(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】圧力センサモジュール及び圧力センサモジュールを有する分注装置
(51)【国際特許分類】
G01L 19/06 20060101AFI20241021BHJP
G01L 9/00 20060101ALI20241021BHJP
B01J 4/00 20060101ALI20241021BHJP
【FI】
G01L19/06 Z
G01L9/00 303N
B01J4/00 104
(21)【出願番号】P 2023564778
(86)(22)【出願日】2022-10-14
(86)【国際出願番号】 JP2022038290
(87)【国際公開番号】W WO2023100493
(87)【国際公開日】2023-06-08
【審査請求日】2024-03-13
(31)【優先権主張番号】P 2021196152
(32)【優先日】2021-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】金丸 昌敏
(72)【発明者】
【氏名】山崎 達也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 洋一郎
(72)【発明者】
【氏名】高橋 拓也
(72)【発明者】
【氏名】青野 宇紀
【審査官】大森 努
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-278218(JP,A)
【文献】特開昭57-136132(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第2505981(EP,A1)
【文献】特開2005-207898(JP,A)
【文献】特開2000-298071(JP,A)
【文献】特開平2-138841(JP,A)
【文献】特開2014-163936(JP,A)
【文献】特開2012-173041(JP,A)
【文献】特開2000-352538(JP,A)
【文献】特開平9-61274(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 7/00-23/32,27/00-27/02
B01J 4/00
G01N 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路基板の内部に、システム水が流通する流路と、前記流路に接続する円柱状の分岐路と、を有し、前記分岐路の出口部分に、前記分岐路の出口部分を塞ぐように、歪み検出部を搭載した半導体素子を、接合層を介して、前記流路基板に接合した圧力センサモジュールであって、
前記分岐路における前記流路基板の表面、前記分岐路における前記接合層の表面、及び、前記半導体素子における前記歪み検出部が搭載されていない側の表面を覆うように、水分防止膜を有することを特徴とする圧力センサモジュール。
【請求項2】
請求項1に記載する圧力センサモジュールであって、
前記流路に接続し、前記分岐路の形成方向と反対方向に、円柱状の開口部を有し、前記開口部を通して、前記水分防止膜を形成し、前記開口部を封止する封止部材を形成することを特徴とする圧力センサモジュール。
【請求項3】
請求項1に記載する圧力センサモジュールであって、
前記水分防止膜が、有機膜材料と無機膜材料との複合膜、有機膜材料の膜、又は、無機膜材料の膜であることを特徴とする圧力センサモジュール。
【請求項4】
請求項2に記載する圧力センサモジュールであって、
前記封止部材の周囲には、前記封止部材と前記流路基板との間を封止するねじ部及び/又はシール部を有することを特徴とする圧力センサモジュール。
【請求項5】
請求項2に記載する圧力センサモジュールであって、
前記開口部の直径は、前記開口部と前記流路とが連通する部分よりも大きく形成されることを特徴とする圧力センサモジュール。
【請求項6】
請求項2に記載する圧力センサモジュールであって、
前記開口部と前記流路とが連通する部分は、前記分岐路の直径よりも大きく形成されることを特徴とする圧力センサモジュール。
【請求項7】
請求項2に記載する圧力センサモジュールであって、
前記封止部材は、前記開口部と前記流路とが連通する部分を埋める凸部を有することを特徴とする圧力センサモジュール。
【請求項8】
システム水が流通する流路に接続する円柱状の分岐路が形成され、前記分岐路の出口部分に、前記分岐路の出口部分を塞ぐように、歪み検出部を搭載した半導体素子が、接合層を介して実装され、前記分岐路の表面、前記接合層の表面、及び、前記半導体素子における前記歪み検出部が搭載されていない側の表面を覆うように、水分防止膜が形成される第1の流路基板を、内部に前記流路が形成される第2の流路基板に、嵌合することを特徴とする圧力センサモジュール。
【請求項9】
請求項1に記載する圧力センサモジュールを有する分注装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力センサモジュール及び圧力センサモジュールを有する分注装置に関し、特に、ピエゾ抵抗型半導体素子を使用する圧力センサモジュール及びこの圧力センサモジュールを有する分注装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な圧力センサは、シリコン材料又はセラミックス材料などの非導電性材料からなるダイヤフラムの上に、圧力検出素子が形成(接着)され、液体又は気体の外部圧力により、ダイヤフラムが変形する。そして、圧力センサは、ダイヤフラムの変化量を、ホイートストンブリッチ回路などを使用し、抵抗値の変化として電気的に測定し、抵抗値の変化を圧力値の変化に変換し、外部圧力を測定する。
【0003】
特に、半導体基板の一部に形成されるダイヤフラムは、圧力検出素子が形成される半導体基板の裏面を、シリコンの異方性エッチング法又はドライエッチング法により薄膜化し、形成される。
【0004】
半導体基板の一部をエッチングすることにより、一定の測定面積を確保し、圧力検出素子が形成される半導体基板の裏面は、任意の厚さまで薄く加工される。このように、半導体基板の一部を薄膜化し、ダイヤフラムを形成することにより、外部圧力の印加に対して、ダイヤフラムは容易に変形する。
【0005】
こうした技術分野における背景技術として、例えば、特開2018-115944号公報(特許文献1)や特開2018-072106号公報(特許文献2)がある。
【0006】
特許文献1には、センサチップを第1の半導体基板と第2の半導体基板とにより構成し、第1の半導体基板の一方の面に歪みゲージ及び温度検出用の温度センサを形成し、耐食性の保護膜によりこれらを覆い、保護膜を接液部として露出させた状態で、センサチップをパッケージに収容し、温度センサが測定する被測定流体の温度に基づいて、高温の被測定流体による急激な温度の変化を熱衝撃として検知し、出力を補正する圧力センサが記載されている(要約参照)。
