(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】積層型撮像素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 27/146 20060101AFI20241021BHJP
H01L 31/08 20060101ALI20241021BHJP
H01L 31/10 20060101ALI20241021BHJP
H10K 71/00 20230101ALI20241021BHJP
H10K 71/10 20230101ALI20241021BHJP
H10K 71/18 20230101ALI20241021BHJP
H10K 71/60 20230101ALI20241021BHJP
【FI】
H01L27/146 C
H01L31/08 G
H01L31/10 D
H01L31/10 G
H10K71/00
H10K71/10
H10K71/18
H10K71/60
(21)【出願番号】P 2020182766
(22)【出願日】2020-10-30
【審査請求日】2023-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100097984
【氏名又は名称】川野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100125265
【氏名又は名称】貝塚 亮平
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 弘人
(72)【発明者】
【氏名】堺 俊克
(72)【発明者】
【氏名】相原 聡
(72)【発明者】
【氏名】高木 友望
(72)【発明者】
【氏名】今村 弘毅
【審査官】加藤 俊哉
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-204967(JP,A)
【文献】特開2015-095517(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/146
H01L 31/10
H10K 30/60
H01L 31/08
H10K 71/00
H10K 71/10
H10K 71/18
H10K 71/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上において、格子状に区画される各画素内の周辺部の所定位置に配される信号読出しに係るTFT素子、第1絶縁膜、共通電極接続用電極および第2絶縁膜を、この順に積層して第1積層体を形成する第1膜積層処理を、該第1積層体の所定の重畳数分だけ繰り返し行う第1態様、または該第1積層体の所定の重畳数分だけ繰り返し行った後、さらに前記TFT素子を積層する第2態様を実行する第1工程と、
前記各画素の中央部に開口部を穿設するとともに、前記各画素の境界に沿った、前記TFT素子を含む前記周辺部である境界領域は穿設せずに残して画素分離壁とする第2工程と、
穿設された前記開口部に、前記TFT素子と接続される画素電極、有機光電変換膜、および前記共通電極接続用電極と接続される共通電極を、この順に積層して第2積層体を形成する第2膜積層処理を、前記第1態様を行う場合には前記所定の重畳数分、前記第2態様を行う場合には前記所定の重畳数分よりも1回多く、層間絶縁膜を積層する処理を間に挟んで、繰り返し行う第3工程と、
をこの順に行うことを特徴とする積層型撮像素子の製造方法。
【請求項2】
基板上において、格子状に区画される各画素の周辺部の所定位置に配される信号読出しに係るTFT素子、第1絶縁膜、共通電極接続用電極および第2絶縁膜を、この順に積層して第1積層体を形成する第1工程と、
前記各画素の中央部に開口部を穿設するとともに、前記各画素の境界に沿った、前記TFT素子を含む前記周辺部である境界領域は穿設せずに残して画素分離壁とする第2工程と、
穿設された前記開口部に犠牲層材料を埋め込む第3工程とを、この順に、
前記第1積層体の所定の重畳数分だけ繰り返し行う第1態様、または該第1積層体の所定の重畳数分だけ繰り返し行った後、前記第1工程における前記TFT素子の積層処理を1層だけ行う第2態様を実行し、
さらに、前記開口部に逐次重畳された前記犠牲層材料を排出し、その後、該開口部に、前記TFT素子と接続される画素電極、有機光電変換膜、および共通電極を、この順に積層して第2積層体を形成する第4工程を、前記第1態様を行う場合には前記所定の重畳数分、前記第2態様を行う場合には前記所定の重畳数分よりも1回多く、繰り返し行い、
