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特許7574402基板保持具、基板処理装置、半導体装置の製造方法およびプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】基板保持具、基板処理装置、半導体装置の製造方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/31 20060101AFI20241021BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20241021BHJP
   C23C 16/458 20060101ALI20241021BHJP
【FI】
H01L21/31 F
H01L21/68 N
C23C16/458
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2023506698
(86)(22)【出願日】2021-03-19
(86)【国際出願番号】 JP2021011527
(87)【国際公開番号】W WO2022195886
(87)【国際公開日】2022-09-22
【審査請求日】2023-06-05
(73)【特許権者】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】岡嶋 優作
(72)【発明者】
【氏名】山口 天和
【審査官】佐藤 靖史
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-178136(JP,A)
【文献】特開2010-073822(JP,A)
【文献】特開2017-079289(JP,A)
【文献】特開2000-208425(JP,A)
【文献】特開2014-060403(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/31
H01L 21/683
C23C 16/458
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の基板を上下方向に間隔をあけて支持する複数の第1支柱を有する基板支持部と、
前記基板支持部に保持された前記複数の基板の間に配置され、前記第1支柱を配置する切欠き部を有する複数の仕切板と、前記複数の仕切板を支持する複数の第2支柱と、を有する仕切板支持部と、
を備える基板保持具。
【請求項2】
前記第1支柱は、前記基板を支持するための支持部を有し、
前記切欠き部は、前記支持部を上下方向に移動可能なように構成されている請求項1に記載の基板保持具。
【請求項3】
前記仕切板と前記第1支柱との間には、間隙が形成される請求項1又は2に記載の基板保持具。
【請求項4】
前記間隙は、2mm~4mmである請求項3に記載の基板保持具。
【請求項5】
前記第1支柱は、前記基板を支持するための支持部を有し、
前記切欠き部は、前記支持部を収容可能なように構成された第1凹部を有する請求項1に記載の基板保持具。
【請求項6】
前記第1支柱を上下に移動することで、前記基板を任意の高さに移動させることが可能なように構成された請求項1~5のいずれか一項に記載の基板保持具。
【請求項7】
前記複数の第1支柱の下端には当該複数の第1支柱を支える基部が設けられ、上下移動部により、当該基部が上下に移動されるよう構成される請求項1~6のいずれか一項に記載の基板保持具。
【請求項8】
断熱部を覆うカバーを有し、
前記カバーは、前記第1支柱を配置するための第2凹部を有する請求項1~7のいずれか一項に記載の基板保持具。
【請求項9】
熱部を覆うカバーを有し、
前記カバーは、前記第1支柱を配置するための第2凹部を有し、
前記複数の第1支柱の下端には当該複数の第1支柱を支える基部が設けられ、当該基部を上下に移動させる上下移動部を備え、
前記第2凹部の下部には、前記基部を配置する開口部が設けられている請求項1~6のいずれか一項に記載の基板保持具。
【請求項10】
前記開口部は、前記基部の可動範囲より1mm~10mm広く形成される請求項9に記載の基板保持具。
【請求項11】
前記第1支柱のうち、前記カバーに対向する箇所は、少なくとも前記カバーに対向する部分が円柱形状で形成され、前記第2凹部は前記円柱形状を配置する形状である請求項8に記載の基板保持具。
【請求項12】
複数の基板を上下方向に間隔をあけて支持する複数の第1支柱を有する基板支持部と、前記基板支持部に保持された前記複数の基板の間に配置され、前記第1支柱を配置する切欠き部を有する複数の仕切板と、前記複数の仕切板を支持する複数の第2支柱と、を有する仕切板支持部と、を備える基板保持具と、
前記基板保持を収容する反応管と、
前記反応管内にガスを供給するガス供給部と、
を備える基板処理装置。
【請求項13】
複数の基板を上下方向に間隔をあけて支持する複数の第1支柱を有する基板支持部と、前記基板支持部に保持された前記複数の基板の間に配置され、前記第1支柱を配置する切欠き部を有する複数の仕切板と、前記複数の仕切板を支持する複数の第2支柱と、を有する仕切板支持部と、を備える基板保持具と、前記基板保持具を収容する反応管と、前記反応管内にガスを供給するガス供給部と、を備える基板処理装置の前記反応管内に前記基板保持具を搬入する工程と、
前記反応管内に前記ガスを供給する工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項14】
複数の基板を上下方向に間隔をあけて支持する複数の第1支柱を有する基板支持部と、前記基板支持部に保持された前記複数の基板の間に配置され、前記第1支柱を配置する切欠き部を有する複数の仕切板と、前記複数の仕切板を支持する複数の第2支柱と、を有する仕切板支持部と、を備える基板保持具と、前記基板保持具を収容する反応管と、前記反応管内にガスを供給するガス供給部と、を備える基板処理装置の前記反応管内に前記基板保持具を搬入する手順と、
前記反応管内に前記ガスを供給する手順と、
をコンピュータにより前記基板処理装置に実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体デバイスの製造工程において基板を保持する基板保持具、基板処理装置、半導体装置の製造方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程における基板(ウエハ)の処理では、基板保持具によって複数の基板を垂直方向に配列して保持し、基板保持具を処理室内に搬入する。その後、処理室内に処理ガスを導入し、基板に対して薄膜形成処理が行われる。例えば特許文献1には、処理室にガスを噴出するガス噴出口が、基板処理面に対して垂直方向にスロット状に設けられた基板処理装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-297818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、複数の基板を同時に処理する場合において、それぞれの基板上に形成する膜の厚さの分布を小さくして均一性を向上させることが可能な技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様によれば
複数の基板を上下方向に間隔をあけて支持する複数の第1支柱を有する基板支持部と、
前記基板支持部に保持された前記複数の基板の間に配置され、前記第1支柱を配置する切欠き部を有する複数の仕切板と、前記複数の仕切板を支持する複数の第2支柱と、を有する仕切板支持部と、を備える技術が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、複数の基板を同時に処理する場合において、基板上のガス濃度の分布を制御することが可能になり、それぞれの基板上に形成する膜の厚さの均一性を向上させることができる。
【0007】
また、本開示によれば、複数の基板を同時に処理する場合において、基板上のガス濃度の分布を制御して基板を処理することにより供給する原料ガスや反応ガス等の材料ガスの効率化を図ることができ、材料ガスの無駄を低減してコストを低減することが可能になる。
【0008】
また、本開示によれば、基板保持具の仕切板支持部の複数の仕切板に、基板支持部の第1支柱を配置するための切欠き部を設けて基板支持部と仕切板との干渉を防ぐ構成としたことにより、仕切板の上下間のガス流路断面を小さく抑えることができ、基板上のガス濃度の分布を精度よく制御することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の第1の実施形態に係る基板処理装置において、基板を搭載したボートを移載室に搬入した状態を示す処理室と収納室の略断面図である。
図2】本開示の第1の実施形態に係る基板処理装置において、基板を搭載したボートを上昇させて処理室に搬入した状態を示す処理室と収納室の略断面図である。
図3A】本開示の第1の実施形態に係る基板処理装置において、ボートの支柱(支持ロッド)に対して仕切板を横方向から挿入する構成を示す斜視図である。
図3B図3Aに係る基板処理装置の仕切板の平面図である。
図4A】本開示の第1の実施形態に係る基板処理装置において、ボートの支柱(支持ロッド)に対して仕切板を上方から挿入する構成を示す斜視図である。
図4B図4Aに係る仕切板の平面図である。
図4C】ボートに図4Aに係る仕切板を備えた仕切板支持部を組み込んだ状態を示す斜視図である。
図4D】ボートに図4Aに係る仕切板を備えた仕切板支持部を組み込んだ状態における基板保持部材と仕切板との関係を示す平面図である。
図5A】本開示の第1の実施形態に係る基板処理装置において、仕切板に対してボートの支柱(支持ロッド)を横方向から挿入して組立てる構成を示す斜視図である。
図5B図5Aに係る仕切板の平面図である。
図6】本開示の第1の実施形態に係る基板処理装置の内側反応管の斜視図である。
