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特許7574067サブサンプリングに起因した歪みの下での低コヒーレンス光干渉法テクニックを用いた本体と物体の表面との間の分離距離を決定する方法およびシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】サブサンプリングに起因した歪みの下での低コヒーレンス光干渉法テクニックを用いた本体と物体の表面との間の分離距離を決定する方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/14 20060101AFI20241021BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20241021BHJP
   B23K 26/21 20140101ALI20241021BHJP
   B23K 26/38 20140101ALI20241021BHJP
   B23K 26/34 20140101ALI20241021BHJP
【FI】
G01B11/14 G
B23K26/00 M
B23K26/21 A
B23K26/38
B23K26/21 Z
B23K26/34
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020202027
(22)【出願日】2020-12-04
(65)【公開番号】P2021107808
(43)【公開日】2021-07-29
【審査請求日】2023-11-14
(31)【優先権主張番号】102019000023202
(32)【優先日】2019-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】508138955
【氏名又は名称】アディジェ ソシエタ ペル アチオニ
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(74)【代理人】
【識別番号】100100479
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 三喜夫
(72)【発明者】
【氏名】シモーネ・ドナデッロ
(72)【発明者】
【氏名】バルバラ・プレヴィターリ
(72)【発明者】
【氏名】ダニエレ・コロンボ
【審査官】山▲崎▼ 和子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0059350(US,A1)
【文献】特開2009-047527(JP,A)
【文献】特開2011-021921(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
9/00-9/10
G01N 21/00-21/01
21/17-21/61
B23K 26/00
B23K 26/21
B23K 26/38
B23K 26/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体または材料と、前記物体または材料を加工または測定するための手段との間の分離距離を決定する方法であって、
コヒーレンス光放射線の測定ビームを発生し、前記測定ビームを、物体に近接した前記加工または測定手段の少なくとも1つの端部を経由して前記物体に向けて導いて、物体に近接した加工または測定手段の前記端部を経由して物体から反射または拡散した測定ビームを、第1入射方向に沿って光干渉計センサ手段に向けて導くステップであって、測定ビームは、個々の光源から、光干渉計センサ手段までの測定光学経路を進行し、光干渉計センサ手段は、前記光源と、物体に近接した加工または測定手段の端部との間の第1セクション、および、物体に近接した加工または測定手段の前記端部と、個々の予め定めた不変の幾何学的長さを有する光干渉計センサ手段との間の第2セクションを含む、ステップと、
・前記低コヒーレンス光放射線の基準ビームを発生し、前記基準ビームを、前記測定ビームの第1入射方向に対して予め定めた入射角の第2入射方向に沿って前記光干渉計センサ手段に向けて導くステップであって、基準ビームは、物体に近接した加工または測定手段の端部と物体との間の距離が予め定めた公称分離距離に対応する公称動作条件で測定光学経路の光学長さと等価である光学長さの基準光学経路を進行する、ステップと、
・予め定めた照射軸に沿って、前記光干渉計センサ手段の共通入射領域上で測定ビームおよび基準ビームを重ね合わせるステップと、
・前記共通入射領域上で、前記照射軸に沿った測定ビームと基準ビームとの間の干渉縞パターンの位置を検出するステップであって、照射軸に沿ったその延長は、前記低コヒーレンス光放射線のコヒーレンス長に対応している、ステップと、
・測定光学経路と基準光学経路との間の光学長さの差を決定するステップであって、差は、前記共通入射領域の前記照射軸に沿った前記干渉縞パターンの位置の関数として、(a)物体に近接した加工または測定手段の端部で、加工または測定手段と物体の表面との間の現在の分離距離と、(b)予め定めた公称分離距離との間の差を示す、ステップと、を含み、
前記光干渉計センサ手段は、前記照射軸に沿った光検出器の配置を備え、
入射角は、前記干渉縞パターンの空間周波数が光検出器の空間周波数よりも大きくなるように制御され、
前記干渉縞パターンの空間周波数は、前記入射角の増加とともに増加し、サブサンプリングに起因した歪みの結果として、より低い空間周波数で干渉縞パターンの空間的復調を生じさせ、測定光学経路と基準光学経路との間で決定できる光学長さの最大差が増加するようにした、方法。
【請求項2】
前記干渉縞パターンの空間周波数は、光検出器の空間周波数の倍数とは異なり、好ましくは光検出器の前記空間周波数の半整数倍に近接している、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
光検出器の前記配置は、光検出器のリニア配置である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
光検出器の前記配置は、光検出器の2次元配置である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
照射軸に沿った干渉縞パターンの光放射線の強度の包絡線の位置は、前記干渉縞パターンの光放射線の強度の包絡線の固有の位置である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記干渉縞パターンの光放射線の強度の包絡線の固有の位置は、前記光放射線の強度の包絡線のピークまたは最大の位置である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
入射領域の前記照射軸は、前記入射角によって定義される平面と前記光干渉計センサ手段の検知面との間の交点によって決定される、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
測定光学経路および基準光学経路は、対応する光学エレメントを含み、
基準光学経路は、測定光学経路に介在する物体に対応する反射戻りエレメントを含み、
光減衰手段が、物体によって反射した測定光放射線の強度に対して、前記反射戻りエレメントによって反射した基準光放射線の強度をバランスさせるように構成される、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記測定光学経路および前記基準光学経路が共通の光源に由来し、ビーム分割手段を用いて分離され、物体および前記反射戻りエレメントに別個にそれぞれ導かれ、検出光学経路において収集され、
検出光学経路では、測定ビームは基準ビームから分離しており、前記測定ビームおよび前記基準ビームは、光干渉計センサ手段の前記共通入射領域に向かって制御可能な向きで方向付けられ、制御可能な向きは、測定ビームと基準ビームとの間の入射角を決定する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記加工または測定手段は、一連の加工エリアを含むワークピースまたは材料上の加工軌道に沿って案内される高出力加工レーザビームを用いて動作するワークピースまたは材料のレーザ加工のための機械の加工ヘッドによって搬送され、
前記物体は、前記加工エリアにおけるワークピースまたは材料の表面である、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
物体に近接した加工または測定手段の端部は、ワークピースのレーザ切削、穴あけまたは溶接のための機械の加工ヘッド内のアシストガスの流れを分配するため、またはレーザによる前駆体材料から3次元構造の積層造形のためのノズルであり、
