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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】自動分析装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/46 20060101AFI20241021BHJP
   G01N 30/86 20060101ALI20241021BHJP
【FI】
G01N30/46 E
G01N30/86 R
G01N30/86 T
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022568231
(86)(22)【出願日】2021-12-02
(86)【国際出願番号】 JP2021044230
(87)【国際公開番号】W WO2022124187
(87)【国際公開日】2022-06-16
【審査請求日】2023-04-21
(31)【優先権主張番号】P 2020205571
(32)【優先日】2020-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】片野 敏明
(72)【発明者】
【氏名】杉目 和之
(72)【発明者】
【氏名】坂本 直人
【審査官】高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-052533(JP,A)
【文献】特開2004-354144(JP,A)
【文献】特開2010-236962(JP,A)
【文献】特開2001-153875(JP,A)
【文献】国際公開第2020/121660(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00 -30/96
B01J 20/281-20/292
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体を前処理することにより試料を精製する前処理部と、
複数のストリームを有する液体クロマトグラフにより前記試料を分離する分離部と、
分離された試料を検出する検出部と、を備え、
前記分離部および前記検出部での前記試料の処理時期を分析スケジュールに基づき制御する自動分析装置の制御方法であって、
前記分析スケジュールの設定後に前記ストリームの異常を検知した場合、代用可能な代用ストリームが存在するか検索し、
代用ストリームが存在する場合、異常を検知したストリームへの導入がスケジュールされていた試料を当該代用ストリームへ導入するように、かつ、当該代用ストリームを経た試料と、他の正常なストリームを経た試料との前記検出部での処理タイミングが重複しないように、前記分析スケジュールを修正し、
異常を検知して使用不能となった前記ストリームが復帰するまでの待機場所として、前記前処理部の試料設置ポジション内の空きポジションを使用する、あるいは前記前処理部に退避専用ポジションを設けて前記退避専用ポジションを使用する、
自動分析装置の制御方法。
【請求項2】
請求項1記載の自動分析装置の制御方法であって、
前記代用ストリームが存在する場合、検体の優先度に応じて前記分析スケジュールを修正する、
自動分析装置の制御方法。
【請求項3】
請求項1記載の自動分析装置の制御方法であって、
前記代用ストリームをあらかじめ装置内に定義しておき、当該定義に基づき前記代用ストリームの使用判断を行う、
自動分析装置の制御方法。
【請求項4】
請求項1記載の自動分析装置の制御方法であって、
ユーザーからの前記代用ストリームの設定を受け付ける設定画面を表示する、
自動分析装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動分析装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体クロマトグラフは、試料を分離するカラムに送られる移動相に、測定対象となる成分を含む試料を加え、固定相で試料の成分分離を行い、異なる時間成分に分離された各成分を検出器にて検出し、試料の成分を特定する分析装置である。
【0003】
例えば、移動相に溶媒を用いた高性能液体クロマトグラフ(HPLC)では、送液装置が溶媒を高圧送液し、送液装置の下流に設置された試料注入部から分析流路に注入された試料が固定相を充填した分離カラムにて各成分に分離される。そして、紫外・可視吸光光度計、蛍光光度計、質量分析計などの検出器を用いて検出し、成分が特定される。この場合、検出器は分析目的や試料に応じて適宜選択される。
