(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物及び物品並びに加水分解性オルガノシラン化合物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 83/06 20060101AFI20241022BHJP
C07F 7/18 20060101ALI20241022BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20241022BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20241022BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20241022BHJP
C08K 3/26 20060101ALI20241022BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20241022BHJP
C08L 83/07 20060101ALI20241022BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20241022BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20241022BHJP
C09D 183/06 20060101ALI20241022BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20241022BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20241022BHJP
C09J 183/06 20060101ALI20241022BHJP
C09K 3/10 20060101ALI20241022BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20241022BHJP
【FI】
C08L83/06
C07F7/18 D CSP
C08K3/013
C08K3/04
C08K3/22
C08K3/26
C08K3/36
C08L83/07
C09D7/61
C09D7/63
C09D183/06
C09J11/04
C09J11/06
C09J183/06
C09K3/10 G
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2022565054
(86)(22)【出願日】2021-08-16
(86)【国際出願番号】 JP2021029897
(87)【国際公開番号】W WO2022113437
(87)【国際公開日】2022-06-02
【審査請求日】2023-05-16
(31)【優先権主張番号】P 2020195627
(32)【優先日】2020-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】打它 晃
【審査官】松村 駿一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-073670(JP,A)
【文献】特開2015-113377(JP,A)
【文献】特表2020-517771(JP,A)
【文献】REGISTRY[online],1985年01月21日,CAS登録番号94358-77-7
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 83/06
C07F 7/18
C08K 3/013
C08K 3/04
C08K 3/22
C08K 3/26
C08K 3/36
C08L 83/07
C09D 7/61
C09D 7/63
C09D 183/06
C09J 11/04
C09J 11/06
C09J 183/06
C09K 3/10
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(1)で示される23℃における粘度が20~1,000,000mPa・sのオルガノポリシロキサン:100質量部
HO-(SiR
1
2O)
a-H (1)
(式中、R
1は炭素数1~10の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、各R
1は互いに同一であっても異種の基であってもよい。aは50以上の整数である。)、及び
(B)下記一般式(2)で示される加水分解性オルガノシラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物:1~40質量部
【化1】
(式中、R
2は炭素数1~10の一価炭化水素基であり、nは1~8の整数であり、mは3又は4である。)
を含有する室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項2】
(B)成分の加水分解性オルガノシラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物が、加水分解によって環状ケトン化合物を脱離するものである請求項1に記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項3】
脱離する環状ケトン化合物がシクロブタノン又はシクロペンタノンである請求項2に記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項4】
(B)成分の加水分解性オルガノシラン化合物が、下記一般式(4)で示される加水分解性オルガノシラン化合物である請求項1~3のいずれか1項に記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【化2】
(式中、R
6はビニル基もしくはフェニル基であり、mは3又は4である。)
【請求項5】
更に、(C)硬化触媒を(A)成分100質量部に対して0.01~10質量部含有するものである請求項1~4のいずれか1項に記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項6】
(C)硬化触媒が、錫触媒、チタン触媒、有機強塩基触媒及び有機ビスマス触媒から選ばれる少なくとも1種である請求項5に記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項7】
錫触媒を含有しないものである請求項1~6のいずれか1項に記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項8】
更に、(D)下記一般式(3)で示されるシランカップリング剤及び/又はその部分加水分解縮合物を(A)成分100質量部に対して0.01~10質量部含有するものである請求項1~7のいずれか1項に記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
R
3R
4
bSiX
3-b (3)
(式中、R
3は窒素原子、硫黄原子及び酸素原子から選ばれる1種以上のヘテロ原子を含む官能性基(但し、グアニジル基を除く)を少なくとも1個有する炭素数1~20の一価炭化水素基である。R
4は炭素数1~10の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、Xは加水分解性基である。bは0、1又は2である。)
【請求項9】
更に、(E)無機質充填剤を(A)成分100質量部に対して1~500質量部含有するものである請求項1~8のいずれか1項に記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項10】
(E)成分が、炭酸カルシウム、煙霧質シリカ、沈降性シリカ、カーボンブラック及び酸化アルミニウムから選ばれる1種又は2種以上の無機質充填剤である請求項9に記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を含有する接着剤。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか1項に記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を含有するシーリング材。
【請求項13】
請求項1~10のいずれか1項に記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を含有するポッティング剤。
【請求項14】
請求項1~10のいずれか1項に記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を含有するコーティング剤。
【請求項15】
下記一般式(4)で示される加水分解性オルガノシラン化合物。
【化3】
(式中、R
6はビニル基もしくはフェニル基であり、mは3又は4である。)
【請求項16】
加水分解によってシクロペンタノンを脱離するものである請求項
15に記載の加水分解性オルガノシラン化合物。
【請求項17】
下記反応式[I]
【化4】
(式中、R
6、mは前記の通りである。)
で示される、クロロシラン化合物とシクロペンタノンを塩基性物質及び触媒の存在下に反応させる工程を含む請求項
15又は
16に記載の加水分解性オルガノシラン化合物の製造方法。
【請求項18】
上記シクロペンタノンの添加量が、クロロシラン化合物中の塩素原子数1モルに対して、0.95~3.0モルである請求項
17に記載の加水分解性オルガノシラン化合物の製造方法。
【請求項19】
上記触媒物質が、塩化銅、ヨウ化銅、臭化銅、塩化銀、ヨウ化銀又は臭化銀である請求項
17又は
18に記載の加水分解性オルガノシラン化合物の製造方法。
【請求項20】
上記触媒物質の添加量が、クロロシラン化合物1モルに対して0.001~0.5モルである請求項
17~
19のいずれか1項に記載の加水分解性オルガノシラン化合物の製造方法。
【請求項21】
上記塩基性物質が、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、尿素、ジアザビシクロウンデセン又はジアザビシクロノネンである請求項
17~
20のいずれか1項に記載の加水分解性オルガノシラン化合物の製造方法。
【請求項22】
上記塩基性物質の添加量が、クロロシラン化合物中の塩素原子数1モルに対して0.95~2.5モルである請求項
17~
21のいずれか1項に記載の加水分解性オルガノシラン化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室温(23℃±15℃)において大気中の湿気(水分)により加水分解・縮合反応にて架橋(硬化)する縮合硬化型の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物、特には、硬化時の加水分解反応によって架橋剤(硬化剤)から脱離・発生する脱離化合物がシクロブタノンやシクロペンタノン等の環状ケトン化合物であり、縮合反応によって良好に硬化し、かつ接着性に優れるシリコーンゴム硬化物(エラストマー状オルガノポリシロキサン硬化物)を与える室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物、及び該組成物を有する各種物品、並びに加水分解によって、脱離基としてシクロペンタノンを放出する、新規な加水分解性オルガノシラン化合物及びその製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