図7】ガス供給用ノズルの正面図である。
図8】仕切板支持部の下部を覆うカバーを仕切板支持部に組み込んだ構成を示す仕切板支持部とボートの断面図である。
図9】仕切板支持部の下部を覆うカバーの斜視図である。
図10】カバーを仕切板支持部に組み込んだ構成において使用するボートの支柱(支持ロッド)の斜視図である。
図11】カバーを仕切板支持部に組み込んだ構成においてボートの支柱(支持ロッド)とカバーとの関係を示す平面の断面図である。
図12】本開示の第1の実施形態に係る基板処理装置の処理室における基板と仕切板との間隔を示す基板と仕切板との断面図である。
図13】本開示の第1の実施形態に係る基板処理装置の処理室における基板と仕切板との間隔を切り替えたときの基板表面における材料ガス濃度の分布を示すグラフである。
図14】本開示の第1の実施形態に係る基板処理装置の処理室における基板の表面における材料ガスの濃度分布を可視化して表示した図で、基板と仕切板との間隔が図3(c)に示したように広く設定した場合の基板の表面における材料ガスの濃度分布をしめす、基板の斜視図である。
図15】本開示の第1の実施形態に係る基板処理装置のコントローラの構成例を示すブロック図である。
図16】本開示の第1の実施形態に係る半導体装置製造工程の概略を示すフロー図である。
図17】本開示の第1の実施形態に係る基板処理装置のCPUが読み込むプロセスレシピ一例を示すプロセスレシピの一覧を示す表である。
図18】本開示の第2の実施形態に係る基板処理装置の概略の構成を示す略断面図である。
図19】本開示の第3の実施形態に係る基板処理装置の概略の構成を示す略断面図である。
図20】本開示の第4の実施形態に係る基板処理装置の概略の構成を示す略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示は、複数の基板を上下方向に間隔をあけて支持する複数の第1支柱を有する基板支持部と、この基板支持部に保持された複数の基板の間に配置された複数の仕切板を支持する複数の第2支柱とを有する仕切板支持部とを有し、複数の仕切板には、第1支柱を配置するための切欠き部が設けられる基板保持具に関するもので、第1の支柱と仕切板の切欠き部との隙間を、支柱を上下動させたときに切欠き部が接触せず、ガスが仕切板の上側又は下側に流れ込めない程度の隙間を形成することにより、基板支持部に上下方向に等間隔で保持された複数の基板への成膜を高精度に制御して行えるようにしたものである。
【0011】
また本開示は、複数の基板を載置するボートと、ボートとは別体に構成され、ボートに載置された基板それぞれの上部に配置される複数の仕切板と、複数の仕切板を支持する支持部を有する仕切板支持具と、ボートを昇降する第1昇降機構とを有し、基板と仕切板との上下方向の位置関係を変更させる第2昇降機構を備えた基板処理装置に関するものである。
【0012】
以下、本開示の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。本実施の形態を説明するための全図において同一機能を有するものは同一の符号を付すようにし、その繰り返しの説明は原則として省略する。
【0013】
ただし、本開示は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。本開示の思想ないし趣旨から逸脱しない範囲で、その具体的構成を変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。なお、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものであり、図面に示される、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。また、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は必ずしも一致していない。
【0014】
<本開示の第1の実施形態>
図1及び図2を用いて、本開示の第1の実施形態に係る基板処理装置の構成について説明する。
【0015】
[基板処理装置100]
基板処理装置100は、鉛直方向に延びた円筒形状の外側反応管110と内側反応管120、外側反応管110の外周に設置された加熱部(炉体)としてのヒータ101と、ガス供給部を構成するガス供給用のノズル121を備える。ヒータ101は上下方向に複数のブロックに分割されて個々のブロックごとに温度を設定することが可能なゾーンヒータにより構成されている。
【0016】
外側反応管110と内側反応管120とは、例えば石英やSiC等の材料で形成される。外側反応管110は、排気部を構成する排気管130から図示していない排気手段に接続されており、外側反応管110及び内側反応管120の内部は、図示していない排気手段により排気される。外側反応管110の内部は外気に対して図示していない手段により気密にシールされる。
【0017】
ここで、外側反応管110と内側反応管120とは、同軸上に配置されている。ガス供給用のノズル121は、外側反応管110と内側反応管120との間に配置されている。
【0018】
ガス供給用のノズル(以下、単にノズルと記す場合もある)121は、図7に示すように、外側反応管110と内側反応管120との間から内側反応管120の内部にガスを供給する多数の穴1210形成されている。また、図6に示すように、内側反応管120には、ガス供給用のノズル121に設けられた多数の穴1210に対向する位置にガス導入用穴1201が形成されている。
【0019】
ガス供給用のノズル121に形成された多数の穴1210から供給される原料ガス、反応ガス及び不活性ガス(キャリアガス)は、内側反応管120に形成されたガス導入用穴1201を通して、内側反応管120の内部に導入される。
【0020】
原料ガス、反応ガス、不活性ガス(キャリアガス)は、それぞれ図示していない原料ガス供給源、反応ガス供給源及び不活性ガス供給減から、図示していないマスフローコントローラ(MFC:Mass Flow Controller)で流量が調整され、ノズル121に形成された多数の穴1210からガス導入用穴1201を通って内側反応管120の内部に供給される。
【0021】
内側反応管120の内部に供給された原料ガス、反応ガス、不活性ガス(キャリアガス)のうち内側反応管120の内部での反応に寄与しなかったガスは、内側反応管120のガス導入用穴1201に対向する位置に形成された排気用の穴1203および1204(以下、単に穴1203,1204と記す場合もある)を通って内側反応管120と外側反応管110との間に流れ出て、図示していない排気手段により外側反応管110に形成された排気管130から外側反応管110の外部に排気される。
【0022】
[チャンバ180]
チャンバ180は外側反応管110及び内側反応管120の下部にマニホールド111を介して設置され、収納室500を備えている。収納室500では、基板搬入口310を介して図示していない移載機により基板10を基板支持具(ボート)300に載置(搭載)したり、移載機により基板10を基板支持具(以下、単にボートと記す場合もある)300から取り出すことが行われる。
【0023】
ここで、チャンバ180は、SUS(ステンレス)又はAl(アルミニウム)等の金属材料で構成される。
【0024】
チャンバ180の内部には、基板支持具300、仕切板支持部200、及び基板支持具300と仕切板支持部200と(これらを合わせて基板保持具と呼ぶ)を上下方向と回転方向に駆動する第1の駆動部を構成する上下方向駆動機構部400を備えている。
【0025】
[基板支持部]
基板支持部は、少なくとも基板支持具(ボート)300で構成され、収納室500の内部で基板搬入口310を介して図示していない移載機により基板10の移し替えを行ったり、移し替えた基板10を内側反応管120の内部に搬送して基板10の表面に薄膜を形成する処理を行ったりする。なお、基板支持部に、仕切板支持部200を含めて考えても良い。
【0026】
仕切板支持部200は、図1及び図2に示すように、基部201と天板204との間に支持された第2支柱としての支柱202に複数枚の円板状の仕切板203が所定のピッチで固定されている。基板支持具300は、図1及び図2に示すように、基部301に複数の第1支柱としての支持ロッド302が支持されており、この複数の支持ロッド302に等ピッチで取り付けられた支持部としての基板保持部材303(図4C参照)により複数の基板10が所定の間隔で支持される構成を有している。
【0027】
支持ロッド302に取り付けた基板保持部材303により支持された複数の基板10の間は、仕切板支持部200に支持された支柱202に所定の間隔で固定(支持)された円板状の仕切板203(図3Bの203-1、又は図4Bの203-2、又は図5Bの203-3に相当)によって仕切られている。ここで、仕切板203は、基板10の上部と下部のいずれか又は両方に配置される。
【0028】
基板支持具300に載置されている複数の基板10の所定の間隔は、仕切板支持部200に固定された仕切板203の上下の間隔と同じである。また、仕切板203の直径は、基板10の直径よりも大きく形成されている。
【0029】
ボート300は、複数の支持ロッド302で、複数枚、例えば5枚の基板10を垂直方向に多段に支持する。この垂直方向に多段に支持する基板10の上下の間隔は、例えば約60mm程度に設定する。ボート300を構成する基部301及び複数の支持ロッド302は、例えば石英やSiC等の材料で形成される。なお、ここでは、ボート300に5枚の基板10を支持した例を示すが、これに限るもので無い。例えば、基板10を5~50枚程度、支持可能にボート300を構成しても良い。なお、仕切板支持部200の仕切板203は、セパレータとも呼ぶ。
【0030】
仕切板支持部200と基板支持具300とは、上下方向駆動機構部400により、内側反応管120と収納室500との間の上下方向、及び基板支持具300で支持された基板10の中心周りの回転方向に駆動される。
