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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/64 20060101AFI20241021BHJP
   H01L 21/66 20060101ALI20241021BHJP
【FI】
G01N21/64 Z
H01L21/66 N
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021025026
(22)【出願日】2021-02-19
(65)【公開番号】P2022127087
(43)【公開日】2022-08-31
【審査請求日】2023-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】森 一輝
(72)【発明者】
【氏名】山本 涼兵
【審査官】吉田 将志
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-077783(JP,A)
【文献】特開2020-031134(JP,A)
【文献】特開平05-095035(JP,A)
【文献】特開2016-197079(JP,A)
【文献】特開平07-014898(JP,A)
【文献】国際公開第2013/084839(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第105784648(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/62 - G01N 21/74
H01L 21/64 - H01L 21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インゴットの不純物濃度が異なる領域の特定に利用される検出装置であって、
インゴットを保持する保持面を有するインゴット保持ユニットと、
該保持面に保持された該インゴットの表面に対して所定波長の励起光を照射する励起光源と、
該励起光によって該インゴットから生じた蛍光を受光して赤外線領域の波長の光のみの光子数を示す電気信号を生成する受光部と、
を備えることを特徴とする、検出装置。
【請求項2】
該インゴットと該受光部との間の該蛍光の光路に配設されたフィルタを更に備え、
該フィルタは、赤外線のみを透過するIRフィルタを含む、請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
該保持面に平行な座標平面上の該インゴットの表面に含まれる複数の領域を示す複数の座標のそれぞれと、該複数の領域のそれぞれに該励起光が照射された際に該受光部が受光する該赤外線領域の波長の光の光子数と、を紐付けて記憶する記憶部を更に有する、請求項1又は2に記載の検出装置。
【請求項4】
該記憶部に紐付けて記憶された該複数の座標のそれぞれと該赤外線領域の波長の光の光子数とに基づいて、該インゴットの表面に対応し、かつ、不純物濃度が異なる領域が特定された画像を表示ユニットに表示させる処理部を更に有する、請求項3に記載の検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インゴットの不純物濃度が異なる領域の特定に利用される検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスのチップは、一般的に、円盤状のウエーハを用いて製造される。このウエーハは、例えば、ワイヤーソーを用いて円柱状の半導体インゴットから切り出されることによって生成される。ただし、このようにウエーハを生成すると、インゴットの大部分がカーフロス(切り代)として失われ、経済的ではないという問題がある。
【0003】
さらに、パワーデバイス用の材料として用いられるSiC(炭化シリコン)単結晶は硬度が高い。そのため、ワイヤーソーを用いてSiC単結晶インゴットからウエーハを切り出す場合には、切り出しに時間がかかってしまい生産性が悪い。
【0004】
これらの点に鑑み、ワイヤーソーを用いることなく、レーザービームを用いてインゴットからウエーハを切り出す方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この方法においては、インゴットを透過する波長のレーザービームの集光点がインゴットの内部に位置付けられるようにインゴットにレーザービームを照射する。
【0005】
これにより、インゴットの内部に改質層と改質層から伸展するクラックとを含む剥離層が形成される。そして、剥離層が形成されたインゴットに超音波振動等によって外力を加えると、インゴットが剥離層において分離してウエーハが切り出される。
【0006】
ところで、SiC単結晶インゴットには、一般的に、導電性を付与するために窒素等の不純物がドープされている。ただし、SiC単結晶インゴットにおいては、このような不純物が一様にドープされることなく、不純物濃度が異なる複数の領域が含まれることがある。
【0007】
