(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-17
(45)【発行日】2024-10-25
(54)【発明の名称】基板上の保護膜の膜厚を制御する方法及び装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20241018BHJP
【FI】
H01L21/302 105A
(21)【出願番号】P 2021138491
(22)【出願日】2021-08-27
【審査請求日】2024-03-13
(32)【優先日】2020-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】勝沼 隆幸
【審査官】宇多川 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-077843(JP,A)
【文献】特開2011-129879(JP,A)
【文献】特開2020-025078(JP,A)
【文献】特開2018-037453(JP,A)
【文献】国際公開第2019/133303(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/041213(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0178920(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エッチング層と、前記エッチング層上に形成されたマスクとを含む基板上に膜を形成する方法であって、
(a)反応チャンバ内で、前記基板を前駆体に曝して、前記エッチング層の凹部の少なくとも側壁上に前駆体粒子を配置する曝露工程と、
(b)前記反応チャンバに
前記前駆体の吸着を妨げるガスである阻害ガスと改質ガスを供給してプラズマを発生させる供給工程と、
(c)前記反応チャンバに前記阻害ガスと前記改質ガスを供給しながら、前記側壁上の前記前駆体粒子を保護膜に改質する改質工程と
を含み、
前記前駆体は、Si含有ガスである、方法。
【請求項2】
前記(c)改質工程の後に、(d)前記プラズマを用いて前記基板をエッチングするエッチング工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記(b)供給工程は、前記(a)曝露工程及び前記(c)改質工程の間中連続して実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記(a)曝露工程は、前記(c)改質工程の完了後に繰り返される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記(a)曝露工程は、前記エッチング層の前記凹部の底面上に前駆体粒子を追加で配置するように実施され、
前記(c)改質工程は、前記凹部の前記底面上の前記前駆体粒子を前記保護膜に改質することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記阻害ガスはC
xF
yガスである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記凹部の上側部分上に形成された前記保護膜の膜厚が、前記C
xF
yガスが供給されない条件下で前記凹部の前記上側部分上に形成された保護膜の膜厚よりも小さい、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記保護膜の形成後の前記側壁の垂直方向中央領域の開口寸法(CD:critical dimension)が、前記側壁の上側部分のCDよりも小さい、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記凹部の上側部分上に形成された前記保護膜の膜厚が、前記側壁の残りの部分に形成された前記保護膜の膜厚よりも小さい、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記改質ガスと前記阻害ガスは連続して供給される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
(e)前記反応チャンバの内部をパージするパージ工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記(e)パージ工程は、前記(a)曝露工程の後に実施され、次いで前記(c)改質工程の後に再度実施される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記(d)エッチング工程は、前記反応チャンバ内において電極にバイアス電力を印加することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項14】
前記(c)改質工程は、前記(c)改質工程中に、前記反応チャンバ内において電極に高周波(RF)を供給することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
エッチング層と、前記エッチング層上に形成されたマスクとを含む基板上に膜を形成する方法であって、
第1の期間中に、
(a)反応チャンバ内で、前記基板を前駆体に曝して、前記エッチング層の凹部の少なくとも側壁上に前駆体粒子を配置する曝露工程と、
第2の期間中に、
(b)前記反応チャンバに
前記前駆体の吸着を妨げるガスである阻害ガスと改質ガスを供給してプラズマを発生させる供給工程と、
(c)前記反応チャンバに前記阻害ガスと前記改質ガスを供給しながら、前記側壁上の前記前駆体粒子を保護膜に改質する改質工程と
を含み、
前記前駆体は、Si含有ガスである、方法。
【請求項16】
前記(b)供給工程及び前記(c)改質工程の少なくとも一部は、前記第2の期間中に同時に実施される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記(c)改質工程中に高周波(RF)を供給することを更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
エッチング層と、前記エッチング層上に形成されたマスクとを含む基板上に膜を形成する装置であって、
処理回路を備え、前記処理回路は、
反応チャンバへの前駆体の供給を制御し、それによって前記基板を曝して前記エッチング層の凹部の少なくとも側壁上に前駆体粒子を配置し、
前記反応チャンバに
前記前駆体の吸着を妨げるガスである阻害ガスと改質ガスを供給してプラズマを発生させるようにガス源を制御し、
前記反応チャンバに前記阻害ガスと前記改質ガスを供給しながら、前記凹部の前記側壁上で前記側壁上の前記前駆体粒子を保護膜に改質するために高周波(RF)を供給するようにRF源を制御するように構成されており、
前記前駆体は、Si含有ガスである、装置。
【請求項19】
