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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】製造ラインの工程計画立案装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/418 20060101AFI20241022BHJP
   H01L 21/02 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
H01L21/02 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021131600
(22)【出願日】2021-08-12
(65)【公開番号】P2023026024
(43)【公開日】2023-02-24
【審査請求日】2023-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】302006854
【氏名又は名称】株式会社SUMCO
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武富 太志
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-232921(JP,A)
【文献】台湾特許公告第000515967(TW,B)
【文献】特開2017-199282(JP,A)
【文献】特開2013-033466(JP,A)
【文献】特開2001-325018(JP,A)
【文献】特開2005-190031(JP,A)
【文献】特開2018-142060(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418
H01L 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
並行して稼働する複数の製造装置を用いて、複数の製品を製造する製造ラインの一工程において、前記複数の製造装置のそれぞれに対する、当月の製造日のそれぞれの、各製品の目標製造数量を割り当てた工程計画を立案する工程計画立案装置において、
前記工程計画の立案の前提となる条件情報を入力する条件情報入力部と、
前記製造ラインの日々の操業情報を入力する操業情報入力部と、
前記複数の製造装置と前記複数の製品との全ての組み合わせについて、前記製品の品種に応じて前記製造装置に含まれる部材又は部品の交換作業が必要とされる品種変更回数と原料待ちの稼働ロスを含む生産能力の予測値を総当たりでシミュレーションにて求める生産能力判定部と、
前記生産能力の予測値が最大となる製造装置と製品との組み合わせを抽出する組み合わせ抽出部と、を備える製造ラインの工程計画立案装置。
【請求項2】
前記条件情報は、前記製品別の品質制約情報、前記製品別の当月目標出荷量情報及び前記製品別の製造装置制約情報を含み、
前記操業情報は、原料の仕掛り数量情報、前記製品別の当月生産実績情報、前記製品別の生産能力情報、前記製造装置の設定条件情報及び前記製造装置の保守計画情報を含む請求項1に記載の製造ラインの工程計画立案装置。
【請求項3】
前記生産能力判定部は、
前記製品別の当月目標出荷量情報から前記製品別の歩留率を算出し、
当該算出された歩留率と前記製品別の当月目標出荷量情報とから前記製品別の当月目標生産量を算出し、
当該算出された目標生産量と前記製品別の生産能力情報とから前記当月目標生産量を達成するための日数を算出する請求項1又は2に記載の製造ラインの工程計画立案装置。
【請求項4】
前記組み合わせ抽出部により抽出された製造装置と製品との組み合わせが、前記条件情報入力部に入力された前記条件情報に照らして実施可能か否かを判定する工程計画決定部をさらに備え、
前記工程計画決定部は、実施不可能であると判定した場合には、当該抽出された製造装置と製品との組み合わせを除外した上で、前記生産能力判定部により前記生産能力の予測値を再度求める請求項1~3のいずれか一項に記載の製造ラインの工程計画立案装置。
【請求項5】
前記製品はウェーハ製品である請求項1~4のいずれか一項に記載の製造ラインの工程計画立案装置。
【請求項6】
並行して稼働する複数の製造装置を用いて、複数の製品を製造する製造ラインの一工程において、前記複数の製造装置のそれぞれに対する、当月の製造日のそれぞれの、各製品の目標製造数量を割り当てた工程計画を、プログラムによる動作するコンピュータにより立案する工程計画立案方法において、
