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特許7574678波形生成装置、波形生成方法及び荷電粒子ビーム照射装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】波形生成装置、波形生成方法及び荷電粒子ビーム照射装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20241022BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20241022BHJP
   H01J 37/305 20060101ALI20241022BHJP
   H01J 37/147 20060101ALI20241022BHJP
   H01J 37/20 20060101ALI20241022BHJP
   H03M 1/08 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
H01L21/30 541D
G03F7/20 504
H01J37/305 B
H01J37/147 C
H01J37/20 A
H03M1/08 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021016707
(22)【出願日】2021-02-04
(65)【公開番号】P2022119519
(43)【公開日】2022-08-17
【審査請求日】2023-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】504162958
【氏名又は名称】株式会社ニューフレアテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】池田 迪彦
(72)【発明者】
【氏名】峯 彰謙
(72)【発明者】
【氏名】河原 邦昭
【審査官】今井 彰
(56)【参考文献】
【文献】特開平6-132821(JP,A)
【文献】特開昭62-287715(JP,A)
【文献】特開平4-51612(JP,A)
【文献】特開昭54-121050(JP,A)
【文献】特開2006-261484(JP,A)
【文献】特開2016-1725(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027、21/30
G03F 1/00-1/86
H03M 1/00-1/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力データをデジタルアナログ変換して出力する第1DA変換器と、
前記入力データに基づく指令値を持つ第1信号、及び前記第1信号の指令値との差分が一定となる指令値を持つ第2信号を出力する制御部と、
前記第1信号をデジタルアナログ変換して出力する第2DA変換器と、
前記第2信号をデジタルアナログ変換して出力する第3DA変換器と、
前記第1DA変換器の出力と、前記第2DA変換器の出力と、前記第3DA変換器の出力とを合成する合成器と、
を備え、
前記制御部は、前記入力データの所定の第1上位ビットの値が反転する時に、前記第1信号の指令値を該第1上位ビット又は該第1上位ビットとは異なる第2上位ビットの値が反転するように変更することを特徴とする波形生成装置。
【請求項2】
前記合成器は、前記第2DA変換器の出力から前記第3DA変換器の出力を減算する第1減算器と、前記第1DA変換器の出力から前記第1減算器の出力を減算する第2減算器とを含むことを特徴とする請求項1に記載の波形生成装置。
【請求項3】
前記第1信号の指令値と前記第2信号の指令値とは1最下位ビット分異なることを特徴とする請求項1又は2に記載の波形生成装置。
【請求項4】
複数の前記第2DA変換器を有し、
各第2DA変換器に入力される前記第1信号の指令値は、反転するビットが異なる、又は反転するビットは同じで反転するビットよりも上位のビットの値が異なることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の波形生成装置。
【請求項5】
前記複数の第2DA変換器は、互いに異なる増幅率で信号を増幅して出力することを特徴とする請求項4に記載の波形生成装置。
【請求項6】
第1DA変換器を用いて、入力データをデジタルアナログ変換し、電圧を出力する工程と、
第2DA変換器に、前記入力データに基づく指令値を持つ第1信号を入力し、デジタルアナログ変換して出力する工程と、
第3DA変換器に、前記第1信号の指令値との差分が一定となる指令値を持つ第2信号を入力し、デジタルアナログ変換して出力する工程と、
を備え、
前記入力データの所定の第1上位ビットの値が反転する時に、前記第1信号の指令値を該第1上位ビット又は該第1上位ビットとは異なる第2上位ビットの値が反転するように変更し、
前記第1DA変換器の出力と、前記第2DA変換器の出力と、前記第3DA変換器の出力とを合成し、前記第1DA変換器の出力に含まれていたグリッジを減少させた信号を得ることを特徴とする波形生成方法。
【請求項7】
荷電粒子ビームを放出する放出部と、
基板を載置するステージと、
請求項1乃至5のいずれかに記載の波形生成装置を有し、前記荷電粒子ビームを偏向させる偏向データを出力する偏向制御回路と、
前記偏向制御回路からの前記偏向データにより前記荷電粒子ビームを偏向する偏向器と、
前記基板上での前記荷電粒子ビームの偏向位置を移動させながら、前記荷電粒子ビームを用いて、前記基板にパターンを描画する描画部と、
を備える荷電粒子ビーム照射装置。
【請求項8】
荷電粒子ビームを放出する放出部と、
基板を載置するステージと、
前記荷電粒子ビームを偏向する偏向器を有し、前記ステージを移動させると共に前記ステージの移動に追従するように前記基板上での前記荷電粒子ビームの偏向位置を移動させながら、前記荷電粒子ビームを用いて、前記基板にパターンを描画する描画部と、
前記荷電粒子ビームを偏向させる偏向データを前記偏向器へ出力する偏向制御回路と、
を備え、