測定ビームは、前記ノズルを経由して案内される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
物体に近接した加工または測定手段の端部は、ワークピースのレーザ溶接のため、またはレーザによる前駆体材料から3次元構造の積層造形のための機械の加工ヘッド内の高出力加工レーザビームの出力である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
物体または材料と、前記物体または材料を加工または測定するための手段との間の分離距離を決定するシステムであって、
コヒーレンス光放射線の測定ビームを発生する手段と、
・前記測定ビームを、物体に近接した前記加工または測定手段の少なくとも1つの端部を経由して前記物体に向けて導いて、物体に近接した加工または測定手段の前記端部を経由して物体によって反射または拡散した測定ビームを、第1入射方向に沿って光干渉計センサ手段に向けて導くように構成された、前記測定ビーム伝搬用手段であって、測定ビームは、個々の光源から、前記光干渉計センサ手段までの測定光学経路を進行し、光干渉計センサ手段は、前記光源と、物体に近接した加工または測定手段の端部との間の第1セクション、および、物体に近接した加工または測定手段の前記端部と、個々の予め定めた不変の幾何学的長さを有する光干渉計センサ手段との間の第2セクションを含む、手段と、
・前記低コヒーレンス光放射線の基準ビームを発生する手段と、
・前記基準ビームを、前記測定ビームの第1入射方向に対して予め定めた入射角の第2入射方向に沿って前記光干渉計センサ手段に向けて導くように構成された、前記基準ビーム伝搬用手段であって、基準ビームは、物体に近接した加工または測定手段の端部と物体との間の距離が予め定めた公称分離距離に対応する公称動作条件で測定光学経路の光学長さと等価である光学長さの基準光学経路を進行する、手段と、を備え、
前記測定ビーム伝搬用手段および基準ビーム伝搬用手段は、予め定めた照射軸に沿って、前記光干渉計センサ手段の共通入射領域に測定ビームおよび基準ビームを重ね合わせるように構成され、
システムはさらに、
・前記共通入射領域上で、前記照射軸に沿った測定ビームと基準ビームとの間の干渉縞パターンの位置を検出する手段であって、照射軸に沿ったその延長は、前記低コヒーレンス光放射線のコヒーレンス長に対応している、手段と、
・測定光学経路と基準光学経路との間の光学長さの差を決定するように構成された処理手段であって、差は、前記共通入射領域の前記照射軸に沿った前記干渉縞パターンの位置の関数として、(a)物体に近接した加工または測定手段の端部で、加工または測定手段と物体の表面との間の現在の分離距離と、(b)予め定めた公称分離距離との間の差を示す、手段と、を備え、
記光干渉計センサ手段は、前記照射軸に沿った光検出器の配置を備え、
入射角は、前記干渉縞パターンの空間周波数が光検出器の空間周波数よりも大きくなるように制御され、
前記干渉縞パターンの空間周波数は、前記入射角の増加とともに増加し、サブサンプリングに起因した歪みの結果として、より低い空間周波数で干渉縞パターンの空間的復調を生じさせ、測定光学経路と基準光学経路との間で決定できる光学長さの最大差が増加するようにした、システム。
【請求項14】
請求項1~12のいずれかに記載の方法を実行するように構成され、工作機械とワークピースまたは材料の表面との間の分離距離を決定するための請求項13に記載のシステムを含むことを特徴とする、ワークピースまたは材料を加工するための工作機械。
【請求項15】
ワークピースまたは材料のレーザ加工のための機械であって、
加工ヘッドによって放出される高出力加工レーザビームを用いて動作し、
一連の加工エリアを含むワークピースまたは材料上の加工軌道に沿って案内され、
前記加工ヘッドと前記ワークピースまたは材料との間の相対位置を制御する手段を含み、
請求項1~12のいずれかに記載の方法を実行するように構成され、加工エリアにおいて、工作機械とワークピースまたは材料の表面との間の分離距離を決定するための請求項13に記載のシステムを含み、
前記加工ヘッドと前記ワークピースまたは材料との間の相対位置を制御する前記手段は、予め定めた処理設計および加工ヘッドとワークピースまたは材料の表面との間の決定した分離距離に従って動作する、機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般には工業的加工方法または測定方法に関し、より詳細には、物体または材料と本体(body)(例えば、前記物体または材料を加工するツールまたは測定する機器など)との間の分離距離を決定するための方法およびシステムに関する。
【0002】
他の態様によれば、本発明は、ピースまたは材料を加工する工作機械に関する。
【0003】
さらに他の態様によれば、本発明は、請求項15の前文に記載された、ピースまたは材料をレーザ加工する機械に関する。
【背景技術】
【0004】
本説明および下記請求項において、用語「物体」は、測定対象の完成品または加工対象のピース(部品)を意味する。工作機械、特にレーザ加工機械に適用した場合、用語「ピース」、そして好ましい実施形態では、「金属ピース」は、閉じた断面(例えば、中空の円形、長方形または正方形の形状)、または開いた断面(例えば、平坦な断面、またはL字状、C字状またはU字状の断面など)を有する、例えば、プレートまたは細長いプロファイル(輪郭)などの任意の製品を特定するために使用される。積層造形(additive manufacturing)における用語「材料」または「前駆体材料」は、レーザビームを用いて焼結または局所溶融の対象となる原料、一般にパウダー(粉末)を特定する。
【0005】
工業プロセスにおいて、遠くからそれを処理するために、例えば、放射線または作動流体を放出することによって、処理ツールが(それと接触することなく)物体または材料に接近するのが一般的である。測定器が、製品の製造プロセスの過程で処理中のピースまたは材料に接近したり、あるいは、処理プロセスの過程または終了時に、中断の際にその幾何学的特徴または物理的特性を検出するために完成品に接近したりすることも知られている。
【0006】
工業的加工方法の例として、材料、特にプレートおよび金属プロファイルのレーザ加工のプロセスにおいて、レーザ放射線は、多種多様な用途のための加熱ツールとして使用され、これは、レーザビームと処理対象のピースとの間の相互作用に関連するパラメータ、特にピースへのレーザビーム入射の体積当りのエネルギー密度、および相互作用時間間隔に依存する。
【0007】
例えば、金属ピースに長時間(数秒の範囲で)に低いエネルギー密度(表面mm当り数十Wのオーダー)を向けることによって、硬化プロセスが生じ、一方、同じ金属ピースにフェムト秒またはピコ秒の時間に高いエネルギー密度(表面mm当り数十MWのオーダー)を向けることによって、光アブレーションプロセスが生ずる。増加しているエネルギー密度および減少している処理時間の中間範囲では、これらのパラメータを制御することにより、溶接、切削、穴あけ、彫刻、マーキングのプロセスを実施することが可能になる。これらのプロセスは、プロセスの対象となるピースから遠く離れて動作する加工ヘッドからレーザビームを放射することによって生ずる。
【0008】
穴あけおよび切断による加工プロセスを含むいくつかのプロセスでは、レーザビームが材料と相互作用する処理領域でアシストガスの流れを発生することも必要であり、これは、溶融物を押し出す機械的機能、または燃焼を支援する化学的機能、または処理領域を取り囲む環境から遮蔽する技術的機能を有する。アシストガスの流れは、加工中のピースからある間隔で設置された特定のノズルからも放出される。
【0009】
積層プロセスにおいて、材料は、例えば、フィラメントの形態、またはアシストガスの流れのためにノズルから放出されるパウダーの形態でもよく、あるいは、代替としてパウダー床の形態で存在してもよい。従って、材料は、レーザ放射線によって溶融され、こうして前記材料の再凝固の後に3次元のモールドが得られる。
【0010】
材料のレーザ加工の分野において、レーザ切削、レーザ穴あけおよびレーザ溶接は、同じ機械によって実行可能なプロセスであり、この機械は、材料の少なくとも1つの加工面でプリセットされた横方向パワー分布を有する集束した高出力レーザビームを発生できる。典型的には1~10000kW/mmのパワー密度を有するレーザビームを発生し、材料に沿ってビームの入射方向および位置を制御し、必要に応じてアシストガスの流れの方向を制御する。材料に対して実施できる種々のタイプの加工間の相違は、実質的に、使用するレーザビームのパワーおよび、レーザビームと処理対象材料との間の相互作用時間に起因する。
【0011】
加工中のピースに対して動作する工作機械を図1に示す。
【0012】
