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特許7573811レーザ加工装置及びレーザ加工システム並びにレーザ加工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】レーザ加工装置及びレーザ加工システム並びにレーザ加工方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/53 20140101AFI20241021BHJP
   B23K 26/03 20060101ALI20241021BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20241021BHJP
【FI】
B23K26/53
B23K26/03
H01L21/78 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020200061
(22)【出願日】2020-12-02
(65)【公開番号】P2022087920
(43)【公開日】2022-06-14
【審査請求日】2023-11-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】植木原 明
【審査官】柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-012542(JP,A)
【文献】特開2020-076651(JP,A)
【文献】特開2013-230477(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/53
B23K 26/03
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物の内部に集光点を合わせてレーザ光を切断予定ラインに沿って照射し、前記切断予定ラインに沿って前記被加工物の内部にレーザ加工領域を形成するレーザ加工装置において、
光軸に沿って検出光を出射する光源と、
前記光軸と同軸のレンズ光軸を有し、前記光源から出射した前記検出光を前記被加工物に集光させる対物レンズと、
前記対物レンズによる前記検出光の集光点の位置を前記光軸方向に変化させる集光点位置移動手段と、
前記集光点位置移動手段によって前記検出光の集光点の位置を変化させながら、前記検出光を前記被加工物に照射して前記被加工物からの反射光を検出することにより、前記被加工物の表面及び裏面を示す界面位置を検出する界面検出手段と、
前記界面位置の検出結果に基づいて、前記被加工物の厚さを検出する厚さ検出手段と、
前記厚さ検出手段の検出結果に基づいて、前記レーザ光の集光点の位置を変更する集光点位置変更手段と、
を備え
前記集光点位置変更手段は、前記厚さ検出手段が検出した前記被加工物の厚さが基準値よりも厚い場合には、その厚さ分だけ前記レーザ光の集光点の位置を、前記レーザ光の入射面である前記被加工物の裏面とは反対側の表面側寄りに変更し、前記被加工物の厚さが基準値よりも薄い場合には、その厚さ分だけ前記レーザ光の集光点を、前記被加工物の裏面側寄りに変更する、
レーザ加工装置。
【請求項2】
前記界面検出手段は、
前記反射光を受光する受光面を有する光検出器と、
前記受光面側に配置され、前記受光面に入射する前記反射光の一部を遮光するピンホールパネルと、を備え、
前記ピンホールパネルに形成されたピンホールは、前記対物レンズの焦点位置と光学的に共役関係になるように配置され、
前記界面検出手段は、前記ピンホールを通過した前記反射光を検出することにより、前記界面位置を検出する、
請求項に記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記界面検出手段は、前記被加工物の面内において、一つ又は複数の測定点で前記界面位置を検出し、
前記厚さ検出手段は、前記一つ又は複数の測定点での前記界面位置の検出結果に基づいて、前記被加工物の厚さを検出する、
請求項1又は2に記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
被加工物の表面とは反対側の裏面を研削する裏面研削装置と、
請求項1からのいずれか1項に記載のレーザ加工装置と、
を含むレーザ加工システムにおいて、
前記厚さ検出手段は、前記裏面研削装置が研削した前記被加工物の厚さを検出するものであり、
前記レーザ加工装置は、前記厚さ検出手段の検出結果に基づいて、前記レーザ光の集光点の位置を変更する、
レーザ加工システム。
【請求項5】
被加工物の内部に集光点を合わせてレーザ光を切断予定ラインに沿って照射し、前記切断予定ラインに沿って前記被加工物の内部にレーザ加工領域を形成するレーザ加工方法において、
光源から出射された検出光を前記被加工物に照射して前記被加工物からの反射光を検出することにより、前記被加工物の表面及び裏面を示す界面位置を検出する界面検出工程と、
前記界面検出工程の検出結果に基づいて、前記被加工物の厚さを検出する厚さ検出工程と、
前記厚さ検出工程の検出結果に基づいて、前記レーザ光の集光点の位置を変更する集光点位置変更工程と、
を備え
前記集光点位置変更工程は、前記厚さ検出工程が検出した前記被加工物の厚さが基準値よりも厚い場合には、その厚さ分だけ前記レーザ光の集光点の位置を、前記レーザ光の入射面である前記被加工物の裏面とは反対側の表面側寄りに変更し、前記被加工物の厚さが基準値よりも薄い場合には、その厚さ分だけ前記レーザ光の集光点を、前記被加工物の裏面側寄りに変更する、
レーザ加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工装置及びレーザ加工システム並びにレーザ加工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、シリコンウェーハ等の被加工物の内部に集光点を合わせてレーザ光を切断予定ラインに沿って照射し、切断予定ラインに沿って被加工物の内部に切断の起点となるレーザ加工領域(「改質領域」又は「改質層」とも言う。)を形成するレーザ加工装置が知られている。レーザ加工領域が形成された被加工物は、その後、エキスパンド又はブレーキングといった割断プロセスによって切断予定ラインに沿って割断されて個々のチップに分断される。このようなレーザ加工装置によれば、被加工物の内部にレーザ加工領域が形成され、そのレーザ加工領域を起点として切断予定ラインに沿って被加工物が割断されるので、ブレードを用いて被加工物を切削して割断する一般的なダイシング装置と比べ、発塵量が低く、ダイシング傷、チッピングあるいは材料表面でのクラック等が発生する可能性が低くなる等の利点がある。
【0003】
一方、近年の半導体製造分野では、ウェーハが大型化する傾向にあり、また、実装密度を高めるためにウェーハの薄化が進んでいる。このようなウェーハに対しては、ウェーハの裏面を研削(バックグラインド)してウェーハを薄化した後、このウェーハにレーザ光を照射してダイシングする(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-232449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、バックグラインドが行われたウェーハは、裏面研削装置の性能等(砥石の性能等)により、ウェーハの厚さが加工目標値(以下、「基準値」と言う。)に対してばらつく場合がある。このような場合、バックグラインド後に行われるレーザ加工において、ウェーハの厚さ方向に対するレーザ光の照射位置(集光点)が変化するという問題がある。
【0006】
