(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】物体検知機能を有する無線通信システム、物体検知方法および基地局装置
(51)【国際特許分類】
H04B 17/00 20150101AFI20241022BHJP
H04W 24/10 20090101ALI20241022BHJP
H04W 72/542 20230101ALI20241022BHJP
H04W 84/12 20090101ALI20241022BHJP
【FI】
H04B17/00 Z
H04W24/10
H04W72/542
H04W84/12
(21)【出願番号】P 2022550315
(86)(22)【出願日】2020-09-18
(86)【国際出願番号】 JP2020035581
(87)【国際公開番号】W WO2022059198
(87)【国際公開日】2022-03-24
【審査請求日】2023-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大槻 信也
(72)【発明者】
【氏名】村上 友規
(72)【発明者】
【氏名】小川 智明
【審査官】後澤 瑞征
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-222289(JP,A)
【文献】国際公開第2017/207041(WO,A1)
【文献】特開2005-039552(JP,A)
【文献】Masahiko Miyazaki et al.,Initial Attempt on Outdoor Human Detection using IEEE 802.11ac WLAN Signal,2019 IEEE Sensors Applications Symposium (SAS) [online],2019年,[2024年4月23日検索], インターネット<URL:https://ieeexplore.ieee.org/stamp/stamp.jsp?tp=&arnumber=8706126>,<DOI: 10.1109/SAS.2019.8706126>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 17/00
H04W 24/10
H04W 72/542
H04W 84/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局装置と端末装置とを備え、通信エリア内の物体を検知する無線通信システムにおいて、
前記基地局装置は、
無線通信時に前記端末装置から受信する無線信号に含まれるパイロット信号に基づいて伝搬路の状態を測定するための参照信号を送信するタイミングを制御し、無線センシング時に前記端末装置から受信する伝搬路の状態を示す伝搬状態情報に基づいて通信エリア内の物体の検知を行い、
前記端末装置は、
前記基地局装置から受信する前記参照信号に基づいて測定した前記伝搬状態情報を前記基地局装置に送信
し、
前記基地局装置は、
前記端末装置から周期的に受信するパイロット信号の測定値に基づいて、次の周期で受信するパイロット信号の予測値を算出し、
前記予測値と、次の周期で受信したパイロット信号の実測値との差分が予め決められたしきい値以上の場合に前記参照信号を送信する
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
基地局装置と端末装置とを備え、通信エリア内の物体を検知する無線通信システムにおいて、
前記基地局装置は、
無線通信時に前記端末装置から受信する無線信号に含まれるパイロット信号に基づいて伝搬路の状態を測定するための参照信号を送信するタイミングを制御し、無線センシング時に前記端末装置から受信する伝搬路の状態を示す伝搬状態情報に基づいて通信エリア内の物体の検知を行い、
前記端末装置は、
前記基地局装置から受信する前記参照信号に基づいて測定した前記伝搬状態情報を前記基地局装置に送信
し、
前記基地局装置および前記端末装置は、複数のサブキャリアを用いるマルチキャリア伝送を行い、
前記基地局装置は、隣接するサブキャリアのパイロット信号の差分を算出し、前記差分に基づいて次の周期で受信する同じ隣接するサブキャリアのパイロット信号の前記差分の予測値を算出し、次の周期で受信した前記差分の実測値と前記予測値との差分が予め決められたしきい値以上の場合に前記参照信号を送信する
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項3】
基地局装置と端末装置とを備える無線通信システムの通信エリア内の物体を検知する物体検知方法であって、
前記基地局装置は、
無線通信時に前記端末装置から受信する無線信号に含まれるパイロット信号に基づいて伝搬路の状態を測定するための参照信号を送信するタイミングを制御し、無線センシング時に前記端末装置から受信する伝搬路の状態を示す伝搬状態情報に基づいて通信エリア内の物体の検知を行い、
前記端末装置は、
前記基地局装置から受信する前記参照信号に基づいて測定した前記伝搬状態情報を前記基地局装置に送信
し、
前記基地局装置は、
前記端末装置から周期的に受信するパイロット信号の測定値に基づいて、次の周期で受信するパイロット信号の予測値を算出し、
前記予測値と、次の周期で受信したパイロット信号の実測値との差分が予め決められたしきい値以上の場合に前記参照信号を送信する
ことを特徴とする物体検知方法。