【0031】
第1の駆動部を構成する上下方向駆動機構部400は、図1及び図2に示すように、駆動源として、上下駆動用モータ410と、回転駆動用モータ430と、基板支持具300を上下方向に駆動する基板支持具昇降機構としてのリニアアクチュエータを備えたボート上下機構420を備えている。
【0032】
仕切板支持部昇降機構としての上下駆動用モータ410は、ボールねじ411を回転駆動することにより、ボールねじ412に螺合しているナット412をボールねじ412に沿って上下に移動させる。これにより、ナット412を固定しているベースプレート402と共に仕切板支持部200と基板支持具300とが内側反応管120と収納室500との間で上下方向に駆動される。ベースプレート402はガイド軸414と係合しているボールガイド415にも固定されており、ガイド軸414に沿って上下方向にスムーズに移動できる構成となっている。ボールねじ411とガイド軸414との上端部と下端部とは、それぞれ、固定プレート413と416に固定されている。なお、仕切板支持部昇降機構には、上下駆動用モータ410の動力が伝わる部材を含めても良い。
【0033】
回転駆動用モータ430とリニアアクチュエータを備えたボート上下機構420とは第2の駆動部を構成し、ベースプレート402に側板403で支持されている蓋体としてのベースフランジ401に固定されている。側板403を用いることにより、上下機構や回転機構等から、出るパーティクルの拡散を抑制することができる。覆う形状は、筒状や、柱状に構成される。カバー形状の一部または、底面に、移載室と連通する孔が設けられる。連通する孔により、カバー形状の内部は、移載室内の圧力と同様の圧力に構成される。
【0034】
一方、側板403に替えて、支柱を用いてもよい。この場合、上下機構や回転機構のメンテナンスが容易になる。
【0035】
回転駆動用モータ430は先端部に取り付けた歯部431と係合する回転伝達ベルト432を駆動し、回転伝達ベルト432と係合している支持具440を回転駆動する。支持具440は、仕切板支持部200を基部201で支持しており、回転伝達ベルト432を介して回転駆動用モータ430で駆動されることにより、仕切板支持部200とボート300とを回転させる。
【0036】
支持具440は、ベースフランジ401の内筒部分4011との間を真空シール444で仕切られ、その下部を軸受け445でベースフランジ401の内筒部分4011に対して回転可能にガイドされている。
【0037】
リニアアクチュエータを備えたボート上下機構420は軸421を上下方向に駆動する。軸421の先端部分にはプレート422が取り付けられている。プレート422は、軸受け423を介してボート300の基部301に固定された支持部441と接続されている。支持部441が軸受け423を介してプレート422と接続されることにより、回転駆動用モータ430で仕切板支持部200を回転駆動したときに、ボート300も仕切板支持部200と一緒に回転することができる。
【0038】
一方、支持部441は、リニアガイド軸受け442を介して支持具440に支持されている。このような構成とすることにより、リニアアクチュエータを備えたボート上下機構420で軸421を上下方向に駆動した場合、仕切板支持部200に固定された支持具440に対してボート300に固定された支持部441を相対的に上下方向に駆動することができる。
【0039】
このように、支持具440と支持部441とを同心状に構成することで、回転駆動用モータ430を用いた回転機構の構造をシンプルにすることができる。また、ボート300と仕切板支持部200との回転の同期化制御が容易になる。
【0040】
ただし、本第1の実施形態はこれに限らず、支持具440と支持部441とを同心上ではなく、別々に配置してもよい。
【0041】
仕切板支持部200に固定された支持具440とボート300に固定された支持部441との間は、真空ベローズ443で接続されている。
【0042】
蓋体としてのベースフランジ401の上面には真空シール用のOリング446が設置されており、図2に示すように上下駆動用モータ410で駆動されてベースフランジ401の上面がチャンバ180に押し当てられる位置まで上昇させることにより、外側反応管110の内部を気密に保つことができる。
【0043】
なお、真空シール用のOリング446は必ずしも必要ではなく、真空シール用のOリング446を用いずにベースフランジ401の上面をチャンバ180に押し当てることにより外側反応管110の内部を気密に保つようにしてもよい。更に、真空ベローズ443も、必ずしも設けなくてもよい。
【0044】
なお、図1及び図2には、外側反応管110と内側反応管120とを備えた二重構造の反応管の例を示したが、内側反応管をなくして外側反応管110だけを備える構成としてもよい。以下には、図1及び図2の記載に基づいて、外側反応管110と内側反応管120とを備えた構成の場合について説明する。
【0045】
また、図1及び図2に示した例において、ガス供給用のノズル121を、外側反応管110と内側反応管120との間で図1及び図2の縦方向に延びるような配置構成で説明したが、内側反応管120の側面に沿って平行方向に延びるように配置してもよい。また、複数のノズルを横方向(基板10に対して水平方向)から挿入して、複数の基板10それぞれに対してガスを供給するようにしても構わない。
【0046】
[仕切板支持部]
本第1の実施形態においては、仕切板支持部200の仕切板203と基板10の間隔が可変な構造とするために、仕切板支持部200と基板支持具300とがそれぞれ独立した構成とし、仕切板支持部200と基板支持具300との一方もしくは両方を上下方向に駆動可能な構成(可変構成)とすることにより基板10と仕切板203との間隔を変化させて、基板10の表面に形成される薄膜の膜厚分布を調整可能な反応炉構成とした。
【0047】
相対的に上下方向に移動する仕切板支持部200と基板支持具300とにおいて、仕切板支持部200の仕切板203と基板支持具300の支持ロッド302及び基板保持部材303とが干渉することを防止しなければならない。
【0048】
図3A図3Bとは、仕切板支持部200と基板支持具300とを別々に組み立てたうえで、仕切板支持部200を基板支持具300に対して横方から組み込む構成としたときの仕切板203-1の形状を示している。図3Aに示すように、基板支持具300に対して仕切板支持部200を横方から組み込む。この時、仕切板203-1が基板支持具300の支持ロッド302及び基板保持部材303と干渉しないようにするために、図3Bに示すように、切欠部2030と2032とが形成されている。
【0049】
一方、図4A乃至図4Dには、仕切板支持部200を基板支持具300に対して上方から組み込む構成とした場合について示している。図4Aは、基板支持具300を仕切板支持部200の上方から下降させて組み込む状態を示している。このような組込を行う場合、基板支持具300の支持ロッド302及び基板保持部材303と干渉しないようにするために、図4Bに示すように、仕切板203-2には、支持ロッド302と基板保持部材303とを真上から投影したような形状の切欠き部2033が、複数の個所に形成されている。
【0050】
すなわち、図4A~Dに示す仕切板203-2に形成された切欠き部2033は、支持ロッド302との干渉を回避するよう構成された第1の凹部としての切欠きに加えて、基板保持部材303との干渉を回避するように(すなわち、基板保持部材303を収容可能なように)構成された第2の凹部としての切欠きをさらに含んでいる。
【0051】
図4Cは、仕切板支持部200を基板支持具300に組み込んだ状態の斜視図を示す。仕切板支持部200を構成する天板204と仕切板203-2には、それぞれ切欠き部2033が形成されている。
【0052】
図4Dは、図4CにおけるA-A断面を示している。仕切板203-2に形成されている切欠き部2033の各部の寸法は、支持ロッド302と基板保持部材303とを真上から投影した場合の寸法に対して、2乃至4mm大きな寸法とする。2mmより狭くすると、仕切板203-2が支持ロッド302又は基板保持部材303と接触する可能性がある。一方、4mmよりも大きくすると、仕切板203-2と支持ロッド302又は基板保持部材303との間の間隙から、上方又は下方へのガスの流出量・流入量が多くなってガスの流れが乱れてしまい、基板保持部材303で保持されている基板10の表面におけるガスの流れの制御が乱れてしまう恐れがある。当該間隙の大きさを2乃至4mmとすることにより、仕切板203-2と支持ロッド302又は基板保持部材303とを接触させることなく、基板10の表面におけるガスの流れの制御の乱れを抑制することができる。
【0053】
切欠き部2033の各部の寸法と支持ロッド302の寸法の関係を上記したような関係にすることにより、仕切板203-2と支持ロッド302との間のガス流路断面を小さくすることができる。これにより、仕切板203-2の上下の空間でのガスの流入・流出を小さく抑えることができ、基板保持部材303で保持されている基板10の表面におけるガスの流れを精度良く制御することができる。
【0054】
図5A図5Bには、仕切板支持部200に対して、基板支持具300の支持ロッド302を、外側から組み付ける構成としたときの仕切板支持部200と基板支持具300との関係を示す。図5Aに示すように、基板保持部材303を取付けた支持ロッド302を、仕切板支持部200に対して外側から組み付けて、図1又は図2に示したようなボート300の基部301に固定する。
【0055】
このような構成とすることにより、支持ロッド302を仕切板支持部200に対して外側から組み付けるときに支持ロッド302と仕切板支持部200とが干渉するのを防止できる。その結果、図5Bに示すように、仕切板203-3には、基板保持部材303や支持ロッド302との干渉を回避するための切欠き部を設ける必要はない。ただし支持ロッド302が仕切板203-3と干渉する場合には、支持ロッド302との干渉を避けるための切り各部を仕切板203-3に形成してもよい。
