(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-17
(45)【発行日】2024-10-25
(54)【発明の名称】容器入り即席ノンフライ中華麺製品及び容器入り即席ノンフライ中華麺製品の保存中のノンフライ中華麺麺塊の変色抑制方法。
(51)【国際特許分類】
A23L 7/109 20160101AFI20241018BHJP
【FI】
A23L7/109 A
(21)【出願番号】P 2021059218
(22)【出願日】2021-03-31
【審査請求日】2023-10-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000226976
【氏名又は名称】日清食品ホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】楠田 友妃菜
(72)【発明者】
【氏名】窪田 一輝
(72)【発明者】
【氏名】吉沼 俊男
【審査官】水野 浩之
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-015657(JP,A)
【文献】特公昭49-037257(JP,B1)
【文献】特開平07-067563(JP,A)
【文献】特開昭53-121954(JP,A)
【文献】国際公開第2013/172049(WO,A1)
【文献】特開2021-029209(JP,A)
【文献】特開2012-235746(JP,A)
【文献】特開平08-051946(JP,A)
【文献】Hot & Sour Soup Noodle with Black Vinegar,Mintel GNPD,[retrieved on 2024.09.27],[online],2020年09月,ID: 8149489,Retrieved from the Internet: <URL: https://portal.mintel.com>
【文献】Hot & Sour Noodle with Soft Egg Soup,Mintel GNPD,[retrieved on 2024.09.27],[online],2019年04月,ID: 6517297,Retrieved from the Internet: <URL: https://portal.mintel.com>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
Mintel GNPD
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(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器入り即席ノンフライ中華麺製品であって、
前記容器入り即席ノンフライ中華麺製品は、容器内にノンフライ中華麺麺塊と、粉末スープと、が直充填されており、
前記粉末スープは、前記ノンフライ中華麺麺塊の麺重1gに対して、酢酸または/及び酢酸塩を酢酸として1mg以上含むことを特徴とする容器入り即席ノンフライ中華麺製品。
【請求項2】
前記ノンフライ中華麺麺塊は、前記ノンフライ中華麺麺塊の主原料粉の重量に対して0.5~2重量%の炭酸ナトリウムまたは/及び炭酸カリウムを含むことを特徴とする請求項1記載の容器入り即席ノンフライ中華麺製品。
【請求項3】
容器入り即席ノンフライ中華麺製品の保存中のノンフライ中華麺麺塊の変色抑制方法であって、
容器内にノンフライ中華麺麺塊と、前記ノンフライ中華麺麺塊の麺重1gに対して、酢酸または/及び酢酸塩を酢酸として1mg以上含む粉末スープと、を直充填することを特徴とする容器入り即席ノンフライ中華麺製品の保存中のノンフライ中華麺麺塊の変色抑制方法。
【請求項4】