【請求項4】
基地局装置と端末装置とを備える無線通信システムの通信エリア内の物体を検知する物体検知方法であって、
前記基地局装置は、
無線通信時に前記端末装置から受信する無線信号に含まれるパイロット信号に基づいて伝搬路の状態を測定するための参照信号を送信するタイミングを制御し、無線センシング時に前記端末装置から受信する伝搬路の状態を示す伝搬状態情報に基づいて通信エリア内の物体の検知を行い、
前記端末装置は、
前記基地局装置から受信する前記参照信号に基づいて測定した前記伝搬状態情報を前記基地局装置に送信
し、
前記基地局装置および前記端末装置は、複数のサブキャリアを用いるマルチキャリア伝送を行い、
前記基地局装置は、隣接するサブキャリアのパイロット信号の差分を算出し、前記差分に基づいて次の周期で受信する同じ隣接するサブキャリアのパイロット信号の前記差分の予測値を算出し、次の周期で受信した前記差分の実測値と前記予測値との差分が予め決められたしきい値以上の場合に前記参照信号を送信する
ことを特徴とする物体検知方法。
【請求項5】
端末装置と無線通信を行うとともに、通信エリア内の物体を検知する基地局装置において、
無線通信時に前記端末装置から受信する無線信号に含まれるパイロット信号に基づいて伝搬路の状態を測定するための参照信号を送信するタイミングを検出する検出部と、
前記検出部がパイロット信号に基づいて検出した送信タイミングで、伝搬路の状態を測定するための参照信号を送信する送信部と、
前記参照信号により測定された伝搬状態情報を前記端末装置から受信して、前記伝搬状態情報に基づいて通信エリア内の物体を検知する物体検知部と
を有
し、
前記検出部は、
前記端末装置から周期的に受信するパイロット信号の測定値に基づいて、次の周期で受信するパイロット信号の予測値を算出する予測部と、
前記予測値と次の周期で受信したパイロット信号の実測値との差分が予め決められたしきい値以上の場合に、前記参照信号の送信タイミングとして検出する比較部と
を有することを特徴とする基地局装置。
【請求項6】
端末装置と無線通信を行うとともに、通信エリア内の物体を検知する基地局装置において、
無線通信時に前記端末装置から受信する無線信号に含まれるパイロット信号に基づいて伝搬路の状態を測定するための参照信号を送信するタイミングを検出する検出部と、
前記検出部がパイロット信号に基づいて検出した送信タイミングで、伝搬路の状態を測定するための参照信号を送信する送信部と、
前記参照信号により測定された伝搬状態情報を前記端末装置から受信して、前記伝搬状態情報に基づいて通信エリア内の物体を検知する物体検知部と
を有
し、
前記検出部は、隣接するサブキャリアのパイロット信号の差分を算出し、前記差分に基づいて次の周期で受信する同じ隣接するサブキャリアのパイロット信号の前記差分の予測値を算出し、次の周期で受信した前記差分の実測値と前記予測値との差分が予め決められたしきい値以上の場合に、前記参照信号の送信タイミングとして検出する
ことを特徴とする基地局装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線信号の伝搬状態情報に基づいて通信エリア内の物体を検知する機能を有する無線通信システムにおいて、伝搬状態情報を測定するための参照信号の送信タイミングを制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無線LAN(Local Area Network)システムにおいて、通信エリア内の物体を検知する方法が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。この方法では、基地局装置に相当するAP(Access Point)から端末装置に相当するSTA(STAtion)に対して、伝搬路の状態を測定するための参照信号としてVHT NDP(Very High Throughput Null Data Packet)が送信される。STAは、VHT NDPからAPの複数のアンテナとSTAとの間の伝搬路の状態を示すCSI(Channel State Information)を計算し、その結果をVHT Compress Beam Forming ReportによりAPに送信する。そして、APは、CSIに基づいて通信エリア内の物体を検知する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】“DNN-based Outdoor NLOS Human Detection Using IEEE 802.11ac WLAN Signal” IEEE SENSORS, 2019
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献1の方法では、一定の間隔で周期的にVHT NDPおよび VHT Compress Beam Forming Reportが送受信され、VHT Compress Beam Forming Reportに格納されているCSIに基づいて物体の検知が行われる。このため、物体の検知タイミングは、これらの信号の送受信時に限定される。ここで、これらの信号の周期を短くすると、これらの信号が占める通信時間の割合が全体の通信時間に対して大きくなり、無線LAN通信のスループットが低下する。
【0005】
このように、物体検知の間隔を短縮するためには、伝搬路の状態を測定するための参照信号を頻繁に送信する必要があるが、参照信号は通信時間全体に対する時間占有率が高く、通常のトラヒックを圧迫するという課題がある。
