から、以下の式(21)~(23)によりnx、ny及びnzを求め、これらを式(20)に代入することで算出することができる。
Rth=[(nx+ny)/2-nz]×d (20)
Re =(nx-ny)×d (21)
R40=(nx-ny')×d/cos(φ) (22)
(nx+ny+nz)/3=n0 (23)
ここで、
φ=sin-1〔sin(40°)/n0〕
ny'=ny×nz/〔ny2×sin2(φ)+nz2×cos2(φ)〕1/2
また、nx、nyおよびnzは前述の定義と同じである。
【0020】
重合性液晶が棒状の場合は、該重合性液晶の光軸を基材平面に対して垂直に配向させることで厚み方向の位相差が発現する。重合性液晶が円盤状の場合は、該重合性液晶の光軸を基材平面に対して水平に配向させることで厚み方向の位相差が発現する。円盤状の重合性液晶の場合は、該重合性液晶の光軸が基材平面に対して平行であるため、Reを決めると、厚みが固定されるため、一義的にRthが決定されるが、棒状の重合性液晶の場合は、該重合性液晶の光軸が基材平面に対して垂直であるため、位相差層の厚みを調節することでReを変化させることなくRthを調節することができる。
【0021】
棒状の重合性液晶の光軸が、基材平面に対して垂直に配向した場合、得られる位相差層の屈折率関係は、nx≒ny<nz(ポジティブCプレート)となり、屈折率楕円体におけるnzの方向の軸と遅相軸方向が一致する。
【0022】
また、円盤状の重合性液晶の光軸が、基材平面に対して平行に配向した場合、得られる位相差層の屈折率関係は、nx<ny≒nz(ネガティブAプレート)となり、屈折率楕円体におけるnyの方向の軸と遅相軸方向が一致する。
【0023】
<重合性液晶>
重合性液晶とは、重合性基を有し、かつ、液晶性を有する化合物である。重合性基とは、重合反応に関与する基を意味し、光重合性基であることが好ましい。ここで、光重合性基とは、後述する光重合開始剤から発生した活性ラジカルや酸などによって重合反応に関与し得る基のことをいう。重合性基としては、ビニル基、ビニルオキシ基、1-クロロビニル基、イソプロペニル基、4-ビニルフェニル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、オキシラニル基、オキセタニル基等が挙げられる。中でも、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニルオキシ基、オキシラニル基及びオキセタニル基が好ましく、アクリロイルオキシ基がより好ましい。重合性液晶が有する液晶性はサーモトロピック性液晶でもリオトロピック液晶でも良く、サーモトロピック液晶を秩序度で分類すると、ネマチック液晶でもスメクチック液晶でも良い。
【0024】
棒状の重合性液晶としては、例えば、下記式(A)で表される化合物(以下、重合性液晶(A)ということがある。)及び、下記式(X)で表される基を含む化合物(以下、重合性液晶(B)ということがある)が挙げられる。
【0025】
[式(A)中、
X
1は、酸素原子、硫黄原子または-NR
1-を表わす。R
1は、水素原子または炭素数1~4のアルキル基を表わす。
Y
1は、置換基を有していてもよい炭素数6~12の1価の芳香族炭化水素基または置換基を有していてもよい炭素数3~12の1価の芳香族複素環式基を表わす。
Q
3およびQ
4は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~20の1価の脂肪族炭化水素基、炭素数3~20の1価の脂環式炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数6~20の1価の芳香族炭化水素基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、-NR
2R
3または-SR
2を表わすか、または、Q
3とQ
4とが互いに結合して、これらが結合する炭素原子とともに芳香環または芳香族複素環を形成する。R
2およびR
3は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表わす。
D
1およびD
2は、それぞれ独立に、単結合、-C(=O)-O-、-C(=S)-O-、-CR
4R
5-、-CR
4R
5-CR
6R
7-、-O-CR
4R
5-、-CR
4R
5-O-CR
6R
7-、-CO-O-CR
4R
5-、-O-CO-CR
4R
5-、-CR
4R
5-O-CO-CR
6R
7-、-CR
4R
5-CO-O-CR
6R
7-または-NR
4-CR
5R
6-または-CO-NR
4-を表わす。
R
4、R
5、R
6およびR
7は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子または炭素数1~4のアルキル基を表わす。
G
1およびG
2は、それぞれ独立に、炭素数5~8の2価の脂環式炭化水素基を表わし、該脂環式炭化水素基を構成するメチレン基は、酸素原子、硫黄原子またはNH-に置き換っていてもよく、該脂環式炭化水素基を構成するメチン基は、第三級窒素原子に置き換っていてもよい。
L
1およびL
2は、それぞれ独立に、1価の有機基を表わし、L
1およびL
2のうちの少なくとも一つは、重合性基を有する。]
【0026】
重合性液晶(A)におけるL1は式(A1)で表される基であると好ましく、また、L2は式(A2)で表される基であると好ましい。
P1-F1-(B1-A1)k-E1- (A1)
P2-F2-(B2-A2)l-E2- (A2)
[式(A1)および式(A2)中、
B1、B2、E1およびE2は、それぞれ独立に、-CR4R5-、-CH2-CH2-、-O-、-S-、-CO-O-、-O-CO-O-、-CS-O-、-O-CS-O-、-CO-NR1-、-O-CH2-、-S-CH2-または単結合を表わす。
A1およびA2は、それぞれ独立に、炭素数5~8の2価の脂環式炭化水素基または炭素数6~18の2価の芳香族炭化水素基を表わし、該脂環式炭化水素基を構成するメチレン基は、酸素原子、硫黄原子またはNH-に置き換っていてもよく、該脂環式炭化水素基を構成するメチン基は、第三級窒素原子に置き換っていてもよい。
kおよびlは、それぞれ独立に、0~3の整数を表わす。
F1およびF2は、炭素数1~12の2価の脂肪族炭化水素基を表わす。
P1は、重合性基を表わす。
P2は、水素原子または重合性基を表わす。
R4およびR5は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子または炭素数1~4のアルキル基を表わす。]
【0027】
好ましい重合性液晶(A)としては、特表2011-207765号公報に記載の化合物が挙げられる。
【0028】
P11-B11-E11-B12-A11-B13- (X)
[式(X)中、P11は、重合性基を表わす。
A11は、2価の脂環式炭化水素基または2価の芳香族炭化水素基を表わす。該2価の脂環式炭化水素基および2価の芳香族炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6アルコキシ基、シアノ基またはニトロ基で置換されていてもよく、該炭素数1~6のアルキル基および該炭素数1~6アルコキシ基に含まれる水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。
B11は、-O-、-S-、-CO-O-、-O-CO-、-O-CO-O-、-CO-NR16-、-NR16-CO-、-CO-、-CS-または単結合を表わす。R16は、水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表わす。
B12およびB13は、それぞれ独立に、-C≡C-、-CH=CH-、-CH2-CH2-、-O-、-S-、-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-O-C(=O)-O-、-CH=N-、-N=CH-、-N=N-、-C(=O)-NR16-、-NR16-C(=O)-、-OCH2-、-OCF2-、-CH2O-、-CF2O-、-CH=CH-C(=O)-O-、-O-C(=O)-CH=CH-または単結合を表わす。
E11は、炭素数1~12のアルカンジイル基を表わし、該アルカンジイル基に含まれる水素原子は、炭素数1~5のアルコキシ基で置換されていてもよく、該アルコキシ基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。また、該アルカンジイル基を構成する-CH2-は、-O-または-CO-に置き換わっていてもよい。]
【0029】
A11の芳香族炭化水素基および脂環式炭化水素基の炭素数は、3~18の範囲であることが好ましく、5~12の範囲であることがより好ましく、5または6であることが特に好ましい。A11としては、シクロヘキサン-1,4-ジイル基、1,4-フェニレン基が好ましい。
【0030】
E11としては、直鎖状の炭素数1~12のアルカンジイル基が好ましい。該アルカンジイル基を構成する-CH2-は、-O-に置き換っていてもよい。
具体的には、メチレン基、エチレン基、プロパン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、へキサン-1,6-ジイル基、へプタン-1,7-ジイル基、オクタン-1,8-ジイル基、ノナン-1,9-ジイル基、デカン-1,10-ジイル基、ウンデカン-1,11-ジイル基およびドデカン-1,12-ジイル基等の炭素数1~12の直鎖状アルカンジイル基;-CH2-CH2-O-CH2-CH2-、-CH2-CH2-O-CH2-CH2-O-CH2-CH2-および-CH2-CH2-O-CH2-CH2-O-CH2-CH2-O-CH2-CH2-等が挙げられる。
B11としては、-O-、-S-、-CO-O-、-O-CO-が好ましく、中でも、-CO-O-がより好ましい。
B12およびB13としては、それぞれ独立に、-O-、-S-、-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-O-C(=O)-O-が好ましく、中でも、-O-または-O-C(=O)-O-がより好ましい。
【0031】
P11で示される重合性基としては、重合反応性、特に光重合反応性が高いという点で、ラジカル重合性基またはカチオン重合性基が好ましく、取り扱いが容易な上、液晶化合物の製造自体も容易であることから、重合性基は、下記の式(P-11)~式(P-15)で表わされる基であることが好ましい。
[式(P-11)~(P-15)中、
R
17~R
21はそれぞれ独立に、炭素数1~6のアルキル基または水素原子を表わす。]
【0032】
式(P-11)~式(P-15)で表わされる基の具体例としては、下記式(P-16)~式(P-20)で表わされる基が挙げられる。
【0033】
P11は、式(P-14)~式(P-20)で表わされる基であることが好ましく、ビニル基、p-スチルベン基、エポキシ基またはオキセタニル基がより好ましい。
P11-B11-で表わされる基が、アクリロイルオキシ基またはメタアクリロイルオキシ基であることがさらに好ましい。
【0034】
重合性液晶(B)としては、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(VI)で表わされる化合物が挙げられる。
P11-B11-E11-B12-A11-B13-A12-B14-A13-B15-A14-B16-E12-B17-P12 (I)
P11-B11-E11-B12-A11-B13-A12-B14-A13-B15-A14-F11 (II)
P11-B11-E11-B12-A11-B13-A12-B14-A13-B15-E12-B17-P12 (III)
P11-B11-E11-B12-A11-B13-A12-B14-A13-F11 (IV)
P11-B11-E11-B12-A11-B13-A12-B14-E12-B17-P12 (V)
P11-B11-E11-B12-A11-B13-A12-F11 (VI)
(式中、
A12~A14はそれぞれ独立に、A11と同義であり、B14~B16はそれぞれ独立に、B12と同義であり、B17は、B11と同義であり、E12は、E11と同義である。
F11は、水素原子、炭素数1~13のアルキル基、炭素数1~13のアルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、トリフルオロメチル基、ジメチルアミノ基、ヒドロキシ基、メチロール基、ホルミル基、スルホ基(-SO3H)、カルボキシ基、炭素数1~10のアルコキシカルボニル基またはハロゲン原子を表わし、該アルキル基およびアルコキシ基を構成する-CH2-は、-O-に置き換っていてもよい。)
【0035】
重合性液晶(B)の具体例としては、液晶便覧(液晶便覧編集委員会編、丸善(株)平成12年10月30日発行)の「3.8.6 ネットワーク(完全架橋型)」、「6.5.1 液晶材料 b.重合性ネマチック液晶材料」に記載された化合物の中で重合性基を有する化合物、特開2010-31223号公報、特開2010-270108号公報、特開2011-6360号公報および特開2011-207765号公報記載の重合性液晶が挙げられる。
【0036】
重合性液晶(B)の具体例としては、下記式(I-1)~式(I-4)、式(II-1)~式(II-4)、式(III-1)~式(III-26)、式(IV-1)~式(IV-26)、式(V-1)~式(V-2)および式(VI-1)~式(VI-6)で表わされる化合物が挙げられる。なお、下記式中、k1およびk2は、それぞれ独立して、2~12の整数を表わす。これらの重合性液晶(B)は、その合成の容易さ、または、入手の容易さの点で、好ましい。
【0037】
【0038】
【0039】
【0040】
【0041】
【0042】
【0043】
【0044】
【0045】
【0046】
円盤状の重合性液晶としては、例えば、式(W)で表される基を含む化合物(以下、重合性液晶(C)ということがある)が挙げられる。
[式(W)中、R
40は、下記式(W-1)~(W-5)を表わす。
【0047】
【0048】
X40およびZ40は、炭素数1~12のアルカンジイル基を表わし、該アルカンジイル基に含まれる水素原子は、炭素数1~5のアルコキシ基で置換されていてもよく、該アルコキシ基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。また、該アルカンジイル基を構成する-CH2-は、-O-または-CO-に置き換わっていてもよい。
【0049】
重合性液晶(C)の具体例としては、液晶便覧(液晶便覧編集委員会編、丸善(株)平成12年10月30日発行)の「6.5.1 液晶材料 b.重合性ネマチック液晶材料
図6.21」に記載された化合物、特開平7-258170号公報、特開平7-30637号公報、特開平7-309807号公報、特開平8-231470号公報記載の重合性液晶が挙げられる。
【0050】
式(1)および式(2)で表される光学特性を有する位相差層は、特定の構造を有する重合性液晶を重合させた場合、特定の構造を有する高分子フィルムを延伸した場合、又は、式(4)、(6)及び式(7)で表される光学特性を有する層と、式(5)、(6)及び式(7)で表される光学特性を有する層とを特定の遅相軸関係で組み合わせることで得られる。
Re(450)/Re(550)≦1.00 (1)
1.00≦Re(650)/Re(550) (2)
100nm<Re(550)<160nm (4)
200nm<Re(550)<320nm (5)
Re(450)/Re(550)≧1.00 (6)
1.00≧Re(650)/Re(550) (7)
【0051】
位相差層が式(1)および式(2)で表される光学特性を有することで、式(1)および式(2)で表される光学特性を有する本光学フィルムを得ることができる。本光学フィルムが式(1)および式(2)で表される光学特性を有すると、可視光域における各波長の光に対して、一様な偏光変換の特性が得られ、有機EL表示装置等の表示装置の黒表示時の光漏れを抑制することができる。
【0052】
前記特定の構造を有する重合性液晶としては、例えば、前記重合性液晶(A)が挙げられる。重合性液晶(A)を、基材平面に対して光軸が水平となるように配向することで、式(1)及び式(2)で表される光学特性を有する位相差層が得られ、さらに、前記式(10)に従って膜厚を調節することで、例えば、式(4)で表される光学特性等の所望の面内位相差値を有する位相差層を得ることができる。
100nm<Re(550)<160nm (4)
【0053】
式(4)、(6)及び式(7)で表される光学特性を有する層と、式(5)、(6)及び式(7)で表される光学特性を有する層とを特定の遅相軸関係で組み合わせる方法としては、周知の方法が挙げられる。
例えば、特開平10-68816号公報および特開平10-90521号公報には、異方性を有する二枚のポリマーフィルムを積層することにより得られる位相差フィルムが開示されている。また、例えば、特開2001-4837号公報、特開2001-21720号公報及び特開2000-206331号公報には、液晶化合物からなる位相差層を少なくとも2層有する位相差フィルムが開示されている。また、当該2つの位相差層のうち、1つをポリマーフィルムとし、1つを液晶化合物からなる位相差層とすることもできる。
【0054】
上記式(6)及び式(7)で表される光学特性を有する位相差層は、周知の方法で得ることができる。すなわち、上記式(1)および式(2)で表される光学特性を有する位相差層を得る方法以外の方法で得られる位相差層は、概ね式(6)及び式(7)で表される光学特性を有する。
【0055】
<延伸フィルム>
延伸フィルムは通常、基材を延伸することで得られる。基材を延伸する方法としては、例えば、基材がロールに巻き取られているロール(巻き取り体)を準備し、かかる巻き取り体から、基材を連続的に巻き出し、巻き出された基材を加熱炉へと搬送する。加熱炉の設定温度は、基材のガラス転移温度近傍(℃)~[ガラス転移温度+100](℃)の範囲、好ましくは、ガラス転移温度近傍(℃)~[ガラス転移温度+50](℃)の範囲とする。当該加熱炉においては、基材の進行方向へ、又は進行方向と直交する方向へ延伸する際に、搬送方向や張力を調整し任意の角度に傾斜をつけて一軸又は二軸の熱延伸処理を行う。延伸の倍率は、通常1.1~6倍であり、好ましくは1.1~3.5倍である。
また、斜め方向に延伸する方法としては、連続的に配向軸を所望の角度に傾斜させることができるものであれば、特に限定されず、公知の延伸方法が採用できる。このような延伸方法は例えば、特開昭50-83482号公報や特開平2-113920号公報に記載された方法を挙げることができる。延伸することでフィルムに位相差性を付与する場合、延伸後の厚みは、延伸前の厚みや延伸倍率によって決定される。
【0056】
厚み方向の位相差を有する延伸フィルムとしては、例えば、特開2008-129465号公報に記載のnx<ny<nzの屈折率関係を有する延伸フィルムや、公知の多層押出フィルムを挙げることができる。nx<ny<nzの屈折率関係を有するフィルムであっても、相対的にnzが大きくなるため、nx≒ny<nzと同等の効果を得ることができる。
【0057】
延伸フィルムの面内位相差値及び、厚み方向の位相差値は、重合性液晶を重合させることにより形成される層と同様に、Δn(λ)及び膜厚dによって調整することができる。
【0058】
前記、式(1)および式(2)で表される光学特性を有する、特定の構造を有する高分子フィルムを延伸した延伸フィルムとしては、例えば、ポリカーネート系樹脂からなる市販の延伸フィルムが挙げられ、具体的には、「ピュアエース(登録商標)WR」(帝人株式会社製)等が挙げられる。
【0059】
前記基材は通常透明基材である。透明基材とは、光、特に可視光を透過し得る透明性を有する基材を意味し、透明性とは、波長380~780nmにわたる光線に対しての透過率が80%以上となる特性をいう。具体的な透明基材としては、透光性樹脂基材が挙げられる。透光性樹脂基材を構成する樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン;ノルボルネン系ポリマーなどの環状オレフィン系樹脂;ポリビニルアルコール;ポリエチレンテレフタレート;ポリメタクリル酸エステル;ポリアクリル酸エステル;トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネートなどのセルロースエステル;ポリエチレンナフタレート;ポリカーボネート;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルケトン;ポリフェニレンスルフィドおよびポリフェニレンオキシドが挙げられる。入手のしやすさや透明性の観点から、ポリエチレンテレフタレート、ポリメタクリル酸エステル、セルロースエステル、環状オレフィン系樹脂またはポリカーボネートが好ましい。
【0060】
セルロースエステルは、セルロースに含まれる水酸基の一部または全部が、エステル化されたものであり、市場から容易に入手することができる。また、セルロースエステル基材も市場から容易に入手することができる。市販のセルロースエステル基材としては、例えば、“フジタック(登録商標)フィルム”(富士写真フイルム(株));“KC8UX2M”、“KC8UY”及び“KC4UY”(コニカミノルタオプト(株))などが挙げられる。
【0061】
ポリメタクリル酸エステル及びポリアクリル酸エステル(以下、ポリメタクリル酸エステル及びポリアクリル酸エステルをまとめて(メタ)アクリル系樹脂ということがある。
)は、市場から容易に入手できる。
【0062】
(メタ)アクリル系樹脂としては、例えば、メタクリル酸アルキルエステル又はアクリル酸アルキルエステルの単独重合体や、メタクリル酸アルキルエステルとアクリル酸アルキルエステルとの共重合体などが挙げられる。メタクリル酸アルキルエステルとして具体的には、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレートなどが、またアクリル酸アルキルエステルとして具体的には、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレートなどがそれぞれ挙げられる。かかる(メタ)アクリル系樹脂には、汎用の(メタ)アクリル系樹脂として市販されているものが使用できる。(メタ)アクリル系樹脂として、耐衝撃(メタ)アクリル樹脂と呼ばれるものを使用してもよい。
【0063】
さらなる機械的強度向上のために、(メタ)アクリル系樹脂にゴム粒子を含有させることも好ましい。ゴム粒子は、アクリル系のものが好ましい。ここで、アクリル系ゴム粒子とは、ブチルアクリレートや2-エチルヘキシルアクリレートのようなアクリル酸アルキルエステルを主成分とするアクリル系モノマーを、多官能モノマーの存在下に重合させて得られるゴム弾性を有する粒子である。アクリル系ゴム粒子は、このようなゴム弾性を有する粒子が単層で形成されたものであってもよいし、ゴム弾性層を少なくとも一層有する多層構造体であってもよい。多層構造のアクリル系ゴム粒子としては、上記のようなゴム弾性を有する粒子を核とし、その周りを硬質のメタクリル酸アルキルエステル系重合体で覆ったもの、硬質のメタクリル酸アルキルエステル系重合体を核とし、その周りを上記のようなゴム弾性を有するアクリル系重合体で覆ったもの、また硬質の核の周りをゴム弾性のアクリル系重合体で覆い、さらにその周りを硬質のメタクリル酸アルキルエステル系重合体で覆ったものなどが挙げられる。弾性層で形成されるゴム粒子は、その平均直径が通常50~400nm程度の範囲にある。
【0064】
(メタ)アクリル系樹脂におけるゴム粒子の含有量は、(メタ)アクリル系樹脂100質量部あたり、通常5~50質量部程度である。(メタ)アクリル系樹脂及びアクリル系ゴム粒子は、それらを混合した状態で市販されているので、その市販品を用いることができる。アクリル系ゴム粒子が配合された(メタ)アクリル系樹脂の市販品の例として、住友化学(株)から販売されている“HT55X”や“テクノロイ S001”などが挙げられる。“テクノロイ S001”は、フィルムの形で販売されている。
【0065】
環状オレフィン系樹脂は、市場から容易に入手できる。市販の環状オレフィン系樹脂としては、“Topas”(登録商標)[Ticona社(独)]、“アートン”(登録商標)[JSR(株)]、“ゼオノア(ZEONOR)”(登録商標)[日本ゼオン(株)]、“ゼオネックス(ZEONEX)”(登録商標)[日本ゼオン(株)]および“アペル”(登録商標)[三井化学(株)]が挙げられる。このような環状オレフィン系樹脂を、例えば、溶剤キャスト法、溶融押出法などの公知の手段により製膜して、基材とすることができる。また、市販されている環状オレフィン系樹脂基材を用いることもできる。市販の環状オレフィン系樹脂基材としては、“エスシーナ”(登録商標)[積水化学工業(株)]、“SCA40”(登録商標)[積水化学工業(株)]、“ゼオノアフィルム”(登録商標)[オプテス(株)]および“アートンフィルム”(登録商標)[JSR(株)]が挙げられる。
【0066】
環状オレフィン系樹脂が、環状オレフィンと、鎖状オレフィンやビニル基を有する芳香族化合物との共重合体である場合、環状オレフィンに由来する構造単位の含有割合は、共重合体の全構造単位に対して、通常50モル%以下、好ましくは15~50モル%の範囲である。鎖状オレフィンとしては、エチレンおよびプロピレンが挙げられ、ビニル基を有する芳香族化合物としては、スチレン、α-メチルスチレンおよびアルキル置換スチレンが挙げられる。環状オレフィン系樹脂が、環状オレフィンと、鎖状オレフィンと、ビニル基を有する芳香族化合物との三元共重合体である場合、鎖状オレフィンに由来する構造単位の含有割合は、共重合体の全構造単位に対して、通常5~80モル%であり、ビニル基を有する芳香族化合物に由来する構造単位の含有割合は、共重合体の全構造単位に対して、通常5~80モル%である。このような三元共重合体は、その製造において、高価な環状オレフィンの使用量を比較的少なくすることができるという利点がある。
【0067】
[第一の位相差層]
第一の位相差層は、好ましくは式(4)で表される光学特性を有し、より好ましくは式(4-1)で表される光学特性を有する。面内位相差値Re(550)は、上記位相差層の面内位相差値の調整方法と同じ方法で調整することができる。
100nm<Re(550)<160nm (4)
130nm<Re(550)<150nm (4-1)
【0068】
さらに、第一の位相差層は、好ましくは、式(1)及び式(2)で表される光学特性を有する。かかる光学特性は、上記位相差層と同様の方法で得ることができる。
Re(450)/Re(550)≦1.00 (1)
1.00≦Re(650)/Re(550) (2)
【0069】
また、第一の位相差層は、好ましくは、式(4)、(6)及び式(7)で表される光学特性を有する層Aと、式(5)、(6)及び式(7)で表される光学特性を有する層Bとを有する。かかる光学特性は、上記位相差層と同じの方法で得ることができる。
100nm<Re(550)<160nm (4)
200nm<Re(550)<320nm (5)
Re(450)/Re(550)≧1.00 (6)
1.00≧Re(650)/Re(550) (7)
層Aは好ましくは式(4-1)で表される光学特性を有する層であり、層Bは好ましくは式(5-1)で表される光学特性を有する層である。
130nm<Re(550)<150nm (4-1)
265nm<Re(550)<285nm (5-1)
【0070】
また、本発明の光学フィルムが第三の位相差層を有する場合、第一の位相差層は、好ましくは、式(6)及び(7)で表される光学特性を有する。かかる光学特性は、上記位相差層と同じ方法で得ることができる。
Re(450)/Re(550)≧1.00 (6)
1.00≧Re(650)/Re(550) (7)
【0071】
第一の位相差層は、好ましくは1以上の重合性液晶を重合させることにより形成されるコーティング層である。第一の位相差層が1つの位相差層からなり、式(1)及び式(2)で表される光学特性を有する場合、かかる位相差層は重合性液晶(A)を重合させることにより形成されるコーティング層であると好ましい。第一の位相差層が式(6)及び式(7)で表される光学特性を有する場合、かかる位相差層は重合性液晶(B)を重合させることにより形成されるコーティング層であると好ましい。
【0072】
層Aは、好ましくは重合性液晶(B)を重合させることにより形成されるコーティング層である。層Bは、好ましくは重合性液晶(C)を重合させることにより形成されるコーティング層である。
【0073】
第一の位相差層が延伸フィルムの場合、その厚さは、通常300μm以下であり、好ましくは5μm以上100μm以下であり、より好ましくは10μm以上50μm以下である。第一の位相差層が重合性液晶を重合させることにより形成される層の場合、その厚さは、通常20μm以下であり、好ましくは5μm以下であり、より好ましくは0.5μm以上3μm以下である。第一の位相差層の厚さは、干渉膜厚計、レーザー顕微鏡または触針式膜厚計による測定によって求めることができる。
