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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】記録装置および記録方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/322 20140101AFI20241022BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20241022BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
C09D11/322
B41M5/00 120
B41M5/00 100
B41J2/01 501
B41J2/01 305
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020198514
(22)【出願日】2020-11-30
(65)【公開番号】P2022086482
(43)【公開日】2022-06-09
【審査請求日】2023-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100090527
【弁理士】
【氏名又は名称】舘野 千惠子
(72)【発明者】
【氏名】横濱 佑樹
(72)【発明者】
【氏名】高橋 聡
(72)【発明者】
【氏名】大山 光一朗
(72)【発明者】
【氏名】杉田 健人
(72)【発明者】
【氏名】黒羽 みずき
【審査官】松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-119606(JP,A)
【文献】特許第5862913(JP,B2)
【文献】国際公開第2017/168817(WO,A1)
【文献】特開2018-039872(JP,A)
【文献】特開2020-146993(JP,A)
【文献】特開2020-082664(JP,A)
【文献】特許第5676734(JP,B1)
【文献】特開2012-072354(JP,A)
【文献】特開2010-155907(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0225586(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00-11/54
B41M 5/00
B41J 2/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性組成液と、基材に前記水性組成液を吐出する吐出機構と、前記吐出機構により前記水性組成液が吐出された基材を処理する基材処理機構とを有する記録装置であって、
前記基材処理機構は、前記基材を挟んで搬送する搬送部材と、前記搬送部材が前記基材を挟み持つ領域内で前記搬送部材の一部を湾曲変形させる押し当て部材と、を備え、
前記水性組成液が、水、顔料および樹脂エマルジョンを含み、前記樹脂エマルジョンは、ガラス転移温度(Tg)が80℃以上の樹脂エマルジョンAおよびガラス転移温度(Tg)が40~65℃の樹脂エマルジョンBを含有し、
前記水性組成液における前記樹脂エマルジョンAと前記樹脂エマルジョンBとの比率が、前記樹脂エマルジョンA/前記樹脂エマルジョンBの質量比として2~5である
ことを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記水性組成液が、さらにワックスを含むことを特徴とする請求項に記載の記録装置。
【請求項3】
基材に水性組成液を吐出する吐出工程と、前記吐出機構により前記水性組成液が吐出された基材を処理する基材処理工程とを有する記録方法であって、
前記基材処理工程は、前記基材を搬送部材に挟んで搬送しながら、前記搬送部材が前記基材を挟み持つ領域内で押し当て部材を前記搬送部材に押し当て、前記搬送部材の一部を湾曲変形させる押し当て工程を有し、
前記水性組成液が、水、顔料および樹脂エマルジョンを含み、前記樹脂エマルジョンは、ガラス転移温度(Tg)が80℃以上の樹脂エマルジョンAおよびガラス転移温度(Tg)が40~65℃の樹脂エマルジョンBを含有し、
前記水性組成液における前記樹脂エマルジョンAと前記樹脂エマルジョンBとの比率が、前記樹脂エマルジョンA/前記樹脂エマルジョンBの質量比として2~5である
ことを特徴とする記録方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録装置および記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式を用いたインクジェットプリンタは、小型で価格が安くカラー化が容易であることから急速に普及している。近年では高画質なインク記録物を高速で記録することが求められており、この要求に答えるためにインクジェット記録方式に用いられるインクは様々な特性を満たしていなければならない。
【0003】
従来は染料インクが多く用いられていたが、耐候性に課題があり普通紙の画像濃度も十分ではなかった。そこで、近年顔料インクが広く用いられるようになっている。顔料インクは顔料粒子が紙の表面に留まるため画像濃度が高いがその反面、擦過性が十分とは言えない。従来、擦過性を改良するためにワックスエマルジョンを含むインクが検討されてきた(例えば特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし特許文献1に開示された技術では、擦過性の程度は改良されるが、十分な改良度合いとは言えなかった。また、インク中にウレタン樹脂エマルジョンなどのガラス転移点の低い樹脂エマルジョンを含むインクも検討されてきた。これらのインクは擦過性は十分に改良されるものの、印字後に画像を乾燥させるために加熱されると、画像濃度が低下してしまった。
【0005】
したがって本発明の目的は、優れた画像濃度および擦過性を有する画像を基材に付与できる記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、下記構成1)により解決される。
1)水性組成液と、基材に前記水性組成液を吐出する吐出機構と、前記吐出機構により前記水性組成液が吐出された基材を処理する基材処理機構とを有する記録装置であって、
前記基材処理機構は、前記基材を挟んで搬送する搬送部材と、前記搬送部材が前記基材を挟み持つ領域内で前記搬送部材の一部を湾曲変形させる押し当て部材と、を備え、
前記水性組成液が、水、顔料および樹脂エマルジョンを含み、前記樹脂エマルジョンは、ガラス転移温度(Tg)が80℃以上の樹脂エマルジョンAおよびガラス転移温度(Tg)が40~65℃の樹脂エマルジョンBを含有し、
前記水性組成液における前記樹脂エマルジョンAと前記樹脂エマルジョンBとの比率が、前記樹脂エマルジョンA/前記樹脂エマルジョンBの質量比として2~5である
ことを特徴とする記録装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、優れた画像濃度および擦過性を有する画像を基材に付与できる記録装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に使用される基材処理機構を備えた、記録装置の概略説明図である。
図2】本発明の基材処理機構の側面説明図である。
図3】本発明の基材処理機構の押し当てローラ部分の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を更に詳細に説明する。
