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特許7574510容器詰めゆで卵含有加工食品及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】容器詰めゆで卵含有加工食品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 15/00 20160101AFI20241022BHJP
   A23B 5/00 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
A23L15/00 D
A23B5/00 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2024009268
(22)【出願日】2024-01-25
【審査請求日】2024-02-02
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和6年1月10日に掲載されたウェブサイト https://www.kewpie.co.jp/products/product/egg/egg/4901577002007/
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和6年1月10日に掲載されたウェブサイト https://www.kewpie.co.jp/recipes/recipe/QP10009918/
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和6年1月10日に掲載されたウェブサイト https://www.kewpie.co.jp/recipes/recipe/QP10009904/
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和6年1月10日に掲載されたウェブサイト https://www.kewpie.co.jp/recipes/recipe/QP10009919/
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和6年1月10日に掲載されたウェブサイト https://www.kewpie.co.jp/recipes/recipe/QP10009903/
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和6年1月10日に掲載されたウェブサイト https://www.kewpie.co.jp/recipes/recipe/QP10009901/
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和6年1月10日に掲載されたウェブサイト https://www.kewpie.co.jp/recipes/recipe/QP10009753/
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和6年1月10日に掲載されたウェブサイト https://www.kewpie.co.jp/recipes/recipe/QP10009748/
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和6年1月10日に掲載されたウェブサイト https://www.kewpie.co.jp/recipes/recipe/QP10009744/
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和6年1月10日に掲載されたウェブサイト https://www.kewpie.co.jp/recipes/recipe/QP10009742/
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和6年1月10日に掲載されたウェブサイト https://www.kewpie.co.jp/products/product/egg/egg/4901577002014/
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和6年1月10日に掲載されたウェブサイト https://www.kewpie.co.jp/recipes/recipe/QP10009957/
