(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-17
(45)【発行日】2024-10-25
(54)【発明の名称】酸性水中油型乳化調味料
(51)【国際特許分類】
A23L 27/60 20160101AFI20241018BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20241018BHJP
【FI】
A23L27/60 A
A23L5/00 H
(21)【出願番号】P 2024011332
(22)【出願日】2024-01-29
【審査請求日】2024-02-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001421
【氏名又は名称】キユーピー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【氏名又は名称】小島 一真
(72)【発明者】
【氏名】松崎 光伯
(72)【発明者】
【氏名】高野 森乃介
(72)【発明者】
【氏名】松本 諒平
【審査官】関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-028985(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0055520(KR,A)
【文献】韓国公開特許第2012-0012577(KR,A)
【文献】韓国公開特許第2022-0084681(KR,A)
【文献】米マヨレギュラー 3本セット [株式会社ヤサカアレルノン食品],The wayback machine [online],2023年05月31日,インターネット<URL:https://web.archive.org/web/20230531203542/https://shiganomeihin.jp/?pid=133701458>,[検索日2024.04.23]
【文献】キヨトク 卵も小麦も 使わずに国産大豆と 米油で作った豆乳マ ヨ 280g×2個,Amazon.co.jp [online],2021年12月16日,インターネット<URL:https://www.amazon.co.jp/dp/B09NPP2KTG>,[検索日2024.04.23]
【文献】キユーピーエッグケア(卵不使用) | 商品情報 | キユーピー,The wayback machine [online],2023年01月20日,インターネット<URL:https://web.archive.org/web/20230120200849/https://www.kewpie.co.jp/products/product/mayonnaise/mayonnaise/4901577090301/,[検索日2024.04.23]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 27/60
A23L 5/00
A23D 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食用油脂及び澱粉を含有し、かつ、卵黄を含有しない酸性水中油型乳化調味料であって、
前記食用油脂の含有量が、前記酸性水中油型乳化調味料の全量に対して
30質量%以上であり、
前記食用油脂が、米油を含有し、
前記米油の含有量が、前記食用油脂の全量に対して
3質量%以上であり、
前記澱粉が、α化米澱粉及び乳化性澱粉を含有し、
前記α化米澱粉の含有量が、前記乳化性澱粉1質量部に対して0.01質量部以上10質量部以下であることを特徴とする、
酸性水中油型乳化調味料。
【請求項2】
前記食用油脂の含有量が、前記酸性水中油型乳化調味料の全量に対して80質量%以下であることを特徴とする、
請求項1に記載の酸性水中油型乳化調味料。
【請求項3】
前記α化米澱粉の含有量が、前記乳化性澱粉1質量部に対して0.02質量部以上5.0質量部以下であることを特徴とする、
請求項1に記載の酸性水中油型乳化調味料。
【請求項4】
前記乳化性澱粉の含有量が、前記酸性水中油型乳化調味料の全量に対して0.5質量%以上10質量%以下であることを特徴とする、
請求項1に記載の酸性水中油型乳化調味料。
【請求項5】
前記食用油脂の含有量が、前記酸性水中油型乳化調味料の全量に対して35質量%以上であり、