室温で硬化してシリコーンゴムとなる室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物は従来から知られており、産業界で広く使用されてきた。室温で硬化する機構には、ヒドロシリル化付加反応によって硬化する機構、紫外線によってラジカル硬化する機構、ケイ素原子に結合する加水分解性基と水酸基との縮合反応によって硬化する機構などが知られている。中でも、縮合反応により硬化する室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、室温にて容易に硬化することができ、また、ヒドロシリル化付加反応などで起こる不純物による硬化阻害を起しにくいという利点を有する。そのため、縮合反応により硬化する室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を硬化して得られる硬化物(シリコーンゴム硬化物)は、車載ガスケットやシール材等の自動車、建築用シーラント等の建築、電気・電子部品などの分野で幅広く使用されている。
【0003】
縮合反応により硬化する室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、硬化剤(架橋剤)として分子中に加水分解性基を有する加水分解性オルガノシラン化合物を該組成物中に含有するものであり、すでに広く利用されている硬化剤としては、硬化時に2-ブタノンオキシム等のオキシム化合物を放出する脱オキシム型の加水分解性オルガノシラン化合物や、メタノール等のアルコール化合物を放出する脱アルコール型の加水分解性オルガノシラン化合物などが知られている。これらの硬化剤を含有する組成物を硬化して得られるゴム状硬化物は、シリコーン(シロキサン構造)由来の高い耐熱性、耐薬品性、耐候性を有している。
一方で、脱オキシム型の硬化剤が硬化時に発生する2-ブタノンオキシムなどのオキシム化合物は発がん性のおそれが疑われており好ましくなく、脱アルコール型の硬化剤が硬化時に発生するメタノール等は人体に対して有毒で、劇物に指定されていることから、人体の健康の観点から好ましくない。更に、これらの組成物では、硬化触媒として、環境負荷物質として規制が強化されている錫触媒を使用するケースもあり、近年の作業員の安全性確保や環境保護の観点から好ましくなく、より安全性の高い脱離基(脱離化合物)を有する加水分解性オルガノシラン化合物(硬化剤)に代替することが求められている。
【0004】
更に、脱アルコール型の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物に使用される硬化剤(架橋剤)は、脱オキシム型の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物に使用される硬化剤と比較して反応性に劣ることから、脱オキシム型よりも硬化性が劣るという欠点がある。
環境保護や健康被害抑制といった観点から、性能向上とともにより環境・安全に配慮された製品が特に望まれており、脱離する化合物の安全性が高く、性能に優れる室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物に対する需要が高まっている。
【0005】
特表2018-515634号公報では、脱アルコール型、脱オキシム型硬化剤の代替として、乳酸エチルを代表とするα-ヒドロキシカルボン酸エステル化合物を脱離・放出する、シラン化合物を架橋剤として含有する縮合硬化型オルガノシロキサン組成物を提案している。こちらの系では脱離基である乳酸エチルは安全性の高い化合物であるが、触媒として錫触媒の使用を必須としている。錫触媒は水生生物に対しての有害性が指摘されており、環境保護の観点から錫触媒の使用は好ましくない。
【0006】
特公昭51-39673号公報では、アセトンを代表とするケトン系化合物を放出する、縮合硬化型オルガノポリシロキサン組成物を提案している。アセトンは2-ブタノンオキシムやメタノールと比較して、人体に対しては有害性の低い化合物であり、更に従来の硬化形態よりも速硬化で耐久性に優れるシリコーンゴム硬化物を与える組成物を提供している。しかし、アセトンの引火点は-20℃と低く、揮発性が高いため、使用環境に制限があるという問題がある。
【0007】
シクロペンタノンは毒性が低く、生分解性の高い化合物であり、引火点も35℃と有機溶剤としては比較的高い化合物である。シクロペンタノンを脱離基として有するシランカップリング剤としては、Journal of Organometallic Chemistry (1984), 273(1)(非特許文献1)、Journal of Organometallic Chemistry (1985), 281(2-3)(非特許文献2)に置換基としてメチル基を有する、トリス(1-シクロペンテン-1-イルオキシ)メチルシランの合成例があるが、室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の架橋剤として使用した例はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特表2018-515634号公報
【文献】特公昭51-39673号公報
【非特許文献】
【0009】
【文献】Journal of Organometallic Chemistry (1984), 273(1)
【文献】Journal of Organometallic Chemistry (1985), 281(2-3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物において、人体に対しての発がん性や生殖毒性など健康有害性、水生生物毒性など環境有害性の報告例がなく、比較的引火点の高い、シクロブタノンやシクロペンタノン等の環状ケトン化合物を脱離基(脱離化合物)とする加水分解性オルガノシラン化合物を硬化剤として使用することで、様々な触媒を使用しても従来の脱アルコール型や脱オキシム型の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物と同等の硬化性を有するとともに、なおかつ人体に対する有害性や環境負荷を軽減し、硬化後に良好なゴム物性、接着性及び耐久性を有するシリコーンゴム硬化物を与えることができる室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物、及びこの組成物を有する各種物品、並びに上記組成物の硬化剤として有用な、新規の加水分解性オルガノシラン化合物及びその製造方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意研究を重ねた結果、下記一般式(4)で示される、加水分解によって、人体にとって毒性の低い、シクロペンタノンを放出する、置換基にビニル基もしくはフェニル基、あるいは4官能の有機ケイ素化合物(加水分解性オルガノシラン化合物)が、室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の架橋剤として適用した場合に、安全性に優れ、従来の硬化タイプ(脱アルコールタイプや脱オキシムタイプ)の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物と同等以上のゴム物性及び速硬化性を発現する室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を与えることができることを知見した。
【化1】
(式中、R
6はビニル基もしくはフェニル基であり、mは3又は4である。)
更に室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物において、下記一般式(2)で示される、脱離基(脱離化合物)としてシクロブタノンやシクロペンタノン等の環状ケトン化合物を脱離・放出する加水分解性オルガノシラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物を硬化剤(架橋剤)として含有する室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物が、上記人体・環境に対する有害性や安全性の問題を解決するものであることを見出し、更にはこの組成物にチタン、グアニジン等を含む有機化合物を硬化触媒として添加した場合でも錫触媒を添加した場合と同等の硬化性及び硬化物性能を示すことを見出し、本発明をなすに至った。
【化2】
(式中、R
2は炭素数1~10の一価炭化水素基であり、nは1~8の整数であり、mは3又は4である。)
【0012】
即ち、本発明は、下記の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物、及び該組成
物を有する各種物品
(接着剤、シーリング材、ポッティング剤、コーティング剤など)、並びに加水分解性オルガノシラン化合物及びその製造方法等を提供するものである。
[1]
(A)下記一般式(1)で示される23℃における粘度が20~1,000,000mPa・sのオルガノポリシロキサン:100質量部
HO-(SiR
1
2O)
a-H (1)
(式中、R
1は炭素数1~10の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、各R
1は互いに同一であっても異種の基であってもよい。aは50以上の整数である。)、及び
(B)下記一般式(2)で示される加水分解性オルガノシラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物:1~40質量部
【化3】
(式中、R
2は炭素数1~10の一価炭化水素基であり、nは1~8の整数であり、mは3又は4である。)
を含有する室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
[2]
(B)成分の加水分解性オルガノシラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物が、加水分解によって環状ケトン化合物を脱離するものである[1]に記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
[3]
脱離する環状ケトン化合物がシクロブタノン又はシクロペンタノンである[2]に記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
[4]