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和6年1月10日に掲載されたウェブサイト https://www.kewpie.co.jp/recipes/recipe/QP10009952/
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和6年1月10日に掲載されたウェブサイト https://www.kewpie.co.jp/recipes/recipe/QP10009950/
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和6年1月10日に掲載されたウェブサイト https://www.kewpie.co.jp/recipes/recipe/QP10009750/
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和6年1月10日に掲載されたウェブサイト https://www.kewpie.co.jp/recipes/recipe/QP10009749/
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和6年1月10日に掲載されたウェブサイト https://www.kewpie.co.jp/recipes/recipe/QP10009747/
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和6年1月10日に掲載されたウェブサイト https://www.kewpie.co.jp/recipes/recipe/QP10009746/
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和6年1月10日に掲載されたウェブサイト https://www.kewpie.co.jp/recipes/recipe/QP10009745/
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和6年1月10日に掲載されたウェブサイト https://www.kewpie.co.jp/recipes/recipe/QP10009730/
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和6年1月10日に掲載されたウェブサイト https://www.kewpie.co.jp/products/new/
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和6年1月10日に掲載されたウェブサイト https://www.kewpie.co.jp/products/product/egg/
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和6年1月10日に掲載されたウェブサイト https://www.kewpie.co.jp/products/product/egg/egg/
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001421
【氏名又は名称】キユーピー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】都築 亜純
【審査官】澤田 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-205030(JP,A)
【文献】特開2023-003562(JP,A)
【文献】特開昭49-013362(JP,A)
【文献】朝田仁ほか,たれ類の粘度機能と増粘剤の特性,New Food Industry,1993年,vol.35, no.8,pp.17-23
【文献】よーこのキッチン, [online],焼鳥のタレで!!味玉,クックパッド,2017年11月09日,[令和6年3月19日検索], インターネット, <URL: https://cookpad.com/recipe/4796175>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 15/00
A23B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
具材含有調味液及びゆで卵を含有する、容器詰めゆで卵含有加工食品の製造方法であって、