【0007】
特許文献2には、流体の圧力を測定する圧力検出面を有する圧力センサと、圧力検出面に流体を導入する流路が内部に形成される流路ユニットと、を有し、流路ユニットが、流路が内部に形成される流路本体と圧力センサに接触した状態で設置されるアースリングとを有し、アースリングが、フッ素樹脂材料とフッ素樹脂材料に分散した導電性材料とを含有する導電性フッ素樹脂材料により形成されると共に接地電位に維持される圧力検出装置が記載されている(要約参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2018-115944号公報
【文献】特開2018-072106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1には、ダイヤフラムにシリコン材料が使用されている圧力センサが記載されている。また、特許文献2には、ダイヤフラムにサファイアやセラミックスが使用されている圧力検出装置が記載されている。
【0010】
しかし、特許文献1には、パッケージとセンサチップとを接合する接合層の強度を維持し、圧力センサの信頼性を確保することは記載されていない。また、特許文献2には、流路本体と圧力センサとを接合する接合層の強度を維持し、圧力検出装置の信頼性を確保することは記載されていない。
【0011】
そこで、本発明は、流路基板と歪み検出部を搭載した半導体素子とを接合する接合層の強度を維持し、信頼性が高い圧力センサモジュール及びこの圧力センサモジュールを搭載した分注装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記した課題を解決するため、本発明の圧力センサモジュールは、流路基板の内部に、システム水が流通する流路と、流路に接続する分岐路と、を有し、分岐路の出口部分に、分岐路の出口部分を塞ぐように、歪み検出部を搭載した半導体素子を、接合層を介して、流路基板に接合した圧力センサモジュールであって、分岐路における流路基板の表面、分岐路における接合層の表面、及び、半導体素子における歪み検出部が搭載されていない側の表面を覆うように、水分防止膜を有することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の分注装置は、上記した圧力センサモジュールを有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、流路基板と歪み検出部を搭載した半導体素子とを接合する接合層の強度を維持し、信頼性が高い圧力センサモジュール及びこの圧力センサモジュールを搭載した分注装置を提供することができる。
【0015】
上記した以外の課題、構成及び効果は、下記する実施例の説明により、明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施例1に係る分注装置1の基本構成を説明する説明図である。
【
図2】実施例1に係る分注アーム16における配管8の内部の状態を説明する説明図である。
【
図3A】実施例1に係る圧力センサモジュール15を説明する斜視図である。
【
図3B】実施例1に係る圧力センサモジュール15を説明する断面図である。
【
図4】実施例1に係る圧力センサモジュール15の水分防止膜18を形成する製造プロセス(a)工程、(b)工程、(c)工程を説明する断面図である。
【
図5】実施例1に係る圧力センサモジュール15の水分防止膜18(無機膜材料)を形成する製造プロセス(a)工程、(b)工程を説明する断面図である。
【
図6A】実施例1に係る他の圧力センサモジュール15を説明する断面図である。
【
図6B】実施例1に係る他の圧力センサモジュール15の封止部材19bを説明する斜視図である。
【
図7】実施例1に係る圧力センサモジュール15の水分防止膜18の複合膜を説明する拡大断面図である。
【
図8】実施例1に係るフレキシブル基板41を有する圧力センサモジュール15を説明する斜視図である。
【
図9】実施例2に係る圧力センサモジュール15の製造プロセス(a)工程、(b)工程、(c)工程、(d)工程を説明する断面図である。
【
図10】実施例3に係る圧力センサモジュール15の製造プロセス(a)工程、(b)工程、(c)工程を説明する断面図である。
【
図11】実施例4に係る圧力センサモジュール15の製造プロセス(a)工程、(b)工程、(c)工程を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施例を、図面を使用し、説明する。なお、各図面において、実質的に同一又は類似の構成には、同一の符号を使用し、説明する場合がある。また、各図面において、構成の説明が重複する場合には、重複する説明を省略する場合がある。
【実施例1】
【0018】
先ず、実施例1に係る分注装置1の基本構成を説明する。
【0019】
図1は、実施例1に係る分注装置1の基本構成を説明する説明図である。
【0020】
分注装置1は、サンプルなどの液体(被測定流体)22を吸引又は吐出するノズル2と、液体22の吸引又は吐出を調整するシリンジポンプ4と、ノズル2とシリンジポンプ4とを接続する配管8と、電磁弁5と、ギアポンプ6と、システム水21を貯留するタンク7と、を有する。
【0021】
シリンジポンプ4は、システム水21が供給される容器9と、容器9のシステム水21を押し出す又は引き入れるプランジャ10と、プランジャ10を移動させるボールねじ11と、ボールねじ11を駆動するモータ12と、を有する。
【0022】
配管8は、容器9とノズル2とを接続し、ノズル2は、配管8を流動するシステム水21により、液体22を吸引又は吐出する。
【0023】
また、分注装置1は、電磁弁5と、ギアポンプ6と、モータ12と、分注機構13に設置される2つのモータ13aと、を制御する制御基板14を有する。つまり、ノズル2による液体22の吸引又は吐出は、制御基板14により、制御される。
【0024】
また、分注装置1は、ノズル2が液体22を吸引又は吐出する位置に、ノズル2を移動する分注アーム16を有する。分注アーム16の一端には、ノズル2が設置され、分注アーム16の他端には、分注機構13が設置される。分注アーム16は、ノズル2を移動させるため、分注機構13に設置される2つのモータ13aにより、回転動作と上下動作とが可能である。
【0025】
そして、分注アーム16は、その内部に、圧力センサモジュール15を有する。
【0026】
次に、実施例1に係る分注アーム16における配管8の内部の状態を説明する。
【0027】
図2は、実施例1に係る分注アーム16における配管8の内部の状態を説明する説明図である。なお、