(B)成分の加水分解性オルガノシラン化合物が、下記一般式(4)で示される加水分解性オルガノシラン化合物である[1]~[3]のいずれかに記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【化4】
(式中、R
6はビニル基もしくはフェニル基であり、mは3又は4である。)
[5]
更に、(C)硬化触媒を(A)成分100質量部に対して0.01~10質量部含有するものである[1]~[4]のいずれかに記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
[6]
(C)硬化触媒が、錫触媒、チタン触媒、有機強塩基触媒及び有機ビスマス触媒から選ばれる少なくとも1種である[5]に記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
[7]
錫触媒を含有しないものである[1]~[6]のいずれかに記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
[8]
更に、(D)下記一般式(3)で示されるシランカップリング剤及び/又はその部分加水分解縮合物を(A)成分100質量部に対して0.01~10質量部含有するものである[1]~[7]のいずれかに記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
R
3R
4
bSiX
3-b (3)
(式中、R
3は窒素原子、硫黄原子及び酸素原子から選ばれる1種以上のヘテロ原子を含む官能性基(但し、グアニジル基を除く)を少なくとも1個有する炭素数1~20の一価炭化水素基である。R
4は炭素数1~10の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、Xは加水分解性基である。bは0、1又は2である。)
[9]
更に、(E)無機質充填剤を(A)成分100質量部に対して1~500質量部含有するものである[1]~[8]のいずれかに記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
[10]
(E)成分が、炭酸カルシウム、煙霧質シリカ、沈降性シリカ、カーボンブラック及び酸化アルミニウムから選ばれる1種又は2種以上の無機質充填剤である[9]に記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
[
11]
[1]~[10]のいずれかに記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を含有する接着剤。
[
12]
[1]~[10]のいずれかに記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を含有するシーリング材。
[
13]
[1]~[10]のいずれかに記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を含有するポッティング剤。
[
14]
[1]~[10]のいずれかに記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を含有するコーティング剤。
[
15]
下記一般式(4)で示される加水分解性オルガノシラン化合物。
【化5】
(式中、R
6はビニル基もしくはフェニル基であり、mは3又は4である。)
[
16]
加水分解によってシクロペンタノンを脱離するものである[
15]に記載の加水分解性オルガノシラン化合物。
[
17]
下記反応式[I]
【化6】
(式中、R
6、mは前記の通りである。)
で示される、クロロシラン化合物とシクロペンタノンを塩基性物質及び触媒の存在下で反応させる工程を含む[
15]又は[
16]に記載の加水分解性オルガノシラン化合物の製造方法。
[
18]
上記シクロペンタノンの添加量が、クロロシラン化合物中の塩素原子数1モルに対して、0.95~3.0モルである[
17]に記載の加水分解性オルガノシラン化合物の製造方法。
[
19]
上記触媒物質が、塩化銅、ヨウ化銅、臭化銅、塩化銀、ヨウ化銀又は臭化銀である[
17]又は[
18]に記載の加水分解性オルガノシラン化合物の製造方法。
[
20]
上記触媒物質の添加量が、クロロシラン化合物1モルに対して0.001~0.5モルである[
17]~[
19]のいずれかに記載の加水分解性オルガノシラン化合物の製造方法。
[
21]
上記塩基性物質が、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、尿素、ジアザビシクロウンデセン又はジアザビシクロノネンである[
17]~[
20]のいずれかに記載の加水分解性オルガノシラン化合物の製造方法。
[
22]
上記塩基性物質の添加量が、クロロシラン化合物中の塩素原子数1モルに対して0.95~2.5モルである[
17]~[
21]のいずれかに記載の加水分解性オルガノシラン化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、硬化時の加水分解・縮合反応によって硬化剤(架橋剤)から発生する化合物(脱離化合物)が安全性の高いシクロブタノンやシクロペンタノン等の環状ケトン化合物であり、組成物の硬化性や硬化後の接着性に優れ、耐久性も良好であるシリコーンゴム硬化物(エラストマー状オルガノポリシロキサン硬化物)を与えるため、人体の健康や安全性に配慮された、各種接着剤、シーリング材、ポッティング剤、コーティング剤等として好適に使用できる。更に、本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、チタン、ビスマス、グアニジン等を含む有機化合物を硬化触媒として添加した場合でも、錫触媒を添加した場合と同等の硬化性及び硬化物性能を示すため、環境保護(負荷軽減)に配慮した、各種接着剤、シーリング材、ポッティング剤、コーティング剤等として好適に使用できる。
また、本発明の加水分解性オルガノシラン化合物は、脱離基(脱離化合物)としてより安全性の高い化合物を放出し、特に室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の架橋剤として使用した場合に、該組成物は、硬化性に優れ、空気中に曝すと速やかに硬化して、優れた物性を示すことから、この加水分解性オルガノシラン化合物を含む組成物は、建築用途、自動車用途、電気電子用接着剤用途として有効に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本発明において、粘度は、JIS Z 8803に規定する方法に順じた回転粘度計による測定値である。特に記述がない限り、「室温」とは温度23℃±15℃、湿度50%RH±5%RHの状態をいう。
【0015】
[(A)成分 オルガノポリシロキサン]
本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物に用いられる(A)成分は、下記一般式(1)で示される23℃における粘度が20~1,000,000mPa・sのオルガノポリシロキサンである。
HO-(SiR1
2O)a-H (1)
(式中、R1は炭素数1~10の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、各R1は互いに同一であっても異種の基であってもよい。aは50以上の整数である。)
【0016】
(A)成分は、式(1)に示すように主鎖がジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなり、分子鎖両末端がケイ素原子に結合した水酸基(シラノール基)で封鎖されている、23℃における粘度が20~1,000,000mPa・sの、直鎖状のジオルガノポリシロキサンであり、本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の主剤(ベースポリマー)として作用するものである。
【0017】
上記式(1)中、R1は炭素数1~10、特に炭素数1~6の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基が挙げられる。あるいはこれらの炭化水素基の水素原子が部分的に塩素、フッ素、臭素といったハロゲン原子等で置換された基、例えばトリフルオロプロピル基などが挙げられる。R1の非置換又は置換の一価炭化水素基としては、脂肪族不飽和結合を含まないものが好ましく、具体的には、メチル基等のアルキル基、フェニル基等のアリール基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。このR1は同一の基であっても異種の基であってもよい。
【0018】
上記式(1)中、主鎖を構成する2官能性のジオルガノシロキサン単位(SiR1
2O2/2)の繰り返し数(又は重合度)を示すaは50以上の整数であり、好ましくは50~2,000の整数であり、より好ましくは100~1,500の整数であり、特に好ましくは200~1,200の整数である。
本発明において、重合度(又は分子量)は、例えば、トルエン、テトラヒドロフラン(THF)等を展開溶媒としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)分析におけるポリスチレン換算の数平均重合度(又は数平均分子量)等として求めることができる。
【0019】
(A)成分のオルガノポリシロキサンは、23℃における粘度が20~1,000,000mPa・sであり、好ましくは100~300,000mPa・sであり、更に好ましくは1,000~200,000mPa・sであり、特に好ましくは10,000~100,000mPa・sである。オルガノポリシロキサンの粘度が上記下限値(20mPa・s)未満であると、後述する(C)成分が多量に必要となるため、経済的に不利となる。また、オルガノポリシロキサンの粘度が上記上限値(1,000,000mPa・s)超では、作業性が低下するので、好ましくない。
【0020】
(A)成分のオルガノポリシロキサンは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】
[(B)成分 加水分解性オルガノシラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物]
本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物に用いられる(B)成分は、下記一般式(2)で示される加水分解性オルガノシラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物で、架橋剤(硬化剤)として用いられるものであり、加水分解によってシクロブタノンやシクロペンタノン等の環状ケトン化合物を脱離基(脱離物質)として放出するものであることを特徴とする。
なお、本発明において「部分加水分解縮合物」とは、該加水分解性オルガノシラン化合物を部分的に加水分解・縮合して生成する、分子中に残存加水分解性基を3個以上、好ましくは4個以上有するオルガノシロキサンオリゴマーを意味する。
【化7】
(式中、R
