(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】X線発生装置
(51)【国際特許分類】
H01J 35/16 20060101AFI20241022BHJP
【FI】
H01J35/16
(21)【出願番号】P 2023097114
(22)【出願日】2023-06-13
(62)【分割の表示】P 2019187106の分割
【原出願日】2019-10-10
【審査請求日】2023-06-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】樋口 浩太
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 智哉
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 正平
【審査官】右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-111336(JP,A)
【文献】特開2019-160430(JP,A)
【文献】特開2014-099349(JP,A)
【文献】特開2011-029072(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0257721(US,A1)
【文献】特開2017-022054(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 35/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子を放出する電子放出部と、
前記電子放出部からの電子が照射されてX線を放出するX線放出部と、
前記X線放出部を収納する収納部と、
前記X線放出部からのX線が出射される出射部を有する筐体と、
前記収納部内に、前記電子放出部からの電子が前記X線放出部に至る入射経路が形成され、前記入射経路の内周面に設けられる部材と、を備え、
前記収納部と前記部材とは異なる部材であり、
前記部材は、前記X線放出部より原子番号が小さい元素を少なくとも一部に含む、X線発生装置。
【請求項2】
前記部材は、
前記X線放出部と前記出射部の間にも配置される、請求項1に記載のX線発生装置。
【請求項3】
前記収納部内に、前記X線放出部からのX線が前記出射部に至る出射経路が形成され、前記部材は、前記入射経路と前記出射経路の間に配置される、請求項2に記載のX
線発生装置。
【請求項4】
前記部材は、前記出射経路の少なくとも一部を遮う、請求項3に記載のX線発生装置。
【請求項5】
前記部材は、前記入射経路と前記出射経路とが交差する部分にも配置される、請求項3又は請求項4に記載のX線発生装置。
【請求項6】
前記部材は、前記出射経路の内周面に配置される、請求項3~5のいずれか一項に記載のX線発生装置。
【請求項7】
前記収納部は、前記電子が照射されるとX線を放出する部材である、請求項1~6のいずれか一項に記載のX線発生装置。
【請求項8】
前記部材は、導電性を有する部材である、請求項1~7のいずれか一項に記載のX線発生装置。
【請求項9】
前記筐体は、内部を減圧または真空に保持する、請求項1~8のいずれか一項に記載のX線発生装置。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載のX線発生装置と、
前記出射部から出射されるX線が照射される測定物を保持するステージと、
前記測定物に照射されて透過したX線を検出する検出器とを有する、X線装置。
【請求項11】
構造物の形状に関する設計情報を作製する設計工程と、
前記設計情報に基づいて前記構造物を作成する成形工程と、
作製された前記構造物の形状を請求項10に記載のX線装置を用いて計測する計測工程と、
前記計測工程で得られた形状情報と前記設計情報とを比較する検査工程と、を有する、構造物の製造方法。
【請求項12】
前記検査工程の比較結果に基づいて実行され、前記構造物の再加工を実施するリペア工程を有する、請求項11に記載の構造物の製造方法。
【請求項13】
前記リペア工程は、前記成形工程を再実行する工程である、請求項12に記載の構造物の製造方法。
【請求項14】
構造物の形状に関する設計情報を作製する設計装置と、
前記設計情報に基づいて前記構造物を作製する成形装置と、
作製された前記構造物の形状を測定する請求項10に記載のX線装置と、
前記X線装置によって得られた前記構造物の形状に関する形状情報と前記設計情報とを比較する検査装置と、を含む、構造物製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
物体の内部の情報を非破壊で取得する装置として、例えば下記特許文献に開示されているような、物体にX線を照射するX線源を有し、その物体を透過した透過X線を検出する検出器を備えるX線装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2009/0268869号明細書
【発明の概要】
【0004】
本発明の第一の態様によれば、X線発生装置は、電子を放出する電子放出部と、電子放出部からの電子が照射されてX線を放出するX線放出部と、X線放出部からのX線が出射される出射部を有する筐体と、X線放出部からのX線が出射部に至る出射経路に配置される部材と、を備え、部材は、X線放出部より原子番号が小さい元素を少なくとも一部に含む。
本発明の第二の態様によれば、X線装置は、第一の態様に記載のX線発生装置と、出射部から出射されるX線が照射される測定物を保持するステージと、測定物に照射されて透過したX線を検出する検出器とを有する。
本発明の第三の態様によれば、構造物の製造方法は、構造物の形状に関する設計情報を作製する設計工程と、設計情報に基づいて構造物を作成する成形工程と、作製された構造物の形状を第二の態様に記載のX線装置を用いて計測する工程と、計測工程で得られた形状情報と設計情報とを比較する検査工程と、を有する。
本発明の第四の態様によれば、構造物製造システムは、構造物の形状に関する設計情報を作製する設計装置と、設計情報に基づいて構造物を作製する成形装置と、作製された構造物の形状を測定する第二の態様に記載のX線装置と、X線装置によって得られた構造物の形状に関する形状情報と設計情報とを比較する検査装置と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】本実施形態に係る検査装置の一例を示す概略構成図である。
