(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】生体表面のコンフォーマルコーティング
(51)【国際特許分類】
A61L 27/38 20060101AFI20241021BHJP
A61L 27/18 20060101ALI20241021BHJP
A61L 27/40 20060101ALI20241021BHJP
A61K 35/12 20150101ALI20241021BHJP
A61K 35/39 20150101ALI20241021BHJP
A61K 35/545 20150101ALI20241021BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20241021BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20241021BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241021BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20241021BHJP
【FI】
A61L27/38
A61L27/18
A61L27/40
A61K35/12
A61K35/39
A61K35/545
A61K47/10
A61K47/34
A61P43/00 105
A61P3/10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021198373
(22)【出願日】2021-12-07
(62)【分割の表示】P 2019529193の分割
【原出願日】2017-12-13
【審査請求日】2021-12-07
(32)【優先日】2016-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002934
【氏名又は名称】武田薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ベンカット アール. ガリガパティ
(72)【発明者】
【氏名】松浦 哲也
【審査官】高橋 樹理
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0147483(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0071997(US,A1)
【文献】Artificial Cells, Blood Substituents, and Biotechnology,2004年,Vol.32, No.1,p.91-104
【文献】Journal of Materials Chemistry B,2015年,Vol.3,p.2350-2361
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 27/00-27/60
A61K 35/00-35/768
A61K 47/00-47/59
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面にハイドロゲルコンフォーマルコーティングを有する生体表面を含む組成物であって、前記
ハイドロゲルコンフォーマルコーティングは、マルチアームポリマーの共有結合性架橋ネットワークを含み、
前記マルチアームポリマーのネットワークはトリアゾール連結を介して架橋しており、前記マルチアームポリマーのネットワークは、ポリエチレングリコール(PEG)、メタクリロイルオキシエチルホスホコリン
コポリマー、またはそれらの組み合わせを含
み、前記生体表面が細胞または細胞スフェロイドであり、前記コンフォーマルコーティングは前記表面の全体を覆って均一である、組成物。
【請求項2】
前記マルチアームポリマーのネットワークが、PEGを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記マルチアームポリマーのネットワークが、5~10kDaの4アームPEGを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記マルチアームポリマーのネットワークが、メタクリロイルオキシエチルホスホコリンコポリマーを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記マルチアームポリマーのネットワークが、100~200kDaでありホスホコリン60~90%のメタクリロイルオキシエチルホスホコリンコポリマーを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記マルチアームポリマーのネットワークが、5~10kDaの4アームPEG、100~200kDaでありホスホコリン60~90%のメタクリロイルオキシエチルホスホコリンコポリマー、またはその組み合わせである、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記マルチアームポリマーのネットワークが、PEGと、メタクリロイルオキシエチルホスホコリンコポリマーとの組み合わせである、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記マルチアームポリマーのネットワークが、5~10kDaの4アームPEGと、100~200kDaでありホスホコリン60~90%のメタクリロイルオキシエチルホスホコリンコポリマーとの組み合わせである、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記マルチアームポリマーのネットワークが、チアゾール連結をもたらすアジド-DBCOを含むクリックケミストリー反応対間の反応を介して架橋している、請求項1~
8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記コンフォーマルコーティングの厚さが、約20μm未満である、請求項1~
9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記生体表面が、生細胞を含む、請求項1~
10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
前記生体表面が、動物細胞を含む、請求項1~
11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
前記生体表面が、哺乳動物細胞を含む、請求項1~
12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
前記生体表面が、ヒト細胞を含む、請求項1~
13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
前記細胞が、インスリン産生細胞である、請求項
11~14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
前記細胞が、多能性幹細胞であり、必要に応じて誘導多能性幹細胞である、請求項
11~15のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項17】
約2mM~約20mMのグルコースで刺激すると、前記コンフォーマルコーティングに供されていない好適な対照細胞と比べて、前記細胞が、前記好適な対照細胞と実質的に同様である動態で及び/または濃度でインスリンを分泌する、請求項
15または16に記載の組成物。
【請求項18】
薬学的に許容される希釈剤または賦形剤をさらに含み、必要に応じて、前記生体表面が、シリンジ中または生体適合性容器中に含有される、請求項1~
17のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項19】
生物学的機能の欠如またはそれ以外の方法による欠乏を特徴とする障害を治療するための、請求項1~
18のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項20】
前記障害が、1型糖尿病である、請求項
19に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
先願
本出願は、2016年12月13日に出願された米国仮出願第62/433,449号の利益を主張するものである。上記出願の教示全体は、参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、薄い半透過性表面を有する生体表面(例えば、細胞、細胞集塊、組織、臓器、及びハイブリッド合成臓器)、すなわちコンフォーマルコーティングを施された生体表面、及びそれらの関連する作製方法に関する。
【背景技術】
【0003】
細胞ベースの療法、例えば、インスリン依存性糖尿病の治療のための膵島移植は、部分的には、根底にある宿主の免疫系活性に起因して限定されている。移植細胞を宿主の免疫系から隔離するための既存のバリアベースの方法は、成功が限られてきた。生細胞に適用されるマイクロカプセル化方法は、そのサイズの差異及びマイクロカプセル環境における細胞/集塊の様々な不規則分布のため、栄養及び酸素拡散の制限などのいくつかの深刻な欠点を有する。これらの問題は通常、細胞の機能及び寿命を脅かすものである。ハイドロゲルコンフォーマルコーティングは、慣習的なマイクロカプセル化に一般に伴うこれらの問題を克服できる可能性がある。コンフォーマルコーティングの理論上の利点(既存の様式によっては満たされないが)のうちのいくつかには、細胞へのより優れた栄養及び酸素供給により寿命が延長されること、薬物を分泌する細胞の機能性が改善されること、ならびに少量で高用量の細胞を負荷する機会が挙げられる。コンフォーマルコーティングのいくつかの利点にもかかわらず、生細胞に適用するために利用可能な好適な方法は何ら存在せず、コンフォーマルコーティングを参照する既存の方法は一般に非常に厚く、マイクロカプセル化の欠点の多くを共有している。さらに、二相系、エマルションベースの方法、及びラジカル/光開始法、微少流体法、及び液液界面法などの既存の方法は、1)生細胞を修飾してそれに有害作用をもたらす、2)50~75ミクロンを超える厚いコートを形成することが多い、ならびに3)再現性及び拡張性に悩まされる。しがたって、コンフォーマルコーティングを有する(修飾または損傷が実質的にない)生体表面、及びそれらの関連する作製方法に対する必要性が存在し、この方法は、生理学的条件下で行うことができ、再現可能、拡張可能であり、より優れた結果をもたらすことが好ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、とりわけ、真のコンフォーマルコーティングを有する(修飾または損傷が実質的にない)生体表面、及びそれらの関連する作製方法であって、生理学的条件下で行うことができ、再現可能、拡張可能であり、より優れた結果をもたらす該方法を提供する。
【0005】
本発明によって提供される組成物は、ハイドロゲルなどのコンフォーマルコーティングを有し、これは生体表面が、損傷または修飾をほとんどまたは全く伴わずに、例えば、細胞表面分子の修飾を伴わずに、例えば、ハイドロゲルを共有結合性で生体表面に複合体化することなく、あるいは別様に、例えば、ジスルフィド結合を破壊する、またはカルボキシレート、アミン、もしくはヒドロキシル官能基を修飾する、またはDNAを修飾することによって(例えば、光活性化を必要とするプロセスにおいて)(これは細胞をマトリックスに包理するために使用される多くのプロセスにつきものである)、表面を修飾することなく、生物学的機能を保持できるようにする。本明細書に例示されるように、例えば、マルチアームPEG分子及び線状メタクリロイルオキシエチルコポリマー、例えば、ホスホコリンまたは他の双性イオン基とのメタクリロイルオキシエチルコポリマー、例えば、ホスホコリン及び誘導体化アリルアミン(例えば、クリック反応性基などの付加された官能基を有し、任意選択的に、架橋を促進するための介在リンカーを有する)とのメタクリロイルオキシエチルコポリマーから形成されたハイドロゲルを含む、当業者に既知の様々なポリマーがハイドロゲルに好適であろう。
【0006】
本発明によって提供される組成物を形成するための数多くの手法が本明細書に記載される。本発明によって提供される方法の利点には、容易性、再現性、拡張性、及び生理学的適合性が含まれる。細胞または細胞集塊などの生体表面は、過酷な条件に曝露されないため、他のコーティング方法に関連するある特定の変異原性の可能性がある工程を回避しながら、より優れた生存率及び機能性を維持する。ある特定の本発明によって提供される方法の1つの有利な態様は、水性相と、マルチアームポリマーと会合させたクリック反応性官能基、例えば、クリック官能性マルチアームPEG分子、ならびにメタクリロイルオキシエチルホスホコリン及びアリルアミンに基づくクリック官能性線状コポリマー(市販のLIPIDURE(登録商標)-NH01など)との使用である。
【0007】
また、関連する態様では、本発明によって提供される組成物は、例えば、障害の治療または緩和方法において、ヒトなどの対象に投与することができる。例えば、生物学的機能(例えば、インスリン産生)の欠如あるいは欠乏を特徴とする障害(1型糖尿病などのインスリン欠乏症)が、本発明によって提供される有効量の組成物、例えば、コンフォーマルコーティングを施された生体表面(例えば、インスリン産生細胞)を含む組成物を投与することによって、治療され得る。
特定の実施形態では、例えば、以下が提供される:
(項目1)
ハイドロゲルコンフォーマルコーティングを有する生体表面を含む組成物であって、前記コンフォーマルコーティングを有しない好適な対照生体表面と比べて、前記生体表面が、i)機能を保持する、及びii)損傷または他の形態の表面修飾を実質的に有しないか、またはごく少量しか有しない、前記組成物。
(項目2)
前記ハイドロゲルが、5~10kDaの4アームPEG、もしくは100~200kDaでありホスホコリン60~90%のメタクリロイルオキシエチルホスホコリンコポリマー、またはそれらの組み合わせなどのマルチアームポリマーの共有結合性架橋ネットワークを含む、項目1に記載の組成物。
(項目3)
ハイドロゲル中での生体表面のコンフォーマルコーティング方法であって、