前記ノンフライ中華麺麺塊は、前記ノンフライ中華麺麺塊の主原料粉の重量に対して0.5~2重量%の炭酸ナトリウムまたは/及び炭酸カリウムを含むことを特徴とする請求項3記載の容器入り即席ノンフライ中華麺製品の保存中のノンフライ中華麺麺塊の変色抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保存中のノンフライ中華麺麺塊の変色が抑制された容器入り即席ノンフライ中華麺製品及び容器入り即席ノンフライ中華麺製品の保存中のノンフライ中華麺麺塊の変色抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、お湯等を入れることで容易に復元し、喫食可能となるような、カップなどの容器入りの即席麺や即席スープ、即席ライスなどの即席食品が多数上市されている。この内、容器入り即席麺は、油で乾燥したフライ麺と熱風など油以外で乾燥したノンフライ麺に大別できる。フライ麺は、一般的にα化処理した麺を150℃前後の油で1~5分程度フライ処理して乾燥させた麺である。一方、ノンフライ麺は、一般的にα化した麺を、油で揚げる以外の乾燥方法により乾燥させた麺であり、幾つか方法があるが、70~100℃程度で風速5m/s以下程度の熱風を当てて30分から90分程度乾燥させる熱風乾燥方法が一般的である。
【0003】
熱風乾燥によるノンフライ麺は、フライ麺よりも麺線が緻密であり、より生麺的な食感を有する。また、ノンフライ麺は、フライ麺よりも製造時に変色しにくいため、ノンフライ中華麺においては、かんすいと呼ばれる炭酸塩やリン酸塩などのアルカリ剤を多く添加することができ、フライ中華麺よりも中華麺の風味が優れている。しかしながら、ノンフライ中華麺においても、かんすいを多く添加すると保存中に経時的に麺が変色(褐変)するため、かんすいの添加量は制限されている。
【0004】
ノンフライ中華麺の変色防止方法としては、特許文献1~3の方法が挙げられる。何れも優れた方法であるが、ノンフライ中華麺自体の製造工程や配合を変えることでノンフライ中華麺の変色を防止する方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5389874号公報
【文献】特開2018-166470号公報
【文献】特開2021-29209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、保存中のノンフライ中華麺麺塊の変色が抑制された容器入り即席ノンフライ中華麺製品及び容器入り即席ノンフライ中華麺製品の保存中のノンフライ中華麺麺塊の変色抑制方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発明者らは、容器入り即席ノンフライ中華麺製品の保存中の経時的な麺の変色を抑える技術について鋭意研究した結果、偶然にも、麺の性状を変えるのではなく、直充填する粉末スープがノンフライ麺麺塊の保存中の経時的な麺の変色を抑えうる可能性があることを発見した。そこで、さらに直充填する粉末スープについて鋭意研究した結果、本発明を見出した。
【0008】
すなわち、容器入り即席ノンフライ中華麺製品であって、前記容器入り即席ノンフライ中華麺製品は、容器内にノンフライ中華麺麺塊と、粉末スープと、が直充填されており、前記粉末スープは、前記ノンフライ中華麺麺塊の麺重1gに対して、酢酸または/及び酢酸塩を酢酸として1mg以上含むことを特徴とする容器入り即席ノンフライ中華麺製品。である。
【0009】
また、本発明に係る即席ノンフライ中華麺製品のノンフライ中華麺麺塊は、ノンフライ中華麺麺塊の原料である主原料粉の重量に対して、かんすいである炭酸ナトリウムまたは/及び炭酸カリウムを0.5~2重量%の含むことが好ましい。
【0010】
また、本発明に係る即席ノンフライ中華麺製品の保存中のノンフライ中華麺麺塊の変色抑制方法としては、容器内にノンフライ中華麺麺塊と、ノンフライ中華麺麺塊の麺重1gに対して、酢酸または/及び酢酸塩を酢酸として1mmg以上含む粉末スープと、を直充填する方法が好ましい。
【0011】
また、、本発明に係る即席ノンフライ中華麺製品の保存中のノンフライ中華麺麺塊の変色抑制方法のノンフライ中華麺麺塊は、ノンフライ中華麺麺塊の原料である主原料粉の重量に対して、かんすいである炭酸ナトリウムまたは/及び炭酸カリウムを0.5~2重量%の含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、保存中のノンフライ中華麺麺塊の変色が抑制された容器入り即席ノンフライ中華麺製品及び容器入り即席ノンフライ中華麺製品の保存中のノンフライ中華麺麺塊の変色抑制方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の記載に限定されるものではない。