例えば、SiC単結晶の成長過程において形成されるファセット領域と呼ばれる原子レベルで平坦な領域の不純物濃度は、その他の領域(非ファセット領域)よりも高い。そして、ファセット領域のように不純物濃度が高い領域は、非ファセット領域と比較して屈折率が高いとともにエネルギーの吸収率が高い。
【0008】
そのため、上述した方法によってファセット領域を含むSiC単結晶インゴットに剥離層を形成する場合、剥離層が形成される位置(高さ)が不均一になり、カーフロスが大きくなるという問題がある。
【0009】
この点に鑑み、SiCインゴットのファセット領域を特定する検出装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。この装置においては、SiCインゴットに励起光を照射することで生じる蛍光のうち395nm~430nmの波長の光を透過させるバントパスフィルタを透過した蛍光の輝度を検出し、検出された輝度が所定値以上か否かに基づいてファセット領域が特定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2016-111143号公報
【文献】特開2020-77783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記の検出装置においては、インゴットに付着したパーティクルから生じる蛍光の輝度が高くなり、また、インゴットの種類によってはファセット領域等の不純物濃度が高い領域を正確に特定することが困難な場合がある。
【0012】
この点に鑑み、本発明の目的は、インゴットの不純物濃度が異なる領域(例えば、ファセット領域及び非ファセット領域)を容易に特定できる検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、インゴットに励起光を照射することで生じる蛍光のうち赤外線(IR)領域の蛍光の光子数を検出することで、インゴットの不純物濃度が異なる領域を容易に特定できることを見出した。
【0014】
例えば、本発明によれば、インゴットの不純物濃度が異なる領域の特定に利用される検出装置であって、インゴットを保持する保持面を有するインゴット保持ユニットと、該保持面に保持された該インゴットの表面に対して所定波長の励起光を照射する励起光源と、該励起光源から照射された励起光によって該インゴットから生じた蛍光を受光して赤外線領域の波長の光のみの光子数を示す電気信号を生成する受光部と、を備える、検出装置が提供される。
【0015】
さらに、本発明においては、該インゴットと該受光部との間の該蛍光の光路に配設されたフィルタと、を備え、該フィルタは、赤外線のみを透過するIRフィルタを含むことが好ましい。
【0016】
また、本発明においては、該保持面に平行な座標平面上の該インゴットの表面に含まれる複数の領域を示す複数の座標のそれぞれと、該複数の領域のそれぞれに該励起光が照射された際に該受光部が受光する該赤外線領域の波長の光の光子数と、を紐付けて記憶する記憶部を更に有することが好ましい。
【0017】
また、本発明においては、該記憶部に紐付けて記憶された該複数の座標のそれぞれと該赤外線領域の波長の光の光子数とに基づいて、該インゴットの表面に対応し、かつ、不純物濃度が異なる領域が特定された画像を表示ユニットに表示させる処理部を更に有することが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の検出装置においては、インゴットに励起光を照射することで生じる蛍光のうち赤外線領域の波長の光のみの光子数が検出される。これにより、インゴットの不純物濃度(例えば、ファセット領域及び非ファセット領域)が異なる領域を容易に特定することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1(A)は、インゴットの一例を模式的に示す正面図であり、図1(B)は、インゴットの一例を模式的に示す上面図である。
図2図2は、検出装置の一例を模式的に示す図である。
図3図3は、記憶部に記憶される複数の座標の一例を模式的に示す図である。
図4図4は、表示ユニットに表示される画像の一例を模式的に示す図である。
図5図5は、検出装置の変形例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。図1(A)は、本実施形態の検出装置を用いて不純物領域が異なる領域が特定されるインゴットの一例を模式的に示す正面図であり、図1(B)は、このインゴットの上面図である。
【0021】
図1(A)及び図1(B)に示されるインゴット11は、例えば、概ね平行な上面(表面)11a及び下面(裏面)11bを有する円柱状のSiC単結晶からなる。このインゴット11は、SiC単結晶のc軸11cが表面11a及び裏面11bの垂線11dに対して僅かに傾くようにエピタキシャル成長を利用して生成される。
【0022】
例えば、c軸11cと垂線11dとがなす角(オフ角)αは、1°~6°(代表的には、4°)である。また、インゴット11の側面には、SiC単結晶の結晶方位を示す2つの平部、すなわち、一次オリエンテーションフラット13及び二次オリエンテーションフラット15が形成されている。