レーザダイシングの基本的な加工は、レーザ光の入射面であるウェーハの裏面(バックグラインドが行われた裏面)を基準とし、浅い位置への照射後、深い位置へ照射すると浅い位置の改質領域が干渉してしまうため、深い位置から照射し、浅い位置へと順にレーザ光を複数回照射して改質領域を重ねる、もしくは亀裂を繋げて加工を行う。このため、深い側であるウェーハWの表面(デバイス面)からレーザ光の集光点までの距離は重要な要素となる。ここで、ウェーハの厚さが基準値に対して薄い場合、上記の距離が短くなるので、デバイスにレーザ光による熱ダメージを与える場合がある。これとは逆に、ウェーハの厚さが基準値に対して厚い場合、上記の距離が長くなるので、分割に必要な亀裂長さが不足して未分断が発生するという問題が生じる。
【0007】
つまり、従来のレーザ加工装置では、被加工物の厚さのばらつきに起因して被加工物の内部にレーザ加工領域を適正に形成することがすることができない場合がある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、被加工物の内部にレーザ加工領域を適正に形成することが可能なレーザ加工装置及びレーザ加工システム並びにレーザ加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のレーザ加工装置は、被加工物の内部に集光点を合わせてレーザ光を切断予定ラインに沿って照射し、切断予定ラインに沿って被加工物の内部にレーザ加工領域を形成するレーザ加工装置において、光軸に沿って検出光を出射する光源と、光軸と同軸のレンズ光軸を有し、光源から出射した検出光を被加工物に集光させる対物レンズと、対物レンズによる検出光の集光点の位置を光軸方向に変化させる集光点位置移動手段と、集光点位置移動手段によって検出光の集光点の位置を変化させながら、検出光を被加工物に照射して被加工物からの反射光を検出することにより、被加工物の表面及び裏面を示す界面位置を検出する界面検出手段と、界面位置の検出結果に基づいて、被加工物の厚さを検出する厚さ検出手段と、を備える。
【0010】
本発明の一形態によれば、厚さ検出手段が検出した検出結果に基づいて、レーザ光の集光点の位置を変更する集光点位置変更手段を備えることが好ましい。
【0011】
本発明の一形態によれば、集光点位置変更手段は、厚さ検出手段が検出した被加工物の厚さが基準値よりも厚い場合には、その厚さ分だけレーザ光の集光点の位置を、レーザ光の入射面である被加工物の裏面とは反対側の表面側寄りに変更し、被加工物の厚さが基準値よりも薄い場合には、その厚さ分だけレーザ光の集光点を、被加工物の裏面側寄りに変更することが好ましい。
【0012】
本発明の一形態によれば、界面検出手段は、反射光を受光する受光面を有する光検出器と、受光面側に配置され、受光面に入射する反射光の一部を遮光するピンホールパネルと、を備え、ピンホールパネルに形成されたピンホールは、対物レンズの焦点位置と光学的に共役関係になるように配置され、界面検出手段は、ピンホールを通過した反射光を検出することにより、界面位置を検出することが好ましい。
【0013】
本発明の一形態によれば、界面検出手段は、被加工物の面内において、一つ又は複数の測定点で界面位置を検出し、厚さ検出手段は、一つ又は複数の測定点での界面位置の検出結果に基づいて、被加工物の厚さを検出することが好ましい。
【0014】
上記課題を解決するために、本発明のレーザ加工システムは、被加工物の表面とは反対側の裏面を研削する裏面研削装置と、本発明のレーザ加工装置と、を含むレーザ加工システムにおいて、厚さ検出手段は、裏面研削装置が研削した被加工物の厚さを検出するものであり、レーザ加工装置は、厚さ検出手段の検出結果に基づいて、レーザ光の集光点の位置を変更する。
【0015】
上記課題を解決するために、本発明のレーザ加工方法は、被加工物の内部に集光点を合わせてレーザ光を切断予定ラインに沿って照射し、切断予定ラインに沿って被加工物の内部にレーザ加工領域を形成するレーザ加工方法において、光源から出射された検出光を被加工物に照射して被加工物からの反射光を検出することにより、被加工物の表面及び裏面を示す界面位置を検出する界面検出工程と、界面検出工程の検出結果に基づいて、被加工物の厚さを検出する厚さ検出工程と、厚さ検出工程の検出結果に基づいて、レーザ光の集光点の位置を変更する集光点位置変更工程と、を備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、被加工物の内部にレーザ加工領域を適正に形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の実施形態に係るレーザ加工装置を含むレーザ加工システムの構成を示したブロック図である。
図2図2は、図1に示した裏面研削装置の構成を示した概略ブロック図である。
図3図3は、図1に示したレーザ加工装置の構成を示した概略ブロック図である。
図4図4は、図1に示した分割装置の動作を時系列的に示した説明図である。
図5図5は、レーザ加工装置に搭載された亀裂検出装置の構成を示すブロック図である。
図6図6は、ウェーハに対して検出光の偏射照明が行われたときの様子を示した説明図である。
図7図7は、ウェーハに対して検出光の偏射照明が行われたときの様子を示した説明図である。
図8図8は、ウェーハに対して検出光の偏射照明が行われたときの様子を示した説明図である。
図9図9は、光検出器に受光される反射光の様子を示した図である。
図10図10は、光検出器に受光される反射光の様子を示した図である。
図11図11は、光検出器に受光される反射光の様子を示した図である。
図12図12は、ウェーハからの反射光が対物レンズ瞳に到達する経路を示した説明図である。
図13図13は、ウェーハのレーザ加工方法のフローチャートである。
図14図14は、ピエゾアクチュエータの移動量と検出器本体から出力される検出信号との関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面に従って本発明に係るレーザ加工装置及びレーザ加工システム並びにレーザ加工方法の実施形態について説明する。
【0019】
まず、実施形態のレーザ加工装置を説明する前に、このレーザ加工装置を含むレーザ加工システムの概要について簡単に説明する。なお、本実施形態では、被加工物としての半導体ウェーハとしてシリコンウェーハ(以下、「ウェーハ」と略称する。)を例示して説明するが、例えば、ガリウムヒ素、サファイア、窒化ガリウム又はシリコンカーバイド等の他の半導体ウェーハであってもよい。また、半導体ウェーハに限定されるものではなく、レーザ加工によって内部にレーザ加工領域が形成可能な被加工物であれば適用可能である。すなわち、被加工物の材質、形状、構造、大きさ等に制限はなく、ガラス、セラミックス、樹脂、金属等の材料からなる部材を被加工物として用いることもできる。
【0020】
[レーザ加工システム]
図1は、実施形態に係るレーザ加工装置10を含むレーザ加工システム100の構成を示すブロック図である。
【0021】
図1に示すように、レーザ加工システム100は、裏面研削装置200と、レーザ加工装置10と、分割装置300と、を含んでいる。
【0022】
レーザ加工システム100では、まず、裏面研削装置200にウェーハが搬送され、裏面研削装置200において、ウェーハの裏面を研削するバックグラインド(裏面研削)が行われる。裏面研削装置200によりバックグライドされたウェーハは、例えば250μm以下の厚さに薄化される。なお、バックグラインドを行うに際し、ウェーハの表面には予め保護シートが貼り付けられており、この保護シートによってウェーハの表面に形成されたデバイス(デバイス層)が保護されている。ここで、本明細書において、ウェーハの二つの面のうち、デバイスが形成された面をウェーハの「表面」と称し、表面の反対側の面を「裏面」と称することにする。
【0023】