図2は、液体22の吸引直後の又は液体22の吐出直前の、配管8の内部の状態を示す。
【0028】
配管8の内部は、シリンジ圧力伝達用のシステム水21により、満たされている。シリンジポンプ4を使用し、システム水21を介して、シリンジ圧力を伝達することにより、ノズル2から液体22を吸引又は吐出することができる。
【0029】
ノズル2から液体22を吸引する場合は、電磁弁5を閉にした状態で、プランジャ10を容器9の内部に引き入れる。一方、ノズル2から液体22を吐出する場合は、電磁弁5を閉にした状態で、プランジャ10を容器9の内部に押し出す。
【0030】
なお、液体22を吸引する場合は、液体22が配管8の内部で、液体22とシステム水21とが混ざらないように、ノズル2により、液体22とシステム水21とを分節するための分節空気23を吸引した後に、液体22を吸引する。
【0031】
また、ノズル2から液体22を吐出した後には、ノズル2を洗浄する。ノズル2を洗浄する場合には、ノズル2の外壁に洗浄水を流すと同時に、ノズル2からシステム水21を押し出す。ノズル2の洗浄時にノズル2からシステム水21を押し出す場合には、電磁弁5を開にした状態で、ギアポンプ6の圧力を使用し、ノズル2からシステム水21を押し出す。つまり、電磁弁5とギアポンプ6とは、ノズル2を洗浄する場合に、使用される。なお、ノズル2を洗浄する場合には、プランジャ10によりシステム水21を押し出す場合よりも高い圧力で、システム水21を押し出す。
【0032】
また、分注アーム16の内部に設置され、分注アーム16の内部に設置される配管8に連通して設置される圧力センサモジュール15は、分注動作中に発生する恐れがあるノズル2の詰まりや空吸いなどの異常を高精度に検知する。圧力センサモジュール15は、システム水21の圧力変化をモニタリングし、ノズル2の詰まりや空吸いなどの異常時に発生するシステム水21の圧力変化を高精度に検知する。
【0033】
実施例1では、ノズル2の異常、つまり、ノズル2の異常によるシステム水21の圧力変化を敏感に、高精度に検知するため、ノズル2に最も近い位置に設置される分注アーム16の内部に、圧力センサモジュール15を設置する。但し、圧力センサモジュール15の設置位置は、分注アーム16の内部に限定されない。例えば、圧力センサモジュール15を、分注機構13の内部に設置される配管8に連通して設置してもよい。
【0034】
次に、実施例1に係る圧力センサモジュール15を説明する。
【0035】
図3Aは、実施例1に係る圧力センサモジュール15を説明する斜視図であり、
図3Bは、実施例1に係る圧力センサモジュール15を説明する断面図である。
【0036】
ここで、説明の都合上、圧力センサモジュール15は、長辺方向(配管8の形成方向や流路33の形成方向)をY方向、短辺方向をX方向、高さ方向をZ方向とする。
【0037】
圧力センサモジュール15は、その内部にシステム水21が流通する円柱状(鉛直方向の断面形状が円形)の流路33が形成される流路基板25を有する。なお、流路基板25は、ステンレス鋼が好ましく、耐食性の高い材料であれば、例えば、アルミニウム、チタンなどの金属材料を使用してもよく、また、例えば、アクリルなどの樹脂材料を使用してもよい。
【0038】
流路33には、流路入口33a(例えば、ノズル2側)及び流路出口33b(例えば、分注機構13側)が形成され、流路入口33a及び流路出口33bには、それぞれネジ部(図示なし)が形成される。そして、流路入口33a及び流路出口33bは、それぞれネジ部に接続される継手(図示なし)を介して、配管8と接続する。
【0039】
また、流路基板25の内部には、流路33に接続し、流路基板25の外面(Z方向:実施例1では上方向)に向かって分岐する円柱状(流路33の直径と同等又は流路33の直径よりも大きい直径の円柱状)の分岐路34が形成される。なお、分岐路34は、水平方向の断面形状が円形であることが好ましく、水平方向の断面形状が楕円形であってもよい。
【0040】
そして、分岐路34の終端部(実施例1では上端部)には、分岐路34を塞ぐようにピエゾ抵抗型半導体素子3が設置される。ピエゾ抵抗型半導体素子3は、流路基板25に、ピエゾ抵抗型半導体素子3と流路基板25とを接合する接合層32を介して、接合(接着、実装、設置と表現される場合もある)する。なお、ピエゾ抵抗型半導体素子3に換えて、歪みゲージや圧電素子などを使用してもよい。
【0041】
ここで、ピエゾ抵抗型半導体素子3は、微小な圧力変化により変形するダイヤフラムを有し、ダイヤフラムの上に形成され、微小な圧力変化を検出する歪み検出部(所謂、ピエゾ抵抗型半導体素子であり、圧力検出素子や圧力センシング部と呼称する場合もある)を搭載した薄膜の半導体素子である。
【0042】
つまり、圧力センサモジュール15は、流路基板25の内部に、システム水21が流通し、水平方向に形成される円柱状の流路33と、流路33に接続する(流路33から鉛直方向であって、上方向に分岐する)円柱状の分岐路34と、を有し、分岐路34の出口部分(終端部)の流路基板25に、分岐路34の出口部分を塞ぐように、ピエゾ抵抗型半導体素子3を、接合層32を介して、接合する。
【0043】
なお、接合層32には、銀ペースト(接着剤)、シリコン系接着剤、エポキシ系接着剤、熱拡散接合剤(接着剤)、熱硬化型接着剤、UV付加型接着剤、低融点ガラス(接着剤)などの接着材料が使用される。また、接合層32の厚さは、10~70μmが好ましく、特に、20~40μmが好ましい。
【0044】
また、圧力センサモジュール15は、分岐路34の内面、接合層32の内面、及び、ピエゾ抵抗型半導体素子3の裏面には、分岐路34の内面、接合層32の内面、及び、ピエゾ抵抗型半導体素子3の裏面を覆うように、つまり、これらとシステム水21と隔離するように、システム水21の侵入を防止する水分防止膜18が形成される。
【0045】
なお、分岐路34の内面とは、分岐路34における流路基板25の表面(分岐路34の表面)であって、システム水21に接する側の面であり、接合層32の内面とは、分岐路34における接合層32の表面であって、システム水21に接する側の面であり、ピエゾ抵抗型半導体素子3の裏面とは、ダイヤフラムの表面(半導体素子における歪み検出部が搭載されていない側の表面)であって、システム水21に接する側の面である。
【0046】
なお、水分防止膜18は、有機膜材料と無機膜材料との複合膜、有機膜材料のみの単層膜若しくは多層膜、又は、無機膜材料のみの単層膜若しくは多層膜により、形成される。
また、水分防止膜には、水分防止コート剤などの有機膜材料や金属などの無機膜材料を使用することができる。
【0047】
また、接合層32の内面に形成される水分防止膜18は、分岐路34の内面及びピエゾ抵抗型半導体素子3の裏面に形成される水分防止膜18よりも、厚く形成されることが好ましい。
