(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】加工方法
(51)【国際特許分類】
B24B 7/04 20060101AFI20241021BHJP
B24B 9/00 20060101ALI20241021BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20241021BHJP
【FI】
B24B7/04 A
B24B9/00 601H
H01L21/304 631
H01L21/304 601B
(21)【出願番号】P 2020205661
(22)【出願日】2020-12-11
【審査請求日】2023-10-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】岡村 卓
(72)【発明者】
【氏名】原田 成規
【審査官】須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-041764(JP,A)
【文献】特開2016-127098(JP,A)
【文献】特開2000-173961(JP,A)
【文献】特開2015-050296(JP,A)
【文献】特開2013-187275(JP,A)
【文献】国際公開第2019/124031(WO,A1)
【文献】特開2005-093882(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0044984(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B1/00-1/04
B24B7/00-7/08
B24B9/00-19/28
H01L21/304;21/463
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周部に面取り部を有する被加工物の該外周部を切削するエッジトリミング
ステップを含む該被加工物の加工方法であって、
チャックテーブルの保持面で該被加工物を保持する保持ステップと
、該保持ステップの後、回転する切削ブレードと、該チャックテーブルと、を相対移動させて、該切削ブレードを該被加工物の該外周部に切り込む切り込みステップと
、該切り込みステップの後、該チャックテーブルを回転することにより、該被加工物の
一面側の該外周部を切削し、環状の段差を形成する切削ステップと
、該切削ステップの後、該段差に隣接する環状の他の段差を形成するために、該切削ブレードの回転軸方向に該切削ブレードを移動する移動ステップと、を
有し、該切り込みステップと、該切削ステップと、該移動ステップと、をこの順序で繰り返すことにより、該被加工物の最外周端から内側に向かうにつれて厚さが増加する階段状の傾斜領域を該外周部に形成する
エッジトリミングステップと、
該エッジトリミングステップの後、該切削ブレードが切り込まれた該被加工物の該一面とは反対側に位置する該被加工物の他面を研削して該被加工物を薄化することにより、該外周部の該傾斜領域を除去する研削ステップと、
を備え、
該エッジトリミングステップ及び該研削ステップにおいて、該被加工物の該一面には、複数の分割予定ラインが設けられており、該複数の分割予定ラインで区画された複数の領域の各々にはデバイスが設けられていることを特徴とする
加工方法。
【請求項2】
外周部に面取り部を有する被加工物の該外周部を切削するエッジトリミング
ステップを含む該被加工物の加工方法であって、
チャックテーブルの保持面で該被加工物を保持する保持ステップと
、該保持ステップの後、回転する切削ブレードと、該チャックテーブルと、を相対移動させて該切削ブレードを該被加工物の
一面側の該外周部に切り込むことと、該チャックテーブルを回転することと、該切削ブレードの回転軸方向に該切削ブレードを移動することと、を同時に行う加工ステップと、を
有し、該加工ステップでは、該被加工物の最外周端から内側に向かうにつれて厚さが増加する階段状の傾斜領域であって、該傾斜領域を上面視した場合に複数の段差の底面が螺旋状に形成されている該傾斜領域を該外周部に形成する
エッジトリミングステップと、
該エッジトリミングステップの後、該切削ブレードが切り込まれた該被加工物の該一面とは反対側に位置する該被加工物の他面を研削して該被加工物を薄化することにより、該外周部の該傾斜領域を除去する研削ステップと、
を備え、