【0006】
本発明は、基地局装置と端末装置とを備える無線通信システムの通信エリア内の物体を検知する場合に、無線通信のスループットが低下することなく、伝搬路の状態を測定するための参照信号を適切なタイミングで送信することができる物体検知機能を有する無線通信システム、物体検知方法および基地局装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、基地局装置と端末装置とを備え、通信エリア内の物体を検知する無線通信システムにおいて、前記基地局装置は、無線通信時に前記端末装置から受信する無線信号に含まれるパイロット信号に基づいて伝搬路の状態を測定するための参照信号を送信するタイミングを制御し、無線センシング時に前記端末装置から受信する伝搬路の状態を示す伝搬状態情報に基づいて通信エリア内の物体の検知を行い、前記端末装置は、前記基地局装置から受信する前記参照信号に基づいて測定した前記伝搬状態情報を前記基地局装置に送信することを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、基地局装置と端末装置とを備える無線通信システムの通信エリア内の物体を検知する物体検知方法であって、前記基地局装置は、無線通信時に前記端末装置から受信する無線信号に含まれるパイロット信号に基づいて伝搬路の状態を測定するための参照信号を送信するタイミングを制御し、無線センシング時に前記端末装置から受信する伝搬路の状態を示す伝搬状態情報に基づいて通信エリア内の物体の検知を行い、前記端末装置は、前記基地局装置から受信する前記参照信号に基づいて測定した前記伝搬状態情報を前記基地局装置に送信することを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、端末装置と無線通信を行うとともに、通信エリア内の物体を検知する基地局装置において、無線通信時に前記端末装置から受信する無線信号に含まれるパイロット信号に基づいて伝搬路の状態を測定するための参照信号を送信するタイミングを検出する検出部と、前記検出部がパイロット信号に基づいて検出した送信タイミングで、伝搬路の状態を測定するための参照信号を送信する送信部と、前記参照信号により測定された伝搬状態情報を前記端末装置から受信して、前記伝搬状態情報に基づいて通信エリア内の物体を検知する物体検知部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る物体検知機能を有する無線通信システム、物体検知方法および基地局装置は、基地局装置と端末装置とを備える無線通信システムの通信エリア内の物体を検知する場合に、無線通信のスループットが低下することなく、伝搬路の状態を測定するための参照信号を適切なタイミングで送信することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係る無線LANシステムの一例を示す図である。
【
図3】APから送信されるVHT NDPの一例を示す図である。
【
図7】パイロット信号の予測値と実測値の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明に係る物体検知機能を有する無線通信システム、物体検知方法および基地局装置の実施形態について説明する。
【0013】
ここで、実施形態では、無線通信システムが無線LANシステムである場合について説明するが、例えば基地局装置と端末装置の少なくとも2台の無線装置を有するシステムであれば同様に適用可能である。
【0014】
図1は、実施形態に係る無線LANシステム100の一例を示す。無線LANシステム100は、無線LAN規格の802.11acに対応し、基地局装置に相当するAP101と、端末装置に相当するSTA102とを有する。ここで、本実施形態に係る無線LANシステム100では、AP101とSTA102との間で通常の無線信号を送受信する無線通信と、通信エリア内の物体103を検知する無線センシングとを行う。
【0015】
無線通信時には、AP101とSTA102との間でパイロット信号を含むデータ信号を送受信する。
【0016】
無線センシング時には、AP101は、STA102との間の伝搬路の状態を測定し、伝搬路の状態に基づいて通信エリア内の物体103を検知する。例えばAP101は、複数のアンテナ104の各々とSTA102との間の伝搬路の状態を測定し、各アンテナ104の伝搬路の状態の変化から通信エリア内の物体103を検知する。
【0017】
なお、物体103の検知は、STA102が行ってもよいし、AP101およびSTA102とは別に物体検知装置を設けてもよい。この場合、物体検知装置は、AP101またはSTA102から伝搬路の状態を示す伝搬状態情報(CSIと称する)を取得して、CSIに基づいて通信エリア内の物体103を検知する。以降の実施形態では、AP101が通信エリア内の物体103を検知するための無線センシングの機能を有する場合について説明する。
【0018】
図1において、AP101は、4つのアンテナ104(1)、アンテナ104(2)、アンテナ104(3)およびアンテナ104(4)を有する。なお、実施形態の説明において、アンテナ104(1)からアンテナ104(4)に共通する場合は符号末尾の(番号)を省略してアンテナ104と記載する。そして、特定のアンテナ104を指す場合は、符号末尾に(番号)を付加して、アンテナ104(1)のように記載する。