請求項1に記載の酸性水中油型乳化調味料。
【請求項6】
前記米油の含有量が、前記食用油脂の全量に対して5質量%以上であることを特徴とする、
請求項1に記載の酸性水中油型乳化調味料。
【請求項7】
前記米油の含有量が、前記食用油脂の全量に対して10質量%以上であることを特徴とする、
請求項1に記載の酸性水中油型乳化調味料。
【請求項8】
前記酸性水中油型乳化調味料が、酸味料を含むことを特徴とする、
請求項1に記載の酸性水中油型乳化調味料。
【請求項9】
前記酸味料が、米酢を含むことを特徴とする、
請求項
8に記載の酸性水中油型乳化調味料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸性水中油型乳化調味料に関し、詳細には、食用油脂及び澱粉を含有し、かつ、卵黄を含有しない酸性水中油型乳化調味料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、調味料には、動物性素材を配合することで、コク味を付与してきた。一方、近年では、健康配慮や低カロリー化の観点等から動物性素材を配合せずに、植物性素材のみを配合した植物性調味料が望まれている。
【0003】
しかし、植物性素材は、動物性素材に比べて、調味料にコク味を付与することが困難であった。例えば、動物性素材である卵黄を使用しないマヨネーズはコク味が不足したり、風味が劣化したりするため、コク味や風味を補うために食用油脂を多量に配合したり、加工澱粉を配合したりする等の工夫がされている。例えば、特許文献1では、経時的な風味劣化を抑制し、乳化性が安定した乳化状マヨネーズ様食品を得るために、卵黄を使用しない乳化状マヨネーズ様食品に、澱粉又はその加水分解物とアルケニルコハク酸とからなるエステル化物を配合することが提案されている。また、特許文献2では、風味及び保形性に優れる水中油型乳化調味料を得るために、卵黄を使用しない水中油型乳化調味料に、粘度の異なる2種類のオクテニルコハク酸処理澱粉を含む混合物を配合することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2004/45311号
【文献】国際公開第2019/65722号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、本発明者らは、酸性水中油型乳化調味料にコク味を付与するため食用油脂を多量に配合したり、加工澱粉を配合した場合、酸性水中油型乳化調味料のすっきりとした後味が感じられず、加工澱粉由来のざらつきにより口どけが悪くなるという課題を知見した。そのため、本発明の目的は、口どけ、すっきりとした後味、及びコク味に優れる酸性水中油型乳化調味料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、驚くべきことに、食用油脂及び澱粉を含有し、かつ、卵黄を含有しない酸性水中油型乳化調味料において、米油の含有量を調節し、かつ、α化米澱粉の含有量を調節することで、上記課題を解決できることを知見した。本発明者は、当該知見に基づいて、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1] 食用油脂及び澱粉を含有し、かつ、卵黄を含有しない酸性水中油型乳化調味料であって、
前記食用油脂の含有量が、前記酸性水中油型乳化調味料の全量に対して20質量%以上であり、
前記食用油脂が、米油を含有し、
前記米油の含有量が、前記食用油脂の全量に対して2質量%以上であり、
前記澱粉が、α化米澱粉及び乳化性澱粉を含有し、
前記α化米澱粉の含有量が、前記乳化性澱粉1質量部に対して0.01質量部以上10質量部以下であることを特徴とする、
酸性水中油型乳化調味料。
[2] 前記食用油脂の含有量が、前記酸性水中油型乳化調味料の全量に対して80質量%以下であることを特徴とする、
[1]に記載の酸性水中油型乳化調味料。
[3] 前記α化米澱粉の含有量が、前記乳化性澱粉1質量部に対して0.02質量部以上5.0質量部以下であることを特徴とする、
[1]または[2]に記載の酸性水中油型乳化調味料。
[4] 前記乳化性澱粉の含有量が、前記酸性水中油型乳化調味料の全量に対して0.5質量%以上10質量%以下であることを特徴とする、
[1]~[3]のいずれかに記載の酸性水中油型乳化調味料。