裏面研削装置200によってバックグラインドが行われたウェーハは、レーザ加工装置10に搬入され、レーザ加工装置10において、レーザ光によりウェーハの内部にレーザ加工領域が切断予定ラインに沿って形成される。
【0024】
全ての切断予定ラインにレーザ加工領域が形成されたウェーハは、その裏面がダイシングテープを介してダイシング用フレームに搭載(マウント)される。この状態でウェーハの表面に貼り付けられていた保護シートが剥離される。
【0025】
次に、ウェーハは、ダイシング用フレームごと分割装置300に搬入され、分割装置300において、ダイシングテープが放射状に引き伸ばされて、ウェーハが個々のチップに分断される。以上がレーザ加工システム100によるウェーハの加工の流れである。
【0026】
次に、レーザ加工システム100を構成する各装置の構成について説明する。
【0027】
<裏面研削装置>
図2は、裏面研削装置200の概略構成を示したブロック図である。なお、図2では、裏面研削装置200によって、ウェーハWの二点鎖線で示す裏面Wbが、実線で示す裏面Wb1まで研削された状態が示されている。
【0028】
図2に示すように、裏面研削装置200は、研削ヘッド208と、チャックテーブル218と、研削駆動部202と、テーブル駆動部206と、制御部216と、を備える。
【0029】
研削ヘッド208は、シャフト214の一端(下端)に固定された回転研削盤210と、回転研削盤210の研削面(チャックテーブル218に吸着保持されたウェーハWに対向する面)に取り付けられた砥石212と、を有している。
【0030】
研削駆動部202は、研削ヘッド208をZ方向に移動させるための研削ヘッドZ駆動機構(不図示)と、研削ヘッド208をZ方向周りのθ方向に回転させるための研削ヘッド回転駆動機構(不図示)と、を有している。研削ヘッドZ駆動機構及び研削ヘッド回転駆動機構は、それぞれ、モータやギアを含んで構成される。
【0031】
研削駆動部202は、制御部216からの指令に応じて、研削ヘッドZ駆動機構により研削ヘッド208のZ方向位置を調整すると共に、研削ヘッド回転駆動機構により研削ヘッド208をZ方向周りのθ方向に回転させる。
【0032】
チャックテーブル218は、回転研削盤210に対向する位置に設けられている。チャックテーブル218は、その上面(研削ヘッド208に対向する面)に、ウェーハWを吸着保持する保持面218aを備える。ウェーハWは、その表面Waが保護シート220を介してチャックテーブル218の保持面218aに吸着保持される。
【0033】
テーブル駆動部206は、チャックテーブル218をZ方向周りのθ方向に回転さるためのテーブル回転駆動機構を備えている。テーブル回転駆動機構は、モータやギアを含んで構成される。
【0034】
なお、裏面研削装置200は、研削ヘッド208とチャックテーブル218とのXY方向(水平方向)の相対位置を変化させるためのXY駆動機構を備えていてもよい。XY駆動機構は、上述した研削ヘッドZ駆動機構などと同様に、モータやギアを含んで構成される。XY駆動機構は、研削ヘッド208をXY方向に移動させるものでもよいし、チャックテーブル218をXY方向に移動させるものでもよく、両者をXY方向に移動させるものであってもよい。
【0035】
このように構成される裏面研削装置200によれば、チャックテーブル218の保持面218aにウェーハWが吸着保持された状態でチャックテーブル218によりウェーハWを回転させつつ、不図示のスラリー供給口からスラリーをウェーハWの裏面Wb(被研削面)に供給しながら、研削ヘッド208の研削砥石212をウェーハWの裏面Wbに当接させ且つ研削ヘッド208を回転させることにより、ウェーハWの裏面Wbの研削が行われ、ウェーハWが所望の厚さに薄化される。
【0036】
<レーザ加工装置>
図3は、実施形態に係るレーザ加工装置10の概略構成を示したブロック図である。
【0037】
図3に示すように、レーザ加工装置10は、加工ヘッド16と、吸着ステージ18と、加工ヘッド駆動部19と、テーブル駆動部14と、制御部12と、を備える。さらに、この実施形態におけるレーザ加工装置10は、加工ヘッド16の一側面に取り付けられた亀裂検出装置500を備える。なお、亀裂検出装置500の構成については後述する。
【0038】
吸着ステージ18は、ウェーハWを吸着保持する保持面18aを備える。ウェーハWの表面Waは、例えば、XY方向に伸びる複数の切断予定ラインにより格子状の領域に区画されており、この格子状の領域には、それぞれ電子回路等のデバイスが形成されている。このウェーハWは、吸着ステージ18の保持面18aに保護シート220を下側にして載置され、保護シート220を介して吸着ステージ18により吸着保持される。なお、保護シート220を介することなくウェーハWを直接吸着保持させてもよい。
【0039】
テーブル駆動部14は、吸着ステージ18をXY方向に移動させるためのXY駆動機構(不図示)と、吸着ステージ18をZ方向周りのθ方向に回転させるための回転駆動機構(不図示)と、を備えている。テーブル駆動部14は、制御部12による制御に従って、XY駆動機構により吸着ステージ18をXY方向に移動させると共に、回転駆動機構により吸着ステージ18をZ方向周りのθ方向に回転させる。これにより、吸着ステージ18に吸着保持されたウェーハWと後述する加工ヘッド16との相対的な位置合わせを行うことが可能となると共に、ウェーハWに設けられた複数の切断予定ラインに沿って加工ヘッド16によるレーザ加工を行うことが可能となる。
【0040】
加工ヘッド16は、レーザ加工を行うための各種光学系を収容する加工光学系本体(「レーザエンジン」などともいう。)である。加工ヘッド16は、レーザ光Lを出射するレーザ光源20と、コンデンスレンズ22等の光学素子と、コンデンスレンズ22をZ方向(レーザ光Lの光軸方向)に微小移動させるZ微動手段23と、を備える。なお、Z微動手段は、Z方向に伸縮するピエゾアクチュエータにより構成される。
【0041】
レーザ光源20は、ウェーハWの内部にレーザ加工領域Rを形成するための加工用レーザ光(以下、単に「レーザ光」という。)Lを出射する。レーザ光源20としては、例えば、半導体レーザ励起Nd:YAG(Yttrium Aluminum Garnet)レーザが用いられる。レーザ光源20から出射されたレーザ光Lは、コンデンスレンズ22によりウェーハWの内部に集光される。これにより、ウェーハWの内部にレーザ加工領域Rが形成される。
【0042】
加工ヘッド駆動部19は、加工ヘッド16をZ方向(レーザ光Lの光軸方向)に移動させるための加工ヘッドZ駆動機構(不図示)を備えている。加工ヘッドZ駆動機構は、モータやギアを含んで構成される。加工ヘッド駆動部19は、制御部12による制御に従って、加工ヘッドZ駆動機構により加工ヘッド16をZ方向に移動させる。これにより、加工ヘッド16と、吸着ステージ18に吸着保持されたウェーハWとのZ方向の相対距離を調整することが可能となる。
【0043】
制御部12は、例えば、パーソナルコンピュータ又はワークステーションにより実現される。制御部12は、CPU(Central Processing Unit)と、メモリ(例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等)と、ストレージ(例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等)と、入出力回路部と、を備える。
【0044】
制御部12は、レーザ加工装置10の各部の動作を制御する。具体的には、加工ヘッド16の動作制御(レーザ光源20の出射制御や、Z微動手段23によるコンデンスレンズ22の位置制御など)、加工ヘッド駆動部19及びテーブル駆動部14の動作制御、さらに亀裂検出装置500の動作制御などを行う。
【0045】
