(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】スライドガラス供給収納ユニットおよび試料処理システム
(51)【国際特許分類】
G01N 1/31 20060101AFI20241021BHJP
G01N 1/28 20060101ALI20241021BHJP
G01N 35/02 20060101ALI20241021BHJP
G01N 35/04 20060101ALI20241021BHJP
【FI】
G01N1/31
G01N1/28 J
G01N35/02 C
G01N35/04 E
G01N35/04 G
(21)【出願番号】P 2023533469
(86)(22)【出願日】2022-06-02
(86)【国際出願番号】 JP2022022545
(87)【国際公開番号】W WO2023281949
(87)【国際公開日】2023-01-12
【審査請求日】2023-12-13
(31)【優先権主張番号】P 2021111417
(32)【優先日】2021-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 正史
(72)【発明者】
【氏名】松原 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】杉山 英利
【審査官】野田 華代
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-177803(JP,A)
【文献】特開2012-141287(JP,A)
【文献】特開2018-17693(JP,A)
【文献】特開昭62-118257(JP,A)
【文献】特開2007-147399(JP,A)
【文献】特開2005-10006(JP,A)
【文献】特開2012-13953(JP,A)
【文献】特表2008-528967(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112414825(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/75695(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00-1/44
G01N 35/00-37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスライドトレイが垂直方向である第1方向に積層されるように、前記複数のスライドトレイを搭載可能な供給部と、
前記供給部に搭載された前記複数のスライドトレイを、前記第1方向と交差する第2方向へ、個別に移動させる第1移動機構と、
を備え、
前記複数のスライドトレイの各々は、それぞれ試料が載置された複数のスライドガラスを載置可能であり、
前記供給部に設けられ、且つ、前記第1方向へ移動可能な第1識別コードリーダを更に備え、
前記複数のスライドガラスの各々には、識別コードが設けられ、
前記第1識別コードリーダは、前記複数のスライドガラスの各々の前記識別コードに含まれる情報を読み取り可能である、スライドガラス供給収納ユニット。
【請求項3】
請求項1に記載のスライドガラス供給収納ユニットにおいて、
前記第1移動機構は、前記複数のスライドトレイが前記供給部に搭載される位置である初期位置から前記第2方向へ、少なくとも1つの前記スライドトレイの幅に相当する範囲内で、前記複数のスライドトレイを移動可能である、スライドガラス供給収納ユニット。
【請求項4】
請求項3に記載のスライドガラス供給収納ユニットにおいて、
前記複数のスライドトレイが前記初期位置から前記スライドガラス供給収納ユニットの内部へ向かう方向へ移動する間に、前記第1識別コードリーダによって、前記複数のスライドガラスの各々の前記識別コードの情報を読み取る読み取り動作が行われる、スライドガラス供給収納ユニット。
【請求項5】
請求項1に記載のスライドガラス供給収納ユニットにおいて、
前記供給部に設けられ、且つ、それぞれ前記スライドトレイを載置可能な複数の第1設置部を更に備え、
それぞれ前記スライドトレイが載置された前記複数の第1設置部を、前記第1移動機構によって前記第2方向へ個別に移動させることで、前記複数のスライドトレイの移動が行われる、スライドガラス供給収納ユニット。
【請求項6】
請求項5に記載のスライドガラス供給収納ユニットにおいて、
前記第1移動機構は、
エアシリンダと、
前記エアシリンダと平行に配置され、且つ、前記第2方向に延在するリニアシャフトと、
前記エアシリンダ、前記リニアシャフトおよび前記第1設置部に接続されたリニアブッシュと、
前記第1設置部に接続され、且つ、前記第2方向に延在する電動アクチュエータと、
前記電動アクチュエータに連結された位置決め部材と、
を有し、
前記エアシリンダの内部の圧縮空気を制御することで、前記第1設置部が前記リニアシャフトに沿って移動して前記位置決め部材に押し当てられ、
前記第1設置部が前記位置決め部材に押し当てられた状態で、前記電動アクチュエータを駆動することで、前記第1設置部の移動が行われる、スライドガラス供給収納ユニット。
【請求項7】
請求項5に記載のスライドガラス供給収納ユニットにおいて、
前記複数の第1設置部の各々は、歯形状のラックを有し、
前記第1移動機構は、前記ラックと噛合うような歯形状のピニオン、および、前記ピニオンに接続されたモータを有し、
前記モータを駆動させ、前記ピニオンを回転させることで、前記第1設置部の移動が行われる、スライドガラス供給収納ユニット。
【請求項8】
請求項5に記載のスライドガラス供給収納ユニットにおいて、
前記第1移動機構は、
前記複数の第1設置部の各々を把持するためのピンチ機構と、
前記ピンチ機構を前記第1方向へ移動させるための第1アクチュエータと、