前記阻害ガスと前記改質ガスは、前記前駆体の供給の間中及び前記前駆体粒子の前記保護膜への改質の間中連続して供給される、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記処理回路は、前記阻害ガスと前記改質ガスを前記反応チャンバからパージするようにガス排気を制御するように更に構成されている、請求項18に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板のエッチングに関する。より詳細には、本開示は、高アスペクト比の凹部を形成するためのエッチング処理の一部として、凹部の側壁を保護膜で保護する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
新技術の導入により半導体の作製方法が改善され、その結果集積回路(IC、超小型電子回路、マイクロチップ、又は単に「チップ」)単体の寸法、及びIC上に搭載される各部品の形状寸法の小型化が進んだ。小型化された能動半導体素子及び受動半導体素子、並びに相互接続部は、半導体基板(例:シリコン)上に作製される。そのようなICの形成において、ドーピング、イオン注入、エッチング、種々の材料の薄膜堆積、フォトリソグラフィによるパターン形成等の各処理が基板に施される。個々のマイクロ回路は最後にダイシングにより分離され、ICとして個別にパッケージングされる。
【0003】
基板上にICを形成する際に特に使用される処理工程として、原子層堆積(ALD:atomic layer deposition)、化学気相成長(CVD:chemical vapor deposition)、原子層エッチング(ALE:atomic layer etching)等がある。従来の処理では、形成するパターンの深さに応じてエッチング条件を変更する場合もある。例えば、従来の処理では、形成するパターンの深さに応じて、チャンバ圧力、高周波(RF)電力、処理ガスの流量比を変更する。
【0004】
従来のエッチング処理では、側方エッチング(又は横方向のエッチング)による側壁のボーイング等の形状劣化が問題となっている。従来、ALDやCVD等の処理を用いて、エッチングされた凹部の側壁に保護膜を形成する。横方向のエッチングを十分抑制できる程度の均一な厚さに保護膜を形成すると、マスクパターンの開口部寸法が縮小し、開口部が閉塞することになる。或いは、凹部の横方向にエッチングされやすい領域にサブコンフォーマルALD処理によって保護膜(上側部分の膜厚が下側部分よりも厚くなる)を形成すると、マスクパターンの開口部寸法が縮小し、開口部が閉塞することになる。
【0005】
プラズマエッチングが、基板に凹部(recess)を形成するために用いられている。プラズマエッチングでは、凹部が横方向に広がることを抑制することが求められる。そのため、凹部を画成する側壁面に膜を形成する技術が用いられている。このような技術は、例えば、下記の特許文献1及び2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許出願公開第2016/0343580号明細書
【文献】米国特許出願公開第2018/0174858号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態によれば、エッチング層と、エッチング層上に形成されたマスクとを含む基板上に膜を形成する方法が提供される。本方法は、(a)反応チャンバ内で、基板を前駆体に曝して、エッチング層の凹部の少なくとも側壁上に前駆体粒子を配置する曝露工程と、(b)反応チャンバに阻害ガスと改質ガスを供給してプラズマを発生させる供給工程と、(c)反応チャンバに阻害ガスと改質ガスを供給しながら、側壁上の前駆体粒子を保護膜に改質する改質工程とを含む。
【0008】
上記段落は概略を示すものであり、添付の特許請求の範囲を限定するものではない。本明細書に記載の実施形態及びその効果は、以下の詳細な説明を添付の図面に照らして参照すれば最もよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
以下の詳細な説明を添付の図面と併せて参照することにより理解を深めることで、本開示及び付随する多くの利点が容易により完全に理解されるであろう。
【
図1】エッチングされた凹部の側壁に生じたボーイングを示す図である。
【
図2】本開示に係る基板処理システムの一例を示す図である。
【
図3】基板処理システムのエッチング装置の一例を示す図である。
【
図4】本開示に係る動作をコンピュータ上で実施する処理回路の一例を示すブロック図である。
【
図5】エッチング方法の一例のフローチャートである。
【
図6A】本開示の一実施形態に即してサブコンフォーマルALDによる保護膜を用いてエッチングした凹部を示す図である。
【
図6B】本開示の一実施形態に即してサブコンフォーマルALDによる保護膜を用いてエッチングした凹部を示す図である。
【
図6C】本開示の一実施形態に即してサブコンフォーマルALDによる保護膜を用いてエッチングした凹部を示す図である。
【
図7A】保護膜形成の一例のタイミングチャートである。
【
図7B】保護膜形成の一例のタイミングチャートである。
【
図7C】保護膜形成の一例のタイミングチャートである。
【
図8】マスクの開口部における保護膜の膜厚に関する本開示の実施形態の効果を示す図である。
【
図9A】エッチング層の凹部の底面にも保護膜が形成される本開示の他の実施形態を示す図である。
【
図9B】エッチング層の凹部の底面にも保護膜が形成される本開示の他の実施形態を示す図である。
【
図9C】エッチング層の凹部の底面にも保護膜が形成される本開示の他の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
添付の図面に関連して以下に記載する説明は、本開示の主題の様々な実施形態を説明するものであり、必ずしも記載の実施形態に限定するものではない。例示においては、本開示の主題の理解を促す目的で、具体的な詳細を説明している。しかし、各実施形態は、こうした具体的な詳細なしに実施することができることが当業者には明らかである。いくつかの例示においては、本開示の主題の概念が曖昧にならないように、公知の構造及び構成要素をブロック図の形で示すことがある。
【0011】
本明細書全体を通して、「一実施形態」又は「実施形態」とは、実施形態に関して説明する特定の特徴、構造、特性、動作、又は機能が、本開示の主題の少なくとも一つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書において「一実施形態では」又は「実施形態では」という文言は、必ずしも同じ実施形態を指すものではない。更に、特定の特徴、構造、特性、動作、又は機能は、一つ以上の実施形態に、いかなる形にも適切に組み合わせることができる。更に、本開示の主題の実施形態は、記載の実施形態の改変例及び変形例を包含し得る。
【0012】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において、単数形「一つの」及び「その」は、別段の明白な記載がない限り、複数形を含むものである。すなわち、別段の明白な指示がない限り、本明細書では、「一つの」等の文言は「一つ以上の」を意味する。更に、「左」、「右」、「上部」、「底部」、「前」、「後」、「側方」、「高さ」、「長さ」、「幅」、「上方」、「下方」、「内部」、「外部」、「内側」、「外側」等の用語は、本明細書では、基準点を単に示すものにすぎず、必ずしも本開示の主題の実施形態を特定の向き又は構成に限定するものではない。更に、「第1の」、「第2の」、「第3の」等の用語は、本明細書に記載の部分、構成要素、基準点、動作、及び/又は機能等の数を単に特定するものにすぎず、必ずしも本開示の主題の実施形態を特定の構成又は向きに限定するものではない。