【0048】
このように、分岐路34の内面、接合層32の内面、及び、ピエゾ抵抗型半導体素子3の裏面を覆うように水分防止膜18を形成することにより、システム水21(液体22の場合もある)から、システム水21と直接的に接する接合層32を保護し、システム水21の水分子の、接合層32の内部、又は、接合層32とピエゾ抵抗型半導体素子3若しくは流路基板25との接合界面への侵入を防止することができる。
【0049】
そして、これにより、流路基板25とピエゾ抵抗型半導体素子3とを接合する接合層32の膨潤、流路基板25又はピエゾ抵抗型半導体素子3からの接合層32の剥離、接合層32の変質などを防止し、接合層32の強度を維持し、圧力センサモジュール15の信頼性を向上させることができる。
【0050】
また、システム水21の圧力変化の測定は繰り返し実施されるため、圧力センサモジュール15を長期間使用する場合には、システム水21の水分子が、接合層32の内部、又は、接合層32とピエゾ抵抗型半導体素子3若しくは流路基板25との接合界面へ侵入し、接合層32の材料の応力変化や接合層32の接合強度の低下を引き起こす恐れがあった。
【0051】
そこで、システム水21との接触を防止する水分防止膜18を、特に、システム水21に接する接合層32の内面に形成することにより、圧力センサモジュール15を長期間使用することができる。
【0052】
また、流路基板25の内部には、流路33に接続し、分岐路34に対向する位置に、流路基板25の外面(Z方向:実施例1では下方向)に向かって分岐する、水平方向の断面形状が長方形(X方向よりもY方向に長い長方形であり、X方向の幅は分岐路34のX方向の幅以上)である、四角柱形状の空間が形成される。
【0053】
また、この四角柱形状の空間は、円柱状の空間(説明の都合上、「第1の円柱状の空間」と呼称する)であってもよい。つまり、第1の円柱状の空間は、流路基板25の内部に形成され、流路33に接続し、分岐路34に対向する位置に、流路基板25の外面(Z方向:実施例1では下方向)に向かって分岐する、水平方向の断面形状が円形の空間である。なお、第1の円柱状の空間の水平方向の円形の直径は、分岐路34の水平方向の円形の直径よりも、大きい。
【0054】
更に、流路基板25の内部には、四角柱形状の空間又は第1の円柱状の空間に連通し、分岐路34の反対方向(実施例1では下方向)に向かって、円柱状の空間(説明の都合上、「第2の円柱状の空間」と呼称する)が形成される。なお、第2の円柱状の空間は、水平方向の断面形状が円形の空間であり、この円形の直径は、四角柱形状の長方形のY方向長さや第1の円柱状の空間の円形の直径よりも、大きい。
【0055】
なお、四角柱形状の空間又は第1の円柱状の空間は、第2の円柱状の空間(
図3の説明においては、「円柱状の空間」と呼称する場合がある。そして、
図4以降の説明においては、円柱状の空間20又は円柱状の空間20aに相当する。)と流路33とが連通する部分に相当する。
【0056】
そして、円柱状の空間には、流路33と流路基板25の外側との間を封止する、つまり、円柱状の空間を封止する(円柱状の空間を塞ぐ又は埋める)円柱状の封止部材19が形成される。なお、封止部材19には、流路基板25と同等の材料を使用する。
【0057】
なお、円柱状の空間の内面(円柱状の空間の側面)には、ねじ部36が形成され、封止部材19の周囲(外面)にも、ねじ部36が形成される。そして、封止部材19は、流路基板25に、嵌合する。つまり、封止部材19の周囲に形成されるねじ部36と円柱状の空間の内面に形成されるねじ部36とが嵌合する。
【0058】
また、封止部材19の周囲には、封止部材19と流路基板25との間をシール(封止)するシール部17が形成される。ここで、シール部17は、封止部材19の周囲に形成されるねじ部36に形成され、ポリテトラフルオロエチレン材料からなるシールテープである。また、シール部17には、その他のシール材料や接着剤が使用される。
【0059】
このように、ねじ部36やシール部17により、封止部材19の周囲、つまり、円柱状の空間の内面と封止部材19の周囲との間隙を封止する。これにより、システム水21の漏洩を防止することができる。
【0060】
また、ピエゾ抵抗型半導体素子3は、流路33を流通するシステム水21の圧力変化により、ダイヤフラムがたわみ(歪み)変形する。そして、ダイヤフラムのたわみ(歪み)変形による抵抗値の変化を電気的に測定し、抵抗値の変化を圧力値の変化に変換し、流路33を流通するシステム水21の圧力を測定する。
【0061】
つまり、ピエゾ抵抗型半導体素子3は、例えば、シリコン材料からなるダイヤフラムの上に、圧力変化を検出する歪み検出部が形成(接着)され、流路33を流通するシステム水21の圧力変化により、ダイヤフラムが変形する。そして、ピエゾ抵抗型半導体素子3は、ダイヤフラムの変化量を、例えば、ホイートストンブリッチ回路などを使用し、抵抗値の変化として電気的に測定し、抵抗値の変化を圧力値の変化に変換し、流路33を流通するシステム水21の圧力を測定する。
【0062】
なお、ダイヤフラムの厚さは、例えば、10~50μmが好ましく、特に、10~30μmが好ましい。ダイヤフラムの厚さを薄くすることにより、システム水21の微小な圧力変化に対して、変形領域(変形範囲)を大きくすることができ、システム水21の圧力の測定精度を向上させることができる。
【0063】
なお、ダイヤフラムの薄膜化加工には、エッチング加工及び研削加工などを使用することができる。
【0064】
また、薄膜化したダイヤフラムの表面に、薄膜の絶縁物を形成することが好ましい。これにより、ダイヤフラムの薄膜化加工により、ダイヤフラムを薄く加工した場合であっても、ピエゾ抵抗型半導体素子3の構造又はダイヤフラムの電気伝導度に起因して発生する電気的リークを防止することができる。
【0065】
また、ピエゾ抵抗型半導体素子3の表面又は/及び流路基板25の表面に、薄膜の金属膜を形成することが好ましい。これにより、接合層32に使用する接着材料とピエゾ抵抗型半導体素子3又は流路基板25との密着性を向上させることができる。
【0066】
次に、実施例1に係る圧力センサモジュール15の水分防止膜18を形成する製造プロセスを説明する。
【0067】
図4は、実施例1に係る圧力センサモジュール15の水分防止膜18を形成する製造プロセス(a)工程、(b)工程、(c)工程を説明する断面図である。なお、断面図の左右方向はY方向(長辺方向)、断面図の上下方向はZ方向(高さ方向)、を示す。
【0068】