図1は、加工対象の材料WPから分離距離dに配置された、工作機械(例えば、ピースまたは材料をレーザ加工するための機械)の加工及び/又は測定ヘッド10、および加工または測定を制御するための関連する電子ユニットECUを示す。参照符号12は、一般に、加工ツールまたは測定機器、例えば、機械加工のためのツール、作動流体を放出するノズル、硬化、溶接、切削、穴あけ、彫刻、マーキング、材料の写真アブレーションまたは焼結のための加工放射線(例えば、高出力レーザ放射線など)のための出力部、または測定プローブを示す。
【0013】
加工ツールまたは測定機器12は、機械全体を基準として、加工ヘッドの遠位部分、または処理されるピースまたは材料に対して近位端であると考えられ、これらの用語は両方とも本説明で使用している。
【0014】
レーザ加工機において、加工放射線の出力部または「ビーム出力部」は、加工レーザビームが外気に現われ、即ち、ヘッドの空間の外側で加工されるピースに向かって伝搬する加工ヘッドの部分であり、光学集光系またはその保護構造の端部でもよく、またはプロセスへのガスの供給を必要とする用途のためのアシストガスの流れを供給するためのノズルのテーパー端部でもよい。
【0015】
移動アクチュエータ手段14は、加工及び/又は測定ヘッド10に接続され、サーボモータ16を用いてプロセスを制御するためのユニットECUによって制御され、プロセスの機械的パラメータを制御するものであり、例えば、機械の特定の実施形態によって与えられた自由度に沿った加工ヘッドの移動を制御し、ピースまたは材料上のプログラムされた加工軌道Tに追従し、特にそのプロファイルまたは加工プロファイルに基づいてピースまたは材料の前後方向にZ軸に沿った移動のためである。
【0016】
加工または測定機器が、加工される物体または材料に接近する工業プロセスでは、加工または測定の結果は、加工機器と物体または材料との間の正しい距離に依存する。例えば、材料をレーザ加工する場合、特に金属材料のレーザ加工を制御して、前記材料をレーザで切削、穴あけまたは溶接する場合、あるいは、前駆体パウダー材料から予め定めた構造の積層造形を制御する場合、加工機器は、材料から制御された距離に保持されることが重要である。
【0017】
加工ヘッド10に装着された静電容量センサは、符号20で示しており、ピースまたは材料に近接する加工ヘッドの端部12と、ピースまたは材料WPの表面(加工されるピースまたは材料が金属または導電性である場合は基準電位に配置される)との間の静電容量の変動を検出するように構成される。センサ20によって検出された電気容量信号は、得られた電気容量の値に基づいて、加工ヘッドとピースまたは材料との間の分離距離を決定するようにプログラムされた関連コンピュータモジュール22(機械およびプロセスのパラメータの知識を有する)によって処理され、そしてそこからプロセス制御ユニットECUに転送され、フィードバックを用いて加工ヘッドの移動を制御する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
このテクニックは、金属ではない物体または材料を加工または測定する場合には不都合なことに適用できない。
【0019】
これは精度も不足しており、静電容量効果は、加工または測定機器の端部と、ピースまたは材料への対応する入射ポイントとの間に局所的に生ずるだけでなく、機器の端部および入射ポイントに近くにある、加工ヘッドおよびピースまたは材料の大きな表面の結果としても生ずるためである。ピースの表面の著しい曲線(正または負)の場合、加工ヘッドが局所表面に対して直交しない方向でピースに接近するときには、エッジ近傍の測定補償を計算するためのアルゴリズムを実行することが必要である。この測定は、計算上かなり面倒であり、いずれの場合も、実際に遭遇し得る構成の複雑さを完全に補償することはできない。
【0020】
本発明は、ピースまたは材料と、前記ピースまたは材料を加工または測定する手段との間、例えば、ピースまたは材料をレーザ加工するための機械の加工ヘッドと、前記ピースまたは材料の表面との間の分離距離を決定するための方法を提供することを目的とする。この方法は、正確かつ堅牢であり、機械が動作するピースまたは材料の形状または加工条件、例えば、ピースまたは材料に対する加工ヘッドの相対並進速度に関連した効果によって影響されない。
【0021】
本発明の追加の目的は、測定精度を損なうことなく、大きな測定可能距離範囲で、ピースまたは材料と、前記ピースまたは材料を加工または測定する手段との間の分離距離を決定するための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明によれば、これらの目的は、物体または材料と、前記物体または材料を加工または測定する手段との間の分離距離を決定するための方法によって達成される。この方法は、請求項1に記載された特徴を有する。
【0023】
特定の実施形態は、従属請求項の主題を形成し、その内容は本説明の一体的な部分であることを意図している。
【0024】
本発明はまた、物体または材料と、前記物体または材料を加工または測定する手段との間の分離距離を決定するためのシステムに関し、請求項13に記載された特徴を有する。
【0025】
ピースまたは材料を加工するための工作機械および、ピースまたは材料をレーザ加工するための機械は、本発明の追加の主題を形成し、これは、予め定めた処理領域において、加工ツールとピースまたは材料の表面との間、加工ヘッドとピースまたは材料の表面との間の分離距離をそれぞれ決定するためのシステムを備え、このシステムは、上記の方法を実行するように構成される。
【0026】
要約すると、本発明は、光干渉法の原理の応用をベースとしており、特に、サブサンプリングに起因した歪み効果を使用することによって測定範囲が拡張される低コヒーレンス光干渉法テクニックをベースとしている。
【0027】
用語「光干渉法」は、測定光ビームと基準光ビームとの間の干渉現象を利用する複数のテクニックを表し、これらのビームは重ね合わされて干渉縞を発生する。コヒーレント光における光干渉法の理論はよく知られており、距離間の相対比較に使用される。しかしながら、例えば、光信号の一時的中断の場合、前記距離について一義的な絶対測定情報を提供できない。
【0028】
本発明は、絶対距離測定が、低コヒーレンス干渉法テクニックを使用することによって光学ドメインで実行できるという考察によって着想している。低コヒーレンス干渉法は、プローブとターゲットの間の距離を高精度で測定するための簡単なテクニックである。光源から検出器アセンブリまで(この経路ではプローブによって放出され、ターゲットによって後方反射する)伝搬する測定光ビームが進行した距離と、光源から検出器アセンブリまで基準経路(プローブとターゲットの間の既知の公称距離条件で測定経路に調整される)を横切って伝搬する基準光ビームが移動した距離との比較をベースとしている。
【0029】
低コヒーレンス干渉法において、測定光ビームおよび参照光ビームは、低コヒーレンス光源、例えば、LEDまたはスーパールミネッセントダイオードによって発生し、上記ビーム間の干渉縞だけが現れる。個々の光学経路(または光学経路の長さ)が対応する場合、光学経路は、幾何学的長さと、進行した光学経路全体に沿った各部分内の個々の屈折率との積の合計として定義される。即ち、測定経路の長さがコヒーレンス長の範囲内の基準経路の長さに対応する場合、基準経路の長さが既知であると仮定すると、典型的にはマイクロメートルの範囲(5μmから100μmまで)にあるコヒーレンス長のオーダーの分解能で干渉縞の包絡線(エンベロープ)の存在を検出することによって、測定経路の長さを導出すことが可能である。
【0030】
このテクニックは、他の光源から、または、例えば、レーザ加工プロセスから到来する光が、干渉縞のパターンを変更することなく干渉信号にインコヒーレント的に加算されるため、光学ノイズに関して特に頑丈である。測定は、測定光ビームが向けられるポイントに局所的に適用され、周囲の形態から独立している。これはまた、工作機械の加工ヘッドによって搬送される機器の軸に対して実質的に同軸である方向での距離の正確な絶対測定を可能にする。
【0031】
好都合には、空間ドメインでの干渉縞のパターンの検出を伴う低コヒーレンス干渉法テクニックは、時間ドメインまたは周波ドメインでの検出と比較して、本発明の目的にとって動作の柔軟性の点で最も有望でより効率的である。
【0032】
実際、時間ドメインでの検出を含む低コヒーレンス干渉法では、干渉縞のパターンは、フォトダイオードまたはフォトダイオードのアレイによって、または類似の捕捉スクリーンによって、基準経路の長さを適応させることによって検出され、コヒーレンス長のオーダーの許容誤差を除いて、基準経路および測定経路の長さが対応する条件に到達する。この場合、利用可能な測定範囲の制限は、基準経路の長さの適応に関連しており、これは、例えば、上記経路に沿って配置された後方反射エレメントの並進によって実行される。それは、基準経路の後方反射エレメントの並進空間範囲が数ミクロンから数ミリメートルの間であることが可能であり、並進範囲のサイズは、作動速度または動作の複雑さの不利益になる。
