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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】研磨装置及び研磨方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 37/00 20120101AFI20241021BHJP
   B24B 55/06 20060101ALI20241021BHJP
   B24B 57/02 20060101ALI20241021BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20241021BHJP
【FI】
B24B37/00 K
B24B55/06
B24B57/02
H01L21/304 622E
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2021002919
(22)【出願日】2021-01-12
(65)【公開番号】P2021146498
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-10-05
(31)【優先権主張番号】P 2020044050
(32)【優先日】2020-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【弁理士】
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100186613
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100117640
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 達己
(72)【発明者】
【氏名】森浦 拓也
(72)【発明者】
【氏名】寺田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】外崎 宏
(72)【発明者】
【氏名】曽根 忠一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雅佳
(72)【発明者】
【氏名】小畠 厳貴
(72)【発明者】
【氏名】松尾 尚典
【審査官】マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0220206(US,A1)
【文献】特開2003-225862(JP,A)
【文献】特開平11-114811(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 37/00
B24B 55/06
B24B 57/02
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨面を有する研磨パッド使用して対象物の研磨を行う研磨装置であって、
研磨液供給装置と、
前記研磨面に対して水平移動可能なアームと、
前記アームを昇降する昇降機構と、
前記アーム及び前記研磨液供給装置に連結され、前記研磨液供給装置を前記研磨パッドの前記研磨面に追従させる追従機構と、
前記アーム及び前記研磨液供給装置に連結され、前記昇降機構による前記アームの昇降時において前記研磨液供給装置を吊り下げる吊下機構と、
を備え、
前記追従機構は、
2つのロッドであって、各ロッドが第1端及び第2端を有し、各ロッドの第1端が、前記研磨液供給装置に対して第1の球面ジョイントを介して取り付けられる2つのロッドと、
前記2つのロッドの間にて前記アームに対して固定され、前記各ロッドの第2端を摺動自在に受け入れる2つの第2の球面ジョイントと、を有し、
前記吊下機構は、
前記研磨液供給装置に対して固定された第1ストッパと、
前記アームに対して固定され、前記アームが前記研磨液供給装置に対して上昇する際に前記第1ストッパに係合する係合部と、
を備える研磨装置。
【請求項2】
請求項1に記載の研磨装置において、
前記第1ストッパ又は前記係合部の一方は、シャフトに設けられた大径部であり、
前記第1ストッパ又は前記係合部の他方は、前記シャフトが通過する貫通穴又は切り欠きの周辺部であり、
前記大径部が前記貫通穴又は切り欠きの周辺部に係合する、
研磨装置。
【請求項3】
請求項2に記載の研磨装置において、
前記シャフトの前記大径部は、前記シャフトに設けられた環状部材である、研磨装置。
【請求項4】
請求項1から3の何れかに記載の研磨装置において、
前記追従機構は、前記アームに対して固定されたハウジングを有し、
前記第2の球面ジョイントは、前記ハウジングの両側側面に設けられている、
研磨装置。
【請求項5】
請求項4に記載の研磨装置において、
前記追従機構は、前記ハウジングに対して固定され前記各ロッドの前記第1端及び前記第2端の間の部分に下方から係合する第2ストッパを更に有する、研磨装置。
【請求項6】
請求項5に記載の研磨装置において、
前記第2ストッパは、前記各ロッドの前記第1端及び前記第2端の間の部分に係合する溝を有する、研磨装置。
【請求項7】
請求項1から6の何れかに記載の研磨装置において、
前記各ロッドの前記第1端は、前記研磨液供給装置の底面近傍に対して取り付けられる、研磨装置。
【請求項8】
請求項1から7の何れかに記載の研磨装置において、
前記各ロッドは前記第1端にロッドエンドを有し、前記ロッドエンドに前記第1の球面ジョイントが設けられる、研磨装置。
【請求項9】
請求項1から8の何れかの研磨装置において、
前記研磨液供給装置は、前記研磨パッドの回転方向に関し、前記アームの下流側に配置される、研磨装置。
【請求項10】
請求項1から9の何れかの研磨装置において、
前記アームを旋回する旋回機構を更に備える、研磨装置。
【請求項11】
請求項1から10の何れかの研磨装置において、
前記研磨液供給装置は、
パッド本体と、
前記パッド本体に対して固定される複数の錘と、
を有する、研磨装置。
【請求項12】
請求項11に記載の研磨装置において、
前記研磨液供給装置は、
前記パッド本体及び前記錘を覆うカバーと、
前記カバーと前記パッド本体との間をシールするパッキンと、
を更に有する、研磨装置。
【請求項13】
請求項1から11の何れかに記載の研磨装置において、
前記研磨液供給装置、前記追従機構、及び前記吊下機構を覆う第1カバーを更に備える、研磨装置。
【請求項14】
請求項13に記載の研磨装置において、
前記第1カバーは、その上面において、前記研磨液供給装置、前記追従機構、及び/又は前記吊下機構の一部を露出し、
前記研磨装置は、前記第1カバーから露出する部分を覆う第2カバーを更に備える、
研磨装置。
【請求項15】
請求項13又は14に記載の研磨装置において、
前記研磨液供給装置は、パッド本体を有し、
前記パッド本体は、前記第1カバーの底面において前記第1カバーと所定の隙間を空けて露出している、研磨装置。
【請求項16】
請求項15に記載の研磨装置において、
前記研磨パッドの回転方向に関して上流側において、前記パッド本体は、底面より高い位置で前記上流側に突出するかえしを有する、研磨装置。
【請求項17】
請求項16に記載の研磨装置において、
前記研磨液供給装置は、前記パッド本体上に配置される1又は複数の錘を更に有する、研磨装置。
【請求項18】
請求項13から17の何れかに記載の研磨装置において、
前記吊下機構と前記アームとの接続箇所を囲む防水構造を備え、
前記防水構造は、少なくとも一部にラビリンス構造を有する、研磨装置。
【請求項19】
請求項18に記載の研磨装置において、
前記防水構造は、
前記第2カバーの上面から突出して設けられ、前記吊下機構と前記アームとの接続箇所を囲む第1防水壁と、
前記第1防水壁から連続して、前記アームの両側を前記アームと隙間を空けて前記アームに沿って延びる第2防水壁と、
前記アームの両側面に設けられる第3防水壁であり、前記アームに沿って前記第2防水壁の外側を前記第2防水壁と隙間を空けて延び、前記第1防水壁と隙間を空けて終端する第3防水壁と、
を有し、
前記第1防水壁、前記第2防水壁及び前記第3防水壁がラビリンス構造のシールを構成する、研磨装置。
【請求項20】
請求項1から19の何れかに記載の研磨装置において、
前記研磨パッドの外側に配置された、前記研磨液供給装置を洗浄するための洗浄装置を更に備える、研磨装置。
【請求項21】
請求項1から20の何れかに記載の研磨装置を使用して対象物を研磨する方法であって、
前記研磨液供給装置に接続された前記アームを下降させて、研磨パッドの研磨面上に前記研磨液供給装置を着地させた後、前記アームを更に下降させて、前記係合部の前記第1ストッパに対する係合を解除し、前記アームによる前記研磨液供給装置の保持を解除すること、
前記研磨液供給装置から前記研磨面に研磨液を供給すると共に、前記研磨パッド及び/又は前記対象物を回転させつつ前記対象物を前記研磨面に押し付けて研磨すること、
研磨終了後に、前記アームを上昇させて、前記係合部を前記第1ストッパに係合させて前記アームにより前記研磨液供給装置を保持し、前記研磨液供給装置を前記アームと共に上昇させること、
を含む方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法において、
前記研磨液供給装置を前記アームと共に上昇させた後に、前記アームを旋回させることにより前記研磨液供給装置を前記研磨パッド外に水平移動させることを更に含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨装置及び研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程においては、半導体デバイス表面の平坦化技術がますます重要になっている。平坦化技術としては、化学的機械研磨(CMP(chemical Mechanical Polishing))が知られている。この化学的機械研磨は、研磨装置を用いて、シリカ(SiO)及び/又はセリア(CeO)等の砥粒を含んだ研磨液(スラリー)を研磨パッドに供給しつつ半導体ウェハなどの基板を研磨パッドに摺接させて研磨を行うものである。
【0003】
CMPプロセスを行う研磨装置は、研磨パッドを支持する研磨テーブルと、基板を保持するためのトップリング又は研磨ヘッド等と称される基板保持機構と、を備えている。この研磨装置は、研磨液供給ノズルから研磨液を研磨パッドに供給し、基板を研磨パッドの表面(研磨面)に対して所定の圧力で押圧する。このとき、研磨テーブルと基板保持機構とを回転させることにより基板が研磨面に摺接し、基板の表面が平坦かつ鏡面に研磨される。
【0004】
ここで、CMP装置に使用される研磨液は、高価であり、使用済みの研磨液の処分にもコストを要するため、CMP装置の運転コスト及び半導体デバイスの製造コスト削減のためには、研磨液の使用量の削減が求められる。また、使用済みの研磨液及び副生成物が、基板の品質及び/又は研磨レートに与える影響を抑制ないし防止することが求められている。
【0005】
本課題の解決策の一つとして、研磨装置には、研磨パッド上に載置されるパッド状又はボックス状の研磨液供給装置又は調整機構を介して研磨液を研磨パッド上に供給するものがある(例えば、特許文献1から5)。これら研磨液供給装置又は調整機構ではワイパーや囲い形状のタンクやインジェクタを研磨パッドに押し付けて、研磨液の流れを調製している。具体的には、特許文献1には、研磨剤供給機構から研磨面上に供給される研磨剤を、ワイパーとして機能する調整機構で満遍なく延ばして基板に供給する構成が記載されている。特許文献2には、研磨テーブルの中心から遠心力で広がり研磨テーブル外に向かう研磨液を、直方体容器の一方の側壁を超えて流入させ、他方の側壁のうち研磨面中心側から基板に供給する構成が記載されている。