ここで、レーザ加工領域Rとは、レーザ光Lの照射によってウェーハWの内部の密度、屈折率、機械的強度等の物理的特性が周囲と異なる状態となり、周囲よりも強度が低下する領域のことをいう。レーザ加工領域Rは、例えば、クラック領域を含んでいる。
【0046】
ウェーハWにレーザ加工領域Rを形成する場合、加工ヘッド駆動部19により加工ヘッド16とウェーハWとの間の相対距離(ワーキングディスタンス)を所望の距離に調整した上で、レーザ光源20からレーザ光Lが出射され、コンデンスレンズ22等の光学素子を介してウェーハWに照射される。なお、ウェーハWの内部に照射されるレーザ光Lの集光点FPのZ方向位置は、Z微動手段23(ピエゾアクチュエータ)によるコンデンスレンズ22の位置制御によって、ウェーハWの裏面Wb1(レーザ光入射面)から一定の深さ位置に調整される。
【0047】
この状態でテーブル駆動部14により吸着ステージ18がダイシング方向であるX方向に加工送りされる。これにより、ウェーハWの切断予定ラインに沿ってレーザ加工領域Rが1層形成される。そして、切断予定ラインに沿ってレーザ加工領域Rが1層形成されると、テーブル駆動部14により吸着ステージ18がY方向に1ピッチ割り出し送りされ、次の切断予定ラインにもレーザ加工領域Rが形成される。次に、全てのX方向の切断予定ラインに沿ってレーザ加工領域Rが形成されるとテーブル駆動部14により吸着ステージ18がZ方向周りのθ方向に90°回転され、回転後のX方向の切断予定ラインにも同様にしてレーザ加工領域Rが形成される。なお、図3では、1層のレーザ加工領域Rが示されているが、ウェーハWの厚さに応じて、ウェーハWの内部に複数層(例えば2層、3層など)のレーザ加工領域が形成される場合もある。
【0048】
<分割装置>
図4(A)~(E)は、分割装置300の動作を時系列的に示した説明図である。
【0049】
図4(A)に示すようにウェーハWは、ウェーハWの裏面Wb1にダイシングテープ302が貼り付けられ、このダイシングテープ302を介してダイシング用フレーム304に搭載される。なお、保護シート220(図3参照)は、この状態でウェーハWの表面Waから剥離される。
【0050】
ダイシングテープ302は、ウェーハWの外周部とダイシング用フレーム304の内周部との間に環状部領域302Aを有し、この環状部領域302Aの下方側にエキスパンドリング306が配置されている。
【0051】
エキスパンドリング306の上昇動作によってエキスパンドリング306が環状部領域302Aに当接し、ダイシングテープ302の拡張が始まると(図4(A))、まず、環状部領域302Aの拡張が始まる(図4(B))。これにより、環状部領域302Aに張力が発生し、この張力がある程度高まると、高まった張力がウェーハWに伝達されてウェーハWのチップTへの分断が始まる(図4(C))。ウェーハWが個々のチップTに分断されていくと、環状部領域302Aの拡張とチップT間のダイシングテープ302の拡張とが同時に進行する(図4(D)~(E))。これによって、ウェーハWがチップTに確実に分断される。以上がレーザ加工システム100を構成する各装置の機能である。
【0052】
次に、レーザ加工装置10(図3参照)に搭載された亀裂検出装置500について図5を参照して説明する。
【0053】
図5は、亀裂検出装置500の一例を示すブロック図である。この亀裂検出装置500は、基本機能として、レーザ光L(図3参照)の照射によりウェーハWの内部に発生した亀裂を検出する機能(亀裂検出機能)を備えるだけでなく、さらに、レーザ光Lの照射が行われる前(すなわち、裏面研削装置200によりバックグラインドが行われた後)のウェーハWの厚さを検出する機能(厚さ検出機能)を兼ね備えたものである。以下、亀裂検出装置500の基本機能である亀裂検出機能について説明した後に、亀裂検出装置500の厚さ検出機能について説明する。なお、亀裂検出装置500は、加工ヘッド16の一側面に取り付けられており、上述した加工ヘッド駆動部19(図3参照)により加工ヘッド16と一体となってZ方向に移動可能に構成されている。
【0054】
[亀裂検出機能]
図3に示したレーザ加工装置10によってウェーハWにレーザ加工領域Rを形成した場合、そのレーザ加工領域RからウェーハWの厚さ方向に亀裂(クラック)が伸展する。図4に示した分割装置300においてチップへの分断を適正に行うためには、ウェーハWを割断する際の起点となるレーザ加工領域Rを適正に形成し、ウェーハWの内部に形成された亀裂の亀裂深さを正確に検出することが重要である。
【0055】
そこで、図5に示す亀裂検出装置500は、ウェーハWに対して検出光L1を照射し、ウェーハWからの反射光L2を検出することで、ウェーハWの内部に形成された亀裂Kの亀裂深さを検出する機能(亀裂検出機能)を備える。なお、亀裂検出装置500は、図3に示したレーザ加工装置10と組み合わせて使用されるが、以下の説明では、亀裂検出装置500に係る構成要素について説明し、レーザ加工装置10の構成と同一の部材については同一の符号を付して説明を省略する場合がある。また、以下の説明では、ウェーハWが吸着される吸着ステージ18をXY平面と平行な平面とし、Z方向をウェーハWの厚さ(深さ)方向とする3次元直交座標系を用いる。
【0056】
図5に示すように、亀裂検出装置500は、光源部550、照明光学系600、界面検出用光学系650、亀裂検出用光学系700、制御部750、集光点位置移動機構752、対物レンズ754、操作部756及び表示部758を含んでいる。
【0057】
光源部550は、検出光L1を出射する。この検出光L1は、ウェーハWの界面位置の検出、及びウェーハWの内部に形成された亀裂Kの検出に用いられる。ここで、ウェーハWがシリコン製の場合、検出光L1としては、波長1,000nm以上の赤外光を用いるのが望ましい。
【0058】
光源部550は、光源552A、552B、552C及びハーフミラー554を有している。光源552A、552B、552C及びハーフミラー554は、対物レンズ754のレンズ光軸と同軸の主光軸AXに沿って配置されている。
【0059】
光源552A、552B、552Cは、主光軸AXに沿って検出光L1を出射する。光源552A、552B、552Cとしては、例えば、レーザ光源(赤外線レーザ光源、レーザダイオード)、又はLED(Light Emitting Diode)光源を用いることができる。
【0060】
光源552Aは、対物レンズ754の対物レンズ瞳754aの略全面を照明することが可能なレーザ開口を有している。この光源552Aは、後述の界面位置の検出に用いられる。
【0061】
光源552B、552Cは、対物レンズ754の対物レンズ瞳754aのうち、主光軸AX(レンズ光軸)から偏心した一部のみを照明することが可能なレーザ開口をそれぞれ有している。これらの光源552B、552Cは、後述の亀裂検出に用いられる。
【0062】
ハーフミラー554は、界面検出用の光源552Aから出射される検出光L1を反射し、亀裂検出用の光源552B、552Cから出射される検出光L1を透過させる。以下、図示は省略するが、光源552A、552B、552Cから出射される検出光L1をそれぞれL1(A)、L1(B)、L1(C)として説明する。
【0063】
光源552A、552B、552Cは、それぞれ制御部750と接続されており、制御部750により光源552A、552B、552Cの出射制御が行われる。
【0064】
制御部750は、亀裂検出装置500の各部の動作を制御するCPU(Central Processing Unit)と、制御プログラムを格納するROM(Read Only Memory)と、CPUの作業領域として使用可能なSDRAM(Synchronous Dynamic Random Access Memory)と、を含んでいる。制御部750は、図3に示したレーザ加工装置10の制御部12と不図示のインターフェースを介して接続されており、図5の操作部756を介して操作者による操作入力を受け付け、操作入力に応じた制御信号を亀裂検出装置500の各部に送信して各部の動作を制御する。
