(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-17
(45)【発行日】2024-10-25
(54)【発明の名称】画像形成装置及び画質調整方法
(51)【国際特許分類】
G03G 21/00 20060101AFI20241018BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
G03G21/00 384
G03G15/00 303
(21)【出願番号】P 2020084609
(22)【出願日】2020-05-13
【審査請求日】2023-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【氏名又は名称】黒田 壽
(72)【発明者】
【氏名】山村 宏樹
【審査官】山下 清隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-117384(JP,A)
【文献】特開2005-275128(JP,A)
【文献】特開2019-035827(JP,A)
【文献】特開2018-081237(JP,A)
【文献】特開2015-194590(JP,A)
【文献】特開2017-194574(JP,A)
【文献】米国特許第10274883(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/00
G03G 15/00
G03G 21/14
B41J 29/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体上に形成したトナー像を最終的に記録材上に転写させて記録材上に画像を形成する画像形成部と、
前記画像形成部が形成する画像を画質調整するための画質調整制御を実行可能な画質調整部とを有する画像形成装置であって、
前記画質調整部は、第二画質調整制御を行わずに第一画質調整制御のみを行う第一制御モードと、該第一画質調整制御に続けて該第二画質調整制御を行う第二制御モードとを選択的に実行可能であり、
前記画質調整部は、前記第二制御モードを実行する実行条件を満たすときでも、前記第一画質調整制御の実行不要条件を満たす場合には、該第一画質調整制御を実行せずに前記第二画質調整制御だけを実行
し、
前記第一画質調整制御及び前記第二画質調整制御のうちのいずれか一方は、前記トナー像のトナー付着量を所定範囲内にする制御を含むことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置において、
前記第一画質調整制御及び前記第二画質調整制御のうちのいずれか一方は、前記像担持体の表面移動方向に対して直交する方向における前記トナー像のトナー付着量偏差を補正する制御を含むことを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
像担持体上に形成したトナー像を最終的に記録材上に転写させて記録材上に画像を形成する画像形成部と、
前記画像形成部が形成する画像を画質調整するための画質調整制御を実行可能な画質調整部とを有する画像形成装置であって、
前記画質調整部は、第二画質調整制御を行わずに第一画質調整制御のみを行う第一制御モードと、該第一画質調整制御に続けて該第二画質調整制御を行う第二制御モードとを選択的に実行可能であり、
前記画質調整部は、前記第二制御モードを実行する実行条件を満たすときでも、前記第一画質調整制御の実行不要条件を満たす場合には、該第一画質調整制御を実行せずに前記第二画質調整制御だけを実行し、
前記第一画質調整制御及び前記第二画質調整制御のうちのいずれか一方は、前記像担持体の表面移動方向における前記トナー像のトナー付着量偏差を補正する制御を含むことを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1
乃至3のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
前記実行不要条件は、前記第一画質調整制御の前回実行時からの経過時間が規定時間未満である条件、前記第一画質調整制御の前回実行時からの画像形成数が規定数未満である条件、前記第一画質調整制御の前回実行時の温度からの変化量が規定量未満である条件、前記第一画質調整制御の前回実行時の湿度からの変化量が規定量未満である条件のうちの少なくとも1つの条件を含むことを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1
乃至4のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
ユーザー指示の入力を受け付ける入力受付部を有し、
前記実行条件は、前記入力受付部が前記第二制御モードの実行を指示する入力を受け付けるという条件であることを特徴とする画像形成装置
。
【請求項6】
請求項1乃
至5のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
前記第一画質調整制御及び前記第二画質調整制御のうちのいずれか一方は、前記トナー像の階調補正を行う制御を含むことを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項1乃
至6のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
前記第一画質調整制御及び前記第二画質調整制御のうちのいずれか一方は、前記記録材上に形成される画像の画像濃度を目標濃度にする制御を含むことを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項1乃
至7のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
前記第一画質調整制御及び前記第二画質調整制御のうちのいずれか一方は、前記像担持体の表面移動方向における画像の濃度偏差を補正する制御を含むことを特徴とする画像形成装置
。
【請求項9】
請求項1乃
至8のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
前記第一画質調整制御及び前記第二画質調整制御のうちのいずれか一方は、画像の階調補正を行う画質調整制御を含むことを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
像担持体上に形成したトナー像を最終的に記録材上に転写させて記録材上に画像を形成する画像形成部が形成する画像を画質調整するための画質調整制御を実行する画像形成装置の画質調整方法であって、
第二画質調整制御を行わずに第一画質調整制御を行う第一制御モードと、該第一画質調整制御に続けて該第二画質調整制御を行う第二制御モードとを選択的に実行可能であり、
前記第二制御モードを実行する実行条件を満たすときでも、前記第一画質調整制御の実行不要条件を満たす場合には、該第一画質調整制御を実行せずに前記第二画質調整制御だけを実行
し、
前記第一画質調整制御及び前記第二画質調整制御のうちのいずれか一方は、前記トナー像のトナー付着量を所定範囲内にする制御を含むことを特徴とする画質調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置及び画質調整方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、記録材上に画像を形成する画像形成部と、前記画像形成部が形成する画像を画質調整するための画質調整制御を実行する画質調整部とを有する画像形成装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、前回の濃度測定の実行からの経過時間、印刷枚数若しくは温度変化が基準以上であるという測定実行条件を満たす場合には、次の新たな印刷ジョブの実行前に、濃度補正制御(画質調整制御)を実行する画像形成装置が開示されている。この画像形成装置では、前記測定実行条件を満たさない場合には、次の新たな印刷ジョブの実行前に濃度補正制御(画質調整制御)を実行しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、第一画質調整制御と、この第一画質調整制御の実行完了が前提であると考えられる第二画質調整制御とを順次行う画質調整制御モードを備える場合、第二画質調整制御のために第一画質調整制御の実行が必要なく、順次行うことで制御時間の長期化を招く結果となってしまうことがあるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、本発明は、像担持体上に形成したトナー像を最終的に記録材上に転写させて記録材上に画像を形成する画像形成部と、前記画像形成部が形成する画像を画質調整するための画質調整制御を実行可能な画質調整部とを有する画像形成装置であって、前記画質調整部は、第二画質調整制御を行わずに第一画質調整制御のみを行う第一制御モードと、該第一画質調整制御に続けて該第二画質調整制御を行う第二制御モードとを選択的に実行可能であり、前記画質調整部は、前記第二制御モードを実行する実行条件を満たすときでも、前記第一画質調整制御の実行不要条件を満たす場合には、該第一画質調整制御を実行せずに前記第二画質調整制御だけを実行し、前記第一画質調整制御及び前記第二画質調整制御のうちのいずれか一方は、前記トナー像のトナー付着量を所定範囲内にする制御を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、第一画質調整制御と、この第一画質調整制御の実行完了が前提であると考えられる第二画質調整制御とを順次行う第二制御モードを実行する場合の制御時間の長期化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態における画像形成装置の制御に関わるハードウェア構成を示すブロック図。