【0006】
特許文献3には、底のない囲いの形状のタンクを研磨面に載置し、タンクの壁と研磨面との間から研磨液を供給するとともに、押し付け軸によりタンクを研磨面に押し付ける構成が記載されている。また、特許文献4に記載されるように、ワイパーブレードを研磨面に接触させ、ワイパーブレードと研磨面との間から研磨液を基板保持位置に供給するものがある。この構成では、ワイパーブレードの研磨面に対する押し付け力を調整するために、アクチュエータでワイパーブレードを押圧している。
【0007】
特許文献5に記載される装置では、内部に錘を備えるパッド状のインジェクタ(供給装置)により研磨液を研磨面上に供給するものが記載されている。このパッド状の供給装置は、研磨テーブル外の支持構造に接続されたロッドにより研磨面上に支持され、自重で研磨面に押圧されつつ、底面と研磨面との間の隙間から研磨液を基板保持位置に向かって供給するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平10-217114号
【文献】特許第2903980号
【文献】特開平11-114811号
【文献】特表2019-520991号
【文献】米国特許第8845395号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記文献に開示の供給装置及び調整機構では、研磨処理中、研磨面上に配置される供給装置及び調整機構に、研磨液及び/又は研磨残渣等が飛散して研磨液供給装置の表面及び内部に付着する場合がある。付着した研磨液及び/又は研磨残渣等は、供給装置の表面や内部で固化して、研磨面上に落下することがあり、その場合、基板表面にダメージを与えることで、研磨品質に影響を与える可能性がある。ここで、通常の研磨装置では研磨後の研磨パッド表面の洗浄を目的として、アトマイザーや高圧水リンス等のパッド洗浄機構が付加されており、本洗浄機構によるパッド洗浄の際に、供給装置に付着した一部の研磨液の除去はできる。しかし、本洗浄は研磨パッド上での洗浄のため、除去された研磨液及び/又は研磨残渣等が研磨パッド上に残留する可能性があり、その場合、次研磨の基板に対して残留した研磨液及び/研磨残渣等によるダメージが発生するおそれがある。従って、供給装置に付着した研磨液/又は研磨残渣等研磨パッドの範囲外で除去できることが好ましい。
【0010】
また、上記文献に開示の供給装置及び調整機構では、研磨パッドに押し付けて研磨液流れを調製するため、研磨処理時に研磨テーブルの回転により、研磨液供給装置と研磨パッドとの間に摩擦トルクが発生することにより、供給装置が傾いたり、振動が生じて、供給装置と研磨パッドとの接触状態が不均一になる。その場合、研磨液の流れの調整が不均一になることで、研磨性能が変動してしまう。よって、研磨性能の安定性の観点からは、研磨時において、摩擦トルクによる供給装置と研磨パッドとの接触状態の不均一化を抑制/防止することが望まれる。
【0011】
本発明の目的は、上述した課題の少なくとも一部を解決する研磨液供給システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一側面によれば、 研磨面を有する研磨パッド使用して対象物の研磨を行う研磨装置であって、 研磨液供給装置と、 前記研磨パッドに対して水平移動可能なアームと、 前記アームを昇降する昇降機構と、 前記アーム及び前記研磨液供給装置に連結され、前記研磨液供給装置を前記研磨パッドの前記研磨面に追従させる追従機構と、 前記アーム及び前記研磨液供給装置に連結され、前記昇降機構による前記アームの昇降時において前記研磨液供給装置を吊り下げる吊下機構と、を備え、 前記追従機構は、 2つのロッドであって、各ロッドが第1端及び第2端を有し、各ロッドの第1端が、前記研磨液供給装置に対して第1の球面ジョイントを介して取り付けられる2つのロッドと、 前記2つのロッドの間にて前記アームに対して固定され、前記各ロッドの第2端を摺動自在に受け入れる2つの第2の球面ジョイントと、を有し、 前記吊下機構は、 前記研磨液供給装置に対して固定された第1ストッパと、 前記アームに対して固定され、前記アームが前記研磨液供給装置に対して上昇する際に前記第1ストッパに係合する係合部と、 を備える研磨装置が提供される。
【0013】
本発明の一側面によれば、 研磨面を有する研磨パッド使用して対象物を研磨する方法であって、 研磨液供給装置に接続されたアームを下降させて、前記研磨面上に研磨液供給装置を着地させた後、前記アームを更に下降させて、前記アームによる前記研磨液供給装置の保持を解除すること、 前記研磨面に研磨液を供給すると共に、前記研磨パッド及び/又は前記対象物を回転させつつ前記対象物を前記研磨面に押し付けて研磨すること、 研磨終了後に、前記アームを上昇させて、前記アームにより前記研磨液供給装置を保持し、前記研磨液供給装置を前記アームと共に上昇させること、を含む方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る研磨装置の概略構成を示す図である。
図2】研磨液供給システムの下流側から見た斜視図である。
図3】研磨液供給システムの上流側から見た斜視図である。
図4】昇降機構の構成を示す模式図である。
図5】研磨液供給装置の斜視図である。
図6】研磨液供給装置の分解斜視図である。
図7】研磨液供給装置のパッド本体を底面側から見た斜視図である。
図8A】上流側からみた追従機構及び吊下機構の動作を説明するための説明図である。
図8B】上流側からみた追従機構及び吊下機構の動作を説明するための説明図である。
図8C】上流側からみた追従機構及び吊下機構の動作を説明するための説明図である。
図9A】下流側からみた追従機構及び吊下機構の動作を説明するための説明図である。
図9B】下流側からみた追従機構及び吊下機構の動作を説明するための説明図である。
図9C】下流側からみた追従機構及び吊下機構の動作を説明するための説明図である。
図10】第2実施形態に係る研磨液供給機構の斜視図である。
図11】補助カバーを取り外した状態の研磨液供給機構の平面図を示す。
図12】補助カバー及び上カバーを取り外した状態の研磨液供給機構の斜視図である。
図13】研磨液供給機構の分解斜視図である。
図14】研磨液供給機構の底面図である。
図15】研磨液供給機構の短辺の側からみた側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。添付図面において、同一または類似の要素には同一または類似の参照符号が付され、各実施形態の説明において同一または類似の要素に関する重複する説明は省略することがある。また、各実施形態で示される特徴は、互いに矛盾しない限り他の実施形態にも適用可能である。
【0016】
本明細書において「基板」には、半導体基板、ガラス基板、液晶基板、プリント回路基板だけでなく、磁気記録媒体、磁気記録センサ、ミラー、光学素子、微小機械素子、あるいは部分的に製作された集積回路、その他任意の被処理対象物を含む。基板は、多角形、円形を含む任意の形状のものを含む。また、本明細書において「前面」、「後面」、「前方」、「後方」、「上」、「下」、「左」、「右」、「鉛直」、「水平」等の表現を用いる場合があるが、これらは、説明の都合上、例示の図面の紙面上における位置、方向を示すものであり、装置使用時等の実際の配置では異なる場合がある。
【0017】
<第1実施形態>
(研磨装置の概略構成)
図1は、本発明の一実施形態に係る研磨装置の概略構成を示す図である。本実施形態の研磨装置1は、研磨面102を有する研磨パッド100を使用して、研磨対象物としての半導体ウェハ等の基板WFの研磨を行うことができるように構成されている。図示するように、研磨装置1は、研磨パッド100を支持する研磨テーブル20と、基板を保持して研磨パッド100の研磨面102に押し当てるトップリング(基板保持部)30と、を備えている。さらに、研磨装置1は、研磨パッド100に研磨液(スラリー)を供給する研磨液供給システム40と、研磨面102に純水等の液体及び/又は窒素等のガスを噴射し
て、使用済みのスラリー、研磨残渣等を洗い流すためのアトマイザー50と、を備えている。
【0018】
研磨テーブル20は、円盤状に形成されており、その中心軸を回転軸線として回転可能に構成される。研磨テーブル20には、貼付け等によって研磨パッド100が取り付けられる。研磨パッド100の表面は、研磨面102を形成する。研磨パッド100は、図示しないモータによって研磨テーブル20が回転することにより、研磨テーブル20と一体に回転する。
【0019】
トップリング30は、その下面において、研磨対象物としての基板WFを真空吸着などによって保持する。トップリング30は、図示しないモータからの動力により基板と共に回転可能に構成されている。トップリング30の上部は、シャフト31を介して支持アーム34に接続されている。トップリング30は、図示しないエアシリンダやボールねじを介したモータ駆動によって上下方向に移動可能であり、研磨テーブル20との距離を調整可能である。これにより、トップリング30は、保持した基板WFを研磨パッド100の表面(研磨面102)に押し当てることができる。また、トップリング30は図示しないが、その内部に複数の領域に分割されたエアバッグを有し、各エアバッグ領域に任意のエア等の流体圧力を供給することで、基板WFを背面から加圧する。さらに、支持アーム34は、図示しないモータにより旋回可能に構成されており、トップリング30を研磨面102に平行な方向に移動させる。本実施形態では、トップリング30は、図示しない基板の受取位置と、研磨パッド100の上方位置とで移動可能に構成されているとともに、研磨パッド100に対する基板WFの押し当て位置を変更可能なように構成されている。以下、トップリング30による基板WFの押し当て位置(保持位置)を「研磨領域」ともいう。
【0020】
研磨液供給システム40は、研磨パッド100に研磨液(スラリー)を供給する研磨液供給装置41を有し、研磨液供給装置41を、研磨面102上の供給位置と、研磨テーブル20の外側の退避位置との間で移動可能に構成されている。また、研磨液供給システム40は、研磨液供給装置41の研磨面102上における供給位置を変更可能に構成されている。研磨液供給システム40の詳細については後述する。
【0021】
アトマイザー50は、1又は複数のノズルを介して、研磨面102に液体及び/又は気体(例えば、純水、窒素)を噴射して、使用済みのスラリー、研磨残渣等を洗い流す装置である。アトマイザー50は、昇降及び/又は旋回機構51に接続されている。アトマイザー50は、昇降及び/又は旋回機構51により、研磨面102上の動作位置と、研磨テーブル20の外側の退避位置との間で移動可能に構成されている。また、アトマイザー50は、昇降及び/又は旋回機構51により、研磨面102上における動作位置、高さを変更可能に構成されている。
【0022】
研磨装置1は、研磨装置1の動作全般を制御する制御装置200を更に備えている。制御装置200は、CPU、メモリ等を備え、研磨レシピ等のソフトウェア及び/又は予め入力された関連機器のマシンパラメータの情報を用いて所望の機能を実現するマイクロコンピュータとして構成されてもよいし、専用の演算処理を行うハードウェア回路として構成されてもよいし、マイクロコンピュータと、専用の演算処理を行うハードウェア回路との組み合わせで構成されてもよい。
【0023】
研磨装置1では、以下のようにして基板WFの研磨が行われる。まず、基板WFを下面に保持するトップリング30を回転させると共に、研磨パッド100を回転させる。この状態で、後述する研磨液供給システム40を用いて、スラリーを供給する。具体的には、研磨液供給装置41が、それに係合するアーム60の昇降旋回機構70(後述)による旋
