(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】チップ強度の試験方法、及び、試験装置
(51)【国際特許分類】
G01N 3/20 20060101AFI20241021BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20241021BHJP
【FI】
G01N3/20
H01L21/304 631
(21)【出願番号】P 2021046026
(22)【出願日】2021-03-19
【審査請求日】2024-02-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100142804
【氏名又は名称】大上 寛
(72)【発明者】
【氏名】松崎 栄
(72)【発明者】
【氏名】椙浦 一輝
(72)【発明者】
【氏名】梅田 桂男
(72)【発明者】
【氏名】右山 芳国
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-249015(JP,A)
【文献】特開2011-202991(JP,A)
【文献】特表2010-506168(JP,A)
【文献】特表2018-511795(JP,A)
【文献】特開2009-066874(JP,A)
【文献】特開2015-207605(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/20
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チップ強度の試験方法であって、
チップを有する試験片を準備する準備ステップと、
それぞれ第1方向に伸長する回転軸を有した一対の支持ローラーで該試験片の下面を支持するとともに、該一対の支持ローラーの間に配設され、該第1方向に伸長する回転軸を有した押圧ローラーで該試験片の上面を所定の力で押圧する試験片押圧ステップと、
該一対の支持ローラーで支持され該押圧ローラーで押圧された該試験片を該押圧ローラーに交差する第2方向に連続して往復移動させることを開始する往復移動ステップと、
該往復移動ステップを実施した後にチップの破壊を検出するチップ破壊検出ステップと、
を備えるチップ強度の試験方法。
【請求項2】
該往復移動ステップで往復移動を開始させた後、該チップ破壊検出ステップでチップの破壊を検出するまでに要した時間、及び/又は、往復移動回数を記憶するデータ記憶ステップ、を更に備える、
ことを特徴とする請求項1に記載のチップ強度の試験方法。
【請求項3】
該チップは封止樹脂層により封止されている、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のチップ強度の試験方法。
【請求項4】
該試験片は、基板と、
該基板の上に配置される複数の該チップと、を有して構成される、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のチップ強度の試験方法。
【請求項5】
試験片が有するチップのチップ強度の試験装置であって、
それぞれ第1方向に伸長する回転軸を有し試験片の下面を支持する一対の支持ローラーと、
該一対の支持ローラーの間に配置され、該第1方向に伸長する回転軸を有し、該一対の支持ローラーで支持された該試験片の上面を所定の力で押圧する押圧ローラーと、
該押圧ローラーを、該一対の支持ローラーで支持された該試験片の上面を押圧する押圧位置と退避位置とに移動させる押圧ローラー移動ユニットと、
該一対の支持ローラーで支持されるとともに該押圧ローラーで押圧された該試験片を該押圧ローラーに交差する第2方向に移動させる試験片移動ユニットと、
を備えるチップ強度の試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チップ強度の試験方法、及び、試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体デバイスチップはパッケージングされたチップパッケージとして電子機器に利用されている。チップパッケージの製造プロセスとしては、例えば、複数の半導体デバイスチップを基板上に配設した後、封止樹脂で封止してパッケージ基板を形成し、このパッケージ基板をダイシングすることで、複数のチップパッケージとすることが知られている。
【0003】
ところで、半導体デバイスチップは、大きな衝撃が加わるとクラックや割れ等の損傷が生じてデバイスの機能が失われるおそれがあり、抗折強度が低いチップでは特に損傷が生じ易いものである。
