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特許7574391充電制御方法、およびこれを行う充電制御装置およびバッテリーパック
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】充電制御方法、およびこれを行う充電制御装置およびバッテリーパック
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/10 20060101AFI20241021BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20241021BHJP
【FI】
H02J7/10 C
H02J7/10 H
H01M10/48 P
H01M10/48 301
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2023195893
(22)【出願日】2023-11-17
【審査請求日】2023-11-17
(31)【優先権主張番号】10-2023-0050965
(32)【優先日】2023-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】金 和洙
【審査官】鈴木 智之
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-046667(JP,A)
【文献】特開2012-055092(JP,A)
【文献】特開2004-222427(JP,A)
【文献】国際公開第2012/091076(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/003210(WO,A1)
【文献】特開2003-294817(JP,A)
【文献】特開2005-049216(JP,A)
【文献】特開2002-107427(JP,A)
【文献】特開2004-150800(JP,A)
【文献】特開2016-126887(JP,A)
【文献】特開2010-200557(JP,A)
【文献】特開2021-034320(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0166234(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/10
H01M 10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルの容量変化と電圧変化との相関関係を定義した複数のテーブルと、前記複数のテーブルのそれぞれに対応する寿命状態および温度とをマッピングさせて保存する保存装置、そして
バッテリーモジュールの充電開始時点での寿命状態および温度に基づいて前記複数のテーブルから前記バッテリーモジュールの現在状態に対応するテーブルを獲得し、充電が行われる間に検出される充電電流を累積して獲得した累積電流量と、前記バッテリーモジュールの現在状態に対応するテーブルとを使用して前記バッテリーモジュールに対して予測された電圧値を獲得し、前記バッテリーモジュールで実際測定された電圧値と前記予測された電圧値とを比較した比較結果により充電電流を制御する制御装置を含む充電制御装置。
【請求項2】
前記複数のテーブルは、前記セルの容量に対する電圧の微分値(dV/dQ)、または前記微分値(dV/dQ)から導出された値を含む、請求項1に記載の充電制御装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記累積電流量および前記バッテリーモジュールの現在状態に対応するテーブルを使用して前記充電開始時点から現在時点までの電圧変化量を算出し、前記充電開始時点に検出された前記バッテリーモジュールの電圧値に前記電圧変化量を加えて前記予測された電圧値を獲得する、請求項2に記載の充電制御装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記累積電流量に基づいて前記バッテリーモジュールの現在時点での充電状態(SOC)を決定し、前記バッテリーモジュールの前記充電開始時点での充電状態(SOC)と前記現在時点での充電状態(SOC)に基づいて前記バッテリーモジュールの現在状態に対応するテーブルから微分値(dV/dQ)を抽出し、前記バッテリーモジュールの現在状態に対応するテーブルから抽出された微分値(dV/dQ)を使用して前記電圧変化量を算出する、請求項3に記載の充電制御装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記予測された電圧値と前記測定された電圧値との差が臨界値を超える場合、充電電流が減少するように制御する、請求項1に記載の充電制御装置。
【請求項6】
前記制御装置は、前記予測された電圧値と前記測定された電圧値との差が前記臨界値未満である場合、充電電流が増加するように制御する、請求項5に記載の充電制御装置。
【請求項7】
前記臨界値は、単一値であるか、または上限値および下限値を有する所定範囲である、請求項5に記載の充電制御装置。
【請求項8】
前記制御装置は、前記累積電流量からDCIRによる電流成分を除外させる、請求項1に記載の充電制御装置。
【請求項9】
前記制御装置は、充電装置と通信し、通信を通じて前記充電装置から前記バッテリーモジュールに印加される充電電流を制御する、請求項1に記載の充電制御装置。
【請求項10】
複数のセルを含むバッテリーモジュール、そして
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の充電制御装置を含むバッテリーパック。
【請求項11】
前記制御装置は、前記複数のセルの中から選択された代表セルに対して前記充電開始時点で検出された寿命状態および温度に基づいて、前記バッテリーモジュールの現在状態に対応するテーブルを獲得する、請求項10に記載のバッテリーパック。
