(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-17
(45)【発行日】2024-10-25
(54)【発明の名称】投影露光装置用の光学系
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20241018BHJP
G02B 19/00 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
G03F7/20 503
G02B19/00
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020001875
(22)【出願日】2020-01-09
【審査請求日】2023-01-06
(31)【優先権主張番号】10 2019 200 193.9
(32)【優先日】2019-01-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】503263355
【氏名又は名称】カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100158469
【氏名又は名称】大浦 博司
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル パトラ
【審査官】今井 彰
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-515140(JP,A)
【文献】特表2015-534132(JP,A)
【文献】特表2016-509259(JP,A)
【文献】特開平10-090520(JP,A)
【文献】特開2005-309288(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/20-7/24、9/00-9/02
G02B 5/08、5/30、19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
EUVでの動作のためのマイクロリソグラフィ投影露光装置用の光学系であって、
・少なくとも1つの第1の2重反射面ユニットおよび1つの第2の2重反射面ユニット(128、228、328、428、528、728)を有する少なくとも1つの偏光影響装置(124、224、324、424、524、624、724)を備え、
・前記少なくとも2つの2重反射面ユニットがそれぞれ、第1の反射面(128.1、228.1、328.1、428.1、528.1)および第2の反射面(128.2、228.2、328.2、428.2、528.2)を有し、
・同じ2重反射面ユニット内で、各場合において、前記第1の反射面と前記第2の反射面とが、距離d1を隔てて、互いに対して0°±10°の角度で直接に隣り合わせに配置されており、
・前記第1の2重反射面ユニットの前記第1の反射面と前記第2の2重反射面ユニットの前記第2の反射面とが、距離d2を隔てて、互いに対して0°±10°の角度で直接に隣り合わせに配置されており、
・前記光学系の動作中、前記第1の反射面に入射する光(125、225、325、425、525)が、前記第1の反射面と43°±10°の角度をなし、
・前記光学系の動作中、前記第1の2重反射面ユニットの前記第1の反射面に入射する光が、前記第2の2重反射面ユニットの前記第2の反射面に向かって反射され、
・次式が真である:d2>5×d1、
光学系。
【請求項2】
前記偏光影響装置(124、224、324、424、524、624、724)が、少なくとも10個の2重反射面ユニット(128、228、328、428、528、728)を有する、請求項1に記載の光学系。
【請求項3】
前記2重反射面ユニット(128、228、328、428、528、728)の前記第1の反射面(128.1、228.1、328.1、428.1、528.1)と前記第2の反射面(128.2、228.2、328.2、428.2、528.2)とが、交互に、そして交互距離d1およびd2を隔てて配置された、請求項2に記載の光学系。
【請求項4】
前記偏光影響装置(124、224、324、424、524、624、724)が、
・前記光学系の動作中に前記第1の反射面(128.1、228.1、328.1、428.1、528.1)に入射する光(125、225、325、425、525)の光伝搬方向(z)に対して平行に延びる回転軸の周りで回転可能であり、かつ/または
・前記光学系の動作中に前記第1の反射面に入射する前記光のビーム経路から除去可能であるように構成されている、
請求項1から3までのいずれか1項に記載の光学系。
【請求項5】
前記2重反射面ユニット(128、228、328、428、528、728)のうちの少なくとも1つの2重反射面ユニットの前記第1の反射面(128.1、228.1、328.1、428.1、528.1)と前記第2の反射面(128.2、228.2、328.2、428.2、528.2)とが、モノリシック要素(128、228、328、428、528a、528b、528c、728)の2つの側面に配置された、請求項1から4までのいずれか1項に記載の光学系。
【請求項6】
前記モノリシック要素(128、228、328、428、528a、528b、528c、728)の少なくとも1つの非反射側面(457a、457b、557c)が、前記光学系の動作中に前記第1の反射面(128.1、228.1、328.1、428.1、528.1)に入射する光(125、225、325、425、525)の光伝搬方向(z)に対して平行に配置された、請求項5に記載の光学系。
【請求項7】
2重反射面ユニット(128、228、328、428、528、728)の前記第1の反射面(128.1、228.1、328.1、428.1、528.1)と前記第2の反射面(128.2、228.2、328.2、428.2、528.2)とが異なる要素(528d)に配置された、請求項1から4までのいずれか1項に記載の光学系。
【請求項8】
前記第1の反射面(128.1、228.1、328.1、428.1、528.1)および前記第2の反射面(128.2、228.2、328.2、428.2、528.2)が、
- EUV反射層、および/または
- 偏光影響層、および/または
- モリブデン-シリコン多層コーティング、および/または
- ルテニウムコーティング、および/または
- ルテニウムカバー層を有するモリブデン-シリコン多層コーティング
を備える、請求項1から7までのいずれか1項に記載の光学系。
【請求項9】
第2の反射面(328.2、428.2、528b.2)が、前記光学系の動作中に前記第1の反射面に入射する光(125、225、325、425、525)の光伝搬方向(z)に、直接に隣り合う第1の反射面(328.1、428.1、528b.1)に対して、高さhだけ変位しているように配置された、請求項1から8までのいずれか1項に記載の光学系。
【請求項10】
hは、
0.8h’≦h≦1.2h’であり、ここで、h’=d1×√2
である、請求項9に記載の光学系。
【請求項11】
・前記反射面(128.1、228.1、328.1、428.1、528.1、128.2、228.2、328.2、428.2、528.2)のうちの少なくとも1つの反射面が、第1の広がり方向の大きさLを有し、
・前記第1の広がり方向が、前記光学系の動作中に前記第1の反射面(128.1、228.1、328.1、428.1、528.1)に入射する光(125、225、325、425、525)の光伝搬方向(z)の、前記第1の反射面が配置された平面への射影によって与えられ、
・Lは、
0.8L’≦L≦1.2L’であり、ここで、L’=2×d2
である、
請求項1から10までのいずれか1項に記載の光学系。
【請求項12】
・少なくとも2つの2重反射面ユニット(128、228、328、428、528、728)が、互いに対して補正角φだけ傾けられているように配置されており、または
・少なくとも1つの第1の反射面(128.1、228.1、328.1、428.1、528.1)と1つの第2の反射面(128.2、228.2、328.2、428.2、528.2)とが、互いに対して補正角φだけ傾けられているように配置されており、
・前記補正角φが0.1°よりも大きい、
請求項1から11までのいずれか1項に記載の光学系。
【請求項13】
前記偏光影響装置(124、224、324、424、524、624、724)が、前記光学系の動作中に前記第1の反射面(128.1、228.1、328.1、428.1、528.1)に入射する非偏光または円偏光の光(125、225、325、425、525)を、前記第2の反射面(128.2、228.2、328.2、428.2、528.2)から反射される直線偏光の光(130、230、330、430、530)に変換する、請求項1から12までのいずれか1項に記載の光学系。
【請求項14】
EUVでの動作のために設計されたマイクロリソグラフィ投影露光装置(601、701)用の照明系(602、702)であって、請求項1から13までのいずれか1項に記載の光学系を備える照明系(602、702)。
【請求項15】
中間焦点面(612、712)と、複数のファセット(613a)を有する少なくとも1つの第1のファセットミラー(613、763)とを有し、前記少なくとも1つの偏光影響装置(124、224、324、424、524、624、724)が、前記光(125、225、325、425、525)の偏光状態に影響を与えるために、前記中間焦点面と前記第1のファセットミラーの間のビーム経路内に配置された、請求項14に記載の照明系(602、702)。