図4(a)に示すように、先ず、流路基板25を加工する。流路基板25に、Y方向(水平方向)に円柱状の流路33を形成する。その後、流路基板25に、Z方向に上面側から、流路33に接続するように、流路33の上側であって、鉛直方向に、円柱状の分岐路34を形成する。その後、流路基板25に、Z方向に下面側から、流路33に接続するように、流路33の下側であって、鉛直方向に、円柱状の空間(開口部)20を形成する。つまり、円柱状の空間20は、分岐路34の形成方向と反対方向に、形成される。
【0069】
ここで、円柱状の空間20の直径X3は、円柱状の空間20と流路33とが連通する部分(四角柱形状の長方形のY方向長さや第1の円柱状の空間の円形の直径)よりも大きく形成される。つまり、円柱状の空間20と流路33とが連通する部分には、その一部分に円柱状の空間20の内側に突起する突起部26が形成される。このように、円柱状の空間20の直径X3は、突起部26間の幅寸法X2よりも大きい。
【0070】
また、円柱状の空間20と流路33とが連通する部分、つまり、突起部26間の幅寸法X2は、分岐路34の直径X1よりも大きく形成される。
【0071】
これにより、水分防止膜18を形成する場合に影となる部分がなく、水分防止膜18を容易に形成することができる。
【0072】
次に、円柱状の空間20の内面には、ねじ部36が形成される。
【0073】
そして、流路基板25に、接合層32を介して、分岐路34を塞ぐように、ピエゾ抵抗型半導体素子3を接合する。
【0074】
図4(b)に示すように、矢印35の方向から、円柱状の空間20を介して、水分防止膜18を形成する。矢印35の方向から水分防止膜18を形成することにより、分岐路34の内面、接合層32の内面、及び、ピエゾ抵抗型半導体素子3の裏面を覆うように、水分防止膜18を形成することができる。
【0075】
なお、水分防止膜18は、例えば、水分防止コート剤などの有機膜材料を、スプレー塗布することにより、形成する。スプレー塗布することにより、水分防止膜18を均一に形成することができる。そして、水分防止膜18の厚さは、ダイヤフラムの機能も阻害しないように、10~30μmが好ましい。
【0076】
そして、特に、水分防止コート剤は、表面張力の影響により、角部に厚く残存しやすい。このため、水分防止膜18に水分防止コート剤を使用することにより、接合層32の内面に形成される水分防止膜18を、つまり、角部(接合層32の周辺)に形成される水分防止膜18を、分岐路34の内面やピエゾ抵抗型半導体素子3の裏面に形成される水分防止膜18よりも、5~10μm程度、厚く形成することができる。
【0077】
これにより、システム水21の水分子の、接合層32の内部、又は、接合層32とピエゾ抵抗型半導体素子3若しくは流路基板25との接合界面への侵入を防止することができる。
【0078】
図4(c)に示すように、円柱状の空間20に円柱状の封止部材19を設置する。これにより、圧力センサモジュール15が完成する。
【0079】
このように、実施例1では、流路基板25に、下面側(ピエゾ抵抗型半導体素子3が設置される面とは反対側の面側)から、円柱状の空間20を形成する。そして、円柱状の空間20を介して、水分防止膜18を形成する。その後、円柱状の空間20を封止部材19により塞ぐ。これにより、容易に水分防止膜18を形成することができる。
【0080】
<変形例1>
次に、実施例1に係る圧力センサモジュール15の水分防止膜18(無機膜材料)を形成する製造プロセスを説明する
図5は、実施例1に係る圧力センサモジュール15の水分防止膜18(無機膜材料)を形成する製造プロセス(a)工程、(b)工程を説明する断面図である。なお、断面図の左右方向はY方向(長辺方向)、断面図の上下方向はZ方向(高さ方向)、を示す。
【0081】
図5(a)に示すように、矢印35の方向から、円柱状の空間20を介して、無機膜材料からなる水分防止膜18bを形成する。
【0082】
無機膜材料は、金属などであり、スパッタリング装置により形成される。スパッタリング装置を使用し、水分防止膜18bを形成する場合には、分岐路34の内面、接合層32の内面、及び、ピエゾ抵抗型半導体素子3の裏面を覆うように、均一な膜厚の水分防止膜18を形成することができる。
【0083】
また、無機膜材料は、ダイヤフラムと同材質の材料(例えば、シリコンなど)であることが好ましい。無機膜材料に、ダイヤフラムと同材質の材料を使用することにより、ダイヤフラムと水分防止膜18bとが同じヤング率となり、ダイヤフラムの機能を維持することができる。また、繰り返し応力によるダイヤフラムからの水分防止膜18の剥離も防止することができる。なお、水分防止膜18bの膜厚を予め考慮し、水分防止膜18bの膜厚分、ダイヤフラムの膜厚を薄く形成することが好ましい。
【0084】
また、無機膜材料として、シリコンナイトライドを使用することもできる。シリコンナイトライドを使用する場合には、シリコンナイトライドはヤング率が大きいため、水分防止膜18bの膜厚を、200~800nmとすることが好ましい。また、無機膜材料として、水分防止効果を有するアルミニウムを使用することもできる。なお、水分防止効果を有する材料であれば、その他の材料を使用することもできる。
【0085】
なお、分岐路34の内面は、立体角の影響により、接合層32の内面やピエゾ抵抗型半導体素子3の裏面に比較し、スパッタ膜である水分防止膜18bの膜厚が薄く形成される。しかし、接合層32の周辺には、十分な水分防止膜18bが形成されるため、水分防止膜18bは、システム水21の水分子の、接合層32の内部、又は、接合層32とピエゾ抵抗型半導体素子3若しくは流路基板25との接合界面への侵入を防止することができる。
【0086】
なお、水分防止膜18bの形成は、スパッタリング装置に限定されず、無機膜材料を形成することができる装置であればよく、例えば、蒸着装置、電子ビームスパッタ装置なども使用することができる。
【0087】
また、水分防止膜18bは、分岐路34の周囲の流路33の一部や突起部26の一部にも形成されるが、流路基板25の機能的には問題はない。
【0088】
また、流路基板25の下側外面の表面には、マスク38が形成され、水分防止膜18bが形成された後に、マスク38は除去される。このため、流路基板25の下側外面の表面には、水分防止膜18bは形成されない。
【0089】
図5(b)に示すように、円柱状の空間20a(ねじ部なし)に、円柱状の封止部材19a(ねじ部なし)を設置する。そして、封止部材19aの周囲(封止部材19aと流路基板25との間)を、接着剤17aを使用し、封止(シール)する。これにより、圧力センサモジュール15が完成する。
【0090】
なお、円柱状の空間20aの内面と封止部材19aの周囲との間隙は、100~200μmであることが好ましい。これにより、この間隙に接着剤17aを適切に挿入することができ、システム水21の漏洩を適切に防止することができる。なお、接着剤17aには、シリコン系接着剤やエポキシ系接着剤などを使用することができる。