【0065】
操作部756は、操作者による操作入力を受け付ける手段であり、例えば、キーボード、マウス、又はタッチパネル等のポインティングデバイス等である。
【0066】
また、表示部758は、亀裂検出装置500の操作のための操作GUI(Graphical User Interface)及び画像(例えば、亀裂の検出結果等)を表示する装置である。表示部758としては、例えば、液晶ディスプレイを用いることができる。
【0067】
なお、操作部756及び表示部758は、レーザ加工装置10に備えられる操作部及び表示部(いずれも不図示)と共用されていてもよい。
【0068】
照明光学系600は、光源部550から出射された検出光L1を対物レンズ754に導光する。照明光学系600は、リレーレンズ602、606及びミラー(例えば、全反射ミラー)604を有している。光源部550から出射された検出光L1は、リレーレンズ602を透過して、ミラー604により反射されて光路が折り曲げられる。ミラー604によって反射された検出光L1は、リレーレンズ606を透過した後、界面検出用光学系650のハーフミラー654及びハーフミラー652によって順次反射されて対物レンズ754に向けて出射される。また、ハーフミラー652を透過した観察光(ウェーハWからの戻り光)は、観察光学系760を用いて観察可能である。なお、観察光学系760を用いない場合は、ハーフミラー652に代えてダイクロイックミラー又は全反射ミラーを用いることができる。
【0069】
対物レンズ754は、照明光学系600から出射された検出光L1をウェーハWに集光(合焦)させる。対物レンズ754は、ウェーハWに対向する位置に配置され、対物レンズ754のレンズ光軸が主光軸AXと同軸に配置される。
【0070】
集光点位置移動機構752は、ウェーハWに対する検出光L1の集光点の位置をZ方向(対物レンズ754の光軸方向)に変化させるものである。集光点位置移動機構752は、対物レンズ754をZ方向に移動させるピエゾアクチュエータ(不図示)を含んで構成される。集光点位置移動機構752は、制御部750の制御に従ってピエゾアクチュエータを駆動することにより、対物レンズ754をZ方向に移動させる。これにより、対物レンズ754とウェーハWとのZ方向の相対距離が変化し、ウェーハWに対する検出光L1の集光点の位置が変化するので、検出光L1の集光点をウェーハWの厚さ方向(Z方向)に走査することが可能となる。
【0071】
また、集光点位置移動機構752は、ピエゾアクチュエータに加え、上述の加工ヘッドZ駆動機構を含むものであってもよい。加工ヘッドZ駆動機構により加工ヘッド16をZ方向に移動させることにより、加工ヘッド16と一体となって亀裂検出装置500をZ方向に移動させることができる。これにより、対物レンズ754とウェーハWとの相対距離が変化するので、ウェーハWに対する検出光L1の集光点の位置を変化させることが可能となる。したがって、加工ヘッドZ駆動機構による集光点の位置調整(粗調整)と、ピエゾアクチュエータによる集光点の位置調整(微調整)とを組み合わせることで、ピエゾアクチュエータのみで検出光L1の集光点をウェーハWの厚さ方向に走査する場合に比べて、ウェーハWに対する検出光L1の集光点の位置の調整の自由度(調整幅)が広がるため、様々な厚みのウェーハWに対しても亀裂検出や厚み検出が可能となる。
【0072】
対物レンズ754によって集光され、ウェーハWによって反射された反射光L2は、界面検出用光学系650及び亀裂検出用光学系700に導光され、それぞれ、ウェーハWの界面位置の検出及び亀裂の検出に用いられる。
【0073】
以下の例では、ウェーハWの表面Wa(吸着ステージ18に吸着される面であって、デバイスが形成された面)の界面位置の検出を行い、その後、表面Waの界面位置を基準として亀裂深さを検出する例について説明する。
【0074】
なお、本例では、ウェーハWの表面Waを基準として亀裂深さの検出を行うようにしたが、これに限定されるものではなく、例えば、ウェーハWの裏面Wb1を基準として亀裂深さの検出を行ってもよい。また、ウェーハWの表面Wa及び裏面Wb1の双方の界面位置をそれぞれ基準として検出した亀裂深さの平均値をとるようにすることも可能である。
【0075】
<界面検出用光学系>
界面検出用光学系650は、ウェーハWの界面(表面Waまたは裏面Wb1)の検出を行うための光学系であり、ハーフミラー652、ハーフミラー654、リレーレンズ656、ハーフミラー658及び光検出器660を有している。
【0076】
ウェーハWの界面として例えばウェーハWの表面Waを検出するときには、制御部750は、光源552Aを発光させて、検出光L1(A)をウェーハWに照射する。
【0077】
光源552Aからの検出光L1(A)は、対物レンズ754の対物レンズ瞳754aと略同じ大きさの開口を有するレーザ光であり、ハーフミラー654及びハーフミラー652によって順次反射されて対物レンズ754に導光される。検出光L1(A)は、対物レンズ754の対物レンズ瞳754aの略全面に照射される。
【0078】
ここで、ウェーハWにより反射された検出光L1(A)の反射光をL2(A)とする。反射光L2(A)は、対物レンズ754を透過してハーフミラー652によって反射され、ハーフミラー654を透過した後、リレーレンズ656に導光される。リレーレンズ656を透過した反射光L2(A)は、ハーフミラー658によって反射されて光検出器660に導光される。
【0079】
光検出器660は、ウェーハWからの反射光L2(A)を受光して、ウェーハWの表面Waの検出を行うための装置であり、検出器本体660A及びピンホールパネル660Bを有している。
【0080】
検出器本体660Aとしては、受光した光を電気信号に変換して制御部750に出力するフォトディテクタ(例えば、フォトダイオード)を用いることができる。
【0081】
ピンホールパネル660Bには、入射光の一部を透過させるためのピンホールが形成されている。ピンホールパネル660Bは、検出器本体660Aの受光面に対して上流側に配置されており、ピンホールパネル660Bのピンホールが反射光L2(A)の光軸上に位置するように配置されている。ピンホールパネル660Bのピンホールの位置は、対物レンズ754の集光点(前側焦点位置)と光学的に共役関係にある(コンフォーカルピンホール)。また、ピンホールパネル660Bのピンホールの大きさは、対物レンズ754の回折限界程度に調整されている。
【0082】
ウェーハWによって反射された反射光L2(A)は、対物レンズ754の集光点と光学的に共役な位置にあるピンホールパネル660Bのピンホールの位置に集光する。そして、対物レンズ754の集光点が反射面となるウェーハWの表面Waと一致した場合、検出光L1(A)の光束はウェーハWの表面Waで反射されて、平行光束となって対物レンズ754を透過して戻ってくる。したがって、検出器本体660Aから出力される検出信号は、対物レンズ754の集光点が反射面となるウェーハWの表面Waの位置と一致したときに鋭いピークを有する。なお、対物レンズ754の集光点が反射面となるウェーハWの裏面Wb1の位置と一致したときにも、検出器本体660Aから出力される検出信号は鋭いピークを有する。
【0083】
制御部750は、光源552Aからの検出光L1(A)をウェーハWに照射しながら、集光点位置移動機構752により対物レンズ754とウェーハWとの相対距離を変化させて、ウェーハWに対する検出光L1(A)の集光点の位置(すなわち、対物レンズ754の前側焦点位置)をZ方向に移動させる。これにより、検出光L1(A)の集光点がウェーハWの厚さ方向に走査される。制御部750は、検出光L1(A)の集光点がウェーハWの厚さ方向に走査されたときのウェーハWからの反射光L2(A)を光検出器660により検出し、この光検出器660からの検出信号のピークを検出することにより、Z方向におけるウェーハWの表面Waの界面位置を検出することができる。