該エッジトリミングステップ及び該研削ステップにおいて、該被加工物の該一面には、複数の分割予定ラインが設けられており、該複数の分割予定ラインで区画された複数の領域の各々にはデバイスが設けられていることを特徴とする
加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外周部に面取り部を有する被加工物の外周部を切削するエッジトリミング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスチップの製造工程では、シリコン等の半導体材料で形成された円盤状の半導体ウェーハ(即ち、被加工物)を薄化するために、通常、デバイスが形成された表面側とは反対側に位置する被加工物の裏面側が一様に研削される。
【0003】
しかし、被加工物の表裏面側の各外周部には、通常、面取り部(ベベル部とも称される)が形成されているので、被加工物の裏面側を研削して、被加工物を例えば半分以下の厚さにすると、表面側の外周部には所謂ナイフエッジ(シャープエッジとも称される)が形成される。薄化後の被加工物は、このナイフエッジを起点として破損する恐れがある。
【0004】
そこで、破損防止のために、被加工物の研削前に、被加工物の表面側の面取り部を除去するエッジトリミングを行い、このエッジトリミングの後に、被加工物の裏面側を研削する手法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、エッジトリミング後に被加工物の裏面側を研削すると、研削の衝撃等に伴い、比較的大きな(例えば、5cm程度の)円弧状の領域が、裏面側の外周部から欠けて、端材となることがある。この様な比較的大きな端材は、研削装置に通常設けられている研削屑の回収機構では回収できないので、端材が生じる度に、作業者が手作業で端材を回収する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は係る問題点に鑑みてなされたものであり、研削時に生じる端材の体積を小さくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、外周部に面取り部を有する被加工物の該外周部を切削するエッジトリミングステップを含む該被加工物の加工方法であって、チャックテーブルの保持面で該被加工物を保持する保持ステップと、該保持ステップの後、回転する切削ブレードと、該チャックテーブルと、を相対移動させて、該切削ブレードを該被加工物の該外周部に切り込む切り込みステップと、該切り込みステップの後、該チャックテーブルを回転することにより、該被加工物の一面側の該外周部を切削し、環状の段差を形成する切削ステップと、該切削ステップの後、該段差に隣接する環状の他の段差を形成するために、該切削ブレードの回転軸方向に該切削ブレードを移動する移動ステップと、を有し、該切り込みステップと、該切削ステップと、該移動ステップと、をこの順序で繰り返すことにより、該被加工物の最外周端から内側に向かうにつれて厚さが増加する階段状の傾斜領域を該外周部に形成するエッジトリミングステップと、該エッジトリミングステップの後、該切削ブレードが切り込まれた該被加工物の該一面とは反対側に位置する該被加工物の他面を研削して該被加工物を薄化することにより、該外周部の該傾斜領域を除去する研削ステップと、を備え、該エッジトリミングステップ及び該研削ステップにおいて、該被加工物の該一面には、複数の分割予定ラインが設けられており、該複数の分割予定ラインで区画された複数の領域の各々にはデバイスが設けられている加工方法が提供される。
【0009】
本発明の他の態様によれば、外周部に面取り部を有する被加工物の該外周部を切削するエッジトリミングステップを含む該被加工物の加工方法であって、チャックテーブルの保持面で該被加工物を保持する保持ステップと、該保持ステップの後、回転する切削ブレードと、該チャックテーブルと、を相対移動させて該切削ブレードを該被加工物の一面側の該外周部に切り込むことと、該チャックテーブルを回転することと、該切削ブレードの回転軸方向に該切削ブレードを移動することと、を同時に行う加工ステップと、を有し、該加工ステップでは、該被加工物の最外周端から内側に向かうにつれて厚さが増加する階段状の傾斜領域であって、該傾斜領域を上面視した場合に複数の段差の底面が螺旋状に形成されている該傾斜領域を該外周部に形成するエッジトリミングステップと、該エッジトリミングステップの後、該切削ブレードが切り込まれた該被加工物の該一面とは反対側に位置する該被加工物の他面を研削して該被加工物を薄化することにより、該外周部の該傾斜領域を除去する研削ステップと、を備え、該エッジトリミングステップ及び該研削ステップにおいて、該被加工物の該一面には、複数の分割予定ラインが設けられており、該複数の分割予定ラインで区画された複数の領域の各々にはデバイスが設けられている加工方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様に係るエッジトリミング方法では、被加工物の最外周端から内側に向かうにつれて厚さが増加する階段状の傾斜領域を外周部に形成する。これにより、例えば、表面側の面取り部を除去して、裏面側を研削する場合に、そもそも端材が生じ難い。