【0013】
本開示全体を通して、「凹部」をエッチング形状の一種として使用しており、これら2つの用語(「凹部」と「エッチング形状」)は、本明細書において互いに置き換え可能である。更に、用語「凹部」は限定的なものではなく、エッチングされている基板材料のホール、スリット、溝、凹状の空洞、又は材料が除去された他の種類のパターンであってもよい。
【0014】
本発明者らは、凹部の側壁に生じる「ボーイング」現象を抑えつつ高アスペクト比(HAR)エッチングを行うことは、積層構造体の寸法が増すにつれて次第に困難になることを認識していた。例えば、3D-NANDでは、交互に成膜された層(多くの場合、交互に積層されたSiO層とSiN層)により積層構造体が形成される。この積層体は、多数の階を含み、各階に多数のメモリセルが形成された高層ビルに幾分似ている。セル間のチャネルを画定するためにエッチングを深く行う必要があり、積層体内の全層に対してホール寸法が均一となるようにエッチングすることが理想である。エッチングが適切に行われないと、特定のホールについて均一性に欠け、
図1の積層体100の領域140に示すように、ボーイングを含め多様な形状となる。ボーイングは、特にエッチング層120の上側部分における側壁の過剰エッチングの結果生じる。ボーイングは、長時間エッチングに曝されて肩落ちしたマスクの縁部からイオンが散乱した結果生じることもある。高アスペクト比エッチングでは、イオンは極めて直線的に進むが、一部のイオンはマスクの肩落ちした縁部で跳ね返り、領域140の側壁に送られる。更に、
図1に示すように、基板110上に形成されたエッチング層120の上には、マスク(アモルファスカーボン層)130が配置される。レジストマスクの肩落ちした角度により、エッチング層120の側壁の上側部分に過剰エッチングが生じ、したがって凹部の開口寸法(CD:critical dimension)にボーイングが生じ、ホールの深さ全体に沿った開口寸法が不均一となる。メモリセルの耐久性及び性能を維持できるように、こうしたボーイングは回避すべきである。CDとは本明細書では凹部の直径を意味するが、凹部のラインや空間構造(溝)の空間CDも同様に含み得る。
【0015】
従来の装置では、成膜とエッチング処理を繰り返すことで基板に凹部を形成する。この処理では、まず基板をエッチングする。エッチング工程中、通常はフッ素含有ガスが使用される。本願では、フッ素含有ガスは、例えば、CF4、C4F6、C4F8等のCxFyガスであってもよいし、NF3やSF6であってもよい。しかし、フッ素含有ガスは、フッ素を含む他のガスであってもよい。
【0016】
基板エッチングの停止後、凹部の側壁に保護膜を形成する。所望の膜厚の保護膜を形成するために、前駆体の吸着と改質とを数回繰り返す。保護膜を凹部の奥まで行き渡らせるために、付着係数の低い前駆体を使用する。保護膜の形成には、塩化マロニルやエチレンジアミン等の化学反応剤を用いてもよい。保護膜を堆積させた後、エッチングを続け、凹部が完成するまでこのサイクルを繰り返す。本願では、前駆体は、例えば、アミノシラン又は他のシリコン(Si)含有成分を含んでいてもよい。便宜上、本明細書の随所でSiを前駆体成分として例示するが、Si以外の、又はSiに加えた前駆体成分を、側壁等の基板表面に吸着させる実用可能な前駆体成分として使用できることを理解すべきである。更に、本教示は、唯一の前駆体成分としてSiに限定するものではない。
【0017】
本発明者らは、従来の基板処理技術にはいくつかの限界があることを認識していた。従来の基板エッチング技術では、基板に凹部が完成するまで、成膜工程とエッチング工程を繰り返す。また、従来のALD処理やサブコンフォーマルALD処理では、側壁のボーイングを抑制するように成膜工程を行うと、凹部の上側領域の膜厚が厚くなり、マスクパターンの開口部寸法が縮小する(例えば、開口部が閉塞する)可能性がある。
【0018】
従来技術のこうした限界に対処するために、本発明者らは、ALD処理や不飽和(サブコンフォーマル)ALD処理において、凹部の成膜量(保護膜の膜厚分布)を制御(規制)する装置及び処理を開発した。成膜量を制御(規制)することで、マスクの開口部における保護膜の膜厚が、エッチング層の凹部の他の部分に比べて抑制される。したがって、保護膜の堆積中又は堆積後にマスクの開口部が閉塞することがない。
【0019】
本発明者らは、凹部内での成膜量を制御する処理を認知し、開発した。一実施形態では、この制御処理は一連の工程によって実現され、まず第1のガス(前駆体とも称する)を基板の表面上に吸着させることから開始する。前駆体は、シリコン(Si)含有ガスであってよく、基板が配置された反応チャンバに供給される。特に、第1のガスの前駆体成分、例えばシリコン含有ガスの成分であるSiが基板の表面上に吸着する。第1のガスは、第1の期間供給することができる。
【0020】
前駆体の吸着後、改質ガス(反応ガスとも称する)を更に導入する。改質ガスは凹部に供給してもよい。この改質ガス(例えば、O*ラジカル等の酸素含有ガス)を反応チャンバに供給する。改質ガスからプラズマを発生させ、吸着した前駆体をプラズマに曝して表面反応を引き起こし、凹部の側壁上に保護膜を形成する。酸素含有ガスとして、O2、CO、CO2、O3が挙げられるが、これらに限定されるものではない。更に、改質ガスはNH3、N2、NF3等の窒素含有ガスでもよいが、これらの例に限られるものではない。
【0021】
或いは、サブコンフォーマルALDを行う場合に、基板表面の一部にのみ前駆体を吸着させる。その後、改質ガスを導入し、前駆体が吸着された部分にのみ膜を形成する。具体的には、例えば、比較的短時間で前駆体を供給し、圧力及び流量を標準の処理時間よりも下げることができる。前駆体と改質ガスの供給は、ハイブリッドガス供給サイクルの第1サイクルを構成する。改質ガスの供給を行うことにより、凹部の側壁上に保護膜が形成され、一方で凹部の底部は部分的にエッチングされ得る。前駆体としてシリコン含有ガスを使用し、改質ガスとしてO*ラジカルを使用した場合、凹部の側壁上にSiO2保護膜が形成される。
【0022】
本発明者らは、ALD(及びサブコンフォーマルALD)処理の改質中に、フッ素含有ガス等の阻害剤を供給することで、マスクの開口部における成膜量を減少し、開口部の閉塞を抑制することができると認識した。特に、フッ素含有ガスのフッ素がマスク開口部の周辺に付着し、本処理の次の繰返し工程において前駆体の吸着を妨げる。したがって、凹部の側壁に沿って保護膜の膜厚を徐々に低減させることで、マスクの開口部における成膜量を減少し、開口部の閉塞を抑制することができる。
【0023】
本開示の実施形態によって多数の効果が得られるが、本発明者らは、本開示の実施形態のいくつかの利点を認識している。一利点として、マスク上にはより薄い保護膜を形成しつつ、側壁上には膜厚が制御された保護膜を形成することが可能になる。側壁上の保護膜は、凹部の側壁が深くなるにつれて徐々に膜厚が低減し得る。マスク開口部の寸法の縮小が抑制され、且つ保護膜の膜厚分布が制御されるため、エッチング品質が向上する。横方向エッチングが生じる部分では比較的厚く、横方向エッチングが問題とならない部分では比較的薄くなるように保護膜を意図的に形成することが可能となる。更に、凹部の上側部分におけるボーイングを抑制しつつ、過剰エッチングにより凹部の底面を拡径させることが可能となる。