2つの水性層を含む系を用意することであって、第1の層が、約0.25%~約2%(W/V)の懸濁化剤、約1%~約25%(W/V)の第1の官能化マルチアームポリマー、及び前記生体表面の溶液を含み、
第2の層が、糖類のクッション及び約1%~約25%(W/V)の第2の官能化マルチアームポリマーを含み、前記第2の官能化マルチアームポリマーの官能基が、生理学的条件下で前記第1の官能化マルチアームポリマーの官能基と反応性である、前記用意することと、
前記生体表面を前記第2の層の中に通過させ、それによって前記第1及び第2の官能基が反応し、前記生体表面にコンフォーマルコーティングを施す架橋したハイドロゲルを形成できるようにすることと、を含む、前記方法。
(項目4)
前記第1の官能化マルチアームポリマーが、5~10kDaの4アームPEGである、項目3に記載の方法。
(項目5)
前記第1の官能化マルチアームポリマーが、100~200kDaでありホスホコリン60~90%のメタクリロイルオキシエチルホスホコリンコポリマーである、項目3に記載の方法。
(項目6)
前記第1の官能化マルチアームポリマーの前記官能基が、リジン-DBCOを含むDBCO、またはアジドなどのクリック官能基である、項目3~5のいずれか1項に記載の方法。
(項目7)
前記第2の官能化マルチアームポリマーが、5~10kDaの4アームPEGである、項目3~6のいずれか1項に記載の方法。
(項目8)
前記第2の官能化マルチアームポリマーが、100~200kDaでありホスホコリン60~90%のメタクリロイルオキシエチルホスホコリンコポリマーである、項目3~6のいずれか1項に記載の方法。
(項目9)
前記第2の官能化マルチアームポリマーの前記官能基が、アジドまたはDBCOなどのクリック官能基である、項目3~8のいずれか1項に記載の方法。
(項目10)
前記第2の層が第2の懸濁化剤を含み、任意選択的に、前記第2の懸濁化剤が、前記第1の層における前記懸濁化剤と同じである、項目3~9のいずれか1項に記載の方法。
(項目11)
前記系が、前記第1の層と前記第2の層との間に介在層を含み、任意選択的に、前記介在層が気層である、項目3~10のいずれか1項に記載の方法。
(項目12)
前記懸濁化剤が、約1%で存在する約1~8MDaの分子量を有するPEOである、項目3~11のいずれか1項に記載の方法。
(項目13)
ハイドロゲル中での生体表面のコンフォーマルコーティング方法であって、
介在する気層によって分離された2つの水性層を含む系を用意することであって、第1の層が、約0.25%~約2%(W/V)の懸濁化剤、約1%~約25%(W/V)の第1の官能化マルチアームポリマー、及び前記生体表面の溶液を含み、
第2の層が、約0.25%~約2%(W/V)の懸濁化剤、糖類のクッション、及び約1%~約25%(W/V)の第2の官能化マルチアームポリマーの溶液を含み、前記第2の官能化マルチアームポリマーの官能基が、生理学的条件下で前記第1の官能化マルチアームポリマーの官能基と反応性である、前記用意することと、
前記生体表面を前記第2の層の中に通過させ、それによって前記第1及び第2の官能基が反応し、前記生体表面にコンフォーマルコーティングを施す架橋したハイドロゲルを形成できるようにすることと、を含み、前記第1の官能化マルチアームポリマーが、メタクリロイルオキシエチルホスホコリンコポリマーである、前記方法。
(項目14)
前記第1の層が、前記第2の層に連続的に添加され、任意選択的に、前記第2の層が、前記混合物が遠心力下で移動できるように寸法決めされた開口部を有する先細サイドアームを通した前記第1の層の前記添加に好適な容器内にある、項目13に記載の方法。
(項目15)
前記生体表面が、遠心分離によって前記第2の層の中に通過させられる、項目3~14のいずれか1項に記載の方法。
(項目16)
前記コンフォーマルコーティングの厚さが、約20μm未満である、先行項目のいずれか1項に記載の組成物または方法。
(項目17)
前記生体表面が、ヒト細胞などの哺乳類細胞などの動物細胞などの、生細胞を含む、先行項目のいずれか1項に記載の組成物または方法。
(項目18)
前記生細胞がインスリン産生細胞である、項目17に記載の組成物または方法。
(項目19)
前記細胞が、誘導多能性幹細胞などの多能性幹細胞である、項目17または18に記載の組成物または方法。
(項目20)
約2mM~約20mMのグルコースで刺激すると、前記コンフォーマルコーティングに供されていない好適な対照細胞と比べて、前記細胞が、前記好適な対照細胞と実質的に同様である動態で及び/または濃度でインスリンを分泌する、項目19に記載の組成物または方法。
(項目21)
項目3~20のいずれか1項に記載の方法によって調製された、コンフォーマルコーティングを有する生体表面。
(項目22)
薬学的に許容される希釈剤または賦形剤をさらに含み、任意選択的に、前記生体表面が、シリンジ中または生体適合性容器中に含有される、項目1、2、または16~21のいずれか1項に記載の組成物。
(項目23)
哺乳類対象の治療方法であって、前記対象に、治療上有効量の項目1、2、または16~22のいずれか1項に記載の組成物を投与することを含み、任意選択的に、前記投与が、直接注射によってまたは生体適合性容器の埋め込みによってのいずれかで行われ得る、前記方法。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】スクロース媒体中でのコーティングされたポリスチレン(PS)粒子(4アームPEGNH2/4アームPEGNHS)の共焦点顕微鏡写真である。
【
図2】コーティングされたPS粒子(PEO(分子量800万)、4アームPEG-NHS/4アームPEG-NH2)の共焦点顕微鏡写真である。
【
図3】コーティングされたPS粒子(PEO(分子量400万)、4アームPEG-NHS/4アームPEG-NH2)の共焦点顕微鏡写真である。
【
図4】コーティングされたPS粒子(PEO(分子量100万)、4アームPEG-NHS/4アームPEG-NH2)の共焦点顕微鏡写真である。
【
図5】コーティングされたPS粒子(PEO(分子量100万)、4アームPEG-N3/4アームPEG-DBCO)の共焦点顕微鏡写真である。
【
図6】コーティングされたPS粒子(PEO(分子量800万)、4アームPEG-N3/4アームPEG-DBCO)の共焦点顕微鏡写真である。
【
図7】コーティングされた500細胞のHCT116スフェロイド(PEO(分子量100万)、4アームPEG-N3/4アームPEG-DBCO)の共焦点顕微鏡写真である。
【
図8】コーティングされた500細胞のHCT116スフェロイド(PEO(分子量400万)、4アームPEG-N3/4アームPEG-DBCO)の共焦点顕微鏡写真である。
【
図9】コーティングされた500細胞のHCT116スフェロイド(PEO(分子量800万)、4アームPEG-N3/4アームPEG-DBCO)の共焦点顕微鏡写真である。
【
図10】コーティングされたHCT116 1000細胞/スフェロイド(PEO(分子量800万)4アームPEG-DBCO:4アームPEGアジド)の共焦点顕微鏡写真である。
【
図11】裸のHCT116 1000細胞/スフェロイド(3日目の細胞生存率染色)の共焦点顕微鏡写真である。
【
図12】コーティングされたHCT116 1000細胞/スフェロイド(PEO800万、4アームPEG-DBCO:4アームPEGアジド)(3日目の細胞生存率染色)の共焦点顕微鏡写真である。
【
図13】従来の蛍光顕微鏡下でのコーティングされたラットインスリノーマ細胞スフェロイドの顕微鏡写真である。
【
図14】従来の蛍光顕微鏡下でのコーティングされたラット膵島細胞の顕微鏡写真である。
【
図15】コンフォーマルコーティングを施された、裸の、及びマイクロカプセル化されたラットインスリノーマ細胞スフェロイド製剤についてグルコースに対するインスリン分泌応答の比較を提供する、ラットインスリノーマ細胞スフェロイドを用いたインスリン分泌研究を要約する棒グラフである。
【
図16】コンフォーマルコーティングを施された、裸の、及びマイクロカプセル化されたラットインスリノーマスフェロイド製剤を比較する、インスリン分泌動態を高グルコース緩衝液中で測定した、ラットインスリノーマ細胞スフェロイドを用いたインスリン分泌動態を要約する折れ線グラフである。
【
図17】コンフォーマルコーティングを施された、裸の、またはマイクロカプセル化されたラット膵島細胞におけるグルコースに対するインスリン分泌応答を比較する、ラット膵島細胞を用いたインスリン分泌研究を要約する棒グラフである。
【
図18】コンフォーマルコーティングを施された、裸の、及びマイクロカプセル化されたラット膵島細胞製剤を比較する、高グルコース緩衝液中のラット膵島細胞インスリン分泌動態を要約する折れ線グラフである。
【
図19】第1の層(上層)に懸濁化剤を使用してクリック反応性MPCポリマーでコーティングした、コーティングされたARPE-19スフェロイドの安定性の共焦点顕微鏡画像である。
【
図20】第1の層(上層)に懸濁化剤を使用してクリック反応性MPCポリマーでコーティングした、コーティングされたARPE-19スフェロイドの安定性の共焦点顕微鏡画像である。
【
図21】第1の層(上層)に懸濁化剤を使用してクリック反応性MPCポリマーでコーティングした、コーティングされたARPE-19スフェロイドの安定性の共焦点顕微鏡画像である。
【
図22】両方の層に懸濁化剤を使用してクリック反応性MPCポリマーでコーティングした、ARPE-19スフェロイドの安定性の共焦点顕微鏡画像である。
【
図23】両方の層に懸濁化剤を使用してクリック反応性MPCポリマーでコーティングした、ARPE-19スフェロイドの安定性の共焦点顕微鏡画像である。
【
図24】両方の層に懸濁化剤を使用してクリック反応性MPCポリマーでコーティングした、ARPE-19スフェロイドの安定性の共焦点顕微鏡画像である。
【
図25】両方の層に懸濁化剤を使用してクリック反応性MPCポリマーでコーティングした、ARPE-19スフェロイドの安定性の共焦点顕微鏡画像である。
【
図26】両方の層に懸濁化剤を使用してクリック反応性MPCポリマーでコーティングした、ARPE-19スフェロイドの安定性の共焦点顕微鏡画像である。
【
図27】両方の層に懸濁化剤を使用してクリック反応性MPCポリマーでコーティングした、ARPE-19スフェロイドの安定性の共焦点顕微鏡画像である。
【
図28】両方の層に懸濁化剤を使用してクリック反応性MPCポリマーでコーティングした、ARPE-19スフェロイドの安定性の共焦点顕微鏡画像である。
【
図29】連続添加法によってコーティングされたARPE-19スフェロイド共焦点顕微鏡画像である。
【
図30】MPCクリック反応性ポリマーを使用して連続添加法によってコーティングされたラット膵島細胞の安定性の共焦点顕微鏡画像である。
【
図31】MPCクリック反応性ポリマーを使用して連続添加法によってコーティングされたラット膵島細胞の安定性の共焦点顕微鏡画像である。
【
図32】MPCクリック反応性ポリマーを使用して連続添加法によってコーティングされたラット膵島細胞の安定性の共焦点顕微鏡画像である。
【
図33】MPCクリック反応性ポリマーを使用して連続添加法によってコーティングされたラット膵島細胞の安定性の共焦点顕微鏡画像である。
【
図34】裸の及びコーティングされたラット膵島細胞の生/死生存率の共焦点顕微鏡画像である(膵島細胞はクリック反応性MPCポリマーを使用して連続添加法によってコーティングされた)。
【
図35】裸の及びコーティングされたラット膵島細胞の生/死生存率の共焦点顕微鏡画像である(膵島細胞はクリック反応性MPCポリマーを使用して連続添加法によってコーティングされた)。
【
図36】裸の及びコーティングされたラット膵島細胞の生/死生存率の共焦点顕微鏡画像である(膵島細胞はクリック反応性MPCポリマーを使用して連続添加法によってコーティングされた)。
【
図37】裸の及びコーティングされたラット膵島細胞の生/死生存率の共焦点顕微鏡画像である(膵島細胞はクリック反応性MPCポリマーを使用して連続添加法によってコーティングされた)。
【
図38】裸の膵島細胞及びクリック反応性MPCポリマーを使用して連続添加法によってコーティングされた膵島細胞のラット膵島細胞インスリン分泌を要約する棒グラフである。
【
図39】裸の膵島細胞及びクリック反応性MPCポリマーを使用して連続添加法によってコーティングされた膵島細胞のラット膵島細胞インスリン分泌を要約する棒グラフである。
【
図40】フルオレセイン標識4アームPEG-NH2の合成に関するスキーム1の図解である。
【
図41-1】4アーム-PEG-{NHCO-(PEG)4-DBCO}3-FITCの合成に関するスキーム2の図解である。
【
図42】分子量10Kの4アームPEG-NH-DBCOの合成に関するスキーム3の図解である。
【
図43】4アームPEG-NH-(PEG)4-DBCOの合成に関するスキーム4の図解である。
【
図44】PEGリンカーを有しクリック反応性DBCO基を含有するメタクリロイルオキシホスホコリン-アリルアミンのクリック反応性コポリマーの合成に関するスキーム5の図解である。
【
図45】PEGリンカーを有しクリック反応性アジド基を含有するメタクリロイルオキシホスホコリン-アリルアミンのコポリマーの合成に関するスキーム6の図解である。
【
図46】疎水性鎖(C6)リンカーを有しクリック反応性DBCO基を含有するメタクリロイルオキシホスホコリン-アリルアミンのクリック反応性コポリマーの合成に関するスキーム7の図解である。
【
図47】フルオレセインタグを有しクリック反応性DBCO基を含有するメタクリロイルオキシホスホコリン-アリルアミンのクリック反応性コポリマーの合成に関するスキーム8の図解である。
【
図48】本発明によって提供される2層系及び3層系の2つのコンフォーマルコーティング方法を図解する、スキーム9の図解である。
【