層Aが延伸フィルムの場合、その厚さは、通常150μm以下であり、好ましくは5μm以上100μm以下であり、より好ましくは10μm以上50μm以下である。層Aが重合性液晶を重合させることにより形成される層の場合、その厚さは、通常10μm以下であり、好ましくは5μm以下であり、より好ましくは0.5μm以上3μm以下である。層Aの厚さは、第一の位相差層と同じ方法によって求めることができる。
層Bが延伸フィルムの場合、その厚さは、通常150μm以下であり、好ましくは5μm以上100μm以下であり、より好ましくは10μm以上50μm以下である。層Bが重合性液晶を重合させることにより形成される層の場合、その厚さは、通常20μm以下であり、好ましくは10μm以下であり、より好ましくは0.5μm以上5μm以下である。層Bの厚さは、第一の位相差層と同じ方法によって求めることができる。
【0074】
[第二の位相差層]
第二の位相差層は、式(3)で表される光学特性を有する。
nx≒ny<nz (3)
【0075】
第二の位相差層の面内位相差値Re(550)は通常0~10nmの範囲であり、好ましくは0~5nmの範囲である。厚み方向の位相差値Rthは、通常-10~-300nmの範囲であり、好ましくは-20~-200nmの範囲である。かかる面内位相差値Re(550)及び厚み方向の位相差値Rthは、上記位相差層と同じ方法で調整することができる。
【0076】
第二の位相差層は、好ましくは1以上の重合性液晶を重合することで形成されるコーティング層である。より好ましくは重合性液晶(B)を重合することで形成されるコーティング層である。
【0077】
第二の位相差層が延伸フィルムの場合、その厚さは、通常300μm以下であり、好ましくは5μm以上100μm以下であり、より好ましくは10μm以上50μm以下である。第二の位相差層が重合性液晶を重合させることにより形成される層の場合、その厚さは、通常10μm以下であり、好ましくは5μm以下であり、より好ましくは0.3μm以上3μm以下である。第二の位相差層の厚さは、第一の位相差層と同じ方法で求めることができる。また、第一の位相差層及び第二の位相差層の厚さは、それぞれ5μm以下であると好ましい。
【0078】
[第三の位相差層]
第三の位相差層は、式(5)で表される光学特性を有し、好ましくは式(5-1)で表される光学特性を有する。面内位相差値Re(550)は、上記位相差層の面内位相差値の調整方法と同じ方法で調整することができる。
200nm<Re(550)<320nm (5)
265nm<Re(550)<285nm (5-1)
【0079】
また、第三の位相差層は、好ましくは式(6)及び(7)で表される光学特性を有する。かかる光学特性は、上記位相差層と同様の方法で得ることができる。
Re(450)/Re(550)≧1.00 (6)
1.00≧Re(650)/Re(550) (7)
【0080】
第三の位相差層は、好ましくは1以上の重合性液晶を重合することで形成されるコーティング層である。より好ましくは重合性液晶(B)又は(C)を重合することで形成されるコーティング層である。
【0081】
第三の位相差層が延伸フィルムの場合、その厚さは、通常300μm以下であり、好ましくは5μm以上100μm以下であり、より好ましくは10μm以上50μm以下である。第三の位相差層が重合性液晶を重合させることにより形成される層の場合、その厚さは、通常10μm以下であり、好ましくは5μm以下であり、より好ましくは0.5μm以上5μm以下である。第三の位相差層の厚さは、第一の位相差層と同じ方法で求めることができる。
【0082】
<基材>
本発明の光学フィルムは、好ましくは基材を有する。基材としては前記したものと同じものが挙げられる。
【0083】
配向膜、第一の位相差層、第二の位相差層及び第三の位相差層が形成される側の基材の面には、配向膜又は位相差層を形成する前に、表面処理を施してもよい。表面処理の方法としては、真空下又は大気圧下、コロナ又はプラズマで基材の表面を処理する方法、基材表面をレーザー処理する方法、基材表面をオゾン処理する方法、基材表面をケン化処理する方法又は基材表面を火炎処理する方法、基材表面にカップリング剤を塗布するプライマー処理する方法、反応性モノマーや反応性を有するポリマーを基材表面に付着させた後、放射線、プラズマ又は紫外線を照射して反応させるグラフト重合法等が挙げられる。中でも、真空下や大気圧下で、基材表面をコロナ又はプラズマ処理する方法が好ましい。
【0084】
コロナ又はプラズマで基材の表面処理を行う方法としては、
大気圧近傍の圧力下で、対向した電極間に基材を設置し、コロナ又はプラズマを発生させて、基材の表面処理を行う方法、
対向した電極間にガスを流し、電極間でガスをプラズマ化し、プラズマ化したガスを基材に吹付ける方法、及び、
低圧条件下で、グロー放電プラズマを発生させて、基材の表面処理を行う方法が挙げられる。
【0085】
中でも、大気圧近傍の圧力下で、対向した電極間に基材を設置し、コロナ又はプラズマを発生させて、基材の表面処理を行う方法、又は、対向した電極間にガスを流し、電極間でガスをプラズマ化し、プラズマ化したガスを基材に吹付ける方法が好ましい。かかるコロナ又はプラズマによる表面処理は、通常、市販の表面処理装置により行われる。
【0086】
基材は、位相差が小さい基材が好ましい。位相差が小さい基材としては、ゼロタック(登録商標)(コニカミノルタオプト(株))、Zタック(富士フィルム(株))などの位相差を有しないセルロースエステルフィルムが挙げられる。また、未延伸の環状オレフィン系樹脂基材も好ましい。
【0087】
また、配向膜、第一の位相差層、第二の位相差層及び第三の位相差層が形成されていない基材の面には、ハードコート処理、帯電防止処理等がなされてもよい。また、性能に影響しない範囲で、紫外線吸収剤などの添加剤を含んでいてもよい。
【0088】
基材の厚みは、薄すぎると強度が低下し、加工性に劣る傾向があるため、通常5~300μmであり、好ましくは10~200μmである。
【0089】
<重合性液晶組成物>
重合性液晶を重合させることにより形成される層(位相差層)は、通常、1以上の重合性液晶を含有する組成物(以下、重合性液晶組成物ということがある。)を、基材、配向膜、保護層又は位相差層の上に塗布し、得られた塗膜中の重合性液晶を重合させることにより形成される。
【0090】
重合性液晶組成物は、通常溶剤を含み、溶剤としては、重合性液晶を溶解し得る溶剤であって、且つ、重合性液晶の重合反応に不活性な溶剤がより好ましい。
具体的な溶剤としては、メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、フェノール等のアルコール溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、メチルアミルケトン、メチルイソブチルケトン、N-メチル-2-ピロリジノン等のケトン溶剤;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の非塩素化脂肪族炭化水素溶剤;トルエン、キシレン等の非塩素化芳香族炭化水素溶剤;アセトニトリル等のニトリル溶剤;プロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル溶剤;およびクロロホルム、クロロベンゼン等の塩素化炭化水素溶剤;が挙げられる。これら他の溶剤は、単独で用いてもよいし、組み合わせてもよい。
【0091】
重合性液晶組成物における溶剤の含有量は、通常、固形分100質量部に対して、10質量部~10000質量部が好ましく、より好ましくは50質量部~5000質量部である。固形分とは、重合性液晶組成物から溶剤を除いた成分の合計を意味する。
【0092】
重合性液晶組成物の塗布は、通常、スピンコ-ティング法、エクストルージョン法、グラビアコーティング法、ダイコーティング法、スリットコーティング法、バーコーティング法、アプリケータ法などの塗布法や、フレキソ法などの印刷法などの公知の方法によって行われる。塗布後、通常、得られた塗布膜中に含まれる重合性液晶が重合しない条件で溶剤を除去することにより、乾燥被膜が形成される。乾燥方法としては、自然乾燥法、通風乾燥法、加熱乾燥および減圧乾燥法が挙げられる。
【0093】
<配向膜>
本発明における配向膜とは、重合性液晶を所望の方向に液晶配向させる、配向規制力を有するものである。
配向膜としては、重合性液晶組成物の塗布などにより溶解しない溶剤耐性を有し、また、溶剤の除去や重合性液晶の配向のための加熱処理における耐熱性を有するものが好ましい。かかる配向膜としては、配向性ポリマーを含む配向膜、光配向膜及び表面に凹凸パターンや複数の溝を形成し配向させるグルブ配向膜等が挙げられる。
【0094】
配向性ポリマーとしては、分子内にアミド結合を有するポリアミドやゼラチン類、分子内にイミド結合を有するポリイミドおよびその加水分解物であるポリアミック酸、ポリビニルアルコール、アルキル変性ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリオキサゾール、ポリエチレンイミン、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸およびポリアクリル酸エステル類が挙げられる。中でも、ポリビニルアルコールが好ましい。2種以上の配向性ポリマーを組み合わせて用いてもよい。
【0095】
配向性ポリマーを含む配向膜は、通常、配向性ポリマーが溶剤に溶解した組成物(以下、配向性ポリマー組成物ということがある。)を基材に塗布し、溶剤を除去する、又は、配向性ポリマー組成物を基材に塗布し、溶剤を除去し、ラビングする(ラビング法)ことで得られる。
【0096】
前記溶剤としては、水、メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、乳酸エチルなどのエステル溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン溶剤、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶剤、アセトニトリル等のニトリル溶剤、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル溶剤、および、クロロホルム、クロロベンゼン等の塩素化炭化水素溶剤が挙げられる。これら溶剤は、単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0097】
配向性ポリマー組成物中の配向性ポリマーの濃度は、配向性ポリマー材料が、溶剤に完溶できる範囲であればよいが、溶液に対して固形分換算で0.1~20%が好ましく、0.1から10%程度がさらに好ましい。
【0098】
配向性ポリマー組成物として、市販の配向膜材料をそのまま使用してもよい。市販の配向膜材料としては、サンエバー(登録商標、日産化学工業(株)製)、オプトマー(登録商標、JSR(株)製)などが挙げられる。
【0099】
配向性ポリマー組成物を基材に塗布する方法としては、スピンコ-ティング法、エクストルージョン法、グラビアコーティング法、ダイコーティング法、スリットコーティング法、バーコーティング法、アプリケータ法などの塗布法、フレキソ法などの印刷法などの公知の方法が挙げられる。本光学フィルムを、後述するRoll to Roll形式の連続的製造方法により製造する場合、当該塗布方法には通常、グラビアコーティング法、ダイコーティング法又はフレキソ法などの印刷法が採用される。
【0100】
配向性ポリマー組成物に含まれる溶剤を除去する方法としては、自然乾燥法、通風乾燥法、加熱乾燥及び減圧乾燥法等が挙げられる。
【0101】
配向膜に配向規制力を付与するために、必要に応じてラビングを行うことができる(ラビング法)。
【0102】
ラビング法により配向規制力を付与する方法としては、ラビング布が巻きつけられ、回転しているラビングロールに、配向性ポリマー組成物を基材に塗布しアニールすることで基材表面に形成された配向性ポリマーの膜を、接触させる方法が挙げられる。
【0103】
配向膜に配向規制力を付与するために、必要に応じて光配向を行うことができる(光配向法)。
【0104】
光配向膜は、通常、光反応性基を有するポリマー又はモノマーと溶剤とを含む組成物(以下、「光配向膜形成用組成物」ということがある。)を基材に塗布し、光(好ましくは、偏光UV)を照射することで得られる。光配向膜は、照射する光の偏光方向を選択することにより、配向規制力の方向を任意に制御できる点でより好ましい。
【0105】
光反応性基とは、光照射することにより液晶配向能を生じる基をいう。具体的には、光照射により生じる分子の配向誘起または異性化反応、二量化反応、光架橋反応もしくは光分解反応等の液晶配向能の起源となる光反応に関与する基が挙げられる。中でも、二量化反応または光架橋反応に関与する基が、配向性に優れる点で好ましい。光反応性基として、不飽和結合、特に二重結合を有する基が好ましく、炭素-炭素二重結合(C=C結合)、炭素-窒素二重結合(C=N結合)、窒素-窒素二重結合(N=N結合)および炭素-酸素二重結合(C=O結合)からなる群より選ばれる少なくとも一つを有する基が特に好ましい。
【0106】
C=C結合を有する光反応性基としては、ビニル基、ポリエン基、スチルベン基、スチルバゾ-ル基、スチルバゾリウム基、カルコン基およびシンナモイル基が挙げられる。C=N結合を有する光反応性基としては、芳香族シッフ塩基、芳香族ヒドラゾンなどの構造を有する基が挙げられる。N=N結合を有する光反応性基としては、アゾベンゼン基、アゾナフタレン基、芳香族複素環アゾ基、ビスアゾ基、ホルマザン基、および、アゾキシベンゼン構造を有する基が挙げられる。C=O結合を有する光反応性基としては、ベンゾフェノン基、クマリン基、アントラキノン基およびマレイミド基が挙げられる。これらの基は、アルキル基、アルコキシ基、アリ-ル基、アリルオキシ基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、ハロゲン化アルキル基などの置換基を有していてもよい。
【0107】
中でも、光二量化反応に関与する光反応性基が好ましく、光配向に必要な偏光照射量が比較的少なく、かつ、熱安定性や経時安定性に優れる光配向膜が得られやすいという点で、シンナモイル基およびカルコン基が好ましい。光反応性基を有するポリマーとしては、当該ポリマー側鎖の末端部が桂皮酸構造となるようなシンナモイル基を有するものが特に好ましい。
【0108】
光配向膜形成用組成物を基材上に塗布することにより、基材上に光配向誘起層を形成することができる。該組成物に含まれる溶剤としては、上述の配向性ポリマー組成物に含まれる溶剤と同様のものが挙げられ、光反応性基を有するポリマーあるいはモノマーの溶解性に応じて適宜選択することができる。
【0109】
光配向膜形成用組成物中の光反応性基を有するポリマーまたはモノマーの含有量は、ポリマーまたはモノマーの種類や目的とする光配向膜の厚みによって適宜調節できるが、少なくとも0.2質量%とすることが好ましく、0.3~10質量%の範囲がより好ましい。光配向膜の特性が著しく損なわれない範囲で、光配向膜形成用組成物は、ポリビニルアルコ-ルやポリイミドなどの高分子材料や光増感剤を含んでいてもよい。
【0110】
光配向膜形成用組成物を基材に塗布する方法としては、配向性ポリマー組成物を基材に塗布する方法と同様の方法が挙げられる。塗布された光配向膜形成用組成物から、溶剤を除去する方法としては、例えば、配向性ポリマー組成物から溶剤を除去する方法と同じ方法が挙げられる。
【0111】
偏光を照射するには、基板上に塗布された光配向膜形成用組成物から、溶剤を除去したものに直接、偏光UVを照射する形式でも、基材側から偏光を照射し、偏光を透過させて照射する形式でもよい。また、当該偏光は、実質的に平行光であると特に好ましい。照射する偏光の波長は、光反応性基を有するポリマー又はモノマーの光反応性基が、光エネルギーを吸収し得る波長領域のものがよい。具体的には、波長250~400nmの範囲のUV(紫外線)が特に好ましい。当該偏光照射に用いる光源としては、キセノンランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、KrF、ArFなどの紫外光レ-ザ-などが挙げられ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ及びメタルハライドランプがより好ましい。これらのランプは、波長313nmの紫外線の発光強度が大きいため好ましい。前記光源からの光を、適当な偏光子を通過して照射することにより、偏光UVを照射することができる。かかる偏光子としては、偏光フィルターやグラントムソン、グランテ-ラ-などの偏光プリズムやワイヤーグリッドタイプの偏光子を用いることができる。
【0112】
なお、ラビング又は偏光照射を行う時に、マスキングを行えば、液晶配向の方向が異なる複数の領域(パターン)を形成することもできる。
【0113】
グルブ配向膜は、膜表面の凹凸パターンまたは複数の溝によって、液晶配向が得られる膜である。H.V.ケネルらによって、複数の等間隔に並んだ直線状のグルブ(溝)を有する基材に液晶分子を置いた場合、その溝に沿った方向に液晶分子が配向するという事実が報告されている(Physical Review A24(5)、2713ページ、1981年)。
【0114】
グルブ配向膜を得る具体的な例としては、感光性ポリイミド表面に周期的なパターン形状のスリットを有する露光用マスクを介して露光後、現像およびリンス処理を行って不要なポリイミド膜を除去し凹凸パターンを形成する方法、表面に溝を有する板状の原盤にUV硬化樹脂層を形成し、樹脂層を基材フィルムへ移してから硬化する方法、UV硬化樹脂層を形成した基材フィルムを搬送し、複数の溝を有するロール状の原盤をUV硬化樹脂層表面に押し当てて凹凸を形成後硬化する方法等が挙げられ、特開平6-34976号公報、特開2011-242743号公報記載の方法等を用いることができる。
【0115】
上記方法の中でも、複数の溝を有するロール状の原盤をUV硬化樹脂層表面に押し当てて凹凸を形成後硬化する方法が好ましい。ロール状原盤としては、耐久性の観点からステンレス(SUS)鋼を用いることができる。
【0116】
UV硬化樹脂としては、単官能アクリレートの重合体、多官能アクリレートの重合体またはこれらの混合物の重合体を用いることができる。
単官能アクリレートとは、アクリロイルオキシ基(CH2=CH-COO-)及びメタクリロイルオキシ基(CH2=C(CH3)-COO-)からなる群より選ばれる基(以下、(メタ)アクリロイルオキシ基と記すこともある。)を分子内に1個有する化合物である。
【0117】
(メタ)アクリロイルオキシ基を1個有する単官能アクリレートとしては、炭素数4から16のアルキル(メタ)アクリレート、炭素数2から14のβカルボキシアルキル(メタ)アクリレート、炭素数2から14のアルキル化フェニル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート及びイソボニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0118】
多官能アクリレートとは、通常、(メタ)アクリロイルオキシ基を分子内に2個乃至6個有する化合物である。
【0119】
(メタ)アクリロイルオキシ基を2個有する2官能アクリレートとしては、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート;1,3-ブタンジオール(メタ)アクリレート;1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート;ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート;トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート;テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコールジアクリレート;ビスフェノールAのビス(アクリロイロキシエチル)エーテル;エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート;プロポキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート;エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート及び3-メチルペンタンジオールジ(メタ)アクリレートなどが例示される。
【0120】
(メタ)アクリロイルオキシ基を3個乃至6個有する多官能アクリレートとしては、
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート;トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート;エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート;プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート;ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート;トリペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート;トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート;トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート;トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート;トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート;
ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートと酸無水物との反応物;ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートと酸無水物との反応物;
トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレートと酸無水物との反応物;
カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート;カプロラクトン変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート;カプロラクトン変性トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート;カプロラクトン変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート;カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート;カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート;カプロラクトン変性トリペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート;カプロラクトン変性トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート;カプロラクトン変性トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート;カプロラクトン変性トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート;カプロラクトン変性トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート;カプロラクトン変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートと酸無水物との反応物;カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートと酸無水物との反応物、及びカプロラクトン変性トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレートと酸無水物などが挙げられる。なお、ここに示した多官能アクリレートの具体例において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。また、カプロラクトン変性とは、(メタ)アクリレート化合物のアルコール由来部位と(メタ)アクリロイルオキシ基との間に、カプロラクトンの開環体、又は、開環重合体が導入されていることを意味する。
【0121】
かかる多官能アクリレートには市販品を用いることもできる。
かかる市販品としては、A-DOD-N、A-HD-N、A-NOD-N、APG-100、APG-200、APG-400、A-GLY-9E、A-GLY-20E、A-TMM-3、A-TMPT、AD-TMP、ATM-35E、A-TMMT、A-9550、A-DPH、HD-N、NOD-N、NPG、TMPT(新中村化学株式会社製)、”ARONIX M-220”、同”M-325”、同”M-240”、同”M-270”同”M-309”同”M-310”、同”M-321”、同”M-350” 、同”M-360” 、同”M-305” 、同”M-306” 、同”M-450” 、同”M-451” 、同”M-408” 、同”M-400” 、同”M-402” 、同”M-403” 、同”M-404” 、同”M-405” 、同”M-406”(東亜合成株式会社製)、”EBECRYL11”、同”145” 、同”150” 、同”40” 、同”140” 、同”180” 、DPGDA、HDDA、TPGDA、HPNDA、PETIA、PETRA、TMPTA、TMPEOTA、DPHA、EBECRYLシリーズ(ダイセル・サイテック株式会社製)などを挙げることができる。
【0122】
グルブ配向膜の凹凸としては、凸部の幅は0.05~5μmであることが好ましく、凹部の幅は0.1~5μmであることが好ましく、凹凸の段差の深さは2μm以下、好ましくは0.01~1μm以下であることが好ましい。この範囲であれば、配向乱れの小さな液晶配向を得ることができる。
【0123】
配向膜の厚さは、通常10nm~10000nmの範囲であり、好ましくは10nm~1000nmの範囲であり、より好ましくは500nm以下であり、さらに好ましくは10nm~500nmの範囲である。
【0124】
重合性液晶の液晶配向は、配向膜及び重合性液晶の性質によって制御される。
例えば、配向膜が配向規制力として水平配向規制力を発現させる材料であれば、重合性液晶は水平配向またはハイブリッド配向を形成することができ、垂直配向規制力を発現させる材料であれば、重合性液晶は垂直配向または傾斜配向を形成することができる。
配向規制力は、配向膜が配向性ポリマーから形成されている場合は、表面状態やラビング条件によって任意に調整することが可能であり、光配向性ポリマーから形成されている場合は、偏光照射条件等によって任意に調整することが可能である。また、重合性液晶の、表面張力や液晶性等の物性を選択することにより、液晶配向を制御することもできる。
【0125】
重合性液晶の重合は、重合性官能基を有する化合物を重合させる公知の方法により行うことができる。具体的には、熱重合および光重合が挙げられ、重合の容易さの観点から、光重合が好ましい。光重合により重合性液晶を重合させる場合、光重合開始剤を含有した重合性液晶組成物を塗布し、乾燥して得られる乾燥被膜中の重合性液晶を液晶相状態にした後、該液晶状態を保持したまま、光重合させることが好ましい。
【0126】
光重合は、通常、乾燥被膜に光を照射することにより実施される。照射する光としては、乾燥被膜に含まれる光重合開始剤の種類、重合性液晶の種類(特に、重合性液晶が有する光重合基の種類)およびその量に応じて、適宜選択され、具体的には、可視光、紫外光およびレーザー光からなる群より選択される光、活性電子線が挙げられる。中でも、重合反応の進行を制御し易い点、および、光重合装置として当分野で広範に用いられているものが使用できるという点で、紫外光が好ましく、紫外光によって光重合可能なように、重合性液晶と光重合開始剤との種類を選択することが好ましい。また、重合時に、適切な冷却手段により乾燥被膜を冷却しながら、光照射することで、重合温度を制御することもできる。このような冷却手段の採用により、より低温で重合性液晶の重合を実施すれば、基材が比較的耐熱性が低いものを用いたとしても、適切に位相差層を形成できる。光重合の際、マスキングや現像を行うなどによって、パターニングされた位相差層を得ることもできる。
【0127】
重合性液晶組成物は、反応性添加剤を含んでもよい。
