(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-17
(45)【発行日】2024-10-25
(54)【発明の名称】樹脂組成物及び電子部品装置
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20241018BHJP
C08K 3/00 20180101ALI20241018BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20241018BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20241018BHJP
H01L 23/31 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K3/00
C08K3/22
H01L23/30 R
(21)【出願番号】P 2018559094
(86)(22)【出願日】2017-12-19
(86)【国際出願番号】 JP2017045605
(87)【国際公開番号】W WO2018123745
(87)【国際公開日】2018-07-05
【審査請求日】2020-10-09
【審判番号】
【審判請求日】2022-06-29
(31)【優先権主張番号】P 2016253846
(32)【優先日】2016-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2016253847
(32)【優先日】2016-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】姜 東哲
(72)【発明者】
【氏名】堀 慧地
(72)【発明者】
【氏名】山浦 格
(72)【発明者】
【氏名】田中 実佳
【合議体】
【審判長】藤原 浩子
【審判官】近野 光知
【審判官】藤井 勲
(56)【参考文献】
【文献】特開平7-216197(JP,A)
【文献】特開2002-97254(JP,A)
【文献】特開平11-92624(JP,A)
【文献】特開2000-26742(JP,A)
【文献】国際公開第2013/065159(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/056523(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
C08K
H01L23/29、23/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性樹脂と、無機充填材とを含み、前記無機充填材は体積平均粒子径が0.07μm~0.3μmの無機粒子
Aと、前記無機粒子A以外の無機粒子Bとを含み、
前記無機粒子
Aがアルミナ粒子であり、
前記無機粒子
Aの比重Aの、前
記無機粒子
Bの比重Bに対する比率(A/B)が0.8~1.2であり、
前記無機粒子Bの体積平均粒子径が0.5μm~15μmであり、
溶剤を含まない、樹脂組成物。
【請求項2】
前
記無機粒子
Bは前記無機粒子
Aと同じ材質の無機粒子を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
硬化性樹脂と、無機充填材とを含み、前記無機充填材は体積平均粒子径が0.07μm~0.3μmの無機粒子
Aと、前記無機粒子A以外の無機粒子Bとを含み、
前記無機粒子
Aがアルミナ粒子であり、
前記無機粒子
Bは前記無機粒子
Aと同じ材質の無機粒子を含み、
前記無機粒子Bの体積平均粒子径が0.5μm~15μmであり、
溶剤を含まない、樹脂組成物。
【請求項4】
前記無機粒子
Aの比表面積が15m
2/g以下である、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記無機粒子
Aの割合が前記無機充填材全体の3質量%~10質量%である、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
電子部品装置の封止材として用いるための、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
素子と、前記素子を封止する請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の樹脂組成物の硬化物とを備える電子部品装置。
【請求項8】
硬化性樹脂と、無機充填材とを含み、前記無機充填材は体積平均粒子径が0.07μm~0.3μmの無機粒子Aと、前記無機粒子A以外の無機粒子Bとを含み、前記無機粒子Aを構成する物質の屈折率Aの、前記無機粒子Bを構成する物質の屈折率Bに対する比率(A/B)が、0.9~1.5であり、
前記無機粒子Aがアルミナ粒子であり、
前記無機粒子Aの比重Aの、前記無機粒子Bの比重Bに対する比率(A/B)が0.8~1.2であり、
前記無機粒子Bの体積平均粒子径が0.5μm~15μmであり、
溶剤を含まない、樹脂組成物。
【請求項9】
硬化性樹脂と、無機充填材とを含み、前記無機充填材は体積平均粒子径が0.07μm~0.3μmの無機粒子Aと、前記無機粒子A以外の無機粒子Bとを含み、前記無機粒子Aを構成する物質の屈折率Aの、前記無機粒子Bを構成する物質の屈折率Bに対する比率(A/B)が、0.9~1.5であり、
前記無機粒子Aがアルミナ粒子であり、
前記無機粒子Bは前記無機粒子Aと同じ材質の無機粒子を含み、
前記無機粒子Bの体積平均粒子径が0.5μm~15μmであり、
溶剤を含まない、樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物及び電子部品装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、トランジスタ、IC等の素子がエポキシ樹脂等の樹脂で封止されたパッケージ(電子部品装置)が電子機器に広く用いられている。
