(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20241022BHJP
【FI】
G03G15/20 555
(21)【出願番号】P 2021024290
(22)【出願日】2021-02-18
【審査請求日】2023-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100182453
【氏名又は名称】野村 英明
(72)【発明者】
【氏名】池田 保
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 聖治
(72)【発明者】
【氏名】岡本 潤
(72)【発明者】
【氏名】高木 啓正
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 良州
【審査官】山下 清隆
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-051179(JP,A)
【文献】特開昭60-182464(JP,A)
【文献】特開平07-160178(JP,A)
【文献】特開平05-195981(JP,A)
【文献】特開平02-103062(JP,A)
【文献】特開2011-033778(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
G03G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像が形成された記録媒体を加熱し、回転体を有する加熱装置と、
前記回転体に送風する送風装置を備える画像形成装置であって、
前記送風装置は、回転軸の周りを回転することにより、前記回転軸と交差する方向から空気を吸入し前記回転軸と交差する方向に空気を排出して気流を発生させる気流発生部材を複数有し、
複数の前記気流発生部材のそれぞれの前記回転軸は、前記回転体
の長手方向と平行に配置され
、
複数の前記気流発生部材のうち、少なくとも2つは、互いに独立して駆動可能であり、
互いに独立して駆動可能な前記気流発生部材は、複数のクラッチ機構によって共通の駆動源からの駆動力の伝達及び遮断が切り換えられ、
複数の前記クラッチ機構は、共通の駆動軸上に配置され、前記駆動軸と前記気流発生部材との間において駆動力の伝達及び遮断を切り換えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
画像が形成された記録媒体を加熱し、回転体を有する加熱装置と、
前記回転体に送風する送風装置を備える画像形成装置であって、
前記送風装置は、回転軸の周りを回転することにより、前記回転軸と交差する方向から空気を吸入し前記回転軸と交差する方向に空気を排出して気流を発生させる気流発生部材を複数有し、
複数の前記気流発生部材のそれぞれの前記回転軸は、前記回転体の長手方向と平行に配置され、
複数の前記気流発生部材のうち、少なくとも2つは、互いに独立して駆動可能であり、
互いに独立して駆動可能な前記気流発生部材は、複数のクラッチ機構によって共通の駆動源からの駆動力の伝達及び遮断が切り換えられ、
前記共通の駆動源は、前記気流発生部材のほか、前記加熱装置の回転体を駆動させる駆動源であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
画像が形成された記録媒体を加熱し、回転体を有する加熱装置と、
前記回転体に送風する送風装置を備える画像形成装置であって、
前記送風装置は、回転軸の周りを回転することにより、前記回転軸と交差する方向から空気を吸入し前記回転軸と交差する方向に空気を排出して気流を発生させる気流発生部材を複数有し、
複数の前記気流発生部材のそれぞれの前記回転軸は、前記回転体の長手方向と平行に配置され、
複数の前記気流発生部材のうち、少なくとも2つは、互いに独立して駆動可能であり、
互いに独立して駆動可能な前記気流発生部材は、複数のクラッチ機構によって共通の駆動源からの駆動力の伝達及び遮断が切り換えられ、
前記共通の駆動源は、前記気流発生部材のほか、画像形成装置本体に設けられた他の回転体を駆動させる駆動源であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
