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  • 特許-硬化性重合体組成物及びその硬化物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】硬化性重合体組成物及びその硬化物
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/50 20060101AFI20241021BHJP
   C08F 20/18 20060101ALI20241021BHJP
   C08F 20/30 20060101ALI20241021BHJP
【FI】
C08F2/50
C08F20/18
C08F20/30
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018015221
(22)【出願日】2018-01-31
(65)【公開番号】P2019131717
(43)【公開日】2019-08-08
【審査請求日】2020-10-29
【審判番号】
【審判請求日】2022-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100142309
【弁理士】
【氏名又は名称】君塚 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 嘉秀
(72)【発明者】
【氏名】葉山 康司
【合議体】
【審判長】細井 龍史
【審判官】小出 直也
【審判官】北澤 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-89478(JP,A)
【文献】特開2006-232995(JP,A)
【文献】国際公開第2006/38547(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F, C09D, C09J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線活性基を有する重合体A、多官能(メタ)アクリレートB及び有機溶媒Cを含み、
前記多官能(メタ)アクリレートBの含有量が、前記重合体A及び前記多官能(メタ)アクリレートBの合計100質量部に対し80.0質量部以上99.5質量部未満であり、
重合体Aがステアリル(メタ)アクリレート又はイソボルニル(メタ)アクリレート由来の繰り返し単位を含み、
前記重合体Aの重量平均分子量が3000~50000であり、
前記重合体Aの質量に対する紫外線活性基の濃度が0.3mmol/g以上3.0mmol/g以下である、硬化性重合体組成物。
【請求項2】
前記重合体Aが、紫外線活性基を有する(メタ)アクリル酸エステル由来の繰り返し単位を含む請求項1に記載の硬化性重合体組成物。
【請求項3】
前記硬化性重合体組成物中の光重合開始剤の含有量が、硬化性重合体組成物全体100質量部中に3質量部以下である、請求項1または2に記載の硬化性重合体組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の硬化性重合体組成物の硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化後の表面に微細な凹凸を発現させ、虹彩色や艶消し性を発現する硬化性重合体組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
基材の表面に微細な凹凸を発現させることにより、観察する角度によって色彩が変化する虹彩色性や艶消し性を付与し、意匠性、視認性を向上する技術として、塗料中に微粒子を分散させる方法、金属の薄膜を蒸着させる方法や硬化物の表面に微細な皺を発現させる方法等が知られている。
たとえば特許文献1には、硬化性重合体組成物を基材に塗布し、活性エネルギー線により硬化させた硬化物の表面に金属の薄膜を蒸着し薄膜の表面に微細な凹凸形状を形成し、虹彩色を発現させる技術が記載されている。
また特許文献2には、特定のウレタンアクリレート、反応性希釈剤、及び光開始剤を含む艶消し性を有する重合体組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-54827号公報
【文献】特開平9-53024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし特許文献1記載の方法は、金属の薄膜を蒸着させるため、透明性が必要とされるフィルム等の表面に虹彩色を発現させることが困難であった。
また特許文献2記載の方法は、特定波長の光源により硬化させることが必要であり、虹彩色を発現する微細な凹凸を形成することも困難であった。
本発明はこれらの問題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的は以下の本発明[1]~[]によって達成される。
[1]紫外線活性基を有する重合体A、多官能(メタ)アクリレートB及び有機溶媒C
を含み、前記多官能(メタ)アクリレートBの含有量が、硬化性重合体組成物100質量
部に対し80.0質量部以上99.5質量部未満である、硬化性重合体組成物。
[2]前記重合体Aが、紫外線活性基を有する(メタ)アクリル酸エステル由来の繰り
返し単位を含む[1]に記載の硬化性重合体組成物。
[3]前記重合体Aの質量に対する紫外線活性基の濃度が0.3mmol/g以上3
.0mmol/g以下である[1]または[2]に記載の硬化性重合体組成物。
[4]前記重合体Aの重量平均分子量が1000~500000である[1]~[3
]のいずれか1項に記載の硬化性重合体組成物。
[5]前記重合体Aが炭素数4以上の(メタ)アクリル酸エステル由来の繰り返し単位