反応性添加剤としては、その分子内に炭素-炭素不飽和結合と活性水素反応性基とを有するものが好ましい。なお、ここでいう「活性水素反応性基」とは、カルボキシル基(-COOH)、水酸基(-OH)、アミノ基(-NH2)等の活性水素を有する基に対して反応性を有する基を意味し、グリシジル基、オキサゾリン基、カルボジイミド基、アジリジン基、イミド基、イソシアネート基、チオイソシアネート基、無水マレイン酸基等がその代表例である。反応性添加剤が有する、炭素-炭素不飽和結合及び活性水素反応性基の個数は、通常、それぞれ1~20個であり、好ましくはそれぞれ1~10個である。
【0128】
反応性添加剤において、活性水素反応性基は少なくとも2つ存在すると好ましく、この場合、複数存在する活性水素反応性基は同一でも、異なるものであってもよい。
【0129】
反応性添加剤が有する炭素-炭素不飽和結合とは、炭素-炭素二重結合又は炭素-炭素三重結合、あるいはそれらの組み合わせであってよいが、炭素-炭素二重結合であると好ましい。中でも、反応性添加剤としては、ビニル基及び/又は(メタ)アクリル基として炭素-炭素不飽和結合を含むと好ましい。さらに、活性水素反応性基が、エポキシ基、グリシジル基及びイソシアネート基からなる群から選ばれる少なくとも1種であるものが好ましく、アクリル基と、イソシアネート基とを有する反応性添加剤が特に好ましい。
【0130】
反応性添加剤の具体例としては、メタクリロキシグリシジルエーテルやアクリロキシグリシジルエーテルなどの、(メタ)アクリル基とエポキシ基とを有する化合物;オキセタンアクリレートやオキセタンメタクリレートなどの、(メタ)アクリル基とオキセタン基とを有する化合物;ラクトンアクリレートやラクトンメタクリレートなどの、(メタ)アクリル基とラクトン基とを有する化合物;ビニルオキサゾリンやイソプロペニルオキサゾリンなどの、ビニル基とオキサゾリン基とを有する化合物;イソシアナトメチルアクリレート、イソシアナトメチルメタクリレート、2-イソシアナトエチルアクリレート及び20イソシアナトエチルメタクリレートなどの、(メタ)アクリル基とイソシアネート基とを有する化合物のオリゴマー等が挙げられる。また、メタクリル酸無水物、アクリル酸無水物、無水マレイン酸及びビニル無水マレイン酸などの、ビニル基やビニレン基と酸無水物とを有する化合物などが挙げられる。中でも、メタクリロキシグリシジルエーテル、アクリロキシグリシジルエーテル、イソシアナトメチルアクリレート、イソシアナトメチルメタクリレート、ビニルオキサゾリン、2-イソシアナトエチルアクリレート、2-イソシアナトエチルメタクリレート及び前記のオリゴマーが好ましく、イソシアナトメチルアクリレート、2-イソシアナトエチルアクリレート及び前記のオリゴマーが特に好ましい。
【0131】
具体的には、下記式(Y)で表される化合物が好ましい。
[式(Y)中、
nは1~10までの整数を表わし、R
1’は、炭素数2~20の2価の脂肪族又は脂環式炭化水素基、或いは炭素数5~20の2価の芳香族炭化水素基を表わす。各繰り返し単位にある2つのR
2’は、一方が-NH-であり、他方が>N-C(=O)-R
3’で示される基である。R
3’は、水酸基又は炭素-炭素不飽和結合を有する基を表す。
式(Y)中のR
3’のうち、少なくとも1つのR
3’は炭素-炭素不飽和結合を有する基である。]
【0132】
前記式(Y)で表される反応性添加剤の中でも、下記式(YY)で表される化合物(以下、化合物(YY)という場合がある。)が特に好ましいものである(なお、nは前記と同じ意味である)。
化合物(YY)には、市販品をそのまま又は必要に応じて精製して用いることができる。市販品としては、例えば、Laromer(登録商標)LR-9000(BASF社製)が挙げられる。
【0133】
重合性液晶組成物が反応性添加剤を含有する場合、その含有量は、重合性液晶100質量部に対して、通常0.1質量部~30質量部であり、好ましくは0.1質量部~5質量部である。
【0134】
重合性液晶組成物は、1種以上のレベリング剤を含有することが好ましい。レベリング剤は、重合性液晶組成物の流動性を調整し、重合性液晶組成物を塗布することにより得られる塗布膜をより平坦にする機能を有し、具体的には、界面活性剤が挙げられる。レベリング剤としては、ポリアクリレート化合物を主成分とするレベリング剤およびフッ素原子含有化合物を主成分とするレベリング剤からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0135】
ポリアクリレート化合物を主成分とするレベリング剤としては、”BYK-350”、”BYK-352”、”BYK-353”、”BYK-354”、”BYK-355”、”BYK-358N”、”BYK-361N”、”BYK-380”、”BYK-381”および”BYK-392”[BYK Chemie社]が挙げられる。
【0136】
フッ素原子含有化合物を主成分とするレベリング剤としては、”メガファック(登録商標)R-08”、同”R-30”、同”R-90”、同”F-410”、同”F-411”、同”F-443”、同”F-445”、同”F-470”、同”F-471”、同”F-477”、同”F-479”、同”F-482”および同”F-483”[DIC(株)];”サーフロン(登録商標)S-381”、同”S-382”、同”S-383”、同”S-393”、同”SC-101”、同”SC-105”、”KH-40”および”SA-100”[AGCセイミケミカル(株)];”E1830”、”E5844”[(株)ダイキンファインケミカル研究所];”エフトップEF301”、”エフトップEF303”、”エフトップEF351”および”エフトップEF352”[三菱マテリアル電子化成(株)]が挙げられる。
【0137】
重合性液晶組成物がレベリング剤を含有する場合、その含有量は、重合性液晶100質量部に対して、0.01質量部以上5質量部以下が好ましく、0.05質量部以上5質量部以下がより好ましく、0.05質量部以上3質量部以下がさらに好ましい。レベリング剤の含有量が前記の範囲内であると、重合性液晶を水平配向させることが容易であり、かつ、得られる偏光層がより平滑となる傾向がある。重合性液晶に対するレベリング剤の含有量が前記の範囲内であると、得られる位相差層にムラが生じにくい傾向がある。
【0138】
重合性液晶組成物は、1種以上の重合開始剤を含有することが好ましい。重合開始剤は、重合性液晶の重合反応を開始し得る化合物であり、より低温条件下で、重合反応を開始できる点で、光重合開始剤が好ましい。具体的には、光の作用により活性ラジカルまたは酸を発生できる光重合開始剤が挙げられ、中でも、光の作用によりラジカルを発生する光重合開始剤が好ましい。
【0139】
重合開始剤としては、ベンゾイン化合物、ベンゾフェノン化合物、アルキルフェノン化合物、アシルホスフィンオキサイド化合物、トリアジン化合物、ヨードニウム塩およびスルホニウム塩が挙げられる。
【0140】
ベンゾイン化合物としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルおよびベンゾインイソブチルエーテルが挙げられる。
【0141】
ベンゾフェノン化合物としては、ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’-テトラ(tert-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンおよび2,4,6-トリメチルベンゾフェノンが挙げられる。
【0142】
アルキルフェノン化合物としては、ジエトキシアセトフェノン、2-メチル-2-モルホリノ-1-(4-メチルチオフェニル)プロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1,2-ジフェニル-2,2-ジメトキシエタン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル〕プロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンおよび2-ヒドロキシ-2-メチル-1-〔4-(1-メチルビニル)フェニル〕プロパン-1-オンのオリゴマーが挙げられる。
【0143】
アシルホスフィンオキサイド化合物としては、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドおよびビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイドが挙げられる。
【0144】
トリアジン化合物としては、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシナフチル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシスチリル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-〔2-(5-メチルフラン-2-イル)エテニル〕-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-〔2-(フラン-2-イル)エテニル〕-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-〔2-(4-ジエチルアミノ-2-メチルフェニル)エテニル〕-1,3,5-トリアジンおよび2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-〔2-(3,4-ジメトキシフェニル)エテニル〕-1,3,5-トリアジンが挙げられる。
【0145】
重合開始剤には、市販のものを用いることができる。市販の重合開始剤としては、”イルガキュア(Irgacure)(登録商標)907”、”イルガキュア(登録商標)184”、”イルガキュア(登録商標)651”、”イルガキュア(登録商標)819”、”イルガキュア(登録商標)250”、”イルガキュア(登録商標)369”(チバ・ジャパン(株));”セイクオール(登録商標)BZ”、”セイクオール(登録商標)Z”、”セイクオール(登録商標)BEE”(精工化学(株));”カヤキュアー(kayacure)(登録商標)BP100”(日本化薬(株));”カヤキュアー(登録商標)UVI-6992”(ダウ社製);”アデカオプトマーSP-152”、”アデカオプトマーSP-170”((株)ADEKA);”TAZ-A”、”TAZ-PP”(日本シイベルヘグナー社);および”TAZ-104”(三和ケミカル社)が挙げられる。
【0146】
重合性液晶組成物が重合開始剤を含有する場合、その含有量は、該組成物に含有される重合性液晶の種類およびその量に応じて適宜調節できるが、重合性液晶100質量部に対して、0.1~30質量部が好ましく、0.5~10質量部がより好ましく、0.5~8質量部がさらに好ましい。重合性開始剤の含有量が、この範囲内であれば、重合性液晶の配向を乱すことなく重合させることができる。
【0147】
重合性液晶組成物が光重合開始剤を含有する場合、該組成物は光増感剤をさらに含有していてもよい。光増感剤としては、キサントン、チオキサントンなどのキサントン化合物(例えば、2,4-ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントンなど);アントラセン、アルコキシ基含有アントラセン(例えば、ジブトキシアントラセンなど)などのアントラセン化合物;フェノチアジンおよびルブレンが挙げられる。
【0148】
重合性液晶組成物が光重合開始剤および光増感剤を含有する場合、該組成物に含有される重合性液晶の重合反応をより促進することができる。光増感剤の使用量は、光重合開始剤および重合性液晶の種類およびその量に応じて適宜調節できるが、重合性液晶100質量部に対して、0.1~30質量部が好ましく、0.5~10質量部がより好ましく、0.5~8質量部がさらに好ましい。
【0149】
重合性液晶の重合反応をより安定的に進行させるために、重合性液晶組成物は適量の重合禁止剤を含有してもよく、これにより、重合性液晶の重合反応の進行度合いを制御しやすくなる。
【0150】
重合禁止剤としては、ハイドロキノン、アルコキシ基含有ハイドロキノン、アルコキシ基含有カテコール(例えば、ブチルカテコールなど)、ピロガロール、2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシラジカルなどのラジカル捕捉剤;チオフェノール類;β-ナフチルアミン類およびβ-ナフトール類が挙げられる。
【0151】
重合性液晶組成物が重合禁止剤を含有する場合、その含有量は、重合性液晶の種類およびその量、並びに光増感剤の使用量などに応じて適宜調節できるが、重合性液晶100質量部に対して、0.1~30質量部が好ましく、0.5~10質量部がより好ましく、0.5~8質量部がさらに好ましい。重合禁止剤の含有量が、この範囲内であれば、重合性液晶の配向を乱すことなく重合させることができる。
【0152】
本光学フィルムを製造する場合、第一の位相差層、第二の位相差層及び第三の位相差層を形成する順序は任意である。また、第一の位相差層における層Aと層Bを形成する順序も任意である。
【0153】
基材上に、配向膜を介するかまたは介さずに層Aを形成し、該層Aの上に、配向膜を介するかまたは介さずに層Bが形成し、該層Bの上に、配向膜を介するかまたは介さずに第二の位相差層を形成してもよい。
基材上に、配向膜を介するかまたは介さずに層Bを形成し、該層Bの上に、配向膜を介するかまたは介さずに層Aを形成し、該層Aの上に、配向膜を介するかまたは介さずに第二の位相差層を形成してもよい。
基材上に、配向膜を介するかまたは介さずに第二の位相差層を形成し、該第二の位相差層の上に、配向膜を介するかまたは介さずに層Aを形成し、該層Aの上に、配向膜を介するかまたは介さずに層Bを形成してもよい。
基材上に、配向膜を介するかまたは介さずに第二の位相差層を形成し、該第二の位相差層の上に、配向膜を介するかまたは介さずに層Bを形成し、該層Bの上に、配向膜を介するかまたは介さずに層Aを形成してもよい。
基材の一方の面に、配向膜を介するかまたは介さずに層Aを形成し、該層Aの上に、配向膜を介するかまたは介さずに層Bを形成し、基材の他方の面に、配向膜を介するかまたは介さずに第二の位相差層を形成してもよい。
基材の一方の面に、配向膜を介するかまたは介さずに層Bを形成し、該層Bの上に、配向膜を介するかまたは介さずに層Aを形成し、基材の他方の面に、配向膜を介するかまたは介さずに第二の位相差層を形成してもよい。
【0154】
層Aの上に配向膜を介するかまたは介さずに層Bが形成される場合、又は、層Bの上に配向膜を介するかまたは介さずに層Aが形成される場合は、層Aと層Bとの間に保護層があってもよい。また、第二の位相差層の上に配向膜を介するかまたは介さずに層Aが形成される場合、第二の位相差層の上に配向膜を介するかまたは介さずに層Aが形成される場合、層Aの上に配向膜を介するかまたは介さずに第二の位相差層が形成される場合、又は、層Bの上に配向膜を介するかまたは介さずに第二の位相差層が形成される場合は、第二の位相差層と層A又は層Bとの間に保護層があってもよい。
【0155】
基材上に、配向膜を介するかまたは介さずに第一の位相差層を形成し、該第一の位相差層の上に、配向膜を介するかまたは介さずに第二の位相差層を形成し、該第二の位相差層の上に、配向膜を介するかまたは介さずに第三の位相差層を形成してもよい。
基材上に、配向膜を介するかまたは介さずに第三の位相差層を形成し、該第三の位相差層の上に、配向膜を介するかまたは介さずに第二の位相差層を形成し、該第二の位相差層の上に、配向膜を介するかまたは介さずに第一の位相差層を形成してもよい。
基材の一方の面に、配向膜を介するかまたは介さずに第一の位相差層を形成し、該第一の位相差層の上に、配向膜を介するかまたは介さずに第二の位相差層を形成し、基材の他方の面に、配向膜を介するかまたは介さずに第三の位相差層を形成してもよい。
基材の一方の面に、配向膜を介するかまたは介さずに第二の位相差層を形成し、該第二の位相差層の上に、配向膜を介するかまたは介さずに第一の位相差層を形成し、基材の他方の面に、配向膜を介するかまたは介さずに第三の位相差層を形成してもよい。
基材の一方の面に、配向膜を介するかまたは介さずに第三の位相差層を形成し、該第三の位相差層の上に、配向膜を介するかまたは介さずに第二の位相差層を形成し、基材の他方の面に、配向膜を介するかまたは介さずに第一の位相差層を形成してもよい。
基材の一方の面に、配向膜を介するかまたは介さずに第二の位相差層を形成し、該第二の位相差層の上に、配向膜を介するかまたは介さずに第三の位相差層を形成し、基材の他方の面に、配向膜を介するかまたは介さずに第一の位相差層を形成してもよい。
【0156】
基材上に、配向膜を介するかまたは介さずに第一の位相差層を形成し、該第一の位相差層の上に、配向膜を介するかまたは介さずに第二の位相差層を形成してもよい。
基材の一方の面に、配向膜を介するかまたは介さずに第二の位相差層を形成し、該第二の位相差層の上に、配向膜を介するかまたは介さずに第一の位相差層を形成してもよい。
基材の一方の面に、配向膜を介するかまたは介さずに第二の位相差層を形成し、基材の他方の面に、配向膜を介するかまたは介さずに第一の位相差層を形成してもよい。
【0157】
第一の位相差層の上に配向膜を介するかまたは介さずに第二の位相差層が形成される場合、又は、第二の位相差層の上に配向膜を介するかまたは介さずに第一の位相差層が形成される場合は、第一の位相差層と第二の位相差層との間に保護層があってもよい。また、第二の位相差層の上に配向膜を介するかまたは介さずに第三の位相差層が形成される場合、又は、第三の位相差層の上に配向膜を介するかまたは介さずに第二の位相差層が形成される場合は、第二の位相差層と第三の位相差層との間に保護層があってもよい。
【0158】
<保護層>
保護層は、通常、多官能アクリレート(メタクリレート)、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート等からなるアクリル系オリゴマーあるいはポリマー、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリビニルピロリドン、デンプン類、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム等の水溶性ポリマーと溶剤とを含有する保護層形成用組成物から形成されることが好ましい。
【0159】
保護層形成用組成物に含有される溶剤は、前記した溶剤と同様のものが挙げられ、中でも、水、アルコール溶剤およびエーテル溶剤からなる群より選ばれる少なくとも一つの溶剤が、保護層を形成する層を溶解させることがない点で、好ましい。アルコール溶剤としては、メタノール、エタノール、ブタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテルおよびプロピレングリコールモノメチルエーテルが挙げられる。エーテル溶剤としては、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテートおよびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが挙げられる。中でも、エタノール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテルおよびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが好ましい。
【0160】
保護層の厚さは、通常20μm以下である。保護層の厚さは、0.5μm以上10μm以下が好ましく、1μm以上5μm以下がより好ましい。保護層の厚さは、通常、干渉膜厚計、レーザー顕微鏡または触針式膜厚計による測定によって求めることができる。
【0161】
続いて、連続的に本光学フィルムを製造する方法について説明する。このような連続的に本光学フィルムを製造する好適な方法として、Roll to Roll形式による方法が挙げられる。ここでは、重合性液晶を重合させることにより形成される位相差層の製造方法について説明するが、重合性液晶を重合させることにより形成される位相差層にかえて、延伸フィルムからなる位相差層を用いてもよい、この場合、下記製造工程における「重合性液晶組成物を塗布し」を「延伸フィルムを積層し」に読み替えればよい。
また、下記に代表的な構成の製造方法を例示するが、その他の構成は、下記製造方法に準じて実施すればよい。
【0162】
(1)基材が巻芯に巻き取られているロールを準備する工程、
(2)該ロールから、該基材を連続的に送り出す工程、
(3)該基材上に配向膜を連続的に形成する工程、
(4)該配向膜上に重合性液晶組成物を塗布し、連続的に第一の位相差層を形成する工程、
(5)前記(4)で得られた第一の位相差層の上に保護層を連続的に形成する工程、
(6)前記(5)で得られた保護層の上に配向膜を連続的に形成する工程、
(7)前記(6)で得られた配向膜の上に重合性液晶組成物を塗布し、連続的に第二の位相差層を形成する工程、
(8)連続的に得られた光学フィルムを第2の巻芯に巻き取り、第2ロールを得る工程
を順に行う方法が挙げられる。なお、工程(3)、(5)及び(6)は、必要に応じて省略してもよく、この際、工程(4)における「該配向膜上」は、「該基材上」に、工程(6)における「前記(5)で得られた保護層」は、「該第一の位相差層」に、工程(7)における「前記(6)で得られた配向膜」は、「該第一の位相差層」又は「前記(5)で得られた保護層」に読み替える。また、搬送時のシワやカールを抑制するために、各工程におけるフィルム搬送時には、保護フィルムを貼合してもよい。
【0163】
また、
(1a)基材が巻芯に巻き取られているロールを準備する工程、
(2a)該ロールから、該基材を連続的に送り出す工程、
(3a)該基材上に配向膜を連続的に形成する工程、
(4a)該配向膜上に重合性液晶組成物を塗布し、連続的に第二の位相差層を形成する工程、
(5a)前記(4a)で得られた第二の位相差層の上に保護層を連続的に形成する工程、(6a)前記(5a)で得られた保護層の上に配向膜を連続的に形成する工程、
(7a)前記(6a)で得られた配向膜の上に重合性液晶組成物を塗布し、連続的に第一の位相差層を形成する工程、
(8a)連続的に得られた光学フィルムを第2の巻芯に巻き取り、第2ロールを得る工程を順に行う方法も挙げられる。なお、工程(3a)、(5a)及び(6a)は、必要に応じて省略してもよく、この際、工程(4a)における「該配向膜上」は、「該基材上」に、工程(6a)における「前記(5a)で得られた保護層」は、「該第二の位相差層」に、工程(7a)における「前記(6a)で得られた配向膜」は、「該第二の位相差層」又は「前記(5a)で得られた保護層」に読み替える。また、搬送時のシワやカールを抑制するために、各工程におけるフィルム搬送時には、保護フィルムを貼合してもよい。
【0164】
また、
(1b)基材が巻芯に巻き取られているロールを準備する工程、
(2b)該ロールから、該基材を連続的に送り出す工程、
(3b)該基材上に配向膜を連続的に形成する工程、
(4b)該配向膜上に重合性液晶組成物を塗布し、連続的に第一の位相差層を形成する工程、
(5b)前記(4b)で得られた第一の位相差層と反対の基材面に配向膜を連続的に形成する工程、
(6b)前記(5b)で得られた配向膜上に重合性液晶組成物を塗布し、連続的に第二の位相差層を形成する工程、
(7b)連続的に得られた光学フィルムを第2の巻芯に巻き取り、第2ロールを得る工程を順に行う方法も挙げられる。なお、工程(3b)、及び(5b)は、必要に応じて省略してもよく、この際、工程(4b)における「該配向膜上」は、「該基材上」に、工程(6b)における「前記(5b)で得られた配向膜上」は、「前記(4b)で得られた第一の位相差層と反対の基材面」に読み替える。また、搬送時のシワやカールを抑制するために、各工程におけるフィルム搬送時には、保護フィルムを貼合してもよい。
【0165】
また、
(1c)透明基材が巻芯に巻き取られているロールを準備する工程、
(2c)該ロールから、該透明基材を連続的に送り出す工程、
(3c)該透明基材上に配向膜を連続的に形成する工程、
(4c)該配向膜上に重合性液晶組成物を塗布し、連続的に第二の位相差層を形成する工程、
(5c)前記(4c)で得られた第二の位相差層と反対の基材面に配向膜を連続的に形成する工程、
(6c)前記(5c)で得られた配向膜上に重合性液晶組成物を塗布し、連続的に第一の位相差層を形成する工程、
(7c)連続的に得られた光学フィルムを第2の巻芯に巻き取り、第2ロールを得る工程を順に行う方法も挙げられる。なお、工程(3c)、及び(5c)は、必要に応じて省略してもよく、この際、工程(4c)における「該配向膜上」は、「該基材上」に、工程(6c)における「前記(5c)で得られた配向膜上」は、「前記(4c)で得られた第二の位相差層と反対の基材面」に読み替える。また、搬送時のシワやカールを抑制するために、各工程におけるフィルム搬送時には、保護フィルムを貼合してもよい。
【0166】
また、
(1d)基材が巻芯に巻き取られているロールを準備する工程、
(2d)該ロールから、該基材を連続的に送り出す工程、
(3d)該基材上に配向膜を連続的に形成する工程、
(4d)該配向膜上に重合性液晶組成物を塗布し、連続的に層Aを形成する工程、
(5d)前記(4d)で得られた層Aの上に保護層を連続的に形成する工程、
(6d)前記(5d)で得られた保護層の上に配向膜を連続的に形成する工程、
(7d)前記(6d)で得られた配向膜の上に重合性液晶組成物を塗布し、連続的に層Bを形成する工程、
(8d)前記(7d)で得られた層Bの上に保護層を連続的に形成する工程、
(9d)前記(8d)で得られた保護層の上に配向膜を連続的に形成する工程、
(10d)前記(9d)で得られた配向膜の上に重合性液晶組成物を塗布し、連続的に第二の位相差層を形成する工程、
(11d)連続的に得られた光学フィルムを第2の巻芯に巻き取り、第2ロールを得る工程を順に行う方法が挙げられる。なお、工程(3d)、(5d)、(6d)、(8d)、及び(9d)、は、必要に応じて省略してもよく、
この際、工程(4d)における「該配向膜上」は、「該基材上」に、工程(6d)における「前記(5d)で得られた保護層」は、「該層A」に、工程(7d)における「前記(6d)で得られた配向膜」は、「該層A」又は「前記(5d)で得られた保護層」に、工程(9d)における「前記(8d)で得られた保護層」は、「該層B」に、工程(10d)における「前記(9d)で得られた配向膜」は、「該層B」又は「前記(9d)で得られた保護層」に読み替える。また、搬送時のシワやカールを抑制するために、各工程におけるフィルム搬送時には、保護フィルムを貼合してもよい。
【0167】
また、
(1e)基材が巻芯に巻き取られているロールを準備する工程、
(2e)該ロールから、該基材を連続的に送り出す工程、
(3e)該基材上に配向膜を連続的に形成する工程、
(4e)該配向膜上に重合性液晶組成物を塗布し、連続的に第一の位相差層を形成する工程、
(5e)前記(4e)で得られた第一の位相差層の上に保護層を連続的に形成する工程、(6e)前記(5e)で得られた保護層の上に配向膜を連続的に形成する工程、
(7e)前記(6e)で得られた配向膜の上に重合性液晶組成物を塗布し、連続的に第二の位相差層を形成する工程、
(8e)前記(4e)で得られた第一の位相差層と反対の基材面に配向膜を連続的に形成する工程、
(9e)前記(8e)で得られた配向膜上に重合性液晶組成物を塗布し、連続的に第三の位相差層を形成する工程、
(10e)連続的に得られた光学フィルムを第2の巻芯に巻き取り、第2ロールを得る工程を順に行う方法も挙げられる。なお、
工程(3e)、(5e)及び(8e)は、必要に応じて省略してもよく、この際、
工程(4e)における「該配向膜上」は、「該基材上」に、
工程(6e)における「前記(5e)で得られた保護層」は、「前記(4e)で得られた第一の位相差層」に、
工程(9e)における、「前記(8e)で得られた配向膜上」は、「前記(4e)で得られた第一の位相差層と反対の基材面」に読み替える。また、搬送時のシワやカールを抑制するために、各工程におけるフィルム搬送時には、保護フィルムを貼合してもよい。また、搬送時のシワやカールを抑制するために、各工程におけるフィルム搬送時には、保護フィルムを貼合してもよい。
【0168】
図1に、本光学フィルムの模式図を示す。
図1(b)は、基材、第一の位相差層及び、第二の位相差層が、この順番で積層された本光学フィルム100である。
図1(c)は、基材、第二の位相差層及び、第一の位相差層が、この順番で積層された本光学フィルム100である。
図1(d)は、第一の位相差層、基材及び、第二の位相差層が、この順番で積層された本光学フィルム100である。
【0169】
これら本光学フィルムから基材を取り除くことで基材を有さない本光学フィルムを得ることができる。また、第一の位相差層が延伸フィルムである場合は、該延伸フィルムの表面に、コーティング層である第二の位相差層を形成することで本光学フィルムを製造することができ、また、第二の位相差層が延伸フィルムである場合は、該延伸フィルムの表面に、コーティング層である第一の位相差層を形成することで本光学フィルムを製造することができる。基材を有さない本光学フィルムの模式図を
図1(a)に示す。
【0170】
