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特許7574640画像処理装置、画像処理システム、方法およびプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】画像処理装置、画像処理システム、方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/12 20060101AFI20241022BHJP
   H04N 1/32 20060101ALI20241022BHJP
   B41J 29/00 20060101ALI20241022BHJP
   B41J 21/00 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
G06F3/12 343
G06F3/12 304
G06F3/12 344
G06F3/12 345
G06F3/12 356
H04N1/32 144
B41J29/00 Z
B41J21/00 Z
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020214250
(22)【出願日】2020-12-23
(65)【公開番号】P2022100091
(43)【公開日】2022-07-05
【審査請求日】2023-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】小林 亮
【審査官】漆原 孝治
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-006724(JP,A)
【文献】特開平07-121673(JP,A)
【文献】特開2007-074295(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/12
H04N 1/32
B41J 29/00
B41J 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリンタドライバから出力されるC(シアン)M(マゼンタ)Y(イエロー)K(ブラック)カラースペースに対応した印刷データを入力する入力部と、
前記印刷データに含まれる印刷対象の文字情報を基に、赤外センシングデバイスによって検出可能なC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、およびK(ブラック)の色材の組み合わせによって秘匿化されている不可視情報に変換した情報を生成する生成部と、
前記不可視情報を含む画像形成用のデータを出力する出力部と、
を有し、
前記生成部は、抽出条件として設定したエリア情報に対応する領域の文字情報を抽出すること
を特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記文字情報は文字列情報である
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記生成部は、
前記文字情報の文字の画像の一部を不可視情報に変換した情報を生成し、
前記出力部は、
前記印刷データから前記文字情報を削除したエリアに前記情報を追加した画像形成用のデータを出力する、
請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記文字情報をラスター画像データに変換するラスター画像データ変換部と、
前記ラスター画像データにおいて文字の画像の一部を不可視情報に変換した情報を生成する、
請求項1乃至3のうちの何れか一項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記生成部は、前記文字のエッジ部分を不可視情報に変換した情報を生成する、
請求項3または4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記生成部は、前記文字の画像領域全体に亘り一部を不可視情報に変換した情報を生成する、
請求項3または4に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記生成部は、前記文字の画像領域全体に亘り一部を不可視情報とするマイクロ文字に変換した変換情報を生成する、
請求項6に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記生成部は、
前記印刷対象の文字情報を一次元または二次元のコード画像に変換するコード変換部と、
背景画像を取得する取得部と
を有し、
前記取得部で取得した可視情報である前記背景画像に前記コード変換部で変換した前記コード画像を前記C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、およびK(ブラック)の色材の組み合わせにより秘匿化することで、赤外センシングデバイスによって検出可能なC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、およびK(ブラック)の色材の組み合わせによって秘匿化されている不可視情報に変換した情報を生成する、
請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記取得部は、前記背景画像を前記印刷データから取得する、
請求項に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記不可視情報は、前記背景画像との色材の印字量の組み合わせによって秘匿化されている、
請求項8または9に記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記生成部は、
前記印刷データから、前記印刷対象の文字情報として、抽出条件として設定した色情報に対応する文字情報を抽出する、
請求項1乃至10のうちの何れか一項に記載の画像処理装置。
【請求項12】
前記印刷データは、PDFデータまたはXPSデータである、
請求項1乃至10のうちの何れか一項に記載の画像処理装置。
【請求項13】
記情報は、前記文字情報に対応する不可視情報を含み、可視光下では前記不可視情報と共に前記文字情報の可視情報としての内容を示し、不可視光下では前記不可視情報の内容を示す情報である、
請求項1乃至12のうちの何れか一項に記載の画像処理装置。
【請求項14】
情報処理装置からの印刷指示に基づき画像処理装置が画像形成を指示する画像処理システムであって、
前記情報処理装置は、
データの印刷プレビュー画面上でユーザが抽出条件を設定する設定部と、
前記データと、前記設定部で設定した抽出条件とを出力する出力部と、
を有し、
前記画像処理装置は、
プリンタドライバから出力されるC(シアン)M(マゼンタ)Y(イエロー)K(ブラック)カラースペースに対応した印刷データと前記抽出条件とを入力する入力部と、
前記印刷データに含まれる印刷対象の文字情報を前記抽出条件に基づいて抽出し、抽出した文字情報を基に、赤外センシングデバイスによって検出可能なC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、およびK(ブラック)の色材の組み合わせによって秘匿化されている不可視情報に変換した情報を生成する生成部と、
前記不可視情報を含む画像形成用のデータを出力する出力部と、
を有し、
前記生成部は、抽出条件として設定したエリア情報に対応する領域の文字情報を抽出することを特徴とする、
画像処理システム。
【請求項15】
前記設定部は、前記抽出条件として色情報の設定を受け付ける、
請求項1に記載の画像処理システム。
【請求項16】
画像処理装置が画像形成を指示する方法であって、
プリンタドライバから出力されるC(シアン)M(マゼンタ)Y(イエロー)K(ブラック)カラースペースに対応した印刷データを入力するステップと、
前記印刷データに含まれる印刷対象の文字情報から、抽出条件として設定したエリア情報に対応する領域の文字情報を抽出して、抽出した文字情報を基に、赤外センシングデバイスによって検出可能なC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、およびK(ブラック)の色材の組み合わせによって秘匿化されている不可視情報に変換した情報を生成するステップと、
前記不可視情報を含む画像形成用のデータを出力するステップと、
を含む方法。
【請求項17】
コンピュータを、