【0014】
(容器)
本発明に係る容器入り即席ノンフライ中華麺製品の容器の形状は、どんぶり型、カップ型、皿型、袋型の何れの形状でもよい。袋型の場合は、そのまま喫食できるものでも、別の容器に移し替えて喫食できるものでもよい。また、本発明に係る容器入り即席ノンフライ中華麺製品の容器の材質は特に限定はなく、発泡ポリスチレン製、ポリプロピレン製、アルミ入りまたはアルミ蒸着したナイロン及びポリプロピレン製などのプラスチック製容器や紙製容器が挙げられる。袋型以外の容器の場合は、アルミ入りの紙製やポリプロピレン製の蓋をして、シールすることで密封し、容器入り即席ノンフライ中華麺製品とする。容器が袋型の場合は、シールすることに密封し、容器入り即席ノンフライ中華麺製品とする。
【0015】
(ノンフライ中華麺麺塊)
本発明に係るノンフライ中華麺麺塊は、かんすいを含む中華麺をフライ乾燥以外の乾燥方法で乾燥した乾燥麺塊である。本発明に係るノンフライ中華麺麺塊は、具体的には下記の方法により製造することができる。
【0016】
1.麺原料配合
本発明に係るノンフライ中華麺麺塊の製造方法においては、通常の即席麺の原料が使用できる。すなわち、主原料粉としては、小麦粉、大麦粉及び米粉等の穀粉、並びに馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、小麦澱粉及びコーンスターチ等の各種澱粉が挙げられ、単独で使用しても、または混合して使用してもよい。前記澱粉として、生澱粉、α化澱粉、並びにアセチル化澱粉、エーテル化澱粉、及び架橋澱粉等の加工澱粉を使用することもできる。
【0017】
また、本発明では、これら主原料粉に対して即席麺の製造において一般に使用されている食塩、かんすいなどのアルカリ剤、各種増粘剤、グルテン、卵白、乳化剤などの麺質改良剤、食用油脂、カロチン色素等の各種色素及び保存料等を添加することができる。これらは、主原料粉と一緒に粉体で添加しても、練り水に溶かすか懸濁させて添加してもよい。
【0018】
特に、本発明は中華麺であるため、かんすいを含む。かんすいは、炭酸ナトリウムや炭酸カリウムなどの炭酸塩、リン酸ナトリウムなどのリン酸塩、ポリリン酸ナトリウムなどの重合リン酸塩が挙げられるが、中華麺としての風味、食感の点で、炭酸ナトリウムや炭酸カリウムなどの炭酸塩を含むことが好ましい。しかしながら、炭酸塩は、製造直後の中華麺独特の風味、弾力のある食感が得れる上で好ましいが、保存中に麺が変色(褐変)しやすく、また食感も硬脆くなり劣化しやすい。本発明におけるノンフライ中華麺の炭酸塩の配合量としては、主原料粉の重量に対して、0.5~2.0重量%の範囲が好ましい。0.5重量%未満であるとそもそも保存中の変色が起きにくく、2.0重量%よりも多いと、炭酸塩のえぐみが強く、また、保存中の変色度合いが強くなりすぎる。
【0019】
2.混捏工程
本発明に係るノンフライ中華麺麺塊の製造方法においては、まず、主原料などの原料粉と練り水を混捏することにより、麺生地(ドウ)を作製する。ドウの作製方法は、常法に従って行えばよい。すなわち、バッチミキサー、フロージェットミキサー、真空ミキサー等で、主原料粉と練り水とが均一に混ざるように混捏すればよく、そぼろ状のドウを作製すればよい。
【0020】
3.製麺工程
次いで作製したドウから麺線を作製する。作製方法としては、常法に従って行えばよく、エクストルーダ等を用いてドウを押し出して麺線を作製する方法や、ドウをロールにより粗麺帯とした後、複合等により麺帯化し、さらにロールにより複数回圧延し、所定の麺帯厚とした後、切刃と呼ばれる切出しロールにより麺帯を切出し、麺線を作製する方法が挙げられる。麺帯を作製してから麺線を作製する場合、エクストルーダを用いて麺帯を作製した後、圧延、切出しを行ってもよく、また、複数の麺帯を合わせて多層構造を持つ麺帯を作製した後、圧延、切出しを行ってもよい。エクストルーダ等を用いて押出し麺帯又は押出し麺線を作製する場合は、減圧下で行うことが好ましい。