【0003】
近年、電子部品装置の小型化及び高密度化に伴って発熱量が増大する傾向にあり、いかに熱を放散させるかが重要な課題となっている。そこで、封止材に熱伝導率の高い無機充填材を混合して熱伝導性を高めることが行われている。
【0004】
封止材に無機充填材を混合する場合、その量が増加するに従って封止材の粘度が上昇し、流動性が低下して充填不良等の問題を生じるおそれがある。そこで、特定のリン化合物を硬化促進剤として用いることで、封止材の流動性を高める方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電子部品装置の小型化及び高密度化のいっそうの進展に伴い、より高いレベルで熱伝導性を維持しつつ、流動性にも優れる封止材封止材として使用可能な樹脂組成物の提供が望まれている。
本発明はかかる状況に鑑みなされたもので、流動性に優れる樹脂組成物、及びこれを用いて封止された素子を備える電子部品装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段には、以下の実施態様が含まれる。
<1>樹脂と、無機充填材とを含み、前記無機充填材は平均粒子径が0.07μm~0.5μmの無機粒子を含む、樹脂組成物。
<2>前記無機粒子の比表面積が15m2/g以下である、<1>に記載の樹脂組成物。
<3>前記無機粒子の割合が前記無機充填材全体の3質量%~10質量%である、<1>又は<2>に記載の樹脂組成物。
<4>前記無機粒子がアルミナ粒子である、<1>~<3>のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
<5>前記無機粒子の割合は前記無機充填材全体の3質量%~10質量%である、<1>~<4>のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
<6>前記無機充填剤は前記無機粒子と前記無機粒子以外の無機粒子とを含み、前記無機粒子の比重Aの、前記無機粒子以外の無機粒子の比重Bに対する比率(A/B)が0.8~1.2である、<1>~<5>のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
<7>前記無機充填材は前記無機粒子と前記無機粒子以外の無機粒子とを含み、前記無機粒子以外の無機粒子は前記無機粒子と同じ材質の無機粒子を含む、<1>~<6>のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
<8>電子部品装置の封止材として用いるための、<1>~<7>のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
<9>素子と、前記素子を封止する<1>~<7>のいずれか1項に記載の樹脂組成物の硬化物とを備える電子部品装置。
<10>樹脂と、無機充填材とを含み、前記無機充填材は体積平均粒子径が0.07μm~0.5μmの無機粒子Aと、前記無機粒子A以外の無機粒子Bとを含み、前記無機粒子Aを構成する物質の屈折率Aの、前記無機粒子Bを構成する物質の屈折率Bに対する比率(A/B)が、0.9~1.5である、樹脂組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、流動性に優れる樹脂組成物、及びこれを用いて封止された素子を備える電子部品装置が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本発明を制限するものではない。
本開示において「工程」との語には、他の工程から独立した工程に加え、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、当該工程も含まれる。
本開示において「~」を用いて示された数値範囲には、「~」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において組成物中の各成分の含有率又は含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
本開示において組成物中の各成分の粒子径は、組成物中に各成分に該当する粒子が複数種存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の粒子の混合物についての値を意味する。
【0010】
<樹脂組成物>
本開示の一実施形態である樹脂組成物は、樹脂と、無機充填材とを含み、前記無機充填材は、体積平均粒子径が0.07μm~0.5μmの無機粒子(以下、特定無機粒子ともいう)を含む。
【0011】
本発明者らの検討により、無機充填材が特定無機粒子を含む樹脂組成物は、無機充填材が特定無機粒子を含まない樹脂組成物に比べて流動性に優れていることがわかった。
【0012】
無機充填材が特定無機粒子を含む樹脂組成物がなぜ流動性に優れているのかは必ずしも明らかではないが、特定無機粒子がこれより粒子径の大きい無機充填材(大径粒子)の間に存在することで、大径粒子間の摩擦抵抗を低減していることが理由の一つとして考えられる。
【0013】
さらに、本発明者らの検討により、無機充填材に含まれる無機粒子の体積平均粒子径が0.07μmよりも小さくても0.5μmより大きくても流動性の向上効果が得られないことがわかった。この理由は必ずしも明らかではないが、体積平均粒子径が0.07μmよりも小さい無機粒子は大径粒子間で凝集体を形成すること、体積平均粒子径が0.5μmよりも大きい無機粒子は大径粒子間に存在しているとその移動をかえって妨げること等が原因となって、大径粒子間の摩擦抵抗を低減する役割を果たさないことが考えられる。
【0014】
特定無機粒子の体積平均粒子径は、0.4μm以下であることが好ましく、0.3μm以下であることがより好ましく、0.2μm以下であることがさらに好ましい。