図49】コンフォーマルコーティングの連続添加法に関するスキーム10の図解である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、少なくとも部分的には、出願者らによる、極薄及び半透過性で、高度に再現可能及び拡張可能であり、生体表面(例えば、細胞)のいかなる顕著な損傷(構造変化)または修飾(機能の喪失/障害)も有しない、生体表面のコンフォーマルコーティングの発見、ならびに広範な生理学的条件下でのこれらのコンフォーマルコーティングを施された生体表面の作製方法に基づく。これらは個々に、「本発明によって提供される組成物」(または「本発明によって提供される生体表面」)及び「本発明によって提供される方法」であり、「本発明によって提供される組成物及び方法」等と総称される。本発明によって提供される組成物及び方法は、有利なことに、生体表面への損傷/不十分な生体適合性、再現性、拡張性、及び厚さ、透過性、または均一性などの、既存の方法及び組成物の難点及び制限を克服する。例えば、Tomei et al.Proceedings of the National Academy of Sciences(2014)111(29),10514-10519、L.H.Granicka et al.,(2011),Artificial Cells,Blood Substitutes and Biotechnology (2011)39:274-280、Blasi et al.,International Journal of Pharm
aceutics(2013)440,141-147;Hubbell and Tomei,US2014/0147483 A1、Garcia et al.,US2015/0071997 A1、Sang Van,et al.,US8,216,55
8 B2、Chaikof,et al. US7,824,672 B2、Micha
el H.May,1998,Ph.D.thesis,University of Toronto、Angelo S.Mao et al.Nature Materials,(2017),16,236-243、Green et al.,Materials Today(2012),15:60-66、Ribeiro et al.,Applied Materials & Interface,(2017),9:12967-12974を参照されたい。
【0010】
したがって、第1の態様では、本発明は、ハイドロゲルコンフォーマルコーティングを有する生体表面を含む組成物を提供する。コンフォーマルコーティングを有しない好適な対照生体表面と比べて、該生体表面は、i)機能を保持する(すなわち、生物学的機能、例えば、グルコースに応答したインスリン分泌など)、及びii)損傷または他の形態の表面修飾を実質的に有しないか、またはごく少量しか有しない。例えば、一部の実施形態では、生体表面上のジスルフィド結合、アミン(-NH2)、カルボキシル(-COOH)、またはヒドロキシル(-OH)部分(または1つ、2つ、3つ、もしくは4つすべての組み合わせ)の約25、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0.75、0.5、0.25、0.1%未満が修飾される。
【0011】
「コンフォーマルコーティング」とは、薄い(50μm未満、一部の実施形態では、約50、40、30、20、もしくは10μm未満、例えば、20μm未満、例えば、約5~20μm、または10μm未満もしくは約10μm)外来性のコーティングであり、これは、コーティングされている表面を覆って実質的に均一であり、また、分子量によるふるい操作を可能にする、すなわち、栄養、ある特定のタンパク質、及び酸素等を通過させるが、抗体または細胞は通過させない。本明細書で使用されるとき、コンフォーマルコーティングは、生体表面のコンフォーマルコーティングへの顕著な共有結合性の連結、または生体表面の、表面の別様の共有結合性修飾を包含しない。代わりに、コンフォーマルコーティングは、生体表面への顕著な量の架橋を伴わずに(すなわち、約10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0.75、0.5、0.25、0.1%未満、または好ましくは何もない、すなわち検出限界未満)生体表面を包囲する、ハイドロゲルなどの架橋ネットワークを包含する。ある特定の具体的な実施形態では、コンフォーマルコーティングは、光活性化、ラジカル開始剤、界面活性剤、酸もしくは塩基触媒、酸化もしくは還元剤、または有機溶媒の使用を包含せず、好ましくは、広範な温度、例えば、約4℃~37℃にわたって、好適なpH条件、例えば生理的pH条件で行うことができる。ある特定の実施形態では、コンフォーマルコーティングを構成するハイドロゲルは、正味中性電荷を有する。一般に、本発明によって提供されるコンフォーマルコーティング(及びそれらの作製方法)は、生体表面、例えば、細胞の官能性に実質的に(または全く)影響を与えない。つまり、生体表面の生物学的機能(グルコースに応答したインスリン分泌など)への影響は、あったとしても無視できる程度である。同様に、生体表面、特にコンフォーマルコーティングに近接するその外表面の物理的構造は修飾されず、例えば、ジスルフィド結合は、実質的に(または完全に)無傷のままである一方で、アミン、カルボキシル、及びヒドロキシルなどの他の反応性基は、実質的に(または完全に)未修飾である。ある特定の具体的な実施形態では、生体表面上のジスルフィド結合、アミン(-NH2)、カルボキシル(-COOH)、またはヒドロキシル(-OH)部分(または1つ、2つ、3つ、もしくは4つすべての組み合わせ)の約25、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0.75、0.5、0.25、0.1%未満が、コンフォーマルコーティングの適用後に修飾される。加えて、本発明によって提供されるコンフォーマルコーティング(及びそれらの作製方法)は、最大約30、35、40、45、50、55、60、65、70kDa、またはそれを超える、例えば、75、80、または85kDaの分子(例えば、栄養、酸素、及びインスリンなどの分泌タンパク質などのある特定の分泌分子)に対して透過性であるが、抗体または細胞などのより大きい分子に対しては透過性でなく、故に、約90、100、110、120、130、140、150kDa、またはそれを超える分子に対して不透過性である。
【0012】
「生体表面」には、生細胞(細菌、古細菌、真菌、植物、または動物細胞、例えば、昆虫もしくは哺乳類細胞、例えば、ヒトなどの霊長類、ならびに非ヒト霊長類由来の細胞、ならびにマウス、ラット、ブタ、ヒツジ、ウシ、イヌ、ネコ、ラクダ、ウサギ等といった非霊長類哺乳動物細胞を含む)が含まれ、この生細胞は、個々の細胞、細胞集塊、オルガノイド、細胞スフェロイド、胚様体、組織、または天然組織の外植片(腎臓、膵臓、肝臓、または心臓などの全臓器または臓器断片を含む)もしくはインビトロで増殖させた組織を含む組織断片、ならびにバイオ人工/ハイブリッド臓器または臓器デバイスの形態にあり得る。具体的な実施形態では、細胞は、誘導多能性幹細胞などの多能性幹細胞である。生体表面はまた、リポソーム、ハイドロゲル、固体(ポリスチレン、またはPLA、PGA、もしくはそれらの組み合わせなどのプラスチックなど)等といった非生細胞に連結されたタンパク質(酵素など)などの、人工細胞も包含する。細胞などの生体表面は、典型的には(必ずしもそうではないが)実質的に球形の形状である。細胞(ならびに細胞集塊またはスフェロイド)は、約5μm~約1mm、例えば、約10μm~1mm、例えば、約100μm~約400μm、例えば、一部の実施形態では、最大約300μm、例えば、約100~300μmの直径を有し得る。他の実施形態では、生体表面(細胞、細胞集塊、または細胞スフェロイド)は、約10μm~2mm、20μm~1mm、50~800μm、または100~500μmである。
【0013】
一部の実施形態では、本発明によって提供される組成物のハイドロゲルは、5~10kDaの4アームPEG、100~200kDa、ホスホコリン60~90%(または他の双性イオン基;LIPIDURE(登録商標)-NH01に基づくポリマーを含む)のメタクリロイルオキシエチルホスホコリンコポリマー、ならびにそれらの組み合わせなどのマルチアームポリマーの共有結合性架橋ネットワークである。
【0014】
別の態様では、本発明は、ハイドロゲル中での生体表面のコンフォーマルコーティング方法を提供する。これらの方法は、2つの水性層を含む系を用意することであって、第1の層が、約0.25%~2%(W/V)の懸濁化剤、約1%~約25%(W/V)の第1の官能化マルチアームポリマー、及び生体表面の溶液を含み、第2の層が、糖類のクッション及び約1%~約25%(W/V)の第2の官能化マルチアームポリマーを含み、第2の官能化マルチアームポリマーの官能基が、生理学的条件下で第1の官能化マルチアームポリマーの官能基と反応性である、該用意することと、次いで、生体表面を第2の層の中に通過させ、それによって第1及び第2の官能基が反応し、生体表面にコンフォーマルコーティングを施す架橋したハイドロゲルを形成できるようにすることと、を包含する。前述のように、本発明によって提供される方法は、2つよりも多くの層、例えば、3つ以上の層を使用することができ、1つよりも多くの糖類のクッションを含むことができる。典型的には、水性層は、ラジカル及び有機溶媒を実質的に含まない(例えば、1.0、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1、0.05%(V/V)未満、または、一部の実施形態では検出限界未満の、ラジカルまたは有機溶媒)。
【0015】
「懸濁化剤」とは、水溶液の粘度を増加させる化学物質であり、線状、櫛形多価ポリマー、分岐状、ホモ及びブロックポリマーが含まれる。代表的な懸濁化剤には、高分子量PEG(別名ポリエチレンオキシド、PEO)を含めたポリエチレングリコール(PEG)、ならびにPVA(ポリビニルアルコール)、PVP(ポリビニルピロリドン)、及びHPMC(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)が含まれる。懸濁化剤は、線状または分岐状のいずれであってもよい。懸濁化剤は、約0.05%~2.0%、例えば、約0.1%~2.0%、または約0.25%~2.0%、または約1%、例えば、0.5%~1.5%で存在する。ある特定の実施形態では、懸濁化剤は、約1MDa(メガダルトン)~約10MDa、例えば、約1MDa~約8MDaの分子量を有する。具体的な実施形態では、懸濁化剤は、約1MDa~10MDa、例えば、1MDa~8MDaの分子量を有する、例えば、上記の濃度でのPEOである。当業者には理解されようが、例えば、約1%、約1MDa~約8MDaの高分子量PEOに関して本明細書に記載される結果と同様の特性を達成するような、他の懸濁化剤が使用され得る。懸濁化剤は、例えば、生理食塩水、例えば、0.9%生理食塩水などの様々な水溶液中に溶解され得る。一部の実施形態では、懸濁化剤は、第1の層のみに存在する一方で、他の実施形態では、懸濁化剤は、第1及び第2の層の両方に存在する。懸濁化剤が両方の層に存在する一部の実施形態では、第1の層における懸濁化剤は、第2の層におけるものと同じ懸濁化剤である一方で、他の実施形態では、これらの懸濁化剤は異なってもよい。
【0016】
「糖類のクッション」とは、溶液の密度を増加させ、本明細書に記載される水溶液の積層を促進する、単糖類、二糖類、三糖類、オリゴ糖類、または多糖類(例えば、スクロース、グルコース、トレハロース、マンニトール、デキストロース、フルクトース、ラクトース、マルトース、またはそれらの組み合わせ)の1%~15%(W/V)溶液である。ある特定の実施形態では、糖類は、溶液の約5%~約15%、例えば、約7.5%~約12.5%、例えば、約10%である。ある特定の具体的な実施形態では、糖類は、スクロースである。例えば、本明細書に例示される具体的な濃度でスクロースと同様の密度を達成することに基づいて、他の糖類のクッションが使用され得る。一部の実施形態では、本発明によって提供される方法は、2つの層、またはそれよりも多く、例えば、3つの層、またはそれよりもさらに多くを使用する。
【0017】
「官能化マルチアームポリマー」とは、アームの遠位端に官能基を有する3つ以上(例えば、3~12、より具体的には4または8)のアームを有するマルチアームポリマーである。アームは、一部の実施形態では、中心核から放射状に広がるか(マルチアームPEGなど)、または他の実施形態では、中心軸ポリマーの全長に沿って異なる点から伸び(コポリマーなどの櫛形ポリマーの場合のように)、後者の場合、マルチアームポリマーは、4つよりも多くのアーム、例えば、約20、25、30、35、45、50、75、100、150、200、300、400、500、600、700、800、900のアーム、もしくはそれよりも多くを有し得、このコポリマーは、その軸に沿って、その全サイズ/質量に対して、例えば、約10kDa~1MDa、20kDa~800kDa、50~500kDa、例えば、約100~400kDa、100~300kDa、200~350kDa、200~300kDa、または約300kDa、例えば、約275~325kDaの、様々なポリマーの実質的に均一の分布を含有する。官能化マルチアームポリマーは、複数のアームの遠位端、例えば、複数のアーム、例えば、2~最大nのアームのうちの2つ以上の遠位端に官能基を有し、ここでnは、マルチアームポリマー上のアームの数であり、例えば、n=4の場合、2、3、または4つすべてのアームがそれらの遠位端に官能基を有し得る。一部の実施形態では、例えば、すべてのアームのうちの約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95%が、それらの遠位端に官能基を有し、例えば、すべてのアームのうちの約5~15%が、それらの遠位端に官能基を有し、この場合、マルチアームポリマーは、大きい櫛形ポリマーである。官能化マルチアームポリマーは、溶液中に、約1%~約25%(W/V)、例えば、約2.5%~約20%、より具体的には、約8%~約12%、または約10%で存在する。一部の実施形態では、官能化マルチアームポリマーは、約5%~約10%で存在する。他の具体的な実施形態では、マルチアームポリマーは、溶液中に、約2.5%~7.5%、例えば、約4%~約6%または約5%で存在する。
【0018】
ある特定の実施形態では、官能化マルチアームポリマーは、例えば、総分子量が約5~40、5~30、10~20、8~12、または10kDaのPEG、例えば、分子量が約5~40、5~30、10~20、8~12、または10kDaの4または8アームPEGであり、例えば、約5%または10%W/Vである。
【0019】