回動作により、スラリー供給前に研磨パッド100の研磨面102の所定位置に移動された後、スラリー供給開始と同時に、旋回昇降機構70の昇降動作により研磨パッド100の研磨面102に下降され、研磨面102に接触する。なお、研磨液供給装置41の旋回停止及び降下のそれぞれの動作と供給開始動作の関係は、上記に限定されず、装置の仕様によって適宜設定され得る。その後、トップリング30に保持された基板WFが研磨面102に対して押し当てられる。これにより、基板WFの表面がスラリーの存在下で研磨パッド100と接触した状態で、基板WFと研磨パッド100とが相対移動する。こうして、基板は研磨される。また、研磨終了後は昇降旋回機構70により研磨液供給装置41が上昇され、その後、昇降旋回機構70によるアーム60の旋回動作により研磨パッド100の外側の退避位置に移動された後、洗浄ノズル300にて洗浄される。また、これらの一連の動作シーケンスについては、制御装置200に内在する研磨レシピ及び/又は予め設定されたマシンパラメータにて事前に設定可能である。
【0024】
上述の研磨装置1の構成は一例であり、他の構成を採用してもよい。例えば、研磨装置1は、ドレッサー及び/又は温度調節装置などを更に備えてもよいし、アトマイザーを省略してもよい。ドレッサーは、研磨間、研磨中において、研磨パッド100の研磨面102の表面をコンディショニングするものであり、ダイヤモンド砥粒が配置された研磨パッド100よりも小径のディスクを研磨パッド100の研磨面102に押付け、研磨パッド100と相対運動をさせながら、研磨パッド100の研磨面102全面のコンディショニングを行う。また、温度調節機構は、例えば研磨液供給装置に接続されて、スラリーそのものを加熱冷却するものでも良く、また研磨100の研磨面102に対して、熱交換体を近接させ、熱交換体内部にヒータ、あるいは、温水乃至冷水のいずれか又は所定の混合率で調整したものを供給させることで、熱交換体を加温・冷却し、これを研磨面102に伝えることで、研磨面102の温度を調製しても良い。また、例えば、研磨パッド100の研磨面102に気体(例えばエア、N2等)を噴射供給することで、研磨面102を冷却しても良い。
【0025】
(研磨液供給システム)
図2は、研磨液供給システムの下流側から見た斜視図である。図3は、研磨液供給システムの上流側から見た斜視図である。図4は、昇降機構の構成を示す模式図である。なお、本明細書において、上流及び下流は、図1において研磨テーブル20(研磨パッド100)が時計回りに回転する場合の上流及び下流を示すものとする。
【0026】
図示されるように、研磨液供給システム40は、研磨液供給装置41と、アーム60と、研磨液供給装置41とアーム60とを連結する追従機構45及び吊下機構46と、を備えている。研磨液供給装置41は、研磨液供給装置41内に設けられた錘(後述)による重みにより研磨面102に接触するように構成されており、錘の重さを変えることで、研磨面102への研磨液供給装置41の接触圧力(荷重)が調整可能である。なお、この例では、研磨液供給装置41は、錘の荷重により研磨面102に均一に接触させられるが、他の方式でも良く、例えばエアバッグ等の弾性体を介した流体圧を研磨液供給装置41のパッド本体(後述)に印加することで、均一に研磨面102に接触させられてもよい。本明細書において、研磨液供給装置41が研磨面102に「接触する」と記載する意味は、研磨パッドの凹凸を均すために圧力をかけるように研磨液供給装置41を押し付ける訳ではなく、研磨パッドの凹凸に追従すれば良いのであり、最低限、研摩液供給装置41の錘(無論、研磨液供給装置41のパッド本体等の重量は含む)の自重、又はエアバッグ等の弾性体を介した流体圧だけで良いからである。
【0027】
研磨液供給装置41には、スラリー供給ライン120が接続されている。研磨液供給装置41は、スラリー供給ライン120からのスラリーを装置底面から研磨面102上に供給する。追従機構45及び吊下機構46は、研磨液供給装置41とアーム60との間の接
続状態を変更する。具体的には、追従機構45及び吊下機構46は、研磨液供給装置41を後述の昇降旋回機構70によるアーム60の上下移動(アーム60による保持)から解放させる解除状態と、研磨液供給装置41をアーム60の上下移動に追従させる(アーム60に保持される状態)ロック状態と、をとるように両者の接続状態を変更する。アーム60は、基端部から、研磨液供給装置41が取り付けられる先端部まで延びている。なお、この例では、アーム60は他ユニットとの干渉を避けるため、途中から湾曲し、平面視で研磨テーブルの回転方向の下流側に向かって延びている。なお、装置の仕様によって、アーム60は、湾曲せず直線的であっても良い。アーム60は、図4に示すように、先端側部60aと、別部材の基端部60bとを有し、両者がボルト等の任意の固定手段で連結されてもよい。アーム60の先端側部60a及び基端部60bは一体に形成されてもよい。先端側部60aと基端部60bとを別部材とする場合には、作業性及び/又は位置決め性を考慮して、湾曲角度が異なる先端側部60a(アーム)を複数種類用意してもよい。また、各種類の先端側部60a(アーム)は、基端部60bに対して複数(例えば3つ)の角度の間で調整できるように複数のピン穴又はピンを備えてもよい。これにより、同一種類の先端側部60aでの設置角度の微調整が可能となる。
【0028】
(昇降旋回機構)
アーム60の基端部60bは、図4に示すように、アーム60を昇降旋回させる昇降旋回機構70に接続されている。昇降旋回機構70は、アーム60を昇降させるための昇降機構80と、アーム60を旋回させるための旋回機構90とを備えている。昇降機構80及び旋回機構90は、制御装置200により制御される。
【0029】
昇降機構80は、この例では、フレーム85に固定された昇降シリンダ81を有し、アーム60の基端部60bは、昇降シリンダ81の軸82に固定されている。昇降シリンダ81は、流体ライン130から流体(エアー等の気体、又は作動油等の液体)の供給を受け、軸82を進退させるものである。昇降シリンダ81は、例えば、ピストンにより仕切られた2つの室を有し、一方の室には流体ライン130の一方が接続され、他方の室には流体ライン130の他方が接続される。昇降シリンダ81は、一方の室に流体を導入するとともに他方の室から流体を排出し、及び、他方の室に流体を導入するとともに一方の室から流体を排出することにより、軸82を進退させる。アーム60は、昇降シリンダ81の軸82進退により、上下方向に移動されるように構成されている。昇降機構80は、アーム60の上下動を案内するボールスプライン83を更に備えている。ボールスプライン83は、フレーム85に固定されている。アーム60の基端部60bは、ボールスプライン83の軸84に篏合され、昇降シリンダ81によるアーム60の上下移動が軸84に沿って案内される。アーム60の上下動を案内する構成は、ボールスプラインに限定されず、任意の案内機構を採用することができ、省略してもよい。また、昇降シリンダ81の軸82の移動を検出してアーム60の高さを検出するためのセンサ86(例えばマグネット式センサ)が設けられている。電気ケーブル140は、センサに接続されるケーブルである。センサは、省略することもできる。昇降機構80は、上述の構成に限定されず、アーム60を昇降可能な構成であれば、任意の構成を採用することが可能である。また、この例では、昇降機構80は昇降シリンダ81による駆動方式を採用するが、ボールねじ、ベルト機構を介したモータ駆動でもよい。
【0030】
また、アーム60の基端部60bは、フレーム85を介してアーム60を旋回させるための旋回機構90に接続されている。この例では、旋回機構90は、例えば、図4に示すように、フレーム85の下部に固定されたシャフト92の下端に接続されたモータ93を有する。モータ93は、例えば、減速機構等を介してシャフト92に接続される。なお、モータ93の軸をシャフト92に直接接続してもよい。アーム60は、モータ93の回転により、シャフト92が回転されることにより、研磨面102に平行な面内で旋回可能に構成されている。なお、旋回機構90は、上述の構成に限定されず、アーム60を旋回可
能な構成であれば、任意の構成を採用することが可能である。また、旋回機構90のモータ93に例えばパルスモータの使用し、パルスモータの入力パルスを調製することで、任意の角度にアーム60を旋回させてもよい。
【0031】
この例では、図2及び図3に示すように、金属製のアーム60の基端部60b、並びに昇降機構80は、これらの構成をスラリー、水、研磨残渣等の飛散から保護するための防水ボックス71内に収納される。また、図2及び図3に示すように、アーム60の基端側は、防水ボックス72により覆われる。更なるアーム60の防水のため、アーム60の表面(特に、図2及び図3において防水ボックス71、72の外にあるアーム60の部分、第2実施形態における防水手段で覆われていないアーム60の露出部分(例えば補助カバー520外にあるアーム60の部分))をフッ素樹脂等の撥水性材料にてコーティングしてもよい。この場合、防水ボックス71、72の外のアーム60の部分は、研磨テーブル20外において、洗浄ノズル300(図1)で適宜、洗浄することにより、スラリー等の付着による不都合を抑制することができる。なお、アーム60を樹脂でコーティングする代わりに、アーム60の大部分又は全部を防水カバーで覆う構成を採用しても良い。また、防水ボックス71、72も、洗浄ノズル300(図1)で適宜、洗浄してもよい。
【0032】
(吊下機構)
図5は、研磨液供給装置の斜視図である。吊下機構46は、図2図5に示すように、アーム60の先端に固定されたアーム側ストッパ450(「係合部」に相当)と、研磨液供給装置41にシャフト454を介して固定されたパッド側ストッパ455(「第1ストッパ」に相当)と、を有する。アーム側ストッパ450は、ボルト、接着剤、その他の任意の手段でアーム60に固定されてもよい。アーム側ストッパ450をアーム60と一体に形成してもよい(アーム60の一部をアーム側ストッパ450としてもよい)。シャフト454は、その一端が研磨液供給装置41のカバー430(図6参照)に固定され、他端にパッド側ストッパ455が設けられる。パッド側ストッパ455として、例えば、ワッシャ、フランジ等を採用することができるが、シャフト454の大径部として機能する部分であれば任意の構成を採用することができる。パッド側ストッパ455は、ナットによる挟み込み、接着剤、その他任意の手段でシャフト454に固定されてよく、シャフト454と一体に形成されてもよい。シャフト454は、研磨液供給装置41とパッド側ストッパ455との間で、アーム側ストッパ450に設けられた貫通穴452を通過している。貫通穴452は、内壁がシャフト454に接触しない大きさの通過面積を有し、追従機構45の作動中にシャフト454が通路壁に接触しないように構成されている。貫通穴452は、この例では円形の穴であるが、任意の形状(多角形等を含む)の穴又は切り欠きであってもよい。切り欠きの場合、メンテナンス時に、パッド側ストッパ455をシャフト454から取り外すことなく、研磨液供給装置41をアーム側ストッパ450から取り外すことができる。
【0033】
アーム60が昇降機構80により上昇すると、アーム側ストッパ450が、パッド側ストッパ455の下面に係合し(パッド側ストッパ455がアーム側ストッパ450の貫通穴452の周辺部に係合し)、アーム60の上昇とともに研磨液供給装置41が上昇する。このとき、パッド側ストッパ455は、研磨液供給装置41の幅方向/短手方向(長手方向を横切る方向)の傾きを抑制する役割を有する。また、研磨液供給装置41が研磨面102に着地した状態でアーム60が下降すると、アーム側ストッパ450が、パッド側ストッパ455の下面から離れて下方に移動する。この状態では、研磨液供給装置41は、アーム60による保持/支持から解放され、アーム60の位置に関係なく研磨面102に対して、その内部の錘423(後述)の荷重により均一に(研磨面102の凹凸に追従するように)接触させられる。なお、この例では、アーム側ストッパ450の上面451が、パッド側ストッパ455と係合する部分において、他の部分よりも低くなった段差面451a(以下、ストッパ面451aとも称す)を有する。段差面451aの高さはパッ