本発明の記録装置は、水性組成液と、基材に前記水性組成液を吐出する吐出機構と、前記吐出機構により前記水性組成液が吐出された基材を処理する基材処理機構とを有し、前記基材処理機構は、前記基材を挟んで搬送する搬送部材と、前記搬送部材が前記基材を挟み持つ領域内で前記搬送部材の一部を湾曲変形させる押し当て部材と、を備え、前記水性組成液が、水、顔料および樹脂エマルジョンを含み、前記樹脂エマルジョンは、ガラス転移温度(Tg)が80℃以上の樹脂エマルジョンAおよびガラス転移温度(Tg)が40~65℃の樹脂エマルジョンBを含有することを特徴とする。
【0010】
本発明の記録装置は、優れた画像濃度および擦過性を有する画像を基材に付与できるものであり、その作用機構は、前記基材処理機構において搬送部材に挟まれた基材が搬送される際に、前記押し当て部材によって搬送部材が湾曲変形し、前記基材と前記搬送部材とが接触して画像が擦過され、摩擦熱によって前記水性組成液中の樹脂エマルジョンの造膜が促進され、画像表面が平滑になることで光沢度が増して画像濃度が向上するとともに擦過性も良化するものと推測される。そしてこの効果は、水性組成液に含まれる前記樹脂エマルジョンAおよびBによりさらに高まるものと推測される。
【0011】
まず、本発明における水性組成液について説明する。該水性組成液は、水、顔料および樹脂エマルジョンを含み、さらに必要に応じて有機溶剤、浸透剤、その他の成分を含有することができる。なお、下記では本発明における水性組成液として、インクを例にとり説明するが、本発明における水性組成液はインクに制限されるものではない。
【0012】
<有機溶剤>
本発明に使用する有機溶剤としては特に制限されず、水溶性有機溶剤を用いることができる。例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類や多価アルコールアリールエーテル類などのエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類が挙げられる。
水溶性有機溶剤の具体例としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、エチル-1,2,4-ブタントリオール、1,2,3-ブタントリオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ペトリオール等の多価アルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ε-カプロラクタム、γ-ブチロラクトン等の含窒素複素環化合物、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド等のアミド類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン等のアミン類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等の含硫黄化合物、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン等が挙げられる。
湿潤剤として機能するだけでなく、良好な乾燥性を得られることから、沸点が250℃以下の有機溶剤を用いることが好ましい。
【0013】
<浸透剤>
炭素数8以上のポリオール化合物、及びグリコールエーテル化合物も好適に使用される。炭素数8以上のポリオール化合物の具体例としては、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールなどが挙げられる。
グリコールエーテル化合物の具体例としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類;エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類などが挙げられる。
炭素数8以上のポリオール化合物、及びグリコールエーテル化合物は、記録媒体として紙を用いた場合に、インクの浸透性を向上させることができる。
上記有機溶剤のインク中における含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、インクの乾燥性及び吐出信頼性の点から、10質量%以上60質量%以下が好ましく、20質量%以上60質量%以下がより好ましい。
【0014】
<水>
インクにおける水の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、インクの乾燥性及び吐出信頼性の点から、10質量%以上90質量%以下が好ましく、20質量%~60質量%がより好ましい。
【0015】
<顔料>
色材としては顔料を使用可能である。
顔料としては、無機顔料又は有機顔料を使用することができる。これらは、1種単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。また、混晶を使用しても良い。
顔料としては、例えば、ブラック顔料、イエロー顔料、マゼンダ顔料、シアン顔料、白色顔料、緑色顔料、橙色顔料、金色や銀色などの光沢色顔料やメタリック顔料などを用いることができる。
無機顔料として、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエローに加え、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。
また、有機顔料としては、アゾ顔料、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料など)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを使用できる。これらの顔料のうち、溶媒と親和性の良いものが好ましく用いられる。その他、樹脂中空粒子、無機中空粒子の使用も可能である。
顔料の具体例として、黒色用としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、または銅、鉄(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタン等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料があげられる。
さらに、カラー用としては、C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、17、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、74、81、83、95、97、98、100、101、104、108、109、110、117、120、138、150、153、155、180、185、213、C.I.ピグメントオレンジ5、13、16、17、36、43、51、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22、23、31、38、48:2、48:2(パーマネントレッド2B(Ca))、48:3、48:4、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81、83、88、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、184、185、190、193、202、207、208、209、213、219、224、254、264、C.I.ピグメントバイオレット1(ローダミンレーキ)、3、5:1、16、19、23、38、C.I.ピグメントブルー1、2、15(フタロシアニンブルー)、15:1、15:2、15:3、15:4(フタロシアニンブルー)、16、17:1、56、60、63、C.I.ピグメントグリーン1、4、7、8、10、17、18、36、等がある。