前記ピンチ機構を前記第2方向へ移動させるための第2アクチュエータと、
を有し、
前記ピンチ機構が前記第1設置部を把持した状態で、前記第1アクチュエータおよび前記第2アクチュエータによって前記ピンチ機構を移動させることで、前記第1設置部の移動が行われる、スライドガラス供給収納ユニット。
【請求項9】
請求項4に記載のスライドガラス供給収納ユニットにおいて、
前記第1識別コードリーダは、前記供給部のうち前記スライドガラス供給収納ユニットの内部側に設けられ、
所定のスライドトレイが、オペレータによって、前記スライドガラス供給収納ユニットの外部から前記供給部の前記初期位置に導入された場合、前記所定のスライドトレイは、前記第1移動機構によって、前記初期位置から前記スライドガラス供給収納ユニットの内部へ向かう方向へ移動し、その間に前記読み取り動作が行われる、スライドガラス供給収納ユニット。
【請求項10】
請求項9に記載のスライドガラス供給収納ユニットにおいて、
前記第1移動機構は、
前記スライドトレイを載置可能な第3設置部と、
前記第3設置部を搭載し、且つ、前記第3設置部を前記第2方向へ移動させるための第2駆動機構と、
前記第2駆動機構を前記第1方向へ移動させるための第1駆動機構と、
を有し、
前記第3設置部は、前記第1駆動機構および前記第2駆動機構によって、前記スライドガラス供給収納ユニットの内部から前記初期位置へ向かう方向へ移動し、
前記供給部に搭載された前記スライドトレイは、前記初期位置において前記第3設置部に載置され、
前記スライドトレイが載置された前記第3設置部は、前記第2駆動機構によって、前記初期位置から前記スライドガラス供給収納ユニットの内部へ向かう方向へ移動する、スライドガラス供給収納ユニット。
【請求項11】
請求項1に記載のスライドガラス供給収納ユニットを有する試料処理システムであって、
前記スライドガラス供給収納ユニットに取り付けられ、且つ、前記スライドガラスを搬送するための搬送ユニットと、
前記スライドガラスに載置された前記試料を染色するための染色ユニットと、
を更に有し、
前記供給部に搭載された前記複数のスライドトレイのうち、染色対象となる第1スライドガラスが載置されている第1スライドトレイは、前記第1スライドガラスが前記スライドガラス供給収納ユニットの内部の第1搬送位置に位置するように、前記第1移動機構によって、前記供給部から移動し、
前記第1スライドガラスは、前記搬送ユニットによって、前記第1搬送位置から前記染色ユニットへ搬送され、
前記第1スライドガラスに載置された前記試料は、前記染色ユニットの内部において染色される、試料処理システム。
【請求項12】
請求項11に記載の試料処理システムであって、
スライドガラス供給収納ユニットは、
前記複数のスライドトレイが垂直方向である第1方向に積層されるように、前記複数のスライドトレイを搭載可能な収納部と、
前記収納部に搭載された前記複数のスライドトレイを、前記第2方向へ個別に移動させる第2移動機構と、
を更に備え、
前記収納部に搭載された前記複数のスライドトレイのうち第2スライドトレイは、前記第2移動機構によって、前記収納部から前記スライドガラス供給収納ユニットの内部の第2搬送位置を含む位置へ移動し、
染色された前記試料が載置された前記第1スライドガラスは、前記搬送ユニットによって、前記第2搬送位置に位置する前記第2スライドトレイへ載置され、
前記第1スライドガラスが載置された前記第2スライドトレイは、前記第2移動機構によって、前記収納部へ移動する、試料処理システム。
【請求項13】
請求項1に記載のスライドガラス供給収納ユニットにおいて、
前記識別コードは、バーコード、二次元コード、または、RFIDのいずれかである、スライドガラス供給収納ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライドガラス供給収納ユニットおよび試料処理システムに関し、特に、それぞれ複数のスライドガラスが載置された複数のスライドトレイを搭載可能なスライドガラス供給収納ユニットと、そのスライドガラス供給収納ユニットを有する試料処理システムとに関する。
【背景技術】
【0002】
病理検査では、組織または血液などの生体試料を処理し、処理された生体試料をスライドガラス上に載置し、スライドガラス上の生体試料を染色し、染色された生体試料を顕微鏡で観察することで、生体試料の検査が行われる。
【0003】
近年は、生体試料を染色する工程、染色後のスライドガラスへカバースリップを封入する工程、および、染色された生体試料のデジタル画像を取得する工程などにおいて、自動化が促進されている。更に、それらの工程全体を、人手を介さずに自動化することが求められている。
【0004】
特許文献1では、これらの工程全体を自動化するシステムとして、複数の種類の機能ユニットの組み合わせによって実現される自動処理システムが提案されている。
【0005】
特許文献2では、それぞれ複数のスライドガラスが載置された複数のホルダを所定の準備位置に重ねて配置し、ホルダ搬送装置によってホルダを一枚ずつ撮像位置へ搬送し、ホルダ全体の撮像、スライドガラス単体のマクロ画像の撮像、および、スライドガラス単体のミクロ画像の撮像を、自動で行う構成が開示されている。
【0006】
特許文献3では、複数のスライドガラスが載置された収納部から、位置決めが可能となるようにスライドガラスを取り出して、ハンドリングを行うことが可能な構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2012-141287号公報
【文献】特開2012-177803号公報
【文献】特許04871263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
病理検査の自動化においては、スライドガラスをハンドリングすることが必須となる。
