(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】心拍検出装置、心拍検出方法、および心拍検出プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/352 20210101AFI20241022BHJP
【FI】
A61B5/352
(21)【出願番号】P 2021558140
(86)(22)【出願日】2019-11-22
(86)【国際出願番号】 JP2019045793
(87)【国際公開番号】W WO2021100197
(87)【国際公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-02-22
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100153006
【氏名又は名称】小池 勇三
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121669
【氏名又は名称】本山 泰
(72)【発明者】
【氏名】橋本 優生
(72)【発明者】
【氏名】桑原 啓
(72)【発明者】
【氏名】松浦 伸昭
【審査官】牧尾 尚能
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-029628(JP,A)
【文献】特開2016-077539(JP,A)
【文献】国際公開第2018/074145(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0035327(US,A1)
【文献】国際公開第2017/150156(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00 - 5/0538
A61B 5/06 - 5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体の心電波形を示すセンサデータを取得して、前記センサデータに基づくサンプリングデータ列を出力するセンサデータ取得部と、
出力された前記サンプリングデータ列からサンプリングデータの時間差分値をサンプリング時刻ごとに算出する第1算出部と、
前記第1算出部によって算出された前記時間差分
値が、設定された
負の閾値を
下回った時刻
を心拍時刻
とする決定部と、
前記決定部によって決定された前記心拍時刻におけるサンプリングデータと、前記心拍時刻の1サンプリング前のサンプリングデータとの2点を通る直線上で、心電位がゼロとなる時刻を補正された心拍時刻とする補正部と、
前記補正された心拍時刻から、前記生体の心拍数を算出する第2算出部と
を備え、
前記心電波形をサンプリングするサンプリング間隔は、12.5ms以下で、下限が4msであることを特徴とする心拍検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の心拍検出装置において、
前記決定部によって決定された前記心拍時刻におけるサンプリングデータと、前記心拍時刻の1サンプリング前のサンプリングデータとの前記2点は、前記心電波形に含まれるQ波とR波とS波とで構成されるQRS波の起始部からS波のピークまでのRS間隔上の点であり、
前記補正部は、前記RS間隔上で心電位がゼロとなる時刻を前記補正された心拍時刻とする
ことを特徴とする心拍検出装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の心拍検出装置において、
前記第2算出部は、前記補正された心拍時刻を用いて、前記生体の心電波形に含まれるR波と1つ前のR波の時間間隔であるR-R間隔を算出し、前記R-R間隔から、前記生体の心拍数を算出する
ことを特徴とする心拍検出装置。
【請求項4】
生体の心電波形を示すセンサデータを取得して、前記センサデータに基づくサンプリングデータ列を出力する第1ステップと、
前記第1ステップで出力された前記サンプリングデータ列からサンプリングデータの時間差分値をサンプリング時刻ごとに算出する第2ステップと、
前記第2ステップで算出された前記時間差分
値が、設定された
負の閾値を
下回った時刻
を心拍時刻
とする第3ステップと、
前記第3ステップで決定された前記心拍時刻におけるサンプリングデータと、前記心拍時刻の1サンプリング前のサンプリングデータとの2点を通る直線上で、心電位がゼロとなる時刻を補正された心拍時刻とする第4ステップと、
前記補正された心拍時刻から、前記生体の心拍数を算出する第5ステップと
を備え、
前記心電波形をサンプリングするサンプリング間隔は、12.5ms以下で、下限が4msであることを特徴とする心拍検出方法。
【請求項5】
請求項4に記載の心拍検出方法において、
前記第3ステップで決定された前記心拍時刻におけるサンプリングデータと、前記心拍時刻の1サンプリング前のサンプリングデータとの前記2点は、前記心電波形に含まれるQ波とR波とS波とで構成されるQRS波の起始部からS波のピークまでのRS間隔上の点であり、
前記第4ステップは、前記RS間隔上で心電位がゼロとなる時刻を前記補正された心拍時刻とする
ことを特徴とする心拍検出方法。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の心拍検出方法において、