【0033】
時間ドメインでの検出のテクニックは、実行することがかなり簡単であり、測定経路および基準経路の絶対光学長の間の対応を容易に達成することが可能であるが、しかしながら、工業プロセスの過程がリアルタイムで測定される用途についての実装ではあまり適していない。実際、動的測定では、干渉縞のパターンの出現を生じさせる現在の測定経路の長さに対応する条件を見つけるために、基準経路の長さは連続的に変調する必要がある。これは、屈折率変調器または高速作動式機械的アクチュエータ、例えば、圧電アクチュエータを含む種々のタイプの制御装置を用いて得られる。しかしながら、これらのタイプの装置は、距離を測定するためのサンプリングレートよりもかなり高速の速い作動速度で動作する必要があるため、かなり高価で極めてデリケートである。これは、典型的にはkHz超であり、特に大きい変位の範囲ではしはしば容易には得られない条件である。
【0034】
異なる検出テクニックは、スペクトル密度関数と、測定ビームおよび基準ビームの相互相関との間のフーリエ変換関係をベースとしており、これにより2つの干渉ビームの波長のスペクトルプロファイルから実空間での微分距離測定値を抽出することが可能である。この方法では、基準経路の長さを測定経路の長さと整列させるための機械的アクチュエータが要求されない。回折格子およびその下流にある集光レンズを用いて、干渉ビームのスペクトル分布をリニアセンサデバイス、例えば、ビデオカメラに投影するために、重なり合った測定ビームおよび基準ビームの単一スペクトル取得が可能である。2つの干渉ビームのスペクトルは、周期的な変調を示し、波長空間でのこの変調の周期性(周波数)は、測定経路と基準経路の光学長の違いによって変化する。実空間の光学経路間の差に関連して信号強度ピークの測定値を抽出するために、フーリエ変換を計算するためのアルゴリズム、例えば、FFTアルゴリズムが適用される。
【0035】
このテクニックはまた、信号を取得するために非常に正確で高速なセンサと整列させる必要がある高品質の光学エレメントを必要とする。さらに、後方反射信号は、測定でのアーチファクトを決定することがあり、特に高反射性表面の場合、自己相関信号の存在によって取得の感度が低下することがある。絶対距離を計算するために、特定の計算機器を必要とするFFTアルゴリズムの実行に基づいて信号を迅速に処理することが必要になる。
【0036】
基準経路の長さのスキャンが時間的に分散される時間ドメイン、および測定経路と基準経路の長さを比較するための情報が波長空間でエンコードされる周波数ドメインでの低コヒーレンス干渉法テクニックとは異なり、空間ドメインでの検出を含む低コヒーレンス干渉法テクニックは、2つの前記テクニックを組み合わせて、実空間での測定結果を直接に視覚化することを可能にし、経済的なデバイス、例えば、リニアセンサなどのイメージセンサなどを用いてその迅速な取得を可能にする。
【0037】
空間ドメインでの検出を有する低コヒーレンス干渉システムの典型的な設計では、測定ビームおよび基準ビームは、異なる方向からセンサ手段表面で重なり合うように衝突し、センサ手段の表面は、この重ね合わせから生ずる干渉縞パターンを検出するように直接適合される。この構成では、2つのビームの相互傾斜角度の結果として、基準光学経路に対する測定光学経路の空間変動がセンサ手段に直接表示される。従って、測定光学経路の長さと基準光学経路の長さとの差の測定は、センサ手段上の干渉縞パターンの位置を検出することによって簡単に抽出できる。センサ手段のリニア寸法での干渉縞パターンの延長(extension)は、ビームの光学放射線のコヒーレンス長のオーダーである。
【0038】
空間ドメインでの検出を含む低コヒーレンス干渉法テクニックでは、センサ手段の共通の入射領域に斜めに衝突する各ビームの光学経路の長さは、センサ手段の照射軸に沿った位置とともに線形的に変化する。従って、測定光学経路と基準光学経路との差も線形的に変化する。干渉縞パターンは、センサ手段によって取得された画像の特定のリニア範囲に現れ、これは、測定経路および基準経路の光学長が光学放射線のコヒーレンス長内で等しいという条件に対応しており、一方、センサ手段の他の領域では、ビームは、インコヒーレントで重なり合っている。センサ手段のリニア延長に沿った干渉縞パターンの包絡線の位置を検出することによって、測定経路の個別の長さを抽出することが可能である。
【0039】
この測定は、干渉縞パターンの包絡線が、センサ手段の照射領域内、即ち、センサ手段を形成する光検出器デバイスの感度領域内で得られるという条件によってのみ制限される。測定範囲は、入射領域でのビームの傾斜によって決定され、あるいは、両者間の入射角によってより良く決定され、そして干渉画像の光検出領域(センサ手段の画素とも称される)の空間分解能によって決定され、あるいは、センサ手段で利用可能な領域(画素)の総数に対して干渉縞パターンを復調するために照射する必要がある領域(画素)の最小数によって決定される。数千個の光検出器を有するセンサ配置を含む通常の条件下では、干渉縞のサブサンプリング状態に対応するエイリアシング効果が現れる前に、数十分の一ミリメートルの測定範囲が得られる。しかしながら、本発明者は、干渉縞パターンのエイリアシング効果の存在は測定を制限しないが、実際には測定可能距離の範囲を増加させるために使用できることを実証した。実際、このサブサンプリングシステムは、より低い空間周波数での干渉縞パターンの有効な復調になり、復調は、干渉センサ配置の光検出器のレベルで直接にアナログ的な方法で得られ、追加エレメントを介在させる必要がない。この復調のため、干渉縞包絡線を検出するために必要な光検出器の数が減少して、これは距離のより広い測定範囲に反映される。
【0040】
好都合には、空間ドメインでの検出を含む干渉法テクニックの採用により、静的な測定システムおよび基準光学経路を使用して、重なり合う測定ビームおよび基準ビーム(センサ手段に衝突する)の光学放射線の空間分布の個々の取得またはサンプリングごとに、正確な距離測定を行うことが可能になる。この種のシステムを提供するために、標準的な光学エレメントが専ら必要であり、センサ手段によって放出される信号は、計算上煩雑にならないように単純な計算アルゴリズムに基づいて処理される。この手法を用いて、周波数ドメインテクニックでの検出の不具合、即ち、自己相関信号成分の存在、負の周波数でのアーチファクト、および測定可能な距離の高い値での感度の低下も克服される。
【0041】
本発明によれば、ピースまたは材料を加工するための工作機械、例えば、材料をレーザ加工するための機械、特にレーザ切削、穴あけまたは溶接または積層造形のための機械への上述した検討事項の適用は、測定光学経路(機械の本体、例えば、機械の加工ヘッド内に少なくとも部分的に統合される)と、測定光学経路と関連付けられた基準光学経路(これも機械の本体内(加工ヘッド内)に統合してもよく、またはその外部でもよい)とを含む干渉計システムの配置によって達成される。測定光学経路は、加工ツールの領域において(レーザ加工機の場合はレーザビームの出力部)、またはより一般的には加工されるピースまたは材料の表面に近接するヘッドの端部において、機械本体から(測定ヘッドから)現れる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
本発明の追加の特徴および利点は、添付図面を参照して、非限定的な例として与えられる、その一実施形態の下記詳細な説明においてより詳細に提示される。
【0043】
図1】先行技術に係るワークピースの近くにある工作機械の加工ヘッドの概略例および関連する制御手段を示す。
図2a】空間検出を伴うリニア低コヒーレンス干渉システムの構成の概略図である。
図2b】干渉縞パターンの、センサ配置の照射軸上での相対的な入射ポイントに対する測定光学経路および基準光学経路の長さの変化の概略図である。
図2c】干渉縞パターンの、センサ配置の照射軸上での相対的な入射ポイントに対する測定光学経路および基準光学経路の長さの差の変化の概略図(上グラフ)であり、測定経路と基準経路の光学長が等しい状態でのセンサ配置の照射軸上の干渉縞パターンの識別(下グラフ)である。
図3】工作機械の加工ヘッドと処理されるピースまたは材料の表面との間の分離距離を決定するためのシステムの例示的な図を示すもので、本発明の主題を形成する。
図4】高出力レーザビーム、特にレーザ加工機の加工ヘッドの例示的な実施形態に係る加工ヘッド内の加工レーザビーム経路および測定低コヒーレンス光ビームを照射することによって、ピースまたは材料を加工するための機械への応用の概略図である。
図5a】ピースまたは材料の切削または穴あけ部分におけるレーザ加工機の加工ヘッドの出力部における加工レーザビームおよび測定低コヒーレンス光ビームの相対位置の詳細である。