【0004】
測定対象の質量情報を取得する質量分析計と液体クロマトグラフを組み合わせた液体クロマトグラフ質量分析装置は、液体クロマトグラフで測定試料から時間成分に分離された各成分を質量分析計に導入し質量情報を取得する分析装置である。この液体クロマトグラフ質量分析装置は、定性分析や定量分析を行うために広く用いられている。
【0005】
近年では、生体試料中の薬剤成分や代謝物、環境試料中の残留物を定量測定するために液体クロマトグラフ質量分析装置を使用する機会が増え、それにより臨床検査分野への応用が期待されている。
【0006】
臨床検査分野に液体クロマトグラフ質量分析装置を応用する場合の課題として、迅速に結果報告を行う、いわゆるスループットの向上がある。
【0007】
また、臨床検査分野においては、感染症の防止やユーザビリティの観点から、処理の自動化が求められている。
【0008】
そこで、血清・尿といったヒト由来の検体から試料を精製する前処理工程を自動化し、前処理によって得られた試料を自動で液体クロマトグラフに導入する液体クロマトグラフ質量分析装置が提案されている。
【0009】
このような液体クロマトグラフ質量分析装置においては、分析項目数がn個に対して液体クロマトグラフの分離カラムを備える流路(ストリーム)数が3~5、検出器への試料導入口が1つであることから、検体を受け付けたタイミングでストリームへの試料導入のみならず、検出器への試料導入タイミングが重複しないように分析スケジュールを作成することが肝要である。
【0010】
特許文献1は、複数のストリームを有するマルチストリーム液体クロマトグラフ質量分析装置の分析スケジュールを作成する技術に関するものである。同文献は、「複数の液体クロマトグラムの各ストリームが並行動作し、各々の成分溶出のタイミングで質量分析計がデータを収集できるよう、分析スケジュールを予め作成する。制御部は、複数の液体クロマトグラムシステム各々の試料を分析するのに必要な時間を、収集前時間、収集中時間、収集後時間に分割し、液体クロマトグラム部の収集中時間が重複しない時間位置を探索して割り当て、複数の液体クロマトグラム部の開始時刻を決定することにより分析スケジュールを作成し、その後分析を行うよう制御する。更に、制御部は成分溶出時間を可変するパラメータセットを記憶し、分析スケジュールの作成に適したデータ収集タイミングとなるよう分析パラメータを調整し、成分溶出時間を変更する。」という技術を記載している(要約参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】WO2017/216934
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
マルチストリーム液体クロマトグラフ質量分析装置におけるそれぞれのストリームは、少なくとも、送液ポンプと分離カラムから構成される。
【0013】
液体クロマトグラフで用いる分離カラムは測定を繰り返すことによってその性能が劣化するため、定期的な交換が必要である。マルチストリーム液体クロマトグラフ質量分析装置で、いずれかのストリームの分離カラムの交換が必要になった場合、そのストリームは使用不可となる。このとき、他のストリームが使用可能であればマルチストリーム液体クロマトグラフ質量分析装置は検体の分析を継続することができる。
【0014】
しかしながら、検体の前処理を行い、前処理によって得られた試料を液体クロマトグラフに導入したのち、検出器で検出する一連の処理を自動で行う液体クロマトグラフ質量分析装置では、前述のように、検体を受け付けたタイミングで各ストリームへの試料導入ならびに、検出器への試料導入タイミングを適切に設定する必要がある。
【0015】
そのため、分析スケジュールの作成後に何らかの要因によってストリームに異常が発生して使用不可となった場合、液体クロマトグラフが複数のストリームを備えていたとしても分析スケジュールに従った処理が行われるうえでは当該ストリームを使用するはずであった試料の分析は行われず、検体の損失や結果報告の遅延に繋がる。
【0016】