前記第5ステップは、前記補正された心拍時刻を用いて、前記生体の心電波形に含まれるR波と1つ前のR波の時間間隔であるR-R間隔を算出し、前記R-R間隔から、前記生体の心拍数を算出する
ことを特徴とする心拍検出方法。
【請求項7】
コンピュータに、
生体の心電波形を示すセンサデータを取得して、前記センサデータに基づくサンプリングデータ列を出力する第1ステップと、
前記第1ステップで出力された前記サンプリングデータ列からサンプリングデータの時間差分値をサンプリング時刻ごとに算出する第2ステップと、
前記第2ステップで算出された前記時間差分
値が、設定された
負の閾値を
下回った時刻
を心拍時刻
とする第3ステップと、
前記第3ステップで決定された前記心拍時刻におけるサンプリングデータと、前記心拍時刻の1サンプリング前のサンプリングデータとの2点を通る直線上で、心電位がゼロとなる時刻を補正された心拍時刻とする第4ステップと、
前記補正された心拍時刻から、前記生体の心拍数を算出する第5ステップと
を実行させ、
前記心電波形をサンプリングするサンプリング間隔は、12.5ms以下で、下限が4msであることを特徴とする心拍検出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心拍検出装置、心拍検出方法、および心拍検出プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ランニング、ウォーキング等の日常生活での様々な活動シーンにおいて、ウェアラブルデバイスを装着して、歩数、活動量、心拍数などの計測データにより、自らの健康管理をすることへの関心が高まっている。
【0003】
例えば、特許文献1は、衣服に装着されたウェアラブルセンサにより、着用時の心電波形を取得し、それをもとに心拍数を算出し、得られたデータをスマートフォン等の外部端末に送信するアプリケーションを開示している。
【0004】
このような、従来から知られているウェアラブルデバイスでは、外部電源が使用されないため、ユーザの心拍を計測する場合など、長時間の連続使用が必要な用途においては、デバイスの省電力化が重要である。
【0005】
そこで、従来から、ウェアラブルデバイスの省電力化を図るために、ユーザの心拍数などのデータを取得する間隔を大きくとって、単位時間当たりの演算処理量を軽減することが行われている。
【0006】
例えば、特許文献2は、心電位から心拍数を算出するために、心電位の時系列データに対し、R波の振幅に応じた閾値を設定し、データが閾値を上回ったことをもってR波を検出し、その周期(R-R間隔)から心拍数を算出する技術を開示している。
【0007】
また、体動ノイズに左右されることなく安定した生体の心拍数を検出する方法として、心電位の時系列データを用いる代わりに、心電位の時間差分値や、QRS波のピーク前後のクリアランスを考慮した時間差分値を指標値として用いる手法も提案されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2016/024495号
【文献】特開2015-156936号公報
【文献】特許第6404784号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、従来の技術では、心電位の特徴量を閾値により検出するので、データの取得間隔に応じた検出時刻のずれが生じ、心拍数を算出する際の誤差が生ずる場合があった。
【0010】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、生体の心拍数をより正確に計測することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するために、本発明に係る心拍検出装置は、生体の心電波形を示すセンサデータを取得して、前記センサデータに基づくサンプリングデータ列を出力するセンサデータ取得部と、出力された前記サンプリングデータ列からサンプリングデータの時間差分値をサンプリング時刻ごとに算出する第1算出部と、前記第1算出部によって算出された前記時間差分値が、設定された負の閾値を下回った時刻を心拍時刻とする決定部と、前記決定部によって決定された前記心拍時刻におけるサンプリングデータと、前記心拍時刻の1サンプリング前のサンプリングデータとの2点を通る直線上で、心電位がゼロとなる時刻を補正された心拍時刻とする補正部と、前記補正された心拍時刻から、前記生体の心拍数を算出する第2算出部とを備え、前記心電波形をサンプリングするサンプリング間隔は、12.5ms以下で、下限が4msであることを特徴とするものである。
【0012】
上述した課題を解決するために、本発明に係る心拍検出方法は、生体の心電波形を示すセンサデータを取得して、前記センサデータに基づくサンプリングデータ列を出力する第1ステップと、前記第1ステップで出力された前記サンプリングデータ列からサンプリングデータの時間差分値をサンプリング時刻ごとに算出する第2ステップと、前記第2ステップで算出された前記時間差分値が、設定された負の閾値を下回った時刻を心拍時刻とする第3ステップと、前記第3ステップで決定された前記心拍時刻におけるサンプリングデータと、前記心拍時刻の1サンプリング前のサンプリングデータとの2点を通る直線上で、心電位がゼロとなる時刻を補正された心拍時刻とする第4ステップと、前記補正された心拍時刻から、前記生体の心拍数を算出する第5ステップとを備え、前記心電波形をサンプリングするサンプリング間隔は、12.5ms以下で、下限が4msであることを特徴とするものである。