図5b】ピースまたは材料の彫刻領域における、機械的処理のための工作機械の加工ヘッドの出力部における切削エッジおよび測定低コヒーレンス光ビームの相対位置の詳細である。
図5c】ピースまたは材料の彫刻領域における、作動流体用の流出ノズルと、流体を用いて加工するための機械の加工ヘッドの出力部における測定低コヒーレンス光ビームとの相対位置の詳細である。
図6】エイリアシング有りと無しで取得された信号サンプルに基づいて、干渉縞の同じパターンの光放射線の強度のシミュレーションした傾向を示す。
図7】干渉縞パターンのセンサ配置の照射軸に沿った光検出器のリニア配置において、干渉縞の前記パターンの空間周波数と光検出器の空間周波数との間の関係の関数としてシミュレーションした干渉縞パターンのコントラストまたは視認性(visibility)値の傾向を示すグラフである。
図8a】加工ヘッドとピースまたは材料との間の分離距離の関数として、センサ配置の照射軸に沿った干渉縞パターンの識別を示す信号を示すグラフである。
図8b】加工ヘッドと材料との間の分離距離の関数として、干渉縞の主要パターンを示す信号のピークの傾向を表す例示的な較正曲線である。
図8c】エイリアシング有りとエイリアシング無しで干渉縞パターンを示す信号のピークの傾向を表す較正曲線を比較するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0044】
図1は、先行技術を参照して前に説明したものであり、その内容は、これらが一般の工作機械の製造に共通である限り、特に本発明の教示に係る方法を実施するために制御されるレーザ加工機に参照される。
【0045】
図2aは、リニア空間検出を伴う低コヒーレンス干渉システムの構成の概略図である。Mで示す光放射線の測定コリメートビーム、およびRで示す同じ光放射線の基準コリメートビームが、予め定めた入射角αで、センサ配置Sの共通入射領域C上で重なり合うに衝突している。これらは、干渉縞Fのパターンを形成し、共通入射領域上でのその延長は光放射線のコヒーレンス長のオーダーである。光放射線の測定コリメートビームの幅および光放射線の基準コリメートビームの幅は、好ましくは、センサ構成全体を実質的に照射するように設計される。検出された信号の強度およびコントラストを増加させるために、ビームは、例えば、シリンドリカル集光レンズによって、照射軸に対して垂直な方向にセンサ上に集光してもよい。
【0046】
センサ配置Sは、例えば、入射領域の少なくとも1つの照射軸(図中のx軸)に沿った光検出器の配置を含む。光検出器の配置は、光検出器のリニアまたは2次元配置であり、好ましくは、リニア配置である。入射領域の照射軸は、測定ビームMおよび基準ビームRの入射角によって定義される平面と、前記センサ配置のセンサ表面との間の交点(intersection)によって決定される。
【0047】
図2bにおいて、グラフは、測定光学経路および基準光学経路の長さpの変化を概略的に示しており、2つの入射ビームがセンサ配置で対称である典型的な構成において、センサ配置Sの共通入射領域での個々の測定ビームおよび参照ビームの初期入射波面を参照している。x軸は、光検出器装置の照射軸に沿った位置またはx座標を示す。参照符号p1は、共通入射領域Cの第1端x(測定軸の原点)での測定ビームMの波面の初期入射ポイントに対する第1光学経路(例えば、測定光放射線ビームMの測定光学経路)の追加長さを示す。参照符号p2は、共通入射領域の第2端x(第1端とは反対)での基準ビームRの波面の初期入射ポイントに対する第2光学経路(例えば、基準光放射線ビームRの基準光学経路)の追加長さを示す。参照符号Δpは、2つの経路の追加長さの差p1-p2を示す。これは、センサ配置の中央座標でゼロであり、共通入射領域の端xでの値Δpx1から共通入射領域の端xでの値Δpx2まで変化する。
【0048】
図2cにおいて、上グラフは、図2bのグラフに対応する曲線Δpを示し、下グラフは、センサ配置Sの照射軸(x)上の干渉縞Fのパターンの識別を示す。それは、測定経路と基準経路の光学長が等しい場合に発生する。干渉縞Fのパターンの包絡線はハッチングで示しており、測定光ビームおよび基準光ビームの経路の追加長さの間の個々の差Δpは、上グラフを用いて包絡線ピーク座標xと関連付けられる。
【0049】
およびPは、測定経路および基準経路を示し、その全長は、P=P1+p1およびP=P2+p2として表せる。ここで、P1は、低コヒーレンス光放射線源からセンサ配置に入射する最初の波面までの測定光学経路の光学長さである。P2は、同じ低コヒーレンス光放射線源からセンサ配置に入射する最初の波面までの基準光学経路の光学長さであり、好ましくは一定である。Phead+Dstandoffで構成されるP1を考慮することが可能であり、Pheadは、加工ヘッドの上流側および内側での光学経路長さであり、低コヒーレンス光放射線源と、加工されるピースまたは材料WPに近接した加工ヘッド(加工または測定機器12、例えば、レーザビーム出力)の端部との間の第1部分と、加工ヘッド(加工または測定機器12、例えば、レーザビーム出力)の上記近位端部とセンサ配置Sとの間の第2部分とを含み、これらの部分は、特定の予め定めた不変の幾何学的長さを有する。Dstandoffは、加工されるピースまたは材料WPに近接した加工ヘッドの端部と上述したピースまたは材料、例えば、前記ピースまたは材料の表面と間の外気での分離距離である。P2は、基準光学経路の光学長さであり、これは、公称動作条件での測定光学経路の光学長さと等価であり、以下ではP1nomとして示す。ここで、加工ヘッド(加工または測定機器12、例えば、レーザビーム出力)の近位端部とピースまたは材料WPの表面との間の距離は、予め定めた公称分離距離Dstandof_nomに対応する。
【0050】
測定光学経路と基準光学経路との間の光学長さの差は、数学的には次のように表される。P-P
干渉縞は、これがゼロである条件で出現する。即ち、P-P=0
次のように分類できる関係がある。P1+p1-(P2+p2)=0
これは次のように書き換えられる。Phead+Dstandoff+p1-P2-p2=0
ここから次のことが推測される。
head+Dstandoff-P2+Δp=0
head+Dstandoff-P1nom+Δp=0
head+Dstandoff-Phead-Dstandoff_nom+Δp=0
Δp=Dstandoff_nom-Dstandoff
即ち、(a)加工ヘッドと加工領域でのピースまたは材料の表面との間の現在の分離距離Dstandoffと、(b)公称分離距離Dstandoff_nomとの差は、測定光学経路および基準光学経路の追加長さの間の差に等しい。
【0051】
従って、加工ヘッド10とピースまたは材料WPの表面との間の現在の分離距離が、公称分離距離とは異なり、測定光学経路および基準光学経路との間の光学長さの差によって決定され、測定光学経路と基準光学経路の追加長さの差に起因しており、従って、公称位置(例えば、前記センサ配置Sの正中面)に対するセンサ配置Sの照射軸xに沿った干渉縞パターンの移動に起因している。
【0052】
ピースまたは材料をレーザ加工するための機械において、加工ヘッドによって放出される高出力加工レーザビームを用いて動作し、アシストガスの流れが作用する切削または穴あけの用途では、一連の処理領域を含むピースまたは材料上の加工軌道に沿って導かれ、加工されるピースまたは材料に近接した加工ヘッドの端部は、溶接中は一般にアシストガスノズルの端部であり、あるいは、ガスが供給されない積層造形の用途では、加工されるピースまたは材料に近接した加工ヘッドの端部は、一般に加工レーザビームのための出力部であることに留意する。
【0053】
本発明の主題を形成する用途では、基準光学経路の長さは、処理領域にある加工ヘッドとピースまたは材料との間のプリセット公称分離距離での測定光学経路の長さに対応するように設定される。(a)加工ヘッドと処理領域にあるピースまたは材料との間の現在の分離距離と、(b)予め定めた公称分離距離との差は、測定光学経路と基準光学経路との間の長さの差から由来する。これは、センサ配置Sの入射領域の照射軸に沿った干渉縞パターンの位置に基づいて識別できる。好都合には、照射軸に沿った干渉縞パターンの中間位置が、前記プリセット公称分離距離に対応する。代替として、照射軸に沿った干渉縞パターンの終了位置が、加工ツールと加工されるピースまたは材料との間のヌル(null)公称分離距離に対応してもよく、これは、ヘッドの近位端を構成するツールとピースまたは材料との間の接触に等価である。これにより両者間の分離距離が増加するだけとなり、従って干渉縞パターンは、照射軸の反対端に向かって専ら移動する。
【0054】
図2cの下グラフを参照すると、照射軸に沿った干渉縞パターンの位置xは、前記干渉縞パターンの光放射線強度の包絡線の固有の位置であり、前記干渉縞パターンの光放射線の強度の包絡線のこの固有位置は、例えば、光放射線の包絡線のピークまたは最大強度の位置、または干渉縞包絡線の光強度で重み付けされた光検出器の平均位置である。