他の実施形態では、官能化マルチアームポリマーは、メタクリロイルオキシエチルまたは他の骨格(ポリビニルまたはポリアミドなど)を有する線状コポリマー、例えば、ホスホコリンまたは他の双性イオン基を含むコポリマーであり、この場合、例えば、コポリマーアームのうちの約40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、または95%、例えば、60~90%、70~90%、75~85%、または約80%のアームが双性イオン基を含み、これは簡略化のために、ポリマーにおける双性イオン基含有アームの割合、例えば、ホスホコリンの割合、例えば、ホスホコリン60~90%などとして言及される。これらの実施形態では、コポリマーアームのうち残りの60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10、または5%は、官能基、例えば、アリルアミン(名称LIPIDURE(登録商標)-NH01で販売されるコポリマーなど)、または誘導体、例えば、コポリマーのアリルアミン単位のNH2基にクリック官能基、例えば、DBCOまたはアジドが付加されている官能化アームを含有する(任意選択的に、PEGなどの介在リンカーを有し、このリンカーは、約2~80、3~60、3~50、5~40、10~40、15~40、20~40、25~40、30~40、35~40、または38原子(C、N、O、P、S、またはそれらの組み合わせなど)の長さであり得る)。一部の実施形態では、官能基(例えば、アリルアミンなど)のうち官能化誘導体(例えば、付加されたクリック官能基を有し、任意選択的な介在リンカーを有する)に変換される割合は、約25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75%、またはそれよりも多く、例えば、約25~75%、40~60%、45~55%、または50%である。故に、例えば、コポリマーのうちの60~90%が双性アームである実施形態では、コポリマーのアームのうちの40~10%が、クリック官能基を有するように変換に利用可能であり、このうち、一部の実施形態では、約50%にクリック官能基が付加され、すなわち、アームの総数のうちの20~5%が、付加されたクリック官能基を有する。したがって、ある特定の実施形態では、櫛形官能化マルチアームポリマーにおける約50、60、80、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200のアーム、またはそれよりも多く、例えば、約70~150または80~90、または約85のアームが、付加されたクリック官能基を有する。
【0020】
他の実施形態では、官能化マルチアームポリマーは、メタクリロイルオキシエチルホスホコリンであり(MPC;例えば、一部の実施形態では、リジン-DBCOなど、DBCOで官能化され、他の実施形態では、アリルアミンコポリマーを有する)、例えば、より具体的な実施形態では、第1の層における官能化マルチアームポリマーは、MPC(例えば、MPC-リジン-DBCO)であり、第2の層における官能化マルチアームポリマーは、PEG、例えば、4または8アームPEG(例えば、PEG-アジド)である。他の実施形態では、第1のポリマーとして、官能化線状コポリマーは、メタクリロイルオキシエチルホスホコリン-アリルアミン(例えば、LIPIDURE(登録商標)-NH01)であり、コポリマーのアリルアミン単位のNH2基がクリック官能性DBCOで官能化され、第2のポリマーとして、官能化線状コポリマーであるメタクリロイルオキシエチルホスホコリン-アリルアミン(例えばLIPIDURE(登録商標)-NH01)は、コポリマーのアリルアミン単位のアミン基がクリック官能性アジド基で官能化されている。一部の実施形態では、メタクリロイルオキシエチルホスホコリン-アリルアミンのコポリマーは、約80:20モル比、50:50モル比、20:80モル比である。
【0021】
本明細書で使用される「マルチアームポリマー」とは、官能化マルチアームポリマー、ならびに、実質的に同一であるが、官能基が欠如したポリマー、例えば、ポリマーアームの遠位端に反応性官能基をもはや有しない(すなわち、約10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0.75、0.5、0.25、0.1%未満の未反応官能基が残っている)架橋した(すなわち、反応した)官能化マルチアームポリマーから構成されるハイドロゲルを包含する。ある特定の実施形態では、第1の官能化マルチアームポリマーは、第2の官能化マルチアームポリマーと同じであるが、ただし例外として、これら2つの官能化マルチアームポリマーは、それぞれDBCO及びアジド官能化メタクリロイルオキシエチルコポリマー、またはそれぞれDBCO及びアジド官能化マルチアームPEGなど、相補性(反応性)官能基を有する。他の実施形態では、第1の官能化マルチアームポリマーは、第2の官能化マルチアームポリマーとは異なり、例えば、アジドまたはDBCO官能化マルチアームPEGを有するDBCOまたはアジド官能化メタクリロイルオキシエチルコポリマーなどである。
【0022】
本発明によって提供される方法で有用な官能化マルチアームポリマー上の官能基は、第1の官能化マルチアームポリマーと第2の官能化マルチアームポリマーとの間の効率的な架橋を促進して安定なハイドロゲルを形成する反応性基である。当業者には、様々な好適な化学作用がこの目的に好適であるとして認識されよう。代表的な化学作用には、NHS/活性化エステルが含まれ、具体的な実施形態では、クリック官能基が含まれる。
【0023】
「クリック官能性」(時にクリック反応性と称される)基は、クリックケミストリーに好適な化学部分、すなわち、特異的であり、生物学的条件下で迅速に進行し(高い熱力学的駆動力)、水によって妨害されず、顕著な毒性または攻撃的な副産物を生成しないシングルポット反応である。好適なクリック官能基は、例えば、1,2-双極子環状付加及びヘテロ・ディールス・アルダー環状付加などの環状付加;アジリジン、エポキシド、環状硫酸エステル、エピスルホニウム等のような歪み複素環式求電子剤の求核開環;非アルドールカルボニル化学作用による尿素、チオ尿素、ヒドラゾン、オキシムエーテル、アミド、及び芳香族複素環の形成;ならびにエポキシ化、アジリジン化、ジヒドロキシル化、ハロゲン化スルフェニル付加、ニトロシル付加、及びマイケル付加などの炭素-炭素多重結合への付加、といった化学反応を経る。ある特定の実施形態では、クリックケミストリー反応対(すなわち、第1及び第2の官能化マルチアームポリマー上のクリック官能基)には、アジド-DBCO(ジベンゾシクロオクチン)(トリアゾール連結をもたらす)、チオール-ノルボルネン(マイケル付加)、及びテトラジン-ノルボルネン(ピラゾ連結)が含まれる。ある特定の具体的な実施形態では、本発明で有用なクリック官能基には、アジド及びDBCOが含まれる。
【0024】
本発明によって提供される方法のある特定の実施形態では、第1の官能化マルチアームポリマーは、5~10kDaの4アームPEGである。より具体的な実施形態では、第1の官能化マルチアームポリマーの官能基は、DBCOまたはアジドなどのクリック官能基である。本発明によって提供される方法の他の具体的な実施形態では、第1の官能化マルチアームポリマーは、100~200kDa、ホスホコリン60~90%のメタクリロイルオキシエチルホスホコリンコポリマーである。より具体的な実施形態では、第1の官能化マルチアームポリマーの官能基は、DBCOまたはアジドなどのクリック官能基である。
【0025】
本発明によって提供される方法の一部の実施形態では、第2の官能化マルチアームポリマーは、5~10kDaの4アームPEGである。より具体的な実施形態では、第2の官能化マルチアームポリマーの官能基は、アジドまたはDBCOなどのクリック官能基である。本発明によって提供される方法の他の具体的な実施形態では、第2の官能化マルチアームポリマーは、100~200kDaでありホスホコリン60~90%のメタクリロイルオキシエチルホスホコリンコポリマーである。より具体的な実施形態では、第2の官能化マルチアームポリマーの官能基は、アジドまたはDBCOなどのクリック官能基である。
【0026】
本発明によって提供される方法の一部の実施形態では、懸濁化剤は、約1%で存在する、約1~8MDaの分子量を有するPEOである。
【0027】
本発明によって提供される方法のある特定の実施形態では、生体表面は、遠心分離によって第2の層の中に通過させられる。
【0028】
本発明によって提供される方法のある特定の実施形態では、生体表面は、遠心分離下で下層に一滴ずつ連続的に添加される。
【0029】
ある特定の実施形態では、遠心分離バイアルは、混合物が遠心力下で一滴ずつ移動できるように十分に小さい開口部を有する先細サイドアームを挿入することによる、生体表面の連続添加に好適であるように設計される。
【0030】
故に、別の態様では、本発明はまた、介在層(気層など)によって分離された2つの水性層を含む系を用意することであって、第1の層が、約0.25%~2%(W/V)の懸濁化剤、約1%~約25%(W/V)の第1の官能化マルチアームポリマー、及び生体表面の溶液を含み、第2の層が、約0.25%~2%(W/V)の懸濁化剤、糖類のクッション、及び約1%~約25%(W/V)の第2の官能化マルチアームポリマーを含み、第2の官能化マルチアームポリマーの官能基が、生理学的条件下で第1の官能化マルチアームポリマーの官能基と反応性である、該用意することと、生体表面を第2の層の中に通過させ、それによって第1及び第2の官能基が反応し、生体表面にコンフォーマルコーティングを施す架橋したハイドロゲルを形成できるようにすることと、による、ハイドロゲル中での生体表面のコンフォーマルコーティング方法も提供し、第1の官能化マルチアームポリマーは、線状メタクリロイルオキシエチルホスホコリンコポリマーである。
【0031】
これらの方法のある特定の実施形態では、第1の層は、第2の層に連続的に添加される。一部の実施形態では、第2の層は、混合物が遠心力下で移動できるように寸法決めされた開口部を有する先細サイドアームを通した第1の層の添加に好適な容器内にある。かかる実施形態の1つの例示説明は、
図49に示されるような、一滴ずつの添加であり、このようにして生体表面は、懸濁化剤を含有する糖類溶液中、第2の官能化ポリマーの層に進入する。このプロセスは、界面での細胞の捕捉を回避し、高収率でのコーティングされた生体表面を実現する。ある特定の実施形態では、第1の層の第2の層への実質的な連続添加は、出発生体表面の量に対して、少なくとも50、60、70、75、80、85、90、95%またはそれよりも高い収率でのコンフォーマルコーティングを施された生体表面をもたらし、例えば、膵島細胞などの細胞を用いた連続添加法では、少なくとも50、60、70、75、80、85、90、95%またはそれよりも多くの出発(未コーティング)細胞が最終的に完全にコーティングされた細胞となる。ある特定の実施形態では、上部の開口部直径は、200マイクロメートル~5000マイクロメートルであり、下部の開口部直径は、5マイクロメートル~1000マイクロメートル、好ましくは10マイクロメートル500マイクロメートルである。
【0032】
本発明によって提供される組成物及び方法に関する具体的な実施形態では、コンフォーマルコーティングの厚さは、約20μm未満であり、例えば、約10~20μm、5~10μm、7.5~12.5μm、または10μmである。
【0033】
本発明によって提供される組成物及び方法に関するある特定の実施形態では、生体表面は、生細胞(例えば、動物、植物、細菌、酵母細胞)または細胞集塊である。具体的な実施形態では、生細胞は、動物細胞である。より具体的な実施形態では、動物細胞は、哺乳類細胞である。なおもより具体的な実施形態では、哺乳類細胞は、ヒト細胞である。他の具体的な実施形態では、生体表面が細胞である場合、細胞は、インスリン産生細胞である。一部の具体的な実施形態では、生体表面が細胞である場合、細胞は、誘導多能性幹細胞(iPSC)、例えば哺乳類iPSC、例えばヒトiPSCなどの、多能性幹細胞である。
【0034】
本発明によって提供される組成物及び方法の具体的な実施形態では、細胞がインスリン産生細胞である場合、約2mM~約20mMのグルコースで刺激すると、コンフォーマルコーティングに供されていない好適な対照細胞と比べて、当該細胞は、好適な対照細胞と実質的に同様である動態で及び/または濃度で、例えば、対照細胞からのピークインスリン分泌まで約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、もしくは30分以内で及び/または対照細胞からのインスリンの濃度の約5、10、15、20、25、30、40、もしくは50%以内で(例えば、10、20、60、90、または120分時点で)、インスリンを分泌する。
【0035】
関連する態様では、本発明は、本発明によって提供される方法のうちのいずれかによって調製された、ハイドロゲルコンフォーマルコーティングを有する生体表面を提供する。
【0036】
別の態様では、本発明は、例えば、治療上有効量の本発明によって提供される組成物を投与することによって哺乳類対象を治療するのに使用するための、本発明によって提供される生体表面と、1つ以上の薬学的に許容される希釈剤または賦形剤とを含む組成物を提供する。
【0037】
別の態様では、本発明は、対象の必要性を緩和する、本発明によって提供される組成物を提供することを含む、治療を必要とする(例えば、本発明によって提供される組成物により提供されるある特定の生物学的機能が欠如または欠乏した)対象の治療方法を提供する。ある特定の実施形態では、対象は、例えば、インスリン依存性糖尿病を有する、成人または小児対象などのヒトである。かかる方法で使用される本発明によって提供される組成物は、対象に直接適用することができるか(例えば、本発明によって提供される組成物がヒトなどの哺乳類対象への投与に好適なシリンジ中に提供される、注射または埋め込みによって)、または対象に埋め込まれる生体適合性容器中に提供され得、例えば、本発明によって提供される組成物は、対象内でのその移動を制限するが、半透過性であり、例えば、栄養、酸素、及び治療剤の拡散を許容する、生体適合性容器内に配置される。
【0038】
例示
概要