【0009】
特許文献1のような自動処理システムでは、効率的な自動化のために、各スライドガラスに必要な処理を判断し、各スライドガラスをどのユニットに搬送するかを決定する手段が、必要となる。
【0010】
しかし、特許文献1では、自動処理システムをどのような機能を持ったユニットで構成するかについては開示されているが、具体的に、各機能ユニットの間でスライドガラスを搬送するために、スライドガラスをどのように取り扱うかについては、開示されていない。
【0011】
また、特許文献1では、スライドガラスに識別子が付加され、自動処理システムが識別子を読み取ることで、指定された処理手順を実行する手段が開示されているが、識別子を読み取るタイミングおよび読み取りの場所などのような、効率的な自動処理に必要となる情報は、開示されていない。
【0012】
特許文献2では、重ねて配置された複数のホルダから、所望のホルダを取り出すために、任意のホルダの上方に載置されたホルダを準備位置から撮像位置へ移動させ、更に上方のホルダを待機位置へ搬送する必要がある。すなわち、所望のホルダの上方に複数のホルダが重ねて載置されている場合、全てのホルダを1つずつ搬送する必要があるので、所望のホルダを搬送するための作業に対して、非常に多くの時間が必要とされる。
【0013】
特許文献3では、スライドガラス搬送部を複数のスライドガラスの各々の位置に停止させた状態で、スライドガラスを取り出す必要があるので、スライドガラス搬送部の動作範囲を広くする必要があり、スライドガラス搬送部を複数のスライドガラスの各々の位置に、高い精度で停止させる必要がある。
【0014】
本願の主な目的は、それぞれ複数のスライドガラスが載置された複数のスライドトレイを同時に搭載可能であり、且つ、所望のスライドガラスを自由に搬送できるスライドガラス供給収納ユニットを、比較的簡便な構成によって提供することにある。
その他の課題および新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
一実施の形態おけるスライドガラス供給収納ユニットは、複数のスライドトレイが垂直方向である第1方向に積層されるように、前記複数のスライドトレイを搭載可能な供給部と、前記供給部に搭載された前記複数のスライドトレイを、前記第1方向と交差する第2方向へ、個別に移動させる第1移動機構とを備える。ここで、前記複数のスライドトレイの各々は、それぞれ試料が載置された複数のスライドガラスを載置可能である。
【発明の効果】
【0016】
一実施の形態によれば、それぞれ複数のスライドガラスが載置された複数のスライドトレイを同時に搭載可能であり、且つ、所望のスライドガラスを自由に搬送できるスライドガラス供給収納ユニットを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施の形態1における試料処理システムの概要を示す平面図である。
【
図2】実施の形態1における試料処理システムの概要を示す側面図である。
【
図3】実施の形態1におけるスライドガラス供給収納ユニットを示す斜視図である。
【
図4】実施の形態1におけるスライドガラスの搬送工程を示す平面図である。
【
図5】実施の形態1におけるスライドガラスの搬送工程を示す側面図である。
【
図6】実施の形態1におけるスライドガラスの搬送工程を示すフローチャートである。
【
図7】実施の形態1における移動機構の一例を示す模式図である。
【
図8】実施の形態1における移動機構の他の一例を示す側面図である。
【
図9】実施の形態1における移動機構の他の一例を示す側面図である。
【
図10】実施の形態2における試料処理システムの概要を示す平面図である。
【
図11】実施の形態3におけるスライドガラス供給収納ユニットを示す斜視図である。
【
図12A】実施の形態3におけるスライドトレイの搬送工程を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
また、実施の形態を説明するための図面では、各構成を分かり易くするために、ハッチングが省略されている場合もある。
【0019】
また、本願において説明されるX方向、Y方向およびZ方向は互いに交差し、直交している。本願では、X方向のうちX1方向を右方向とし、X方向のうちX2方向を左方向とし、Y方向のうちY1方向を前方向とし、Y方向のうちY2方向を後方向とし、Z方向のうちZ1方向を上方向とし、Z方向のうちZ2方向を下方向として、説明を行う。
【0020】
(実施の形態1)
<試料処理システムの構成>
以下に
図1および
図2を用いて、実施の形態1における試料処理システム100について説明する。
【0021】
図1および
図2に示されるように、試料処理システム100は、スライドガラス供給収納ユニット1と、搬送ユニット30と、染色ユニット40とを有する。
【0022】
スライドガラス供給収納ユニット1は、供給部10および収納部20を備え、供給部10および収納部20は、それぞれ複数のスライドトレイ2を搭載可能である。また、複数のスライドトレイ2の各々は、それぞれ試料が載置された複数のスライドガラス3を載置可能である。なお、ここで説明する試料は、例えば病理検査で用いられる、組織または血液などの生体試料である。
【0023】
搬送ユニット30は、スライドガラス供給収納ユニット1に取り付けられ、スライドガラス3を搬送するために設けられている。例えば、スライドトレイ2に載置されたスライドガラス3を、搬送ユニット30によって、スライドガラス供給収納ユニット1から染色ユニット40などの他のユニットへ搬送できる。
【0024】