前記コンピュータは、
前記工程計画の立案の前提となる条件情報を入力し、
前記製造ラインの日々の操業情報を入力し、
前記複数の製造装置と前記複数の製品との全ての組み合わせについて、前記製品の品種に応じて前記製造装置に含まれる部材又は部品の交換作業が必要とされる品種変更回数と原料待ちの稼働ロスを含む生産能力の予測値を総当たりでシミュレーションにて求め、
前記生産能力の予測値が最大となる製造装置と製品との組み合わせを抽出する製造ラインの工程計画立案方法。
【請求項7】
前記条件情報は、前記製品別の品質制約情報、前記製品別の当月目標出荷量情報及び前記製品別の製造装置制約情報を含み、
前記操業情報は、原料の仕掛り数量情報、前記製品別の当月生産実績情報、前記製品別の生産能力情報、前記製造装置の設定条件情報及び前記製造装置の保守計画情報を含む請求項6に記載の製造ラインの工程計画立案方法。
【請求項8】
前記製品別の当月目標出荷量情報から前記製品別の歩留率を算出し、
当該算出された歩留率と前記製品別の当月目標出荷量情報とから前記製品別の当月目標生産量を算出し、
当該算出された目標生産量と前記製品別の生産能力情報とから前記当月目標生産量を達成するための日数を算出する請求項6又は7に記載の製造ラインの工程計画立案方法。
【請求項9】
前記抽出された製造装置と製品との組み合わせが、前記入力された条件情報に照らして実施可能か否かを判定し、
実施不可能であると判定した場合には、当該抽出された製造装置と製品との組み合わせを除外した上で、前記生産能力の予測値を再度求める請求項6~8のいずれか一項に記載の製造ラインの工程計画立案方法。
【請求項10】
前記製品はウェーハ製品である請求項6~9のいずれか一項に記載の製造ラインの工程計画立案方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンエピタキシャルウェーハなど、各種の製造ラインの工程計画立案装置及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シリコンウェーハの品質実績及び工程経路(各プロセスで使用された生産装置の組合せからなる経路情報)等を蓄積したデータベースを利用して、複数プロセス(例えば、研磨や洗浄などのプロセス)にまたがる生産装置の組合せにより得られたシリコンウェーハの品質を統計学的に推定し、与えられたシリコンウェーハの品質規格に基づき、シリコンウェーハ製品と生産装置の組合せごとの歩留りを予測し、対象とするシリコンウェーハ製品全体の歩留りを最大化するシリコンウェーハ製品ごとの生産装置の組合せを選定して、各工程における工程計画を提示する工程計画立案システムが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-45143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術では、原料の仕掛り状況が考慮されていないので、実ラインの稼働状態との乖離があり、必ずしも最適な工程計画は得られないという問題がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、最適な工程計画が得られる製造ラインの工程計画立案装置及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、並行して稼働する複数の製造装置を用いて、複数の製品を製造する製造ラインの一工程において、前記複数の製造装置のそれぞれに対する、当月の製造日のそれぞれの、各製品の目標製造数量を割り当てた工程計画を立案する工程計画立案装置において、
前記工程計画の立案の前提となる条件情報を入力する条件情報入力部と、
前記製造ラインの日々の操業情報を入力する操業情報入力部と、
前記複数の製造装置と前記複数の製品との全ての組み合わせについて、前記製品の品種に応じて前記製造装置に含まれる部材又は部品の交換作業が必要とされる品種変更回数と原料待ちの稼働ロスを含む生産能力の予測値を総当たりでシミュレーションにて求める生産能力判定部と、
前記生産能力の予測値が最大となる製造装置と製品との組み合わせを抽出する組み合わせ抽出部と、を備える製造ラインの工程計画立案装置によって上記課題を解決する。
【0007】