を含む[1]~[4]のいずれか1項に記載の硬化性重合体組成物。
[6]前記硬化性重合体組成物中の前記重合体Aの含有量が0.5~20重量%であ
る[1]~[5]のいずれか1項に記載の活性エネルギー線重合体組成物。
[7]前記硬化性重合体組成物中の前記重合体Aの含有量が、硬化性重合体組成物1
00質量部中に0.5質量部以上20.0質量部未満である、[1]~[6]のいずれか
1項に記載の活性エネルギー線重合体組成物。
[8]前記硬化性重合体組成物中の光重合開始剤の含有量が、硬化性重合体組成物1
00質量部中に3質量部以下である、[1]~[7]のいずれか1項に記載の活性エネル
ギー線重合体組成物。
[9][1]~[8]のいずれか1項に記載の硬化性重合体組成物の硬化物
【発明の効果】
【0006】
本発明の硬化性重合体組成物は、特殊な光源を用いることなく硬化後の表面に微細な凹凸を発現させることができ、透明性が必要とされる基材表面にも虹彩色や艶消し性を付与できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態に係る隣り合う凸部と凹部の中心の距離を凹凸の周期として示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の硬化性重合体組成物は、紫外線活性基を有する重合体A、多官能(メタ)アクリレートB及び有機溶媒Cを含む。
<紫外線活性基を有する重合体A>
本発明において、重合体Aは紫外線活性基を有する。紫外線活性基とは、紫外線により分子内開裂反応、水素引き抜き反応、電子移動反応等が起こりラジカルを発生するものである。本発明では、発生したラジカルが多官能(メタ)アクリレートBと反応し架橋構造を形成する。
【0009】
前記紫外線活性基としては、ベンゾフェノン基、アセトフェノン基、ベンゾイン基、α-ヒドロキシケトン基、α-アミノケトン基、α-ジケトン基、α-ジケトンジアルキルアセタール基、アントラキノン基、チオキサントン基、ホスフィンオキシド基、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン)基が挙げられ、本発明の硬化性重合体組成物の硬化時に酸素阻害を受けにくく、表面硬化性が良好となる点でベンゾフェノン基、アセトフェノン基が好ましい。
【0010】
本発明の、紫外線活性基を有する重合体Aは、前記紫外線活性基を有する単量体を含む単量体混合物を共重合することで得られる。
【0011】
前記紫外線活性基を有する単量体としては、ベンゾフェノン類、アセトフェノン類、ベンゾイン類、α-ヒドロキシケトン類、α-アミノケトン類、α-ジケトン類、α-ジケトンジアルキルアセタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、ホスフィンオキシド類に不飽和二重結合が付与された化合物が挙げられる。
【0012】
また、本発明では前記重合体Aが、紫外線活性基を有する(メタ)アクリル酸エステル由来の繰り返し単位を含むことが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル由来の繰り返し単位を含むことで、本発明の硬化性重合体組成物を基材に塗布し硬化する際に、塗膜表面側の前記重合体Aの濃度が高くなり、硬化物の表面に微細な凹凸を発現しやすくなる。
前記重合体Aは、単量体として前記紫外線活性基を有する(メタ)アクリル酸エステルを含む単量体混合物を共重合することで得られる。
【0013】
前記紫外線活性基としてベンゾフェノン基を有する単量体としては、MCCユニテック株式会社の4-メタクリロイルオキシベンゾフェノンや、ALLNEX社のEBECRYL P36やEBECRYL P37などが挙げられる。
【0014】
また、前記紫外線活性基を有する単量体は、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアナートに1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オンを付加させる方法や、(メタ)アクリル酸無水物や(メタ)アクリル酸クロリドに1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オンを付加させる方法などによって調製することができる。
【0015】
本発明の紫外線活性基を有する重合体Aは、紫外線活性基を有する単量体と紫外線活性基を有さない単量体を、溶液重合法、懸濁重合法などの一般的な重合法によって(共)重合することで製造することができる。操作が簡便で生産性が高い点で溶液重合法が好ましい。
【0016】
また、本発明の紫外線活性基を有する重合体Aは、紫外線活性基を有さない炭素数4以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル由来の繰り返し単位を含むことが好ましい。
【0017】
前記紫外線活性基を有さない炭素数4以上のアルキル基を有さない(メタ)アクリル酸エステル由来の繰り返し単位を含むことで、本発明の硬化性重合体組成物を基材に塗布し硬化する際に、硬化物の表面の前記重合体Aの濃度が高くなり、微細な凹凸を発現しやすくなる。
【0018】
前記繰り返し単位の前記重合体A100質量部中の含有量は、1質量部以上90質量部未満であることが好ましく、5質量部以上80質量部未満がより好ましく、10質量部以上60質量部未満がさらに好ましい。
【0019】