2は炭素数1~10の一価炭化水素基であり、nは1~8の整数であり、mは3又は4である。)
【0022】
上記一般式(2)において、R2は炭素数1~10、好ましくは炭素数1~6の、一価炭化水素基であり、より好ましくは炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数6~10のアリール基又は炭素数7~10のアラルキル基であり、このR2としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基などを例示することができる。これらの中でも、メチル基、エチル基、ビニル基、フェニル基が好ましく、メチル基、ビニル基、フェニル基が特に好ましい。
【0023】
上記一般式(2)において、nは1~8の整数、好ましくは2~6の整数、より好ましくは2~4の整数、更に好ましくは2又は3である。nが0では環状構造とならない。nが9以上の整数となると、加水分解性オルガノシランの分子量が大きくなり、蒸留による精製が困難となったり、保存性を確保するのに必要な添加量が多くなり、コスト的に不利になる。
【0024】
また、上述したとおり、mは3又は4である。この数が3未満である場合(即ち、mが0、1又は2である場合)は架橋反応によるゴム硬化が起こらず、室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の架橋剤として不適である。
【0025】
また、上記一般式(2)で示される加水分解性オルガノシラン化合物の加水分解によって生じる脱離基(脱離化合物)は、シクロプロパノン、シクロブタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、シクロノナノン、シクロデカノンなどの環状ケトン化合物であり、好ましくはシクロブタノン、シクロペンタノンであり、更に好ましくはシクロペンタノンである。シクロブタノン、シクロペンタノンは人体に対しての発がん性や生殖毒性など健康有害性、水生生物毒性など環境有害性の報告例がない。また、シクロペンタノンは、工業的に大量生産されており、入手も容易でコスト競争力が高いため、後述するように(B)成分の加水分解性オルガノシラン化合物の製造にも有利である。
【0026】
(B)成分の加水分解性オルガノシラン化合物は、例えば、生成物である一般式(2)で示される加水分解性オルガノシラン化合物に対応するクロロシラン化合物と環状ケトン化合物を触媒及び塩基性物質の存在下に反応(例えば脱塩酸反応)させることで製造できる。この反応式は、例えば下記式[1]で表される。
【0027】
【化8】
(式中、R
2、n、mは前記の通りである。)
【0028】
ここで、クロロシラン化合物としては、下記に示すものが例示できる。
【化9】
【0029】
また、環状ケトン化合物としては、下記に示すものが例示できる。
【化10】
【0030】
クロロシラン化合物と反応させる環状ケトン化合物の添加量は、クロロシラン化合物中の塩素原子数1モルに対して、0.95~3.0モルが好ましく、0.99~2.5モルがより好ましく、1.0~2.0モルが更に好ましい。環状ケトン化合物の添加量が少ないと反応が終結しないおそれがあり、環状ケトン化合物の添加量が多すぎると精製に時間がかかり、製造時間が増加してしまう場合がある。
【0031】
反応に使用する触媒としては、1価もしくは2価の金属銅化合物が挙げられ、例えば、塩化銅、臭化銅、ヨウ化銅、硫酸銅、硝酸銅、炭酸銅、塩基性炭酸銅、ギ酸銅、酢酸銅、酪酸銅などが例示できるがこれらに限られるものではない。
触媒(金属銅化合物)の添加量としては、クロロシラン化合物1モルに対して0.001~0.5モルが好ましく、0.002~0.2モルがより好ましく、0.003~0.1モルが更に好ましい。触媒の添加量が少ないと反応が終結しないおそれがあり、触媒の添加量が多すぎるとコスト的に不利となる。
【0032】
反応に使用する塩基性物質としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、尿素、ジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロノネンなどの求核性の低い塩基性物質が使用できる。この中でもトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミンが好ましく、特にトリエチルアミンが好ましい。
塩基性物質の添加量としては、クロロシラン化合物中の塩素原子数1モルに対して0.95~2.5モルが好ましく、0.99~2.0モルがより好ましく、1.0~1.5モルが更に好ましい。塩基性物質の添加量が少ないと反応が終結しないおそれがあり、塩基性物質の添加量が多すぎると経済的に不利である。
【0033】
(B)成分の加水分解性オルガノシラン化合物の製造には、一般に使用される溶剤を使用してもよく、溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素類、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ノナン、オクタン、デカンなどの脂肪族炭化水素類、ジメチルエーテル、メチルエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類、パークロロエタン、パークロロエチレン、トリクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素、ジメチルホルムアミドなどのアミド類、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチルなどのエステル類などの有機溶剤が挙げられる。
溶剤の使用量としては特に限定されないが、通常、使用する環状ケトン化合物100質量部に対して、10~500質量部、好ましくは30~400質量部、より好ましくは50~300質量部等の範囲で使用される。
【0034】
クロロシラン化合物と環状ケトン化合物との反応条件としては、通常、0~120℃、好ましくは0~100℃の温度下でクロロシラン化合物を環状ケトン化合物に滴下し、50~120℃、好ましくは60~100℃で1~48時間、更に好ましくは3~30時間程度反応させることが好ましい。反応時の温度が低すぎると反応が完結しない場合があり、反応時の温度が高すぎると生成物の着色が大きくなる場合がある。また、反応時間が短すぎると反応が完結しない場合があり、反応時間が長すぎると生産性に不利に働く。
また、反応終了後の精製は減圧環境下で目的物を蒸留することで可能であり、減圧度は好ましくは1×10-5~3,000Pa、より好ましくは1×10-5~2,000Paであり、精製時の温度は好ましくは100~250℃、より好ましくは120~230℃である。減圧時の圧力(減圧度)が高すぎると蒸留が困難となる場合がある。また、精製時の温度が低すぎると、蒸留による精製が困難となる場合があり、高すぎると反応物の着色や分解を招くおそれがある。
【0035】
(B)成分の加水分解性オルガノシラン化合物の具体例としては、例えば、下記式で表されるものが挙げられる。なお、Meはメチル基を示す。
【化11】
【0036】
(B)成分としては、特に下記一般式(4)で示される、加水分解によって生じる脱離基(脱離化合物)として、シクロペンタノンを脱離する新規な有機ケイ素化合物(加水分解性オルガノシラン化合物)であることが速硬化性等の点から好ましい。
【化12】
(式中、mは上記と同じであり、R
6はビニル基もしくはフェニル基である。)
【0037】
ここで、上記一般式(1)において、R6はビニル基もしくはフェニル基であり、ビニル基が特に好ましい。
また、mは上述したとおり、3又は4である。この数が3未満である場合(即ち、mが0、1又は2である場合)は架橋反応によるゴム硬化が起こらず、縮合硬化型室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の架橋剤として不適である。
【0038】
本発明の加水分解性オルガノシラン化合物は、例えば、クロロシラン化合物とシクロペンタノンを触媒、塩基性物質の存在下に反応(例えば脱塩酸反応)させることで製造できる。この反応式は、例えば下記式[I]で表される。
【0039】
【化13】
(式中、R
6、mは前記の通りである。)
【0040】
ここで、クロロシラン化合物としては、下記に示すものが例示できる。
【化14】
【0041】
クロロシラン化合物と反応させるシクロペンタノンの添加量は、クロロシラン化合物中の塩素原子数1モルに対して、0.95~3.0モルが好ましく、0.99~2.5モルがより好ましく、1.0~2.0モルが更に好ましい。シクロペンタノンの添加量が少ないと反応が終結しないおそれがあり、シクロペンタノンの添加量が多すぎると精製に時間がかかり、製造時間が増加してしまう。
【0042】
反応に使用する塩基性物質としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、尿素、ジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロノネンなどの求核性の低い塩基性物質が使用できる。この中でもトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミンが好ましく、特にトリエチルアミンが好ましい。
塩基性物質の添加量としては、クロロシラン化合物中の塩素原子数1モルに対して0.95~2.5モルが好ましく、0.99~2.0モルがより好ましく、1.0~1.5モルが更に好ましい。塩基性物質の添加量が少ないと反応が終結しないおそれがあり、塩基性物質の添加量が多すぎると経済的に不利である。
【0043】
反応に使用する触媒としては、1価もしくは2価の金属銅化合物、金属銀化合物が挙げられ、例えば塩化銅、臭化銅、ヨウ化銅、硫酸銅、硝酸銅、炭酸銅、塩基性炭酸銅、ギ酸銅、酢酸銅、酪酸銅、塩化銀、ヨウ化銀、硫酸銀、硝酸銀、炭酸銀、塩基性炭酸銀、ギ酸銀、酢酸銀、酪酸銀などが例示できるがこれらに限られるものではない。
触媒(金属銅化合物、金属銀化合物)の添加量としては、クロロシラン化合物1モルに対して0.001~0.5モルが好ましく、0.002~0.2モルがより好ましく、0.003~0.1モルが更に好ましい。触媒の添加量が少ないと反応が終結しないおそれがあり、触媒の添加量が多すぎるとコスト的に不利となる。
【0044】
本発明の加水分解性オルガノシラン化合物の製造には、一般に使用される溶剤を使用してもよく、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素類、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ノナン、オクタン、デカンなどの脂肪族炭化水素類、ジメチルエーテル、メチルエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類、パークロロエタン、パークロロエチレン、トリクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素、ジメチルホルムアミドなどのアミド類、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチルなどのエステル類などの有機溶剤が挙げられる。
