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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-17
(45)【発行日】2024-10-25
(54)【発明の名称】レーザ装置、及び波長異常検出方法
(51)【国際特許分類】
   H01S 3/00 20060101AFI20241018BHJP
   H01S 3/139 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
H01S3/00 G
H01S3/139
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020205165
(22)【出願日】2020-12-10
(65)【公開番号】P2022092380
(43)【公開日】2022-06-22
【審査請求日】2023-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】大関 衡和
(72)【発明者】
【氏名】石川 純平
(72)【発明者】
【氏名】松浦 敏晋
【審査官】佐藤 美紗子
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-307997(JP,A)
【文献】特表平02-503731(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 3/00-4/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を発振するレーザチューブと、
前記レーザチューブは、温度制御電流を制御することで内部の温度を所定温度に維持する恒温装置に設置され、
前記温度制御電流に基づいて、前記レーザチューブが設置される環境の環境温度に対応する前記レーザ光の波長を検出する波長変化検出部と、
前記波長変化検出部で検出された検出波長が所定の許容範囲外となる波長異常を検出する異常検出部と、
を備えることを特徴とするレーザ装置。
【請求項2】
レーザ光を発振するレーザチューブと、
前記レーザチューブが設置される環境の環境温度に対応する前記レーザ光の波長を検出する波長変化検出部と、
前記波長変化検出部で検出された検出波長が所定の許容範囲外となる波長異常を検出する異常検出部と、
内部の温度が所定温度に維持され、前記内部に前記レーザチューブが配置される恒温装置と、
前記恒温装置の外部に設けられて前記環境温度を測定する温度測定部と、を有し、
前記波長変化検出部は、前記温度測定部により測定される前記環境温度に対応する前記レーザ光の波長を検出する
ことを特徴とするレーザ装置。
【請求項3】
請求項1または請求項に記載のレーザ装置において、
前記レーザ光を第一偏光方向の第一モード光と、第二偏光方向の第二モード光とに分離し、前記第一モード光及び前記第二モード光の光強度をそれぞれ検出する光検出部と、
前記レーザチューブの共振器長を調整する調整部と、
前記第一モード光及び前記第二モード光の光強度比が一定となるように、前記調整部を制御する波長安定化制御部と、
を備えることを特徴とするレーザ装置。
【請求項4】
レーザ光を出力するレーザチューブを備えたレーザ装置の波長異常検出方法であって、
前記レーザチューブは、温度制御電流を制御することで内部の温度を所定温度に維持する恒温装置に設置され、
前記温度制御電流に基づいて前記レーザチューブが設置される環境の環境温度に応じた前記レーザ光の波長を検出し、検出した前記波長が、所定の許容範囲外となる波長異常を検出する
ことを特徴とする波長異常検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光を出力するレーザ装置、及び前記レーザ装置の波長異常検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、He-Neレーザ光を用いたレーザ計測装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載のレーザ計測装置は、レーザチューブからレーザ光を出射させ、ズーム式ビームエキスパンダを通過させて所望のビーム径とする。そして、そのレーザ光を干渉計で測定光と参照光に分岐させ、参照光を直接または参照面で反射させてディテクタに入射させ、測定光を測長対象で反射させた後にディテクタに入射させる。これにより、測定光と参照光とが合成されて干渉光が形成され、ディテクタで干渉光の明暗を検出することで、測定対象の位置を計測する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平08-297010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、633nmのHe-Neレーザ光を出力するレーザチューブは、例えばヨウ素安定化レーザ等とは異なり、内部に波長基準を有していない。したがって、レーザチューブの周囲の環境温度の変化等によって波長が変化した場合、レーザチューブ単体では、その波長の変化を検出することができない。