複数の前記気流発生部材のうち、少なくとも2つの前記気流発生部材の回転軸は、同軸上に配置される請求項1から3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記気流発生部材の回転軸と前記駆動軸は、互いに平行に配置される請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記気流発生部材は、発生する風量を変更可能である請求項1から5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記気流発生部材は、回転方向が切り換えられることにより、前記風量を変更可能である請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記複数の気流発生部材は、クロスフローファンである請求項1から7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記回転体は、加圧ローラ又は定着ベルトである請求項1から8のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機又はプリンタなどの画像形成装置に搭載される加熱装置の一例として、無端状ベルト又はローラなどの一対の回転体によって用紙を挟みながら加熱し、用紙上の画像を定着させる定着装置が知られている。
【0003】
この種の定着装置においては、用紙が通過しない非通紙領域の温度上昇が顕著となる傾向にある。そのため、特許文献1(特開2012-118487号公報)においては、シロッコファンなどの気流発生装置を用いて気流を発生させることにより、回転体の非通紙領域部分を冷却する方法が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載のように、複数の気流発生装置を定着装置の周囲に配置すると、画像形成装置が大型化する課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明は、画像が形成された記録媒体を加熱し、回転体を有する加熱装置と、前記回転体に送風する送風装置を備える画像形成装置であって、前記送風装置は、回転軸の周りを回転することにより、前記回転軸と交差する方向から空気を吸入し前記回転軸と交差する方向に空気を排出して気流を発生させる気流発生部材を複数有し、複数の前記気流発生部材のそれぞれの前記回転軸は、前記回転体の長手方向と平行に配置され、複数の前記気流発生部材のうち、少なくとも2つは、互いに独立して駆動可能であり、互いに独立して駆動可能な前記気流発生部材は、複数のクラッチ機構によって共通の駆動源からの駆動力の伝達及び遮断が切り換えられ、複数の前記クラッチ機構は、共通の駆動軸上に配置され、前記駆動軸と前記気流発生部材との間において駆動力の伝達及び遮断を切り換えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、画像形成装置を小型化できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
【
図2】本実施形態に係る定着装置の概略構成図である。
【
図3】前記定着装置における非通紙領域を示す図である。
【
図4】本実施形態に係る送風装置の構成を示す側面図である。
【
図6】中間幅の用紙が通紙される場合の冷却動作を説明するための図である。
【
図7】前記送風装置の他の実施形態を示す図である。
【
図8】前記送風装置のさらに他の実施形態を示す図である。
【
図9】前記送風装置の別の実施形態を示す図である。
【
図10】前記送風装置のさらに別の実施形態を示す図である。
【
図11】本発明を端部基準搬送方式の画像形成装置に適用した例を示す図である。
【
図12】定着ローラに気流を吹き付ける例を示す図である。
【
図13】定着ローラと加圧ローラの両方に気流を吹き付ける例を示す図である。
【
図14】本発明を適用可能な他の定着装置の例を示す図である。
【
図16】気流発生部材における空気の吸入方向及び排出方向の一例を示す断面図である。
【
図17】気流発生部材における空気の吸入方向及び排出方向の一例を示す外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付の図面に基づき、本発明について説明する。なお、本発明を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材及び構成部品などの構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
【0009】
図1は、本発明の実施の一形態に係る画像形成装置の概略構成図である。ここで、本明細書中における「画像形成装置」には、プリンタ、複写機、ファクシミリ、印刷機、又は、これらのうちの二つ以上を組み合わせた複合機などが含まれる。まず、