丸のままの殻剥きゆで卵を用意する工程と、
具材を具材含有調味液全量に対し10質量%以上含む、具材含有調味液を用意する工程と、
前記具材含有調味液を容器に充填する工程と、
前記ゆで卵を容器に充填する工程と、
前記具材含有調味液及びゆで卵を含む容器を脱気する工程と、
前記脱気された容器を加熱殺菌する工程と、を含み、
前記容器がスタンディングパウチであり、
前記具材含有調味液は澱粉を、具材含有調味液全量に対し0.5質量%以上5質量%以下含むものであり、
ゆで卵含有加工食品における具材含有調味液の粘度(25℃)が2000mPa・s以上25000mPa・s以下であることを特徴とする、
容器詰めゆで卵含有加工食品の製造方法
【請求項2】
前記具材含有調味液が、少なくとも食酢、胡麻、玉葱、及び白葱から選ばれる1種以上を含むことを特徴とする、
請求項1に記載の容器詰めゆで卵含有加工食品の製造方法
【請求項3】
前記具材含有調味液が、食用油脂を含有すること特徴とする、
請求項1または2に記載の容器詰めゆで卵含有加工食品の製造方法
【請求項4】
前記具材含有調味液が、キサンタンガムをさらに含むことを特徴とする、
請求項1または2に記載の容器詰めゆで卵含有加工食品の製造方法
【請求項5】
前記容器詰めゆで卵含有加工食品におけるゆで卵の数が、1個又は2個である、
請求項1または2に記載の容器詰めゆで卵含有加工食品の製造方法
【請求項6】
前記具材含有調味液が、卵黄により乳化されたものでないことを特徴とする、
請求項1または2に記載の容器詰めゆで卵含有加工食品の製造方法
【請求項7】
前記スタンディングパウチが、縦の長さが70mm以上250mm以下、横の長さが60mm以上250mm以下であることを特徴とする、
請求項1または2に記載の容器詰めゆで卵含有加工食品の製造方法
【請求項8】
前記具材含有調味液を容器に充填する工程において、具材含有調味液の充填量が、ゆで卵1個に対し5g以上80g以下であることを特徴とする、
請求項1または2に記載の容器詰めゆで卵含有加工食品の製造方法
【請求項9】
具材含有調味液及びゆで卵を含有する、容器詰めゆで卵含有加工食品であって、
前記ゆで卵は丸のままの殻剥きゆで卵であり、
前記容器がスタンディングパウチであり、
前記具材含有調味液は、以下の(A)~(C)の特徴を有することを特徴とする、容器詰めゆで卵含有加工食品
(A)具材含有調味液全量に対し、具材を10質量%以上含む
(B)具材含有調味液全量に対し、澱粉を0.5質量%以上5質量%以下含む
(C)粘度(25℃)が2000mPa・s以上25000mPa・s以下
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器詰めゆで卵含有加工食品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ゆで卵をタマネギやネギ、ニンニク等の具材と共に醤油等を含むたれにつけた卵料理が、家庭で食されており、これは具材、たれ、ゆで卵を容器に入れ、しばらく寝かせることによって作られる。しかし、家庭で作るには手間がかかるうえ、殻を剥いた丸のままのゆで卵は表面が非常に滑らかであるため、喫食時にゆで卵と具材、たれが分かれてしまい、具材、たれを充分に味わうことが難しかった。従って、このような課題が解決された加工食品が望まれてきた。
【0003】
容器詰めゆで卵含有加工食品としては例えば、調味液を所定量充填し、特定の圧力で脱気され、保管後の前記調味液のpHやBrix値が特定範囲であることで、保存性がありながら、保管後も卵白部が柔らかい食感を維持することができる容器詰め殻剥き茹卵が提案されている(特許文献1参照)。しかし、具材を多量に含むものではなく、上記課題を有すものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許7332526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、ゆで卵と具材含有調味液を一体的に喫食でき、また、加工食品としての製造適性を有する、容器詰めゆで卵含有加工食品及びその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題の解決を達成すべく誠意検討した結果、少なくとも、丸のままの殻剥きゆで卵を用意する工程と、具材を具材含有調味液全量に対し10質量%以上含む、具材含有調味液を用意する工程と、前記具材含有調味液を容器に充填する工程と、前記ゆで卵を容器に充填する工程と、前記具材含有調味液及びゆで卵を含む容器を脱気する工程と、前記脱気された容器を加熱殺菌する工程と、を含み、前記容器がスタンディングパウチであり、前記具材含有調味液は澱粉を特定量含むものであり、ゆで卵含有加工食品における具材含有調味液の粘度が特定の範囲にすることで、上記の技術的課題を解決できることを知見し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の一態様によれば、