特に、特許文献1のようなレーザ計測装置において、レーザチューブを用いる場合、レーザ光の波長が変化すると、同じ長さであっても測定結果が変化していまい、測長の不確かさが増大するとの課題がある。
また、レーザチューブとして、温度が一定となるようにヒーター等の温度調整機構が設けられるものもある。しかしながら、レーザチューブにおいてレーザ光を出射させる端面等には、温度調整機構を設けることができないので、レーザチューブ内の温度は完全に均一にすることはできない。
【0005】
一方、633nmのHe-Neレーザ光の波長変化を検出する方法として、例えばヨウ素安定化レーザ装置等により波長が安定化された基準レーザ光を用いる方法がある。この方法は、基準レーザ光とHe-Neレーザ光とのビート周波数を測定し、ビート周波数の変化によりレーザ光の波長変化を確認する。しかしながら、この場合、波長基準となる基準レーザ光を出力するレーザ装置を別途必要とし、かつ、ビート周波数を測定するための干渉光学系も必要となるので、装置が複雑化し、コスト増加にもつながるとの課題がある。
【0006】
本発明は、簡素な構成でレーザ光の波長変動を検出可能なレーザ装置、及び波長異常検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係るレーザ装置は、レーザ光を発振するレーザチューブと、前記レーザチューブが設置される環境の環境温度に対応する前記レーザ光の波長を検出する波長変化検出部と、前記波長変化検出部で検出された検出波長が所定の許容範囲外となる波長異常を検出する異常検出部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本態様では、環境温度が変動した場合でも、波長変化検出部がその環境温度に対応するレーザ光の波長を検出し、異常検出部が、許容範囲内に検出波長が含まれるか否かを判定、つまり、波長異常があるか否かを検出する。これにより、本態様では、複雑な構成を用いず、簡素な構成で、環境温度に応じた波長異常を検出することができる。
【0009】
本態様のレーザ装置において、前記レーザチューブは、温度制御電流を制御することで内部の温度を所定温度に維持する恒温装置に設置され、前記波長変化検出部は、前記温度制御電流に基づいて、前記環境温度に対応する前記レーザ光の波長を検出することが好ましい。
本態様では、レーザチューブは、恒温装置の内部に設置される。このような恒温装置では、例えば恒温装置の外部を断熱材で覆う等によって、装置内外での熱の伝達を抑制し、ヒーター等の温度調整機構によって、恒温装置内部の温度を一定に維持するように機能する。このため、レーザチューブの温度変化や、温度分布の不均一を極力抑制することができる。
また、装置内の温度を一定に維持する恒温装置では、恒温装置の内部を一定にするために、環境温度に応じた温度制御電流により温度管理が行われる。例えば、環境温度が低い場合、恒温装置は、ヒーター等の加熱手段に温度制御電流を多く流すことで、温度を一定にするように機能する。一方、環境温度が高い場合、恒温装置は、加熱手段への温度制御電流を減らすことで、温度上昇を抑制して一定温度を維持するように機能する。
本態様では、波長変化検出部は、このような温度制御電流の調整パターンに基づいて、環境温度に応じたレーザ光の波長を検出する。このため、環境温度を測定する測定手段を別途必要とせず、より簡素な構成で、レーザ光の波長変動を検出することができる。
【0010】
本態様のレーザ装置において、前記環境温度を測定する温度測定部を有し、前記波長変化検出部は、前記温度測定部により測定される前記環境温度に対応する前記レーザ光の波長を検出することが好ましい。
本態様では、環境温度を測定する温度測定部が設けられている。このため、温度測定部により測定される環境温度に基づいて、容易にレーザ光の波長変化を検出することができる。
【0011】
本態様のレーザ装置において、前記レーザ光を第一偏光方向の第一モード光と、第二偏光方向の第二モード光とに分離し、前記第一モード光及び前記第二モード光の光強度をそれぞれ検出する光検出部と、前記レーザチューブの共振器長を調整する調整部と、前記第一モード光及び前記第二モード光の光強度比が一定となるように、前記調整部を制御する波長安定化制御部と、を備えることが好ましい。