【0056】
図6に示すように、内側反応管120には、上部に縦方向に直線状に並んだ多数のガス導入用穴1201と、この多数のガス導入用穴1201と対抗する位置に形成された多数のガス排出用穴1202と、多数のガス排出用穴1202の下方で中間部分に横方向に並んだ複数のガス排出用穴1203および下部に横方向に並んだ複数のガス排出用穴1204が形成されている。
【0057】
このうち、上部に縦方向に直線状に並んだ多数のガス導入用穴1201は、図7に示したガス供給用のノズル121に設けられ多数の穴1210に対向する位置に形成されたガス供給用穴であり、ガス供給用のノズル121の多数の穴1210から供給されたガスを、内側反応管120の内部に導入するためのものである。
【0058】
上部に縦方向に直線状に並んだ多数のガス導入用穴1201に対向する位置に形成された多数のガス排出用穴1202は、ノズル121の多数の穴1210から内側反応管120の内部に導入されたガスのうち、基板10の表面での反応に寄与しなかったガスを内側反応管120の外部に排出するための穴である。
【0059】
中間部分に横方向に並んだ中段の複数のガス排出用穴1203は、基板10の表面での反応に寄与しなかったガスのうち内側反応管120の内部で多数の穴1202よりも下部に流れ込んだガスを外部に排出するための穴である。
【0060】
内側反応管120の中段に複数のガス排出用穴1203を設けたことにより、うち側反応管120の内部に供給された成膜ガスが内側反応管120と外側反応管110との間の空間に排出されるため、内側反応管120の下部に配置されている図示していない断熱部(金属炉口部)への流れ込みを抑えることができる。内側反応管120の中段に形成する複数のガス排出用穴1203は、内側反応管120の内部で空間温度が300℃以上となる高さに配置されることが好ましい。また、複数のガス排出用穴1203は、外側反応管110に設けた排気管130に対して、反対側に多く配分されるほうが好ましい。
【0061】
一方、下部に横方向に並んだ複数のガス排出用穴1204は、上部に縦方向に直線状に並んだ多数の穴1210から内側反応管120の内部に導入されたガスが仕切板支持部200の基部201やボート300の基部301を駆動する駆動部の側に流入するのを防止するために図示していないパージガス供給部から内側反応管120の内部に供給されたパージガス(例えば、Nガス)を内側反応管120から排気するための穴である。
【0062】
図4A乃至4Dに示したように、仕切板203-2には切欠き部2033が形成されているが、仕切板203-2と支持ロッド302又は基板保持部材303との間の間隙から、内側反応管120の下側の図示していない金属炉口部やカバー220(図9参照)の内部をパージするパージガスが内側反応炉120の内部のウエハ成膜部へ流れ込む原因となる。これに対して、図6に示すように、内側反応管120の側面の下部に複数のガス排出用穴1203を設けることにより、パージガスが内側反応炉120の内部のウエハ成膜部へ流れ込むのを抑えることができる。内側反応管120の側面の下部に形成する複数のガス排出用穴1203は、カバー220(図9参照)の下側の開口部としての切欠部221(図9参照)と同等の高さに配置することが好ましい。さらに、複数のガス排出用穴1203は、外側反応管110に設けた排気管130に対して、反対側に多く配分されるほうが好ましい。
【0063】
図8には、仕切板支持部200に、内部に図示していない断熱板を備えた炉口部を収納したカバー220を備え、基板支持具300の支持ロッド302をカバー220の下側から駆動する構成を示す。支持ロッド302は、上部ロッド3021と下部ロッド3022とで構成されている。
【0064】
図9に、カバー220の外観を示す。カバー220の側面には、基板支持具300の支持ロッド302との干渉を回避するための凹部221が3か所の形成されており、それぞれの凹部221の下端部分には、支持ロッド302と連結して上下方向に移動する基部301との干渉を防止するための切欠部222が形成されている。切欠部222の長さ(図9で上下方向の寸法)は、基部301が上下方向に移動するときの上昇端よりも1乃至10mm程度長い寸法に形成する。10mmよりも大きく形成すると、内側反応管120の内部に導入する処理ガスがカバー220の内部に入り込んでしまい、カバー220で覆っている放熱板にダメージを与える可能性がある。一方、1mmよりも小さいと、基部301と干渉してしまう可能性がある。
【0065】
図10には、支持ロッド302の斜視図を示す。支持ロッド302は上側の部分である上部ロッド3021と下側の部分である下部ロッド3022とで構成されている。下側のカバー220と対向する下部ロッド3022は、カバー220と対向する部分が円柱状で、カバー220と対向しない部分の外周面が平面状に構成された形状(すなわち、断面が半円に近い形状)を有し、上側の基板保持部材303を等間隔で取り付けた部分である上部ロッド3021は、断面が矩形状に形成されている。
【0066】
図11は、カバー220の側面の凹部221に支持ロッド302の下部ロッド3022を組み込んだ状態の断面を示す。凹部221は、支持ロッド302の下側の部分である下部ロッド3022に対して2~4mm程度の隙間が形成されるような寸法で形成されている。2mmより狭くすると、下部ロッド3022が凹部221と接触する可能性がある。
【0067】
上記したような構成において、上下駆動用モータ410で駆動して図2に示したようにベースフランジ401の上面がチャンバ180に押し当てられるまで上昇させて基板支持部を内側反応管120の内部に挿入した状態において、ガス供給用のノズル121に形成された多数の穴1210から、内側反応管120に形成されたガス導入用穴1201を通して内側反応管120の内部に原料ガス、又は反応ガス、又は不活性ガス(キャリアガス)を導入する。
【0068】
ガス供給用のノズル121に形成された多数の穴1210のピッチは、ボート300に載置された基板10の上下の間隔及び仕切板支持部200に固定された仕切板203の上下の間隔と同じである。
【0069】
ここで、ベースフランジ401の上面がチャンバ180に押し当てられた状態において、仕切板支持部200の支柱202に固定された仕切板203の高さ方向の位置は固定であるのに対して、リニアアクチュエータを備えたボート上下機構420を駆動してボート300の基部301に固定された支持部441を上下動させることにより、ボート300に支持されている基板10の仕切板203に対する高さ方向の位置を変えることができる。ガス供給用のノズル121(以下、単にノズル121と記す場合もある)に形成された穴1210の位置も固定されているので、穴1210に対してもボート300に支持されている基板10の高さ方向の位置(相対位置)を変えることができる。
【0070】
すなわち、図12(a)に示すような搬送の基準位置関係に対して、ボート300に支持されている基板10の位置をリニアアクチュエータを備えたボート上下機構420を駆動して上下方向に調整することで、ノズル121に形成された穴1210及び仕切板203との位置関係を、図12(b)に示すように基板10の位置を搬送ポジション(ホーム位置)10-1よりも高くして上側の仕切板2032との間の隙間G1を狭くしたり、図12(c)に示すように基板10の位置を搬送ポジション(ホーム位置)10-1よりも低くして、上側の仕切板2032との間の隙間G2を広くすることができる。
【0071】
ノズル121の穴1210から噴射されたガスは、内側反応管120に形成されたガス導入用穴1201を通って内側反応管120の内部でボート300に支持されている基板10に供給されるが、図12の(a)乃至(c)においては、表記を簡単化するために、内側反応管120に形成されたガス導入用穴1201(以下、単に穴1201と記す場合もある)の表示を省略している。
【0072】
このように、ノズル121に形成された穴1210に対する基板10の位置を変えることにより、穴1210から噴出されるガス流1211と基板10との位置関係を変えることができる。
【0073】
図12(b)に示したように基板10の位置を高くして上側の仕切板2032との間の隙間G1を狭くした状態、及び図12(c)に示すように基板10の位置を低くして、上側の仕切板2032との間の隙間G2を広くした状態において、ノズル121に形成された穴1210から処理ガスを供給した場合に、基板10の表面に形成される膜の面内分布をシミュレーションした結果を図4に示す。
【0074】
図13において、Narrowで示す点列510は、図12(b)のような状態、すなわち、基板10の位置を高くして上側の仕切板2032との間の隙間G1を狭くして、基板10を穴1210から噴出されるガス流1211の位置よりも高くした状態で成膜した場合を示す。この場合、基板10の周辺部に比較的厚い膜が形成され、基板10の中央部分に形成される膜の厚さが周辺部と比べて薄い凹状の膜厚分布となる。
【0075】
これに対して、Wide で示す点列520は、図12(c)のような状態、すなわち、基板10の位置を低くして上側の仕切板2032との間の隙間G2を広くして、基板10を穴1210から噴出されるガス流1211の位置よりも低くした状態で成膜した場合を示す。この場合、基板10の中央部分が周辺部と比べて比較的厚い膜が形成される凸状の膜厚分布となる。
【0076】
このように、基板10の位置を変えることにより、基板10の表面に形成される薄膜の基板10の面内分布が変化することがわかる。
【0077】