【0021】
4.蒸煮工程
製麺工程で得られた麺線は、必要により蒸煮し麺線をα化する。蒸煮条件は、麺の種類、麺の太さにより好ましい条件が異なるため、目的とする食感に合わせて、好ましい条件を適宜設定すればよい。蒸煮の方法としては、ボイルや飽和水蒸気による加熱だけでなく、過熱水蒸気により加熱することもでき、シャワーや浸漬などの水分補給工程を組み合わせることもできる。調理された麺は必要により、調味液浸漬やほぐれ剤の添加を行うこともできる。
【0022】
5.乾燥工程
次いで1食分に麺線をカット、計量し、リテーナと呼ばれる乾燥用型枠に充填し、乾燥する。ノンフライ麺における乾燥方法は、熱風乾燥、高温熱風乾燥、過熱蒸気乾燥、マイクロウェーブ乾燥、真空凍結乾燥など公知の方法により乾燥すればよい。熱風乾燥や高温熱風乾燥などの熱風により乾燥する方法が一般的であり、乾燥温度は60~150℃で、風速1~70m/sの条件で乾燥することが好ましい。乾燥工程は、複数の条件を組み合わせて行ってもよく、乾燥後の水分が14.5重量%以下となるように乾燥すればよい。熱風乾燥条件は特に限定しないが、60~150℃程度の熱風で乾燥すればよい。風速についても特に限定はなく、1~70m/sの範囲で乾燥すればよい。また、熱風乾燥工程においては、複数の乾燥条件を組み合わせて熱風乾燥を行うこともよく、乾燥後の水分が14.5重量%以下、好ましくは3~12重量%となるように乾燥すればよい。乾燥終了後、麺塊を冷却してノンフライ乾燥麺塊とする。
【0023】
(粉末スープ)
本発明に係る粉末スープは、容器内にノンフライ中華麺麺塊と共に直充填できる粉末スープであれば特に限定はない。
【0024】
本発明に係る粉末スープは、酢酸または/及び酢酸ナトリウムを含む。酢酸及び酢酸ナトリウムは、酸味料として使用されるが、粉末スープ中に配合されることで、ノンフライ麺塊の変色を抑制できる。詳しい原理については不明であるが、ノンフライ麺塊と共に容器に直充填されることにより、ノンフライ中華麺麺塊の水分上昇を抑制するとともに、保存中に酢酸が揮発してノンフライ中華麺麺塊のpHを下げることにより、ノンフライ麺塊の保存中の変色を抑制することができる。また、ノンフライ中華麺麺塊のpHが低下することにより、保存中の食感の劣化も抑制できる。このような効果は、同様に酸味料であるクエン酸及びクエン酸ナトリウムにはなく、揮発性の高い酢酸または/及び酢酸ナトリウム特有の効果である。
【0025】
本発明に係る粉末スープ中には、酢酸または/及び酢酸ナトリウムを酢酸としてノンフライ中華麺麺塊の麺重1gあたり、1mg以上含むことが好ましい。より好ましくは2mg以上である。添加量が増えると効果が高くなるが、酸味料であるため、スープの酸味が強くなり、サンラータンなどの酸味のあるスープを除き、別途のアルカリ性の中和剤を添加する必要がある。よって、好ましい上限としては、4mg以下がこのましい。
【0026】
また、本発明に係る粉末スープのpHは6以下であることが好ましい。pHによる保存中の変色抑制は、数値上変わらない傾向であるが、食感に関しては、粉末スープのpHが低い方が保存中の食感劣化は抑制される。より好ましくはpH5.7以下である。しかしながら、酢酸の添加量と同様にpHも低くなるとスープの酸味が強くなり、サンラータンなどの酸味のあるスープを除き、別途のアルカリ性の中和剤を添加する必要がある。よって、好ましい下限としては5以上が好ましい。pH調整に関しては、クエン酸など酢酸以外のもので行うこともできる。
【0027】
(容器入り即席ノンフライ中華麺製品)
作製したノンフライ中華麺麺塊と、粉末スープとを容器に直充填し、この他、必要により、乾燥具材や、包装された液体スープ、包装された液体オイル、包装されたカヤクなどを充填し、蓋をするか、シールにより密封し、容器入り即席ノンフライ中華麺製品を製造する。また、必要により蓋や容器にpH調整のための炭酸ナトリウムなどのアルカリ剤を含む包装された粉末または液体を添付することができる。
【0028】