染色ユニット40は、ディスク41および試薬供給部42を備え、スライドガラス3に載置された試料を染色するために設けられている。搬送ユニット30によって搬送されたスライドガラス3は、ディスク41に載置され、スライドガラス3に載置された試料は、試薬供給部42からの試薬によって染色される。なお、染色ユニット40で用いられる染色法として、例えば、HE染色、免疫組織化学染色またはin-situハイブリダイゼーション染色が適用できる。
【0025】
<スライドガラス供給収納ユニット1の構成>
以下に
図3を用いて、実施の形態1におけるスライドガラス供給収納ユニット1について説明する。
【0026】
供給部10および収納部20は、X方向で互いに隣接し、一体化している。複数のスライドガラス3は、Y方向で互いに隣接するように、スライドトレイ2に載置されている。
【0027】
供給部10は、複数のスライドトレイ2が垂直方向(Z方向)に積層されるように、複数のスライドトレイ2を搭載可能である。また、供給部10は、複数の設置部11、識別コードリーダ12および複数の開閉スイッチ13を備える。
【0028】
複数の設置部11は、Z方向に積層され、それぞれスライドトレイ2を載置可能である。実施の形態1では、1つのスライドトレイ2が供給部10に搭載される際に、1つスライドトレイ2は、1つの設置部11に載置される。
【0029】
図4に示されるように、複数のスライドガラス3の各々には、識別コード4が設けられている。識別コードリーダ12は、複数のスライドガラス3の各々の識別コード4に含まれる情報を読み取り可能である。また、識別コードリーダ12は、供給部10のうちスライドガラス供給収納ユニット1の外部側(Y1方向側)に設けられ、図示しない移動機構によってZ方向に移動可能である。そのため、例えば、スライドガラス供給収納ユニット1の外部から供給部10の所定の層へスライドトレイ2が導入される際に、識別コードリーダ12は、所定の層へ移動し、導入されたスライドトレイ2に載置されている複数のスライドガラス3の情報を読み取ることができる。
【0030】
識別コード4としては、例えば、バーコード、2次元コードまたはRFIDを適用できるが、識別コード4は、これらに限られず、スライドガラス3の情報を保有できるのであれば、他の様式の識別子であってもよい。
【0031】
開閉スイッチ13は、供給部10の前方側(Y1方向側)に設けられ、供給部10のうち複数のスライドトレイ2の各層に対応する位置に設けられている。オペレータが所定の層の開閉スイッチ13を押すことで、設置部11がスライドガラス供給収納ユニット1の外部へ移動する動作、または、設置部11がスライドガラス供給収納ユニット1の内部へ移動する動作が行われる。
【0032】
収納部20は、複数のスライドトレイ2が垂直方向(Z方向)に積層されるように、複数のスライドトレイ2を搭載可能である。また、収納部20は、複数の設置部21、識別コードリーダ22および複数の開閉スイッチ23を備える。
【0033】
複数の設置部21は、Z方向に積層され、それぞれスライドトレイ2を載置可能である。実施の形態1では、1つのスライドトレイ2が収納部20に搭載される際に、1つスライドトレイ2は、1つの設置部21に載置される。
【0034】
識別コードリーダ22は、複数のスライドガラス3の各々の識別コード4に含まれる情報を読み取り可能である。また、識別コードリーダ22は、収納部20のうちスライドガラス供給収納ユニット1の内部側(Y2方向側)に設けられ、図示しない移動機構によってZ方向に移動可能である。そのため、例えば、後述の移動機構TM2によって搬送されたスライドトレイ2が、収納部20の所定の層へ導入される際に、識別コードリーダ12は、所定の層へ移動し、導入されたスライドトレイ2に載置されている複数のスライドガラス3の情報を読み取ることができる。
【0035】
開閉スイッチ23は、収納部20の前方側(Y1方向側)に設けられ、収納部20のうち複数のスライドトレイ2の各層に対応する位置に設けられている。オペレータが所定の層の開閉スイッチ23を押すことで、設置部21がスライドガラス供給収納ユニット1の外部へ移動する動作、または、設置部21がスライドガラス供給収納ユニット1の内部へ移動する動作が行われる。
【0036】
また、スライドガラス供給収納ユニット1は、供給部10に搭載された複数のスライドトレイ2を、Y方向へ個別に移動させる移動機構TM1と、収納部20に搭載された複数のスライドトレイ2を、Y方向へ個別に移動させる移動機構TM2と、を更に備える。実施の形態1では、それぞれスライドトレイ2が載置された複数の設置部11(設置部21)を、移動機構TM1(移動機構TM2)によってY方向へ個別に移動させることで、複数のスライドトレイ2の移動が行われる。
【0037】
移動機構TM1は、複数のスライドトレイ2が供給部10に搭載される位置である初期位置からY方向(スライドガラス供給収納ユニット1の外部へ向かう方向、または、上記初期位置からスライドガラス供給収納ユニット1の内部へ向かう方向)へ、複数のスライドトレイ2を移動させる。また、移動機構TM1は、少なくとも1つのスライドトレイ2の幅に相当する範囲内で移動可能である。移動機構TM2の移動方向および移動範囲は、移動機構TM1と同様である。
なお、このような移動機構TM1、TM2の具体的な構成例については、後で詳細に説明する。
【0038】
<搬送ユニット30の構成>
以下に
図3を用いて、実施の形態1における搬送ユニット30について説明する。
【0039】
搬送ユニット30は、グリッパ機構31、Z搬送軸33、X搬送軸34およびY搬送軸35を備える。グリッパ機構31は、スライドガラス3を把持するための把持部32を有する。Z搬送軸33は、Z方向におけるグリッパ機構31の位置を移動するために設けられX搬送軸34は、X方向におけるグリッパ機構31の位置を移動するために設けられ、Y搬送軸35は、Y方向におけるグリッパ機構31の位置を移動するために設けられている。
【0040】