プリンタドライバから出力されるC(シアン)M(マゼンタ)Y(イエロー)K(ブラック)カラースペースに対応した印刷データを入力する入力部と、
前記印刷データに含まれる印刷対象の文字情報から、抽出条件として設定したエリア情報に対応する領域の文字情報を抽出して、抽出した文字情報を基に、赤外センシングデバイスによって検出可能なC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、およびK(ブラック)の色材の組み合わせによって秘匿化されている不可視情報に変換した情報を生成する生成部と、
前記不可視情報を含む画像形成用のデータを出力する出力部と、
して機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、画像処理システム、方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、可視光下で人の目で読み取ることができない不可視情報を埋め込むステルス印刷技術が知られている。例えば赤外光センシングデバイスでのみ検出可能な不可視情報を埋め込み、その印刷物から不可視情報を読み取ることで改ざん等を判別する。
【0003】
特許文献1において、文書作成アプリケーションからプリンタドライバを介して印刷を行う場合に、プリンタドライバにて生成後の印刷用データの所定の位置に不可視情報を付加する技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、プリンタドライバが生成した印刷用データに対し、予め用意した画像を埋め込むという構成のため、固定の画像しか利用することができず、アプリケーションが作成したデータに応じた情報を付加して印刷することができないという問題がある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、アプリケーションが作成したデータに応じた情報への変換を行うことが可能な画像処理装置、画像処理システム、方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の画像処理装置は、プリンタドライバから出力されるC(シアン)M(マゼンタ)Y(イエロー)K(ブラック)カラースペースに対応した印刷データを入力する入力部と、前記印刷データに含まれる印刷対象の文字情報を基に、赤外センシングデバイスによって検出可能なC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、およびK(ブラック)の色材の組み合わせによって秘匿化されている不可視情報に変換した情報を生成する生成部と、前記不可視情報を含む画像形成用のデータを出力する出力部と、を有し、前記生成部は、抽出条件として設定したエリア情報に対応する領域の文字情報を抽出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、アプリケーションが作成したデータに応じた情報への変換を行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1の実施の形態にかかる画像処理装置を含むネットワーク構成の一例を示す図である。
図2図2は、クライアントPCのハードウェア構成の一例を示す図である。
図3図3は、画像処理装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
図4図4は、画像形成装置全体の外観構成の一例を示す図である。
図5図5は、クライアントPCおよび画像処理装置の機能ブロックの構成の一例を示す図である。
図6図6は、不可視データ変換部の機能ブロックの構成の一例を示す図である。
図7図7は、文字情報をラスター画像に変換する機能ブロックの構成の一例を示す図である。
図8図8は、文字抽出ルールに設定されている抽出条件の一例を示す図である。
図9図9は、文字抽出ルールに設定されている抽出条件のその他の一例を示す図である。
図10図10は、文書への不可視情報の埋め込み方法を説明する図である。
図11図11は、第1の変換方法を示す図である。
図12図12は、第2の変換方法を示す図である。
図13図13は、改ざんの発見方法について説明する図である。
図14図14は、不可視データ変換部の処理フローの一例を示す図である。
図15図15は、不可視情報埋込画像生成部の処理フローの一例を示す図である。
図16図16は、第2の実施の形態にかかる不可視データ変換部の機能ブロックの構成の一例を示す図である。
図17図17は、第2の実施の形態にかかる不可視情報の埋め込み方法を説明する図である。
図18図18は、不可視データ変換部による不可視情報埋込画像の生成方法の一例を示す図である。
図19図19は、改ざんがある場合の印字結果の一例を示す図である。
図20図20は、不可視データ変換部の処理フローの一例を示す図である。
図21図21は、第3の実施の形態にかかるクライアントPCおよび画像処理装置の機能ブロックの構成の一例を示す図である。
図22図22は、文書への不可視情報の埋め込み方法を説明する図である。
図23図23は、第4の実施の形態にかかるクライアントPCおよび画像処理装置の機能ブロックの構成の一例を示す図である。
図24図24は、文書への不可視情報の埋め込み方法を説明する図である。
図25図25は、第5の実施の形態にかかるクライアントPCおよび画像処理装置の機能ブロックの構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照して、画像処理装置、画像処理システム、方法およびプログラムの実施の形態を詳細に説明する。なお、以下において「可視情報」とは、人間の目もしくは通常の可視光を利用したセンシングデバイスで確認することができる情報のことを指し、「不可視情報」とは、人間の目もしくは通常の可視光を利用したセンシングデバイスで確認することができない情報のこと、例えば赤外線(近赤外を含む)や紫外線などを利用したセンシングデバイスでのみ確認することができる情報のことを指す。
【0010】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態にかかる画像処理装置を含むネットワーク構成の一例を示す図である。図1において、クライアントPC(Personal Computer)20、プリントサーバ30、および画像形成装置10は、それぞれ通信ネットワーク40に接続可能に構成されている。
【0011】
クライアントPC20は、コンピュータ構成の情報処理装置であり、OS(オペレーションシステム)や文書作成アプリケーション等の機能を有する。クライアントPC20は、文書等の作成データや取得データ(外部から取得したデータ)の印刷指示があると、そのデータをプリンタドライバに渡し、プリンタドライバが生成した印刷用データ(つまり印刷データ)を、指定された画像形成装置10へ出力して画像形成装置10で印刷を実行させる。
【0012】
画像形成装置10は、プリンタや複合機(MFP)などであり、一例として、画像処理装置100、プロッタ150、およびスキャナ160を有する構成を示している。画像処理装置100は、「画像処理装置」の一例である。画像処理装置100は、クライアントPC20から送信された印刷用データに対して不可視情報を潜在させるなどの各種の処理を行う機能を有する。そして、画像処理装置100で処理を終えた処理後の印刷用データがプロッタ150に出力され、その印刷用データに基づいてプロッタ150で印刷が実行される。
【0013】
以下では一例として「情報処理装置」の一例のクライアントPC20と「画像処理装置」の一例の画像処理装置100とによる処理の構成を示すが、クライアントPC20の印刷指示をプリントサーバ30が受信し、「情報処理装置」の一例としてプリントサーバ30から、「画像処理装置」に印刷の実行を指示する構成であっても勿論よい。
【0014】
図2は、クライアントPC20のハードウェア構成の一例を示す図である。図2に示すように、クライアントPC20は、CPU(Central Processing Unit)21、ROM(Read Only Memory)22、RAM(Random Access Memory)23、HDD24、I/O(Input/Output)25、LCD(Liquid Crystal Display)26、入力装置27、及び通信I/F28を有する。各部は、バス29などを介して接続されている。LCD26及び入力装置27は、I/O25を介して接続されている。
【0015】