[5] 前記米油の含有量が、前記食用油脂の全量に対して10質量%以上であることを特徴とする、
[1]~[4]のいずれかに記載の酸性水中油型乳化調味料。
[6] 前記酸性水中油型乳化調味料が、酸味料を含むことを特徴とする、
[1]~[5]のいずれかに記載の酸性水中油型乳化調味料。
[7] 前記酸味料が、米酢を含むことを特徴とする、
[6]に記載の酸性水中油型乳化調味料。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、口どけ、すっきりとした後味、及びコク味に優れる酸性水中油型乳化調味料を提供することができる。このような酸性水中油型乳化調味料は消費者の食欲を惹起することができ、酸性水中油型乳化調味料のさらなる市場拡大が期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<酸性水中油型乳化調味料>
本発明の酸性水中油型乳化調味料は、少なくとも、食用油脂及び澱粉を含み、水及び調味料等の他の原料等をさらに含んでもよい。また、本発明の酸性水中油型乳化食品は、卵黄を含有しない。
【0010】
酸性水中油型乳化調味料は、油脂が油滴として水相中に略均一に分散し、水中油型に乳化された調味料である。酸性水中油型乳化調味料としては、例えば、マヨネーズ、マヨネーズ様調味料、ドレッシング、ソース、タレ、及びこれらに類する他の食品が挙げられる。本発明におけるマヨネーズ様調味料には、消費者庁の「食品表示基準」で定めるマヨネーズと類似の性状(例えば、味、外観、主原料等)を有しながら成分組成が食品表示基準に合致しない類似商品群も含まれる。
【0011】
(酸性水中油型乳化調味料のpH)
酸性水中油型乳化調味料のpHは、特に限定されないが、好ましくは2.0以上4.6以下であり、下限値がより好ましくは2.2以上であり、さらに好ましくは2.4以上であり、さらにより好ましくは2.7以上であり、上限値が好ましくは4.4以下であり、より好ましくは4.2以下であり、さらに好ましくは4.0以下であり、さらにより好ましくは3.7以下である。酸性水中油型乳化調味料のpHが上記範囲内であれば、酸性水中油型乳化調味料の微生物発生を制御して保存性を高めながら、酸性水中油型乳化調味料の風味のバランスを良好にすることができる。なお、酸性水中油型乳化調味料のpHの値は、1気圧、品温20℃とした時に、pH測定器(株式会社堀場製作所製卓上型pHメータF-72)を用いて測定した値である。
【0012】
(酸性水中油型乳化調味料の水分含有量)
酸性水中油型乳化調味料の水分含有量は、特に限定されないが、下限値が好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上であり、さらに好ましくは15質量%以上であり、また、上限値が好ましくは70質量%以下であり、より好ましくは60質量%以下であり、さらに好ましくは55質量%以下であり、さらにより好ましくは50質量%以下である。
【0013】
(食用油脂)
酸性水中油型乳化調味料に用いる食用油脂は、少なくとも米油を含む。本発明における米油とは、日本農林規格(JAS規格)に定める精製こめ油及びこめサラダ油が含まれるが、これに類似するものも含まれる。
【0014】
食用油脂は、米油以外の他の植物性油脂をさらに含んでもよい。米油以外の他の植物性油脂としては、例えば、大豆油、菜種油、パーム油、綿実油、コーン油、ひまわり油、サフラワー油、胡麻油、オリーブ油、亜麻仁油、米油、椿油、荏胡麻油、グレープシードオイル、ピーナッツオイル、アーモンドオイル、アボカドオイル等を挙げることができる。これらの中でも、大豆油、菜種油、コーン油、パーム油、又はこれらの混合油を用いることが好ましい。これらの他の植物性油脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0015】
食用油脂の含有量は、酸性水中油型乳化調味料の全量に対して、下限値が20質量%以上であり、好ましくは25質量%以上であり、より好ましくは30質量%以上であり、さらに好ましくは35質量%以上であり、さらにより好ましくは40質量%以上であり、また、上限値が好ましくは80質量%以下であり、より好ましくは75質量%以下であり、さらに好ましくは70質量%以下である。食用油脂の含有量が上記数値範囲内であれば、コク味を感じ易くなる。