また、本発明は、並行して稼働する複数の製造装置を用いて、複数の製品を製造する製造ラインの一工程において、前記複数の製造装置のそれぞれに対する、当月の製造日のそれぞれの、各製品の目標製造数量を割り当てた工程計画を、プログラムによる動作するコンピュータにより立案する工程計画立案方法において、
前記コンピュータは、
前記工程計画の立案の前提となる条件情報を入力し、
前記製造ラインの日々の操業情報を入力し、
前記複数の製造装置と前記複数の製品との全ての組み合わせについて、前記製品の品種に応じて前記製造装置に含まれる部材又は部品の交換作業が必要とされる品種変更回数と原料待ちの稼働ロスを含む生産能力の予測値を総当たりでシミュレーションにて求め、
前記生産能力の予測値が最大となる製造装置と製品との組み合わせを抽出する製造ラインの工程計画立案方法によって上記課題を解決する。
【0008】
上記発明において、前記条件情報は、前記製品別の品質規格情報、前記製品別の当月目標出荷量情報、前記製品別の製造装置制約情報及び前記製品別の品質検査結果情報を含み、前記操業情報は、原料の仕掛り数量情報、当月生産残数情報、前記製品別の生産能力情報、前記製造装置の設定条件情報及び前記製造装置の保守計画情報を含むことがより好ましい。
【0009】
上記発明において、前記製品別の当月目標出荷量情報から前記製品別の歩留率を算出し、当該算出された歩留率と前記製品別の当月目標出荷量情報とから前記製品別の当月目標生産量を算出し、当該算出された目標生産量と前記製品別の生産能力情報とから前記当月目標生産量を達成するための日数を算出することがより好ましい。
【0010】
上記発明において、前記組み合わせ抽出部により抽出された製造装置と製品との組み合わせが、前記条件情報入力部に入力された前記製造装置制約情報に照らして実施可能か否かを判定する工程計画決定部をさらに備え、
前記工程計画決定部は、実施不可能であると判定した場合には、当該抽出された製造装置と製品との組み合わせを除外した上で、前記生産能力判定部により前記生産能力の予測値を再度求めることがより好ましい。
【0011】
上記発明において、製品としてウェーハを適用することがより好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、最適な工程計画が得られる製造ラインの工程計画立案装置及び方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る工程計画立案装置を含むウェーハ製造ラインの全体を示すブロック図である。
図2】本発明に係る工程計画立案装置の一実施の形態を示すブロック図である。
図3図2の工程計画立案装置の情報処理を示すフローチャートである。
図4図1の実施形態に係る製品別の品質制約情報の一例を示す図である。
図5図1の実施形態に係る製品別の当月目標出荷量情報の一例を示す図である。
図6図1の実施形態に係る原料の仕掛り数量情報の一例を示す図である。
図7図1の実施形態に係る当月生産残数情報の一例を示す図である。
図8図1の実施形態に係る製品別の生産能力の一例を示す図である。
図9A図1の実施形態に係る製造装置の設定条件情報の一例を示す図である。
図9B】現在のCVD装置に設定されている部材Aの形状と部材Bの形状の一例を示す図である。
図10図1の実施形態に係る製造装置の保守計画情報の一例を示す。
図11A図3のステップS3の処理の一例を説明するガントチャート(その1)である。
図11B図3のステップS3の処理の一例を説明するガントチャート(その2)である。
図11C図3のステップS3の処理の一例を説明するガントチャート(その3)である。
図11D図3のステップS3の処理の一例を説明するガントチャート(その4)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明に係る工程計画立案装置を含むウェーハ製造ライン1の全体を示すブロック図である。図示する本実施形態の製造ライン1は、鏡面研磨したシリコンウェーハを原料11とし、CVD装置12を用いて、シリコンウェーハの表面にシリコンエピタキシャル層を形成することでシリコンエピタキシャルウェーハの製品13を得る製造ラインであり、並行して稼働する第1号機から第n号機まで複数のCVD装置12を備える。一般的に、シリコンエピタキシャルウェーハを製造する場合、原料11である鏡面研磨ウェーハをCVD装置12のエピタキシャル炉内に投入して約1150℃に加熱し、この炉内に、気化した二塩化シランや三塩化シランなどの原料ガスを流すことで、ウェーハ表面上に単結晶シリコンの膜を気相成長(エピタキシャル成長)させる。シリコン結晶の完全性が求められる場合や、抵抗率の異なる多層構造を必要とする場合に対応できる高品質なシリコンウェーハである。