【0004】
チップの抗折強度は、チップの材質や厚みの他、半導体ウェーハを薄化、個片化する際の加工条件等によって変わるため、半導体ウェーハを様々な条件で加工して抗折強度を測定、評価し、各種の加工条件を選定することが行われるものであり、チップの抗折強度を測定するための試験装置も周知となっている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されるように、従来の試験装置は、半導体デバイスチップそのものの抗折強度を測定するものであり、パッケージされた後のチップパッケージの抗折強度を測定するものは存在しなかった。
【0007】
また、電子機器の小型化の要求は高まる一方であり、パッケージ基板に樹脂封止された半導体デバイスチップが露出する厚みまでパッケージ基板を研削し、薄化することも広く行われている。そして、このように樹脂封止されつつ薄化された状態の半導体デバイスチップの強度も測定、評価することが切望されている。
【0008】
さらに、樹脂封止される半導体デバイスチップに限らず、樹脂封止されていない半導体デバイスチップについても、同時に複数のチップのチップ強度を一度に測定、評価することで、試験時間を短縮することや、複数のチップの比較評価を可能とすることが切望されている。
【0009】
本発明は以上の問題に鑑み、半導体デバイスチップ等のチップの強度を測定、評価し得る新規な試験方法、及び、試験装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0011】
本発明の一態様によれば、チップ強度の試験方法であって、
チップを有する試験片を準備する準備ステップと、
それぞれ第1方向に伸長する回転軸を有した一対の支持ローラーで該試験片の下面を支持するとともに、該一対の支持ローラーの間に配設され、該第1方向に伸長する回転軸を有した押圧ローラーで該試験片の上面を所定の力で押圧する試験片押圧ステップと、
該一対の支持ローラーで支持され該押圧ローラーで押圧された該試験片を該押圧ローラーに交差する第2方向に連続して往復移動させることを開始する往復移動ステップと、
該往復移動ステップを実施した後にチップの破壊を検出するチップ破壊検出ステップと、
を備えるチップ強度の試験方法とする。
【0012】
また、本発明の一態様によれば、
該往復移動ステップで往復移動を開始させた後、該チップ破壊検出ステップでチップの破壊を検出するまでに要した時間、及び/又は、往復移動回数を記憶するデータ記憶ステップ、を更に備える、こととする。
【0013】
また、本発明の一態様によれば、
該チップは封止樹脂層により封止されている、こととする。
【0014】
また、本発明の一態様によれば、該試験片は、基板と、該基板の上に配置される複数の該チップと、を有して構成される、こととする。
【0015】
また、本発明の一態様によれば、
試験片が有するチップのチップ強度の試験装置であって、
それぞれ第1方向に伸長する回転軸を有し試験片の下面を支持する一対の支持ローラーと、
該一対の支持ローラーの間に配置され、該第1方向に伸長する回転軸を有し、該一対の支持ローラーで支持された該試験片の上面を所定の力で押圧する押圧ローラーと、
該押圧ローラーを、該一対の支持ローラーで支持された該試験片の上面を押圧する押圧位置と退避位置とに移動させる押圧ローラー移動ユニットと、
該一対の支持ローラーで支持されるとともに該押圧ローラーで押圧された該試験片を該押圧ローラーに交差する第2方向に移動させる試験片移動ユニットと、
を備えるチップ強度の試験装置とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、半導体デバイスチップを有する試験片について、そのチップ強度を測定することが可能となる。試験片としては、基板と、基板の上にチップを配置したものについて、チップ強度の測定が可能となる。また、チップを樹脂封止したパッケージ基板について、チップが露出するもの、露出しないものについても、チップ強度の測定が可能となる。
【0017】
また、本発明によれば、複数のチップを含む試験片についてチップ強度を試験することで、同時に複数のチップの評価をすることができ、試験時間の短縮が図られるとともに、複数のチップの比較評価が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】(A)は試験片となるパッケージ基板の斜視図。(B)は同じく側面断面図。(C)は裏面研削により薄化されたパッケージ基板の側面断面図。