CPU21は、クライアントPC20全体の制御を司る中央演算処理装置である。ROM22は、BIOS等の固定プログラムを記憶する不揮発性メモリである。RAM23は、CPU21がワークとして利用する揮発性メモリである。
【0016】
HDD24は、制御プログラムやデータなどを記憶する補助記憶装置である。制御プログラムは、OSやアプリケーション等の各種プログラムを含む。HDDに限らず、磁気的、電気的、または光学的に書き込みや読出しを行う記憶媒体を有するものを使用してよい。
【0017】
LCD26は、プレビュー(印刷プレビュー等)や設定ボタン等の操作画面を表示する液晶表示ディスプレイである。入力装置27は、キーボードやマウスなどの入力装置である。なお、入力装置27としてタッチパネルを設けてもよい。
【0018】
通信I/F28は、通信ネットワーク40を介して外部機器(画像形成装置10など)と通信を行う通信インタフェースである。通信I/F28は、情報処理装置の「入出力部」に相当する。
【0019】
クライアントPC20は、CPU21がOSやアプリケーションなどの対応プログラムをRAM23に適宜読み出して実行することにより、後述する機能を発揮する。
【0020】
図3および図4は、画像処理装置のハードウェア構成の一例を示す図である。図3に画像処理装置100のハードウェア構成を示し、図4に画像処理装置100を含む画像形成装置10の外観構成を示している。
【0021】
図3に示すように、画像処理装置100は、CPU10Aと、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)11と、ROM12aとRAM12bを含むシステムメモリ12と、SDメモリカードスロット13aとUSB(Universal Serial Bus)インタフェース13bとネットワークインタフェース13cとを含むインタフェース13と、補助記憶装置14と、タッチ表示ディスプレイ15とを有する。
【0022】
CPU10Aは、RAM12bの所定領域を作業領域として、ROM12aまたは補助記憶装置14に予め記憶された各種プログラムとの協働により、対応する各種処理を実行し、画像形成装置10全体の動作を統括的に制御する。後述する機能は、対応するプログラムにより一部あるはすべてを実現してもよいし、ASIC等のハードウェアで設けてもよい。
【0023】
ASIC11は、画像処理用のハードウェア要素を有する画像処理用途向けのIC(Integrated Circuit)であり、CPU10Aと各部を夫々接続するブリッジとしての機能を有する。
【0024】
ROM12aは、固定プログラムや固定データを格納する読み出し専用メモリである。RAM12bは、プログラムやデータの展開用あるいはプリンタの描画用などに用いられる、書き込みと読み出しとが自在な揮発性メモリである。
【0025】
SDメモリカードスロット13aは、外部記憶装置としてのSD(登録商標)メモリカードを着脱可能に接続する。USBインタフェース13bは、外部記憶装置としてのUSBフラッシュメモリを着脱可能に接続する。
【0026】
ネットワークインタフェース13cは、ネットワークカードなどであり、自装置を通信ネットワーク40に接続し、データ(印刷用データ等)を外部から入力する。ネットワークインタフェース13cは、画像処理装置の「入力部」に相当する。
【0027】
補助記憶装置14は、磁気的、電気的、または光学的に書き込みや読出しを行う記憶媒体を有する。例えば磁気記録媒体を有するものとしてHDDなどがある。補助記憶装置14は、画像形成装置10の各種制御にかかるプログラムを書き換え可能に記憶する。
【0028】
タッチ表示ディスプレイ15は、ユーザが画像形成装置10と対話形式で印刷設定等の操作を行うためのユーザインタフェース部であり、液晶等の表示デバイスと、タッチパネルやキースイッチ群などを有する入力デバイスとから構成される。タッチ表示ディスプレイ15は、CPU10Aの制御の下、画像形成装置10の動作や印刷設定等の状態や操作方法などを表示デバイスの画面に表示する。また、タッチ表示ディスプレイ15は、タッチパネルやキースイッチ群を介してユーザによる入力を検出すると、その入力情報をCPU10Aに出力する。
【0029】
図4には、一般に複合機(MFP)と称される画像形成装置10を示している。図4に示すように、画像形成装置10は、スキャナ160(図1参照)に対応する読取装置本体50およびADF(Automatic Document Feeder)60を有し、プロッタ150(図1参照)に対応する画像形成部80および給紙部90を有する。画像処理装置の一例とする画像処理装置100(図1参照)は、画像形成装置10内部の制御部などに備えられている。
【0030】
読取装置本体50は、上面にコンタクトガラス51を有し、読取装置本体50の内部に、光源53、第1キャリッジ54、第2キャリッジ55、レンズユニット56、センサボード57などでコンタクトガラス51上の読取対象の画像を読み取る読取手段を有する。なお、図4において、第1キャリッジ54は光源53と反射ミラー54-1とを有し、第2キャリッジ55は反射ミラー55-1、55-2を有する。
【0031】
読取装置本体50は、光源53の光を読取対象に照射し、読取対象からの反射光を第1キャリッジ54のミラー54-1や第2キャリッジ55のミラー55-1、55-2で折り返してレンズユニット56に入射し、レンズユニット56からセンサボード57上の受光面上に結像した読取対象の像を読み取る。センサボード57は、CCD(Charge Coupled Device)またはCMOS(Complementary MOS)などのラインセンサを有し、ラインセンサにおいて受光面に結像した読取対象の像を順次電気信号に変換して画像を読み取る。この読取手段は、可視光を読み取る一般的なセンシングデバイスと、赤外光を読み取る赤外センシングデバイスを備え、可視情報と不可視情報とをそれぞれ読み取りことができる。
【0032】
ADF60は、トレイ61からピックアップローラ62により原稿Xを1枚ずつ搬送路63に搬送し、原稿Xの読取対象の面を所定の読取位置で読み取って原稿Xを排紙トレイ65に排出する。原稿Xの搬送は各種搬送ローラ64の回転により行う。
【0033】
原稿Xの読取は、画像形成装置10が例えば第1キャリッジ54および第2キャリッジ55を所定のホームポジションに移動して固定し、それを固定した状態で、原稿Xが読取窓59を通過するタイミングで行う。読取窓59はコンタクトガラス51の一部に設けられたスリット状の読取窓であり、原稿Xが自動搬送で読取窓59を通過することで原稿Xの副走査方向が走査される。画像形成装置10は、原稿Xが読取窓59を通過する間に読取窓59側に向けられている原稿Xの表面に照射した光源53の光の反射光をセンサボード57上のラインセンサで逐次読み取る。
【0034】
また、原稿Xの両面読取を行う場合には、読取窓59の通過後に、読取モジュール67により原稿Xの裏面の読み取りを行うことでできる。読取モジュール67は、照射部と、密着型イメージセンサとを有し、原稿Xの裏面に対して照射された光の反射光を密着型イメージセンサで読み取る。なお、この形態の画像形成装置10ではフラットベット方式での読み取りも可能である。
【0035】
画像形成装置10は、クライアントPC20から送信された印刷用データに基づいて画像処理装置100が各種の処理を行い、処理後の画像を画像形成部80で記録紙に印刷する。また、読取装置本体50で読み取った読取画像を画像処理し、処理後の画像を画像形成部80で記録紙に印刷する。
【0036】
具体的に、画像形成部80は、光書込装置81や、タンデム方式の作像ユニット(Y、M、C、K)82や、中間転写ベルト83や、二次転写ベルト84などを有する。画像形成部80では、印刷対象の画像について光書込装置81が作像ユニット82の感光体ドラム820に画像を書き込み、各感光体ドラム820から中間転写ベルト83上にそれぞれの版のトナー画像が転写される。K版はカーボンブラックを含有するKトナーで形成される。
【0037】
図4に示す例では、作像ユニット(Y、M、C、K)82は、回転可能な4つの感光体ドラム(Y、M、C、K)820を有し、各感光体ドラム820の周囲に、帯電ローラ、現像器、一次転写ローラ、クリーナーユニット、及び除電器を含む作像要素をそれぞれ備える。各感光体ドラム820の周囲で各作像要素が所定の作像プロセスで動作することにより、各感光体ドラム820上に画像が形成され、各感光体ドラム820に形成された画像が一次転写ローラにより中間転写ベルト83上にそれぞれトナー画像として転写される。