【0013】
上述した課題を解決するために、本発明に係る心拍検出プログラムは、コンピュータに、生体の心電波形を示すセンサデータを取得して、前記センサデータに基づくサンプリングデータ列を出力する第1ステップと、前記第1ステップで出力された前記サンプリングデータ列からサンプリングデータの時間差分値をサンプリング時刻ごとに算出する第2ステップと、前記第2ステップで算出された前記時間差分値が、設定された負の閾値を下回った時刻を心拍時刻とする第3ステップと、前記第3ステップで決定された前記心拍時刻におけるサンプリングデータと、前記心拍時刻の1サンプリング前のサンプリングデータとの2点を通る直線上で、心電位がゼロとなる時刻を補正された心拍時刻とする第4ステップと、前記補正された心拍時刻から、前記生体の心拍数を算出する第5ステップとを実行させ、前記心電波形をサンプリングするサンプリング間隔は、12.5ms以下で、下限が4msであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、心電波形に基づくサンプリングデータ列から算出されたサンプリング時刻ごとのサンプリングデータの時間差分値の変化が設定された閾値を超えた時刻に基づいて決定された心拍時刻におけるサンプリングデータと、その直前のサンプリングデータとの2点を通る直線上で、心電位がゼロとなる時刻を基準時刻として、心拍時刻を補正する。そのため、ユーザの心臓の拍動数をより正確に計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態に係る心拍検出装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、本実施の形態に係る心電波形を説明するための図である。
【
図3】
図3は、本実施の形態に係る心電波形を説明するための図である。
【
図4】
図4は、本実施の形態に係る心拍時刻算出部の機能構成を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、本実施の形態に係る心拍時刻算出部の機能構成の別の例を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、本実施の形態に係る心拍検出装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図7】
図7は、本実施の形態に係る心拍検出方法を説明するためのフローチャートである。
【
図8】
図8は、本実施の形態に係る心拍時刻算出処理を説明するためのフローチャートである。
【
図9】
図9は、本実施の形態に係る心拍検出装置の効果を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施の形態について、
図1から
図9を参照して詳細に説明する。
【0017】
[発明の概要]
まず、本発明の実施の形態に係る心拍検出装置1の概要について、
図2および
図3を参照して説明する。
【0018】
図2および
図3は、一般的な心電波形(Electrocardiogram:ECG)を示す図である。ECG波形は、連続した心拍の波形からなり、1つの心拍波形は、
図2に示すように、それぞれ心房や心室の活動を反映したP波、Q波、R波、S波、T波等の成分からなっている。そのうち、心室の収縮(心室筋の脱分極)に伴うものがR波であり、振幅も大きいため、心拍の検出はR波を目安にして行われることが多い。特に、ECG波形のサンプリングデータ列の時間差分をとることにより、R波からS波への急峻な変化をピーク状に浮き立たせると、心拍を検出しやすくなる。1拍ごとの心拍の間隔は、R-R間隔と称され、心拍変動の1次指標として扱われる。
【0019】
本実施の形態に係る心拍検出装置1は、R波からS波への急峻な変化を検出するために、ECG波形に含まれるQRS波の起始部からS波のピークまでのRS間隔上を検出点とする。本実施の形態では、RS間隔上の検出点と、その直前の点に対応した心電位を用いて、RS間隔で電位が0となる時刻を推定し、推定した時刻の時間間隔を用いて、R-R間隔を補正することがその特徴のひとつである。
【0020】
次に、本実施の形態に係る心拍検出装置1の構成について、
図1を用いて説明する。以下においては、心拍検出装置1は1つの心拍を検出し、その心拍時刻を得るまでの手順を説明する。このような心拍時刻の算出をECG波形の計測期間にわたって繰り返すことで、心拍時刻の時系列データが得られ、この時系列データからR-R間隔を算出することができる。
【0021】
また、本実施の形態では、ECG波形をサンプリングしたサンプリングデータをD(i)とする。ここで、i(i=1,2,・・・)は、1サンプリングのデータに順番に付与される番号を示す。データ列の番号iが大きくなるほど、サンプリング時刻が後になる。
【0022】
また、本実施の形態では、後述する第1時間間隔Tinr1の範囲における時間差分値の最小値をMin1、第2時間間隔Tinr2の範囲における時間差分値の最小値をMin2、第3時間間隔Tinr3の範囲における時間差分値の最小値をMin3とする。これらの最小値Min1,Min2、Min3の初期値は、例えば0としておけばよい。
【0023】
[心拍検出装置の機能ブロック]
図1に示すように、心拍検出装置1は、センサデータ取得部10、心拍時刻算出部11、補正部12、心拍数算出部(第2算出部)13、第1記憶部14、および送受信部15を備える。