【請求項16】
請求項14または15に記載の照明系(602、702)と、投影光学ユニット(607)とを備えるマイクロリソグラフィ投影露光装置(601、701)。
【請求項17】
マイクロ構造を有する構成要素をマイクロリソグラフィによって製作するための方法であって、以下のステップ、すなわち
・感光性材料からなる層が少なくとも部分的に付けられた基板を用意するステップ、
・結像すべき構造を含むマスクを用意するステップ、
・請求項16に記載のマイクロリソグラフィ投影露光装置(601、701)を用意するステップ、および
・前記投影露光装置の助けを借りて、前記マスクの少なくとも一部分を前記層の領域に投影するステップ
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光に影響を与える装置(配置)(polarization-influencing arrangement)(以下、偏光影響装置という)を備える光学系(光学システム)に関し、詳細には、EUVマイクロリソグラフィ用の投影露光装置で使用するための光学系に関する。
【背景技術】
【0002】
偏光影響装置を備えた、EUVマイクロリソグラフィ用の投影露光装置で使用するための光学系は、例えばDE 102012206153 A1から知られている。特に、偏光影響装置を使用して、偏光されていない入射光(以後、非偏光入射光という)を、ブリュースター角(Brewster angle)での2回の反射によって偏光させることが、DE 102012206153 A1から知られている。この場合、この光は、互いの隣に平行に配置された2つの個々のミラーからなる装置によって直線偏光される。これらのミラーは、この非偏光入射光を連続的に各場合において90°偏向させる。ここで、入射光の最初のビーム方向は、この2回の反対方向の、各場合において90°のビーム偏向によって維持される。DE 102012206153 A1によれば、複数のこのようなミラー対が互いの隣に配置される。さらに、それらのミラー対は、反射光の偏光方向を設定(set:セット)することができるようにするためにそれらのミラー対が各場合において個別に回転可能となるように実施することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は、背景技術の項で述べたタイプの偏光影響装置を備える光学系を、以下の特性が最適化されるように発展させることにある。
1.)偏光影響装置による望ましくない遮光(shading:陰影)が低減もしくは最小化されることが意図されていること、ならびに/または
2.)機械的および熱的安定性が改善されることが意図されていること、特に、偏光影響装置の光学ユニットのより単純な機械的取付けが可能になることが意図されていること、ならびに/または
3.)偏光動作(polarized operation)の他に、光学系内の光分布(light distribution)が偏光動作に比べて変化せず、「有効透過率(effective transmission)」が偏光動作に比べて高い非偏光動作(unpolarized operation)も可能であることが意図されていること(ここで、「有効透過率」は、偏光影響装置の配置領域の後方、すなわち偏光影響装置の配置領域の下流における強度を、偏光影響装置の配置領域の前方、すなわち偏光影響装置の配置領域の上流における強度で割った商を意味すると理解される)、ならびに/または
4.)偏光影響装置の製造性(producibility)が単純化されることが意図されており、かつ/もしくはより低コストの支出での製造が可能になることが意図されていること、ならびに/または
5.)偏光影響装置の結果としてのビームオフセット(beam offset)が最小化されることが意図されていること、ならびに/または
6.)偏光影響装置の結果としてのビームオフセットの最小化とともに、偏光影響装置の結果としての望ましくない遮光が低減もしくは最小化されることが意図されていること、ならびに/または
7.)偏光影響装置が、偏光影響装置の結果としてのビームオフセットを導入することなく平行入射光もしくは発散(divergent)入射光の偏光を設定するのに適していることが意図されていること、ならびに/または
8.)偏光影響装置が、既存の投影露光装置内において、既存の投影露光装置に対する基本的変更の必要なしにレトロフィット可能(retrofittable:改良可能、後付け可能)であることが意図されていること。
【0005】
本発明によれば、この目的は、請求項1に記載された特徴および/または従属請求項に記載された特徴を有する光学系によって達成される。
【0006】
本発明によれば、上述の偏光影響装置の反射面間の距離の目的に合った選択を使用して、遮光領域を低減させることができることが分かった。
【0007】
本発明によれば、この目的は、EUVでの動作のためのマイクロリソグラフィ投影露光装置用の光学系であって、少なくとも1つの第1の2重反射面ユニット(double reflection surface unit)および1つの第2の2重反射面ユニットを有する少なくとも1つの偏光影響装置を備える光学系によって達成される。この少なくとも2つの2重反射面ユニットはそれぞれ、第1の反射面および第2の反射面を有する。同じ2重反射面ユニット内で、各場合において、第1の反射面と第2の反射面とは、距離d1を隔てて、互いに対して0°±10°の角度で直接に隣り合わせに配置されている。ここで、「直接に隣り合わせに」は、距離d1を隔てて直接に隣り合わせに配置された2つの反射面間に、偏光影響装置の光学的に使用される追加の反射面がないことを意味する。第1の2重反射面ユニットの第1の反射面と第2の2重反射面ユニットの第2の反射面とは、距離d2を隔てて、互いに対して0°±10°の角度で直接に隣り合わせに配置されている。光学系の動作中、第1の反射面に入射する光は、第1の反射面と43°±10°、特に43°±5°の角度をなす。光学系の動作中、第1の2重反射面ユニットの第1の反射面に入射する光は、第2の2重反射面ユニットの第2の反射面に向かって反射される。距離d1およびd2に関しては、例えばd2>5×d1が真である。特に、d2>10×d1、特にd2>20×d1とすることができる。
【0008】
このような小さな距離d1の結果、偏光影響装置の下流のビーム経路の望ましくない遮光が低減される。偏光影響装置の結果としての望ましくない遮光が低減されているため、非偏光動作を可能にするためにビーム経路から偏光影響装置が除去された場合でも、光学系内の光分布はほとんど変化しない。さらに、除去の過程で光分布を変化させることなくビーム経路から偏光影響装置の反射面が除去されるため、偏光影響装置の除去は、より高い「透過率」での非偏光動作を可能にする。さらに、距離d1しか離れていないこれらの2つの反射面は単一の光学要素に、すなわち単一の光学要素の前面と後面に適用されているため、偏光影響装置の製造性が単純化される。その結果として、より低コストの支出での製造を達成することができる。偏光影響装置によって引き起こされる遮光が低減されることにより、偏光動作中の「有効透過率」が増大する。
【0009】
他の実施形態によれば、この光学系が、少なくとも10個の2重反射面ユニットからなる。したがって、光学系の所与の全体サイズに対して、それぞれの2重反射面ユニットは小さい傾向がある。望ましくない遮光およびビーム偏向効果は、個々の2重反射面ユニットのサイズとともに増減し、したがって、数多くの2重反射面ユニットを使用することによって、望ましくない遮光およびビーム偏向効果を低減させることができる。
【0010】
一実施形態および/または代替定義(alternative definition)によれば、EUVでの動作のためのマイクロリソグラフィ投影露光装置用のこの光学系は、少なくとも2つの第1の反射面および少なくとも2つの第2の反射面を有する少なくとも1つの偏光影響装置を備える。第1の反射面と第2の反射面とは、各場合において、互いに対して0°±10°の角度で配置されている。光学系の動作中、第1の反射面に入射する光は、各場合において、前記第1の反射面と43°±10°、特に43°±5°の角度をなす。第1の反射面と第2の反射面とは、交互に、そして交互距離(alternate distances)d1およびd2を隔てて配置されている。距離d1およびd2に関しては、d2>5×d1が真である。特に、d2>10×d1、特にd2>20×d1とすることができる。
【0011】
一実施形態および/または代替定義によれば、EUVでの動作のためのマイクロリソグラフィ投影露光装置用のこの光学系は、少なくとも1つの第1の反射面および少なくとも2つの第2の反射面を有する少なくとも1つの偏光影響装置を備える。第1の反射面と2つの第2の反射面とは、各場合において、互いに対して0°±10°の角度で配置されている。光学系の動作中、光学系の動作中、第1の反射面に入射する光は、第1の反射面と43°±10°、特に43°±5°の角度をなす。第1の反射面は、2つの第2の反射面間に配置されている。第1の反射面は、一方の第2の反射面からは距離d1を隔てて、もう一方の第2の反射面からは距離d2を隔てて配置されている。距離d1およびd2に関しては、d2>5×d1が真である。特に、d2>10×d1、特にd2>20×d1とすることができる。
【0012】