本発明の目的は、上記の問題点を解決し、液体クロマトグラフがマルチストリームを備えた状況において、ストリームが使用不可となった場合であっても処理を継続させる自動分析装置の制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、検体を前処理することにより試料を精製する前処理部と、複数のストリームを有する液体クロマトグラフにより前記試料を分離する分離部と、分離された試料を検出する検出部と、を備え、前記分離部および前記検出部での前記試料の処理時期を分析スケジュールに基づき制御する自動分析装置の制御方法であって、前記分析スケジュールの設定後に前記ストリームの異常を検知した場合、代用可能な代用ストリームが存在するか検索し、代用ストリームが存在する場合、異常を検知したストリームへの導入がスケジュールされていた試料を当該代用ストリームへ導入するように、かつ、当該代用ストリームを経た試料と、他の正常なストリームを経た試料との前記検出部での処理タイミングが重複しないように、前記分析スケジュールを修正し、異常を検知して使用不能となったストリームが復帰するまでの待機場所として、前記前処理部の試料設置ポジション内の空きポジションを使用する、あるいは前記前処理部に退避専用ポジションを設けて前記退避専用ポジションを使用することを特徴とする。

【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、液体クロマトグラフがマルチストリームを備えた状況において、ストリームが使用不可となった場合であっても処理を継続させる自動分析装置の制御方法を提供することができる。上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施例の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施例に係るマルチストリーム液体クロマトグラフ質量分析装置の概念図。
図2】一つのストリームを使用する検体の分析スケジューリングの概念図。
図3】それぞれ異なるストリームを使用する3つの分析項目のタイムチャート。
図4】実施例に係る再スケジューリングを示すフローチャート。
図5】実施例に係る再スケジューリング後の分析タイムチャート。
図6】ストリーム設定テーブルを示す図。
図7】ストリーム定義画面の例。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を用いて実施例を説明する。
【0021】
以下の実施例ではクロマトグラフとして液体クロマトグラフ(HPLC)を用いて記載しているが、その他のクロマトグラフ、たとえばガスクロマトグラフ(GC)を用いたGC質量分析装置についても本発明は適用可能である。
【0022】
また、本発明の実施例では液体クロマトグラフの検出器として質量分析計を使用した液体クロマトグラフ質量分析装置について記載しているが、質量分析計以外の検出器、たとえば可視・紫外吸光度検出器やフォトダイオードアレイ検出器、蛍光検出器等においても本発明は適用可能である。
【0023】
図1は、実施例に係るマルチストリーム液体クロマトグラフ質量分析装置の概念図であり、図2は一つのストリームを使用する検体の分析スケジューリングの概念図である。図3図2を考慮したうえでそれぞれ異なるストリームを用いる異なる分析項目A~Cの各分析のタイムチャートの概略を示している。
【0024】
図1に示すように、マルチストリーム液体クロマトグラフ質量分析装置は、検体を前処理して試料を精製する前処理システム102と、ストリーム103と、ストリーム107と、ストリーム111と、ストリーム103、ストリーム107、ストリーム111に対して前処理システム102により得られた試料を分注する液体クロマトグラフ切換バルブ115と、検出器流路切換バルブ116と、検出器117と、前処理システム102、液体クロマトグラフ切換バルブ115と、ストリーム103、ストリーム107、ストリーム111、検出器流路切換バルブ116および検出器117を制御する制御部101と、を備える。
【0025】
ストリーム103は、移動相となる溶媒を分析流路に高圧送液する送液装置(Pump、ポンプ(送出装置))104と、送液装置104に接続され試料を分析流路へ導入する注入バルブ105と、注入バルブ105の下流に接続され、注入バルブ105から分析流路を介して試料が供給され、供給された試料を各成分に分離する分離カラム(Column)106とを有する。
【0026】
また、ストリーム107は、ストリーム103と同様な構成となっており、移動相となる溶媒を高圧送液する送液装置(Pump、ポンプ)108と、送液装置108に接続され、試料を分析流路へ導入する注入バルブ109と、注入バルブ109の下流に接続され、試料を各成分に分離する分離カラム(Column)110とを有する。
【0027】
また、ストリーム111も、ストリーム103と同様な構成となっており、移動相となる溶媒を高圧送液する送液装置(Pump、ポンプ)112と、送液装置112と接続され、試料を分析流路へ導入する注入バルブ113と、注入バルブ113の下流に接続され、試料を各成分に分離する分離カラム(Column)114とを有する。