図14には、基板10と仕切板2032及びノズル121に形成された穴1210との関係を図3(c)のような位置関係に設定した場合に、矢印611の方向から処理ガスを供給したときの基板10の表面における処理ガスの分圧の分布をシミュレーションにより求めた結果を示す。図13の膜厚分布は、図14のa-a‘断面における膜厚の分布に相当する。
【0078】
図14に示すように、基板10と仕切板2032及びノズル121に形成された穴1210との関係を図12(c)のような位置関係に設定した場合に、ノズル121に形成された穴1210に近い部分から基板10の中心部分にかけた濃い色で表示された部分において、処理ガスの分圧が比較的高くなっている。一方、ノズル121に形成された穴1210から離れた基板10の周辺部分における処理ガスの分圧は比較的低くなっている。
【0079】
この状態で、回転駆動用モータ430を駆動して支持具440を回転駆動することにより仕切板支持部200とボート300とを回転させてボート300に支持されている基板10を回転させることにより、基板10の周方向における膜厚のばらつきを(膜厚分布)を低減することができる。
【0080】
[コントローラ]
図1に示す様に、基板処理装置100は、各部の動作を制御するコントローラ260と接続されている。
【0081】
コントローラ260の概略を図15に示す。制御部(制御手段)であるコントローラ260は、CPU(Central Processing Unit)260a、RAM(Random Access Memory)260b、記憶装置260c、入出力ポート(I/Oポート)260dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM260b、記憶装置260c、I/Oポート260dは、内部バス260eを介して、CPU260aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ260には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置261や、外部記憶装置262が接続可能に構成されている。
【0082】
記憶装置260cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等で構成されている。記憶装置260c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラムや、後述する基板処理の手順や条件などが記載されたプロセスレシピおよびデータベース等が読み出し可能に格納されている。
【0083】
なお、プロセスレシピは、後述する基板処理工程における各手順をコントローラ260に実行させ、所定の結果を得ることが出来るように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。
【0084】
以下、このプログラムレシピや制御プログラム等を総称して、単にプログラムともいう。なお、本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、プログラムレシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。また、RAM260bは、CPU260aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0085】
I/Oポート260dは、基板搬入口310,上下駆動用モータ410、リニアアクチュエータを備えたボート上下機構420、回転駆動用モータ430、ヒータ101、マスフローコントローラ(不図示)、温度調整器(不図示)、真空ポンプ(不図示)、等に接続されている。
【0086】
なお、本開示における「接続」とは、各部が物理的なケーブルで繋がっているという意味も含むが、各部の信号(電子データ)が直接または間接的に送信/受信可能になっているという意味も含む。例えば、各部の間に、信号を中継する機材や、信号を変換または演算する機材が設けられていても良い。
【0087】
CPU260aは、記憶装置260cからの制御プログラムを読み出して実行すると共に、コントローラ260からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置260cからプロセスレシピを読み出すことが可能なように構成されている。そして、CPU260aは、読み出されたプロセスレシピの内容に沿うように、基板搬入口310の開閉動作、上下駆動用モータ410の駆動、リニアアクチュエータを備えたボート上下機構420の駆動、回転駆動用モータ430の回転動作、ヒータ101への電力供給動作などを制御することが可能なように構成されている。
【0088】
なお、コントローラ260は、専用のコンピュータとして構成されている場合に限らず、汎用のコンピュータとして構成されていても良い。例えば、上述のプログラムを格納した外部記憶装置(例えば、磁気テープ、フレキシブルディスクやハードディスク等の磁気ディスク、CDやDVD等の光ディスク、MOなどの光磁気ディスク、USBメモリ、SSDやメモリカード等の半導体メモリ)262を用意し、係る外部記憶装置262を用いて汎用のコンピュータにプログラムをインストールすること等により、本実施形態に係るコントローラ260を構成することができる。
【0089】
なお、コンピュータにプログラムを供給するための手段は、外部記憶装置262を介して供給する場合に限らない。例えば、ネットワーク263(インターネットや専用回線)等の通信手段を用い、外部記憶装置262を介さずにプログラムを供給するようにしても良い。なお、記憶装置260cや外部記憶装置262は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成される。以下、これらを総称して、単に記録媒体ともいう。なお、本明細書において、記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置260c単体のみを含む場合、外部記憶装置262単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合が有る。
【0090】
[基板処理工程(成膜工程)]
次に、図1及び図2で説明した基板処理装置を用いて基板上に膜を形成する基板処理工程(成膜工程)について図16を用いて説明する。
【0091】
本開示は、成膜プロセス及びエッチングプロセスの何れにも適用することができるが、半導体装置(デバイス)の製造工程の一工程として、基板10上に、薄膜を形成する工程の一例として第1層を形成する工程について説明する。第1層などの膜を形成する工程は、上述した基板処理装置100の内側反応管120の内部で実行される。上述した通り、製造工程の実行は、図15のコントローラ260のCPU260aのプログラム実行によってなされる。
【0092】
本実施形態による基板処理工程(半導体装置の製造工程)では、まず、上下駆動用モータ410で駆動して図2に示したようにベースフランジ401の上面がチャンバ180に押し当てられるまで上昇させて基板支持部を内側反応管120の内部に挿入する。
【0093】
次に、この状態において、リニアアクチュエータを備えたボート上下機構420で軸421を上下方向に駆動することにより、ボート300に載置された基板10の仕切板203に対する高さ(間隔)を、図12(a)に示した初期状態から、図12(b)に示すように基板10を上昇させて基板10と仕切板203との間隔G1が小さい状態、または、図12(c)に示すように基板10を下降させて基板10と仕切板203との間隔G2を大きくした状態に設定することにより、仕切板203に対する基板10の高さ(仕切板203と基板10との間隔)が所望の値となるように調整する。
【0094】
この状態で、
(a)内側反応管120の内部に収容された基板10に対して、ガス供給用のノズル121から原料ガスを供給する工程と、
(b)内側反応管120の内部の残留ガスを除去する工程と、
(c)内側反応管120の内部に収容された基板10に対して、ガス供給用のノズル121から反応ガスを供給する工程と、
(d)内側反応管120の内部の残留ガスを除去する工程と、
を有し、上記(a)~(d)の工程を複数回繰り返して、第1層を基板10上に形成する。
【0095】
また、上記(a)~(d)の工程を複数回繰り返して実行している間、又は上記(a)と(c)の工程において、回転駆動用モータ430に回転伝達ベルト432で接続されている支持具440を回転駆動用モータ430で回転駆動させながら、基板10の仕切板203に対する高さ(間隔)を、図12(b)に示すような基板10を上昇させて基板10と仕切板203との間隔G1が小さい状態と、図12(c)に示すように基板10を下降させて基板10と仕切板203との間隔G2を大きくした状態との間で周期的に変化させながら実行する。これにより、基板10上に形成される膜の膜厚を均一にすることができる。
【0096】
なお、本明細書において「基板」という言葉を用いた場合は、「基板そのもの」を意味する場合や、「基板とその表面に形成された所定の層や膜等との積層体(集合体)」を意味する場合(すなわち、表面に形成された所定の層や膜等を含めて基板と称する場合)がある。また、本明細書において「基板の表面」という言葉を用いた場合は、「基板そのものの表面(露出面)」を意味する場合や、「基板上に形成された所定の層や膜等の表面、すなわち、積層体としての基板の最表面」を意味する場合がある。
なお、本明細書において「基板」という言葉を用いた場合も、「ウェハ」という言葉を用いた場合と同義である。
【0097】
次に、具体的な成膜工程の例について、図16に示したフロー図に沿って説明する。
【0098】
(プロセス条件設定):S701
まず、CPU260aは、記憶装置260cに記憶されたプロセスレシピ及び関連するデータベースを読み込んで、プロセス条件を設定する。記憶装置260cに替えて、ネットワークを介してプロセスレシピ及び関連するデータベースを入手するようにしてもよい。
【0099】