【0091】
<変形例2>
次に、実施例1に係る他の圧力センサモジュール15を説明する。
【0092】
図6Aは、実施例1に係る他の圧力センサモジュール15を説明する断面図である。
【0093】
図3B及び
図4(c)、又は、
図5(b)に記載される圧力センサモジュール15は、円柱状の空間20又は円柱状の空間20aと流路33とが連通する部分には、その一部分に段差部が形成される。
【0094】
そこで、
図6Aに示すように、この段差部が形成されない封止部材19bを設置することが好ましい。これにより、システム水21の漏洩を防止すると共に、この段差部にシステム水21が接触することによる気泡の発生を防止することができる。
【0095】
封止部材19bは、円柱状の封止部材19の上に、四角柱形状の空間又は第1の円柱状の空間に相当し(嵌まり)、四角柱形状の空間又は第1の円柱状の空間を埋める凸部29を有する。
【0096】
封止部材19bの凸部29が、四角柱形状の場合には、X方向の幅は四角柱形状の空間のX方向の幅であり、Y方向の幅は四角柱形状の空間のX方向の幅(突起部26間の幅寸法X2)であり、Z方向の高さは四角柱形状の空間のZ方向の高さである。
【0097】
また、封止部材19bの凸部29が、円柱状の場合には、直径は第1の円柱状の空間の直径であり、Z方向の高さは第1の円柱状の空間のZ方向の高さである。
【0098】
次に、実施例1に係る他の圧力センサモジュール15の封止部材19bを説明する。
【0099】
図6Bは、実施例1に係る他の圧力センサモジュール15の封止部材19bを説明する斜視図である。
【0100】
封止部材19bの凸部29以外の部分は、封止部材19と同様である。封止部材19bの凸部29は、下端が平面形状に形成され、上端がアール形状39に形成される。このアール形状39は、円柱状の流路33の曲率と同等の曲率で凹状に形成される。そして、封止部材19bの凸部29は、アール形状39が流路33と同一方向(Y方向)になるように設置される。これにより、円柱状の空間20又は円柱状の空間20aと流路33とが連通する部分に形成される段差部を解消することができる。
【0101】
<変形例3>
次に、実施例1に係る圧力センサモジュール15の水分防止膜18の複合膜を説明する。
【0102】
図7は、実施例1に係る圧力センサモジュール15の水分防止膜18の複合膜を説明する拡大断面図である。
【0103】
分岐路34の出口部分には、ピエゾ抵抗型半導体素子3が、分岐路34を塞ぐように、流路基板25に、接合層32を介して、接合される。そして、水分防止膜18が、分岐路34の内面、接合層32の内面、及び、ピエゾ抵抗型半導体素子3の裏面を覆うように形成される。なお、水分防止膜18は、複合膜や多層膜として、形成することができる。
【0104】
特に、ピエゾ抵抗半導体素子3と流路基板25とを接合する接合層32の内面、及び、接合層32とピエゾ抵抗型半導体素子3又は流路基板25との接合界面への、システム水21の水分子の侵入を防止するため、つまり、接合層32の内面及び接合層32の接合界面への、システム水21の水分子の侵入を防止するため、システム水21を透過させない水分防止膜18を形成する。
【0105】
そこで、接合層32の内面及び接合層32の接合界面を覆うように、第1の水分防止膜18cを形成し、更に、第1の水分防止膜18cの表面(システム水21に接する面)、分岐路34の内面、ピエゾ抵抗型半導体素子3の裏面を覆うように、第2の水分防止膜18dを形成する。
【0106】
なお、第1の水分防止膜18c及び第2の水分防止膜18dは、有機膜材料と無機膜材料との複合膜、有機膜材料のみの単層膜若しくは多層膜、又は、無機膜材料のみの単層膜若しくは多層膜により、形成される。
【0107】
また、ここでは、接合層32の内面及び接合層32の接合界面を覆うように、第1の水分防止膜18cを形成するが、第1の水分防止膜18cを、分岐路34の内面、接合層32の内面、及び、ピエゾ抵抗型半導体素子3の裏面を覆うように形成し、更に、その上の全面に、第2の水分防止膜18dを形成してもよい。
【0108】
なお、ピエゾ抵抗型半導体素子3の裏面を覆うように形成される水分防止膜18(第2の水分防止膜18dや第1の水分防止膜18c及び第2の水分防止膜18d)は、ダイヤフラムの機能を阻害しないように、それぞれ薄く(例えば、3~9μm)形成することが好ましい。このため、水分防止膜18(第2の水分防止膜18dや第1の水分防止膜18c及び第2の水分防止膜18d)に、数100μm程度と厚いポリテトラフルオロエチレンシートを使用することはできない。
【0109】
<変形例4>
次に、実施例1に係るフレキシブル基板41を有する圧力センサモジュール15を説明する。
【0110】
図8は、実施例1に係るフレキシブル基板41を有する圧力センサモジュール15を説明する斜視図である。
【0111】
圧力センサモジュール15は、ピエゾ抵抗型半導体素子3に接続する電気的配線を有する。ピエゾ抵抗型半導体素子3には、複数箇所に電極パッド42bが形成され、電気的配線用のフレキシブル基板41にも、複数個所に電極パッド42aが形成される。そして、電極パッド42aと電極パッド42bとは、ワイヤ43により、接続される。
【0112】
ワイヤ43には、金ワイヤ又はアルミニウムワイヤを使用する。また、電極パッド42aと電極パッド42bとの接続には、異方性導電膜(ACF:Anisotropic Conductive Film)などを使用してもよい。
【0113】
システム水21は、流路33に流通し、分岐路34に流入する。そして、分岐路34に流入したシステム水21の圧力変化により、ピエゾ抵抗型半導体素子3に圧力が印加される。ピエゾ抵抗型半導体素子3は、圧力が印加されることにより、変形する。そして、フレキシブル基板41は、ピエゾ抵抗型半導体素子3の変形を、電気信号として検出し、流路33を流通するシステム水21の圧力を測定する。
【0114】
このように、実施例1によれば、流路基板25とピエゾ抵抗型半導体素子3とを接合する接合層32の強度を維持し、信頼性が高い圧力センサモジュール15を提供することができる。
【0115】
また、実施例1によれば、圧力センサモジュール15は、部品点数も少なく、単純な構造であるため、小型化することが容易であり、小型であるため、圧力センサモジュール15を、ノズル2の近傍、例えば、分注アーム16の内部に設置することができる。
【0116】
そして、圧力センサモジュール15を、ノズル2の近傍に設置することができるため、液体22の吸引又は吐出の微小な圧力変化を測定することができ、信頼性が高く、分注量を高精度に推定し、分注異常を高精度に検出する、高精度な分注装置1を提供することができる。
【0117】