ド側ストッパ455とアーム側ストッパ450の係合位置を調整するために設定されるものである。なお、段差面451aが形成されず上面451が平坦であってもよい。パッド側ストッパ455とアーム側ストッパ450の係合位置は、段差面451aを設けず又は段差面451aと組み合わせて、研磨液供給装置41(シャフト454)に対するパッド側ストッパ455の位置を調整することにより実施することも可能である。また、これらの調整方法に代えて又は組み合わせて、アーム60とアーム側ストッパ450との間にシム(図示せず)を配置し、シムの高さを変更することにより、アーム側ストッパ450とパッド側ストッパ455との係合位置を調整してもよい。
【0034】
(追従機構)
追従機構45は、図3図5に示すように、アーム側ストッパ450に固定されたハウジング型の球面ジョイントアセンブリ460と、球面ジョイントアセンブリ460の両側に設けられる回止兼ストッパ463(「第2ストッパ」に対応)と、球面ジョイントアセンブリ460の両側において、球面ジョイントアセンブリ460と研磨液供給装置41とを相対移動可能に接続するロッド465と、を備えている。本実施形態では、球面ジョイントアセンブリ460(球面ジョイント461b)は、各ロッド465の間にてアーム側ストッパ450を介してアーム60に対して固定されている。本実施形態では、球面ジョイントアセンブリ460は研磨液供給装置41の長手方向の中心にあり(球面ジョイント461bは長手方向中心付近で中心に対象な位置にあり)、各ロッド465は同一の長さを有し、研磨面102に略垂直な平面内で移動可能である。これにより、研磨液供給装置41の長手方向にて各ロッドを対称に配置及び摺動させることができ、研磨液供給装置41の長手方向の傾きを抑制することができる。但し、他の実施形態では、各ロッド465が研磨面102に略垂直な平面とは異なる平面内で移動可能であり得る。他の実施形態では、各ロッド465は同一の長さである構成に限定されない。球面ジョイントアセンブリ460及び/又は回止兼ストッパ463は、ロッド465毎に分割された構成でもよい。例えば、各球面ジョイント461bは、ハウジング461aに代えて、アーム60に対してアーム側ストッパ450を介して固定された個別の板状部材に設けられてもよい。アーム側ストッパ450、球面ジョイントアセンブリ460、及び回止兼ストッパ463は、それぞれ別部材で形成され、ねじ止め、接着等の任意の手段で互いに固定することができる。アーム側ストッパ450、球面ジョイントアセンブリ460、及び回止兼ストッパ463の一部又は全部は一体に形成されてもよい。
【0035】
追従機構45は、研磨液供給装置41のパッド本体410(図6)の底面が、接する相手となる研磨パッド100の時間的凹凸の変化(研磨パッド回転による時間的凹凸変化、摩耗による時間的凹凸変化を含む)に対し、パッド本体410の底面全体が水平を維持したまま(底面が全体として水平を維持したまま)、凹凸に追従できる機能を有する構造を提供する。なお、図3および図5では球面ジョイントアセンブリ460は研磨テーブル20の回転上流側においてアーム側ストッパ450に固定されている。研磨液供給部材41が研磨パッド100と接触時に、研磨パッド100との摩擦により回転モーメントがかかることで、研磨液供給部材41が回転上流側の端を支点に傾きやすくなるが、本支点位置に球面ジョイントアセンブリを配置することで、研磨液供給装置41の傾きを抑制可能となる。
【0036】
球面ジョイントアセンブリ460は、ハウジング461aと、ハウジングの両側側面にねじ止めその他任意の固定手段で取り付けられた球面ジョイント461bとを備えている。球面ジョイント461bは、シャフトが通過可能な軸受(貫通穴)を有する球体と、球体を回転可能に保持する本体とを有する。この構成により、シャフト(ロッド465)が傾きを変えながら球面ジョイント461bを通じて摺動可能である。ハウジング461aは、各ロッド465の一端(この例では、先端/第2端とも称す)を受け入れる内部空間を有している。各ロッド465を受け入れる内部空間は互いに仕切られていても、連通し
ていてもよい。各ロッド465の一端は、球面ジョイント461bの軸受を通過しハウジング461aの内部空間に挿入され、球面ジョイント461bの軸受に摺動可能に配置される。これにより、各ロッド465は、球面ジョイントアセンブリ460が研磨液供給装置41に対して相対的に上昇下降する際に、球面ジョイント461bにより研磨面102に対する角度を変えながら摺動することが可能であり、各ロッド465がアーム60の上下動に追従することができる。
【0037】
ロッド465の他端(この例では、基端/第1端とも称す)は、球面ジョイント466a(図5)を有するロッドエンド466にねじ止め、圧着等で接続されている。ロッドエンド466は、ロッド465に接続される一端を有する筒状部と、筒状部の他端に設けられた概ね平坦な取付部とを有している。この取付部には、シャフト(この例では、シャフト467)が通過可能な軸受(貫通穴)を有する球体が回転可能に取り付けられた球面ジョイント466aが設けられている。シャフト467が、ロッドエンド466の球面ジョイント446aの軸受に通されてブラケット434の取付部435の取付面に固定されることにより、ロッド465が球面ジョイント446aを介して研磨液供給装置41に固定される。取付部435の取付面の各々は、研磨液供給装置41の長手方向外側から内側に向かって上昇するように傾斜している。ブラケット434は、研磨液供給装置41のカバー430にねじ止め、接着、その他任意の固定手段で固定される。球面ジョイント461bのがたつきを抑制するために、ロッドエンド466とブラケット434の取付部435の取付面との間にワッシャが配置されてもよい。ロッドエンド466は、球面ジョイントアセンブリ460が上昇下降する際に、球面ジョイント466aにより、研磨面102に対する傾きを変更できるようになっている。ロッドエンド466の傾きの変更によりロッド465の傾きが変更される。球面ジョイントアセンブリ460が上昇下降すると、各ロッド465の両端の球面ジョイント461b及び466aにより各ロッド465が傾きを変えながら、各ロッド465の先端側が球面ジョイント461bを摺動する。このようにして、各ロッド465が、球面ジョイントアセンブリ460(アーム60)の上下方向の移動に追従する。なお、ロッド465及びロッドエンド466を合わせてロッドと把握し、ロッドがロッドエンド466を有すると考えてもよい。
【0038】
また、球面ジョイントアセンブリ460の下部には、研磨液供給装置41の長手方向の両側に延びるアーム462を介して回止兼ストッパ463が設けられており、回止兼ストッパ463には各ロッド465の中間部分(ロッドエンド466と球面ジョイント461bとの間)を受け入れる溝464が設けられている。回止兼ストッパ463は、溝464の両側の側壁により各ロッド465が横方向に移動すること(研磨液供給装置41側及び反対側に倒れること)を抑制/防止する。また、溝464の底面により、各ロッド465を下方から支持する。これにより、各ロッド465を球面ジョイントアセンブリ460に対称な同じ高さの位置で回止兼ストッパ463に係合させることにより、研磨液供給装置41の幅方向の傾きを抑制/防止する。また、研磨液供給装置41をアーム60で上昇させる際に、研磨液供給装置41による荷重を回止兼ストッパ463(溝464)で受け止めるよう構成される。
【0039】
各ロッド465のロッドエンド466が、研磨液供給装置41の下部(底面近傍)に固定され、及び/又は、研磨テーブル20の回転方向に対して研磨液供給装置41を引くようにアーム60(追従機構45)が配置されることにより、研磨テーブル20の回転による摩擦トルクに起因する研磨液供給装置41への曲げモーメントの影響を低減することができる。
【0040】
また、研磨液供給装置41は、図5に示すように、球面ジョイントアセンブリ460及びロッド465、ロッドエンド466を介してアーム60に傾き変更可能に固定され、アーム60との固定部より下流側に配置される。言い換えれば、アーム60が流れ(研磨パ
ッド100の回転方向)に対して研磨液供給装置41を引くように支持する。これにより、研磨テーブル20の回転による研磨液供給装置41への曲げモーメントの影響を低減することができる。また、アーム60が流れ(研磨パッド100の回転方向)に対して研磨液供給装置41を引くように保持するので、研磨パッド100(研磨テーブル20)の回転による研磨液供給装置41のアーム60への突っ込みに起因する振動を低減することができる。
【0041】
アーム60の上昇により球面ジョイントアセンブリ460が上昇すると、各ロッド465が研磨面102に鉛直な方向に近づくように角度を変えながら、各ロッド465の先端側が球面ジョイントアセンブリ460(球面ジョイント461b)を摺動する。また、アーム60の下降により球面ジョイントアセンブリ460が下降すると、各ロッド465が研磨面102に水平な方向に近づくように角度を変えながら、各ロッド465の先端側が球面ジョイントアセンブリ460(球面ジョイント461b)を摺動する。このとき、各ロッド465の中間部分は、回止兼ストッパ463の溝464内で下方から支持されつつ研磨面102に対する角度を変え、研磨液供給装置41の幅方向の傾きが抑制/防止される。アーム60が上昇し、アーム側ストッパ450(段差面451a)がパッド側ストッパ455に係合すると、研磨液供給装置41とアーム側ストッパ450との間の距離が固定され、球面ジョイントアセンブリ460及び回止兼ストッパ463の位置も研磨液供給装置41に対して固定される。また、研磨液供給装置41とアーム側ストッパ450との間の距離が固定されることにより、球面ジョイントアセンブリ460及び回止兼ストッパ463、並びに、各ロッド465の研磨液供給装置41に対する位置が固定される。さらにアーム60が上昇すると、パッド側ストッパ455がアーム側ストッパ450(段差面451a)にロックされた状態で、かつ、各ロッド465が回止兼ストッパ463にロックされた状態で、研磨液供給装置41がアーム60と共に上昇する。このとき、研磨液供給装置41は、パッド側ストッパ455及び回止兼ストッパ463の2箇所のストッパで同時にロックされるので、安定した姿勢で上昇される。また、回止兼ストッパ463により各ロッド465が固定され、研磨液供給装置41の幅方向の傾きが抑制/防止されるので、研磨液供給装置41は安定した姿勢で上昇することができる。一方、パッド側ストッパ455がアーム側ストッパ450から解放されると、研磨液供給装置41は、その内部の錘により研磨面102に対して、均一に(研磨面102の凹凸に追従するように)接触させられるが、研磨液供給装置41の移動に応じて各ロッド465が摺動し、これにより、研磨液供給装置41が水平な姿勢を維持したまま研磨面102上の凹凸に追従可能となる。
【0042】
(研磨液供給装置)
図6は、研磨液供給装置41の分解斜視図である。図7は、研磨液供給装置41のパッド本体410を底面側から見た斜視図である。
【0043】