【0016】
インク中の色材の含有量は、画像濃度の向上、良好な定着性や吐出安定性の点から、0.1質量%以上15質量%以下が好ましく、より好ましくは1質量%以上10質量%以下である。
顔料をインク中に分散させるには、顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法、顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法、分散剤を用いて分散させる方法、などが挙げられる。
顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法としては、例えば、顔料(例えばカーボン)にスルホン基やカルボキシル基等の官能基を付加し水中に分散可能とした自己分散顔料等が使用できる。
顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法としては、顔料をマイクロカプセルに包含させ、水中に分散可能なものを用いることができる。これは、樹脂被覆顔料と言い換えることができる。この場合、インクに配合される顔料はすべて樹脂に被覆されている必要はなく、本発明の効果が損なわれない範囲において、被覆されない顔料や、部分的に被覆された顔料がインク中に分散していてもよい。
【0017】
分散剤を用いて分散させる方法としては、界面活性剤に代表される、公知の低分子型の分散剤、高分子型の分散剤を用いて分散する方法が挙げられる。
分散剤としては、顔料に応じて例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤等を使用することが可能である。
竹本油脂社製RT-100(ノニオン系界面活性剤)や、ナフタレンスルホン酸Naホルマリン縮合物も、分散剤として好適に使用できる。
分散剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0018】
<顔料分散体>
色材に、水や有機溶剤などの材料を混合してインクを得ることが可能である。また、顔料と、その他水や分散剤などを混合して顔料分散体としたものに、水や有機溶剤などの材料を混合してインクを製造することも可能である。
前記顔料分散体は、水、顔料、顔料分散剤、必要に応じてその他の成分を分散し、粒径を調整して得られる。分散は分散機を用いると良い。
顔料分散体における顔料の粒径については特に制限はないが、顔料の分散安定性が良好となり、吐出安定性、画像濃度などの画像品質も高くなる点から、最大個数換算で最大頻度が20nm以上500nm以下が好ましく、20nm以上150nm以下がより好ましい。顔料の粒径は、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
前記顔料分散体における顔料の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な吐出安定性が得られ、また、画像濃度を高める点から、0.1質量%以上50質量%以下が好ましく、0.1質量%以上30質量%以下がより好ましい。
前記顔料分散体は、必要に応じて、フィルター、遠心分離装置などで粗大粒子をろ過し、脱気することが好ましい。
【0019】
<樹脂>
インクは、ガラス転移温度(Tg)が80℃以上の樹脂エマルジョンAおよびガラス転移温度(Tg)が40~65℃の樹脂エマルジョンBを含有する。
【0020】
前記樹脂エマルジョンAのTgが80℃未満であると、本発明の効果が奏されないほか、印字物が重なったときにブロッキングにより画像剥がれが生じることがある。前記樹脂エマルジョンAの好ましいTgは、80℃~100℃である。
【0021】
また、前記樹脂エマルジョンBのTgが40~65℃であると、印字物のブロッキングを抑制することと耐擦過性を高い水準で両立することができるので好ましい。
【0022】
なお、本発明における樹脂エマルジョンのTgは、次の測定方法により測定される。
直径4cmのテフロン(登録商標)シャーレにインクを5g滴下し、50℃環境下で72時間乾燥させて、樹脂乾固物を得る。 得られた樹脂乾固物を示差走査熱量計(Thermo plus EVO2 DSC8231、リガク株式会社製)を用いて測定し、ガラス転移温度(Tg)を算出する。
【0023】
樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン-ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、スチレンアクリル系樹脂、アクリルシリコーン系樹脂などが挙げられる。これらの樹脂からなる樹脂粒子を用いてもよい。樹脂粒子を、水を分散媒として分散した樹脂エマルションの状態で、色材や有機溶剤などの材料と混合してインクを得ることが可能である。前記樹脂粒子としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
【0024】
樹脂粒子の体積平均粒径としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、本発明の効果向上の観点から、30nm~200nmが好ましく、50nm~120nmがさらに好ましい。また、良好な画像硬度を得る点から、顔料と樹脂エマルジョンの累積粒径D50の差が10nm以下であることが好ましい。
前記体積平均粒径は、例えば、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【0025】
また、前記樹脂エマルジョンAと前記樹脂エマルジョンBとの比率は、本発明の効果向上の観点から、前記樹脂エマルジョンA/前記樹脂エマルジョンBの質量比として2~5であることが好ましい。
【0026】
樹脂の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、定着性、インクの保存安定性の点から、インク全量に対して、1質量%以上30質量%以下が好ましく、5質量%以上20質量%以下がより好ましい。
【0027】
またインクにはワックスを添加することができる。ワックスを添加することにより、耐擦過性が向上するという効果を奏する。
【0028】
前記ワックスとしては、水分散性ワックスエマルジョンが好ましい。
前記ワックスとしては、例えば、ポリエチレンワックス、パラフィンワックスなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、保存安定性の点から、ポリエチレンワックスが好ましい。
【0029】
前記ワックスとしては、市販品を用いることができ、前記市販品としては、例えば、商品名:HYTEC E-8237(ポリエチレンワックス、融点:106℃、平均粒径:80nm、東邦化学工業株式会社製)、商品名:AQUACER531(ポリエチレンワックス、融点:130℃、ビックケミー社製)、商品名:AQUACER515(ポリエチレンワックス、融点:135℃、ビックケミー社製)、商品名:AQUACER537(パラフィン、融点:110℃、ビックケミー社製)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0030】
前記ワックスの融点としては、70℃以上170℃以下が好ましく、100℃以上140℃以下がより好ましい。前記融点が、70℃以上であると、画像がべたつくことがなく、画像を重ねても画像転写は発生せずく、170℃以下であると、画像を擦ったときの摩擦熱で融解し、滑り性が得られるため、耐擦過性が良好となる。