図1を参照して、本実施形態に係る画像形成装置の全体構成及び動作について説明する。
【0010】
図1に示す画像形成装置100は、画像形成手段としての画像形成部200及び転写部300と、定着部400と、記録媒体供給部500と、記録媒体排出部600を備えている。
【0011】
画像形成部200には、4つのプロセスユニット1Y,1M,1C,1Bkと、露光装置6が設けられている。各プロセスユニット1Y,1M,1C,1Bkは、画像形成装置本体に対して着脱可能な作像ユニットである。各プロセスユニット1Y,1M,1C,1Bkは、カラー画像の色分解成分に対応するイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの異なる色のトナー(現像剤)を収容している以外、基本的に同じ構成である。具体的に、各プロセスユニット1Y,1M,1C,1Bkは、感光体2と、帯電部材3と、現像装置4と、クリーニング部材5を備えている。
【0012】
感光体2は、表面に画像を担持する像担持体である。本実施形態においては、感光体2として、ドラム状の感光体(感光体ドラム)が用いられている。また、感光体2として、ベルト状の感光体(感光体ベルト)を用いることも可能である。
【0013】
帯電部材3は、感光体2の表面を帯電させる部材である。本実施形態においては、帯電部材3として、感光体2の表面に接触するローラ状の帯電部材が用いられている。また、帯電部材3として、コロナ帯電などの非接触式のものを用いることも可能である。
【0014】
現像装置4は、露光装置6によって感光体2の表面に形成された静電潜像に現像剤としてのトナーを供給する装置である。現像装置4は、回転しながら感光体2に接触しトナーを供給する現像ローラなどを備えている。
【0015】
クリーニング部材5は、感光体2の表面に接触するブレード状の部材である。クリーニング部材5は、回転する感光体2に対して相対的に摺動し、感光体2上に残留するトナー及びその他の異物を除去する。クリーニング部材5としては、ブレード状の部材以外に、ローラ状の部材を用いることも可能である。
【0016】
転写部300には、記録媒体である用紙に画像を転写する転写装置8が設けられている。記録媒体としては、普通紙、厚紙、薄紙、コート紙、ラベル紙、又は封筒などの紙製の記録媒体のほか、OHPシートなどの樹脂製の記録媒体であってもよい。転写装置8は、中間転写ベルト11と、4つの一次転写ローラ12と、二次転写ローラ13を有している。中間転写ベルト11は、無端状のベルト部材であり、複数のローラによって張架されている。各一次転写ローラ12は、中間転写ベルト11を介して感光体2に接触している。これにより、中間転写ベルト11と各感光体2との間に、中間転写ベルト11と各感光体2とが接触する一次転写ニップが形成されている。一方、二次転写ローラ13は、中間転写ベルト11を介して中間転写ベルト11を張架する複数のローラの1つに接触している。これにより、二次転写ローラ13と中間転写ベルト11との間に、二次転写ローラ13と中間転写ベルト11とが接触する二次転写ニップが形成されている。
【0017】
定着部400には、用紙に画像を定着させる定着装置9が設けられている。定着装置9の詳しい構成については後述する。
【0018】
記録媒体供給部500には、複数枚の用紙Pを収容する給紙カセット14と、給紙カセット14から用紙Pを送り出す給紙ローラ15が設けられている。
【0019】
記録媒体排出部600には、用紙を画像形成装置外に排出する一対の排紙ローラ17と、排紙ローラ17によって排出された用紙を載置する排紙トレイ18が設けられている。
【0020】
次に、
図1を参照しつつ本実施形態に係る画像形成装置100の印刷動作について説明する。
【0021】
画像形成装置100において印刷動作が開始されると、各プロセスユニット1Y,1M,1C,1Bkの感光体2及び転写装置8の中間転写ベルト11が回転を開始する。また、給紙ローラ15が、回転を開始し、給紙カセット14から用紙Pを送り出す。送り出された用紙Pは、一対のタイミングローラ16に接触することにより静止し、用紙に転写される画像が形成されるまで用紙の搬送が一旦停止される。
【0022】