【請求項12】
前記代表セルは、前記複数のセルの中で劣化状態が最も大きいウィークセルである、請求項11に記載のバッテリーパック。
【請求項13】
前記制御装置は、前記複数のセルに対して前記充電開始時点で検出された寿命状態および温度の平均値に基づいて、前記バッテリーモジュールの現在状態に対応するテーブルを獲得する、請求項10に記載のバッテリーパック。
【請求項14】
バッテリーパックの充電制御方法であって、
バッテリーモジュールの充電開始時点での寿命状態および温度に基づいて、セルの容量変化と電圧変化との相関関係を定義した複数のテーブルの中から前記バッテリーモジュールの現在状態に対応するテーブルを選択する段階、
充電が行われる間に検出される充電電流を累積して累積電流量を獲得する段階、
前記累積電流量と前記バッテリーモジュールの現在状態に対応するテーブルを使用して前記バッテリーモジュールに対して予測電圧値を獲得する段階、そして
前記バッテリーモジュールで実際測定された電圧値と前記予測電圧値に基づいて充電電流を制御する段階を含み、
前記複数のテーブルは、前記セルの互いに異なる寿命状態および温度に対応する、充電制御方法。
【請求項15】
前記複数のテーブルは、前記セルの容量に対する電圧の微分値(dV/dQ)、または前記微分値(dV/dQ)から導出された値を含む、請求項14に記載の充電制御方法。
【請求項16】
前記予測電圧値を獲得する段階は、
前記累積電流量および前記バッテリーモジュールの現在状態に対応するテーブルを使用して前記充電開始時点から現在時点までの電圧変化量を算出する段階、そして
前記充電開始時点で検出された前記バッテリーモジュールの電圧値に前記電圧変化量を加えて前記予測電圧値を獲得する段階を含む、請求項15に記載の充電制御方法。
【請求項17】
前記電圧変化量を算出する段階は、
前記累積電流量に基づいて前記バッテリーモジュールに対して現在時点での充電状態(SOC)を決定する段階、
前記バッテリーモジュールの前記充電開始時点での充電状態(SOC)と前記現在時点での充電状態(SOC)に基づいて前記バッテリーモジュールの現在状態に対応するテーブルから微分値(dV/dQ)を抽出する段階、そして
前記バッテリーモジュールの現在状態に対応するテーブルから抽出された微分値(dV/dQ)を使用して前記電圧変化量を算出する段階を含む、請求項16に記載の充電制御方法。
【請求項18】
前記充電電流を制御する段階は、
前記予測電圧値と前記測定された電圧値との差が臨界値を超える場合、充電電流が減少するように制御する段階を含む、請求項14に記載の充電制御方法。
【請求項19】
前記充電電流を制御する段階は、
前記予測電圧値と前記測定された電圧値との差が前記臨界値未満である場合、充電電流が増加するように制御する段階をさらに含む、請求項18に記載の充電制御方法。
【請求項20】
前記臨界値は、単一値であるか、または上限値および下限値を有する所定範囲である、請求項18に記載の充電制御方法。
【請求項21】
前記累積電流量を獲得する段階は、
DCIRによる電流成分を除外させて充電電流を累積する段階を含む、請求項14に記載の充電制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、充電制御方法、およびこれを行う充電制御装置およびバッテリーパックに関する。
【背景技術】
【0002】
充電式または二次バッテリー(rechargeable or secondary battery)は、充電および放電が繰り返され得るという点で、化学物質の電気エネルギーへの非可逆的変換だけを提供する一次バッテリーとは異なる。低容量の再充電可能なバッテリーは、携帯電話、ノートパソコン、およびカムコーダーのような小型電子装置の電源供給装置として使用され、高容量の再充電可能なバッテリーは、電気自動車(EV:Electric Vehicle)、ハイブリッド自動車(HV:Hybrid Vehicle)または家庭用または産業用として利用される中大型バッテリーを利用するエネルギー貯蔵システム(ESS:Energy Storage System)や無停電電源供給装置(UPS:Uninterruptible Power Supply)システムなどの電源供給装置として使用される。
【0003】
一般的に、二次バッテリーは、正極、負極、および正極と負極との間に介されたセパレータを含む電極組立体、電極組立体を収容するケース、そして電極組立体と電気的に連結されている電極端子を含む。正極、負極、および電解質溶液の電気化学的反応を通じてバッテリーの充放電を可能にするために、ケースに電解液が注入される。円筒形または長方形のようなケースの形状はバッテリーの用途により異なる。
【0004】
再充電可能なバッテリーは、直列および/または並列に結合された多数の単位セルで形成されたバッテリーモジュールとして使用されて、例えばハイブリッド自動車のモータ駆動のための、高いエネルギー密度を提供することができる。つまり、バッテリーモジュールは、例えば、電気自動車用の高電力再充電可能なバッテリーを実現するために必要な電力量により複数の単位セルの電極端子を互いに連結して形成される。バッテリーパックを構成するために一つ以上のバッテリーモジュールが機械的および電気的に統合される。
【0005】
バッテリーパックに連結されている多様な電気消費者の動的電力需要を満たすために、バッテリー電力出力および充電に対する静的制御だけでは十分でない。したがって、バッテリーパックと電気消費者のコントローラーとの間に情報が持続的にまたは間歇的に交換されなければならない。この情報は、バッテリーパックの実際の充電状態(SOC:state of charge)、潜在的な電気的性能、充電能力、および内部抵抗はもちろん、実際または予測電力需要または消費者余剰分を含む。
【0006】