【0028】
ストリーム103の分離カラム106、ストリーム107の分離カラム110、ストリーム111の分離カラム114は、検出器流路切換バルブ116を介して1つの検出器(質量分析装置)117に並列接続されている。
【0029】
前処理システム102は、検体の前処理を行ったのち液体クロマトグラフ切換バルブ115を介してストリーム103,107,111の分析流路に接続した注入バルブ105,109,113へ試料を分注する。検出器流路切換バルブ116により試料が検出器117に導入される。
【0030】
図1には、1つの液体クロマトグラフ切換バルブ115を示したが、液体クロマトグラフ切換バルブ115は複数、あるいはバルブではなくそれぞれのストリームに試料を導入可能なようにノズルを設けてもよい。
【0031】
また、図1には、1つの検出器流路切換バルブ116を示したが、検出器流路切換バルブ116は、複数であってもよい。
【0032】
ストリーム103,107および111を備える装置をマルチストリーム液体クロマトグラフとする。
【0033】
図2において、サイクル201は制御部101により作成される分析スケジュールの最小単位である。
【0034】
制御部101は、分析対象となる項目の性質に基づいた前処理の過程や分離部への導入および導入時に必要となる移動相の準備、分離が完了した試料の検出器への導入をサイクルの単位で、かつ、複数の検体間では特に検出器への導入タイミングが重複することが無いよう分析スケジュールを作成する。
【0035】
例としてストリーム103およびストリーム107を使用する分析の場合、ストリーム103を使用する検体では分離カラム106への試料導入に先立ち移動相となる溶媒を高圧送液する送液装置104と、ストリーム107を使用する検体では分離カラム110への試料導入に先立ち移動相となる溶媒を高圧送液する送液装置108の動作タイミングとを考慮した液体クロマトグラフ切換バルブ115への導入タイミング、ならびにそれらの試料を検出器流路切換バルブ116と検出器117へ導入するタイミングが重複しないよう制御部101はスケジューリングしなければならない。
【0036】
図3において、スケジューリングタイミング313は分析スケジュールの作成タイミングを示し、準備サイクル314,315,316は検体を前処理に必要な容器へとあらかじめ分注しておく準備時間を示す。前処理サイクル301,305,309は前処理システム102における検体の前処理を示し、試料導入サイクル302,306,310は液体クロマトグラフ切換バルブ115および注入バルブ105,109,113に対する試料の導入を示す。
【0037】
また、分離サイクル303,307,311は分離カラム106,110,114における試料の分離および検出器流路切換バルブ11での検出器導入を示す。
【0038】
さらに、検出サイクル304,308,312は検出器117での検出タイミングを示す。
【0039】
制御部101は、図にもとづき、スケジューリングタイミング313において分析すべき検体を認識し、それらの検体間で前処理サイクル301、試料導入サイクル302、分離サイクル303、検出サイクル304の一連を処理するとともに、かつそれぞれの検体間で検出器117における検出サイクル304,308,312が重ならないような分析スケジュールを作成し、以降の分析動作が行われる。
【0040】
次に、本発明の実施例の主要部である再スケジューリングについて、図3および図4図5を用いて説明する。図4は、再スケジューリングが発生した場合のフローチャートである。図5は、再スケジューリング後の分析タイムチャートを示す。
【0041】
ここでは、図1で例示した、3つのストリーム構成の場合を用いて説明する。本発明は、2つ以上のストリームを持つマルチストリーム液体クロマトグラフ質量分析装置に適用可能である。
【0042】
図3のスケジューリングタイミング313において、Item AおよびItem BおよびItem Cの分析スケジュール作成が制御部101によって行われる。ここで、Item AとItem Bの分離カラムはそれぞれ同一項目を測定することができるものとする。
【0043】
そして、準備サイクル314,315,316を経たのち前処理サイクル301,305,309が並行して行われる。
【0044】
制御部101は、分析スケジューリング作成ののち前処理サイクルの開始後、サイクルごとにストリームの状態を取得する(ステップS1)。
【0045】