前記描画部は、請求項1乃至5のいずれかに記載の波形生成装置を有するトラッキングアンプにより、前記ステージの移動に追従するように前記基板上での前記荷電粒子ビームの偏向位置を移動させることを特徴とする荷電粒子ビーム照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波形生成装置、波形生成方法及び荷電粒子ビーム照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
LSIの高集積化に伴い、半導体デバイスの回路線幅と金属配線ピッチは年々微細化されてきている。このような半導体デバイスの回路パターンを形成するためには、縮小投影型露光装置を用いて、石英上に形成された高精度の原画パターンをArF等のレーザーを用いてウェーハ上に縮小転写する手法(光リソグラフィー)が採用されている。近年では、さらに微細なパターンを形成するために、極端紫外線を用いたEUVリソグラフィーが採用され始めている。EUVリソグラフィーでは複数の材料からなる多層構造を有するマスクが用いられる。いずれのマスクにおいても、高精度の原画パターンの製作には、電子ビーム描画装置によってマスクブランクス上のレジストを選択的に露光してパターンを形成する、所謂、電子ビームリソグラフィ技術が用いられている。
【0003】
電子ビーム描画では、描画対象の基板をステージ上に載置し、ステージを移動させながら描画を行う。その際、ステージの移動に伴ってビームの照射位置がずれないように、ステージの移動にビーム照射位置を追従させるトラッキング制御を行う。トラッキング制御用の偏向電圧を出力するトラッキングアンプは連続的に動作し、出力にグリッチ(電圧の瞬間的な急変動)が発生することがあった。グリッチが発生すると、ビーム照射位置がずれ、描画精度が劣化するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平6-132821号公報
【文献】特開平4-51612号公報
【文献】特開2002-141801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、アンプの出力に発生するグリッチを打ち消すことができる波形生成装置、波形生成方法及び荷電粒子ビーム照射装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様による波形生成装置は、入力データをデジタルアナログ変換して出力する第1DA変換器と、前記入力データに基づく指令値を持つ第1信号、及び前記第1信号の指令値との差分が一定となる指令値を持つ第2信号を出力する制御部と、前記第1信号をデジタルアナログ変換して出力する第2DA変換器と、前記第2信号をデジタルアナログ変換して出力する第3DA変換器と、前記第1DA変換器の出力と、前記第2DA変換器の出力と、前記第3DA変換器の出力とを合成する合成器と、を備え、前記制御部は、前記入力データの所定の第1上位ビットの値が反転する時に、前記第1信号の指令値を該第1上位ビット又は該第1上位ビットとは異なる第2上位ビットの値が反転するように変更するものである。
【0007】
本発明の一態様による波形生成方法は、第1DA変換器を用いて、入力データをデジタルアナログ変換し、電圧を出力する工程と、第2DA変換器に、前記入力データに基づく指令値を持つ第1信号を入力し、デジタルアナログ変換して出力する工程と、第3DA変換器に、前記第1信号の指令値との差分が一定となる指令値を持つ第2信号を入力し、デジタルアナログ変換して出力する工程と、を備え、前記入力データの所定の第1上位ビットの値が反転する時に、前記第1信号の指令値を該第1上位ビット又は該第1上位ビットとは異なる第2上位ビットの値が反転するように変更し、前記第1DA変換器の出力と、前記第2DA変換器の出力と、前記第3DA変換器の出力とを合成し、前記第1DA変換器の出力に含まれていたグリッジを減少させた信号を得るものである。
【0008】
本発明の一態様による荷電粒子ビーム照射装置は、荷電粒子ビームを放出する放出部と、基板を載置するステージと、前記荷電粒子ビームを偏向する偏向器を有し、前記ステージを移動させると共に前記ステージの移動に追従するように前記基板上での前記荷電粒子ビームの偏向位置を移動させながら、前記荷電粒子ビームを用いて、前記基板にパターンを描画する描画部と、前記荷電粒子ビームを偏向させる偏向データを前記偏向器へ出力する偏向制御回路と、を備え、前記描画部は、請求項1乃至5のいずれかに記載の波形生成装置を有するトラッキングアンプにより、前記ステージの移動に追従するように前記基板上での前記荷電粒子ビームの偏向位置を移動させるものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、アンプの出力に発生するグリッチを打ち消すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る波形生成装置の構成図である。
図2】(a)はグリッチを含むDA変換器の出力を示すグラフであり、(b)は変位打ち消し用のDA変換器の出力を示すグラフであり、(c)はグリッチ波形を示すグラフである。
図3】(a)はグリッチを含むDA変換器の出力を示すグラフであり、(b)は相殺用グリッチ波形を示すグラフであり、(c)はグリッチが打ち消された電圧変化を示すグラフである。
図4】変形例による波形生成装置の構成図である。
図5】(a)はグリッチを含むDA変換器の出力を示すグラフであり、(b)は変位打ち消し用のDA変換器の出力を示すグラフであり、(c)はグリッチ波形を示すグラフである。
図6】(a)はグリッチを含むDA変換器の出力を示すグラフであり、(b)は相殺用グリッチ波形を示すグラフであり、(c)はグリッチが打ち消された電圧変化を示すグラフである。
図7】本発明の実施形態に係る描画装置の構成図である。
図8】各領域を説明する図である。
図9】トラッキングアンプの概略構成図である。
図10】(a)はDA変換器の出力波形の例を示す図であり、(b)(d)は相殺用グリッチ波形の例を示す図であり、(c)(e)は相殺用グリッチ波形を合成した後の波形の例を示す図である。
図11】別の実施形態に係る波形生成装置の構成図である。
図12】別の実施形態に係る波形生成装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
図1は、本発明の実施形態に係る波形生成装置の構成を示す。図1に示すように、波形生成装置は、制御部60、DA変換器62(第1DA変換器)、合成器64及び相殺グリッチ生成部70を備える。