前述したパラメータのモニタリング、制御、および/または設定のために、バッテリーパックは、制御電子装置(control electronics)を含む。このような制御電子装置は、バッテリーパックの必須部品であってもよく、共通のハウジング内に配置され得るかまたは適切な通信バスを通じてバッテリーパックと通信する遠隔制御ユニットの一部であってもよい。これら制御電子装置は、バッテリーパックで多様な機能を行うことができる。
【0007】
バッテリーパックの制御電子装置、例えば、バッテリーシステム管理者(BSM:battery system manager)、バッテリー管理システム(BMS:battery management system)、バッテリーモニタリングユニット(BMU:battery monitoring unit)またはシステムベーシスチップ(SBC:system basis chip)は、それらが制御するバッテリーパックにより電力の供給を受けることができる。このような方式は、制御電子装置のための追加電源が省略され得るため、バッテリーパックの設置空間要求を減少させることができる。しかし、バッテリーパックの出力電圧により、例えば、48Vのような高電圧のバッテリーパックは、制御電子装置に電力を供給するために出力電圧の調節が要求される。
【0008】
最近、バッテリーパックを搭載した電気自動車やハイブリッド自動車の供給が増加することに伴い、バッテリーパックの充電速度を高めながら寿命は増やすことができる方案に対する要求が増加している。バッテリーパックの充電速度と寿命は相反関係にあり、バッテリーパックの充電速度を高めるほどバッテリーパックの劣化が促進されてバッテリーパックの寿命が減少する。
【0009】
したがって、バッテリーパックの劣化を最大限抑制しながらバッテリーパックの充電速度を高めることができる方案に対する研究が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
実施形態の目的は、バッテリーパックの劣化を最大限抑制しながら充電速度を高めるための充電制御方法、そしてこれを行う充電制御装置およびバッテリーパックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一実施形態による充電制御装置は、セルの容量変化と電圧変化との相関関係を定義した複数のテーブルと、前記複数のテーブルのそれぞれに対応する寿命状態および温度とをマッピングさせて保存する保存装置、そしてバッテリーモジュールの充電開始時点での寿命状態および温度に基づいて前記複数のテーブルから前記バッテリーモジュールの現在状態に対応するテーブルを獲得し、充電が行われる間に検出される充電電流を累積して獲得した累積電流量と、前記バッテリーモジュールの現在状態に対応するテーブルとを使用して前記バッテリーモジュールに対して予測された電圧値を獲得し、前記バッテリーモジュールで実際測定された電圧値と前記予測された電圧値とを比較した比較結果により充電電流を制御する制御装置を含むことができる。
【0012】
前記充電制御装置で、前記複数のテーブルは、前記セルの容量に対する電圧の微分値(dV/dQ)、または前記微分値(dV/dQ)から導出された値を含むことができる。
【0013】
前記制御装置は、前記累積電流量および前記バッテリーモジュールの現在状態に対応するテーブルを使用して前記充電開始時点から現在時点までの電圧変化量を算出し、前記充電開始時点に検出された前記バッテリーモジュールの電圧値に前記電圧変化量を加えて前記予測された電圧値を獲得することができる。
【0014】
前記制御装置は、前記累積電流量に基づいて前記バッテリーモジュールの現在時点での充電状態(SOC:state of charge)を決定し、前記バッテリーモジュールの前記充電開始時点での充電状態(SOC)と前記現在時点での充電状態(SOC)に基づいて前記バッテリーモジュールの現在状態に対応するテーブルから微分値(dV/dQ)を抽出し、前記バッテリーモジュールの現在状態に対応するテーブルから抽出された微分値(dV/dQ)を使用して前記電圧変化量を算出することができる。
【0015】
前記制御装置は、前記予測された電圧値と前記測定された電圧値との差が臨界値を超える場合、充電電流が減少するように制御することができる。
【0016】
前記制御装置は、前記予測された電圧値と前記測定された電圧値との差が前記臨界値未満である場合、充電電流が増加するように制御することができる。
【0017】
前記充電制御装置で、前記臨界値は、単一値であるか、または上限値および下限値を有する所定範囲であり得る。
【0018】
前記制御装置は、前記累積電流量からDCIR(Direct Current Internal Resistance)による電流成分を除外させることができる。
【0019】
前記制御装置は、充電装置と通信し、通信を通じて前記充電装置から前記バッテリーモジュールに印加される充電電流を制御することができる。
【0020】
一実施形態によるバッテリーパックは、複数のセルを含むバッテリーモジュール、そして前述の特徴のうちの少なくとも一つの特徴を含む充電制御装置を含むことができる。
【0021】
前記バッテリーパックで、前記制御装置は、前記複数のセルの中から選択された代表セルに対して前記充電開始時点で検出された寿命状態および温度に基づいて、前記バッテリーモジュールの現在状態に対応するテーブルを獲得することができる。
【0022】
前記バッテリーパックで、前記代表セルは、前記複数のセルの中で劣化状態が最も大きいウィーク(weak)セルであり得る。
【0023】
前記バッテリーパックで、前記制御装置は、前記複数のセルに対して前記充電開始時点で検出された寿命状態および温度の平均値に基づいて、前記バッテリーモジュールの現在状態に対応するテーブルを獲得することができる。
【0024】