Z搬送軸33、X搬送軸34およびY搬送軸35によってグリッパ機構31を所定の位置へ移動させ、把持部32に開閉動作を行わせることで、スライドガラス3を把持または開放することができる。
【0041】
また、把持部32は、スライドガラス3を挟む様態であってもよいが、吸盤のような部材によってスライドガラス3を吸着して把持する様態など、他の把持様態であってもよい。
【0042】
<スライドガラス3の搬送工程>
以下に
図4~
図6を用いて、実施の形態1におけるスライドガラス3の搬送工程について説明する。なお、
図5は、
図4に対応した側面図であり、
図4および
図5に図示されている符号S1~S5は、
図6のフローチャートに示されるステップS1~S5に対応している。
【0043】
ステップS1は、スライドトレイ2を供給部10へ導入する前の初期状態を示している。複数のスライドトレイ2が供給部10に搭載される位置である初期位置に、スライドトレイ2を載置していない空の設置部11が搭載されている。
【0044】
ステップS2では、オペレータが複数の開閉スイッチ13のうち所定の開閉スイッチ13を押すことで、所定の開閉スイッチ13の位置に対応した所定の設置部11が、初期位置からスライドガラス供給収納ユニット1の外部へ移動する。この時、識別コードリーダ12は、押された開閉スイッチ13の位置へ移動する。
【0045】
ステップS3では、複数のスライドガラス3が載置された所定のスライドトレイ2が、オペレータによって、移動した所定の設置部11に載置される。詳細な図示は省略するが、スライドトレイ2は、ボールキャッチまたはマグネットキャッチなどの機器によって設置部11に固定される。これにより、スライドトレイ2および設置部11は、一体動作するようになる。
【0046】
ステップS4では、所定のスライドトレイ2が所定の設置部11に載置された状態で、オペレータが所定の開閉スイッチ13を押すことで、所定の設置部11が、スライドガラス供給収納ユニット1の外部から初期位置へ移動する。その間に、識別コードリーダ12によって、識別コード4の読み取り動作が行われる。すなわち、複数のスライドガラス3の移動中に、それぞれの識別コード4が、順番に読み取られる。
【0047】
このように、実施の形態1では、複数のスライドトレイ2が初期位置からスライドガラス供給収納ユニット1の内部へ向かう方向へ移動する間に、識別コードリーダ12によって、複数のスライドガラス3の各々の識別コード4の情報を読み取る読み取り動作が行われる。
【0048】
なお、特に図示はしていないが、試料処理システム100は、スライドガラス供給収納ユニット1、搬送ユニット30および染色ユニット40に電気的に接続され、これらを統括する制御部を有している。例えば、移動機構TM1、TM2の移動、識別コードリーダ12の移動、識別コード4の情報の読み取り、グリッパ機構31の移動、および、試薬供給部42による試薬の供給のような、各ユニットで行われる工程は、この制御部によって制御される。
【0049】
上記読み取り動作によって得られた複数のスライドガラス3の情報は、上記制御部によって、既に取得済の全層の複数のスライドガラス3の情報と統合される。上記制御部は、スライドガラス3の供給順を決定でき、選択されたスライドガラス3が、搬送位置CPへ移動する。
【0050】
供給部10に搭載された全てのスライドガラス3の情報を事前に読み取っておくことで、スライドトレイ2上のスライドガラス3を順番に搬送するだけでなく、優先順位の高い任意のスライドガラス3を選択して搬送することも可能となる。
【0051】
ステップS5では、供給部10に搭載された複数のスライドトレイ2のうち、染色対象となるスライドガラス3が載置されているスライドトレイ2が、染色対象のスライドガラス3がスライドガラス供給収納ユニット1の内部の搬送位置CPに位置するように、移動機構TM1によって、供給部10から移動する。
【0052】
ステップS5の後、染色対象のスライドガラス3は、搬送ユニット30によって、搬送位置CPから染色ユニット40へ搬送され、染色対象のスライドガラス3に載置された試料は、染色ユニット40の内部において染色される。
【0053】
例えば、グリッパ機構31の把持部32によって、搬送位置CPに位置するスライドガラス3が把持される。次に、把持されたスライドガラス3が、搬送ユニット30によって、スライドガラス供給収納ユニット1から染色ユニット40へ搬送される。次に、把持されたスライドガラス3が、ディスク41に載置され、把持部32から開放される。次に、スライドガラス3を試薬供給部42に対応する位置へ移動させ、スライドガラス3に載置された試料が、試薬供給部42からの試薬によって染色される。
【0054】
以下に、染色工程が完了したスライドガラス3を収納部20に搭載する搬送工程について説明する。この搬送工程は、概ね、上述のステップS1~S5の工程と逆の手順で行われる。
【0055】
まず、収納部20に搭載された複数のスライドトレイ2(複数の設置部21)のうち、空のスライドトレイ2が、移動機構TM2によって、Y2方向へ移動し、収納部20からスライドガラス供給収納ユニット1の内部の搬送位置CPを含む位置へ移動する。
【0056】
次に、染色された試料が載置されたスライドガラス3は、搬送ユニット30によって、搬送位置CPに位置するスライドトレイ2へ載置される。スライドガラス3が載置されたスライドトレイ2は、移動機構TM2によって、Y1方向へ移動し、収納部20へ移動する。この時、搬送位置CPに位置する識別コード4の情報は、識別コードリーダ22によって読み取られる。
【0057】
次に、オペレータが複数の開閉スイッチ23のうち所定の開閉スイッチ23を押すことで、所定の開閉スイッチ23の位置に対応した所定の設置部21が、初期位置からスライドガラス供給収納ユニット1の外部へ移動する。オペレータは、所定の設置部21に載置されているスライドトレイ2を回収できる。その後、オペレータが所定の開閉スイッチ23を押すことで、空の設置部21が、スライドガラス供給収納ユニット1の外部から初期位置へ移動する。