(1)
具材含有調味液及びゆで卵を含有する、容器詰めゆで卵含有加工食品の製造方法であって、
丸のままの殻剥きゆで卵を用意する工程と、
具材を具材含有調味液全量に対し10質量%以上含む、具材含有調味液を用意する工程と、
前記具材含有調味液を容器に充填する工程と、
前記ゆで卵を容器に充填する工程と、
前記具材含有調味液及びゆで卵を含む容器を脱気する工程と、
前記脱気された容器を加熱殺菌する工程と、を含み、
前記容器がスタンディングパウチであり、
前記具材含有調味液は澱粉を、具材含有調味液全量に対し0.5質量%以上5質量%以下含むものであり、
ゆで卵含有加工食品における具材含有調味液の粘度(25℃)が2000mPa・s以上30000mPa・s以下であることを特徴とする、
容器詰めゆで卵含有加工食品の製造方法。
(2)
前記具材含有調味液が、少なくとも食酢、胡麻、玉葱、及び白葱から選ばれる1種以上を含むことを特徴とする、
(1)に記載の容器詰めゆで卵含有加工食品の製造方法。
(3)
前記具材含有調味液が、食用油脂を含有すること特徴とする、
(1)または(2)に記載の容器詰めゆで卵含有加工食品の製造方法。
(4)
前記具材含有調味液が、キサンタンガムをさらに含むことを特徴とする、
(1)~(3)のいずれかに記載の容器詰めゆで卵含有加工食品の製造方法。
(5)
前記容器詰めゆで卵含有加工食品におけるゆで卵の数が、1個又は2個である、
(1)~(4)のいずれかに記載の容器詰めゆで卵含有加工食品の製造方法。
(6)
前記具材含有調味液が、卵黄により乳化されたものでないことを特徴とする、
(1)~(5)のいずれかに記載の容器詰めゆで卵含有加工食品の製造方法。
(7)
前記スタンディングパウチが、縦の長さが70mm以上250mm以下、横の長さが60mm以上250mm以下であることを特徴とする、
(1)~(6)のいずれかに記載の容器詰めゆで卵含有加工食品の製造方法。
(8)
前記具材含有調味液を容器に充填する工程において、具材含有調味液の充填量が、ゆで卵1個に対し5g以上80g以下であることを特徴とする、
(1)~(7)のいずれかに記載の容器詰めゆで卵含有加工食品の製造方法。
(9)
具材含有調味液及びゆで卵を含有する、容器詰めゆで卵含有加工食品であって、
前記ゆで卵は丸のままの殻剥きゆで卵であり、
前記容器がスタンディングパウチであり、
前記具材含有調味液は、以下の(A)~(C)の特徴を有することを特徴とする、容器詰めゆで卵含有加工食品。
(A)具材含有調味液全量に対し、具材を10質量部以上含む
(B)具材含有調味液全量に対し、澱粉を0.5質量%以上5質量%以下含む
(C)粘度(25℃)が2000mPa・s以上30000mPa・s以下
である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ゆで卵と具材含有調味液を一体的に喫食でき、また、加工食品としての製造適性を有する、容器詰めゆで卵含有加工食品及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下本発明を詳細に説明する。なお、本発明において、特に明示した場合を除き、「%」とは「質量%」、「部」とは「質量部」を意味する。
【0010】
<容器詰めゆで卵含有加工食品>
本発明の容器詰めゆで卵含有加工食品は、丸のままの殻剥きゆで卵と、具材含有調味液を含むものであり、スタンディングパウチに充填されているものを指す。
【0011】
<具材含有調味液>
本発明の具材含有調味液は、具材及び澱粉を含む。また、特に限定はないが、卵黄で乳化されたものでないことが好ましい。卵黄で乳化した調味液を用いた場合、粘度が極めて高粘度となりそもそも本発明の課題を有さないことが多いためである。
【0012】
<具材>
本発明における具材としては、特に限定されないが、植物性の具材が挙げられる。植物性の具材としては例えば、野菜、種実類、豆類、芋類、穀類、きのこ類、海藻類、果実類、等が挙げられる。そのなかでも胡麻、玉葱、白葱を用いることが、ゆで卵との風味の相性の点で好ましい。