一実施形態によるバッテリーパックの充電制御方法は、バッテリーモジュールの充電開始時点での寿命状態および温度に基づいて、セルの容量変化と電圧変化との相関関係を定義した複数のテーブルの中から前記バッテリーモジュールの現在状態に対応するテーブルを選択する段階、充電が行われる間に検出される充電電流を累積して累積電流量を獲得する段階、前記累積電流量と前記バッテリーモジュールの現在状態に対応するテーブルを使用して前記バッテリーモジュールに対して予測電圧値を獲得する段階、そして前記バッテリーモジュールで実際測定された電圧値と前記予測電圧値に基づいて充電電流を制御する段階を含むことができる。前記複数のテーブルは、前記セルの互いに異なる寿命状態および温度に対応することができる。
【0025】
前記充電制御方法で、前記複数のテーブルは、前記セルの容量に対する電圧の微分値(dV/dQ)、または前記微分値(dV/dQ)から導出された値を含むことができる。
【0026】
前記予測電圧値を獲得する段階は、前記累積電流量および前記バッテリーモジュールの現在状態に対応するテーブルを使用して前記充電開始時点から現在時点までの電圧変化量を算出する段階、そして前記充電開始時点で検出された前記バッテリーモジュールの電圧値に前記電圧変化量を加えて前記予測電圧値を獲得する段階を含むことができる。
【0027】
前記電圧変化量を算出する段階は、前記累積電流量に基づいて前記バッテリーモジュールに対して現在時点での充電状態(SOC)を決定する段階、前記バッテリーモジュールの前記充電開始時点での充電状態(SOC)と前記現在時点での充電状態(SOC)に基づいて前記バッテリーモジュールの現在状態に対応するテーブルから微分値(dV/dQ)を抽出する段階、そして前記バッテリーモジュールの現在状態に対応するテーブルから抽出された微分値(dV/dQ)を使用して前記電圧変化量を算出する段階を含むことができる。
【0028】
前記充電電流を制御する段階は、前記予測電圧値と前記測定された電圧値との差が臨界値を超える場合、充電電流が減少するように制御する段階を含むことができる。
【0029】
前記充電電流を制御する段階は、前記予測電圧値と前記測定された電圧値との差が前記臨界値未満である場合、充電電流が増加するように制御する段階をさらに含むことができる。
【0030】
前記充電制御方法で、前記臨界値は、単一値であるか、または上限値および下限値を有する所定範囲であり得る。
【0031】
前記累積電流量を獲得する段階は、DCIRによる電流成分を除外させて充電電流を累積する段階を含むことができる。
【発明の効果】
【0032】
実施形態によれば、バッテリーパックの劣化を最大限抑制しながら充電速度を高める効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】一実施形態によるバッテリーパックを概略的に示すブロック図(block diagram)である。
図2】一実施形態による充電制御装置で使用されるdV/dQテーブルの一例を示す。
図3】一実施形態による充電制御装置でdV/dQテーブルを使用してセルの現在電圧値を予測する方法を説明するための図面である。
図4】一実施形態による充電制御装置の充電制御方法を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、添付した図面を参照して本発明の実施形態を詳しく説明する。以下、添付した図面を参照して本発明の実施形態による作用効果およびその具現方法を説明する。図面において、同一の参照符号は同一の素子を示し、重複する説明は省略される。しかし、本発明は、多様な形態に具体化することができ、ここに図示された実施形態だけに限定されると解釈されてはならない。むしろ、これら実施形態は本開示が徹底かつ完全になることができるように例として提供され、当業者に本発明の様態および特徴を十分に伝達する。
【0035】
したがって、本発明の様態および特徴の完全な理解のために、当業者に必要でないと考慮されるプロセス、要素、および技術は説明されないことがある。図面において、素子、層、および領域の相対的な大きさは明確性のために誇張され得る。
【0036】
ここで使用されたように、「および/または」という用語は、一つ以上の関連して列挙された項目の任意および全ての組み合わせを含む。また、本発明の実施形態を記述する時、「することができる」を使用することは、「本発明の一つ以上の実施形態」を意味する。本発明の実施形態に関する以下の説明において、単数の形態の用語は、文脈が異なるように明示されない限り、複数の形態を含むことができる。
【0037】
「第1」、「第2」、「第3」などの序数を含む用語は、多様な要素を説明するために使用されるが、これら要素はこれら用語により制限されてはならないことを理解することができる。この用語は一つの要素を他の要素と区別する目的のみで使用される。例えば、第1要素は第2要素と命名されてもよく、同様に第2要素は本発明の範囲を逸脱せずに、第1要素と命名されてもよい。ここで使用されたように、「および/または」という用語は、一つ以上の関連して列挙された項目の任意および全ての組み合わせを含む。「少なくとも一つ」のような表現は、要素の目録に先行して、要素の全体目録を修正し、目録の個別要素を修正しない。
【0038】
ここで使用される用語「実質的に」、「約」および類似の用語は、近似の用語として使用され、程度の用語としては使用されず、当該技術分野の通常の知識を有する者により認識され得る測定された値または計算された値の固有の偏差を説明するためのものである。また、用語「実質的に」が数値を使用して表現され得る特徴と組み合わせて使用されれば、「実質的な」という用語は、その数値を中心とした値の+/-5%の範囲を示す。
【0039】
一つの構成要素または層が他の構成要素または層に対して「上に」、「連結された」、または「結合された」と記載される場合において、「上に」、「連結された」および「結合された」とは、直接、または一つ以上の他の構成要素または層を介して形成されることを全て含む。また、一つの構成要素または層が2個の構成要素または層の「間」にあると記載される場合、2個の構成要素または層の間の唯一の構成要素または層であるか、または一つ以上の介された他の要素または層が存在すると理解されなければならない。
【0040】