【0038】
中間転写ベルト83は、各感光体ドラム820と各一次転写ローラとの間のニップに、駆動ローラと従動ローラとにより張架して配置されている。中間転写ベルト83に一次転写されたトナー画像は、中間転写ベルト83の走行により、二次転写装置で二次転写ベルト84上の記録紙に二次転写される。その記録紙は、二次転写ベルト84の走行により、定着装置85に搬送され、記録紙上にトナー画像がカラー画像として定着する。その後、記録紙は、機外の排紙トレイへと排出される。
【0039】
なお、記録紙は、例えば給紙部90が用紙サイズの異なる記録紙を収納する給紙カセット91、92から所定の記録紙を繰り出して、各種ローラからなる搬送手段93で搬送して二次転写ベルト84に供給する。
【0040】
なお、画像形成部80は、上述したような電子写真方式によって画像を形成するものに限るものではなく、インクジェット方式によって画像を形成するものであってもよい。
【0041】
図5は、クライアントPC20および画像形成装置10の画像処理装置100の機能ブロックの構成の一例を示す図である。ここでは、クライアントPC20と画像処理装置100とが有する機能のうちの特徴的な機能について説明する。
【0042】
クライアントPC20は、印刷指示を受けると、図5に示す流れでアプリケーション201が作成したデータ(以下、一例として文書データとする)をプリンタドライバ203で印刷用データD1に変換して画像処理装置100に出力する。例えばクライアントPC20のアプリケーション201は、クライアントPC20のOS202の描画用APIと、プリンタドライバ203のプリンタドライバグラフィックス機能を介して、文書データから印刷用データD1を生成する。この印刷用データD1は、画像処理装置100が解釈可能なコマンドデータ形式、一般的にはPDL(ページ記述言語)で生成される。
【0043】
一方、画像処理装置100に印刷用データD1が入力されると、不可視データ変換部101が、「生成部」として、文字抽出ルールR1に設定されている抽出条件に基づき印刷用データD1から印刷対象の文字情報を抽出し、抽出した文字情報を不可視情報を含む画像に変換する。
【0044】
不可視データ変換部101は、変換を終えると、「出力部」として、不可視情報を含む画像を印刷用データD1中に配置し、その印刷用データ(不可視情報埋込画像付き印刷用データ)D2をRIP部(Raster Image Processing)102に出力する。なお、不可視情報を含む画像が「変換情報」に相当する。また、不可視情報を含む画像のことを不可視情報埋込画像と呼ぶ。また、不可視情報埋込画像が配置された印刷用データD1のことを「不可視情報埋込画像付き印刷用データD2」あるいは単に「印刷用データD2」と呼ぶ。
【0045】
さらにRIP部102が、「出力部」として、不可視情報埋込画像付き印刷用データD2をラスターデータに変換し、変換後の印刷用ラスターデータD3をプロッタ150に出力する。印刷用ラスターデータD3が「画像形成用のデータ」に相当する。
【0046】
なお、不可視情報は、肉眼では視認困難であるが、特定の観察環境でのみ検出可能な画像情報のことを指すが、以下では赤外に反応をもつセンシングデバイス(赤外センシングデバイスと言う)でのみ検出可能な画像情報を不可視情報の一例として説明する。
【0047】
続いて不可視データ変換部101の機能についてさらに詳しく説明する。
【0048】
図6は、不可視データ変換部101の機能ブロックの構成の一例を示す図である。不可視データ変換部101は、図6に示す文字情報抽出部111と、不可視情報埋込画像生成部112と、不可視情報埋込画像追加部113とを備える。
【0049】
文字情報抽出部111は、印刷用データD1中のオブジェクト情報を解析し、文字抽出ルールR1に設定されているエリア情報または色情報など所定の抽出条件を満足する文字オブジェクト情報を抽出する。例えばPDLの場合、印刷用データD1は描画オブジェクトや、座標データや、色データなどから構成されているため、文字抽出ルールR1に抽出対象の文字の座標エリアや色データを指定することで文字情報抽出部111は該当する文字オブジェクト情報を抽出する。
【0050】
不可視情報埋込画像生成部112は、文字情報抽出部111で抽出された文字オブジェクト情報などである文字情報D11を使用して不可視情報埋込画像D12を生成する。
【0051】
不可視情報埋込画像追加部113は、印刷用データD1中に不可視情報埋込画像D12を配置したり追加したりする。これにより、例えば印刷用データD1中に、文字情報抽出部111が抽出した抽出対象と、不可視情報とが同一媒体上に印字されるようにする。
【0052】
図7は、文字情報をラスター画像に変換する機能ブロックの構成の一例を示す図である。図7に示す機能ブロックの構成では、図6に示す文字情報抽出部111の処理と不可視情報埋込画像生成部112の処理の間に「ラスター画像データ変換部」としてラスター画像生成部115が文字情報D11をラスター画像データに変換する処理を行う。
【0053】
ラスター画像生成部115は、文字情報抽出部111が抽出した文字情報D11がラスター画像でない場合にRGBラスター画像(座標データと画素値で構成される画像)に変換する処理を行う機能部である。不可視情報埋込画像生成部112は、変換後のラスター画像である文字画像D111を受け取って不可視情報埋込画像D12を生成する。
【0054】
図8は、文字抽出ルールR1に設定されている抽出条件の一例を示す図である。一例としてエリア情報の設定例を示している。図8には、文字抽出ルールR1に対象エリアとして3か所のエリア情報が設定されている。よって、この文字抽出ルールR1を使用する場合は、文字抽出ルールR1に指定されている3か所のエリアの文字が、文字情報抽出部111により印刷用データD1から抽出される。
【0055】
図9は、文字抽出ルールR1に設定されている抽出条件のその他の一例を示す図である。一例として色情報の設定例を示している、図9には、文字抽出ルールR1に対象色として3種類の色情報が設定されている。よって、この文字抽出ルールR1を使用する場合は、文字情報抽出部111により印刷用データから各色それぞれに対応する文字が抽出される。
【0056】
続いて、画像処理装置100における文書への不可視情報の埋め込みについて説明する。なお、以下において埋込は、潜在方法の一つとする。
【0057】
図10は、文書への不可視情報の埋め込み方法を説明する図である。図10に示すように、アプリケーションにより作成されたアプリケーションデータ、一例として文書データD0、の印刷指示があると、画像処理装置100は次のように不可視情報の埋め込みを行ってプロッタ150に印刷を指示する。
【0058】
図10に示す一例では、不可視データ変換部101が印刷用データD1において対象エリアの文字情報D11を抽出する。この例では、金額1000円の文字情報D11を抽出する。さらに不可視データ変換部101が、不可視情報を埋め込んだ不可視情報埋込画像D12に文字情報D11を変換する。ここで、不可視情報埋込画像D12は、可視光下では人の目により文字画像D111と同じように見える画像である。例えば文字情報D11が1000円の黒のベタ塗りの画像(文字画像D111)であったならば、不可視情報埋込画像D12も1000円の同じ黒のベタ塗りの画像に見えるように不可視情報が埋め込まれる。
【0059】
不可視データ変換部101は、文字情報D11を不可視情報埋込画像D12へ変換した後、元の文字情報D11を印刷用データD1から削除して、文字情報D11を不可視情報埋込画像D12に置き換えた印刷用データ(不可視情報埋込画像付き印刷用尾データD2)でプロッタ150に印刷を指示する。
【0060】
ここで、不可視情報埋込画像D12への変換方法について2つの例を示す。なお、この2つに不可視情報の変換方法を限定するものではない。
【0061】
図11は、第1の変換方法を示す図であり、図12は、第2の変換方法を示す図である。図11には、不可視情報埋込画像D12として「1000」の画像Q12を示している。「1000」の画像Q12は、「1000」の文字画像D111から変換を行ったものである。
【0062】
「1000」の画像Q12は、文字画像D111の「1000」の数字のエッジ部分(輪郭)を不可視情報に変換し、エッジ部分の内側は元の可視情報のままで作成したものである。つまり、不可視情報埋込画像D12は文字画像D111の数字のエッジ部分に不可視情報を潜在させている。