【0015】
CVD装置12には、ウェーハの品種に応じた交換可能な部材又は部品(後述する部材A,Bを参照)が存在し、部材又は部品が共用できない品種のウェーハをそのCVD装置12で製造する場合は、その品種に応じた部材又は部品に交換するための品種交換作業が発生する。品種交換作業には一定の時間がかかるため、稼働率が低下する。そのため、工程計画上、できる限り品種交換作業が発生しない割り当てをすることが望ましい。
【0016】
また、原料である鏡面研磨ウェーハが欠品になると、少なくとも幾つかのCVD装置12において稼働しない時間、いわゆる原料欠品による待機時間が発生する。前工程である鏡面研磨ウェーハの欠品は、たとえば鏡面研磨ウェーハ製造工程での遅れや不良の発生によって生じ、これによりエピタキシャルウェーハの製造ラインが停止する。したがって、工程計画上、このような原料待ちの稼働ロスが発生しない割り当てをすることが望ましい。
【0017】
上記のとおり、品種交換作業が最小で且つ原料欠品による待ち時間が最小となる割り当てとすることが、稼働率が最大になる工程計画となる。本実施形態の工程計画立案装置2は、工程計画を立案するための前提となる条件情報と、実際の製造ラインの日々の操業情報とを入力し、品種変更回数と原料待ちの稼働ロスとが最小になるウェーハの製造装置への割り当ての組み合わせを算出する。そのため、本実施形態の工程計画立案装置2は、図2に示すように、条件情報を入力する条件情報入力部21と、操業情報を入力する操業情報入力部22と、生産能力の予測値を求める生産能力判定部23と、最適な組み合わせを抽出する組み合わせ抽出部24と、実施可能か否かを判定する工程計画決定部25とを備える。なお、工程計画立案装置は、ハードウェアとソフトウェアを含むコンピュータで構成することができ、これら条件情報入力部21,操業情報入力部22,生産能力判定部23,組み合わせ抽出部24及び工程計画決定部25は、ソフトウェアの個別のプログラムとして実現することができる。
【0018】
条件情報入力部21に入力すべき条件情報は、操業状態に拘わらず予め定まっている非変動条件であって、ウェーハ製品別の品質制約情報と、ウェーハ製品別の当月目標出荷量情報と、ウェーハ製品別の製造装置制約情報が含まれる。
【0019】
ウェーハ製品別の品質制約情報とは、ウェーハに要求される品質を満足し得るCVD装置12はどれであるかという情報である。図4は、本実施形態に係るウェーハ製品別の品質制約情報の一例を示す図である。ウェーハ製品A,B,Cに要求される品質には、品質1、品質2及び品質3(たとえば平坦度、膜厚、抵抗値など)があり、実際の製造ライ1において、現在のCVD装置12の1号機から5号機のそれぞれで製造されたウェーハ製品13の品質検査結果が図4に示すとおりであるとする。図4において「〇」が品質を満足するという結果を示し、空欄が品質を満足しないという結果を示す。現在のCVD装置12の1号機から5号機の品質検査結果が図4のとおりであるとすると、たとえば製品Aについて品質1が要求されている場合には2号機は使用できず、品質2又は品質3が要求されている場合には5号機は使用できないことになる。このようなCVD装置12に対する制約条件を品質制約情報という。
【0020】
ウェーハ製品別の当月目標出荷量情報には、工程計画を立案すべき月におけるウェーハ製品別の目標出荷量が含まれる。図5は、ある月の出荷量を示す図であり、本例ではウェーハ製品Aは1200枚、製品Bは1400枚、製品Cは2500枚、製品Dは1000枚、製品Eは1200枚とされている。
【0021】
ウェーハ製品別の製造装置制約情報とは、CVD装置12ごとに対応不可能なウェーハ製品の情報であり、たとえば客先が指定したCVD装置12でないと生産できないなどの情報が含まれる。
【0022】
操業情報入力部22に入力すべき操業情報は、製造ライン1の操業状態によって変動する変動条件であって、原料の仕掛り数量情報と、ウェーハ製品別の当月生産実績情報と、ウェーハ製品別の生産能力情報と、製造装置の設定条件情報と、製造装置の保守計画情報とが含まれる。
【0023】
原料の仕掛り数量情報とは、原料製造途中にあるウェーハの数量である。図6に原料の仕掛り数量情報の一例を示す。図6の工程1~9は、鏡面研磨ウェーハの製造工程を示し、具体的には、ウェーハとしてスライスされてからエピタキシャル工程までの鏡面研磨ウェーハの製造工程1~9を示す。それぞれの工程の時間当たりの処理能力とともに、各工程1~9に仕掛かっているウェーハ製品A~Eの仕掛り数量についての情報である。エピタキシャル工程の工程計画を立案する際の鏡面研磨ウェーハの欠品による稼働ロスの発生を最小限にするために使用される情報である。