図8に、CPU260aが読み込むプロセスレシピ800の一例を示す。プロセスレシピ800の主な項目としては、ガス流量810、温度データ820、処理サイクル数830、ボート高さ840、ボート高さ調整時間間隔850などがある。
【0100】
ガス流量810には、原料ガス流量811、反応ガス流量812、キャリアガス流量813などの項目がある。温度データ820としては、ヒータ101による内側反応管120内部における加熱温度821がある。
【0101】
ボート高さ840には、図12(b)及び図12(c)で説明したように、基板10と仕切板203との間隔の最小値(G1)と最大値(G2)の設定値が含まれる。
【0102】
ボート高さ調整時間間隔850は、基板10と仕切板203との間隔を図12(b)に示したような最小値に維持する時間及び図12(c)に示したような最大値に維持する時間との切り替えの時間間隔を設定する。すなわち、基板10の表面と仕切板203との間隔(ノズル121のガス供給用の穴1210の位置に対する基板10の位置)を図12(b)のように設定した場合と図12(c)のように設定した場合とに交互に切り替えながら処理して基板10上に薄膜を形成する。これにより、基板10の表面に、中心部分と外周部分の膜厚がほぼ同じである平坦な膜厚分布を有する薄膜を形成することができる。
【0103】
(基板搬入):S702
ボート300を収納室500に収納した状態で、上下駆動用モータ410を駆動してボールねじ411を回転駆動し、ボート300をピッチ送りして、収納室500の基板搬入口310を介して、新たな基板10を1枚ずつボート300に搭載して保持する。
【0104】
ボート300への新たな基板10の搭載が完了すると、基板搬入口310を閉じて収納室500の内部を外部に対して密閉した状態で上下駆動用モータ410を駆動してボールねじ411を回転駆動しボート300を上昇させて、ボート300を収納室500から内側反応管120の内部に搬入する。
【0105】
この時、上下駆動用モータ410によって持ち上げられるボート300の高さは、S701で読み込んだプロセスレシピに基づいて、内側反応管120の管壁に形成された穴1202を通してノズル121から内側反応管120の内部に供給されるガスの吹き出し位置(ノズル121の先端部分の高さ)との差高さ方向の位置の差が、図12(b)又は図12(c)に示すような状態に設定される。
【0106】
(圧力調整):S703
ボート300が内側反応管120の内部に搬入された状態で、内側反応管120の内部を図示していない真空ポンプによって排気管130から真空排気し、内側反応管120の内部が所望の圧力となるように調整する。
【0107】
(温度調整):S704
図示していない真空ポンプによって真空排気された状態で、ステップS704で読み込んだレシピに基づいて、内側反応管120の内部が所望の圧力(真空度)となるように内側反応管120の内部をヒータ101によって加熱する。この際、内側反応管120の内部が所望の温度分布となるように、図示していない温度センサが検出した温度情報に基づきヒータ101への通電量がフィードバック制御される。ヒータ101による内側反応管120の内部の加熱は、少なくとも基板10に対する処理が完了するまでの間は継続して行われる。
【0108】
また、ヒータ101により加熱されることによる基板の昇温時は、ピッチ(基板10の裏面と基板10の下側の仕切板203との間隔)を狭くする(図12(C)の状態)。このピッチを狭くすることは、少なくとも原料ガス供給前まで行う。原料ガスを供給以降は、ピッチを昼ゲル。また、原料ガス供給時と反応ガス供給時とでピッチを異ならせても良い。さらに、原料ガス(反応ガス)の供給中にピッチを可変させても良い。さらにまた、基板支持具と仕切板支持部とが相対的に上下方向移動する動作タイミングは任意に設定可能である。
【0109】
[第1層形成工程]:S705
続いて、第1層を形成するために、以下のような詳細なステップを実行する。
(原料ガス供給):S7051
まず、回転駆動用モータ430を回転駆動して、回転伝達ベルト432を介して支持具440を回転させることにより、支持具440に支持されている仕切板支持部200とボート300とを回転させる。
【0110】
このボート300の回転を維持した状態で、ノズル121の穴1210から原料ガスを流量を調整した状態で噴出させる。ノズル121の穴1210から噴出した原料ガスは、内側反応管120に形成された穴1201を通って内側反応管120の内部に流入する。このように、原料ガスは流量調整された状態で内側反応管120に供給され、基板10の表面での反応に寄与しなかったガスは、内側反応管120に形成された穴1202及び穴1203を通って内側反応管120と外側反応管110との間に流出し、外側反応管110に形成された排気管130を通って図示していない排気手段によって排気される。
【0111】
ここで、ノズル121の穴1210、及び仕切板支持部200の仕切板203に対するボート300に搭載された基板10の表面の相対的な位置(高さ)は、ステップS701で読み込んだプロセスレシピに基づいてリニアアクチュエータを備えたボート上下機構420を作動させて軸421を上下方向に駆動することにより、ボートを所定の時間間隔で上下させて、複数の位置(例えば、図12(b)に示した位置と図12(c)に示した位置)の間で切り替えられる。
【0112】
ノズル121の穴1210から噴出されて内側反応管120に形成された穴1201を通って内側反応管120の内部に原料ガスを導入することにより、ボート300に搭載された基板10に対して原料ガスが供給されることとなる。供給する原料ガスの流量は、一例として、0.002~1slm(Standard liter per minute)の範囲、より好ましくは、0.1~1slmの範囲に設定する。
【0113】
このとき原料ガスと一緒にキャリアガスとしての不活性ガスが内側反応管120の内部に供給され、反応に寄与しなかったがガスは、内側反応管120に形成された穴1202及び1203を通って内側反応管120と外側反応管110との間に流出し、外側反応管110に形成された排気管130を通って図示していない排気手段によって排気される。キャリアガスの具体的な流量は、0.01~5slmの範囲、より好ましくは、0.5~5slmの範囲に設定する。
【0114】
キャリアガスは、ノズル121を介して内側反応管120の内部に供給され、排気管130から排気される。このときヒータ101の温度は、基板10の温度が、例えば250~550℃の範囲内の温度となるような温度に設定する。
【0115】
内側反応管120の内部に流しているガスは原料ガスとキャリアガスのみであり、原料ガスの内側反応管120の内部への供給により、基板10(表面の下地膜)上に、例えば1原子層未満から数原子層程度の厚さの第1層が形成される。
【0116】
(原料ガス排気):S7052
内側反応管120の内部に所定の時間ノズル121を介して原料ガスを供給して基板10の表面に第1層が形成された後、原料ガスの供給を停止する。このとき、図示していない真空ポンプにより内側反応管120の内部を真空排気し、内側反応管120の内部に残留する未反応もしくは第1層形成に寄与した後の原料ガスを内側反応管120の内部から排除する。
【0117】
このときノズル121からのキャリアガスの内側反応管120内部への供給を維持する。キャリアガスはパージガスとして作用し、内側反応管120の内部に残留する未反応もしくは第1層形成に寄与した後の原料ガスを内側反応管120の内部から排除する効果を高めることができる。
【0118】
(反応ガス供給):S7053
内側反応管120の内部の残留ガスを除去した後、回転駆動用モータ430を駆動してボート300の回転を維持した状態で、反応ガスをノズル121から内側反応管120の内部に供給し、反応に寄与しなかった反応ガスを外側反応管110の排気管130から排気する。これにより、基板10に対して反応が供給されることとなる。具体的に供給する反応ガスの流量は、0.2~10slmの範囲、より好ましくは、1~5slmの範囲に設定する。
【0119】
このとき、キャリアガスの供給は停止した状態として、キャリアガスが反応ガスと一緒に内側反応管120の内部に供給されないようにする。すなわち、反応ガスはキャリアガスで希釈されることなく、内側反応管120の内部に供給されるので、第1層の成膜レートを向上させることが可能である。このときのヒータ101の温度は、原料ガス供給ステップと同様の温度に設定する。
【0120】
ここで、ノズル121の穴1210、及び仕切板支持部200の仕切板203に対するボート300に搭載された基板10の表面の相対的な位置(高さ)は、ステップS7051と同様に、ステップS701で読み込んだプロセスレシピに基づいてリニアアクチュエータを備えたボート上下機構420を作動させて軸421を上下方向に駆動することにより、ボートを所定の時間間隔で上下させて、複数の位置(例えば、図12(b)に示した位置と図12(c)に示した位置)の間で切り替えられる。
【0121】
このとき内側反応管120の内部に流しているガスは、反応ガスのみである。反応ガスは、原料ガス供給ステップ(S7051)で基板10上に形成された第1層の少なくとも一部と置換反応して、基板10上に第2層が形成される。
【0122】
(残留ガス排気):S7054
第2層を形成した後、ノズル121から内側反応管120の内部への反応ガスの供給を停止する。そして、ステップS7052と同様の処理手順により、内側反応管120の内部に残留する未反応もしくは第2層の形成に寄与した後の反応ガスや反応副生成物を内側反応管120の内部から排除する。
【0123】
(所定回数実施)
ステップS705における上記した詳細ステップS7051~ステップS7055を順に行うサイクルを1回以上(所定回数(n回))行うことにより、基板10上に、所定の厚さ(例えば0.1~2nm)の第2層を形成する。上述のサイクルは、複数回繰り返すのが好ましく、例えば10~80回ほど行うことが好ましく、より好ましくは10~15回ほど行う。