一実施形態によれば、偏光影響装置は、光学系の動作中に第1の反射面に入射する光の光伝搬方向に対して平行に延びる回転軸の周りで回転可能であり、かつ/または、偏光影響装置は、光学系の動作中に第1の反射面に入射する光のビーム経路から除去可能であるように構成されている。
【0013】
ここで、光伝搬方向は、主光線(principal ray)の方向を意味すると理解される。
【0014】
偏光影響装置が回転可能である結果、回転角に応じて偏光方向を連続的に変化させることができる。偏光影響装置を除去することは、(偏光影響装置がビーム経路上にある)偏光動作と(偏光影響装置がビーム経路から除去されている)非偏光動作との間の切換えを可能にする。ここで、「ビーム経路」は、使用されたEUV光が放射源からレチクルに向かって誘導される領域を意味し、例えば、例えば迷光などの寄生光だけ、および/または使用されたEUV光波長と等しくない波長を有する光だけが通ることができる領域を意味しないと理解される。
【0015】
(例えばそれぞれの2重反射面ユニットが本来的に回転可能であるのではなしに)偏光影響装置全体だけが回転可能および/または除去可能であることにより、機械的および熱的安定性が改善される。これは、1つの(より大きな)回転デバイスだけを実装すればよく、したがって、より安定な機械取付けを使用することができ、それによってさらに、より良好でより容易に実装可能な熱散逸(heat dissipation)が可能になるためである。さらに、より大きな回転デバイスは、より単純に、かつより高い費用効果で製造可能である。
【0016】
一実施形態によれば、2重反射面ユニットのうちの少なくとも1つの2重反射面ユニットの第1の反射面と第2の反射面とは、モノリシック(一体型)要素(monolithic element)の2つの側面に配置されている。
【0017】
その結果として、2つの別個の要素の代わりに、単一の光学要素に、すなわち単一の光学要素の前面と後面に2つの反射面が適用されるため、偏光影響装置の製造性が単純化される。その結果として、2重反射面ユニット1つにつき1つの要素を節約(save)することができるため、より低コストの支出での製造が達成される。
【0018】
一実施形態によれば、モノリシック要素の少なくとも1つの側面は、光学系の動作中に第1の反射面に入射する光の光伝搬方向に対して平行に配置されている。
【0019】
その結果として、望ましくない遮光をさらに低減させることができる。さらに、その結果として達成できるのは、偏光影響装置がビーム経路から除去された場合または偏光影響装置がビーム経路に導入された場合の光学系内の光分布の変化を、可能な限り小さくすることである。偏光影響装置の結果としての遮光が低減されることにより、偏光動作中の「有効透過率」が増大する。
【0020】
一実施形態によれば、2重反射面ユニットの第1の反射面と第2の反射面とは異なる要素に配置されている。
【0021】
この実施形態の場合にも、小さな距離d1により、遮光が低減される。さらに、第1および第2の反射面の好ましい配置、例えば正確に平行な配置または目的に合うように互いに対して傾けられた配置が可能になるように、それらの異なる2つの要素を互いに対して配置することができる。互いに対して補正角(correction angle)だけ傾けられた第1および第2の反射面の配置を、特に、偏光影響装置に起因するビームオフセットを補正する目的に使用することができる。さらに、互いに対して補正角φだけ傾けられた第1および第2の反射面の配置を、偏光影響装置が発散入射光用に目的に合わせて設計または最適化されるように構成することもできる。くさび形の(wedge-shaped)幾何形状(geometry)を有しているモノリシック実施形態によっても、同じ効果を達成することができる。
【0022】
一実施形態によれば、第1の反射面および第2の反射面は、
- EUV反射層、および/または
- 偏光に影響を与える層(以後、偏光影響層という)、および/または
- モリブデン(molybdenum)-シリコン(silicon)多層(multilayer)コーティング、および/または
- ルテニウム(ruthenium)コーティング、および/または
- ルテニウムカバー層を有するモリブデン-シリコン多層コーティング
を備える。
【0023】
その結果として、「有効透過率」を増大させられることができ、かつ/または反射面の偏光分割(polarization-splitting)効果を改善することができる。
【0024】
一実施形態によれば、第2の反射面は、光学系の動作中に第1の反射面に入射する光の光伝搬方向(z)に、直接に隣り合う第1の反射面に対して、高さhだけ変位しているように配置されている。
【0025】
その結果として、望ましくない遮光をさらに低減させることができる。さらに、その結果として達成できるのは、偏光影響装置がビーム経路から除去された場合または偏光影響装置がビーム経路に導入された場合の光学系内の光分布の変化を、可能な限り小さくすることである。遮光が低減されることにより、「有効透過率」が増大する。
【0026】
一実施形態によれば、h>d1である。hは、特に、h’=d1×√2から最大でも20%だけ外れる(deviate)。
【0027】
その結果として、望ましくない遮光をさらに低減させることができる。さらに、その結果として達成できるのは、偏光影響装置がビーム経路から除去された場合または偏光影響装置がビーム経路に導入された場合の光学系内の光分布の変化を、可能な限り小さくすることである。遮光が低減されることにより、「有効透過率」が増大する。幾何学的観点から、h=d1×√2は、理論上の理想的ケース(すなわち公差がないケース、平行入射光であるケースなど)における遮光が完全になくなる好ましい実施形態であることがある。
【0028】
一実施形態によれば、反射面のうちの少なくとも1つの反射面は、第1の広がり方向(direction of extent)の大きさ(extent)Lを有する。第1の広がり方向は、光学系の動作中に第1の反射面に入射する光の光伝搬方向の、第1の反射面が配置された平面への射影(projection:投影)によって与えられる。Lは、L’=2×d2から最大でも20%だけ外れる。
【0029】
その結果として、望ましくない遮光をさらに低減させることができる。さらに、その結果として達成できるのは、偏光影響装置がビーム経路から除去された場合または偏光影響装置がビーム経路に導入された場合の光学系内の光分布の変化を、可能な限り小さくすることである。遮光が低減されることにより、「有効透過率」が増大する。幾何学的観点から、L=2×d2は、理論上の理想的ケース(すなわち公差がないケース、平行入射光であるケースなど)における遮光が完全になくなる好ましい実施形態であることがある。
【0030】
一実施形態によれば、偏光影響装置によって、光学系の動作中に第1の反射面に入射する非偏光または円偏光の光を、第2の反射面から反射される直線偏光の光に変換することができる。
【0031】
一実施形態によれば、EUVでの動作のために設計されたマイクロリソグラフィ投影露光装置用の照明系(照明システム)は、上に開示された特徴を有する光学系を備える。
【0032】
一実施形態によれば、この照明系は、中間焦点面(intermediate focal plane)と、複数のファセット(facet)を有する少なくとも1つの第1のファセットミラーとを有する。この少なくとも1つの偏光影響装置は、光の偏光状態に影響を与えるために、中間焦点面と第1のファセットミラーの間のビーム経路上に配置されている。
【0033】
偏光影響装置をこのように配置することによって以下の利点が得られる。
1.)偏光影響装置によって、事実上、入射光のパワーの50%超(すなわち、フィルタリングによって除去される「不正確な」偏光方向の結果として約50%、それに2重反射の結果としての反射損が加わる)がビーム経路から除去される。系(システム)内の非常に早いところに(so early)偏光影響装置が配置された場合には、下流の全ての要素での放射ローティングが大幅に低減し、このことは、寿命(lifetime)態様および熱的(thermal)態様などの効果に有利な影響を与える。
2.)下流の光混合の結果として、偏光影響装置の下流の可能な遮光が「ウォッシュアウトされ(washed out)」、このことは、レチクルの視野(field:フィールド)照明の均一性に対して都合のよい影響を有する。
【0034】
一実施形態によれば、マイクロリソグラフィ投影露光装置は、上述の照明系と、投影光学ユニットとを備える。
【0035】
一実施形態によれば、マイクロ構造を有する構成要素をマイクロリソグラフィによって製作するための方法は、以下のステップを含む:
・感光性材料からなる層が少なくとも部分的に付けられた(applied)基板を用意する(provide)ステップ、
・結像(image)すべき構造を含むマスクを用意するステップ、
・上述のマイクロリソグラフィ投影露光装置を用意するステップ、および
・投影露光装置の助けを借りて、マスクの少なくとも一部分をその層の領域に投影するステップ。
【0036】
以下では、添付図面に示された例示的な実施形態に基づいて本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】偏光影響装置の一実施形態の略断面図である。
【
図2】偏光影響装置の一実施形態の略断面図である。
【
図3】偏光影響装置の一実施形態の略断面図である。
【
図4a】偏光影響装置の一実施形態の略断面図である。
【
図4b】
図4aの装置の大きさ、距離および角度などの幾何学的変量を示している。
【