次にステップS2において、ストリーム103が使用可能かどうかチェックを行い、使用可能である場合は処理を継続する。
【0046】
ステップS2においてストリーム103の異常を検出した場合、代替となるストリームが存在するかどうかチェックを行う(ステップS3)。代替ストリームが存在しない場合は当該検体の処理は行われないことになる。
【0047】
ステップS3において代替となるストリーム107が存在する場合、Item Aに対してストリーム107を使用するよう再スケジューリングを行う(ステップS4)。
【0048】
Item Aに対する再スケジューリングが発生したことを受け、制御部101は、スケジューリングタイミング313の時点でストリーム107を使用予定の検体が存在するかどうかのチェックを行う(ステップS5)。
【0049】
ストリーム107を使用予定の検体が存在する場合は、Item Aの再スケジューリングによって分析開始時のスケジューリングの通りにストリーム107での処理タイミングに競合が発生することになるため、ストリーム107を使用予定であったItem Bに対してもストリーム107への試料導入ならびに検出器流路切換バルブ116と検出器117への試料導入タイミングが重複しないよう再スケジューリングを行う。
【0050】
これにより、再スケジューリングされたItem Aのストリームへの試料導入が行われたのち、Test Bに対する試料導入が順次行われることになる。
【0051】
再スケジューリングにより前処理完了からストリーム導入までのタイミングが変更されたItem Bの試料は待機サイクルが発生することになる。該待機サイクルでの待機方法については、前処理システム102内の空きポジションの使用、もしくは前処理システム102内に待機専用のポジションを設けてもよい。
【0052】
図5において、再スケジューリングタイミング501での再スケジューリングの結果、Item AはItem A’として再スケジューリング後前処理サイクル502、再スケジューリング後試料導入サイクル503、再スケジューリング後分離サイクル504、再スケジューリング後検出サイクル505となり、Item BはItem B’として再スケジューリング後前処理サイクル506、再スケジューリング後待機サイクル513を経たのち、再スケジューリング後試料導入サイクル508、再スケジューリング後分離サイクル509、再スケジューリング後検出サイクル510となり、同一ストリームを使用するItem A’、Item B’ならびに別ストリームを使用するItem Cの間で検出器117への導入タイミングが重複しないスケジューリングが行われることとなる。
【0053】
また、再スケジューリング時に優先度を考慮することも可能である。
【0054】
一般的に、臨床用の分析装置には検体を受け付けた順に処理を行う一般検体測定と、優先的に検体の処理を行う緊急検体測定がある。
【0055】
例として、一般検体の処理を行っている間に緊急検体の依頼を受け付けると、一般検体に対する処理は一時中断され、緊急検体の測定を行ったのち再度一般検体の測定の続きを行う。
【0056】
本発明の場合、特に検出器に対する試料導入の順序が測定結果報告順序につながる液体クロマトグラフ質量分析装置においては、再スケジューリングのタイミングで測定中検体の優先度を取得し、優先度の高い検体が存在する場合は当該検体を優先的に処理するよう再スケジューリングすることで、迅速な測定結果の報告に繋がる。
【0057】
次に、代用ストリームの定義について図6および図7を用いて説明する。
【0058】
液体クロマトグラフのストリームは、充填剤やカラム本体の材質、長さといったカラムの種類と分析項目の組み合わせ、あるいは移動相として用いる溶離液の組成と分析項目の組み合わせによる。
【0059】
つまり、分析項目とカラム、分析項目と溶離液の組み合わせをもとにストリームの代用基準を判断することができる。
【0060】
ストリームの代用について、あらかじめ装置内でテーブルとして定義しておいてもよいし、またはユーザーが操作画面上で任意に設定できてもよい。
【0061】
図6にストリーム定義テーブルの例を示す。
【0062】
分析項目601のTest Aは、溶離液602、カラム603により初期ストリーム604でストリーム1と定義される。
【0063】
次に、分析項目601のTest Bは、溶離液602、カラム603の組み合わせにより初期ストリーム604でストリーム2と定義されるが、分析項目601、溶離液602、カラム603の組み合わせにより代用ストリーム605がストリーム1と定義され、また分析項目601のTest Aも同様に代用ストリーム605がストリーム2と定義され、Test AとTest Bでともに代用ストリームであると定義される。