前記紫外線活性基を有さない炭素数4以上のアルキル基を有する単量体としては、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、パルミチル(メタ)アクリレートおよびステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカン(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレートなど挙げられる。これらの中でも、硬化物表面の前記重合体Aの濃度が高くなり、微細な凹凸を発現させる点で、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0020】
さらに、本発明の紫外線活性基を有する重合体Aは、硬化物表面からの硬化を行う点で水酸基、メルカプト基、アミノ基、アミド基等の水素供与性官能基を有する単量体由来の繰り返し単位を含むことが好ましい。
【0021】
前記繰り返し単位の前記重合体A100質量部中の含有量は、1質量部以上40質量部未満が好ましく、2質量部以上35質量部未満がより好ましく、5質量部以上25質量部未満がさらに好ましい。
【0022】
前記水素供与性官能基を有する単量体としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12-ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレートなどの水酸基を有する単量体、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルピロリドン、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2-[(ブチルアミノ)カルボニル]オキシ]エチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、ビニルアセトアミドなどのアミノ基もしくはアミド基を有する単量体などが挙げられる。これらの中でも、紫外線活性基との併用において硬化促進効果に優れる点で、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートや、(N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0023】
なお、本発明の重合体Aは、前記以外のその他の繰り返し単位を含んでいてもよく、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、フェニルジオキシエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、モルフォリン(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレートなどの単量体由来の構成単位を含んでいても良い。
【0024】
本発明の重合体Aの紫外線活性基の濃度は、本発明の硬化性重合体組成物の硬化物が虹彩色や艶消し性を良好に発現できる点で、0.3mmol/g以上3.0mmol/g以下が好ましい。
【0025】
さらに本発明の重合体Aの重量平均分子量は1000~500000が好ましい。本発明の硬化性重合体組成物を基材に塗布し硬化する際に、塗膜表面側の前記重合体Aの濃度が高くなり、硬化物の表面に微細な凹凸を発現しやすくなる点で、2000~100000がより好ましく、3000~50000がさらに好ましい。
本発明において重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)により測定した標準ポリスチレン換算による値である。
【0026】
前記重量平均分子量は以下測定条件によって測定することができる。
(GPC測定条件)
カラム:「TSK-gel superHZM-M」、「TSK-gel HZM-M」、「TSK-gel HZ2000」
溶離液:THF
流量:0.35mL/min
注入量:10μL
カラム温度:40℃
検出器:UV-8020
【0027】
硬化物の表面の凹凸形成性が良好となる点で前記重合体Aのガラス転移温度は-30℃以上130℃以下が好ましく、0℃以上110℃以下がより好ましく、25℃以上100℃以下がより好ましい。
【0028】
本発明においてガラス転移温度は以下のFoxの式による共重合体のガラス転移温度Tg(℃)の関係式で計算した値である。
1/(273+Tg)=Σ{Wi/(273+Tgi)}
Wi:単量体iの質量分率
Tgi:単量体iの単独重合体のTg(℃)
尚、単独重合体のガラス転移温度は、「ポリマーハンドブック 第4版 John Wiley & Sons著」に記載の数値を用いた値である。
【0029】
本発明の硬化性重合体組成物中の重合体Aの含有量は、硬化物の表面への凹凸形状の付与及び紫外線硬化性を良好とする点で硬化性重合体組成物100質量部中に0.5質量部以上20.0質量部未満が好ましく、0.7質量部以上10.0質量部未満がより好ましく、1.0質量部以上7.0質量部未満がさらに好ましい。
【0030】
<多官能(メタ)アクリレートB>
本発明において、多官能(メタ)アクリレートBとは、一分子中に2つ以上の不飽和二重結合を有する化合物である。多官能(メタ)アクリレートBは、得られる硬化物の硬度や硬化性重合体組成物の硬化性を高める作用がある。
【0031】