【0084】
なお、本例では、コンフォーカル法を用いてウェーハWの界面位置の検出を行うようにしたが、これに限定されるものではなく、例えば、非点収差法、白色干渉法等のその他の焦点検出方法を適用することも可能である。また、本例では、亀裂検出装置50の制御部750を、レーザ加工装置10の制御部12(図3参照)とは別に示したが、これらの制御部750、12で実行される処理は、1つの制御部で実行されてもよいし、複数の制御部で実行されてもよい。
【0085】
<亀裂検出用光学系>
亀裂検出用光学系700は、リレーレンズ702、光検出器704、706を有している。
【0086】
ウェーハWの内部に形成された亀裂Kを検出するときには、制御部750は、光源552B、552Cを発光させて、検出光L1(B)、L1(C)をウェーハWに照射する。光源552B、552Cは、それぞれ主光軸AXからずれた位置にレーザ開口を有している。これにより、主光軸AXに対して偏心した検出光L1(B)及びL1(C)がウェーハWに照射される。
【0087】
検出光L1(B)、L1(C)がウェーハWによりそれぞれ反射された反射光L2(B)、L2(C)は、対物レンズ754を透過してハーフミラー652及びハーフミラー654によって順次反射された後、リレーレンズ656及びハーフミラー658を順次透過してリレーレンズ702に入射する。リレーレンズ702を透過した反射光L2(B)、L2(C)は、光検出器704、706により受光される。
【0088】
光検出器704、706は、ウェーハWからの反射光L2(B)、L2(C)を受光して、ウェーハWの内部の亀裂Kの検出を行うための装置である。光検出器704、706としては、受光した光を電気信号に変換して制御部750に出力するフォトディテクタ(例えば、フォトダイオード)を用いることができる。
【0089】
光検出器704、706は対物レンズ瞳754aと共役位置に配置され、さらに、検出光L1(B)及びL1(C)を受光するよう対物レンズ754の光軸からずれた位置に配置されている。
【0090】
図6から図8は、ウェーハWに対して検出光L1の偏射照明が行われたときの様子を示した説明図である。図6は対物レンズ754の集光点に亀裂Kが存在する場合、図7は対物レンズ754の集光点に亀裂Kが存在しない場合、図8は対物レンズ754の集光点と亀裂Kの亀裂深さ(亀裂下端位置)とが一致する場合をそれぞれ示している。
【0091】
また、図9から図11は、光検出器704、706の受光面704C、706Cに受光される反射光L2の様子を示した図であり、それぞれ図6から図8に示した場合に対応するものである。
【0092】
また、図12は、ウェーハWからの反射光L2が対物レンズ瞳754aに到達する経路を説明するための図である。なお、ここでは、検出光L1は、対物レンズ瞳754aの一方側(図12の右側)の第1領域G1を通過して、ウェーハWに対して偏射照明が行われる場合について説明する。
【0093】
図6に示すように、対物レンズ754の集光点に亀裂Kが存在する場合には、検出光L1は亀裂Kで全反射した後、表面Waで反射して、その反射光L2は主光軸AXに対して検出光L1の光路と同じ側の経路をたどって、対物レンズ瞳754aの検出光L1と同じ側の領域に到達する成分となる。すなわち、図12に示すように、光源部550からの検出光L1が対物レンズ754を介してウェーハWに照射されるときの検出光L1の経路をR1としたとき、ウェーハWの内部の亀裂Kで全反射した反射光L2は、検出光L1の経路R1とは主光軸AXに対して同じ側(図12の右側)の経路R2をたどって対物レンズ瞳754aの第1領域G1を通過する。
【0094】
図7に示すように、対物レンズ754の集光点に亀裂Kが存在しない場合には、検出光L1はウェーハWの表面Waで反射し、その反射光L2は対物レンズ瞳754aの検出光L1と反対側の領域に到達する成分となる。すなわち、図12に示すように、ウェーハWの表面Waで反射した反射光L2は、検出光L1の経路R1とは主光軸AXに対して反対側(図12の左側)の経路R3をたどって対物レンズ瞳754aの第2領域G2を通過する。
【0095】
図8に示すように、対物レンズ754の集光点と亀裂Kの下端位置とが一致する場合には、検出光L1は、亀裂Kで全反射した後、表面Waで反射して、対物レンズ瞳754aの検出光L1と同じ側の領域に到達する反射光成分L2aと、亀裂Kで全反射されずにウェーハWの表面Waで反射して対物レンズ瞳754aの検出光L1と反対側の領域に到達する非反射光成分L2bとに分割される。すなわち、図12に示すように、反射光L2のうち、ウェーハWの内部の亀裂Kで全反射した反射光成分L2a(図8参照)は、検出光L1の経路R1とは主光軸AXに対して同じ側(図12の右側)の経路R2をたどって対物レンズ瞳754aの第1領域G1を通過するとともに、亀裂Kで全反射されずにウェーハWの表面Waで反射した非反射光成分L2b(図8参照)は、検出光L1の経路R1とは主光軸AXに対して反対側(図12の左側)の経路R3をたどって対物レンズ瞳754aの第2領域G2を通過する。
【0096】
光検出器704、706は、それぞれが対物レンズ瞳754aの第1領域G1及び第2領域G2と光学的に共役な位置となるように配置されている。これにより、光検出器704、706は、それぞれ対物レンズ瞳754aの第1領域G1及び第2領域G2を通過した光を選択的に受光可能となっている。
【0097】
ここで、図6に示す例(対物レンズ754の集光点に亀裂Kが存在する場合)では、図9に示すように、光検出器704、706のうち、光検出器704の受光面704Cに反射光L2が入射する。このため、光検出器704の受光面704Cから出力される検出信号のレベルが光検出器706の受光面706Cから出力される検出信号のレベルよりも高くなる。
【0098】
一方、図7に示す例(対物レンズ754の集光点に亀裂Kが存在しない場合)では、図10に示すように、光検出器704、706のうち、光検出器706の受光面706Cに反射光が入射する。このため、光検出器706の受光面706Cから出力される検出信号のレベルが光検出器704の受光面704Cから出力される検出信号のレベルよりも高くなる。
【0099】
また、図8に示す例(対物レンズ754の集光点と亀裂Kの下端位置とが一致する場合)では、図12に示すように、光検出器704、706の受光面704C、706Cに反射光L2の各成分L2a、L2bがそれぞれ入射するため、光検出器704、706の受光面704C、706Cから出力される検出信号のレベルが略等しくなる。
【0100】
このように、光検出器704、706の受光面704C、706Cで受光される光量は、対物レンズ754の集光点に亀裂Kが存在するか否かによって変化する。本例では、このような性質を利用して、ウェーハWの内部に形成された亀裂Kの亀裂深さ(亀裂下端位置又は亀裂上端位置)を検出する。
【0101】
具体的には、光検出器704、706の受光面704C、706Cから出力される検出信号の出力をそれぞれD1、D2としたとき、対物レンズ754の集光点における亀裂Kの存在を判断するための評価値Sは、次式で表すことができる。
【0102】
S=(D1-D2)/(D1+D2) …(1)
式(1)において、S=0の条件を満たすとき、すなわち、光検出器704、706の受光面704C、706Cによって受光される光量が一致するとき、対物レンズ754の集光点と亀裂下端位置(又は亀裂上端位置)とが一致した状態を示す。
【0103】