【0031】
前記ワックスの体積平均粒径としては、200nm以下が好ましく、20nm以上150nm以下がより好ましい。前記体積平均粒径が、200nm以下であると、ノズルやヘッド内のフィルターに引っかかることがなく、良好な吐出安定性が得られる。
前記体積平均粒径は、例えば、粒度分析装置(マイクロトラック MODEL UPA9340、日機装株式会社製)を用いて測定することができる。
【0032】
前記ワックスの含有量としては、インク全量に対して、固形分で0.05~3質量%が好ましく、0.1~1質量%がさらに好ましい。
【0033】
<添加剤>
インクには、必要に応じて、界面活性剤、消泡剤、防腐防黴剤、防錆剤、pH調整剤等を加えても良い。
【0034】
<界面活性剤>
界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤のいずれも使用可能である。
【0035】
シリコーン系界面活性剤には特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができる。中でも高pHでも分解しないものが好ましく、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられ、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するものが、水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。また、前記シリコーン系界面活性剤として、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤を用いることもでき、例えば、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルシロキサンのSi部側鎖に導入した化合物等が挙げられる。
【0036】
フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物が、起泡性が小さいので特に好ましい。前記パーフルオロアルキルスルホン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸塩等が挙げられる。前記パーフルオロアルキルカルボン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸塩等が挙げられる。前記パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物としては、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの硫酸エステル塩、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの塩等が挙げられる。これらフッ素系界面活性剤における塩の対イオンとしては、Li、Na、K、NH、NHCHCHOH、NH(CHCHOH)、NH(CHCHOH)等が挙げられる。
【0037】
両性界面活性剤としては、例えばラウリルアミノプロピオン酸塩、ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタインなどが挙げられる。
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物などが挙げられる。
アニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートの塩、などが挙げられる。
これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0038】
前記シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサンなどが挙げられ、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤が水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。
このような界面活性剤としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、ビックケミー株式会社、信越化学工業株式会社、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社、日本エマルジョン株式会社、共栄社化学などから入手できる。
上記のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、一般式(S-1)式で表わされる、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルポリシロキサンのSi部側鎖に導入したものなどが挙げられる。
【0039】
【化1】
【0040】
(但し、一般式(S-1)式中、m、n、a、及びbは整数を表わす。 R及びR’はアルキル基、アルキレン基を表わす。)
【0041】
上記のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、市販品を用いることができ、例えば、KF-618、KF-642、KF-643(信越化学工業株式会社)、EMALEX-SS-5602、SS-1906EX(日本エマルジョン株式会社)、FZ-2105、FZ-2118、FZ-2154、FZ-2161、FZ-2162、FZ-2163、FZ-2164(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社)、BYK-33、BYK-387(ビックケミー株式会社)、TSF4440、TSF4452、TSF4453(東芝シリコン株式会社)などが挙げられる。
【0042】
前記フッ素系界面活性剤としては、フッ素置換した炭素数が2~16の化合物が好ましく、フッ素置換した炭素数が4~16である化合物がより好ましい。
フッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物などが挙げられる。 これらの中でも、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物は起泡性が少ないため好ましく、特に一般式(F-1)及び一般式(F-2)で表わされるフッ素系界面活性剤が好ましい。
【0043】
【化2】
【0044】
上記一般式(F-1)で表される化合物において、水溶性を付与するためにmは0~10の整数が好ましく、nは0~40の整数が好ましい。
【0045】
一般式(F-2)
2n+1-CH2CH(OH)CH2-O-(CH2CH2O)-Y
【0046】
上記一般式(F-2)で表される化合物において、YはH、又はCnF2n+1でnは1~6の整数、又はCHCH(OH)CH-CnF2n+1でnは4~6の整数、又はCpH2p+1でpは1~19の整数である。aは4~14の整数である。
【0047】