2個の構成要素を電気的に連結するということは、2個の構成要素を直接(directly)連結する場合だけでなく、2個の構成要素の間に他の構成要素を経て連結する場合も含む。他の構成要素は、スイッチ、抵抗、キャパシタなどを含むことができる。実施形態を説明するに当たり、連結するという表現は、直接連結するという表現がない場合には、電気的に連結することを意味する。
【0041】
図1は一実施形態によるバッテリーパックを概略的に示すブロック図(block diagram)である。
【0042】
図1を参照すれば、一実施形態によるバッテリーパック10は、バッテリーモジュール11、および充電制御装置12を含むことができる。
【0043】
バッテリーモジュール11は、少なくとも一つのセルを含むことができる。バッテリーモジュール11が複数個のセルを含む場合、複数のセルは互いに直列および/または並列に連結され得る。
【0044】
充電制御装置12は、バッテリーモジュール11の充電を制御するための装置であり、状態検出装置121、保存装置122、および制御装置123を含むことができる。
【0045】
状態検出装置121は、バッテリーモジュール11を構成するセルの電圧、充放電電流、温度などセル状態と関連した値を持続的に測定して検出することができる。状態検出装置121は、検出された状態値を制御装置123に伝達することができる。
【0046】
保存装置122は、充電制御装置12で処理される情報を保存することができる。保存装置122は、セルの容量変化と電圧変化との相関関係(例えば、セルの容量に対する電圧の微分値(dV/dQ)(またはセルの容量変化に対する電圧変化の比率)、またはこれから導出された値)を定義したテーブル(以下、「dV/dQテーブル」と称する)を保存することができる。セルのdV/dQカーブは、セルの寿命状態(SOH:State Of Health)(または劣化状態)および温度により変わり得る。したがって、保存装置122は、セルのSOHおよび温度別に対応するdV/dQテーブルをマッピングさせて保存することができる。
【0047】
図2は一実施形態による充電制御装置で使用されるdV/dQテーブルの一例を示す。
【0048】
図2を例に挙げれば、充電制御装置12は、セルのSOH(例えば、SOH100%、SOH90%、SOH80%)および温度(例えば、-10℃、0℃、25℃、40℃)により異なるように示されるdV/dQカーブ21をテーブル形態に変換して保存することができる。セルのSOHが同一であっても温度が異なればdV/dQカーブ21が異なるように示され得る。例えば、SOHが100%であるセルのdV/dQカーブ21は、温度が-10℃である場合と40℃である場合において互いに異なる様相で展開され得る。したがって、充電制御装置12は、セルのSOHおよび温度の組み合わせ別に対応するdV/dQテーブルをマッピングさせて保存することができる。図2を参照すれば、dV/dQカーブ21は、セルのSOC変化によるdV/dQ値の変化を示すことができる。したがって、各dV/dQテーブルは、SOC別に対応するdV/dQ値をマッピングした形態で生成され得る。一方、dV/dQカーブ21は、バッテリーモジュール11を構成するセルと同一の仕様のセルに対してSOHおよび温度を変更しながら実施されるシミュレーションを通じて獲得され得る。
【0049】
再び、図1を参照すれば、制御装置123は、バッテリーモジュール11の状態をモニタリングし、バッテリーモジュール11の充電動作を制御することができる。
【0050】
制御装置123は、状態検出装置121から獲得される状態値に基づいてバッテリーモジュール11を構成する各セルの状態(電圧、電流、温度、SOC、SOHなど)を決定することができる。セルのSOCおよびSOHを決定する技術は、バッテリー技術分野において周知の技術であるため、本文書では詳細な説明を省略する。
【0051】
制御装置123は、バッテリーパック10が充電装置20と連結されて充電開始信号が入力されると、状態検出装置121から獲得される状態値に基づいてバッテリーモジュール11に対して充電開始信号が入力された時点(以下、「充電開始時点」と称する)でのSOHおよび温度を獲得することができる。
【0052】
バッテリーモジュール11が複数のセルを含む場合、バッテリーモジュール11に対して獲得されるSOHおよび温度は、バッテリーモジュール11で選択された一つのセルのSOHおよび温度であり得る。制御装置123は、バッテリーモジュール11を構成するセルの中で代表セルを選択し、選択された代表セルの充電開始時点でのSOHおよび温度をバッテリーモジュール11のSOHおよび温度で獲得することができる。例えば、制御装置123は、劣化状態が最も大きいウィーク(weak)セルを代表セルとして選択することができる。
【0053】
バッテリーモジュール11が複数のセルを含む場合、バッテリーモジュール11に対して獲得されるSOHおよび温度は、バッテリーモジュール11を構成するセルの平均SOHおよび平均温度であり得る。制御装置123は、バッテリーモジュール11を構成する複数のセルに対して充電開始時点でのSOHおよび温度を獲得し、これらの平均値をバッテリーモジュール11のSOHおよび温度として獲得することができる。
【0054】
制御装置123は、充電開始時点でバッテリーモジュール11に対して獲得されたSOHおよび温度に基づいて、保存装置122に保存されたdV/dQテーブルからバッテリーモジュール11の現在状態に対応するdV/dQテーブルを獲得することができる。
【0055】