図6に示すように、研磨液供給装置41は、パッド本体410と、複数の錘423と、カバー430と、パッキン422とを備えている。パッド本体410及びカバー430は、樹脂で形成される。パッド本体410は、例えば、PPSやPEEK等の硬質プラスチックで形成することができる。パッド本体410は、例えば、板状の部材として形成される。図7に示すように、パッド本体410の底面418には、研磨面102上にスラリーを供給するためのスリット419が設けられている。スリット419の底面には、スリット419内にスラリーを供給するための供給口414が設けられている。供給口414から供給されるスラリーは、スリット419内に広がり、パッド本体410の底面418と研磨パッド100との間の隙間から、研磨パッド100上に押し広げられる。装置の仕様等に応じて、供給口414は、スリット419内にてスリット長手方向の任意の位置任意の数で設けることができる。供給口414は、図6に示すように、パッド本体410の上面まで延びて開口している。供給口414は、パッド本体410の上面側において、チュ
ーブ等のスラリー供給ライン120(図5)及び/又はOリング421を受け入れるために面取りされている。シールとして、Oリング421以外の任意のシールを採用してもよい。図7において、パッド本体410は長方形に限らず、2つの方向(例えば、直交する2つの方向)の長さの間で長短のある形状ならば良い。例えば、パッド本体410は、長方形以外の多角形(三角形、五角形など)、少なくとも一部に曲線を有する形状でもよい。また、スリット419は、長手方向両端の両方又は一方が解放端(図7にて、研磨液供給装置41の短辺まで延び開口する構成)であっても良い。また、パッド本体410には、スラリー供給口414及びそのスリット419以外に、溝があっても良い。
【0044】
各錘423は、ねじ止め、接着、溶着、その他任意の固定手段によりパッド本体410に取り付けられてよい。各錘423及びパッド本体410には、位置決め用の構成(例えば、ピン及びピン穴)が設けられてもよい。カバー430は、ねじ止め、接着、溶着、その他任意の固定手段によりパッド本体410に取り付けられてもよい。カバー430は、パッド本体410上の錘423を覆うように、パッド本体410に取り付けられる。
【0045】
なお、錘423の材質としては、SUS等の金属材料を使用してもよく、また表面をフッ素樹脂等のコーティングを施してもよい。この例では、錘423は、他の層などを介さずに、パッド本体410に直接取り付けられるが、固定方法によっては粘着層や弾性層をパッド本体410と錘423の間に介在させてもよい。また、一方の端部の錘423には、上面から下面まで貫通する貫通穴424が設けられ、貫通穴424には、チューブ等のスラリー供給ライン120(図5)が通される。スラリー供給ライン120は、錘423の貫通穴424を通り、Oリング421を通してパッド本体410の供給口414に挿入される。この状態で、錘423とパッド本体410とをしっかりと固定することにより、Oリング421が潰れ、スラリー供給ラインと供給口414との接続箇所がOリング421でシールされ、気密性が高められる。また、スラリー供給ライン120は、カバー430の貫通穴431に通される。
【0046】
カバー430は、パッド本体410及び複数の錘423を覆うように取り付けられる。このとき、パッド本体410上の錘423を取り囲むようにパッド本体410上にパッキン422が配置される。パッキン422は、例えば、両面テープによりパッド本体410の上面の周囲に取り付けられる。パッキン422の固定方法は、両面テープに限らず、接着等の任意の固定手段であってもよい。パッキン422は、軟質樹脂(例えば、PTFE)、ゴム(例えば、EPDM)等から形成することができる。カバー430をパッド本体410に取り付ける際に、パッキン422の上面がカバー430の内壁に設けられた肩部(図示せず)に当接して所定の厚みだけ、押しつぶされるようにする。これにより、カバー430による気密性が高められる。この結果、カバー430とパッド本体410との間がパッキン422によりシールされ、スラリー、研磨残渣等がカバー430の内部に侵入することを抑制/防止することができる。
【0047】
研磨液供給装置41は、図5に示すように、カバー430の長手方向の両端の各々に取り付けられる2つのブラケット434を更に備える。少なくとも一方のブラケット434は、カバー430と一体に形成されてもよい。各ブラケット434は、概ねL字形状を有し、カバー430の上面及び上流側の側面に取り付けられる。ブラケット434のうちカバー430の上流側側面に配置される部分の下部には、追従機構45のロッドエンド466を取り付けるための取付部435が一体に設けられている。取付部435の下面には、カバー430の上流側側面に当たった使用済みスラリーを排出するための通路444が設けられている。通路444は、カバー430の長手方向に沿って取付部435を貫通するように設けられている。取付部435の上面には、ロッドエンド466を取り付けるための取付面が設けられている。取付部435の取付面は、カバー430の長手方向内側から外側に向かって下がるような斜面で形成されている。取付部435の取付面には、ロッド
エンド466を取り付けるためのシャフト467の先端を固定するための篏合穴又はネジ穴が設けられている。なお、取付部435の取付面は研磨面102に近いほど、研磨時の摩擦トルクによる研磨液供給装置41の傾きや振動を抑制できる。
【0048】
(吊下/追従動作説明)
図8Aから図8C図9Aから図9Cは、追従機構及び吊下機構の動作を説明するための説明図である。図8Aから図8Cは、研磨液供給装置41の近傍を上流側(スラリー排出側)から見た側面図を示す。図9Aから図9Cは、研磨液供給装置41の近傍を下流側(スラリー供給側)から見た側面図を示す。
【0049】
図8A及び図9Aは、アーム60並びに追従機構45/吊下機構46が、研磨液供給装置41を高さh2(研磨面102を基準とした研磨液供給装置41の下面までの高さ)で吊り下げた状態を示す。このとき、アーム側ストッパ450の上面451(段差面451a以外の部分)の高さは、H=H0+h2とする。このとき、アーム側ストッパ450の段差面451aがパッド側ストッパ455に係合している。また、各ロッド465は、回止兼ストッパ463により下方から支持されることで、研磨液供給装置41の幅方向の傾きが抑制/防止されている。また、吊下機構46(アーム側ストッパ450、パッド側ストッパ455)によっても、研磨液供給装置41の幅方向の傾きが抑制/防止されている。
【0050】
図8B及び図9Bは、図8A及び図9Aの状態からアーム60を高さh2だけ下降させ、アーム60並びに追従機構45/吊下機構46が、研磨液供給装置41を研磨面102に着地した状態を示す。このとき、アーム側ストッパ450の段差面451aは依然としてパッド側ストッパ455に係合している。この状態では、研磨液供給装置41はアーム60に保持され、アーム60の位置と独立して更に下降することはできない。このとき、研磨液供給装置41の高さは0であり、アーム側ストッパ450の上面451の高さは、H=H0である。各ロッド465は、回止兼ストッパ463により下方から支持されることで、研磨液供給装置41の幅方向の傾きが抑制/防止されている。また、吊下機構46(アーム側ストッパ450、パッド側ストッパ455)によっても、研磨液供給装置41の幅方向の傾きが抑制/防止されている。
【0051】
図8C及び図9Cは、図8B及び図9Bの状態からアーム60を更に高さh1(<h2)だけ降下させた状態であり、研磨液供給装置41からスラリーを研磨面102に供給して研磨処理を行う状態である。アーム側ストッパ450の上面451の高さは、H=H0-h1である。このとき、研磨液供給装置41は研磨面102に着地した状態であるため、パッド側ストッパ455の研磨面102からの高さは変化せず、アーム側ストッパ450(段差面451a)のみが降下してパッド側ストッパ455から離間する。この状態では、パッド側ストッパ455がアーム側ストッパ450(段差面451a)から解放され、研磨液供給装置41は、アーム60から解放された状態で(アーム60の位置と独立して)、複数の錘423の荷重により研磨面102に接触させられる。研磨液供給装置41の長手方向に配列された複数の錘423により、パッド本体410が研磨面102の凹凸に追従して撓むことが可能である。
【0052】
研磨面102が摩耗した場合には、研磨液供給装置41及びパッド側ストッパ455は、図8C及び図9Cの状態から研磨面102の下降に追従して降下する一方、アーム60及びアーム側ストッパ450(段差面451a)は下降せず高さを維持するため、パッド側ストッパ455が下降してアーム側ストッパ450の段差面451aに接近する傾向にある。この場合、h1(研磨液供給装置41の着地時点から更にアームを下降させる距離(パッド側ストッパとアーム側ストッパとを離す距離))を研磨面102の摩耗分よりも大きく設定しておけば、パッド側ストッパ455が、研磨面の摩耗に追従して下降したと
しても、アーム側ストッパ450(段差面451a)に接触することはなく、研磨液供給装置41がアーム60から解放された状態が継続され、研磨液供給装置41内の錘423の荷重によりパッド本体410の底面418が研磨面102の摩耗及び凹凸に追従することができる。
【0053】
この例では、昇降機構80(昇降シリンダ81)によるアーム60の上下動のストロークはh1+h2である。このストロークでは、昇降機構80は、アーム60の上昇により研磨液供給装置41を研磨面102からh2の高さまで上昇させる(図8A図9A)。また、昇降機構80は、アーム60を高さh2だけ下降させることにより研磨液供給装置41を研磨面102に着地させることができ(図8B図9B)、更に、研磨液供給装置41を研磨面102に着地させた状態でアーム60を高さh1だけ下降させて研磨液供給装置41をアーム60から解放することができる(図8C図9C)。
【0054】
研磨液供給装置41を研磨面102上に着地させ、研磨液供給装置41をアーム60から解放する動作は、上述の通りである。次に、研磨処理が終了し、研磨液供給装置41を研磨テーブル20外に退避させる場合について説明する。図8C及び図9Cの状態で研磨処理が終了した後、アーム60を上昇させる。このとき、アーム側ストッパ450の段差面451aは、パッド側ストッパ455から離間しているので、アーム側ストッパ450の段差面451aがパッド側ストッパ455に接触するまでは、研磨液供給装置41及びパッド側ストッパ455が高さを変えず、アーム60及びアーム側ストッパ450の段差面451aのみが上昇する。アーム側ストッパ450の段差面451aが高さh1だけ上昇してパッド側ストッパ455に接触すると、図8B及び図9Bの状態になる。この状態から更にアーム60及びアーム側ストッパ450の段差面451aを上昇させると、アーム側ストッパ450の段差面451aがパッド側ストッパ455とともに上昇し、アーム60の上昇に追従して研磨液供給装置41が上昇する。図8B及び図9Bの状態からアーム60を更にh2だけ上昇させると、図8A及び図9Aの状態になる。
【0055】
図8A及び図9Aの状態で、アーム60を旋回機構90により旋回させて研磨液供給装置41を研磨テーブル20外の退避位置まで退避させる。研磨テーブル20外の退避位置において、研磨液供給装置41を洗浄ノズル300(図1)により洗浄することができる。この洗浄では、パッド本体410の底面、カバー430の外表面、及びアーム60を洗浄する。これにより、研磨液供給装置41に付着したスラリー、研磨残渣等を洗い流すことができる。また、アーム60により研磨液供給装置41を旋回移動させて、研磨面102の所望の位置に設置することができる。これにより、研磨液供給装置41の研磨面102上での設置位置を容易に調整することができる。
【0056】