そして、実施例1によれば、ピエゾ抵抗型半導体素子3を、分岐路34の出口部分に、直接、設置することができるため、流路33とピエゾ抵抗型半導体素子3との間の距離が3~5mmと短く、流路33を流通するシステム水21の圧力変化を高精度に、かつ、高速に検出することができる。
【実施例2】
【0118】
次に、実施例2に係る圧力センサモジュール15の製造プロセスを説明する。
【0119】
図9は、実施例2に係る圧力センサモジュール15の製造プロセス(a)工程、(b)工程、(c)工程、(d)工程を説明する断面図である。なお、断面図の左右方向はY方向(長辺方向)、断面図の上下方向はZ方向(高さ方向)、を示す。
【0120】
実施例1では、水分防止膜18を、流路33の下側に形成される円柱状の空間20を介して、流路基板25の下面側から形成する。一方、実施例2では、流路基板25の一部(ピエゾ抵抗型半導体素子3が設置される周辺の流路基板25)を部分的に形成し、水分防止膜18を形成する。
【0121】
図9(a)に示すように、流路33よりも上側の部材となる、ドーナツ状(リング状)の流路基板25a(第1の流路基板)を形成する。つまり、中央に、流路基板25aを貫通する円柱状の分岐路34が形成される、円柱状の流路基板25aを形成する。そして、流路基板25aの外周部にねじ部36を形成する。
【0122】
次に、ピエゾ抵抗型半導体素子3を、分岐路34を塞ぐように、接合層32を介して、流路基板25aの表面側に、接合する。
【0123】
図9(b)に示すように、流路基板25aの裏面側から水分防止膜18を形成する。なお、水分防止膜18は、スプレー塗布やスパッタリングにより形成される。また、水分防止膜18には、有機膜や無機膜の単層膜又は複合膜、有機膜と無機膜との複合膜を使用する。
【0124】
つまり、流路基板25aには、流路33に接続する分岐路34が形成され、分岐路34の出口部分に、分岐路34の出口部分を塞ぐように、歪み検出部を搭載した半導体素子が、接合層32を介して、接合され、分岐路34の表面、接合層32の表面、及び、半導体素子における歪み検出部が搭載されていない側の表面を覆うように、水分防止膜18が形成される。
【0125】
図9(c)に示すように、流路基板25b(第2の流路基板)を形成する。流路基板25bには、内部に流路33が形成され、その上側に流路基板25aが嵌合する円柱状の空間(開口部)が形成される。そして、円柱状の空間の内周部には、流路基板25aの外周部に形成されるねじ部36と嵌合するねじ部36が形成される。
【0126】
なお、流路基板25aの高さ方向の長さは、流路33の上側の流路基板25bの高さ方向の長さよりも、短い。また、流路基板25aの高さ方向の長さと円柱状の空間の高さ方向の長さとは同等である。このため、流路33の上側の流路基板25bには、流路33と流路基板25aに形成される分岐路34とが接続する円柱状の空間が形成される。なお、この円柱状の空間の直径と分岐路34の直径とは同等である。つまり、流路33の上側の流路基板25bには、突起部26が形成される。なお、流路基板25aの直径と円柱状の空間20の直径とは同等である。
【0127】
図9(d)に示すように、流路基板25bの本体に、流路基板25a(部品)を挿入し、ねじ部36を、シールテープや接着剤(シール部17)によりシールする。これにより、圧力センサモジュール15が完成する。
【0128】
このように、実施例2によれば、ピエゾ抵抗型半導体素子3が設置される流路基板25aを、部品として、取り扱うことができ、複数個(多数個)の部品に対して、一度に、並列的に、水分防止膜18を形成することができ、生産性(量産性)に優れる。
【0129】
また、実施例2によれば、流路33の下側に、円柱状の空間20が形成されることがないため、段差部が形成されることはなく、段差部にシステム水21が接触することによる気泡の発生を防止することができる。
【0130】
また、実施例2によれば、流路基板25とピエゾ抵抗型半導体素子3とを接合する接合層32の強度を維持し、信頼性が高い圧力センサモジュール15を提供することができる。
【実施例3】
【0131】
次に、実施例3に係る圧力センサモジュール15の製造プロセスを説明する。
【0132】
図10は、実施例3に係る圧力センサモジュール15の製造プロセス(a)工程、(b)工程、(c)工程を説明する断面図である。なお、断面図の左右方向はY方向(長辺方向)、断面図の上下方向はZ方向(高さ方向)、を示す。
【0133】
実施例1では、流路基板25に対して、流路33を形成し、流路33を形成した後に、円柱状の分岐路34及び円柱状の空間20を形成し、その後、水分防止膜18を、流路基板25の下面側から、円柱状の空間20を介して、形成し、その後、封止部材19を形成する。一方、実施例3では、流路基板25に対して、流路33を形成する前に、円柱状の分岐路34及び円柱状の空間20を形成し、その後、水分防止膜18を、流路基板25の下面側から、円柱状の空間20を介して、形成し、その後、封止部材19を形成し、最後に、流路33を形成する。
【0134】
図10(a)に示すように、流路基板25cの中央部近傍に、流路基板25cの裏面側から、流路基板25cを鉛直方向に貫通するように、円柱状の分岐路34と円柱状の空間20とを形成する。円柱状の分岐路34と円柱状の空間20とは、鉛直方向の断面が凸状になるように、2段(円柱状の分岐路34の直径は、円柱状の空間20の直径よりも、小さい)に形成される。そして、円柱状の空間20の内周部には、ねじ部36が形成される。
【0135】
次に、ピエゾ抵抗型半導体素子3を、分岐路34を塞ぐように、接合層32を介して、流路基板25cの表面側に、接合する。
【0136】
そして、流路基板25cの裏面側から水分防止膜18を形成する。なお、水分防止膜18は、スプレー塗布やスパッタリングにより形成される。また、水分防止膜18には、有機膜や無機膜の単層膜又は複合膜、有機膜と無機膜との複合膜を使用する。
【0137】
図10(b)に示すように、鉛直方向の断面が凸状の2段円柱状の封止部材19cを、流路基板25cの裏面側から挿入する。
【0138】
なお、2段円柱状の封止部材19cの1段目(下段)の直径は、円柱状の空間20の1段目(下段)の直径と同等であり、2段円柱状の封止部材19cの2段目(上段)の直径は、円柱状の空間20の2段目(上段)の直径と同等である。
【0139】
また、2段円柱状の封止部材19cの1段目(下段)の高さ方向の長さは、円柱状の空間20の1段目(下段)の高さ方向の長さと同等であり、2段円柱状の封止部材19cの2段目(上段)の高さ方向の長さは、円柱状の空間20の2段目(上段)の高さ方向の長さよりも小さい。
【0140】
そして、2段円柱状の封止部材19cの1段目(下段)の外周側には、円柱状の空間20の内周部に形成されるねじ部36と嵌合するねじ部36が形成される。
【0141】