図5a】偏光影響装置の一実施形態の略断面図であり、
図5a、5b、5c、5dおよび5eは異なる実施形態を示している。
【
図5b】偏光影響装置の一実施形態の略断面図であり、
図5a、5b、5c、5dおよび5eは異なる実施形態を示している。
【
図5c】偏光影響装置の一実施形態の略断面図であり、
図5a、5b、5c、5dおよび5eは異なる実施形態を示している。
【
図5d】偏光影響装置の一実施形態の略断面図であり、
図5a、5b、5c、5dおよび5eは異なる実施形態を示している。
【
図5e】偏光影響装置の一実施形態の略断面図であり、
図5a、5b、5c、5dおよび5eは異なる実施形態を示している。
【
図9】瞳(pupil)の中のさまざまな強度分布の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図8および9に関連して、以下に、マイクロリソグラフィにおける構造の結像に関して、偏光された照明の使用についての背景的理由を、動機付けに関して説明する。
【0039】
投影露光装置は、さまざまなタイプの構造を結像することができることが意図されている。
図8は、結像すべきこのような構造の例を示す。ここで、座標系(x’,y’,z’)は、レチクルにおける座標に関係し、y’は、走査方向に対して平行に向けられている。座標系(x’,y’,z’)は、
図6および
図7に示された座標系に対応する。
図8aは、結像すべき1次元構造を示し、それらの1次元構造は、方向y’に沿って配置されており、方向x’に対して平行に延びている。構造のサイズはdによって識別される。
図8bは、結像すべき2つの1次元構造を示し、それらの2つの1次元構造は、互いに直角に延びる2つの方向x’およびy’に沿って配置されている。
【0040】
図8aに示されているような単純な線構造の結像には、入射照明光に対する直線偏光の使用が有利である。ここでは、結像すべき構造に動作中に入射する光の偏光方向が、方向x’に沿って延びる構造に対して平行な方向に設定されていると有利である。当業者には、その背景的理由が、キーワード「ベクトル効果(vector effect)」の下に、長い間、十分に知られている。
【0041】
例えば
図8bに示されているようなより複雑な構造では、回折構造の下流の瞳、すなわちレンズ瞳において、入射照明光の他に、各場合において関連する回折次数も考慮する必要がある。
図9aは、一例として、
図8bの回折構造のような回折構造の下流の瞳または瞳の部分を示す。これに対応して、
図9の座標系(x”,y”,z”)は瞳座標を示す。
図9aにおいて、Bは、回折構造に入射する照明光、または回折されずに回折構造から射出した光を表す。例えば回折構造の下流、すなわち回折構造の後方で回折次数(0,1)および(1,0)が生じうるように、照明光Bを回折させることができる。照明光Bは、回折次数(0,0)と解釈することもできる。
図9aの矢印は、構造をウェーハ上に結像するために、像平面の像視野において、どの回折次数が、各場合において、照明光Bと干渉しうるのか、または照明光Bと干渉することが意図されているのかを示す。(0,1)は、例えば
図8bに示された構造の左側の領域の水平構造などの水平構造での回折後の回折次数を表す。(1,0)は、例えば
図8bに示された構造の右側の領域の垂直構造などの垂直構造での回折後の回折次数を表す。
【0042】
例えば
図8bに示されているような異なる向き(orientations
:方位)を有する線を、(
図9bに示されているような)クェーサー照明(quasar illumination)を使用して同時に結像すべきことが意図とされている場合、および全ての照明方向が空中像に寄与することが意図されている場合には、以下の要件が生じる。
図8bの右側の領域に示されているような垂直構造については、照明放射が、垂直に、すなわち方向y’に対して平行に偏光されることが意図されている。
図8bの左側の領域に示されているような水平構造については、照明放射が、水平に、すなわち方向x’に対して平行に偏光されることが意図されている。このことは、
図9aの照明光Bの所望の偏光に関して矛盾する要件を生じる。そのため、非偏光照明が最も有利な偏光状態である。
【0043】
本発明によれば、EUV投影露光装置では、多くの用途において、以下の2つの偏光状態だけが設定されればよいことが分かっている:
1.)非偏光状態、または
2.)唯1つの偏光方向に沿って直線偏光された状態。前記唯1つの偏光方向は可変であってもよく、特に回転可能であってもよい。
【0044】
本発明に基づく偏光影響装置は、これらの2つの偏光状態を提供する。
【0045】
さらに、本発明に基づく偏光影響装置は、上に追加的に挙げた追加の利点を提供する。
【0046】
図1は、本発明に基づく偏光影響装置124の一実施形態を示す。偏光影響装置124は、多数の(a multiplicity of)第1の反射面128.1および多数の第2の反射面128.2を備える。第1の反射面128.1と第2の反射面128.2は、各場合において、互いに対して平行に交互に配置されている。同様に、
図1に示されているこれらのプレート(plates)間の距離d1およびd2も交番する。各場合において、第1の反射面128.1と第2の反射面128.2は、距離d1を隔てて互いの近くに配置されている。ここでは、互いの近くに配置されたこのような反射面を2重反射面ユニット128と呼ぶ。特に、d2>5×d1とすることができる。距離d1が非常に小さい結果として、下流の可能な遮光、すなわち正のz方向の可能な遮光が最小化される。入射光125の伝搬方向と直交する面122が破線で示されている。入射光は、z方向に沿って偏光影響装置124に入射する。入射光125は非偏光または円偏光である。可能な最も大きな程度にまで非偏光とされた光は、例えばEUVプラズマ源によって発生させることができる。EUVプラズマ源については投影露光装置に関連して後に説明する。円偏光は例えば、例えば米国特許第9955563B2号に記載されている特別な構成を有する自由電子レーザ(free electron laser:FEL)によって発生させることができる。入射光125は、第1の反射面128.1に約43°で入射する。EUV波長では、ほぼ全ての材料が約1の屈折率を有する。特に、その結果、ブルースター角は約43°となりうる。ブルースター角で偏光分割は最大になる。偏光分割は、二重減衰(diattenuation)とも呼ばれている。これは、反射面128.1および128.2において43°±10°で反射される光130を、主に図面の平面に対して直角に偏光させる効果、すなわち図示された方向xおよびzに対して直角の向きを有するy方向に対して平行に偏光させる効果を有する。入射光は最初に、第1の反射面128.1において約43°±10°で反射される。すなわち、入射光は、43°±10°の角度で第1の反射面128.1に入射し、約94°±10°、特に94°±5°、特に94°±1°、特に94°±0.5°だけ偏向されて第2の反射面128.2に向かい、第2の反射面128.2で、約94°±10°、特に94°±5°、特に94°±1°、特に94°±0.5°だけ偏向される。ブルースター角でのこの2重反射は、このようなブルースター反射が1回だけであるのと比較して偏光分割を増大させる。第1の反射面128.1と第2の反射面128.2とが完全に平行に配置されていることを考えれば、この2回の反対方向の94°の偏向の結果、2重反射光130のビーム方向は、入射光125に対して変化しない。このことは、本発明に基づく偏光影響装置124を既存の投影露光装置のビーム経路に組み込むことを可能にし、さらには、後に、偏光影響装置124を、レトロフィット可能な構成要素として組み込むことを可能にする。反射面128.1および128.2は、方位面(orientation surface)1(「水平」)155に沿ったx方向に沿って、入射光125に対するz方向に関して同じ高さに配置されている。特に、ここでは、方位面1(「水平」)155が、入射光125の伝搬方向と直交する面122に対して平行である。さらに、距離d2を隔てて隣り合う反射面128.1と128.2、したがって隣り合う2重反射面ユニット128にそれぞれ属する隣り合う反射面128.1と128.2は、方位面2(「垂直」)156に沿って配置されている。このことの利点は、2重ブルースター反射なしでは、入射光125が、これらの2つの反射面128.1と128.2の間を通過することができないこと、および、第1の反射面128.1上に第2の反射面128.2があると生じる遮光領域が生じないことである。遮光領域が生じないのは、入射光の方向から見てこれらの2つの面には重なる領域がなく、入射光125から見るとx方向に「互いの隣に」配置されているように見えるためである。
【0047】
本出願に示された全ての実施形態で、図面の平面に対して直角の方向に沿った反射面の大きさ、すなわち図示された右手座標系(right-handed coordinate system)のy方向に沿った反射面の大きさを、d2よりも大きくすることができ、特にd2の大きさの少なくとも2倍、特にd2の大きさの少なくとも10倍、特にd2の大きさの少なくとも20倍よりも大きくすることができる。
【0048】