制御部750(図5参照)は、集光点位置移動機構752を制御して検出光L1の集光点をZ方向に移動させ、ウェーハWの表面Waの界面位置からウェーハWの厚さ方向(Z方向)に順次変化させながら、光検出器704、706の受光面704C、706Cから出力される検出信号を順次取得し、この検出信号に基づいて式(1)で示される評価値Sを算出し、この評価値S及び集光点位置情報を評価することによって亀裂Kの亀裂深さ(亀裂下端位置又は亀裂上端位置)を検出することができる。以上が亀裂検出装置500の亀裂検出機能である。
【0104】
[厚さ検出機能]
次に、亀裂検出装置500の厚さ検出機能について説明する。
【0105】
亀裂検出装置500は、既述したように、亀裂検出機能に加えて、さらに厚さ検出機能を兼ね備えている。亀裂検出装置500の厚さ検出機能は、亀裂検出装置500の各構成要素を利用して、裏面研削装置200によってバックグラインドが行われた後であり且つレーザ加工装置10によるレーザ加工領域Rの形成前のウェーハWの厚さを検出する。以下、厚さ検出機能について説明する。
【0106】
厚さ検出機能は、亀裂検出装置500の構成要素である、光源552A、照明光学系600、界面検出用光学系650、制御部750、集光点位置移動機構752、対物レンズ754、操作部756及び表示部758を利用してウェーハWの厚さを検出する。なお、本例の集光点位置移動機構752は、検出光L1の集光点の位置をZ方向に変化させる手段として、対物レンズ754を光軸方向に移動させるピエゾアクチュエータ(不図示)を含んで構成されている。
【0107】
集光点位置移動機構752のピエゾアクチュエータは、制御部750から印加される電圧が変化することによってZ方向(対物レンズ754の光軸方向)に伸縮し、この伸縮動作によって対物レンズ754を光軸方向に移動させる。これにより、ウェーハWに対する検出光L1の集光点の位置をウェーハWの厚さ方向(Z方向)において変化させることができる。
【0108】
また、ピエゾアクチュエータの移動量(伸縮量:μm)とピエゾアクチュエータに印加される電圧との関係は実験などによって予め決定されている。制御部750は、その関係を定義するテーブルを記憶するとともに、この関係に従ってピエゾアクチュエータに印加する電圧を変化させる。
【0109】
<レーザ加工方法>
次に、亀裂検出装置500の亀裂検出機能を利用したウェーハWのレーザ加工方法の一例について、図13に示すフローチャートを参照して説明する。
【0110】
まず、S100に示す界面検出工程では、光源552Aから出射された検出光L1(A)を照明光学系600及び対物レンズ754を介してウェーハWに照射し、ウェーハWからの反射光L2(A)を界面検出用光学系650(界面検出手段の一例)によって検出することにより、ウェーハWの表面Wa及び裏面Wb1を示す界面位置を検出する。
【0111】
具体的には、まず、集光点位置移動機構752は、制御部750の制御に従って、ピエゾアクチュエータ及びZ駆動機構の少なくとも一方を駆動して対物レンズ754とウェーハWとの相対距離を調整して、対物レンズ754の集光点を、ウェーハWの裏面Wb1からZ方向の上方に離間した位置に設定しておく。
【0112】
次に、集光点位置移動機構752(集光点位置変更手段の一例)は、制御部750の制御に従って、ピエゾアクチュエータを駆動して、対物レンズ754をZ方向の下方(すなわち、ウェーハWに近づける方向)に移動させながら、ウェーハWに対する検出光L1(A)の集光点の位置をZ方向に変化させる。そして、このように集光点の位置が変化する検出光L1(A)をウェーハWに照射しながら、ウェーハWからの反射光L2(A)を界面検出用光学系650によって検出する。
【0113】
このとき、反射光L2(A)は、対物レンズ754の集光点と光学的に共役な位置にあるピンホールパネル660Bのピンホールの位置に集光する。そして、対物レンズ754の下方の移動によって、対物レンズ754の集光点がウェーハWの裏面Wb1と一致したとき、検出器本体660Aから出力される検出信号は鋭いピークとなる。そして、ピエゾアクチュエータによる対物レンズ754の下方の移動を継続し、対物レンズ754の集光点がウェーハWの表面Waの位置と一致したとき、検出器本体660Aから出力される検出信号も鋭いピークとなる。
【0114】
図14は、ピエゾアクチュエータの移動量(μm)と検出器本体660Aから出力される検出信号(V)との関係を示したグラフである。
【0115】
図14に示すグラフによれば、ピエゾアクチュエータの移動量(μm)、すなわち、対物レンズ754の移動量が20μm付近と230μm付近で検出信号(V)のピークP1、P2があり、ピークP1がウェーハWの裏面Wb1の界面位置を示し、ピークP2がウェーハWの表面Waの界面位置をそれぞれ示している。これにより、S100に示す界面検出工程において、ウェーハWの表面Wa及び裏面Wb1を示す界面位置を検出することができる。
【0116】
次に、S200に示す厚さ検出工程では、上記の表面Wa及び裏面Wb1を示す界面位置の検出結果に基づいて、ウェーハWの厚さを検出する。
【0117】
具体的には、制御部750(厚さ検出手段の一例)が、表面Waの界面位置に相当する230μmから、裏面Wb1の界面位置に相当する20μmを減算する処理を行う。つまり、ウェーハWの表面Wa及び裏面Wb1を示す界面位置を検出したときの対物レンズ754の移動量に基づいてウェーハWの厚さが検出される。これにより、S200に示す厚さ検出工程において、ウェーハWの厚さ(210μm)を検出することができる。なお、厚さ検出結果は、表示部758に表示される。
【0118】
このように実施形態のレーザ加工装置10は、集光点位置移動機構752によってウェーハWに対する検出光L1(A)の集光点をZ方向に変化させながら、ウェーハWからの反射光L2(A)を光検出器660で検出することにより、ウェーハWの表面Wa及び裏面Wb1を示す界面位置を検出し、界面位置の検出結果に基づいてウェーハWの厚さを検出する。
【0119】
次に、S300に示す焦点位置変更工程では、制御部750が検出したウェーハWの厚さの検出結果に基づいて、レーザ光Lの集光点FPの位置を変更する。
【0120】
具体的には、制御部750は、ウェーハWの厚さの検出結果を制御部12に受け渡す。制御部12は、制御部750から取得したウェーハWの厚さの検出結果に基づいて、Z方向におけるレーザ光L(図3参照)の集光点FPの位置を変更する。なお、レーザ光Lの集光点FPの位置の変更は、制御部12による制御に従って、上述したZ微動手段を駆動することにより行われる。また、上述した加工ヘッドZ駆動機構とZ微動手段とを組み合わせて、コンデンスレンズ22とウェーハWとの相対距離を変化させて、レーザ光Lの集光点FPの位置を変化させてもよい。
【0121】
レーザ光Lの集光点FPの位置の変更について具体的に説明すると、例えば、検出されたウェーハWの厚さが基準値に対して厚い場合には、その厚さ分だけ、集光点FPの位置をZ方向の下方側(ウェーハWの表面Wa側)寄りに変更する。一方で、検出されたウェーハWの厚さが基準値に対して薄い場合には、その厚さ分だけ、集光点FPの位置をZ方向の上方側(ウェーハWの裏面Wb1側)寄りに変更する。これにより、ウェーハWの厚さが異なる場合でも、集光点FPの位置とデバイス面との距離を常に一定に保つことができる。その結果、ウェーハWの内部にレーザ加工領域Rを適正に形成することができる。
【0122】
次に、S400に示すレーザ加工工程では、上述のとおりレーザ光Lの集光点FPの位置が変更された状態でレーザ光Lを切断予定ラインに沿って照射し、切断予定ラインに沿ってウェーハWの内部にレーザ加工領域Rを形成する。以上が、図13に示したレーザ加工方法の流れである。
【0123】