【
図2】同画像形成装置におけるプリンタエンジンのハードウェア構成を示す模式図。
【
図3】同画像形成装置の操作パネルに表示される操作画面61の一例を示す説明図。
【
図4】(a)は、操作パネルに表示される調整項目画面の一例を示す説明図。(b)は、操作パネルに表示される画像品質調整画面の一例を示す説明図。(c)は、操作パネルに表示される調整実行確認画面の一例を示す説明図。
【
図5】制御例1の画質調整制御に関する機能ブロック図。
【
図6】制御例1における画質調整制御の実行フローを示すフローチャート。
【
図7】制御例2の画質調整制御に関する機能ブロック図。
【
図8】制御例2における画質調整制御の実行フローを示すフローチャート。
【
図9】制御例3で用いられる温湿度センサを搭載したプリンタエンジンのハードウェア構成を示す模式図。
【
図10】制御例3の画質調整制御に関する機能ブロック図。
【
図11】制御例3における画質調整制御の実行フローを示すフローチャート。
【
図12】(a)は、黒用トナー付着量センサの例を示す模式図。(b)は、カラー用トナー付着量センサの例を示す模式図。
【
図13】画質調整制御例1における画質調整部の機能ブロック図。
【
図14】(a)~(c)は、それぞれの画質調整制御に用いられる、中間転写ベルト上に形成される補正用パターンの例を示す説明図。
【
図16】(a)は、同画像濃度センサを主走査方向に直交する断面に沿って切断したときの断面図。(b)は、同画像濃度センサが有する画像素子の概略構成図。
【
図17】画質調整制御例2における画質調整部の機能ブロック図。
【
図18】(a)~(d)は、それぞれの画質調整制御に用いられる、用紙上に形成される補正用パターンの例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明に係る画像形成装置の一実施形態について説明する。
図1は、画像形成装置の制御に関わるハードウェア構成を示すブロック図である。
本実施形態の画像形成装置1は、
図1に示すように、CPU(Central Processing Unit)10と、ROM(Read Only Memory)20と、RAM(Random Access Memory)30と、HDD(Hard Disc Drive)40と、外部通信インターフェース(I/F)50と、操作パネル60と、プリンタエンジン100と、トナー付着量センサ160と、画像濃度センサ170とを有する。また、これらを相互接続するシステムバス80を有している。
【0009】
CPU10は、画像形成装置1の動作を制御する。具体的には、CPU10は、RAM30をワークエリア(作業領域)として、ROM20又はHDD40に記憶されたプログラムを実行することで、画像形成装置全体の動作を制御し、コピー機能、スキャナ機能、ファクス機能、プリンタ機能などの各種機能を実現する。また、CPU10は、ROM20又はHDD40に記憶されたプログラムを実行することで、画像形成される画像の画質調整制御を行う画質調整部としても機能する。
【0010】
ROM20は、電源を切ってもデータを保持することができる不揮発性の半導体メモリである。RAM30は、プログラムやデータを一時記憶する揮発性の半導体メモリである。HDD40は、プログラムやデータを記憶している不揮発性のメモリである。HDD40に記憶されるプログラムやデータには、画像形成装置1の全体を制御する基本ソフトウェアであるOS(Operating System)やOS上で動作する各種アプリケーションプログラム、コピー機能、スキャナ機能、ファクス機能、プリンタ機能などの各種機能の動作条件等が含まれる。これらの各種機能が実行した動作(以降、「ジョブ」と呼ぶことがある。)は、その都度、画像形成装置1の動作なども記憶可能である。
【0011】
外部通信I/F50は、画像形成装置1をインターネットやLAN(Local Area Network)などのネットワークに接続するためのインターフェースである。画像形成装置1は、外部通信I/F50を介して、外部装置からの印刷指示や画像データ等を受信することができる。
【0012】
操作パネル60は、ユーザーの操作に応じた各種の入力を受け付ける入力受付部として機能するとともに、各種の情報(例えば受け付けた操作を示す情報、画像形成装置1の動作状況を示す情報、画像形成装置1の設定状態を示す情報など)を表示する。操作パネル60は、一例としてタッチパネル機能を搭載した液晶表示装置(LCD:Liquid Cristal Display)で構成されるが、これに限られるものではない。例えばタッチパネル機能が搭載された有機EL(Electro-Luminescence)表示装置で構成されてもよい。さらに、これに加えて又はこれに代えて、ハードウェアキー等の操作部やランプ等の表示部を設けることもできる。操作パネル60は、CPU10により制御される。
【0013】
画像形成部であるプリンタエンジン100は、プリンタ機能、コピー機能、ファクス機能などを実現させるためのハードウェアであり、記録材としての用紙上に画像を形成する画像形成部として機能する。プリンタ機能は、電子写真方式、インクジェット方式などが適用可能だが、これに限られない。その他、印刷済み用紙を仕分けるフィニッシャや、原稿を自動給送するADF(Auto Document Feeder)のような特定のオプションを備えることもできる。プリンタエンジン100は、CPU10により制御される。
【0014】
画像形成装置1はさらに、外部インターフェースを有し、外部インターフェースを介して、CD(Compact Disc)やDVD(Digital Versatile Disc)、SDメモリカード、USB(Universal Serial Bus)メモリ等の外部記録媒体の読み取りや書き込みを行うようにしてもよい。
【0015】
なお、ROM20又はHDD40に記憶されたプログラムは、コンピュータで処理可能なコンピュータプログラムである。画像形成装置1の製造時や出荷時にROM20又はHDD40にインストールしてもよいし、販売後にインストールすることもできる。販売後にインストールする方法としては、プログラムが記憶された外部記録媒体を用い外部記録媒体ドライブを介してインストールする方法や、外部通信I/F50を用いてネットワークを介してインストールする方法が可能である。
【0016】
図2は、プリンタエンジン100のハードウェア構成を示す模式図である。
プリンタエンジン100は、画像形成装置本体ケース90の内部に設けられ、露光部101と、作像部102と、転写部103と、定着装置104とを有する。また、本体ケース90の上部には、操作パネル60が設けられている。
【0017】
作像部102は、それぞれが像担持体であるイエロー(Y)用感光体120y、ブラック(K)用感光体120k、マゼンタ(M)用感光体120m、シアン(C)用感光体120cを有する。作像部102はまた、それぞれが現像部であるイエロー(Y)用現像器121y、ブラック(K)用現像器121k、マゼンタ(M)用現像器121m、シアン(C)用現像器121cを有する。作像部102はさらに、それぞれが帯電部であるイエロー(Y)用帯電器122y、ブラック(K)用帯電器122k、マゼンタ(M)用帯電器122m、シアン(C)用帯電器122cを有する。
【0018】
転写部103は、像担持体である中間転写体としての中間転写ベルト130、二次転写ベルト133などを有する。定着部である定着装置104は、定着部材141、排出ローラ142などを有する。
【0019】
以降、
図2を用いて画像形成部であるプリンタエンジン100の機能の一例として、画像データに基づき記録材としての用紙上に画像を形成する機能を説明する。
【0020】
露光部101は、作像部102の感光体120y~120cを露光し、各感光体上に画像データに応じた潜像を書き込むための書き込み光を出射する。つまり画像データの画像パターンに応じた書き込み位置と、画像濃度に応じた書き込み光量で選択的に光ビームを出射する。書き込み光は、レーザー光源やLED(Light Emittig Dilde)光源からの光などを用いればよいが、以下は一例として、LD(Laser Diode)を有するレーザー光源を用いた場合を説明する。
【0021】
まず、レーザー光源から出射された光ビームBMは、ポリゴンミラー110により偏向され、それぞれがfθレンズを含む走査レンズ111a,111bに入射する。光ビームは、イエロー(Y),ブラック(K),マゼンタ(M),シアン(C)の各色の画像に対応した数が発生され、それぞれ走査レンズ111a,111bを通過した後、反射ミラー112y~112cで反射される。例えば、イエローの光ビームYは走査レンズ111aを透過して反射ミラー112yで反射されてWTLレンズ113yへ入射される。ブラック,マゼンタ,シアンの各色の光ビームK,M,Cについても同じなのでそれらの説明は省略する。
【0022】