上述の実施形態によれば、追従機構45及び吊下機構46により研磨液供給装置41を吊り下げて保持することが可能である。これにより、研磨液供給装置41及び/又は研磨装置1のメンテナンスが容易になる。特に、本実施形態では、追従機構45及び吊下機構46により、錘加圧型の研磨液供給装置41を吊下げて保持することが可能であり、吊下げを解除して研磨液供給装置41が錘423の荷重で研磨面102に接触させられるようにすることができる。また、2つのストッパ(アーム側ストッパ450、パッド側ストッパ455;回止兼ストッパ463、ロッド465)を係合させた状態で研磨液供給装置41を吊下げて保持するので、安定した姿勢で上昇及び保持することができる。
【0057】
上述の実施形態によれば、錘加圧型の研磨液供給装置41を研磨テーブル20外の退避位置に退避させて洗浄ノズル300により洗浄することができる。これにより、研磨液供給装置41に付着したスラリー等が固着し、固着したスラリー等が研磨面102に落下して研磨処理に影響を与えることを抑制/防止することが可能であり、また洗浄時に洗い流されたスラリー及び研磨残渣等が研磨パッド100の研磨面102上に残留することなく
、研磨液供給装置41の洗浄が可能となる。
【0058】
上述の実施形態によれば、追従機構45及び吊下機構46は、研磨液供給装置41をアーム60の上下動から解放することができるので、研磨液供給装置41が錘の荷重で研磨面102に接触させられた状態でスラリーを研磨面102に供給することができる。また、研磨液供給装置41は、複数の錘423の構造により、長手方向に沿って柔軟に湾曲することが可能であり、研磨面102の凹凸及び/又は研磨面102の摩耗に良好に追従することができる。
【0059】
上述の実施形態によれば、研磨液供給装置41を追従機構45及び吊下機構46により吊り下げた状態で、アーム60の旋回により研磨液供給装置41を供給位置と退避位置との間で移動させることができる。また、研磨液供給装置41を旋回させることにより、研磨液供給装置41の研磨面102上での位置を容易に調整することが可能である。また、研磨処理中などに、研磨液供給装置41を研磨面102上で着地させたまま揺動させ、スラリーの供給位置を変更することが可能である。
【0060】
また、研磨液供給装置41の幅方向の傾きを追従機構45の回止兼ストッパ463により抑制/防止することができる。また、追従機構45の研磨液供給装置41への固定箇所(ロッドエンド466)を研磨液供給装置41の下部(底面の近傍)に設け、また研磨パッド(研磨テーブル)の回転方向に対して研磨液供給装置41を引っ張るようにアーム60を配置したため、研磨パッド(研磨テーブル)の回転による研磨液供給装置41への曲げモーメントの影響を抑制することができる。また、低い重心の位置で研磨液供給装置41を追従機構45により吊り下げることができ、研磨液供給装置41の姿勢を安定させることができる。
【0061】
上述の実施形態によれば、吊下機構46及び/又は追従機構45により研磨液供給装置41の幅方向の傾きを抑制できると共に、複数の錘423により研磨液供給装置41の底面を研磨面102の凹凸に応じて撓ませることができる。これらの作用効果の組み合わせにより、研磨液供給装置41を研磨面102の凹凸に良好に追従させると共に接触状態の不均一化を効果的に抑制/防止することができる。この結果、安定したスラリーの供給を行い、研磨性能を安定させることができる。更に、上述した通り、研磨液供給装置41の振動も抑制できるため、接触状態の不均一化を更に効果的に抑制/防止することができ、安定したスラリーの供給を行い、研磨性能を安定させることができる。
【0062】
(他の実施形態)
(1)上記実施形態では、研磨液供給装置41のパッド本体410をカバー430で覆い、パッキン422で防水する構成とした。しかし、パッキン422を設ける代わりに又はパッキン422に追加して、カバー430の内部空間に気体を供給するラインを接続し、カバー430の内部空間を気体(窒素ガス等の不活性ガス)でパージするようにしてもよい。このようにしても、パッド本体410の上部及び/又は錘423にスラリーが付着することを抑制/防止することができる。また、カバー430及びパッキン422を省略し、パッド本体410及び錘423を洗浄ノズル300で適宜洗浄するようにしてもよい。この場合、パッド本体410及び錘423がカバー430で覆われていないため、これらを容易に洗浄することができる。なお、本実施形態においては、錘表面をフッ素樹脂等のコーティングを施すことで、さらに容易に洗浄が可能となる。
【0063】
(2)上記実施形態では、研磨液供給装置41に錘423を内蔵する構成を説明したが、研磨面102上でアーム60の上下動から解放された研磨液供給装置41の上にロボットハンド等で錘を置いて研磨処理を実施し、錘を取り外してから研磨液供給装置41を吊り上げるようにしてもよい。研磨液供給装置41上にエアバッグを設け、アーム60の上
下動から解放された研磨液供給装置41をエアバッグの膨張により研磨面102に均一に(研磨面の凹凸に追従するように)接触させるようにしてもよい。
【0064】
<第2実施形態>
図10は、第2実施形態に係る研磨液供給機構400の斜視図である。同図(A)は、メインカバー510及び補助カバー520を取り付けた研磨液供給機構400を示す。同図(B)は、補助カバー520を取り外した研磨液供給機構400を示す。同図(C)は、更にアーム60を取り外した研磨液供給機構400を示す。図11は、補助カバー520を取り外した状態の研磨液供給装置41の平面図を示す。
【0065】
本実施形態では、上述したパッド本体410及び錘423を覆うカバー430に代えて、研磨液供給装置41(パッド本体410及び錘423)、追従機構45、吊下機構46を含む構成の全体を覆うカバー500を設けた点が、上記実施形態と異なるが、他の構成は上記実施形態と同様である。以下、上記実施形態と異なる点を説明し、上記実施形態と同様の構成には同様の符号を付し、説明を省略する。なお、研磨液供給装置41(パッド本体410及び錘423)、追従機構45、吊下機構46を含む構成を研磨液供給機構400と称する。また、研磨液供給装置、研磨液供給機構の名称は、本明細書における説明の都合上のものであり、上記定義とは異なってもよい。
【0066】
本実施形態のカバー500は、研磨液供給機構400の全体を覆うメインカバー510と、メインカバー510から露出する研磨液供給機構の部分(研磨液供給機構400とアーム60との接続箇所及びその近傍)を覆う補助カバー520と、を有する。メインカバー510は、研磨液供給機構400の下部を覆う下カバー511と、研磨液供給機構の上部を覆う上カバー512とを有する。補助カバー520は、下方に開口する概ね直方体形状とすることができるが、下方が開口する任意の形状とすることができる。本実施形態では、補助カバー520は、平面視で、上カバー512の上面より小さい面積を有し、必要最小限の寸法で形成されるが、上カバー512の上面と同一の面積を有してもよい。メインカバー510は、概ね直方体形状とすることができるが、研磨液供給機構400の全体を概ね覆うことができれば、任意の形状であってよい。上カバー512は、下方に開口する概ね直方体形状とすることができるが、下カバー511の形状に応じて任意の形状とすることができる。上カバー512の上壁(図10)及び下カバーの上壁(図12)には、スラリー供給ライン120を通過させる貫通穴(図示略)が設けられ、第1実施形態と同様にパッド本体410に接続される。
【0067】
上カバー512の上面には、開口531が設けられており、開口531の周囲には、開口531を囲むように防水壁532が上面から突出して設けられている。防水壁532の一端側には、図10(B)及び図11に示すように、アーム60の先端部を通過させる段差部又は切り欠きが設けられており、段差部の両側には、防水壁532から連続して延びる2つの防水壁533が設けられている。防水壁533は、防水壁532の外側に向かって、アーム60の両側に沿ってアーム60と隙間を空けて延びる。防水壁533は、上記段差部の両側で防水壁532から延長して一体に設けられている。即ち、2つの防水壁533の間をアーム60の先端部が通過して、吊下機構46の一部を構成するブラケット(取付部材)470に固定される。ブラケット470は、図12に示すように、アーム側ストッパ450の上面に取り付けられる略逆U字形状又はアーチ状の部材であり、ブラケット470の上部梁の下面に、アーム60の先端がねじ止め、接着、その他任意の固定手段で固定される。ブラケット470の上面には、吊下機構46及び追従機構45を下カバー511から取り外す際に使用される取っ手480が設けられている。
【0068】
アーム60の先端部の両側には、図10(B)及び図11に示すように、平面視略U字状の防水壁534が取り付けられている。防水壁534は、アーム60の両側面に取り付
けられており、防水壁532と共にアーム60の先端部を囲むように設けられている。防水壁534は、アーム60の両側で、アーム60の両側面と隙間を空けて、アーム60に沿って防水壁532に向かって延び、防水壁532と隙間を空けて終端している。また、両側の防水壁534は、2つの防水壁533から隙間をもって、2つの防水壁533を外側から挟むように配置される。即ち、防水壁533と防水壁534が互い違いに重なり合い、防水壁534の先端が防水壁532に隙間を空けて対向することで、アーム60と研磨液供給機構400の接続部を含む、研磨液供給機構400のメインカバー510からの露出部分を防水するラビリンス構造を形成する。
【0069】
アーム60の上面には、図10(B)及び図11に示すように、1又は複数の支柱536(この例では3本)が設けられており、補助カバー520が上カバー512に取り付けられたときに、これらの支柱536の先端面で補助カバー520の上壁内面を支えるようになっている。また、支柱536の先端面にはネジ穴(図示略)が設けられており、補助カバー520の上壁を通したねじ、ボルト等でねじ止めできるようになっている。防水壁533と反対側において、防水壁532の上端には、研磨液供給装置41の長手方向に延びる折曲部535が設けられている。折曲部535は、補助カバー520が上カバー512に取り付けられたときに、補助カバー520の下方開口部の一部を覆い、スラリーが開口531に侵入することを防止する。
【0070】
図12は、補助カバー520及び上カバー512を取り外した状態の研磨液供給機構400の斜視図である。同図(A)は、研磨テーブルの回転方向を基準として上流側からみた斜視図である。同図(B)は、研磨テーブルの回転方向を基準として下流側からみた斜視図である。図13は、研磨液供給機構400の分解斜視図である。図14は、研磨液供給機構400の底面図である。図15は研磨液供給機構400の短辺の側からみた側面図である。
【0071】
図12及び図13に示すように、下カバー511は、研磨液供給装置41のパッド本体410、錘423、追従機構45、吊下機構46を収容する。下カバー511の上壁541には、錘423、追従機構45、吊下機構46の一部又は全部を露出する開口542が設けられている。下カバー511の上壁541の周囲には、段差部543が設けられており、上カバー512の下方開口部の端面及び内側面が段差部543に篏合して、上カバー512が下カバー511に取り付けられるようになっている。パッド本体410及び錘423は、ねじ止め、接着、その他任意の固定手段(図示省略)で互いに固定され、パッド本体410及び錘423の組立体が、ねじ止め、接着、その他任意の固定手段(図示省略)で下カバー511の内部で下カバーに対して固定される。例えば、パッド本体410及び錘423が互いに固定された後、錘423が下カバー511の上壁541の内側面に固定される。これにより、パッド本体410、錘423及び下カバー511は、互いに固定され、一体として移動する。但し、後述するように、パッド本体410は、下カバー511の開口546内で隙間547をもって配置されており、下カバー511の底面に干渉されずに、研磨面の凹凸に応じて変形可能となっている。