【0015】
本開示において、特定無機粒子の体積平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(Malvern Instruments社製、「マスターサイザー3000」)を用いて、湿式分散にて測定される体積基準の粒度分布において、小径側からの累積が50%となるときの粒子径(D50)である。
【0016】
特定無機粒子の粒度分布は特に制限されないが、粒子同士の凝集を抑制する観点からは微細粒子の割合が小さい方が好ましい。具体的には、例えば、特定無機粒子全体の比表面積が15m2/g以下であることが好ましく、10m2/g以下であることがより好ましい。特定無機粒子の比表面積は、ユアサアイオニクス社製、「マルチソーブ16」を用いて、BET法により測定される値である。
【0017】
無機充填材全体に占める特定無機粒子の割合は、特に制限されない。特定無機粒子による流動性の向上効果を充分に得る観点からは、特定無機粒子の割合は無機充填材全体の3質量%~10質量%であることが好ましい。また、特定無機粒子の割合が無機充填材全体の3質量%~10質量%であり、かつ無機充填材全体の体積平均粒子径が0.2μm~20μmであることがより好ましい。無機充填材の詳細については、後述する。
【0018】
特定無機粒子の形状は、特に制限されない。特定無機粒子による流動性の向上効果を充分に得る観点からは、球状に近いほど好ましい。具体的には、例えば、電子顕微鏡で観察される特定無機粒子の円形度が0.70以上であることが好ましい。円形度は、4π×S/(周囲長さ)2で表される値であり、Sは測定対象粒子の面積であり、周囲長さは測定対象粒子の周囲長さである。円形度は、画像処理ソフトを用いて電子顕微鏡像を解析することにより求めることができる。
【0019】
特定無機粒子の材質は、特に制限されない。例えば、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、ケイ酸ジルコニウム、ケイ酸カルシウム、窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、ベリリア、ジルコニア、ジルコン、フォステライト、ステアタイト、スピネル、ムライト、チタニア、タルク、クレー、マイカ等の無機物が挙げられる。難燃効果を有する無機物であってもよい。難燃効果を有する無機物としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、マグネシウムと亜鉛の複合水酸化物等の複合金属水酸化物、硼酸亜鉛などが挙げられる。特定無機粒子の材質は、1種のみであっても2種以上の組み合わせであってもよい。特定無機粒子は、アルミナ粒子(特定アルミナ粒子)であることが好ましい。
【0020】
特定無機粒子の材質は、屈折率が1.0~2.0の範囲内である物質から選択される少なくとも1種であってもよい。
本開示における屈折率は、真空を1としたときの物質固有の値(絶対屈折率)であり、波長589.3nmの光に対する値である。
【0021】
(樹脂)
樹脂組成物に含まれる樹脂は、熱硬化性であっても熱可塑性であってもよく、光硬化性であってもよい。信頼性の観点からは、硬化性樹脂であることが好ましい。硬化性樹脂は、自己重合により硬化するものであっても、硬化剤、架橋剤等との反応により硬化するものであってもよい。
【0022】
樹脂が硬化性樹脂である場合、その反応を生じる官能基は特に制限されず、エポキシ基、オキセタニル基等の環状エーテル基、水酸基、カルボキシ基、アミノ基、アクリロイル基、イソシアネート基等が挙げられる。封止材としての特性のバランスの観点からは、環状エーテル基を含む硬化性樹脂が好ましく、エポキシ基を含む硬化性樹脂(エポキシ樹脂)がより好ましい。
【0023】
硬化性樹脂がエポキシ樹脂である場合、エポキシ樹脂は分子中にエポキシ基を有するものであればその種類は特に制限されない。
エポキシ樹脂として具体的には、フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のフェノール化合物及びα-ナフトール、β-ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のフェノール性化合物と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド等の脂肪族アルデヒド化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック樹脂をエポキシ化したものであるノボラック型エポキシ樹脂(フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等);上記フェノール性化合物と、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等の芳香族アルデヒド化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるトリフェニルメタン型フェノール樹脂をエポキシ化したものであるトリフェニルメタン型エポキシ樹脂;上記フェノール化合物及びナフトール化合物と、アルデヒド化合物とを酸性触媒下で共縮合させて得られるノボラック樹脂をエポキシ化したものである共重合型エポキシ樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールF等のジグリシジルエーテルであるジフェニルメタン型エポキシ樹脂;アルキル置換又は非置換のビフェノールのジグリシジルエーテルであるビフェニル型エポキシ樹脂;スチルベン系フェノール化合物のジグリシジルエーテルであるスチルベン型エポキシ樹脂;ビスフェノールS等のジグリシジルエーテルである硫黄原子含有エポキシ樹脂;ブタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のアルコール類のグリシジルエーテルであるエポキシ樹脂;フタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロフタル酸等の多価カルボン酸化合物のグリシジルエステルであるグリシジルエステル型エポキシ樹脂;アニリン、ジアミノジフェニルメタン、イソシアヌル酸等の窒素原子に結合した活性水素をグリシジル基で置換したものであるグリシジルアミン型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエンとフェノール化合物の共縮合樹脂をエポキシ化したものであるジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;分子内のオレフィン結合をエポキシ化したものであるビニルシクロヘキセンジエポキシド、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2-(3,4-エポキシ)シクロヘキシル-5,5-スピロ(3,4-エポキシ)シクロヘキサン-m-ジオキサン等の脂環型エポキシ樹脂;パラキシリレン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるパラキシリレン変性エポキシ樹脂;メタキシリレン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるメタキシリレン変性エポキシ樹脂;テルペン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるテルペン変性エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるジシクロペンタジエン変性エポキシ樹脂;シクロペンタジエン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるシクロペンタジエン変性エポキシ樹脂;多環芳香環変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルである多環芳香環変性エポキシ樹脂;ナフタレン環含有フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるナフタレン型エポキシ樹脂;ハロゲン化フェノールノボラック型エポキシ樹脂;ハイドロキノン型エポキシ樹脂;トリメチロールプロパン型エポキシ樹脂;オレフィン結合を過酢酸等の過酸で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂;フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂をエポキシ化したものであるアラルキル型エポキシ樹脂;などが挙げられる。さらにはシリコーン樹脂のエポキシ化物、アクリル樹脂のエポキシ化物等もエポキシ樹脂として挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
エポキシ樹脂のエポキシ当量(分子量/エポキシ基数)は、特に制限されない。成形性、耐リフロー性及び電気的信頼等の各種特性バランスの観点からは、100g/eq~1000g/eqであることが好ましく、150g/eq~500g/eqであることがより好ましい。
【0025】
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、JIS K 7236:2009に準じた方法で測定される値とする。
【0026】
樹脂の軟化点又は融点は特に制限されない。成形性と耐リフロー性の観点からは40℃~180℃であることが好ましく、樹脂組成物の調製の際の取扱い性の観点からは50℃~130℃であることがより好ましい。
【0027】
樹脂の融点又は軟化点は、JIS K 7234:1986及びJIS K 7233:1986に記載の単一円筒回転粘度計法により測定される値とする。
【0028】
硬化性樹脂組成物中のエポキシ樹脂の含有率は、強度、流動性、耐熱性、成形性等の観点から0.5質量%~50質量%であることが好ましく、2質量%~30質量%であることがより好ましい。
【0029】
(硬化剤)
樹脂組成物は、硬化剤を含んでもよい。硬化剤の種類は特に制限されず、樹脂の種類、樹脂組成物の所望の特性等に応じて選択できる。
樹脂がエポキシ樹脂である場合の硬化剤としては、フェノール硬化剤、アミン硬化剤、酸無水物硬化剤、ポリメルカプタン硬化剤、ポリアミノアミド硬化剤、イソシアネート硬化剤、ブロックイソシアネート硬化剤等が挙げられる。耐熱性向上の観点からは、硬化剤は、フェノール性水酸基を分子中に有するもの(フェノール硬化剤)が好ましい。
【0030】
フェノール硬化剤として具体的には、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、置換又は非置換のビフェノール等の多価フェノール化合物;フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェニルフェノール、アミノフェノール等のフェノール化合物及びα-ナフトール、β-ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種のフェノール性化合物と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック型フェノール樹脂;上記フェノール性化合物と、ジメトキシパラキシレン、ビス(メトキシメチル)ビフェニル等とから合成されるフェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂;パラキシリレン及び/又はメタキシリレン変性フェノール樹脂;メラミン変性フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂;上記フェノール性化合物と、ジシクロペンタジエンとから共重合により合成されるジシクロペンタジエン型フェノール樹脂及びジシクロペンタジエン型ナフトール樹脂;シクロペンタジエン変性フェノール樹脂;多環芳香環変性フェノール樹脂;ビフェニル型フェノール樹脂;上記フェノール性化合物と、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等の芳香族アルデヒド化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるトリフェニルメタン型フェノール樹脂;これら2種以上を共重合して得たフェノール樹脂などが挙げられる。