【0024】
次に図面を参照すると、
図2は、本開示に係る基板処理システム200の一例を示す。基板処理システム200は、エッチング装置252、254、256、258との間で基板Wを搬送する搬送ロボット242を含む搬送装置240(エッチング装置252、254、256、258よりも減圧下で動作)を含む。搬送装置240は、ロードロック室232及び234と連結された真空搬送室を有する。エッチング装置252、254、256、258は、搬送装置240に接続され、ロードロック室232及び234から隔てられている。
【0025】
ロードロック室232及び234により、搬送装置240とローダ装置220との間の環境を区画化することができる。ローダ装置220は、キャリアが載置されるキャリア載置台を有する。キャリアは、例えば、25枚の基板Wを保持し、基板処理システム200に出し入れされる際に、ローダ装置220の前面に配置される。ローダロボット222は、キャリア載置台とロードロック室232及び234との間で基板を搬送する。キャリアは、それぞれのロードポート212~218で交換される。
【0026】
制御部260は、本例ではマイクロコントローラであるが、
図4で説明するようなコンピュータ(ローカル専用コンピュータ又は分散型コンピュータ)及び/又は処理回路を、本明細書で説明する制御動作を実施するようにコンピュータコードにより構成された制御部回路の代わりに使用してもよい。
【0027】
図3は、ゲートバルブを介して搬送装置に結合するエッチング装置300(例:容量結合型(CCP:capacitively coupled plasma)プラズマシステム)を模式的に示す。CCPシステムを一例として示しているが、誘導結合型(ICP:inductively coupled plasma)プラズマ処理装置等、他のいかなるエッチング装置を用いてもよい。エッチング装置300は略円筒形で、例えばアルミニウムで形成された反応チャンバ310を含む。反応チャンバ310は接地電位に接続されている。反応チャンバ310の内壁面には、耐プラズマ性の膜が形成され、この膜は、陽極酸化処理によって形成された膜であってもよいし、酸化イットリウムで形成された膜等のセラミック膜であってもよい。間に処理対象の基板Wが配置された状態で、上部電極330と基部320(反応チャンバ310内でプラズマを発生させるための下部電極として機能する)の少なくとも一方にRF電力が供給されると、上部電極330と基部320との間にプラズマ312が発生する。プラズマ312は基板Wに近接して形成され、基板Wは静電チャック322の上面に保持される(詳細については後述する)。基部320は略円盤形で、導電性を有する。
【0028】
ガス源360は複数のガス源を含み、対応する一連の流量制御部を介して制御される。ガス源360は、一つ以上のガスラインを介してガスを反応チャンバ310に供給する。
【0029】
エッチング装置300は、27MHzから100MHzの範囲のRFエネルギーを生成する第1のRF電源340を更に含み、例示的な周波数は60MHzである。第1のRF電源340は、第1のRF電源340の出力インピーダンスと上部電極330のインピーダンスとを整合させる整合回路を介して上部電極330に接続されている。
【0030】
エッチング装置300は、イオンを基板Wに引き付けるためのバイアス目的のRFエネルギーを発生させる第2のRF電源350を更に含む。第2のRF電源350の動作周波数は、第1のRF電源340の動作周波数よりも低く、典型的には400kHzから13.56MHzの範囲である。代替実施形態では、複数のRF電源340及び350が同じ電極(基部320)に結合されてもよい。
【0031】
上部電極330は、可変直流(DC)電源380である第2の電源を有する。可変DC電源380はまた、第1のRF電源340から上部電極に印加されるRFエネルギーのDCバイアスとしても機能し得る。可変DC電源380の可変性により、実施される処理に応じてエッチングレートを制御できるように、イオンエネルギーを操作的に制御することが可能となる。
【0032】
第2のRF電源350が生成するRFエネルギーは、パルス状であってもよい。基部/下部電極にバイアス電力が供給されているとき、主にエッチングが行われる。基部/下部電極にバイアス電力が供給されていないとき、主に成膜が行われる。バイアスをパルス状とすることにより、エッチング段階と成膜段階とを分けることが可能となる。保護膜形成後にエッチングを行い、凹部の側壁を側方エッチングから保護する。加えて、パルスのデューティ比(バイアスオン時間/(バイアスオン時間+バイアスオフ時間))を変更することにより、エッチング/成膜のバランスを制御することができる。バイアスオフ時間が長いほど保護膜を厚く形成することができ、より高い保護効果が得られる。バイアスオン時間が長いほどエッチングレートが増大する。
【0033】
一実施形態では、エッチング装置300は、制御部260(
図2)とは別個に、又は協働して動作する専用の制御回路(例えば、
図4のような処理回路)を有し得る。制御部260は、メモリに格納された制御プログラムを実行し、記憶装置に格納されたレシピデータに基づいて、エッチング装置300の各構成要素を制御する。
【0034】
エッチング装置300は、反応チャンバ310の内部雰囲気に接続された排気装置370を含む。排気装置370は、反応チャンバ310を制御可能に減圧し、反応チャンバ310からガスを排気するように、自動圧力制御弁等の圧力制御部、真空ポンプ(例:ターボ分子ポンプ)を含む。
【0035】
図4は、本明細書に記載の動作をコンピュータ上で実施する処理回路のブロック図である。
図4は、フローチャートの全ての制御処理、記述、又はブロックをコンピュータ上及びクラウド上で制御する処理回路400の一例を示す。これらの制御処理、記述、又はブロックは、モジュール、セグメント、又は処理の特定の論理機能又は工程を実施するための実行可能な一つ以上の命令を含むコードの一部を表すものである。代替的な実現例が本開示の例示的実施形態の範囲内に含まれ、その機能は、関与する機能に応じて、略同時、又は逆の順序等、図示又は記載の順序とは異なる順序で実行することができることが当業者には理解されるであろう。本明細書に記載の様々な要素、特徴、及び処理は互いに独立に使用しても、様々な形で組み合わせてもよい。考えられ得るあらゆる組合せ及び下位組合せが、本開示の範囲に含まれる。
【0036】
図4では、処理回路400は、上述/後述の一つ以上の制御処理を実施するCPU401を含む。処理データ及び命令は、メモリ402に格納することができる。これらの処理データ及び命令は、ハードディスクドライブ(HDD:hard disk drive)や可搬記憶媒体等の記憶媒体ディスク404に格納しても、遠隔で格納してもよい。更に、特許請求の範囲に記載する本開示は、本発明による処理の命令が格納されるコンピュータ読み取り可能な記録媒体の形態によって限定されるものではない。例えば、これらの命令は、CD、DVD、フラッシュメモリ、RAM、ROM、PROM、EPROM、EEPROM、ハードディスク、又は処理回路400が通信するサーバやコンピュータ等の任意の他の情報処理装置に格納してもよい。また、各処理は、ネットワーク上の記憶装置、クラウド上の記憶装置、又は他の遠隔アクセス可能な記憶装置に格納され、処理回路400によって実行可能であってもよい。
【0037】
更に、特許請求の範囲に記載する本開示は、ユーティリティアプリケーション、バックグラウンドデーモン、オペレーティングシステムの構成要素、又はそれらの組合せとして提供されてもよく、CPU401及びマイクロソフトウィンドウズ(登録商標)、UNIX(登録商標)、Solaris(登録商標)、LINUX(登録商標)、Apple MAC-OS等の当業者に既知のオペレーティングシステムと連動して実行されてもよい。
【0038】
処理回路400を構築するハードウェア要素は、様々な回路要素によって実現することができる。更に、上述の実施形態の各機能は、一つ以上の処理回路を含む回路によって実施することができる。
図4に示すように、処理回路は、プログラミングされた特定のプロセッサ、例えばプロセッサ(CPU)401を含む。処理回路はまた、特定用途向け回路(ASIC:application specific integrated circuit)や記載の機能を実施するように構成された従来の回路部品等のデバイスを含む。
【0039】
図4では、処理回路400は上述の処理を実施するCPU401を含む。処理回路400は、汎用コンピュータであっても特定の専用機であってもよい。一実施形態では、処理回路400は、反応チャンバ310を外部雰囲気に曝すことなくESCをその場で交換するように電圧及びロボットアームを制御する。プロセッサ401がESCをその場で交換するようにプログラミングされている場合、処理回路400は、特定の専用機として機能する。処理回路400は、基板処理システム200内に含まれても、局所的に通信可能であってもよい。ある実施形態では、処理回路400は、基板処理システム200とは遠隔にあり、ネットワーク428を介して基板処理システム200に処理命令を与えてもよい。
【0040】
或いは又は更に、CPU401は、当業者には理解されるように、FPGA、ASIC、PLD上で実施してもよく、又は離散論理回路を用いてもよい。更に、CPU401は、上述の本発明の処理の命令を並行して実施するように協働する複数の処理装置として実施してもよい。
【0041】
図4の処理回路400はまた、ネットワーク428とインターフェース接続するためのネットワーク制御部406、例えば米国インテル株式会社(Intel Corporation)のIntel Ethernet(登録商標) PROネットワークインターフェースカード等を含む。ネットワーク428は、理解可能なように、インターネット等の公的ネットワーク、LANやWAN等の私的ネットワーク、又はそれらの任意の組合せでよく、また、PSTNやISDN等の下位ネットワークを含んでもよい。ネットワーク428はまた、イーサネット(登録商標)ネットワーク等の有線でも、EDGE、3G、4G無線セルラシステムを含むセルラネットワーク等の無線でもよい。無線ネットワークはまた、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、又は他の任意の既知の無線通信形態でもよい。
【0042】
処理回路400は、モニタ等の表示装置410とインターフェース接続するためのグラフィックカードやグラフィックアダプタ等の表示装置制御部408を更に含む。汎用I/Oインターフェース412が、キーボード及び/又はマウス414、並びに表示装置410と一体、又は別体のタッチパネル416とインターフェース接続されている。汎用I/Oインターフェースはまた、プリンタ及びスキャナ等の様々な周辺機器418に接続されている。
【0043】
汎用記憶装置制御部424は、ISA、EISA、VESA、PCI等の通信バス426を介して記憶媒体ディスク404に接続され、処理回路400の全ての構成要素が互いに接続されている。表示装置410、キーボード及び/又はマウス414、並びに表示装置制御部408、汎用記憶装置制御部424、ネットワーク制御部406、及び汎用I/Oインターフェース412の一般的な特徴及び機能については、本明細書では簡略化のために既知のものとして説明を省略する。
【0044】
本開示で記載する例示的な回路要素は、他の要素と置換え可能であり、本明細書に記載の例と異なる構造を有してもよい。更に、本明細書に記載の特徴を実施するように構成された回路は、複数の回路単位(例:チップ)で実施しても、又はこれらの特徴を単一のチップセットの回路として組み合わせてもよい。
【0045】
本明細書に記載の機能及び特徴はまた、システム上で分散配置された様々な構成要素によって実行してもよい。例えば、一つ以上のプロセッサがこれらの機能を実行してもよく、その場合、プロセッサはネットワークで通信している複数の構成要素にわたって分散して配置される。分散配置された構成要素として、様々なヒューマンインターフェース及び通信装置(例:表示モニタ、スマートフォン、タブレット、個人情報端末(PDA:personal digital assistant)等)に加えて、処理を共有できる一つ以上のクライアント機及びサーバ機が含まれ得る。ネットワークは、LANやWAN等の私的ネットワークでも、インターネット等の公的ネットワークでもよい。システムへの入力は、ユーザによる直接入力によって受け付けても、実時間処理又はバッチ処理として遠隔に受け付けてもよい。更に、実現例の一部を上述のものと同一ではないモジュール又はハードウェア上で実施してもよい。したがって、他の実現例も特許請求の範囲に含まれる。
【0046】
図5は、本開示に係るエッチング方法の一例のフローチャートである。
図5について、サブコンフォーマルALDによる保護膜を用いてエッチングした凹部を示す
図6Aから
図6Cを参照しながら説明する。
【0047】
本エッチング方法は、エッチング層610と、エッチング層610上に配置されたマスク層620とを有する基板を提供する工程510から開始する。エッチング層610及びマスク層620を有する基板は、
図2及び
図3に関して説明した基板Wであってよい。例えば、処理回路400は、基板Wをエッチングシステムに搬送するように搬送装置240を制御し得る。
【0048】
工程520において、処理回路400は、エッチング層を部分的にエッチングし、開口部630を介してエッチング層610に凹部を形成するように、エッチングシステムを制御する。本工程におけるエッチングには、プラズマ312に関して上述したように、プラズマ又は他のエッチングガスを使用してもよい。工程520では、公知のエッチング方法を用いてもよい。エッチングガスからプラズマを発生させ、基板に電気バイアスを供給することによって、プラズマからイオンを引き出す。
【0049】
工程530において、処理回路400は、エッチング層610の凹部の側壁上に保護膜640を形成するようにエッチング装置300を制御する。保護膜640を形成するには、まず、エッチング層610の凹部の側壁表面上に前駆体粒子を吸着させる。前駆体の吸着は、前駆体ガスのプラズマを発生させて行っても、プラズマを発生させずに行ってもよい。次いで、前駆体粒子を改質ガスに曝して保護膜640を形成する。