前記多官能(メタ)アクリレートBとしては1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートモノステアレート、グリシジルエーテルのジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリ(メタ)アクリレート、ジメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトール(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。また、上記化合物のアルキル変性(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性(メタ)アクリレートや、上記以外の脂肪族ポリオールの(メタ)アクリレート、さらに、デンドリマーまたはハイパーブランチポリマーと称される、アクリレート基を末端に有する樹枝状脂肪族化合物が挙げられる。アクリレート基を末端に有する樹枝状脂肪族化合物は市販品としてビスコートV#1000、V#5020、STAR-501(何れも大阪有機化学工業社製)などが挙げられる。前記の多官能アクリレート化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
前記の多官能アクリレート化合物のなかでも得られる硬化物の硬度や硬化性重合体組成物の硬化性が高くなる点でジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ジメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ビスコートV#1000、V#5020、STAR-501などが好ましい。
【0033】
また本発明において、硬化性重合体組成物の硬化性が良好となる点から、前記多官能(メタ)アクリレートBの含有量は、硬化性重合体組成物100質量部に対し80.0質量部以上99.5質量部未満が好ましく、90.0以上99.3質量部未満がより好ましく、93.0質量部以上99.0質量部未満がさらに好ましい。
【0034】
<有機溶媒C>
本発明では有機溶媒Cを含むことにより、本発明の硬化性重合体組成物を基材に塗布する際の作業性が向上する。
前記有機溶媒Cとしてはトルエン、キシレン等の芳香族系溶媒;メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、アニソール、フェネトール等のエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、エチレングリコールジアセテート等のエステル系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等のアミド系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒;等が挙げられる。これらの溶媒は1種を単独で使用してもよく、また2種以上を併用してもよい。
これらの溶媒のうち、塗布における作業性が向上する点でエステル系溶媒、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒及びケトン系溶媒が好ましい。
【0035】
また本発明において、前記有機溶媒Cの含有量は、硬化性重合体組成物100質量部に対し塗布操作における操作性が向上する点で、10質量部以上1900質量部未満が好ましく、40質量部以上400質量部未満がより好ましい。
【0036】
<硬化性重合体組成物>
本発明の硬化性重合体組成物は有機溶媒、重合開始剤、レべリング剤、無機粒子、その他の成分を含んでいてもよい。
【0037】
<光重合開始剤>
本発明の硬化性重合体組成物は、紫外線の照射によりラジカルを発生する紫外線活性基を有する重合体Aにより十分な光硬化性を有するが、硬化性を促進する目的で重量平均分子量1000未満の光重合開始剤を添加することができる。光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn-ブチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル、ベンジルジフェニルジスルフィド、ジベンジル、ジアセチル、アントラキノン、ナフトキノン、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、ベンゾフェノン、p,p’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、ピバロインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1,1-ジクロロアセトフェノン、p-t-ブチルジクロロアセトフェノン、2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジクロロ-4-フェノキシアセトフェノン、フェニルグリオキシレート、α-ヒドロキシイソブチルフェノン、ジベンゾスパロン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパノン、2-メチル-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-1-プロパノン、トリブロモフェニルスルホン、トリブロモメチルフェニルスルホン等が挙げられる。
【0038】
前記光重合開始剤は、重合体Aより優先して硬化をしない程度に添加するのが良い。重合体組成物100質量部に対する前記光重合開始剤の添加量は、3質量部以下が好ましく、2質量部以下がより好ましく、1質量部以下がさらに好ましく、0.5質量部以下が特に好ましい。
【0039】
<レべリング剤>
本発明の硬化性重合体組成物は、硬化物外観を向上させるため、レベリング剤を添加することができる。レベリング剤としては、アクリル系レベリング剤、シリコーン系レベリング剤、フッ素系レベリング剤等が挙げられる。また、レベリング剤は1種のみで用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
<無機粒子>
本発明の硬化性重合体組成物は、艶消し性をさらに向上させる場合には、平均一次粒子径が0.01~10μmの無機粒子を硬化性重合体組成物に添加させることでより高い艶消し性を有する硬化物を得ることができる。