本発明に係る容器入り即席ノンフライ中華麺製品は、熱湯を注湯するか、水を入れて電子レンジ調理することにより喫食できる。また、本発明に係る容器入り即席ノンフライ中華麺製品は、保存中のノンフライ中華麺麺塊の変色が抑えられるだけでなく、麺の食感劣化も押さえられるため、従来よりも長期間の保存に耐え得ることができる。
【0029】
以下に実施例を挙げて本実施形態をさらに詳細に説明する。
【実施例】
【0030】
<ノンフライ中華麺麺塊の作製>
中力粉1000gからなる主原料粉1kgに、食塩20g、かんすい製剤(炭酸ナトリウム:炭酸カリウム 6:4)20gを水350mlに溶解した練り水を添加し、常圧ミキサーで15分間撹拌し、そぼろ状のドウを作製した。
【0031】
作製したドウを複合して麺帯を作製し、15分熟成した後、ロール圧延にて1.1mmまで麺帯を圧延し、20番のロール切刃にて麺帯を切断し、麺線とした。
【0032】
次いで作製した麺線を飽和蒸気の流量が260kg/hとなるように調整した蒸気庫内で2分間蒸煮した後、食塩8g、アラビアガム12gを1Lの水に溶解した調味液に5秒浸漬し、麺線を30cmに切断した後、90gの麺をカップ型のステンレス製のリテーナ(上径φ110mm、下径80mm、高さ70mm)に充填した。
【0033】
リテーナに充填した麺線を70℃で風速4m/sの熱風で60分間乾燥し、ノンフライ中華麺麺塊サンプル(50g)とした。
【0034】
<粉末スープの作製>
(試験例1-1)
流動層造粒機に粉体物である食塩130g、グラニュー糖37g、グルタミン酸ソーダ126g、核酸8g、クチナシ色素(黄)0.5g、白コショウ2.5g、ショウガ粉末4g、チキンパウダー68g、粉乳10g、α化澱粉88g、水分5%以下の乾燥酸化澱粉11gを入れ混合し、粉体物を作製した。
【0035】
次いで、粉体物にラードのエステル交換油(融点48℃)20gを全体に分散させた後、65℃の環境下でバインダーとして馬鈴薯澱粉1重量%水溶液を4分間噴霧し、3分間乾燥する操作を3回繰り返した後、馬鈴薯澱粉1重量%水溶液を4分間噴霧し、75℃で10分間仕上げ乾燥し、流動層造粒した粉末スープを作製した。
【0036】
作製した粉末スープに対して融点が59℃のラードの極度硬化油を溶解した油95gを噴霧しながら粉末スープに吸収させ、徐々に冷却し油脂を固体化し、塊を軽く粉砕して8メッシュの篩にかけ、即席ノンフライ中華麺製品用の粉末スープとした。なお、粉末スープ2gを98gのお湯(60℃)で溶解し、pHを測定した結果、6.5であった。
【0037】
(試験例1-2)
粉体物にクエン酸(無水)を2.6g加える以外は試験例1の方法に従って即席ノンフライ中華麺製品用の粉末スープを作製した。なお、粉末スープのpHは5.7であった。
【0038】
(試験例1-3)
粉体物にクエン酸(無水)を10.5g加える以外は試験例1の方法に従って即席ノンフライ中華麺製品用の粉末スープを作製した。なお、粉末スープのpHは5.0であった。
【0039】
(試験例1-4)
粉体物に酢酸製剤(氷酢酸6:酢酸ナトリウム(無水)4、酢酸量として83.5重量%)を3.3g加える以外は試験例1の方法に従って即席ノンフライ中華麺製品用の粉末スープを作製した。なお、粉末スープのpHは6.0であった。
【0040】
(試験例1-5)
粉体物に酢酸製剤(氷酢酸6:酢酸ナトリウム(無水)4、酢酸量として83.5重量%)を3.3g、クエン酸(無水)を1.6g加える以外は試験例1の方法に従って即席ノンフライ中華麺製品用の粉末スープを作製した。なお、粉末スープのpHは5.7であった。
【0041】
(試験例1-6)
粉体物に酢酸製剤(氷酢酸6:酢酸ナトリウム(無水)4、酢酸量として83.5重量%)を3.3g、クエン酸(無水)を9.5g加える以外は試験例1の方法に従って即席ノンフライ中華麺製品用の粉末スープを作製した。なお、粉末スープのpHは5.0であった。
【0042】
(試験例1-7)
粉体物に酢酸製剤(氷酢酸6:酢酸ナトリウム(無水)4、酢酸量として83.5重量%)を6.6g加える以外は試験例1の方法に従って即席ノンフライ中華麺製品用の粉末スープを作製した。なお、粉末スープのpHは5.7であった。