また、具材の含有量は具材含有調味液全量に対し、10質量%以上である。これを下回るとそもそも、喫食時にゆで卵と具材、たれが分かれてしまい、具材、たれを充分に味わうことが難しいという本発明の課題を有さない。また、下限値は好ましくは15質量%以上であり、より好ましくは20質量%以上であり、上限値は好ましくは70質量%以下であり、より好ましくは60量%以下であり、さらに好ましくは50質量%以下であり、さらにより好ましくは40質量%以下である。具材の含有量が上記範囲内であることにより、ゆで卵と具材含有調味液を一体的に喫食するという本発明の課題を有効に解決することができる。なお、具材の含有量は、具材含有調味液を用意する工程における配合量から算出した値を用いればよい。
【0013】
<澱粉>
本発明の具材含有調味液が含む澱粉としては、特に限定されず従来公知のものを用いることができる。澱粉としては、天然澱粉及び加工澱粉が挙げられ、いずれのものでもよいが、製造適性の観点から加工澱粉を用いることが好ましい。天然澱粉としては、例えば、コーンスターチ、タピオカ澱粉、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉等が挙げられる。加工澱粉としては、例えば、これらの天然澱粉を加工したもの、より詳細には、アセチル化アジピン酸架橋澱粉、アセチル化リン酸架橋澱粉、アセチル化酸化澱粉、リン酸化澱粉、リン酸架橋澱粉、酸化澱粉、酢酸澱粉、ヒドロキシプロピル澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉等、あるいは湿熱処理澱粉等の加工澱粉が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、澱粉には、加熱糊化型澱粉と冷水膨潤型澱粉があり、加熱糊化澱粉は、水を加えて高温(例えば70℃程度以上)で加熱することで糊化し、吸水して膨潤すると同時に粘性を呈する澱粉であり、冷水膨潤型澱粉は、糊化した状態の性質がそのまま維持された澱粉であり、加熱を必要とせず常温(20℃)の水で膨潤し粘性を呈する澱粉である。本発明の具材含有調味液が含む澱粉としては、具材含有調味液を充填する工程において具材が偏らず、均一に充填することができる点において、冷水膨潤型澱粉を用いることが好ましい。
【0014】
<具材含有調味液の澱粉含有量>
本発明における具材含有調味液における澱粉の含有量は、具材含有調味液全量に対し0.5質量%以上5質量%以下である。下限値は好ましくは0.7質量%以上であり、より好ましくは1質量%以上であり、また、上限値は好ましくは4質量%以下であり、より好ましくは3.5質量%以下であり、さらに好ましくは2.5質量%以下である。澱粉の含有量が上記下限を下回ると、ゆで卵と具材含有調味液を一体的に喫食することができない。また、上限を上回るとゆで卵含有加工食品の具材含有調味液として不自然な物性となってしまう。また、具材含有調味液を充填する工程において、澱粉の含有量が上記範囲内であることにより、具材が偏らず、均一に充填することができる。また、加熱殺菌工程における卵からの離水による具材含有調味液の粘度低下を踏まえて、後述の具材含有調味液の粘度に調整することができる。
【0015】
<具材含有調味液の粘度>
本発明におけるゆで卵含有加工食品における具材含有調味液の25℃における粘度は、2000mPa・s以上30000mPa・s以下である。下限値は好ましくは2500mPa・s以上であり、より好ましくは3000mPa・s以上であり、さらに好ましくは3500mPa・s以上であり、また、上限値は好ましくは25000mPa・s以下であり、より好ましくは20000mPa・s以下であり、さらに好ましくは15000mPa・s以下である。粘度が上記下限を下回ると、ゆで卵と具材含有調味液を一体的に喫食することができない。また、上限を上回るとゆで卵含有加工食品の具材含有調味液として不自然な物性となってしまう。
また、具材含有調味液を充填する工程における具材含有調味液の粘度は、2000mPa・s以上50000mPa・s以下であることが好ましい。下限値はより好ましくは3000mPa・s以上であり、さらに好ましくは4000mPa・s以上であり、さらにより好ましくは5000mPa・s以上であり、また、上限値はより好ましくは40000mPa・s以下であり、さらに好ましくは30000mPa・s以下である。具材含有調味液を充填する工程における具材含有調味液の粘度が上記範囲内であることにより、具材が偏らず、均一に充填することができる。