【0024】
センサデータ取得部10は、ユーザの心電信号および計測時刻を含むセンサデータを取得する。センサデータ取得部10は、例えば、心電計で構成されるセンサ105で計測されたユーザの心電信号を取得することができる。センサデータ取得部10は、取得した心電信号の増幅、AD変換、およびノイズの除去などの信号処理を行う。センサデータ取得部10は、ECGの時系列データであるサンプリングデータD(i)とサンプリング時刻とを第1記憶部14に記憶する。なお、本実施の形態では、センサデータ取得部10は、センサ105からユーザの心電信号を取得する場合について説明するが、センサデータ取得部10は、予め計測されたユーザの心電信号をオフラインで取得することもできる。
【0025】
心拍時刻算出部11は、第1記憶部14に記憶されたECG波形のサンプリングデータD(i)を読み出して、心拍時刻を算出する。心拍時刻算出部11は、
図4に示すように、第1算出部110、第1判定部111、第2判定部112、第2記憶部113、および決定部114を備える(特許文献3参照)。
【0026】
第1算出部110は、ECG波形のサンプリングデータD(i)の時間差分値DY(i)を、サンプリング時刻(iで示される時刻)ごとに算出する。より詳細には、第1算出部110は、ECG波形のサンプリングデータD(i)の1サンプリング後のデータD(i+1)と1サンプリング前のサンプリングデータD(i-1)とを第1記憶部14から読み出して、サンプリングデータD(i)の時間差分値DY(i)を次式(1)により算出する。
【0027】
DY(i)=D(i+1)-D(i-1) ・・・(1)
【0028】
第1判定部111は、第1算出部110が算出した時間差分値DY(i)が、閾値THを下回るか否かを判定する。本実施の形態では、
図2および
図3のECG波形に示すように、R波からS波への急峻な変化による時間差分値DY(i)のピークを検出する。時間差分値DY(i)のピークは負の値として現れる。したがって、第1判定部111は、設定された負の値の閾値THを用いて、時間差分値DY(i)の閾値処理を行う。
【0029】
第1判定部111は、例えば、心拍として検出した時間差分値DY(i)の直近のピーク(Min2)、例えば直近5個のピーク(Min2)の平均値に0.5を乗じた値を、閾値THとして用いることができる。ピーク(Min2)の平均値に0.5を乗じる理由は、単純にピークを検出することを目的としたものよりも、閾値THの絶対値を小さく設定するためである(非特許文献3参照)。閾値THの絶対値を小さくすることで、絶対値の小さなピークも捕捉することができる。
【0030】
第2判定部112は、直前の心拍時刻から、時間差分値DY(i)を求めた最新のサンプリング時刻(iで示される時刻)までの第1経過時間T1が、第1時間間隔Tinr1の範囲内にあるか否かを判定する。また、第2判定部112は、時間差分値DY(i)が、閾値THを下回った時刻から、時間差分値DY(i)を求めた最新のサンプリング時刻までの第2経過時間T2が、第2時間間隔Tinr2の範囲内にあるか否かを判定する。さらに、第2判定部112は、第2経過時間T2が、第2時間間隔Tinr2の範囲を過ぎた時刻から、時間差分値DY(i)を求めた最新のサンプリング時刻までの第3経過時間T3が第3時間間隔Tinr3の範囲内にあるか否かを判定する。
【0031】
第1時間間隔Tinr1は、想定される次の心拍時刻の手前の時間領域を定めるためのパラメータである。第2時間間隔Tinr2は、時間差分値DY(i)のピークを含むと想定される時間領域を定めるためのパラメータである。また、第3時間間隔Tinr3は、時間差分値DY(i)のピークを含むと想定される時間領域の後の一定の時間領域を定めるためのパラメータである。
【0032】
第2判定部112は、例えば、直前の心拍時刻から得られるR-R間隔よりも150[ms]短い時間から、この時間に100[ms]加えた時間までの間を、第1時間間隔Tinr1の範囲として用いる。ここでのR-R間隔とは、直前の心拍時刻からさらに1つ前の心拍時刻を引いた時間である。
【0033】
あるいは、第2判定部112は、直前の心拍時刻から時間差分値DY(i)が次に閾値THを超える直前のまでの時間領域を第1時間間隔Tinr1の範囲として用いることもできる。
【0034】
第2時間間隔Tinr2は、時間差分値DY(i)のピークをカバーするのに十分な時間幅であることが好ましく、例えば、50[ms]と予め設定することができる。
【0035】
第3時間間隔Tinr3は、例えば、100[ms]と予め設定することができる。
【0036】
第2記憶部113は、第1経過時間T1が、第1時間間隔Tinr1の範囲内にあるときの時間差分値DY(i)の最小値Min1を保持する。また、第2記憶部113は、第2経過時間T2が、第2時間間隔Tinr2の範囲内にあるときの時間差分値DY(i)の最小値Min2を保持する。また、第2記憶部113は、第3経過時間T3が、第3時間間隔Tinr3の範囲内にあるときの時間差分値DY(i)の最小値Min3を保持する。
【0037】
決定部114は、第2記憶部113に保持されている時間差分値DY(i)の最小値Min1、Min2、Min3の関係が、予め設定された心拍時刻を確定する条件を満たす場合に、時間差分値DY(i)が閾値THを下回った時刻、または、最小値Min2が得られた時刻を心拍時刻とする。決定部114がいずれの時刻を心拍時刻として採用するかは、予めプログラムで設定することができる。