各プロセスユニット1Y,1M,1C,1Bkにおいては、まず、帯電部材3が、感光体2の表面を均一な高電位に帯電する。次いで、原稿読取装置によって読み取られた原稿の画像情報、あるいは端末からプリント指示されたプリント画像情報に基づいて、露光装置6が、各感光体2の表面(帯電面)に露光する。これにより、露光された部分の電位が低下して各感光体2の表面に静電潜像が形成される。そして、この静電潜像に対して現像装置4がトナーを供給し、各感光体2上にトナー画像が形成される。各感光体2上に形成されたトナー画像は、各感光体2の回転に伴って一次転写ニップ(一次転写ローラ12の位置)に達すると、回転する中間転写ベルト11上に順次重なり合うように転写される。かくして、中間転写ベルト11上にフルカラーのトナー画像が形成される。なお、画像形成装置100は、各プロセスユニット1Y,1M,1C,1Bkのいずれか一つを使用して単色画像を形成したり、いずれか2つ又は3つのプロセスユニットを用いて2色又は3色の画像を形成したりすることもできる。また、感光体2から中間転写ベルト11へトナー画像が転写された後は、クリーニング部材5によって各感光体2上の残留トナーなどが除去され、各感光体2は次の静電潜像の形成に備える。
【0023】
中間転写ベルト11上に転写されたトナー画像は、中間転写ベルト11の回転に伴って二次転写ニップ(二次転写ローラ13の位置)へ搬送され、タイミングローラ16によって搬送されてきた用紙P上に転写される。その後、用紙Pは定着装置9へ搬送され、定着装置9によってトナー画像が用紙Pに定着される。そして、用紙Pは排紙ローラ17によって排紙トレイ18へ排出され、一連の印刷動作が終了する。
【0024】
続いて、
図2に基づき、本実施形態に係る定着装置9の構成について説明する。
【0025】
図2に示すように、定着装置9は、定着ローラ20と、加圧ローラ21と、ハロゲンヒータ22と、温度センサ23を備えている。
【0026】
定着ローラ20は、用紙Pに未定着トナーTを定着させる定着部材として機能する回転体(第1回転体)である。定着ローラ20は、例えば、外径が30mmで厚みが0.7mmのアルミニウム製の基体を有している。基体の材料は、アルミニウム以外に、鉄などの他の金属材料であってもよい。基体の外周面には、耐久性及び離型性を確保するために、例えば、厚みが5~50μmで、PFA又はPTFEなどのフッ素系樹脂から成る離型層が設けられている。また、基体と離型層との間に、ゴムなどから成る弾性層が設けられていてもよい。
【0027】
加圧ローラ21は、定着ローラ20とは別の回転体(第2回転体)であって、定着ローラ20に対して相対的に加圧される加圧部材である。加圧ローラ21は、バネなどの付勢部材によって定着ローラ20の外周面に相対的に加圧される。これにより、定着ローラ20と加圧ローラ21との間に、これらのローラ20,21が互いに接触するニップ部Nが形成される。加圧ローラ21は、例えば、外径が30mmであり、中実の鉄製芯金と、芯金の外周面に設けられた弾性層と、弾性層の外周面に設けられた離型層を有している。弾性層は、例えば、厚みが10mmで、シリコーンゴムなどにより形成されている。離型層は、例えば、厚みが30μm程度で、PFA又はPTFEなどのフッ素系樹脂により形成されている。
【0028】
ハロゲンヒータ22は、定着ローラ20を内側から加熱する加熱源である。定着ローラ20を加熱する加熱源としては、ハロゲンヒータ22以外に、カーボンヒータ、セラミックヒータ、あるいは、IH(電磁誘導加熱)方式の加熱源を用いることが可能である。
【0029】
温度センサ23は、定着ローラ20の表面温度を検知する温度検知部材である。本実施形態においては、温度センサ23として、定着ローラ20の外周面に対して非接触に配置される非接触式センサが用いられている。この場合、温度センサ23は、定着ローラ20近傍の雰囲気温度を定着ローラ20の温度として検知する。なお、温度センサ23は、定着ローラ20の外周面に接触する接触式センサであってもよい。温度センサ23としては、例えば、サーモパイル、サーモスタット、サーミスタ又はNCセンサなどの公知の温度センサを適用可能である。
【0030】
本実施形態に係る画像形成装置において印刷動作が開始されると、定着装置9において、駆動モータなどの駆動源により加圧ローラ21が回転駆動を開始し、これに伴って定着ローラ20が従動回転を開始する。また、ハロゲンヒータ22が発熱することにより、定着ローラ20が加熱される。このとき、温度センサ23によって定着ローラ20の表面温度が検知され、その検知結果に基づいて画像形成装置に設けられた制御部がハロゲンヒータ22の出力を制御する。これにより、定着ローラ20の温度が所望の温度(定着温度)に維持される。そして、この状態で、