【0019】
また、
図1に示すAP101は、4つのアンテナ104を有するが、STA102と各アンテナ104との間のそれぞれの伝搬路の状態を測定可能な2以上のアンテナ104が有ればよい。
【0020】
なお、実施形態では、STA102は1本のアンテナを備えるものとするが、複数のアンテナを備えていてもよい。また、
図1では、STA102が1台の例を示したが、AP101と複数のSTA102との間でMU-MIMO(Multi User Multiple Input Multiple Output)伝送を行う場合でも本実施形態の適用が可能である。
【0021】
図1において、AP101は、CSIを測定するための参照信号として、VHT NDP(Very High Throughput Null Data Packet)をSTA102に送信する。STA102は、VHT NDPに基づいて、AP101の4つのアンテナ104のそれぞれの伝搬路の状態を表すCSIを測定する。そして、STA102は、無線LAN規格に基づいて圧縮したCSIをVHT Compress Beam Forming ReportによりAP101に送信する。AP101は、STA102から受信するCSIの変化に基づいて、通信エリア内の物体を検知する。
【0022】
ここで、VHT NDPは、無線LAN規格により予め決められた周期で送信されており、VHT NDPが送信されるごとにCSIが測定されるので、物体検知の間隔はVHT NDPの送信間隔に依存する。つまり、物体検知の間隔を短縮するためには、CSI測定用のVHT NDPを頻繁に送信する必要がある。しかし、VHT NDPの送信頻度が高くなると、通信トラフィックに対する時間占有率が高くなり、通常のトラヒックを圧迫するという問題がある。
【0023】
そこで、実施形態では、予め決められた比較的長い間隔で周期的に送信されるVHT NDPだけでなく、通常の無線通信時のトラヒックで使用されているパイロット信号を利用する。パイロット信号は、QAM(Quadrature Amplitude Modulation)などの復調のためにVHT NDPよりも短い間隔で周期的に送信される既知信号である。実施形態に係るAP101は、STA102から受信するパイロット信号が変化した場合に物体が通信エリアに侵入した可能性が高いと判断して、そのタイミングでVHT NDPを送信する。これにより、物体検知の間隔が短縮されるとともに、VHT NDPの送信が通常のトラヒックを圧迫しないようにすることができる。
【0024】
なお、実施形態では、比較的長い間隔で周期的に送信されるVHT NDPに加えて、パイロット信号が変化した場合にVHT NDPを送信する場合について説明するが、VHT NDPを周期的に送信せずに、パイロット信号が変化した場合のみにVHT NDPを送信するようにしてもよい。
【0025】
このように、実施形態に係る無線LANシステム100は、AP101とSTA102との間の通信エリア内の物体を検知する場合に、パイロット信号を利用して伝搬路の状態を測定するためのVHT NDPの送信タイミングを制御する。これにより、無線通信のスループットが低下することなく、効率よく物体の検知を行うことができる。
【0026】
図2は、参照信号のシーケンス例を示す。ここで、本実施形態に係る無線LANシステム100は、IEEE802.11ac規格の無線LANを想定し、4つのアンテナ104を有するAP101と1つのアンテナを有するSTA102で構成される。IEEE802.11ac規格では、伝搬路の状態を測定するための参照信号(RS)として、VHT NDPが用いられる。
【0027】
図2において、AP101は、CSIを取得するためのサウンディングプロトコルの開始信号として、VHT NDP Announcementフレームをブロードキャストする。その直後に、AP101は、CSIを測定するためのデータを含むVHT NDPを宛先のSTA102に送信する。
【0028】
ここで、VHTはVery High Throughputの略であり、IEEE802.11ac規格では超高速通信を行うためのVHTフレームが基本である。また、NDPはNull Data Packetの略であり、VHT NDPは通信用データを含まないフレームである。VHT NDP Announcementフレームは、AP101と宛先のSTA102のアドレスを含み、VHT NDPの送信をSTA102に事前通知するためのフレームである。なお、VHT NDP Announcementフレームは、特定の1以上のアンテナから送信され、2以上のアンテナから送信する場合もすべて同じデータの信号が各アンテナから送信される。
【0029】
図2において、AP101からVHT NDPを受信したSTA102は、IEEE802.11acで規定された手法により圧縮されたCSIの値を導出する。STA102は、導出した圧縮されたCSIをVHT Compressed Beamforming Reportに格納して送信する。ここで、STA102は、AP101のアンテナ104ごとにCSIが得られるが、アンテナ数が多くなるとAP101にフィードバックするCSIの情報量が多くなる。このため、すべてのCSIから予め決められた条件により選択されたCSI(圧縮されたCSI)がAP101にフィードバックされる。
【0030】