なお、粘度としては、BH型粘度計を使用し品温25℃、回転数20rpmの条件でローターNo.5を使用し測定を行い、示度が100を超える場合は、次いで回転数10rpmの条件でローターNo.5を使用し測定を行い、さらに示度が100を超える場合は、次いで回転数10の条件でローターNo.6を使用し測定を行い、測定開始後ローターが2回転した時の示度により算出した値を用いる。
【0016】
<具材含有調味液のpH>
本発明におけるゆで卵含有加工食品における具材含有調味液の25℃におけるpHは、特に限定されないが、6以下であることが好ましい。pHが6以下であることにより、保存性の面で好ましい。
【0017】
本発明における具材含有調味液の量は、具材含有調味液を容器に充填する工程において、ゆで卵1個に対し、5g以上80g以下であることが好ましい。下限値はより好ましくは10g以上であり、さらに好ましくは15g以上であり、また、上限値はより好ましくは70g以下であり、さらに好ましくは50g以下であり、さらにより好ましくは30g以下である。具材含有調味液の量が上記下限値以上であることにより、ゆで卵表面全体に調味液がいきわたりやすくなり、保存性の面で好ましい。また、上記上限値以下であることにより、脱気工程で具材含有調味液やこれに含まれる具材自体がパウチ上部に吸われシール不良を起こす危険性や、具材含有調味液の充填工程で具材含有調味液やこれに含まれる具材自体がパウチ上部に飛び散りシール不良を起こす危険性を抑えやすく好ましい。
【0018】
<食用油脂>
本発明の具材含有調味液は、食用油脂を含んでいてもよい。食用油脂は、特に限定されず従来公知のものを用いることができる。食用油脂としては、例えば、菜種油、大豆油、パーム油、綿実油、コーン油、ひまわり油、サフラワー油、胡麻油、オリーブ油、亜麻仁油、米油、椿油、荏胡麻油、グレープシードオイル、ピーナッツオイル、アーモンドオイル、アボカドオイル、魚油、牛脂、豚脂、鶏脂、又はMCT(中鎖脂肪酸トリグリセリド)、ジグリセリド、硬化油、エステル交換油等のような化学的あるいは酵素的処理等を施して得られる油脂等を挙げることができ、これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、少なくとも胡麻油を含むことが、一体的に喫食するゆで卵の風味とのバランスの面で好ましい。
【0019】
<他の配合原料>
本発明の具材含有調味液は、上述した原料以外に、本発明の効果を損なわない範囲で調味液に通常用いられている各主原料を適宜選択し含有させることができる。例えば、食酢、醤油、砂糖、食塩、アミノ酸、ペプチド、有機酸又はその塩、核酸、柑橘果汁、ケチャップ等の各種調味料、キサンタンガム等のガム類、各種スパイスオイル、アスコルビン酸、ビタミンE等の酸化防止剤、胡椒、山椒等の香辛料、香料、色素などが挙げられる。この中でも特に、キサンタンガムをさらに含むことで、食用油脂を含む場合に具材含有調味液が油分離を起こしがたいという点で好ましい。また、食酢やpH調整剤等を含むことが、保存性の面で好ましい。
【0020】
<ゆで卵>
本発明のゆで卵は、鶏卵、鶉卵、アヒル卵等の家禽類の卵を加熱し、卵白が熱変性によって凝固し、殻を剥ける程度に卵白が凝固しているものである。ボイルやスチーム等、加熱の方法は問わず、前記状態であればよい。卵黄の凝固状態は問わず、流動性のある液状から完全に凝固した状態まで、様々な状態を含む。
【0021】
<スタンディングパウチ>
本発明の容器詰めゆで卵含有加工食品における容器は、スタンディングパウチである。スタンディングパウチを容器として用いることにより、脱気工程で具材含有調味液やこれに含まれる具材自体がパウチ上部に吸われシール不良を起こす危険性や、具材含有調味液の充填工程で具材含有調味液やこれに含まれる具材自体がパウチ上部に飛び散りシール不良を起こす危険性を抑えることができる。また、自立するため喫食時に開封し皿に出すことなくそのまま喫食することもできる。