【0013】
DA変換器62は、制御部60を介してデジタル信号の指令値を有する入力データを受信し、アナログ信号に変換する。DA変換器62は受信した指令値に比例した出力をする。指令値の2進数表現で、出力に最も重みづけの大きいビットを最上位ビット、出力に最も重みづけの小さいビットを最下位ビットという。この指令値は、連続的に変化する。
【0014】
指令値の変化が上位ビット反転を伴う時、DA変換器62の出力に大きなグリッチが発生する。例えば2進数8ビット表現(オフセットバイナリ)の指令値が「00111111」(以下、2進数はカッコ書きする)から「01000000」に変化する時、又は「01000000」から「00111111」に変化する時、上位2ビット目が反転する。このとき、DA変換器62の出力に大きなグリッチが発生する。一般的にグリッチは、上位ビットであればある程、大きなグリッチが発生する傾向にある。
【0015】
制御部60は、入力データを監視し、指令値の変化が上位ビット反転を伴うとき、相殺グリッチ生成部70に、相殺用グリッチ波形を生成させる。グリッチを含むDA変換器62の出力に対し、相殺グリッチ生成部70が生成する相殺用グリッチ波形を合成器64で減算し、DA変換器62の出力に現れるグリッチを打ち消す。
【0016】
なお、指令値が「00000001」から「00000010」に変化するような、上位ビットの反転を伴わないとき(下位ビットのみ反転するとき)は、DA変換器62の出力にグリッチは(ほとんど)発生しないため、相殺用グリッチを生成する必要はない。
【0017】
相殺グリッチ生成部70は、並列に設けられたDA変換器71及びDA変換器74と、合成器77とを有する。ここでは、指令値の上位1ビット目が反転する時に、DA変換器62の出力に大きなグリッチが発生するものとして説明する。
【0018】
DA変換器71(第2DA変換器)の出力に大きなグリッチを発生させる、最上位ビットが反転する8ビットの指令値を持つ第1信号が制御部60から出力され、DA変換器71に入力される。例えば、DA変換器71には、「01111111」から「10000000」(あるいはこの逆)になるような、最上位ビットが反転する指令値が入力される。
【0019】
DA変換器71には、DA変換器62の入力に応じて、これら2つの指令値のいずれかが入力される。具体的には、DA変換器62の入力が「01111111」以下(「00000000」~「01111111」)のとき、DA変換器71の入力は「01111111」となる。DA変換器62の入力が「10000000」以上(「10000000」~「11111111」)のとき、DA変換器71の入力は「10000000」となる。
【0020】
例えば、DA変換器62の入力が「01111110」→「01111111」→「10000000」→「10000001」と連続的に変化する際、DA変換器71の入力は「01111111」→「01111111」→「10000000」→「10000000」となる。
【0021】
DA変換器71(及びDA変換器62)の入力が「01111111」から「10000000」に変化する際、DA変換器71の出力は、上位1ビット目の反転に伴うグリッチを含む。
【0022】
DA変換器74(第3DA変換器)の出力に(大きな)グリッチを発生させない、すなわち最上位ビットの反転を伴わず、かつDA変換器71に入力される第1信号と変位量が同じ8ビットの指令値を持つ第2信号が制御部60から出力され、DA変換器74に入力される。
【0023】
例えば、DA変換器74には、「10000000」から「10000001」となるような、DA変換器71の入力と比較して、1最下位ビット分(「00000001」)異なる8ビットの指令値が入力される。1最下位ビット分異なるとは、「00000001」を足した(又は「00000001」を引く)ことをいう。従って、DA変換器71の入力が「01111111」のとき、DA変換器74の入力は「10000000」であり、DA変換器71の入力が「10000000」のとき、DA変換器74の入力は「10000001」である(「00000001」引く場合、DA変換器71の入力が「01111111」のとき、DA変換器74の入力は「01111110」であり、DA変換器71の入力が「10000000」のとき、DA変換器74の入力は「01111111」である)。
【0024】
図2(a)はDA変換器71の出力の一例を示す。図2(b)はDA変換器74の出力の一例を示す。DA変換器71は、入力が「01111111」から「10000000」に変化する際に最上位ビット反転によるグリッチが発生する。DA変換器74は、入力の変化が上位ビット反転を含まないため、出力にグリッチは発生しない。
【0025】
DA変換器71の出力から、DA変換器74の出力を合成器77で減算(図2(a)-図2(b))すると、図2(c)に示すように、最上位ビットの反転に伴うグリッチ波形を取り出すことができる。なお、このとき、DA変換器71の出力とDA変換器74の出力との差分である1最下位ビット分(「00000001」)のオフセットが残るが、グリッチ波形に対して極めて小さい値であるため、無視(許容)できる。このようにして取り出したグリッチ波形を、DA変換器62の入力が「01111111」から「10000000」に変化するときにDA変換器62の出力に発生するグリッチの相殺に用いる。
【0026】
制御部60は、DA変換器62に入力される指令値の最上位ビットが反転するタイミングに合わせて、DA変換器71,74及び合成器(減算器)77による相殺用グリッチ波形の生成を実行する。
【0027】
図3(a)はDA変換器62の出力の例を示す。この例では、時間経過に伴い、DA変換器62の入力が単調増加する。合成器64で、DA変換器62の出力に対し、図3(b)に示す相殺用グリッチ波形を減算(図3(a)-図3(b)の減算)することで、図3(c)に示すようにグリッチを打ち消すことができる。
【0028】
DA変換器62の出力に対する、DA変換器71の出力の減算、DA変換器74の出力の加算の順序は限定されない。例えば、DA変換器62の出力とDA変換器71の出力とを減算した後に、DA変換器74の出力を加算してもよい。また、DA変換器62の出力とDA変換器74の出力とを加算した後に、DA変換器71の出力を減算してもよい。