【0064】
一方で、分析項目601のTest C、Test D、Test Eは、溶離液602、カラム603との組み合わせが整合しないことにより初期ストリーム604がそれぞれ異なり、また代用ストリーム605も無しとなる。
【0065】
図7にストリーム定義画面の例を示す。
【0066】
分析項目切換ボタン701、溶離液切換ボタン702、カラム切換ボタン703、初期ストリーム切換ボタン704、代用ストリーム切換ボタン705はそれぞれユーザーによる操作が可能であり、それぞれの項目を選択入力することにより初期ストリーム、代用ストリームを設定することが可能である。代用ストリームが切換可能であるため、条件を満たしていたとしても代用としない設定にすることもできる。
【0067】
本画面において設定された内容は設定保存ボタン706を押下することによりシステムに保存され、また設定をしない場合はキャンセルボタン707を押下することにより破棄される。
【0068】
以上説明したごとく、本実施例は、検体を前処理することにより試料を精製する前処理部と、移動相を分析流路に送出する送出装置と、この送出装置に接続され、前記前処理部で得られた前記試料を前記分析流路に導入する注入バルブと、この注入バルブの下流に接続され、前記試料を各成分に分離する分離カラムとを有する液体クロマトグラフを複数備えるマルチクロマトグラフ装置と、前記マルチクロマトグラフの前記注入バルブに前記試料を分注する少なくとも一つの試料分注機構と、前記試料を分析する検出器と、前記複数のクロマトグラフ装置のいずれかの前記分離カラムにより分離された試料を、前記分析流路を介して前記検出器に導入する流路切換バルブと、前記マルチクロマトグラフ、前記試料分注機構、前記流路切換バルブおよび前記検出部の動作を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記前処理部での検体処理の開始時に、前記複数のクロマトグラフのそれぞれの前記分離カラムへの試料導入および前記検出器への試料導入のタイミングが重複しないよう分析スケジュールの作成を行う自動分析装置の制御方法であって、検体受付時の分析スケジュール作成後にいずれかのストリームの異常を検出した場合に代用可能なストリームが存在するか検索を行い、代用可能なストリームが存在する場合、異常を検知したストリームへの導入が計画されていた試料を当該代用ストリームへ導入するように、かつ、当該代用ストリームを経た試料と、他の正常なストリームを経た試料との前記検出部での処理タイミングが重複しないように、前記分析スケジュールを修正する。
【0069】
これにより、分析スケジュールの作成後に使用予定のストリームが異常により使用不可となっても、代用可能なストリームが存在する場合は当該代用ストリームを使用するよう分析スケジュールの再設定を行うことで、検体の損失ならびに結果報告時間遅延を回避することが可能となる。
【0070】
<その他>
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0071】
101:制御部、102:前処理システム、103,107,111:ストリーム、104,108,112:送液装置、105,109,113:注入バルブ、106,110,114:分離カラム、115:液体クロマトグラフ切換バルブ、116:検出器流路切換バルブ、117:検出器、201:サイクル、301,305,309:前処理サイクル、302,306,310:試料導入サイクル、303,307,311:分離サイクル、304,308,312:検出サイクル、313:スケジューリングタイミング、314,315,316:準備サイクル、501:再スケジューリングタイミング、502,506:再スケジューリング後前処理サイクル、503,508:再スケジューリング後試料導入サイクル、513:再スケジューリング後待機サイクル、504,509:再スケジューリング後分離サイクル、505,510:再スケジューリング後検出サイクル、601:分析項目、602:溶離液、603:カラム、604:初期ストリーム、605:代用ストリーム、701:分析項目切換ボタン、702:溶離液切換ボタン、703:カラム切換ボタン、704:初期ストリーム切換ボタン、705:代用ストリーム切換ボタン、706:設定保存ボタン、707:キャンセルボタン




図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7