前記第4工程を繰り返し行う場合に、前記共通電極を積層する処理と前記画素電極を積層する処理を行う間に、前記共通電極上に層間絶縁膜を積層する処理を行うことを特徴とする積層型撮像素子の製造方法。
【請求項3】
前記画素分離壁内において前記TFT素子に接続された接続電極と接続される高さ位置に前記画素電極を形成することを特徴とする請求項1または2に記載の積層型撮像素子の製造方法。
【請求項4】
重畳される前記第1積層体毎に、前記共通電極接続用電極を介して、互いに隣接する前記画素の前記共通電極同士を互いに電気的に接続することを特徴とする請求項1~3のうちいずれか1項に記載の積層型撮像素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型撮像素子の製造方法に関し、詳しくは、有機光電変換膜を複数層積層して設け、TFTからの画素信号を画素電極を介して基板上の読出し回路に送出する画素構成とされた積層型撮像素子の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
垂直色分離型の撮像素子は、従来のカラーフィルタを用いた単板式のカラー撮像素子とは異なり、固有の波長域の光を吸収して電荷に変換する有機光電変換膜を3層(RGB)重ねた構造を備えている。一般に垂直色分離型の撮像素子は、入射光を効率よく利用することができるため、高解像度・高感度な小型カラーカメラへの適用が期待されている。有機光電変換膜を用いた垂直色分離型の撮像素子として、これまで種々のデバイス構造が提案されている。
【0003】
この中で、透明な酸化物半導体TFT(薄膜トランジスタ)を各光電変換部に形成し、各々の光電変換部で生じた電荷を独立に読出す手法も提案されている(下記特許文献1、2、3を参照)。
【0004】
また、このような積層型撮像素子においては、一般に、各層間にガラス基板を介して積層するようにしているが、各層間にガラス基板が介在するために画素サイズに比べて光電変換部の厚みが大きくなってしまい、十分な解像度が得られないので、有機光電変換膜を層間絶縁膜を介して直接積層する構造が実用性の面からも有望視されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-51115号公報
【文献】特許第5102692号公報
【文献】特許第5572108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特性に優れた酸化物半導体TFTの形成には高温プロセスが必要となるが、この酸化物半導体TFTの高温処理による影響が、それまでに形成した、熱に弱い各有機光電変換膜等の有機膜に対して及ぶことを、極力防止することが肝要である。
しかしながら、上述したような層間絶縁膜のみを介して各光電変換部を直接積層する素子では、酸化物半導体TFTの高温処理による熱の影響が有機光電変換膜等の有機膜にどうしても及びやすく、有機光電変換膜等の有機膜の特性が大幅に劣化してしまう。すなわち、有機光電変換膜における機能低下や膜剥離を引き起こすという問題があった。
【0007】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、TFT素子を製造する際の高熱処理によっても、有機光電変換膜がダメージを受けることがなく、有機光電変換膜の機能低下や膜剥離を防止し得る積層型撮像素子の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の目的を達成するため、本発明の積層型撮像素子の製造方法は以下のような構成とされている。
まず、本発明の第1の積層型撮像素子の製造方法は、
基板上において、格子状に区画される各画素内の周辺部の所定位置に配される信号読出しに係るTFT素子、第1絶縁膜、共通電極接続用電極および第2絶縁膜を、この順に積層して第1積層体を形成する第1膜積層処理を、該第1積層体の所定の重畳数分だけ繰り返し行う第1態様、または該第1積層体の所定の重畳数分だけ繰り返し行った後、さらに前記TFT素子を積層する第2態様を実行する第1工程と、
前記各画素の中央部に開口部を穿設するとともに、前記各画素の境界に沿った、前記TFT素子を含む前記周辺部である境界領域は穿設せずに残して画素分離壁とする第2工程と、
穿設された前記開口部に、前記TFT素子と接続される画素電極、有機光電変換膜、および前記共通電極接続用電極と接続される共通電極を、この順に積層して第2積層体を形成する第2膜積層処理を、前記第1態様を行う場合には前記所定の重畳数分、前記第2態様を行う場合には前記所定の重畳数分よりも1回多く、層間絶縁膜を積層する処理を間に挟んで、繰り返し行う第3工程と、