これらのフェノール硬化剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
硬化剤の官能基当量(フェノール硬化剤の場合は水酸基当量)は、特に制限されない。成形性、耐リフロー性、電気的信頼性等の各種特性バランスの観点からは、70g/eq~1000g/eqであることが好ましく、80g/eq~500g/eqであることがより好ましい。
【0032】
硬化剤の官能基当量(フェノール硬化剤の場合は水酸基当量)は、JIS K 0070:1992に準じた方法により測定される値とする。
【0033】
硬化剤の軟化点又は融点は、特に制限されない。成形性と耐リフロー性の観点からは、40℃~180℃であることが好ましく、硬化性樹脂組成物の製造時における取扱い性の観点からは、50℃~130℃であることがより好ましい。
【0034】
硬化剤の融点又は軟化点は、JIS K 7234:1986及びJIS K 7233:1986に記載の単一円筒回転粘度計法により測定される値とする。
【0035】
硬化性樹脂と硬化剤との当量比、すなわち硬化性樹脂中の官能基数に対する硬化剤中の官能基数の比(硬化剤中の官能基数/硬化性樹脂中の官能基数)は、特に制限されない。それぞれの未反応分を少なく抑える関連からは、0.5~2.0の範囲に設定されることが好ましく、0.6~1.3の範囲に設定されることがより好ましい。成形性と耐リフロー性の観点からは、0.8~1.2の範囲に設定されることがさらに好ましい。
【0036】
(硬化促進剤)
樹脂組成物は、硬化促進剤を含んでもよい。硬化促進剤の種類は特に制限されず、樹脂の種類、樹脂組成物の所望の特性等に応じて選択できる。
硬化促進剤としては、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン-5(DBN)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7(DBU)等のジアザビシクロアルケン、2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール等の環状アミジン化合物;前記環状アミジン化合物の誘導体;前記環状アミジン化合物又はその誘導体のフェノールノボラック塩;これらの化合物に無水マレイン酸、1,4-ベンゾキノン、2,5-トルキノン、1,4-ナフトキノン、2,3-ジメチルベンゾキノン、2,6-ジメチルベンゾキノン、2,3-ジメトキシ-5-メチル-1,4-ベンゾキノン、2,3-ジメトキシ-1,4-ベンゾキノン、フェニル-1,4-ベンゾキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタンなどの、π結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物;DBUのテトラフェニルボレート塩、DBNのテトラフェニルボレート塩、2-エチル-4-メチルイミダゾールのテトラフェニルボレート塩、N-メチルモルホリンのテトラフェニルボレート塩等の環状アミジニウム化合物;ピリジン、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の三級アミン化合物;前記三級アミン化合物の誘導体;酢酸テトラ-n-ブチルアンモニウム、リン酸テトラ-n-ブチルアンモニウム、酢酸テトラエチルアンモニウム、安息香酸テトラ-n-ヘキシルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム等のアンモニウム塩化合物;トリフェニルホスフィン、ジフェニル(p-トリル)ホスフィン、トリス(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(アルキル・アルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルコキシフェニル)ホスフィン、トリアルキルホスフィン、ジアルキルアリールホスフィン、アルキルジアリールホスフィン等の三級ホスフィン;前記三級ホスフィンと有機ボロン類との錯体等のホスフィン化合物;前記三級ホスフィン又は前記ホスフィン化合物と無水マレイン酸、1,4-ベンゾキノン、2,5-トルキノン、1,4-ナフトキノン、2,3-ジメチルベンゾキノン、2,6-ジメチルベンゾキノン、2,3-ジメトキシ-5-メチル-1,4-ベンゾキノン、2,3-ジメトキシ-1,4-ベンゾキノン、フェニル-1,4-ベンゾキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタンなどの、π結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物;前記三級ホスフィン又は前記ホスフィン化合物と4-ブロモフェノール、3-ブロモフェノール、2-ブロモフェノール、4-クロロフェノール、3-クロロフェノール、2-クロロフェノール、4-ヨウ化フェノール、3-ヨウ化フェノール、2-ヨウ化フェノール、4-ブロモ-2-メチルフェノール、4-ブロモ-3-メチルフェノール、4-ブロモ-2,6-ジメチルフェノール、4-ブロモ-3,5-ジメチルフェノール、4-ブロモ-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-クロロ-1-ナフトール、1-ブロモ-2-ナフトール、6-ブロモ-2-ナフトール、4-ブロモ-4’-ヒドロキシビフェニル等のハロゲン化フェノール化合物を反応させた後に、脱ハロゲン化水素の工程を経て得られる、分子内分極を有する化合物;テトラフェニルホスホニウム等のテトラ置換ホスホニウム、テトラ-p-トリルボレート等のホウ素原子に結合したフェニル基がないテトラ置換ホスホニウム及びテトラ置換ボレート;テトラフェニルホスホニウムとフェノール化合物との塩などが挙げられる。