【0023】
一次オリエンテーションフラット13は、二次オリエンテーションフラット15よりも長い。また、二次オリエンテーションフラット15は、SiC単結晶のc面11eに平行な面と表面11a又は裏面11bとが交差する交差線に平行になるように形成されている。
【0024】
さらに、インゴット11には、導電性を付与するために窒素等の不純物がドープされている。また、インゴット11には、原子レベルで平坦な領域であるファセット領域11fとファセット領域11f以外の領域である非ファセット領域11gとが含まれる。
【0025】
そして、ファセット領域11fの不純物濃度は、非ファセット領域11gの不純物濃度よりも高い。なお、図1(B)においては、ファセット領域11fと非ファセット領域11gとの境界が点線で示されているが、この境界線は、仮想線であり、実際のインゴット11には存在しない。
【0026】
なお、インゴット11の材料は、SiCに限定されず、LiTaO(タンタル酸リチウム:LT)又はGaN(窒化ガリウム)であってもよい。また、インゴット11の側面には、一次オリエンテーションフラット13及び二次オリエンテーションフラット15の一方又は双方が設けられていなくてもよい。
【0027】
図2は、本実施形態の検出装置の一例を模式的に示す図である。なお、図2においては、検出装置の構成要素の一部がブロックで示されている。図2に示される検出装置2は、インゴット11の裏面11bが載置される上面(保持面)4aを有する円盤状のチャックテーブル(インゴット保持ユニット)4を有する。
【0028】
チャックテーブル4は、水平方向移動機構(不図示)に連結されている。水平方向移動機構は、例えば、ボールねじ及びモータ等を有する。そして、この水平方向移動機構が動作すると、チャックテーブル4は、保持面4aに平行な方向(水平方向)に沿って移動する。
【0029】
また、チャックテーブル4は、回転機構(不図示)に連結されている。回転機構は、例えば、スピンドル及びモータ等を有する。そして、この回転機構が動作すると、チャックテーブル4は、保持面4aに直交する方向(鉛直方向)に沿い、かつ、保持面4aの中心を通る直線Lを回転軸として回転する。
【0030】
また、チャックテーブル4は、吸引機構(不図示)に連結されている。吸引機構は、例えば、エジェクタ等を有する。そして、この吸引機構が動作すると、保持面4aに負圧が生じて保持面4aに載置されたインゴット11が吸引保持される。
【0031】
チャックテーブル4の上方には、検出ユニット6が設けられている。検出ユニット6は、励起光源8を有する。励起光源8は、例えば、GaN系発光素子を有し、インゴット11に吸収される波長(例えば、365nm)の励起光Aを側方のミラー10に向けて照射する。そして、ミラー10によって反射された励起光Aは、下方の集光レンズ12によって集光される。
【0032】
また、検出ユニット6は、内側に反射面14aを有する円環状の楕円鏡14を有する。なお、図2においては、楕円鏡14の断面が示されている。この反射面14aは、鉛直方向に延在する長軸と水平方向に延在する短軸とを有する楕円14bを、当該長軸を中心に回転させた回転楕円体の曲面の一部に相当する。
【0033】
楕円鏡14は、2つの焦点F1,F2を有し、その一方(例えば、焦点F1)から生じた光を他方(例えば、焦点F2)に集光する。なお、集光レンズ12は、その焦点が焦点F1に概ね一致するように設計される。すなわち、励起光Aは、焦点F1に集光される。
【0034】
また、検出ユニット6は、受光部16を有する。受光部16は、例えば、波長が900nm以下である光を受光すると、この光の光子数を示す電気信号を出力する光電子増倍管等を有する。あるいは、受光部16は、波長が1200nm又は1500nm以下である光を受光すると、この光の光子数を示す電気信号を出力する光電子増倍管等を有していてもよい。なお、受光部16は、受光面16aの中心が楕円鏡14の焦点F2と一致するように設けられる。
【0035】
また、検出ユニット6においては、焦点F1で生じ、かつ、楕円鏡14によって反射された光がフィルタ18を通って焦点F2に向かう。すなわち、フィルタ18は、楕円鏡14の焦点F1と焦点F2との間の光路に設けられている。フィルタ18は、例えば、750nm以上の波長の光を透過させ、かつ、750nm未満の波長の光を遮断するIRフィルタを有する。
【0036】
さらに、検出ユニット6は、鉛直方向移動機構(不図示)に連結されている。鉛直方向移動機構は、例えば、ボールねじ及びモータ等を有する。そして、この鉛直方向移動機構が動作すると、検出ユニット6は、鉛直方向に沿って移動する。
【0037】
検出装置2を用いたインゴット11の不純物濃度が異なる領域(例えば、ファセット領域11f及び非ファセット領域11g)の特定は、例えば、以下の順序で行われる。まず、チャックテーブル4の保持面4aにインゴット11の裏面11b側が吸引保持された状態で、楕円鏡14の焦点F1がインゴット11の表面11a上の点に一致するようにチャックテーブル4の水平方向の位置と、検出ユニット6の鉛直方向の位置とを調整する。