そして、ねじ部36(2段円柱状の封止部材19cの1段目(下段)の周囲、つまり、円柱状の空間20の1段目(下段)の内面と円柱状の封止部材19cの1段目(下段)の外面との間隙)を、シールテープや接着剤(シール部17a)によりシールし、2段円柱状の封止部材19cの2段目(上段)の周囲、つまり、円柱状の空間20の2段目(上段)の内面と円柱状の封止部材19cの2段目(上段)の外面との間隙を、シールテープや接着剤(シール部17b)によりシールする。
【0142】
図10(c)に示すように、流路基板25の側面側からY方向に円柱状の流路33を形成する。なお、流路33は、分岐路34と接続するように形成される。これにより、圧力センサモジュール15が完成する。このように、流路33が最後に形成されるため、様々な流路33の直径を有する圧力センサモジュール15を製造することができる。
【0143】
また、流路33を形成する際に、封止部材19c及びシール部17bの一部分が、流路33の形成と同時に切削される。
【0144】
そして、流路33における、流路入口33a及び流路出口33bには、それぞれ配管8と接続するネジ部(図示なし)が形成される。
【0145】
このように、実施例3によれば、封止部材19c及びシール部17bの一部分が、流路33の形成と同時に切削されることにより、円柱状の空間20と流路33とが連通する部分(つなぎ目)に、段差部が形成されることはなく、段差部にシステム水21が接触することによる気泡の発生を防止することができる。
【0146】
また、実施例3によれば、流路基板25とピエゾ抵抗型半導体素子3とを接合する接合層32の強度を維持し、信頼性が高い圧力センサモジュール15を提供することができる。
【実施例4】
【0147】
次に、実施例4に係る圧力センサモジュール15の製造プロセスを説明する。
【0148】
図11は、実施例4に係る圧力センサモジュール15の製造プロセス(a)工程、(b)工程、(c)工程を説明する断面図である。なお、断面図の左右方向はY方向(長辺方向)、断面図の上下方向はZ方向(高さ方向)、を示す。
【0149】
実施例4は、実施例2及び実施例3の特徴を有し、流路基板25の一部を部分的に形成し、水分防止膜18を形成すると共に、流路基板25に対して、流路33を形成する前に、円柱状の分岐路34を形成し、水分防止膜18を形成し、部分的に形成された流路基板25の一部を流路基板25の本体に挿入し、最後に流路33を形成する。
【0150】
図11(a)に示すように、流路基板25eを形成する。流路基板25eには、流路基板25eの中央部近傍に、流路基板25eの表面側から、流路基板25eを貫通しないように、円柱状の空間20bが形成される。そして、円柱状の空間20bの内周部には、ねじ部36が形成される。
【0151】
図11(b)に示すように、ドーナツ状(リング状)の流路基板25dを形成する。つまり、中央に円柱状の分岐路34が形成される円柱状の流路基板25d(第1の流路基板)を形成する。
【0152】
つまり、中央に、流路基板25dを貫通する円柱状の分岐路34が形成される、円柱状の流路基板25dを形成する。そして、流路基板25dの外周部に、円柱状の空間20bの内周部に形成されるねじ部36に嵌合するねじ部36を形成する。
【0153】
なお、流路基板25dの高さ方向の長さは、円柱状の空間20bの高さ方向の長さと同等である。また、流路基板25dの直径は、円柱状の空間20bの直径と同等である。
【0154】
次に、ピエゾ抵抗型半導体素子3を、分岐路34を塞ぐように、接合層32を介して、流路基板25aの表面側に、接合する。
【0155】
次に、流路基板25dの裏面側から水分防止膜18を形成する。なお、水分防止膜18は、スプレー塗布やスパッタリングにより形成される。また、水分防止膜18には、有機膜や無機膜の単層膜又は複合膜、有機膜と無機膜との複合膜を使用する。
【0156】
そして、流路基板25e(第2の流路基板)に、流路基板25dを挿入する。つまり、流路基板25dの外周部に形成されるねじ部36と円柱状の空間20bの内周部に形成されるねじ部36とが嵌合する。なお、ねじ部36を、シールテープや接着剤(シール部17)によりシールする。
【0157】
図11(c)に示すように、流路基板25の側面側からY方向に円柱状の流路33を形成する。なお、流路33は、分岐路34と接続するように形成される。これにより、圧力センサモジュール15が完成する。このように、流路33が最後に形成されるため、様々な流路33の直径を有する圧力センサモジュール15を製造することができる。
【0158】
そして、流路33における、流路入口33a及び流路出口33bには、それぞれ配管8と接続するネジ部(図示なし)が形成される。
【0159】
このように、実施例4によれば、流路33の下側に、円柱状の空間20が形成されることがなく、流路33が最後に形成されるため、段差部が形成されることはなく、段差部にシステム水21が接触することによる気泡の発生を防止することができる。
【0160】
また、実施例4によれば、ピエゾ抵抗型半導体素子3が設置される流路基板25dを、部品として、取り扱うことができ、複数個(多数個)の部品に対して、一度に、並列的に、水分防止膜18を形成することができ、生産性(量産性)に優れる。
【0161】
また、実施例4によれば、流路基板25とピエゾ抵抗型半導体素子3とを接合する接合層32の強度を維持し、信頼性が高い圧力センサモジュール15を提供することができる。
【0162】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために、具体的に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を有するものに限定されるものではない。
【0163】
また、ある実施例の構成の一部を、他の実施例の構成の一部に置換することもできる。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を追加することもできる。また、各実施例の構成の一部について、それを削除し、他の構成の一部を追加し、他の構成の一部と置換することもできる。
【符号の説明】
【0164】
1…分注装置、2…ノズル、3…ピエゾ抵抗型半導体素子、4…シリンジポンプ、5…電磁弁、6…ギアポンプ、7…タンク、8…配管、9…容器、10…プランジャ、11…ボールねじ、12…モータ、13…分注機構、14…制御基板、15…圧力センサモジュール、16…分注アーム、17…シール部、18…水分防止膜、19…封止部材、20…空間、21…システム水、22…液体、23…分節空気、25…流路基板、26…突起部、29…凸部、32…接合層、33…流路、34…分岐路、35…矢印、36…ネジ部、38…マスク、39…アール形状、41…フレキシブル基板、42…電極パッド、43…ワイヤ。