水性等張系中、中性pHで、特定の生細胞に好適な所望の温度で、特異的に1つのポリマーを別のポリマーに反応させることが可能であるマルチアームクリック反応性親水性ポリマーを利用して、極薄コンフォーマルコーティングを達成した。まず、ポリスチレン粒子(100~125ミクロン範囲)を細胞スフェロイドのモデルとして使用し、4アームPEG-NHS及び4アームPEG-NH2からなる活性化N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステルアプローチを使用して、本方法を開発した。これを達成するために、最初にFITC標識を有する4アームPEG-NH2を粒子表面上に積層した。これは当該プロセスにおいて重要な工程であることが見出された。これは、粒子を、4アーム-PEG-(NH2)3-FITC(1%溶液)でスパイクした5%4アームPEG-NH2と混合することによって遂行した。混合物を30℃で6時間真空乾燥させた。結果として得られた粉末を、4アームPEG-NHS(5%)を含有する60%スクロース溶液中に縣濁させた。混合物をボルテックスし、PBS緩衝液で洗浄して、過剰のスクロース、未反応PEG、及び過剰の蛍光PEGポリマー、及び塩を除去した。粒子を収集し、共焦点顕微鏡下で蛍光場において可視化した。顕微鏡画像により、5~10ミクロン範囲の厚さを有する極薄コーティングが粒子表面上に均一に形成されたことが確認された(
図1)。故に、水性系において2つの反応性ポリマーを使用したコンフォーマルコーティングの概念が証明されたが、この作業条件及びテトラPEG-NH2、テトラ-PEG-NHSエステルなどの試薬、ならびに真空乾燥及び高張性スクロース60%溶液の使用は、生細胞に望ましくない。
【0039】
60%スクロース溶液を置き換えるためのいくつかの懸濁媒を調査し、高分子量PEO(100万~800万)の1%溶液が、懸濁媒として高張性スクロース溶液を置き換えるのに有用であることが見出された。また、真空乾燥工程を、第1のポリマーを高分子量PEO溶液中で粒子と混合する密度勾配アプローチと置き換えることを評価した。これは1つの層とみなされる。高分子量PEOの長いポリマー鎖は、4アームPEG-NH2の短鎖が粒子表面上に一時的に保持されるよう強いる。これらの粒子がスキーム5(
図23)に示されるように下層(等張スクロース溶液中4アームPEG-NHSを有する)に移動するにつれて、PEG-NHS分子は、PEO鎖にわたって透過し、4アームPEG-NH2と急速に反応し、こうして共有結合性で連結されたハイドロゲルネットワークを粒子表面上に均一に形成する(
図2、3、及び4)。これにより、高張性スクロース(60%)溶液を1%PEO溶液で置き換え可能であり、密度勾配法を使用することによって真空乾燥を排除可能であることが確認される。このアプローチは奏功し、再現可能であったが、活性化エステルが細胞表面タンパク質と反応し得るため、それは依然として生細胞に理想的ではなかった。よって、活性化エステルをより好ましい重合化学作用物質により置き換えることが望ましかった。クリックケミストリーが生細胞に好適な化学アプローチであろうと考えられた。
【0040】
4アームPEG-DBCO(ジベンゾシクロオクチン)及び4アームPEG-アジドなどのクリック反応性マルチアームPEGが、4アームPEG-NH2及び4アームPEG-NHSエステルを置き換えると考えた。クリック反応は中性条件で起こり、これは生細胞に望ましい。種々の濃度のいくつかの高分子量PEO(100万~800万)の溶液を、上述の密度勾配アプローチを使用してスクリーニングした。これには、第1のポリマーを高分子量PEO溶液中で粒子表面上に積層することが伴った。高分子量PEOの長いポリマー鎖は、短鎖4アームPEG-DBCOが粒子表面上に一時的に保持されるよう強いる。これらの粒子が、5%スクロース溶液中4アームPEG-アジドを有する下層に移動するにつれて、PEG-アジド分子は、PEO鎖にわたって透過し、4アームPEG-DBCOと急速に反応し、こうして共有結合性で連結されたハイドロゲルネットワークを粒子表面上に形成した(
図5及び6)。これらの条件は、生細胞のコンフォーマルコーティングに理想的であることが見出された。これを生細胞に適用する前に、クリックケミストリーアプローチをポリスチレン(PS)粒子に適用し、何の問題もなく奏功することが見出された(
図5及び6)。次いでこれらの方法を、HCT116細胞スフェロイド(
図7~9)、インスリノーマ細胞スフェロイド(
図13)、及び新たに単離したラット膵島細胞(
図14)に成功裏に適用した。
【0041】
HCT細胞スフェロイド(hct116細胞株)、インスリノーマスフェロイド(ヒト由来)、またはラット膵島細胞を、PEO(100万~800万)1%溶液中、4アームPEG-(DBCO)3-FITCの1%溶液でスパイクした4アームPEG-DBCO5%の溶液と混合した。混合物を10%スクロース溶液中の4アームPEG-アジドのベッド上に積層した。高分子量PEOの長いポリマー鎖は、それらがスクロース層の中へ移動するにつれて短鎖4アームPEG-DBCOを細胞表面の方へ押し得、ここで4アームPEGアジドが透過し、4アームPEG-DBCOと急速に反応して、2つのポリマー間に共有結合性の連結を形成し、こうして薄いコーティングを細胞スフェロイドまたは膵島細胞の周りに均一に形成する。移動速度は、遠心分離力及びPEO溶液の粘度によって制御される。コーティングの厚さは、粒子の移動速度、2つのクリック反応性PEGポリマーの濃度、懸濁化剤ポリマーの分子量及び粘度に影響を受け得る。コーティングされたスフェロイドは底部に沈殿し、これを、上清液を除去することによって収集した。コーティングされたスフェロイドを緩衝液/血漿で洗浄して、4℃での遠心分離によってPEO、スクロース、塩、及び未反応性PEGなどの添加剤を除去した。コーティングされた細胞スフェロイド及び膵島細胞を、共焦点顕微鏡ならびに従来の蛍光顕微鏡を使用して蛍光場の下で可視化した。極薄コーティングが5~10ミクロンの範囲の厚さでスフェロイドの周りに均一に形成された。細胞は、これらの条件下で生存し、コーティング後にもそれらの完全な機能性を呈した。
【0042】
3日目、カルシアン(calcian)/エチジウムホモダイマー-1(Ethd-1)を使用して、コーティングされたHCT116スフェロイド及び対応する裸のスフェロイドにおいて生/死細胞を調査した。コーティングされたスフェロイドは、顕著に高い数の死細胞(
図11、赤色)を有する裸のスフェロイドと比較して、高い割合の生細胞(
図12、緑色で現れる)を有することが見出された。このデータは、コンフォーマルコーティングが細胞に安定性を提供し、こうしてそれらがインビトロで裸の細胞と比較してより長時間生存したことを示す。
【0043】
コンフォーマルコーティングを施されたインスリノーマスフェロイド及びラット膵島細胞のインスリン分泌及び放出動態を、アルギン酸バリウムでマイクロカプセル化されたスフェロイド/膵島細胞及び未コーティングのスフェロイド/膵島細胞と対応させて比較した。
【0044】
コンフォーマルコーティングを施されたスフェロイド及びラット膵島細胞は、低、中、及び高グルコース濃度で、対応する未コーティングバージョンと同等に、しかしマイクロカプセル化された製剤よりも良好に、グルコースに応答してインスリンを非常によく分泌した(
図15及び17)。
【0045】
コンフォーマルコーティングを施された製剤のインスリン放出動態は、裸の製剤及びアルギン酸バリウムでマイクロカプセル化された製剤よりも良好であることが見出された(
図16及び18)。
【0046】
材料及び方法:
4アーム-PEG-NHSエステル(分子量5k)、4アーム-PEG-NHSエステル(分子量5k及び10k)、4アームPEG-アジド(5k及び10k)をJenKem technology USAから購入した。4アームPEG-NH2(5k及び10k)をCreative PEG Worksから購入した。DBCO試薬及び溶媒をSigma-Aldrichから購入した。ポリスチレン粒子(106~125ミクロンサイズ)をPolysciences Inc,PA,USAから購入した。スフェロイドとして増殖させたHCT116細胞(Thermo Fisher Scientificから入手可能)を、10%ウシ胎仔血清でスパイクしたMcCoy 5a(Fisher Scientific)中、5%CO2環境下、37℃で72時間増殖させた。
【0047】
実施例1:4アーム-PEG-(NH2)3-FITC、[4アーム-(PEG-NH2)3-PEG-NH-C(=S)=N-フルオレセイン]、分子量5k、スキーム1。
4アームPEG NH2(分子量5k)0.5g(0.1mmol)をDMF(ジメチルホルムアミド10ml)中に溶解させ、これにフルオレセインイソチオシアネート(39mg、0.1mmol)を暗下で添加した。混合物を室温で6時間撹拌した。溶液を、1000分子量カットオフ膜を使用してDI水中で、暗所で一晩、DI水を交換しながら(4×1L)透析した。溶液を凍結乾燥させた。明るい黄色の粉末(512mg)を収集し、琥珀色のボトル中に-20℃で貯蔵した。
【0048】
実施例2:4アーム-PEG-(NH2)3-FITC、[4アーム-(PEG-NH2)3-PEG-NH-C(=S)=NH-フルオレセイン]、分子量10k、スキーム1。
4アームPEG NH2(分子量10k)0.5g(0.05mmol)をDMF(10ml)中に溶解させ、これにフルオレセインイソチオシアネート(20mg、0.05mmol)を暗下で添加した。混合物を室温で6時間撹拌した。溶液を、1000分子量カットオフ膜を使用してDI水中で、暗所で一晩、DI水を交換しながら(4×1L)透析した。溶液を凍結乾燥させた。明るい黄色の粉末(492mg)を収集し、琥珀色のボトル中に-20℃で貯蔵した。
【0049】
実施例3:アーム-PEG-(NHCO-PEG4-DBCO)3-NH2、[4アーム-ポリエチレングリコール-{NH-CO-(CH2CH2-O)3-CH2CH2NHCOCH2CH2CO-ジベンゾシクロオクチン}3-NH2]、分子量10k、スキーム2:
4アームPEG NH2(分子量10k)1.0g(0.1mmol)を塩化メチレン(20ml)中に溶解させ、これにDBCO-PEG4-NHSエステル(195mg、0.3mmol)を添加し、混合物を室温で16時間撹拌した。反応をTLCによって監視した。反応が完了した後、溶媒を真空下で除去して5mlとなった。溶液を低温のジエチルエーテル中に一滴ずつ注いだ。生成物が沈殿し、それを濾過により収集した。生成物をエーテル(4×50ml)で十分に洗浄し、真空下で4時間乾燥させた。材料を淡黄色の粉末1.1gとして得た。それを琥珀色のボトル中に-20℃で貯蔵した。
【0050】
実施例4:4アーム-PEG-[NH-PEG4-DBCO)]3-FITC、[4アーム-ポリエチレングリコール-NH-[CO-(CH2CH2-O)3-CH2CH2NHCOCH2CH2CO-ジベンゾシクロオクチン]-フルオレセインイソチオシアネート(isthiocyanate)]、分子量10k、スキーム2。
4アーム-PEG-{NHCO-PEG4-DBCO}3-NH2(分子量10k)500mg(0.05mmol)をDMF(5ml)中に溶解させ、これにフルオレセインイソチオシアネート(20mg、0.05mmol)を暗下で添加した。混合物を室温で6時間撹拌した。溶液を、1000分子量カットオフ膜を使用してDI水中で、暗所で一晩、DI水を交換しながら(4×1L)透析した。溶液を凍結乾燥させた。明るい黄色の粉末(485mg)を収集し、琥珀色のボトル中に-20℃で貯蔵した。
【0051】
実施例5:4アーム-PEG-NH-DBCO:4アーム-ポリエチレングリコール-{NH-CO-(CH2)4-CO-ジベンゾシクロオクチン、分子量10k、スキーム3:
4アームPEG NH2(分子量10k)1.4g(0.14mmol)をリン酸緩衝液中に溶解させ、これにDBCO-スルホ-NHSエステル(0.30g、0.56mmol)を添加し、混合物を室温で16時間撹拌した。反応をTLCによって監視した。反応が完了した後、反応混合物を低温イソプロパノール(500ml)中に撹拌しながら一滴ずつ注いだ。生成物が沈殿し、それを濾過により収集した。生成物をCH2Cl2(20ml)中に再び溶解させ、低温ジエチルエーテル(300ml)中に注いだ。生成物が粉末として沈殿し、それを濾過により収集し、エーテル(4×50ml)で十分に洗浄し、真空下で4時間乾燥させた。材料を淡黄色の粉末1.65gとして得た。それを琥珀色のボトル中に-20℃で貯蔵した。
【0052】
実施例6:4アーム-PEG-NH-PEG4-DBCO:4アーム-ポリエチレングリコール-NH-CO-(CH2CH2-O)3-CH2CH2NCOCH2CH2CO-ジベンゾシクロオクチン]、分子量10k、スキーム4:
4アームPEG NH2(分子量10k)1.4g(0.14mmol)を塩化メチレン(30ml)中に溶解させ、これにDBCO-PEG4-NHSエステル(0.37g、0.56mmol)を添加し、混合物を室温で16時間撹拌した。反応をTLCによって監視し、反応が完了した後、溶媒を真空下で除去して5mlとなった。溶液を低温のジエチルエーテル中に一滴ずつ注いだ。生成物が沈殿し、それを濾過により収集し、それをエーテル(4×50ml)で十分に洗浄し、真空下で4時間乾燥させた。材料を淡黄色の粉末1.71gとして得た。それを琥珀色のボトル中に-20℃で貯蔵した。
【0053】
実施例7:PEGリンカーを有しクリック反応性DBCO基を含有するクリック反応性メタクリロイルオキシホスホコリン-アリルアミンのコポリマーの合成(スキーム5):
メタクリロイルオキシホスホコリン-アリルアミンコポリマー(LIPIDURE(登録商標)NH-01、5%ポリマー溶液、20ml)の溶液を丸底フラスコに取り込み、これにDMF(5ml)中DBCO-PEG4-NHSエステル(400mg)を添加し、混合物を磁気撹拌子により室温で撹拌した。即座に、pHを8.5前後に維持するためにトリエチルアミン(100μL)を混合物に添加し、撹拌を室温で16時間継続した。反応の終わりに、反応混合物を透析した(10K分子量カットオフ膜)。溶液を凍結乾燥させた。ポリマーを白色の粉末として得た。1HNMR(D2O):0.96-1.1
6 (m, CH3);1.5-2.2 m (骨格CH2);2.8-3.2 m;3.8-4.4 m;4.7m, 6.8-7.3広域ピーク (芳香族H).