溶剤の使用量としては特に限定されないが、通常、使用するシクロペンタノン100質量部に対して、10~500質量部、好ましくは30~400質量部、より好ましくは50~300質量部等の範囲で使用される。
【0045】
クロロシラン化合物とシクロペンタノンとの反応条件としては、通常、0~130℃、好ましくは20~120℃の温度下でクロロシラン化合物をシクロペンタノンに滴下し、50~140℃、好ましくは60~130℃で0.5~48時間、好ましくは1~30時間程度反応させることが好ましい。反応時の温度が低すぎると反応が完結しない場合があり、反応時の温度が高すぎると生成物の着色が大きくなる場合がある。また、反応時間が短すぎると反応が完結しない場合があり、反応時間が長すぎると生産性に不利に働く。
また、反応終了後の精製は減圧環境下で目的物を蒸留することで可能であり、減圧度は好ましくは1×10-5~3,000Pa、より好ましくは1×10-5~2,000Paであり、精製時の温度は好ましくは100~250℃、より好ましくは120~230℃である。減圧時の圧力(減圧度)が高すぎると蒸留が困難となる場合がある。また、精製時の温度が低すぎると、蒸留による精製が困難となる場合があり、高すぎると反応物の着色や分解を招くおそれがある。
【0046】
本発明の加水分解性オルガノシラン化合物の具体例としては、例えば、下記式で表されるものが挙げられる。
【化15】
【0047】
このような加水分解によって生じる脱離基(脱離化合物)として、シクロペンタノンを脱離する有機ケイ素化合物(加水分解性オルガノシラン化合物)を室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の架橋剤(硬化剤)として用いれば、特に速硬化性を有し、ゴム物性に優れた硬化物を与えるものとすることができる。シクロペンタノンはメタノールや2-ブタノンオキシムと比較して、人体、環境への有害性が低く、生分解性に優れる化合物である。
【0048】
本発明の新規加水分解性オルガノシラン化合物は、加水分解によって生じる脱離基(脱離化合物)として、シクロペンタノンを有し、室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の架橋剤として特に好適に使用される。
【0049】
室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の架橋剤として、このような加水分解性オルガノシラン化合物であれば、より高い安全性、速硬化性を付与することができる。
加水分解によって生じる脱離基(脱離化合物)として、より安全性の高い、シクロペンタノンを放出する加水分解性オルガノシラン化合物を架橋剤(硬化剤)として使用することによって、ゴム物性に優れた硬化物を与え、速硬化性を有する縮合硬化型室温硬化性オルガノシロキサン組成物が得られる。
【0050】
(B)成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(B)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して1~40質量部であり、好ましくは3~30質量部であり、更に好ましくは5~20質量部である。(B)成分の配合量が上記下限値の1質量部未満であると、密封容器中に保管した際の保存性が悪化する場合がある。また、(B)成分の配合量が上記上限値の40質量部を超えると、室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化性が著しく低下し、更には接着性が悪化する場合がある。
なお、(B)成分の加水分解性オルガノシラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物は、分子中に、窒素原子、硫黄原子及び酸素原子から選ばれる1種以上の原子を含む官能性基を少なくとも1個有する一価炭化水素基を有しないものである点において、後述する任意成分としての(D)成分のシランカップリング剤及び/又はその部分加水分解縮合物とは明確に区別されるものである。
【0051】
[(C)成分 硬化触媒]
本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物には、必要に応じて(C)成分の硬化触媒を任意成分として配合することができる。(C)成分の硬化触媒としては、室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化促進剤として従来から一般的に使用されている金属系又は非金属系の縮合触媒を使用できる。例えば、ジブチル錫メトキサイド、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクテート、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジオクテート、ジメチル錫ジメトキサイド、ジメチル錫ジアセテート等の有機錫化合物(錫触媒)、テトラプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、テトラ-2-エチルヘキシルチタネート、ジメトキシチタンジアセチルアセトナート、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)等の有機チタン化合物(チタン触媒)、トリエチルアミン、ヘキシルアミン、テトラメチルグアニジン、γ-テトラメチルグアニジルプロピルトリメトキシシラン等のアミン化合物やこれらの塩(有機強塩基触媒)、ビスマストリス(2-エチルヘキサノエート)、ビスマストリス(ネオデカノエート)等の有機ビスマス化合物及びそれらの混合物(有機ビスマス触媒)などが挙げられ、これらの少なくともいずれか1つ、即ち1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
なお、本発明においては、上記触媒のうち、チタン触媒、有機強塩基触媒及び有機ビスマス触媒のいずれを配合しても、錫触媒を配合した場合と同等の硬化性及び硬化物性能を示すことから、錫触媒を配合せずにチタン触媒、有機強塩基触媒又は有機ビスマス触媒を配合することが環境保護の観点から好ましい。
【0052】
(C)成分を配合する場合、その配合量は、(A)成分100質量部に対して、好ましくは0.01~10質量部であり、より好ましくは0.05~8質量部であり、更に好ましくは0.1~5質量部である。(E)成分の配合量が上記下限値の0.01質量部未満であると、触媒効果が得られない場合があり、上記上限値の10質量部を超えると組成物の保存安定性に劣る場合がある。
【0053】
[(D)成分 シランカップリング剤及び/又はその部分加水分解縮合物]
本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物には、必要に応じて(D)成分のシランカップリング剤及び/又はその部分加水分解縮合物を任意成分として配合することができる。(D)成分は、下記一般式(3)で示されるシランカップリング剤(即ち、官能性基含有一価炭化水素基を有する加水分解性オルガノシラン化合物又はカーボンファンクショナルシラン)及び/又はその部分加水分解縮合物であり、本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化物に良好な接着性を発現させるための成分である。
R3R4
bSiX3-b (3)
(式中、R3は窒素原子、硫黄原子及び酸素原子から選ばれる1種以上のヘテロ原子を含む官能性基(但し、グアニジル基を除く)を少なくとも1個有する炭素数1~20の一価炭化水素基である。R4は炭素数1~10の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、Xは加水分解性基である。bは0、1又は2である。)
【0054】
上記式(3)中、R3は、窒素原子、硫黄原子及び酸素原子から選ばれる1種以上のヘテロ原子を含む官能性基(例えば、非置換又は置換アミノ基、非置換又は置換イミノ基、アミド基、ウレイド基、メルカプト基、エポキシ基、(メタ)アクリロキシ基等であるが、グアニジル基を除く)を少なくとも1個有する炭素数1~20の一価炭化水素基であり、具体的には、β-(2,3-エポキシシクロヘキシル)エチル基、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基、γ-グリシドキシプロピル基、γ-メタクリロキシプロピル基、γ-アクリロキシプロピル基、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピル基[別名:N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピル基]、γ-アミノプロピル基、N-フェニル-γ-アミノプロピル基、γ-ウレイドプロピル基、γ-メルカプトプロピル基、γ-イソシアネートプロピル基等の窒素原子、硫黄原子及び酸素原子から選ばれるヘテロ原子の少なくとも1種を含む、好ましくは炭素数3~20、より好ましくは炭素数3~14の一価炭化水素基が挙げられる。R5としては、γ-グリシドキシプロピル基、γ-アミノプロピル基、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピル基が特に好ましい。
【0055】
また、上記式(3)中、R4は、炭素数1~10、好ましくは炭素数1~6の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基が挙げられる。あるいはこれらの炭化水素基の水素原子が部分的に塩素、フッ素、臭素といったハロゲン原子等で置換された基、例えばトリフルオロプロピル基などが挙げられる。これらの中でもメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基が好ましい。なお、R4は同一の基であっても異種の基であってもよい。
【0056】
上記式(3)中、加水分解性基Xとしては、例えば、ケトオキシム基、アルコキシ基、アルコキシアルコキシ基、アシロキシ基、アルケニルオキシ基等が挙げられる。具体的には、ジメチルケトオキシム基、ジエチルケトオキシム基、メチルエチルケトオキシム基、メチルイソブチルケトオキシム基等の炭素数3~8のケトオキシム基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基等の炭素数1~4、好ましくは1又は2のアルコキシ基、メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基等の炭素数2~4のアルコキシアルコキシ基、アセトキシ基、プロピオノキシ基等の炭素数2~4のアシロキシ基、ビニルオキシ基、アリルオキシ基、プロペノキシ基、イソプロペノキシ基等の炭素数2~4のアルケニルオキシ基などが例示できる。Xとして、好ましくはメトキシ基である。なお、加水分解性基Xは同一の基であっても異種の基であってもよい。