WTLレンズ113y~113cは、それぞれ入射された各光ビームY~Cを整形した後、反射ミラー114y~114cへと各光ビームY~Cを偏向させる。そして、各光ビームY~Cはさらに反射ミラー115y~115cで反射され、それぞれ露光のために使用される光ビームY~Cとして感光体120y~120cへと照射される。
【0023】
感光体120y~120cへの光ビームY~Cの照射は、感光体120y~120cに対する主走査方向および副走査方向に関して、タイミング同期が行われている。なお、感光体は一例として主走査方向に長いドラム状であり、感光体ドラムということもある。
【0024】
以下、感光体120y~120cに対する主走査方向を、光ビームの走査方向として定義し、副走査方向を、主走査方向に対して直交する方向、すなわち、感光体120y~120cの回転する方向として定義する。
【0025】
感光体120y~120cは、アルミニウムなどの導電性ドラム上に、少なくとも電荷発生層と電荷輸送層とを含む光導電層を備えている。光導電層は、それぞれ感光体120y~120cに対応して設けられ、コロトロン帯電器または、スコロトロン帯電器、又は帯電ローラなどを含んで構成される帯電部としての帯電器122y~122cにより、帯電バイアスに応じて表面電荷が付与される。
【0026】
各帯電器122y~122cによって感光体120y~120c上にそれぞれ付与された静電荷は、書き込み光としての光ビームY~Cによりそれぞれ画像パターンに応じて露光され、各帯電器122y~122cの被走査面上に静電潜像が形成される。
【0027】
感光体120y~120cの被走査面上にそれぞれ形成された静電潜像は、現像バイアスが印加された現像ローラ,トナー供給ローラ,規制ブレードなどを含む現像部である現像器121y~121cによりそれぞれ現像され、感光体120y~120cの被走査面上にトナー像が形成される。
【0028】
感光体120y~120cの被走査面上に担持された各トナー像は、搬送ローラ131a~131cにより矢示Dの方向に移動する中間転写ベルト130上に転写される。符号132y~132cは、それぞれ感光体120y~120cに対する一次転写ローラである。中間転写ベルト130は、感光体120y~120cの被走査面上からそれぞれ転写されたY、K、M、Cのトナー像を担持した状態で二次転写位置Fへと搬送される。
【0029】
二次転写ベルト133は搬送ローラ134a,134bに架け渡され、さらに搬送ローラ134a,134bの回転により矢示Eの方向に搬送される。二次転写位置Fには、給紙カセットなどの用紙収容部Tから上質紙、プラスチックシートなどの記録材である用紙Pが搬送ローラ135により供給される。二次転写位置Fでは、二次転写バイアスを印加して、中間転写ベルト130上に担持されたトナー像を、二次転写ベルト133上に吸着保持された用紙Pに転写する。用紙Pは主走査方向と直交する方向に搬送される。
【0030】
用紙Pは、二次転写ベルト133の搬送に伴い、定着部としての定着装置104へと供給される。定着装置104は、シリコーンゴム、フッ素ゴムなどを含む定着ローラなどの定着部材141含んで構成されていて、用紙Pとトナー像とを加圧加熱し、排出ローラ142によって画像形成後の用紙P’として定着装置104の外部へと排出される。
【0031】
トナー像を転写した後の中間転写ベルト130は、クリーニングブレードを含むクリーニング部139によって転写残トナーが除去された後、次の像形成プロセスへと供給されている。
【0032】
プリンタエンジン100の動作において、感光体120y~120cの回転方向、中間転写ベルト130の搬送方向、用紙Pおよび用紙P’の搬送方向は、主走査方向に対してはいずれも直交する方向であり、副走査方向と同じ方向になる。
【0033】
以上のように画像形成部であるプリンタエンジン100は、画像データに基づき、用紙上に画像を形成する。
【0034】
次に、プリンタエンジン100によって形成される画像を画質調整するための画質調整制御について説明する。
図3は、本実施形態における画像形成装置1の操作パネル60に表示される操作画面61の一例を示す説明図である。
操作パネル60に表示される操作画面61には、各機能を起動するためのアイコンが表示されている。ユーザーは「調整」アイコン611をタッチすることにより調整機能を使用することが可能である。
【0035】
図4(a)~(c)は、操作パネル60に表示される調整画面62~64の一例を示す説明図である。
図3に示した操作画面61で「調整」アイコン611をタッチすると、操作パネル60の表示が
図4(a)に示す調整項目画面62に遷移する。調整項目画面62に表示される項目は
図4(a)に示されているものに限るものではない。この調整項目画面62で「画像品質調整」アイコン621をタッチすると、操作パネル60の表示は、
図4(b)に示す画像品質調整画面63に遷移する。画像品質調整画面63には、ユーザーが実行可能な画像品質調整項目が表示されている。
【0036】
この画像品質調整画面63で例えば「画質調整A」アイコン631をタッチすると、操作パネル60の表示は、
図4(c)に示す調整実行確認画面64に遷移する。この調整実行確認画面64において、実行を許可する「はい」アイコン641をタッチすると、制御モードである画質調整Aに対応する画質調整制御が実行され、実行を許可しない「いいえ」アイコン642をタッチすると、
図4(b)に示す画像品質調整画面63に戻る。
【0037】
画像品質調整画面63で「戻る」アイコン632をタッチすると、操作パネル60の表示が
図4(a)に示す調整項目画面62に遷移する。また、調整項目画面62で「ホーム」アイコン622をタッチすると、操作パネル60の表示は、
図3に示した操作画面61に遷移する。
【0038】
画像品質調整画面63で表示される画質調整(制御モード)の種類としては、例えば、出力画像の濃度を調整する「画像濃度調整」や、主走査方向または副走査方向の画像濃度偏差を補正する「主走査画像濃度偏差調整」または「副走査画像濃度偏差調整」、画像濃度の階調を補正する「階調補正」などが挙げられる。
【0039】
画像品質調整画面63に表示される画質調整(制御モード)の種類は、画像形成装置1で実行可能な制御モードの一部であってもよい。後述するように、これらの画質調整制御は、トナー付着量センサ160により中間転写ベルト130上のトナー像のトナー付着量を検知した結果を用いて行われるものでもよいし、画像濃度センサ170により定着装置104の通過前または通過後の用紙P上の画像の濃度を検知した結果を用いて行われるものでもよい。
【0040】
次に、本実施形態における画質調整のための制御モードについて説明する。
画質調整制御を含む制御モードを実行した直後のように、その制御モードを実行してから状況が大きく変化していない場合には、再び同じ制御モードを実行する必要性が乏しい。そのため、従来、前回実行時からの経過時間、印刷枚数若しくは温度変化が基準未満であるときには、同じ制御モードを実行しないようにすることがある。これにより、不必要な画質調整制御の実行による制御時間の時間的ロス、当該実行による消耗品(トナー等)の無駄な消費、当該実行による部品劣化などの不具合を抑制することが可能となる。
【0041】
ところが、ある種類の画質調整制御A(第一画質調整制御)を行う制御モード(第一制御モード)と、この画質調整制御A及びこれとは異なる画質調整制御B(第二画質調整制御)の両方を含んだ別種類の制御モード(第二制御モード)とを選択的に実行する場合が考えられる。例えば、画質調整制御Bを実行するにあたっては、前もって画質調整制御Aが実行済みであることが望ましい場合には、画質調整制御A及び画質調整制御Bの両方を実行する種類の制御モード(第二制御モード)を設ける場合がある。このような場合、画質調整制御Aを実行してから状況が大きく変化していない時点で、第二制御モードを実行する実行条件が満たされる場合がある。この場合、第二制御モードが実行されると、実行不要な画質調整制御Aも実行されてしまい、その分だけ、時間的ロス、消耗品の無駄な消費、部品劣化などの不具合を引き起こす。
【0042】
詳しくは、仮に、画質調整制御A及び画質調整制御Bを行う「画質調整B」(第二制御モード)が、上述した画像品質調整画面63に表示されず、ユーザーの指示では実行できない制御モードである場合には、その実行タイミングや実行頻度をプログラムによって管理することが可能である。しかしながら、本実施形態のように、
図4(b)に示す画像品質調整画面63に「画質調整B」が表示され、ユーザーの指示で実行できるような場合には、その実行タイミングや実行頻度をプログラムによって管理することができない場合がある。この場合、例えば、画質調整制御Aを行う「画質調整A」(第一制御モード)が印刷ジョブの終了時に実行されるようにプログラミングされており、印刷ジョブ終了後すぐに画像品質調整画面63からユーザーが「画質調整B」(画質調整制御A+B)を実行した場合には、直前に行われている画質調整制御Aについては実行不要であるにも関わらず実行されてしまい、その分だけ、時間的ロス、消耗品の無駄な消費、部品劣化などの不具合を引き起こす。
【0043】