本態様では、レーザ装置は、光検出部を備え、この光検出部は、レーザチューブから出力されたレーザ光を、第一偏光方向(例えばS偏光)の第一モード光と、第二偏光方向(例えばP偏光)の第二モード光とに分離して、各々の光強度を検出する。そして、波長安定化制御部は、光検出部で検出された第一モード光と、第二モード光との光強度比が所定値となるように、共振器長を調整する調整部を制御する。
これにより、レーザ装置から所望波長のレーザ光を出射させることができる。
【0012】
本発明に係る一態様の波長異常検出方法は、レーザ光を出力するレーザチューブを備えたレーザ装置の波長異常検出方法であって、前記レーザチューブが設置される環境の環境温度に応じた前記レーザ光の波長を検出し、検出した前記波長が、所定の許容範囲外となる波長異常を検出することを特徴とする。
これにより、本態様では、複雑な構成を用いず、簡素な構成で、環境温度に応じた波長異常を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第一実施形態のレーザ装置の概略構成を示す図。
図2】He-Neレーザのゲインカーブを示す図。
図3】恒温装置における温度制御電流のパターンを示す図。
図4】環境温度と、レーザチューブから出力されるレーザ光の波長との関係を示す図。
図5】第一実施形態におけるレーザ装置の駆動方法を示す図。
図6】第二実施形態のレーザ装置の概略構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第一実施形態]
以下、本発明に係る第一実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係るレーザ装置の概略構成を示す図である。
本実施形態のレーザ装置100は、例えば、レーザ光を用いて測定処理を行う測定装置のレーザヘッド等に搭載される。このレーザ装置100は、図1に示すように、レーザ光を出力するレーザチューブ110と、レーザ光の光強度を検出する光検出部120と、恒温装置130と、コントローラ140と、を備える。
【0015】
レーザチューブ110は、例えば、He、Neの混合気体が封入された気体レーザであり、混合気体をレーザ媒質として633nm近傍のレーザ光を出力する。このレーザチューブ110としては、一般的なHe-Neレーザチューブを用いることができる。すなわち、レーザチューブ110は、管の一方端に配置された図示略のフラットミラーと、管の他方端に配置された図示略の出力用ミラーとを備えた共振器であり、フラットミラーと出力用ミラーとの間でレーザ光を多重反射させることで、干渉により強め合った633nmのレーザ光が出射される。また、レーザチューブ110内には、例えば管端部に放電端子が設けられ、放電端子による電気放電が励起源となる。
【0016】
図2は、He-Neレーザのゲインカーブを示す図である。
本実施形態では、レーザチューブ110は、図2に示すように、ゲインカーブに従った2モードでレーザ光を発振する。つまり、レーザ光には、S偏光(第一偏光方向)の第一モード光と、P偏光(第二偏光方向)の第二モード光とが含まれる。
第一モード光及び第二モード光の光強度は、レーザチューブ110の共振器長により決定される。
【0017】
本実施形態では、レーザチューブ110に、ヒーター111が設けられている。このヒーター111は、レーザチューブ110の共振器長を調整する調整部である。すなわち、ヒーター111は、レーザチューブ110の温度を変化させることで、レーザチューブ110の熱膨張量を調整し、共振器長を変化させる。これにより、レーザチューブ110は、調整された共振器長に応じた発振波長のレーザ光を出力する。
このヒーター111は、コントローラ140に接続され、コントローラ140の制御の下で駆動し、レーザチューブ110の温度を変化させる。
【0018】
光検出部120は、レーザチューブ110から出力される第一モード光及び第二モード光を含むレーザ光の光強度を検出する。
具体的には、光検出部120は、図1に示すように、偏光ビームスプリッタ(PBS121)と、ビームスプリッタ(BS122)と、第一フォトダイオード(第一PD123)と、第二フォトダイオード(第二PD124)とを備える。
【0019】
PBS121は、レーザチューブ110から出力されたレーザ光のうち、S偏光の第一モード光を第一PD123に向かって反射させ、P偏光の第二モード光を透過させる。PBS121により反射された第一モード光は第一PD123で受光され、第一PD123から光強度に応じた電気信号がコントローラ140に出力される。
BS122は、PBS121を透過した第二モード光を、所定の比率で2つの光路に分岐させる。本実施形態では、BS122を透過した一部の第二モード光は、レーザ装置100の外部に出力され、測長等に用いられる。一方、BS122を反射した残りの第二モード光は、第二PD124で受光され、第二PD124から光強度に応じた電気信号がコントローラ140に出力される。