【
図2】チップ強度の試験装置の一実施形態について示す図。
【
図3】(A)は試験片移動ユニット等について示す図。(B)は試験片を挟持下状態の試験片移動ユニット等について示す図。
【
図5】試験方法の手順について説明するフローチャート。
【
図6】研削により試験片を薄化する例について説明する図。
【
図7】(A)は押圧ユニットにて試験片を押圧する状態について示す図。(B)は試験片を移動させた状態について説明する図。
【
図8】(A)は
図7(A)の押圧箇所の部分拡大図。(B)は
図7(B)の押圧箇所の部分拡大図。
【
図9】(A)は押圧開始前の状態の試験片を上から見た図。(B)は一度の移動により一部のチップに破壊が生じた状態について示す図。(C)は二度の移動により別のチップに破壊が生じた状態について示す図。
【
図10】(A)は側方観察装置に取得した試験片の撮像画像の例について示す図。(B)は試験片と各ローラーの配置について説明する模式図。(C)は変形後の試験片と各ローラーの配置について説明する模式図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
図1(A)は、試験片となるパッケージ基板の斜視図であり、
図1(B)は同じく側面断面図であり、
図1(C)は裏面研削により薄化されたパッケージ基板の側面断面図である。
【0020】
図1(A)(B)に示すように、複数の半導体デバイスチップ10(以下、単に「チップ10」とも表記する)は、ウェーハをダイシングすることで製造されるものであり、樹脂や金属からなるベース基板12上にダイアタッチ材等を介して所定の間隔で固定された後、モールド樹脂による封止により封止樹脂層14が形成され、板状のパッケージ基板1(ストリップ基板)が構成される。
【0021】
複数のチップ10は、例えば、裏面研削がされた一枚のウェーハの複数箇所からピックアップしたものを用いることができる。この場合、同一ウェーハ上で異なる位置にあるチップの抗折強度を評価することができ、この抗折強度に基づいて裏面研削の加工精度等の評価を行うことが可能となる。
【0022】
また、複数のチップ10は、裏面研削の条件を変えて薄化した複数のウェーハを準備するとともに、各ウェーハの同一箇所からピックアップしたものを用いることができる。この場合、各ウェーハ上で同じ位置にあるチップの抗折強度を評価することができ、この抗折強度に基づいて裏面研削の条件等の評価を行うことが可能となる。
【0023】
図1(C)は、パッケージ基板1の封止樹脂層14を研削することで薄化し、チップ10が露出したパッケージ基板1について示すものである。
【0024】
このような、
図1(A)~(C)に示すパッケージ基板1が試験片として試験装置にセットされ、各チップ10の抗折強度等が測定、評価される。
【0025】
なお、試験片としては、樹脂基板にチップを樹脂封止したものに限定されず、樹脂封止されていないものであってもよい。例えば、ガラス基板にシリコンウェーハを積層したものを切り出して試験片とし、シリコン層の強度を測定することとしてもよい。
【0026】
また、試験片としては、基板上に複数のチップが所定間隔で配置されるものの他、基板上に一つのチップのみを有する構成とするものであってもよい。
【0027】
次に、チップ強度の試験装置の構成例について説明する。
図2は、チップ強度の試験装置20の一実施形態である。試験装置20は、主に、試験片移動ユニット30と、押圧ユニット40と、チップ破壊検出ユニット50と、を有して構成される。
【0028】
図2、及び、
図3(A)(B)に示すように、試験片移動ユニット30は、試験装置20の基台22上に設置され、試験片であるパッケージ基板1を挟持しつつ第2方向(X軸方向)に水平移動させるものである。
【0029】
試験片移動ユニット30は、移動基台32と、移動基台32との間にパッケージ基板1を挟み込んで支持する支持機構34と、を有して構成される。
【0030】
移動基台32は、基台22の上面に設置される第2方向に伸びる一対のガイドレール36に摺動可能に載置されるとともに、裏側においてガイドレール36の間に配置されるボールネジ38と螺合している。パルスモーター39にてボールねじ38を回転することで、移動基台32が第2方向(X軸方向)に移動する。
【0031】