上記のフッ素系界面活性剤としては市販品を使用してもよい。 この市販品としては、例えば、サーフロンS-111、S-112、S-113、S-121、S-131、S-132、S-141、S-145(いずれも、旭硝子株式会社製);フルラードFC-93、FC-95、FC-98、FC-129、FC-135、FC-170C、FC-430、FC-431(いずれも、住友スリーエム株式会社製);メガファックF-470、F-1405、F-474(いずれも、大日本インキ化学工業株式会社製);ゾニール(Zonyl)TBS、FSP、FSA、FSN-100、FSN、FSO-100、FSO、FS-300、UR(いずれも、DuPont社製);FT-110、FT-250、FT-251、FT-400S、FT-150、FT-400SW(いずれも、株式会社ネオス社製)、ポリフォックスPF-136A,PF-156A、PF-151N、PF-154、PF-159(オムノバ社製)、ユニダインDSN-403N(ダイキン工業株式会社製)などが挙げられ、これらの中でも、良好な印字品質、特に発色性、紙に対する浸透性、濡れ性、均染性が著しく向上する点から、Du Pont社製のFS-300、株式会社ネオス製のFT-110、FT-250、FT-251、FT-400S、FT-150、FT-400SW、オムノバ社製のポリフォックスPF-151N及びダイキン工業株式会社製のユニダインDSN-403Nが特に好ましい。
【0048】
インク中における界面活性剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、濡れ性、吐出安定性に優れ、画像品質が向上する点から、0.001質量%以上5質量%以下が好ましく、0.05質量%以上5質量%以下がより好ましい。
【0049】
<消泡剤>
消泡剤としては、特に制限はなく、例えば、シリコーン系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、破泡効果に優れる点から、シリコーン系消泡剤が好ましい。
【0050】
<防腐防黴剤>
防腐防黴剤としては、特に制限はなく、例えば、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オンなどが挙げられる。
【0051】
<防錆剤>
防錆剤としては、特に制限はなく、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0052】
<pH調整剤>
pH調整剤としては、pHを7以上に調整することが可能であれば、特に制限はなく、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミンなどが挙げられる。
【0053】
インクの物性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、粘度、表面張力、pH等が以下の範囲であることが好ましい。
インクの25℃での粘度は、印字濃度や文字品位が向上し、また、良好な吐出性が得られる点から、5mPa・s以上30mPa・s以下が好ましく、5mPa・s以上25mPa・s以下がより好ましい。ここで、粘度は、例えば回転式粘度計(東機産業社製RE-80L)を使用することができる。測定条件としては、25℃で、標準コーンローター(1°34’×R24)、サンプル液量1.2mL、回転数50rpm、3分間で測定可能である。
インクの表面張力としては、記録媒体上で好適にインクがレベリングされ、インクの乾燥時間が短縮される点から、25℃で、35mN/m以下が好ましく、32mN/m以下がより好ましい。
インクのpHとしては、接液する金属部材の腐食防止の観点から、7~12が好ましく、8~11がより好ましい。
【0054】
<記録媒体>
記録媒体としては特に制限はなく、普通紙、光沢紙、特殊紙、布などを用いることもできるが、非浸透性基材を用いても良好な画像形成が可能である。
前記非浸透性基材とは、水透過性、吸収性が低い表面を有する基材であり、内部に多数の空洞があっても外部に開口していない材質も含まれ、より定量的には、ブリストー(Bristow)法において接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m以下である基材をいう。
前記非浸透性基材としては、例えば、塩化ビニル樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネートフィルムなどのプラスチックフィルムを、好適に使用することができる。
【0055】
<記録物>
本発明のインク記録物は、記録媒体上に、本発明のインクを用いて形成された画像を有してなる。
インクジェット記録装置及びインクジェット記録方法により記録して記録物とすることができる。
【0056】
また、本発明の用語における、画像形成、記録、印字、印刷等は、いずれも同義語とする。基材、記録媒体、メディア、被印刷物は、いずれも同義語とする。
【0057】
以下、本発明の記録装置および記録方法について図面を参照しながら説明する。
本発明の記録装置は、基材に前記水性組成液を吐出する吐出機構と、前記吐出機構により前記水性組成液が吐出された基材を処理する基材処理機構とを有し、前記基材処理機構は、前記基材を挟んで搬送する搬送部材と、前記搬送部材が前記基材を挟み持つ領域内で前記搬送部材の一部を湾曲変形させる押し当て部材とを備える。
また本発明の記録方法は、基材に前記水性組成液を吐出する吐出工程と、前記吐出機構により前記水性組成液が吐出された基材を処理する基材処理工程とを有し、前記基材処理工程は、前記基材を搬送部材に挟んで搬送しながら、前記搬送部材が前記基材を挟み持つ領域内で押し当て部材を前記搬送部材に押し当て、前記搬送部材の一部を湾曲変形させる押し当て工程を有する。
【0058】
図1は本発明に使用される基材処理機構を備えた、記録装置の概略説明図である。
【0059】
印刷装置1は、搬入部100と、印刷部200と、乾燥部300と、本発明に係る基材処理機構で構成したシート処理部600と、搬出部400とを備えている。印刷装置1は、搬入部100から搬入される基材としてのシートPに対し、印刷部200で液体を付与して所要の印刷を行い、乾燥部300でシートPに付着した液体を乾燥させた後、シート処理部600でシートPを処理して、シートPを搬出部400に排出する。
【0060】
搬入部100は、複数枚のシートPが積載される搬入トレイ110と、搬入トレイ110からシートPを1枚ずつ分離して送り出す給送装置120と、シートPを印刷部200へ送り込むレジストローラ対130とを備えている。
【0061】
給送装置120には、ローラやコロを用いた装置や、エア吸引を利用した装置など、あらゆる給送装置を用いることが可能である。給送装置120により搬入トレイ110から送り出されたシートPは、その先端がレジストローラ対130に到達した後、レジストローラ対130が所定のタイミングで駆動することにより、印刷部200へ送り出される。
【0062】
印刷部200は、シートPを外周面に担持して搬送する担持ドラム210と、担持ドラム210に担持されたシートPに向けて液体を吐出する液体を付与する手段である液体吐出部220とを備えている。また、印刷部200は、送り込まれたシートPを受け取って担持ドラム210へ渡す渡し胴201と、担持ドラム210によって搬送されたシートPを乾燥部300へ受け渡す受け渡し胴202を備えている。
【0063】
搬入部100から印刷部200へ搬送されてきたシートPは、渡し胴201の表面に設けられたシートグリッパによって先端が把持され、渡し胴201の回転に伴って搬送される。渡し胴201により搬送されたシートPは、担持ドラム210との対向位置で担持ドラム210へ受け渡される。
【0064】
担持ドラム210の表面にもシートグリッパが設けられており、シートPの先端がシートグリッパによって把持される。担持ドラム210の表面には、複数の吸引孔が分散して形成されており、各吸引孔には吸引装置211によって担持ドラム210の内側へ向かう吸い込み気流が発生する。