をこの順に行うことを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明の第2の積層型撮像素子の製造方法は、
基板上において、格子状に区画される各画素の周辺部の所定位置に配される信号読出しに係るTFT素子、第1絶縁膜、共通電極接続用電極および第2絶縁膜を、この順に積層して第1積層体を形成する第1工程と、
前記各画素の中央部に開口部を穿設するとともに、前記各画素の境界に沿った、前記TFT素子を含む前記周辺部である境界領域は穿設せずに残して画素分離壁とする第2工程と、
穿設された前記開口部に犠牲層材料を埋め込む第3工程とを、この順に、
前記第1積層体の所定の重畳数分だけ繰り返し行う第1態様、または該第1積層体の所定の重畳数分だけ繰り返し行った後、前記第1工程における前記TFT素子の積層処理を1層だけ行う第2態様を実行し、
さらに、前記開口部に逐次重畳された前記犠牲層材料を排出し、その後、該開口部に、前記TFT素子と接続される画素電極、有機光電変換膜および共通電極を、この順に積層して第2積層体を形成する第4工程を、前記第1態様を行う場合には前記所定の重畳数分、前記第2態様を行う場合には前記所定の重畳数分よりも1回多く、繰り返し行い、
前記第4工程を繰り返し行う場合に、前記共通電極を積層する処理と前記画素電極を積層する処理を行う間に、前記共通電極上に層間絶縁膜を積層する処理を行うことを特徴とするものである。
【0010】
また、前記第3工程において、前記画素分離壁内において前記TFT素子に接続された接続電極と接続される高さ位置に前記画素電極を形成することが好ましい。
さらに、重畳される前記第1積層体毎に、前記共通電極接続用電極を介して、互いに隣接する前記画素の前記共通電極同士を互いに電気的に接続することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の積層型撮像素子の製造方法のポイントは、まず、第1工程において、光電変換部を形成することなく、高熱処理を用いて製造することが特性を向上させる上で要求されるTFT素子を、格子状に形成される各画素毎に形成し、次に、第2工程において、各画素の中央部に、光電変換部が配される開口部を穿設し、さらに第3工程において、この開口部に、画素電極、有機光電変換膜および共通電極を積層した光電変換部を形成する、ことにある。
【0013】
上述した第1の積層型撮像素子の製造方法は、各工程の処理を、各々構築する層数分だけ、纏めて行う手法であり、一方、上述した第2の積層型撮像素子の製造方法は、各工程の処理を、1層ずつ行い、これを構築する層数分だけ繰り返して行う手法であるが、いずれの手法においても、第1工程において、TFT素子を形成する処理を行い、その後の第3工程において、有機光電変換膜を含む光電変換部を形成するようにしている。これにより、TFT素子の特性を良好にするために全ての層のTFT素子を加熱して高温処理を行っても、その後に形成される光電変換部には全く影響せず、加熱により耐熱性が低い光電変換膜の特性が劣化するのを防止することができる。
また、上記のように光電変換部を形成する各有機層の形成後の高温加熱処理が不要であるためこの有機層の機能低下のみならず、層構造の破壊や膜剥がれを防止することも可能である。
さらに、各画素の光電変換部を形成する際に、各画素の各層は、画素分離壁によって分断されるため、エッチング処理を行う必要がなく、光電変換部を構成する有機層等がエッチング処理により悪影響を受けることがない。
【0014】
また、本発明の積層型撮像素子によれば、格子状に配列された画素の境界に沿って構築された画素分離壁は画素の境界領域に配設され、この画素分離壁内または画素分離壁上に配されたTFT素子は、画素の境界領域に位置する。これに対して有機光電変換膜を含む光電変換部は画素分離壁により取り囲まれた画素中央領域に配置されている。
このように、TFT素子と、有機光電変換膜等の有機層を含む光電変換部は、配置される領域が明確に分離するように構成されている。
したがって、上記画素分離壁内に埋設されたTFT素子と光電変換部とは別個独立にタイミングを変えて形成することが可能である。その際に、TFT素子に接続される接続電極が、対応する画素電極と接触し得るよう、画素分離壁の端面部から露出するように配されているので、上記両者を別個独立にタイミングを変えて形成しても、TFT素子と画素電極の電気的な接続が問題となることもない。
これにより、TFT素子の特性を良好にするために高温処理により製造しても、その後において、光電変換部の製造を行うことが可能となるので、上記高温処理の光電変換部への影響を防止することができ、加熱による有機光電変換膜等の有機膜の特性劣化や層構造の破壊、さらには膜剥がれ等を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る積層型撮像素子の概念的な断面構造を示す概略断面図である。