【0029】
また、DA変換器62の出力に含まれるグリッジを減少させるものであれば、DA変換器62の出力に対するDA変換器71の出力、DA変換器74の出力の合成の手法(加算/減算)は特に限定されない。例えば、DA変換器62の出力に対し、DA変換器71の出力、DA変換器74の出力を加算することで所望の信号が得られるように、DA変換器71の入力、DA変換器74の入力を設定してもよい。
【0030】
図1の合成器64と、相殺グリッチ生成部70内の合成器77とは、機能的には1つにまとめても良い。例えば、図1の合成器64と、相殺グリッチ生成部70内の合成器77とを、1つのアナログ回路から構成される合成器としても良い。
【0031】
図4は、入力データの指令値の上位1ビット目が反転する時、及び指令値の上位2ビット目が反転する時にDA変換器62の出力に発生するグリッチを打ち消すための波形生成装置の構成を示す。この波形生成装置は、図1に示す波形生成装置の相殺グリッチ生成部70に、DA変換器72,73,75及び76を、DA変換器71及び74と並列となるように追加し、さらに合成器78、79を追加したものである。DA変換器71及び74の動作は上記と同じであるため、説明を省略する。
【0032】
合成器78は、DA変換器71~73(第2DA変換器群)の出力を加算する。合成器79は、DA変換器74~76(第3DA変換器群)の出力を加算する。合成器77は、合成器78の出力に対し、合成器79の出力を減算する。
【0033】
入力データの指令値の上位2ビット目が反転する際に発生するグリッチは、上位1ビット目(最上位ビット)の値によって大きさが異なることが想定される。このため、最上位ビットの値によって、上位2ビット目が反転する際に発生するグリッチを別々に取り扱う。
【0034】
指令値の上位何ビット目までが反転する際に、DA変換器62の出力に大きなグリッチが発生するかは、例えば「上位3ビット目まで」、「上位4ビット目まで」など、精度等に応じて設計者が適宜決めればよい。また、指令値の上位何ビット目までとするかについては、例えば半分よりも上位のビット目迄としても良い。また、例えば半分よりも上位のビット全てとする必要はなく、得られる効果は小さくなってしまうが半分よりも上位のビットの一部のビット、例えば最上位ビットのみ或いは上位2ビット目のみが反転する際に発生するグリッチについて、相殺用グリッチ波形を生成するようにしてもよい。
【0035】
DA変換器72には、「00111111」から「01000000」(あるいはこの逆)になるような、最上位ビットが0かつ上位2ビット目が反転する8ビットの指令値が入力される。
【0036】
DA変換器72には、DA変換器62の入力に応じて、これら2つの指令値のいずれかが入力される。具体的には、DA変換器62の入力が「00111111」以下(「00000000」~「00111111」)のとき、DA変換器72の入力は「00111111」となる。DA変換器62の入力が「01000000」以上(「01000000」~「11111111」)のとき、DA変換器72の入力は「01000000」となる。DA変換器72(及びDA変換器62)の入力が「00111111」から「01000000」に変化する際、DA変換器72の出力は、上位2ビット目の反転に伴うグリッチを含む。
【0037】
DA変換器73には、「10111111」から「11000000」(あるいはこの逆)になるような、最上位ビットが1かつ上位2ビット目が反転する8ビットの指令値が入力される。
【0038】
DA変換器73には、DA変換器62の入力に応じて、これら2つの指令値のいずれかが入力される。具体的には、DA変換器62の入力が「10111111」以下(「00000000」~「10111111」)のとき、DA変換器73の入力は「10111111」となる。DA変換器62の入力が「11000000」以上(「11000000」~「11111111」)のとき、DA変換器71の入力は「11000000」となる。DA変換器73(及びDA変換器62)の入力が「10111111」から「11000000」に変化する際、DA変換器73の出力は、上位2ビット目の反転に伴うグリッチを含む。
【0039】
DA変換器75には、「01000000」から「01000001」となるような、DA変換器72の入力と比較して1最下位ビット分(「00000001」)だけ異なる指令値が入力される。DA変換器72の出力に対し、DA変換器75の出力を減算すると、最上位ビットが0であるときに上位2ビット目が反転することに伴うグリッチ波形を取り出すことができる。このグリッチ波形を、DA変換器62の入力が「00111111」から「01000000」に変化するときにDA変換器62の出力に発生するグリッチの相殺に用いる。
【0040】
DA変換器76には、「00000001」を足す場合には、「11000000」から「11000001」(「00000001」を引く場合には「10111110」から「10111111」)となるような、DA変換器73の入力と比較して1最下位ビット分(「00000001」)だけ異なる指令値が入力される。DA変換器73の出力に対し、DA変換器76の出力を減算すると、最上位ビットが1であるときに上位2ビット目が反転することに伴うグリッチ波形を取り出すことができる。このグリッチ波形を、DA変換器62の入力が「10111111」から「11000000」に変化するときにDA変換器62の出力に発生するグリッチの相殺に用いる。
【0041】
制御部60は、DA変換器62に入力される指令値の最上位ビットが0かつ上位2ビット目が反転するタイミングに合わせて、DA変換器72及び75の入力を変化させ、合成器77から相殺用グリッチ波形が出力されるようにする。
【0042】
制御部60は、DA変換器62に入力される指令値の最上位ビットが1かつ上位2ビット目が反転するタイミングに合わせて、DA変換器73及び76の入力を変化させ、合成器77から相殺用グリッチ波形が出力されるようにする。
【0043】
図5(a)はDA変換器71~73の出力の例を示す。図5(b)はDA変換器74~76の出力の例を示す。図5(c)は、DA変換器71~76の出力を用いて生成される相殺用グリッチ波形の例を示すもので、合成器77~79により、+(DA変換器71の出力)+(DA変換器72の出力)+(DA変換器73の出力)-(DA変換器74の出力)-(DA変換器75の出力)-(DA変換器76の出力)の演算(合成)をすることで得ることができる。