したがって、示されているのは、EUVでの動作のためのマイクロリソグラフィ投影露光装置用の光学系であって、少なくとも1つの第1の2重反射面ユニットおよび1つの第2の2重反射面ユニット128を有する少なくとも1つの偏光影響装置124を備え、この少なくとも2つの2重反射面ユニットがそれぞれ、第1の反射面128.1および第2の反射面128.2を有し、同じ2重反射面ユニット内で、各場合において、第1の反射面と第2の反射面とが、距離d1を隔てて、互いに対して0°±10°の角度で直接に隣り合わせに配置されており、第1の2重反射面ユニットの第1の反射面と第2の2重反射面ユニットの第2の反射面とが、距離d2を隔てて、互いに対して0°±10°の角度で直接に隣り合わせに配置されており、光学系の動作中に第1の反射面に入射する光125が、第1の反射面と43°±10°の角度をなし、光学系の動作中に第1の2重反射面ユニットの第1の反射面に入射する光が、第2の2重反射面ユニットの第2の反射面に向かって反射され、d2>5×d1が真である、光学系である。
【0049】
このような小さな距離d1の結果、偏光影響装置の下流のビーム経路の望ましくない遮光が低減される。偏光影響装置の結果としての望ましくない遮光が低減されているため、非偏光動作を可能にするためにビーム経路から偏光影響装置が除去された場合でも、光学系内の光分布は実質的に変化しない。さらに、その過程で下流の光分布を変化させることなくビーム経路から反射面を除去することができるため、偏光影響装置の除去は、より高い「透過率」での非偏光動作を可能にする。さらに、距離d1しか離れていないこれらの2つの反射面は単一の光学要素に、すなわち単一の光学要素の前面と後面に適用されているため、偏光影響装置の製造性が単純化される。その結果として、より低コストの支出での製造が達成される。偏光影響装置の結果としての遮光が低減されることにより、偏光動作中の「有効透過率」が増大する。
【0050】
偏光影響装置のさまざまな実施形態が示されている
図1、2、3、4および5に示された、x、yおよびzが各場合において右手座標系を形成する座標系は、
図6および
図7に示されており、
図6および
図7はそれぞれ、投影露光装置を、同じように偏光影響装置の近傍に、投影露光装置内における偏光影響装置の可能な向きが示されるような形で示している。ここでは、各場合において、偏光影響装置を、偏光影響装置がz方向の周りで回転可能であり、かつ/またはビーム経路から除去可能であるように実施することができる。
【0051】
この際、後続の図はそれぞれ参照符号を有し、それらの符号の最初の数字はそれぞれ図番号であることに留意されたい。後続の数字はそれぞれ、(他の)図に示された同様の構成部分または同一の構成部分を示す。一例として、
図1の第1の反射面128.1は、後続の図では228.1、328.1、428.1、...として示されている。そのため、後続の図のそれらの参照符号は既に提示済みとみなし、異なる実施形態の相違点だけを論じる。
【0052】
図1に示された距離d1は極めて小さい。以下では、より大きな距離d1で生じる可能性がある欠点が、特に
図2に関連して説明され、どのようにすればそれらの欠点を軽減または回避することができるのかに関して、本発明に基づく追加の実施形態が、特に
図3、
図4aおよび
図4bに関連して説明される。
【0053】
図2は、
図1の実施形態よりもかなり大きくなるように距離d1が選択された一実施形態を示す。入射光225.2および225.3だけが、反射光230.2および230.3として、投影露光装置の偏光影響装置324の下流に物体平面に向かって誘導されうる。
図2は、入射光225.4に対する、幅hの網掛けされたグレーの遮光領域227を示している。この遮光領域は、第1の反射面228.1で反射される入射光225.4が、隣り合って配置された2重反射面ユニット228の第2の反射面228.2に属していない領域に当たることの結果として生じるものであるが、この領域は、非反射性の側面(nonreflective side surface)(以後、非反射側面という)である。このことは第1に光の損失につながる。さらに、その結果として、偏光影響装置224の下流に陰領域が生じ、そのため、反射光230.2、230.3に由来する照明が均一にならない。さらに、2重反射面ユニット228の前記非反射側面の結果として、網掛けで示された別の遮光領域226が生じる。この遮光は、入射光225.1および225.5が非反射側面に直接に当たることによって起こる。結果的に、大きな距離d1を選択することは大きな遮光領域226および227につながり、その結果、光の多大な損失および大規模な遮光に至る。
【0054】
図3は、入射光325の方向zに沿って互いに変位しているように、隣り合う2重反射面ユニット328が互いに対して配置された別の実施形態を示す。このような配置は、
図2の遮光領域227を最小化することを可能にする。
図3に示されているように、次に、この変位があることにより、入射光325.4を、第1の反射面328.1から第2の反射面238.2に向かって反射し、同様に第2の反射面238.2によって反射することができ、その結果、この光は反射光330.4として供給される。
図3に示された実施形態では、
図2の遮光領域227はもはや生じてもいない。
【0055】
それに加えてまたはその代わりに、隣り合う2重反射面ユニット328がそれぞれ方位面(「垂直」)356に接するように、2重反射面ユニット328を方位面(「垂直」)356に沿って配置することもできる。このことには、遮光の結果としての光の損失も、隣り合う2重反射面ユニット328間の「隙間」も生じないという効果がある。
【0056】
したがって、第2の反射面328.2が、光学系の動作中に第1の反射面に入射する光125の光伝搬方向zに、直接に隣り合う第1の反射面328.1に対して、高さhだけ変位しているように配置された、光学系が示されている。
【0057】
一実施形態によれば、h>d1である。特に、hは、h’=d1×√2から最大でも20%だけ外れる。
【0058】
h、h’およびd1の間の関係については、
図4bに関連してよりいっそう詳細に説明する。
【0059】
これらの実施形態によって、望ましくない遮光をさらに低減させることができる。さらに、その結果として達成できるのは、偏光影響装置がビーム経路から除去された場合または偏光影響装置がビーム経路に導入された場合の光学系内の光分布の変化を、可能な限り小さくすることである。遮光が低減されることにより、「有効透過率」が増大する。幾何学的観点から、h=d1×√2は、理論上の理想的ケース(すなわち公差がないケース、平行入射光であるケースなど)における遮光が完全になくなる好ましい実施形態である。
【0060】
図4aは、第2の反射面428.2の高さを、光伝搬方向zに、直接に隣り合う第1の反射面428.1に対して、高さhだけ変位させることに加えて、さらに、非反射側面457aが、光学系の動作中に第1の反射面428.1に入射する光425の光伝搬方向zに対して平行に向けられた実施形態を示す。このことは、入射光425.1が、例えば
図2に示されているように非反射側面に当たるのではなしに、第1の反射面428.1に当たることを保証する。
図4aに基づく実施形態では、もはや遮光が生じない。
【0061】
その結果として、
図2に示された望ましくない遮光226をさらに低減させることができる。さらに、その結果として達成できるのは、偏光影響装置がビーム経路から除去された場合または偏光影響装置がビーム経路に導入された場合の光学系内の光分布の変化を、可能な限り小さくすることである。偏光影響装置の結果としての遮光が低減されることにより、偏光動作中の「有効透過率」が増大する。
【0062】
本発明に基づくこれらの態様、すなわち
1.)第2の反射面428.2の高さが、光伝搬方向zに、直接に隣り合う第1の反射面428.1に対して、高さhだけ変位しており、その結果として、
図2の遮光領域227が低減されること、および
2.)非反射側面457aが、光伝搬方向zに対して平行に構成されており、その結果として、
図2の遮光領域226が低減されること
は、構造的に互いに独立しており、したがって、当然ながら、これらの態様を、互いに独立して実装および使用することもできる。本発明の一実施形態では、非反射側面457aが光伝搬方向zに対して平行に構成されているだけであり、
図3の実施形態に従っていない反射面が、互いに対して高さhの高さオフセットを有するように配置されている。
【0063】
図4bは、変量hとd1の間およびLとd2の間の幾何学的関係を、網掛けされた三角形に基づいて示す。Lは、第1の広がり方向の反射面428.1および428.2の大きさである。この場合では、図解をより単純にするために、反射面428.1および428.2への光425の入射角が45°であると仮定する。第1の広がり方向は、光学系の動作中に第1の反射面428.1に入射する光425の光伝搬方向zの、第1の反射面428.1が配置された平面への射影によって与えられる。
【0064】
したがって、第1の広がり方向の大きさLを有する少なくとも1つの反射面428.1および/または428.2を備える光学系であって、第1の広がり方向が、光学系の動作中に第1の反射面428.1に入射する光425の光伝搬方向zの、第1の反射面が配置された平面への射影によって与えられ、Lは、L’=2×d2から最大でも20%だけ外れる、光学系が示されている。
【0065】
その結果として、望ましくない遮光をさらに低減させることができる。さらに、その結果として達成できるのは、偏光影響装置がビーム経路から除去された場合または偏光影響装置がビーム経路に導入された場合の光学系内の光分布の変化を、可能な限り小さくすることである。遮光が低減されることにより、「有効透過率」が増大する。幾何学的観点から、L=2×d2は、理論上の理想的ケース(すなわち公差(tolerances:許容誤差)がないケース、平行入射光であるケースなど)における遮光が完全になくなる好ましい実施形態である。