【0058】
なお、識別コードリーダ22によって取得されたスライドガラス3の情報は、制御部によって識別され、制御部は、その情報をモニタなどのユーザインターフェースに表示させる。これにより、オペレータは、染色処理の完了をいち早く知ることができる。
【0059】
また、優先して取り出したいスライドガラス3がある場合、オペレータが制御部へ指示を入力することで、全てのスライドガラス3がスライドトレイ2に載置される前であっても、すなわち収納処理の途中であっても、指定したスライドトレイ2をスライドガラス供給収納ユニット1の外部へ移動させ、所望のスライドガラス3を回収することもできる。
【0060】
ところで、染色処理が成されたスライドガラス3は試薬を含むので、搬送中にスライドガラス3から試薬が零れる場合がある。従って、スライドトレイ2を収納部20に搭載する際の移動速度は、供給部10からスライドトレイ2を移動させる際の移動速度よりも遅くする。
【0061】
また、収納部20は、供給部10よりも染色ユニット40に近い位置に設けられていることが好ましい。仮に、供給部10が収納部20よりも染色ユニット40に近い位置に設けられていると、染色ユニット40からの搬送中に試薬が零れた場合、移動機構TM2だけでなく、移動機構TM1の搬送経路に影響が出る。収納部20が染色ユニット40の近くに位置していれば、試薬が零れたとしても、その影響は、移動機構TM2だけで済む。
【0062】
以上、実施の形態1によれば、それぞれ複数のスライドガラス3が載置された複数のスライドトレイ2を同時に搭載可能であり、且つ、所望のスライドトレイ2を自由に搬送できるスライドガラス供給収納ユニット1を提供できる。
【0063】
<移動機構TM1、TM2の構成例>
以下に
図7~
図9を用いて、実施の形態1における移動機構TM1、TM2の構成例について説明する。
【0064】
図7は、移動機構TM1、TM2の第1の構成例を示している。
図7に示されるように、移動機構TM1、TM2は、切替弁72、スピードコントローラ73、エアシリンダ74、リニアシャフト75、リニアブッシュ76、電動アクチュエータ77および位置決め部材78を有する。
【0065】
リニアシャフト75は、エアシリンダ74と平行に配置され、且つ、Y方向に延在している。リニアブッシュ76は、エアシリンダ74、リニアシャフト75および設置部11、21に接続されている。電動アクチュエータ77は、設置部11、21に接続され、且つ、Y方向に延在している。位置決め部材78は、電動アクチュエータ77に連結されている。
【0066】
圧縮空気71は、切替弁72およびスピードコントローラ73を介してエアシリンダ74に配管される。例えば、切替弁72の制御によって、エアシリンダ74のY2方向側の接続部に圧縮空気71が供給されると、設置部11、21が、リニアシャフト75に沿ってY1方向側に駆動する。逆に、切替弁72の制御によって、エアシリンダ74のY1方向側の接続部に圧縮空気71が供給されると、設置部11、21が、リニアシャフト75に沿ってY2方向側に駆動する。
【0067】
エアシリンダ74の駆動に併せて、電動アクチュエータ77のパルス制御を用いることで、設置部11、21の位置決めおよび速度制御が行われる。エアシリンダ74の内部の圧縮空気71を制御することで、設置部11、21が、リニアシャフト75に沿って移動して位置決め部材78に押し当てられる。設置部11、21が位置決め部材78に押し当てられた状態で、電動アクチュエータ77を駆動することで、設置部11、21の移動が行われる。
図8は、移動機構TM1、TM2の第2の構成例を示している。
【0068】
図8に示されるように、複数の設置部11、21の各々は、一方の側面に歯形状のラック79を有する。移動機構TM1、TM2は、ラック79と噛合うような歯形状のピニオン81、および、ピニオン81に接続されたモータ80を有する。複数の設置部11、21の各々の他方の側面は、Y方向にのみ動作するように、リニアガイドで拘束されている。
【0069】
選択された所定のスライドガラス3を供給する場合、所定の層に対応するモータ80を駆動させ、ピニオン81を回転させることで、設置部11、21の移動が行われる。
図9は、移動機構TM1、TM2の第3の構成例を示している。
【0070】
図9に示されるように、移動機構TM1、TM2は、複数の設置部11、21の各々を把持するためのピンチ機構82と、ピンチ機構82をZ方向へ移動させるためのZ軸アクチュエータ83と、ピンチ機構82をY方向へ移動させるためのY軸アクチュエータ84とを有する。
【0071】
複数の設置部11、21の各々の両側面は、Y方向にのみ動作するように、リニアガイドで拘束されている。複数の設置部11、21は、例えばボールキャッチまたはマグネットキャッチのような待機構造85によって、初期位置にて待機している。
【0072】
選択された所定のスライドガラス3を供給する場合、Z軸アクチュエータ83は、所定の層の高さまでピンチ機構82を上下移動させる。その後、Y軸アクチュエータ84は、所定の設置部11、21の初期位置までピンチ機構82を移動させ、ピンチ機構82によって、所定の設置部11、21が把持される。
【0073】
ピンチ機構82が所定の設置部11、21を把持した状態で、Y軸アクチュエータ84およびZ軸アクチュエータ83によってピンチ機構82を移動させることで、設置部11、21の移動が行われる。
【0074】
なお、ピンチ機構82の把持様態は、ソレノイドまたはモータなどのアクチュエータを用いて設置部11、21を把持する方法でもよいし、Z軸アクチュエータ83の上下動作と、穴-ピン嵌合との組み合わせによって設置部11、21を把持する方法でもよい。また、ピンチ機構82の把持様態は、他の様態であってもよい。