【0044】
図6(a)はDA変換器62の出力の例を示す。この例では、時間経過に伴い、DA変換器62の入力が単調増加する。合成器64で、DA変換器62の出力に対し、図6(b)に示す相殺用グリッチ波形を減算(図6(a)-図6(b)の減算)することで、図6(c)に示すようにグリッチを打ち消すことができる。
【0045】
上記実施形態では、上位1~2ビット目の反転でのグリッチを相殺するために、相殺グリッチ生成部70が、3個のDA変換器71~73と、変位を打ち消すための3個のDA変換器74~76の合計6個のDA変換器を有する構成について説明したが、上位nビット目(nは1以上の整数)までの反転によるグリッチを相殺する場合、相殺グリッチ生成部70は、(2-1)×2個のDA変換器を有する。
【0046】
上記実施形態では、相殺グリッチ生成部70でグリッチ波形を取り出すにあたり、1最下位ビット分(「00000001」)のオフセットが残っていたが、DA変換器74~76の動作バランスでオフセットを最終的に0にできる。例えば、DA変換器62の入力変化に応じて、DA変換器71~76の入力を以下のように設定する。
【0047】
DA変換器62「01111111」→「10000000」
DA変換器71「01111111」→「10000000」
DA変換器74「01111101」→「01111110」
【0048】
DA変換器62「00111111」→「01000000」
DA変換器72「00111111」→「01000000」
DA変換器75「01000000」→「01000001」
【0049】
DA変換器62「10111111」→「11000000」
DA変換器73「10111111」→「11000000」
DA変換器76「11000000」→「11000001」
【0050】
DA変換器75の入力はDA変換器72の入力より1最下位ビット分大きく、DA変換器76の入力はDA変換器73の入力より1最下位ビット分大きい。一方、DA変換器74の入力はDA変換器71の入力より2最下位ビット分小さい。これにより、オフセットを最終的に0にできる。
【0051】
上記実施形態では、DA変換器62の入力値が増加する例について説明したが、入力値が減少する場合も同様の処理を適用できる。
【0052】
上記実施形態では、DA変換器71~73の出力を加算した信号に対し、DA変換器74~76の出力を加算した信号を減算して相殺用グリッチ波形を生成し、その後、DA変換器62の出力に対し相殺用グリッチ波形を減算する構成について説明したが、信号の合成順序はこれに限定されない。例えば、DA変換器62の出力に対し、DA変換器71~73の出力を加算した信号を減算し、その後、DA変換器74~76の出力を加算した信号を加算してもよい。あるいはまた、DA変換器62の出力とDA変換器74~76の出力を加算した信号とを加算し、その後、DA変換器71~73の出力を加算した信号を減算してもよい。
【0053】
次に、この波形生成装置を適用した荷電粒子ビーム照射装置について説明する。実施の形態では、荷電粒子ビームの一例として、電子ビームを用いた構成について説明する。但し、荷電粒子ビームは電子ビームに限るものでなく、イオンビーム等でもよい。また、実施の形態では、照射装置の一例として描画装置の構成について説明するが、検査装置等でもよい。
【0054】
図7は、本発明の実施形態に係る描画装置の構成を示す概念図である。図7において、描画装置100は、描画部150と制御部160を備えている。描画装置100は、可変成形型の描画装置の一例である。
【0055】
描画部150は、電子鏡筒(電子ビームカラム)102と描画室103を備えている。電子鏡筒102内には、電子銃201、照明レンズ202、ブランキング偏向器212、第1成形アパーチャ基板203、投影レンズ204、偏向器205、第2成形アパーチャ基板206、対物レンズ207、主偏向器208及び副偏向器209が配置されている。描画室103内には、XYステージ105が配置される。XYステージ105上には、レジストが塗布された、描画対象となるマスク等の基板101が配置される。基板101は、半導体装置を製造する際の露光用マスクや、レジストが塗布された、まだ何も描画されていないマスクブランクス等である。
【0056】
制御部160は、制御計算機110、メモリ111、偏向制御回路120、制御回路122、DAC(デジタル・アナログコンバータ)アンプ132,134,136、加算器138、及び磁気ディスク装置等の記憶装置140,142を有している。偏向制御回路120には、DACアンプ132,134,136が接続される。DACアンプ134,136の出力には加算器138が接続される。
【0057】
DACアンプ132は、副偏向器209に接続されている。DACアンプ134は、その出力が加算器138に接続されている。DACアンプ136は、その出力が加算器138に接続されている。加算器138の出力は主偏向器208に接続されている。
【0058】
偏向制御回路120から各DACアンプ132,134,136に対して、それぞれの対応する制御用のデジタル信号が出力される。そして、各DACアンプでは、それぞれのデジタル信号をアナログ信号に変換し、増幅させた上で偏向電圧として出力する。主偏向器208には、DACアンプ134,136の2つの出力の加算値(和)が主偏向用の偏向電圧として印加される。DACアンプ132の出力が副偏向器209に副偏向用の偏向電圧として印加される。これらの偏向電圧によって電子ビームが偏向させられる。制御回路122は、制御計算機110内の描画制御部52による制御のもと、描画部150の動作を制御する。
【0059】
制御計算機110内には、データ処理部50及び描画制御部52が配置される。データ処理部50及び描画制御部52といった各「~部」は、処理回路を有する。処理回路は、例えば、電気回路、コンピュータ、プロセッサ、回路基板、量子回路、或いは、半導体装置を含む。各「~部」は、共通する処理回路(同じ処理回路)を用いても良いし、或いは異なる処理回路(別々の処理回路)を用いても良い。データ処理部50及び描画制御部52に入出力される情報および演算中の情報はメモリ111にその都度格納される。