【
図2A】本発明の実施形態に係る積層型撮像素子の製造方法の工程(第1、2工程:その1)を示す概略斜視図である((a)~(d))。
【
図2B】本発明の実施形態に係る積層型撮像素子の製造方法の工程(第1、2工程:その2)を示す概略斜視図である((e)~(f))。
【
図2C】本発明の実施形態に係る積層型撮像素子の製造方法の工程(第1、2工程:その3)を示す概略斜視図である((g)~(h))。
【
図2D】本発明の実施形態に係る積層型撮像素子の製造方法の工程(第1、2工程:その4)を示す概略斜視図である((i)~(j))。
【
図3A】本発明の実施形態に係る積層型撮像素子の製造方法の工程(第3工程:その1)を示す概略断面図である((a)~(c))。
【
図3B】本発明の実施形態に係る積層型撮像素子の製造方法の工程(第3工程:その2)を示す概略断面図である((d)~(e))。
【
図3C】本発明の実施形態に係る積層型撮像素子の製造方法の工程(第3工程:その3)を示す概略断面図である((f)~(g))。
【
図3D】本発明の実施形態に係る積層型撮像素子の製造方法の工程(第3工程:その4)を示す概略断面図である((h)~(j))。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態に係る積層型撮像素
子の製造方法について図面を用いて説明する。
(積層型撮像素子の構成)
図1は本実施例に係る積層型撮像素子1の縦断面図を示すものである。
本素子1は、第1~第3の撮像層(以下第1~第3層と称する)20A、30A、40Aからなる3つの撮像層(RGBカラー撮像素子を想定)を積層してなり、このうち画素分離壁65と、この画素分離壁65によって4方を囲まれた画素領域11とからなる画素を、格子状に配列されてなる(ただし、画素分離壁65は、隣接する画素同士で共用する構成とされている)。
また、各画素は回路基板22上に形成されている。
【0017】
また、本実施例では、画素分離壁65は、第1層20Aと第2層30Aについては形成されているが、第3層40Aについては第3TFT48および第3接続電極43についてのみ形成されている。
第1層20Aと第2層30Aの画素分離壁65は、下方から順に、TFT28、38と接続電極23、33、絶縁膜A(25A、35A)、横断電極(共通電極接続用電極)26、36、および絶縁膜B(25B、35B)を積層してなる。なお、光は図面上方向から入射することを想定している。
上記TFT28、38は、画素選択処理、信号増幅処理および信号リセット処理等の信号の読出し処理に必要な機能を備えており、1画素の1層辺り、1個のみならず複数個形成されていてもよい。
【0018】
一方、画素領域11においては、第1層20A、第2層30Aおよび第3層40Aの各々について、下方から順に、下部電極(画素電極)21、31、41、有機光電変換膜20、30、40、および上部電極(共通電極)24、34、44を積層してなる光電変換部が形成されている。また、各光電変換部の間には、これらの光電変換部を互いに絶縁した状態とするための層間絶縁膜27、37が配されている。
なお、
図1には示されていないが(
図2A等を参照)、TFTと同一平面上に、外部からの入力信号や、各画素で読み出された信号を外部に取り出すための配線電極29、39、49が形成されている。この配線電極29、39、49は、必要に応じて、1画素あたり複数本のマトリクス状となるように形成される。
また、第3TFT48および第3接続電極43の上部には保護膜75が積層されている。
【0019】
また、各層において、TFT28、38、48および接続電極23、33、43は、対応する下部電極21、31、41と同じ高さとなるように調整されており、TFT28、38、48が接続電極23、33、43を介して下部電極21、31、41と電気的に接続されるように形成されている。
TFT28、38は画素分離壁65内に収納され、TFT48は画素分離壁65の上部に形成されるとともに、画素分離壁65の上部に積層される保護膜75内に埋設される。また、これらTFT28、38、48と各々同一平面上に形成された接続電極23、33、43のうち、接続電極23、33は画素分離壁65の内側壁面(端面)から露出するように形成され、一方、接続電極43は、画素分離壁65の内側壁面(端面)の上方延長上の保護膜75の内側壁面の端面から露出するように形成される。これにより、TFT28、38、48と下部電極21、31、41との電気的な接続は接続電極23、33、43を介して円滑に行うことができる。