【0075】
以上が、実施の形態1における移動機構TM1、TM2の構成例であるが、移動機構TM1、TM2は、
図7~
図9の構成例に限定されず、各層のスライドトレイ2を個別にY方向へ移動できる機構であればよい。例えば、他の構成例として、移動機構TM1、TM2が、ベルト-プーリ機構またはボールねじによる駆動機構などのように、その他の機構であってもよい。
【0076】
(実施の形態2)
以下に
図10を用いて、実施の形態2における試料処理システム100について説明する。なお、以下の説明では、実施の形態1との相違点について主に説明し、実施の形態1と重複する点については説明を省略する。
【0077】
図10に示されるように、実施の形態2における試料処理システム100は、カバースリップ封入ユニット50、および、試料を撮影するための撮影機構を備えた画像化ユニット60を更に備える。
【0078】
染色ユニット40において染色された試料が載置されたスライドガラス3は、搬送ユニット30によって、染色ユニット40からカバースリップ封入ユニット50へ搬送される。次に、カバースリップ封入ユニット50において、染色された試料を覆うように、スライドガラス3上にカバースリップが載置される。
【0079】
その後、試料のデジタル画像化が必要でない場合、カバースリップが載置されたスライドガラス3は、搬送ユニット30によって、カバースリップ封入50ユニットからスライドガラス供給収納ユニット1へ搬送される。
【0080】
試料のデジタル画像化が必要である場合、カバースリップが載置されたスライドガラス3は、搬送ユニット30によって、カバースリップ封入ユニット50から画像化ユニット60へ搬送される。次に、撮影機構によって、染色された試料の撮影が行われる。撮影が行われたスライドガラス3は、搬送ユニット30によって、画像化ユニット60からスライドガラス供給収納ユニット1へ搬送される。
【0081】
カバースリップが載置されたスライドガラス3、または、撮影が行われたスライドガラス3は、染色された試料が載置されたスライドガラス3と同様に、搬送ユニット30によって、搬送位置CPに位置するスライドトレイ2へ載置される。その後、スライドガラス3が載置されたスライドトレイ2は、移動機構TM2によって、収納部20へ移動する。この時、搬送位置CPに位置する識別コード4の情報は、識別コードリーダ22によって読み取られる。
【0082】
このように、実施の形態2によれば、カバースリップ封入ユニット50によってスライドガラス3上にカバースリップを載置することができ、画像化ユニット60によって染色された試料が載置されたスライドガラス3の撮影を行うことができる。そして、これらのスライドガラス3をスライドガラス供給収納ユニット1の収納部20に搬送することができる。
【0083】
(実施の形態3)
以下に
図11を用いて、実施の形態3におけるスライドガラス供給収納ユニット1について説明する。なお、以下の説明では、実施の形態1との相違点について主に説明し、実施の形態1と重複する点については説明を省略する。
【0084】
実施の形態1では、複数のスライドトレイ2は、供給部10に設けられた設置部11および収納部20に設けられた設置部21に載置されていた。実施の形態3では、複数のスライドトレイ2は、供給部10および収納部20に直に搭載され、設置部11は、移動機構TM1に設けられ、設置部21は、移動機構TM2に設けられている。
【0085】
すなわち、移動機構TM1(移動機構TM2)は、スライドトレイ2を載置可能な設置部11(設置部21)と、設置部11を搭載し、且つ、設置部11をY方向へ移動させるためのY軸駆動機構91と、Y軸駆動機構91をZ方向へ移動させるためのZ軸駆動機構90とを有する。また、実施の形態3における設置部11(設置部21)には、スライドトレイ2を設置部11(設置部21)に固定させるための固定機構92が設けられている。
【0086】
識別コードリーダ22は、実施の形態1と同様に、収納部20のうちスライドガラス供給収納ユニット1の内部側(Y2方向側)に設けられているが、識別コードリーダ12も、供給部10のうちスライドガラス供給収納ユニット1の内部側(Y2方向側)に設けられている。
【0087】
また、実施の形態3では、供給部10および収納部20に開閉スイッチ13、23が設けられていない。それ故、供給部10へのスライドトレイ2の導入、および、収納部20からのスライドトレイ2の回収は、オペレータの手動によって行われる。
【0088】
所定のスライドトレイ2が、オペレータによって、スライドガラス供給収納ユニット1の外部から供給部10の初期位置に導入された場合、スライドトレイセンサ(図示せず)で所定のスライドトレイを検知し、所定のスライドトレイ2は、移動機構TM1によって、初期位置からスライドガラス供給収納ユニット1の内部へ向かう方向へ移動し、その間に識別コードリーダ12による読み取り動作が行われる。なお、上記スライドトレイセンサは、例えば光学式または接触式の既知のセンサである。所定のスライドトレイ2に載置された全てのスライドガラス3の読み取り動作が完了した後、所定のスライドトレイ2は、移動機構TM1によって、初期位置へ戻される。
【0089】
<スライドトレイの搬送工程>
以下に
図12A~
図12Kを用いて、実施の形態3におけるスライドトレイ2の搬送工程について説明する。
【0090】
図12Aは、読み取り動作を終えた複数のスライドトレイ2が、供給部10に搭載された初期状態を示している。まず、設置部11が、Z軸駆動機構90およびY軸駆動機構91によって、スライドガラス供給収納ユニット1の内部から供給部10の初期位置へ向かう方向へ移動する工程が行われる。