支持機構34は、移動基台32の間に隙間を形成して配置される鍔35aと、鍔上下機構35bとを有する。鍔上下機構35bにより鍔35aを上下移動させることで、移動基台32との間の隙間を狭くしてパッケージ基板1を挟持することや、移動基台32との隙間を広くしてパッケージ基板1を開放することができる。
【0032】
図2、及び、
図4に示すように、押圧ユニット40は、パッケージ基板1を下側から支持する一対の支持ローラー41と、パッケージ基板1を上側から押圧する押圧ローラー42と、押圧ローラー42を昇降させて押圧位置と退避位置とに移動させる押圧ローラー移動ユニット43と、を有して構成される。
【0033】
図2に示すように、基台22には門型のフレーム23が立設されており、フレーム23の梁部分の側面に押圧ローラー移動ユニット43が配設されている。
【0034】
図4に示すように、押圧ローラー移動ユニット43は、本体部43aと、本体部43aに対し上下方向に移動する移動部43bと、を有して構成される。本体部43aは、例えば、エアアクチュエータで構成され、空気圧により移動部43bを昇降させる構成とする。本体部43aには、移動部43bから受ける荷重をモニターするための図示せぬロードセルが設けられる。本体部43aは、ロードセルの検出値を参照することで、移動部43bに下向きに作用させる荷重を所定の値に維持することができ、これにより、押圧ローラー42にてパッケージ基板1を所定の力で押圧することができる。なお、ロードセルを設けずに、エアアクチュエータにエアを供給するバルブにて、エア圧力を調整し、所定の力で押圧するように調整される構成としてもよい。
【0035】
図4に示すように、移動部43bの下端部には長板状のブラケット43cが設けられ、ブラケット43cの下側に、押圧ローラー42と、押圧ローラー42をサポートする複数のサポートローラー42aが設けられる。押圧ローラー42は、第1方向に伸びる長尺のローラーであり、自由回転するものである。
【0036】
図4の拡大部分にも示されるように、サポートローラー42aは、押圧ローラー42の左右斜め上にそれぞれ配置される短尺のローラーであり、押圧ローラー42の長尺方向において互いにずれ合うように交互に配置される。サポートローラー42aは、押圧ローラー42の左右斜め上の箇所に当接し、長尺の押圧ローラー42の撓みの発生を防止するように機能する。なお、
図4においては、一部のサポートローラー42aのみが図示されている。また、
図4の拡大部分は矢印Aの方向に見た図である。
【0037】
図4に示すように、基台22にベース板部44が設けられており、ベース板部44に一対の支持ローラー41が第2方向において所定の間隔を開けるように設けられる。各支持ローラー41は、第1方向に伸びる長尺のローラーであり、自由回転するものである。各支持ローラー41の両端部は、軸受部44aによって支持されており、軸受部44aは第2方向に伸びるガイドレール44bに摺動可能に設けられる。
【0038】
図4に示すように、ベース板部44には複数のサポートローラー支持部44cが第1方向に配設されており、各サポートローラー支持部44cにより各サポートローラー41aが支持される。各サポートローラー41aは、各支持ローラー41の外側(第2方向(X軸方向)において押圧ローラー42から離れる側)であって、斜め下の箇所に当接し、長尺の支持ローラー41の撓みの発生を防止するように機能する。また、支持ローラー41はサポートローラー41aに接触することで、第2方向への移動が所定の範囲に規制される。
【0039】
図4の拡大部分に示すように、試験が実施される際には、下側の一対の支持ローラー41と上側の押圧ローラー42との間に、パッケージ基板1が差し込まれる。そして、
図2に示すように、パッケージ基板1の先端側は、押圧ユニット40、及び、フレーム23を通過して、基台22に設けたサポートテーブル45によって支持される。
【0040】
図2に示すように、サポートテーブル45は基台22においてフレーム23の近傍に設けられており、パッケージ基板1の下面を支持するための複数のボールローラー45aを有して構成される。
【0041】
図2に示すように、試験装置2は、チップが破壊された状態を検出するためのチップ破壊検出ユニット50を有する。本実施例では、試験片であるパッケージ基板1を上から観察するための上面観察装置51と、側方から観察するための側方観察装置52と、これら観察装置からの情報に基づいてチップの破壊状況を検出する検出装置53と、を有して構成される。なお、チップ破壊検出ユニット50を備えない構成とし、オペレータが目視や音でチップの破壊状態を確認する構成としてもよい。また、上面観察装置51と、側方観察装置52のいずれか一方のみが設けられる構成としてもよい。