【0011】
また、仮に、端材が生じたとしても、従来のエッジトリミング方法により1つのみの段差が形成されている被加工物の裏面側を研削した場合に生じる円弧状の端材と比較して、端材の体積及び円弧の長さを小さくできる。それゆえ、仮に、端材が生じたとしても、研削装置に通常設けられている研削屑回収機構で、この端材を回収できる可能性が高くなり、作業者が手作業で端材を回収する頻度を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】
図2(A)は切り込みステップを示す切削装置の一部断面側面図であり、
図2(B)は切り込みステップを示す切削装置の斜視図である。
【
図3】
図3(A)は切削ステップを示す切削装置の一部断面側面図であり、
図3(B)は切削ステップを示す切削装置の斜視図である。
【
図4】
図4(A)は移動ステップを示す切削装置の一部断面側面図であり、
図4(B)は被加工物の外周部の拡大断面図である。
【
図5】
図5(A)は2回目の切り込みステップを示す被加工物の外周部の拡大断面図であり、
図5(B)は2回目の切削ステップ後の外周部の拡大断面図である。
【
図6】
図6(A)はエッジトリミング後の被加工物の外周部の拡大断面図であり、
図6(B)はエッジトリミング後の被加工物の全体の断面図である。
【
図7】エッジトリミング方法を示すフロー図である。
【
図8】
図8(A)は被加工物の裏面側を研削する様子を示す図であり、
図8(B)は
図8(A)に示す領域の拡大図である。
【
図9】
図9(A)は比較例に係るエッジトリミング方法で形成された1つのみの段差を有する被加工物の裏面側を研削する様子を示す図であり、
図9(B)は
図9(A)に示す領域の拡大図である。
【
図10】
図10(A)は変形例に係る1回目の切り込みステップを示す図であり、
図10(B)は複数の段差が形成される順序を示す図である。
【
図11】第2の実施形態に係るエッジトリミング方法のフロー図である。
【
図12】加工ステップ後の被加工物の上面視図である。
【
図13】
図13(A)は外周余剰領域の幅よりも大きい刃厚を有する切削ブレードを用いたエッジトリミング方法を示す図であり、
図13(B)は外周余剰領域の幅よりも小さい刃厚を有する切削ブレードを用いたエッジトリミング方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
添付図面を参照して、本発明の一態様に係る実施形態について説明する。まず、
図1を参照して、エッジトリミングが施される被加工物11について説明する。被加工物11は、例えば、シリコン等の半導体材料で形成された円盤状のウェーハである。
【0014】
被加工物11は、例えば、約300mmの直径と、100μm以上800μm以下の所定の厚さとを、有する。被加工物11の表面11a側は、互いに交差する複数の分割予定ライン(ストリート)13によって複数の領域に区画されている。
【0015】
各領域には、IC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integration)等のデバイス15が形成されている。複数のデバイス15は、円形のデバイス領域17aに配置されている。
【0016】
デバイス領域17aの外側には、デバイス領域17aの周囲を囲む様に、デバイス15を有さない環状の外周余剰領域17bが存在する。便宜上、
図1では、デバイス領域17aと外周余剰領域17bとの境界線を一点鎖線で示す。
【0017】
表面11a側の外周部11cと、裏面11b側の外周部11cと、の各々には、角部が面取りされた面取り部11d(ベベル部とも称される)(
図2(A)参照)が、外周部11cの一周に渡って形成されている。
【0018】
被加工物11に対してエッジトリミングを施す場合には、切削装置2が用いられる。