図2に示すように、未定着トナー画像Tを担持する用紙Pが、定着ローラ20と加圧ローラ21との間(ニップ部N)に進入すると、用紙Pが定着ローラ20と加圧ローラ21によって加圧されながら加熱されることにより、未定着トナー画像Tが用紙Pに定着される。
【0031】
ここで、本実施形態に係る定着装置9においては、
図3に示すように、少なくとも2種類の幅W1,W2の用紙P1,P2を通紙し、定着処理を行うことができる。なお、用紙の幅とは、用紙の搬送方向Yとは直交する方向の長さ、あるいは、定着ローラ20又は加圧ローラ21の軸方向又は長手方向(
図3に示す矢印X方向)における用紙の長さを意味する。
【0032】
図3に示すように、ハロゲンヒータ22は、いずれの幅サイズの用紙であっても加熱できるように、最大幅W1の用紙P1が通過する最大通紙領域(最大記録媒体通過領域)A全体に渡って配置されている。
【0033】
このように、ハロゲンヒータ22が最大通紙領域A全体に渡って配置されていることにより、いずれの幅サイズの用紙に対しても良好な定着処理を行うことが可能である。しかしながら、最大幅の用紙P1よりも小さい幅の用紙P2が通紙される場合は、その用紙P2が通過しない非通紙領域(記録媒体非通過領域)Bにおいて、定着ローラ20及び加圧ローラ21が温度上昇しやすくなる。すなわち、非通紙領域Bにおいては、通紙に伴う熱の消費がされにくく、蓄熱しやすい傾向にあるため、特に小サイズの用紙が複数枚連続通紙された場合は、非通紙領域Bにおける温度上昇が顕著となる。その結果、定着ローラ20又は加圧ローラ21の温度が耐熱温度を超える虞がある。そこで、本実施形態においては、非通紙領域Bにおける定着ローラ20及び加圧ローラ21の温度上昇を抑制するため、以下に説明するような冷却装置としての送風装置が設けられている。
【0034】
図4及び
図5に、本実施形態に係る送風装置の構成を示す。
【0035】
図4及び
図5に示すように、本実施形態に係る送風装置(冷却装置)30は、複数の気流発生部材31A~31Dを備えている。各気流発生部材31A~31Dは、
図4に示す回転方向Eに並ぶ複数の羽根を有し、回転軸32と交差する径方向から空気を吸入して径方向に空気を排出する、いわゆるクロスフローファンである。
図16及び
図17に示すように、各気流発生部材31A~31Dにおける空気の吸入方向F及び排出方向Gは、互いに交差する方向(略鉛直方向と略水平方向)であってもよいし、それ以外の方向であってもよい。すなわち、各気流発生部材31A~31Dにおける空気の吸入方向F及び排出方向Gは、回転軸32と交差する方向であれば特に限定されない。各気流発生部材31A~31Dは、定着ローラ20又は加圧ローラ21の回転軸方向又は長手方向(
図5中の矢印X方向)と平行な共通(1本)の回転軸32を有している。また、各気流発生部材31A~31D(羽根及び円筒状の枠体部分)は、回転軸32に対して個別に(独立して)回転可能に設けられている。
【0036】
また、
図5に示すように、各気流発生部材31A~31Dは、加圧ローラ21の非通紙領域Bに対応する位置に配置されている。なお、ここでいう加圧ローラ21の非通紙領域Bとは、
図3に示す最大幅の用紙P1よりも小さい幅の用紙P2が通紙される場合の非通紙領域である。各気流発生部材31A~31Dが回転すると、発生した気流が加圧ローラ21の少なくとも非通紙領域Bへ送られる。本実施形態においては、各気流発生部材31A~31Dが、定着ローラ20及び加圧ローラ21を収容する定着装置9のカバー24に設けられた各開口部24aに対向するように配置されている。このため、各気流発生部材31A~31Dが回転すると、気流が各開口部24aを介して加圧ローラ21の非通紙領域Bへ送られる。
【0037】
また、本実施形態に係る送風装置30には、
図5に示す共通(1つ)の駆動源50から各気流発生部材31A~31Dへ駆動力を伝達したり、その駆動力の伝達を遮断したりする複数のクラッチ機構40A~40Dが設けられている。共通の駆動源50は、画像形成装置本体に設けられた駆動源であってもよいし、定着装置9に設けられた駆動源であってもよい。また、各気流発生部材31A~31Dを回転させるための専用の駆動源が設けられていてもよい。共通の駆動源50として、各気流発生部材31A~31Dのほか、定着装置9が有する回転体(定着ローラ20又は加圧ローラ21など)、あるいは、画像形成装置本体に設けられたその他の回転体(感光体又は現像ローラなど)を駆動させる駆動源を用いる場合は、気流発生部材31A~31Dのための専用の駆動源が不要になるため、低コスト化を図れる。
【0038】