【0065】
そして、渡し胴201から担持ドラム210へ受け渡されたシートPは、シートグリッパによって先端が把持されるとともに、吸い込み気流によって担持ドラム210の表面に吸着され、担持ドラム210の回転に伴って搬送される。
【0066】
液体吐出部220は、シートPに前記インクを吐出する吐出機構を構成するものであり、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)の4色の液体(インク)を吐出して画像を印刷するものであり、液体の色ごとに個別の液体を付与する手段である液体吐出ヘッド220C,220M,220Y,220Kを備えている。なお、必要に応じて、白色、金色、銀色などの特殊な液体を吐出する液体吐出ヘッド、表面コート液などの処理液を吐出する液体吐出ヘッドを設けることもできる。
【0067】
液体吐出部220の液体吐出ヘッド220C,220M,220Y,220Kは、印刷情報に応じた駆動信号によりそれぞれ吐出動作が制御される。担持ドラム210に担持されたシートPが液体吐出部220との対向領域を通過するときに、液体吐出ヘッド220C,220M,220Y,220Kから各色の液体が吐出され、当該印刷情報に応じた画像が印刷される。
【0068】
乾燥部300は、乾燥装置であり、印刷部200から搬送されてくるシートPを吸着して搬送する吸引搬送ベルト301と、吸引搬送ベルト301で搬送されるシートPに対して液体を乾燥させるための温風を吹き付ける温風吹付け手段302などとを備えている。吸引搬送ベルト301は、例えば駆動ローラ303と従動ローラ304との間に掛け回され、駆動ローラ303を駆動することで周回移動する。
【0069】
印刷部200から搬送されてきたシートPは、吸引搬送ベルト301に受け取られた後、温風吹付け手段302を通過するように搬送され、シート処理部600に受け渡され、シート処理部600から搬出部400へ受け渡される。
【0070】
温風吹付け手段302を通過するとき、シートP上の液体には乾燥処理が施される。これにより液体中の水分等の液分が蒸発し、シートP上に液体中に含まれる着色剤が定着する。
【0071】
搬出部400は、複数のシートPが積載される排出トレイ410を備えている。シート処理部600から搬送されてくるシートPは、排出トレイ410上に順次積み重ねられて保持される。
【0072】
なお、印刷装置1には、例えば、シートPに対して前処理を行う前処理部を印刷部200の上流側に配置したり、液体が付着したシートPに対して後処理を行う後処理部をシート処理部600と搬出部400との間に配置したりすることもできる。
【0073】
前処理部としては、例えば、液体と反応して滲みを抑制するための処理液をシートPに塗布する先塗り処理を行うものが挙げられる。また、後処理部としては、例えば、印刷部200で印刷されたシートを反転させて再び印刷部200へ送ってシートPの両面に印刷するためのシート反転搬送処理や、複数枚のシートを綴じる処理などを行うものが挙げられる。
【0074】
また、本願における「記録装置」は、インクジェット記録装置に限らず、シートに向けて液体を吐出する液体吐出ヘッドを備え、吐出された液体によって文字、図形等の有意な 画像が可視化されるものに限定されるものではなく、例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するものも含まれる。
【0075】
また、インクは、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液等の用途で用いることができる。
【0076】
また、「記録装置」には、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
【0077】
また、「液体吐出ヘッド」とは、吐出孔(ノズル)から液体を吐出・噴射する機能部品である。液体を吐出するエネルギー発生源として、圧電アクチュエータ(積層型圧電素子又は薄膜型圧電素子)、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどの吐出エネルギー発生手段を使用することができるが、使用する吐出エネルギー発生手段が限定されるものではない。
【0078】
次に、本発明の実施形態におけるシート処理部を構成している本発明に係る基材処理機構について図2及び図3を参照して説明する。図2は同基材処理機構の側面説明図、図3はローラ部分の説明図である。
【0079】
基材処理機構601は、基材を挟んで搬送する搬送部材を有する。図2に示す形態では、基材処理機構601は、シートPを挟んで搬送する無端状の上ベルト611と下ベルト612で構成されるベルト対602を備えている。
【0080】
上ベルト611は、搬送ローラ621A、ステアリングコントロールローラ622A、従動ローラ624A、625Aに掛け回され、テンションローラ623Aによってテンションが与えられている。
【0081】
下ベルト612は、搬送ローラ621B、ステアリングコントロールローラ622B、従動ローラ624B、625Bに掛け回され、テンションローラ623Bによってテンションが与えられている。
【0082】
これらの上ベルト611と下ベルト612は、搬送ローラ621A、621Bが回転駆動されることによって矢印方向に周回移動し、シートPを挟み持ってシートPを搬送方向(矢印Y方向、以下「搬送方向Y」という。)に搬送する。
【0083】
ここで、テンションローラ623A、623Bは、ベルト対602のシートPを挟み持つベルト面が搬送方向Yの上流側と下流側とに引っ張られる方向に作用する張力を、ベルト対602の各ベルト611、612にそれぞれ付与するテンション付与手段となる。
【0084】
そして、ベルト対602の上ベルト611と下ベルト612の各ベルト面が対向(対面)してシートPを挟み持つ領域で、ベルト対602の上ベルト611又は下ベルト612に接触し、搬送方向Yに沿って配置されている複数(ここでは、3個)の曲面部材であるローラ603(603A、603B)を備えている。ローラ603は、ベルト対602の一部を湾曲形状に変形(湾曲変形)させている。
【0085】
ローラ603は、発熱手段としてのヒータ604を内蔵しており、ベルト対602を介してローラ603に押し付けられて湾曲変形しているシートPの領域を加熱する加熱手段を兼ねている加熱ローラである。
【0086】
ここでは、上ベルト611と下ベルト612の各ベルト面が対向(対面)する領域内において、ローラ603Aとローラ603Bとを交互に配置している。
【0087】
そして、ベルト対602の下ベルト612側をローラ603Aの周面603a(図3参照)に押し付けることで、ベルト対602は上方に凸形状となるように湾曲変形される。また、ベルト対602の上ベルト611側をローラ603Bの周面603aに押し付けることで、ベルト対602は下方に凸形状となるように湾曲変形される。
【0088】
つまり、シートPの搬送方向において、シートPの一面側が凸形状になる方向に湾曲変形させるローラ603Aと、シートPの他面側が凸形状になる方向に湾曲変形させるローラ603Bとが交互に配置されている。なお、ローラ603Bを最上流側にしてローラ603Aとローラ603Bとを交互に配置することもできる。
【0089】
そして、ローラ603の周面(曲面)に対向し、ベルト対602をローラ603の周面に押し付ける押し付け手段を構成するローラ状の第1押し付け部材606と、同じくローラ状の第2押し付け部材607とが搬送方向Pに沿って配置されている。ここで、相対的に、第1押し付け部材606は搬送方向Pの上流側に配置され、第2押し付け部材607は搬送方向Pの下流側に配置されている。