【0038】
すなわち、焦点F1が保持面4aに平行な座標平面上のインゴット11の表面11aに含まれる複数の領域を示す複数の座標のいずれかに一致するようにチャックテーブル4及び検出ユニット6を移動させる。次いで、励起光源8が励起光Aを照射する。これにより、励起光Aがミラー10及び集光レンズ12を介してインゴット11に照射される。
【0039】
インゴット11に励起光Aが照射されると、インゴット11が励起光Aを吸収して焦点F1において蛍光Bが生じる。例えば、励起光Aの波長が365nmであれば、インゴット11の表面11aから深さ10μm程度まで励起光Aが侵入する。そして、インゴット11の表面11a側の厚さが約10μmの板状の領域から蛍光Bが生じる。
【0040】
焦点F1において生じた蛍光Bは、楕円鏡14を介してフィルタ18に到達する。そして、蛍光BのうちIR領域の波長(例えば、750nm以上の波長)の光のみがフィルタ18を透過する。
【0041】
これにより、受光部16がIR領域の波長の光を受光して、その光子数を示す電気信号を生成する。さらに、上記の複数の座標の残りのそれぞれに焦点F1を一致させるようにチャックテーブル4及び検出ユニット6を相対的に移動させた状態で、励起光源8が励起光Aを照射する。
【0042】
その結果、IR領域の波長の光の光子数を示す電気信号が複数の座標と同じ数だけ生成される。ここで、この光子数は、インゴット11の不純物濃度が高い領域ほど少なくなる。そのため、検出装置2においては、インゴット11の不純物濃度が異なる領域(例えば、ファセット領域11f及び非ファセット領域11g)を容易に特定することが可能である。
【0043】
さらに、検出装置2は、チャックテーブル4及び検出ユニット6の動作を制御する制御ユニット(不図示)を有する。この制御ユニットは、例えば、チャックテーブル4及び検出ユニット6を制御するための信号を生成する処理部と、処理部において用いられる各種の情報(データ及びプログラム等)を記憶する記憶部とを有する。
【0044】
なお、処理部の機能は、記憶部に記憶されたプログラムを読みだして実行するCPU(Central Processing Unit)等によって具現される。また、記憶部の機能は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、SRAM(Static Random Access Memory)及びNAND型フラッシュメモリ等の半導体メモリと、HDD(Hard Disk Drive)等の磁気記憶装置との少なくとも一つによって具現される。
【0045】
この記憶部は、例えば、上記の複数の座標のそれぞれと、IR領域の波長の光の光子数と、を紐付けて記憶する。図3は、この記憶部に記憶される複数の座標の一例を模式的に示す図である。また、表1は、当該複数の座標によって示されるインゴット11の表面11aの複数の領域のそれぞれに励起光Aが照射された際に受光部16が受光するIR領域の波長の光の光子数(count per second:cps)の一例を模式的に示す表である。
【0046】
【表1】
【0047】
すなわち、記憶部においては、例えば、6つの座標(x1,y1)、(x2,y1)、(x3,y1)、(x4,y1)、(x5,y1)、(x6,y1)と、6つの光子数(5000cps)、(5000cps)、(4000cps)、(2500cps)、(1000cps)、(3000cps)と、がそれぞれ紐付けられて記憶される。
【0048】
また、検出装置2は、インゴット11の表面11aに対応し、かつ、不純物濃度が異なる領域(例えば、ファセット領域及び非ファセット領域)が特定された画像を表示する表示ユニット(不図示)を有する。この表示ユニットの動作は、上記の制御ユニットの処理部によって制御される。
【0049】
具体的には、処理部は、記憶部に紐付けて記憶された複数の座標のそれぞれとIR領域の波長の光の光子数とに基づいて表示ユニットの表示を制御する。例えば、処理部は、記憶部に記憶されたIR領域の波長の光の光子数に応じて色を設定し、複数の座標によって示されるインゴット11の表面11aの複数の領域のそれぞれが設定された色で表示されるようにインゴット11の表面11aを画像化する。
【0050】
図4は、表示ユニットに表示される画像の一例を模式的に示す図である。なお、図4においては、便宜上、光子数が少ない領域(例えば、ファセット領域)に斜線のハッチングが付されている。検出装置2においては、図4に示される画像17をオペレータが視認することによって、インゴット11の不純物濃度が異なる領域(例えば、ファセット領域11f及び非ファセット領域11g)をさらに容易に特定することが可能である。さらに、不純物濃度が異なる領域が予め特定されているようなインゴット11の表面11aの画像をオペレータが視認することによって、受光部16が正常に動作しているか否かを確認することも可能である。
【0051】