図1に示す様に、切削装置2は、円盤状のチャックテーブル4を有する。チャックテーブル4は、非多孔質の樹脂で形成された円盤状の枠体を有する。
【0019】
枠体の上部には、円盤状の凹部(不図示)が形成されており、この凹部には、多孔質セラミックスで形成された円盤状の多孔質板が固定されている。多孔質板の上面は、枠体の上面と略面一であり、切削装置2の上下方向(Z軸方向)と略直交する水平面(X-Y平面)に対して、略平行に配置されている。
【0020】
多孔質板の上面には、枠体中に設けられた流路(不図示)を介してエジェクタ等の吸引源(不図示)から負圧が伝達される。多孔質板の上面と、枠体の上面とは、被加工物11を吸引して保持する保持面4aとして機能する(
図2(A)参照)。
【0021】
チャックテーブル4の下部には、モーター等の第1の回転駆動源の出力軸(不図示)が連結されている。第1の回転駆動源を動作させると、チャックテーブル4は、出力軸を回転軸4b(
図3(A)参照)として所定の方向に回転する。
【0022】
第1の回転駆動源の下方には、チャックテーブル4をX軸方向に移動させるためのボールねじ式のX軸移動機構(不図示)が配置されている。保持面4aの上方には、切削ユニット6(
図2(A)参照)が配置されている。
【0023】
図2(A)を参照して切削ユニット6の構成を説明する。切削ユニット6は、略円筒状のスピンドルハウジング8を有する。スピンドルハウジング8には、切削ユニット6をZ軸方向に沿って上下移動させるためのボールねじ式のZ軸移動機構(不図示)が連結されている。
【0024】
Z軸移動機構には、切削ユニット6をY軸方向に沿って移動させるためのボールねじ式のY軸移動機構(不図示)が連結されている。なお、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向は、互いに直交する方向である。
【0025】
スピンドルハウジング8には、Y軸方向に略平行に配置された円柱状のスピンドル10の一部が、回転可能に収容されている。スピンドル10の一端部(基端部)には、サーボモーター等の第2の回転駆動源が連結されている。
【0026】
スピンドル10の他端部(先端部)には、円環状の切削ブレード12が装着されている。なお、本実施形態では、外周余剰領域17bと略同じ幅(例えば、約3mm)の刃厚を有する切削ブレード12が使用される。
【0027】
図2(A)では、円環状の基台を有さず切り刃のみから成るハブレス型(ワッシャー型とも称される)の切削ブレード12を示すが、これに代えて、基台及び切り刃を有するハブ型の切削ブレード12が用いられてもよい。
【0028】
次に、
図1から
図8を参照して、表面11a側の外周部11cを切削する、第1の実施形態のエッジトリミング方法について説明する。まず、
図1に示す様に、被加工物11の裏面11bが保持面4aに接する様に、被加工物11を保持面4aに載置する。
【0029】
載置時には、表面11a側の中心と、保持面4aの中心とを、X-Y平面方向において略一致させる。このとき、被加工物11の厚さ方向は、Z軸方向と略平行になる。次いで、多孔質板の上面に負圧を作用させ、保持面4aで被加工物11を吸引保持する(保持ステップS10)。
【0030】
図1は、保持ステップS10を示す図である。保持ステップS10の後、スピンドル10を回転させ、回転軸10aの周りに切削ブレード12を回転させる。但し、チャックテーブル4は回転させず静止状態とする。
【0031】
そして、スピンドル10の回転軸10aの延長線が、チャックテーブル4の回転軸4b(
図3(A)参照)の延長線と交わり、且つ、切削ブレード12が外周部11cの直上に位置する様に、切削ユニット6及びチャックテーブル4の各位置を調整する。
【0032】
次いで、切削ブレード12と、チャックテーブル4とを、相対移動させることにより、切削ブレード12を表面11a側の外周部11cに切り込む(切り込みステップS20)。本実施形態では、Z軸移動機構で切削ユニット6を下方に移動させることで、所謂チョッパーカットにより、切削ブレード12を切り込む。
【0033】
切り込みステップS20では、切削ブレード12が表面11aに直交する様に、切削ブレード12を外周部11cに切り込む。表面11aから裏面11bへの切り込み量は、裏面11bに達しない所定の深さ(例えば、100μmから200μm)に設定される。
【0034】
図2(A)は、切り込みステップS20を示す切削装置2の一部断面側面図であり、