また、第一の位相差層を有する基材と、第二の位相差層を有する基材を貼り合せることでも、本光学フィルムを製造することができる。具体例としては、
図1(e)、
図1(f)及び
図1(g)が挙げられる。貼り合せには、後述する接着剤を用いることができる。
【0171】
第一の位相差層が層A及び層Bから構成される場合、又は、第三の位相差層を有する場合の、本光学フィルムの構成を
図2に示す。
図2(c)は、基材、層A、層B及び第二の位相差層がこの順番で積層された光学フィルム100である。
図2(d)は、基材、第一の位相差層、第二の位相差層及び第三の位相差層がこの順番で積層された光学フィルム100である。
図2(e)は、基材、層B、層A及び第二の位相差がこの順番で積層された光学フィルム100である。
図2(f)は、基材、第三の位相差層、第二の位相差及び第一の位相差層がこの順番で積層された光学フィルム100である。
図2(g)は、基材、第二の位相差、層B及び層Aがこの順番で積層された光学フィルム100である。
図2(h)は、基材、第二の位相差、層A及び層Bがこの順番で積層された光学フィルム100である。これら本光学フィルムから基材を剥離することで基材を有さない本光学フィルムを得ることもでき、基材を有さない本光学フィルムの模式図を
図2(a)及び
図2(b)に示す。
【0172】
第一の位相差層、層A及び層Bを含む構成の場合、又は、第三の位相差層を有する場合には基材の両面にそれぞれの層を積層してもよい。具体的な例として、例えば、
図2(i)は、第二の位相差層、基材、層A及び層Bがこの順番で積層された光学フィルム100である。
図2(j)は、第二の位相差層、基材、層B及び層Aがこの順番で積層された光学フィルム100である。
図2(k)は、第一の位相差層、基材、第三の位相差層及び第二の位相差層がこの順番で積層された光学フィルム100である。
図2(l)は、第一の位相差層、基材、第二の位相差層及び第三の位相差層がこの順番で積層された光学フィルム100である。
図2(m)は、第三の位相差層、基材、第一の位相差層及び第二の位相差層がこの順番で積層された光学フィルム100である。
図2(n)は、第三の位相差層、基材、第二の位相差層及び第一の位相差層がこの順番で積層された光学フィルム100である。第二の位相差層、層A及び層Bは、各層上に直接塗布により形成してもよく、各層を製造後貼合によって貼り合せてもよく、また各層を順次転写によって積層してもよい。
【0173】
<接着剤>
接着剤としては、例えば、粘着剤、水系接着剤及び活性エネルギー線硬化型接着剤が挙げられる。
【0174】
粘着剤として一般的には、(メタ)アクリル酸エステルを主成分とし、官能基を有する(メタ)アクリルモノマーを少量含有するアクリル系モノマー混合物を、重合開始剤の存在下にラジカル重合することにより得られ、ガラス転移温度Tgが0℃以下のアクリル系樹脂と、架橋剤とを含有するアクリル系粘着剤が好ましく用いられる。
【0175】
(メタ)アクリル酸エステルのなかでは、アクリル酸アルキルエステルが好ましく、中でも、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸2-メトキシエチルやアクリル酸エトキシメチルが好ましい。
【0176】
アクリル系樹脂を構成するもう一つのモノマー成分となる官能基を有する(メタ)アクリルモノマーは、オレフィン性二重結合である(メタ)アクリロイル基を分子内に1個有するとともに、水酸基、カルボキシル基、アミド基、アミノ基、又はエポキシ基のような極性官能基を同一分子内に有する化合物である。なかでも、アクリロイル基がオレフィン性二重結合となるアクリルモノマーが好ましい。そのような官能基を有するアクリルモノマーの例を挙げると、水酸基を有するものとして、アクリル酸2-ヒドロキシエチルが好ましく、またカルボキシル基を有するものとして、アクリル酸が好ましい。
【0177】
アクリル系樹脂の原料となるアクリルモノマー混合物は、上記の(メタ)アクリル酸エステル及び官能基を有する(メタ)アクリルモノマー以外のモノマー(以下、「第三モノマー」と呼ぶことがある)をさらに含有してもよい。その例としては、分子内に1個のオレフィン性二重結合と少なくとも1個の芳香環を有するモノマー、スチレン系モノマー、分子内に脂環式構造を有する(メタ)アクリル酸エステル、ビニル系モノマー、分子内に複数の(メタ)アクリロイル基を有するモノマーなどが挙げられる。
【0178】
とりわけ、分子内に1個のオレフィン性二重結合と少なくとも1個の芳香環を有するモノマーは、好ましいものの一つである。そのなかでも、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2-(2-フェノキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ノニルフェノールの(メタ)アクリレート、2-(o-フェニルフェノキシ)エチル(メタ)アクリレートが好ましく。これらのなかでも、2-フェノキシエチルアクリレートがさらに好ましい。
【0179】
(メタ)アクリル酸エステル及び官能基を有する(メタ)アクリルモノマー以外のモノマー(第三モノマー)は、それぞれ単独で用いてもよいし、異なる複数種を併用してもよい。これら第三モノマーに由来する構造単位は、アクリル系樹脂全体を基準に、通常0~20重量%の範囲で存在することができ、好ましくは0~10重量%である。
【0180】
アクリル系粘着剤を構成するアクリル系樹脂は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレン換算の重量平均分子量Mw が、100万~200万の範囲にあることが好ましい。この重量平均分子量Mw が100万以上であると、高温高湿下での接着性が向上し、液晶セルを構成するガラス基板と粘着剤層との間に浮きや剥がれの発生する可能性が小さくなる傾向にあり、しかもリワーク性が向上する傾向にあることから好ましい。また、アクリル系樹脂の上記重量平均分子量Mw が200万以下であると、偏光板の寸法が変化しても、その寸法変化に粘着剤層が追随して変動するので、ディスプレイの光抜けや色ムラが抑制される傾向にあることから好ましい。さらに、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比Mw/Mnで表される分子量分布は、3~7の範囲にあることが好ましい。
【0181】
アクリル系粘着剤に含有されるアクリル系樹脂は、上記のような比較的高分子量のものだけで構成することもできるが、それとは異なるアクリル系樹脂との混合物で構成することもできる。混合して用いることができるアクリル系樹脂の例を挙げると、上記式(I)で示される(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を主成分とし、重量平均分子量が5万~30万の範囲にあるものなどがある。
【0182】
アクリル系粘着剤を構成する上記のアクリル系樹脂は、例えば、溶液重合法、乳化重合法、塊状重合法、懸濁重合法など、公知の各種方法によって製造することができる。このアクリル系樹脂の製造においては通常、重合開始剤が用いられる。重合開始剤としては、アゾ系化合物、有機過酸化物、無機過酸化物、過酸化物と還元剤を併用したレドックス系開始剤などが挙げられる。なかでも、2,2′-アゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル、過硫酸アンモニウムなどが好ましく用いられる。重合開始剤は、アクリル系樹脂の原料となるモノマーの総量100質量部に対して、通常 0.001~5質量部程度の割合で用いられる。
【0183】
こうして得られるアクリル系樹脂に、架橋剤を配合して粘着剤とされる。架橋剤は、アクリル系樹脂中の極性官能基を有するモノマーに由来する構造単位と架橋反応し得る官能基を、分子内に少なくとも2個有する化合物であり、例えば、イソシアネート系化合物、エポキシ系化合物、金属キレート系化合物、アジリジン系化合物などが挙げられる。
【0184】
これらの架橋剤のなかでも、イソシアネート系化合物が好ましく用いられる。イソシアネート系化合物は、分子内にイソシアナト基(-NCO)を少なくとも2個有する化合物それ自体のほか、それをポリオールに反応させたアダクト体、その二量体、三量体などの形で用いることができる。具体例を挙げると、トリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートをポリオールと反応させて得られるアダクト体、トリレンジイソシアネートの二量体、トリレンジイソシアネートの三量体、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートをポリオールと反応させて得られるアダクト体、ヘキサメチレンジイソシアネートの二量体、ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体などがある。
【0185】
架橋剤は、アクリル系樹脂100質量部に対して、通常 0.01~5質量部程度の割合で配合され、とりわけ0.1~5質量部、さらには0.2~3質量部の割合で配合するのが好ましい。アクリル系樹脂100質量部に対する架橋剤の配合量を 0.01質量部以上、とりわけ 0.1質量部以上とすれば、粘着剤層の耐久性が向上する傾向にある。
【0186】
粘着剤には、必要に応じて、他の成分を配合することもできる。配合しうる他の成分として、金属微粒子、金属酸化物微粒子、又は金属等をコーティングした微粒子のような、導電性の微粒子、イオン導電性組成物、有機のカチオン又はアニオンを有するイオン性化合物、シランカップリング剤、架橋触媒、耐候安定剤、タッキファイヤー、可塑剤、軟化剤、染料、顔料、無機フィラー、上記アクリル系樹脂以外の樹脂、有機ビーズ等の光拡散性微粒子などが挙げられる。また、粘着剤に紫外線硬化性化合物を配合し、粘着剤層を形成した後に紫外線を照射して硬化させ、より硬い粘着剤層とすることも有用である。
【0187】
粘着剤を構成するこれらの各成分は、通常、酢酸エチル等の適当な溶剤に溶かした状態で粘着剤組成物として使用される。粘着剤組成物を、適当な基材上に塗布し、乾燥させることで、粘着剤層が得られる。一部、溶剤に溶解しない成分もあるが、それらは系中に分散した状態であればよい。
【0188】
粘着剤層を本光学フィルム上に形成する方法としては、例えば、基材として剥離フィルムを用い、上記の粘着剤組成物を塗布して粘着剤層を形成し、得られる粘着剤層を本光学フィルムの表面に移設する方法、本光学フィルム表面に上記の粘着剤組成物を直接塗布して粘着剤層を形成する方法などが採用される。また、1枚の剥離フィルム上に粘着剤層を形成した後、さらにその粘着剤層の上に別の剥離フィルムを貼合して、両面セパレーター型粘着剤シートとすることもできる。このような両面セパレーター型粘着剤シートは、必要な時期に片側の剥離フィルムを剥がし、本光学フィルム上へ貼合される。両面セパレーター型粘着剤シートの市販品としては、例えば、リンテック株式会社や日東電工株式会社から販売されているノンキャリア粘着剤フィルムやノンキャリア粘着剤シートがある。
【0189】
剥離フィルムは、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリプロピレン又はポリエチレンのような各種の樹脂からなるフィルムを基材とし、この基材の粘着剤層との接合面に、シリコーン処理のような離型処理が施されたものであることができる。このような剥離フィルムは、セパレートフィルム又はセパレーターとも呼ばれる。
【0190】
粘着剤層の厚さは、5~50μmであるのが好ましく、さらには5~30μmであるのがより好ましい。粘着剤層の厚さを30μm以下とすることにより、高温高湿下での接着性が向上し、ディスプレイと粘着剤層との間に浮きや剥がれの発生する可能性が低くなる傾向にあり、リワーク性も向上する傾向にある。また、その厚さを5μm以上とすることにより、そこに貼合されている偏光板の寸法が変化してもその寸法変化に粘着剤層が追随して変動するので、寸法変化に対する耐久性が向上する。
【0191】
水系接着剤としては、例えば、主成分としてポリビニルアルコール系樹脂又はウレタン樹脂を用い、接着性を向上させるために、イソシアネート系化合物やエポキシ化合物のような架橋剤又は硬化性化合物を配合した組成物とするのが一般的である。
【0192】
水系接着剤の主成分としてポリビニルアルコール系樹脂を用いる場合、部分ケン化ポリビニルアルコール及び完全ケン化ポリビニルアルコールのほか、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル基変性ポリビニルアルコール、メチロール基変性ポリビニルアルコール、及びアミノ基変性ポリビニルアルコールのような、変性されたポリビニルアルコール系樹脂を用いてもよい。このようなポリビニルアルコール系樹脂の水溶液が水系接着剤として用いられるが、水系接着剤中のポリビニルアルコール系樹脂の濃度は、水100質量部に対して、通常1~10質量部であり、好ましくは1~5質量部である。
【0193】
ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液からなる水系接着剤には、前記したように接着性を向上させるために、多価アルデヒド、水溶性エポキシ樹脂、メラミン系化合物、ジルコニア系化合物、及び亜鉛化合物のような硬化性化合物を配合することができる。水溶性エポキシ樹脂の例を挙げると、ジエチレントリアミンやトリエチレンテトラミンのようなポリアルキレンポリアミンとアジピン酸のようなジカルボン酸との反応で得られるポリアミドポリアミンに、エピクロロヒドリンを反応させて得られる水溶性のポリアミドエポキシ樹脂がある。このようなポリアミドエポキシ樹脂の市販品として、住化ケムテックス株式会社から販売されている“スミレーズレジン650”及び“スミレーズレジン675”、日本PMC株式会社から販売されている“WS-525”などがある。水溶性エポキシ樹脂を配合する場合、その添加量は、ポリビニルアルコール系樹脂100質量部に対して、通常1~100質量部程度であり、好ましくは1~50質量部である。
【0194】
また、水系接着剤の主成分としてウレタン樹脂を用いる場合、ポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂を水系接着剤の主成分とするのが有効である。ここでいうポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂とは、ポリエステル骨格を有するウレタン樹脂であって、その中に少量のイオン性成分(親水成分)が導入されたものである。かかるアイオノマー型ウレタン樹脂は、乳化剤を使用せずに直接、水中で乳化してエマルジョンとなるため、水系の接着剤とすることができる。ポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂を用いる場合は、架橋剤として水溶性のエポキシ化合物を配合するのが有効である。ポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂を偏光板の接着剤とすることは、例えば、特開 2005-70140号公報や特開2005-208456号公報に記載されている。
【0195】
水系接着剤を構成するこれらの各成分は、通常、水に溶かした状態で使用される。水系接着剤を、適当な基材上に塗布し、乾燥させることで、接着剤層が得られる。水に溶解しない成分は、系中に分散した状態であればよい。
【0196】
前記接着剤層を本光学フィルム上に形成する方法としては、本光学フィルム表面に上記の接着剤組成物を直接塗布して接着剤層を形成する方法などが挙げられる。前記接着剤層の厚さは、通常0.001~5μm程度であり、好ましくは0.01μm以上、また好ましくは2μm以下、さらに好ましくは1μm以下である。接着剤層が厚すぎると、偏光板の外観不良となりやすい。
【0197】
また、例えば、水系接着剤を偏光板と本光学フィルムの間に注入後、加熱することで水を蒸発させつつ、熱架橋反応を進行させることで両者に十分な接着性を与えることができる。
【0198】
活性エネルギー線硬化型接着剤は、活性エネルギー線の照射を受けて硬化し、偏光板と本光学フィルムとを、実用に足る強度で接着できるものであればよい。例えば、エポキシ化合物とカチオン重合開始剤を含有するカチオン重合性の活性エネルギー線硬化型接着剤、アクリル系硬化成分とラジカル重合開始剤を含有するラジカル重合性の活性エネルギー線硬化型接着剤、エポキシ化合物のようなカチオン重合性の硬化成分及びアクリル系化合物のようなラジカル重合性の硬化成分の両者を含有し、そこにカチオン重合開始剤及びラジカル重合開始剤を配合した活性エネルギー線硬化型接着剤、及び開始剤を含まない活性エネルギー線硬化型接着剤に電子ビームを照射することで硬化させる電子線硬化型接着剤等が挙げられる。好ましくは、アクリル系硬化成分とラジカル重合開始剤を含有するラジカル重合性の活性エネルギー線硬化型接着剤である。また、実質的に無溶剤で使用できる、エポキシ化合物とカチオン重合開始剤を含有するカチオン重合性の活性エネルギー線硬化型接着剤が好ましい。
【0199】
カチオン重合可能なエポキシ化合物であって、それ自身が室温において液体であり、溶剤を存在させなくても適度な流動性を有し、適切な硬化接着強度を与えるものを選択し、それに適したカチオン重合開始剤を配合した活性エネルギー線硬化型接着剤は、偏光板の製造設備において、偏光子と透明保護フィルムとを接着する工程で通常必要となる乾燥設備を省くことができる。また、適切な活性エネルギー線量を照射することで硬化速度を促進させ、生産速度を向上させることもできる。
【0200】
このような接着剤に用いられるエポキシ化合物は、例えば、水酸基を有する芳香族化合物又は鎖状化合物のグリシジルエーテル化物、アミノ基を有する化合物のグリシジルアミノ化物、C-C二重結合を有する鎖状化合物のエポキシ化物、飽和炭素環に直接若しくはアルキレンを介してグリシジルオキシ基若しくはエポキシエチル基が結合しているか、又は飽和炭素環に直接エポキシ基が結合している脂環式エポキシ化合物などであることができる。これらのエポキシ化合物は、それぞれ単独で用いてもよいし、異なる複数種を併用してもよい。なかでも脂環式エポキシ化合物は、カチオン重合性に優れることから、好ましく用いられる。
【0201】
水酸基を有する芳香族化合物又は鎖状化合物のグリシジルエーテル化物は、例えば、これら芳香族化合物又は鎖状化合物の水酸基にエピクロロヒドリンを塩基性条件下で付加縮合させる方法によって製造できる。このような、水酸基を有する芳香族化合物又は鎖状化合物のグリシジルエーテル化物には、ビスフェノール類のジグリシジルエーテル、多芳香環型エポキシ樹脂、アルキレングリコール又はポリアルキレングリコールのジグリシジルエーテルなどが包含される。
【0202】
ビスフェノール類のジグリシジルエーテルとして、例えば、ビスフェノールAのグリシジルエーテル化物及びそのオリゴマー体、ビスフェノールFのグリシジルエーテル化物及びそのオリゴマー体、3,3′,5,5′-テトラメチル-4,4′-ビフェノールのグリシジルエーテル化物及びそのオリゴマー体などが挙げられる。
【0203】
多芳香環型エポキシ樹脂として、例えば、フェノールノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物、クレゾールノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物、フェノールアラルキル樹脂のグリシジルエーテル化物、ナフトールアラルキル樹脂のグリシジルエーテル化物、フェノールジシクロペンタジエン樹脂のグリシジルエーテル化物などが挙げられる。さらに、トリスフェノール類のグリシジルエーテル化物及びそのオリゴマー体なども多芳香環型エポキシ樹脂に属する。
【0204】
アルキレングリコール又はポリアルキレングリコールのジグリシジルエーテルとして、例えば、エチレングリコールのグリシジルエーテル化物、ジエチレングリコールのグリシジルエーテル化物、1,4-ブタンジオールのグリシジルエーテル化物、1,6-ヘキサンジオールのグリシジルエーテル化物などが挙げられる。
【0205】
アミノ基を有する化合物のグリシジルアミノ化物は、例えば、当該化合物のアミノ基にエピクロロヒドリンを塩基性条件下で付加縮合させる方法によって製造できる。アミノ基を有する化合物は、同時に水酸基を有していてもよい。このような、アミノ基を有する化合物のグリシジルアミノ化物には、1,3-フェニレンジアミンのグリシジルアミノ化物及びそのオリゴマー体、1,4-フェニレンジアミンのグリシジルアミノ化物及びそのオリゴマー体、3-アミノフェノールのグリシジルアミノ化及びグリジシジルエーテル化物並びにそのオリゴマー体、4-アミノフェノールのグリシジルアミノ化及びグリジシジルエーテル化物並びにそのオリゴマー体などが包含される。
【0206】
C-C二重結合を有する鎖状化合物のエポキシ化物は、その鎖状化合物のC-C二重結合を、塩基性条件下で過酸化物を用いてエポキシ化する方法によって製造できる。C-C二重結合を有する鎖状化合物には、ブタジエン、ポリブタジエン、イソプレン、ペンタジエン、ヘキサジエンなどが包含される。また、二重結合を有するテルペン類もエポキシ化原料として用いることができ、非環式モノテルペンとして、リナロールなどがある。エポキシ化に用いられる過酸化物は、例えば、過酸化水素、過酢酸、tert-ブチルヒドロペルオキシドなどであることができる。
【0207】
飽和炭素環に直接若しくはアルキレンを介してグリシジルオキシ基又はエポキシエチル基が結合している脂環式エポキシ化合物は、先に掲げたビスフェノール類を代表例とする水酸基を有する芳香族化合物の芳香環を水素化して得られる水素化ポリヒドロキシ化合物のグリシジルエーテル化物、水酸基を有するシクロアルカン化合物のグリシジルエーテル化物、ビニル基を有するシクロアルカン化合物のエポキシ化物などであることができる。
【0208】
以上説明したエポキシ化合物は、市販品を容易に入手することが可能であり、例えばそれぞれ商品名で、三菱化学株式会社から販売されている“jER”シリーズ、DIC株式会社から販売されている“エピクロン”、東都化成株式会社から販売されている“エポトート(登録商標)”、株式会社ADEKAから販売されている“アデカレジン(登録商標)”、ナガセケムテックス株式会社から販売されている“デナコール(登録商標)”、ダウケミカル社から販売されている“ダウエポキシ”、日産化学工業株式会社から販売されている“テピック(登録商標)”などが挙げられる。
【0209】
一方、飽和炭素環に直接エポキシ基が結合している脂環式エポキシ化合物は、例えば、C-C二重結合を環内に有する非芳香族環状化合物のC-C二重結合を、塩基性条件下で過酸化物を用いてエポキシ化する方法によって製造できる。C-C二重結合を環内に有する非芳香族環状化合物としては、例えば、シクロペンテン環を有する化合物、シクロヘキセン環を有する化合物、シクロペンテン環又はシクロヘキセン環にさらに少なくとも2個の炭素原子が結合して追加の環を形成している多環式化合物などが挙げられる。C-C二重結合を環内に有する非芳香族環状化合物は、環外に別のC-C二重結合を有していてもよい。C-C二重結合を環内に有する非芳香族環状化合物の例を挙げると、シクロヘキセン、4-ビニルシクロヘキセン、単環式モノテルペンであるリモネン及びα-ピネンなどがある。
【0210】
飽和炭素環に直接エポキシ基が結合している脂環式エポキシ化合物は、上で述べたような環に直接結合したエポキシ基を有する脂環式構造が、適当な連結基を介して分子内に少なくとも2個形成された化合物であってもよい。ここでいう連結基には、例えば、エステル結合、エーテル結合、アルキレン結合などが包含される。
【0211】
飽和炭素環に直接エポキシ基が結合している脂環式エポキシ化合物の具体的な例を挙げると、次のようなものがある。
3,4-エポキシシクロヘキシルメチル 3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、
1,2-エポキシ-4-ビニルシクロヘキサン、
1,2-エポキシ-4-エポキシエチルシクロヘキサン、
1,2-エポキシ-1-メチル-4-(1-メチルエポキシエチル)シクロヘキサン、 3,4-エポキシシクロヘキシルメチル (メタ)アクリレート、
2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールと4-エポキシエチル-1,2-エポキシシクロヘキサンとの付加物、
エチレン ビス(3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、
オキシジエチレン ビス(3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、
1,4-シクロヘキサンジメチル ビス(3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、
3-(3,4-エポキシシクロヘキシルメトキシカルボニル)プロピル 3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレートなど。
【0212】
以上説明した飽和炭素環に直接エポキシ基が結合している脂環式エポキシ化合物も、市販品を容易に入手することが可能であり、例えば、それぞれ商品名で、株式会社ダイセルから販売されている“セロキサイド”シリーズ及び“サイクロマー”、ダウケミカル社から販売されている“サイラキュア UVR”シリーズなどが挙げられる。
【0213】
エポキシ化合物を含有する硬化性接着剤は、さらにエポキシ化合物以外の活性エネルギー線硬化性化合物を含有してもよい。エポキシ化合物以外の活性エネルギー線硬化性化合物としては、例えば、オキセタン化合物やアクリル化合物などが挙げられる。なかでも、カチオン重合において硬化速度を促進できる可能性があることから、オキセタン化合物を併用することが好ましい。
【0214】
オキセタン化合物は、分子内に4員環エーテルを有する化合物であり、例えば、次のようなものを挙げることができる。
1,4-ビス〔(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシメチル〕ベンゼン、
3-エチル-3-(2-エチルヘキシルオキシメチル)オキセタン、
ビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、
3-エチル-3-(フェノキシメチル)オキセタン、
3-エチル-3-(シクロヘキシルオキシメチル)オキセタン、
フェノールノボラックオキセタン、
1,3-ビス〔(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ〕ベンゼンなど。
【0215】
オキセタン化合物も、市販品を容易に入手することが可能であり、例えば、それぞれ商品名で、東亞合成株式会社から販売されている“アロンオキセタン(登録商標)”シリーズ、宇部興産株式会社から販売されている“ETERNACOLL(登録商標)”シリーズなどが挙げられる。
【0216】
エポキシ化合物やオキセタン化合物を包含する硬化性化合物は、これらが配合された接着剤を無溶剤とするために、有機溶剤などで希釈されていないものを用いることが好ましい。また、接着剤を構成する他の成分であって、後述するカチオン重合開始剤や増感剤を包含する少量成分も、有機溶剤に溶解されたものよりも、有機溶剤が除去・乾燥されたその化合物単独の粉体又は液体を用いることが好ましい。
【0217】
カチオン重合開始剤は、活性エネルギー線、例えば紫外線の照射を受けてカチオン種を発生する化合物である。それが配合された接着剤に求められる接着強度及び硬化速度を与えるものであればよいが、例えば、芳香族ジアゾニウム塩;芳香族ヨードニウム塩や芳香族スルホニウム塩のようなオニウム塩;鉄-アレーン錯体などが挙げられる。これらのカチオン重合開始剤は、それぞれ単独で用いてもよいし、異なる複数種を併用してもよい。
【0218】
芳香族ジアゾニウム塩としては、例えば、次のようなものが挙げられる。
ベンゼンジアゾニウム ヘキサフルオロアンチモネート、
ベンゼンジアゾニウム ヘキサフルオロホスフェート、
ベンゼンジアゾニウム ヘキサフルオロボレートなど。
【0219】
芳香族ヨードニウム塩としては、例えば、次のようなものが挙げられる。
ジフェニルヨードニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
ジフェニルヨードニウム ヘキサフルオロホスフェート、
ジフェニルヨードニウム ヘキサフルオロアンチモネート、
ビス(4-ノニルフェニル)ヨードニウム ヘキサフルオロホスフェートなど。
【0220】
芳香族スルホニウム塩としては、例えば、次のようなものが挙げられる。
トリフェニルスルホニウム ヘキサフルオロホスフェート、
トリフェニルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、
トリフェニルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
ジフェニル(4-フェニルチオフェニル)スルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、