【0060】
描画装置100の外部から描画対象のチップパターンのデータ(チップデータ)が入力され、記憶装置140に格納される。チップデータには、描画する図形パターンの図形種を示す図形コード、配置座標、及び寸法等が定義される。その他、照射量情報が同データ内に定義されてもよい。或いは照射量情報が別データとして入力されてもよい。
【0061】
図8は、各領域を説明するための概念図である。図8において、基板101の描画領域10は、主偏向器208の偏向可能幅で、例えばy方向に向かって短冊状に複数のストライプ領域20に仮想分割される。主偏向器208は、x,y方向に主偏向器208の偏向可能幅で囲まれた主偏向領域22内を偏向する。各ストライプ領域20を、副偏向器209の偏向可能サイズでメッシュ状に仮想分割することで、複数のサブフィールド(SF)30(小領域)が生成される。図8の例では、あるSF30のショット位置にショット図形42,44,46が描画される。
【0062】
偏向制御回路120から図示しないブランキング制御用のDACアンプに対して、ブランキング制御用のデジタル信号が出力される。ブランキング制御用のDACアンプは、デジタル信号をアナログ信号に変換し、増幅させた上で偏向電圧として、ブランキング偏向器212に印加する。ブランキング偏向器212は、電子ビーム200を偏向し、ビームのON/OFFを切り替える。
【0063】
偏向制御回路120から図示しない成形偏向制御用のDACアンプに対して、成形偏向制御用のデジタル信号が出力される。成形偏向制御用のDACアンプは、デジタル信号をアナログ信号に変換し、増幅させた上で偏向電圧として、偏向器205に印加する。偏向器205は電子ビーム200を偏向することにより、第1成形アパーチャ基板203を通過した電子ビーム200の第2成形アパーチャ基板206の開口部通過位置を制御し、各ショットのビームを可変成形する。
【0064】
偏向制御回路120からDACアンプ134(第1アンプ)に対して、主偏向制御用のデジタル信号(主偏向データ)が出力される。DACアンプ134は、デジタル信号をアナログ信号に変換し、増幅させた上で偏向電圧(第1偏向電圧)として、主偏向器208に印加する。主偏向器208は、各ショットのビームを、メッシュ状に仮想分割された所定のサブフィールド(SF)30の基準位置に偏向する。
【0065】
同時に、偏向制御回路120からDACアンプ136(第2アンプ)に対して、トラッキング制御用のデジタル信号(トラッキングデータ)が出力される。DACアンプ136は、デジタル信号をアナログ信号に変換し、増幅させた上で偏向電圧(第2偏向電圧)として、主偏向器208に印加する。なお、主偏向器208には、主偏向制御用の偏向電圧とトラッキング制御用の偏向電圧とが加算器138で加算された偏向電圧が印加される。
【0066】
偏向制御回路120からDACアンプ132に対して、副偏向制御用のデジタル信号が出力される。DACアンプ132は、デジタル信号をアナログ信号に変換し、増幅させた上で偏向電圧として、副偏向器209に印加する。副偏向器209は、各ショットのビームを、メッシュ状に仮想分割された所定のサブフィールド(SF)内の各ショット位置に偏向する。
【0067】
描画装置100では、複数段の偏向器を用いて、ストライプ領域20毎に描画処理を進めていく。ここでは、一例として、主偏向器208、及び副偏向器209といった2段偏向器が用いられる。
【0068】
XYステージ105が例えば-x方向に向かって連続移動しながら、1番目のストライプ領域20についてx方向に向かって描画を進めていく。多重描画を行わずに、各ストライプ領域20を1回ずつ描画する場合には、例えば、以下のように動作する。1番目のストライプ領域20の描画終了後、同様に、或いは逆方向に向かって2番目のストライプ領域20の描画を進めていく。以降、同様に、3番目以降のストライプ領域20の描画を進めていく。各ストライプ領域20を描画するにあたり、主偏向器208が、XYステージ105の移動に追従するように、SF30の基準位置(例えば中心)に電子ビーム200を順に偏向する。また、副偏向器209が、各SF30の基準位置から当該SF30内に照射されるビームの各ショット位置に電子ビーム200を偏向する。このように、主偏向器208、及び副偏向器209は、サイズの異なる偏向領域をもつ。SF30は、複数段の偏向器の偏向領域のうち、最小の偏向領域となる。
【0069】
電子銃201(放出部)から放出された電子ビーム200は、ブランキング偏向器212内を通過する際にブランキング用のDACアンプからの偏向信号によって制御されるブランキング偏向器212によって、ビームONの状態では、第1成形アパーチャ基板203の矩形の開口全体を照明するように制御され、ビームOFFの状態では、ビーム全体が第1成形アパーチャ基板203で遮蔽されるように偏向される。ビームOFFの状態からビームONとなり、その後ビームOFFになるまでに第1成形アパーチャ基板203を通過した電子ビーム200が1回の電子ビームのショットとなる。ブランキング偏向器212は、通過する電子ビーム200の向きを制御して、ビームONの状態とビームOFFの状態とを交互に生成する。例えば、ビームONの状態では電圧を印加せず、ビームOFFの際にブランキング偏向器212に電圧を印加すればよい。各ショットの照射時間で基板101に照射される電子ビーム200のショットあたりの照射量が調整されることになる。
【0070】
ビームONに制御された電子ビーム200は、照明レンズ202により矩形の開口を持つ第1成形アパーチャ基板203全体を照明する。第1成形アパーチャ基板203により、電子ビーム200は矩形に成形される。第1成形アパーチャ基板203を通過した第1アパーチャ像の電子ビーム200は、投影レンズ204により第2成形アパーチャ基板206上に投影される。偏向器205によって、第2成形アパーチャ基板206上での第1アパーチャ像は偏向制御され、ビーム形状と寸法を変化させる(可変成形を行なう)ことができる。可変成形はショット毎に行なわれ、例えばショット毎に異なるビーム形状と寸法に成形される。そして、第2成形アパーチャ基板206を通過した第2アパーチャ像の電子ビーム200は、対物レンズ207により焦点を合わせ、主偏向器208及び副偏向器209によって偏向され、連続的に移動するXYステージ105に配置された基板101の所望する位置に照射される。