【0063】
例えば、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、およびK(ブラック)の各トナーにより、文字画像D111が「1000」という数字を黒ベタで印字するものであった場合、数字のエッジ部分の内側については各トナーの混合比(C、M、Y、K)=(100、100、100、0)、つまりC、M、およびYだけで黒を表現し、数字のエッジ部分については(C、M、Y、K)=(0、0、0、100)、つまりKトナーだけで黒を表現するようにデータを変換する。
【0064】
図11に、「1000」の画像Q12の印字結果を観察した観察画像Q121と観察画像Q122とを示している。観察画像Q121は、可視光下で人の目で観察したときの画像である。この画像が示すように、「1000」のエッジ部分と内側は共に黒で表現されているため、観察者からは従来通りの印刷方法で「1000」が印刷されているように見える。
【0065】
一方、観察画像Q122は、赤外センシングデバイスでの観察画像である。赤外センシングデバイスにより、CMYトナーとKトナーとの吸収特性の差からKトナーのみが観察され、この画像から数字のエッジ部分が潜像として埋め込まれていることが分かる。
【0066】
つまり、見た目には特殊な処理が施されているように見えないが、赤外域などの特殊な波長で観察すると潜像が分かるようになる。このため、例えば数字のエッジ部分に潜像を施しておけば、後から印刷物に数字を加えるなど改ざんがあった場合でも、特殊な波長で観察すれば、加えた数字が他とは異なる表示になるため、改ざんを発見することができる。
【0067】
図12にも、同じく不可視情報埋込画像D12として「1000」の画像Q12を示しているが、この例では「1000」の数字部分の画像領域全体に亘り、一部を不可視情報に変換させた場合の例を示している。一例では「1000」のエッジ部分の内側を不可視情報である小さな数字(マイクロ文字と呼ぶ)で変換させた場合の例を示している。エッジ部分と、エッジ部分の内側のマイクロ文字以外の領域は変換せずにそのままにしている。この例では、数字「1」のエッジ部分の内側をマイクロ文字「1」で所定間隔で敷き詰め、数字「0」のエッジ部分の内側をマイクロ文字「0」で所定間隔で敷き詰めた例を示している。数字の値は、文字画像D11を得る前の文字情報や、文字画像をOCR処理するなどして得ることができる。
【0068】
この例の場合、観察画像Q121は、図11と同様に数字全体がマイクロ文字を含めて黒で表現されているため、観察者からは従来通りの印刷方法で「1000」が印刷されているように見える。また、観察画像Q123は、赤外センシングデバイスによりKトナーのマイクロ文字のみが観察されるため、マイクロ文字だけで「1000」という形状と、それぞれの数字の値が表現される観察画像になる。
【0069】
図13は、改ざんの発見方法について説明する図である。本実施の形態において示す方法により不可視情報を付加して印刷を行ったものに改ざんを行った場合を説明する。
【0070】
図13に示すように「1000」という数字の画像Q12に対し、後から「1」を付け加えたとする。加えた「1」のような改ざん部m1は、不可視情報が埋め込まれていないため、可視光下では「11000」という数字の観察画像Q121に見えるが、赤外センシングデバイスで観察すると改ざん部m1は黒塗りの「1」で観察され、白抜きで観察される他の数字とは異なり、改ざんされたことが分かる。
【0071】
このように、見た目には特殊な処理が施されているように見えないが、特殊な波長で観察すると潜像が分かるようになる。このため、改ざんされている箇所を特定することも可能である。
【0072】
続いて、画像処理装置100が行う処理手順を説明する。まず、画像処理装置100の不可視データ変換部101が行う全体的な処理手順を図14のフロー図により説明し、そのうちの不可視情報埋込画像生成部112が行う処理手順を図15のフロー図により説明する。
【0073】
図14は、不可視データ変換部101の処理フローの一例を示す図である。不可視データ変換部101は、印刷用データD1と文字抽出ルールR1の抽出ルール情報(抽出条件)の入力があると(S1)、潜像オブジェクト探索ループでオブジェクトを検出し(S2)、条件を満たすオブジェクトについては不可視情報を埋め込む処理を行う。
【0074】
具体的に、不可視データ変換部101は、未探索のオブジェクトがあるとオブジェクトデータ解析を行って(S3)、文字抽出ルールR1に該当するオブジェクトかを判定する(S4)。つまり、対象エリアや色により該当するオブジェクトかを判定する。
【0075】
不可視データ変換部101は、該当するオブジェクトでなかった場合(S4:No)、潜像オブジェクト探索ループで次のオブジェクトを探索する。
【0076】
一方、該当するオブジェクトの場合(S4:Yes)、不可視データ変換部101は、そのオブジェクトを抽出して(S5)、不可視情報埋込画像D12を生成する(S6)。
【0077】
続いて不可視データ変換部101は、印刷用データD1から元のオブジェクトを消去し(S7)、その印刷用データD1に不可視情報埋込画像D12を追加し(S8)、S2に戻って潜像オブジェクト探索ループで次のオブジェクトを探索する。S2で未探索のオブジェクトがない場合は、不可視情報の埋込処理を終了する。
【0078】
続いて不可視情報埋込画像生成部112の処理手順について説明する。
【0079】
図15は、不可視情報埋込画像生成部112の処理フローの一例を示す図である。ここでは文字のエッジ部分を不可視情報で変換する場合を一例にして説明する。まず、不可視情報埋込画像生成部112が、上述したオブジェクトの文字情報D11を取得する(S11)。
【0080】
続いて、不可視情報埋込画像生成部112が、取得した文字情報D11がラスター画像であるかを判定する(S12)。
【0081】
不可視情報埋込画像生成部112は、文字情報D11をラスター画像でないと判定した場合(S12:No)、文字情報D11をRGBラスター画像に変換してから(S13)、S14に移行する。
【0082】
不可視情報埋込画像生成部112は、文字情報D11をラスター画像であると判定した場合(S12:Yes)、あるいはRGB画像の変換処理(S13)の後、そのラスター画像(文字画像D111に相当)に対し文字のエッジ部分と文字のエッジ部分以外(文字内部)とで異なる変換処理を行う。
【0083】
一例として、不可視情報埋込画像生成部112は、文字画像D111において文字のエッジ部分と判定した場合(S14:Yes)、CMYK変換(高墨)を行う(S15)。高墨とは、次に示す低墨に比較して相対的に高いという意味である。墨はKトナーであり、高墨ではKトナーを多く使用し、低墨ではKトナーを少なくする、もしくは使用しないものとする。
【0084】
また、不可視情報埋込画像生成部112は、文字画像D111において文字のエッジ部分ではないと判定した場合(S14:No)、CMYK変換(低墨)を行う(S16)。
【0085】
そして、不可視情報埋込画像生成部112は、文字のエッジ部分と文字内部とでCMYKの配分を変えた不可視情報埋込画像D12を生成する(S17)。
【0086】
以上のように、第1の実施の形態では、任意のアプリケーションで生成した文書データをプリンタドライバから印刷する際に、プリンタドライバが生成した印刷用データから所定の抽出ルールに基づき、改ざん対象とする文字情報など重要な情報を抜き出して、それを不可視画像に変換して、不可視画像を印刷用データに追加して印刷する。このため、ユーザはアプリケーションの改修や変更をすることなく、任意のアプリケーションで生成した文書データに対してデータに応じた不可視情報への変換を行うことができ、任意のアプリケーションによって生成された文書データでも、文書情報の改ざんを検知することが可能なセキュリティ性を保持した文書にして印刷することができるようになる。
【0087】
また、プリンタドライバが生成する印刷用データはPostScript(商標登録)やPDFのようにカラースペースとしてRGBカラーだけでなく、CMYKカラーに対応しているのが一般的であり、不可視情報埋込画像をCMYKカラーで印刷用データ中に保持することできる。そのため、上述したようにRGBカラーへ変換されることによる不可視情報の破壊を防ぐことができ、不可視情報を正しく印刷することが可能になる。また、可視光では透過性を示すが、紫外や赤外で著しい吸収を示す特殊色材を使用する場合は、特色情報を含むカラースペースにて印刷用データ中に不可視画像埋込画像を保持させるのが望ましい。