【0090】
第1押し付け部材606は、ベルト対602がローラ603の周面603aに接触を開始する押し付け開始位置(巻き付け開始位置)を決めている。第2押し付け部材607は、ベルト対602がローラ603の周面603aから離間する押し付け終了位置(巻き付け終了位置)を決めている。
【0091】
ここで、搬送方向Yで隣り合う曲面部材(ローラ603)の内の、上流側のローラ603に対向する第2押し付け部材607と下流側のローラ603に対向する第1押し付け部材606部材との間は離れている。また、上流側のローラ603と下流側のローラ603は、上流側の第2押し付け部材607と下流側の第1押し付け部材606との間でベルト対602が湾曲しない状態になる間隔で配置されている。
【0092】
これにより、ローラ603の周面に倣って一旦湾曲したベルト対602の応力を解放することができ、次段のローラ603に対する密着性を向上することができる。
【0093】
なお、第1押し付け部材606及び第2押し付け部材607は、ローラ603の周面に対して進退可能(移動可能)に配置されている。これにより、シートPの厚み(種類)、液体付与量などに応じて、ベルト対602のローラ603の周面への巻き付け角θを変化させることができる。
【0094】
上述のように、基材処理機構601は、シートPを挟んで搬送するベルト対602と、ベルト対602がシートPを挟み持つ領域内でベルト対602の一部を湾曲変形させる押し当て部材(押し付け部材)と、を備え、シートPをベルト対602に挟んで搬送しながら、ベルト対602の一部を湾曲変形させることによって、シートPとベルト対602とが接触して画像が擦過され、摩擦熱によってインク中の樹脂エマルジョンの造膜が促進され、画像表面が平滑になることで光沢度が増して画像濃度が向上するとともに擦過性も良化するものと考えられる。
【実施例
【0095】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、実施例6とあるのは、本発明に含まれない参考例6とする。
【0096】
(調製例1)
-マゼンタ顔料含有ポリマー微粒子分散液の調製-
<ポリマー溶液Aの調製>
機械式攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流管、及び滴下ロートを備えた1Lのフラスコ内を充分に窒素ガス置換した後、スチレン11.2g、アクリル酸2.8g、ラウリルメタクリレート12.0g、ポリエチレングリコールメタクリレート4.0g、スチレンマクロマー4.0g、及びメルカプトエタノール0.4gを混合し、65℃に昇温した。
次に、スチレン100.8g、アクリル酸25.2g、ラウリルメタクリレート108.0g、ポリエチレングリコールメタクリレート36.0g、ヒドロキシルエチルメタクリレート60.0g、スチレンマクロマー36.0g、メルカプトエタノール3.6g、アゾビスメチルバレロニトリル2.4g、及びメチルエチルケトン18gの混合溶液を2.5時間かけて、フラスコ内に滴下した。滴下後、アゾビスメチルバレロニトリル0.8g及びメチルエチルケトン18gの混合溶液を0.5時間かけて、フラスコ内に滴下した。65℃で1時間熟成した後、アゾビスメチルバレロニトリル0.8gを添加し、更に1時間熟成した。反応終了後、フラスコ内にメチルエチルケトン364gを添加し、濃度が50質量%のポリマー溶液Aを800g得た。
【0097】
<顔料含有ポリマー微粒子分散液の調製>
ポリマー溶液Aを28gと、C.I.ピグメントレッド122を42g、1mol/Lの水酸化カリウム水溶液13.6g、メチルエチルケトン20g、及びイオン交換水13.6gを十分に攪拌した後、ロールミルを用いて混練した。得られたペーストを純水200gに投入し、充分に攪拌した後、エバポレータ用いてメチルエチルケトン及び水を留去し、更に粗大粒子を除くためにこの分散液を平均孔径5.0μmのポリビニリデンフロライドメンブランフィルターにて加圧濾過し、顔料15質量%含有、固形分20質量%のマゼンタ顔料含有ポリマー微粒子分散液を得た。得られたマゼンタ顔料含有ポリマー微粒子分散液におけるポリマー微粒子の平均粒子径(D50)を測定したところ108nmであった。なお、平均粒子径(D50)の測定は、粒度分布測定装置(日機装株式会社製、ナノトラックUPA-EX150)を用いた。
【0098】
(調製例2)
-シアン顔料含有ポリマー微粒子分散液の調製-
調製例1において、顔料としてのC.I.ピグメントレッド122をフタロシアニン顔料(C.I.ピグメントブルー15:3)に変更した以外は、調製例1と同様にして、シアン顔料含有ポリマー微粒子分散液を調製した。
得られたシアン顔料含有ポリマー微粒子分散液におけるポリマー微粒子について、粒度分布測定装置(日機装株式会社製、ナノトラックUPA-EX150)で測定した平均粒子径(D50)は93nmであった。
【0099】
(調製例3)
-イエロー顔料含有ポリマー微粒子分散液の調製-
調製例1において、顔料としてのC.I.ピグメントレッド122をモノアゾイエロー顔料(C.I.ピグメントイエロー74)に変更した以外は、調製例1と同様にして、イエロー顔料含有ポリマー微粒子分散液を調製した。
得られたイエロー顔料含有ポリマー微粒子分散液におけるポリマー微粒子について、粒度分布測定装置(日機装株式会社製、ナノトラックUPA-EX150)で測定した平均粒子径(D50)は90nmであった。
【0100】
(調製例4)
-カーボンブラック顔料含有ポリマー微粒子分散液の調製-
調製例1において、顔料としてのC.I.ピグメントレッド122をカーボンブラック(デグサ社製、FW100)に変更した以外は、調製例1と同様にして、カーボンブラック顔料含有ポリマー微粒子分散液を調製した。
得られたカーボンブラック顔料含有ポリマー微粒子分散液におけるポリマー微粒子について、粒度分布測定装置(日機装株式会社製、ナノトラックUPA-EX150)で測定した平均粒子径(D50)は104nmであった。
【0101】
-スチレンアクリル樹脂Aの調製-
オレフィン系重合体(1)として、プロピレン―ブテン―エチレン三元共重合体(ベストプラスト750、デグサジャパン製)1000g、無水マレイン酸変性ポリプロピレンワックス(ハイワックスNP0555A、三井化学株式会社製)100gおよびオレイン酸カリウム40g(KSソープ、花王株式会社製)を混合し、2軸スクリュー押出機(池貝鉄工製、PCM-300、L/D=40)のホッパーより3000g/時間の速度で供給し、同押出機のベント部に設けた供給口より、水酸化カリウムの17%水溶液を120g/時間の割合(全体当たり4%)で連続的に供給し、過熱温度200℃で連続的に押し出した。押し出された樹脂混合物は、同押出機に設置したジャケット付きスタティックミキサーで90℃まで冷却され、さらに80℃の温水中に投入され、収率99%、固形分 濃度40%、pH12のオレフィン系重合体の水性分散体(2)を得た。攪拌機、還流冷却機および温度計を備えたセパラブルフラスコに脱イオン水217.3gとアニオン性分散剤であるドデシルスルホン酸ナトリウム2.3gを仕込み、全体が均一になるまで攪拌した。攪拌下、25%アンモニア水0.65g添加し、オレフィン系重合体の水性分散体(2)を25g添加し、全体が均一になるまで攪拌した。更に、攪拌下、スチレン10.2gとブチルアクリレート12.4gの混合溶液を加え、攪拌しながら、系内の溶存酸素を除去するために、1時間30分窒素バブリングした。バブリング終了後、70℃に昇温した。内温が70℃に達したところで、水溶性ラジカル開始剤として、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)10%水溶液0.32gを添加し、6時間後、重合を完了した。この水分散性スチレンアクリル樹脂AのTgは90℃、粒径D50は120nmであった。