【0020】
また、画素分離壁65内の横断電極26、36は、対応する上部電極24、34と同じ高さとなるように調整されており、この横断電極26、36を介して隣接する画素における、対応する上部電極24、34同士を互いに電気的に接続するように形成されている。これにより、基本的には、積層型撮像素子1の全ての画素の上部電極24、34が、この横断電極26、36によって接続されることになる。
【0021】
また、本実施例の変型例としては、最下層として回路基板22上にCMOSイメージセンサを配設し、その上部に、上記実施例と同様に画素分離壁65を形成した後、下部電極21、31と上部電極24、34とに有機光電変換膜20、30が挟持されてなる2つの光電変換部を順次積層してなる積層型撮像素子が挙げられる。このような積層型撮像素子も上記実施例の積層型撮像素子1と、各光電変換部の作用効果において同様とすることができる。
【0022】
また、上記有機光電変換膜20、30、40は、暗電流の低減や有機光電変換膜の量子効率向上のために、電子輸送材料、正孔輸送材料、電子注入阻止(電子ブロッキング)材料、および正孔注入阻止(正孔ブロッキング)材料等を、有機光電変換材料に混合または積層することにより形成してもよい。本願明細書においてはそれら全てを含めて有機光電変換膜20、30、40として表現するものとする。
【0023】
上記回路基板22には、薄膜トランジスタ、AD変換回路、DA変換回路、およびメモリ等の、有機撮像素子の画素電極から電荷を読み出すための回路やその周辺回路、CMOSイメージセンサ等(ここではそれらの総称として読出し回路と称するものとする)が形成されており、Si基板を用いることで微細化が可能である。基板はSiに限らず種々の材料を適用することができる。なお、本願明細書では、読出し回路が形成されているか否かに関わらず、その上に光電変換部を形成するための土台となる部分を、回路基板と称するものとする。
【0024】
前述したように、回路基板22上に、第1層20A、第2層30A、および第3層40Aが、順次積層された構造とされており、第3層40Aの上部に、図示されない保護層を設けることによって、各有機光電変換膜20、30、40の劣化等を防ぐことができる。
【0025】
ここで、第1下部電極21は素子外部を経て回路基板22の読出し回路と接続するようにしてもよいし、この第1下部電極21の下部に形成されたビアにより、読出し回路と接続するようにしてもよい。
【0026】
第1~3層20A、30A、40Aは、各々、下部電極21、31、41と上部電極24、34、44の間に電圧を印加し、有機光電変換膜20、30、40で発生した電荷を下部電極21、31、41から、読出し回路に出力する。この電荷が、適宜、演算増幅されることで、所定形式の画像信号として取り出される。
【0027】
本実施例に係る積層型撮像素子1によれば、上述したように、高温処理により形成されたTFT28、38、48と、有機光電変換膜20、30、40等の有機膜の配置領域が明確に分離されており、これら両者の製造を順次行うことが可能であることから、TFT28、38、48製造時の高熱処理の影響を、有機光電変換膜20、30、40等の有機膜に及ぼさずに製造することが可能となる。
【0028】
(積層型撮像素子の製造方法)
次に、本実施例に係る積層型撮像素子1の製造方法について説明する。基本的には、一般に半導体製造プロセスで行われている汎用的な加工技術により形成することが可能である。本実施例方法においては、3層構造(RGBの3層構造を想定)の積層型撮像素子1を製造する例を用いて説明するが、4層以上の撮像素子であっても2層の撮像素子であっても、下記と同様の製造方法を適用することが可能である。
【0029】
本実施例においては、回路基板22上において、格子状に区画される各画素の周辺部の所定位置に配されるTFT28、38、48、絶縁膜A(25A、35A)、横断電極26、36、および絶縁膜B(25B、35B)を、この順に積層する第1膜積層処理を、2層分だけ繰り返し行う第1工程と、各画素の中央部に開口部11を穿設するとともに、各画素の境界に沿った、TFT28、38、48を含む境界領域は穿設せずに残して画素分離壁65とする第2工程と、穿設された開口部11に、TFT28、38、48と接続される下部電極21、31、41、有機光電変換膜20、30、40、および横断電極26、36と接続される上部電極24、34を、この順に積層する第2膜積層処理を3層分だけ繰り返し行う第3工程と、をこの順に行う。なお、第3層目は全画素の範囲に亘り前記第3工程のみを行う。
【0030】
図2A~
図3Dは本実施例に係る積層型撮像素子1の製造工程を製造順に示すものである。そのうち、斜視図で示す