制御装置123は、バッテリーモジュール11のSOHおよび温度に対応するdV/dQテーブルが保存装置122に保存された場合、保存装置122からこれを読み取ってバッテリーモジュール11の現在状態に対応するdV/dQテーブルとして使用することができる。制御装置123は、バッテリーモジュール11のSOHおよび温度に対応するdV/dQテーブルが保存装置122に保存されていない場合、保存装置122に保存されたdV/dQテーブルを使用して多様な方法でバッテリーモジュール11の現在状態に対応するdV/dQテーブルを決定することもできる。例えば、制御装置123は、保存装置122に保存されたdV/dQテーブルのうち、バッテリーモジュール11のSOHおよび温度と近接したSOHおよび温度にマッピングされたdV/dQテーブルを読み取ってバッテリーモジュール11の現在状態に対応するdV/dQテーブルとして使用することもできる。また、例えば、制御装置123は、補間法(interpolation)などを使用して保存装置122に保存されたdV/dQテーブルからバッテリーモジュール11の現在状態に対応するdV/dQテーブルを生成することもできる。
【0056】
制御装置123は、バッテリーモジュール11の現在状態に対応するdV/dQテーブルが獲得されると、当該dV/dQテーブルでの開始地点を決定することができる。開始地点は、充電開始時点で獲得されたバッテリーモジュール11のSOC(以下、「充電開始SOC」と称する)により決定され得る。制御装置123は、状態検出装置121により検出された状態値に基づいて充電開始時点でのバッテリーモジュール11の電圧(以下、「充電開始電圧」と称する)、および容量(以下、「充電開始容量」と称する)を決定することもできる。バッテリーモジュール11が複数のセルを含む場合、制御装置123は、バッテリーモジュール11を構成するセルの中で選択された代表セルの状態値、またはバッテリーモジュール11を構成するセルの平均状態値に基づいて、バッテリーモジュール11の充電開始SOC、充電開始電圧および充電開始容量を決定することができる。例えば、制御装置123は、バッテリーモジュール11から選択された代表セルに対して充電開始時点に検出されたSOC、電圧および容量を、バッテリーモジュール11の充電開始SOC、充電開始電圧および充電開始容量として決定することができる。また、例えば、制御装置123は、バッテリーモジュール11を構成するセルから充電開始時点に検出されたSOC、電圧および容量の平均値を、バッテリーモジュール11の充電開始SOC、充電開始電圧および充電開始容量として決定することもできる。
【0057】
制御装置123は、充電開始時点にバッテリーモジュール11から獲得した充電開始SOC、充電開始電圧および充電開始容量を保存装置122に保存することができる。
【0058】
制御装置123は、バッテリーモジュール11の充電が行われる間に充電電流の電流値を累積し、累積された電流量とバッテリーモジュール11の現在状態に対応するdV/dQテーブルとを使用してバッテリーモジュール11の現在電圧値(つまり、バッテリーモジュール11を構成するセルの現在電圧値)を予測することができる。まず、制御装置123は、累積された電流量に基づいてバッテリーモジュール11の現在SOC(つまり、バッテリーモジュール11を構成するセルの現在SOC)を推定することができる。この時、制御装置123は、充電電流の累積時、DCIR(Direct Current Internal Resistance)による電流成分を累積から除外させることによって、DCIRが結果に影響を与えないようにすることができる。制御装置123は、バッテリーモジュール11の現在SOCが決定されると、バッテリーモジュール11の現在状態に対応するdV/dQテーブルを使用してバッテリーモジュール11の現在電圧値を予測することができる。
【0059】
図3は一実施形態による充電制御装置でdV/dQテーブルを使用してセルの現在電圧値を予測する方法を説明するための図面である。
【0060】
図3でSOC1およびSOC2は、それぞれセルの充電開始SOCおよび現在SOCを示す。制御装置123は、dV/dQテーブルでSOC1~SOC2区間のdV/dQ値を抽出し、抽出されたdV/dQ値を使用して充電開始時点から現在時点までのセルの電圧変化量を算出することができる。また、制御装置123は、算出された電圧変化量を充電開始電圧に加えてセルの現在電圧を予測することができる。
【0061】
下記の数式1は、充電開始時点から現在時点までのセルの電圧変化量を算出し、これを使用してセルの現在電圧を予測する方法を示す。
【0062】
【数1】
【0063】
前記の数式1で、VおよびVは、それぞれセルの充電開始電圧および予測された現在電圧を示し、QおよびQは、それぞれセルの充電開始容量および現在容量を示し、dVは、電圧変化量を示すことができる。つまり、制御装置123は、セルの容量変化(dQ)による電圧変化(dV)を累積して全体電圧変化量(
【0064】
【数2】
【0065】
)を算出し、これを充電開始電圧(V)に加えることによってセルの現在電圧(V)を予測することができる。ここで、QおよびQは、それぞれセルの充電開始SOCおよび現在SOCに対応する容量値であり、セルの総容量と充電開始SOCおよび現在SOCを使用して算出され得る。また、容量変化(dQ)による電圧変化(dV)は、dV/dQテーブルから抽出されたdV/dQ値を使用して導出され、累積するdV値はセルの容量値により変わり得る。
【0066】
dV/dQカーブをdV/dQテーブル形態に変換時、分解能(resolution)を増加させるほどこれを使用した電圧予測度の正確度が増加することができる。しかし、保存空間、システム性能など使用環境の制約によりdV/dQテーブルの分解能が制限され得る。したがって、制御装置123は、dV/dQテーブルによりdV/dQ値が定義されていないSOC値に対しては、補間法を使用して隣接したdV/dQ値から対応するdV/dQ値を算出して使用することもできる。
【0067】
再び、図1を参照すれば、制御装置123は、前述のようにdV/dQテーブルを使用してバッテリーモジュール11を構成するセルの電圧値を持続的に予測することができる。
【0068】