4,4′-ビス(ジフェニルスルホニオ)ジフェニルスルフィド ビスヘキサフルオロホスフェート、
4,4′-ビス〔ジ(β-ヒドロキシエトキシフェニル)スルホニオ〕ジフェニルスルフィド ビスヘキサフルオロアンチモネート、
4,4′-ビス〔ジ(β-ヒドロキシエトキシフェニル)スルホニオ〕ジフェニルスルフィド ビスヘキサフルオロホスフェート、
7-〔ジ(p-トルイル)スルホニオ〕-2-イソプロピルチオキサントン ヘキサフルオロアンチモネート、
7-〔ジ(p-トルイル)スルホニオ〕-2-イソプロピルチオキサントン テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
4-フェニルカルボニル-4′-ジフェニルスルホニオジフェニルスルフィド ヘキサフルオロホスフェート、
4-(p-tert-ブチルフェニルカルボニル)-4′-ジフェニルスルホニオジフェニルスルフィド ヘキサフルオロアンチモネート、
4-(p-tert-ブチルフェニルカルボニル)-4′-ジ(p-トルイル)スルホニオ-ジフェニルスルフィド テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなど。
【0221】
鉄-アレーン錯体としては、例えば、次のようなものが挙げられる。
キシレン-シクロペンタジエニル鉄(II) ヘキサフルオロアンチモネート、
クメン-シクロペンタジエニル鉄(II) ヘキサフルオロホスフェート、
キシレン-シクロペンタジエニル鉄(II) トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メタナイドなど。
【0222】
カチオン重合開始剤のなかでも、芳香族スルホニウム塩は、300nm以上の波長領域でも紫外線吸収特性を有することから、硬化性に優れ、良好な機械強度や接着強度を有する接着剤層を与えることができるため、好ましく用いられる。
【0223】
カチオン重合開始剤も、市販品を容易に入手することが可能であり、例えば、それぞれ商品名で、日本化薬株式会社から販売されている“カヤラッド(登録商標)”シリーズ、ダウケミカル社から販売されている“サイラキュア UVI”シリーズ、サンアプロ株式会社から販売されている光酸発生剤“CPI”シリーズ、みどり化学株式会社から販売されている光酸発生剤“TAZ”、“BBI”及び“DTS”、株式会社ADEKAから販売されている“アデカオプトマー”シリーズ、ローディア社から販売されている“RHODORSIL(登録商標)” などが挙げられる。
【0224】
活性エネルギー線硬化型接着剤において、カチオン重合開始剤は、活性エネルギー線硬化型接着剤の総量100質量部に対して、通常 0.5~20質量部の割合で配合され、好ましくは1~15質量部である。その量があまり少ないと、硬化が不十分になり、接着剤層の機械強度や接着強度を低下させることがある。また、その量が多すぎると、接着剤層中のイオン性物質が増加することで接着剤層の吸湿性が高くなり、得られる偏光板の耐久性能を低下させることがある。
【0225】
活性エネルギー線硬化型接着剤を電子線硬化型で用いる場合、組成物中に光重合開始剤を含有させることは特に必要ではないが、紫外線硬化型で用いる場合には、光ラジカル発生剤を用いることが好ましい。光ラジカル発生剤としては、水素引き抜き型光ラジカル発生剤と開裂型光ラジカル発生剤とが挙げられる。
【0226】
水素引き抜き型光ラジカル発生剤としては、例えば1-メチルナフタレン、2-メチルナフタレン、1-フルオロナフタレン、1-クロロナフタレン、2-クロロナフタレン、1-ブロモナフタレン、2-ブロモナフタレン、1-ヨードナフタレン、2-ヨードナフタレン、1-ナフトール、2-ナフトール、1-メトキシナフタレン、2-メトキシナフタレン、1,4-ジシアノナフタレンなどのナフタレン誘導体、アントラセン、1,2-ベンズアントラセン、9,10-ジクロロアントラセン、9,10-ジブロモアントラセン、9,10-ジフェニルアントラセン、9-シアノアントラセン、9,10-ジシアノアントラセン、2,6,9,10-テトラシアノアントラセンなどのアントラセン誘導体、ピレン誘導体、カルバゾール、9-メチルカルバゾール、9-フェニルカルバゾール、9-プロペ-2-イニル-9H-カルバゾール、9-プロピル-9H-カルバゾール、9-ビニルカルバゾール、9H-カルバゾール-9-エタノール、9-メチル-3-ニトロ-9H-カルバゾール、9-メチル-3,6-ジニトロ-9H-カルバゾール、9-オクタノイルカルバゾール、9-カルバゾールメタノール、9-カルバゾールプロピオン酸、9-カルバゾールプロピオニトリル、9-エチル-3,6-ジニトロ-9H-カルバゾール、9-エチル-3-ニトロカルバゾール、9-エチルカルバゾール、9-イソプロピルカルバゾール、9-(エトキシカルボニルメチル)カルバゾール、9-(モルホリノメチル)カルバゾール、9-アセチルカルバゾール、9-アリルカルバゾール、9-ベンジル-9H-カルバゾール、9-カルバゾール酢酸、9-(2-ニトロフェニル)カルバゾール、9-(4-メトキシフェニル)カルバゾール、9-(1-エトキシ-2-メチル-プロピル)-9H-カルバゾール、3-ニトロカルバゾール、4-ヒドロキシカルバゾール、3,6-ジニトロ-9H-カルバゾール、3,6-ジフェニル-9H-カルバゾール、2-ヒドロキシカルバゾール、3,6-ジアセチル-9-エチルカルバゾールなどのカルバゾール誘導体、ベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメトキシ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2-ベンゾイル安息香酸メチルエステル、2-メチルベンゾフェノン、3-メチルベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノンなどのベンゾフェノン誘導体、芳香族カルボニル化合物、[4-(4-メチルフェニルチオ)フェニル]-フェニルメタノン、キサントン、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、4-クロロチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントンなどのチオキサントン誘導体やクマリン誘導体などが挙げられる。
【0227】
開裂型光ラジカル発生剤は、活性エネルギー線を照射することにより当該化合物が開裂してラジカルを発生するタイプの光ラジカル発生剤であり、その具体例として、ベンゾインエーテル誘導体、アセトフェノン誘導体などのアリールアルキルケトン類、オキシムケトン類、アシルホスフィンオキシド類、チオ安息香酸S-フェニル類、チタノセン類、およびそれらを高分子量化した誘導体が挙げられるがこれに限定されるものではない。市販されている開裂型光ラジカル発生剤としては、1-(4-ドデシルベンゾイル)-1-ヒドロキシ-1-メチルエタン、1-(4-イソプロピルベンゾイル)-1-ヒドロキシ-1-メチルエタン、1-ベンゾイル-1-ヒドロキシ-1-メチルエタン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-ベンゾイル]-1-ヒドロキシ-1-メチルエタン、1-[4-(アクリロイルオキシエトキシ)-ベンゾイル]-1-ヒドロキシ-1-メチルエタン、ジフェニルケトン、フェニル-1-ヒドロキシ-シクロヘキシルケトン、ベンジルジメチルケタール、ビス(シクロペンタジエニル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-ピリル-フェニル)チタン、(η6-イソプロピルベンゼン)-(η5-シクロペンタジエニル)-鉄(II)ヘキサフルオロホスフェート、トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシ-ベンゾイル)-(2,4,4-トリメチル-ペンチル)-ホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-2,4-ジペントキシフェニルホスフィンオキシドまたはビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニル-ホスフィンオキシド、(4-モルホリノベンゾイル)-1-ベンジル-1-ジメチルアミノプロパン、4-(メチルチオベンゾイル)-1-メチル-1-モルホリノエタンなどが挙げられるがこれに限定されるものではない。
【0228】
本発明で使用される活性エネルギー硬化型接着剤の中で、電子線硬化型に含まれる光ラジカル発生剤、すなわち水素引き抜き型または開裂型光ラジカル発生剤は、いずれもそれぞれ単独で用いることができる他、複数を組み合わせて用いても良いが、光ラジカル発生剤単体の安定性や、硬化性の面でより好ましいものは開裂型光ラジカル発生剤の1種以上の組み合わせである。開裂型光ラジカル発生剤の中でもアシルホスフィンオキシド類が好ましく、より具体的には、トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(商品名「DAROCURE TPO」;チバ・ジャパン(株))、ビス(2,6-ジメトキシ-ベンゾイル)-(2,4,4-トリメチル-ペンチル)-ホスフィンオキシド(商品名「CGI 403」;チバ・ジャパン(株))、またはビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-2,4-ジペントキシフェニルホスフィンオキシド(商品名「Irgacure819」;チバ・ジャパン(株))が好ましい。
【0229】
活性エネルギー線硬化型接着剤は、必要に応じて増感剤を含有することができる。増感剤を使用することにより、反応性が向上し、接着剤層の機械強度や接着強度をさらに向上させることができる。増感剤としては、前述したものを適宜適用できる。
【0230】
増感剤を配合する場合、その配合量は、活性エネルギー線硬化型接着剤の総量100質量部に対し、0.1~20質量部の範囲とすることが好ましい。
【0231】
活性エネルギー線硬化型接着剤には、その効果を損なわない範囲で各種の添加剤を配合することができる。配合しうる添加剤として、例えば、イオントラップ剤、酸化防止剤、連鎖移動剤、粘着付与剤、熱可塑性樹脂、充填剤、流動調整剤、可塑剤、消泡剤などが挙げられる。
【0232】
活性エネルギー線硬化型接着剤を構成するこれらの各成分は、通常、溶剤に溶かした状態で使用される。活性エネルギー線硬化型接着剤が溶剤を含む場合、活性エネルギー線硬化型接着剤を適当な基材上に塗布し、乾燥させることで、接着剤層が得られる。溶剤に溶解しない成分は、系中に分散した状態であればよい。
【0233】
前記接着剤層を本光学フィルム上に形成する方法としては、本光学フィルム表面に上記の接着剤組成物を直接塗布して接着剤層を形成する方法などが挙げられる。前記接着剤層の厚さは、通常0.001~5μm程度であり、好ましくは0.01μm以上、また好ましくは2μm以下、さらに好ましくは1μm以下である。接着剤層が厚すぎると、偏光板の外観不良となりやすい。
【0234】
活性エネルギー線硬化型接着剤は、前述した塗布方法によりフィルムに塗工することができる。この際、活性エネルギー線硬化型接着剤の粘度としては、種々方法で塗工できる粘度を有するものであればよいが、その温度25℃における粘度は、10~30,000mPa・sec の範囲にあることが好ましく、50~6,000mPa・sec の範囲にあることがより好ましい。その粘度があまり小さいと、ムラのない均質な塗膜が得られにくくなる傾向にある。一方、その粘度があまり大きいと、流動しにくくなって、同じくムラのない均質な塗膜が得られにくくなる傾向にある。ここでいう粘度は、B型粘度計を用いてその接着剤を25℃に調温した後、60rpm で測定される値である。
【0235】
上記活性エネルギー線硬化型接着剤は、電子線硬化型、紫外線硬化型の態様で用いることができる。本発明の活性エネルギー線とは、活性種を発生する化合物を分解して活性種を発生させることのできるエネルギー線と定義される。このような活性エネルギー線としては、可視光、紫外線、赤外線、X線、α線、β線、γ線及び電子線等が挙げられる。
【0236】
電子線硬化型において、電子線の照射条件は、上記活性エネルギー線硬化型接着剤を硬化しうる条件であれば、任意の適切な条件を採用できる。例えば、電子線照射は、加速電圧が好ましくは5kV~300kVであり、さらに好ましくは10kV~250kVである。加速電圧が5kV未満の場合、電子線が接着剤まで届かず硬化不足となるおそれがあり、加速電圧が300kVを超えると、試料を通る浸透力が強すぎて電子線が跳ね返り、透明保護フィルムや偏光子に損傷を与えるおそれがある。照射線量としては、5~100kGy、さらに好ましくは10~75kGyである。照射線量が5kGy未満の場合は、接着剤が硬化不足となり、100kGyを超えると、透明保護フィルムや偏光子に損傷を与え、機械的強度の低下や黄変を生じ、所望の光学特性を得ることができない。
【0237】
電子線照射は、通常、不活性ガス中で照射を行うが、必要であれば大気中や酸素を少し導入した条件で行ってもよい。透明保護フィルムの材料によるが、酸素を適宜導入することによって、最初に電子線があたる透明保護フィルム面にあえて酸素阻害を生じさせ、透明保護フィルムへのダメージを防ぐことができ、接着剤にのみ効率的に電子線を照射させることができる。
【0238】
紫外線硬化型において、活性エネルギー線硬化型接着剤の光照射強度は、接着剤の組成ごとに決定されるものであって特に限定されないが、10~5000mW/cm2であることが好ましい。樹脂組成物への光照射強度が10mW/cm2未満であると、反応時間が長くなりすぎ、5000mW/cm2を超えると、光源から輻射される熱および組成物の重合時の発熱により、接着剤の構成材料の黄変や偏光子の劣化を生じる可能性がある。
なお、照射強度は、好ましくは光カチオン重合開始剤の活性化に有効な波長領域における強度であり、より好ましくは波長400nm以下の波長領域における強度であり、さらに好ましくは波長280~320nmの波長領域における強度である。このような光照射強度で1回あるいは複数回照射して、その積算光量が10mJ/cm2以上、好ましくは10~5,000mJ/cm2となるように設定されることが好ましい。上記接着剤への積算光量が10mJ/cm2未満であると、重合開始剤由来の活性種の発生が十分でなく、接着剤の硬化が不十分となる。一方でその積算光量が5,000mJ/cm2を超えると、照射時間が非常に長くなり、生産性向上には不利なものとなる。この際、使用するフィルムや接着剤種の組み合わせなどによって、どの波長領域(UVA(320~390nm)やUVB(280~320nm)など)での積算光量が必要かは異なる。
【0239】
本発明における活性エネルギー線の照射により接着剤の重合硬化を行うために用いる光源は、特に限定されないが、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、ハロゲンランプ、カーボンアーク灯、タングステンランプ、ガリウムランプ、エキシマレーザー、波長範囲380~440nmを発光するLED光源、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプが挙げられる。エネルギーの安定性や装置の簡便さという観点から、波長400nm以下に発光分布を有する紫外光源であることが好ましい。
【0240】
[円偏光板]
本光学フィルムは偏光板と組み合わせることで、本光学フィルムと偏光板とを備える円偏光板(以下、本円偏光板ということがある。)を得ることができる。本光学フィルムと偏光板とは、通常、接着剤で貼り合わされる。好ましくは活性エネルギー線硬化型接着剤で貼り合わされる。
第一位相差層が一層のみから構成され、かつ遅相軸が一つしか存在しない場合、本光学フィルムの第一の位相差層の遅相軸(光軸)に対して、該偏光板の透過軸が実質的に45°となるように設定するのが好ましい。実質的に45°とは、通常45±5°の範囲である。
図3に、本円偏光板110の模式図を示す。
【0241】
図3で示す本円偏光板で用いる偏光板は、偏光子の片面に保護フィルムを有するものでもよく、偏光子の両面に保護フィルムを有するものであってもよい。
図3(c)~
図3(h)は基材上に第一及び第二の位相差層を形成した本光学フィルムからなる円偏光板であり、これらの基材は、偏光子の片面に保護フィルムを有する偏光板を用いた場合の他方の面の保護フィルムとしての機能も果たすことができる。
図3(a)及び
図3(b)で示す構成は基材を有さない本光学フィルムを積層してなるが、偏光板上に重合性液晶組成物を直接塗布して位相差層を形成してもよく、偏光子面に接着剤を用いて位相差層を貼合してもよく、偏光板上に接着剤を用いて位相差層を貼合してもよい。
【0242】
偏光子面又は偏光板等のその他の基材へ、基材を有さない本光学フィルムを貼合する方法としては、基材を取り除いた本光学フィルムを、接着剤を用いてその他の基材へ貼合する方法、及び、本光学フィルムを、接着剤を用いてその他の基材へ貼合した後に基材を取り除く方法等が挙げられる。この際、接着剤は、本光学フィルムが有する位相差層側に塗布されてもよく、また、その他の基材側へ塗布されてもよい。基材と、位相差層との間に配向膜がある場合は、基材と共に配向膜も取り除いてもよい。
【0243】
位相差層又は配向膜等と化学結合を形成する官能基を表面に有する基材は、位相差層又は配向膜等と化学結合を形成し、取り除き難くなる傾向がある。よって基材を剥離して取り除く場合は、表面の官能基が少ない基材が好ましく、また、表面に官能基を形成する表面処理を施していない基材が好ましい。
また、基材と化学結合を形成する官能基を有する配向膜は、基材と配向膜との密着力が大きくなる傾向があるため、基材を剥離して取り除く場合は、基材と化学結合を形成する官能基が少ない配向膜が好ましい。また、基材と配向膜とを架橋する試薬が含まれないことが好ましく、さらに、配向性ポリマー組成物及び光配向膜形成用組成物等の溶液には基材を溶解する、溶剤等の成分が含まれないことが好ましい。
また、位相差層と化学結合を形成する官能基を有する配向膜は、位相差層と配向膜との密着力が大きくなる傾向がある。よって基材と共に配向膜を取り除く場合は、位相差層と化学結合を形成する官能基が少ない配向膜が好ましい。また、位相差層及び配向膜には、位相差層と配向膜とを架橋する試薬が含まれないことが好ましい。
また、配向膜と化学結合を形成する官能基を有する位相差層は、配向膜と位相差層との密着力が大きくなる傾向がある。よって基材を取り除く場合又は、基材と共に配向膜を取り除く場合は、基材又は配向膜と化学結合を形成する官能基が少ない位相差層が好ましい。また、重合性液晶組成物は、好ましくは基材又は配向膜と位相差層とを架橋する試薬を含まない。
【0244】
例えば、基材、第二の位相差層及び、第一の位相差層がこの順番で積層された本光学フィルムの第一の位相差層の表面に接着剤を塗布し、そこへ偏光板を貼合し、その後、本光学フィルムの基材を取り除くことで、偏光板、第一の位相差層及び、第二の位相差層がこの順番で積層された、
図3(a)で示される構成の円偏光板を製造することができる。また、基材、第一の位相差層及び、第二の位相差層がこの順番で積層された本光学フィルムの第二の位相差層の表面に接着剤を塗布し、そこへ偏光板を貼合し、その後、本光学フィルムの基材を取り除くことで、偏光板、第二の位相差祖及び、第一の位相差層がこの順番で積層された、
図3(b)で示される構成の円偏光板を製造することができる。
図3(i)~
図3(n)で示す構成は、基材を2枚有する本光学フィルムを積層してなるものである。
【0245】
第一の位相差層が層A及び層Bを含む場合、又は、第三の位相差層を含む場合の本円偏光板の構成を
図4に示す。層A及び層B、又は、第三の位相差層を含む構成の場合は、偏光板を積層する位置に制限がある。
具体的には、λ/4の位相差を有する層Aと、λ/2の位相差を有する層Bを積層する場合、偏光板の吸収軸に対して、まず層Bを、層Bの遅相軸が75°となるように形成し、次に層Aを、層Aの遅相軸が15°となるように形成する。
また、λ/4の位相差を有する第一の位相差層と、λ/2の位相差を有する第三の位相差層を有する場合、偏光板の吸収軸に対して、まず第三の位相差層を、第三の位相差層の遅相軸が75°となるように形成し、次に第一の位相差層を、第一の位相差層の遅相軸が15°となるように形成する。第二の位相差層の位置に制限はないが、偏光板、層B及び層Aがこの順番で積層されか、又は、偏光板、第三の位相差層及び第一の位相差層がこの順番で積層される必要がある。このように積層することで、得られる円偏光板は広帯域λ/4板として機能を発現することが可能となる。ここで、層Aと層Bを形成する軸角度に制限はなく、例えば、特開2004-126538号公報に記載のように、層Aと層Bの遅相軸角度を偏光板の吸収軸に対して30°と-30°、あるいは45°と-45°としても、広帯域λ/4板としての機能を発現させることができることは公知であるから、所望の方法で層を積層することが可能である。
図4(a)及び
図4(b)で示す構成は基材を有さない本光学フィルムを積層してなるが、これらの構成を有する円偏光板は、上記した
図3(a)及び
図3(b)で示される構成の円偏光板の製造方法と同様の方法によって製造することができる。
【0246】
本円偏光板は、さまざまな表示装置に用いることができるが、特に、有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置及び無機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置、およびタッチパネルを備える有機エレクトロルミネッセンス表示装置に有効に用いることができる。
【0247】
<偏光板>
偏光板は、偏光機能を有するフィルムであればよい。当該フィルムとしては、吸収異方性を有する色素を吸着させた延伸フィルム、又は、吸収異方性を有する色素を塗布したフィルムを偏光子として含むフィルム等が挙げられる。吸収異方性を有する色素としては、例えば、二色性色素が挙げられる。
【0248】
吸収異方性を有する色素を吸着させた延伸フィルムを偏光子として含むフィルムは通常、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを一軸延伸する工程、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色することにより、その二色性色素を吸着させる工程、二色性色素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液で処理する工程、及びホウ酸水溶液による処理後に水洗する工程を経て製造された偏光子の少なくとも一方の面に接着剤を介して透明保護フィルムで挟み込むことで作製される。
【0249】
ポリビニルアルコール系樹脂は、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化することによって得られる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニルとそれに共重合可能な他の単量体との共重合体が用いられる。酢酸ビニルに共重合可能な他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類、アンモニウム基を有するアクリルアミド類などが挙げられる。
【0250】
ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、通常85~100モル%程度であり、好ましくは98モル%以上である。ポリビニルアルコール系樹脂は変性されていてもよく、例えば、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマールやポリビニルアセタールも使用することができる。ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、通常1,000~10,000程度であり、好ましくは1,500~5,000の範囲である。
【0251】
このようなポリビニルアルコール系樹脂を製膜したものが、偏光板の原反フィルムとして用いられる。ポリビニルアルコール系樹脂を製膜する方法は、特に限定されるものでなく、公知の方法で製膜することができる。ポリビニルアルコール系原反フィルムの膜厚は、例えば、10~150μm 程度とすることができる。
【0252】
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの一軸延伸は、二色性色素による染色の前、染色と同時、又は染色の後で行うことができる。一軸延伸を染色の後で行う場合、この一軸延伸は、ホウ酸処理の前に行ってもよいし、ホウ酸処理中に行ってもよい。また、これらの複数の段階で一軸延伸を行うことも可能である。一軸延伸にあたっては、周速の異なるロール間で一軸に延伸してもよいし、熱ロールを用いて一軸に延伸してもよい。また一軸延伸は、大気中で延伸を行う乾式延伸であってもよいし、溶剤を用い、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを膨潤させた状態で延伸を行う湿式延伸であってもよい。延伸倍率は、通常3~8倍程度である。
【0253】
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの二色性色素による染色は、例えば、二色性色素を含有する水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬する方法によって行われる。
二色性色素として、具体的には、ヨウ素や二色性の有機染料が用いられる。二色性の有機染料としては、C.I. DIRECT RED 39などのジスアゾ化合物からなる二色性直接染料及び、トリスアゾ、テトラキスアゾなどの化合物からなる二色性直接染料等が挙げられる。ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、染色処理の前に、水への浸漬処理を施しておくことが好ましい。
【0254】
二色性色素としてヨウ素を用いる場合は通常、ヨウ素及びヨウ化カリウムを含有する水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液におけるヨウ素の含有量は、水100質量部あたり、通常 0.01~1質量部程度である。またヨウ化カリウムの含有量は、水100質量部あたり、通常 0.5~20質量部程度である。染色に用いる水溶液の温度は、通常20~40℃程度である。また、この水溶液への浸漬時間(染色時間)は、通常20~1,800秒程度である。
【0255】
一方、二色性色素として二色性の有機染料を用いる場合は通常、水溶性二色性染料を含む水溶液にポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。
この水溶液における二色性有機染料の含有量は、水100質量部あたり、通常1×10-4~10質量部程度であり、好ましくは1×10-3~1質量部であり、さらに好ましくは1×10-3~1×10-2質量部である。この水溶液は、硫酸ナトリウムのような無機塩を染色助剤として含んでいてもよい。染色に用いる二色性染料水溶液の温度は、通常20~80℃程度である。また、この水溶液への浸漬時間(染色時間)は、通常10~1,800秒程度である。
【0256】
二色性色素による染色後のホウ酸処理は通常、染色されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液に浸漬する方法により行うことができる。このホウ酸水溶液におけるホウ酸の含有量は、水100質量部あたり、通常2~15質量部程度であり、好ましくは5~12質量部である。二色性色素としてヨウ素を用いた場合には、このホウ酸水溶液はヨウ化カリウムを含有することが好ましく、その場合のヨウ化カリウムの含有量は、水100質量部あたり、通常 0.1~15質量部程度であり、好ましくは5~12質量部である。ホウ酸水溶液への浸漬時間は、通常 60~1,200秒程度であり、好ましくは150~600秒、さらに好ましくは200~400秒である。ホウ酸処理の温度は、通常50℃以上であり、好ましくは50~85℃、さらに好ましくは60~80℃である。
【0257】
ホウ酸処理後のポリビニルアルコール系樹脂フィルムは通常、水洗処理される。水洗処理は、例えば、ホウ酸処理されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを水に浸漬する方法により行うことができる。水洗処理における水の温度は、通常5~40℃程度である。
また浸漬時間は、通常1~120秒程度である。
【0258】
水洗後に乾燥処理が施されて、偏光子が得られる。乾燥処理は例えば、熱風乾燥機や遠赤外線ヒーターを用いて行うことができる。乾燥処理の温度は、通常30~100℃程度であり、好ましくは50~80℃である。乾燥処理の時間は、通常60~600秒程度であり、好ましくは120~600秒である。乾燥処理により、偏光子の水分率は実用程度にまで低減される。その水分率は、通常5~20重量%程度であり、好ましくは8~15重量%である。水分率が5重量%を下回ると、偏光子の可撓性が失われ、偏光子がその乾燥後に損傷したり、破断したりすることがある。また、水分率が20重量%を上回ると、偏光子の熱安定性が悪くなる可能性がある。