【0054】
実施例8:クリック反応性アジド基を含有するメタクリロイルオキシホスホコリン-アリルアミンのコポリマーの合成(スキーム6):
メタクリロイルオキシホスホコリン-アリルアミンコポリマー(LIPIDURE(登録商標)NH-01、5%ポリマー溶液、20ml)の溶液を丸底フラスコに取り込み、これにDMF(5ml)中アジド-PEG12-NHSエステル(400mg)を添加し、この間、混合物を磁気撹拌子により室温で撹拌した。即座に、pHを8.5前後に維持するためにトリエチルアミン(100マイクロリットル)を混合物に添加し、撹拌を室温で16時間継続した。反応の終わりに、反応混合物を透析した(10K分子量カットオフ膜)。溶液を凍結乾燥させた。ポリマーを白色の粉末として得た。1HNMR(D2O
):3.15 (s, 第四級CH3基);3.58 s,3.9-4.28 (m, -CH2).
【0055】
実施例9:疎水性アルキル鎖リンカーを有しクリック反応性DBCO基を含有するクリック反応性メタクリロイルオキシホスホコリン-アリルアミンのコポリマーの合成(スキーム7):
メタクリロイルオキシホスホコリン-アリルアミンコポリマー(LIPIDURE(登録商標)NH-01、5%ポリマー溶液、20ml)の溶液を丸底フラスコに取り込み、これにDBCO-(C6-リンカー)-スルホN-ヒドロキシスクシンイミドエステル(400mg)粉末を添加し、混合物を磁気撹拌子により室温で撹拌した。即座に、pHを7.4前後に維持するためにNaHCO3(100mg粉末)を混合物に添加し、撹拌を室温で16時間継続した。反応の終わりに、反応混合物を透析した(10K分子量カットオフ膜)。溶液を凍結乾燥させた。ポリマーを淡黄色の綿状材料として得た。1HNMR
(D2O):0.98-1.18(m, CH3);1.6-2.2 m;2.8 -3
.4 m;3.9-4.3 m;4.8 m, 6.9-7.3m(芳香族H).
【0056】
実施例10:フルオレセインタグを有しクリック反応性DBCO基を含有するクリック反応性メタクリロイルオキシホスホコリン-アリルアミンのコポリマーの合成(スキーム8):
丸底フラスコに、クリック反応性DBCOポリマーを含有するメタクリロイルオキシホスホコリン-アリルアミン(100mg)及び磁気撹拌子を装入した。フラスコに、10mlの脱イオン水を添加し、ポリマーが完全に溶解するまで撹拌した。ポリマー溶液のpHは7.1であり、これをトリエチルアミンで8.0に調整した。フルオレセインイソチオシアネート35mgをバイアル中で秤量し、暗所でDMF(5ml)中に溶解させた。フルオレセインイソチオシアネート(isothyocyante)溶液をポリマー溶液に添加し、混合物を暗所で一晩撹拌させた。反応の終わりに、反応混合物を、10K分子量カットオフ膜を使用して脱イオン水に対して暗所で透析した。透析の完了後、透析バッグの内容物を凍結乾燥させた。生成物を明るい黄色が買った海綿状の材料(120mg)として得た。生成物を他のクリック反応性ポリマーと混合することによって生体表面のコーティング用に直接使用した。
【0057】
実施例11:HCT116スフェロイド:HCT116細胞スフェロイド調製のための手順
HCT116細胞株を、10%ウシ胎仔血清でスパイクした100マイクロリットルのMcCoy 5a緩衝液を含有する各ウェルに、ウェル当たり500、1000、及び1500細胞の用量で播種した。プレートを5%CO2下、37℃でインキュベートした。72時間後、スフェロイドを収集し、PBSで洗浄し、コンフォーマルコーティング用に即座に使用した。
【0058】
実施例12:ラットインスリノーマ細胞スフェロイド:インスリノーマ細胞スフェロイド調製のための手順
ラットインスリノーマ細胞(ins-1細胞)を、10%ウシ胎仔血清を含有する100マイクロリットルのDMEM培地を含有する各ウェルに、ウェル当たり1000の用量で播種した。プレートを5%CO2下、37℃でインキュベートした。72時間後、スフェロイドを収集し、コンフォーマルコーティング用に即座に使用した。
【0059】
実施例13:ラット膵島細胞:膵島細胞単離及びコーティング実施までの保存のための手順
コラゲナーゼ消化法を使用してラット膵島細胞をWistarラットから単離した。Carter et al.,BIOLOGICAL PROCEDURES ONLINE,vol 11,number 1,2009。近位総胆管にカテーテルをカニュレーションし、10mlの低温コラゲナーゼ溶液をゆっくりと注射した。膵被膜の完全性を維持するように膵全摘術を慎重に行った。単離した膵臓組織を追加の5mlのコラゲナーゼ溶液中、37℃で20分間インキュベートし、次いで組織を激しい振とう下で消化させた。0.02%DNase I及び1%ウシ血清アルブミンを含有する30mlの低温HBSS緩衝液で2回洗浄した後、それを金網ふるいに通し、続いて1300rpmで、4℃で3分間遠心分離した。次いで塊を10mlのHistopaque-1077溶液中に縣濁させた。組織懸濁液の上に0.02%DNase I及び1%ウシ血清アルブミンを含有する10mlのHBSS緩衝液を積層し、続いて1800rpmで、4℃で3分間勾配遠心分離を行った。精製された膵島細胞を上層と第2の層との間の界面からピペットで収集し、次いでRPMI-1640培地で繰り返し洗浄した。洗浄した膵島細胞を氷冷貯蔵下で保存し、コンフォーマルコーティング用に即座に使用した。
【0060】
実施例14:コンフォーマルコーティング方法:懸濁媒としてのスクロース中の活性化エステルアプローチ、続いてコーティング前の真空乾燥を用いたポリスチレン(PS)粒子のコンフォーマルコーティング。
ポリスチレン(PS)粒子(106~125ミクロンサイズ)50mg、4アームPEG-NH
2(5k)50mg、及び4アームPEG(NH
2)
3-FITC(5k)200マイクロリットル(micrioliters)の1%溶液を、400マイクロリットル(microlters)の水と混合した。ペーストを30℃で真空遠心機において6時間真空乾燥させた。ペレットを250マイクロリットルのスクロース溶液(60%)中に縣濁させた。活性化4アームPEG-NHSエステル(5k)の新たに調製した溶液(20mgを80マイクロリットルの水中に溶解させた)を、2000rpmで3分間ボルテックスしながらスクロース溶液中のPS粒子に添加した。混合物を3000rpmで、4℃で5分間遠心分離し、上清を除去した。ペレットをPBS(2ml)中に縣濁させ、ボルテックスして、コーティングされた粒子を溶液中に均一に分散させ、再び3000rpmで、4℃で5分間遠心分離した。この洗浄手順を5回繰り返して、過剰の未反応ポリマー及びスクロースを除去した。コーティングされた粒子を顕微鏡評価のためにウェルに移した。共焦点顕微鏡画像により、蛍光場の下で可視化したときに粒子が均一にコーティングされたことが明らかとなった(
図1)。
【0061】
実施例15:上層の懸濁媒としてのPEO(分子量800万)1%溶液中の4アームPEG-NHS活性化エステル(10k)でのポリスチレン粒子のコンフォーマルコーティング
2ml遠心管に、100マイクロリットルの15%スクロース溶液を充填した(層3)。この上部に、4アームPEG-NHS(10k、20mg)を含有する200マイクロリットルの2.5%スクロース溶液を積層した(第2の層)。その上部に、ポリスチレン粒子1mg、4アームPEG-NH2(10k、5mg)、4アームPEG-(NH2)3-FITC(10k)(5マイクロリットル、DI水中1%溶液)、及びPEO(分子量800万)50マイクロリットル(microlters)の1%溶液を含有する溶液の混合物を積層した(層1)。管を密閉し、1000rpmで、4℃で60分間遠心分離した。
【0062】
コーティングされたPS粒子が底部に沈殿し、上清液を慎重に除去し、新たなDI水(2ml)で置き換え、ボルテックスしてベッドを液体中に均一に分散させ、再び1000rpmで3分間遠心分離した。上清を除去し、新たな水で置き換え、ボルテックスしてベッドを分散させた。この洗浄手順を4回繰り返した。最後に、コーティングされた粒子を共焦点顕微鏡研究のためにウェルに入れた。蛍光場の下での共焦点顕微鏡画像により、ポリスチレン粒子が均一にコーティングされたことが明らかとなった(
図2)。
【0063】
実施例16:上層の懸濁媒としてのPEO(分子量400万)1%溶液中の4アームPEG-NHSエステル(10k)でのポリスチレン粒子のコンフォーマルコーティング
2ml遠心管に、100マイクロリットルの15%スクロース溶液を充填した(層3)。この上部に、4アームPEG-NHS(10k、及び20mg)を含有する200マイクロリットルの2.5%スクロース溶液を積層した(第2の層)。その上部に、ポリスチレン粒子1mg、4アームPEG-NH2(5mg、10k)、4アームPEG-(NH2)3-FITC(10k、5マイクロリットル、DI水中1%溶液)、及びPEO(分子量400万)50マイクロリットルの1%溶液を含有する溶液の混合物を積層した(層1)。管を密閉し、1000rpmで、4℃で60分間遠心分離した。
【0064】
コーティングされたポリスチレン粒子が底部に沈殿し、上清液を慎重に除去し、新たなDI水(2ml)で置き換えた。それをボルテックスしてベッドを液体中に分散させ、再び1000rpmで3分間遠心分離した。上清を除去し、新たな水で置き換え、ボルテックスしてベッドを分散させた。この洗浄手順を4回繰り返した。終わりに、コーティングされた粒子を共焦点顕微鏡研究のためにウェルに入れた。蛍光場の下での共焦点顕微鏡画像により、粒子が均一にコーティングされたことが明らかとなった(
図3)。
【0065】
実施例17:上層の懸濁媒としてのPEO(分子量100万)1%溶液中の4アームPEG-NHS活性化エステル(10k)でのポリスチレン粒子のコンフォーマルコーティング
2ml遠心管に、100マイクロリットルの15%スクロース溶液を充填した(層3)。その上部に、4アームPEG-NHS(10k)20mgを含有する200マイクロリットルの2.5%スクロース溶液を積層した(第2の層)。その上部に、ポリスチレン粒子1mg、4アームPEG-NH2(10k、5mg)、4アームPEG-(NH2)3-FITC(10k、5マイクロリットル、DI水中1%溶液)、及びPEO(分子量100万)50マイクロリットル(microlters)の1%溶液を含有する溶液の混合物を積層した(層1)。管を密閉し、1000rpmで、4℃で60分間遠心分離した。
【0066】
コーティングされたポリスチレン粒子が底部に沈殿し、上清液を慎重に除去し、新たなDI水(2ml)で置き換えた。それをボルテックスしてベッドを液体中に分散させ、再び1000rpmで3分間遠心分離した。上清を除去し、新たな水で置き換え、ボルテックスしてベッドを分散させた。この洗浄手順を4回繰り返した。最後に、コーティングされた粒子を共焦点顕微鏡研究のためにウェルに入れた。蛍光場の下での共焦点顕微鏡画像により、ポリスチレン粒子が分子量100万のPEO懸濁化剤中で、800万または400万のPEO懸濁化剤と比較してより低い均一性でコーティングされたことが明らかとなった(
図4、3、及び2)。
【0067】
実施例18:上層の懸濁媒としてのPEO(分子量100万)1%溶液中のクリック反応性ポリマーでのポリスチレン粒子のコンフォーマルコーティング
2ml遠心管に、100マイクロリットルの10%スクロース溶液を充填した(層3)。その上部に、4アームPEG-アジド(分子量10k)10mgを含有する200マイクロリットルの5%スクロース溶液を積層した(第2の層)。再び、第2の層の上部に、PS粒子1mg、4アームPEG-NH-DBCO、(10k、1.25mg)、4アーム-PEG-[NH-(PEG)4-dbco)]3-FITC(10k、1.25マイクロリットル、DI水中1%溶液)、及びPEO(分子量100万)50マイクロリットル(microlters)の1%溶液を含有する溶液の混合物を積層した(層1)。管を密閉し、1000rpmで、4℃で10分間遠心分離した。
【0068】
コーティングされた粒子が底部に沈殿した。上清液を慎重に除去し、新たなDI水(2ml)で置き換えた。それをボルテックスしてベッドを液体中に分散させ、再び1000rpmで3分間遠心分離した。上清を除去し、新たな水で置き換え、ボルテックスしてベッドを分散させた。この洗浄手順を4回繰り返した。最後に、洗浄済みのコーティングされた粒子を共焦点顕微鏡研究のためにウェルに入れた。蛍光場の下での共焦点顕微鏡画像により、ビーズが均一にコーティングされたことが明らかとなった。
図5を参照されたい。
【0069】
実施例19:上層の懸濁媒としてのPEO(分子量800万)1%溶液中のクリック反応性ポリマーでのポリスチレン粒子のコンフォーマルコーティング
2ml遠心管に、100マイクロリットルの10%スクロース溶液を充填した(層3)。この上に、4アームpeg-アジド(分子量10k)10mgを含有する200マイクロリットルの5%スクロース溶液を積層した(第2の層)。第2の層の上部に、PS粒子1mg、4アームPEG-NH-DBCO(10k、1.25mg)、4アーム-PEG-[NH-(PEG)4-DBCO]3-FITC(10k、1.25マイクロリットル、DI水中1%溶液)、及びPEO(分子量800万)50マイクロリットル(microlters)の1%溶液を含有する溶液の混合物を積層した(層1)。管を密閉し、1000rpmで、4℃で10分間遠心分離した。