本発明のスタンディングパウチのサイズとしては、特に限定されないが、例えば、縦の長さの下限値は好ましくは70mm以上であり、より好ましくは100mm以上であり、さらに好ましくは120mm以上であり、また、上限値は好ましくは250mm以下であり、より好ましくは200mm以下であり、さらに好ましくは180mm以下である。縦の長さが上記下限値を上回ることにより、脱気工程で具材含有調味液やこれに含まれる具材自体がパウチ上部に吸われシール不良を起こす危険性や、具材含有調味液の充填工程で具材含有調味液やこれに含まれる具材自体がパウチ上部に飛び散りシール不良を起こす危険性を抑えやすく好ましい。また、上記上限値を下回ることにより、最低限の具材含有調味液でゆで卵表面全体に調味液がいきわたりやすくなり、保存性の面で好ましい。
さらに、例えば、横の長さの下限値は好ましくは60mm以上であり、より好ましくは80mm以上であり、さらに好ましくは100mm以上であり、また、上限値は好ましくは250mm以下であり、より好ましくは200mm以下であり、さらに好ましくは150mm以下である。横の長さが上記下限値を上回ることにより、ゆで卵を充填しやすく好ましい。また、上記上限値を下回ることにより、最低限の具材含有調味液でゆで卵表面全体に調味液がいきわたりやすくなり、保存性の面で好ましい。
加えて、例えば、折込(マチ)の長さの下限値は好ましくは20mm以上であり、より好ましくは30mm以上であり、また、上限値は好ましくは100mm以下であり、より好ましくは80mm以下であり、さらに好ましくは60mm以下である。上記下限値を上回ることにより、ゆで卵を充填しやすく好ましい。また、上記上限値を下回ることにより、最低限の具材含有調味液でゆで卵表面全体に調味液がいきわたりやすくなり、保存性の面で好ましい。
【0022】
<充填工程>
本発明の容器詰めゆで卵含有加工食品の製造方法は、充填工程を含む。充填工程は、具材含有調味液を容器に充填する工程と、ゆで卵を容器に充填する工程を含み、これらの順序は問わない。なお、本発明における具材含有調味液は充填工程前に予め用意される。具材と調味液を別々に充填すると、製造効率が著しく低下するため好ましくない。
【0023】
<脱気工程>
本発明の容器詰めゆで卵含有加工食品の製造方法は、脱気工程を含む。脱気工程は、従来公知の機器を用いて行えばよい。脱気工程があることにより、容器内の余分な空間が排除され、最低限の具材含有調味液でゆで卵表面全体に調味液がいきわたりやすくなり、保存性の面で好ましい。
【0024】
<加熱殺菌工程>
本発明の容器詰めゆで卵含有加工食品の製造方法は、加熱殺菌工程を含む。加熱殺菌工程は、充填工程にて具材含有調味液及びゆで卵を含み脱気された容器を加熱殺菌する工程である。加熱殺菌条件としては、70℃で1分間以上か、又はこれと同等以上の殺菌効果を有する方法で加熱殺菌すればよく、加熱温度の上限は例えば100℃以下、加熱時間は例えば180分以下であればよい。また、加熱方法は湯中加熱、蒸煮加熱、シャワー式加熱等、公知の方法を用いればよいが、レトルト処理、具体的には例えば110℃~130℃で5~90分間程度加圧加熱殺菌処理した場合はゆで卵が固くなりすぎるため、レトルト処理を含まないことが好ましい。
【実施例
【0025】
以下に、実施例と比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例の内容に限定して解釈されるものではない。
【0026】
[実施例1~7][比較例1]
<殻剥きゆで卵及び具材含有調味液の用意>
まず、常法に従い鶏卵をお湯で茹でた後殻を剥くことで、殻剥きゆで卵を用意した。ゆで卵のサイズはMサイズのものを使用した。
また、表1に記載の配合割合に準じて、具材を具材含有調味液全量に対し10質量%以上含む、具材含有調味液を用意した。具体的には、まず、ボイル玉葱(8mm×8mm×4mmのダイスカット)、ボイル白葱(3~5mmの輪切り)、煎り胡麻、清水、食酢(酸度4%)、食塩、グルタミン酸ナトリウム、グラニュ糖、胡麻油、必要に応じて加工澱粉(ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、冷水膨潤型澱粉)、キサンタンガムを均一になるように混合して、具材含有調味液を用意した。
【0027】
<容器詰めゆで卵含有加工食品の製造>
上記で得られた具材含有調味液をそれぞれ40g、スタンディングパウチ(パウチサイズ:縦150mm×横135mm×折込(マチ)35mm、材質:PET/DL/NY/DL/LLDPE)に充填した。次いで、上記で得られた殻剥きゆで卵を2個、丸のまま充填し、バキュームシーラー(株式会社古川製作所製、型式FVC-2-G)を用いて脱気した後、密封し、85℃に設定した殺菌槽中で1時間加熱殺菌した。その後10℃以下になるまで水冷することで、容器詰めゆで卵含有加工食品を製造した。