そこで、本実施形態においては、「画質調整B」(画質調整制御A+画質調整制御B)を実行する実行条件を満たすときでも、画質調整制御Aの実行不要条件を満たす場合には、画質調整制御Aを実行せずに画質調整制御Bだけを実行する。これにより、「画質調整B」を実行する実行条件が満たされたときに、実行不要な画質調整制御Aが実行されることを回避することができる。よって、「画質調整B」の実行時において、実行不要な第一画質調整制御が実行されることによる時間的ロス、消耗品の無駄な消費、部品劣化などの不具合を抑制することができる。
【0044】
〔制御例1〕
以下、本実施形態における画質調整制御についての一制御例(以下、本制御例を「制御例1」という。)について説明する。
図5は、本制御例1の画質調整制御に関する機能ブロック図である。
入力受付部200は、操作パネル60によって構成され、操作に必要な情報をユーザーに対して表示するとともに、ユーザーによる各種操作を受け付ける機能を実現する。また、入力受付部200は、外部通信I/F50の処理によって、外部機器からLAN(Local Area Network)やインターネット経由で入力されるユーザーによる印刷指示や設定変更を受け付ける機能を実現する。
【0045】
表示制御部210は、CPU10がRAM30を作業領域としてROM20またはHDD40に記憶されたプログラムを実行することで、入力受付部200に表示する表示画面を制御する機能を実現する。
【0046】
通信制御部220は、外部通信I/F50の処理によって、画像情報を外部へメール送信したり、各種設定情報を外部機器から設定可能な場合には、外部装置とネットワーク経由で通信したりする機能を実現する。
【0047】
読出・書込処理部230は、CPU10がRAM30を作業領域としてROM20またはHDD40を実行することによって、記憶部250に各種データを記憶したり、記憶された各種データを読み出したりする機能を実現する。
【0048】
制御部240は、CPU10がRAM30を作業領域としてROM20またはHDD40を実行することによって、画像形成装置全体の機能、一例として、コピー機能、スキャナ機能、プリンタ機能、ファクシミリ機能を実現する。
【0049】
制御部240は、画像形成制御部241と、画質調整部242とを有する。画像形成制御部241は、画像形成部であるプリンタエンジン100を制御する機能を実行する。画像形成制御部241は、一例として、ユーザーによる印刷指示に含まれる用紙の種類に応じた画像形成条件で画像形成を実行可能である。画質調整部242は、プログラムによる命令(所定タイミングでの自動実行など)や、操作パネル60に対するユーザーの指示入力による命令に従って、画像形成制御部241によって形成される画像の画質を調整する。
【0050】
記憶部250は、ROM20またはHDD40によって構成され、プログラムや文書データ、画像形成装置1の動作に必要な画像形成条件や各種設定情報、画像形成装置1の動作ログ等を記憶する機能を実現する。画像形成条件の例としては、帯電バイアス、現像バイアス、光書き込み光量、転写バイアスなどが挙げられる。なお、記憶部250に記憶される各種情報は、画像形成装置1の出荷前に設定してもよいし、出荷後に更新されてもよい。
【0051】
記憶部250は、経過時間記憶部251を有する。経過時間記憶部251は、画質調整制御の種類ごとに、最後に実行されてからの経過時間を記憶する。
【0052】
図6は、本制御例1における画質調整制御の実行フローを示すフローチャートである。
本制御例1において、「画質調整B」(画質調整制御A+B)の実行命令が入力されると(S11)、制御部240の画質調整部242は、まず、画質調整制御Aの前回実行時(画質調整制御Aが単体で実行された場合、「画質調整B」に含まれる画質調整制御Aが実行された場合など)からの経過時間を記憶部250の経過時間記憶部251から取得する(S12)。
【0053】
続いて、画質調整部242は、取得した経過時間が規定時間(例えば60分)未満であるか否かを判定する(S13)。この判定で規定時間以上であると判定された場合(S13のNo)、画質調整部242は、画質調整制御Aの実行命令を画像形成制御部241に出力する(S14)。これにより、画像形成制御部241では、画質調整制御Aのための動作が実行され、画質調整制御Aが行われる。
【0054】
画質調整制御Aの実行命令を出力した画質調整部242は、記憶部250の経過時間記憶部251に記憶されている経過時間をクリアして再び経過時間の計測を開始する(S15)。
【0055】
また、画質調整部242は、画質調整制御Aが完了したら、続いて、画質調整制御Bの実行命令を画像形成制御部241に出力する(S16)。これにより、画像形成制御部241では、画質調整制御Bのための動作が実行され、画質調整制御Bが行われる。
【0056】
一方、前記ステップS13で規定時間未満であると判定された場合(S13のYes)、画質調整部242は、画質調整制御Aの実行命令を出力することなく、画質調整制御Bの実行命令を画像形成制御部241に出力する(S16)。これにより、画像形成制御部241では、画質調整制御Bのための動作が実行され、画質調整制御Bが行われる。
【0057】
本制御例1によれば、「画質調整B」(画質調整制御A+B)を実行するにあたり、画質調整制御Aの前回実行時からの経過時間が規定時間未満という実行不要条件を満たすときには、画質調整制御Aを実行せずに画質調整制御Bだけを実行する。よって、前回実行時からの経過時間が短いために実行不要である画質調整制御Aが行われず、これにより、「画質調整B」の実行時における時間的ロス、消耗品の無駄な消費、部品劣化などの不具合を抑制することができる。
【0058】
〔制御例2〕
次に、本実施形態における画質調整制御についての他の制御例(以下、本制御例を「制御例2」という。)について説明する。
図7は、本制御例2の画質調整制御に関する機能ブロック図である。
本制御例2の機能ブロック図は、記憶部250に印刷枚数記憶部252が記憶されている点を除いて、上述した制御例1と同様である。この印刷枚数記憶部252には、画質調整制御の種類ごとに、最後に実行されてからの印刷枚数が記憶される。
【0059】
図8は、本制御例2における画質調整制御の実行フローを示すフローチャートである。
本制御例2における画質調整制御の実行フローは、上述した制御例とほぼ同様であり、「画質調整B」(画質調整制御A+B)の実行命令が入力されると(S21)、制御部240の画質調整部242は、画質調整制御Aの前回実行時からの印刷枚数を記憶部250の印刷枚数記憶部252から取得する(S22)。
【0060】
続いて、画質調整部242は、取得した印刷枚数が規定枚数(例えば1000枚)未満であるか否かを判定する(S23)。この判定で規定枚数以上であると判定された場合(S23のNo)、画質調整部242は、画質調整制御Aの実行命令を画像形成制御部241に出力する(S24)。これにより、画像形成制御部241では、画質調整制御Aのための動作が実行され、画質調整制御Aが行われる。
【0061】
画質調整制御Aの実行命令を出力した画質調整部242は、記憶部250の印刷枚数記憶部252に記憶されている印刷枚数をクリアして再び経過時間の計測を開始する(S25)。
【0062】
また、画質調整部242は、画質調整制御Aが完了したら、続いて、画質調整制御Bの実行命令を画像形成制御部241に出力する(S26)。これにより、画像形成制御部241では、画質調整制御Bのための動作が実行され、画質調整制御Bが行われる。
【0063】
一方、前記ステップS23で規定枚数未満であると判定された場合(S23のYes)、画質調整部242は、画質調整制御Aの実行命令を出力することなく、画質調整制御Bの実行命令を画像形成制御部241に出力する(S26)。これにより、画像形成制御部241では、画質調整制御Bのための動作が実行され、画質調整制御Bが行われる。
【0064】
本制御例2によれば、「画質調整B」(画質調整制御A+B)を実行するにあたり、画質調整制御Aの前回実行時からの印刷枚数が規定枚数未満という実行不要条件を満たすときには、画質調整制御Aを実行せずに画質調整制御Bだけを実行する。よって、前回実行時からの印刷枚数が少ないために実行不要である画質調整制御Aが行われず、これにより、「画質調整B」の実行時における時間的ロス、消耗品の無駄な消費、部品劣化などの不具合を抑制することができる。
【0065】
〔制御例3〕
次に、本実施形態における画質調整制御についての更に他の制御例(以下、本制御例を「制御例3」という。)について説明する。
図9は、本制御例3で用いられる温度センサ、湿度センサ又は温湿度センサを搭載したプリンタエンジン100のハードウェア構成を示す模式図である。
図9の符号150は、作像部102の近傍の温度および湿度(本実施形態では相対湿度)を検知可能な温度検知手段及び湿度検知手段として機能する温湿度センサである。なお、ここでは、温湿度センサ150を搭載した例であるが、温度センサのみ又は湿度センサのみを搭載したものであってもよい。また、温湿度センサ150の設置位置は一例であり、これに限るものではない。
【0066】
図10は、本制御例3の画質調整制御に関する機能ブロック図である。
本制御例3の機能ブロック図は、温湿度検出部260が設けられている点、記憶部250に温度記憶部253及び湿度記憶部254が記憶されている点を除いて、上述した制御例1と同様である。温湿度検出部260は、温湿度センサ150によって構成され、温湿度センサ150が設置場所近傍の温度及び湿度(以下「温湿度」ともいう。)を検知する。記憶部250の温度記憶部253及び湿度記憶部254は、温湿度センサ150によって検出された温度および湿度をそれぞれ記憶する。