【0041】
また、前記無機粒子は(メタ)アクリロイル基などの反応性基を有するシランカップリング剤で表面修飾した粒子でも良い。表面修飾した粒子は、例えば、重合体と無機粒子とを酸や塩基、アセチルアセトンアルミニウム等のシランカップリング反応触媒の存在下に25~120℃で1~24時間程度反応させる方法が挙げられる。
【0042】
<その他の成分>
本発明の硬化性重合体組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、チオール基を含有する化合物などの重合促進剤、帯電防止剤、可塑剤、界面活性剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等を添加しても良い。
【0043】
<硬化性重合体組成物の製造方法>
次に、本発明の硬化性重合体組成物の一例を示す。
本発明の硬化性重合体組成物は、例えば、紫外線活性基を有する重合体A、多官能(メタ)アクリレートB及び有機溶媒C、必要に応じてさらにレベリング剤、無機粒子、光重合開始剤、添加剤等を混合することにより製造できる。
【0044】
<硬化性重合体組成物の硬化物>
本発明の硬化性重合体組成物の硬化物は、前記硬化性重合体組成物を基材に塗布した後、得られた硬化物を乾燥し、紫外線を照射し得られる。
本発明では、前記硬化物に紫外線を照射し硬化させる際に、塗膜表面側の前記硬化性重合体組成物中の紫外線活性基を有する重合体Aの濃度が高くなりやすいため、塗膜の表面が先に硬化し硬化被膜を形成する。その後、塗膜の内部が硬化する際の収縮応力により、表面の硬化被膜が収縮し皺上の凹凸が発現すると考えられる。
【0045】
本発明において、前記基材としては各種重合体フィルム及び重合体板、重合体成形体等を使用することができる。重合体フィルムとして、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ジアセチレンセルロースフィルム、アセテートブチレートセルロースフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリアクリル系重合体フィルム、ポリウレタン系重合体フィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、(メタ)アクリルニトリルフィルム、シクロオレフィンポリマー(COP)フィルム等が挙げられる。また、重合体板及び重合体成形体として、例えばアクリル板、トリアセチルセルロース板、ポリエチレンテレフタレート板、ジアセチレンセルロース板、アセテートブチレートセルロース板、ポリエーテルスルホン板、ポリウレタン板、ポリカーボネート板、ポリスルホン板、ポリエーテル板、ポリメチルペンテン板、ポリエーテルケトン板、(メタ)アクリルニトリル板等が挙げられる。また、必要に応じてガラス等を使用することもできる。なお、基材の厚さは、用途に応じて適時選択することができるが、一般に25~1,0000μm程度のものが用いられる。
【0046】
塗布の方法は特段限定されないが、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、スピンコート法、ローラーコート法、バーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、スプレーコート等の方法により塗布することができる。
【0047】
硬化性重合体組成物の乾燥は、硬化性重合体組成物を硬化させる前に予め加熱乾燥させることが好ましい。塗布された塗膜を硬化させる前に加熱乾燥する場合は、30~200℃が好ましく、40~150℃がより好ましい。また、乾燥時間は、0.01~30分間が好ましく、0.1~10分間がより好ましい。予め加熱乾燥させることにより、塗膜中の溶媒を効果的に除去することが可能であり、本発明の硬化性重合体組成物を基材に塗布し硬化する際に、塗膜表面側の前記重合体Aの濃度が高くなり、硬化物の表面に微細な凹凸を発現しやすくなる。
【0048】
紫外線の照射は、生産性の点で積算光量が100mJ/cm以上20000mJ/cm以下となるよう照射することが好ましい。光源としては、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、無電極ランプ、メタルハライドランプ、あるいは走査型、カーテン型電子線加速路による電子線等高圧水銀灯、超高圧水銀灯等、低圧水銀灯などを用いることができる。
【0049】
本発明では、前記硬化物に紫外線を照射し硬化させる際に、塗膜表面側の前記硬化性重合体組成物中の紫外線活性基を有する重合体Aの濃度が高くなりやすいため、塗膜の表面が先に硬化し硬化被膜を形成する。その後、塗膜の内部が硬化する際の収縮応力により、表面の硬化被膜が収縮し皺上の凹凸が発現すると考えられる。
【0050】
塗膜の内部の硬化時間を短くすることで、硬化物表面の凹凸の周期が小さくなり、前記硬化時間を長くすることで凹凸の周期が大きくなる。
前記硬化時間は、前記硬化性重合体組成物中の多官能(メタ)アクリレートBの二重結合当量、重合体A、光重合開始剤の量、紫外線強度などによって調整することができる。
【0051】
本発明では、前記硬化性重合体組成物の硬化物の表面の凹凸の周期が、0.1μm以上2.9μm未満であれば、虹彩色が発現する。
前記表面の凹凸の周期は、0.3μm以上2.9μm未満が好ましく、0.4μm以上2.6μm未満がより好ましく、0.6μm以上2.3μm未満がさらに好ましい。
【0052】
また、より鮮明な虹彩色を発現するために、550nmにおける全光線透過率が70%以上100%未満が好ましく、80%以上99.5%未満がさらに好ましく、90%以上99.0%未満がさらに好ましい。