【0057】
(D)成分の式(3)で示されるシランカップリング剤として、具体的には、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-2-(アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン[別名:N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン]等のアミノシラン類、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシラン類、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等の(メタ)アクリルシラン類、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプトシラン類、γ-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン等のイソシアネートシラン類などが挙げられる。
【0058】
(D)成分のシランカップリング剤及び/又はその部分加水分解縮合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0059】
(D)成分を配合する場合、その配合量は、(A)成分100質量部に対して、好ましくは0.01~10質量部であり、より好ましくは0.1~8質量部である。0.01質量部未満では、硬化物が十分な接着性能を示さないものとなる場合があり、10質量部を超えて配合すると、硬化後のゴム強度が低下したり、硬化性が低下したりする場合がある。
【0060】
[(E)成分 無機質充填剤]
本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物には、必要に応じて(E)成分の無機質充填剤を任意成分として配合することができる。(E)成分の無機質充填剤は、本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物にゴム物性を付与するための補強性、非補強性充填剤である。(E)成分の無機質充填剤としては、表面疎水化処理又は無処理の、焼成シリカ、溶融シリカ、破砕シリカ、煙霧質シリカ(ヒュームドシリカ)等の乾式シリカ、沈降性シリカ、ゾル-ゲル法シリカ等の湿式シリカ、結晶性シリカ(微粉末石英)などのシリカ系充填剤、珪藻土、カーボンブラック、タルク、ベントナイト、表面処理又は無処理の炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、表面処理又は無処理の酸化カルシウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム等が例示され、その中でも炭酸カルシウム、煙霧質シリカ、沈降性シリカ、カーボンブラック、酸化アルミニウムが好ましく、より好ましくは表面が疎水化処理された、炭酸カルシウム、煙霧質シリカ、沈降性シリカ、カーボンブラック、酸化アルミニウムである。この場合、これら無機質充填剤は、水分量が少ないことが好ましい。
なお、該表面処理剤(疎水化処理剤)の種類、量や処理方法等については特に制限はないが、代表的には、クロロシラン、アルコキシシラン、オルガノシラザン等の有機ケイ素化合物や、脂肪酸、パラフィン、シランカップリング剤、チタンカップリング剤等の処理剤が適用できる。
(E)成分の無機質充填剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0061】
(E)成分を配合する場合、その配合量は、(A)成分100質量部に対して、好ましくは1~500質量部であり、より好ましくは20~500質量部であり、更に好ましくは20~300質量部であり、特に好ましくは50~300質量部である。1質量部未満では十分なゴム強度が得られないため、使用用途に適さないという問題が生じる場合があり、500質量部を超えるとカートリッジからの吐出性が悪化し、並びに保存安定性が低下するほか、得られるゴム物性の機械特性も低下してしまう場合がある。
【0062】
[その他の成分]
また、本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物には、上記成分以外に一般に知られている添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で使用しても差し支えない。添加剤としては、チクソ性向上剤としてのポリエーテル、可塑剤としてのシリコーンオイル(無官能性オルガノポリシロキサン)、イソパラフィン等が挙げられ、必要に応じて顔料、染料、蛍光増白剤等の着色剤、防かび剤、抗菌剤、海洋生物忌避剤等の生理活性添加剤、ブリードオイルとしてのフェニルシリコーンオイル、フロロシリコーンオイル、シリコーンと非相溶の有機液体等の表面改質剤、溶剤揮発油、低沸点イソパラフィン等の溶剤も添加できる。
【0063】
本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、上記各成分、更にはこれに上記各種添加剤の所定量を、乾燥雰囲気中において均一に混合することにより得ることができる。また、本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、室温で放置することにより硬化するが、その成形方法、硬化条件などは、組成物の種類に応じた公知の方法、条件を採用することができる。
【0064】
本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物、特に1成分型の組成物は、水分の非存在下、即ち湿気を遮断した密閉容器中で保存し、使用時に空気中の水分に曝すことによって室温(23℃±15℃)で容易に硬化する。
【0065】
本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、硬化時の加水分解反応によって架橋剤から発生する化合物が安全性の高いシクロペンタノン等の環状ケトン化合物であり、人体、環境に配慮されているものである。更に、シクロペンタノンでは、引火点が35℃と、組成物の硬化時にメタノール等のアルコール化合物を放出する脱アルコール型のものよりも引火点が高く、安全性の高いものである。このような本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、既存の様々な触媒を使用することで良好な硬化性を示し、その硬化物(シリコーンゴム)は接着性にも優れる。また、錫以外の触媒を使用することで更に環境負荷に考慮した組成物を与えることが可能である。
【0066】
そのため、本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、接着剤、シーリング材、ポッティング剤、又はコーティング剤等として有用である。本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を接着剤、シーリング材、ポッティング剤、又はコーティング剤として使用する方法は、従来公知の方法に従えばよい。
【0067】
対象となる物品としては、例えば、自動車用部品、自動車用オイルシール、電気・電子用部品、建築用構造物、土木工事用構造物等が挙げられる。
【実施例】
【0068】
以下、合成例と実施例及び比較例、並びに合成実施例、組成物実施例及び組成物比較例を挙げ、本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の実施例、合成実施例に制限されるものではない。また、粘度はJIS Z 8803に規定する方法に準じた23℃における回転粘度計による測定値である。なお、Meはメチル基を示す。
【0069】
[合成例1]加水分解性オルガノシラン化合物1の合成
機械攪拌機、温度計、還流管及び滴下ロートを備えた5,000mLの四つ口セパラブルフラスコに、シクロペンタノン834g(9.9mol)、トリエチルアミン825g(8.2mol)、塩化銅(I)5g(0.05mol)、ヘキサン1,500mlを仕込み、40~60℃の範囲でビニルトリクロロシラン400g(2.47mol)を約2時間かけて滴下した。その後、80℃で12時間撹拌後、生成したトリエチルアミン塩酸塩を濾過して取り除き、ろ液から100℃、常圧の条件でヘキサンを留去したのち、180℃、300Paの条件で蒸留することで加水分解性オルガノシラン化合物1を得た(収量532g、収率69%)。この反応式は、下記式[2]で表される。
【化16】
【0070】
[合成例2]加水分解性オルガノシラン化合物2の合成
機械攪拌機、温度計、還流管及び滴下ロートを備えた5,000mLの四つ口セパラブルフラスコに、シクロペンタノン834g(9.9mol)、トリエチルアミン825g(8.2mol)、塩化銅(I)5g(0.05mol)、ヘキサン1,500mlを仕込み、40~60℃の範囲でメチルトリクロロシラン368g(2.47mol)を約2時間かけて滴下した。その後、80℃で12時間撹拌後、生成したトリエチルアミン塩酸塩を濾過して取り除き、ろ液から100℃、常圧の条件でヘキサンを留去したのち、170℃、300Paの条件で蒸留することで加水分解性オルガノシラン化合物2を得た(収量519g、収率71%)。この反応式は、下記式[3]で表される。
【化17】
【0071】
[合成例3]加水分解性オルガノシラン化合物3の合成
機械攪拌機、温度計、還流管及び滴下ロートを備えた5,000mLの四つ口セパラブルフラスコに、シクロペンタノン834g(9.9mol)、トリエチルアミン825g(8.2mol)、塩化銅(I)5g(0.05mol)、ヘキサン1,500mlを仕込み、40~60℃の範囲でフェニルトリクロロシラン522g(2.47mol)を約2時間かけて滴下した。その後、80℃で12時間撹拌後、生成したトリエチルアミン塩酸塩を濾過して取り除き、ろ液から100℃、常圧の条件でヘキサンを留去したのち、200℃、300Paの条件で蒸留することで加水分解性オルガノシラン化合物3を得た(収量568g、収率65%)。この反応式は、下記式[4]で表される。
【化18】
【0072】
[実施例1]
(A)23℃における粘度が20,000mPa・sの分子鎖両末端がシラノール基(ケイ素原子に結合した水酸基)で封鎖された直鎖状ジメチルポリシロキサン(前記一般式(1)において、R1=メチル基、a=約620に該当するジメチルポリシロキサン)100質量部に、(E-1)表面がパラフィン系で処理された重質炭酸カルシウム(製品名;MCコートP-20、丸尾カルシウム(株)製)を100質量部、(E-2)表面がジメチルジクロロシランにて処理された煙霧質シリカ(製品名;MU-215、信越化学工業(株)製)を10質量部加えて十分に混合した後、(B-1)前記加水分解性オルガノシラン化合物1を8質量部加え、十分に混合した。最後に(D-1)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン(製品名;KBM-903、信越化学工業(株)製)を1質量部、(C-1)ジオクチル錫ジラウレートを0.1質量部加え、減圧下で完全に混合し、組成物1を得た。