【0088】
また、クライアントPC20に示した一部またはすべての機能をプリントサーバ30などの情報処理装置に設けてもよい。また、画像処理装置100に示した一部またはすべての機能をクライアントPC20やプリントサーバ30などの情報処理装置に設けてもよい。
【0089】
(第2の実施の形態)
第1の実施の形態では、文書データの印刷時に文字部分に不可視情報を潜在させて印刷する例を示したが、これに限るものではない。例えば背景などの他の部分に不可視情報を潜在させてもよい。第2の実施の形態では一例として、背景として使用する背景情報に不可視情報を潜在させる場合の例を示す。なお、以下において、第1の実施の形態と共通する部分についての説明は適宜省略し、異なる部分について主に説明する。
【0090】
第2の実施の形態かかる画像処理装置は不可視データ変換部101の機能が第1の実施の形態と異なる。
【0091】
図16は、第2の実施の形態にかかる不可視データ変換部101の機能ブロックの構成の一例を示す図である。図16に示す、文字情報抽出部111は、印刷用データD1中のオブジェクト情報を解析し、文字抽出ルールR1に設定されているエリア情報または色情報など所定の条件を満足する文字オブジェクト情報を抽出する。また、印刷用データD1中のオブジェクトが画像データで文字データでない場合は、その画像データにOCR処理を施して文字データに変換して処理を行うものとする。
【0092】
コード画像生成部112-2は、「コード変換部」に相当し、抽出した文字情報D11の文字データをQRコード(登録商標)などのコード画像に変換する。ここで生成するコード画像は必ずしも文字情報D11の全ての文字を含めて生成しなくてもよく、そのうちの一部の文字で生成してもよい。
【0093】
背景情報取得部112-1は、「取得部」に相当し、コード画像生成部112-2のコード画像を不可視情報として秘匿化するために使用する背景情報を取得する。ここでは一例として、抽出対象が予測されないような単なる背景情報を使用する。背景情報は、予め用意されているものをメモリやネットワークを介して外部装置から取得して使用してもよいし、印刷用データD1中から抽出した画像データを背景画像として使用するなどしてもよい。印刷用データD1中から抽出する場合には、背景画像を配置するときに元の背景画像のエリアに配置すればよいため元の印刷用データD1のレイアウトを保つことができる。
【0094】
不可視画像埋込画像生成部112-3は、背景情報D31に不可視情報を潜在させる処理を行って不可視情報埋込画像D41を生成する。潜在させる処理とは、一例としては背景情報D31へ不可視情報の設定で設定する埋込処理がある。第2の実施の形態で使用する不可視情報は、コード画像生成部112-2が生成したコード画像である。
【0095】
不可視情報埋込画像追加部113は、生成された不可視情報埋込画像D41を印刷用データD1中の指定された位置に配置(追加)する。本例では不可視情報埋込画像配置エリアR2に画像の配置エリア(座標位置情報等)を指定しておき、不可視情報埋込画像追加部113が、それを読み取って印刷用データD1中の指定された位置に不可視情報埋込画像D41を配置する。
【0096】
なお、第2の実施の形態では、抽出した文字オブジェクトは印刷用データD1中にそのまま残しておくようにする。このようにすることで、改ざん防止対象として抽出した文字オブジェクトをそのまま可視情報で印刷し、背景画像に潜在させている、可視情報に対応する不可視のコード画像と共に、同一紙面上に印刷することが可能になる。この場合、背景画像に潜在させている不可視情報を複合化し、同一紙面の可視情報との内容一致を照合することにより改ざんを検出することが可能になる。
【0097】
また、不可視情報埋込画像D41は、光学特性の異なる色材の組み合わせを保持できる形式にて印刷用データD1中に追加する。例えば、高い赤外透過率を示すC、M、およびYのトナーと、高い赤外吸収率を示すKトナーとの組み合わせにより赤外センシングデバイスで検出可能な不可視情報を埋め込む場合、不可視情報埋込画像D41をCMYKカラースペースの形式で印刷用データD1中に保持する。その理由は、RGBカラースペースに変換された場合に、色材の組み合わせ量に関する情報が欠落するため、不可視情報が破壊されてしまう可能性があるためである。印刷用データD1については、PostScript(登録商標)やPDF(登録商標)などCMYKカラースペースに対応したPDLを用いる。
【0098】
続いて、第2の実施の形態にかかる不可視情報の埋め込み方法について説明する。
【0099】
図17は、第2の実施の形態にかかる不可視情報の埋め込み方法を説明する図である。図17に示すように、アプリケーションにより作成された文書データD0の印刷指示があると、画像処理装置100は次のように不可視情報の埋め込みを行って印刷する。
【0100】
図17に示す一例では、不可視データ変換部101が印刷用データD1から対象エリアの文字情報D11を抽出する。この例では、1000円の文字データ(金額情報)を抽出する。
【0101】
さらに不可視データ変換部101は、抽出した文字情報D11の文字データをQRコードなどのコード画像D21に変換する。そして、不可視データ変換部101は、背景情報である背景画像D31中にコード画像D21を潜在させる処理を行う。背景画像D31には、予め用意した背景画像や、印刷用データD1から生成した背景画像など、任意の背景画像を対象とすることができる。コード画像D21は、赤外センシングデバイスのみで検出することが可能なように背景画像D31に不可視情報として潜在される。不可視情報を潜在させる処理は、一例として埋め込みがある。埋込処理の詳しい説明は後述する。
【0102】
不可視データ変換部101は、コード画像D21を埋め込むと、その埋め込み後の画像(不可視情報埋込画像D41)を印刷用データD1の指定位置(配置エリア)に配置し、不可視情報埋込画像D41を配置した印刷用データ(不可視情報埋込画像付き印刷用データ)D2を出力して印刷を指示する。
【0103】
図17に示すように、不可視情報埋込画像付き印刷用データD2には、不可視情報埋込画像D41と文字情報D11が共に含まれている。このため、共に同一紙面上に印刷される。
【0104】
続いて埋込処理について詳しく説明する。ここでは不可視情報埋込画像D41の生成方法について説明する。
【0105】
図18は、不可視データ変換部101による不可視情報埋込画像D41の生成方法の一例を示す図である。図18には、背景画像D31にコード画像D21を埋め込むことにより生成される不可視情報埋込画像D41の生成手順を示している。
【0106】
不可視データ変換部101は、図18に示すように、RGBで構成される任意の背景画像D31と、不可視情報として秘匿化する文字データ(この例では文字画像D11の文字データ)とを取得する。
【0107】
さらに不可視データ変換部101は、取得した文字データから不可視情報用画像を生成する。この例では、文字データの文字列からQRコードなどの二次元のコード画像D21を生成する。このコード画像D21はモノクロ2値であることが望ましい。なお、コード画像はバーコード等の一次元のコード画像であってもよい。
【0108】
さらに不可視データ変換部101は、RGBの背景画像D31について、RGBからCMY成分への変換を行う。そして、CMYに変換された背景画像D32に対して墨(K)の生成によりコード画像D21を合成するCMYK変換を行う。ここで、CMYの背景画像D32に対して各画素一定の墨生成テーブルにて墨生成を行うのではなく、CMYの背景画像D32の画素に応じて墨生成量の変更を行う。例えば、背景画像D32と同じ位置のコード画像D21が白画素であった場合は、墨生成を実施せず、CMY値のみのままとする。背景画像D32と同じ位置のコード画像D21が黒画素であった場合は、高墨にする処理を行う。このように画素ごとに墨生成を行ってCMYK画像である不可視情報埋込画像D41を生成する。なお、墨処理テーブルについては、低墨の場合と高墨の場合にて同等の色再現が行われるように調整されているものとする。
【0109】
具体的に、特開平7-319347号公報に色再現するための色材の印字量の組み合わせ方法の一例が開示されている。不可視情報を印字する部分はCMYトナーを下色してKトナーを加えて再現し、不可視情報を印字しない部分は、CMYトナーのみで再現することで不可視情報を埋め込む。CMYを下色してKトナーを加える印字部分とCMYトナーのみで印字する印字部分は、概ね同一の色として見えるようにCMYの下色量、Kの印字量を設定する。