AP101は、STA102からフィードバックされる圧縮されたCSIに基づいて、各アンテナ104とSTA102との間の伝搬路の状態を取得し、伝搬路の状態の変化から通信エリア内の物体103を検知することができる。なお、物体の検知をAP101ではなくSTA102側で行う場合はSTA102の内部に保持しているCSIを用いる。
【0031】
図3は、
図1に示すAP101から送信されるVHT NDPの一例を示す。
図3において、VHT NDPは、ヘッダ151(フレーム種別などを格納)、データ152およびテイラ156(誤り検出などを格納)により構成される。ヘッダ151およびテイラ156は、アンテナ104(1)から送信されるが、データ152は各アンテナ104から時分割でそれぞれ送信される伝搬路の状態を測定するための測定用信号である。
図3の例では、アンテナ104(1)からデータ152(1)、アンテナ104(2)からデータ152(2)、アンテナ104(3)からデータ152(3)およびアンテナ104(4)からデータ152(4)が時分割でそれぞれ送信される。各アンテナ104から送信されたデータ152(1)、データ152(2)、データ152(3)およびデータ152(4)は、STA102において、1つのVHT NDPとして受信される。
【0032】
ここで、VHT NDPは、無線センシング時における参照信号に相当する。AP101は、通信エリア内の物体を検知するためにVHT NDPを送信し、STA102は、受信する各アンテナ104のデータ152に基づいてアンテナ104ごとのCSIを算出する。そして、STA102は、算出したアンテナ104ごとのCSIをAP101に送信し、AP101は、STA102から受信するアンテナ104ごとのCSIに基づいて通信エリア内の物体を検知する。
【0033】
このように、VHT NDPのデータ152は、AP101の4つのアンテナ104からそれぞれ個別に送信されるので、STA102は、アンテナ104ごとのCSIを取得することができる。なお、STA102は、算出したCSIを無線LAN規格で決められた方法で圧縮し、圧縮されたCSIをVHT Compress Beam Forming ReportとしてAP101に返信する。
【0034】
図4は、AP101の構成例を示す。
図4において、AP101は、変調部201、送信部202、サーキュレータ203、アンテナ204、受信部205、PS抽出部206、復調部207、送信タイミング検出部208、RS送信指示部209および物体検知部210を有する。
【0035】
変調部201は、送信データを無線LAN規格で決められた変調方式によりベースバンド信号に変調して、送信部202に出力する。また、変調部201は、後述のRS送信指示部209により、予め決められた参照信号の送信が指示された場合に、予め決められた参照信号を変調する。変調された参照信号は、送信部202に出力され、サーキュレータ203およびアンテナ204を介してSTA102に送信される。ここで、変調部201は、複数のアンテナ204のそれぞれに対応する複数チャネルの信号を出力する。
【0036】
送信部202は、変調部201から出力されるベースバンド信号を高周波信号に変換し、サーキュレータ203を介してアンテナ104からSTA102に送信される。ここで、送信部202は、変調部201から入力する複数チャネルの信号を複数のアンテナ204のそれぞれからSTA102に送信する。
【0037】
サーキュレータ203は、アンテナ204を送信および受信で共用するための装置である。サーキュレータ203は、送信部202から入力する送信信号をアンテナ104へ出力し、アンテナ104から入力する受信信号を受信部205へ出力する。
【0038】
アンテナ204は、2以上の複数のアンテナからなり、例えば、
図1に示すアンテナ104(1)からアンテナ104(4)を有する。AP101は、アンテナ204とSTA102との間で、データ信号、パイロット信号および参照信号などの無線信号を送受信する。
【0039】
受信部205は、サーキュレータ203を介してアンテナ204の複数のアンテナ104から入力する複数チャネルのそれぞれの受信信号をベースバンド信号に変換し、PS抽出部206および復調部207に出力する。
【0040】
PS抽出部206は、受信部205が出力する複数チャネルのそれぞれの受信信号からパイロット信号を抽出し、復調部207および送信タイミング検出部208に出力する。
【0041】
復調部207は、PS抽出部206から出力されるパイロット信号に基づいてデータ信号を復調するための同期確立などの処理を行い、受信部205が出力する複数チャネルの受信信号から受信データを復調する。なお、実施形態では、送信データおよび受信データなどのユーザデータを処理するアプリケーションについての説明は省略する。
【0042】
送信タイミング検出部208は、後述するPS予測部221およびPS比較部222を有し、PS抽出部206から出力されるパイロット信号に基づいて、STA102が伝搬路の状態を測定するための参照信号の送信タイミングを検出する処理を行う。そして、送信タイミング検出部208は、参照信号の送信タイミングを示すトリガをRS送信指示部209に出力する。なお、PS予測部221およびPS比較部222については、後で詳しく説明する。
【0043】
RS送信指示部209は、送信タイミング検出部208から出力される参照信号の送信タイミングを示すトリガに基づいて、予め決められた参照信号の送信を変調部201に指示する。