制御装置123は、バッテリーモジュール11を構成するセルの電圧値が予測されると、状態検出装置121を使用して実際測定された現在電圧値とこれを比較することができる。セルの正常な充電時(例えば、低率充電時)には、正極でのリチウム(Li)イオンが安定した速度で移動して負極表面で挿入(intercalation)され、そのためにdV/dQテーブルを使用したセルの電圧予測が可能な状態である。しかし、充電電流が大きいかまたは温度が低いことから、リチウム(Li)イオンの移動速度が負極表面での挿入速度よりも相対的に速くなる場合、負極表面で析出現象が発生する。また、析出現象によりセルの負極電位(potential)値が正常充電時と異なるようになり、セルの電圧がdV/dQテーブルを使用した予測値とは異なるように現れる。したがって、dV/dQテーブルを使用して予測された電圧値と実際測定された電圧値とを比較してバッテリーモジュール11がセルの劣化が激しい領域で充電中であるか否か確認が可能である。
【0069】
制御装置123は、予測された電圧値と測定された電圧値との差が臨界値を超える場合、つまり、予測された電圧値から測定された電圧値を引いた電圧差が臨界値より大きくなる場合、バッテリーモジュール11がセルの充電劣化領域で充電中であると判断することができる。また、制御装置123は、バッテリーモジュール11が充電劣化領域で充電中であると判断されると、通信を通じて充電電流を低めるように充電装置20に要請することができる。制御装置123は、予測された電圧値から測定された電圧値を引いた電圧差が臨界値未満である場合、充電電流を再び高めるように充電装置20に要請することもできる。ここで、臨界値は、単一値に設定されるか、または上限値と下限値を有する所定範囲に設定されることもできる。
【0070】
制御装置123は、バッテリーパック10のバッテリー管理システム(BMS)により具現され得る。しかし、実施形態がこれで限定されるのではないため、充電制御装置12の少なくとも一部の構成要素(例えば、制御装置123の機能)が充電装置20内に含まれることもできる。
【0071】
図4は一実施形態による充電制御装置の充電制御方法を概略的に示す。図4の充電制御方法は、図1乃至図3を参照して説明した充電制御装置12により行われ得る。
【0072】
図4を参照すれば、充電制御装置12は、バッテリーパック10が充電装置20と連結されて充電が開始されると(S40)、バッテリーモジュール11の現在状態に対応するdV/dQテーブルを獲得することができる(S41)。
【0073】
段階S41で、充電制御装置12は、状態検出装置121によりバッテリーモジュール11から検出された状態値に基づいてバッテリーモジュール11の充電開始時点でのSOHおよび温度を決定し、これに基づいて保存装置122に保存されたdV/dQテーブルからバッテリーモジュール11の現在状態に対応するdV/dQテーブルを獲得することができる。
【0074】
段階S41で、バッテリーモジュール11が複数のセルを含む場合、充電制御装置12は、バッテリーモジュール11を構成するセルの中で代表セル(例えば、ウィークセル)を選択することができる。また、充電制御装置12は、選択された代表セルに対して充電開始時点で検出されたSOHおよび温度に基づいて、保存装置122に保存されたdV/dQテーブルからバッテリーモジュール11の現在状態に対応するdV/dQテーブルを獲得することができる。
【0075】
段階S41で、バッテリーモジュール11が複数のセルを含む場合、充電制御装置12は、充電開始時点でバッテリーモジュール11を構成するセルから検出されたSOHおよび温度の平均値を獲得することができる。また、充電制御装置12は、このように獲得されたセルの平均SOHおよび平均温度に基づいて、保存装置122に保存されたdV/dQテーブルからバッテリーモジュール11の現在状態に対応するdV/dQテーブルを獲得することもできる。
【0076】
段階S41で、充電制御装置12は、バッテリーモジュール11の現在SOHおよび温度に対応するdV/dQテーブルが保存装置122に保存された場合、保存装置122からこれを読み取ってバッテリーモジュール11のdV/dQテーブルとして使用することができる。
【0077】
段階S41で、充電制御装置12は、バッテリーモジュール11の現在SOHおよび温度に対応するdV/dQテーブルが保存装置122に保存されていない場合、保存装置122に保存されたdV/dQテーブルの中でバッテリーモジュール11の現在SOHおよび温度に近接したSOHおよび温度にマッピングされたdV/dQテーブルを読み取ってバッテリーモジュール11の現在状態に対応するdV/dQテーブルとして決定することもできる。
【0078】
段階S41で、充電制御装置12は、バッテリーモジュール11の現在SOHおよび温度に対応するdV/dQテーブルが保存装置122に保存されていない場合、補間法などを使用して保存装置122に保存されたdV/dQテーブルからバッテリーモジュール11の現在状態に対応するdV/dQテーブルを生成することもできる。
【0079】
充電制御装置12は、バッテリーモジュール11の現在状態に対応するdV/dQテーブルが獲得されると、当該dV/dQテーブルでの開始地点を決定することができる(S42)。dV/dQテーブルでの開始地点は、バッテリーモジュール11の充電開始SOCにより決定され得る。
【0080】
充電制御装置12は、バッテリーモジュール11の充電が行われる間に状態検出装置121により検出される充電電流を持続的に累積することができる(S43)。また、充電制御装置12は、累積された電流量とバッテリーモジュール11の現在状態に対応するdV/dQテーブルを使用してバッテリーモジュール11の現在電圧値を予測することができる(S44)。
【0081】
段階S43で、充電制御装置12は、充電電流の累積時、DCIRによる電流成分を累積から除外させることによって、DCIRが結果に影響を与えないようにすることができる。
【0082】