【0016】
米油の含有量は、食用油脂の全量に対して、下限値が2質量%以上であり、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上であり、さらに好ましくは15質量%以上であり、また、上限値は100質量%以下であってもよく、50質量%以下であってもよい。米油の含有量が上記数値範囲内であれば、コク味を感じ易くなる。
【0017】
(澱粉)
酸性水中油型乳化調味料に用いる澱粉は、α化米澱粉及び乳化性澱粉を含む。酸性水中油型乳化調味料にα化米澱粉及び乳化性澱粉の両方を特定の割合で配合することで、口どけ、すっきりとした後味、及びコク味に優れた酸性水中油型乳化調味料を得ることができる。
【0018】
(α化米澱粉)
α化米澱粉とは、米澱粉に従来公知のα化処理(加熱乾燥等の物理的処理)を施して得られるものであり、化学的処理や酵素的処理が施された加工澱粉とは異なるものである。また、α化米澱粉として、米自体に従来公知のα化処理を施して得られたα化米の粉砕物(α化米粉)を用いてもよい。米には通常70~80質量%の澱粉が含まれているため、α化米粉には最大で70~80質量%のα化米澱粉が含まれる。なお、α化米粉のサイズは特に限定されず、酸性水中油型乳化調味料に配合可能なサイズであればよい。
【0019】
α化米澱粉の含有量は、乳化性澱粉1質量部に対して、0.01質量部以上10質量部以下であり、好ましくは0.02質量部以上5.0質量部以下であり、より好ましくは0.05質量部以上3.0質量部以下であり、さらに好ましくは0.1質量部以上2.0質量部以下である。
また、α化米澱粉の含有量は、酸性水中油型乳化調味料の全量に対して、下限値は好ましくは0.05質量%以上であり、より好ましくは0.1質量%以上であり、さらに好ましくは0.2質量%以上であり、また、上限値は好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは7質量%以下であり、さらに好ましくは5質量%以下である。
α化米澱粉の含有量が上記範囲内であれば、口どけ、すっきりとした後味、及びコク味に優れた酸性水中油型乳化調味料を得ることができる。
【0020】
(乳化性澱粉)
乳化性澱粉としては、乳化能を有する加工澱粉を用いることができる。乳化性澱粉としては、馬鈴薯澱粉、トウモロコシ澱粉コーンスターチ(例えば、スイートコーン由来、デントコーン由来、ワキシーコーン由来のコーンスターチ)、タピオカ澱粉、サゴ澱粉、甘藷澱粉、小麦澱粉、及び米澱粉等の澱粉に乳化能を持たせる加工処理等を行ったものが挙げられる。例えば、乳化性澱粉としては、オクテニルコハク酸澱粉ナトリウム等のアルケニルコハク酸澱粉等が挙げられる。これらの1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
乳化性澱粉の含有量は、酸性水中油型乳化調味料の全量に対して、下限値は好ましくは0.5質量%以上であり、より好ましくは1.0質量%以上であり、さらに好ましくは1.5質量%以上であり、また、上限値は好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは7質量%以下であり、さらに好ましくは5質量%以下である。乳化性澱粉の含有量が上記範囲内であれば、酸性水中油型乳化調味料は乳化状態を維持し易い。
【0022】
(酸味料)
酸性水中油型乳化調味料に用いる酸味料は、特に限定されず従来公知の酸性水中油型乳化調味料用の酸味料が挙げられる。酸味料としては、例えば、食酢(酢酸)、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、ソルビン酸、安息香酸、アジピン酸、フマル酸、コハク酸、フィチン酸等の有機酸、レモン果汁、リンゴ果汁、オレンジ果汁、乳酸発酵乳等を用いることができる。これらの酸味料は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0023】