図2A~
図2Dの(a)~(j)は、上記第1工程および上記第2工程を順に説明するものであり、縦断面図で示す
図3A~
図3Dの(a)~(j)は、上記第3工程を順に説明するものである。なお、
図1の積層型撮像素子1の縦断面図は、
図2D(j)の図面を用いて説明すると、図面横方向に配列された第3接続電極43を結ぶ線に沿い、かつ回路基板22に垂直となる断面を示すものである。ただし、
図2D(j)に示す状態から、さらに
図3A~Dに示す処理がなされた後の状態における断面を示すものである。
【0031】
まず、
図2A(a)に示すように、回路基板22上に、第1層20Aの第1TFT28、この第1TFT28を、後述する第1下部電極21に接続する第1接続電極23、および第1配線電極29を形成する。これらの形成の順序に制限はなく、必要に応じて絶縁膜等を形成してもよい。この上に第1絶縁膜A(25A)を形成する(
図2A(b))。これにより、画素分離壁65を構成する第1絶縁膜A(25A)が画素全面に形成される。
第1絶縁膜A(25A)は、構成する材料に応じて既存の成膜技術を適宜用いて行うことが可能である。一般的には蒸着法やスパッタ法、CVD法、ALD法、塗布成膜技術(例えばスピンコーティング法、インクジェット法、フレキソ印刷法、ディップコーティング法、ロールコーティング法、バーコーティング法等)等が挙げられるが、これらに限られるものではない。
【0032】
なお、
図3A(b)に示す、第1層20の第1下部電極21を、回路基板22上に形成し、パターニングしてから、上述した第1工程の製造処理を行ってもよい。
次に、上記第1絶縁膜A(25A)の上に、第1層20Aの第1横断電極26を形成する(
図2A(c))。さらに、この第1横断電極26の上に、画素分離壁65の構成要素となる、第1層20Aの第1絶縁膜B(25B)を形成する(
図2A(d))。
【0033】
次に、第2層30Aの第2TFT38、この第2TFT38を、後述する第2下部電極31に接続する第2接続電極33、および第2配線電極39を形成する(
図2B(e))。この上に第2絶縁膜A(35A)を形成する(
図2B(f))。これにより、画素分離壁65を構成する第2絶縁膜A(35A)が画素全面に形成される。
基本的には、上方から見て、第1層20Aにおける各部材配置と同様にする。
【0034】
次に、上記第2絶縁膜A(35A)の上に、第2層30Aの第2横断電極36を形成する(
図2C(g))。さらに、この第2横断電極36の上に、画素分離壁65の構成要素となる、第2層30Aの第2絶縁膜B(35B)を形成する(
図2C(h))。
なお、この第2層30Aは、上述した第1層20Aの製造プロセスと同様の製造プロセスにより行われるため詳細は省略する。
【0035】
次に、上述した第2層30Aの
図2B(e)に示す処理と同様に、第3TFT48、この第3TFT48を、後述する第3下部電極41に接続する第3接続電極43、および第3配線電極49を形成する(
図2D(i))。
その後、
図2D(j)に点線で表される画素領域(開口部)11に相当するエリア(各画素の中央部)をエッチングし、このエリアの各層20A、30Aの絶縁膜A(25A、35A)、横断電極26、36および絶縁膜B(25B、35B)を除去する。溶液の浸透などを防ぐためには、ドライエッチングが好ましいが、ウェットエッチングとすることも可能である。
【0036】
これにより、画素領域(開口部)11の周囲に形成された画素分離壁65の内壁面には第1層20Aと第2層30Aの下部電極21、31をTFT28、38と接続させるための接続電極23、33、および隣接する各画素の第1層20Aと第2層30Aの上部電極24、34同士を電気的に接続する横断電極26、36の端面が露出した状態となる(
図2D(j))。
なお、
図2D(j)等においては、接続電極23、33および横断電極26、36端面のみならず、各配線電極29、39の端面も露出していることが表されている。
【0037】
第1絶縁膜B(25B)の成膜は、第1絶縁膜A(25A)と同様に、構成する材料に応じて既存の成膜技術を適宜用いて行うことが可能である。一般的には蒸着法やスパッタ法、CVD法、ALD法、塗布成膜技術(例えばスピンコーティング法、インクジェット法、フレキソ印刷法、ディップコーティング法、ロールコーティング法、バーコーティング法等)等が挙げられるが、これらに限られるものではない。
【0038】