図2(B)は、切り込みステップS20を示す切削装置2の斜視図である。
【0035】
なお、切り込みステップS20では、チョッパーカットに代えて、切削ユニット6とチャックテーブル4とをX軸方向に相対移動させることで、切削ブレード12を表面11a側の外周部11cに切り込んでもよい。
【0036】
切り込みステップS20の後、切削ブレード12を回転させたまま、切削ユニット6の位置を固定する。この状態で、回転軸4bの周りにチャックテーブル4を略1回転させることで、表面11a側の外周部11cに環状の段差11e
1(
図3(A)参照)を形成する(切削ステップS30)。
【0037】
なお、切削ステップS30では、チャックテーブル4を1回転以上させればよく、1.5回転又は2回転させてもよい。いずれにしても、表面11a側の外周部11cを部分的に切削することで、環状の段差11e1を形成できる。
【0038】
図3(A)は、切削ステップS30を示す切削装置2の一部断面側面図であり、
図3(B)は、切削ステップS30を示す切削装置2の斜視図である。切削ステップS30の後、形成された段差の数が、所定数以上か否かが判断される(判断ステップS40)(
図7参照)。
【0039】
判断ステップS40は、例えば、切削ユニット6の移動動作の情報に基づいて、切削装置2の動作を制御する制御ユニット(不図示)が判断する。制御ユニットは、例えば、CPU(Central Processing Unit)に代表されるプロセッサ(処理装置)と、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、SRAM(Static Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等の主記憶装置と、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ等の補助記憶装置と、を含むコンピュータによって構成されている。
【0040】
補助記憶装置には、所定のプログラムを含むソフトウェアが記憶されている。このソフトウェアに従い処理装置等を動作させることによって、制御ユニットの機能が実現される。但し、制御ユニットに代えて、作業者が判断してもよい。
【0041】
段差の数は、2つ以上の所定数(本実施形態では4つ)に設定される。本実施形態では、4つの段差を形成するので(S40でNO)、移動ステップS50に進む。しかし、4つの段差が既に形成された場合には(S40でYES)、エッジトリミングを終了する。
【0042】
1回目の切削ステップS30直後の移動ステップS50では、例えば、チャックテーブル4を静止状態とする。そして、段差11e
1の外側に隣接する環状の他の段差11e
2(
図5(B)参照)を形成するために、切削ブレード12を、保持面4aの外側へ移動させる。
【0043】
具体的には、Y軸移動機構を利用して、回転軸10a方向(即ち、Y軸方向)に沿って保持面4aの外側へ、微小距離(例えば、0.75mm)だけ切削ユニット6を移動させる。
図4(A)は、移動ステップS50を示す切削装置2の一部断面側面図である。
【0044】
図4(B)は、移動ステップS50における被加工物11の外周部11cの拡大断面図である。
図4(B)に示す様に、移動ステップS50では、切削ユニット6の移動に伴い、矢印で示す微小距離だけ切削ブレード12を保持面4aの外側へ移動させる。
【0045】
なお、移動ステップS50では、切削ステップS30に引き続きチャックテーブル4を回転させた状態で、切削ブレード12を保持面4aの外側へ移動させてもよい。移動ステップS50の後、切り込みステップS20に戻る。
【0046】
2回目の切り込みステップS20では、チャックテーブル4を静止状態として、段差11e1の底面より深く、且つ、裏面11bに達しない所定の深さまで、回転している切削ブレード12を段差11e1に切り込む。
【0047】
図5(A)は、2回目の切り込みステップS20を示す被加工物11の外周部11cの拡大断面図である。2回目の切り込みステップS20の後、チャックテーブル4を少なくとも1回転させることにより、段差11e
1の外側に、段差11e
2を形成する(2回目の切削ステップS30)。
【0048】
図5(B)は、2回目の切削ステップS30後の外周部11cの拡大断面図である。2回目の切削ステップS30の後、S40でNOであるので、切削ブレード12を微小距離だけ保持面4aの外側に移動させる(2回目の移動ステップS50)。
【0049】