【0042】
上面観察装置51、及び、側方観察装置52は、例えば、光学カメラ、赤外線カメラ(IRカメラ)などの撮像装置や、破壊音を検出する音センサ(マイク)、渦電流式変位センサ等にて構成することができる。
【0043】
検出装置53は、試験装置2の制御装置100に組み込まれることとするほか、専用の装置として設けることとしてもよい。
【0044】
検出装置53には、上面観察装置51、及び、側方観察装置52から出力される情報が入力される。具体的には、撮像画像データや、音データなどである。
【0045】
検出装置53には、押圧ユニット40に設けられる図示せぬロードセルによる荷重の計測値が入力されてもよい。
【0046】
検出装置53は、入力された情報に基づいて、チップの破壊の発生の有無を検知する。例えば、撮像画像データの画像解析によりクラック(ひび割れ)を検出してチップの破壊を検出することや、音データ中の異音を検出することでチップの破壊を検出することや、渦電流式変位センサの発振振幅の変化を検出することでチップの破壊を検出することができる。
【0047】
検出装置53は、パッケージ基板1の往復移動回数や、押圧時間を測定するカウンターを有する。検出装置53は、チップの破壊の発生を検出したタイミングと、パッケージ基板1の往復移動回数や、押圧時間とを紐付けて記憶する。
【0048】
次に、以上のように構成した試験装置を用いた試験方法について、
図5に示すフローチャートの順に説明する。
【0049】
<準備ステップ>
図1に示すように、
図1(A)(B)に示すようにチップ10が樹脂封止された試験片を準備するステップである。
図1(A)(B)に示す例の試験片はパッケージ基板1であり、ベース基板12上に複数のチップ10を封止樹脂層14によって樹脂封止したものである。チップ10は予め薄化されたものでもよく、薄化されていないものであってもよい。
【0050】
図1(C)に示すように、封止樹脂層14が研削されることにより、樹脂層の薄いパッケージ基板1を構成することや、チップ10が露出したパッケージ基板1を構成することとしてもよい。この場合、例えば、
図6に示すように、研削装置70の保持テーブル71にてテープ72を介してパッケージ基板1を吸引保持するとともに、研削砥石73を有する研削ホイール74にて封止樹脂層14を研削する方法を利用することができる。研削砥石を用いた研削の他、切削バイトを用いた切削を行うこととしてもよい。
【0051】
なお、チップ10が露出されたパッケージ基板1において、チップ10の表面をテープで覆い保護することとしてもよい。テープで覆うことで、破壊されたチップ10の破片の飛散を防止することができ、破壊したチップの屑が、後の試験において押圧ローラー等に付着することを防止できる。例えば上面観察装置51がカメラの場合、カメラが感度を持つ波長領域の光に対して透過性を有するテープを選択することで、チップ10の破壊の状態の視認や、撮影が可能となる。
【0052】
<試験片押圧ステップ>
図7(A)、及び、
図8(A)に示すように、押圧ローラー42によりパッケージ基板1の上面を所定の力で押圧するステップである。
【0053】
まず、
図7(A)に示すように、押圧ローラー移動ユニット43にてパッケージ基板1を移動させ、試験対象となるチップ10を押圧ユニット40によって挟持される位置に位置合わせする。この位置合わせは、例えば、上面観察装置51による撮像や、目視による確認により行うことができる。
【0054】
次いで、
図8(A)に示すように、押圧ユニット40の移動部43bを下降させ、所定の力で押圧ローラー42によりパッケージ基板1の上面を押圧する。なお、この際に、チップ10が破壊した場合には、破壊した際にロードセルで検知した測定値に基づいて、チップ10の抗折強度を評価することとしてもよい。
【0055】
なお、
図8(A)に示すように、押圧の際には、押圧ローラー42は、斜め上側からサポートローラー42aにより支持され、一対の支持ローラー41は、それぞれ斜め下側からサポートローラー41aによって支持される。
【0056】
<往復移動ステップ>
図7(A)(B)、及び、
図8(A)(B)に示すように、パッケージ基板1を第2方向(X軸方向)に連続して往復移動させるステップである。
【0057】
図7(A)(B)、及び、