【0070】
コーティングされたビーズが底部に沈殿した。上清液を慎重に除去し、新たなDI水(2mL)で置き換え、ボルテックスしてベッドを液体中に分散させ、再び1000rpmで3分間遠心分離した。上清を除去し、新たな水で置き換え、ボルテックスしてベッドを分散させた。この洗浄手順を4回繰り返した。最後に、洗浄済みのコーティングされた粒子を共焦点顕微鏡研究のためにウェルに入れた。蛍光場の下での共焦点顕微鏡画像により、分子量800万のPEO懸濁媒中のPS粒子が、分子量100万のPEO懸濁媒と比較してより低い均一性でコーティングされたことが明らかとなった。
図5及び6を参照されたい。
【0071】
実施例20:上層の懸濁媒としての分子量100万のPEO1%溶液中のクリック反応性ポリマーでのHCT116細胞スフェロイド(スフェロイド当たり500細胞の初回用量)のコンフォーマルコーティング方法
2ml遠心管に、4アームpeg-アジド(分子量10k)10mgを含有する200マイクロリットルの10%スクロース溶液を充填した(第2の層)。その上部に、HCT-116細胞スフェロイド(30スフェロイド)、4アームPEG-NH-DBCO(10k、1.25mg)、4アーム-PEG-[NH-(PEG)4-DBCO]3-FITC(10k、1.25マイクロリットル、DI水中1%溶液)、及びPEO(分子量100万、50マイクロリットル(microlters)、生理食塩水中1%溶液)を含有する溶液の混合物を第1の層として積層した。管を密閉し、1000rpmで、4℃で3分間遠心分離した。
【0072】
コーティングされた細胞スフェロイドが底部に沈殿した。上清液を慎重に除去し、新たなMcCoy 5a緩衝液(10%ウシ胎仔血清でスパイク、2ml)で置き換え、ボルテックスしてベッドを液体中に分散させ、再び1000rpmで3分間遠心分離した。上清を除去し、3mlの新たな緩衝液で置き換え、ボルテックスしてベッドを分散させた。この洗浄手順を4回繰り返した。最後に、コーティングされた細胞スフェロイドを緩衝液とともに共焦点顕微鏡研究のためにウェルに入れた。蛍光場の下での共焦点顕微鏡画像により、HCT116細胞スフェロイドが、分子量400万及び800万のPEO懸濁媒と比較してより低い均一性でコーティングされたことが明らかとなった(
図7)。
【0073】
実施例21:上層の懸濁媒としてのPEO(分子量400万)1%溶液中のクリック反応性ポリマーでのHCT細胞116スフェロイド(スフェロイド当たり500細胞の初回用量)のコンフォーマルコーティング
2ml遠心管に、4アームPEG-アジド(分子量10k、10mg)を含有する200マイクロリットルの10%スクロース溶液を充填した(第2の層、下層)。その上部に、HCT-116スフェロイド(30スフェロイド)、4アームPEG-NH-DBCO(1.25mg)、4アーム-PEG-[NH-PEG4-DBCO]3-FITC(10k、1.25マイクロリットルのDI水中1%溶液)、及びPEO(分子量400万、50マイクロリットル(microlters)の生理食塩水中1%溶液)を含有する溶液の混合物を積層した(第1の層、上層)。管を密閉し、1000rpmで、4℃で3分間遠心分離した。
【0074】
コーティングされたスフェロイドが底部に沈殿した。上清液を慎重に除去し、新たなMcCoy 5a緩衝液(10%ウシ胎仔血清でスパイク、2ml)で置き換えた。それをボルテックスしてベッドを液体中に分散させ、再び1000rpmで3分間遠心分離した。上清を除去し、3mlの新たな緩衝液で置き換え、ボルテックスしてベッドを分散させた。この洗浄手順を4回繰り返した。最後に、コーティングされた細胞スフェロイドを緩衝液とともに共焦点顕微鏡研究のためにウェルに入れた。蛍光場の下での共焦点顕微鏡画像により、HCT116細胞スフェロイドが均一にコーティングされ、分子量100万のPEO懸濁媒と比較してより良好であると見出されたことが明らかとなった(
図8)。
【0075】
実施例22:上層の懸濁媒としてのPEO(分子量800万)1%溶液中のクリック反応性ポリマーでのHCT116細胞スフェロイド(スフェロイド当たり500細胞の初回用量)のコンフォーマルコーティング
2ml遠心管に、4アームPEG-アジド(分子量10k、10mg)を含有する200マイクロリットルの10%スクロース溶液を充填した(第2の層、下層)。その上部に、HCT-116細胞スフェロイド(30スフェロイド)、4アームPEG-NH-DBCO(1.25mg)、4アーム-PEG-[NH-(PEG)4-DBCO]3-FITC(10k、1.25マイクロリットル、DI水中1%溶液)、及びPEO(分子量800万、50マイクロリットル(microlters)、生理食塩水中1%溶液)を含有する溶液の混合物を積層した(第1の層、上層)。管を密閉し、1000rpmで、4℃で3分間遠心分離した。
【0076】
コーティングされたスフェロイドが底部に沈殿した。上清液を慎重に除去し、新たなMcCoy 5a緩衝液(10%ウシ胎仔血清でスパイク、2ml)で置き換えた。それをボルテックスしてベッドを液体中に分散させ、再び1000rpmで3分間遠心分離した。上清を除去し、3mlの緩衝液で置き換え、ボルテックスしてベッドを分散させた。この洗浄手順を4回繰り返した。最後に、コーティングされた細胞スフェロイドを緩衝液とともに共焦点顕微鏡研究のためにウェルに入れた。蛍光場の下での共焦点顕微鏡画像により、HCT116細胞スフェロイドが均一にコーティングされ、100万のPEO懸濁媒と比較してより良好であると見出されたことが明らかとなった(
図9)。
【0077】
実施例23:上層における懸濁媒としてのPEO(分子量800万)1%溶液中のクリック反応性ポリマーでのHCT116細胞スフェロイド(スフェロイド当たり1000細胞の初回用量)のコンフォーマルコーティング
2ml遠心管に、4アームPEG-アジド(分子量10k、20mg)を含有する200マイクロリットルの10%スクロース溶液を充填した(第2の層、下層)。その上部に、HCT-116細胞スフェロイド(30スフェロイド)、4アームPEG-NH-DBCO(2.5mg)、4アーム-PEG-[NH-(PEG)4-DBCO]3-FITC(10k、2.5マイクロリットル、DI水中1%溶液)、及びPEO(分子量800万、50マイクロリットル、生理食塩水中1%溶液)を含有する溶液の混合物を積層した(第1の層、上層)。管を密閉し、1000rpmで、4℃で3分間遠心分離した。
【0078】
コーティングされたスフェロイドが底部に沈殿し、上清液を慎重に除去し、続いて新たなMcCoy 5a緩衝液2ml(10%ウシ胎仔血清でスパイク)を添加した。管をボルテックス(vertex)してベッドを液体中に均一に分散させ、再び1000rpmで3分間遠心分離した。上清を除去し、3mlの新たなMcCoy 5a緩衝液で置き換え、再びボルテックスしてベッドを分散させた。この洗浄手順を4回繰り返した。最後に、コーティングされたスフェロイドを共焦点顕微鏡研究のためにウェルに入れた。蛍光場の下での共焦点顕微鏡画像により、示されるように均一にコーティングされたことが明らかとなった(
図10)。
【0079】
実施例24:生/死細胞アッセイ
生細胞は、細胞内エステラーゼ活性によって識別され、これは、実質的に非蛍光性のカルセインAMの蛍光カルセイン部分への酵素変換によって決定される。カルセインAM色素は、生細胞内に保持され、細胞内エステラーゼと反応してex/em約495nm/約515nmで強い緑色蛍光を生成する、ポリアニオン色素である。対照的に、エチジウムホモダイマー-1(EthD-1)は、死細胞の損傷した膜を有する細胞に進入し、核酸に結合すると40倍の蛍光増強を経て、ex/em約495/約635nmで明るい赤色蛍光を発する。Ethd-1は、生細胞の無傷の形質膜によっては除外される。これらの2つの色素を組み合わせることにより、所与の試料の生/死細胞の概観が得られるであろう。
【0080】
実施例25:生/死細胞アッセイ手順
20マイクロリットルの2mM Ethd-1原液を10mlの滅菌組織培養グレードダルベッコPBSに取り込んだ。5マイクロリットルのDMSO中4mMカルセインAM溶液をEthd-1溶液に添加し、混合物をボルテックスした。結果として得られた生/死試験用試薬は、溶液中、EthD-1 4マイクロモル当たり2マイクロモルのカルセイン(Calcien)を有する。マルチウェルプレートの各ウェルに100マイクロリットルの細胞含有試験液を充填し、これに100マイクロリットルの生/死試験用試薬を添加し、37℃で30分間インキュベートした。細胞を共焦点顕微鏡においてex/em約495nm/約515nm及び約495/約635nmの2つの異なる波長で評価した。
【0081】
実施例26:コーティングされたHCT116細胞スフェロイド及び裸のHCT116細胞スフェロイドの顕微鏡検査及び生/死生存率アッセイ
コーティングされたHCT細胞116スフェロイド(1000細胞の初回用量/スフェロイド)を新たに調製し、2つの部分に分割した。コンフォーマルコーティングを、実施例19に記載される4アームPEG-DBCO及び4アームPEGアジドにより1つの部分に適用した。コーティングされた細胞スフェロイド及び裸の細胞スフェロイドの両方を、カルセインAM/EthD-1アッセイを使用して細胞生存率について即座に評価した。コーティングされたスフェロイドも裸のスフェロイドも、最初は生存細胞を有し、死細胞はなかった。McCoy 5a緩衝液中、5%CO
2下で、37℃でエージングすると、3日目時点で、細胞死は、コーティングされた細胞スフェロイド(
図12)と比較して裸のスフェロイド(
図11)において顕著に高かった。
【0082】
実施例27:上層の懸濁媒としてのPEO(分子量100万)1%溶液中のクリック反応性ポリマーでのインスリノーマ細胞スフェロイドのコンフォーマルコーティング
2ml遠心管に、4アームPEG-アジド(分子量10k、10mg)を含有する200マイクロリットルの10%スクロース溶液を第2の層として充填した(下層)。その上部に、インスリノーマスフェロイド(1000スフェロイド)、4アームPEG-NG-DBCO(2.5mg)、4アーム-PEG-[NH-(PEG)4-DBCO]3-FITC(10k、2.5マイクロリットル、DI水中1%溶液)、及びPEO(分子量100万、50マイクロリットル、生理食塩水中1%溶液)を含有する溶液の混合物を積層した(第1の層)。管を密閉し、1000rpmで、4℃で3分間遠心分離した。
【0083】
コーティングされたスフェロイドが底部に沈殿し、上清液を慎重に除去し、続いて生理食塩水2mlを添加した。管をボルテックスしてベッドを液体中に分散させ、再び1000rpmで3分間遠心分離した。上清を除去し、新たな生理食塩水2mlで置き換え、それをボルテックスしてベッドを分散させた。この洗浄手順を4回繰り返した。最後に、洗浄済みのコーティングされたスフェロイドを蛍光顕微鏡研究のためにウェルに入れた。蛍光顕微鏡画像により、インスリノーマ細胞スフェロイドが均一にコーティングされたことが明らかとなった(
図13)。
【0084】
実施例28:上層における懸濁媒としてのPEO(分子量100万)1%溶液中のクリック反応性ポリマーでのラット膵島細胞のコンフォーマルコーティング
2ml遠心管に、4アームPEG-アジド(分子量10k、10mg)を含有する200マイクロリットルの10%スクロース溶液を充填した(第2の層、下層)。その上部に、膵島細胞(100の膵島細胞)、4アームPEG-NH-DBCO(2.5mg)、4アーム-PEG-[NH-(PEG)4-DBCO]3-FITC(10k、2.5マイクロリットル、DI水中1%溶液)、及びPEO(分子量100万、50マイクロリットル(microlters)、生理食塩水中1%溶液)を含有する溶液の混合物を積層した(第1の層、上層)。管を密閉し、1000rpmで、4℃で3分間遠心分離した。
【0085】
コーティングされた膵島細胞が底部に沈殿し、上清液を慎重に除去し、続いて新たな生理食塩水2mlを添加した。管をボルテックスしてベッドを液体中に分散させ、再び1000rpmで3分間遠心分離した。上清を除去し、新たな生理食塩水2mlで置き換え、それをボルテックスしてベッドを分散させた。この洗浄手順を4回繰り返した。最後に、洗浄済みのコーティングされた膵島細胞を蛍光顕微鏡研究のためにウェルに入れた。蛍光顕微鏡画像により、膵島細胞が示されるようにコーティングされたことが明らかとなった(
図14)。
【0086】
実施例29:上層における懸濁媒としてPEO溶液を用いたクリック反応性MPCポリマーでのARPE-19細胞スフェロイドのコンフォーマルコーティング