【0073】
[実施例2]
(A)23℃における粘度が20,000mPa・sの分子鎖両末端がシラノール基(ケイ素原子に結合した水酸基)で封鎖された直鎖状ジメチルポリシロキサン(前記一般式(1)において、R1=メチル基、a=約620に該当するジメチルポリシロキサン)100質量部に、(E-1)表面がパラフィン系で処理された重質炭酸カルシウム(製品名;MCコートP-20、丸尾カルシウム(株)製)を100質量部、(E-2)表面がジメチルジクロロシランにて処理された煙霧質シリカ(製品名;MU-215、信越化学工業(株)製)を10質量部加えて十分に混合した後、(B-1)前記加水分解性オルガノシラン化合物1を8質量部加え、十分に混合した。最後に(D-2)γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(製品名;KBM-403、信越化学工業(株)製)を1質量部、(C-2)チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)(製品名;オルガチックスTC750、マツモトファインケミカル(株)製)を4質量部加え、減圧下で完全に混合し、組成物2を得た。
【0074】
[実施例3]
(A)23℃における粘度が20,000mPa・sの分子鎖両末端がシラノール基(ケイ素原子に結合した水酸基)で封鎖された直鎖状ジメチルポリシロキサン(前記一般式(1)において、R1=メチル基、a=約620に該当するジメチルポリシロキサン)100質量部に、(E-1)表面がパラフィン系で処理された重質炭酸カルシウム(製品名;MCコートP-20、丸尾カルシウム(株)製)を100質量部、(E-2)表面がジメチルジクロロシランにて処理された煙霧質シリカ(製品名;MU-215、信越化学工業(株)製)を10質量部加えて十分に混合した後、(B-1)前記加水分解性オルガノシラン化合物1を8質量部加え、十分に混合した。最後に(D-3)N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(製品名;KBM-603、信越化学工業(株)製)を1質量部、(C-3)γ-テトラメチルグアニジルプロピルトリメトキシシランを0.6質量部加え、減圧下で完全に混合し、組成物3を得た。
【0075】
[実施例4]
(A)23℃における粘度が20,000mPa・sの分子鎖両末端がシラノール基(ケイ素原子に結合した水酸基)で封鎖された直鎖状ジメチルポリシロキサン(前記一般式(1)において、R1=メチル基、a=約620に該当するジメチルポリシロキサン)100質量部に、(E-1)表面がパラフィン系で処理された重質炭酸カルシウム(製品名;MCコートP-20、丸尾カルシウム(株)製)を100質量部、(E-2)表面がジメチルジクロロシランにて処理された煙霧質シリカ(製品名;MU-215、信越化学工業(株)製)を10質量部加えて十分に混合した後、(B-1)前記加水分解性オルガノシラン化合物1を8質量部加え、十分に混合した。最後に(D-1)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン(製品名;KBM-903、信越化学工業(株)製)を1質量部、(C-4)ビスマストリス(2-エチルヘキサノエート)を主成分とする有機ビスマス触媒(製品名;ネオスタンU-600、日東化成(株)製)を1質量部加え、減圧下で完全に混合し、組成物4を得た。
【0076】
[実施例5]
(A)23℃における粘度が20,000mPa・sの分子鎖両末端がシラノール基(ケイ素原子に結合した水酸基)で封鎖された直鎖状ジメチルポリシロキサン(前記一般式(1)において、R1=メチル基、a=約620に該当するジメチルポリシロキサン)100質量部に、(E-1)表面がパラフィン系で処理された重質炭酸カルシウム(製品名;MCコートP-20、丸尾カルシウム(株)製)を100質量部、(E-2)表面がジメチルジクロロシランにて処理された煙霧質シリカ(製品名;MU-215、信越化学工業(株)製)を10質量部加えて十分に混合した後、(B-2)前記加水分解性オルガノシラン化合物2を8質量部加え、十分に混合した。最後に(D-3)N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(製品名;KBM-603、信越化学工業(株)製)を1質量部、(C-3)γ-テトラメチルグアニジルプロピルトリメトキシシランを0.6質量部加え、減圧下で完全に混合し、組成物5を得た。
【0077】
[実施例6]
(A)23℃における粘度が20,000mPa・sの分子鎖両末端がシラノール基(ケイ素原子に結合した水酸基)で封鎖された直鎖状ジメチルポリシロキサン(前記一般式(1)において、R1=メチル基、a=約620に該当するジメチルポリシロキサン)100質量部に、(E-1)表面がパラフィン系で処理された重質炭酸カルシウム(製品名;MCコートP-20、丸尾カルシウム(株)製)を100質量部、(E-2)表面がジメチルジクロロシランにて処理された煙霧質シリカ(製品名;MU-215、信越化学工業(株)製)を10質量部加えて十分に混合した後、(B-3)前記加水分解性オルガノシラン化合物3を8質量部加え、十分に混合した。最後に(D-3)N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(製品名;KBM-603、信越化学工業(株)製)を1質量部、(C-3)γ-テトラメチルグアニジルプロピルトリメトキシシランを0.6質量部加え、減圧下で完全に混合し、組成物6を得た。
【0078】
[比較例1]
(A)23℃における粘度が20,000mPa・sの分子鎖両末端がシラノール基(ケイ素原子に結合した水酸基)で封鎖された直鎖状ジメチルポリシロキサン(前記一般式(1)において、R1=メチル基、a=約620に該当するジメチルポリシロキサン)100質量部に、(E-1)表面がパラフィン系で処理された重質炭酸カルシウム(製品名;MCコートP-20、丸尾カルシウム(株)製)を100質量部、(E-2)表面がジメチルジクロロシランにて処理された煙霧質シリカ(製品名;MU-215、信越化学工業(株)製)を10質量部加えて十分に混合した後、(B’)メチルトリスメチルエチルケトオキシムシランを10質量部加え、十分に混合した。最後に(D-1)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン(製品名;KBM-903、信越化学工業(株)製)を1質量部、(C-1)ジオクチル錫ジラウレートを0.1質量部加え、減圧下で完全に混合し、組成物7を得た。
【0079】
[比較例2]
(A’)23℃における粘度が20,000mPa・sの分子鎖両末端がメチルジメトキシ基で封鎖された直鎖状ジメチルポリシロキサン(前記一般式(1)において、R1=メチル基、a=約620に該当するジメチルポリシロキサン)100質量部に、(E-1)表面がパラフィン系で処理された重質炭酸カルシウム(製品名;MCコートP-20、丸尾カルシウム(株)製)を100質量部、(E-2)表面がジメチルジクロロシランにて処理された煙霧質シリカ(製品名;MU-215、信越化学工業(株)製)を10質量部加えて十分に混合した後、(B'')メチルトリメトキシシランを10質量部加え、十分に混合した。最後に(D-2)γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(製品名;KBM-403、信越化学工業(株)製)を1質量部、(C-2)チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)(製品名;オルガチックスTC750、マツモトファインケミカル(株)製)を4質量部加え、減圧下で完全に混合し、組成物8を得た。
【0080】
[比較例3]
(A)23℃における粘度が20,000mPa・sの分子鎖両末端がシラノール基(ケイ素原子に結合した水酸基)で封鎖された直鎖状ジメチルポリシロキサン(前記一般式(1)において、R1=メチル基、a=約620に該当するジメチルポリシロキサン)100質量部に、(E-1)表面がパラフィン系で処理された重質炭酸カルシウム(製品名;MCコートP-20、丸尾カルシウム(株)製)を100質量部、(E-2)表面がジメチルジクロロシランにて処理された煙霧質シリカ(製品名;MU-215、信越化学工業(株)製)を10質量部加えて十分に混合した後、(B'')メチルトリメトキシシランを10質量部加え、十分に混合した。最後に(D-1)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン(製品名;KBM-903、信越化学工業(株)製)を1質量部、(C-4)ビスマストリス(2-エチルヘキサノエート)を主成分とする有機ビスマス触媒(製品名;ネオスタンU-600、日東化成(株)製)を1質量部加え、減圧下で完全に混合し、組成物9を得た。
【0081】
[比較例4]
(A)23℃における粘度が20,000mPa・sの分子鎖両末端がシラノール基(ケイ素原子に結合した水酸基)で封鎖された直鎖状ジメチルポリシロキサン(前記一般式(1)において、R1=メチル基、a=約620に該当するジメチルポリシロキサン)100質量部に、(E-1)表面がパラフィン系で処理された重質炭酸カルシウム(製品名;MCコートP-20、丸尾カルシウム(株)製)を100質量部、(E-2)表面がジメチルジクロロシランにて処理された煙霧質シリカ(製品名;MU-215、信越化学工業(株)製)を10質量部加えて十分に混合した後、(B''')ビニルトリスイソプロポキシシランを8質量部加え、十分に混合した。最後に(D-3)N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(製品名;KBM-603、信越化学工業(株)製)を1質量部、(C-3)γ-テトラメチルグアニジルプロピルトリメトキシシランを0.6質量部加え、減圧下で完全に混合し、組成物10を得た。
【0082】
[試験方法]
上記実施例1~6、比較例1~4で調製された各組成物(室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物)について、下記の評価を行った。実施例1~6、比較例1~4の配合量と共に、下記評価結果を表1に示す。
【0083】
(初期評価)
初期評価として上記調製直後の各組成物を用いて以下のタックフリータイム、硬化速度、ゴム物性、接着性を評価した。
タックフリータイム
上記実施例、比較例で調製された各組成物を用いて、JIS A 5758に規定する方法に準じてタックフリータイム(指触乾燥時間)を測定した。
【0084】
硬化速度
硬化速度試験方法は、内径10mmのガラスシャーレに、上記実施例、比較例で調製された各組成物を充填し、23℃、50%RHで1日(24時間)後に、探針を差し込むことで空気に触れた部分から硬化した厚さ(深さ)を測定した。