【0050】
保護膜640は、従来のALD式処理によって形成しても、サブコンフォーマルALD処理によって形成してもよい。従来のALD式処理については、
図9Aから
図9Cに関して後述する。
【0051】
サブコンフォーマルALD処理の2つの態様を以下に示す。
【0052】
(1)前駆体を基板の表面全体に吸着させてもよい。基板の表面には、凹部の表面(エッチングされた凹部の側壁と底面)が含まれる。前駆体の吸着後、改質ガスが比較的短期間の間供給されるように制御する。改質ガスの供給をこのように制御することによって、例えば、改質ガスから発生したO*ラジカルが凹部の下側部分や底部に到達しにくくなり、その結果、凹部の下側部分や底部に到達するO*ラジカルの数が減少する。
【0053】
(2)前駆体を基板の表面上の一部にのみ吸着させる。その後、改質ガスを導入し、表面のうちの前駆体が吸着した部分にのみ膜を形成する。例えば、比較的短時間の間前駆体を供給し、圧力及び前駆体の流量を低減させてもよい。
【0054】
保護膜640の形成では、反応チャンバに前駆体を供給し、前駆体を凹部の側壁上に吸着させる。前駆体を凹部に吸着させた後、反応チャンバに改質ガス(O2ガス等)と阻害ガスを供給する。基板上に配置された前駆体粒子は、反応チャンバに供給された改質ガスと結合する。例示的な一実現例では、シリコン含有前駆体ガスからのシリコン含有前駆体粒子が側壁上に配置され、その後、改質ガスからのO*ラジカルと結合して、側壁上のシリコン含有前駆体粒子を酸化させることにより、SiOx保護層を形成する。この工程は、保護層の膜厚が制御されるまで繰り返してもよい。
【0055】
ある実施形態では、阻害ガスと改質ガスは、工程530の改質段階中供給されるが、工程530の吸着段階中は供給されない。他の実施形態では、工程530の間中、阻害ガスと改質ガスが連続して供給される。阻害ガスがフッ素含有ガスである場合、フッ素含有ガスのフッ素種がマスク開口部の周辺に付着し、本処理の次の繰返し工程における前駆体の吸着を妨げる。したがって、凹部の側壁に沿って保護膜の膜厚を徐々に低減させることで、マスクの開口部における成膜量を減少し、開口部の閉塞を抑制することができる。
【0056】
ある実施形態では、工程530において基板に電気バイアスを供給してもよい。電気バイアスは、エッチング工程520及び540における電気バイアスよりも小さくてもよい。工程530の吸着段階、改質段階、パージ段階、及び保護膜640の形成についての更なる詳細については、
図7Aから
図7Cに関して後述する。
【0057】
工程530において上述した工程(1)又は(2)を有する方法を用いて改質ガスからプラズマを発生させ、吸着した前駆体をプラズマに曝して表面反応を生じさせると、エッチング層610の凹部の側壁上に、下方に向かうにつれて徐々に膜厚が減少した保護膜640が形成される。吸着段階及び/又は改質段階中にフッ素系阻害ガス及び改質ガスを供給することにより、マスク開口部における前駆体の吸着が妨げられる。
【0058】
工程530における保護膜640形成シーケンス(サイクル)を、制御可能な所定の膜厚が得られるまで繰り返す。したがって、凹部の側壁をボーイングから保護する保護膜が側壁上にあるため、凹部の開口寸法は保持される。上記ボーイングは、従来のエッチング処理に伴う課題である。
【0059】
保護膜640の形成後、本処理は工程540に進み、工程520同様、基板を更にエッチングする。
【0060】
工程550において、後続のエッチング工程を実施する前に、側壁を更に保護するために保護膜640を追加で形成する必要があるかについて処理回路400によって判定する。処理回路400は、本方法に従って処理された数枚の試作基板の分析(例:透過又は走査電子顕微鏡検査、TEM又はSEM)に基づいて、追加の保護膜640が必要かどうか判定する。所定の膜厚が得られるサイクル回数が特定されると、その処理を処理レシピに記録する。この処理レシピを用いて、後続の処理バッチで基板を処理するための成膜工程/エッチング工程を制御するように処理回路400をプログラミングする。
【0061】
後続のエッチング工程中、側壁上に残留して側壁を保護する保護膜640の量が不十分である場合(工程550でYES)、処理は工程530に戻り、保護膜を側壁上に追加形成する。一方、工程550において、保護膜の量が最終深さに達するまでの更なるエッチング中に側壁を保護するのに十分であると判定された場合(工程550でNO)には、本処理は工程560に進み、最終深さに達するまでエッチングを継続する。
【0062】
工程550における判定は、エッチング処理を繰り返し追加する必要があるかを所定のエッチング時間が経過したかに基づいて処理回路400が判定する処理に即して、処理回路400が行ってもよい。そのために、処理回路400は、工程540においてエッチング工程が反復して行われた累積エッチング時間を記録し、累積エッチング時間を所定のエッチング時間と比較してもよい。したがって、累積エッチング時間を記録している処理回路400は、凹部の側壁上の保護膜を更に補充せずにエッチング工程を更に行うことができるかどうかを判断することができる。
【0063】
工程560において、基板のエッチング層610を最終深さまで更にエッチングすると、本処理は完了する。このように、工程530、540、550は所定回数繰り返され、工程550における判定は、試作基板の製造時と同じ処理条件下で実施された反復回数に基づいて行ってもよい。
【0064】
例示的な一実現例では、処理回路400は、少なくとも工程520から560を反応チャンバ310内で実施するように制御する。別の実現例では、処理回路400は、ある反応チャンバ内で保護膜640を形成し、別の反応チャンバ内でエッチングを実施するように制御する。
【0065】
更に別の実現例では、処理回路は、第1の反応チャンバ内で初期エッチングを実施し、第2の反応チャンバ内でエッチングを更に繰り返し実施するように制御する。保護膜の形成は、第1の反応チャンバ、第2の反応チャンバ、又は第3の反応チャンバ内で実施してもよい。
【0066】
本開示の例示的な一実現例では、
図5に示す処理の実施後、保護膜形成後の側壁の垂直方向中央領域の開口寸法(CD:critical dimension)は、側壁の上側部分のCDよりも小さくなる。更に、凹部の上側部分上に形成された保護膜の膜厚は、エッチング層の凹部の側壁上に形成された保護膜の最大膜厚よりも小さい。
【0067】
本開示の別の例示的な実現例では、
図5に示す処理の実施後、異なる種類の阻害ガスを使用することにより、凹部の側壁の下側部分又は中央部分におけるCDの成膜量を減少させてもよい。また、C
xF
yガスの種を変えて、エッチングされた凹部の側壁の下側部分又は中央部分における成膜量を減少させてもよい。
【0068】
図6Aから
図6Cは、
図5に示す処理が施された基板を示す図である。特に、
図6Aは、マスク層620の開口部630を介した部分エッチングにより、エッチング層610に設けられた凹部を示している。
【0069】
図6Bは、エッチング層610の凹部の側壁上における保護膜640の形成を示している。保護膜640は、(1)エッチング層610の凹部の側壁表面上に前駆体粒子を吸着させ、(2)反応チャンバ内のガスをパージし、(3)改質ガスと阻害ガスを供給することにより前駆体を保護膜に変換し、(4)反応チャンバ内のガスを再度パージすることによって形成される。前駆体粒子の吸着は、前駆体ガスのプラズマを発生させて行っても、プラズマを発生させずに行ってもよい。反応チャンバ内のガスのパージ工程は、任意選択であってもよい。