【0071】
図7では、位置偏向に、主副2段の多段偏向を用いた場合を示している。この場合、主偏向器208でSF30の基準位置にステージ移動に追従しながら該当ショットの電子ビーム200を偏向し、副偏向器209でSF内の各照射位置に該当ショットのビームを偏向すればよい。このような動作を繰り返し、各ショットのショット図形を繋ぎ合わせることで、所望の図形パターンを描画する。
【0072】
図9は、トラッキング制御用の偏向電圧を出力するDACアンプ136(以下、トラッキングアンプ136ともいう)の構成図である。トラッキングアンプ136に、図4と同様の構成の波形生成装置を適用している。
【0073】
DA変換器62は、制御部60を介して偏向制御回路120からデジタル信号の指令値であるトラッキングデータを受信し、アナログ信号に変換する。この指令値は、XYステージ105の移動に応じて連続的に変化する。
【0074】
制御部60は、トラッキングデータを監視し、指令値の変化が上位ビット(この例では上位1ビット目及び上位2ビット目)の反転を伴うとき、相殺グリッチ生成部70に、相殺用グリッチ波形を生成させる。グリッチを含むDA変換器62の出力に対し、相殺グリッチ生成部70が生成する相殺用グリッチを合成器(減算器)64で減算し、DA変換器62の出力に現れるグリッチを打ち消す。
【0075】
トラッキングアンプ136の出力のグリッチが抑制されるため、主偏向器208によるビーム偏向量が安定し、描画精度を向上させることができる。
【0076】
図7では、実施の形態を説明する上で必要な構成を記載している。描画装置100にとって、通常、必要なその他の構成を備えていても構わない。例えば、位置偏向用には、主偏向器208と副偏向器209の主副2段の多段偏向器を用いているが、3段以上の多段偏向器によって位置偏向を行なってもよい。
【0077】
また、主偏向器208と副偏向器209は、電子ビームの通過領域を取り囲むように、例えば、8極の電極によって構成され、各電極用にそれぞれDACアンプが配置される。また、可変成形用の偏向器205は、例えば、4極の電極によって構成され、各電極のための図示しないDACアンプを備えていることは言うまでもない。同様に、ブランキング偏向器212は、例えば、2極の電極によって構成され、2つの電極の少なくとも一方の図示しないDACアンプを備えていることは言うまでもない。
【0078】
また、描画装置100には、マウスやキーボード等の入力装置、モニタ装置、及び外部インターフェース回路等が接続されていても構わない。
【0079】
上記実施形態では、第1DA変換器の入力データの所定の上位ビットの値が反転する時に、第2DA変換器の入力信号の指令値を同じビットの値が反転するように変更し、第2DA変換器の出力と第3DA変換器の出力を合成して相殺用グリッチ波形を生成する例について説明した。例えば、第1DA変換器の入力データの最上位ビットの値が反転する時に、第2DA変換器の入力信号の指令値の最上位ビットの値を反転していた。
【0080】
しかし、第1DA変換器の入力データにおいて値が反転するビットと、第2DA変換器の入力信号において値が反転するビットとが異なるものであってもよい。以下、具体例を用いて説明する。説明の便宜上、第1DA変換器、第2DA変換器の入力データを2進数4ビット表現とする。
【0081】
例えば、第1DA変換器の入力が「0010」→「0011」→「0100」→「0101」と連続的に変化する際、第2DA変換器の入力は「0111」→「0111」→「1000」→「1000」となる。すなわち、第1DA変換器の入力の上位2ビット目が反転する時に、第2DA変換器の入力の最上位ビットを反転させる。
【0082】
第3DA変換器の入力は第2DA変換器の入力と比較して1最下位ビット分(「0001」)異なり、第2DA変換器の入力が「0111」のとき第3DA変換器の入力は「1000」であり、第2DA変換器の入力が「1000」のとき第3DA変換器の入力は「1001」である。
【0083】
第2DA変換器の出力と第3DA変換器の出力とを合成することで相殺用グリッチ波形が生成される。この相殺用グリッチ波形を第1DA変換器の出力と合成することで、第1DA変換器の出力に含まれるグリッチを減少させることができる。
【0084】
第1DA変換器の入力と第2DA変換器の入力とで反転するビットの桁が異なるため、第1DA変換器の出力に含まれるグリッチの大きさと、第2DA変換器の出力に含まれるグリッチの大きさが異なる。第1DA変換器の出力に含まれるグリッチの大きさと、第2DA変換器の出力に含まれるグリッチの大きさとの関係によっては、相殺用グリッチ波形を合成しても、第1DA変換器の出力に含まれるグリッチが十分に減少しないことがある。
【0085】
図10(a)は第1DA変換器の出力の一例を示し、図10(b)は相殺用グリッチ波形の一例を示す。例えば、第1DA変換器の入力が「0010」→「0011」→「0100」→「0101」と連続的に変化する際に、図10(a)に示すように、20mVの大きさのグリッチが発生する。第2DA変換器の入力を「0111」→「0111」→「1000」→「1000」と変化させると、図10(b)に示すように、40mVの大きさの相殺用グリッチ波形が生成される。これらをそのまま減算合成すると、図10(c)に示すように、-20mVのグリッチが残る。
【0086】
第1DA変換器の出力に含まれるグリッチを効果的に減少させるために、第2DA変換器の出力(第2DA変換器の出力と第3DA変換器の出力とを合成して得られる相殺用グリッチ波形)を増幅させることが好ましい。
【0087】
例えば、上記の例では、第2DA変換器の出力及び第3DA変換器の出力をそれぞれ0.5倍増幅する。あるいはまた、第2DA変換器の出力と第3DA変換器の出力とを合成した信号を0.5倍増幅する。これにより、図10(d)に示すように、20mVの大きさの相殺用グリッチ波形が生成される。図10(a)に示す第1DA変換器の出力と、図10(d)に示す相殺用グリッチ波形を合成することで、図10(e)に示すように、グリッチを効果的に打ち消すことができる。
【0088】