【0037】
樹脂組成物が硬化促進剤を含む場合、その量は、樹脂成分(樹脂と必要に応じて含まれる硬化剤の合計)100質量部に対して0.1質量部~30質量部であることが好ましく、1質量部~15重量部であることがより好ましい。硬化促進剤の量が樹脂成分100質量部に対して0.1質量部以上であると、短時間で良好に硬化する傾向にある。硬化促進剤の量が樹脂成分100質量部に対して30質量部以下であると、硬化速度が速すぎず良好な成形品が得られる傾向にある。
【0038】
(無機充填材)
樹脂組成物に含まれる無機充填材は、特定無機粒子を含むのであれば特に制限されない。
【0039】
無機充填材の材質として具体的には、溶融シリカ、結晶シリカ、ガラス、アルミナ、炭酸カルシウム、ケイ酸ジルコニウム、ケイ酸カルシウム、窒化珪素、窒化アルミ、窒化ホウ素、ベリリア、ジルコニア、ジルコン、フォステライト、ステアタイト、スピネル、ムライト、チタニア、タルク、クレー、マイカ等の無機材料が挙げられる。難燃効果を有する無機充填材を用いてもよい。難燃効果を有する無機充填材としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、マグネシウムと亜鉛の複合水酸化物等の複合金属水酸化物、ホウ酸亜鉛などが挙げられる。
【0040】
無機充填材の中でも、線膨張係数低減の観点からは溶融シリカ等のシリカが好ましく、高熱伝導性の観点からはアルミナが好ましい。無機充填材は1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
無機充填材が粒子状である場合、その平均粒子径は、特に制限されない。例えば、無機充填材全体の体積平均粒子径が0.2μm~20μmであることが好ましく、0.5μm~15μmであることがより好ましい。無機充填材の体積平均粒子径が0.2μm以上であると、樹脂組成物の粘度の上昇がより抑制される傾向がある。体積平均粒子径が15μm以下であると、狭い隙間への充填性がより向上する傾向にある。無機充填材の体積平均粒子径は、レーザー散乱回折法粒度分布測定装置により測定された体積基準の粒度分布において、小径側からの累積が50%となるときの粒子径(D50)として測定することができる。
【0042】
無機充填材は、特定無機粒子と、特定無機粒子以外の無機粒子とを含むことが好ましく、特定無機粒子の量が無機充填材全体の3質量%~10質量%となる量で特定無機粒子以外の無機粒子を含むことが好ましい。
【0043】
無機充填材が特定無機粒子と、特定無機粒子以外の無機粒子とを含む場合、特定無機粒子以外の無機充填材は特定無機粒子と同じ材質の無機粒子を含むことが好ましい。例えば、特定無機粒子がアルミナ粒子である場合、特定無機粒子以外の無機充填材はアルミナ粒子を含むことが好ましい。
【0044】
特定無機粒子以外の無機粒子の平均粒子径は、無機充填材全体の体積平均粒子径が上述した範囲となるような平均粒子径であることが好ましい。例えば、体積平均粒子径が0.2μm~20μmであることが好ましく、0.5μm~15μmであることがより好ましい。
【0045】
樹脂組成物の流動性向上の観点からは、特定無機粒子の比重Aの、特定無機粒子以外の無機粒子の比重Bに対する比率(A/B)が0.8~1.2であることが好ましく、0.9~1.1であることがより好ましく、0.95~1.05であることがさらに好ましい。特定無機粒子の比重Aと特定無機粒子以外の無機粒子の比重Bが上記条件を満たす場合は、樹脂組成物中において特定無機粒子とそれ以外の無機粒子とが分離しにくく、特定無機粒子がそれ以外の無機粒子の間に入り込みやすいために流動性の向上効果を発揮しやすい。特定無機粒子及びそれ以外の無機粒子のいずれか又は両方の材質が2種以上の組み合わせである場合は、それぞれの材質が上記関係を満たすことがより好ましい。
【0046】
樹脂組成物の流動性向上の観点からは、特定無機粒子を構成する物質の屈折率Aの、無機充填材に含まれる特定無機粒子以外の無機粒子を構成する物質の屈折率Bに対する比率(A/B)が0.9~1.5であることが好ましく、1.0~1.4であることがより好ましく、1.1~1.3であることがさらに好ましい。特定無機粒子を構成する物質の屈折率Aと特定無機粒子以外の無機粒子を構成する物質の屈折率Bが上記条件を満たす場合は、樹脂組成物中において特定無機粒子とそれ以外の無機粒子とが分離しにくく、特定無機粒子がそれ以外の無機粒子の間に入り込みやすいために流動性の向上効果を発揮しやすい。特定無機粒子及びそれ以外の無機粒子のいずれか又は両方の材質が2種以上の組み合わせである場合は、それぞれの材質が上記関係を満たすことがより好ましい。
【0047】
樹脂組成物における無機充填材の含有率は、特に制限されない。流動性及び強度の観点からは、樹脂組成物全体の30体積%~90体積%であることが好ましく、35体積%~80体積%であることがより好ましく、40体積%~70体積%であることがさらに好ましい。無機充填材の含有率が樹脂組成物全体の30体積%以上であると、硬化物の熱膨張係数、熱伝導率、弾性率等の特性がより向上する傾向にある。無機充填材の含有率が樹脂組成物全体の90体積%以下であると、樹脂組成物の粘度の上昇が抑制され、流動性がより向上して成形性がより良好になる傾向にある。