【0070】
図6Cは、マスク層620の開口部630を介した更なる部分エッチングによってエッチング層610に設けられた凹部を示している。保護膜640が形成されているため、
図6Cの凹部は横方向のエッチングが低減し、ボーイング形状を示していない。
【0071】
図5に関して説明したように、保護膜640の形成と基板の更なるエッチングは、エッチング層610内の凹部に最終深さが得られるまで繰り返してもよい。
【0072】
エッチング層610の材料は限定されない。例えば、エッチング層610は、シリコン含有膜、SiOxやSiN等のシリコン含有誘電体膜を含んでもよい。シリコン含有誘電体膜の例としては、SiOxとSiNとを交互に積層したもの(ONON積層体)や、SiOxとポリSiとを交互に積層したもの(OPOP積層体)等が挙げられる。エッチング層610は、有機膜を更に含んでもよい。凹部のアスペクト比は、10~20以上、又は30以上であってもよい。
【0073】
以下の表に、エッチング層、マスク、エッチングガスの材料の組合せ例を示す。
【表1】
【0074】
ただし、エッチング層、マスク、主エッチングガスの材料は限定されない。
【0075】
本開示の別の例示的な実現例では、保護膜640の形成中に、酸素含有ガスから発生したプラズマによって有機膜等のエッチング層610をエッチングしてもよい。
【0076】
図7Aから
図7Cは、保護膜形成の一例のタイミングチャートを示す。
【0077】
図7Aは、RF電力、フッ素含有ガス、及び酸素含有ガスを供給する前に、基板に前駆体を供給する第1のタイミングチャートである。特に、吸着期間Aの間に前駆体を基板表面上に吸着させる。吸着期間が完了すると、前駆体の供給が終了し、改質期間Mの間フッ素含有ガスと酸素含有ガスが供給される。特に、改質期間M(工程530)の間、前駆体層と改質ガスのプラズマとの表面反応により保護膜が形成され、フッ素含有ガスのフッ素含有プラズマ等のガス状阻害物質により、パターンの上端部(マスク開口部付近)に阻害物質が形成される。したがって、後続のサイクルではパターンの上端(マスク開口部付近)において前駆体が吸着されにくく、その結果パターンの上端における保護膜の形成が低減する。
【0078】
RFの供給は、酸素含有ガス及びフッ素含有ガスの供給と同期させる。改質期間の完了後、吸着期間Aを新たに開始してもよい。吸着期間と改質期間は、交互に複数回行ってもよい。
【0079】
チャンバ内部のパージは、吸着と改質との間及び/又は改質後に行ってもよい。
【0080】
ある実施形態では、吸着工程中に使用される前駆体の種類に基づいて、吸着期間と改質期間の両期間でRFを供給してもよい。
【0081】
図7Bは、吸着期間と改質期間の両期間でフッ素含有ガスと酸素含有ガスを連続して供給する第2のタイミングチャートを示す。特に、基板の表面上に前駆体を吸着させる吸着期間の最初からフッ素含有ガスと酸素含有ガスを供給する。フッ素含有ガスと酸素含有ガスは、吸着期間の間中連続して供給され、次いでRFを供給する改質期間の間中も連続して供給される。吸着期間と改質期間の間中、フッ素含有ガスと酸素含有ガスを連続して供給しながら、これらの期間を交互に複数回行ってもよい。
【0082】
別の例示的な実現例では、RFの供給中、フッ素含有ガス又は酸素含有ガスが断続的に供給されてもよい。
【0083】
チャンバ内部のパージは、吸着と改質との間及び/又は改質後に行ってもよい。
【0084】
図7Cは、吸着期間と改質期間との間、及び改質期間後にパージを行う処理の一例の第3のタイミングチャートを示す。この例示的処理では、保護膜の形成中、反応チャンバを10mTorrのチャンバ圧力に保持することができる。このチャンバ圧力は一例であり、チャンバ圧力を他の静圧又は動圧に保持してもよい。
【0085】
図7Cに示すように、前駆体を吸着期間の初めに供給する。この例示的処理では、前駆体はアミノシランでよく、2秒の吸着期間で20sccm供給される。しかし、前駆体は他の材料の組合せでもよく、異なる流量で供給されてもよい。更に、吸着期間の長さは異なってもよい。
【0086】
吸着期間の開始時に、フッ素含有ガスと酸素含有ガスも供給される。フッ素含有ガスと酸素含有ガスを連続して供給する。この例示的処理では、フッ素含有ガス(例えばCF4)が100sccmで連続して供給され、酸素含有ガス(O2ガス)が300sccmで連続して供給される。しかし、他の形態のフッ素含有ガスと酸素含有ガスを異なる流量で供給してもよい。
【0087】
吸着期間が終了すると、反応チャンバ内のフッ素含有ガスと酸素含有ガスをパージする第1のパージ期間が実施される。この例示的処理では、第1のパージ期間の長さは1.5秒である。しかし、第1のパージ期間の長さは異なってもよい。フッ素含有ガスと酸素含有ガスの供給は、第1のパージ期間の間中継続して行ってもよい。或いは、フッ素含有ガスと酸素含有ガスの供給を第1のパージ期間の開始時に一時停止し、第1のパージ期間の終了時に再開してもよい。
【0088】
第1のパージ期間の完了後、RF電力が供給される改質期間が実施される。フッ素含有ガスと酸素含有ガスは、この改質期間の間中連続して供給される。この例示的処理では、改質期間の長さは1秒である。しかし、改質期間の長さは異なってもよい。この例示的処理では、RF電力は60MHzの連続波又は20kHzのパルス波として供給してもよい。しかし、他のRF電力値、波形スタイル、周波数を用いてもよい。
【0089】
改質期間の完了後、反応チャンバ内のフッ素含有ガスと酸素含有ガスをパージする第2のパージ期間が実施される。この例示的処理では、第2のパージ期間の長さは1秒である。しかし、第2のパージ期間の長さは異なってもよい。フッ素含有ガスと酸素含有ガスの供給は、第2のパージ期間の間中継続して行ってもよい。或いは、フッ素含有ガスと酸素含有ガスの供給を第2のパージ期間の開始時に一時停止し、第2のパージ期間の終了時に再開してもよい。
【0090】
第2のパージ期間の完了後、このサイクルを次の吸着期間から再開してもよい。この例示的処理のサイクルは、保護膜の膜厚が制御されるまで行ってもよい。一例として、保護膜の膜圧を制御するために吸着/第の1パージ/改質/第2のパージのサイクルを50回行ってもよい。
【0091】
図8は、マスクの開口部における側壁のCDに関する本開示の実施形態の効果を示す。特に、
図8は、凹部のCD(単位:nm)に対する凹部の深さZ(単位:μm、マスクの開口部を0とし、マスク表面から凹部の底面まで測定)を示している。
図8は、エッチングされた基板(「初期」)、従来のサブコンフォーマルALD処理を用いた基準基板(「基準」)、及び保護膜形成の間中CF
4が連続して供給される本開示によるサブコンフォーマルALD処理を用いた基板(「w/CF
4」)のデータを更に示している。
【0092】
図8に示すように、側壁のCDは、サブコンフォーマルALD処理を適用した場合、マスクの開口部に近づくほど(深さが0に近づくほど)異なる割合で変化している。
【0093】