【0020】
恒温装置130は、レーザチューブ110、ヒーター111、光検出部120を内部に収納する収納部を備え、収納部の内部の温度を所定温度に維持する装置である。
この恒温装置130は、収納部の内部を加熱する恒温槽ヒーター131を備え、恒温槽ヒーター131に対して流す温度制御電流を調整することで、収納部の温度を一定に維持する。
【0021】
コントローラ140は、レーザ装置100の動作を制御する装置であり、図1に示すように、レーザ駆動部141、波長安定化制御部142、温度制御パターン検出部143、波長変化検出部144、及び異常検出部145等を備える。
【0022】
レーザ駆動部141は、レーザチューブ110の放電端子間に電圧を印加して放電させ、励起エネルギーをレーザチューブ110の混合気体に与えてレーザ光を発振させる。
波長安定化制御部142は、第一PD123で検出されるS偏光の第一モード光の光強度と、第二PD124で検出されるP偏光の第二モード光の光強度とに基づいて、ヒーター111の温度を調整する。例えば、第一PD123から出力される電気信号にPBS121でのS偏光の反射率に応じたゲインをかけ合せた第一値と、第二PD124から出力される電気信号にBS122での光反射率(透過率)に応じたゲインをかけ合せた第二値とが、1:1となるように、ヒーター111の温度調整を行い、第一モード光及び第二モード光の波長を変化させる。
【0023】
温度制御パターン検出部143は、恒温装置130の収納部の内部を一定温度に維持する際の温度制御電流のパターンを検出する。
図3は、恒温装置130における温度制御電流のパターンを示す図である。
恒温装置130では、収納部の温度を一定に維持するため、図3に示すような変化パターンの温度制御電流を恒温槽ヒーター131に流す。例えば、環境温度が基準温度T(例えばT=20℃)である場合に、図3(B)に示すように、ディーティー比が1/2となるようなパターンの温度制御電流を恒温槽ヒーター131に流す。これに対して、環境温度が基準温度Tよりも低い温度(T-ΔT)の場合、図3(A)に示すように、環境温度が基準温度Tとなる場合に比べて、ディーティー比を大きくした温度制御電流を流す。また、環境温度が基準温度Tよりも高い温度(T+ΔT)の場合、図3(C)に示すように、環境温度が基準温度Tとなる場合に比べて、ディーティー比を小さくして温度制御電流を流す。
【0024】
波長変化検出部144は、温度制御パターン検出部143により検出された温度制御電流に基づいて、レーザチューブ110から出射されるレーザ光の波長変化を検出する。
図4は、環境温度と、レーザチューブ110から出力されるレーザ光の波長との関係を示す図である。なお、図4において、第1波長λ1から第2波長λ2の間が、レーザチューブ110から出力されるレーザ光の波長において、誤差が許容される範囲(許容範囲)である。
【0025】
レーザチューブ110から出力されるレーザ光の波長は、図4に示すように、環境温度に応じて変化する。本実施形態では、恒温装置130は外周部が断熱材で覆われており、恒温装置130の収納部内にレーザチューブ110が収納されることで、レーザチューブ110の温度変化や、温度分布の不均一性を極力抑制することができる。しかしながら、例えばレーザ光を通過させる出射窓等には、断熱材を設けることができないので、恒温装置130の内部を完全に均一にして所望温度に維持することは困難である。したがって、恒温装置130が設けられない場合に比べると環境温度の影響は低いが、恒温装置130内にレーザチューブ110を収納する場合であっても、図4に示すような、環境温度の変化によるレーザ光の波長変動が起こる。
【0026】
ここで、恒温装置130における温度制御電流のパターンと、環境温度とは、上述したように相関があり、本実施形態では、温度制御電流のデューティー比に基づいて環境温度を予測し、その環境温度に対応するレーザ光の波長を検出する。
例えば、環境温度を変化させた際の、温度制御電流のディーティー比と、レーザ光の波長とを予め測定しておき、コントローラ140に設けられたメモリ146に、温度-波長相関データとして予め記憶しておく。
そして、波長変化検出部144は、温度制御パターン検出部143により検出される温度制御電流のデューティー比に対応したレーザ光の波長を温度-波長相関データから検出する。
【0027】
異常検出部145は、波長変化検出部144により検出された検出波長が、許容範囲内であるか否かを判断することで、レーザチューブ110から出力されるレーザ光の波長が異常であるか否かを判定する。