【0055】
干渉縞包絡線の検出は、光強度プロファイル復調テクニックを用いて、例えば、バンドパス空間フィルタ、またはハイパスフィルタおよびローパスフィルタを連続して適用して、干渉縞の空間周波数に対応する信号成分だけを明らかにすることによって実行できる。例えば、光強度データを処理する第1ステップにおいて、センサのマトリクスによって検出された光強度は、干渉縞の展開方向に対して垂直な方向に、例えば、垂直に整列した干渉縞のパターンを受信するように配向したセンサのマトリックスの列(column)について積分される(センサ配置が、ビームがシリンドリカルレンズによって集光されるリニア配置の光検出器である場合、この演算は必要ではない)。続いて、光検出器によって発生した信号は、例えば、干渉縞無しの画像から抽出されたバックグラウンド信号に対して正規化される。従って、ハイパス空間フィルタが、例えば、光検出器の空間周波数の1/5に適用され、ベースラインを除去し、干渉縞パターンを維持する。こうしてゼロ付近で振動する信号が得られるため、信号の絶対値が抽出され、従って、ローパス空間フィルタが、例えば、光検出器の空間周波数の1/25に適用され、干渉縞パターンの包絡線を抽出する。最後に、干渉縞パターンの位置は、その最大値を求めることによって、または包絡線を予め定めたモデル関数(例えば、ガウシアン関数)と比較してモデル関数のピークを抽出することによって、干渉縞パターンの包絡線の位置を検出することによって得られる。
【0056】
図3は、物体または材料と、前記物体または材料を加工または測定するための手段を備えた本体との間の分離距離を決定するためのシステムの例示的な図を示し、本発明の主題を形成する。特に、ピースまたは材料WPをレーザ加工するための機械の加工ヘッド10と、前記ピースまたは材料の表面との間の分離距離の決定のための用途を参照して説明する。
【0057】
図において、符号100は、直線偏光を適切に有する低コヒーレンス光放射線源を示し、例えば、LEDまたはスーパールミネッセントダイオードなどであり、例えば、可視または近赤外の波長範囲で動作する。適切な光アイソレータ120の下流側にある光源100によって放出された光放射線は、光導波路、例えば、光ファイバ140の中に注入され、ビームスプリッタ160に運ばれる。これは、測定光学経路P上に伝送される光放射線の測定ビームM、および基準光学経路P上に伝送される基準光放射線ビームRを発生するように構成される。
【0058】
測定光学経路Pおよび基準光学経路Pは、案内経路であり、経路全体に沿ってビームの同じ偏光を維持するように構成された光ガイド(例えば、光ファイバ)を含む。
【0059】
測定光学経路Pは、上述のようにピースまたは材料をレーザ処理するための機械の加工ヘッド10まで案内され、そこから加工されるピースまたは材料WPに向かって出現し、そこに衝突する。測定ビームMが出力される領域は、測定ヘッドのセクション、例えば、アシストガスの流れを供給するためのノズルの開口またはレーザビームの出力部に対応しており、上記ピースまたは材料からの距離を測定するのを目的としている。当然ながら、ピースまたは材料を機械的に処理したり、または流体を用いてそれを処理するための異なるタイプの工作機械に適用する場合、ピースまたは材料からの距離を測定することを目的とする測定ヘッドのセクションは、加工ツールまたは作動流体を供給するためのノズルの端部として識別できる。
【0060】
代わりに、光学基準経路Pは、好ましくは、光学濃度フィルタ200、光学分散補償エレメント220、λ/4プレート240および集光レンズ260を介在させることによって、反射性戻りエレメント180に導かれる。光反射エレメント180は、基準光学経路に沿って配置され、ビームスプリッタ160から光反射エレメント180までのこの経路の光学長さが、動作状態でビームスプリッタ160から加工されるピースまたは材料の(反射)表面までの測定光学経路の光学長さに対応するようにする。前記表面は、加工ヘッドからプリセット公称分離距離Dstandof_nomにあり、これは、ピースまたは材料に近接する加工ヘッドの端部から、例えば、アシストガスまたはビーム出力のためのノズルの開口からである。
【0061】
測定光学経路および基準光学経路P,Pは、光放射線がこれらの経路に沿って両方向に進行し、加工されるピースまたは材料WPの表面および反射光学エレメント180でそれぞれ反射した後、ビームスプリッタ160に戻るように形成される。加工されるピースまたは材料の表面での反射は、ピースまたは材料の少なくとも部分的に反射性である表面での反射として理解でき、これはピースまたは材料が金属ではない場合に発生するが、拡散または反射が異なる深さで起こることがあり、その結果、物体または材料の深さ全体に沿った干渉読み取りが可能になる。基準光学経路Pにおいて、λ/4プレート240を経由した基準ビームRの二重通過は、ビームの直線偏光の90°回転を生じさせ、これにより測定ビームMの直線偏光に対して直交する直線偏光になる。そしてビームスプリッタ160は、測定光ビームおよび基準光ビームの再結合を実行し、これらを重ね合わせた状態で検出光学経路P(測定光学経路の一部および基準光学経路の一部と共通)に沿ってセンサ配置Sに向ける。
【0062】
測定光ビームおよび基準光ビームの両方は、シリンドリカル集光レンズ280を通って導かれ、これは、一方向にのみ、特にセンサ配置の照射軸に対して直交する方向にコリメートビームを集光し、この軸に沿って信号を集中させることを目的としており、これにより光検出器の照射を最適化し、これらの偏光に基づいて基準光ビームRから測定光ビームMの分離を行う偏光ビームスプリッタ300に到達し、その第1のものを第1反射エレメントM1に向けて、その第2のものを第2反射エレメントM2に向けて、この最後のケースは、λ/2プレート320を介在させることによって、元の偏光を復元できる。この構成のために、第1および第2反射エレメントM1,M2は、測定光ビームおよび基準光ビームをセンサ配置Sにそれぞれ向けて、より正確には、入射角αでセンサ配置の共通入射領域に向ける。
【0063】
入射角αは、反射エレメントM1,M2を用いて、プリセットされた値の範囲内で制御でき、これらは、相対光ビームの伝搬軸に沿って並進式に、そして入射面に対して垂直な軸の周りに回転式に個別に移動可能である(図中の破線位置)。
【0064】
上述したように、センサ配置Sは、複数の光検出器デバイスを含み、その各々は、それに入射する光強度を表す特定の信号を放出するように構成され、これらの信号は、全体として、処理手段350に送信され、これは、重なり合った測定光ビームおよび基準光ビームの全体入射光パワーを取得することによって、センサ配置の共通入射領域C上に形成される干渉縞Fのパターンを識別するように構成される。
【0065】
好ましくは、測定光学経路および基準光学経路は、対応する光学エレメントを含み、特に基準光学経路は、反射戻りエレメントを含み、その反射および光拡散特性は、可能な限り測定光学経路に介在するピースまたは材料の反射および光拡散特性に対応する。必要に応じて、光減衰器及び/又は光分散手段を設けてもよく、これらは、加工されるピースまたは材料で反射した測定光放射線の強度に関して、前記反射戻りエレメントで反射した基準光放射線の強度および色分散をバランスさせることができる。
【0066】
図3のシステムまたは同等のシステムを用いて、ピースまたは材料をレーザ加工するための機械などの工作機械の加工ヘッド10と、ヘッドから出現する加工ツールによって(ヘッドによって放出された加工レーザビームによって)追従される予め定めた加工軌道Tに沿って定義される処理領域内のピースまたは材料WPとの間の分離距離を決定する方法が実行される。
【0067】
この方法は、加工ヘッド10を通って処理領域に向けて導かれる測定ビーム低コヒーレンス光放射線Mを発生することを含み、処理領域内のピースまたは材料WPによって反射または拡散され、加工ヘッド10を経由して第1入射方向にセンサ配置Sに向けて導かれる。
【0068】
金属ピースまたは材料を加工する場合、測定光ビームは、材料の第1表面で反射または拡散されることが想定可能である。特定のケースでは、例えば、溶接または積層造形プロセスでは、溶接される固体(または基板)の表面の代わりに、溶融池の表面からの距離を測定する必要があり、これは、溶融金属の第1表面を表す。非金属および半透明の材料(セラミック、プラスチック、生体組織など)の場合、または塗装された金属の場合、材料の内部サブ表面(表面下)層は信号を発生する。
【0069】
測定光放射線ビームMは、特に、測定光学経路に沿って光源100からセンサ配置Sまで進行し、これは、特定の予め定めた不変の幾何学的長さを有する2つの部分を含み、第1部分は、光源100と、ピースまたは材料WPに近接した加工ヘッド10の端部との間であり、第2部分は、ピースまたは材料WPに近接した加工ヘッド10の端部とセンサ配置Sとの間である。