【0067】
図11は、本制御例3における画質調整制御の実行フローを示すフローチャートである。
本制御例3において、「画質調整B」(画質調整制御A+B)の実行命令が入力されると(S31)、制御部240の画質調整部242は、温湿度検出部260から、現在の温湿度を取得する(S32)。また、画質調整部242は、画質調整制御Aの前回実行時の温湿度を記憶部250の温度記憶部253及び湿度記憶部254から取得する(S33)。そして、画質調整部242は、現在の温度と画質調整制御Aの前回実行時の温度との差分、並びに、現在の湿度と画質調整制御Aの前回実行時の湿度との差分を、それぞれ計算する(S34)。
【0068】
続いて、画質調整部242は、計算した各差分が閾値(例えば温度については10℃、湿度については20%RH。仮に絶対湿度を用いる場合には7g/m3)未満であるか否かを判定する(S35)。この判定でいずれかの差分が閾値以上であると判定された場合(S35のNo)、画質調整部242は、画質調整制御Aの実行命令を画像形成制御部241に出力する(S36)。これにより、画像形成制御部241では、画質調整制御Aのための動作が実行され、画質調整制御Aが行われる。
【0069】
画質調整制御Aの実行命令を出力した画質調整部242は、記憶部250の温度記憶部253及び湿度記憶部254に記憶されている温度及び湿度を現在の温度及び湿度に更新する(S37)。
【0070】
また、画質調整部242は、画質調整制御Aが完了したら、続いて、画質調整制御Bの実行命令を画像形成制御部241に出力する(S38)。これにより、画像形成制御部241では、画質調整制御Bのための動作が実行され、画質調整制御Bが行われる。
【0071】
一方、前記ステップS35で閾値未満であると判定された場合(S35のYes)、画質調整部242は、画質調整制御Aの実行命令を出力することなく、画質調整制御Bの実行命令を画像形成制御部241に出力する(S38)。これにより、画像形成制御部241では、画質調整制御Bのための動作が実行され、画質調整制御Bが行われる。
【0072】
本制御例3によれば、「画質調整B」(画質調整制御A+B)を実行するにあたり、現在の温度及び湿度と画質調整制御Aの前回実行時の温度及び湿度との差分が閾値未満という実行不要条件を満たすときには、画質調整制御Aを実行せずに画質調整制御Bだけを実行する。よって、前回実行時からの温度変化や湿度変化が少ないために実行不要である画質調整制御Aが行われず、これにより、「画質調整B」の実行時における時間的ロス、消耗品の無駄な消費、部品劣化などの不具合を抑制することができる。
【0073】
なお、本制御例3では、実施不要条件の判断に際して温度と湿度の両方を用いているが、いずれか一方だけを用いても良い。また、本制御例3では、温度と湿度のいずれか一方が実施不要条件を満たす場合に、画質調整制御Aを実行せずに画質調整制御Bだけを実行するようにしているが、温度と湿度の両方が実施不要条件を満たす場合に、画質調整制御Aを実行せずに画質調整制御Bだけを実行するようにしてもよい。
【0074】
なお、上述した制御例1~3の少なくとも2つを組み合わせてもよい。すなわち、実施不要条件について、例えば、経過時間が規定時間(60分)未満という実施不要条件と印刷枚数が規定枚数(1000枚)未満という実施不要条件とのいずれか又は両方の条件を満たす場合に、画質調整制御Aを実行せずに画質調整制御Bだけを実行するようにしてもよい。また、例えば、経過時間が規定時間(60分)未満という実施不要条件と絶対湿度の差分が閾値(7g/m3)未満という実施不要条件とのいずれか又は両方の条件を満たす場合に、画質調整制御Aを実行せずに画質調整制御Bだけを実行するようにしてもよい。
【0075】
〔画質調整制御例1〕
次に、本実施形態における画質調整制御の一例(以下「画質調整制御例1」という。)について説明する。
図2に示したように、本実施形態の画像形成装置1は、中間転写ベルト130の外周面に形成されたトナー像のトナー付着量(トナー像の濃度)を検知するトナー付着量検知手段としてのトナー付着量センサ160を備えている。本実施形態のトナー付着量センサ160は、光学センサなどで構成された光学センサユニットである。本実施形態では、トナー付着量センサ160を中間転写ベルト130の近傍に設け、各感光体120c,120m,120k,120yに形成された所定の画像パターンのトナー像を中間転写ベルト130に転写して各色のトナー像のトナー付着量(濃度)を検出する。
【0076】
本画質調整制御例1では、中間転写ベルト130上で検知したトナー付着量(濃度)の検知結果に基づいて、画像形成条件(作像条件)を決定する。本実施形態では、トナー付着量センサ160を中間転写ベルト130の近傍に設けた構成であるが、トナー付着量センサ160は、各感光体120c,120m,120k,120yそれぞれの近傍や二次転写ベルト133の近傍に配設して、それらに担持されているトナー像のトナー付着量を検知する構成であってもよい。
【0077】
図12(a)及び(b)は、それぞれ、トナー付着量センサ160の例を示す模式図である。
図12(a)は、黒トナー像のトナー付着量(濃度)を検知するのに適した黒用トナー付着量センサ160(K)であり、
図13(b)は、黒以外のカラートナー像のトナー付着量(濃度)を検知するのに適したカラー用トナー付着量センサ160(Y,M,C)である。
【0078】
図12(a)に示す黒用トナー付着量センサ160(K)は、発光ダイオード(LED)等からなる発光素子160aと、正反射光を受光する受光素子160bとから構成されている。発光素子160aは中間転写ベルト130上に光を照射し、この照射光は中間転写ベルト130の表面やトナーによって反射される。受光素子160bは、この反射光のうちの正反射光を受光する。
【0079】
図12(b)に示すカラー用トナー付着量センサ160(Y,M,C)は、発光ダイオード(LED)等からなる発光素子160aと、正反射光を受光する受光素子160bと、拡散反射光を受光する受光素子160cとから構成されている。発光素子160aは、黒用トナー付着量センサ160(K)の場合と同様、中間転写ベルト130上に光を照射し、この照射光は、中間転写ベルト130の表面やトナーによって反射される。正反射受光素子160bは、この反射光のうちの正反射光を受光し、拡散反射光受光素子160cは、反射光のうち拡散反射光を受光する。
【0080】
なお、本実施形態では、発光素子として、発光される光のピーク波長が950nmであるGaAs赤外発光ダイオードを用い、受光素子としては、ピーク受光感度が800nmであるSiフォトトランジスタなどを用いている。発光素子及び受光素子として、ピーク波長及びピーク受光感度がこれと異なるものを用いてもよい。また、黒用トナー付着量センサ160(K)及びカラー用トナー付着量センサ160(Y,M,C)と、検知対象物であるトナー像が担持される中間転写ベルト130のベルト表面との間には、例えば5mm程度の距離(検出距離)を設けて配設されている。
【0081】
黒用トナー付着量センサ160(Y,M,C)及びカラー用トナー付着量センサ160(Y,M,C)からの出力は、付着量変換アルゴリズムによってトナー付着量に変換される。付着量変換アルゴリズムについては、従来技術と同様なアルゴリズムを用いることができる。
【0082】
図13は、本画質調整制御例1における画質調整部242の機能ブロック図である。
本画質調整制御例1の画質調整部242は、トナー付着量補正部2421と、駆動方向トナー付着量偏差補正部2422と、直角方向トナー付着量偏差補正部2423と、階調補正部2424とを備えている。これらの機能の一部または全部は、操作パネル60からユーザーの指示によって実行可能なものである。
【0083】
トナー付着量補正部2421は、トナー付着量目標値と実際のトナー付着量とに差が生じた際に、このトナー付着量差を補正するための制御を実行する。具体的には、トナー付着量補正部2421は、中間転写ベルト130上に形成されたトナー付着量補正用パターンをトナー付着量センサ160で検出した検出結果に基づいて、画像形成制御部241に、トナー付着量差を補正するための命令を出力する。トナー付着量差を補正するための命令は、例えば、現像器内の現像剤のトナー濃度を調整する、現像バイアスや帯電バイアスを調整する、書き込み光量を調整する、または操作パネル60にトナー付着量ずれが生じていることを表示させる等があるが、これらに限られない。
【0084】
駆動方向トナー付着量偏差補正部2422は、中間転写ベルト130上に形成されるトナー像の、中間転写ベルト130駆動方向(中間転写ベルト表面移動方向)すなわち副走査方向にトナー付着量偏差が生じた際に、このトナー付着量偏差(駆動方向トナー付着量偏差)を補正するための制御を実行する。具体的には、駆動方向トナー付着量偏差補正部2422は、中間転写ベルト130上に形成された駆動方向トナー付着量偏差補正用パターンをトナー付着量センサ160で検出した検出結果に基づいて、画像形成制御部241に、駆動方向トナー付着量偏差を補正するための命令を出力する。
【0085】
駆動方向トナー付着量偏差を補正するための命令は、例えば、現像器内の現像剤のトナー濃度を調整する(例:現像ローラ上のトナーが不足しないように現像剤中のトナー濃度を上昇させる)、現像バイアスや帯電バイアスを調整する(例:偏差を打ち消すような現像ポテンシャルとなるように現像バイアスや帯電バイアスを調整する)、書き込み光量を調整する(例:偏差を打ち消すような現像ポテンシャルとなるように書き込み光量を制御する)、または操作パネル60に駆動方向のトナー付着量に偏差が生じていることを表示させる等があるが、これらに限られない。