そして、異常検出部145は、検出波長が波長異常であると判定すると、波長異常を知らせる報知情報を出力する。例えば、図示略のスピーカーから警告音を発生させたり、図示略のディスプレイに警告情報を表示させたりする。
【0028】
[レーザ装置100の波長異常検出方法]
次に、上記のようなレーザ装置100の波長異常検出方法について説明する。
図5は、レーザ光の波長異常検出方法を含むレーザ装置100の駆動方法を示すフローチャートである。
レーザ装置100では、図5に示すように、コントローラ140のレーザ駆動部141が、レーザチューブ110に駆動電圧を印加して放電端子間に放電を発生させ、レーザチューブ110からレーザ光を出射させる(ステップS1)。
この際、波長安定化制御部142は、第一PD123で検出される第一モード光の光強度と、第二PD124で検出される第二モード光の光強度との強度比を算出し、当該強度比が所定値(例えば1:1)となるように、ヒーター111の温度を調整する。
【0029】
次に、温度制御パターン検出部143は、恒温装置130において収納部の内部の温度を一定に維持するための温度制御電流の波形パターン(ディーティー比)を検出する(ステップS2)。
そして、波長変化検出部144は、検出したディーティー比に基づいて、レーザチューブ110から出力されるレーザ光の波長を検出する(ステップS3)。
【0030】
この後、異常検出部145は、ステップS3で検出された検出波長が、許容範囲内であるか否かを判定する(ステップS4)。
ステップS4においてNoと判定された場合、異常検出部145は、例えば警告音を鳴らしたり、波長異常を知らせる画像情報を図示略のディスプレイに表示させたりすることで、レーザ光の波長異常をユーザに報知する(ステップS5)。
ステップS4でYesと判定された場合は、ステップS2に戻り、レーザ光の出力を継続する。
【0031】
[本実施形態の作用効果]
本実施形態のレーザ装置100は、He-Neレーザ光を出力するレーザチューブ110を備え、コントローラ140の波長変化検出部144は、環境温度に応じたレーザ光の波長を検出し、異常検出部145は、検出した波長が許容範囲内であるか否かを検出し、許容範囲外である場合に、波長異常を知らせる警告を出力する。
このため、例えばヨウ素安定化レーザ光源等の基準波長のレーザ光を出力する基準レーザ装置や、ビート周波数を検出するための干渉光学系等をレーザ装置100に設けることなく、レーザチューブ110から出力されるレーザ光の波長異常を、簡素な構成で検出することができる。
【0032】
また、本実施形態では、波長変化検出部144は、恒温装置130において収納部の温度を一定に維持するための温度制御電流に基づいて、環境温度に応じたレーザ光の波長を検出する。
このため、環境温度を測定するための測定手段が不要であり、より簡素な構成で、レーザ光の波長変動を検出することができる。
【0033】
本実施形態のレーザ装置100では、レーザチューブ110から出力されるレーザ光を第一モード光(S偏光)と、第二モード光(P偏光)とに分離し、光検出部120でこれらの第一モード光及び第二モード光の光強度をそれぞれ検出する。そして、コントローラ140の波長安定化制御部142は、光強度比が所定比となるように、ヒーター111によるレーザチューブ110の温度を調整して共振器長を調整する。
これにより、本実施形態では、レーザ装置100から例えば633nmのレーザ光を安定して出射させることができる。
また、He-Neレーザ光を出力するレーザ装置100では、レーザ光の出力値が比較的低い。このため、波長を633nmに安定化させた後は、BS122を移動させて、PBS121を透過した第二モード光の全部を外部に出力するようにしてもよい。しかしながら、このような構成とする場合、第一モード光と第二モード光の光強度比が不明となり、環境温度の変化等によってレーザ光の波長が変動する場合がある。これに対して、本実施形態では、上記のように、波長変化検出部144及び異常検出部145により、環境温度に応じたレーザ光の波長変動を検出することができ、光検出部120において、第一モード光と第二モード光との光強度比が不明である場合でも、レーザ光の波長が許容範囲内に収まっているか否かを判定することができる。
【0034】
[第二実施形態]
上記第一実施形態では、波長変化検出部144は、恒温槽ヒーター131への温度制御電流のパターンに基づいて、環境温度が変動した際のレーザ光の波長を検出した。これに対して、第二実施形態では、環境温度を直接測定する点で上記第一実施形態と相違する。なお、以降の説明にあたり、既に説明した構成については同符号を付し、その説明を省略又は簡略化する。
【0035】
図6は、本実施形態のレーザ装置100Aの概略構成を示す概略図である。
本実施形態では、図6に示すように、レーザ装置100Aの例えば外装筐体に、環境温度を測定する温度測定部150が設けられている。