【0259】
こうしてポリビニルアルコール系樹脂フィルムに、一軸延伸、二色性色素による染色、ホウ酸処理、水洗及び乾燥をして得られる偏光子の厚さは好ましくは5~40μmである。
【0260】
吸収異方性を有する色素を塗布したフィルムとしては、液晶性を有する二色性色素を含む組成物又は、二色性色素と重合性液晶とを含む組成物を塗布して得られるフィルム等が挙げられる。当該フィルムは、好ましくは、その片面又は両面に保護フィルムを有する。
当該保護フィルムとしては、上記した基材と同一のものが挙げられる。
【0261】
吸収異方性を有する色素を塗布したフィルムは薄い方が好ましいが、薄すぎると強度が低下し、加工性に劣る傾向がある。当該フィルムの厚さは、通常20μm以下であり、好ましくは5μm以下であり、より好ましくは0.5μm以上3μm以下である。
【0262】
前記吸収異方性を有する色素を塗布したフィルムとしては、具体的には、特開2012-33249号公報等に記載のフィルムが挙げられる。
【0263】
このようにして得られた偏光子の少なくとも一方の面に、接着剤を介して透明保護フィルムを積層することにより偏光板が得られる。透明保護フィルムとしては、前述した基材と同様の透明フィルムを好ましく用いることができるし、本発明の光学フィルムを用いることもできる。
【0264】
本光学フィルム及び本円偏光板は、さまざまな表示装置に用いることができる。
表示装置とは、表示素子を有する装置であり、発光源として発光素子または発光装置を含む。表示装置としては、液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置、無機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置、タッチパネル表示装置、電子放出表示装置(例えば電場放出表示装置(FED)、表面電界放出表示装置(SED))、電子ペーパー(電子インクや電気泳動素子を用いた表示装置、プラズマ表示装置、投射型表示装置(例えばグレーティングライトバルブ(GLV)表示装置、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)を有する表示装置)および圧電セラミックディスプレイなどが挙げられる。液晶表示装置は、透過型液晶表示装置、半透過型液晶表示装置、反射型液晶表示装置、直視型液晶表示装置および投写型液晶表示装置などのいずれをも含む。これらの表示装置は、2次元画像を表示する表示装置であってもよいし、3次元画像を表示する立体表示装置であってもよい。特に本円偏光板は有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置及び無機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置に有効に用いることができ、本光学補償偏光板は液晶表示装置及びタッチパネル表示装置に有効に用いることができる。
【0265】
図5は、本円偏光板を備えた有機EL表示装置200の概略図である。
図5(a)は、偏光板6、第一の位相差層1、第二の位相差層2及び有機ELパネル7が、この順番で積層された有機EL表示装置200である。
図5(c)は、偏光板6、基材3、第一の位相差層1、第二の位相差層2及び有機ELパネル7が、この順番で積層された有機EL表示装置200である。
図5(b)、(d)~(h)は、
図5(a)及び(c)とは積層順が異なる。
偏光板と、本光学フィルムと、有機ELパネルとを積層する方法としては、偏光板と本光学フィルムとを積層した本円偏光板を、有機ELパネルに貼合する方法、及び、有機ELパネルに本光学フィルムを貼合し、さらに該本光学フィルムの表面に偏光板を貼合する方法等が挙げられる。貼合には、通常、接着剤が用いられる。
例えば、
図5(a)で示される有機EL表示装置200は、
図3(a)で示される本円偏光板の第二の位相差層2の表面に接着剤を塗布し、そこへ有機ELパネル7を貼合することで製造することができる。また、
図5(a)で示される有機EL表示装置200は、
図1(b)で示される本光学フィルムの第二の位相差層2の表面に接着剤を塗布し、そこへ有機ELパネル7を貼合し、本光学フィルムの基材3を取り除き、基材を取り除くことで現れた第一の位相差層1の表面に接着剤を塗布し、そこへ偏光板6を貼合することでも製造することができる。
【0266】
図6は、有機EL表示装置30を表わす概略図である。
図6(a)で示した有機EL表示装置30は、本円偏光板31を備えており、層間絶縁膜33を介して、画素電極34が形成された基板32上に、発光層35、およびカソード電極36が積層されたものである。基板32を挟んで発光層35と反対側に、本円偏光板31が配置される。画素電極34にプラスの電圧、カソード電極36にマイナスの電圧を加え、画素電極34およびカソード電極36間に直流電流を印加することにより、発光層35が発光する。発光層35は、電子輸送層、発光層および正孔輸送層などからなる。発光層35から出射した光は、画素電極34、層間絶縁膜33、基板32、本円偏光板31を通過する。
【0267】
有機EL表示装置30を製造するには、まず、基板32上に薄膜トランジスタ38を所望の形状に形成する。そして層間絶縁膜33を成膜し、次いで画素電極34をスパッタ法で成膜し、パターニングする。その後、発光層35を積層する。
【0268】
次いで、基板32の薄膜トランジスタ38が設けられている面の反対の面に、本円偏光板31を設ける。その場合には、本円偏光板31における偏光板が、外側(基板32の反対側)になるように配置される。
【0269】
基板32としては、サファイアガラス基板、石英ガラス基板、ソーダガラス基板およびアルミナなどのセラミック基板;銅などの金属基板;プラスチック基板などが挙げられる。図示はしないが、基板32上に熱伝導性膜を形成してもよい。熱伝導性膜としては、ダイヤモンド薄膜(DLCなど)などが挙げられる。画素電極34を反射型とする場合は、基板32とは反対方向へ光が出射する。したがって、透明材料だけでなく、ステンレスなどの非透過材料を用いることができる。基板は単一で形成されていてもよく、複数の基板を接着剤で貼り合わせて積層基板として形成されていていてもよい。また、これらの基板は、板状のものに限定するものではなく、フィルムであってもよい。
【0270】
薄膜トランジスタ38としては、例えば、多結晶シリコントランジスタなどを用いればよい。薄膜トランジスタ38は、画素電極34の端部に設けられ、その大きさは10~30μm程度である。なお、画素電極34の大きさは20μm×20μm~300μm×300μm程度である。
【0271】
基板32上には、薄膜トランジスタ38の配線電極が設けられている。配線電極は抵抗が低く、画素電極34と電気的に接続して抵抗値を低く抑える機能があり、一般的にはその配線電極は、Al、Alおよび遷移金属(ただしTiを除く)、Tiまたは窒化チタン(TiN)のいずれか1種または2種以上を含有するものが使われる。
【0272】
薄膜トランジスタ38と画素電極34との間には層間絶縁膜33が設けられる。層間絶縁膜33は、SiO2などの酸化ケイ素、窒化ケイ素などの無機系材料をスパッタや真空蒸着で成膜したもの、SOG(スピン・オン・グラス)で形成した酸化ケイ素層、フォトレジスト、ポリイミドおよびアクリル樹脂などの樹脂系材料の塗膜など、絶縁性を有するものであればいずれであってもよい。
【0273】
層間絶縁膜33上に、リブ39を形成する。リブ39は、画素電極34の周辺部(隣接画素間)に配置されている。リブ39の材料としては、アクリル樹脂およびポリイミド樹脂などが挙げられる。リブ39の厚みは、好ましくは1.0μm以上3.5μmであり、より好ましくは1.5μm以上2.5μm以下である。
【0274】
次に、画素電極34と、発光層35と、カソード電極36とからなるEL素子について説明する。発光層35は、それぞれ少なくとも1層のホール輸送層および発光層を有し、例えば、電子注入輸送層、発光層、正孔輸送層および正孔注入層を順次有する。
【0275】
画素電極34としては、例えば、ITO(錫ドープ酸化インジウム)、IZO(亜鉛ドープ酸化インジウム)、IGZO、ZnO、SnO2およびIn2O3などが挙げられるが、特にITOやIZOが好ましい。画素電極35の厚さは、ホール注入を十分行える一定以上の厚さを有すればよく、10~500nm程度とすることが好ましい。
【0276】
画素電極34は、蒸着法(好ましくはスパッタ法)により形成することができる。スパッタガスとしては、特に制限するものではなく、Ar、He、Ne、KrおよびXeなどの不活性ガス、あるいはこれらの混合ガスを用いればよい。
【0277】
カソード電極36の構成材料としては例えば、K、Li、Na、Mg、La、Ce、Ca、Sr、Ba、Al、Ag、In、Sn、ZnおよびZrなどの金属元素が用いられればよいが、電極の作動安定性を向上させるためには、例示した金属元素から選ばれる2成分または3成分の合金系を用いることが好ましい。合金系としては、例えばAg・Mg(Ag:1~20at%)、Al・Li(Li:0.3~14at%)、In・Mg(Mg:50~80at%)およびAl・Ca(Ca:5~20at%)などが好ましい。
【0278】
カソード電極36は、蒸着法およびスパッタ法などにより形成される。カソード電極37の厚さは、0.1nm以上、好ましくは1~500nm以上であることが好ましい。
【0279】
正孔注入層は、画素電極34からの正孔の注入を容易にする機能を有し、正孔輸送層は、正孔を輸送する機能および電子を妨げる機能を有し、電荷注入層や電荷輸送層とも称される。
【0280】
発光層の厚さ、正孔注入層と正孔輸送層とを併せた厚さ、および電子注入輸送層の厚さは特に限定されず、形成方法によっても異なるが、5~100nm程度とすることが好ましい。正孔注入層や正孔輸送層には、各種有機化合物を用いることができる。正孔注入輸送層、発光層および電子注入輸送層の形成には、均質な薄膜が形成できる点で真空蒸着法を用いることができる。
【0281】
発光層35としては、1重項励起子からの発光(蛍光)を利用するもの、3重項励起子からの発光(燐光)を利用するもの、1重項励起子からの発光(蛍光)を利用するものと3重項励起子からの発光(燐光)を利用するものとを含むもの、有機物によって形成されたもの、有機物によって形成されたものと無機物によって形成されたものとを含むもの、高分子の材料、低分子の材料、高分子の材料と低分子の材料とを含むものなどを用いることができる。ただし、これに限定されず、EL素子用として公知の様々なものを用いた発光層35を、有機EL表示装置30に用いることができる。
【0282】
カソード電極36と封止層37との空間には、乾燥剤(図示しない)を配置する。これは、発光層35は湿度に弱いためである。乾燥剤により水分を吸収し発光層35の劣化を防止する。
【0283】
図6(b)で示した本発明の有機EL表示装置30は、本円偏光板31を備えており、層間絶縁膜33を介して、画素電極34が形成された基板32上に、発光層35、およびカソード電極36が積層されたものである。カソード電極上に封止層37が形成され、基板32と反対側に、本円偏光板31が配置される。発光層35から出射した光は、カソード電極36、封止層37、本円偏光板31を通過する。
【実施例】
【0284】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。例中の「%」および「部」は、特記ない限り、質量%および質量部である。
シクロオレフィンポリマーフィルム(COP)には、日本ゼオン株式会社製のZF-14を用いた。
コロナ処理装置には、春日電機株式会社製のAGF-B10を用いた。
コロナ処理は、上記コロナ処理装置を用いて、出力0.3kW、処理速度3m/分の条件で1回行った。
偏光UV照射装置には、ウシオ電機株式会社製の偏光子ユニット付SPOT CURE SP-7を用いた。
レーザー顕微鏡には、オリンパス株式会社製のLEXTを用いた。
高圧水銀ランプには、ウシオ電機株式会社製のユニキュアVB―15201BY-Aを用いた。
位相差値は、王子計測機器社製のKOBRA-WRを用いて測定した。
【0285】
実施例1
[光配向膜形成用組成物の調製]
下記成分を混合し、得られた混合物を80℃で1時間攪拌することにより、光配向膜形成用組成物(1)を得た。
光配向性材料(5部):
溶剤(95部):シクロペンタノン
【0286】
[配向性ポリマー組成物(1)の調製]
配向性ポリマー組成物(1)の組成を、表1に示す、市販の配向性ポリマーであるサンエバーSE-610(日産化学工業株式会社製)に2-ブトキシエタノールを加えて配向性ポリマー組成物(1)を得た。
【0287】
[配向性ポリマー組成物(2)の調製]
配向性ポリマー組成物(2)の組成を、表1に示す、市販のポリビニルアルコール (ポリビニルアルコール1000完全ケン化型、和光純薬工業株式会社製)に水を加えて100℃で1時間加熱し、配向性ポリマー組成物(2)を得た。
【0288】
【表1】
表1における値は、調製した組成物の全量に対する各成分の含有割合を表す。SE-610については、固形分量を納品仕様書に記載の濃度から換算した。
【0289】
[組成物(A-1)の調製]
下記の成分を混合し、得られた混合物を80℃で1時間攪拌することにより、組成物(A-1)を得た。
【0290】
重合性液晶A1および重合性液晶A2は、特開2010-31223号公報記載の方法で合成した。
重合性液晶A1(80部):
【0291】
【0292】
重合開始剤(6部):
2-ジメチルアミノ-2-ベンジル-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン(イルガキュア369;チバ スペシャルティケミカルズ社製)
レベリング剤(0.1部):ポリアクリレート化合物(BYK-361N;BYK-Chemie社製)
溶剤:シクロペンタノン(400部)
【0293】
[組成物(B-1)の調製]
組成物(B-1)の組成を表2に示す。各成分を混合し、得られた溶液を80℃で1時間攪拌した後、室温まで冷却し、組成物(B-1)を得た。
【0294】
【表2】
表2における括弧内の値は、調製した組成物の全量に対する各成分の含有割合を表す。
表2におけるLR9000は、BASFジャパン社製のLaromer(登録商標)LR-9000を、Irg907は、BASFジャパン社製のイルガキュア(登録商標)907を、BYK361Nは、ビックケミージャパン製のレベリング剤を、LC242は、下記式で示されるBASF社製の重合性液晶を、PGMEAは、プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタートを表す。
【0295】
[保護層形成用組成物の調整]
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(アロニックス(登録商標)M-403 東亞合成株式会社製)50部、アクリレート樹脂(エベクリル4858 ダイセルユーシービー株式会社製)50部、2-メチル-1[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モリフォリノプロパン-1-オン(イルガキュア(登録商標)907;チバ スペシャルティケミカルズ社製)3部及び、プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタート(PGMEA)250部を混合し、保護層形成用組成物(1)を得た。
【0296】
[第一の位相差層(1-1)の製造]
シクロオレフィンポリマーフィルム(COP)(ZF-14、日本ゼオン株式会社製)を、コロナ処理装置(AGF-B10、春日電機株式会社製)を用いて出力0.3kW、処理速度3m/分の条件で1回処理した。コロナ処理を施した表面に、光配向膜形成用組成物(1)をバーコーター塗布し、80℃で1分間乾燥し、偏光UV照射装置(SPOT CURE SP-7;ウシオ電機株式会社製)を用いて、100mJ/cm2の積算光量で偏光UV露光を実施した。得られた配向膜の膜厚をレーザー顕微鏡(LEXT、オリンパス株式会社製)で測定したところ、100nmであった。続いて、配向膜上に組成物(A-1)を、バーコーターを用いて塗布し、120℃で1分間乾燥した後、高圧水銀ランプ(ユニキュアVB―15201BY-A、ウシオ電機株式会社製)を用いて、紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長:365nm、波長365nmにおける積算光量:1000mJ/cm2)することにより第一の位相差層(1-1)を形成し、位相差フィルム(1)を得た。得られた位相差フィルム(1)の位相差値を測定したところ、Re(550)=140nm、Rth(550)=68nmであった。また、波長450nmならびに波長650nmの位相差値を測定したところ、Re(450)=121nm、Re(650)=145nmであった。各波長での面内位相差値の関係は以下のとおりとなった。
Re(450)/Re(550)=0.86
Re(650)/Re(550)=1.04
すなわち、第一の位相差層(1-1)は下記式(1)、(2)及び(4)で表される光学特性を有した。なお、COPの波長550nmにおける位相差値は略0であるため、当該面内位相差値の関係には影響しない。
Re(450)/Re(550)≦1.00 (1)
1.00≦Re(650)/Re(550) (2)
100nm<Re(550)<160nm (4)
【0297】
[第二の位相差層(2-1)の製造]
COPの表面を、コロナ処理装置を用いて出力0.3kW、処理速度3m/分の条件で1回処理した。コロナ処理を施した表面に、配向性ポリマー組成物(1)を、バーコーターを用いて塗布し、90℃で1分間乾燥した。得られた配向膜の膜厚をレーザー顕微鏡で測定したところ、34nmであった。続いて、配向膜上に組成物(B-1)を、バーコーターを用いて塗布し、90℃で1分間乾燥した後、高圧水銀ランプを用いて、紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長365nmにおける積算光量:1000mJ/cm2)することにより第二の位相差層(2-1)を形成し、位相差フィルム(2)を得た。得られた第二の位相差層(2-1)の膜厚をレーザー顕微鏡で測定したところ、膜厚は450nmであった。また、得られた位相差フィルム(2)の波長550nmでの位相差値を測定したところRe(550)=1nm、Rth(550)=-70nmであった。すなわち、第二の位相差層(2-1)は下記式(3)で表される光学特性を有した。なお、COPの波長550nmにおける位相差値は略0であるため、当該光学特性には影響しない。
nx≒ny<nz (3)
【0298】
[光学フィルム(1)の製造]
位相差層フィルム(1)のCOP面と、位相差層フィルム(2)の第二の位相差層面とを粘着剤で貼合し、光学フィルム(1)を作成した。得られた光学フィルム(1)の位相差値を測定したところRe(550)=140nm、Rth(550)=2nmであった。また、波長450nmならびに波長650nmの位相差値を測定したところ、Re(450)=121nm、Re(650)=145nmであった。各波長での面内位相差値の関係は以下のとおりとなった。
Re(450)/Re(550)=0.86
Re(650)/Re(550)=1.04
すなわち、光学フィルム(1)は式(1)、(2)及び(4)で表される光学特性を有した。
【0299】
実施例2
[層A(A-1)の製造]
COPをコロナ処理した後、処理した面に配向性ポリマー組成物(2)を塗布し、加熱乾燥して、厚さ82nmの配向性ポリマーの膜を得た。得られた配向性ポリマーの膜の表面に、前記COPの長手方向から15°となる角度でラビング処理を施し、その上に組成物(B-1)を、バーコーターを用いて塗布し、100℃で1分間乾燥した後、高圧水銀ランプを用いて、紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長365nmにおける積算光量:1200mJ/cm2)することにより層A(A-1)を形成し、位相差フィルム(3)を得た。得られた層A(A-1)の膜厚をレーザー顕微鏡で測定したところ、膜厚は973nmであった。得られた位相差フィルム(3)の位相差値を測定したところ、Re(550)=135nmであり、配向角は前記COPの長手方向に対して15°であった。また、波長450nmならびに波長650nmの位相差値を測定したところ、Re(450)=145nm、Re(650)=132nmであった。各波長での面内位相差値の関係は以下のとおりとなった。
Re(450)/Re(550)=1.07
Re(650)/Re(550)=0.98
すなわち、層A(A-1)は下記式(4)、(6)及び(7)で表される光学特性を有した。
100nm<Re(550)<160nm (4)
Re(450)/Re(550)≧1.00 (6)
1.00≧Re(650)/Re(550) (7)
【0300】
[層B(B-1)の製造]
COPをコロナ処理し、その上に配向性ポリマー組成物(2)を塗布し、加熱乾燥して厚さ80nmの配向性ポリマーの膜を得た。得られた配向性ポリマーの膜の表面に、前記COPの長手方向から75°となる角度でラビング処理を施し、その上に組成物(B-1)を、バーコーターを用いて塗布し、100℃で1分間乾燥した後、高圧水銀ランプを用いて、紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長365nmにおける積算光量:1200mJ/cm2)することにより層B(B-1、)を形成し、位相差フィルム(4)を得た。得られた層B(B-1)の膜厚をレーザー顕微鏡で測定したところ、膜厚は1.94μmであった。得られた位相差フィルム(4)の位相差値を測定したところ、Re(550)=269nmであり、配向角は前記COPの長手方向に対して75°であった。。また、波長450nmならびに波長650nmの位相差値を測定したところ、Re(450)=290nm、Re(650)=265nmであった。各波長での面内位相差値の関係は以下のとおりとなった。
Re(450)/Re(550)=1.08
Re(650)/Re(550)=0.99
すなわち、層B(B-1)は下記式(5)、(6)及び(7)で表される光学特性を有した。
200nm<Re(550)<320nm (5)
Re(450)/Re(550)≧1.00 (6)
1.00≧Re(650)/Re(550) (7)
【0301】
[光学フィルム(2)の製造]
位相差フィルム(3)のCOP面と、位相差フィルム(4)の層B(B-1)面とを粘着剤で貼合し、さらに位相差フィルム(4)のCOP面と位相差フィルム(2)の第二の位相差層(2-1)面とを粘着剤で貼合し、光学フィルム(2)を作成した。したがって、前記COPの長手方向に対して、層A(A-1)の遅相軸は15°、層B(B-1)の遅相軸は75°となる。また、この光学フィルム(2)の位相差値を測定したところRe(550)=137nm、また、波長450nmならびに波長650nmの位相差値を測定したところ、Re(450)=100nm、Re(650)=160nmであった。各波長での面内位相差値の関係は以下のとおりとなった。
Re(450)/Re(550)=0.73
Re(650)/Re(550)=1.17
すなわち、光学フィルム(2)は式(1)、(2)及び(4)で表される光学特性を有した。
【0302】
実施例3
[光学フィルム(3)の製造]
実施例1の第一の位相差層(1-1)の製造と同様の方法で、COP上に第一の位相差層を形成し、第一の位相差層(1-2)を得た。次に、実施例1の第二の位相差層(2-1)の製造と同様の方法で、該第一の位相差層(1-2)の上に、配向性ポリマー組成物(1)を、バーコーターを用いて塗布し、90℃で1分間乾燥し配向膜を得た。得られた配向膜上に組成物(B-1)を、バーコーターを用いて塗布し、90℃で1分間乾燥した後、高圧水銀ランプを用いて、紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長365nmにおける積算光量:1000mJ/cm2)することにより、第一の位相差層(1-2)上に第二の位相差層(2-2)を形成し、光学フィルム(3)を得た。得られた光学フィルム(3)の位相差値を測定したところ、Re(450)=120nm、Re(550)=139nm、Re(650)=146nmであった。各波長での面内位相差値の関係は以下のとおりとなった。
Re(450)/Re(550)=0.87
Re(650)/Re(550)=1.05
すなわち、光学フィルム(3)は式(1)、(2)及び(4)で表される光学特性を有した。
【0303】
実施例4
[光学フィルム(4)の製造]
実施例1の第二の位相差層(2-1)の製造と同様の方法で、COP上に第二の位相差層を形成し、第二の位相差層(2-3)を得た。次に、第二の位相差層(2-3)の上に、配向性ポリマー組成物(2)を、バーコーターを用いて塗布し、100℃で1分間乾燥した。続いて、配向膜をラビング処理し、処理面に組成物(A-1)を、バーコーターを用いて塗布し、120℃で1分間乾燥した後、高圧水銀ランプを用いて、紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長365nmにおける積算光量:1000mJ/cm2)することにより、第二の位相差層(2-3)の上に第一の位相差層(1-3)を形成し、光学フィルム(4)を得た。得られた光学フィルム(3)の位相差値を測定したところ、Re(450)=121nm、Re(550)=139nm、Re(650)=146nmであった。
各波長での面内位相差値の関係は以下のとおりとなった。
Re(450)/Re(550)=0.87
Re(650)/Re(550)=1.05
すなわち、光学フィルム(4)は式(1)、(2)及び(4)で表される光学特性を有した。
【0304】
実施例5
[光学フィルム(5)の製造]
実施例2の層A(A-1)の製造と同様の方法で、コロナ処理装置を施したCOP上に位相差層を形成し、第一の位相差層(1-4)を得た。第一の位相差層(1-4)の遅相軸は、前記COPの長手方向に対して15°をなしていた。次に、得られた第一の位相差層(1-4)の上に、配向性ポリマー組成物(1)を、バーコーターを用いて塗布し、90℃で1分間乾燥して配向膜を得た。得られた配向膜上に組成物(B-1)を、バーコーターを用いて塗布し、90℃で1分間乾燥した後、高圧水銀ランプを用いて、紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長365nmにおける積算光量:1000mJ/cm2)し、第一の位相差層(1-4)の上に第二の位相差層(2-4)を形成した。続いて、第二の位相差層(2-4)をコロナ処理した後、その上に配向性ポリマー組成物(2)を、バーコーターを用いて塗布し、100℃で1分間乾燥した。乾燥された配向性ポリマーの表面に、前記COPの長手方向に対して75°となる角度でラビング処理を施して配向膜を得た、得られた配向膜の上に、組成物(B-1)を、バーコーターを用いて塗布し、100℃で1分間乾燥した後、高圧水銀ランプを用いて、紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長365nmにおける積算光量:1200mJ/cm2)することにより第三の位相差層(3-1)を形成した。したがって、前記COPの長手方向に対して、第一の位相差層(1-3)の遅相軸は15°、第三の位相差層(3-1)の遅相軸は75°となり、COP、第一の位相差層(1-4)、第二の位相差層(2-4)、第三の位相差層(3-1)の順で積層された光学フィルム(5)を得た。得られた光学フィルム(5)の位相差値を測定したところ、Re(450)=101nm、Re(550)=138nm、Re(650)=160nmであった。各波長での面内位相差値の関係は以下のとおりとなった。
Re(450)/Re(550)=0.73
Re(650)/Re(550)=1.16
すなわち、光学フィルム(3)は式(1)、(2)及び(4)で表される光学特性を有した。
【0305】
実施例6
[光学フィルム(6)の製造]
実施例1の第二の位相差層(2-1)の製造と同様の方法で、COP上に第二の位相差層を形成し、第二の位相差層(2-5)を得た。得られた第二の位相差層(2-5)面をコロナ処理した後、その上に配向性ポリマー組成物(2)を、バーコーターを用いて塗布し、100℃で1分間乾燥した。乾燥された配向性ポリマーの表面を前記COPの長手方向から15°となる角度でラビング処理を施し、その上に組成物(B-1)を、バーコーターを用いて塗布し、100℃で1分間乾燥した後、高圧水銀ランプを用いて、紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長365nmにおける積算光量:1200mJ/cm2)することにより層A(A-2)を形成した。得られた層A(A-2)の表面をコロナ処理した後、その上に配向性ポリマー組成物(2)を、バーコーターを用いて塗布し、100℃で1分間乾燥した。乾燥された配向性ポリマーの表面を長尺状フィルムの長手方向から75°となる角度でラビング処理を施し、その上に組成物(B-1)を、バーコーターを用いて塗布し、100℃で1分間乾燥した後、高圧水銀ランプを用いて、紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長365nmにおける積算光量:1200mJ/cm2)することにより層B(B-2)を形成し、光学フィルム(6)を得た。