【0066】
本出願に示された全ての実施形態で、図面の平面に対して直角の第2の広がり方向に沿った反射面の大きさ、すなわち図示された右手座標系のy方向に沿った反射面の大きさを、Lよりも大きくすることができ、特にLの大きさの少なくとも2倍、特にLの大きさの少なくとも10倍、特にLの大きさの少なくとも20倍、特にLの大きさの少なくとも50倍、特にLの大きさの少なくとも100倍よりも大きくすることができる。
【0067】
その結果として、約d2×√2、すなわち約L/√2となりうる、偏光影響装置の結果としてのビームオフセットが、yに沿った第2の広がり方向に沿った反射面の大きさに比べて小さく保たれる。
【0068】
図4bはさらに、第1の反射面428.1に対する面法線454bを示している。面法線454bは、入射光425.2と角度βをなす。この角度βは、43°±10°とすることができる。面法線454bと方位面1(「水平」)455の間の角度はαである。入射光425.2と方位面1(「水平」)455の間の角度はγである。入射光425.2と第1の広がり方向の間の角度はδである。この角度δは、47°±10°とすることができる。
【0069】
図1、2、3および4では、面122、222、322、422が平面である平行入射光125、225、325、425の場合を考えた。これらの場合には、2重反射の結果として、x方向に対して平行なわずかなビームオフセットd2×√2だけが生じる。
【0070】
続いて、
図5a、5b、5cおよび5dでは、例えば
図6および7に関連して後により詳細に説明する中間焦点面とファセットミラーの間の偏光影響装置524、724の配置の場合のように、面522a、522b、522c、522dが曲面、特に球面である発散入射光522a、522b、522c、522dの場合を考える。この場合、中間焦点から進んだ光は偏光影響装置524に発散光として入射する。
【0071】
図5aは、発散入射光525が使用されることを除き、
図1の偏光影響装置と構造的に類似した構成を有する偏光影響装置524の一実施形態を示す。第1の近似点として、この場合も同様のビームオフセットが生じる。2重反射の結果としてのビーム偏向も同様に0°である。すなわち放射方向は変更されない。
【0072】
図5bは、互いに対して高さオフセットを有するように2重反射面ユニット528bが配置された偏光影響装置524の一実施形態を示す。
【0073】
2重反射面ユニット528bは、方位面(「水平」)555bに沿って配置されている。
【0074】
それに加えてまたはその代わりに、隣り合う2重反射面ユニット528bがそれぞれ方位面(「垂直」)556bに接するように、2重反射面ユニット528bを方位面(「垂直」)556bに沿って配置することもできる。このことには、遮光の結果としての光の損失も、隣り合う2重反射面ユニット528b間の「隙間」も生じないという効果がある。
【0075】
図5eは、互いに対して小さな補正角φだけ傾けられているように2重反射面ユニット528eが配置された一実施形態を示す。補正角φは、偏光影響装置524の下流の平面558eにおいて、ビーム経路に偏光影響装置524を導入した結果としてのビームオフセットが生じないように選択されている。ビーム経路に偏光影響装置524がない場合、入射光525e.3は、反射されることなく光525e.3wとして平面558eに入射する。ビーム経路に偏光影響装置524がある場合、入射光525e.3は、2重反射の後に反射光530e.3として平面558eに入射する。平面558eにおいて、2つのビーム525e.3wおよび530e.3の互いに対するビームオフセットは生じない。一例として、ビームオフセットのない平面558eに、ファセットミラー613または763を配置することができる。
【0076】
本出願に記載された全ての実施形態で、平行入射光と発散入射光の両方の場合125、225、325、425、525に、反射面128.1、228.1、328.1、428.1、528.1、128.2、228.2、328.2、428.2、528.2は互いに対して小さな補正角φを有することができ、したがって、2重反射の結果としてのビームオフセットを補償することができる。この場合、補正角φは、偏光影響装置124、224、324、424、524、624、724がビーム経路から除去された場合、または偏光影響装置124、224、324、424、524、624、724がビーム経路に導入された場合に、偏光影響装置124、224、324、424、524、624、724の下流の所定の面の被照明面、特に下流のビーム経路上に配置されたファセットミラーの被照明面が変化しないように選択される。補正角φは、10°よりも大きくすることができ、特に5°、特に2°、特に1°、特に0.5°、特に0.1°よりも大きくすることができる。
【0077】
補正角φによってビームオフセットおよび/またはビーム傾斜(beam tilt)(発散光の場合)を補償することができる。それに必要な補正角φは非常に小さいため、反射の偏光特性は変化しない。
【0078】
図5cは、2重反射面ユニット528cがくさび形に実施された一実施形態を示す。この場合には、同じ2重反射面ユニット528cの第1の反射面528c.1と第2の反射面528c.2とが、互いに対して小さな補正角φで配置されている。補正角φは10°よりも小さくすることができ、特に5°、特に2°、特に1°、特に0.5°よりも小さくすることができる。
【0079】
本出願に記載された偏光影響装置124、224、324、424、524、624、724の全ての実施形態に実装することができる1つの実施形態では、2重反射面ユニット128、228、328、428、528a、528b、528c、728が一体として、すなわちモノリシックに実施される。
【0080】
その結果として、2つの別個の要素の代わりに、単一の光学要素に、すなわち単一の光学要素の前面と後面に2つの反射面が適用されるため、偏光影響装置の製造性が単純化される。その結果として、2重反射面ユニット1つにつき1つの要素を節約することができるため、より低コストの支出での製造が達成される。
【0081】
モノリシック実施形態の代替実施形態として、本出願に記載された全ての実施形態の2重反射面ユニット128、228、328、428、528a、528b、528c、528d、728を、2重反射面ユニット(128、228、328、428、528、728)の第1の反射面(128.1、228.1、328.1、428.1、528.1)と第2の反射面(128.2、228.2、328.2、428.2、528.2)が異なる要素(528d)に配置されるように実施することもできる。このタイプの1つの実施形態が
図5dに一例として示されている。この実施形態では、d1が、2つの反射面間の最小距離を表す。
図5dでは、d1が、反射面間の最小距離の対応する位置に示されている。
【0082】
この実施形態の場合にも、小さな距離d1により、遮光が低減される。さらに、第1および第2の反射面の好ましい配置、例えば正確に平行な配置または目的に合うように互いに対して補正角φだけ傾けられた配置が可能になるように、それらの異なる2つの要素を互いに対して配置することができる。互いに対して補正角φだけ傾けられた第1および第2の反射面の配置を、特に偏光影響装置に起因するビームオフセットを補正する目的に使用することができる。さらに、互いに対して傾けられた第1および第2の反射面の配置を、偏光影響装置が発散入射光用に目的に合わせて設計または最適化されるように構成することもできる。
【0083】
全ての実施形態の第1および第2の反射面が配置された構造構成要素、したがって、純粋な一例として、上述のくさび528cは、図面の平面の後方および/または前方に配置することができるデバイスによって取り付けること、または保持することができる。このような取付けは、窓の前のブラインドの場合の取付けと同様のやり方で実施することができる。したがって、
図4a、4bまたは5cに示されているような端面の特別な実施形態は、機械的安定性も、熱散逸の可能性も低下させない。
【0084】
本発明の偏光影響装置124、224、324、424、524、624、724がビーム経路に導入されるのは、直線偏光が望まれている場合だけである。偏光方向は、光軸zの周りの回転によって設定することができる。
【0085】
偏光影響装置124、224、324、424、524は、光学系の動作中に第1の反射面128.1、228.1、328.1、428.1、528.1に入射する光125、225、325、425、525の光伝搬方向zに対して平行に延びる回転軸の周りで回転可能であるように構成することができ、かつ/または光学系の動作中に第1の反射面に入射する光のビーム経路から除去可能であるように構成することができる。
【0086】
全ての実施形態で、個々の2重反射面ユニット128、228、328、428、528、728間の距離d2を、特に30mm未満、特に20mm未満、特に約10mm、特に10mm未満、特に5mm未満とすることができる。d2が約10mmである場合、このことは、反射面が正確に平行に配置されている場合に、偏光影響装置を導入すること、すなわち「偏光」をオンにすることが、下流のファセットミラーへの照明を約10mm変位させることを意味する。下流のファセットミラーの直径が約400mmである場合、このビームオフセットは、下流のファセットミラーの大きさに比べて非常に小さく、この例では、特に、ファセットミラーの直径の2.5%でしかない。