また、コントローラ140は、例えば図4に示すような環境温度とレーザ光の波長とを関連付けた温度-波長相関データをメモリ146に記憶する。
このような本実施形態では、波長変化検出部144は、温度測定部150により検出される環境温度と、温度-波長相関データとに基づいて、環境温度に対するレーザ光の波長を検出する。そして、異常検出部145は、検出されたレーザ光の波長が許容範囲外となる場合に、波長異常を検出して、波長異常を警告する警告報知を行う。
【0036】
このようなレーザ装置100Aでは、第一実施形態に比べて、温度測定部150の構成を別途必要とするが、当該温度測定部150により測定される正確な環境温度に基づいて、容易かつ精度良くレーザ光の波長変化を検出することができる。
【0037】
[変形例]
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0038】
例えば、第一実施形態及び第二実施形態では、異常検出部145は、波長変化検出部144により検出される波長が許容範囲外である場合、音声や画像によってユーザに警告報知を行う例を示した。
これに対して、異常検出部145は、波長変化検出部144により検出された波長が許容範囲外である場合に、波長異常を知らせる信号を波長安定化制御部142に出力するように制御してもよい。この場合、波長安定化制御部142は、第一モード光と第二モード光の光強度比を参照して、再度レーザ光の波長を調整し直すように制御してもよい。
また、異常検出部145は、波長変化検出部144により検出された波長が許容範囲外である場合に、波長異常を知らせる信号をレーザ駆動部141に出力し、レーザ駆動を停止させてもよい。
【0039】
第一実施形態では、恒温装置130は、環境温度に応じて、恒温槽ヒーター131に流す温度制御電流のディーティー比を変更する例を示した。これに対して、恒温装置130は、環境温度に応じて、恒温槽ヒーター131に流す電流値を変化させる、つまり、恒温槽ヒーター131に印加する電圧を変更することで、内部の温度を一定に維持する構成としてもよい。この場合、温度制御パターン検出部143は、恒温槽ヒーター131に流す温度制御電流の電流値を検出し、波長変化検出部144は、温度制御電流の電流値に基づいて、レーザ光の波長を検出すればよい。
【0040】
第一実施形態において、光検出部120に配置されるBS122は、上述したように、移動可能に設けられていてもよい。この場合、上述したように、レーザチューブ110の波長を調整する際には、BS122を光路内に配置させ、波長調整終了後に、BS122を光路外に退避させることができ、波長調整後にレーザ装置100から外部に出力される第二モード光の光量を増大させることができる。
また、この場合、BS122の代わりに反射ミラーを用いてもよい。つまり、レーザ光の波長を所望波長に合わせる波長調整を実施する際には、図1のBS122の位置に反射ミラーを配置して、第二モード光を第二PD124に反射させる。また、波長安定化制御部142による波長調整が終了した後は、反射ミラーを退避させて、全ての第二モード光をレーザ装置100の外部に出力する。この場合でも、レーザ装置100から出力させる第二モード光の光強度を向上させることができる。また、レーザチューブ110から出力させるレーザ光の波長を安定化させる際にも、第二モード光の正確な光量を測定できる。
【0041】
上記実施形態では、He及びNeの混合ガスが封入されるレーザチューブ110を例示したが、これに限定されない。本発明は、波長基準を有さない他のレーザ装置に対しても適用することができ、例えば、アルゴンが封入されたレーザチューブや、炭酸ガスが封入されたレーザチューブが設けられたレーザ装置においても本発明を適用することができる。
【0042】
その他、本発明の実施の際の具体的な構造は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造等に適宜変更できる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、レーザ光を出力するレーザ装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0044】
100,100A…レーザ装置、110…レーザチューブ、111…ヒーター(調整部)、120…光検出部、130…恒温装置、131…恒温槽ヒーター、140…コントローラ、141…レーザ駆動部、142…波長安定化制御部、143…温度制御パターン検出部、144…波長変化検出部、145…異常検出部、146…メモリ、150…温度測定部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6