光学フィルム(1)又は光学フィルム(2)と同様の構成を有する光学フィルム(6)は、光学フィルム(1)及び光学フィルム(2)と同様に式(1)、(2)及び(4)で表される光学特性を有する。
【0306】
実施例7
[光学フィルム(7)の製造]
実施例2の層A(A-1)の製造と同様に、COP上に層Aを形成し、層A(A-3)を得た。得られた層A(A-3)の表面をコロナ処理した後、その上に配向性ポリマー組成物(2)を、バーコーターを用いて塗布し、100℃で1分間乾燥した。乾燥された配向性ポリマーの表面を前記COPの長手方向から75°となる角度でラビング処理を施し、その上に組成物(B-1)を、バーコーターを用いて塗布し、100℃で1分間乾燥した後、高圧水銀ランプを用いて、紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長365nmにおける積算光量:1200mJ/cm2)することにより層B(B-3)を形成した。得られた層B(B-3)の表面をコロナ処理した後、配向性ポリマー組成物(1)を、バーコーターを用いて塗布し、90℃で1分間乾燥し配向膜を得た。得られた配向膜上に組成物(B-1)を、バーコーターを用いて塗布し、90℃で1分間乾燥した後、高圧水銀ランプを用いて、紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長365nmにおける積算光量:1000mJ/cm2)することにより、層B(B-3)上に第二の位相差層(2-6)を形成し、光学フィルム(7)を形成した。得られた光学フィルム(7)の位相差値を測定したところ、Re(450)=100nm、Re(550)=138nm、Re(650)=159nmであった。各波長での面内位相差値の関係は以下のとおりとなった。
Re(450)/Re(550)=0.72
Re(650)/Re(550)=1.15
すなわち、光学フィルム(3)は式(1)、(2)及び(4)で表される光学特性を有した。
【0307】
実施例8
[光学フィルム(8)の製造]
第一の位相差層(1-2)と配向膜との間に保護層(1)を形成した以外は実施例3と同様にして光学フィルムを製造し、光学フィルム(8)を得た。
保護層(1)は、第一の位相差層(1-2)をコロナ処理した後、その上に保護層形成用組成物を、バーコーターを用いて塗布し、90℃で1分間乾燥し、高圧水銀ランプを用いて、紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長365nmにおける積算光量:500mJ/cm2)することにより重合を行って形成した。得られた光学フィルム(8)の位相差値を測定したところ、Re(450)=120nm、Re(550)=139nm、Re(650)=144nmであった。各波長での面内位相差値の関係は以下のとおりとなった。
Re(450)/Re(550)=0.86
Re(650)/Re(550)=1.04
すなわち、光学フィルム(8)は式(1)、(2)及び(4)で表される光学特性を有した。
【0308】
実施例9
[光学フィルム(9)の製造]
実施例2の層A(A-1)の製造と同様の方法で、コロナ処理を施したCOP上に層Aを形成し、層A(A-4)を得た。次に、層A(A-4)にコロナ処理を施した後、その上に保護層形成用組成物を、バーコーターを用いて塗布し、90℃で1分間乾燥し、高圧水銀ランプを用いて、紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長365nmにおける積算光量:500mJ/cm2)することにより重合を行って保護層(2)を形成した。得られた保護層(2)の上に、実施例2と同様の方法で、層B(B-4)を形成し、さらにその上に、位相差フィルム(2)の第二の位相差層(2-1)面を粘着剤で貼合することで、光学フィルム(9)を得た。
光学フィルム(1)又は光学フィルム(2)と同様の構成を有する光学フィルム(9)は、光学フィルム(1)及び光学フィルム(2)と同様に式(1)、(2)及び(4)で表される光学特性を有する。
【0309】
実施例10
[光学フィルム(10)の製造]
第二の位相差層(2-4)と配向膜(1)との間に保護層(3)を形成した以外は、実施例5と同様にして光学フィルムを製造し、光学フィルム(10)を得た。
保護層(3)は、第二の位相差層(2-3)の上に保護層形成用組成物を、バーコーターを用いて塗布し、90℃で1分間乾燥し、高圧水銀ランプを用いて、紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長365nmにおける積算光量:500mJ/cm2)することにより重合を行って形成した。配向膜(1)は、保護層(3)にコロナ処理を施した後、その上に、配向性ポリマー組成物(2)を、バーコーターを用いて塗布し、100℃で1分間乾燥し、得られた配向性ポリマーの膜の表面を、COPの長手方向から75°となる角度でラビング処理することで得た。
光学フィルム(1)又は光学フィルム(2)と同様の構成を有する光学フィルム(10)は、光学フィルム(1)及び光学フィルム(2)と同様に式(1)、(2)及び(4)で表される光学特性を有する。
【0310】
実施例11
[光学フィルム(11)の製造]
実施例1の第一の位相差層(1-1)と同様にして、COPの上に第一の位相差層(1-5)を形成した。前記COPの、第一の位相差層(1-5)が形成された面とは逆側の面をコロナ処理し、その上に組成物(B-1)を、バーコーターを用いて塗布し、100℃で1分間乾燥した後、高圧水銀ランプを用いて、紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長365nmにおける積算光量:1000mJ/cm2)することにより第二の位相差層(2-6)を形成し、第一の位相差層(1-5)、基材及び第二の位相差層(2-6)をこの順に有する光学フィルム(11)を得た。得られた光学フィルム(11)の位相差値を測定したところ、Re(450)=120nm、Re(550)=139nm、Re(650)=146nmであった。各波長での面内位相差値の関係は以下のとおりとなった。
Re(450)/Re(550)=0.86
Re(650)/Re(550)=1.05
すなわち、光学フィルム(11)は式(1)、(2)及び(4)で表される光学特性を有した。
【0311】
実施例12
[光学フィルム(12)の製造]
COPをコロナ処理した後、光配向膜形成用組成物(1)をバーコーター塗布し、80℃で1分間乾燥し、偏光UV照射装置を用いて、100mJ/cm2の積算光量で偏光UV露光を実施した。偏光UV処理は、直線偏光が前記COPの長手方向から75°となる角度で施した。偏光UVを施した面に、組成物(B-1)を、バーコーターを用いて塗布し、100℃で1分間乾燥した後、高圧水銀ランプを用いて、紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長365nmにおける積算光量:1200mJ/cm2)し、層B(B-5)を形成した。層B(B-5)の遅相軸方向は、前記COPの長手方向に対して75°であった。次に、層B(B-5)をコロナ処理した後、配向性ポリマー組成物(2)を、バーコーターを用いて塗布し、100℃で1分間乾燥して配向性ポリマーの膜を得た。配向性ポリマーの膜の表面を前記COPの長手方向から15°となるようにラビング処理し、配向膜を得た。得られた配向膜の上に、組成物(B-1)を、バーコーターを用いて塗布し、100℃で1分間乾燥した後、高圧水銀ランプを用いて、紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長365nmにおける積算光量:1200mJ/cm2)することにより層A(A-5)を形成した。続いて、層A(A-5)をコロナ処理した後、配向性ポリマー組成物(1)を、バーコーターを用いて塗布し、90℃で1分間乾燥し、配向膜を得た。得られた配向膜上に組成物(B-1)を、バーコーターを用いて塗布し、90℃で1分間乾燥した後、高圧水銀ランプを用いて、紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長365nmにおける積算光量:1000mJ/cm2)することにより、層A(A-5)上に第二の位相差層(2-7)を形成し、光学フィルム(12)を得た。得られた光学フィルム(12)の位相差値を測定したところ、Re(450)=100nm、Re(550)=138nm、Re(650)=160nmであった。各波長での面内位相差値の関係は以下のとおりとなった。
Re(450)/Re(550)=0.72
Re(650)/Re(550)=1.16
すなわち、光学フィルム(12)は式(1)、(2)及び(4)で表される光学特性を有した。
【0312】
実施例13
[光学フィルム(13)の製造]
ケン化済みトリアセチルセルロースフィルム(TAC)(コニカミノルタ株式会社製、KC4UY)に配向性ポリマー組成物(1)を、バーコーターを用いて塗布し、90℃で1分間乾燥し、配向膜を得た。得られた配向膜の上に組成物(B-1)を、バーコーターを用いて塗布し、90℃で1分間乾燥した後、高圧水銀ランプを用いて、紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長365nmにおける積算光量:1000mJ/cm2)して第二の位相差層(2-8)を形成した。得られた第二の位相差層(2-8)をコロナ処理し、配向性ポリマー組成物(2)を、バーコーターを用いて塗布し、100℃で1分間乾燥し、配向性ポリマーの膜を得た。配向性ポリマーの膜の表面に、前記TACの長手方向から75°となる角度でラビング処理し、その上に組成物(B-1)を、バーコーターを用いて塗布し、100℃で1分間乾燥した後、高圧水銀ランプを用いて、紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長365nmにおける積算光量:1200mJ/cm2)して層B(B-6)を形成した。得られた層B(B-6)をコロナ処理し、配向性ポリマー組成物(2)を、バーコーターを用いて塗布し、100℃で1分間乾燥し配向性ポリマーの膜を得た。配向性ポリマーの膜の表面に、前記TACの長手方向から15°となる角度でラビング処理し、その上に、組成物(B-1)を、バーコーターを用いて塗布し、100℃で1分間乾燥した後、高圧水銀ランプを用いて、紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長365nmにおける積算光量:1200mJ/cm2)して、層A(A-6)を形成し、光学フィルム(13)を得た。
光学フィルム(1)又は光学フィルム(2)と同様の構成を有する光学フィルム(13)は、光学フィルム(1)及び光学フィルム(2)と同様に式(1)、(2)及び(4)で表される光学特性を有する。
【0313】
実施例14
[光学フィルム(14)の製造]
実施例5と同様に、COP上に層A(A-7)を形成した。層Aの遅相軸はフィルムの長手方向に対して15°であった。次に、層A(A-7)面をコロナ処理した後、配向性ポリマー組成物(2)を、バーコーターを用いて塗布し、100℃で1分間乾燥して配向性ポリマーの膜を得た。配向性ポリマーの膜の表面を長尺状フィルムの長手方向から75°となる角度でラビング処理を施し、その上に組成物(B-1)を、バーコーターを用いて塗布し、100℃で1分間乾燥した後、高圧水銀ランプを用いて、紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長365nmにおける積算光量:1200mJ/cm2)することにより層B(B-7)を形成した。続いて、層A(A-7)及び層B(B-7)を形成した面とは逆側のCOP面に、コロナ処理を施した後、配向性性ポリマー組成物(1)を、バーコーターを用いて塗布し、90℃で1分間乾燥し、配向膜を得た。得られた配向膜の上に組成物(B-1)を、バーコーターを用いて塗布し、90℃で1分間乾燥した後、高圧水銀ランプを用いて、紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長365nmにおける積算光量:1000mJ/cm2)することにより、COP上に第二の位相差層(2-9)を形成し、光学フィルム(14)を形成した。得られた光学フィルム(14)の位相差値を測定したところ、Re(450)=101nm、Re(550)=138nm、Re(650)=160nmであった。各波長での面内位相差値の関係は以下のとおりとなった。
Re(450)/Re(550)=0.73
Re(650)/Re(550)=1.16
すなわち、光学フィルム(14)は式(1)、(2)及び(4)で表される光学特性を有した。
【0314】
実施例15
[光学フィルム(15)の製造]
実施例12と同様に、COP上に層B(B-8)を形成した。層B(B-8)の遅相軸はフィルムの長手方向に対して75°であった。次に、層B(B-8)面をコロナ処理した後、配向性ポリマー組成物(2)を、バーコーターを用いて塗布し、100℃で1分間乾燥して配向性ポリマーの膜を得た。配向性ポリマーの膜の表面を長尺状フィルムの長手方向から15°となる角度でラビング処理を施し、その上に組成物(B-1)を、バーコーターを用いて塗布し、100℃で1分間乾燥した後、高圧水銀ランプを用いて、紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長365nmにおける積算光量:1200mJ/cm2)することにより層A(A-8)を形成した。続いて、層A(A-8)及び層B(B-8)を形成した面とは逆側のCOP面にコロナ処理を施した後、配向性ポリマー組成物(1)を、バーコーターを用いて塗布し、90℃で1分間乾燥し、配向膜を得た。得られた配向膜の上に組成物(B-1)を、バーコーターを用いて塗布し、90℃で1分間乾燥した後、高圧水銀ランプを用いて、紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長365nmにおける積算光量:1000mJ/cm2)することにより、TAC上に第二の位相差層(2-10)を形成し、光学フィルム(15)を形成した。得られた光学フィルム(15)の位相差値を測定したところ、Re(450)=101nm、Re(550)=138nm、Re(650)=160nmであった。各波長での面内位相差値の関係は以下のとおりとなった。
Re(450)/Re(550)=0.73
Re(650)/Re(550)=1.16
すなわち、光学フィルム(15)は式(1)、(2)及び(4)で表される光学特性を有した。
【0315】
実施例16
[光学フィルム(16)の製造]
TAC上に配向性ポリマー組成物(2)を、バーコーターを用いて塗布し、100℃で1分間乾燥した。配向性ポリマーの表面を長尺状フィルムの長手方向から75°となる角度でラビング処理を施し、その上に組成物(B-1)を、バーコーターを用いて塗布し、100℃で1分間乾燥した後、高圧水銀ランプを用いて、紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長365nmにおける積算光量:1200mJ/cm2)することにより層B(B-9)を形成した。次に、層B(B-9)面をコロナ処理した後、配向性ポリマー組成物(1)を、バーコーターを用いて塗布し、90℃で1分間乾燥し、配向膜を得た。得られた配向膜の上に組成物(B-1)を、バーコーターを用いて塗布し、90℃で1分間乾燥した後、高圧水銀ランプを用いて、紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長365nmにおける積算光量:1000mJ/cm2)することにより、層B(B-9)上に第二の位相差層(2-11)を形成した。続いて、第二の位相差上(2-11)をコロナ処理した後、配向性ポリマー組成物(2)を、バーコーターを用いて塗布し、100℃で1分間乾燥し、配向性ポリマーの膜を得た。配向性ポリマーの膜の表面を長尺状フィルムの長手方向から15°となる角度でラビング処理を施し、その上に組成物(B-1)を、バーコーターを用いて塗布し、100℃で1分間乾燥した後、高圧水銀ランプを用いて、紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長365nmにおける積算光量:1200mJ/cm2)することにより層A(A-9)を形成し、光学フィルム(16)を得た。
光学フィルム(1)又は光学フィルム(2)と同様の構成を有する光学フィルム(16)は、光学フィルム(1)及び光学フィルム(2)と同様に式(1)、(2)及び(4)で表される光学特性を有する。
【0316】
実施例17
[光学フィルム(17)の製造]
実施例2と同様に、COP上に層B(B-10)を形成した。層B(B-10)を形成した面とは逆側の面をコロナ処理した後、その上に配向性ポリマー組成物(2)を、バーコーターを用いて塗布し、100℃で1分間乾燥し、配向性ポリマーの膜を得た。配向性ポリマーの膜の表面を長尺状フィルムの長手方向から15°となる角度でラビング処理を施し、その上に組成物(B-1)を、バーコーターを用いて塗布し、100℃で1分間乾燥した後、高圧水銀ランプを用いて、紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長365nmにおける積算光量:1200mJ/cm2)することにより層A(A-10)を形成した。次に、層A(A-10)面をコロナ処理した後、配向性ポリマー組成物(1)を、バーコーターを用いて塗布し、90℃で1分間乾燥し、配向膜を得た。得られた配向膜の上に組成物(B-1)を、バーコーターを用いて塗布し、90℃で1分間乾燥した後、高圧水銀ランプを用いて、紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長365nmにおける積算光量:1000mJ/cm2)することにより、層A(A-10)上に第二の位相差層(2-12)を形成し、光学フィルム(17)を得た。
光学フィルム(1)又は光学フィルム(2)と同様の構成を有する光学フィルム(17)は、光学フィルム(1)及び光学フィルム(2)と同様に式(1)、(2)及び(4)で表される光学特性を有する。
【0317】
実施例18
[光学フィルム(18)の製造]
実施例2と同様に、COP上に層B(B-11)を形成した。層B(B-11)を形成した面とは逆側の面をコロナ処理した後、その上に配向性ポリマー組成物(1)を、バーコーターを用いて塗布し、90℃で1分間乾燥し、配向膜を得た。得られた配向膜の上に組成物(B-1)を、バーコーターを用いて塗布し、90℃で1分間乾燥した後、高圧水銀ランプを用いて、紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長365nmにおける積算光量:1000mJ/cm2)することにより、COP上に第二の位相差層(2-13)を形成した。次に、第二の位相差層面をコロナ処理した後、配向性ポリマー組成物(2)を、バーコーターを用いて塗布し、100℃で1分間乾燥し、配向性ポリマーの膜を得た。配向性ポリマーの膜の表面を長尺状フィルムの長手方向から15°となる角度でラビング処理を施し、その上に組成物(B-1)を、バーコーターを用いて塗布し、100℃で1分間乾燥した後、高圧水銀ランプを用いて、紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長365nmにおける積算光量:1200mJ/cm2)することにより層A(A-11)を形成し、光学フィルム(18)を得た。
光学フィルム(1)又は光学フィルム(2)と同様の構成を有する光学フィルム(18)は、光学フィルム(1)及び光学フィルム(2)と同様に式(1)、(2)及び(4)で表される光学特性を有する。
【0318】
実施例19
[光学フィルム(19)の製造]
実施例2と同様に、COP上に層A(A-12)を形成した。層A(A-12)を形成した面とは逆側の面をコロナ処理した後、その上に配向性ポリマー組成物(2)を、バーコーターを用いて塗布し、100℃で1分間乾燥し、配向性ポリマーの膜を得た。配向性ポリマーの膜の表面を長尺状フィルムの長手方向から75°となる角度でラビング処理を施し、その上に組成物(B-1)を、バーコーターを用いて塗布し、100℃で1分間乾燥した後、高圧水銀ランプを用いて、紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長365nmにおける積算光量:1200mJ/cm2)することにより層B(B-12)を形成した。次に、層B(B-12)面をコロナ処理した後、配向性ポリマー組成物(1)を、バーコーターを用いて塗布し、90℃で1分間乾燥し、配向膜を得た。得られた配向膜の上に組成物(B-1)を、バーコーターを用いて塗布し、90℃で1分間乾燥した後、高圧水銀ランプを用いて、紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長365nmにおける積算光量:1000mJ/cm2)することにより、層B(B-12)上に第二の位相差層(2-14)を形成し、光学フィルム(19)を得た。
光学フィルム(1)又は光学フィルム(2)と同様の構成を有する光学フィルム(19)は、光学フィルム(1)及び光学フィルム(2)と同様に式(1)、(2)及び(4)で表される光学特性を有する。
【0319】
実施例20
[光学フィルム(20)の製造]
実施例2と同様に、COP上に層A(A-13)を形成した。層A(A-13)を形成した面とは逆側の面をコロナ処理した後、その上に配向性ポリマー組成物(1)を、バーコーターを用いて塗布し、90℃で1分間乾燥し、配向膜を得た。得られた配向膜の上に組成物(B-1)を、バーコーターを用いて塗布し、90℃で1分間乾燥した後、高圧水銀ランプを用いて、紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長365nmにおける積算光量:1000mJ/cm2)することにより、COP上に第二の位相差層(2-15)を形成した。次に、第二の位相差層(2-15)面をコロナ処理した後、配向性ポリマー組成物(2)を、バーコーターを用いて塗布し、100℃で1分間乾燥し、配向性ポリマーの膜を得た。配向性ポリマーの膜の表面を長尺状フィルムの長手方向から75°となる角度でラビング処理を施し、その上に組成物(B-1)を、バーコーターを用いて塗布し、100℃で1分間乾燥した後、高圧水銀ランプを用いて、紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長365nmにおける積算光量:1200mJ/cm2)することにより層B(B-13)を形成し、光学フィルム(20)を得た。
光学フィルム(1)又は光学フィルム(2)と同様の構成を有する光学フィルム(20)は、光学フィルム(1)及び光学フィルム(2)と同様に式(1)、(2)及び(4)で表される光学特性を有する。
【0320】
実施例21
[光学フィルム(21)の製造]
実施例1において、第一の位相差層としてピュアエース(登録商標)WR-S(帝人株式会社製)を用い、第二の位相差層(2-1)を形成した位相差フィルム(2)の液晶面と粘着剤で貼合することで、光学フィルム(21)を得た。得られた光学フィルム(21)の位相差値を、波長450nm、550nm、650nmで測定したところ、Re(450)=127nm、Re(550)=142nm、Re(650)=145nm、Rth(450)=-18.5nm、Rth(550)=-3.7nm、Rth(650)=4.1nmであり、|Rth(450)/Re(450)|=0.145、|Rth(550)/Re(550)|=0.026、|Rth(650)/Re(650)|=0.028であった。各波長での面内位相差値の関係は以下のとおりとなった。
Re(450)/Re(550)=0.89
Re(650)/Re(550)=1.02
すなわち、光学フィルム(21)は式(1)、(2)及び(4)で表される光学特性を有した。
【0321】
実施例22
[偏光子の製造]
平均重合度約2,400、ケン化度99.9モル%以上で厚さ75μmのポリビニルアルコールフィルムを、30℃の純水に浸漬した後、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水の重量比が0.02/2/100の水溶液に30℃で浸漬してヨウ素染色を行った(ヨウ素染色工程)。ヨウ素染色工程を経たポリビニルアルコールフィルムを、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水の重量比が12/5/100の水溶液に、56.5℃で浸漬してホウ酸処理を行った(ホウ酸処理工程)。ヨウ素染色工程と、それに続くホウ酸処理工程を経たポリビニルアルコールフィルムを8℃の純水で洗浄した後、65℃で乾燥して、ポリビニルアルコールにヨウ素が吸着配向している偏光子(延伸後の厚さ27μm)を得た。この際、ヨウ素染色工程とホウ酸処理工程において延伸を行った。かかる延伸におけるトータル延伸倍率は5.3倍であった。得られた偏光子と、ケン化処理されたトリアセチルセルロースフィルム(コニカミノルタ製 KC4UYTAC 40μm)とを水系接着剤を介してニップロールで貼り合わせた。貼合物の張力を430N/mの保ちながら、60℃で2分間乾燥して、片面に保護フィルムとしてトリアセチルセルロースフィルムを有する偏光板(1)を得た。尚、前記水系接着剤は水100部に、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール(クラレ製 クラレポバール KL318)3部と、水溶性ポリアミドエポキシ樹脂(住化ケムテックス製 スミレーズレジン650 固形分濃度30%の水溶液〕1.5部を添加して調製した。
【0322】
[紫外線硬化性接着剤組成物の製造]
以下の各成分を混合して、紫外線硬化性接着剤組成物を調製した。
3,4-エポキシシクロヘキシルメチル
3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート 40部
ビスフェノールAのジグリシジルエーテル 60部
ジフェニル(4-フェニルチオフェニル)スルホニウム
ヘキサフルオロアンチモネート(光カチオン重合開始剤) 4部
【0323】
[円偏光板(1)の製造]
実施例1で製造した光学フィルム(1)の第一の相差層の面に、コロナ処理を施し、紫外線硬化性接着剤組成物を塗布し、偏光板(1)の偏光子面と重ねて、2本の貼合ロールの間に通して一体化した。ここで、該偏光子(1)の吸収軸と第一の位相差層(1-1)の遅相軸のなす角度は45°となるようにした。2本の貼合ロールのうち、第一の貼合ロールには、表面がゴムになっているゴムロールを使用し、第二の貼合ロールには、表面にクロムメッキが施された金属ロールを使用した。貼合後、メタルハライドランプを光源とする紫外線照射装置を用い、320~400nmの波長における積算光量が20mJ/cm2となるように前期光学フィルム(1)のCOP面側から紫外線照射して接着剤を硬化させ、偏光子と貼合し、円偏光板(1)を得た。
【0324】
実施例23
[円偏光板(4)製造]
実施例22と同様に、実施例4で製造した光学フィルム(4)の第一の位相差層面をコロナ処理した後、その上に、紫外線硬化性接着剤組成物を用いて偏光板(1)と貼合し円偏光板(4)を得た。この際、紫外線照射は光学フィルム(4)のCOP面側から行い、また、該偏光子(1)の吸収軸と該第一の位相差層の遅相軸のなす角度は45°となるように貼合した。
【0325】
実施例24
[円偏光板(3)及び(8)の製造]
実施例22と同様に、実施例3及び8で得た光学フィルム(3)及び(8)の第二の位相差層面をコロナ処理した後、その上に、紫外線硬化性接着剤組成物を用いて偏光板(1)を貼合し円偏光板(3)及び(8)を得た。この際、紫外線照射は光学フィルム(3)又は(8)のCOP側から行い、また、該偏光板(1)の吸収軸と第一の位相差層の遅相軸のなす角度は45°となるように貼合した。
【0326】
実施例25
[円偏光板(11)の製造]
実施例22と同様に、実施例11で得た光学フィルム(11)の第二の位相差層面をコロナ処理した後、その上に、紫外線硬化性接着剤組成物を用いて偏光板(1)を貼合し円偏光板(11)を得た。この際、紫外線照射は該光学フィルム(11)の第一位相差層側から行い、また、該偏光板(1)の吸収軸と第一の位相差層の遅相軸のなす角度は45°となるように貼合した。
【0327】
実施例26
[円偏光板(21)の製造]