各クラッチ機構40A~40Dは、気流発生部材31A~31Dの回転軸32と平行な共通(1本)の駆動軸41上に配置されている。本実施形態においては、各クラッチ機構40A~40Dとして、駆動軸41と一体に回転可能な内輪と、内輪に対して相対的に回転可能な外輪を有し、通電の有無によって内輪と外輪の係合及び解除が切り換えられる電磁クラッチが用いられている。通電により内輪と外輪が互いに係合すると、各クラッチ機構40A~40Dは、駆動軸41から各気流発生部材31A~31Dへ駆動伝達可能な状態となる。一方、各クラッチ機構40A~40Dが非通電となって内輪と外輪の間の係合が解除されると、内輪と外輪は相対的に回転可能な状態となり、駆動軸41から各気流発生部材31A~31Dへの駆動伝達が遮断される。また、駆動軸41の軸方向一端には、共通の駆動源50と連動可能な駆動ギヤ42が設けられている。
【0039】
また、各クラッチ機構40A~40Dは、各気流発生部材31A~31Dに対応して1つずつ配置され、各クラッチ機構40A~40Dの外輪が各気流発生部材31A~31Dの外周面に接触している。このため、通電により各クラッチ機構40A~40Dの内輪と外輪が係合すると、内輪と一緒に外輪が回転し、外輪に接触する各気流発生部材31A~31Dが回転する。なお、各クラッチ機構40A~40Dは、各気流発生部材31A~31Dに対してギヤ又はベルトなどの駆動伝達部材を介して駆動伝達する構成であってもよい。
【0040】
本実施形態において、最大幅の用紙P1よりも小さい幅の用紙P2が通紙される場合は、用紙P2が通過しない非通紙領域Bにおいて定着ローラ20及び加圧ローラ21の温度が上昇する。その場合、
図5に示す全てのクラッチ機構40A~40Dへ通電することにより、各クラッチ機構40A~40Dを駆動伝達可能な状態にし、全ての気流発生部材31A~31Dを回転させる。これにより、加圧ローラ21の非通紙領域Bに対して気流が吹き付けられるため、加圧ローラ21の非通紙領域Bが冷却される。また、加圧ローラ21の非通紙領域Bが冷却されることにより、加圧ローラ21と接触する定着ローラ20の非通紙領域Bも間接的に冷却される。これにより、定着ローラ20及び加圧ローラ21のそれぞれの非通紙領域Bにおける温度上昇を抑制することが可能である。
【0041】
また、本実施形態においては、各クラッチ機構40A~40Dの通電状態(通電及び非通電)を切り換えることにより、各気流発生部材31A~31Dを互いに独立して駆動させることができる。このため、気流が吹き付けられる範囲を変更できる。
【0042】
例えば、
図6に示すように、最大幅W1の用紙P1よりも小さく、最小幅W2の用紙P2よりも大きい中間幅W3の用紙P3が通紙される場合は、中間幅W3の用紙P3が通過しない非通紙領域Cが温度上昇する。そのため、この場合は、中間幅W3の用紙P3が通過しない非通紙領域Cに合わせて気流を発生させることが好ましい。具体的には、
図6に示す4つの気流発生部材31A~31Dのうち、外側の2つの気流発生部材31A,31Dのみ駆動させる。すなわち、外側の2つのクラッチ機構40A,40Dのみに通電し、外側の各気流発生部材31A,31Dのみに駆動伝達する。一方、内側2つのクラッチ機構40B,40Cへの通電は遮断する。これにより、用紙P3の非通紙領域Cに合わせて気流を発生させることができ、非通紙領域Cを効果的に冷却できる。また、通紙領域への気流の吹き付けが回避されるため、通紙領域の温度が低下するのを抑制し所定の定着温度に維持できる。
【0043】
このように、本実施形態においては、非通紙領域の大きさに合わせて気流が吹き付けられる範囲を調整できるため、複数種類の用紙を通紙可能な画像形成装置においても、定着ローラ20及び加圧ローラ21の局部的な温度上昇を効果的に抑制可能である。
【0044】
また、本実施形態においては、気流発生部材31A~31Dとしてクロスフローファンが用いられているので、各気流発生部材31A~31Dの回転方向を変更することにより、発生する風量を変更可能である。すなわち、クロスフローファンは、正方向(一方向)に回転する場合に効率良く気流を発生させることができ、逆方向に回転すると風量が低下するので、クロスフローファンの回転方向を切り換えることにより、風量を変更できる。従って、加圧ローラ21及び定着ローラ20の温度上昇があまり顕著ではない場合は、各気流発生部材31A~31Dの回転方向を逆方向とすることにより、風量を少なくし、加圧ローラ21及び定着ローラ20が冷却され過ぎないように調整できる。また、各気流発生部材31A~31Dの回転方向を変更せず、回転速度を変更することにより、風量を変更してもよい。