【0070】
前記低コヒーレンス光放射線の基準ビームRが、同じ光源100によって発生し、このビームは、測定ビームMの第1入射方向に対して予め定めた入射角の第2入射方向でセンサ配置Sに向けて導かれる。基準ビームRは、公称動作状態における測定光学経路Pの光学長さと等価である光学長さを有する基準光学経路Pに沿って進行し、加工ヘッド10とピースまたは材料WPとの間の距離は、予め定めた公称分離距離Dstandoff_nomに対応する。
【0071】
測定ビームMおよび基準ビームRは、プリセット照射軸に沿ってセンサ配置Sの共通入射領域Cで重ね合わされる。共通入射領域C上の照射軸に沿った測定ビームMと基準ビームRとの間の干渉縞Fのパターンの位置は、処理手段350によって検出され、上述のように、測定光学経路Pと基準光学経路Pとの間の光学長さの差を決定することを可能にする。これは、(a)加工ヘッド10と処理領域におけるピースまたは材料WPの表面との間の現在の分離距離と、(b)プリセット公称分離距離との間の差を示すものである。
【0072】
この方法は、加工ヘッドと、ピースまたは材料上の現在の処理領域との間の分離距離を決定するために、加工プロセス中にリアルタイムで実行してもよく、例えば、加工されるピースまたは実行された加工プロセスを適切にするために、加工プロセスの前または後でもよい。
【0073】
図4図5aを参照して、レーザ加工機の加工ヘッドと処理領域内のピースまたは材料の表面との間の分離距離を決定するためのシステムの一部の例示的な実施形態を概略的に示す。特に、加工ヘッド内の加工レーザビームBおよび測定光ビームMの経路、ならびに
ピースまたは材料WPの切削または穴あけ部分における加工レーザビームBおよび測定光学手段Mの相対位置の例示的な実施形態を示す。
【0074】
図4は、DMで示すダイクロイックミラーなど、レーザビームを偏向させる反射エレメントを示し、これは、加工レーザビームBの光学伝搬軸をヘッド進入方向から加工されるピースまたは材料WPでの入射方向に偏向する。これは、側方レーザビーム入力を含む加工ヘッドの一実施形態で採用される構成である。この実施形態では、測定光放射線ビームMは、測定ポイントが表面と交差する位置を制御するために、絶対値および加工軌道に沿った加工ヘッドの前進速度の方向に基づいて、反射光学走査システムSMまたは折り曲げミラーによって(その傾斜は、例えば、圧電的に制御される)、材料の測定領域に向けられる(実質的な偏向なしでダイクロイックミラーDMを通過する)。反射光学走査システムSMの下流には、集光レンズFLが配置され、測定ポイントがピースまたは材料の表面と交差する位置Hを制御することが可能である。図で判るように、測定ビームの伝搬方向は、反射光学走査システムSMの傾斜によって制御でき、加工レーザビームBに同軸で重ね合わされるのではなく、それとは異なるようにできる。当業者はまた、加工レーザビームに対して透明であるが、側方入力から到来する測定ビームを反射するダイクロイックミラーが設けられる「デュアル」構成または「反対」構成が可能であることを理解するであろう。
【0075】
好都合には、材料をレーザ切削、穴あけまたは溶接するための機械、またはレーザを用いた3次元構造の積層造形のための機械において、機械は、材料の近くに配置されたアシストガスの流れを供給するためのノズルを含む加工ヘッドを備える。測定光放射線ビームは、ノズルを経由して導かれ、現在の処理領域と同軸であるか、または現在の処理領域の近傍、好ましくは加工軌道に従ってその前方にある、ピースまたは材料の測定領域に向けられる。
【0076】
好都合には、材料をレーザ溶接するための機械、またはレーザを用いた3次元構造の積層造形のための機械において、機械は、レーザビームを集光するための光学システムの下流側に、高出力加工レーザビーム用の出力を含む加工ヘッドを備え、このシステムは、ピースまたは材料の近くに配置され、測定光放射線ビームは、上記ビーム出力を経由して導かれ、現在の処理領域と同軸であるか、または前記現在の処理領域の近傍にあり、好ましくは、加工軌道に従ってその前方にある、ピースまたは材料の測定領域に向けられる。
【0077】
好都合には、加工レーザビームBと同軸である測定ビームMの入射は、例えば、穴あけ深さ、溶接高さ、および積層造形の際の構造化材料の高さを評価するために使用される。処理領域に対するセットバック(後退)位置での測定ビームMの入射は、溶接品質または積層堆積を確認するために使用される。処理領域に対して前方位置にある測定ビームMの入射は、切削および溶接時のピースまたは材料からのヘッドの分離距離の早期測定のため、または加工軌道に沿った溶接継手の位置を識別するために使用される。後者の構成は、一例として図5aに示しており、Nは、アシストガスを供給するためのノズルを示し、Bは、切削動作が、矢印で示す軌道に従って進行中である(これは溝Gを形成する)ピースまたは材料WPの現在の処理領域に入射する加工レーザビームを示す。切削動作では、加工ビームBと同軸である測定ビームMの配置は、測定を極端に不確実にする。それは、ピースまたは材料の溝の壁が、多数の処理パラメータの関数であって、制御できないことがあるプロファイルを有する切削エッジとなるためである。
【0078】
図5bは、ピースまたは材料を機械的に加工するための工作機械の加工ヘッドと、処理領域内のピースまたは材料の表面との間の分離距離を決定するためのシステムの一部の例示的な実施形態を概略的に示す。特に、切削エッジCTの例示的な実施形態、例えば、ダイヤモンドの切削エッジ、および工作機械の加工ヘッド内の測定光ビームMの経路の端部、切削エッジCTの相対位置、およびピースまたは材料WPの彫刻領域における測定光ビームMの例示的な実施形態を示す。彫刻動作の方向は、矢印で示しており、Gは、切削エッジCTによって生じた彫刻溝を示す。彫刻動作(切削プロセスと同様)では、測定ビームMの配置は、ピースまたは材料からのヘッドの分離距離の早期測定のために、処理領域に対して前方にあるのが好都合であり、そこから例えば、彫刻溝の深さまたは切削エッジCTの取り込みを推定することが可能である。
【0079】
図5cは、流体を用いてピースまたは材料を加工するための工作機械の加工ヘッドと、処理領域にあるピースまたは材料の表面との間の分離距離を決定するためのシステムの一部の例示的な実施形態の概略図である。特に、作動流体の流出ノズルN、機械の加工ヘッド内の測定光ビームMの経路の端部、ノズルNとの相対位置、ピースまたは材料WPの処理領域内の測定光ビームMの例示的な実施形態を示す。彫刻動作の方向は矢印で示しており、Gは、ノズルNによって供給される流体ジェットJによって生成される彫刻溝を示す。彫刻動作(異なるタイプのプロセス、例えば、研磨または単純なクリーニングと同様である)において、測定ビームMの配置は、好都合には、ピースまたは材料からのヘッドの分離距離の早期測定のために、処理領域に対して前方にある。
【0080】
本発明によれば、測定ビームおよび基準ビームがセンサ配置Sの共通入射領域に衝突する構成において、入射角αは、干渉縞パターンの空間周波数が光検出器の空間周波数よりも大きく、測定可能な距離範囲を増加させる程度まで拡張している。好都合には、入射角αは、予め定めた値の範囲内で制御してもよい。
【0081】
測定ビームおよび基準ビームが平面波として伝搬すると仮定すると、総光強度は、センサ配置Sの照射軸(入射角の面内)に沿ったx座標の関数として、下記のように近似できることがこの分野において知られている。
【0082】
【数1】
【0083】
ここで、IとIは、個々のビームの強度であり、kは、干渉縞パターンの波数または空間周波数である。センサ配置の法線に対する測定ビームおよび基準ビームの入射角をα1,α2で示すと、干渉縞間の間隔は、下記の式で与えられる。
【0084】
【数2】
【0085】
従って、より大きい傾斜角は、干渉縞パターンのより大きい周波数を生じさせ、従って、センサ配置でより大きい干渉縞密度をもたらす。
【0086】
ナイキスト・サンプリング基準に配慮して、エイリアシングまたはサブサンプリングの現象を回避するために、センサ配置上のサンプリング画素空間周波数に対応する光検出器の空間周波数(kで示す)は、干渉縞パターンの周波数kの少なくとも2倍大きい必要があり、即ち、k/k比は0.5より小さくする必要がある。
【0087】
光学経路の差に関する情報は、センサ配置に入射する光放射線の強度プロファイルにおける干渉縞パターンの包絡線の位置から直接に抽出できる。Nは、重なり合う測定ビームおよび基準ビームの両方によって照射されるセンサ配置の光検出器デバイスの数を示す。測定できる最大経路差は下記のようになる。
【0088】
【数3】
【0089】