【0087】
例示的な全ての実施形態で、第1の反射面128.1、228.1、328.1、428.1、528.1および第2の反射面128.2、228.2、328.2、428.2、528.2は、
- EUV反射層、および/または
- 偏光影響層、および/または
- モリブデン-シリコン多層コーティング、および/または
- ルテニウムコーティング、および/または
- ルテニウムカバー層を有するモリブデン-シリコン多層コーティング
を備えることができる。
【0088】
好ましいことに、偏光影響装置の上述の実施形態は、後述する投影露光装置で使用可能である。
【0089】
図6は、WO 2012/130768 A2から知られているマイクロリソグラフィ投影露光装置601の略断面図を示す。投影露光装置601は、物体視野690の露光用の放射源603および照明系602を備える。照明系602は、視野ファセット613aと瞳ファセット614aとからなるいわゆるフライアイコンデンサ(fly’s eye condenser)を備える。この場合には、物体平面606に配置された反射レチクル(
図6には示されていない)が露光される。前記レチクルは、マイクロ構造またはナノ構造を有する例えば
図8に示されているような半導体構成要素を製作するために投影露光装置601によって投影される構造を有する。投影光学ユニット607は、像平面609の像視野608に物体視野690を結像する役目を果たす。レチクル上の構造は、ウェーハの感光層、いわゆるレジスト上に結像される。ウェーハは、この図面には示されておらず、像平面609の像視野608の領域に配置されている。このレチクルおよびウェーハは、投影露光装置601の動作中にy’方向に走査される。マイクロ構造またはナノ構造を有する構成要素、特に半導体構成要素、例えばマイクロチップのマイクロ構造またはナノ構造を有する構成要素、特に半導体構成要素をリソグラフィによって製作するために、投影露光装置601の助けを借りて、レチクルの少なくとも一部分が、ウェーハの感光層の領域に結像される。投影露光装置601の実施形態がスキャナであるのかまたはステッパであるのかに応じて、レチクルとウェーハは、時間的に同期して、スキャナ動作では連続的に、またはステッパ動作では段階的にy’方向に動かされる。放射源603は、放出され使用される5nmから30nmの間の範囲の放射を有するEUV放射源である。この放射源は、プラズマ源、例えばGDPP(ガス放電生成プラズマ(Gas Discharge Produced Plasma))源またはLPP(レーザ生成プラズマ(Laser Produced Plasma))源とすることができる。他のEUV放射源、例えばシンクロトロンに基づくEUV放射源または自由電子レーザ(Free Electron Laser、FEL)に基づくEUV放射源も可能である。放射源603を出たEUV放射670はコレクタ(collector)611によって集束する。コレクタ611の下流で、EUV放射670は、中間焦点面612を通過した後に、多数の視野ファセット613aを備える視野ファセットミラー613に入射する。中間焦点面612と視野ファセットミラー613の間に、本発明に基づく偏光影響装置624が配置されている。視野ファセットミラー613は、物体平面606と光学的に共役の(optically conjugate)照明光学ユニット604の平面に配置されている。視野ファセットミラー613の下流で、EUV放射670は、多数の瞳ファセット614aを備える瞳ファセットミラー614によって反射される。瞳ファセットミラー614は、投影光学ユニット607の入射瞳平面の近くにあるか、または投影光学ユニット607の入射瞳平面と光学的に共役の平面にある。視野ファセットミラー613および瞳ファセットミラー614は、多数の個々のミラーから構築されている。この場合、個々のミラーへの視野ファセットミラー613の細分は、物体視野690の全体を単独で照らす視野ファセット613aのうちのそれぞれの視野ファセット613aが、それらの個々のミラーのうちの正確に1つのミラーによって表されるようなものとすることができる。あるいは、このような複数の個々のミラーを使用して、視野ファセット613aの少なくとも一部または全部を構築することも可能である。これに対応して、同じことが、瞳ファセットミラー614の瞳ファセット614aの構成にも当てはまる。瞳ファセット614aはそれぞれ、視野ファセット613aに割り当てられており、各場合において、単一の個々のミラーによってまたはこのような複数の個々のミラーによって形成することができる。EUV放射670は、25°以下とすることができる入射角で2つのファセットミラー613、614に入射する。この入射角はそれぞれ、個々のミラー613aおよび614aの対応する中心点を通って延びる、ミラー面に対する法線に関して計測される。かすめ入射(grazing incidence)も可能であり、その場合には入射角を70°以上とすることができる。瞳ファセットミラー614の助けを借りて、視野ファセットミラー613の視野ファセットが、互いに重なるように物体視野690に結像される。
図6に示されているような伝達光学ユニット(transfer optical unit)680の形態の結像光学アセンブリが存在してもよい。この場合には、瞳ファセットミラー614と、EUV放射670のビーム経路の順番に示されたミラー616、617および618を有する伝達光学ユニット680の形態の結像光学アセンブリとの助けを借りて、視野ファセットミラー613の視野ファセットが、互いに重なるように物体視野690に結像される。伝達光学ユニット680の最後のミラー618は、かすめ入射のためのミラー、すなわち「かすめ入射ミラー」とすることができる。照明光670は、複数の照明チャネルを介して放射源603から物体視野690に向かって誘導される。これらの照明チャネルにはそれぞれ、視野ファセットミラー613の1つの視野ファセット613aおよび瞳ファセットミラー614の1つの瞳ファセット614aが割り当てられており、前記瞳ファセットは視野ファセットの下流に配されている。視野ファセットミラー613の個々のミラー613aおよび/または瞳ファセットミラー614の個々のミラー614aは、視野ファセット613aに対する瞳ファセット614aの割当ての変更および対応する照明チャネル構成の変更を達成することができるように、アクチュエータ系(アクチュエータシステム)によって傾けることができるものとすることができる。視野ファセットミラー613の個々のミラーは、視野ファセット613aに対する瞳ファセット614aの割当ては一定のまま照明チャネル構成の変更を達成することができるように、アクチュエータ系によって傾けることができるものとすることができる。
【0090】
その結果、
図9に関連して説明したように、異なる照明設定、例えば、物体視野690上の照明光670の照明角の分布が異なる、異なる照明設定を設定することができる。
【0091】
本発明に基づく偏光影響装置124、224、324、424、524、624は、中間焦点面612と視野ファセットミラー613の間に配置されることが好ましい。
【0092】
偏光影響装置をこのように配置することによって以下の利点が得られる。
1.)偏光影響装置によって、事実上、入射光のパワーの50%超(すなわち、フィルタリングによって除去される「不正確な」偏光方向の結果として約50%、それに2重反射の結果としての反射損が加わる)がビーム経路から除去される。系内の非常に早いところに偏光影響装置が配置された場合には、下流の全ての要素での放射ローティングが大幅に低減し、このことは、寿命態様および熱的態様などの効果に有利な影響を与える。
2.)下流の光混合の結果として、偏光影響装置の下流の可能な遮光が「ウォシュアウトされ」、このことは、レチクルの視野照明の均一性に対して都合のよい影響を有する。
【0093】
しかしながら、他の配置領域も可能である。理想的には、偏光影響装置124、224、324、424、524、624は、物体平面606にあまり近くない領域に配置されるべきである。これは、そのように配置されていなければ、可能な残留遮光が、視野照明の均一性に不利な影響を与える可能性があるためである。さらに、発散があまり大きくない領域への配置が好ましいが、これは必須ではない。特に、放射源603と中間焦点面612の間に偏光影響装置124、224、324、424、524、624を配置することもできる。この配置は、上で論じた中間焦点面612と視野ファセットミラー613の間に配置するのと同じ利点を可能にする。特に、視野ファセットミラー613と瞳ファセットミラー614の間に偏光影響装置124、224、324、424、524、624を配置することもできる。特に、瞳ファセットミラー614の下流に偏光影響装置124、224、324、424、524、624を配置することもできる。
【0094】
一実施形態によれば、投影露光装置601は、光学系を備える照明系602を備え、この光学系は、少なくとも1つの第1の2重反射面ユニットおよび1つの第2の2重反射面ユニット128、228、328、428、528、728を有する少なくとも1つの偏光影響装置124、224、324、424、524、624を備える。この少なくとも2つの2重反射面ユニットはそれぞれ、第1の反射面128.1、228.1、328.1、428.1、528.1および第2の反射面128.2、228.2、328.2、428.2、528.2を有する。同じ2重反射面ユニット内で、各場合において、第1の反射面と第2の反射面とは、距離d1を隔てて、互いに対して0°±10°の角度で直接に隣り合わせに配置されている。第1の2重反射面ユニットの第1の反射面と第2の2重反射面ユニットの第2の反射面とは、距離d2を隔てて、互いに対して0°±10°の角度で直接に隣り合わせに配置されている。光学系の動作中、第1の反射面に入射する光125、225、325、425、525は、第1の反射面と43°±10°の角度をなす。光学系の動作中、第1の2重反射面ユニットの第1の反射面に入射する光は、第2の2重反射面ユニットの第2の反射面に向かって反射される。距離d1およびd2に関しては、d2>5×d1が真である。