本実施形態では、切り込みステップS20と、切削ステップS30と、移動ステップS50と、をこの順序で繰り返す。これにより、被加工物11の最外周端11c
1(
図6(A)参照)から被加工物11の径方向の内側に向かうにつれて厚さが増加する階段状の傾斜領域11fを外周部11cに形成する。
【0050】
図6(A)は、エッジトリミング後の被加工物11の外周部11cの拡大断面図であり、
図6(B)は、エッジトリミング後の被加工物11の全体の断面図である。また、
図7は、エッジトリミング方法を示すフロー図である。
【0051】
本実施形態の傾斜領域11fは、4つの段差11e1、11e2、11e3及び11e4で構成されるが、段差の数は、4つに限定されるものではない。傾斜領域11fは、少なくとも2つ、望ましくは3つ以上の段差を有する。
【0052】
傾斜領域11fの形成後、研削装置14(
図8(A)参照)を用いて被加工物11の裏面11b側を研削する。研削装置14は、円盤状のチャックテーブル16を有する。チャックテーブル16は、表面11a側を吸引保持する保持面16aを有する。
【0053】
チャックテーブル16の下部には、サーボモーター等の第3の回転駆動源の出力軸(不図示)が連結されている。第3の回転駆動源を動作させると、チャックテーブル16は、所定の回転軸16bの周りに回転する。
【0054】
保持面16aの上方には、研削ユニット18が配置されている。研削ユニット18は、Z軸方向に略平行に配置され回転軸18aとして機能する円柱状のスピンドルを有する。スピンドルの下端部には、ホイールマウントを介して円環状の研削ホイール20が装着されている。
【0055】
裏面11b側の研削時には、まず、デバイス15へのダメージを低減するために、表面11a側に樹脂製の保護テープ(不図示)を貼り付ける。そして、保護テープを介して表面11a側を保持面16aで吸引保持する。
【0056】
次いで、チャックテーブル16及び研削ホイール20を所定の方向に回転させた状態で、研削ユニット18を下方に研削送りする。裏面11b側が研削されるにつれ、被加工物11は徐々に薄くなる。
【0057】
図8(A)は、裏面11b側を研削する様子を示す図である。本実施形態では、階段状の傾斜領域11fが外周部11cに形成されているので、裏面11b側を研削しても、端材そのものが生じ難い。
【0058】
しかし、被加工物11がある程度薄化されると、研削の衝撃等に伴い、裏面11b側の外周部11cに欠けが生じ、この欠けが端材19となることもある(
図8(B)参照)。
図8(B)は、
図8(A)に示す領域22の拡大図である。
【0059】
しかし、本実施形態では、階段状の傾斜領域11fが形成されているので、仮に、端材19が生じたとしても、従来のエッジトリミング方法により1つのみの段差が形成されている被加工物11の裏面11b側を研削した場合に生じる円弧状の端材19と比較して、端材19の体積及び円弧の長さを小さくできる。
【0060】
それゆえ、仮に、端材19が生じたとしても、研削装置14に通常設けられている研削屑回収機構(不図示)で、この端材19を回収できる可能性が高くなり、作業者が手作業で端材19を回収する頻度を低減できる。
【0061】
図9(A)は、比較例に係るエッジトリミング方法で形成された1つのみの段差を有する被加工物11の裏面11b側を研削する様子を示す図であり、
図9(B)は、
図9(A)に示す領域24の拡大図である。
【0062】
外周部11cに1つのみの段差が形成されている被加工物11の裏面11b側を研削した場合には、
図9(B)に示す様に、段差で割れが生じて、端材19が生じ易くなる。また、生じた端材19は、第1の実施形態の端材19に比べて、体積が大きくなるので、端材19が生じる度に、作業者が手作業で端材19を回収する必要がある。
【0063】
次に、第1の実施形態の変形例について説明する。第1の実施形態では、表面11aの中心から外周部11cへ向かって(即ち、外側方向に)、順次、段差11e1から11e4を形成した。
【0064】
しかし、変形例では、表面11aの外周部11cから表面11aの中心部へ向かって(即ち、内側方向に)、順次、段差11e
1から11e
4を形成する。
図10(A)は、変形例に係る1回目の切り込みステップS20を示す図であり、
図10(B)は、複数の段差11e
1から11e
4が形成される順序を示す図である。
【0065】
なお、
図10(B)における複数の矢印は、移動ステップS50での切削ブレード12の移動の向き及び量を示す。当該変形例においても、第1の実施形態と同様に、最外周端11c