図12Bに示されるように、Y軸駆動機構91が、Z軸駆動機構90によって、Z1方向へ移動し、所定の層のスライドトレイ2の高さまで移動する。
【0091】
次に、
図12Cに示されるように、設置部11が、Y軸駆動機構91によって、スライドガラス供給収納ユニット1の外部へ向かう方向(Y1方向)へ移動し、供給部10の初期位置まで移動する。
【0092】
次に、
図12Dに示されるように、Z軸駆動機構90によって微調整が行われ、Y軸駆動機構91が、Z1方向へ移動し、設置部11が、所定のスライドトレイ2に接触する。
【0093】
次に、
図12Eに示されるように、固定機構92を駆動することで、所定のスライドトレイ2が、固定機構92に挟まれ、設置部11に固定される。すなわち、供給部10に搭載されたスライドトレイ2が、初期位置において設置部11に載置される。
【0094】
次に、
図12Fに示されるように、スライドトレイ2が載置された設置部11は、Y軸駆動機構91によって、初期位置からスライドガラス供給収納ユニット1の内部へ向かう方向(Y2方向)へ移動し、搬送位置CPを含む位置へ移動する。
【0095】
次に、
図12Gに示されるように、スライドトレイ2に載置された複数のスライドガラス3は、搬送ユニット30によって、染色ユニット40へ順次搬送される。例えば、スライドガラス3は、グリッパ機構31の把持部32によって把持された状態で、染色ユニット40へ移動する。なお、把持されたスライドガラス3を搬送ライン93に載置し、搬送ライン93の搬送機構によって、スライドガラス3を染色ユニット40へ移動させてもよい。
【0096】
次に、
図12Hに示されるように、設置部11が、Y軸駆動機構91によって、スライドガラス供給収納ユニット1の外部へ向かう方向(Y1方向)へ移動し、供給部10の初期位置まで移動する。
次に、
図12Iに示されるように、固定機構92を駆動することで、空のスライドトレイ2と設置部11との固定が解除される。
【0097】
次に、
図12Jに示されるように、Z軸駆動機構90によって微調整が行われ、Y軸駆動機構91が、Z2方向へ移動し、設置部11が、スライドトレイ2から離れる。
【0098】
次に、
図12Kに示されるように、空の設置部11は、Y軸駆動機構91によって、初期位置からスライドガラス供給収納ユニット1の内部へ向かう方向(Y2方向)へ移動し、
図12Aの初期状態へ戻る。
以下に、染色工程が完了したスライドガラス3を収納部20に搭載する搬送工程について説明する。
【0099】
まず、Y軸駆動機構91が、Z軸駆動機構90によって、Z1方向へ移動し、所定の層のスライドトレイ2の高さまで移動する。次に、設置部21が、Y軸駆動機構91によって、スライドガラス供給収納ユニット1の外部へ向かう方向(Y1方向)へ移動し、収納部20の初期位置まで移動する。次に、Z軸駆動機構90によって微調整が行われ、Y軸駆動機構91が、Z1方向へ移動し、設置部21が、空のスライドトレイ2に接触する。
【0100】
次に、固定機構92を駆動することで、空のスライドトレイ2が、固定機構92に挟まれ、設置部21に固定される。次に、空のスライドトレイ2が載置された設置部21は、Y軸駆動機構91によって、初期位置からスライドガラス供給収納ユニット1の内部へ向かう方向(Y2方向)へ移動し、搬送位置CPを含む位置へ移動する。次に、染色工程が完了したスライドガラス3が、搬送ユニット30によって、スライドガラス供給収納ユニット1へ搬送され、空のスライドトレイ2の所定の位置に順次載置される。
【0101】
次に、設置部21が、Y軸駆動機構91によって、スライドガラス供給収納ユニット1の外部へ向かう方向(Y1方向)へ移動し、収納部20の初期位置まで移動する。その間に、識別コードリーダ12による読み取り動作が行われる。次に、固定機構92を駆動することで、スライドトレイ2と設置部21との固定が解除される。次に、Z軸駆動機構90によって微調整が行われ、Y軸駆動機構91が、Z2方向へ移動し、設置部21が、スライドトレイ2から離れる。次に、空の設置部21は、Y軸駆動機構91によって、初期位置からスライドガラス供給収納ユニット1の内部へ向かう方向(Y2方向)へ移動する。
【0102】
以上のように、実施の形態3によっても、それぞれ複数のスライドガラス3が載置された複数のスライドトレイ2を同時に搭載可能であり、且つ、所望のスライドトレイ2を自由に搬送できるスライドガラス供給収納ユニット1を提供できる。
【0103】
なお、実施の形態2のようなカバースリップ封入ユニット50および画像化ユニット60を更に有する試料処理システム100に、実施の形態3のスライドガラス供給収納ユニット1を適用することもできる。
【0104】
以上、本発明を上記実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【符号の説明】
【0105】
1 スライドガラス供給収納ユニット
2 スライドトレイ
3 スライドガラス
4 識別コード
10 供給部
11 設置部
12 識別コードリーダ
13 開閉スイッチ
20 収納部
21 設置部
22 識別コードリーダ
23 開閉スイッチ
30 搬送ユニット
31 グリッパ機構
32 把持部
33 Z搬送軸
34 X搬送軸
35 Y搬送軸
40 染色ユニット
41 ディスク
42 試薬供給部
50 カバースリップ封入ユニット
60 画像化ユニット
71 圧縮空気
72 切替弁
73 スピードコントローラ
74 エアシリンダ
75 リニアシャフト
76 リニアブッシュ
77 電動アクチュエータ
78 位置決め部材
79 ラック
80 モータ
81 ピニオン
82 ピンチ機構
83 Z軸アクチュエータ
84 Y軸アクチュエータ
85 待機構造
90 Z軸駆動機構
91 Y軸駆動機構
92 固定機構
93 搬送ライン
100 試料処理システム
CP 搬送位置
TM1、TM2 移動機構