実施例22と同様に、実施例21で得た光学フィルム(21)のCOP面をコロナ処理した後、その上に、紫外線硬化性接着剤組成物を用いて偏光板(1)を貼合し円偏光板(21)を得た。この際、紫外線照射は該光学フィルム(21)の第一の位相差層側から行い、また該偏光板(1)の吸収軸と第一の位相差層の遅相軸のなす角度は45°となるように貼合した。
【0328】
実施例27
[円偏光板(2)の製造]
実施例22と同様に、実施例2で得た光学フィルム(2)のCOP面をコロナ処理した後、その上に、紫外線硬化性接着剤組成物を用いて偏光板(1)を貼合し、円偏光板(2)を得た。この際、紫外線照射は該光学フィルム(2)の層A側から行い、また、該円偏光板(2)は、偏光子、第二位相差層、層B、層Aの順となるように積層し、また、該偏光板(1)の吸収軸と、層Bの遅相軸のなす角度は75°、層Aの遅相軸とのなす角度は15°となるように貼合した。
【0329】
実施例28
[円偏光板(9)の製造]
実施例22と同様に、実施例9で得た光学フィルム(9)のCOP面をコロナ処理した後、その上に、紫外線硬化性接着剤組成物を用いて偏光板(1)を貼合し円偏光板(9)を得た。この際、該円偏光板(9)は、偏光子、第二の位相差層、層B、層Aの順となるように積層し、紫外線照射は該層Aに近いCOP側から行い、また、該偏光板(1)の吸収軸と、層Bの遅相軸のなす角度は75°、層Aの遅相軸とのなす角度は15°となるように貼合した。
【0330】
実施例29
[円偏光板(5)、(6)及び(10)の製造]
実施例22と同様に、実施例5、6及び10で得た光学フィルム(5)、(6)及び(10)の層B面をコロナ処理した後、その上に、紫外線硬化性接着剤組成物を用いて偏光板(1)を貼合し円偏光板(5)、(6)及び(10)を得た。その際、紫外線照射は該光学フィルム(5)、(6)又は(10)のCOP側から行い、該円偏光板は、第二の位相差層以外の層が、偏光子、層B、層Aの順になるように積層した。また、該偏光板(1)の吸収軸と、該層Bの遅相軸のなす角度は75°、層Aの遅相軸とのなす角度は15°となるように貼合した。
【0331】
実施例30
[円偏光板(7)の製造]
実施例22と同様に、実施例7で得た光学フィルム(7)の第二の位相差層面をコロナ処理した後、その上に、紫外線硬化性接着剤組成物を用いて偏光板(1)を貼合し、円偏光板(7)を得た。この際、紫外線照射はCOP側から行い、また、該円偏光板(7)は、第二の位相差層以外の層が、偏光子、層B、層Aの順になるように積層した。また、該偏光板(1)の吸収軸と、該層Bの遅相軸のなす角度は75°、該層Aの遅相軸とのなす角度は15°となるように貼合した。
【0332】
実施例31
[円偏光板(15)及び(19)の製造]
実施例22と同様に、実施例15及び19で得た光学フィルム(15)及び(19)の第二の位相差層面をコロナ処理した後、その上に、紫外線硬化性接着剤組成物を用いて偏光子を貼合し円偏光板(15)及び(19)を得た。この際、紫外線照射は該光学フィルム(15)及び(19)の層A側から行い、また、該円偏光板は、第二の位相差層以外の層が、偏光子、層B、層Aの順になるように積層した。また、該偏光板(1)の吸収軸と、該層Bの遅相軸のなす角度は75°、該層Aの遅相軸とのなす角度は15°となるように貼合した。
【0333】
実施例32
[円偏光板(12)の製造]
実施例22と同様に、実施例12で得た光学フィルム(12)のCOP面をコロナ処理した後、その上に、紫外線硬化性接着剤組成物を用いて偏光板(1)を貼合し円偏光板(12)を得た。この際、紫外線照射は該光学フィルム(12)の第二の位相差層側から行い、また、該円偏光板(12)は、第二の位相差層以外の層が、偏光子、層B、層Aの順になるように積層した。また、該偏光板(1)の吸収軸と、該層Bの遅相軸のなす角度は75°、該層Aの遅相軸とのなす角度は15°となるように貼合した。
【0334】
実施例33
[円偏光板(14)及び(17)の製造]
実施例22と同様に、実施例14及び17で得た光学フィルム(14)及び(17)の層B面をコロナ処理した後、その上に、紫外線硬化性接着剤組成物を用いて偏光板(1)と貼合し円偏光板(14)及び(17)を得た。この際、紫外線照射は該光学フィルム(14)又は(17)の第二の位相差層側から行い、また、該円偏光板は、第二の位相差層以外の層が、偏光子、層B、層Aの順になるように積層した。また、該偏光板(1)の吸収軸と、該層Bの遅相軸のなす角度は75°、該層Aの遅相軸とのなす角度は15°となるように貼合した。
【0335】
実施例34
[円偏光板(18)及び(20)の製造]
実施例22と同様に、実施例18及び20で得た光学フィルム(18)及び(20)の層B面をコロナ処理した後、その上に、紫外線硬化性接着剤組成物を用いて偏光板(1)と貼合し円偏光板(18)及び(20)を得た。この際、紫外線照射は該光学フィルム(18)の層A側から行い、また、該円偏光板は、第二の位相差層以外の層が、偏光子、層B、層Aの順になるように積層した。また、該偏光板(1)の吸収軸と、該層Bの遅相軸のなす角度は75°、該層Aの遅相軸とのなす角度は15°となるように貼合した。
【0336】
実施例35
[円偏光板(13)及び(16)の製造]
実施例13及び16で得た光学フィルム(13)及び(16)のTAC面をコロナ処理した後、その上に、偏光板(1)の製造時に用いたものと同じ水系接着剤を用いて、偏光板(1)を貼合し円偏光板(13)及び(16)を得た。この際、該円偏光板は、第二の位相差層以外の層が、偏光子、層B、層Aの順になるように積層した。また、該偏光板(1)の吸収軸と、該層Bの遅相軸のなす角度は75°、該層Aの遅相軸とのなす角度は15°となるように貼合した。
【0337】
参考例1
[円偏光板(参考1)の製造]
実施例1で作成した位相差フィルム(1)のCOP面をコロナ処理した後、その上に、紫外線硬化性接着剤組成物を用いて偏光板(1)を貼合し円偏光板(参考1)を得た。この際、偏光板(1)の吸収軸と位相差フィルム(1)の遅相軸のなす角度は45°となるように貼合した。
【0338】
参考例2
[円偏光板(参考2)の製造]
実施例2の層A(A-1)の製造と同様に、COP上に層Aを形成し、層A(A-14)を得た。前記層A(A-14)は前記COPの長手方向から15°となる角度に遅相軸を有していた。得られた層A(A-14)の表面をコロナ処理した後、その上に配向性ポリマー組成物(1)を、バーコーターを用いて塗布し、90℃で1分間乾燥し、配向膜を形成した。得られた配向膜の上に組成物(B-1)を、バーコーターを用いて塗布し、90℃で1分間乾燥した後、高圧水銀ランプを用いて、紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長365nmにおける積算光量:1000mJ/cm2)して第二の位相差層(2-16)を形成した。続いて、前期COPの層A(A-14)を形成した面とは逆側の面をコロナ処理し、その上に、紫外線硬化性接着剤組成物を用いて偏光板(1)を貼合して円偏光板(参考2)を得た。
【0339】
参考例3
[円偏光板(参考3)の製造]
実施例2の層B(B-1)の製造と同様に、COP上に層Bを形成し、層B(B-14)を得た。前記層B(B-14)は前記COPの長手方向から75°となる角度に遅相軸を有していた。得られた層B(B-14)の表面をコロナ処理した後、その上に配向性ポリマー組成物(1)を、バーコーターを用いて塗布し、90℃で1分間乾燥し、配向膜を形成した。得られた配向膜の上に組成物(B-1)を、バーコーターを用いて塗布し、90℃で1分間乾燥した後、高圧水銀ランプを用いて、紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長365nmにおける積算光量:1000mJ/cm2)して第二の位相差層(2-17)を形成した。続いて、前記COPの層B(B-14)を形成した面とは逆側の面をコロナ処理した後、その上に、紫外線硬化性接着剤組成物を用いて偏光板(1)を貼合して円偏光板(参考3)を得た。
【0340】
参考例4
[円偏光板(参考4)の製造]
実施例7の層A(A-1)の製造と同様に、COP上に層Aを形成し、層A(A-15)を得た。前記層A(A-15)は前記COPの長手方向から15°となる角度に遅相軸を有していた。得られた層A(A-15)の表面をコロナ処理した後、その上に配向性ポリマー組成物(2)を、バーコーターを用いて塗布し、100℃で1分間乾燥した。乾燥された配向性ポリマーの表面を前記COPの長手方向から75°となる角度でラビング処理を施し、その上に組成物(B-1)を、バーコーターを用いて塗布し、100℃で1分間乾燥した後、高圧水銀ランプを用いて、紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長365nmにおける積算光量:1200mJ/cm2)することにより層B(B-15)を形成した。続いて、前記COPの層A(A-15)を形成した面とは逆側の面をコロナ処理した後、その上に、紫外線硬化性接着剤組成物を用いて偏光板(1)を貼合して円偏光板(参考4)を得た。
【0341】
実施例22~35で得られた円偏光板(1)~(21)、及び、参考例1~4で得られた円偏光板(参考1)~(参考4)それぞれの、偏光板(1)とは反対側の面を、感圧式粘着剤を用いて鏡に貼合した。貼合された円偏光板を、正面鉛直方向から仰角60°の位置で方位角全方向から観察した。色相変化が特に大きかった方向2点から見たときの色を表3に示す。円偏光板(1)~(21)はいずれも、どの方向から観察しても着色が無く、良好な黒表示が得られた。
【0342】
【0343】
上記の測定結果からも、実施例の円偏光板はあらゆる方向から観察した際にも明所での反射防止特性に優れており有用である。
【0344】
実施例36
[配向性ポリマー組成物(3)の調製]
配向性ポリマー組成物の組成を、表1に示す、市販の配向性ポリマーであるサンエバーSE-610(日産化学工業株式会社製)にN-メチル-2-ピロリドン、2-ブトキシエタノールおよびエチルシクロヘキサンを加えて配向性ポリマー組成物(3)を得た。
【0345】
【表4】
表4における値は、調製した組成物の全量に対する各成分の含有割合を表す。SE-610については、固形分量を納品仕様書に記載の濃度から換算した。
【0346】
シクロオレフィンポリマーフィルム(COP)(ZF-14、日本ゼオン株式会社製)の表面を、コロナ処理装置(AGF-B10、春日電機株式会社製)を用いて出力0.3kW、処理速度3m/分の条件で1回処理した。コロナ処理を施した表面に、配向性ポリマー組成物(3)を、バーコーターを用いて塗布し、90℃で1分間乾燥した。得られた配向膜の膜厚をレーザー顕微鏡(LEXT、オリンパス株式会社製)で測定したところ、34nmであった。続いて、配向膜上に組成物(B-1)を、バーコーターを用いて塗布し、90℃で1分間乾燥した後、高圧水銀ランプ(ユニキュアVB―15201BY-A、ウシオ電機株式会社製)を用いて、紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長:365nm、波長365nmにおける積算光量:1000mJ/cm2)することにより第二の位相差層(2-1-01)を形成し、位相差フィルム(1-01)を得た。得られた第二の位相差層(2-1-01)の膜厚をレーザー顕微鏡で測定したところ、膜厚は450nmであった。また、得られた位相差フィルム(1-01)の波長550nmでの位相差値を測定したところRe(550)=1nm、Rth(550)=-70nmであった。すなわち、第二の位相差層(2-1-01)は下記式(3)で表される光学特性を有する。なお、COPの波長550nmにおける位相差値は略0であるため、当該光学特性には影響しない。
nx≒ny<nz (3)
【0347】
さらに、第二の位相差層(2-1-01)を形成したシクロオレフィンポリマーフィルムの裏面を、コロナ処理装置(AGF-B10、春日電機株式会社製)を用いて出力0.3kW、処理速度3m/分の条件で1回処理した。コロナ処理を施した表面に、光配向膜形成用組成物(1)をバーコーター塗布し、80℃で1分間乾燥し、偏光UV照射装置(SPOT CURE SP-7;ウシオ電機株式会社製)を用いて、100mJ/cm2の積算光量で偏光UV露光を実施した。得られた配向膜の膜厚をレーザー顕微鏡(LEXT、オリンパス株式会社製)で測定したところ、100nmであった。続いて、配向膜上に組成物(A-1)を、バーコーターを用いて塗布し、120℃で1分間乾燥した後、高圧水銀ランプ(ユニキュアVB―15201BY-A、ウシオ電機株式会社製)を用いて、紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長:365nm、波長365nmにおける積算光量:1000mJ/cm2)することにより第一の位相差層(1-1-01)を形成し、光学フィルム(1-01)を得た。得られた第一の位相差層(1-1-01)の膜厚をレーザー顕微鏡で測定したところ、膜厚は2.2μmであった。また、この光学フィルム(1-01)の位相差値を測定したところRe(550)=140nm、Rth(550)=2nmであった。また、波長450nmならびに波長650nmの位相差値を測定したところ、Re(450)=121nm、Re(650)=145nmであった。
【0348】
実施例37
実施例36における第一の位相差層の形成方法と同様の方法でシクロオレフィンポリマーフィルム上に、第一の位相差層(1-2-01)を形成し位相差フィルム(2-01)を得た。得られた位相差フィルム(2-01)の位相差値を測定したところ、Re(550)=140nm、Rth(550)=68nmであった。また、波長450nmならびに波長650nmの位相差値を測定したところ、Re(450)=121nm、Re(650)=145nmであった。厚みdは一定であるので、各波長での複屈折率の関係は以下のとおりとなる。
Re(450)/Re(550)=Δn(450)/Δn(550)=0.87
Re(650)/Re(550)=Δn(650)/Δn(550)=1.04
すなわち、第一の位相差層(1-2-01)は下記式(1)及び(2)で表される光学特性を有する。なお、COPの波長550nmにおける位相差値は略0であるため、当該複屈折率の関係には影響しない。
Δn(450)/Δn(550)≦1.00 (1)
1.00≦Δn(650)/Δn(550) (2)
【0349】
さらに、第一の位相差層(1-2-01)を形成したシクロオレフィンポリマーフィルムの裏面に、実施例1と同様にして、第二の位相差層(2-2-01)を形成し、光学フィルム(2-01)を得た。得られた光学フィルム(2-01)の位相差値を測定したところRe(550)=140nm、Rth(550)=4nmであった。また、波長450nmならびに波長650nmの位相差値を測定したところ、Re(450)=121nm、Re(650)=145nmであった。
【0350】
実施例38
実施例36における第二の位相差層の形成方法と同様の方法でシクロオレフィンポリマーフィルム上に、第二の位相差層(2-3-01)を形成し位相差フィルム(3-01)を得た。得られた第二の位相差層上に保護層形成用組成物をバーコーターを用いて塗布し、90℃で1分間乾燥した。さらに、高圧水銀ランプ(ユニキュアVB―15201BY-A、ウシオ電機株式会社製)を用いて、紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長:365nm、波長365nmにおける積算光量:500mJ/cm2)することにより重合を行って保護層(1-01)を形成し位相差フィルム(3-2-01)を得た。得られた第二の位相差層(2-3-01)と保護層(1-01)との総膜厚をレーザー顕微鏡で測定したところ、膜厚は2.5μmであった。位相差フィルム(3-2-01)の波長550nmでの位相差値を測定したところRe(550)=2nm、Rth(550)=-66nmであった。すなわち、第二の位相差層(2-3-01)は下記式(3)で表される光学特性を有する。なお、COP及び保護層(1)の波長550nmにおける位相差値は略0であるため、当該光学特性には影響しない。
nx≒ny<nz (3)
【0351】
さらに、保護膜(1-01)の上に、実施例36と同様にして、第一の位相差層(1-3-01)を形成し、光学フィルム(3-01)を得た。得られた光学フィルム(3-01)の位相差値を測定したところRe(550)=138nm、Rth(550)=2nmであった。また、波長450nmならびに波長650nmの位相差値を測定したところ、Re(450)=118nm、Re(650)=144nmであった。
【0352】
実施例39
実施例36で得られた光学フィルム(1-01)の第二の位相差層(2-1-01)面に感圧式粘着剤を用いて、ヨウ素-PVA偏光板(住友化学製 SRW061A)を、該偏光板の吸収軸と第一の位相差層(1-1-01)の遅相軸のなす角度が45°となるように貼り合せて、円偏光板(1-01)を得た。
【0353】
実施例40
実施例36で得られた光学フィルム(1-01)の第一の位相差層(1-1-01)面に感圧式粘着剤を用いて、ヨウ素-PVA偏光板(住友化学製 SRW061A)を、該偏光板の吸収軸と第一の位相差層(1-1-01)の遅相軸のなす角度が45°となるように貼り合せて、円偏光板(2-01)を得た。
【0354】
実施例41
実施例37で得られた光学フィルム(2-01)のシクロオレフィンポリマーフィルム面に感圧式粘着剤を用いて、ヨウ素-PVA偏光板(住友化学製 SRW061A)を、該偏光板の吸収軸と第一の位相差層(1-2-01)の遅相軸のなす角度が45°となるように貼り合せて、円偏光板(3-01)を得た。
【0355】
実施例42
実施例37で得られた光学フィルム(2-01)の第二の位相差層(2-2-01)面に感圧式粘着剤を用いて、ヨウ素-PVA偏光板(住友化学製 SRW061A)を、該偏光板の吸収軸と第一の位相差層(1-2-01)の遅相軸のなす角度が45°となるように貼り合せて、円偏光板(4-01)を得た。
【0356】
実施例43
実施例38で得られた光学フィルム(3-01)のシクロオレフィンポリマーフィルム面に感圧式粘着剤を用いて、ヨウ素-PVA偏光板(住友化学製 SRW061A)を、該偏光板の吸収軸と第一の位相差層(1-3-01)の遅相軸のなす角度が45°となるように貼り合せて、円偏光板(5-01)を得た。
【0357】
実施例44
実施例38で得られた光学フィルム(3-01)の第一の位相差層(1-3-01)面に感圧式粘着剤を用いて、ヨウ素-PVA偏光板(住友化学製 SRW061A)を、該偏光板の吸収軸と第一の位相差層(1-3-01)の遅相軸のなす角度が45°となるように貼り合せて、円偏光板(6-01)を得た。
【0358】
実施例39~44で得られた円偏光板(1-01)~(6-01)のそれぞれの偏光板と反対の面を感圧式粘着剤を用いて、鏡に貼合して、正面鉛直方向から仰角60°の位置で、第一の位相差層の遅相軸方向ならびに進相軸方向から観察して、光学補償特性を評価した。その結果を表3に示す。いずれの円偏光板もどの方向から観察しても着色が無く、良好な黒表示が得られた。尚、参考例5に、実施例36と同じ第一の位相差層のみを形成した円偏光板(7-01)を示す。
【0359】
【0360】
参考例5ならびに実施例39の円偏光板を鏡に貼合したサンプルについて、仰角60°方向から輝度計を用いて、色度座標(x、y)を測定した。尚、光源としては高演色CCFL光源(x,y)=(0.3494,0.3600)を用いた。
【0361】
参考例5の円偏光板(7-01)の色相:
遅相軸方向(偏光板吸収軸に対して+45°)で(0.3292,0.3569)
遅相軸方向(偏光板の吸収軸に対して-45°)で(0.3282,0.3561)
進相軸方向(偏光板吸収軸に対して+45°)で(0.3651,0.3634)
進相軸方向(偏光板の吸収軸に対して-45°)で(0.3641,0.3626)
【0362】
実施例39の円偏光板(1-01)の色相:
遅相軸方向(偏光板吸収軸に対して+45°)で(0.3457,0.3548)
遅相軸方向(偏光板の吸収軸に対して-45°)で(0.3475,0.3533)
進相軸方向(偏光板吸収軸に対して+45°)で(0.3445,0.3557)
進相軸方向(偏光板の吸収軸に対して-45°)で(0.3626,0.3543)
【0363】
上記の測定結果からも、実施例39の円偏光板(1-01)は光源からの色相のズレが小さく、光学補償特性が改善されているといえる。
【0364】
実施例45
[円偏光板(8-01)の製造]
【0365】
[組成物(C-1)の調製]
下記の成分を混合し、得られた混合物を80℃で1時間攪拌することにより、組成物(C-1)を得た。
【0366】
重合性液晶A3は、特開2010-24438号公報記載の方法で合成した。
重合性液晶A1(86部):
【0367】
【0368】
重合開始剤(6部):
2-ジメチルアミノ-2-ベンジル-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン(イルガキュア369;チバ スペシャルティケミカルズ社製)
レベリング剤(0.1部):ポリアクリレート化合物(BYK-361N;BYK-Chemie社製)
酸化防止剤(1部):ジブチルヒドロキシトルエン(和光純薬工業株式会社製)
溶剤:N-メチル-2-ピロリジノン(160部)、シクロペンタノン(240部)
【0369】
[配向性ポリマー組成物(4)の調製]
配向性ポリマー組成物の組成を、表1に示す、市販の配向性ポリマーであるサンエバーSE-610(日産化学工業株式会社製)にN-メチル-2-ピロリドン、2-ブトキシエタノールおよびプロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタート(PGMEA)を加えて配向性ポリマー組成物(3)を得た。
【0370】
【0371】
[第一の位相差層(2-4-01)の製造]
ポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱樹脂株式会社製、ダイアホイルT140E25)表面に、光配向膜形成用組成物(1)を塗布し、80℃で1分間乾燥し、偏光UV照射装置(SPOT CURE SP-7;ウシオ電機株式会社製)を用いて、100mJ/cm2の積算光量で偏光UV露光を実施した。得られた光配向膜の厚さは100nmであった。続いて、光配向膜上に組成物(C-1)を、バーコーターを用いて塗布し、120℃で1分間乾燥した後、高圧水銀ランプ(ユニキュアVB―15201BY-A、ウシオ電機株式会社製)を用いて、紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長:365nm、波長365nmにおける積算光量:1000mJ/cm2)することにより第一の位相差層(2-4-01)を形成した。ポリエチレンテレフタレートフィルムと、第一の位相差層(2-4-01)とを有するフィルム(2-4-10)が得られた。
【0372】
得られた第一の位相差層(2-4-01)の表面をコロナ処理した後、そこへ紫外線硬化性接着剤組成物をバーコート法により塗布した。続いて、接着剤面に表面をコロナ処理したCOPフィルムを圧着し、該COPフィルム側からUV照射装置(SPOT CURE SP-7;ウシオ電機株式会社製)を用いて、露光量1000mJ/cm2(365nm基準)の紫外線を照射し硬化した。COPフィルム上に第一の位相差層(2-4-01)を転写し、ポリエチレンテレフタレートを取り除くことで、第一の位相差層を有するCOPフィルム(2-4-02)を得た。この際の接着剤層を含む第一の位相差層の厚さは4.7μmであった。
【0373】
第一の位相差層を有するCOPフィルム(2-4-02)の位相差値を測定したところ、Re(450)=119nm、Re(550)=137nm、Re(650)=141nmであった。各波長での面内位相差値の関係は以下のとおりとなった。
Re(450)/Re(550)=0.87
Re(650)/Re(550)=1.03
すなわち、第一の位相差層(2-4-01)は下記式(1)、(2)及び(4)で表される光学特性を有した。なお、COPの波長550nmにおける位相差値は略0であるため、当該面内位相差値の関係には影響しない。
Re(450)/Re(550)≦1.00 (1)
1.00≦Re(650)/Re(550) (2)
100nm<Re(550)<160nm (4)
【0374】
[第二の位相差層(2-4-03)の製造]
ポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱樹脂株式会社製、ダイアホイルT140E25)表面に、配向性ポリマー組成物(4)をバーコート法により塗布し、90℃のオーブン中で1分間加熱乾燥し、配向膜を形成した。続いて、配向膜上に組成物(B-1)を、バーコーターを用いて塗布し、90℃で1分間乾燥した後、高圧水銀ランプ(ユニキュアVB―15201BY-A、ウシオ電機株式会社製)を用いて、紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長:365nm、波長365nmにおける積算光量:1000mJ/cm2)することにより第二の位相差層(2-4-03)を形成した。
【0375】
得られた第二の位相差層(2-4-03)の表面をコロナ処理した後、そこへ紫外線硬化性接着剤組成物をバーコート法により塗布した。続いて、接着剤面に表面をコロナ処理したCOPフィルムを圧着し、該COPフィルム側からUV照射装置(SPOT CURE SP-7;ウシオ電機株式会社製)を用いて、露光量1000mJ/cm2(365nm基準)の紫外線を照射し硬化した。COPフィルム上に第二の位相差層(2-4-03)を転写し、ポリエチレンテレフタレートを取り除くことで、第二の位相差層を有するCOPフィルム(2-4-04)を得た。この際の接着剤層を含む第二の位相差層の厚さは3.0μmであった。
【0376】
第二の位相差層を有するCOPフィルム(2-4-04)の位相差値を測定機(KOBRA-WR、王子計測機器社製)を用いて測定したところ、波長550nmでの位相差値を測定したところRe(550)=1nm、Rth(550)=-85nmであった。すなわち、第二の位相差層を有するCOPフィルム(2-4-04)は下記式(3)で表される光学特性を有する。なお、COPの波長550nmにおける位相差値は略0であるため、当該光学特性には影響しない。
nx≒ny<nz (3)
【0377】
[第一の位相差層及び第二の位相差層の転写]
【0378】
フィルム(2-4-10)の第一の位相差層面をコロナ処理した後、その上に配向性ポリマー組成物(4)をバーコート法により塗布し、90℃のオーブン中で1分間加熱乾燥し、配向膜を形成した。続いて、得られた配向膜上に組成物(B-1)を、バーコーターを用いて塗布し、90℃で1分間乾燥した後、高圧水銀ランプ(ユニキュアVB―15201BY-A、ウシオ電機株式会社製)を用いて、紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長:365nm、波長365nmにおける積算光量:1000mJ/cm2)することにより第二の位相差層を形成した。これにより、ポリエチレンテレフタレートフィルム、光配向膜、第一の位相差層(2-4-01)、配向膜及び第二の位相差層をこの順に有する積層体を得た。
【0379】
得られた第二の位相差層の表面をコロナ処理した後、そこへ紫外線硬化性接着剤組成物をバーコート法により塗布した。続いて、接着剤面に表面をコロナ処理したヨウ素-PVA偏光板(住友化学製 SRW061A)のTAC面を圧着し、ポリエチレンテレフタレートフィルム側からUV照射装置(SPOT CURE SP-7;ウシオ電機株式会社製)を用いて、露光量1000mJ/cm2(365nm基準)の紫外線を照射し硬化した。この際、偏光板の吸収軸と第一の位相差層(2-4-01)の遅相軸のなす角度が45°となるように貼り合せた。続いて、ポリエチレンテレフタレートフィルム及び光配向膜を同時に取り除き、偏光板上に第二の位相差層、配向膜層及び第一の位相差層(2-4-01)を一度に転写した。これにより、偏光板、接着剤層、第二の位相差層、配向膜及び第一の位相差層(2-4-01)をこの順に積層した円偏光板(8-01)を得た。この際の接着剤層、第二の位相差層及び第一の位相差層を含む層の厚さは5.2μmであった。
【0380】
実施例46
実施例45で得られた円偏光板(8-01)の偏光板と反対の面を感圧式粘着剤を用いて、鏡に貼合して、正面鉛直方向から仰角60°の位置で、第一の位相差層の遅相軸方向ならびに進相軸方向から観察して、光学補償特性を評価した。その結果を表5に示す。着色が無く、良好な黒表示が得られた。
【0381】
【産業上の利用可能性】
【0382】
本発明の光学フィルムは、黒表示時の光漏れ抑制に優れる光学フィルムとして有用である。
【符号の説明】
【0383】
1 第一の位相差層
2 第二の位相差層
3、3’ 基材
100 本光学フィルム
4 層A
5 層B
6 偏光板
8 第三の位相差層
7 有機ELパネル
110 本円偏光板
200 有機EL表示装置
30 有機EL表示装置
31 本円偏光板
32 基板
33 層間絶縁膜
34 画素電極
35 発光層
36 カソード電極
37 封止層
38 薄膜トランジスタ
39 リブ