【0038】
例えば、最小値Min2の最小値Min1に対する比率Min2/Min1と、最小値Min2の最小値Min3に対する比率Min2/Min3とがともに一定値を超えることを、予め設定された心拍時刻を確定する条件として用いることができる。このような条件を予め設定することで、時間差分値のピークが単峰性のものであるか、そうでないかを判定することができる。
【0039】
補正部12は、心拍時刻算出部11によって算出された心拍時刻に基づくECG波形データより、心電位が0となる時刻を特定する。また、補正部12は、特定した心電位が0となる時刻をR-R間隔を算出するための基準時刻として用いる。より詳細には、補正部12は、心拍時刻算出部11が算出した心拍時刻におけるECG波形データD(n)と直前のECG波形データD(n-1)の2点を通る直線上において、心電位が0となる時刻を特定し、R-R間隔を算出するための基準時刻とする。
【0040】
例えば、心電位が0となる時刻の心拍時刻を基準としたときのずれΔn(サンプリングデータ番号を単位とする)は、次式(2)より算出される。
【0041】
【0042】
補正部12は、上式(2)より算出されるずれΔnを用いて基準時刻を算出することができる。
【0043】
ここで、心拍時刻算出部11によって算出された心拍時刻におけるECG波形データD(n)と直前のECG波形データD(n-1)は、RS間隔上の点である必要がある。つまり、サンプリング間隔には、上限が存在する。例えば、QRS間隔は、一般的に100[ms]程度といわれており、それを考慮すると、RS間隔は、25[ms]程度であるので、サンプリング間隔は12.5[ms]以下である必要がある。
【0044】
一方で、サンプリング間隔が小さすぎる場合には、心拍時刻算出部11によって算出された心拍時刻におけるECG波形データD(n)と直前のECG波形データD(n-1)は、S波付近の接線の傾きが急峻に変化する領域に存在することになる。そのため、ECG波形データD(n)と直前のECG波形データD(n-1)とを通る2点を用いて心拍時刻を補正する場合、誤差が大きくなる。つまり、サンプリング間隔には、下限も存在し、具体的には4[ms]程度である。
【0045】
心拍数算出部13は、補正部12によって補正された最新の心拍時刻から心拍数X[bpm]を算出する。具体的には、心拍数算出部13は、補正部12により算出および確定された最新の心拍時刻から1つ前の心拍時刻を引いた時間であるR-R間隔を、RRI[ms]としたとき、次式(3)により瞬時心拍数Xを算出する。
【0046】
【0047】
心拍数算出部13は、瞬時心拍数の代わりに、参考文献3(特開2018-011819)に記載されている次式(4)を用いて平均心拍数Xを算出する構成とすることもできる。
【0048】
【0049】
上式(4)において、HR(i)は平均化処理前のi番目の瞬時心拍数、X(i-1)は、i-1番目までの瞬時心拍数を平均化した値、1は、所定の平均化係数、X(i)は、i番目までの瞬時心拍数を平均化した平均心拍数を表している。
【0050】
送受信部15は、心拍数算出部13によって算出された心拍数を外部の図示されないスマートフォンなどの外部端末装置に有線または無線により送出する。
【0051】
[心拍時刻算出部の別の例]
本実施の形態に係る心拍検出装置1は、上述した心拍時刻算出部11が備える機能構成に限らず、例えば、
図5に示す構成を有する心拍時刻算出部11Aで心拍時刻を算出することもできる(参考文献1:特許6360017号、参考文献2:特許6527286号参照)。
【0052】
心拍時刻算出部11Aは、第1算出部110、指標値算出部115、取得部116、第2記憶部113、および決定部114を備える。
【0053】
第1算出部110は、心電波形のサンプリングデータD(i)の時間差分値DY(i)をサンプリング時刻ごとに算出する。
【0054】
取得部116は、サンプリング点iごとに、そのサンプリング点iの前後の所定の時間領域における時間差分値の最小値を取得する。
【0055】
指標値算出部115は、サンプリング点iごとに、そのサンプリング点iの時間差分値DY(i)からそのサンプリング点iの前後の所定の時間領域における時間差分値の最小値を引いた値を指標値として求める。
【0056】
決定部114は、サンプリング点iごとの指標値の中から、予め定められている閾値を下回り、かつ指標値の変化の傾向が減少から増加に転じる点の指標値を下向きのピークとして特定し、この特定した下向きのピークの時刻を心拍時刻とする。
【0057】
サンプリング点iの前後の所定の時間領域とは、例えば、サンプリング点iの時刻に対して、-112.5ms~-12.5msの領域と、+12.5ms~+112.5msの領域である。
【0058】
第2記憶部113は、取得部116によって取得された時間差分値の最小値、指標値算出部115によって求められた指標値、および決定部114によって決定された心拍時刻を一時的に記憶する。
【0059】
[心拍検出装置のハードウェア構成]
次に、上述した機能を有する心拍検出装置1を実現するハードウェア構成の一例を
図6を参照して説明する。
【0060】
図6に示すように、心拍検出装置1は、例えば、バスを介して接続されるCPU101、メモリ102、AFE103、ADC104、通信I/F106を備えるコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。心拍検出装置1には、例えば、外部に設けられたセンサ105がバスを介して接続されている。また、心拍検出装置1は、電源107を備え、