なお、検出装置2は本発明の一態様に過ぎず、本発明の検出装置は検出装置2に限定されない。すなわち、本発明の検出装置は、インゴットから生じた蛍光のうちIR領域の波長の光のみを検出できるのであれば、どのような構成であってもよい。例えば、IR領域の波長の光のみならず、それよりも波長が短い光が受光面16aに照射された場合に、受光部16がIR領域の波長の光のみの光子数を示す電気信号を出力することが可能であるならば、検出装置2においては、フィルタ18が省略されてもよい。
【0052】
また、本発明の検出装置は、検出ユニット6とは異なる構成を有する検出ユニットを備えてもよい。図5は、検出ユニット6とは異なる構成を有する検出ユニットを有する検出装置の一例を模式的に示す図である。なお、図5においては、検出装置の構成要素の一部がブロックで示されている。また、以下では、検出装置2の構成要素と共通する構成要素についての詳細な説明は省略する。
【0053】
図5に示される検出装置20は、インゴット11の裏面11bが載置される上面(保持面)4aを有する円盤状のチャックテーブル4を有する。チャックテーブル4の上方には、検出ユニット22が設けられている。検出ユニット22は、励起光源8を有する。
【0054】
励起光源8は、励起光Aを側方のダイクロイックミラー24に向けて照射する。ダイクロイックミラー24では、励起光A(例えば、波長365nmの光)が反射される。他方、IR領域の波長(例えば、750nm以上の波長の光)の光は、ダイクロイックミラー24を透過する。そして、ダイクロイックミラー24によって反射された励起光Aは、集光レンズ12によって集光される。
【0055】
また、検出ユニット6は、ダイクロイックミラー24と上方の受光部16との間に設けられたフィルタ18を有する。また、検出ユニット6の上記の構成要素は、集光レンズ12の下方に位置する部分が開口されたケース26に収容されている。
【0056】
このケース26は、IR領域の波長の光を遮断する。そのため、集光レンズ12、ダイクロイックミラー24及びフィルタ18を透過したIR領域の波長の光のみが受光部16において受光される。
【0057】
さらに、検出ユニット22は、鉛直方向移動機構(不図示)に連結されている。鉛直方向移動機構は、例えば、ボールねじ及びモータ等を有する。そして、この鉛直方向移動機構が動作すると、検出ユニット22は、鉛直方向に沿って移動する。
【0058】
検出装置20を用いたインゴット11の不純物濃度が異なる領域(例えば、ファセット領域11f及び非ファセット領域11g)の特定は、例えば、以下の順序で行われる。まず、チャックテーブル4の保持面4aにインゴット11が吸引保持された状態で、励起光Aの集光点がインゴット11の表面11a上の点に一致するようにチャックテーブル4の水平方向の位置と、検出ユニット6の鉛直方向の位置とを調整する。
【0059】
すなわち、励起光Aの集光点が保持面4aに平行な座標平面上のインゴット11の表面11aに含まれる複数の領域を示す複数の座標のいずれかに一致するようにチャックテーブル4及び検出ユニット6を移動させる。次いで、励起光源8が励起光Aを照射する。これにより、励起光Aがダイクロイックミラー24及び集光レンズ12を介してインゴット11に照射される。
【0060】
インゴット11に励起光Aが照射されると、インゴット11が励起光Aを吸収して蛍光Bが生じる。インゴット11から生じた蛍光Bは、集光レンズ12及びダイクロイックミラー24を介してフィルタ18に到達する。そして、蛍光BのうちIR領域の波長(例えば、750nm以上の波長)の光のみがフィルタ18を透過する。
【0061】
これにより、受光部16がIR領域の波長の光を受光して、その光子数を示す電気信号を生成する。さらに、上記の複数の座標の残りのそれぞれに励起光Aの集光点を一致させるようにチャックテーブル4及び検出ユニット6を移動させた状態で、励起光源8が励起光Aを照射する。
【0062】
その結果、IR領域の波長の光の光子数を示す電気信号が複数の座標と同じ数だけ生成される。そのため、検出装置20においては、図2に示される検出装置2と同様に、インゴット11の不純物濃度が異なる領域(例えば、ファセット領域11f及び非ファセット領域11g)を容易に特定することが可能である。
【0063】
その他、上述した実施形態及び変形例にかかる構造及び方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0064】
11 :インゴット
(11a:上面(表面)、11b:下面(裏面)、11c:c軸)
(11d:垂線、11e:c面)
(11f:ファセット領域、11g:非ファセット領域)
13 :一次オリエンテーションフラット
15 :二次オリエンテーションフラット
17 :画像
2 :検出装置
4 :チャックテーブル
6 :検出ユニット
8 :励起光源
10 :ミラー
12 :集光レンズ
14 :楕円鏡(14a:反射面)
16 :受光部(16a:受光面)
18 :フィルタ
20 :検出装置
22 :検出ユニット
24 :ダイクロイックミラー
26 :ケース
図1
図2
図3
図4
図5