【0072】
本実施形態の吊下機構46のアーム側ストッパ450は、図12(B)に示すように、下流側に突出する係合部456を備えている。また、パッド側ストッパ457は、略逆U字形状の部材で設けられ、下カバー511の下流側の長手方向の側壁内面にねじ止め、接着、その他任意の固定手段で固定されている。パッド側ストッパ457は、下カバー511に上カバー512を取り付けた際に、メインカバー510内に収容されるように配置されている。アーム側ストッパ450の係合部456が、第1実施形態のアーム側ストッパ450の係合部(貫通穴452の周辺部)に対応する。パッド側ストッパ457が、第1実施形態のパッド側ストッパ455に対応する。本実施形態では、係合部456が、パッド側ストッパ457の上梁の内側に係合又は解除されることにより、アーム60側の移動
と研磨液供給装置41(パッド本体)側の移動とが連動又は分離(解除)されるようになっている。吊下機構46の動作は、第1実施形態と同様である。
【0073】
本実施形態の追従機構45は、第1実施形態と同様の構成を有するが、ロッド464のロッドエンド466(球面ジョイント466a)を取り付ける取付部435A(図5の取付部435に対応)が下カバー511の開口542の縁に取り付けられ、メインカバー510の内部に収納される。この場合も、ロッドエンド466と取付部435Aの接続部は、研磨液供給機構400の低い位置に配置されるようにする。
【0074】
下カバー511の底面には、図14に示すように、パッド本体410の底面418を露出させる開口546が設けられている。下カバー511の底面は、図15に示すように、低い位置にある底面部544と、底面部544より所定の高さだけ高い位置にある底面部545とを有する。開口546は、図14に示すように、底面部544及び底面部545にわたって形成されている。開口546は、パッド本体410より僅かに大きい寸法に形成されており、パッド本体410の外周と下カバー511の底面(底面部544、底面部545)との間には、所定の隙間547が設けられている。これにより、バッド本体410が下カバー511に接触することなく変形可能になっている。言い換えれば、パッド本体410と下カバー511の底面との間に隙間547を設けることにより、パッド本体410が、下カバー511の底面に干渉されることなく、研磨面の凹凸に応じて自由に変形することが可能である。また、パッド本体410の底面418は、図15に示すように、所定の高さだけ僅かに下カバー511の底面544から突出しており、下カバー511が研磨パッド100に接触することなく、パッド本体410が研磨パッドに接触できるようになっている。
【0075】
パッド本体410には、図13に示すように、かえし560が設けられている。かえし560は、パッド本体410の底面418から所定の高さだけ高い位置に、研磨パッドの回転方向の上流側に向かって突出するように、パッド本体410の長手方向の長さ全体にわたって設けられている。この例では、かえし560の上面は、パッド本体410の上面と面一に形成されているが、パッド本体410の上面より低くてもよい。かえし560の下面は、図15に示すように、下カバー560の底面部545と概ね面一になるように構成されている。かえし560は、研磨パッド100上のスラリーが錘423側に侵入することを防止する防水構造を提供する。
【0076】
本実施形態によれば、研磨液供給装置41、追従機構45、及び吊下機構46を含む研磨液供給機構400の全体をカバー500で覆うため、露出する追従機構及び/又は吊下機構の各要素(球面ジョイント、ストッパー等)にスラリーが飛散し、固着することで、各要素の機能(摺動等の動作)に影響が生じることを抑制ないし防止することができる。また、露出される各要素で固着したスラリーが研磨テーブル上に脱落することで研磨対象の基板に影響を及ぼすことを抑制ないし防止することができる。なお、メインカバー510のみでも、研磨液供給機構400の大部分を覆うことができるため、補助カバー520を省略して、メインカバー510のみを設けてもよい。
【0077】
本実施形態によれば、パッド本体410にかえし560を設けるため、パッド本体410と下カバー511との間に隙間を設けた場合でも、メインカバー510の内部にスラリーが侵入することを抑制ないし防止することができる。なお、第1実施形態のパッド本体410に、同様のかえしを設けてもよい。
【0078】
本実施形態によれば、アーム60と研磨液供給機構400との接続部にラビリンス構造のシールを設けることにより、メインカバー510の内部にスラリーが侵入することを抑制ないし防止することができる。
【0079】
本実施形態によれば、カバー500(下カバー511)の底面とパッド本体410との間に隙間547を設けることにより、パッド本体410の動きがカバー500の底面に干渉されることなく、パッド本体410が研磨面の凹凸に応じて自由に変形することが可能である。また、パッド本体410の取り付け構造によっては、パッド本体410の接触面が湾曲して平坦にならないおそれがあるが、カバー500とパッド本体410との間に隙間を設けることにより、このような問題を避けることができる。
【0080】
上述した実施形態から少なくとも以下の形態が把握される。
第1形態によれば、 研磨面を有する研磨パッド使用して対象物の研磨を行う研磨装置であって、 研磨液供給装置と、 前記研磨面に対して水平移動可能なアームと、 前記アームを昇降する昇降機構と、 前記アーム及び前記研磨液供給装置に連結され、前記研磨液供給装置を前記研磨パッドの前記研磨面に追従させる追従機構と、 前記アーム及び前記研磨液供給装置に連結され、前記昇降機構による前記アームの昇降時において前記
研磨液供給装置を吊り下げる吊下機構と、を備え、 前記追従機構は、 2つのロッドであって、各ロッドが第1端及び第2端を有し、各ロッドの第1端が、前記研磨液供給装置に対して第1の球面ジョイントを介して取り付けられる2つのロッドと、 前記2つのロッドの間にて前記アームに対して固定され、前記各ロッドの第2端を摺動自在に受け入れる2つの第2の球面ジョイントと、を有し、 前記吊下機構は、 前記研磨液供給装置に対して固定された第1ストッパと、 前記アームに対して固定され、前記アームが前記研磨液供給装置に対して上昇する際に前記第1ストッパに係合する係合部と、を備える研磨装置が提供される。
【0081】
この形態によれば、ロッド及び球面ジョイントで構成される追従機構によって、研磨液供給装置を研磨パッドの研磨面に追従させることで、研磨液供給装置と研磨パッドとの間の摩擦トルクに起因して、研磨液供給装置が傾いたり、研磨液供給装置に振動が生じて、研磨パッドとの接触状態が不均一になることを抑制することができる。これにより、研磨性能の安定化を図ることができる。
【0082】
この形態によれば、吊下機構のストッパ非作動時には、研磨液供給装置をアームによる保持から解放した状態で研磨面上に配置することができる。このため、研磨液供給装置を、例えば錘、エアバッグなどによる荷重により、アームの位置と独立して研磨面に接触させる構成を採用することができる。これにより、研磨処理時における研磨液供給装置の傾き及び/又は振動を抑制することができる。研磨液供給装置を上方からアクチュエータ等の押付機構により押圧する場合には、研磨テーブル回転時にアクチュエータのガタに起因して研磨液供給装置に振動が生じる場合がある。一方、研磨液供給装置を錘などによる荷重により研磨面に接触させる構成を採用すれば、アクチュエータに起因する振動を抑制/防止することができる。この形態によれば、研磨液供給装置を錘などによる荷重によりアームの位置と独立して研磨面に接触させる構成によって、研磨液供給装置の研磨面への接触面を研磨面の凹凸及び/又は摩耗に追従させることが容易になる。
【0083】
また、昇降機構及び吊下機構によって研磨液供給装置を研磨面から離して吊下げることができるので、研磨液供給装置を吊下げた状態でアームを水平移動させて、研磨液供給装置を研磨パッドの範囲外に移動させることができる。これにより、研磨パッドの範囲外で研磨液供給装置を洗浄することができる。この結果、洗浄時に洗い流されたスラリー及び研磨残渣等が研磨パッドの研磨面上に残留することなく、研磨液供給装置の洗浄が可能となる。
【0084】
第2形態によれば、第1形態の研磨装置において、 前記第1ストッパ又は前記係合部の一方は、シャフトに設けられた大径部であり、 前記第1ストッパ又は前記係合部の他
方は、前記シャフトが通過する貫通穴又は切り欠きの周辺部であり、 前記大径部が前記貫通穴又は切り欠きの周辺部に係合する。
【0085】
この形態によれば、研磨液供給装置をアームの上下動と接続/解除する構成を簡易に設けることができる。また、シャフトと貫通穴又は切り欠きの構成により、研磨液供給装置の傾き(特に、長手方向を横切る幅方向での傾き)を抑制することができる。
【0086】
第3形態によれば、第2形態の研磨装置において、 前記シャフトの前記大径部は、前記シャフトに設けられた環状部材である。
【0087】
この形態によれば、シャフトに環状部材を形成する又は取り付けることにより、第1ストッパ/係合部を容易に構成することができる。
【0088】
第4形態によれば、第1から3形態の何れかの研磨装置において、 前記追従機構は、前記アームに対して固定されたハウジングを有し、 前記第2の球面ジョイントは、前記ハウジングの両側側面に設けられている。
【0089】
この形態によれば、球面ジョイントアセンブリ(ハウジング、第2の球面ジョイント)及び各ロッドにより、アームに対する研磨液供給装置の移動を安定して案内することができる。
【0090】
第5形態によれば、第4形態の研磨装置において、 前記追従機構は、前記ハウジングに対して固定され前記各ロッドの前記第1端及び前記第2端の間の部分に下方から係合する第2ストッパを更に有する。
【0091】
この形態によれば、第2ストッパにより各ロッドを下方から支持するため、研磨液供給装置の傾き(特に、幅方向での傾き)を抑制/防止することができる。また、研磨液供給装置の吊下時の荷重を第2ストッパにより受け止めることができる。
【0092】
第6形態によれば、第5形態の研磨装置において、 前記第2ストッパは、前記各ロッドの前記第1端及び前記第2端の間の部分に係合する溝を有する。
【0093】
この形態によれば、各ロッドを溝に係合させることにより、各ロッドを下方から支持するとともに、各ロッドの横方向への移動を規制することが可能である。
【0094】
第7形態によれば、第1から6形態の何れかの研磨装置において、 前記各ロッドの前記第1端は、前記研磨液供給装置の底面近傍に対して取り付けられる。
【0095】
この形態によれば、研磨液供給装置とアーム側とを連結する固定部(支点)の位置が低いので、研磨液供給装置に対する、研磨パッド(研磨テーブル)の回転による曲げモーメントの影響を抑制することができ、研磨時の摩擦トルクによる研磨液供給装置41の傾きや振動を抑制することができる。
【0096】
第8形態によれば、第1から7形態の何れかの研磨装置において、前記各ロッドは前記第1端にロッドエンドを有し、前記ロッドエンドに前記第1の球面ジョイントが設けられる。
【0097】
この形態によれば、ロッドと研磨液供給装置との間の球面ジョイントを、ロッドエンドにより簡易に構成することができる。
【0098】
第9形態によれば、第1から8形態の何れかの研磨装置において、 前記研磨液供給装置は、前記研磨パッドの回転方向に関し、前記アームの下流側に配置される。
【0099】