【0048】
[各種添加剤]
樹脂組成物は、上述の成分に加えて、以下に例示するカップリング剤、イオン交換体、離型剤、難燃剤、着色剤、応力緩和剤等の各種添加剤を含んでもよい。樹脂組成物は、以下に例示する添加剤以外にも必要に応じて当技術分野で周知の各種添加剤を含んでもよい。
【0049】
(カップリング剤)
樹脂組成物は、樹脂成分と無機充填材との接着性を高めるために、カップリング剤を含んでもよい。カップリング剤としては、エポキシシラン、メルカプトシラン、アミノシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン等のシラン系化合物、チタン系化合物、アルミニウムキレート化合物、アルミニウム/ジルコニウム系化合物などの公知のカップリング剤が挙げられる。
【0050】
樹脂組成物がカップリング剤を含む場合、カップリング剤の量は、無機充填材100質量部に対して0.05質量部~5質量部であることが好ましく、0.1質量部~2.5質量部であることがより好ましい。カップリング剤の量が無機充填材100質量部に対して0.05質量部以上であると、フレームとの接着性がより向上する傾向にある。カップリング剤の量が無機充填材100質量部に対して5質量部以下であると、パッケージの成形性がより向上する傾向にある。
【0051】
(イオン交換体)
硬化性樹脂組成物は、イオン交換体を含んでもよい。特に、硬化性樹脂組成物を封止用成形材料として用いる場合には、封止される素子を備える電子部品装置の耐湿性及び高温放置特性を向上させる観点から、イオン交換体を含むことが好ましい。イオン交換体は特に制限されず、従来公知のものを用いることができる。具体的には、ハイドロタルサイト化合物、並びにマグネシウム、アルミニウム、チタン、ジルコニウム及びビスマスからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素の含水酸化物等が挙げられる。イオン交換体は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、下記一般式(A)で表されるハイドロタルサイトが好ましい。
【0052】
Mg(1-X)AlX(OH)2(CO3)X/2・mH2O ……(A)
(0<X≦0.5、mは正の数)
【0053】
樹脂組成物がイオン交換体を含む場合、その含有量は、ハロゲンイオン等のイオンを捕捉するのに充分な量であれば特に制限はない。例えば、樹脂成分100質量部に対して0.1質量部~30質量部であることが好ましく、1質量部~10質量部であることがより好ましい。
【0054】
(離型剤)
樹脂組成物は、成形時における金型との良好な離型性を得る観点から、離型剤を含んでもよい。離型剤は特に制限されず、従来公知のものを用いることができる。具体的には、カルナバワックス、モンタン酸、ステアリン酸等の高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩、モンタン酸エステル等のエステル系ワックス、酸化ポリエチレン、非酸化ポリエチレン等のポリオレフィン系ワックスなどが挙げられる。離型剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
樹脂組成物が離型剤を含む場合、その量は樹脂成分100質量部に対して0.01質量部~10質量部が好ましく、0.1質量部~5質量部がより好ましい。離型剤の量が樹脂成分100質量部に対して0.01質量部以上であると、離型性が充分に得られる傾向にある。10質量部以下であると、より良好な接着性が得られる傾向にある。
【0056】
(難燃剤)
樹脂組成物は、難燃剤を含んでもよい。難燃剤は特に制限されず、従来公知のものを用いることができる。具体的には、ハロゲン原子、アンチモン原子、窒素原子又はリン原子を含む有機又は無機の化合物、金属水酸化物等が挙げられる。難燃剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
樹脂組成物が難燃剤を含む場合、その量は、所望の難燃効果を得るのに充分な量であれば特に制限されない。例えば、樹脂成分100質量部に対して1質量部~30質量部であることが好ましく、2質量部~20質量部であることがより好ましい。
【0058】
(着色剤)
樹脂組成物は、着色剤をさらに含んでもよい。着色剤としてはカーボンブラック、有機染料、有機顔料、酸化チタン、鉛丹、ベンガラ等の公知の着色剤を挙げることができる。着色剤の含有量は目的等に応じて適宜選択できる。着色剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0059】
(応力緩和剤)
樹脂組成物は、シリコーンオイル、シリコーンゴム粒子等の応力緩和剤を含んでもよい。応力緩和剤を含むことにより、パッケージの反り変形及びパッケージクラックの発生をより低減させることができる。応力緩和剤としては、一般に使用されている公知の応力緩和剤(可とう剤)が挙げられる。具体的には、シリコーン系、スチレン系、オレフィン系、ウレタン系、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系等の熱可塑性エラストマー、NR(天然ゴム)、NBR(アクリロニトリル-ブタジエンゴム)、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンパウダー等のゴム粒子、メタクリル酸メチル-スチレン-ブタジエン共重合体(MBS)、メタクリル酸メチル-シリコーン共重合体、メタクリル酸メチル-アクリル酸ブチル共重合体等のコア-シェル構造を有するゴム粒子などが挙げられる。応力緩和材剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0060】