【0043】
(試験例1-8)
粉体物に酢酸製剤(氷酢酸6:酢酸ナトリウム(無水)4、酢酸量として83.5重量%)を6.6g、クエン酸(無水)を7.9g加える以外は試験例1の方法に従って即席ノンフライ中華麺製品用の粉末スープを作製した。なお、粉末スープのpHは5.0であった。
【0044】
(試験例1-9)
粉体物に酢酸製剤(氷酢酸6:酢酸ナトリウム(無水)4、酢酸量として83.5重量%)を13.2g加える以外は試験例1の方法に従って即席ノンフライ中華麺製品用の粉末スープを作製した。なお、粉末スープのpHは5.4であった。
【0045】
(試験例1-10)
粉体物に酢酸製剤(氷酢酸6:酢酸ナトリウム(無水)4、酢酸量として83.5重量%)を13.2g、クエン酸(無水)を8.9g加える以外は試験例1の方法に従って即席ノンフライ中華麺製品用の粉末スープを作製した。なお、粉末スープのpHは5.0であった。
【0046】
試験例1-1~1-10で作製した粉末スープの配合とpHについて下記表1に示す。
【0047】
【0048】
<即席ノンフライ中華麺製品の作製>
(試験例2-1)~(試験例2-11)
発泡紙カップ容器(上径100mm、下径75mm、高さ110mm)の容器に、作製したノンフライ麺塊を充填し、試験例1-1~1-10で作製したスープをそれぞれ、表2に記載した量を直充填した後、アルミ入りの紙製の蓋でシールをして密閉し、ポリポリプロピレン製のシュリンクフィルムを巻いて即席ノンフライ中華麺製品サンプル(試験例2-1~試験例2-10)を作製した。また、比較サンプルとして、粉末スープを充填しない麺のみの即席ノンフライ中華麺製品サンプルを作製した(試験例2-11)。
【0049】
それぞれの試験例で作製したサンプル3品を虐待試験として40℃湿度75%の環境下で2週間保存し評価した。虐待試験前のサンプルと虐待試験後のサンプルとでの色の変化(色差)を測定した。測定は色彩色差計(コニカミノルタ製:型番CR-410)でa値を測定し、虐待前後の差を測定し、数値として変色が抑えられているかを確認した。
【0050】
また、各試験例の虐待試験後のサンプルについて、目視による色の評価と、復元後の食感について官能試験を行った。官能試験は、スープを取り除いてノンフライ麺塊のみとし、熱湯400gを入れ、蓋をし、5分間静置して復元させ、喫食し、食感について評価した。色の評価及び食感の官能評価については、5人のベテランパネラーで行い、試験例2-11の虐待試験前のサンプルと虐待試験後のサンプルを基準として、下記の基準に従って評価を行った。
(評価基準)
5:試験例2-11の虐待前と同等
4:試験例2-11の虐待前よりかはやや劣るが概ね良好
3:試験例2-11の虐待前よりかは劣るが概ね可
2:試験例2-11の虐待後よりかは良いが劣る
1:試験例2-11の虐待後と同等
【0051】
各サンプルの色差の分析結果及び官能評価結果を下記表2に示す。
【0052】
【0053】
試験例2-1~試験例2-3で示すように、粉末スープを直充填することで若干の変色を防止することができるが、不十分であった。また、同じ酸味料であるクエン酸には、麺塊の経時的な変色を抑える効果は認められなかった。
【0054】
それに対し、試験例2-4~試験例2-10で示すように、粉末スープに酢酸製剤を添加することにより、麺塊の色が改善された。色については、酢酸の添加量を増やすことで改善するが、一定以上入れてもほとんど変わらなかった。粉末スープのpHについても、変色を抑制する上ではあまり変わらなかったが、食感については、粉末スープのpHが低い程食感の劣化が抑制され、硬脆い食感が改善され、粘りのある食感が維持される傾向がみられた。麺塊1g当たり酢酸として1mg以上、pHについては6以下であれば、麺塊の変色を抑える効果があり、より好ましくは酢酸として2mg以上、pHとして5.7以下であることが好ましいと考える。ただし、酢酸を添加しすぎると酸味が強くなるため、酸味を必要としないスープにおいては、逆にアルカリ性の別添の粉末スープを用意して中和する必要がある。そのため、酢酸の添加量としては、4mg以下、pHとしては5.0以上が好ましいと考える。