ここで、測定範囲は、重ね合わせビームによって照射される光検出器の数に正比例する。これは、センサ配置の分解能およびビームの寸法の結果である。従って、測定可能な経路間の差の範囲での増加は、光検出器デバイスの数を増加させることによって得られ、これは、センサ配置を形成するためのより大きなコストおよびそこから発生する信号を処理するためのより大きな費用をもたらす可能性がある。上述の測定可能な差の範囲はまた、干渉縞パターンの周波数と光検出器の空間周波数との間のk/k比にも正比例する。k/k比は、測定ビームと基準ビームの間の入射角、および光検出器の空間寸法に依存する。従って、ビームの傾斜と照射される光検出器の数との間のバランスを達成することが必要である。
【0090】
本発明者は、使用する低コヒーレンス光放射線の波長およびコヒーレンス長に応じて、センサ配置の共通入射領域に形成される干渉縞パターンにおいて典型的には数十個の干渉縞が視認できることに気付いた。ナイキスト基準に配慮しながら、広い測定範囲に渡って数多くの干渉縞を取得するには、多数の光検出器を必要とし、このことは過剰な情報取得を生じさせることになり、干渉縞パターンの包絡線の位置だけが測定経路と基準経路の間の差を決定するのに関連するためである。その結果、本発明者は、より小さな空間周波数での干渉縞パターンを復調する可能性を探索し、これは測定ビームと基準ビームとの間でより大きな入射角で得られ、そのため干渉縞パターンの周波数は、光検出器の空間周波数(エイリアシング現象の発生を生じさせる条件)よりも大きくなる。
【0091】
これは、実質的には、マスクの使用なしで前記光検出器を用いて実行される復調テクニックである。一般に、干渉縞パターンなど、周波数kを有する空間内の周期的信号は、マスクまたは格子(例えば、透過性マスクまたは反射性マスクであり、同様に周期的であるが、周波数kを有し、センサ配置に入射する経路に沿って介在する)の適用によって、より低い周波数で復調できる。こうしてセンサ配置によって検出される信号は、周期的マスクの存在によって変更される。先行技術のように、原信号と前記マスクとの間のコンボリューション(畳み込み)から、センサ配置によって検出される新しい信号の傾向を計算することが可能である。この新しい信号は、元の空間周波数とは異なる空間周波数を有する周期成分を含み、具体的には、信号およびマスクの空間周波数の和k+kと差k-kである。より低い周波数k-kを有する成分は、元の空間信号のアナログ復調信号を表しているため、特に興味深い。より低い空間周波数で復調された干渉縞パターンの特定のケースでは、この手法は、検出される干渉縞の数を有効な低減とともに、それをサンプリングするためにより少ない数の光検出器を用いて前記パターンを検出することを可能にする。
【0092】
本発明では、復調に特化したエレメントを使用するのではなく、干渉信号をサンプリングするために使用される光検出器のマトリクスの周期性が、マスクと同様の方法で使用される。kは、光検出器または画素の周波数である。サブサンプリング(エイリアシング)状態(k>k)では、各光検出器(画素)は、いくつかの縞に対応する光信号を取得し、上述した効果のため、より低い空間周波数で検出される歪み干渉縞パターンを生じさせることになる。この低い空間周波数は、縞パターン全体を検出するために、より低い有効数の光検出器に反映され、従って、センサ配置の総延長が、より大きい測定範囲に渡る動作のために使用できる。
【0093】
一定数の光検出器を考慮すると、この手法は、複数の縞が単一の光検出器によって検出されるため、単に干渉縞の減少したコントラストという代償で、情報を失うことなく測定範囲を増加させることを可能にする。この現象を図6に示しており、このグラフは、同じ干渉縞パターンの光放射線の強度について再構築した傾向を示しており、エイリアシングなし(上グラフ)とエイリアシングあり(下グラフ)で得られた、ドットで示す信号サンプルに基づいてシミュレーションしたものである。気付くように、検出された縞の数は2つのサンプリング状態で変化しているが、縞パターンの包絡線はほとんど変化していない。
【0094】
干渉縞のコントラストνは、下記の関係に従ってエイリアシング係数k/kに依存することが先行技術から証明できる。
【0095】
【数4】
【0096】
これは、図7に示すように、光検出器の空間周波数kの整数倍ではゼロである。
【0097】
好都合には、局所的に最大コントラストを有するために、干渉縞パターンの空間周波数は、光検出器の空間周波数よりも大きく、光検出器の空間周波数の倍数とは異なることが必要であり、好ましくは、光検出器の前記空間周波数の半整数倍に近接している。
【0098】
実際、図7のグラフから明らかなように、干渉縞間のコントラストνの傾向を実線で示しており、この傾向は、k/k比の関数として計算され、極大値は、光検出器の空間周波数の半整数倍に近接しているが、最大コントラストの急速な減少を伴う(図では非連続線で定性的に示す)。
【0099】
好都合には、約1.5(または約2.5、約3.5など)に等しいk/k比が得られるように、測定ビームと基準ビームとの間の入射角を選択することが可能である。
【0100】
図8aは、センサ配置Sの照射軸に沿って光検出器によって放出される信号(縦軸)を示すグラフであり、これらの信号は、共通入射領域上に形成される干渉縞パターンの包絡線の強度を示す。特に、この図は干渉信号を示しており、従って、加工ヘッドの端部とそれに面するピースまたは材料との間の分離距離(横軸)の関数として、照射軸に沿った干渉縞パターンの空間位置(縦軸)を示す。例えば、こうしたグラフは、基準光学経路の固定長を提供し、z軸に沿った加工ヘッドとピースまたは材料の表面との間の相対位置(即ち、ピースまたは材料の表面から加工ヘッドまでの分離距離)を連続的に変化させ、分離距離について予め定めた離散値の関数として干渉信号読み取り値を取得することによって、較正ステップにおいて生成できる。
【0101】
このグラフは、図8bに示す干渉縞パターンを示す信号のピークのほぼ線形的な傾向に従って、エイリアシング状態での強い干渉信号の取得と、約2mm(約1500画素に対応する)の範囲に渡る干渉縞パターンの包絡線の並進を示す。感度は、入射領域の光検出器または画素の寸法(このケースは1.5μm/画素)に対応する分離距離として定義できる。センサ配置の照射軸全体に渡る干渉縞パターンの包絡線の並進は、約0.25mmから約2mmの加工ヘッドと材料の表面との間の分離距離を決定することを可能にする。
【0102】
約1.5に等しいk/k比を得るために、測定ビームと基準ビームとの間の入射角を制御する場合、センサ配置は、約0.25mmから約2mmの加工ヘッドと材料の表面との間の分離距離を決定することを可能にし、従って、約1.8mmの測定範囲となる。これは、エイリアシング無しの条件(例えば、k/k比が約0.3に等しく、測定範囲は約0.3mm)とは異なる。図8cは、エイリアシング有りとエイリアシング無しでの較正曲線を比較するグラフであり、それぞれAとA’として示す。約4.5に等しいk/k比では、5mmオーダーの測定範囲が達成できる。
【0103】
本体、例えば、加工ヘッドまたは工作機械などと、処理領域内のピースまたは材料の表面との間の分離距離の正確な決定は、たとえ現在の処理領域または較正処理領域であろうと、分離距離の拡張した範囲に渡って、適切に、機械の制御ユニットECUが、物体または材料と、前記物体または材料を加工または測定するための手段を含む本体との間の大きな分離距離の補正または制御のためのフィードバックを使用できるようにする。例えば、加工/測定距離または他の加工/測定パラメータの補正または制御である(例えば、予め定めた加工計画および干渉測定の結果の関数として、ピースまたは材料に向かってまたは離れてZ軸に沿った加工ヘッドの移動を制御するために、移動アクチュエータ手段14に作用する)。これは、特に、光学システムを単に調整することによって、制御範囲の拡張が得られることから、加工または測定プロセスの効率を改善するのに有用である。
【0104】
本発明について上記議論で提案された設計は、純粋に例示的な性質のものであり、本発明を限定しないことに留意すべきである。該分野の専門家は、種々の実施形態で本発明を容易に実施することが可能であるが、それはここで記述した原理から逸脱せず、よって本特許に該当するものである。
【0105】
これは、特に、引用したものとは異なる低コヒーレンス光放射線波長、または純粋に非限定的な例として図3に示したものとは異なる光学エレメントを介在した測定光学経路および参照光学経路を使用する可能性に関して適用できる。
【0106】
当然ながら、本発明の原理を損なうことなく、実施形態および実装の詳細は、添付した請求項によって定義される発明の保護範囲から逸脱することなく、純粋に非限定的な例として説明し図示したものに対して大幅に変更してもよい。
図1
図2a
図2b
図2c
図3
図4
図5a
図5b
図5c
図6
図7
図8a
図8b
図8c