図8(A)(B)に示すように、押圧ローラー42により荷重をかけたまま第2方向(X軸方向)に往復移動させることで、チップ10には断続的に荷重が作用し、移動を繰り返す過程でチップ10は破壊することになる。なお、第2方向(X軸方向)は、押圧ローラー42の軸方向である第1方向(Y軸方向)と直交する方向である。
【0058】
<チップ破壊検出ステップ>
往復移動ステップを実施した後に、所定のタイミングで、チップ10の破壊を検出するステップである。
【0059】
例えば、往復移動ステップで検査対象となるチップ10について一回往復移動を行った後、
図7(B)に示すように、当該チップ10を上面観察装置51の下方の位置まで移動させ、上面観察装置51にてチップ10の上面を撮像するとともに、検出装置53にて撮像画像を解析することで、チップ10の破壊の有無を検出するものである。
【0060】
チップ10が樹脂封止されて露出していないパッケージ基板の場合には、上面観察装置51をIRカメラで構成し、赤外線画像を取得して破壊を検出することとしてもよい。この場合、IRカメラで鮮明な画像を撮像できるようにするために、フィラー含有量の少ないモールド樹脂が利用されることが好ましい。
【0061】
また、チップそのものの破壊を検出することのほか、基板(ベース基板12(
図8(B))の破壊を検出し、基板の強度を評価することとしてもよい。例えば、チップが薄いシリコン層であって破壊し難いものである場合において、基板に含まれる配線層をIRカメラで撮像し、配線層の破壊(破損)を持って、チップと基板の全体としての強度を評価することとしてもよい。
【0062】
また、チップ10の破壊の検出は、音データ中の異音を検出することや、オペレータが破壊音を聞くことで検出することや、基板の破壊は渦電流変位センサにおいて発振振幅の変化を検出することで行うこともできる。
【0063】
<データ記憶ステップ>
往復移動ステップで往復移動を開始させた後、チップ破壊検出ステップでチップの破壊を検出するまでに要した時間、及び/又は、往復移動回数を記憶するステップである。
【0064】
検出装置53は、往復移動ステップにおいて往復移動の開始とともに時間をカウントし、チップ10の破壊を検出した時点でカウントを停止し、カウントを開始してから停止するまでの時間を記憶する。
【0065】
検出装置53は、往復移動ステップにおいて往復移動の開始とともに往復移動の回数をカウントし、チップ10の破壊を検出した時点でカウントを停止し、カウントを開始してから停止するまでの往復移動の回数を記憶する。
【0066】
以上の時間の記憶、及び、往復移動の回数の記憶は、両方、あるいは、いずれか一方、とすることができる。検出装置53は、以上のようにしてチップ10の破壊に要した時間、及び/又は、往復移動の回数を記憶する。
【0067】
以上のようにして記憶されたチップ10の破壊に要した時間、及び/又は、往復移動の回数を利用し、チップ10の抗折強度を評価することができる。
【0068】
例えば、チップの破壊に要する時間が短い場合には、抗折強度が低く、時間が長い場合には抗折強度が高い、と評価することができる。このように時間を基準として強度を評価することができる。
【0069】
例えば、チップの破壊に要する往復移動の回数が少ない場合には、抗折強度が低く、往復移動の回数が多い場合には抗折強度が高い、と評価することができる。このように往復移動の回数を基準として強度を評価することができる。
【0070】
例えば、上述したように、
図6に示す研削装置70による研削をした場合において、チップの抗折強度に基づいて、研削の加工条件を評価することや、研削加工時のチップの位置による抗折強度の違いを評価することとしてもよい。より具体的には、例えば、第1の加工条件により研削したパッケージ基板と、第2の加工条件により研削したパッケージ基板と、を準備し、各パッケージ基盤のチップ強度を比較することで、加工条件の評価を行うことである。なお、評価の方法については、本明細書で記載されるもの以外も考えられ、特に限定されるものではない。
【0071】
さらに、例えば、
図9(A)~
図9(C)に示すように、同一列に並ぶ複数のチップ10A,10B,10Cについて、相対的な抗折強度の比較をしてもよい。まず、
図9(A)の状態で押圧を開始し、パッケージ基板1を
図9(B)の状態となるまで移動する。この際、各チップ10A,10B,10Cは、押圧による負荷を1回受けることになり、破壊が検出されたチップ10Aは抗折強度が最も弱いものとすることができる。
【0072】
次いで、
図9(B)の状態から