【0053】
ヘイズ値は、硬化物の虹彩色性を鮮明とする点で550nmにおけるヘイズ値が1%以上40.0%未満であることが好ましく、3.0%以上25.0%未満であることがさらに好ましく、5.0%以上20%未満であることがさらに好ましい。
硬化物の光沢度(グロス)は、より鮮明な虹彩色を発現するために、60°における全光線透過率が34%以上170%未満が好ましく、35%以上165%未満がさらに好ましく、36%以上160%未満がさらに好ましい。
【0054】
本発明では、前記硬化性重合体組成物の硬化物の表面の凹凸の周期が、3.0μm以上40μm以下であれば、艶消し性が発現する。
【0055】
また、より高い艶消し性と、硬化物の基材側に配置される表示素子等の視認性を良好なものとするために、550nmにおける全光線透過率は、70%以上100%未満が好ましく、80%以上99.5%未満がさらに好ましく、90%以上99.0%未満がさらに好ましい。
【0056】
ヘイズ値は、より高い艶消し性と、硬化物の基材側に配置される表示素子等の視認性を良好なものとするために、550nmにおけるヘイズ値が21.0%以上99.0%未満が好ましく、30.0%以上98.0%未満がさらに好ましく、40.0%以上97.0%未満がさらに好ましい。
【0057】
硬化被膜の光沢度(グロス)は、より高い艶消し性を発現するために、60°における全光線透過率が1.0以上90.0%未満が好ましく、5.0%以上70.0%未満がさらに好ましく、8.0%以上50.0%未満がさらに好ましい。
【0058】
本発明によって得られる凹凸形状を有する硬化物は、観察する角度によって色彩が変化する虹彩色性を利用することで偽造防止カードへの利用や意匠性物品用途に使用できる。 また、艶消し性を利用することで建材、車両等の内装用、ガラス装飾用、電気電子機器のハウジング物品の意匠性向上の用途に使用できる。さらに凹凸の大きさを利用することで得られる光拡散性を利用することで、視認性向上を目的とするディスプレイのバックライトユニット用途に使用できる。
【実施例
【0059】
以下、本発明を実施例及び比較例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、評価は以下の方法によって行った。
【0060】
<評価方法>
<評価サンプル>
実施例で得られた硬化性重合体組成物の塗布液を、厚み100μmのPETフィルム(三菱ケミカル(株)製、O321E100)に#7のバーコーターで塗布し、得られた塗膜を100℃に加熱した熱風乾燥機で60秒間乾燥を行うことで溶剤を揮発させた。次いで、東芝ライテック社製のUVコンベアを用いて、高圧水銀灯により空気下で塗膜の硬化を行ったものを評価サンプルとした。
前記硬化は、波長300~390nmの積算光量が、岩崎電気株式会社製の照度計(アイ紫外線積算照度計 UVPF―A1、PD-365)で測定した際に、125mJ/cm(125mW/J/cm)となるように調整し、約1秒の照射を4回(500mJ/cm)行った。
【0061】
<全光線透過率・ヘイズ>
本発明で得られる硬化物の全光線透過率・及びヘイズは、JIS Z8722Z(透過物体の照射及び受光の幾何条件)及びJIS K7361-1(プラスチック-透明材料の全光線透過率の試験方法)JIS K7136(プラスチック-透明材料のヘ-ズの求め方)に準拠し、日本電色工業製SH7000を用いて波長550nmにおける値を測定した。
【0062】
<光沢度>
本発明で得られる硬化塗膜の光沢度(グロス)は、JIS Z 8741に準拠し、日本電色工業社製グロスメーターVG2000を用いて、60°鏡面光沢度(60°グロス)として測定を行った。
【0063】
<凹凸周期>
本発明で得られる硬化塗膜の凹凸の周期は、工業用顕微鏡(NIKON社製 eclipse LV100)を用いて倍率1000倍で観察した硬化塗膜表面の顕微鏡写真から求めた。前記硬化塗膜表面の凸部は明るい色の部分として観察され、硬化塗膜表面の凹部は暗い色の部分として観察される。(図1
図1に示す、隣り合う凸部と凹部の中心の距離を凹凸の周期とした。なお、測定は3か所で行い、その平均値を凹凸の周期とした。
【0064】
<虹彩色性>
蛍光灯を灯した室内に、本発明で得られる硬化塗膜を設置し、蛍光灯と硬化塗膜の距離を2.5mに設定して目視外観にて虹彩色性(反射光の色分かれ)を評価した。
◎:硬化物が、見る角度によって色彩が変化する虹彩色を鮮明に発現する。
○:硬化物が、見る角度によって色彩が変化する虹彩色を発現する。
×:表面が虹彩色でなく、白化、クモリ、または鏡面となる。
【0065】
<艶消し性>
蛍光灯を灯した室内に、本発明で得られる硬化塗膜を設置し、蛍光灯と硬化塗膜の距離を2.5mに設定して目視外観にて艶消し性(蛍光灯の映り込み)を評価した。
◎:硬化塗膜表面の蛍光灯の反射像は、強くぼやけており、蛍光灯の輪郭が確認できない。
○:硬化塗膜表面の蛍光灯の反射像は、ぼやけているが、うっすらと輪郭を確認することができる。
×:硬化塗膜表面の蛍光灯の反射像は、鮮明ではっきりと輪郭を確認することができる。
【0066】
<硬化性>
本発明の硬化性重合体組成物を塗布、乾燥後に、高圧水銀灯を用いて空気下で光硬化を行った。
照射回数と硬化物表面のタック(粘着性)が無くなるまでの回数を測定することで、硬化性重合体組成物の硬化性を評価した。
光硬化は、波長300~390nmの積算光量が、岩崎電気株式会社製の照度計(アイ紫外線積算照度計 UVPF―A1、PD-365)で測定した際に、125mJ/cm(125mW/J/cm)となるように調整して光硬化を行った。
◎:照射回数2回以下(250mJ/cm)で硬化塗膜表面のタック性が無くなる
○:照射回数2回より多く、4回以下(251mJ/cm~500mJ/cm)で硬化塗膜表面のタック性が無くなる