上記実施形態では、図1図4に示すように、複数の合成器を用いて第1DA変換器の出力に含まれるグリッチを打ち消す構成について説明したが、合成器を1つにしてもよい。例えば、図11に示すように、第1DA変換器となるDA変換器80と、第2第2DA変換器群となるDA変換器81~83と、第3DA変換器群となるDA変換器88,89とを備え、各DA変換器の出力が合成器90で加算合成される。
【0089】
DA変換器80の出力に大きなグリッチが発生するケースは、入力データの最上位ビットが反転する場合と、入力データの最上位ビットが「1」で上位2ビット目が反転する場合と、入力データの最上位ビットが「0」で上位2ビット目が反転する場合の3つあり、それぞれ、グリッチの大きさが異なる。また、DA変換器80の入力データの増加に伴いビット反転する場合と、減少に伴いビット反転する場合とで、グリッチの大きさ(絶対値)が異なる。
【0090】
例えば、DA変換器80の出力に発生するグリッチの大きさは以下の表1に示すようなものとなる。
【0091】
【表1】
【0092】
DA変換器81~83もDA変換器80と同様のグリッチが発生すると仮定すると、DA変換器81~83に互いに異なる増幅率を設定しておき、DA変換器80の入力データにおいて反転するビットに応じて、DA変換器81~83のいずれかの出力を合成することで、DA変換器80の出力に発生するグリッチを効果的に減少させることができる。
【0093】
DA変換器80の入力データの最上位ビットが0で上位2ビット目が反転する場合、制御部60は、DA変換器81に対し、最上位ビットが1で上位2ビット目が反転し、かつ増減がDA変換器80の入力データとは逆になる信号を出力する。また、DA変換器81の出力は、0.67倍される。これにより、DA変換器80の出力に含まれるグリッチを相殺するグリッチが得られる。
【0094】
例えば、DA変換器80の入力データが「0011」から「0100」に増加する場合、DA変換器80の出力に含まれるグリッチの大きさは20mVとなる。このとき、DA変換器81の入力は「1100」から「1011」に減少し、0.67倍された出力に含まれるグリッチの大きさは-20mV(=-30×0.67)となり、DA変換器80の出力に含まれるグリッチを相殺するものとなる。
【0095】
DA変換器80の入力データが「0100」から「0011」に減少する場合、DA変換器80の出力に含まれるグリッチの大きさは-10mVとなる。このとき、DA変換器81の入力は「1011」から「1100」に増加し、0.67倍された出力に含まれるグリッチの大きさは10mV(=15×0.67)となり、DA変換器80の出力に含まれるグリッチを相殺するものとなる。
【0096】
DA変換器80の入力データの最上位ビットが反転する場合、制御部60は、DA変換器82に対し、最上位ビットが反転し、かつ増減がDA変換器80の入力データとは逆になる信号を出力する。DA変換器82の出力の増幅率は1である。
【0097】
例えば、DA変換器80の入力データが「0111」から「1000」に増加する場合、DA変換器80の出力に含まれるグリッチの大きさは50mVとなる。このとき、DA変換器82の入力は「1000」から「0111」に減少し、出力に含まれるグリッチの大きさは-50mVとなり、DA変換器80の出力に含まれるグリッチを相殺するものとなる。
【0098】
DA変換器80の入力データが「1000」から「0111」に減少する場合、DA変換器80の出力に含まれるグリッチの大きさは-50mVとなる。このとき、DA変換器82の入力は「0111」から「1000」に増加し、出力に含まれるグリッチの大きさは50mVとなり、DA変換器80の出力に含まれるグリッチを相殺するものとなる。
【0099】
DA変換器80の入力データの最上位ビットが1で上位2ビット目が反転する場合、制御部60は、DA変換器83に対し、最上位ビットが0で上位2ビット目が反転し、かつ増減がDA変換器80の入力データとは逆になる信号を出力する。また、DA変換器83の出力は、1.5倍される。これにより、DA変換器80の出力に含まれるグリッチを相殺するグリッチが得られる。
【0100】
例えば、DA変換器80の入力データが「1100」から「1011」に減少する場合、DA変換器80の出力に含まれるグリッチの大きさは-30mVとなる。このとき、DA変換器81の入力は「0011」から「0100」に増加し、1.5倍された出力に含まれるグリッチの大きさは30mV(=20×1.5)となり、DA変換器80の出力に含まれるグリッチを相殺するものとなる。
【0101】
DA変換器80の入力データが「1011」から「1100」に増加する場合、DA変換器80の出力に含まれるグリッチの大きさは15mVとなる。このとき、DA変換器81の入力は「0100」から「0011」に減少し、1.5倍された出力に含まれるグリッチの大きさは-15mV(=-10×1.5)となり、DA変換器80の出力に含まれるグリッチを相殺するものとなる。
【0102】
なお、DA変換器88,89の一方は、DA変換器81~83の出力変位を打ち消すためのものであり、他方はオフセットを打ち消すためのものである。
【0103】
このように、DA変換器80の出力と、第1DA変換器80の入力データの反転するビットに応じて選択されるDA変換器81~83のいずれかの出力と、DA変換器88,89の出力とを合成器90で加算合成することで、DA変換器80の出力に含まれるグリッチを減少させることができる。
【0104】
図11は上位1~2ビット目の反転でのグリッチを相殺するための構成を示したが、上位1~3ビット目の反転でのグリッチを相殺するためには、図12に示すように、第2DA変換器群にDA変換器84~87を追加した構成となる。DA変換器84~87の出力の増幅率は、上位3ビット目の反転でのグリッチの大きさにより適宜設定される。
【0105】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0106】
60 制御部
62 DA変換器
64 合成器
70 相殺グリッチ生成部
71~76 DA変換器
77~79 合成器
100 描画装置
101 基板
120 偏向制御回路
132、134 DACアンプ
136 DACアンプ(トラッキングアンプ)
138 加算器
200 電子ビーム
208 主偏向器
209 副偏向器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12