【0045】
上記風量は、送風装置が単位時間当たりに移動させる空気量である。また、風量の単位は、m3/h(時)である。具体的に、風量Q(m3/h)は、通過風速V(m/s)と通過面積A(m2)の乗数で表される。風量は、例えば、熱線式風速計又はベーン式風速計を用いて計測できる。
【0046】
ところで、複数の気流発生部材を備える画像形成装置においては、各気流発生部材を設置するためのスペースを確保する必要がある。この点に関して、設置スペースに余裕がある場合は、例えば、
図15に示す例のように、複数の気流発生部材61A~61Dを定着装置9の周辺に配置し、さらに、各気流発生部材61A~61Dからの気流を案内するための複数のダクト63A~63Dを配置可能である。しかしながら、この場合、画像形成装置の小型化を図りにくい欠点がある。また、各気流発生部材61A~61Dを駆動させる専用の駆動源を複数配置する場合は、より一層小型化が困難となる。
【0047】
これに対して、本発明の実施形態においては、複数の気流発生部材31A~31Dを備える画像形成装置であっても、画像形成装置の小型化が可能である。すなわち、本発明の実施形態においては、
図5に示すように、各気流発生部材31A~31Dの回転軸32が、定着ローラ20又は加圧ローラ21の回転軸方向又は長手方向(
図5に示す矢印X方向)と平行に配置されているため、回転軸32が定着ローラ20又は加圧ローラ21の回転軸方向又は長手方向に対して斜めに配置される場合に比べて、各気流発生部材31A~31Dを効率良く配置でき、小型化を図れる。さらに、本発明の実施形態においては、複数の気流発生部材31A~31Dとして、クロスフローファンのような、回転軸32と交差する方向から空気を吸入し回転軸32と交差する方向に空気を排出して気流を発生させる気流発生部材を用いているため、複数のシロッコファンを備える構成に比べて、ダクトの形状を複雑化せずに、加圧ローラ21の所定の位置を効果的に冷却できる。このように、本発明の実施形態においては、クロスフローファンのような気流発生部材を、回転体であるローラの回転軸方向又は長手方向と平行になるように複数配置することにより、ダクトの形状を複雑化することなくローラの所定の位置を効果的に冷却でき、小型化を図りながら効率の良い冷却を実現できる。
【0048】
また、本発明の実施形態においては、各気流発生部材31A~31Dが共通(1本)の回転軸32に同軸上に配置されているため、各気流発生部材31A~31Dの構成及び各気流発生部材31A~31Dへ駆動力を伝達する駆動伝達機構の構成を簡素化及び省スペース化でき、小型化を図れる。一方、
図15に示す例のように、各気流発生部材61A~61Dの回転軸62A~62Dが同軸上に配置されていない場合は、各気流発生部材61A~61Dへの駆動伝達機構の部品点数が多くなったり、複雑化したりするため、小型化に不利である。
【0049】
また、本発明の実施形態においては、複数のクラッチ機構40A~40Dも同軸上に配置されているため、各クラッチ機構40A~40Dの設置スペースも少なくでき、より一層の小型化が可能である。さらに、本発明の実施形態においては、各クラッチ機構40A~40Dが設けられる駆動軸41も、定着ローラ20又は加圧ローラ21の回転軸方向又は長手方向(
図5に示す矢印X方向)と平行に配置されているため、小型化を図りやすい。すなわち、本発明の実施形態の場合は、駆動軸41が定着ローラ20又は加圧ローラ21の回転軸方向又は長手方向に対して斜めに配置されている場合に比べて、各クラッチ機構40A~40Dを効率良く配置でき、小型化を図れる。
【0050】
また、本発明の実施形態においては、
図15に示す例のようなダクト63A~63Dが設けられていないため、ダクト63A~63Dの設置スペースを確保する必要が無く、小型化を図りやすい。さらに、共通の駆動源50が、各気流発生部材31A~31Dのほか、その他の回転体をも駆動させる駆動源である場合は、設置される駆動源の数を少なくできるため、より一層の小型化が可能である。
【0051】
以上、
図1~
図6に示す実施形態を例に、本発明について説明した。ただし、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0052】
各気流発生部材の回転軸は、同軸上に配置されていれば、共通(1本)の回転軸でなくてもよい。例えば、
図7に示す例のように、各気流発生部材31A~31Dは、別体(複数)の回転軸32A,32Bに設けられるものであってもよい。
【0053】
また、