【0086】
直角方向トナー付着量偏差補正部2423は、中間転写ベルト130上に形成される画像の、中間転写ベルト130駆動方向に対して直交する方向(直角方向)すなわち主走査方向にトナー付着量偏差が生じた際に、このトナー付着量偏差(直角方向トナー付着量偏差)を補正するための制御を実行する。具体的には、直角方向トナー付着量偏差補正部2423は、中間転写ベルト130上に形成された直角方向トナー付着量偏差補正用パターンをトナー付着量センサ160で検出した検出結果に基づいて、画像形成制御部241に、直角方向トナー付着量偏差を補正するための命令を出力する。直角方向トナー付着量偏差を補正するための命令は、駆動方向トナー付着量偏差を補正するための命令と同様、例えば、現像器内の現像剤のトナー濃度を調整する、現像バイアスや帯電バイアスを調整する、書き込み光量を調整する、または操作パネル60に直角方向のトナー付着量に偏差が生じていることを表示させる等があるが、これらに限られない。
【0087】
階調補正部2424は、中間転写ベルト130上に形成されるトナー像の階調に異常が生じた際に、階調を補正するための制御を実行する。具体的には、階調補正部2424は、中間転写ベルト130上に形成された階調補正(キャリブレーション)用パターンをトナー付着量センサ160で検出した検出結果に基づいて、画像形成制御部241に、階調を補正するための命令を出力する。階調を補正するための命令は、上述した命令と同様、例えば、現像器内の現像剤のトナー濃度を調整する、現像バイアスや帯電バイアスを調整する、書き込み光量を調整する、または操作パネル60に階調異常が生じていることを表示させる等があるが、これらに限られない。
【0088】
本画質調整制御例1において、例えば、駆動方向トナー付着量偏差補正や直角方向トナー付着量偏差補正を実行する前には、トナー付着量が目標範囲に制御されていることが望ましく、すなわちトナー付着量補正が事前に行われていることが望ましい。この場合、トナー付着量補正は、上述した画質調整制御Aに対応し、駆動方向トナー付着量偏差補正または直角方向トナー付着量偏差補正は画質調整制御Bに対応することになる。
【0089】
この場合、例えば、印刷ジョブが終了し、ユーザーが出力画像を確認した際に、駆動方向に画像濃度むらが発生していた場合、ユーザーは駆動方向トナー付着量偏差補正機能を利用して画像濃度むらの補正(画質調整制御B)を実行させる指示操作を行う。このとき、ユーザーが駆動方向トナー付着量偏差補正を実行する前に、ユーザーがトナー付着量補正(画質調整制御A)の実行指示をするとは限らない。一方で、駆動方向トナー付着量偏差補正(画質調整制御B)や直角方向トナー付着量偏差補正(画質調整制御B)を実行する前に必ずトナー付着量補正(画質調整制御A)が実行されるという制御モード(第二制御モード)を設けると、当該制御モードの実行時に、例えば以下のような場合などに、本来実行不要なトナー付着量補正(画質調整制御A)が実行されてしまい、ダウンタイム増加や、無駄なトナー消費、現像剤劣化などを引き起こす。
【0090】
例えば、トナー付着量補正が一定枚数印刷ごとに自動実行するようにプログラミングされており、印刷ジョブの終了後にトナー付着量補正が自動実行されている場合、ユーザーが一度、駆動方向トナー付着量偏差補正を実行したが、偏差が完全には直らず、もう一度連続して駆動方向トナー付着量偏差補正を実行する場合、ユーザーが一度、駆動方向トナー付着量偏差補正を実行し、それによって駆動方向のトナー付着量偏差が解消したことにより、直角方向のトナー付着量にも偏差が発生していることに気づいたため、続いて直角方向トナー付着量偏差補正を実行する場合などである。
【0091】
本実施形態によれば、このような場合でも、実行不要なトナー付着量補正の実行を抑制することができ、実行不要なトナー付着量補正を実行することによるダウンタイムの増加、無駄なトナー消費、現像剤劣化などを抑制することができる。
【0092】
上述した画質調整制御Aと画質調整制御Bとの組み合わせは、上述したものに限らない。例えば、階調補正を実行する前にはトナー付着量が目標範囲に制御されているだけでなく、駆動方向および直角方向のトナー付着量偏差も解消していることが望ましい場合がある。これは、駆動方向および直角方向に異なる階調のパッチを形成することに起因し、駆動方向や直角方向にトナー付着量偏差が発生している場合には、正しい階調が表現できず、補正が失敗してしまうおそれがあるためである。この場合、トナー付着量補正、駆動方向トナー付着量偏差補正、直角方向トナー付着量偏差補正の少なくとも1つが上述した画質調整制御Aに対応し、階調補正が画質調整制御Bに対応することになる。
【0093】
また、階調補正とその他の画質調整制御(トナー付着量、駆動方向および直角方向のトナー付着量偏差)を完全に独立させておいた場合、ユーザーが、階調補正の前に実行しておくべき当該その他の画質調整制御を指示し忘れてしまうおそれがある。すなわち、この場合、例えば、同一画像の印刷中に階調ずれが発生して階調補正を行う際、事前にどの画質調整制御を行う必要があるかをユーザーが判断する必要が出てきてしまい、作業が煩雑化するという不具合も生じる。本実施形態においては、このような不具合も回避することが可能である。
【0094】
例えば、様々な画像の階調補正をまとめて行う際、最初の階調補正実行時のみ事前に必要なその他の画質調整制御が行われ、2回目以降は階調補正のみが行われるようにすることができる。また、同一画像の印刷中に階調ずれが発生してしまった場合は、階調補正命令を受信した際、経過時間や印刷枚数や温湿度変化等に従って、事前の画質調整制御を実行することの必要性を画像形成装置1が判断する。
【0095】
図14(a)~(c)は、それぞれの画質調整制御に用いられる、中間転写ベルト130上に形成される補正用パターンの例を示す説明図である。
なお、
図14(a)~(c)の例は、トナー付着量センサ160が主走査方向に4つ配置されている構成であるが、トナー付着量センサ160の個数や配置はこれに限るものではない。
【0096】
トナー付着量補正用パターンや階調補正用パターンには、例えば
図14(a)に示すようにK、C、M、Yそれぞれの段階的な階調パッチが形成されるものを用いることができる。
図14(a)には、K、C、M、Yそれぞれのパッチを同一階調で同時に形成されるものを例示したが、形成されるパッチの形状、個数、レイアウト等はこれに限るものではない。また、トナー付着量補正用パターンと階調補正用パターンとで形成されるパッチの形状、階調、レイアウトが異なっていてもよい。
【0097】
駆動方向トナー付着量偏差補正用パターンには、例えば
図14(b)に示すような、K、C、M、Yそれぞれの、駆動方向に長い形状を有するパッチが形成されるものを用いることができる。パッチの長さは、例えば感光体の周長よりも長いものが好ましい。
図14(b)には、K、C、M、Yそれぞれのパッチを同一階調で同時に形成されるものを例示したが、形成されるパッチの形状、レイアウト等はこれに限るものではない。
【0098】
直角方向トナー付着量偏差補正用パターンには、例えば
図14(c)のような、K、C、M、Yそれぞれの、駆動方向に対して直交する方向(直角方向)に長い形状を有するパッチが形成されるものを用いることができる。
図14(c)には、K、C、M、Yそれぞれのパッチを同一階調で形成されたものを例示したが、形成されるパッチの形状、レイアウト等はこれに限るものではない。
【0099】
〔画質調整制御例2〕
次に、本実施形態における画質調整制御の他の例(以下「画質調整制御例2」という。)について説明する。
図2に示したように、本実施形態の画像形成装置1は、定着装置104から排出された用紙P’上の画像濃度を検知する画像濃度検知手段としての画像濃度センサ170を備えている。本実施形態の画像濃度センサ170は、トナー色に対応する色ごとに画像濃度を検知可能であり、光学センサなどで構成された光学センサユニットである。本実施形態では、トナー付着量センサ160を中間転写ベルト130の近傍に設け、各感光体120c,120m,120k,120yに形成された所定の画像パターンのトナー像を中間転写ベルト130に転写して各色のトナー像のトナー付着量(濃度)を検出する。
【0100】
本画質調整制御例2では、用紙P’上で検知した画像濃度の検知結果に基づいて、画像形成条件(作像条件)を決定する。本実施形態における画像濃度センサ170は、定着装置の用紙搬送方向下流側に配置されているが、定着装置の用紙搬送方向上流側における中間転写ベルト130近傍や二次転写ベルト133の近傍に配設されていてもよい。
【0101】
図15は、画像濃度センサ170の例を示す斜視図である。
画像濃度センサ170は、
図15に示すように、主走査方向に長い形状をしたラインセンサであり、画像濃度センサ170の内部には、主走査方向に長い形状をした画像素子が備わっている。画像濃度センサ170の主走査方向の検知幅は、
図15において主走査方向に点線で示される幅である。この検知幅は、用紙P’の主走査方向の幅よりも長いため、主走査方向に点線で示される幅を通過するように用紙P’を搬送させると、用紙P’上の全域にわたり画像濃度を検出することが可能である。つまり、