本発明においては、酸味料として食酢を用いることが好ましい。食酢の酸度は、特に限定されないが、下限値が好ましくは4.0質量%以上であり、より好ましくは4.5質量%以上であり、また、上限値が好ましくは15質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下であり、さらに好ましくは8.0質量%以下である。本発明における食酢とは、消費者庁が定める「食品表示基準」に列挙される食酢が挙げられるが、これに類似するものも含まれる。より詳細には、食酢としては、例えば、米、麦芽、酒粕等の穀類もしくはそれらの加工品、ぶどう、りんご等の果実、タマネギ、ニンジン、トマト等の野菜、その他農産物、アルコール等を酢酸発酵させたものや、別途酢酸を添加したもの、又はこれらを混合したものが挙げられる。糖類、有機酸、アミノ酸、食塩等を加えたものもこれに含まれる。このような食酢としては、例えば、米酢、黒酢、五穀酢、ワインビネガー、りんご酢、トマト酢、もろみ酢、及び梅酢等が挙げられる。これらの中でも、米酢をα化米澱粉と併用することで風味が向上するため、米酢を用いることが好ましい。
【0024】
酸味料の含有量は、酸味料の種類や酸度に応じて適宜調節することができる。例えば、酸味料として食酢を用いる場合、食酢の含有量は、酸性水中油型乳化調味料の全量に対して、好ましくは1質量%以上10質量%以下であり、下限値がより好ましくは2質量%以上であり、さらに好ましくは3質量%以上であり、また、上限値はより好ましくは9質量%以下であり、さらに好ましくは8質量%以下である。酸味料の含有量が上記範囲内であれば、風味を良好にしながら、すっきりとした後味が感じられる。
【0025】
(他の原料)
酸性水中油型乳化調味料は、上述した原料以外に、本発明の効果を損なわない範囲で酸性水中油型乳化調味料に通常用いられている各種原料を適宜選択し含有させることができる。例えば、醤油、みりん、食塩、胡麻、グルタミン酸ナトリウム、ブイヨン等の調味料、ごま、からし粉、胡椒等の香辛料、レシチン、リゾレシチン、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等の乳化剤、アスコルビン酸、ビタミンE等の酸化防止剤、静菌剤等が挙げられる。
【0026】
<酸性水中油型乳化調味料の製造方法>
本発明の酸性水中油型乳化調味料の製造方法の一例について説明する。例えば、まず、水、酸味料、α化米澱粉、乳化性澱粉、及び調味料等の他の水相原料を混合して、水相を調整する。続いて、上記で調整した水相に油相原料である米油等の食用油脂を注加し、ミキサー等で乳化して、水相中に油相を乳化分散させた酸性水中油型乳化調味料を得ることができる。
【0027】
酸性水中油型乳化調味料の製造には、通常の酸性水中油型乳化調味料の製造に使われる装置を用いることができる。このような装置としては、例えば、一般的な撹拌機、スティックミキサー、スタンドミキサー、ホモミキサー等が挙げられる。撹拌機の撹拌羽形状としては、例えばプロペラ翼、タービン翼、パドル翼、アンカー翼等が挙げられる。
【実施例】
【0028】
以下に、実施例と比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例の内容に限定して解釈されるものではない。
【0029】
<酸性水中油型乳化調味料の製造例>
[実施例1]
表1に記載の配合量に従い、酸性水中油型乳化調味料を調整した。具体的には、まず、米酢(酸度4.6%)、α化米澱粉、乳化性澱粉(オクテニルコハク酸澱粉ナトリウム)、調味料(食塩及び砂糖)、及び水を均一になるように混合して水相を調整した。続いて、水相に食用植物油脂(米油及び大豆油)を注加し、乳化処理を行って、酸性水中油型乳化調味料を製造した。
【0030】
[実施例2]
米油の配合量を5質量%に変更し、大豆油の配合量を45質量%に変更し、α化米澱粉の配合量を2.5質量%に変更し、水の配合量を33質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして酸性水中油型乳化調味料を製造した。
【0031】
[実施例3]
米油の配合量を10質量%に変更し、大豆油の配合量を50質量%に変更し、α化米澱粉の配合量を1.0質量%に変更し、水の配合量を24.5質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして酸性水中油型乳化調味料を製造した。
【0032】
[実施例4]