【0024】
ウェーハ製品の当月生産実績情報とは、当月に実際に生産されたウェーハ製品の数量に関する情報である。当月の生産量(不良品を含む)と良品量の実績から歩留率(=良品数/生産量)が計算できる。また図5の当月目標出荷量を歩留率で除することで当月の目標生産量が計算できる。図7に当月生産実績情報の一例を示す。
【0025】
ウェーハ製品別の生産能力情報とは、そのウェーハ製造ライン1で定められた1日当たりの最大生産数量であり、ウェーハ製品毎に既知の値である。図8にウェーハ製品別の生産能力の一例を示す。当月目標生産量から当月良品量を減じ、更に図8の一日当たりの最大生産数量で除することで、当月目標生産量を達成するための日数を求めることができる。
【0026】
製造装置の設定条件情報とは、現在の各CVD装置12において設定されている専用の部材又は部品に関する情報である。既述したとおり、ウェーハ製品ごとに使用される部材Aの形状と部材Bの形状が決まっており、ウェーハ製品の品種が変わる場合に部材A及び部材Bも交換が必要になると、その交換作業の時間が発生する。そのため、このような品種交換の際に部材A,Bの交換作業が発生しない生産計画を立案するために、製造装置の設定条件情報を把握する。
【0027】
図9Aにウェーハ製品別に使用される部材A,Bの一例を示す。また、図9Bに現在のCVD装置12に設定されている部材Aの形状と部材Bの形状の一例を示す。たとえば、図9Aに示す例では、ウェーハ製品Aを製造する場合、部材Aは形状1、部材Bは形状1でなければならない。図9Aに示す例においては、ウェーハ製品A~Eについて同じ形状の部材A,Bを使用するものはないことから、ウェーハ製品A~Eの品種が変わる場合には、必ず部材A,Bの交換作業が発生することになる。
【0028】
製造装置の保守計画情報とは、各CVD装置12において必要とされる保守作業の計画情報であり、たとえば1機につき3日間の保守作業を1回/年の頻度で行うなど、予め定められている。図10に製造装置の保守計画情報の一例を示す。
【0029】
生産能力判定部23は、たとえばある月のウェーハ製品別の目標生産量を、複数のCVD装置12に割り当てて全て製造する場合に、製品別ウェーハとCVD装置12との組み合わせについての品種変更回数と原料待ちの稼働ロスを含む生産能力の予測値を、総当たりでシミュレーションして求める。コンピュータによる演算時間が長くかかる場合には、予め上限時間を設定しておき、その時間の範囲内で得られた組み合わせを用いてもよい。
【0030】
組み合わせ抽出部24は、生産能力判定部23で求められた組み合わせの中で、品種変更回数と原料待ちの稼働ロスを含む生産能力の予測値が最大となるウェーハ製品とCVD装置12との組み合わせを抽出する。すなわち、品種変更回数と稼働ロスが最も少ない組み合わせを抽出する。
【0031】
工程計画決定部25は、組み合わせ抽出部24により抽出されたウェーハ品種とCVD装置12との組み合わせが、条件情報入力部21に入力された条件情報、すなわち品質制約情報や製造装置制約情報に照らして実施可能か否かを判定する。そして、実施不可能であると判定した場合には、その抽出されたウェーハ品種とCVD装置12との組み合わせを除外した上で、生産能力判定部23により生産能力の予測値を再度求める。
【0032】
次に、本実施形態の工程計画の立案方法を説明する。図3は、工程計画立案装置の情報処理を示すフローチャートである。まずステップS1において、条件情報入力部21に、ウェーハ製品別の品質制約情報と、ウェーハ品種別の当月出荷量情報と、ウェーハ品種別のCVD装置の制約情報を含む条件情報を入力する。次いで、ステップS2において、操業情報入力部22に、原料の仕掛り数量情報と、ウェーハ製品の品質検査結果情報と、当月生産残数情報と、ウェーハ品種別の生産能力情報と、CVD装置の設定条件情報と、CVD装置の保守計画情報とを含む操業情報を入力する。
【0033】
次に、ステップS3において、ステップS1及びS2において入力した情報から、歩留率、目標生産量、目標生産量を達成するための日数の計算を行う。具体的には、製品別の当月目標出荷量情報のうちの良品数と不良品数とから製品別の歩留率を算出し、当該算出された歩留率と製品別の当月目標出荷量情報とから製品別の当月目標生産量を算出し、当該算出された目標生産量と製品別の生産能力情報とから、当月目標生産量を達成するための日数を算出する。