初期基板とは、フルオロカーボンガス等でエッチングを行った後、且つサブコンフォーマルALD成膜を行う前の状態の基板である。
【0094】
基準基板では、側壁の中央部分から上側部分にかけて(-0.5μmから0μm)マスクの開口部に近づくにつれてCDが減少している。これは、従来のサブコンフォーマルALD処理の結果、保護膜の膜厚が増大したためである。
【0095】
一方、本開示に従ってサブコンフォーマルALD処理中にCF4を供給した場合、側壁の中央部分から上側部分にかけて(-0.5μmから0μm)マスクの開口部に近づくにつれて凹部のCDは増大し続けている(w/CF4)。
【0096】
したがって、
図8に示すように、サブコンフォーマルALD処理を適用し、サブコンフォーマルALD処理の間中CF
4を連続して供給することで、マスク上に形成される保護膜の膜厚を低減させるように制御することができる。ALD(サブコンフォーマルALD)処理においてCF
4を添加することにより、マスクの開口部における成膜量を減少させることができる。したがって、フッ素含有ガス(例えばCF
4)が処理中に供給されない基準のサブコンフォーマルALD処理と比較して、開口部の閉塞を抑制することができる。
【0097】
特に、側方エッチングが生じやすい部分(例:マスク直下)には膜が厚く形成され、マスク上には膜が薄く形成される。その結果、マスク開口部の縮小が抑制され、膜厚の分布が制御されることにより、凹部の形状が改善される。
【0098】
更に、本開示は、側方エッチングが生じやすい部分では膜が厚く、それ以外の部分、例えばマスク及び/又は凹部の底面では膜が薄くなるように形成するエッチング技術を提供する。また、本開示に係るサブコンフォーマルALD処理では、側方エッチングによる凹部のボーイングの発生を抑制しつつ、過剰エッチングにより凹部の底部を拡径することができる。
【0099】
図9Aから
図9Cは、エッチング層の凹部の底面にも保護膜が形成される本開示の他の実施形態を示す。
図5に示す処理の改変形態を用いて
図9Aから
図9Cに示す凹部を形成することができる。
【0100】
具体的には、工程510において、エッチング層910と、エッチング層910上に配置されたマスク920とを有する基板が提供される。工程520において、処理回路400は、マスク開口部930を介してエッチング層910を部分的にエッチングするように、エッチング装置300を制御する。
【0101】
工程530において、処理回路400は、基板上に保護膜940を形成するようにエッチング装置300を制御する。この場合、処理回路400は、エッチング層910の側壁上だけでなく凹部の底面上にも保護膜940を形成するようにエッチング装置300を制御する。工程540において、保護膜の底面をエッチングし、エッチング層910を更にエッチングしてエッチング層の深さを増大させるように、工程520と同様に基板を更にエッチングする。工程550において、凹部の側壁を十分に保護するために保護膜940を追加で形成する必要があるかについて処理回路400によって判定する。本発明者らが認識しているように、保護層の存在は、シリコン含有層の凹部の側壁が比較的低エネルギーのイオン衝突によって除去されることを防止する効果がある。一方、凹部の底面に当たるイオンは高エネルギーを有し、したがって凹部の底面に保護層が形成されていても、その底面を除去(エッチング)できる。したがって、保護層は、側壁をかすめる程度の低エネルギーのイオンでは除去されない程度に化学的に十分に強く、側壁の望ましくないエッチングに対しては優先的に側壁を保護する。一方、凹部の底部に直接衝突する高イオンは、凹部の底部の保護層をエッチングするのに十分な高エネルギーを有する。したがって、側壁のボーイングが抑制された高アスペクト比の凹部をエッチングすることが可能になる。
【0102】
保護膜640が更に必要な場合(工程550でYES)、本処理は工程530に戻る。保護膜640が更に必要でない場合(工程550でNO)、本処理は工程560に進む。工程560において、基板のエッチング層910を最終深さまで更にエッチングすると、本処理は完了する。
【0103】
図5及び
図6Aから
図6Cに関して上記で述べたように、保護膜940は、(1)エッチング層910の凹部の側壁面及び底面上に前駆体を吸着させ、(2)反応チャンバ内のガスをパージし、(3)前駆体を保護膜に変換し、(4)反応チャンバ内のガスを再度パージすることによって形成される。前駆体の吸着は、前駆体ガスのプラズマを発生させて行っても、プラズマを発生させずに行ってもよい。反応チャンバ内のガスのパージ工程は、任意選択であってもよい。更に、阻害ガスと改質ガスは、パージ中も連続して供給してもよいし、パージ前に停止し、パージ後に再開してもよい。別の例では、サブコンフォーマルALD又はALDのいずれかにおいて、前駆体の吸着後、改質ガス(例:酸素含有ガス)からプラズマを発生させて改質を行ってもよい。その後、阻害ガスを供給してプラズマを形成し、そのプラズマに基板を曝してもよい。
【0104】
図9Aから
図9Cの保護膜940を形成する例示的実施形態では、前駆体の供給時間及び/又は改質時間は、
図6Aから
図6Cの保護膜640の形成に関して説明したサブコンフォーマルALD処理における前駆体の供給時間及び/又は改質時間よりも長くなる。
【0105】
本開示の主題の実施形態について説明してきたが、上記は単なる例示にすぎず、限定ではなく、例によって示されたものにすぎないことが当業者には理解されるであろう。したがって、本明細書では特定の構成について述べてきたが、他の構成も採用可能である。多数の改変例及び他の実施形態(例えば、組合せ、配置変更等)が本開示から可能であり、それらは当業者の範囲に含まれ、本開示の主題及びそのいかなる等価物の範囲にも包含されることが企図される。本開示の実施形態の特徴を本発明の範囲内で組み合わせ、配置変更し、又は省略する等によって更なる実施形態を得ることができる。更に、特定の特徴のみを使用し、他の特徴を対応させて使用しない場合もある。したがって、本出願人は、本開示の主題の精神及び範囲内に含まれるかかる代替例、改変例、等価物、及び変形例を全て包括することを意図する。
【符号の説明】
【0106】
W…基板、100…積層体、110…基板、120…エッチング層、130…マスク、140…領域、200…基板処理システム、212、214、216、218…ロードポート、220…ローダ装置、222…ローダロボット、232、234…ロードロック室、240…搬送装置、242…搬送ロボット、252、254、256、258、300…エッチング装置、260…制御部、310…反応チャンバ、312…プラズマ、320…基部、322…静電チャック、330…上部電極、340…第1のRF電源、350…第2のRF電源、360…ガス源、370…排気装置、380…可変DC電源、400…処理回路、401…CPU、402…メモリ、404…記憶媒体ディスク、406…ネットワーク制御部、408…表示装置制御部、410…表示装置、412…汎用I/Oインターフェース、414…キーボード/マウス、416…タッチパネル、418…周辺機器、424…汎用記憶装置制御部、426…通信バス、428…ネットワーク、610…エッチング層、620…マスク層、630…開口部、640…保護膜、910…エッチング層、920…マスク、930…マスク開口部、940…保護膜。