米油の配合量を20質量%に変更し、大豆油の配合量を50質量%に変更し、α化米澱粉を配合せずにα化米粉(α化米澱粉含有量:80質量%)を0.5質量%配合し、水の配合量を15質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして酸性水中油型乳化調味料を製造した。
【0033】
[実施例5]
米油の配合量を70質量%に変更し、大豆油を配合せず、α化米澱粉の配合量を0.1質量%に変更し、水の配合量を15.4質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして酸性水中油型乳化調味料を製造した。
【0034】
[実施例6]
米油の配合量を20質量%に変更し、大豆油の配合量を20質量%に変更し、α化米粉を3質量%配合し、乳化性澱粉の配合量を2.0質量%に変更し、水の配合量を42.5質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして酸性水中油型乳化調味料を製造した。
【0035】
[比較例1]
米油の配合量を60質量%に変更し、大豆油を配合せず、α化米澱粉を配合せずにα化コーン澱粉を2質量%配合し、水の配合量を23.5質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして酸性水中油型乳化調味料を製造した。
【0036】
[比較例2]
米油を配合せず、大豆油の配合量を60質量%に変更し、α化米澱粉の配合量を2.0質量%に変更し、水の配合量を23.5質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして酸性水中油型乳化調味料を製造した。
【0037】
実施例1~6及び比較例1~2の酸性水中油型乳化調味料について、各原料の配合量を表1に示した。
【0038】
【0039】
<酸性水中油型乳化調味料の評価>
(pH測定)
上記で得られた実施例1~6及び比較例1~2の酸性水中油型乳化調味料について、1気圧、品温20℃とした時に、pH測定器(株式会社堀場製作所製卓上型pHメータF-72)を用いてpHを測定した。測定の結果、実施例1~6及び比較例1~2の酸性水中油型乳化調味料のpHは全て2.7以上3.7以下の範囲内であった。
【0040】
(官能評価)
上記で得られた実施例1~6及び比較例1~2の酸性水中油型乳化調味料について、複数の訓練されたパネルにより、下記の5段階の評価基準で、「口どけ」、「すっきりとした後味」及び「コク味」の各項目を評価した。各パネルの点数の平均値を評価点として表2に示した。「口どけ」、「すっきりとした後味」及び「コク味」の評価点がいずれも2点以上であれば、良好な結果であると言える。
<評価基準>
(口どけ)
5点:口どけが非常に良かった。
4点:口どけが十分に良かった。
3点:口どけが多少良かった。
2点:口どけが微かに良かった。
1点:口どけが悪かった。
(すっきりとした後味)
5点:すっきりとした後味が非常に感じられた。
4点:すっきりとした後味が十分に感じられた。
3点:すっきりとした後味が多少感じられた。
2点:すっきりとした後味が微かに感じられた。
1点:すっきりとした後味が感じられなかった。
(コク味)
5点:コク味が非常に感じられた。
4点:コク味が十分に感じられた。
3点:コク味が多少感じられた。
2点:コク味が微かに感じられた。
1点:コク味が感じられなかった。
【0041】
【0042】
実施例1~6の酸性水中油型乳化調味料は、「口どけ」、「すっきりとした後味」及び「コク味」の評価点がいずれも2点以上であり、商品として優れていた。
比較例1の酸性水中油型乳化調味料は、α化米澱粉を配合しなかったため、口どけが悪かった。
比較例2の酸性水中油型乳化調味料は、米油を配合しなかったため、コク味が感じられなかった。
【要約】
【課題】口どけ、すっきりとした後味、及びコク味に優れる酸性水中油型乳化調味料の提供。
【解決手段】本発明は、食用油脂及び澱粉を含有し、かつ、卵黄を含有しない酸性水中油型乳化調味料であって、
前記食用油脂の含有量が、前記酸性水中油型乳化調味料の全量に対して20質量%以上であり、
前記食用油脂が、米油を含有し、
前記米油の含有量が、前記食用油脂の全量に対して2質量%以上であり、
前記澱粉が、α化米澱粉及び乳化性澱粉を含有し、
前記α化米澱粉の含有量が、前記乳化性澱粉1質量部に対して0.01質量部以上10質量部以下であることを特徴とする。
【選択図】なし