図5に示すセンサ105以外の装置全体への電源供給を行う。
【0061】
メモリ102には、CPU101が各種制御や演算を行うためのプログラムが予め格納されている。CPU101とメモリ102とによって、
図1に示したセンサデータ取得部10、心拍時刻算出部11、補正部12、心拍数算出部13を含む心拍検出装置1の各機能が実現される。
【0062】
センサ105は、心電計などで実現され、ユーザの皮膚を経由して微弱な心電信号を計測する。
【0063】
AFE(Analog Front End)103は、センサ105で計測されたアナログ信号の心電信号を増幅する回路である。
【0064】
ADC(Analog-to-Digital Converter)104は、AFE103で増幅されたアナログ信号を所定のサンプリング周波数でデジタル信号に変換する回路である。AFE103およびADC104は、
図1で説明したセンサデータ取得部10を実現する。
【0065】
メモリ102は、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリや、DRAMなどの揮発性メモリなどで実現される。メモリ102は、ADC104より出力された信号の時系列データを一時的に記憶する。メモリ102は、
図1で説明した第1記憶部14、および
図5で説明した第2記憶部を実現する。
【0066】
また、メモリ102は、心拍検出装置1が心拍検出処理を行うためのプログラムを格納するプログラム格納領域を有する。さらには、例えば、上述したデータやプログラムやなどをバックアップするためのバックアップ領域などを有していてもよい。
【0067】
通信I/F106は、通信ネットワークNWを介して各種外部電子機器との通信を行うためのインターフェース回路である。
【0068】
通信I/F106としては、例えば、LTE、3G、Bluetooth(登録商標)、Bluetooth Low Energy、Ethernet(登録商標)などの有線や無線によるデータ通信規格に対応した通信インターフェースおよびアンテナが用いられる。通信I/F106によって、
図1で説明した送受信部15が実現される。
【0069】
なお、心拍検出装置1は、CPU101に内蔵されている時計、あるいは、図示されないタイムサーバから時刻情報を取得してサンプリング時刻として用いる。
【0070】
[心拍検出方法]
次に、上述した構成を有する心拍検出装置1の動作について、
図7のフローチャートを用いて説明する。まず、ユーザに心電計からなるセンサ105が装着され、心電信号の計測が開始されると、以下の処理が実行される。
【0071】
まず、センサデータ取得部10は、ユーザの心電信号を、例えば、センサ105から取得する(ステップS1)。センサデータ取得部10は、心電信号を増幅し、所定のサンプリング周波数でサンプリングし、デジタルのECG波形を出力する。ECG波形のサンプリングデータは、第1記憶部14に記憶される。
【0072】
次に、心拍時刻算出部11は、第1記憶部14からECG波形のサンプリングデータD(i)を読み出して、心拍時刻を算出する(ステップS2)。
【0073】
ここで、ステップS2で心拍時刻算出部11が実行する心拍時刻算出処理について、
図8を参照して説明する。
【0074】
まず、第1算出部110は、第1記憶部14からサンプリングデータD(i)の時間差分値DY(i)を算出するため、サンプリングデータD(i)の1サンプリング後のデータD(i+1)と1サンプリング前のデータD(i-1)とを読み出す(ステップS200)。
【0075】
次に、第1算出部110は、式(1)より、サンプリングデータD(i)の時間差分値DY(i)を算出する(ステップS201)。次に、第1判定部111は、時間差分値DY(i)が閾値THを下回るかどうかを判定する(ステップS202)。
【0076】
次に、第2判定部112は、時間差分値DY(i)が閾値THを下回っていないと判定された場合(ステップS202:NO)、直前の心拍時刻から処理対象のサンプリングデータD(i)のサンプリング時刻(iで示される時刻)までの経過時間である第1経過時間T1が第1時間間隔Tinr1の範囲内にあるかどうかを判定する(ステップS203)。
【0077】
第2記憶部113は、第1経過時間T1が第1時間間隔Tinr1の範囲内と判定された場合、すなわち処理対象のサンプリングデータD(i)のサンプリング時刻が、想定される次の心拍時刻の手前の時間領域にある場合(ステップS203:YES)、第1時間間隔Tinr1の範囲内における時間差分値の最小値Min1を更新する(ステップS204)。つまり、第2記憶部113は、処理対象のサンプリングデータD(i)の時間差分値DY(i)と現在の最小値Min1とを比較し、処理対象の時間差分値DY(i)が現在の最小値Min1より小さい場合、時間差分値DY(i)を新たな最小値Min1とする。そして、ステップS200に戻る。なお、ステップS203において第1経過時間T1が第1時間間隔Tinr1の範囲外と判定された場合は、最小値Min1を更新することなく、ステップS200に戻る。
【0078】