【0044】
物体検知部210は、復調部207が復調した伝搬路の状態を示すCSIに基づいて、通信エリア内の物体を検知する処理を行い、検知結果を出力する。ここで、伝搬路の状態に基づく物体検知の方法は周知技術なので、詳細な説明を省略するが、例えばAP101の4つのアンテナ104とSTA102との間の各チャネルの伝搬路の状態の時間的な変化や相関を計算することによって、物体の有無、位置および移動方向などを検知することができる。例えば
図1において、物体103がアンテナ104(4)からアンテナ104(1)の方向に移動している場合、物体103により生じる伝搬路の状態の変動はアンテナ104(4)からアンテナ104(1)の方向に時間順に移動する。このようにして、物体検知部210は、通信エリア内の物体103を検知することができる。なお、実施形態では、検知結果を使用するアプリケーションについての説明は省略する。
【0045】
次に、送信タイミング検出部208のPS予測部221およびPS比較部222について詳しく説明する。
【0046】
PS予測部221は、PS抽出部206から出力されるパイロット信号に関する情報(位相、振幅、受信電力など)をメモリなどに蓄積しておき、過去の履歴に基づいて、次の周期で受信するパイロット信号を予測する処理を行う。例えばメモリなどに蓄積された過去のパイロット信号の位相に基づいて、線形補間や非線形補間など周知の技術で外挿することにより、次の周期で受信するパイロット信号の位相を予測する。ここで、PS予測部221の処理は、複数チャネルのチャネルごとに行われる。
【0047】
PS比較部222は、PS予測部221により予測された次の周期で受信予定のパイロット信号の予測値と、次の周期で実際に受信されたパイロット信号の実測値とを比較して、予め決められた条件を満たすか否かを判別する。そして、PS比較部222は、比較結果が予め決められた条件を満たす場合、RS送信指示部209に参照信号の送信タイミングを示すトリガを出力する。ここで、PS比較部222は、例えばパイロット信号の位相、振幅または受信電力などの予測値と実測値との差分を計算し、差分が予め決められたしきい値以上である場合に物体103が通信エリアに侵入した可能性が高いと判断する。逆に言えば、PS比較部222は、パイロット信号の予測値と実測値との差分が予め決められたしきい値未満である場合、物体103の通信エリアへの侵入の可能性が低いと判断する。
【0048】
そして、PS比較部222は、差分がしきい値以上である場合に、RS送信指示部209に参照信号を送信するタイミングを示すトリガを出力する。ここで、PS比較部222の処理は、複数チャネルのチャネルごとに行われるので、複数チャネルの少なくとも一つのチャネルでの差分がしきい値以上の場合に、RS送信指示部209に参照信号を送信するタイミングを示すトリガを出力する。あるいは、隣接するチャネルでの差分がしきい値以上の場合に、RS送信指示部209に参照信号を送信するタイミングを示すトリガを出力するようにしてもよい。さらに、一つのチャネルまたは隣接するチャネルにおいて、複数の周期で連続して差分がしきい値以上の場合に、RS送信指示部209に参照信号を送信するタイミングを示すトリガを出力するようにしてもよい。
【0049】
そして、RS送信指示部209は、
図2および
図3で説明したように、送信タイミング検出部208により検出された参照信号の送信タイミングをトリガとして、予め決められた参照信号を送信するように変調部201に指示する。
【0050】
このようにして、実施形態に係る物体検知機能を有するAP101は、一定間隔で送信される参照信号により伝搬路の状態を測定して物体検出を行う従来の方法に加えて、参照信号よりも短い間隔で送受信されているパイロット信号を用いる。これにより、伝搬路の状態を測定するための参照信号の送信間隔を従来通りに維持したままで、物体検出の検知間隔の短縮と、物体検出のための参照信号の通信時間全体に対する時間占有率の削減とが実現可能である。
【0051】
図5は、STA102の構成例を示す。
図5において、STA102は、変調部301、送信部302、サーキュレータ303、アンテナ304、受信部305、復調部306、参照信号抽出部307およびCSI測定部308を有する。なお、STA102側で物体103の検知処理を行う場合は、
図5に示すように、物体検知部309を設けてもよい。
【0052】
変調部301は、送信データを無線LAN規格で決められた変調方式によりベースバンド信号に変調して、送信部302に出力する。また、変調部301は、後述のCSI測定部308により測定されたAP101のアンテナ104ごとのCSIをVHT Compress Beamforming Reportフレームのベースバンド信号に変調して送信部302に出力し、サーキュレータ303およびアンテナ304を介してAP101に送信される。
【0053】
送信部302は、変調部301から出力されるベースバンド信号を高周波信号に変換し、サーキュレータ303を介してアンテナ304からAP101に無線信号が送信される。
【0054】
サーキュレータ303は、アンテナ304を送受信で共用するための装置である。送信部302から入力する送信信号をアンテナ304に出力し、アンテナ304から入力する受信信号を受信部305に出力する。
【0055】
アンテナ304は、AP101との間で無線信号を送受信する。なお、実施形態では、アンテナ304は1つのアンテナとするが、複数のアンテナで構成されてもよい。