×:照射回数5回(625mJ/cm)でも硬化塗膜表面のタック性は無くならない。
【0067】
<紫外線活性基を有する重合体A-1>
撹拌機、冷却管及び温度計を備えたフラスコ中に、メチルイソブチルケトン(以下、MIBKという)78.0部を入れて撹拌した。次いで、フラスコ内を窒素置換し65℃に昇温してメチルメタクリレート(三菱ケミカル(株)製、商品名:アクリエステルM)30.0部、ステアリルメタクリレート(三菱ケミカル(株)製、商品名:アクリルエステルS)20.0部、4―メタクリロイルオキシベンゾフェノン(MCCユニテック(株)製)50.0部、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、商品名:KBM-803)3.0部、アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業(株)製、商品名:V-65)1.0部、MIBK78.0部の混合溶液を2時間かけて滴下した。さらに2時間後、重合率を上げるため、アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業(株)製、商品名:V-65)0.5部、MIBK0.6部の混合液を投入し、5時間保持した。その後、反応液を40℃に冷却することで紫外線活性基を有する重合体A-1(以下、A-1)を重合した。A-1の固形分は40%であり、重量平均分子量(Mw)は10,700であった。また、A-1のガラス転移温度は95℃であった。組成、評価結果を表1に記載した。
【0068】
<紫外線活性基を有する重合体A-2>
表1記載の組成比に変えた以外はA-1と同様の条件で重合を行った。組成、評価結果を表1に記載した。
【0069】
<紫外線活性基を有する重合体A-3>
表1記載の組成比に変えた以外はA-1と同様の重合方法を行うことでA-3を合成した。組成、評価結果を表1に記載した。
【0070】
<紫外線活性基を有する重合体A-4>
表1記載の組成比に変えた以外はA-1と同様の重合方法を行うことでA-3を合成した。組成、評価結果を表1に記載した。
【0071】
<紫外線活性基を有さない重合体H-1>
表1記載の組成比に変えた以外はA-1と同様の重合方法を行うことでH-1を合成した。組成、評価結果を表1に記載した。
【0072】
【表1】
【0073】
<虹彩色性の硬化物>
実施例1
撹拌子を備えたフラスコ中に、紫外線活性基を有する重合体AとしてA-1を固形分として1質量部、多官能のアクリレートBとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株)製 商品名:KAYARAD DPHA)を固形分として100質量部、有機溶剤Cとして、プロピレングリコールモノメチルエーテル(以下、PGM)105.6質量部、メチルエチルケトン(以下、MEK)45.3質量部添加した後に均一になるまで撹拌を行い、硬化性重合体組成物の塗布液を調製した。得られた塗布液の硬化物の評価結果を表2に示す。
【0074】
実施例2
撹拌子を備えたフラスコ中に、紫外線活性基を有する重合体AとしてA-1を重合体固形分として2質量部、多官能のアクリレートBとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株)製 商品名:KAYARAD DPHA)を固形分として100質量部、有機溶剤Cとして、PGM106.3質量部、MEK45.5質量部とした以外は実施例1と同様に硬化性重合体組成物の塗布液を調製した。得られた塗布液の硬化物の評価結果を表2に示す。
【0075】
実施例3
撹拌子を備えたフラスコ中に、紫外線活性基を有する重合体AとしてA-1を重合体固形分として3質量部、多官能のアクリレートBとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株)製 商品名:KAYARAD DPHA)を固形分として100質量部、有機溶剤Cとして、PGM106.9質量部、MEK45.8質量部とした以外は実施例1と同様に硬化性重合体組成物の塗布液を調製した。得られた塗布液の硬化物の評価結果を表2に示す。
【0076】
実施例4
撹拌子を備えたフラスコ中に、紫外線活性基を有する重合体AとしてA-2を重合体固形分として2質量部、多官能のアクリレートBとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株)製 商品名:KAYARAD DPHA)を固形分として100質量部、有機溶剤Cとして、PGM106.3質量部、MEK45.5質量部とした以外は実施例1と同様に硬化性重合体組成物の塗布液を調製した。得られた塗布液の硬化物の評価結果を表2に示す。
【0077】
実施例5
撹拌子を備えたフラスコ中に、紫外線活性基を有する重合体AとしてA-3を重合体固形分として2質量部、多官能のアクリレートBとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株)製 商品名:KAYARAD DPHA)を固形分として100質量部、有機溶剤Cとして、PGM106.3質量部、MEK45.5質量部とした以外は実施例1と同様に硬化性重合体組成物の塗布液を調製した。得られた塗布液の硬化物の評価結果を表2に示す。
【0078】
比較例1
撹拌子を備えたフラスコ中に、外線活性基を有さない重合体としてH-1を重合体固形分として2質量部、多官能のアクリレートBとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株)製 商品名:KAYARAD DPHA)を固形分として100質量部、有機溶剤Cとして、PGM106.3質量部、MEK45.5質量部とした以外は実施例1と同様に硬化性重合体組成物の塗布液を調製した。得られた塗布液の硬化物の評価結果を表2に示す。