図9(C)の状態とし、チップ10Bの破壊が検出された際には、チップ10Bが二番目に抗折強度が高く、チップ10Cが最も抗折強度が高いといった評価をすることができる。
【0073】
さらに、
図9(B)に示すように、第1列10Mのチップについては、押圧ローラーで荷重をかけて二回の往復移動をさせる一方、第2列10Nのチップについては、押圧ローラーで荷重をかけて四回の往復移動をさせるなどとして、往復回数によってチップが破壊される状況の比較を行うこととしてもよい。
【0074】
なお、
図9(B)に示す第1列10M、第2列10Nのように、列ごとに往復移動をさせて各列のチップの強度を評価することとする他、試験片全体を押圧ローラーに対し一往復させて、全てのチップについて負荷をかけるように往復移動させることとしてもよい。
【0075】
また、
図10(A)に示すように、側方観察装置52(
図2)によりパッケージ基板1の撓みの状況を撮像し、押圧ローラー42の箇所の最大たわみw
maxを取得するとともに、当該最大たわみw
maxから荷重Pを求め、支持ローラー42の箇所において試験片にかかる最大応力σ
maxを取得し、各試験片が破壊したときの最大応力σ
maxの数値を元に、各試験片の強度を絶対評価することとしてもよい。最大応力σ
maxは、例えば、
図10(B)(C)の模式図で示される各種値を利用し、以下の計算式1にて算出することができる。この場合、試験片は、パッケージ基板1を支持する支持機構34側の支持ローラー42によって片側が支持される片持ち梁として支持されることとし、片持ち梁の支点での最大応力σ
maxを以下の計算式にて算出する。なお、
図10(C)においては、幅b、厚さhの試験片の断面を示しており、幅bは、支持ローラー41等の軸方向(Y軸方向:第1方向)である。
<計算式1>
σ
max:最大応力
w
max:最大たわみ:Pl
3/3EI
P:荷重:3w
maxEI/l
3
E:ヤング率
I:断面二次モーメント:bh
3/12
l:支持ローラー41から押圧ローラー42までの距離
M
max:Pl
Z:bh
2/6
b:試験片断面の幅
h:試験片断面の厚さ
【0076】
なお、最大たわみwmaxは、押圧ローラー42の下端の位置から、支持ローラー41の上端の位置の間の距離にて規定することができる。
【0077】
また、往復移動ステップを実行せずに、押圧のみによってチップを破壊することで、3点曲げ試験と同等の評価をすることとしてもよい。この際、上述したロードセルにより荷重を測定することとする他、バネばかりを付設して、破壊時の荷重を測定することとしてもよい。
【0078】
また、
図7(B)に示すように、上面観察装置51の近傍や、押圧ユニット40の近傍に温度検出ユニット54を配設し、試験片であるパッケージ基板1全体の温度や、試験対象となるチップ10の温度データを取得することとしてもよい。
【0079】
以上のように、本発明によれば、半導体デバイスチップを有する試験片について、そのチップ強度を測定することが可能となる。試験片としては、基板と、基板の上にチップを配置したものについて、チップ強度の測定が可能となる。また、チップを樹脂封止したパッケージ基板について、チップが露出するもの、露出しないものについても、チップ強度の測定が可能となる。
【0080】
また、本発明によれば、複数のチップを含む試験片についてチップ強度を試験することで、同時に複数のチップの評価をすることができ、試験時間の短縮が図られるとともに、複数のチップの比較評価が可能となる。
【符号の説明】
【0081】
1 パッケージ基板
2 試験装置
10 半導体デバイスチップ
10 チップ
10A チップ
10B チップ
10C チップ
12 ベース基板
14 封止樹脂層
20 試験装置
22 基台
23 フレーム
30 試験片移動ユニット
32 移動基台
34 支持機構
35a 鍔
35b 鍔上下機構
36 ガイドレール
38 ボールネジ
39 パルスモーター
40 押圧ユニット
41 支持ローラー
41a サポートローラー
42 押圧ローラー
42a サポートローラー
43 押圧ローラー移動ユニット
43a 本体部
43b 移動部
44 ベース板部
44a 軸受部
44b ガイドレール
44c サポートローラー支持部
45 サポートテーブル
45a ボールローラー
50 チップ破壊検出ユニット
51 上面観察装置
52 側方観察装置
53 検出装置
54 温度検出ユニット
70 研削装置
71 保持テーブル
72 テープ
73 研削砥石
74 研削ホイール
100 制御装置
wmax 最大たわみ
σmax 最大応力