図8に示す例のように、各気流発生部材31A~31Dは、1本ずつ別体の回転軸32A~32Dを有するものであってもよい。また、各気流発生部材31A~31Dは、各回転軸32A~32Dに対して固定され、各回転軸32A~32Dと一体的に回転するものであってもよい。
【0054】
また、各気流発生部材の回転軸の全てが、同軸上に配置されていなくてもよい。例えば、
図9に示す例のように、外側2つの気流発生部材31A,31Dの回転軸32A,32Cと、内側2つの各気流発生部材31B,31Cの回転軸32Bが、同軸上ではなく、互いにずれて配置されていてもよい。このような場合であっても、各気流発生部材31A~31Dの構成及び駆動伝達機構の構成を簡素化及び省スペース化でき、画像形成装置の小型化を図れる。要するに、本発明においては、少なくとも2つの気流発生部材の回転軸が同軸上に配置されていればよい。また、
図9に示す例のように、各クラッチ機構40A~40Dも全て同軸上に配置されていなくてもよい。
【0055】
さらに、
図10に示す例のように、外側2つの気流発生部材31A,31Dと、内側2つの各気流発生部材31B,31Cが、それぞれ別の回転軸32A,32Bに固定され、外側2つの気流発生部材31A,31Dが同時に回転し、内側2つの各気流発生部材31B,31Cが同時に回転するようにしてもよい。この場合、クラッチ機構40A,40Bの数は2つであればよいので、上述の実施形態に比べて、クラッチ機構の数を少なくできる。
【0056】
上述の実施形態においては、各種幅サイズの用紙がそれぞれの幅方向中央を基準に合わせて搬送される、いわゆる中央基準搬送方式が採用されている。しかしながら、本発明は、中央基準搬送方式の画像形成装置に限らず、
図11に示すような、異なる幅W1、W2,W3の各用紙P1,P2、P3がそれぞれの幅方向一端を基準に合わせて搬送される、いわゆる端部基準搬送方式の画像形成装置にも適用可能である。
図11に示す例においては、各種用紙P1,P2,P3の右端を揃えて搬送されるため、通紙される用紙のサイズによって、左側の非通紙領域B,Cの範囲が異なる。このような端部基準搬送方式の画像形成装置においても、複数の気流発生部材31A~31Dの回転軸32が加圧ローラ21又は定着ローラ20の回転軸方向又は長手方向(X方向)と平行に配置されることにより、装置の小型化を図りつつ、用紙サイズに応じた非通紙領域B,Cの冷却が可能となる。
【0057】
また、
図12に示す例のように、複数の気流発生部材31A~31Dは、加圧ローラ21ではなく、定着ローラ20に送風する位置に配置されていてもよい。さらに、冷却効果を高めるため、
図13に示す例のように、定着ローラ20と加圧ローラ21の両方に送風するようにしてもよい。また、必要であれば、各気流発生部材と定着装置との間に気流を案内するダクトが設けられてもよい。
【0058】
また、本発明が適用される定着装置は、上述の実施形態に挙げられる定着装置に限らない。例えば、
図14に示すような、定着回転体としての無端状の定着ベルト25と、加圧回転体としての加圧ローラ26と、加熱源としてのヒータ27と、ヒータ27を保持する加熱源保持部材としてのヒータホルダ28と、ヒータホルダ28を支持する支持部材としてのステー29を備える定着装置9にも、本発明を適用可能である。
図14に示す例においては、加圧ローラ26とヒータ27によって定着ベルト25が挟まれることにより、定着ベルト25と加圧ローラ21が接触し、ニップ部Nが形成される。このような定着装置9においても、上述の実施形態と同様に本発明を適用することにより、定着ベルト25及び加圧ローラ26の局部的な温度上昇を抑制しつつ、装置の小型化が可能である。
【0059】
また、上述の各実施形態においては、加熱装置の一例である定着装置を備える電子写真方式の画像形成装置に、本発明を適用した場合を例に説明したが、本発明は、電子写真方式の画像形成装置に適用される場合に限らない。本発明は、例えば、用紙を加熱して用紙上のインク(液体)を乾燥させる乾燥装置を備えるインクジェット式の画像形成装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0060】
9 定着装置(加熱装置)
20 定着ローラ(回転体)
21 加圧ローラ(回転体)
30 送風装置
31A~31D 気流発生部材
32 回転軸
40A~40D クラッチ機構
41 駆動軸
50 駆動源
100 画像形成装置
200 画像形成部
X 定着ローラ又は加圧ローラの回転軸方向又は長手方向
【先行技術文献】
【特許文献】
【0061】