【0124】
このように、ステップS701で読み込んだプロセスレシピに基づいてリニアアクチュエータを備えたボート上下機構420を作動させて軸421を上下方向に駆動することにより、ボートを所定の時間間隔で上下させて、複数の位置(例えば、図12(b)に示した位置と図12(c)に示した位置)の間で切り替えながら原料ガス供給工程(S7051)と反応ガス供給工程(S7053)とを繰り返して実行することにより、基板10の表面には、均一な膜厚分布を有する薄膜を形成することができる。
【0125】
なお、上記に説明した例においては、原料ガス供給工程(S7051)と反応ガス供給工程(S7053)とにおいて、回転駆動用モータ430で基板10を搭載したボート300を回転させる例を説明したが、残留ガス排気工程(S7052とS7054)の間も継続して回転させるようにしてもよい。
【0126】
(アフターパージ):S706
上記ステップS705の一連の工程を所定の回数繰り返して実行した後、ノズル121からNガスを内側反応管120の内部へ供給し、外側反応管110に形成された排気管130から排気する。不活性ガスはパージガスとして作用し、これにより内側反応管120の内部が不活性ガスでパージされ、内側反応管120の内部に残留するガスや副生成物が内側反応管120内から除去される。
(基板搬出):S707
その後、上下駆動用モータ410を駆動してボールねじ411を逆方向に回転駆動し、仕切板支持部200とボート300を内側反応管120から下降させて、表面に所定の厚さの薄膜が形成された基板10を搭載したボート300を収納室500に搬送する。
【0127】
収納室500において、ボート300から薄膜が形成された基板10を基板搬入口310を介して、収納室500の外部に取り出して基板10の処理を終了する。
【0128】
原料ガスとしては、例えば、モノクロロシラン(SiHCl、略称:MCS)ガス、ジクロロシラン(SiHCl、略称:DCS)ガス、トリクロロシラン(SiHCl、略称:TCS)ガス、テトラクロロシラン(SiCl、略称:STC)ガス、ヘキサクロロジシランガス(SiCl、略称:HCDS)ガス、オクタクロロトリシラン(SiCl、略称:OCTS)ガス等のクロロシラン系ガスを用いることができる。また、原料ガスとしては、例えば、テトラフルオロシラン(SiF)ガス、ジフルオロシラン(SiH)ガス等のフルオロシラン系ガス、テトラブロモシラン(SiBr)ガス、ジブロモシラン(SiHBr)ガス等のブロモシラン系ガス、テトラヨードシラン(SiI)ガス、ジヨードシラン(SiH)ガス等のヨードシラン系ガスを用いることもできる。また、原料ガスとしては、例えば、テトラキス(ジメチルアミノ)シラン(Si[N(CH、略称:4DMAS)ガス、トリス(ジメチルアミノ)シラン(Si[N(CHH、略称:3DMAS)ガス、ビス(ジエチルアミノ)シラン(Si[N(C、略称:BDEAS)ガス、ビス(ターシャリーブチルアミノ)シラン(SiH[NH(C)]、略称:BTBAS)ガス等のアミノシラン系ガスを用いることもできる。原料ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0129】
また、反応ガスは、例えば、O(酸素)(又はO(オゾン)又はHO(水))を用いることができる。
【0130】
また、キャリアガス(不活性ガス)は、例えば、窒素(N)ガスや、アルゴン(Ar)ガス、ヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス、キセノン(Xe)ガス等の希ガスを用いることができる。
【0131】
上記に説明した例においては、基板10上に例えば、Si(窒化シリコン)膜、SiO膜(シリコン酸化膜)、TiN(窒化チタン)膜等を形成することができる。また、これらの膜に限るものでは無い。例えば、W、Ta、Ru、Mo、Zr、Hf、Al、Si、Ge、Ga等又は、これら元素と同族の元素、で構成される元素単体の膜や、これら元素と窒素との化合物膜(窒化膜)、これら元素と酸素との化合物膜(酸化膜)等にも適用することが可能である。なお、これらの膜を形成する際には、上述のハロゲン含有ガスや、ハロゲン元素、アミノ基、シクロペンタ基、酸素(O)、炭素(C)、アルキル基、等の少なくともいずれかを含むガスを用いることができる。
【0132】
本第1の実施形態によれば、基板10の表面積や成膜する膜種に応じて、基板10と成膜ガス供給用のノズル121の穴1210と位置関係を予め設定した条件に基づいて変化させながら成膜することができるので、ボート300に載置された基板10上に形成する薄膜の膜厚分布の面内での均一性を向上させることができる。
【0133】
本開示の適用例として成膜処理工程について説明したが、本開示はこれに限られず、エッチングプロセスに適用することもできる。
【0134】
本開示をエッチングプロセスに適当する場合、リニアアクチュエータを備えたボート上下機構420を作動させて軸421を上下方向に駆動することにより、基板10と基板10の上側の仕切板203との間隔を狭くした状態(図12(b)の状態)でエッチングガスを供給することで、DED(Depo Etch Depo)処理の内、E処理が可能となる。ここで、DED処理とは、成膜処理とエッチング処理を繰り返し行い、所定の膜を形成する処理を意味する。上述のE処理とは、エッチング処理を意味する。
【0135】
また、エッチングガス供給中に、基板10と基板10の上側の仕切板203との間隔を広げることにより(図12(c)の状態)、エッチングの基板面内均一性を調整することが可能となる。
【0136】
本開示において、基板10と基板10の上側の仕切板203との間隔調整のパラメータとしては、膜厚分布、温度、ガス流量、圧力、時間、ガス種、基板の表面積、等がある。パラメータとして膜厚分布情報を用いる場合、膜厚測定装置を基板処理装置内に設け、膜厚測定結果を基に、基板10と基板10の上側の仕切板203との間隔を変更する。
【0137】
また、ガスの分解量をセンサで検出し、分解量データを基に、基板10と基板10の上側の仕切板203との間隔を変更させても良い。
【0138】
<本開示の第2の実施形態>
本開示の第2の実施形態に係る基板処理装置900の構成を図18に示す。第1の実施形態と同じ構成については同じ番号を付して説明を省略する。ただし、図18に示した構成においては、実施例1で説明したヒータ101、外側反応管110、内側反応管120、ガス供給用のノズル121、マニホールド111、排気管130及びコントローラ260の構成については実施例1と同じであるので、それらの表示を省略してある。
【0139】
本第2の実施形態の仕切板支持部200と基板支持具(ボート)300とを、上下方向駆動機構部400により内側反応管120と収納室500との間の上下方向に駆動する点、回転駆動用モータ9451で支持具9440を回転駆動して基板支持具300で支持された基板10の中心周りの回転方向に駆動される点、及びリニアアクチュエータを備えたボート上下機構9420で軸9421を介してプレート9422を上下方向に駆動して、仕切板支持部200に固定された支持具9440に対してボート300に固定された支持部9441を相対的に上下方向に駆動する点は、第1の実施形態と同じである。
【0140】
本第2の実施形態に係る基板処理装置900においては、上下方向駆動機構部400で仕切板支持部200と基板支持具300とを上昇させて、Oリング446を挟んでベースフランジ9401をチャンバ180に押し当てた状態で、仕切板支持部200と基板支持具300の高さをそれぞれ独立に調整できる機構部を備えた点が、第1の実施形態で説明した基板処理装置100の構成と異なる。
【0141】
すなわち、本第2の実施形態に係る基板処理装置900においては、図18に示すように、仕切板支持部200を基板支持具300に対して独立に上下させるための第二のリニアアクチュエータを備えたボート上下機構9460を備えている。この第二のリニアアクチュエータを備えたボート上下機構9460で、軸9461を介してプレート9462を上下方向に駆動して、仕切板支持部200を基板支持具300に対して独立に上下させる。
【0142】
プレート9462は、回転シール機構9423を挟んで、仕切板支持部200を基部201で支持している支持具9440と接続している。
【0143】
リニアアクチュエータを備えたボート上下機構9420と第二のリニアアクチュエータを備えたボート上下機構9460とは、ベースプレート9402に側板9403で支持されているベースフランジ9401に固定されている。
【0144】
回転駆動用モータ9430は、第二のリニアアクチュエータを備えたボート上下機構9460で上下方向に駆動されるプレート9462に取り付けられている。
【0145】
回転駆動用モータ9430は先端部に取り付けた歯部9431と係合する回転伝達ベルト9432を駆動し、回転伝達ベルト9432と係合している支持具9440を回転駆動する。支持具9440は、仕切板支持部200を基部201で支持しており、回転伝達ベルト9432を介して回転駆動用モータ9430で駆動されることにより、仕切板支持部200とボート300とを回転させる。
【0146】
本第2の実施形態による基板処理装置900の構成によれば、図1及び図2に示したようなノズル121に形成された穴1210に対して、ボート300に載置された基板10の高さ方向の位置と、仕切板支持部200に固定された仕切板203の高さ方向の位置とが独立に調整することができる。
【0147】
これにより、本第2の実施形態によれば、基板10の表面積や成膜する膜種に応じて、ノズル121に形成された穴1210に対して、ボート300に載置された基板10の高さ方向の位置と、仕切板支持部200に固定された仕切板203の高さ方向の位置とが独立に調整しながら成膜することができるので、ボート300に載置された基板10上に形成する薄膜の膜厚分布の面内での均一性を向上させることができる。