段階S44で、充電制御装置12は、バッテリーモジュール11の現在状態に対応するdV/dQテーブルに基づいてバッテリーモジュール11を構成するセルの電圧変化量を算出し、これをバッテリーモジュール11の充電開始電圧に加えてバッテリーモジュール11を構成するセルの現在電圧値を予測することができる。充電制御装置12は、段階S42を通じて決定された開始地点とバッテリーモジュール11を構成するセルの現在SOCにより決定された終了地点を使用してバッテリーモジュール11のdV/dQテーブルでの累積区間を決定し、累積区間のdV/dQ値を使用して充電開始時点から現在までのセルの電圧変化量を算出することができる(前述した数式1参照)。
【0083】
充電制御装置12は、バッテリーモジュール11の電圧値が予測されると、予測された電圧値と状態検出装置121により測定された実際電圧値との電圧差を臨界値と比較することができる。充電制御装置12は、予測された電圧値と実際電圧値との電圧差が臨界値を超えると(S45)、バッテリーモジュール11がセルの充電劣化領域で充電中であると判断し、充電装置20が充電電流を減少させるように制御することができる(S46)。また、充電制御装置12は、予測された電圧値と実際電圧値との電圧差が臨界値未満であると(S47)、バッテリーモジュール11の充電速度を増加させるために充電装置20が充電電流を増加させるように充電装置20を制御することができる(S48)。
【0084】
充電制御装置12は、バッテリーモジュール11の充電が終了する時まで(S49)、前述した段階S43乃至段階S48を反復的に行うことができる。
【0085】
前述によれば、実施形態による充電制御装置12は、dV/dQテーブルを使用して予測された電圧値と状態検出装置121により測定された実際電圧値との電圧差が臨界値に収束するように充電電流を持続的に制御することができる。これによれば、充電制御装置12は、バッテリーモジュール11がセルの劣化領域との境界付近で充電され得るように充電電流を制御することによって、充電時間は短縮しながらもバッテリーモジュール11の劣化を最小化することができる。
【0086】
ここで説明された本発明の実施形態による電子または電気装置および/または任意の他の関連装置または構成要素は、任意の適したハードウェア、ファームウエア(例えば、特定用途向け集積回路(application-specific integrated circuit))、ソフトウェア、またはソフトウェア、ファームウエアおよびハードウェアの組み合わせを利用して具現され得る。例えば、これら装置の多様な構成要素は、一つの集積回路(IC)チップ上にまたは個別のICチップ上に形成され得る。また、これら装置の多様な構成要素は、フレキシブルプリント回路フィルム(flexible printed circuit film)、テープキャリアパッケージ(TCP:tape carrier package)、プリント回路基板(PCB:printed circuit boardd)または一つの基板上に具現され得る。本明細書に記載された電気的連結または相互連結は、例えば、PCBまたは他の種類の回路キャリア上の配線または伝導性素子により具現され得る。伝導性素子は、例えば表面金属化(surface metallizations)のような金属化、および/またはピン(pin)を含むことができ、伝導性重合体(conductive polymers)またはセラミック(ceramics)を含むことができる。また電気エネルギーは例えば、電磁気放射または光を利用した無線接続を通じて伝送され得る。
【0087】
また、これら装置の多様な構成要素は、ここで説明された多様な機能を遂行するために一つ以上のプロセッサー上で実行され、一つ以上のコンピューティング装置内で実行され、コンピュータプログラム命令を実行し、他のシステム構成要素と相互作用するプロセスまたはスレッドであり得る。コンピュータプログラム命令は、例えばランダムアクセスメモリ(RAM:random access memory)のような、標準メモリ装置を使用するコンピューティング装置で具現され得るメモリに保存される。コンピュータプログラム命令はまた、例えばCD-ROM、フラッシュドライブなどのような他の非一時的(non-transitory)コンピュータ読み取り可能媒体に保存され得る。
【0088】
また、当業者は、多様なコンピューティング装置の機能が単一のコンピューティング装置に結合または統合され得るか、または特定のコンピューティング装置の機能が本発明の例示的な実施形態の範囲を逸脱せずに一つ以上の他のコンピューティング装置にわたって分散され得ることを認識しなければならない。
【0089】
以上で本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されず、特許請求の範囲で定義している本発明の基本概念を利用した当業者の多様な変形および改良形態も本発明の権利範囲に属する。
【符号の説明】
【0090】
10:バッテリーパック
11:バッテリーモジュール
12:充電制御装置
121:状態検出装置
122:保存装置
123:制御装置
20:充電装置
【要約】
【課題】実施形態の目的は、バッテリーパックの劣化を最大限抑制しながら充電速度を高めるための充電制御方法、そしてこれを行う充電制御装置およびバッテリーパックを提供することにある。
【解決手段】一実施形態による充電制御装置は、セルの容量変化と電圧変化との相関関係を定義した複数のテーブルと、前記複数のテーブルのそれぞれに対応する寿命状態および温度とをマッピングさせて保存する保存装置、そしてバッテリーモジュールの充電開始時点での寿命状態および温度に基づいて前記複数のテーブルから前記バッテリーモジュールの現在状態に対応するテーブルを獲得し、充電が行われる間に検出される充電電流を累積して獲得した累積電流量と、前記バッテリーモジュールの現在状態に対応するテーブルとを使用して前記バッテリーモジュールに対して予測された電圧値を獲得し、前記バッテリーモジュールで実際測定された電圧値と前記予測された電圧値とを比較した比較結果により充電電流を制御する制御装置を含むことができる。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4