【0095】
このような小さな距離d1の結果、偏光影響装置の下流のビーム経路の望ましくない遮光が低減される。偏光影響装置の結果としての望ましくない遮光が低減されているため、非偏光動作を可能にするためにビーム経路から偏光影響装置が除去された場合でも、光学系内の光分布は実質的に変化しない。さらに、その過程で光分布を変化させることなくビーム経路から反射面が除去されるため、偏光影響装置の除去は、より高い「透過率」での非偏光動作を可能にする。さらに、距離d1しか離れていないこれらの2つの反射面は単一の光学要素に、すなわち単一の光学要素の前面と後面に適用されているため、偏光影響装置の製造性が単純化される。その結果として、より低コストの支出での製造が達成される。偏光影響装置の結果としての遮光が低減されることにより、偏光動作中の「有効透過率」が増大する。
【0096】
図7は、照明系702の代替照明光学ユニットを備える、米国特許出願公開第2011/0001947号から知られている投影露光装置701を示す。放射源703を出たEUV放射770はコレクタ711によって集束する。コレクタ711の下流で、EUV放射770は、中間焦点面712を通過した後に、鏡面反射器764を目的に合わせて照らす役目を果たすビーム成形(beam-shaping)ファセットミラー763に入射する。中間焦点面712とファセットミラー763の間に、2重反射面ユニット728を備える本発明に基づく偏光影響装置724が配置されている。ビーム成形ファセットミラー763および鏡面反射器764によって、EUV放射770は、EUV放射770が物体平面706の物体視野790を照らすように成形され、その結果として、投影光学ユニットの
図7には示されていないレチクルの下流に配された瞳平面765に、例えば
図9に示されているような、境界が円形の照らされた所定の瞳照度分布、すなわち対応する照明設定が生じる。鏡面反射器764の効果は、米国特許出願公開第2006/0132747号に詳細に記載されている。鏡面反射器764の反射面は、個々のミラーに細分されている。照明要件に応じて、鏡面反射器764のこれらの個々のミラーはグループ化されて、個々のミラーグループ、すなわち鏡面反射器764のファセットを形成する。個々のミラーはそれぞれ照明チャネルを形成し、この照明チャネルは、各場合において、単独でレチクル視野を完全に照らさすことはない。全ての照明チャネルの総体だけが、レチクル視野の完全で均質な照明をもたらす。鏡面反射器764の個々のミラーおよび/またはビーム成形ファセットミラー763のファセットは、異なる視野照明および瞳照明を設定することができるように、アクチュエータ系によって傾けることができるものとすることができる。
【0097】
本発明に基づく偏光影響装置124、224、324、424、524、724は、中間焦点面712とファセットミラー763の間に配置されることが好ましい。
【0098】
偏光影響装置をこのように配置することによって以下の利点が得られる。
1.)偏光影響装置によって、事実上、入射光のパワーの50%超(すなわち、フィルタリングによって除去される「不正確な」偏光方向の結果として約50%、それに2重反射の結果としての反射損が加わる)がビーム経路から除去される。系内の非常に早いところに偏光影響装置が配置された場合には、下流の全ての要素での放射ローティングが大幅に低減し、このことは、寿命態様および熱的態様などの効果に有利な影響を与える。
2.)下流の光混合の結果として、偏光影響装置の下流の可能な遮光が「ウォシュアウトされ」、このことは、レチクルの視野照明の均一性に対して都合のよい影響を有する。
【0099】
しかしながら、他の配置領域も可能である。理想的には、偏光影響装置124、224、324、424、524、724は、物体平面706にあまり近くない領域に配置されるべきである。これは、そのように配置されていなければ、可能な残留遮光が、視野照明の均一性に不利な影響を与える可能性があるためである。さらに、発散があまり大きくない領域への配置が好ましいが、これは必須ではない。特に、放射源703と中間焦点面712の間に偏光影響装置124、224、324、424、524、724を配置することもできる。この配置は、上で論じた中間焦点面712とファセットミラー763の間に配置するのと同じ利点を可能にする。特に、ファセットミラー763と鏡面反射器764の間に偏光影響装置124、224、324、424、524、724を配置することもできる。特に、鏡面反射器764の下流に偏光影響装置124、224、324、424、524、724を配置することもできる。特に、鏡面反射器764と物体視野790の間に偏光影響装置124、224、324、424、524、724を配置することもできる。
【0100】
一実施形態によれば、投影露光装置701は、光学系を備える照明系702を備え、この光学系は、少なくとも1つの第1の2重反射面ユニットおよび1つの第2の2重反射面ユニット128、228、328、428、528、728を有する少なくとも1つの偏光影響装置124、224、324、424、524、624を備える。この少なくとも2つの2重反射面ユニットはそれぞれ、第1の反射面128.1、228.1、328.1、428.1、528.1および第2の反射面128.2、228.2、328.2、428.2、528.2を有する。同じ2重反射面ユニット内で、各場合において、第1の反射面と第2の反射面とは、距離d1を隔てて、互いに対して0°±10°の角度で直接に隣り合わせに配置されている。第1の2重反射面ユニットの第1の反射面と第2の2重反射面ユニットの第2の反射面とは、距離d2を隔てて、互いに対して0°±10°の角度で直接に隣り合わせに配置されている。光学系の動作中、第1の反射面に入射する光125、225、325、425、525は、第1の反射面と43°±10°の角度をなす。光学系の動作中、第1の2重反射面ユニットの第1の反射面に入射する光は、第2の2重反射面ユニットの第2の反射面に向かって反射される。距離d1およびd2に関しては、d2>5×d1が真である。
【0101】
このような小さな距離d1の結果、偏光影響装置の下流のビーム経路の望ましくない遮光が低減される。偏光影響装置の結果としての望ましくない遮光が低減されているため、非偏光動作を可能にするためにビーム経路から偏光影響装置が除去された場合でも、光学系内の光分布は実質的に変化しない。さらに、その過程で光分布を変化させることなくビーム経路から反射面が除去されるため、偏光影響装置の除去は、より高い「透過率」での非偏光動作を可能にする。さらに、距離d1しか離れていないこれらの2つの反射面は単一の光学要素に、すなわち単一の光学要素の前面と後面に適用されているため、偏光影響装置の製造性が単純化される。その結果として、より低コストの支出での製造が達成される。偏光影響装置の結果としての遮光が低減されることにより、偏光動作中の「有効透過率」が増大する。
【0102】
上に記載された全ての実施形態では、偏光影響装置が、既存の投影露光装置内において、既存の投影露光装置に対する基本的変更の必要なしにレトロフィット可能であるように構成されている。
【符号の説明】
【0103】
122、222、322、422、522 光伝搬方向と直交する面
124、224、324、424、524、624、724 偏光影響装置
125、225、325、425、525 入射光
128、228、328、428、528、728 2重反射面ユニット
128.1、228.1、328.1、428.1、528.1 第1の反射面
128.2、228.2、328.2、428.2、528.2 第2の反射面
130、230、330、430、530 反射光
531c.3w、531e.3w 偏光影響装置がない場合のビーム経路
155、355、455、555 方位面1(「水平」)
156、356、456、556 方位面2(「垂直」)
558c、558e ビームオフセットのない平面
226、227 遮光領域
454b 面法線
457a、457b、557c 光伝搬方向に対して平行な側面
601、701 投影露光装置
602、702 照明系
603、703 放射源
604 照明光学ユニット
606、706 物体平面
607 投影光学ユニット
608 像視野
609、709 像平面
611、711 コレクタ
612、712 中間焦点面
613 視野ファセットミラー
613a 視野ファセット
614 瞳ファセットミラー
614a 瞳ファセット
616、617、618 伝達光学ユニットのミラー
670、770 EUV放射
680 伝達光学ユニット
690、790 物体視野
763 ビーム成形ファセットミラー
764 鏡面反射器
765 瞳平面
α 面法線と方位面1の間の角度
β 面法線と入射光の間の角度
γ 入射光と方位面1の間の角度
δ 第1の広がり方向と入射光の間の角度
φ 補正角
d1 反射面間の距離
d2 反射面間の距離
L 反射面の大きさ