1から被加工物11の径方向の内側に向かうにつれて厚さが増加する階段状の傾斜領域11fを、外周部11cに形成できる。
【0066】
次に、第2の実施形態について説明する。
図11は、第2の実施形態に係るエッジトリミング方法のフロー図である。第2の実施形態では、保持ステップS10の後、最外周端11c
1から被加工物11の径方向の内側に向かうにつれて厚さが増加する階段状の傾斜領域11fを、外周部11cに形成する(加工ステップS22)。
【0067】
但し、加工ステップS22では、切削ブレード12を被加工物11の外周部11cに切り込むことと、チャックテーブル4を回転させることと、回転軸10a方向に切削ブレード12を移動することと、を同時に行う。
【0068】
加工ステップS22における切削ブレード12の切り込みでは、Z軸移動機構で切削ユニット6を下方に移動させることで、回転する切削ブレード12と、チャックテーブル4と、を相対移動させる。つまり、所謂チョッパーカットにより切削ブレード12を切り込む。なお、時間の経過と共に、徐々に切り込み深さを増やす。
【0069】
更に、加工ステップS22における切削ブレード12の移動では、Y軸移動機構を利用して、時間の経過と共に、徐々にY軸方向に沿って、保持面4aの内側から外側へ切削ユニット6を移動させる。
【0070】
これにより、傾斜領域11fを上面視した場合に、複数の段差11e
1、11e
2、11e
3及び11e
4の底面が螺旋状になる様に、外周部11cを加工する(
図12参照)。
図12は、加工後の被加工物11の上面視図である。
【0071】
なお、加工ステップS22における切削ブレード12の移動では、上述の変形例と同様に、外周余剰領域17bの外側に切り込ませた切削ブレード12を、外周余剰領域17bの外側から内側へ移動させてもよい。但し、この場合、時間の経過と共に、徐々に切り込み深さを減らす。
【0072】
第2の実施形態でも、第1の実施形態と同様に、裏面11b側を研削したとしても、端材19そのものが生じ難い。また、仮に、端材19が生じたとしても、従来のエッジトリミング方法により1つのみの段差が形成されている被加工物11の裏面11b側を研削した場合に生じる円弧状の端材19と比較して、端材19の体積及び円弧の長さを小さくできる。
【0073】
それゆえ、仮に、端材19が生じたとしても、研削装置14に通常設けられている研削屑回収機構(不図示)で、この端材19を回収できる可能性が高くなり、作業者が手作業で端材19を回収する頻度を低減できる。
【0074】
次に、第3の実施形態について説明する。
図13(A)は、外周余剰領域17bの幅よりも大きい刃厚を有する切削ブレード12aを用いた、第3の実施形態のエッジトリミング方法を示す図である。
【0075】
切削ブレード12aを用いる場合も、第1及び第2の実施形態並びに上述の変形例のいずれも行うことができる。刃厚が厚いほど、刃厚方向に応力がかかっても切削ブレード12aが変形し難い。それゆえ、切削ブレード12aは、第2の実施形態で説明した螺旋状の傾斜領域11fを形成するのに特に適している。
【0076】
次に、第4の実施形態について説明する。
図13(B)は、外周余剰領域17bの幅よりも小さい刃厚を有する切削ブレード12bを用いた、第4の実施形態のエッジトリミング方法を示す図である。
【0077】
切削ブレード12bを用いる場合も、第1及び第2の実施形態並びに上述の変形例のいずれも行うことができる。特に、切削ブレード12bを用いる場合は、切削ブレード12bの外周側面の全体で被加工物11を切削するので、刃厚の厚い切削ブレード12aに比べて、偏摩耗が生じ難いという利点がある。
【0078】
その他、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0079】
2:切削装置
4:チャックテーブル、4a:保持面、4b:回転軸
6:切削ユニット、8:スピンドルハウジング、10:スピンドル、10a:回転軸
11:被加工物、11a:表面、11b:裏面、11c:外周部、11c1:最外周端
11d:面取り部、11e1,11e2,11e3,11e4:段差、11f:傾斜領域
12,12a,12b:切削ブレード、13:分割予定ライン
14:研削装置
15:デバイス
16:チャックテーブル、16a:保持面、16b:回転軸
17a:デバイス領域、17b:外周余剰領域
18:研削ユニット、18a:回転軸
19:端材
20:研削ホイール
22,24:領域