【0056】
受信部305は、サーキュレータ303を介してアンテナ304から入力する受信信号をベースバンド信号に変換し、復調部306および参照信号抽出部307に出力する。
【0057】
復調部306は、受信部305が出力する受信信号から受信データを復調する。なお、実施形態では、送信データおよび受信データなどのユーザデータを処理するアプリケーションについての説明は省略する。
【0058】
参照信号抽出部307は、受信部305が出力する受信信号から参照信号を抽出し、CSI測定部308に参照信号を出力する。ここで、実施形態では、参照信号はVHT NDPフレームに対応する。なお、
図3で説明したように、VHT NDPフレームの中のCSI測定用のデータ152は、AP101のアンテナ104ごとの受信信号からそれぞれ抽出される。
【0059】
CSI測定部308は、参照信号抽出部307から出力されるAP101のアンテナ104ごとCSI測定用のデータ152に基づいて、アンテナ104ごとのCSIを測定する。そして、CSI測定部308は、測定したAP101のアンテナ104ごとのCSIを変調部301に出力し、VHT Compress Beamforming Reportフレームに格納してAP101に送信される。
【0060】
なお、STA102側で物体103の検知を行う場合、STA102は物体検知部309を有する。この場合、物体検知部309は、CSI測定部308が測定したCSIに基づいて、通信エリア内の物体を検知し、検知結果を出力する。ここで、伝搬路の状態に基づく物体検知の方法は周知技術が用いられるが、
図4の物体検知部210で説明したように、例えばAP101の4つのアンテナ104とSTA102との間の各伝搬路の状態の時間的な変化や相関を計算することによって、物体の有無や移動方向などの検知が可能である。なお、実施形態では、検知結果を使用するアプリケーションについての説明は省略する。
【0061】
ここで、STA102で物体検知を行う場合においても、AP101は、参照信号よりも短い間隔で送受信されているパイロット信号の変化を検出して、参照信号を送信する。これにより、物体検出の検知間隔の短縮と、物体検出のための参照信号の通信時間全体に対する時間占有率の削減とが実現可能である。
【0062】
図6は、パイロット信号の一例を示す。
図6において、横軸は時間、縦軸は周波数をそれぞれ示す。また、
図6は、周波数が異なる複数のサブキャリアの信号を有するマルチキャリア伝送の一つであるOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)伝送の例を示している。
【0063】
図6の例では、時間T1に送信されるマルチキャリア信号は、パイロット信号401(1)、データ信号402(1)、・・・、データ信号402(2)、パイロット信号401(2)、データ信号402(3)、・・・、データ信号402(4)、パイロット信号401(3)、データ信号402(5)、・・・、データ信号402(6)、パイロット信号401(4)で構成されている。なお、
図6において、パイロット信号401以外の制御信号についての記載は省略する。ここで、特定の信号を示す場合のみ符号末尾に(番号)を付加して、例えばパイロット信号401(1)と記載し、共通する場合は符号末尾の(番号)を省略して、例えばパイロット信号401と記載する。
【0064】
図6において、パイロット信号401は、通常のデータ信号402のサブキャリアの中に離散的に配置された特定の周波数のサブキャリアで時間的に連続して送信されている。また、パイロット信号401は、無線信号の復調(QAMなどの復調)に必要なことから、すべての無線フレームに存在する。
【0065】
これに対して、無線LAN規格では、伝搬路の状態を測定するためのVHT NDPフレームは、パイロット信号401よりも長い周期で送信される。例えば時間T1で通常のデータ信号402の位置でVHT NDPフレームが送信されたとしても、次の時間T2では送信されない。このため、
図3で説明したCSI測定用のVHT NDPフレームが送信される間隔が長くなり、CSIに基づいて物体を検知する処理の間隔も長くなってしまう。
【0066】
そこで、実施形態に係る物体検知方法では、VHT NDPフレームよりも短い間隔で送受信されているパイロット信号401を利用する。例えばパイロット信号401の変化が大きい場合は、何らかの物体が通信エリアへ侵入した可能性が高いと考えることができるので、このタイミングで物体の検知処理を行うのが望ましい。そこで、実施形態では、周期的に送信される通常のVHT NDPフレームに加えて、パイロット信号401の変化が予め決められた大きさ以上の場合に、AP101がVHT NDPフレームを送信する。これにより、不要なVHT NDPフレームの送信を無くすことができる。
【0067】
なお、無線センシング時において、周期的に送信される通常のVHT NDPフレームを送信せずに、パイロット信号401の変化が予め決められた値以上の場合のみに、VHT NDPフレームを送信するようにしてもよい。この場合、VHT NDPフレームが長時間に亘って送信されない状態になるのを回避するために、パイロット信号401の変化が予め決められた一定期間において検出されなかった場合にVHT NDPフレームを送信するようにしてもよい。なお、パイロット信号401の変化を検出する方法については、後述の
図7で説明する。
【0068】