実施例1~5、比較例1で得られた硬化塗膜の評価結果を表2に記載した。
【0079】
【表2】
【0080】
紫外線活性基を有さない重合体H-1を使用した場合は、硬化物の硬化性も低く、また、硬化塗膜表面の凹凸の生成も見られなかった。
【0081】
<艶消し性の硬化塗膜>
実施例6
撹拌子を備えたフラスコ中に、紫外線活性基を有する重合体AとしてA-1を重合体固形分として1質量部、多官能のアクリレートBとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株)製 商品名:KAYARAD DPHA)を固形分として80質量部、及び、アクリレート基を末端に有する樹枝状脂肪族化合物ビスコートV#1000(大阪有機化学工業(株))を20質量部、有機溶剤Cとして、PGMを105.6質量部、MEKを45.3質量部添加した後に均一になるまで撹拌を行い、固形分40.0%の硬化性重合体組成物の塗布液を調製した。
この塗布液の塗布方法や光硬化方法については実施例1と同様である。得られた塗布液の硬化物の評価結果を表3に示す。
【0082】
実施例7
撹拌子を備えたフラスコ中に、紫外線活性基を有する重合体AとしてA-1を重合体固形分として2質量部、多官能のアクリレートBとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株)製 商品名:KAYARAD DPHA)を固形分として80質量部、及び、アクリレート基を末端に有する樹枝状脂肪族化合物ビスコートV#1000(大阪有機化学工業(株))を20質量部、有機溶剤Cとして、PGM106.3質量部、MEK45.5質量部添加した以外は、実施例1と同様に硬化性重合体組成物の塗布液を調製した。得られた塗布液の硬化物の評価結果を表3に示す。
【0083】
実施例8
撹拌子を備えたフラスコ中に、紫外線活性基を有する重合体AとしてA-1を重合体固形分として3質量部、多官能のアクリレートBとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株)製 商品名:KAYARAD DPHA)を固形分として80質量部、及び、アクリレート基を末端に有する樹枝状脂肪族化合物ビスコートV#1000(大阪有機化学工業(株))を20質量部、有機溶剤Cとして、PGM106.9質量部、MEK45.8質量部添加した以外は、実施例1と同様に硬化性重合体組成物の塗布液を調製した。得られた塗布液の硬化物の評価結果を表3に示す。
【0084】
実施例9
撹拌子を備えたフラスコ中に、紫外線活性基を有する重合体AとしてA-2を重合体固形分として2質量部、多官能のアクリレートBとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株)製 商品名:KAYARAD DPHA)を固形分として80質量部、及び、アクリレート基を末端に有する樹枝状脂肪族化合物ビスコートV#1000(大阪有機化学工業(株))を20質量部、有機溶剤Cとして、PGM106.3質量部、MEK45.5質量部添加した以外は、実施例1と同様に硬化性重合体組成物の塗布液を調製した。得られた塗布液の硬化物の評価結果を表3に示す。
【0085】
実施例10
撹拌子を備えたフラスコ中に、紫外線活性基を有する重合体AとしてA-3を重合体固形分として2質量部、多官能のアクリレートBとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株)製 商品名:KAYARAD DPHA)を固形分として80質量部、及び、アクリレート基を末端に有する樹枝状脂肪族化合物ビスコートV#1000(大阪有機化学工業(株))を20質量部、有機溶剤Cとして、PGM106.3質量部、MEK45.5質量部添加した以外は、実施例1と同様に硬化性重合体組成物の塗布液を調製した。得られた塗布液の硬化物の評価結果を表3に示す。
【0086】
実施例11
撹拌子を備えたフラスコ中に、紫外線活性基を有する重合体AとしてA-2を重合体固形分として3質量部、多官能のアクリレートBとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株)製 商品名:KAYARAD DPHA)を固形分として80質量部、及び、アクリレート基を末端に有する樹枝状脂肪族化合物ビスコートV#1000(大阪有機化学工業(株))を20質量部、有機溶剤Cとして、PGM106.3質量部、MEK45.5質量部添加した以外は、実施例1と同様に硬化性重合体組成物の塗布液を調製した。得られた塗布液の硬化物の評価結果を表3に示す。
【0087】
比較例2
撹拌子を備えたフラスコ中に、紫外線活性基を有さない重合体としてH-1を重合体固形分として2質量部、多官能のアクリレートBとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株)製 商品名:KAYARAD DPHA)を固形分として80質量部、及び、アクリレート基を末端に有する樹枝状脂肪族化合物ビスコートV#1000(大阪有機化学工業(株))を20質量部、有機溶剤Cとして、PGM106.3質量部、MEK45.5質量部とした以外は実施例1と同様に硬化塗膜を作製した。
実施例6~11、比較例2で得られた硬化塗膜の評価結果を表3に記載した。
【0088】
【表3】
【0089】
紫外線活性基を有さない重合体H-1を使用した比較例2は、硬化物の硬化性も低く、また、硬化塗膜表面の凹凸の生成も見られなかった。
【符号の説明】
【0090】
1 硬化塗膜表面の凹部
2 硬化塗膜表面の凸部
3 凹凸周期
図1