この形態によれば、研磨液供給装置に対する研磨パッド(研磨テーブル)の回転による曲げモーメントの影響を更に抑制することができる。アームが流れ(研磨パッドの回転方向)と反対側に研磨液供給装置を引くように保持するので、研磨パッド(研磨テーブル)の回転による研磨液供給装置のアームに対する突っ込みに起因する振動を低減することができる。
【0100】
第10形態によれば、 第1から9形態の何れかの研磨装置において、 前記アームを旋回する旋回機構を更に備える。
【0101】
この形態によれば、研磨液供給装置を吊り下げた状態で旋回装置により旋回させることができるので、研磨液供給装置を研磨パッド外に移動させて洗浄等のメンテナンスを行うことが更に容易になる。研磨液供給装置を洗浄することにより、研磨液供給装置に付着したスラリー、研磨残渣等を洗い流すことができる。これにより、洗浄時に洗い流されたスラリー及び研磨残渣等が研磨パッドの研磨面上に残留することなく、研磨液供給装置の洗浄が可能となる。また、研磨液供給装置の研磨面上での位置を容易に調整することができる。また、研磨処理中などに、研磨液供給装置を研磨面上に着地させたまま旋回機構により移動させ、スラリーの供給位置を変更することが可能である。
【0102】
第11形態によれば、第1から10形態の何れかの研磨装置において、 前記研磨液供給装置は、 パッド本体と、 前記パッド本体に対して固定される複数の錘と、を有する。
【0103】
この形態によれば、複数の錘によりパッド本体を研磨面に接触させてスラリーを供給することができる。複数の錘によりパッド本体が柔軟に撓んで研磨面の凹凸に追従できる。
【0104】
第12形態によれば、第11形態の研磨装置において、 前記研磨液供給装置は、 前記パッド本体及び前記錘を覆うカバーと、 前記カバーと前記パッド本体との間をシールするパッキンと、を更に有する。
【0105】
この形態によれば、パッド本体の上部及び錘をカバーによりスラリー等から保護する(防水する)ことができる。また、パッキンによりカバー内部の防水性能を向上させることができる。
【0106】
第13形態によれば、第1から11形態の何れかの研磨装置において、 前記研磨液供給装置、前記追従機構、及び前記吊下機構を覆う第1カバーを更に備える。
【0107】
この形態によれば、研磨液供給装置、追従機構、及び吊下機構を含む研磨液供給機構の全体をカバーで覆うため、露出する研磨液供給装置、追従機構及び吊下機構の各要素(錘、球面ジョイント、ストッパー等)にスラリーが飛散し、固着することで、各要素の機能(摺動等の動作)に影響が生じることを抑制ないし防止することができる。また、露出される各要素で固着したスラリーが研磨テーブル上に脱落することで研磨対象の基板に影響を及ぼすことを抑制ないし防止することができる。
【0108】
第14形態によれば、第13形態の研磨装置において、 前記第1カバーは、その上面において、前記研磨液供給装置、前記追従機構、及び/又は前記吊下機構の一部を露出し、 前記研磨装置は、前記第1カバーから露出する部分を覆う第2カバーを更に備える。
【0109】
この形態によれば、第1カバーで研磨液供給機構を覆った後に、第1カバーの上面において研磨液供給機構とアームとを接続し、研磨液供給機構とアームとの接続箇所を第2カバーで覆うことにより、アームの取り付けを容易にすると共に、研磨液供給機構の全体をより確実に覆うことができる。また、研磨液供給機構の全体を覆うカバーを第1カバーと第2カバーとで構成することにより、第1カバーからの露出部分を覆うように第2カバーを必要十分な寸法で形成することができる。また、研磨液供給機構の全体を良好に防水するカバーを一部材で構成する場合に比較して、容易に製造できる。これにより、カバーの材料費を含む製造コストを低減し得る。
【0110】
第15形態によれば、第13又は14形態の研磨装置において、 前記研磨液供給装置は、パッド本体を有し、 前記パッド本体は、前記カバーの底面において前記カバーと所定の隙間を空けて露出している。
【0111】
この形態によれば、パッド本体とカバーとの間に隙間を設けることにより、パッド本体の動きがカバーに干渉されることなく、研磨面の凹凸に応じて自由に変形することが可能である。また、パッド本体の取り付け構造によっては、パッド本体の接触面が湾曲して平坦にならないおそれがあるが、パッド本体とカバーとの間に隙間を設けることにより、このような問題を避けることができる。
【0112】
第16形態によれば、第15形態の研磨装置において、 前記研磨パッドの回転方向に関して上流側において、前記パッド本体は、底面より高い位置で前記上流側に突出するかえしを有する。
【0113】
この形態によれば、研磨液供給機構の全体をカバーで覆うと共に、パッド本体にかえしを設けることにより、第1カバーの内部にスラリーが侵入することを抑制ないし防止することができる。
【0114】
第17形態によれば、第16形態の研磨装置において、 前記研磨液供給装置は、前記パッド本体上に配置される1又は複数の錘を更に有する。
【0115】
この形態によれば、パッド本体に設けたかえしにより、パッド本体上に配置される1又は複数の錘にスラリーが付着することを抑制ないし防止することができる。
【0116】
第18形態によれば、第13から17形態の何れかの研磨装置において、 前記吊下機構と前記アームとの接続箇所を囲む防水構造を備え、 前記防水構造は、少なくとも一部にラビリンス構造を有する。
【0117】
この形態によれば、ラビリンス構造を有する防水構造により、第1カバーの内部にスラリーが侵入することを良好に抑制ないし防止することができる。言い換えれば、吊下機構とアームとの接続箇所の近傍で研磨液供給機構側にスラリーが侵入することを良好に抑制ないし防止することができる。
【0118】
第19形態によれば、第18形態の研磨装置において、 前記防水構造は、 前記第2カバーの上面から突出して設けられ、前記吊下機構と前記アームとの接続箇所を囲む第1防水壁と、 前記第1防水壁から連続して、前記アームの両側を前記アームと隙間を空けて前記アームに沿って延びる第2防水壁と、 前記アームの両側面に設けられる第3防水壁であり、前記アームに沿って前記第2防水壁の外側を前記第2防水壁と隙間を空けて延び、前記第1防水壁と隙間を空けて終端する第3防水壁と、を有し、 前記第1防水壁、前記第2防水壁及び前記第3防水壁がラビリンス構造のシールを構成する。
【0119】
この形態によれば、吊下機構とアームとの接続箇所を第1防水壁で覆うと共に、第1防水壁に隣接するアームの周りをラビリンス構造のシールで防水するため、吊下機構とアームとの接続箇所の近傍で研磨液供給機構側にスラリーが侵入することをより確実に抑制ないし防止することができる。
【0120】
第20形態によれば、 第1から19形態の何れかの研磨装置において、 前記研磨パッドの外側に配置された、前記研磨液供給装置を洗浄するための洗浄装置を更に備える。
【0121】
この形態によれば、研磨パッド外に移動された研磨液供給装置を洗浄装置(例えば、洗浄ノズル)により洗浄することができ、研磨液供給装置に付着したスラリー、研磨残渣等を洗い流すことができる。これにより、洗浄時に洗い流されたスラリー及び研磨残渣等が研磨パッドの研磨面上に残留することなく、研磨液供給装置の洗浄が可能となる。
【0122】
第21形態によれば、 研磨面を有する研磨パッド使用して対象物を研磨する方法であって、 研磨液供給装置に接続されたアームを下降させて、前記研磨面上に研磨液供給装置を着地させた後、前記アームを更に下降させて、前記アームによる前記研磨液供給装置の保持を解除すること、 前記研磨液供給装置から前記研磨面に研磨液を供給すると共に、前記研磨パッド及び/又は前記対象物を回転させつつ前記対象物を前記研磨面に押し付けて研磨すること、 研磨終了後に、前記アームを上昇させて、前記アームにより前記研磨液供給装置を保持し、前記研磨液供給装置を前記アームと共に上昇させること、を含む方法が提供される。
【0123】
この形態によれば、研磨処理時には研磨液供給装置をアームによる支持から解除した状態で研磨面上に配置し、研磨液供給装置を例えば錘、エアバッグなどによる荷重によりアームの位置と独立して研磨面に接触させることができる。アームと独立して研磨液供給装置を研磨パッドの研磨面に追従させることで、研磨液供給装置と研磨パッドとの間の摩擦トルクに起因して、研磨液供給装置が傾いたり、研磨液供給装置に振動が生じて、研磨パッドとの接触状態が不均一になることを抑制することができる。これにより、研磨性能の安定化を図ることができる。また、研磨液供給装置をアームにより上昇させるので、研磨液供給装置及び/又は研磨パッドのメンテナンスを容易にすることができる。
【0124】
第22形態によれば、第21形態の方法において、 前記研磨液供給装置を前記アームと共に上昇させた後に、前記アームを旋回させることにより前記研磨液供給装置を前記研磨パッド外に水平移動させることを更に含む。
【0125】
この形態によれば、研磨液供給装置を吊り下げた状態で旋回させることができるので、研磨液供給装置を研磨パッド外に移動させて洗浄等のメンテナンスを行うことができる。研磨液供給装置を洗浄することにより、研磨液供給装置に付着したスラリー、研磨残渣等を洗い流すことができる。これにより、洗浄時に洗い流されたスラリー及び研磨残渣等が研磨パッドの研磨面上に残留することなく、研磨液供給装置の洗浄が可能となる。また、研磨液供給装置の研磨面上での位置を容易に調整することができる。
【0126】
以上、いくつかの例に基づいて本発明の実施形態について説明してきたが、上記した発明の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明には、その均等物が含まれることはもちろんである。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲および明細書に記載された各構成要素の任意の組み合わせ、または、省略が可能である。
【符号の説明】
【0127】
1 研磨装置
20 研磨テーブル
30 トップリング
40 研磨液供給システム
41 研磨液供給装置
45 追従機構
46 吊下機構
50 アトマイザー
60 アーム
60a 先端側部
60b 基端部
70 昇降旋回機構
71 防水ボックス
72 防水ボックス
80 昇降機構
81 昇降シリンダ
82 軸
83 ボールスプライン
84 軸
85 フレーム
86 センサ
90 旋回機構
92 シャフト
93 モータ
100 研磨パッド
102 研磨面
120 スラリー供給ライン
130 流体ライン
140 電気ケーブル
200 制御装置
400 研磨液供供給機構
410 パッド本体
414 供給口
418 底面
419 スリット
421 Oリング
422 パッキン
423 錘
424 貫通穴
430 カバー
431 貫通穴
434 ブラケット
435、435A 取付部
450 アーム側ストッパ
451 上面
451a 段差面(ストッパ面)
452 貫通穴
454 シャフト
455 パッド側ストッパ
456 係合部
457 パッド側ストッパ
460 球面ジョイントアセンブリ
461a ハウジング
461b 球面ジョイント
462 アーム
463 回止兼ストッパ
464 溝
465 ロッド
466 ロッドエンド
466a 球面ジョイント
467 シャフト
470 ブラケット
480 取っ手
500 カバー
510 メインカバー
511 下カバー
512 上カバー
520 補助カバー
531 開口
532,533,534 防水壁
535 折曲部
536 支柱
541 上壁
542 開口
543 段差部
544、545 底面部
546 開口
547 隙間
560 かえし
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図9C
図10
図11
図12
図13
図14
図15