このようにして、本実施形態に係る物体検出方法では、パイロット信号401に基づいてVHT NDPフレームの送信タイミングを制御することにより、物体検出の検知間隔の短縮と、物体検出のためのVHT NDPフレームの通信時間全体に対する時間占有率の削減とが実現される。
【0069】
なお、パイロット信号がサブキャリア毎に存在する場合、サブキャリア毎の差分の絶対値もしくは二乗した値の総和が予め決められたしきい値以上になった場合に、VHT NDPフレームを送信するようにしてもよい。
【0070】
あるいは、差分がある予め決められたしきい値以上になったか否かをサブキャリア毎に判定し、差分がしきい値以上になったサブキャリア数の割合が予め決められたしきい値以上になった場合に、VHT NDPフレームを送信するようにしてもよい。
【0071】
また、
図6に示すように、時間的に連続してパイロット信号が送信される場合、ある時間のパイロット信号を抽出して、差分の計算を行ってもよい。あるいは、予め決められた一定の時間幅(一定の期間)の中に含まれる複数のパイロット信号をすべて用いて、差分の計算を行ってもよい。
【0072】
さらに、パイロット信号をそのまま用いるのではなく、隣接するサブキャリアのパイロット信号の差分を算出し、算出した差分に基づいて次の周期で受信する同じ隣接するサブキャリアのパイロット信号の差分の予測値を算出してもよい。そして、次の周期で受信した同じ隣接するサブキャリアのパイロット信号の差分の実測値と前の周期で算出した予測値との差分が予め決められたしきい値以上の場合に、VHT NDPフレームを送信するようにしてもよい。このように、隣接するサブキャリアのパイロット信号の差分を用いることにより、位相雑音等、無線LAN信号全体にかかる雑音の影響の除去が可能になる。
【0073】
図7は、パイロット信号の予測値と実測値の一例を示す。
図7において、縦軸はパイロット信号(PS)の位相、横軸は時間をそれぞれ示す。なお、
図7の例では、パイロット信号の位相を用いるが、振幅や受信電力など他の情報を用いてもよい。また、ここで説明する処理は、
図4で説明した送信タイミング検出部208のPS予測部221およびPS比較部222により実行される。
【0074】
図7において、PS予測部221は、過去に受信したパイロット信号の測定値の履歴に基づいて、次に受信する予定のパイロット信号の予測値を算出する。例えば
図7において、現在の時間がT2の場合、時間T1におけるパイロット信号の位相の測定値と、時間T2におけるパイロット信号の位相の測定値とに基づいて、将来の時間T3におけるパイロット信号の位相の予測値を算出する。なお、予測値は、線形補間や非線形補間など周知の技術で外挿することにより算出される。
【0075】
そして、現在の時間がT3になったとき、PS比較部222は、時間T3で受信したパイロット信号の位相の実測値と時間T2で算出した予測値とを比較する。
【0076】
ここで、
図7において、時間T3における実測値が実測値aであった場合と実測値bであった場合、実測値aと予測値との差分aは、実測値bと予測値との差分bよりも小さい。つまり、実測値aの場合は、実測値bの場合に比べて、通信エリアに物体が侵入した可能性が低いと判断できる。逆に、実測値bの場合は、実測値aの場合に比べて、通信エリアに物体が侵入した可能性が高いと判断できる。
【0077】
そこで、PS比較部222は、実測値と予測値との差分がしきい値未満の場合、通信エリアに物体が侵入した可能性が低いと判断して、RS送信指示部209に参照信号の送信を指示しない。逆に、PS比較部222は、実測値と予測値との差分がしきい値以上の場合、通信エリアに物体が侵入した可能性が高いと判断して、RS送信指示部209に参照信号の送信を指示する。
【0078】
このように、本実施形態に係る物体検出方法では、参照信号よりも短い間隔で送受信されているパイロット信号の変化を検出して、参照信号を送信する。これにより、物体検出の検知間隔の短縮と、物体検出のための参照信号の通信時間全体に対する時間占有率の削減とが実現可能である。
【0079】
ここで、
図4で説明したAP101の各ブロックまたは一部のブロックが行う処理に対応するプログラムを汎用のコンピュータもしくはFPGA(Field Programmable Gate Array)などの集積回路で実行するようにしてもよい。また、プログラムは、記憶媒体に記録して提供されてもよいし、ネットワークを通して提供されてもよい。
【0080】
以上説明したように、本発明に係る物体検知機能を有する無線通信システム、物体検知方法および基地局装置は、基地局装置と端末装置とを備える無線通信システムにおいて通信エリア内の物体を検知する場合に、パイロット信号を利用して参照信号の送信タイミングを制御する。これにより、無線通信のスループットが低下することなく、伝搬路の状態を測定するための参照信号を適切なタイミングで送信することができる。
【符号の説明】
【0081】
100・・・無線LANシステム;101・・・AP;102・・・STA;103・・・物体;104,204,304・・・アンテナ;201,301・・・変調部;202,302・・・送信部;203,303・・・サーキュレータ;205,305・・・受信部;206・・・PS抽出部;207,306・・・復調部;208・・・送信タイミング検出部;209・・・RS送信指示部;210,309・・・物体検知部;307・・・参照信号抽出部;308・・・CSI測定部