【0148】
<本開示の第3の実施形態>
本開示の第3の実施形態に係る基板処理装置1000の構成を図19に示す。第1の実施形態と同じ構成については同じ番号を付して説明を省略する。
【0149】
本実施例に係る基板処理装置1000においては、第1の実施形態で説明したのとは逆に、仕切板支持部2001に対して基板支持具(ボート)3001を独立に上下させる構成とした点が、実施例1で説明した基板処理装置100の構成と異なる。
【0150】
本第3の実施形態の仕切板支持部2001と基板支持具3001とにおいて、上下方向駆動機構部400により、外側反応管110、内側反応管120と収納室500との間の上下方向、及び基板支持具3001で支持された基板10の中心周りの回転方向に駆動される点と、リニアアクチュエータを備えたボート上下機構1420で軸1421を介してプレート1422を上下方向に駆動して、仕切板支持部2001に固定された支持部1441に対してボート3001に固定された支持部1440を相対的に上下方向に駆動する点は、第1の実施形態と同じである。
【0151】
本第3の実施形態においては、リニアアクチュエータを備えたボート上下機構1420で基板支持具3001を仕切板支持部2001に対して独立に上下させる構成とした。
【0152】
リニアアクチュエータを備えたボート上下機構1420は軸1421を上下方向に駆動する。軸1421の先端部分にはプレート1422が取り付けられている。プレート1422は、軸受け1423を介して仕切板支持部2001に固定された支持部1441と接続されている。
【0153】
一方、支持部1441は、リニアガイド軸受け1442を介して支持部1440に支持されている。支持部1440は、上面が基板支持具3001の基部3011と接続しており、ベースフランジ1401の内筒部分14011との間を真空シール1444で仕切られ、その下部を軸受け1445でベースフランジ1401の内筒部分14011に対して回転可能にガイドされている。
【0154】
このような構成とすることにより、リニアアクチュエータを備えたボート上下機構1420で軸1421を上下方向に駆動した場合、ボート3001に固定された支持部1441に対して仕切板支持部2001に固定された仕切板2031を相対的に上下方向に駆動することができる。
【0155】
また、支持部1441が軸受け1423を介してプレート1422と接続されることにより、回転駆動用モータ1430でボート3001を回転駆動したときに、仕切板支持部2001もボート3001と一緒に回転することができる。
【0156】
仕切板支持部2001に固定された支持部1441とボート3001に固定された支持部1440との間は、真空ベローズ1443で接続されている。
【0157】
本第3の実施形態による基板処理装置1000の構成によれば、ノズル121に形成された穴1210に対して、ボート3001に載置された基板10の高さを一定(固定)にした状態で、仕切板支持部2001に固定された仕切板2031の高さ方向の位置を調整することができる。
【0158】
これにより、本第3の実施形態によれば、基板10の表面積や成膜する膜種に応じて、基板10の上面と下面とを覆う仕切板2031と成膜ガス供給用のノズル121の穴1210と位置関係を予め設定した条件に基づいて変化させながら成膜することができるので、ボート3001に載置された基板10上に形成する薄膜の膜厚分布の面内での均一性を向上させることができる。
【0159】
<本開示の第4の実施形態>
本開示の第4の実施形態に係る基板処理装置1100の構成を図20に示す。第1の実施形態と同じ構成については同じ番号を付して説明を省略する。
【0160】
本第4の実施形態に係る基板処理装置1100においては、第1の実施形態で説明した基板処理装置100の構成に対して、収納室5001の内部を図示していない真空排気手段を用いて真空排気できる構造とした。これにより第1の実施形態において図2で説明したようなOリング446を用いて外側反応管110と収納室500との間を真空シールする必要がなくなり、基板処理中にベースフランジ401の高さを変化させることを可能にした。
【0161】
その結果、本第4の実施形態においては、第1の実施形態で説明したように、基板10を処理中に仕切板支持部200に対して基板支持具300の高さを変えられることに加えて、基板支持具300と仕切板支持部200とを一緒にガス供給用のノズル121に形成した穴1210に対する高さ方向の位置を変えられるようにした。
【0162】
第1の実施形態において、図1及び図2を用いて説明した構成と同じものについては同じ番号を付して、説明を省略する。
【0163】
本第4の実施形態においては、図20に示すように、上下方向駆動機構部4001を収納室5001の外部に配置し、上下方向駆動機構部4001に固定されて上下方向駆動機構部4001により上下方向に変位するプレート4021と収納室5001との間を真空ベローズ417で接続して、収納室5001の内部を密閉して真空シールできるように構成した。
【0164】
すなわち、ベースフランジ1401とプレート1422とで挟まれる空間を側壁4031で覆って収納室5001に対して内部の気密性を確保できるような構造とし、側壁4031から延びる管4023及び4022を通してベースフランジ1401とプレート1422と側壁4031とで囲まれた空間を大気圧にした状態で、収納室5001の内部の真空状態を維持できるようにした。
【0165】
ベースフランジ1401とプレート1422とで挟まれる空間を側壁4031で覆った空間を利用して、昇降・回転機構の電気配線等の接続や図示しない真空シール保護用の冷却水などを接続する構成等を設けることができる。
【0166】
本第4の実施形態によれば、基板10を処理中に仕切板支持部200に対して基板支持具300の高さを変えられることに加えて、基板支持具300と仕切板支持部200とを一緒にガス供給用のノズル121に形成した穴1210に対する高さ方向の位置を変えられるようにしたので、基板10を処理中に、ガス供給用のノズル121に形成した穴1210に対する仕切板支持部200に固定された仕切板203の高さと基板支持具300に載置された基板10の高さとを、個別に制御することができる。
【0167】
これにより、本実施例によれば、ボート300に載置された基板10上に形成する薄膜の膜厚分布の面内での均一性を向上させることができる。
【0168】
以上説明したように、本開示によれば、基板表面積や成膜する膜種に応じて、基板と成膜ガス供給用のノズルの位置関係を変化させて基板上に均一な膜を形成する方法が可能となる。
【0169】
更に、本開示によれば、成膜ガス供給用のノズルは、反応室に対し固定されており、基板を多段に設置した基板支持具(ボート)が、上下方向駆動機構部にて上下するように構成される。成膜処理を行う反応室と反応室の下に位置する収納室をガス遮断又は圧力遮断の為に仕切る必要がある場合は、Oリングシールにて仕切り、基板支持具の上下動作(ノズル位置関係可変)のストロークに対応した伸縮式のシール構造(ベロー)にてシールする。一方、ローディングエリア(収納室500内)が内側反応管120の内部と同等の圧力の場合はOリングシールは行わず反応室とバキュームローディングエリア(収納室500内)は通じた空間となる。この場合はバキュームローディングエリアから不活性ガスを供給し圧力勾配をつけてガス遮断を行う。
【0170】
また、本開示によれば、成膜中に基板を回転させることにより成膜ガス供給用のノズルから噴射された成膜ガスを基板表面に近い位置と遠い位置を調整しウェハ表層のガス流速を可変させながら供給でき、気相反応しやすい成膜ガスがウェハ表層に届き成膜に寄与するまでの分解状態を調整することが可能となる。
【0171】
以上に説明した本開示によれば、複数枚の基板を上下方向に間隔をあけて重ねて基板支持具に保持した状態でこの基支持具を上下方向駆動機構部で駆動して反応管の内部に収容し、反応管内の内部に収容された基板支持具上に保持された基板を反応管の周囲を囲んで配置された加熱部で加熱し、反応管の内部に収容された前記基板支持具に保持された前記基板にガス供給用ノズルの複数の穴から原料ガスを供給して供給した原料ガスを反応管から排気することと基板にガス供給用ノズルの複数の穴から反応ガスを供給して供給した反応ガスを反応管から排気することを繰り返すことにより複数の基板上に薄膜を形成する半導体装置の製造方法において、ガス供給用ノズルの複数の穴から原料ガスを供給することと反応ガスを供給することとを、反応管に収容する基支持具の高さを上下駆動部で制御して、基板支持具に保持された複数枚の基板とガス供給用ノズルの複数の穴との間隔(高さ)を予め設定した条件に応じて調整した状態で行うようにしたものである。
【0172】
また、本開示においては、原料ガスと反応ガスとは、基板支持具に保持された複数枚の基板の上下方向の間隔と同じ間隔で配置されたガス供給用ノズルの複数の穴から供給するようにしたものである。
【0173】
さらに、本開示においては、ガス供給用ノズルの複数の穴から原料ガスを供給することと反応ガスを供給することとを、反応管に収容する基板支持具の高さを上下方向駆動機構部で制御して、基板支持具に保持された複数枚の基板と複数のガス供給用ノズルとの間隔(高さ)を変化させて繰り返し行うようにしたものである。
【符号の説明】
【0174】
100,900,1000,1100・・・基板処理装置 101・・・ヒータ 110・・・外側反応管 120・・・内側反応管 121・・・ガス供給用のノズル 1210・・・穴 200・・・仕切板支持部 203・・・仕切板 260・・・コントローラ 300・・・基板支持具(ボート) 400・・・上下方向駆動機構部 500・・・収納室。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20