【0110】
このようにすることにより、Kトナーで印字されている不可視情報は可視光下ではCMYトナーで印字されている情報から人の目で分離して観察することができない。しかし、CMYトナーは赤外光を透過し、カーボンブラックを含むKトナーは赤外光を吸収する性質を持つため、赤外センシングデバイスでは、CMYトナーは映らず、Kトナーの埋め込み部分のみが不可視情報として映し出される。不可視情報を印字するために特殊なトナーを使用する必要がないので汎用的なCMYKのプリンタにて改ざんを検出する処理を施した印刷物が安価に作成可能である。
【0111】
なお、可視光では透過性を持つが、赤外領域について強い吸収性を示す特殊色材を使って不可視情報を生成してもよい。また、可視光では透過性を持つが、紫外領域について強い吸収性を示す特殊色材を使って赤外領域以外で検出可能な不可視情報を生成してもよい。
【0112】
CMY版は画像D41-1のようになり、K版は画像D41-2のようになる。ここでCMY版の画像D41-1は、例えば背景がうすい緑、花がピンク、葉が緑であり、K版の画像D41-2はコード画像部分がグレーである。
【0113】
このように生成した不可視情報埋込画像D41を印刷用データD2(図17参照)のように追加して印刷を行うと、可視光下において低墨と高墨との色の差は現れないため、可視光下での肉眼での観察では元の背景画像しか認識されない。しかし、コード画像D21の濃度に基づき墨生成量が動的に変更されているため、K版の画像D41-2において示される赤外センシングデバイスの画像には、元のコード画像D21と同等の画像が再生される。
【0114】
このように、任意の背景画像D31に対して、光学特性の異なる色材量の組み合わせを調整することで、不可視画像を埋め込む(合成する)ことが可能である。ここでの背景画像は不可視画像を秘匿するためのマスクとしての役割を果たす。
【0115】
図19に、改ざんがある場合の印字結果を一例として示している。図19(a)は、改ざんがない場合であり、図19(b)は改ざんがある場合である。図19(a)および図19(b)に示すように、印刷物の背景画像Q42を赤外センシングデバイスで読み取り、赤外センシングデバイスが出力するコード画像D21をデコードすると、コード化した元の文字データ(金額情報)がデコード結果として得られる。図19(a)では、金額情報に改ざんがないため、印刷物の金額情報Q12と同じ「1000円」がデコード結果として得られる。一方の図19(b)では、印刷物の金額情報Q12は「11000円」となっているがデコード結果は「1000円」となり一致しない。このため「1000円」から「11000円」に金額が書き換えられていること、つまり改ざんされていることが分かる。
【0116】
続いて、画像処理装置100の不可視データ変換部101が行うフローについて説明する。なお、ここでは第1の実施の形態で説明したフローと共通する部分の説明は省略し、異なる部分について説明する。
【0117】
図20は、不可視データ変換部101の処理フローの一例を示す図である。図20において、S21~S25は図14のS1~S5に対応するため、S26からフローを説明する。
【0118】
不可視データ変換部101は、S25でオブジェクトを抽出した後、抽出したオブジェクトが文字オブジェクトであるかを判定する(S26)。抽出したオブジェクトが文字オブジェクトではない場合(S26:No)、不可視データ変換部101は、OCR処理を行ってオブジェクトから文字データを抽出し(S27)、S28に処理を移行する。
【0119】
抽出したオブジェクトが文字オブジェクトの場合(S26:Yes)、あるいはOCR処理(S27)の処理後、不可視データ変換部101は、文字データをコード画像D21に変換する(S28)。
【0120】
続いて、不可視データ変換部101は、背景画像D32にコード画像D21を埋め込むことにより不可視情報埋込画像D41を生成し(S29)、その不可視情報埋込画像D41を印刷用データD1に追加する(S30)。その後、不可視データ変換部101は、S22に戻って潜像オブジェクト探索ループで次のオブジェクトを探索する。S22で未探索のオブジェクトがない場合は、不可視情報の埋込処理を終了する。
【0121】
以上のように、背景画像に不可視情報を潜在させることで、二次元バーコードのような画像を不可視情報として使用することも可能になる。
【0122】
第2の実施の形態では、光学特性の異なるシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの色材の印字量の組み合わせにより赤外の不可視情報を生成する構成を示した。ブラックは、カーボンブラックに代表されるような赤外光および可視光の両方に吸収するトナーである。ブラックは可視光においても非透明であるため、可視光に非透明な他のトナーとの単純な重ね印字では、可視光下で当然視認できてしまう。そのため、ブラックで印字した領域を不可視情報にするには、上述した特殊な合成処理が必要となる。
【0123】
第2の実施の形態では、印刷中の文字情報を不可視のコード画像に変換する事で、文書データ中の重要情報の改ざんを検知可能にすることができる。
【0124】
(第3の実施の形態)
ここまで、画像処理装置100側で文字抽出ルールR1の抽出条件に基づいて印刷用データD1から不可視情報の埋め込み対象となる文字情報D11を抽出する形態を示したが、印刷時にユーザが抽出対象の設定をできるようにしてもよい。ここで、これまで説明した部分と共通する部分の説明は適宜省略し、異なる部分について説明する。
【0125】
図21は、第3の実施の形態にかかるクライアントPC20および画像処理装置100の機能ブロックの構成の一例を示す図である。図21の構成では、説明済みの機能ブロックの構成(図5参照)において画像処理装置100の文字抽出ルールR1の代わりにクライアントPC20側に「設定部」に相当する文字エリア設定部204を設けている。
【0126】
図21において、クライアントPC20側では、文字エリア設定部204がプリンタドライバ203によって生成された印刷用データD1を解釈してクライアントPC20の画面上(図2のLCD26)に印刷プレビュー画面としての印刷イメージを描画する。さらに文字エリア設定部204は印刷プレビュー画面においてユーザから文字エリアの入力を入力装置27(図2参照)から受け付け、文字エリア設定部204が受け付けた文字エリア情報と印刷用データD1とを画像処理装置100に送信する。
【0127】
文字エリア設定部204は、印刷用データD1中の一つまたは複数個所の文字エリアの指定を受け付ける。例えば、改ざんされているかどうかを発見したい箇所(金額などの文字情報)がある場合には、印刷プレビュー画面によりユーザが、キー操作やマウス操作やタッチ操作などで文字エリアの範囲等を指定する。また、複数個所にある場合は、それぞれの文字エリアの範囲等を指定する。これにより、文字エリア設定部204は、指定された文字エリアを文字エリア情報に書き込む。
【0128】
一方、画像処理装置100では印刷用データD1および文字エリア情報である印刷情報D6が入力されると、不可視データ変換部101が、印刷情報D6に含まれる文字エリア情報に基づき印刷用データD1から指定エリアの文字情報を抽出し、抽出した文字情報を不可視情報を含む画像に変換する。変換後の処理は、これまでと同様であるため、説明を省略する。
【0129】
図22は、文書への不可視情報の埋め込み方法を説明する図である。図22に示すように、アプリケーションにより作成された文書データD0の印刷指示があると、画像処理装置100は次のように不可視情報の埋め込みを行って印刷する。
【0130】
図22に示す一例では、文字エリア設定部204がプレビュー画面G1で文字エリアの設定を受け付ける。この例では、文字エリア設定部204は、ユーザから金額1000円の文字情報D11の範囲が指定されると、そのエリア(座標情報等)を文字エリア情報に含める。
【0131】
不可視データ変換部101は、文字エリア情報に指定されている文字エリアの文字情報(この例では文字情報D11)をラスタデータに変換し、その文字画像D11を不可視情報を埋め込んだ不可視情報埋込画像D12に変換する。ここで、不可視情報埋込画像D12は、不可視情報が埋め込まれた文字画像(図10に示す方法で設けた不可視情報埋込画像D12)である。
【0132】