2ml遠心管に、アジド修飾MPCポリマー(10mg)を含有する200マイクロリットルの10%スクロース溶液を第2の層として充填した(下層)。その上部に、ARPE-19スフェロイド(50スフェロイド)、DBCO修飾MPCポリマー(2.5mg)、FITC標識DBCO修飾MPCポリマー(0.025mg)、及びPEO(分子量100万、50マイクロリットル、生理食塩水中1%溶液)を含有する溶液の混合物を積層した(第1の層)。管を密閉し、1000rpmで3分間遠心分離した。コーティングされたスフェロイドが底部に沈殿し、上清液を慎重に除去し、続いて生理食塩水2mlを添加した。管をボルテックスしてベッドを液体中に分散させ、再び1000rpmで3分間遠心分離した。上清を除去し、新たなPBS 2mlで置き換え、それをボルテックスしてベッドを分散させた。洗浄手順を3回繰り返した。最後に、洗浄済みのコーティングされたスフェロイドをウェルに入れ、共焦点顕微鏡研究のためにDMEM培地中、37℃で培養した。共焦点顕微鏡画像により、ARPE-19細胞スフェロイドが均一にコーティングされ、コーティングポリマーの経時的な除去とともに徐々に融合したことが明らかとなった(
図19~21)。
【0087】
実施例30:両方の層における懸濁媒としてのPEO溶液中のクリック反応性MPCポリマーでのARPE-19細胞スフェロイドのコンフォーマルコーティング
2ml遠心管に、アジド修飾MPCポリマー(10mg)及びPEO(分子量100万、2mg)を含有する200マイクロリットルの10%スクロース溶液を第2の層として充填した(下層)。その上部に、ARPE-19スフェロイド(50スフェロイド)、DBCO修飾MPCポリマー(2.5mg)、FITC標識DBCO修飾MPCポリマー(0.025mg)、及びPEO(分子量100万、50マイクロリットル、生理食塩水中1%溶液)を含有する溶液の混合物を積層した(第1の層)。管を密閉し、1000rpmで3分間遠心分離した。コーティングされたスフェロイドが底部に沈殿し、上清液を慎重に除去し、続いて生理食塩水2mlを添加した。管をボルテックスしてベッドを液体中に分散させ、再び1000rpmで3分間遠心分離した。上清を除去し、新たなPBS 2mlで置き換え、それをボルテックスしてベッドを分散させた。洗浄手順を3回繰り返した。最後に、洗浄済みのコーティングされたスフェロイドをウェルに入れ、共焦点顕微鏡研究のためにDMEM培地中、37℃で培養した。共焦点顕微鏡画像により、ARPE-19細胞スフェロイドが均一にコーティングされ、2カ月を超えても安定しており融合しなかったことが明らかとなった(
図22~28)。
【0088】
実施例31:両方の層において懸濁媒を使用した、上層の連続添加法によるクリック反応性ポリマーでのARPE-19細胞スフェロイドのコンフォーマルコーティング
DBCO修飾MPCポリマー(0.5mg)、FITC標識DBCO修飾MPCポリマー(0.05mg)、及びPEO(分子量100万、0.1mg)を含有する、200のARPE-19スフェロイドが縣濁した10マイクロリットルの生理食塩水をピペット先端に導入し、底部にアジド修飾MPCポリマー(10mg)及びPEO(分子量100万、2mg)を含有する、200マイクロリットルの10%スクロース溶液を充填したマイクロチューブに組み立てた。卓上遠心機を使用してマイクロチューブを1000rpmで3分間遠心分離した。コーティングされたスフェロイドが底部に沈殿し、上清液を慎重に除去し、続いて生理食塩水2mlを添加した。管をボルテックスしてベッドを液体中に分散させ、再び1000rpmで3分間遠心分離した。上清を除去し、新たなPBS 2mlで置き換え、それをボルテックスしてベッドを分散させた。洗浄手順を3回繰り返した。最後に、洗浄済みのコーティングされたスフェロイドをウェルに入れ、共焦点顕微鏡研究のためにDMEM培地中、37℃で培養した。共焦点顕微鏡画像により、ARPE-19細胞スフェロイドが均一にコーティングされ、高収率で得られたことが明らかとなった(
図29)。
【0089】
実施例32:両方の層において懸濁媒を使用した、上層の連続添加法によるクリック反応性MPCポリマーでのラット膵島細胞のコンフォーマルコーティング
DBCO修飾MPCポリマー(0.25mg)、FITC標識DBCO修飾MPCポリマー(0.025mg)、及びPEO(分子量100万、0.05mg)を含有する生理食塩水に、50の膵島細胞(5マイクロリットル体積)を縣濁させ、それをピペット先端に導入し、底部にアジド修飾MPCポリマー(5mg)及びPEO(分子量100万、1mg)を含有する、100マイクロリットルの10%スクロース溶液を充填したマイクロチューブに組み立てた。卓上遠心機を使用してマイクロチューブを1000rpmで3分間遠心分離した。コーティングされた膵島細胞が底部に沈殿し、上清液を慎重に除去し、続いて生理食塩水2mLを添加した。管をボルテックスしてベッドを液体中に分散させ、再び1000rpmで3分間遠心分離した。上清を除去し、新たなPBS 2mLで置き換え、それをボルテックスしてベッドを分散させた。洗浄手順を3回繰り返した。最後に、洗浄済みのコーティングされた膵島細胞をウェルに入れ、共焦点顕微鏡研究のためにRPMI培地中、37℃で培養した。共焦点顕微鏡画像により、膵島細胞が均一にコーティングされ、コーティングポリマーが最大26日間安定して存在したことが明らかとなった(
図30~33)。
【0090】
実施例33:裸のインスリノーマ細胞スフェロイドと比較しての実施例27のコーティングされたインスリノーマ細胞スフェロイドのインスリン分泌研究
コーティングされたインスリノーマスフェロイド及び裸のインスリノーマスフェロイド(各々100のスフェロイド)を、平衡化及びプレインキュベーションのために1mLの1ミリモル濃度グルコースのクレブス緩衝液(Sigma)を含有するウェルに37℃で1時間入れた。これに続いて、低グルコース(3ミリモル濃度、1mL)、高グルコース(10ミリモル濃度、1mL)、及び低グルコース(3ミリモル濃度、1mL)のクレブス緩衝液中で、37℃で2時間、順次にインキュベートした。低グルコース緩衝液中でのインキュベーションの終わりに、100マイクロリットルの上清をアッセイのために収集した。高グルコース緩衝液の場合、各時点(10、30、60、90、120分)で、30マイクロリットルの上清をアッセイのために収集し、再び低グルコース緩衝液の場合は100マイクロリットルの上清をアッセイのために収集した。収集した試料をELISAによってアッセイした。グルコースに対するインスリン分泌反応性が、コーティングされたスフェロイド及び裸のスフェロイドの両方について確認され、コーティングされたスフェロイドのインスリン分泌は、高グルコース緩衝液中で裸のスフェロイドに匹敵した。
図15を参照されたい。コーティングされたスフェロイドについて、高グルコース緩衝液中でインスリン分泌の遅延は観察されず、それは裸のスフェロイドと比べてであるが、マイクロカプセル化された(アルギン酸バリウム)製剤よりも優れていることが見出された。データを
図16においてプロットした。
【0091】
実施例34:裸の膵島細胞と比較しての実施例28のコーティングされたラット膵島細胞を使用したインスリン分泌研究
コーティングされたラット膵島細胞及び裸の膵島細胞(各々20の膵島細胞)を、平衡化及びプレインキュベーションのために1mlの1ミリモル濃度グルコースのクレブス緩衝液を含有するウェルに37℃で1時間入れた。これに続いて、低グルコース(2mM、1mL)、高グルコース(20mM、1mL)、及び低グルコース(2mM、1mL)のクレブス緩衝液中で、37℃で2時間、順次にインキュベートした。低グルコース緩衝液中でのインキュベーションの終わりに、100マイクロリットルの上清をアッセイのために収集した。高グルコース緩衝液の場合、各時点(10、30、60、90、120分)で、30マイクロリットルの上清をアッセイのために収集し、再び低グルコース緩衝液の場合は100マイクロリットルの上清をアッセイのために収集した。収集した試料をELISAによってアッセイした。グルコースに対するインスリン分泌反応性が、コーティングされたスフェロイド及び裸のスフェロイドの両方について確認され、コーティングされた膵島細胞のインスリン分泌は、高グルコース緩衝液中で裸の膵島細胞に匹敵した(
図17)。コーティングされたスフェロイドについて、高グルコース緩衝液中でインスリン分泌の遅延は観察されず、それは裸のスフェロイドと比べてであるが、マイクロカプセル化された(アルギン酸バリウム)製剤よりも優れていることが見出された。データを
図18においてプロットした。
【0092】
実施例35:実施例32の連続添加法によってコーティングされた膵島細胞及び裸のラット膵島細胞の顕微鏡検査及び生/死生存率アッセイ
膵島細胞をダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)で簡便にすすぎ、4μMカルセインAM及び8μMエチジウムホモダイマー-1(EthD-1)から構成されるDPBS中で30分間インキュベートした。膵島細胞の生存率を共焦点顕微鏡で評価した。コーティングされたスフェロイドも裸のスフェロイドも、最初はほぼすべて生存細胞を有する。培地中でエージングすると、裸の膵島細胞では、29日目時点で互いの凝集に起因して中心細胞の壊死が引き起こされた一方で、コーティングされた膵島細胞は、依然として生存して、コーティングポリマーの作用による凝集を回避した(
図34~37)。
【0093】
実施例36:裸の膵島細胞と比較しての実施例32の連続添加法によってコーティングされたラット膵島細胞のインスリン分泌研究
コーティングされたラット膵島細胞及び裸の膵島細胞(各々20の膵島細胞)を、平衡化及びプレインキュベーションのために1mLの1mMグルコースのクレブス緩衝液を含有するウェルに37℃で1時間入れた。これに続いて、低グルコース(2mM、1mL)、高グルコース(20mM、1mL)、及び低グルコース(2mM、1mL)のクレブス緩衝液中で、37℃で2時間、順次にインキュベートした。各グルコース緩衝液中でのインキュベーションの終わりに、100μlの上清をアッセイのために収集した。収集した試料をELISAによってアッセイした。裸の膵島細胞及びコーティングされた膵島細胞の両方のインスリン分泌機能は、インビトロ培養下で17日目まで一致していることが見出されたが、裸の膵島細胞では23日目時点でそれらの機能が顕著に減少した一方で、コーティングされた膵島細胞は、依然としてそれらの機能を維持した(
図38、39)。
【0094】
本出願においていくつかのパラメータを説明する、「約」、「少なくとも」、「~未満」、及び「~よりも多く」などのすべての数字の境界に関して、この説明はまた、記載される値によって境界を定められた任意の範囲も必然的に包含することが理解されるべきである。したがって、例えば、「少なくとも1、2、3、4、または5」という説明はまた、とりわけ、1~2、1~3、1~4、1~5、2~3、2~4、2~5、3~4、3~5、及び4~5等の範囲も説明する。
【0095】
本明細書に引用されるすべての特許、出願、または非特許文献及び参考配列情報などの他の参考文献に関して、それらは参照によりそれらの全体が全目的でならびに記載される提案のために本明細書に援用されることが理解されるべきである。参照により援用される文献と本出願との間に矛盾が存在する場合、本出願が優先する。
【0096】
本出願で使用される見出しは、便宜上のものにすぎず、本出願の解釈に影響を及ぼすものではない。
【0097】
本発明によって提供される態様の各々の好ましい特徴は、必要な変更を加えて本発明の他の態様のすべてに適用可能であり、限定されないが、従属請求項によって例示され、また、実施例を含めた本発明の具体的な実施形態及び態様の個々の特徴(例えば、数値範囲及び代表的な実施形態を含めた要素)の組み合わせ及び順列も包含する。例えば、実施例で例示される具体的な実験パラメータは、本発明から逸脱することなく、特許請求される発明における断片的な使用のために適合させることができる。例えば、開示される材料に関して、これらの化合物の個々の及び集合的な種々の組み合わせ及び順列の各々への具体的な言及は、明示的に開示されていない場合があるが、各々が本明細書で具体的に企図され、記載される。故に、要素A、B、及びCの部類ならびに要素D、E、及びFの部類が開示され、要素A-Dの組み合わせの例が開示される場合、各々が個々に記載されていない場合でも、各々が個々に及び集合的に企図される。故に、この例では、組み合わせA-E、A-F、B-D、B-E、B-F、C-D、C-E、及びC-Fの各々が具体的に企図され、A、B、及びC;D、E、及びF;ならびに組み合わせ例A-Dの開示により開示されると見なされるべきである。同様に、これらの任意のサブセットまたは組み合わせも具体的に企図され、開示される。故に、例えば、A-E、B-F、及びC-Eのサブグループが具体的に企図され、A、B、及びC;D、E、及びF;ならびに組み合わせ例A-Dの開示により開示されると見なされるべきである。この概念は、組成物(composition of matter)の要素及びその組成物の作製方法または使用方法の工程を含めて、本出願のすべての態様に適用される。
【0098】
本明細書の教示に従って当業者によって認識される、本発明の上述の態様は、それらが先行技術に対して新規かつ非自明である範囲で、任意の組み合わせまたは順列で特許請求され得、故に、ある要素が当業者に既知の1つ以上の参考文献に記載される範囲で、それらは、とりわけ、その特徴または特徴の組み合わせの消極的限定またはディスクレーマによって、特許請求される発明から除外されてもよい。