図15の画像濃度センサ170は、用紙P’の右端部、左端部、用紙搬送方向に対する先端部、用紙搬送方向に対する後端部の濃度も検出できる。なお、
図15には、主走査方向の検知幅が用紙P’の主走査方向の幅よりも長い画像濃度センサ170の例を示したが、検知幅はこれに限るものではなく、例えば用紙P’の主走査方向の幅よりも短いものを用いてもよい。
【0102】
図16(a)は、画像濃度センサ170を主走査方向に直交する断面に沿って切断したときの断面図である。
図16(a)に示すように、画像濃度センサ170は内部に、前述の画像素子171と、さらに光源173と、レンズアレイ174と、出力回路175とを有している。点線は光源173から出射された光を表している。
【0103】
図16(b)は、画像濃度センサ170が有する画像素子の概略構成図である。
図16(b)に示すように、画像素子171は、主走査方向に延びた形状をしており、小さな受光素子1711-1~1711-n(以降、互いに区別しなくてよい場合は受光素子1711と記載する。)が主走査方向に並べて配置されている。受光素子1711の並んだ範囲が、上述の画像濃度センサ170の主走査方向の検知幅となる。
【0104】
光源173としては、発光素子が導光体の端部に設けられたものやLEDアレイなどが使用可能である。光源173は、RGBの光を照射する。レンズアレイ174としては、セルフォック(登録商標)レンズなどが用いられる。光源173から出射された光は、用紙P’上で反射され、レンズアレイ174により結像される。画像素子171は、レンズアレイ174により結像された光を、
図16(b)で示した各受光素子1711で受光し、受光した光に応じた信号を出力する。画像素子171としては、CMOSセンサやCCDセンサなどが用いられる。
【0105】
出力回路175は、一例として、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などで構成され、画像素子171上の各受光素子172からの信号に基づき、画像パターンの用紙P’上の位置に応じた画像濃度を示すデータに変換して出力する。例えば8bitで表される0~255階調を出力する。
【0106】
図17は、本画質調整制御例2における画質調整部242の機能ブロック図である。
本画質調整制御例2の画質調整部242は、画像濃度補正部2425と、搬送方向画像濃度偏差補正部2426と、直角方向画像濃度偏差補正部2427と、画像階調補正部2428とを備えている。これらの機能の一部または全部は、操作パネル60からユーザーの指示によって実行可能なものである。
【0107】
画像濃度補正部2425は、画像濃度目標値と実際の画像濃度とに差が生じた際に、画像濃度差を補正するための制御を実行する。具体的には、画像濃度補正部2425は、用紙P’上に形成された画像濃度補正用パターンを画像濃度センサ170で検出した検出結果に基づいて、画像形成制御部241に、画像濃度差を補正するための命令を出力する。画像濃度差を補正するための命令は、例えば、現像器内の現像剤のトナー濃度を調整する、現像バイアスや帯電バイアスを調整する、書き込み光量を調整する、二次転写バイアスを変更する、定着温度を変更する、または操作パネル60に画像濃度ずれが生じていることを表示させる等があるが、これらに限られない。
【0108】
搬送方向画像濃度偏差補正部2426は、用紙P’上に形成される画像の、用紙Pの搬送方向すなわち副走査方向に画像濃度偏差が生じた際に、画像濃度偏差を補正するための制御を実行する。具体的には、搬送方向画像濃度偏差補正部2426は、用紙P上に形成された搬送方向画像濃度偏差補正用パターンを画像濃度センサ170で検出した検出結果に基づいて、画像形成制御部241に、画像濃度偏差を補正するための命令を出力する。画像濃度偏差を補正するための命令は、上述した画質補正制御例1における駆動方向トナー付着量偏差を補正するための命令と同様、例えば、現像器内の現像剤のトナー濃度を調整する、現像バイアスや帯電バイアスを調整する、書き込み光量を調整する、または操作パネル60に搬送方向の画像濃度に偏差が生じていることを表示させる等があるが、これらに限られない。
【0109】
直角方向画像濃度偏差補正部2427は、用紙P’上に形成される画像の、用紙Pの搬送方向に対して直交する方向(直角方向)すなわち主走査方向に画像濃度偏差が生じた際に、画像濃度偏差を補正するための制御を実行する。具体的には、直角方向画像濃度偏差補正部2427は、用紙P上に形成された直角方向画像濃度偏差補正用パターンを画像濃度センサ170で検出した検出結果に基づいて、画像形成制御部241に、画像濃度偏差を補正するための命令を出力する。画像濃度偏差を補正するための命令は、上述した画質補正制御例1における直角方向トナー付着量偏差を補正するための命令と同様、例えば、現像器内の現像剤のトナー濃度を調整する、現像バイアスや帯電バイアスを調整する、書き込み光量を調整する、または操作パネル60に直角方向の画像濃度に偏差が生じていることを表示させる等があるが、これらに限られない。
【0110】
画像階調補正部2428は、用紙P’上に形成される画像の階調に異常が生じた際に、階調を補正するための制御を実行する。具体的には、画像階調補正部2428は、用紙P上に形成された画像階調補正(キャリブレーション)用パターンを画像濃度センサ170で検出した検出結果に基づいて、画像形成制御部241に、階調を補正するための命令を出力する。階調を補正するための条件は、上述した画質補正制御例1における階調補正のための命令と同様、例えば、現像器内の現像剤のトナー濃度を調整する、現像バイアスや帯電バイアスを調整する、書き込み光量を調整する、または操作パネル60に階調に異常が生じていることを表示させる等があるが、これらに限られない。
【0111】
本画質調整制御例2においても、本画質調整制御例1の場合と同様、「画質調整B」の実行時における時間的ロス、消耗品の無駄な消費、部品劣化などの不具合を抑制することができる。
【0112】
図18(a)~(d)は、それぞれの画質調整制御に用いられる、用紙P’上に形成される補正用パターンの例を示す説明図である。
【0113】
画像濃度補正用パターンや画像階調補正用パターンには、例えば
図18(a)に示すようにK、C、M、Yそれぞれの段階的な階調パッチが形成されるものを用いることができる。
図18(a)には、K、C、M、Yそれぞれのパッチを同一階調で同時に形成されたものを例示したが、形成されるパッチの形状、個数、レイアウト等はこれに限るものではない。もちろん、出力される枚数が2枚以上であってもよい。また、画像濃度補正用パターンと画像階調補正用パターンとで形成されるパッチの形状、個数、階調、レイアウトが異なっていてもよい。
【0114】
駆動方向画像濃度偏差補正用パターンには、例えば
図18(b)に示すような、K、C、M、Yそれぞれの、駆動方向に長い形状を有するパッチが形成されるものを用いることができる。
図18(b)には、K、C、M、Yそれぞれのパッチを同一階調で同時に形成されたものを例示したが、形成されるパッチの形状、個数、レイアウト等はこれに限るものではない。もちろん、出力される枚数が2枚以上であってもよい。
【0115】
直角方向画像濃度偏差補正用パターンには、例えば
図18(c)のような、K、C、M、Yそれぞれの、駆動方向に対して直交する方向(直角方向)に長い形状を有するパッチが形成されるものを用いることができる。
図18(c)には、K、C、M、Yそれぞれのパッチを同一階調で形成されたものを例示したが、形成されるパッチの形状、個数、レイアウト等はこれに限るものではない。もちろん、出力される枚数が2枚以上であってもよい。
【0116】
さらに、
図18(d)のような全面ベタ画像を用いて駆動方向画像濃度偏差補正または直角方向画像濃度偏差補正またはそれらを同時に行うことも可能である。この場合、複数枚にわたってK、C、M、Yの全面ベタ画像をいくつかの階調で出力するなどして、各色に対する補正値を算出することができる。
【0117】
以上に説明したものは一例であり、次の態様毎に特有の効果を奏する。
[第1態様]
第1態様は、記録材(例えば用紙P)上に画像を形成する画像形成部(例えばプリンタエンジン100)と、前記画像形成部が形成する画像を画質調整するための画質調整制御を実行可能な画質調整部242とを有する画像形成装置1であって、前記画質調整部は、第一画質調整制御(例えば画質調整制御A)を行う第一制御モード(例えば「画質調整A」)と、該第一画質調整制御及び第二画質調整制御(例えば画質調整制御B)の両方を含む第二制御モード(例えば「画質調整B」)とを選択的に実行可能であり、前記画質調整部は、前記第二制御モードを実行する実行条件を満たすときでも、前記第一画質調整制御の実行不要条件を満たす場合には、該第一画質調整制御を実行せずに前記第二画質調整制御だけを実行することを特徴とするものである。
画質調整制御の実行直後のように、その画質調整制御を実行してから状況が大きく変化していない場合には、再び同じ画質調整制御を実行する必要性が乏しい。そのため、従来は、前回実行時からの経過時間、印刷枚数若しくは温度変化が基準未満であるときには、同じ画質調整制御を実行しないようにすることがある。これにより、不必要な画質調整制御の実行による時間的ロス、当該実行による消耗品(トナー等)の無駄な消費、当該実行による部品劣化などの不具合を抑制することが可能となる。