不可視データ変換部101は、文字画像D11を不可視情報埋込画像D12へ変換した後、元の文字情報D11を削除して不可視情報埋込画像D12に置き換えた印刷用データD2で印刷を指示する。
【0133】
なお、第3の実施の形態では、ユーザが文字エリアを指定する例を説明したが、ユーザが色情報を指定し、その色情報に基づいて不可視情報に変換する文字情報を抽出してもよい。
【0134】
(第4の実施の形態)
第2の実施の形態において印刷時にユーザが抽出対象を設定する場合は、例えば次の形態で実施する。ここで第2の実施の形態と共通する部分については適宜説明を省略し、異なる部分について主に説明する。
【0135】
図23は、第4の実施の形態にかかるクライアントPC20および画像処理装置100の機能ブロックの構成の一例を示す図である。図23の構成では、説明済みの機能ブロックの構成(図5参照)において画像処理装置100の文字抽出ルールR1の代わりにクライアントPC20側に文字エリア設定部・不可視情報配置エリア設定部205を設けている。
【0136】
クライアントPC20では、文字エリア設定部・不可視情報配置エリア設定部205がプリンタドライバ203によって生成された印刷用データD1を解釈してクライアントPC20の画面上に印刷プレビュー画面としての印刷イメージを描画する。さらに文字エリア設定部・不可視情報配置エリア設定部205は印刷プレビュー画面上においてユーザから文字エリア(不可視情報に変換する文字データのエリア)と不可視情報埋込画像を配置する配置エリアの入力を受け付け、文字エリア設定部・不可視情報配置エリア設定部205が受け付けた文字エリア情報と不可視情報配置エリア情報と、印刷用データD1とを含む印刷情報D7を画像処理装置100に送信する。
【0137】
なお、文字エリア設定部・不可視情報配置エリア設定部205は、印刷用データD1中の複数個所の文字エリアの指定を受け付けてもよい。また、文字エリア設定部・不可視情報配置エリア設定部205は、文字エリアを指定した数に応じて複数個所の不可視情報配置エリアを受け付けてもよい。
【0138】
一方、画像処理装置100では印刷用データD1と文字エリア情報と配置エリア情報とが含まれる印刷情報D7が入力されると、不可視データ変換部101が、印刷情報D7に含まれる文字エリア情報に基づき印刷用データD1から指定エリアの文字データを抽出し、抽出した文字データを不可視情報埋込画像に変換し、印刷情報D7の不可視情報配置エリア情報に指定されている配置エリア(座標等の情報)に不可視情報埋込画像を配置する。配置後の印刷用データ(不可視情報埋込画像付き印刷用データD2)は、RIP部102に出力され、他の実施形態と同様に処理された印刷用ラスターデータD3で印刷が指示される。
【0139】
図24は、文書への不可視情報の埋め込み方法を説明する図である。図24に示すように、アプリケーションにより作成された文書データD0の印刷指示があると、画像処理装置100は次のように不可視情報の埋め込みを行って印刷する。
【0140】
図24に示す一例では、文字エリア設定部・不可視情報配置エリア設定部205がプレビュー画面G1で文字エリア(不可視情報に変換する文字データのエリア)と不可視情報埋込画像を配置するエリアの設定を受け付ける。この例で、文字エリア設定部・不可視情報配置エリア設定部205は、ユーザから金額1000円の文字情報D11の範囲が指定されると、そのエリアを文字エリア情報に含める。また、文字エリア設定部・不可視情報配置エリア設定部205は、ユーザから不可視情報埋込画像を配置するエリアPの範囲(座標情報等)が指定されると、そのエリアを不可視情報配置エリア情報に含める。
【0141】
不可視データ変換部101は、文字エリア情報に指定されている文字エリアから文字情報D11を抽出し、その文字データをコード画像D21に変換し、コード画像D21を任意の背景画像D31に不可視情報として埋め込む埋込処理を行う。図24に示す一例では、不可視データ変換部101は、1000円の文字情報D11を抽出して、その文字データである1000円をコード画像に変換する。
【0142】
不可視データ変換部101は、コード画像D21を埋め込むと、不可視情報配置エリア情報に指定されている印刷用データD1の配置エリアに対し、埋め込み後の画像(不可視情報埋込画像D41)を配置し、その印刷用データ(不可視情報埋込画像付き印刷用データD2)を出力して印刷を指示する。
【0143】
(第5の実施の形態)
これまで、プリンタドライバで生成した印刷用データを扱う構成について説明を行ってきたが、プリンタドライバを使用せずに生成される印刷用データに対して埋込処理を行ってもよい。例えば、文書閲覧用ファイルフォーマットとして広く普及しているPDFフォーマットやXPSフォーマットもPDLの一種類であり、これらのデータフォーマットも上述した処理に対応可能な印刷用データに含まれる。これらのデータフォーマットは、描画オブジェクトと座標データで構成されており、CMYKカラーにも対応しているため、これまで説明した不可視情報埋込画像を追加する印刷用データの生成が可能である。
【0144】
このようなPDFファイルやXPSファイルは印刷向けデータのみならず、クライアントPC20やプリントサーバ30上で保存される文書保存用のフォーマットとしての性質をもつものであればよく、プリンタドライバを介さずともクライアントPC20側やプリントサーバ30側の汎用的なアプリケーションにて生成可能である。
【0145】
図25は、第5の実施の形態にかかるクライアントPC20および画像処理装置100の機能ブロックの構成の一例を示す図である。図25に示すように、生成されたPDFデータD8やXPSデータは、PDLとしての性質も持つため、プリンタドライバを介さずに画像処理装置100に直接転送して、印刷を行うことができる。そのため、プリンタドライバを介して印刷するシステムだけでなく、クライアントPC20やプリントサーバ30上に保存されているPDFやXPSデータに対して、不可視情報への変換処理を実施して、任意のプロッタにおいてプリンタドライバを介さずに直接印刷するシステムも構築可能である。
【0146】
なお、各実施の形態では、不可視情報を潜在させるためにカーボンブラックを利用したが、これに限定するものではない。例えば、可視光を透過するが赤外光に対して吸収成分を含むトナーを使用してもよい。つまり、可視光において透明トナーであるが、赤外では非透明なトナーを使用する。透明トナーを使用する方法は可視光では透明であるため、白地上もしくは、シアン、マゼンタ、イエローなどの赤外透過トナーに対して、重ねて印字するだけで、赤外光でのみ検出できる赤外マークの印字が可能である。
【0147】
各実施の形態において、「画像処理装置」を画像形成装置に適用した例を示したが、「画像処理装置」はプロッタ150とは別体で構成されてもよいし、プロッタ150とは別の機能部と構成されていてもよい。その他、「画像処理装置」は、プリントサーバ30やクライアントPC20などの情報処理装置に適用してもよい。情報処理装置では、例えばインストールされたプログラムに従ってCPUが動作することにより画像処理装置100の機能の一部または同等の機能を発揮し、不可視情報を含む印刷用データを生成することができる。
【0148】
また、図5図21図23図25に示す例では、情報処理装置側(クライアントPC20あるいはプリントサーバ30など)の処理と、画像処理装置100の処理とで、処理部を分散させているが、全ての処理部を一つの情報処理装置もしくは画像処理装置で実施してもよい。
【0149】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、各実施の形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの各実施の形態は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0150】
10 画像形成装置
20 クライアントPC
100 画像処理装置
101 不可視データ変換部
102 RIP部
150 プロッタ
201 アプリケーション
202 OS
203 プリンタドライバ
D1 印刷用データ
D2 不可視情報埋込画像付き印刷用データ
D3 印刷用ラスターデータ
R1 文字抽出ルール
【先行技術文献】
【特許文献】
【0151】
【文献】特開2006-053725号公報
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