また、第1横断電極26の形成は、例えば電極材料として金属を用いる場合には、蒸着やスパッタ等一般的な成膜手法を適用することができる。また塗布可能な導電材料を用いる場合には、一般的な塗布成膜技術(例えばスピンコーティング法、インクジェット法、フレキソ印刷法、ディップコーティング法、ロールコーティング法、バーコーティング法等)を適用することが可能であり、さらに塗布成膜を行った際には、必要に応じて加熱・乾燥プロセスを適用することも可能である。
【0039】
次に、
図3A~
図3Dの(a)~(j)を用いて、上記第3工程を順に説明する。
まず、
図3A(a)に示す、2つの画素分離壁65の間の領域(画素領域(開口部)11)内の回路基板22上に、第1層20Aの第1下部電極21を形成する(
図3A(b))。このとき、第1下部電極21は、画素分離壁65の内壁面に露出する第1接続電極23と接続されるように、すなわち、同一高さレベルとなるように膜厚が制御される。なお、画素分離壁65の上部にも第1下部電極21の材料が堆積するが、これにより第1下部電極21が画素分離壁65部分で分断されることになるため、これにより画素領域11についてのパターニングされることになる。
【0040】
第1下部電極21の成膜手法は電極材料に応じた適切な手法により行われ、例えば、金属を用いた場合には蒸着やスパッタ等一般的な成膜手法を適用することができる。また塗布可能な導電材料を用いた場合には、一般的な塗布成膜技術(例えばスピンコーティング法、インクジェット法、フレキソ印刷法、ディップコーティング法、ロールコーティング法、バーコーティング法等)を適用することが可能であり、さらに塗布成膜を行った際には、必要に応じて加熱・乾燥プロセスを適用することも可能である。
【0041】
その後、第1層20Aの第1有機光電変換膜20を形成し(
図3A(c))、第1層20Aの第1上部電極24を形成する(
図3B(d))。このとき、第1上部電極24は画素分離壁65の内壁面に露出する第1横断電極26と接続されるように、すなわち、これら2つの電極24、26の高さレベルが合わせられるように有機光電変換膜20、および第1上部電極24の膜厚が適切に制御される。第1下部電極21と同様に、画素分離壁65により隣接する画素の第1上部電極24同士が分断される。
【0042】
この後、上記第1上部電極24の上部に第1層間絶縁膜27を、その上面が第1絶縁膜B(25B)と同じ高さになるように形成する。なお、第1層間絶縁膜27も画素分離壁65により画素ごとに分断される(
図3B(e))。
【0043】
第1有機光電変換膜20の成膜手法は、第1有機光電変換膜20を構成する材料に応じて適宜選択することが可能であり、例えば蒸着法や塗布成膜技術(例えばスピンコーティング法、インクジェット法、フレキソ印刷法、ディップコーティング法、ロールコーティング法、バーコーティング法等)を用いて形成される。また塗布成膜を行った際には、必要に応じて加熱・乾燥プロセスを適用することも可能である。
【0044】
また、第1上部電極24の成膜手法は、上述した第1下部電極21と同様である。
この後、上記第1層間絶縁膜27上に第2層30Aの各層(第2下部電極31、第2有機光電変換膜30、第2上部電極34)を、第1層20Aの各層と同様に形成する。また、その上に第2層間絶縁膜37を第1層間絶縁膜27と同様に形成する(
図3C(f))。
次に画素分離壁65の上部に堆積した下部電極21、31、有機光電変換膜20、30、上部電極24、34、および層間絶縁膜27、37の各材料を除去する(
図3C(g))。ここでは下部電極21、31の材料をエッチング液により除去することにより、その上の各層を同時に除去することが可能である(リフトオフ)。ただし、その際に、第3層40Aの電極材料もエッチング液で除去されないように、第3層40Aの電極材料を適切な保護層で覆っておくか、第1層、第2層の電極材料を除去するエッチング液によってはエッチングされない材料を適用することにより、リフトオフ工程で除去されないようにする必要がある。
なお、画素分離壁上の堆積物を複数回に分けて除去することも可能である。例えば、
図3B(e)の工程の後に、画素分離壁上の第1層目の堆積物を全てリフトオフ等で除去することにより、第2層の積層をより精度高く行うことができる。
【0045】
この後、第2層間絶縁膜37上に第3層40Aの各層(第3下部電極41、第3有機光電変換膜40、第3上部電極44)を各画素領域11に形成する(
図3D(h)、(i)、(j))。上述した保護膜75を形成した場合には、第3接続電極43と第3下部電極41との接続が適切になされるように、保護膜75のパターニング等を適宜行う。
【0046】
最上層とされる第3層40Aについては、第3有機光電変換膜40および第3上部電極44をパターニングする必要はないため、画素全体に第3有機光電変換膜40および第3上部電極44を積層する(
図3D(i)、(j))。