【0102】
-スチレンアクリル樹脂Bの調製-
攪拌機、還流冷却機および温度計を備えたセパラブルフラスコに脱イオン水250g、リビングラジカル重合性を有する化合物として付加-解裂型連鎖移動剤(RAFT剤)である[1-(O-エチルザンチル)エチル]ベンゼン1.04gとエチルアクリレート1.69gを仕込み、液中の溶存酸素を除去するため、1時間30分窒素バブリングを実施した。バブリング終了後、攪拌機にて攪拌しながら70℃に昇温した。内温が70℃に達したところで、水溶性ラジカル開始剤として10%過硫酸ナトリウム水溶液を5g添加した。20分後、エチルアクリレート32.06gとメタクリル酸11.25gの混合液を3時間で滴下し終えるように滴下した。滴下終了後、4時間70℃で熟成し、水性分散体(1)の重合を完了した。攪拌機、還流冷却機および温度計を備えたセパラブルフラスコに脱イオン水203.4gと水性分散体(1)14.8gを仕込み、全体が均一になるまで攪拌した。攪拌下、25%アンモニア水0.65gを添加し、無色透明の水性樹脂水溶液を得た。ここに、ケミパールW400(低分子量ポリオレフィン系エマルション、固形分40%、三井化学株式会社製)を25g添加し、全体が均一になるまで攪拌した。さらに、攪拌下、スチレンを22.5g加え、攪拌しながら、系内の溶存酸素を除去するために、1時間30分窒素バブリングした。バブリング終了後、70℃に昇温した。内温が70℃に達したところで、水溶性ラジカル開始剤として、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)10%水溶液0.32gを添加し、6時間後、重合を完了した。得られた水分散性スチレンアクリル樹脂BのTgは65℃、粒径D50は100nmであった。
【0103】
-記録用インクの作製-
各記録用インクの製造は、以下の手順で行った。まず、下記表1に示す溶剤、界面活性剤、樹脂、ワックス及び水を混合し(質量%)、1時間攪拌を行い均一に混合する。この混合液に対して顔料分散液を添加し、1時間攪拌する。この分散液を平均孔径5.0μmのポリビニリデンフロライドメンブランフィルターにて加圧濾過し、粗大粒子やごみを除去して、各記録用インクを作製した。
【0104】
[画像の形成]
前記図1に示した記録装置を用いて、記録媒体の両面に画像を記録し、画像の評価を行った。前記記録媒体としては、コート紙として、Lumi Art Gloss 90gsmのロール紙をセットし、1,200dpiの解像度にてベタ画像を記録した。その際、乾燥部300を通過後に搬送を停止し、印字画像を取り出して、画像濃度(乾燥後)を測定した。また、処理部600を通過後の印字画像の画像濃度(擦過後)を測定した。また排紙部400に排紙された印字画像のブロッキングを測定した。
【0105】
<コート紙の画像濃度>
乾燥後および擦過後の印刷物について、反射型カラー分光測色濃度計(X-Rite社製)を用いて画像濃度を測定し、下記基準で評価した。
【0106】
〔評価基準〕
◎:Black : 1.6以上
Yellow : 1.3以上
Magenta: 1.4以上
Cyan : 1.6以上
〇:Black : 1.3以上、1.6未満
Yellow : 1.0以上、1.3未満
Magenta: 1.1以上、1.4未満
Cyan : 1.3以上、1.6未満
△:Black : 1.3未満
Yellow : 1.0未満
Magenta: 1.1未満
Cyan : 1.3未満
【0107】
(ブロッキング)
目視にて、記録画像同士の張り付き具合と画像の転写(オフセット)の様子を確認し、下記評価基準に基づいて、「ブロッキング」を評価した。〇、△評価が合格である。
〔評価基準〕
○:画像の転写がない
△:引き剥がす際に軽度の張り付きを感じるが、画像の転写がない
×:画像の転写がある
【0108】
<耐擦過性>
得られた画像について、1.2mm四方に切った紙(Lumi Art Gloss 90gsm)を用いて画像を20回擦り、反射型カラー分光測色濃度計(X-Rite社製)を用いて紙へのインク付着汚れを測定し、擦った紙の地肌色を差し引いた濃度を算出し、下記評価基準に基づいて、「摺擦性」を評価した。◎、〇、△評価が合格である。
〔評価基準〕
◎:転写濃度が0.05未満
〇:転写濃度が0.05以上0.10未満
△:転写濃度が0.10以上0.25未満
×:転写濃度が0.25以上
【0109】
<吐出安定性>
印字装置としてRICOH SG5100を使い、Microsoft Word2000にて作成した一色当りA4サイズ用紙の面積5%をベタ画像にて塗りつぶすチャートを連続200枚、マイペーパー(株式会社NBSリコー製)に打ち出し、打ち出し後の各ノズルの吐出乱れから評価した。印字モードはプリンタ添付のドライバで普通紙のユーザー設定より「普通紙-はやい」モードを「色補正なし」と改変したモードを使用した。
〔評価基準〕
○:吐出乱れなし
△:若干吐出乱れあり
×:吐出乱れあり、もしくは吐出しない部分あり
【0110】
結果を表1に示す。
【0111】
【表1】
【0112】
表1における略号は以下の通りである。
・M100(N,N-ジメチル-β-エトキシプロピオンアミド:出光興産株式会社製、商品名)
・B100(N,N-ジメチル-β-ブトキシプロピオンアミド:出光興産株式会社製、商品名)
・EHO(3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン:宇部興産株式会社製、商品名)
・1,2-PD(1,2-プロパンジオール:株式会社ADEKA製)
・1,2-BD(1,2-ブタンジオール:神港有機化学工業社製)
・Gly(グリセリン)
・TEGO Wet 270(ポリエーテル変性シロキサン界面活性剤:エボニック社製、商品名)
・サーフィノール465(ノニオン性界面活性剤:Air Product and Chemicals,Inc社製、商品名)
・AQUACER 532(ビックケミー社製ワックスエマルション、不揮発分45%、商品名)
・AQUACER 552(ビックケミー社製ワックスエマルション、不揮発分35%、商品名)
・AQUACER 1547(ビックケミー社製ワックスエマルション、不揮発分35%、商品名)
【符号の説明】
【0113】
1 印刷装置
100 搬入部
110 搬入トレイ
120 給送装置
130 レジストローラ対
200 印刷部
201 渡し胴
202 受け渡し胴
210 担持ドラム
211 吸引装置
220 液体吐出部
220C、220M、220Y、220K 液体吐出ヘッド
300 乾燥部
301 吸引搬送ベルト
302 温風吹付け手段
303 駆動ローラ
304 従動ローラ
400 搬出部
410 排出トレイ
600 シート処理部
P シート
601 シート処理機構
602 ベルト対
603、603A、603B押し当てローラ
603a 周面
604 ヒータ
606、607 対向ローラ(対向部材)
608 ホルダ部材
611 上ベルト
612 下ベルト
621A、621B 搬送ローラ
622A、622B ステアリングコントロールローラ
623A、623B テンションローラ
624A、625A、624B、625B 従動ローラ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0114】
【文献】特開2017-88846号公報
図1
図2
図3