【0034】
次に、ステップS4において、生産能力判定部23は、ステップS1及びステップS2において入力された条件情報と操業情報と、ステップS3で計算された歩留率、目標生産量とに基づいて、複数のCVD装置12と複数品種のウェーハ製品との全ての組み合わせについて、品種変更回数と原料待ちの稼働ロスを含む生産能力の予測値を総当たりでシミュレーションして求める。この演算の一例を、図11A図11Dのガントチャートを参照しながら説明する。本例の前提として、図11Aに示すように、製造すべきウェーハ製品とその目標生産量を達成するための日数は、製品Aは13日、製品Bは6日、製品Cは2日、製品Dは7日であり、横軸は生産日を示し(6日間)、CVD装置12は1号機(#1)~5号機(#5)の5機を使用し、各CVD装置は1枚/日の生産能力を有し、現在の設備設定条件は、1号機は製品A、2号機は製品B、3号機は製品C、4号機は製品D、5号機は製品Bに対応しており、3号機に2日間の保守が予定されているものとする。
【0035】
以上の条件の下、まず品種交換作業が発生しないように、1号機には製品Aを6日、2号機には製品Bを6日、3号機には製品Cを2日、4号機には製品Dを6日、それぞれ割り付ける。この様子を図11Bに示す。この割り当て後の生産量を達成するための日数は、製品Aが7日、製品B,Cが0日、製品Dが1日であり、割り当てられていないCVD装置12は3号機の2日間と5号機の6日間である。
【0036】
5号機については製品Bが設備の設定条件とされているので、残りの製品A,Dのいずれについても品種交換作業が発生する。また、3号機については保守作業後であるため、保守作業時に品種交換作業を行うことができるので、製品A,Dの何れを割り当てても品種交換作業は発生しない。ただし、5号機に製品Dを割り当てると、2日の終了後に品種交換作業が発生することから、図11Cに示すように5号機に製品Aの6日を割り当て、図11Dに示すように、残りの製品Aの1枚と製品Dの1日は、3号機に割り当てる。以上の処理をプログラム化し、総当たりシミュレーションすることで品種変更回数と原料待ちの稼働ロスを含む生産能力の予測値が最も大きくなるウェーハ製品とCVD装置12との組み合わせを求める。
【0037】
次に、ステップS5において、組み合わせ抽出部24は、ステップS4にて求められた生産能力の予測値が最大となるCVD装置12とウェーハとの組み合わせを抽出する。続くステップS6において、工程計画決定部25は、組み合わせ抽出部24により抽出されたCVD装置12とウェーハ製品との組み合わせが、条件情報入力部21に入力されたCVD装置の制約情報に照らして実施可能か否かを判定する。この判定の結果、実施可能である場合はステップS7へ進み、その組み合わせの工程計画を出力し、立案処理を終了する。これに対して、ステップS6の判定の結果、実施が不可能である場合はステップS8へ進み、その抽出したCVD装置12とウェーハ製品との組み合わせを除外した上で、ステップS4へ進み、除外した条件のもと、生産能力判定部23により生産能力の予測値を再度求める。そして、ステップS6において実施可能な組み合わせが判定されるまで、ステップS4→S5→S6→S8→S4を繰り返す。これにより、CVD装置12の制約情報を満足し、且つ品種変更回数と原料待ちの稼働ロスが最小の組み合わせを求めることができる。
【0038】
本発明では、例としてシリコンエピタキシャルウェーハ製造工程のエピタキシャル工程を挙げたが、これに限ることはなく、例えばシリコンウェーハ製造工程のウェーハ研磨工程についても適用可能である。また、シリコンウェーハの製造工程だけでなく、並行して稼働する複数の製造装置を用いて、複数の製品を製造する製造ラインの一工程、たとえば半導体デバイス工程における成膜工程でも適用可能である。
【符号の説明】
【0039】
1…ウェーハ製造ライン
11…原料
12…CVD装置
13…製品(エピタキシャルウェーハ)
2…工程計画立案装置
21…条件情報入力部
22…操業情報入力部
23…生産能力判定部
24…組み合わせ判定部
25…工程計画決定部
3…データベース
D1…条件情報
D2…操業情報
D3…操業情報
D4…操業情報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11A
図11B
図11C
図11D