そして、膜積層処理の最後の段階において、第3上部電極44の上部に、図示されない保護層等を適宜形成することにより、積層構造の形成プロセスが完了する。
【0047】
この保護層は複数の材料を積層して形成することも可能である。保護層として保護フィルムや透明基板等を貼り付ける構成とする場合には、接着性の樹脂等を成膜した後に透明基板や保護フィルムを貼り付けてもよいし、接着剤付きの保護フィルムを直接貼り付けてもよい。
【0048】
(積層型撮像素子の製造方法の変更態様)
本発明の積層型撮像素子の製造方法としては、上記実施例のものに替えて、下記に示すような変更態様を採用することも可能である。
すなわち、回路基板22上において、格子状に区画される各画素の周辺部の所定位置に配されるTFT28、38、絶縁膜A(25A、35A)、横断電極26、36、および絶縁膜B(25B、35B)を、この順に積層して第1積層体を形成する第1工程と、各画素の中央部に開口部11を穿設するとともに、各画素の境界に沿った、TFT28、38を含む境界領域は穿設せずに残して画素分離壁65とする第2工程と、穿設された開口部11に犠牲層材料を埋め込む第3工程とを、この順に、第1積層体の所定の重畳数分だけ繰り返し行う第1態様、または第1積層体の上記所定の重畳数分だけ繰り返し行った後、第1工程におけるTFT48の積層処理を1層だけ行う第2態様を実行し、さらに、開口部11に逐次重畳された犠牲層材料を排出し、その後、開口部11に、TFT28、38、48と接続される下部電極21、31、41、有機光電変換膜20、30、40および上部電極24、34、44を、この順に積層して第2積層体を形成する第4工程を、上記第1態様を行う場合には上記所定の重畳数分、上記第2態様を行う場合には上記所定の重畳数分よりも1回多く、繰り返し行い、さらに、第4工程を繰り返し行う際に、上部電極24、34を積層する処理と下部電極31、41を積層する処理を行う間に、この上部電極24、34上に層間絶縁膜27、37を積層する処理を行う、との手法をとることが可能である。
なお、上記犠牲層材料は、構成要素としての他の積層膜の材量を溶解しないエッチング液等によって溶解、排出されるものが好ましく、例えば、塗布型有機膜等が、この後、この開口部11に積層される各有機膜との関係で好ましい。
また、上記犠牲層材料を、開口部11に埋め込む際に画素分離壁65上にも付着されたような場合には、これを軽度に研磨する処理を行うようにしてもよい。
このような変更態様では、上記犠牲層材料をエッチングする際に、画素分離壁を構成する材料に影響を与えないエッチング液を適用することが可能となる。また、この変更態様によっても、上記実施例に記載の積層型撮像素子1の製造方法と同様の作用効果を奏することが可能である。
【0049】
本発明の積層型撮像素子の製造方法としては、上述した実施形態のものに限られるものではなく、その他の種々の態様の変更が可能である。
例えば、紫外線や赤外線に感度を持つ光電変換層を適用した撮像素子、3層以上の撮像素子、あるいは2層の光電変換層のみを用いた撮像素子等、種々の構成が考えられる。
【0050】
また、例えば、上記撮像素子をカラー画像撮像素子に適用した場合には、2つの光電変換部と1つのCMOSイメージセンサを積層した構成のものであってもよいし、3つの光電変換部を積層した構成のものであってもよく、いずれをRGBの各色光用に割り当ててもよい。さらに、4つ以上の有機光電変換膜を積層し、G光用に2つ以上の有機光電変換膜を、R光用とB光用に各々1つの有機光電変換膜を割り当てるようにしてもよい。また有機光電変換膜に可視光以外の領域に感度を持つ材料を適用することも可能である。
【0051】
また、上記実施例においては、最上層については、画素分離壁を形成しないようにしているが、最上層についても、それ以下の層と同様に画素分離壁を形成してもよい。
また、上記有機光電変換膜を下層に用い、光入射側の最上層は無機光電変換膜としたハイブリッドのデバイス構成とすることも可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 積層型撮像素子
11 画素領域
20 第1有機光電変換膜
20A 第1撮像層(第1層)
21 第1下部電極
22 回路基板
23 第1接続電極
24 第1上部電極
26 第1横断電極
27 第1層間絶縁膜
30 第2有機光電変換膜
30A 第2撮像層(第2層)
31 第2下部電極
33 第2接続電極
34 第2上部電極
36 第2横断電極
37 第2層間絶縁膜
40 第3有機光電変換膜
40A 第3撮像層(第3層)
41 第3下部電極
43 第3接続電極
44 第3上部電極
65 画素分離壁
75 保護膜