(樹脂組成物の調製方法)
樹脂組成物の調製方法は、特に制限されない。一般的な手法としては、所定の配合量の成分をミキサー等によって十分混合した後、ミキシングロール、押出機等によって溶融混練し、冷却し、粉砕する方法を挙げることができる。より具体的には、例えば、上述した成分の所定量を均一に撹拌及び混合し、予め70℃~140℃に加熱してあるニーダー、ロール、エクストルーダー等で混練し、冷却し、粉砕する方法を挙げることができる。
【0061】
樹脂組成物は、常温常圧下(例えば、25℃、大気圧下)において固体であることが好ましい。樹脂組成物が固体である場合の形状は特に制限されず、粉状、粒状、タブレット状等が挙げられる。樹脂組成物がタブレット状である場合の寸法及び質量は、パッケージの成形条件に合うような寸法及び質量となるようにすることが取り扱い性の観点から好ましい。
【0062】
<電子部品装置>
本開示の一実施形態である電子部品装置は、素子と、前記素子を封止する上述の樹脂組成物の硬化物と、を備える。
電子部品装置としては、リードフレーム、配線済みのテープキャリア、配線板、ガラス、シリコンウエハ、有機基板等の支持部材に、素子(半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子、コンデンサ、抵抗体、コイル等の受動素子など)を搭載して得られた素子部を樹脂組成物で封止したものが挙げられる。
より具体的には、リードフレーム上に素子を固定し、ボンディングパッド等の素子の端子部とリード部とをワイヤボンディング、バンプ等で接続した後、樹脂組成物を用いてトランスファ成形等によって封止した構造を有するDIP(Dual Inline Package)、PLCC(Plastic Leaded Chip Carrier)、QFP(Quad Flat Package)、SOP(Small Outline Package)、SOJ(Small Outline J-lead package)、TSOP(Thin Small Outline Package)、TQFP(Thin Quad Flat Package)等の一般的な樹脂封止型IC;テープキャリアにバンプで接続した素子を樹脂組成物で封止した構造を有するTCP(Tape Carrier Package);支持部材上に形成した配線に、ワイヤボンディング、フリップチップボンディング、はんだ等で接続した素子を、樹脂組成物で封止した構造を有するCOB(Chip On Board)モジュール、ハイブリッドIC、マルチチップモジュール等;裏面に配線板接続用の端子を形成した支持部材の表面に素子を搭載し、バンプ又はワイヤボンディングにより素子と支持部材に形成された配線とを接続した後、樹脂組成物で素子を封止した構造を有するBGA(Ball Grid Array)、CSP(Chip Size Package)、MCP(Multi Chip Package)などが挙げられる。また、プリント配線板においても樹脂組成物を好適に使用することができる。
【0063】
樹脂組成物を用いて電子部品装置を封止する方法としては、低圧トランスファ成形法、インジェクション成形法、圧縮成形法等が挙げられる。これらの中では、低圧トランスファ成形法が一般的である。
【実施例】
【0064】
以下、上記実施形態を実施例により具体的に説明するが、上記実施形態の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0065】
(樹脂組成物の調製)
下記に示す成分を表1に示す配合割合(質量部)で混合し、実施例と比較例の樹脂組成物を調製した。
【0066】
・エポキシ樹脂1…ビスフェノール型エポキシ樹脂、新日鉄住金株式会社、品名「YSLV-80XY」)
・エポキシ樹脂2…多官能エポキシ樹脂、三菱化学株式会社、品名「1032H60」)
・エポキシ樹脂3…ビフェニル型エポキシ樹脂、三菱化学株式会社、品名「YX-4000」)
・硬化剤1…多官能フェノール樹脂、エア・ウォーター株式会社、品名「HE910」)
・硬化促進剤1…リン系硬化促進剤
【0067】
・無機充填材A1…体積平均粒子径9.0μmのアルミナ粒子
・無機充填材A2…体積平均粒子径0.1μmのアルミナ粒子、比表面積5.1m2/g
・無機充填材S1…体積平均粒子径2.6μmのシリカ粒子
・無機充填材S2…体積平均粒子径0.03μmのシリカ粒子
・無機充填材S3…体積平均粒子径0.8μmのシリカ粒子
【0068】
(流動性の評価)
樹脂組成物の流動性の評価は、スパイラルフロー試験により行った。
具体的には、EMMI-1-66に準じたスパイラルフロー測定用金型を用いて樹脂組成物を成形し、樹脂組成物の成形物の流動距離(cm)を測定した。樹脂組成物の成形は、トランスファ成形機を用い、金型温度180℃、成形圧力6.9MPa、硬化時間120秒の条件下で行った。結果を表1に示す。
【0069】
【0070】
表1に示すように、無機充填材が特定無機粒子(無機充填材A2)を含む実施例1~3樹脂組成物は、無機充填材が特定無機粒子を含まない比較例1の樹脂組成物よりも流動性の評価が高かった。エポキシ樹脂の組成又は無機充填材の組成を変更しても同様の結果であった。
無機充填材が体積平均粒子径0.03μmのシリカ粒子を含む比較例2の樹脂組成物と、無機充填材が体積平均粒子径0.8μmのシリカ粒子を含む比較例3の樹脂組成物は、いずれも流動性の評価が実施例の樹脂組成物よりも低かった。
【0071】
日本国特許出願第2016-253846号及び2016-253847号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、および技術規格は、個々の文献、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に援用されて取り込まれる。