一方、第1算出部110は、時間差分値DY(i)が閾値THを超えていると判定された場合(ステップS202:YES)、次のサンプリングデータD(j)の時間差分値DY(j)を算出するため(jはj≧(i+1)の整数で、初期値はj=i+1)、サンプリングデータD(j)の1サンプリング後のデータD(j+1)と1サンプリング前のデータD(j-1)とを第1記憶部14から読み出す(ステップS205)。そして、第1算出部110は、サンプリングデータD(j)の時間差分値DY(j)を上式(1)と同様に算出する(ステップS206)。
【0079】
時間判定部5は、時間差分値Y(i)が閾値THを超えた時刻から処理対象のサンプリングデータX(j)のサンプリング時刻(jで示される時刻)までの経過時間(第2経過時間T2)が第2時間間隔Tinr2の範囲内にあるかどうかを判定する(ステップS207)。
【0080】
第2記憶部113は、第2経過時間T2が第2時間間隔Tinr2の範囲内と判定された場合、すなわち処理対象のサンプリングデータD(j)のサンプリング時刻が、時間差分値のピークを含むと想定される時間領域にある場合(ステップS207:YES)、第2時間間隔Tinr2の範囲内における時間差分値の最小値Min2を更新する(ステップS208)。つまり、第2記憶部113は、処理対象のサンプリングデータD(j)の時間差分値DY(j)と現在の最小値Min2とを比較し、処理対象の時間差分値DY(j)が現在の最小値Min2より小さい場合、時間差分値DY(j)を新たな最小値Min2とする。そして、ステップS205に戻る。
【0081】
こうして、第2経過時間T2が第2時間間隔Tinr2の範囲外となるまで、j=i+1,i+2,i+3,i+4,・・・・というようにサンプリング時刻が新しい方のサンプリングデータD(j)に処理対象を1つずつ移しながら、ステップS205~S208の処理を繰り返し実行する。
【0082】
次に、第1算出部110は、ステップS207において第2経過時間T2が第2時間間隔Tinr2の範囲を過ぎたと判定された場合、すなわちサンプリング時刻が、時間差分値のピークを含むと想定される時間領域を超えた場合、次のサンプリングデータD(k)の時間差分値DY(k)を算出するため(kはk≧(j+1)の整数で、初期値はk=j+1)、サンプリングデータD(k)の1サンプリング後のデータD(k+1)と1サンプリング前のデータD(k-1)とを第1記憶部14から読み出す(ステップS209)。そして、第1算出部110は、サンプリングデータD(k)の時間差分値DY(k)を上式(1)と同様に算出する(ステップS210)。
【0083】
第2判定部112は、ステップS207において第2経過時間T2が第2時間間隔Tinr2の範囲を過ぎたと判定された時刻から処理対象のサンプリングデータD(k)のサンプリング時刻(kで示される時刻)までの経過時間(第3経過時間T3)が第3時間間隔Tinr3の範囲内にあるかどうかを判定する(ステップS211)。
【0084】
第2記憶部113は、第3経過時間T3が第3時間間隔Tinr3の範囲内と判定された場合、すなわち処理対象のサンプリングデータD(k)のサンプリング時刻が、時間差分値のピークの後の一定の時間領域にある場合(ステップS211:YES)、第3時間間隔Tinr3範囲内における時間差分値の最小値Min3を更新する(ステップS212)。つまり、第2記憶部113は、処理対象のサンプリングデータD(k)の時間差分値DY(k)と現在の最小値Min3とを比較し、処理対象の時間差分値DY(k)が現在の最小値Min3より小さい場合、時間差分値DY(k)を新たな最小値Min3とする。そして、ステップS209に戻る。
【0085】
こうして、第3経過時間T3が第3時間間隔Tinr3の範囲外となるまで、k=j+1,j+2,j+3,j+4,・・・・というようにサンプリング時刻が新しい方のサンプリングデータD(k)に処理対象を1つずつ移しながら、ステップS209~S212の処理を繰り返し実行する。
【0086】
次に、決定部114は、ステップS211において第3経過時間T3が第3時間間隔Tinr3の範囲外と判定された場合、すなわち処理対象のサンプリングデータD(k)のサンプリング時刻が、時間差分値のピークの後の一定の時間領域を超えた場合、3つの最小値Min1,Min2,Min3の関係が予め定められた心拍時刻を確定する条件を満たすかどうかを判定する(ステップS213)。
【0087】
ここで、最小値Min2はサンプリングデータの時間差分値の検出したピークの大きさに相当し、最小値Min1はピークの前の一定領域のフロアレベルに相当し、最小値Min3はピークの後の一定領域のフロアレベルに相当している。時間差分値のピークが単峰性の負のピークであれば、最小値Min2は、最小値Min1およびMin3に対して絶対値が大きくなっていなければならない。
【0088】
決定部114は、比率Min2/Min1とMin2/Min3が共に一定値を超える場合、所定の条件を満たすと判定し、比率Min2/Min1とMin2/Min3のうち少なくとも一方が一定値以下の場合、所定の条件を満たしていないと判定することができる。
【0089】
決定部114は、3つの最小値Min1,Min2,Min3の関係が心拍時刻を確定する条件を満たすと判定した場合(ステップS213:YES)、時間差分値DY(i)が閾値THを超えた時刻または最小値Min2が更新された最新の時刻(時間差分値のピークの時刻)を、心拍時刻として採用する(ステップS214)。
【0090】