ところが、第一画質調整制御を行う第一制御モードと、この第一画質調整制御及び第二画質調整制御の両方を含む第二制御モードとを選択的に実行する場合、第一画質調整制御を実行してから状況が大きく変化していない時点で、第二制御モードを実行する実行条件が満たされる場合がある。この場合、第一画質調整制御の実行完了が前提であると考えられる第二画質調整制御であっても、第一画質調整制御の実行が必要ない状況なので、この実行不要な第一画質調整制御がそのまま実行されてしまうと、その分だけ、制御時間の長期化を招く。
そこで、本態様においては、第二制御モードを実行する実行条件を満たすときでも、第一画質調整制御の実行不要条件を満たす場合には、第一画質調整制御を実行せずに第二画質調整制御だけを実行するようにしている。これにより、第一画質調整制御の実行不要条件を適切に設定することで、第二制御モードの実行時に実行不要な第一画質調整制御が実行されることを回避することができる。よって、第二制御モードの実行時において、実行不要な第一画質調整制御が実行されることによる制御時間の長期化を抑制することができる。
【0118】
[第2態様]
第2態様は、第1態様において、前記実行不要条件は、前記第一画質調整制御の前回実行時からの経過時間が規定時間未満である条件、前記第一画質調整制御の前回実行時からの画像形成数(例えば印刷枚数)が規定数未満である条件、前記第一画質調整制御の前回実行時の温度からの変化量が規定量未満である条件、前記第一画質調整制御の前回実行時の湿度からの変化量が規定量未満である条件のうちの少なくとも1つの条件を含むことを特徴とするものである。
これによれば、第一画質調整制御の実行が不要であるかどうかを容易かつ適切に判断することが可能である。
【0119】
[第3態様]
第3態様は、第1又は第2態様において、ユーザー指示の入力を受け付ける入力受付部(例えば操作パネル60)を有し、前記実行条件は、前記入力受付部が前記第二制御モードの実行を指示する入力を受け付けるという条件であることを特徴とするものである。
第二制御モードがユーザーの指示により実行可能なものである場合、第二制御モードの実行タイミングや実行頻度をプログラムによって管理することができないことが多く、実行不要な第一画質調整制御を含む第二制御モードが実行される事態が起きやすい。
本態様によれば、このように実行不要な第一画質調整制御を含む第二制御モードが実行される事態が起きやすい場合において、第二制御モードの実行時において、実行不要な第一画質調整制御が実行されることを回避することができる。
【0120】
[第4態様]
第4態様は、第1乃至第3態様のいずれかにおいて、前記画像形成部は、像担持体(例えば中間転写ベルト130)上に形成したトナー像を最終的に記録材(例えば用紙P)上に転写させて画像形成を行うものであり、前記第一画質調整制御及び前記第二画質調整制御のうちのいずれか一方は、前記トナー像のトナー付着量を所定範囲内にする制御(例えばトナー付着量補正)を含むことを特徴とするものである。
これによれば、トナー像のトナー付着量を所定範囲内にする制御を行う画質調整制御について、実行不要な画質調整制御が実行されることによる制御時間の長期化を抑制することができる。
【0121】
[第5態様]
第5態様は、第1乃至第4態様のいずれかにおいて、前記画像形成部は、像担持体上に形成したトナー像を最終的に記録材上に転写させて画像形成を行うものであり、前記第一画質調整制御及び前記第二画質調整制御のうちのいずれか一方は、前記像担持体の表面移動方向における前記トナー像のトナー付着量偏差(例えば駆動方向トナー付着量偏差補正)を補正する制御を含むことを特徴とするものである。
これによれば、像担持体の表面移動方向におけるトナー像のトナー付着量偏差を補正する制御を行う画質調整制御について、実行不要な画質調整制御が実行されることによる制御時間の長期化を抑制することができる。
【0122】
[第6態様]
第6態様は、第1乃至第5態様のいずれかにおいて、前記画像形成部は、像担持体上に形成したトナー像を最終的に記録材上に転写させて画像形成を行うものであり、前記第一画質調整制御及び前記第二画質調整制御のうちのいずれか一方は、前記像担持体の表面移動方向に対して直交する方向における前記トナー像のトナー付着量偏差(例えば直角方向トナー付着量偏差補正)を補正する制御を含むことを特徴とするものである。
これによれば、像担持体の表面移動方向に対して直交する方向(直角方向)におけるトナー像のトナー付着量偏差を補正する制御を行う画質調整制御について、実行不要な画質調整制御が実行されることによる制御時間の長期化を抑制することができる。
【0123】
[第7態様]
第7態様は、第1乃至第6態様のいずれかにおいて、前記画像形成部は、像担持体上に形成したトナー像を最終的に記録材上に転写させて画像形成を行うものであり、前記第一画質調整制御及び前記第二画質調整制御のうちのいずれか一方は、前記トナー像の階調補正を行う制御(例えば階調補正)を含むことを特徴とするものである。
これによれば、像担持体上に形成されるトナー像の階調を補正する制御を行う画質調整制御について、実行不要な画質調整制御が実行されることによる制御時間の長期化を抑制することができる。
【0124】
[第8態様]
第8態様は、第1乃至第7態様のいずれかにおいて、前記画像形成部は、像担持体上に形成したトナー像を最終的に記録材上に転写させて画像形成を行うものであり、前記第一画質調整制御及び前記第二画質調整制御のうちのいずれか一方は、前記記録材上に形成される画像の画像濃度を目標濃度にする制御(例えば画像濃度補正)を含むことを特徴とするものである。
これによれば、記録材上に形成される画像の画像濃度を目標濃度にする制御を行う画質調整制御について、実行不要な画質調整制御が実行されることによる制御時間の長期化を抑制することができる。
【0125】
[第9態様]
第9態様は、第1乃至第8態様のいずれかにおいて、前記画像形成部は、像担持体上に形成したトナー像を最終的に記録材上に転写させて画像形成を行うものであり、前記第一画質調整制御及び前記第二画質調整制御のうちのいずれか一方は、前記像担持体の表面移動方向における画像の濃度偏差(例えば搬送方向画像濃度偏差)を補正する制御を含むことを特徴とするものである。
これによれば、像担持体の表面移動方向における画像の濃度偏差を補正する制御を行う画質調整制御について、実行不要な画質調整制御が実行されることによる制御時間の長期化を抑制することができる。
【0126】
[第10態様]
第10態様は、第1乃至第9態様のいずれかにおいて、前記画像形成部は、像担持体上に形成したトナー像を最終的に記録材上に転写させて画像形成を行うものであり、前記第一画質調整制御及び前記第二画質調整制御のうちのいずれか一方は、前記像担持体の表面移動方向に対して直交する方向おける画像の濃度偏差(例えば直角方向画像濃度偏差)を補正する制御を含むことを特徴とするものである。
これによれば、像担持体の表面移動方向に対して直交する方向(直角方向)における画像の濃度偏差を補正する制御を行う画質調整制御について、実行不要な画質調整制御が実行されることによる制御時間の長期化を抑制することができる。
【0127】
[第11態様]
第11態様は、第1乃至第10態様のいずれかにおいて、前記画像形成部は、像担持体上に形成したトナー像を最終的に記録材上に転写させて画像形成を行うものであり、前記第一画質調整制御及び前記第二画質調整制御のうちのいずれか一方は、画像の階調補正を行う画質調整制御(例えば階調補正)を含むことを特徴とするものである。
これによれば、記録材上に形成される画像の階調を補正する制御を行う画質調整制御について、実行不要な画質調整制御が実行されることによる制御時間の長期化を抑制することができる。
【0128】
[第12態様]
第12態様は、記録材上に画像を形成するが形成する画像を画質調整するための画質調整制御を実行する画像形成装置の画質調整方法であって、第一画質調整制御を行う第一制御モードと、該第一画質調整制御及び第二画質調整制御の両方を含む第二制御モードとを選択的に実行可能であり、前記第二制御モードを実行する実行条件を満たすときでも、前記第一画質調整制御の実行不要条件を満たす場合には、該第一画質調整制御を実行せずに前記第二画質調整制御だけを実行することを特徴とするものである。
本態様によれば、第二制御モードの実行時において、実行不要な第一画質調整制御が実行されることによる制御時間の長期化を抑制することができる。
【符号の説明】
【0129】
1 :画像形成装置
60 :操作パネル
61 :操作画面
62 :調整項目画面
63 :画像品質調整画面
64 :調整実行確認画面
100 :プリンタエンジン
101 :露光部
102 :作像部
103 :転写部
104 :定着装置
120 :感光体
121 :現像器
122 :帯電器
130 :中間転写ベルト
133 :二次転写ベルト
150 :温湿度センサ
160 :トナー付着量センサ
170 :画像濃度センサ
200 :入力受付部
210 :表示制御部
220 :通信制御部
230 :書込処理部
240 :制御部
241 :画像形成制御部
242 :画質調整部
250 :記憶部
251 :経過時間記憶部
252 :印刷枚数記憶部
253 :温度記憶部
254 :湿度記憶部
260 :温湿度検出部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0130】