【0085】
ゴム物性
上記実施例、比較例で調製された各組成物を2mmの型枠に流し込み、23℃、50%RHで7日間養生して2mm厚さのゴムシートを得た。JIS K 6249に準じてゴム物性(タイプAデュロメータ硬さ、引張強度、切断時伸び)を測定した。
【0086】
接着性
上記実施例、比較例で調製された各組成物を、幅25mm、長さ100mmのアルミニウム板2枚の間で23℃、50%RHで7日間養生して硬化させ、上下それぞれのアルミニウム板との接着面積2.5cm2、接着厚さ1mmのシリコーンゴム硬化物層を形成して、せん断接着試験体を作製した。この各試験体を用いてアルミニウムに対するせん断接着力と凝集破壊率をJIS K 6249に規定する方法に準じて測定した。
【0087】
(耐湿熱性評価)
耐湿熱性能を確認するため、得られた硬化後のシリコーンゴムシート及びせん断接着試験体を85℃、85%RHの環境に暴露し、1,000時間劣化させて、その後製造初期(初期評価)と同様の試験(ゴム物性、接着性)を行うことで、耐湿熱性の確認試験を行った。
【0088】
(耐熱性評価)
耐熱性能を確認するため、得られた硬化後のシリコーンゴムシート及びせん断接着試験体を150℃の乾燥環境に暴露し、1,000時間劣化させて、その後製造初期(初期評価)と同様の試験(ゴム物性、接着性)を行うことで、耐熱性の確認試験を行った。
【0089】
【0090】
【0091】
上記の結果から、本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物が、錫触媒、チタン触媒、有機強塩基触媒、有機ビスマス触媒のいずれを使用しても、初期評価において良好な硬化性(タックフリータイム、硬化速度)、ゴム物性及び接着性を有し、耐湿熱性試験、耐熱性試験でも良好な特性を有することが示された。本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の特性は、汎用されている脱オキシム型、脱アルコール型、脱アセトン型の組成物に劣るものではない。更に、実施例4で示したように、有機ビスマス触媒を使用しても本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物は良好な特性を示すが、比較例3の有機ビスマス触媒を使用した脱アルコール型の組成物は硬化しなかった。これらの結果から、脱アルコール型硬化剤よりも本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物で使用した加水分解性オルガノシラン化合物の方が末端封鎖能及び硬化性に優れることが分かる。
また、実施例の組成物が硬化中に放出する化合物は、シクロペンタノンであり、人体に対しての発がん性や生殖毒性など健康有害性、水生生物毒性など環境有害性の報告例がなく安全性の高い化合物である。一方で、比較例の組成物が硬化中に放出する化合物はいずれもSDS(安全データシート)等で健康有害性が表示されており、発がん性のおそれ、水生生物への毒性を有する2-ブタノンオキシム、劇物に指定され、人体に強い有害性を有しているメタノール、反復暴露による臓器への障害を有するアセトンである。また、メタノール、アセトンは、シクロペンタノンと比較して引火点や沸点が低いことからも、本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、人体の健康、環境保護の観点からより優れていることが分かる。
【0092】
以上の結果から、本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、硬化時により安全性の高い化合物を脱離し、各種触媒を使用しても良好な硬化性を有し、その硬化物は、良好な物性・接着性・耐久性(耐湿熱性、耐熱性)を有していることが確認され、様々な用途(接着剤、シーリング材、ポッティング剤、コーティング剤等)において好適に使用できることが分かった。
【0093】
本発明の、新規な加水分解性オルガノシラン化合物の合成例について以下に示す。なお、合成された化合物は1H-NMRにて同定を行い、合成を確認した。
【0094】
[合成実施例1]加水分解性オルガノシラン化合物4の合成
機械攪拌機、温度計、還流管及び滴下ロートを備えた5,000mLの四つ口セパラブルフラスコに、シクロペンタノン834g(9.9mol)、トリエチルアミン825g(8.2mol)、塩化銅(I)5g(0.05mol)、ヘキサン1,500mlを仕込み、40~60℃の範囲でビニルトリクロロシラン400g(2.47mol)を約2時間かけて滴下した。その後、80℃で12時間撹拌後、生成したトリエチルアミン塩酸塩を濾過して取り除き、ろ液から100℃、常圧の条件でヘキサンを留去したのち、180℃、300Paの条件で蒸留することで加水分解性オルガノシラン化合物4を得た(収量532g、収率69%)。この反応式は、下記式[II]で表される。
1H-NMR(400MHz,CDCl
3)δ6.11(-CH=C
H
2
,m,2H),δ6.02(-C
H=CH
2,m,1H),δ4.43(-OC(CH
2)=C
H-,s,3H),δ2.20(-OC-C
H
2
-,t,6H),δ2.15(-OC=CH-
CH
2
-,m,6H)δ2.15(-OC-CH
2-
CH
2
-,m,6H)
【化19】
【0095】
[合成実施例2]加水分解性オルガノシラン化合物5の合成
機械攪拌機、温度計、還流管及び滴下ロートを備えた5,000mLの四つ口セパラブルフラスコに、シクロペンタノン834g(9.9mol)、トリエチルアミン825g(8.2mol)、塩化銅(I)5g(0.05mol)、ヘキサン1,500mlを仕込み、40~60℃の範囲でフェニルトリクロロシラン522g(2.47mol)を約2時間かけて滴下した。その後、80℃で12時間撹拌後、生成したトリエチルアミン塩酸塩を濾過して取り除き、ろ液から100℃、常圧の条件でヘキサンを留去したのち、200℃、300Paの条件で蒸留することで加水分解性オルガノシラン化合物5を得た(収量568g、収率65%)。この反応式は、下記式[III]で表される。
1H-NMR(400MHz,CDCl
3)δ6.64(Si-C
6
H
5
,m,5H),δ4.40(-OC(CH
2)=C
H-,s,3H),δ2.20(-OC-C
H
2
-,t,6H),δ2.15(-OC=CH-
CH
2
-,m,6H)δ2.13(-OC-CH
2-
CH
2
-,m,6H)
【化20】
【0096】
[合成実施例3]加水分解性オルガノシラン化合物6の合成
機械攪拌機、温度計、還流管及び滴下ロートを備えた5,000mLの四つ口セパラブルフラスコに、シクロペンタノン758g(9.0mol)、トリエチルアミン727g(7.2mol)、塩化銅(I)5g(0.05mol)、ヘキサン1200mlを仕込み、40℃~60℃の範囲でテトラクロロシラン255g(1.5mol)を約2時間かけて滴下した。その後、80℃で12時間撹拌後、生成したトリエチルアミン塩酸塩を濾過して取り除き、ろ液から100℃、常圧の条件でヘキサンを留去したのち、210℃、300Paの条件で蒸留することで加水分解性オルガノシラン化合物6を得た(収量302g、収率56%)。この反応式は、下記式[IV]で表される。
1H-NMR(400MHz,CDCl
3)δ4.45(-OC(CH
2)=C
H-,s,4H),δ2.22(-OC-C
H
2
-,t,8H),δ2.15(-OC=CH-
CH
2
-,m,8H)δ2.15(-OC-CH
2-
CH
2
-,m,8H)
【化21】
【0097】
[組成物実施例1]
粘度20,000mPa・sの分子鎖両末端がシラノール基(ケイ素原子に結合した水酸基)で封鎖された直鎖状ジメチルポリシロキサン(前記一般式(1)において、R1=メチル基、a=約620に該当するジメチルポリシロキサン)100質量部と、加水分解性オルガノシラン化合物4を7質量部と、γ-テトラメチルグアニジルプロピルトリメトキシシラン0.5質量部を加え、湿気遮断下で均一になるまで混合して組成物を調製した。
【0098】
[組成物実施例2]
粘度20,000mPa・sの分子鎖両末端がシラノール基(ケイ素原子に結合した水酸基)で封鎖された直鎖状ジメチルポリシロキサン(前記一般式(1)において、R1=メチル基、a=約620に該当するジメチルポリシロキサン)100質量部と、加水分解性オルガノシラン化合物5を7質量部と、γ-テトラメチルグアニジルプロピルトリメトキシシラン0.5質量部を加え、湿気遮断下で均一になるまで混合して組成物を調製した。
【0099】
[組成物実施例3]
粘度20,000mPa・sの分子鎖両末端がシラノール基(ケイ素原子に結合した水酸基)で封鎖された直鎖状ジメチルポリシロキサン(前記一般式(1)において、R1=メチル基、a=約620に該当するジメチルポリシロキサン)100質量部と、加水分解性オルガノシラン化合物6を7質量部と、γ-テトラメチルグアニジルプロピルトリメトキシシラン0.5質量部を加え、湿気遮断下で均一になるまで混合して組成物を調製した。
【0100】
[組成物比較例1]
粘度20,000mPa・sの分子鎖両末端がシラノール基(ケイ素原子に結合した水酸基)で封鎖された直鎖状ジメチルポリシロキサン(前記一般式(1)において、R1=メチル基、a=約620に該当するジメチルポリシロキサン)100質量部と、ビニルトリスケトオキシムシランを7質量部と、ジオクチル錫ジラウレート0.1質量部を加え、湿気遮断下で均一になるまで混合して組成物を調製した。
【0101】
[組成物比較例2]
粘度20,000mPa・sの分子鎖両末端がシラノール基(ケイ素原子に結合した水酸基)で封鎖された直鎖状ジメチルポリシロキサン(前記一般式(1)において、R1=メチル基、a=約620に該当するジメチルポリシロキサン)100質量部と、ビニルトリメトキシシランを7質量部と、ジオクチル錫ジラウレート0.1質量部を加え、湿気遮断下で均一になるまで混合して組成物を調製した。
【0102】
上記組成物実施例、組成物比較例で調製された組成物を2mmの型枠に流し込み、23℃、50%RHで7日間養生して2mm厚のゴムシートを得た。JIS A 5758に規定する方法に準じてタックフリータイム(指触乾燥時間)を測定し、JIS K 6249に準じて2mm厚シートよりゴム物性(硬さ、切断時伸び、引張り強度)を測定した。
これらの結果を下記表3に示した。
【0103】
【0104】
本発明の加水分解性オルガノシラン化合物は、塩基性触媒を使用しても高い硬化性を示し、従来の架橋剤と比較してタックフリータイムが非常に短くなることが分かった。また、硬化後の物性も問題ない結果を得た。一方で、組成物比較例1、2では毒性の高い錫触媒の使用が必須であり、タックフリータイムが長く、硬化性に劣る結果であった。組成物実施例1~3の組成物では、硬化時に脱離するガスはシクロペンタノンと安全性の高い化合物であり、発がん性が疑われる2-ブタノンオキシムを放出する組成物比較例1の組成物や、劇物であるメタノールを放出する組成物比較例2の組成物と比べて安全面でも有利である。