以上説明したように、実施形態のレーザ加工装置10によれば、ウェーハWの表面Wa及び裏面Wb1を示す界面位置(一つの測定点)の検出結果に基づいてウェーハWの厚さを検出するようにしたので、裏面研削(バックグラインド)が行われたウェーハWの厚さのばらつきの影響を受けることなく、ウェーハWの内部にレーザ加工領域Rを適正に形成することが可能になる。
【0124】
また、実施形態のレーザ加工装置10は、ウェーハWの界面位置に基づいてウェーハWの厚さを検出するので、デバイスの厚さのばらつきや保護シート220の厚さのばらつきにも影響されることなく、ウェーハWの厚さを正確に検出することができる。
【0125】
なお、ウェーハWの界面位置の検出(S100)及び厚さの検出(S200)は、一つの測定点でのみ行うことに限定されず、ウェーハWの全面に複数の測定点を所定の間隔で配置して行ってもよいし、ウェーハWの一部の領域についてのみ行ってもよい。例えば、ウェーハWの切断予定ライン上に測定点を配置し、この測定点ごとにウェーハWの界面位置の検出及び厚さの検出を行ってもよい。この測定点の位置は、ウェーハWにレーザ加工領域Rを形成する際の集光点(図3参照)の位置と一致させてもよい。また、ウェーハWの切断予定ライン上に所定の間隔で(例えば、縦横の切断予定ラインの交点に)測定点を配置して界面位置の検出を行い、各測定点以外の領域における界面位置については、周囲の測定点における界面位置から内挿又は外挿により求めてもよい。この場合、レーザ加工工程(S400)における加工送り方向(図3のX方向)のレーザ加工位置ごとのウェーハWの厚さを検出することができる。これにより、レーザ加工の位置精度をより高めることができる。
【0126】
また、実施形態のレーザ加工装置10は、亀裂検出装置500を利用して亀裂の無い状態で測定を行い、ウェーハWの表面Wa及び裏面Wb1を示す界面位置を検出することでウェーハWの厚さを検出する。ウェーハWの厚さが正確に分かれば事前に用意した対応する加工条件を自動でレシピに反映させることで、ウェーハWの厚さばらつきに起因する不良品の発生を未然に防ぐことができる。このようにウェーハWの厚さ毎に条件を選定して加工条件に反映させる場合は、予めウェーハWの厚さ毎の条件テーブルを作成しておくことが好ましい。
【0127】
また、実施形態のレーザ加工装置10は、コンデンスレンズ22とウェーハWとの間のZ方向の相対距離(ワーキングディスタンス)を一定に保つためのオートフォーカス装置(AFユニット)を備えていていてもよい。この場合、亀裂検出装置500の厚さ検出機能の検出結果(ウェーハWの厚さ)に基づいて、オートフォーカス装置によって制御される上記相対距離をZ方向にオフセット変化させてもよい。なお、オートフォーカス装置の構成については公知であるため(例えば特開2011-212750号公報)、ここでは説明を省略する。
【0128】
具体的なオフセット変化の方法としては、検出されたウェーハWの厚さが基準値に対して厚い場合には、その厚さ分だけ、集光点FPの位置をZ方向の下方側(ウェーハWの表面Wa側)にオフセットする。一方で、検出されたウェーハWの厚さが基準値に対して薄い場合には、その厚さ分だけ、集光点FPの位置をZ方向の上方側(ウェーハWの裏面Wb1側)にオフセットする。
【0129】
また、上記オフセット変化を行う場合には、基準値に対する厚さずれ量(μm)をウェーハWの内部の屈折率(3.5~3.6)で除算し、その結果得られた値をレシピZのオフセット値とする。例えば、ウェーハWの厚さが基準値よりも10μm厚かった場合、条件テーブルとして、1番目のレーザ光の集光点の位置をウェーハWの表面Wa側に2.8μmオフセットした条件テーブルが選択される。
【0130】
また、実施形態のレーザ加工装置10は、ウェーハWの厚さ方向に対してレーザ光を複数回照射する場合、一番初めに行われるレーザ光の照射状態(亀裂長さ、品質)が安定するので、その後に行われる照射状態も安定する。これにより、ウェーハWに品質のよい亀裂を形成することができる。
【0131】
また、実施形態のレーザ加工装置10は、レーザ加工装置10に搭載されている亀裂検出装置500が厚さ検出機能を兼ね備えているので、レーザ加工装置10上でウェーハWの厚さを検出し、そのまま最適条件でレーザ加工を行うことができる。これにより、専用の厚さ検出装置が不要になり、また、レーザ加工装置10とは別個の厚さ検出装置によってウェーハWの厚さを検出するレーザ加工システムと比較して、厚さ検出からレーザ加工に至る加工時間を短縮でき、且つ手間も省くことができる。
【0132】
なお、実施形態では、好ましい態様の一例として、図3に示したレーザ加工装置10の制御部12によってレーザ光Lの集光点FPの位置を自動的に変更する態様を示したが、これに限定されるものではない。例えば、オペレータが、レーザ加工装置10の操作部(不図示)を介して、亀裂検出装置500が検出したウェーハWの厚さ、又は、ウェーハWの厚さから算出されるコンデンスレンズ22とウェーハWとの相対距離などを入力するようにしてもよい。その場合、制御部12は、操作部を介して入力された情報に従って、コンデンスレンズ22とウェーハWとの相対距離を変化させることで、レーザ光Lの集光点FPの位置を変更する。
【0133】
また、実施形態のレーザ加工装置10は、加工ヘッド16をZ方向に移動可能とし、且つ、吸着テーブル18をXYθ方向に移動可能(回転可能)とした構成を採用したが、加工ヘッド16と吸着テーブル18とのXYZθ方向の相対位置を変化させることができれば、実施形態の構成に限らない。例えば、吸着テーブル18をXYZθ方向に移動可能(回転可能)な構成としてもよいし、加工ヘッド16をYZ方向に移動可能とし、且つ、吸着テーブル18をXθ方向に移動可能(回転可能)な構成としてもよい。
【0134】
また、実施形態のレーザ加工装置10は、加工ヘッド16と亀裂検出装置500とが一体となってZ方向に移動可能な構成を採用したが、これに限らず、加工ヘッド16と亀裂検出装置500とが互いに独立してZ方向に移動可能な構成を採用してもよい。また、加工ヘッド16と亀裂検出装置500とが互いに独立して移動可能な方向はZ方向に限らず、それ以外の方向(例えば、X方向やY方向など)に移動可能な構成としてもよい。
【0135】
以上、本発明に係るレーザ加工装置の一例について説明したが、本発明の技術は実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、いくつかの改良又は変形を行ってもよい。
【符号の説明】
【0136】
10…レーザ加工装置、12…制御部、14…テーブル駆動部、16…加工ヘッド、18…吸着ステージ、18a・・・保持面、19…加工ヘッド駆動部、20…レーザ光源、22…コンデンスレンズ、23…Z微動手段、200…裏面研削装置、202…研削駆動部、206…テーブル駆動部、208…研削ヘッド、210…回転研削盤、212…砥石、214…シャフト、216…制御部、218…チャックテーブル、218a…保持面、220…保護シート、300…分割装置、302…ダイシングテープ、304…ダイシング用フレーム、306…エキスパンドリング、500…亀裂検出装置、550…光源部、552A…光源、552B…光源、552C…光源、554…ハーフミラー、600…照明光学系、602…リレーレンズ、604…ミラー、606…リレーレンズ、650…界面検出用光学系、652…ハーフミラー、654…ハーフミラー、656…リレーレンズ、658…ハーフミラー、660…光検出器660、660A…検出器本体、660B…ピンホールパネル、700…亀裂検出用光学系、702…リレーレンズ、704…光検出器、706…光検出器、750…制御部、752…集光点位置移動機構、754…対物レンズ、756…操作部、758…表示部、760…観察光学系
図1
図2
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