ステップS214の終了後、i=k+1としてステップS200に戻る。これにより、次の心拍の検出が開始される。また、ステップS213において3つの最小値Min1,Min2,Min3の関係が心拍時刻を確定する条件を満たしていないと判定された場合にも、i=k+1としてステップS200に戻るが、この場合には、ステップS202で検出された閾値THを超える時間差分値が、ノイズによるもので、心拍に由来するものではなく、心拍を未だ検出していないことになる。
【0091】
こうして、ステップS200~S214の処理を繰り返すことで、心拍時刻の時系列データが得られる。
【0092】
次に、
図7に戻り、補正部12は、心拍時刻算出部11によって求められた心拍時刻を補正する(ステップS3)。より詳細には、補正部12は、心拍時刻算出部11によって算出された心拍時刻に基づくECG波形データより、心電位が0となる時刻を特定する。また、補正部12は、特定した心電位が0となる時刻をR-R間隔を算出するための基準時刻として用いる。より詳細には、補正部12は、心拍時刻算出部11が算出した心拍時刻におけるECG波形データD(n)と直前のECG波形データD(n-1)の2点を通る直線上において、心電位が0となる時刻を特定し、R-R間隔を算出するための基準時刻とする。
【0093】
次に、心拍数算出13は、補正部12によって特定された心電位が0となる基準時刻を用いて補正された最新の心拍時刻から心拍数X[bpm]を算出する(ステップS4)。より詳細には、心拍数算出部13は、補正部12により算出および確定された最新の心拍時刻から1つ前の心拍時刻を引いた時間であるR-R間隔を、RRI[ms]としたとき、上述した式(3)により瞬時心拍数Xを算出する。あるいは、心拍数算出部13は、瞬時心拍数の代わりに、上述した式(4)を用いて平均心拍数Xを算出する構成とすることもできる。
【0094】
その後、送受信部15は、心拍数算出部13によって算出された瞬時心拍数Xあるいは平均心拍数Xを、有線または無線により、通信ネットワークを介してスマートフォンなどの図示されない外部端末に送信する(ステップS5)。
【0095】
[心拍検出装置の効果]
次に、本実施の形態に係る心拍検出装置1の効果ついて、
図9を参照して説明する。
図9の例では、心拍数が60[bpm]で一定の心電波形を入力した際の、補正部12の有無による、R-R間隔間隔(RRI)の検出結果を示している。
図9の横軸は時間、縦軸はR-R間隔を示している。「四角形」マーカーは、従来例に係る補正部12を備えていない心拍検出装置による計測結果を示している。一方、「丸」マーカーは、本実施の形態に係る補正部12を備えた心拍検出装置1による計測結果を示している。
【0096】
図9の例では、心拍時刻算出部11として、参考文献1および参考文献2に記載されている心拍時刻算出部11Aによって算出された心拍時刻を用いた。また、サンプリング間隔は10[ms]としている。
図9の算出結果より、補正部12を導入することで、検出誤差が低減されていることがわかる。また、本実施の形態に係る心拍検出装置1では、ECG波形からサンプリング間隔を超えた精度で、心拍およびRRIを検出できることが実証された。
【0097】
以上説明したように、本実施の形態に係る心拍検出装置1によれば、RS上の検出点とその直前の点に対応した心電位を用いてRS間隔で電位が0になる時刻を推定し,推定した時刻の時間間隔を用いてR-R間隔を補正するので、生体の心拍数をより正確に計測することができる。
【0098】
また、本実施の形態によれば、省電力化のために、心電計でユーザの心拍数を取得する際のデータの取得間隔をより大きくとった場合であっても、正確にユーザの心拍数を検出することができる。
【0099】
なお、説明した実施の形態では、心拍数を検出する場合を例示したが、心拍数だけでなく、脈波など、周期性を有する生体情報に基づいて心拍数を算出する場合や、ECG波形に含まれるR-R間隔の他の特徴量、例えば、P波、Q波、S波、T波などのサンプルデータの補正についても、適用可能である。
【0100】
また、説明した実施の形態では、心拍時刻算出部11の具体例として、特許文献3、および参考文献1、2に記載された技術を用いた場合を例に挙げて説明した。しかし、心拍時刻算出部11は、これらの文献に記載されている心拍時刻の算出方法に限らず、本実施の形態に係る心拍検出装置1は適用することができる。
【0101】
また、特許文献3、および参考文献1、2に記載された心拍時刻算出方法は、従来の心拍検出技術と比較して、体動や発汗などに起因した基線の搖動や急峻なノイズによる、心拍の誤検出を低減できる。そのため、特許文献3、および参考文献1、2に記載されている心拍時刻算出方法と本発明に係る補正部12とを組わせることで、より高精度での心拍数の算出が可能となる。
【0102】
以上、本発明の心拍検出装置、心拍検出方法、および心拍検出プログラムにおける実施の形態について説明したが、本発明は説明した実施の形態に限定されるものではなく、請求項に記載した発明の範囲において当業者が想定し得る各種の変形を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0103】
1…心拍検出装置、10…センサデータ取得部、11,11A…心拍時刻算出部、12、…補正部、13…心拍数算出部、14…第1記憶部、15…送受信部、110…第1算出部、111…第1判定部、112…第2判定部、113…第2記憶部、114…決定部、115…指標値算出部、116…取得部、101…CPU、102…メモリ、103…AFE、104…ADC、105…センサ、106…通信I/F、107…電源。