【0028】
<粘度の測定>
上記で得られた実施例1~7及び比較例1の容器詰めゆで卵含有加工食品に含まれる具材含有調味液、及び各試験区における具材含有調味液充填工程時の具材含有調味液の粘度について、測定を行った。具体的には、具材を均一にした後、BH型粘度系を使用し、品温25℃、回転数20rpmの条件でローターNo.5を使用し測定を行い、示度が100を超える場合は、次いで回転数10rpmの条件でローターNo.5を使用し測定を行い、示度が100を超える場合は、次いで回転数10の条件でローターNo.6を使用し測定を行った。示度は測定開始後ローターが2回転した時の示度を用いた。得られた示度に基づき粘度を算出した。結果を表1に記載する。
【0029】
<pHの測定>
上記で得られた実施例1~7及び比較例1の容器詰めゆで卵含有加工食品に含まれる具材含有調味液について、それぞれ、1気圧、品温25℃としたときに、pH測定計(株式会社堀場製作所製卓上型pHメータF-72)を用いてpHを測定したところ、pHは4.0~6.0であった。
【0030】
<ゆで卵と具材含有調味液の一体感の評価>
上記で得られた実施例1~7及び比較例1の容器詰めゆで卵含有加工食品について、以下の試験手順及び評価基準に従い評価を行った。評価結果を表1に記載する。
[ゆで卵と具材含有調味液の一体感の試験手順]
容器詰めゆで卵含有加工食品を冷蔵庫から取り出し、常温に戻した。容器を開封し、ゆで卵を1つ取り出した後、付着する具材含有調味液をふき取り、卵側面を下にした状態で皿の上に静置した。次いで、それぞれの具材含有調味液をその頂点より20g、できるだけ具材含有調味液が残るように慎重に載せ、15秒後静置した後、外観を確認したうえで、当該具材含有調味液の付着したゆで卵を箸で別の皿に移し、重さを測定した。最後に、当該ゆで卵に付着する具材含有調味液を充分にふき取ったのち、ゆで卵自体の重さを測定した。その後、具材含有調味液の付着したゆで卵の重さとゆで卵自体の重さの差分をとることにより、ゆで卵に付着した具材含有調味液の量を算出し、量及び外観について以下の評価基準に従い評価を行った。評価結果を表1に記載する。両評価が〇以上であるものを合格とした。
[ゆで卵と具材含有調味液の一体感の評価基準]
◎:前記ゆで卵に付着した具材含有調味液が、6.5g以上
〇:前記ゆで卵に付着した具材含有調味液が、3g以上6.5g未満
×:前記ゆで卵に付着した具材含有調味液が、3g未満
[外観の評価基準]
〇:ゆで卵上に充分具材が載っており、また、落ちたソースも卵周辺に保持されており、一体感がある
×:ゆで卵から具材が滑り落ち、落ちたソースが皿に広がっている
【0031】
【表1】
【0032】
実施例1及び7は、前記試験の結果、具材含有調味液がゆで卵に3g以上6.5g未満付着し、ゆで卵と具材含有調味液の一体感の点で優れていた。また、実施例2乃至6は、具材含有調味液がゆで卵に6.5g以上付着し、ゆで卵と具材含有調味液の一体感の点でさらに優れていた。他方で、比較例1は、前記試験の結果、具材含有調味液のゆで卵への付着量が3g未満であり、ゆで卵と具材含有調味液の一体感という点で本発明の効果を有さなかった。
【0033】
外観について、実施例1乃至7は、ゆで卵上に充分具材が載っており、また、落ちたソースも卵周辺に保持されており、一体感があるものであった。他方で、比較例1は、ゆで卵から具材が滑り落ち、落ちたソースが皿に広がっており、本発明の効果を有さなかった。なお、実施例7に係る具材含有調味液は油分離が見られた。


【要約】
【課題】ゆで卵と具材含有調味液を一体的に喫食ことのでき、また、加工食品としての製造適性を有する、容器詰めゆで卵含有加工食品及びその製造方法を提供
【解決手段】本発明の、具材含有調味液及びゆで卵を含有する、容器詰めゆで卵含有加工食品の製造方法は、丸のままの殻剥きゆで卵を用意する工程と、具材を具材含有調味液全量に対し10質量%以上含む、具材含有調味液を用意する工程と、前記具材含有調味液を容器に充填する工程と、前記ゆで卵を容器に充填する工程と、前記具材含有調味液及びゆで卵を含む容器を脱気する工程と、前記脱気された容器を加熱殺菌する工程と、を含み、前記容器がスタンディングパウチであり、前記具材含有調味液は澱粉を、具材含有調味液全量に対し0.5質量%以上5質量%以下含むものであり、ゆで卵含有加工食品における具材含有調味液の粘度(25℃)が2000mPa・s以上30000mPa・s以下であることを特徴とするものである。
【選択図】なし