【
図2】本実施形態に係る検査装置の一例を示す概略構成図である。
【
図4】X線が遮蔽体を通った場合の像の一例を示す図である。
【
図5】本実施形態に係るX線発生装置の模式的な断面図である。
【
図6】本実施形態に係る収納部の模式的な拡大断面図である。
【
図9】検出器に到達するX線の強度の、シミュレーションによる計算結果を説明する図である。
【
図10】検出器に到達するX線の強度の、シミュレーションによる計算結果を説明するグラフである。
【
図11】X線発生装置の他の例を示す模式的な断面図である。
【
図12】検査装置を有するシステムの構成を示す模式図である。
【
図14】製造システムによる処理の流れを示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0007】
以下の説明においては、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部の位置関係について説明する。水平面内の所定方向をZ軸方向、水平面内においてZ軸方向と直交する方向をX軸方向、Z軸方向及びX軸方向のそれぞれと直交する方向(すなわち鉛直方向)をY軸方向とする。また、X軸、Y軸、及びZ軸まわりの回転(傾斜)方向をそれぞれ、θX、θY、及びθZ方向とする。
【0008】
図1及び
図2は、本実施形態に係る検査装置の一例を示す概略構成図である。本実施形態に係るX線装置としての検査装置100は、測定物SにX線を照射して、その測定物Sを透過した透過X線を検出する。X線は、例えば波長1pm~30nm程度の電磁波である。X線は、約50eVの超軟X線、約0.1~2keVの軟X線、約2~20keVのX線、及び約20~1000eKVの硬X線の少なくとも一つを含む。X線を用いた検査装置は、例えば、特開昭60-210087号公報、特開平7-308313号公報、特開2013-113798号公報、特開2013-174495号公報、特開2017-22054号公報、特開2018-536978号公報などに開示されている。
【0009】
本実施形態において、検査装置100は、測定物SにX線を照射して、その測定物Sを透過した透過X線を検出して、その測定物Sの内部の情報(例えば、内部構造)を非破壊で取得するX線CT検査装置を含む。本実施形態において、測定物Sは、例えば機械部品、電子部品その他の産業用部品を含む。X線CT検査装置は、産業用部品にX線を照射して、その産業用部品を検査する産業用X線CT検査装置を含む。
【0010】
図1において、検査装置100は、測定物SにX線を照射して透過X線を検出する測定装置1と、測定装置1を含む検査装置100の全体の動作を制御する制御装置7とを備え
ている。測定装置1は、X線XLを射出するX線発生装置2と、X線の少なくとも一部を遮蔽する遮蔽装置3と、測定物Sを保持して移動可能なステージ装置4と、X線源2から射出され、ステージ装置4に保持された測定物Sを透過した透過X線を検出する検出器5とを備えている。
【0011】
本実施形態において、X線発生装置2から遮蔽装置3を経て検出器5に向かって射出されるX線XLの光軸がZ軸に沿った方向となるように、X線発生装置2、遮蔽装置3、及び検出器5が設置される。検出器5の検出面は、X線XLの光軸に直交する面(XZ平面)に平行に設置される。本実施形態においては、X線発生装置2と遮蔽装置3とは、台座B上に配置されている。
【0012】
また、本実施形態において、検査装置100は、X線発生装置2から射出されるX線XLが進行する内部空間SPを形成するチャンバ部材6を備えている。本実施形態において、X線発生装置2、遮蔽装置3、ステージ装置4、検出器5、及び台座Bは、内部空間SPに配置される。
【0013】
本実施形態において、チャンバ部材6は、支持面FR上に配置される。支持面FRは、工場等の床面を含む。チャンバ部材6は、複数の支持部材6Sに支持される。チャンバ部材6は、支持部材6Sを介して、支持面FR上に配置される。本実施形態においては、支持部材6Sにより、チャンバ部材6の下面と、支持面FRとが離されている。すなわち、チャンバ部材6の下面と支持面FRとの間に空間が形成されている。なお、チャンバ部材6の下面の少なくとも一部と支持面FRとが接触してもよい。
【0014】
本実施形態において、チャンバ部材6は、鉛を含む。チャンバ部材6は、内部空間SPのX線XLが、チャンバ部材6の外部空間RPに漏出することを抑制する。
【0015】
本実施形態において、検査装置100は、チャンバ部材6に取り付けられ、チャンバ部材6よりも熱伝導率が小さい部材6Dを有する。本実施形態において、部材6Dは、チャンバ部材6の外面に配置される。部材6Dは、内部空間SPの温度が外部空間RPの温度(温度変化)の影響を受けることを抑制する。すなわち、部材6Dは、外部空間RPの熱が内部空間SPに伝わることを抑制する断熱部材として機能する。部材6Dは、例えばプラスチックを含む。本実施形態において、部材6Dは、例えば発泡スチロールを含む。
【0016】
X線発生装置2は、測定物SにX線XLを照射する。X線発生装置2は、X線XLを射出する出射部50Bを有する。X線発生装置2は、点X線源を形成する。本実施形態において、X線発生装置2は、点X線源(X線の発生点)を含む。X線発生装置2は、測定物Sに円錐状のX線(所謂、コーンビーム)を照射する。なお、X線発生装置2は、射出するX線XLの強度を調整可能でもよい。X線発生装置2から射出されるX線XLの強度を調整する場合、測定物SのX線吸収特性等に基づいてもよい。また、X線発生装置2から射出されるX線の拡がる形状は円錐状に限られず、例えば、扇状のX線(所謂、ファンビーム)でもよい。また、例えば線状のX線(所謂、ペンシルビーム)でもよい。
【0017】
X線発生装置2の出射部50Bは、+Z方向を向いている。本実施形態において、射出部8から射出されたX線XLの少なくとも一部は、内部空間SPにおいて、+Z方向に進行する。X線発生装置2の構成については後述する。
【0018】
遮蔽装置3は、X線発生装置2の+Z方向側に配置されている。遮蔽装置3は、遮蔽体3Aと、移動部3Mとを備える。
図3は、本実施形態に係る遮蔽体の模式図である。遮蔽体3Aは、X線発生装置2から出射されたX線XLが照射される。遮蔽体3Aは、X線発生装置2から出射されたX線XLの一部を透過し、他の一部を遮蔽(吸収)する。
図3に示すように、遮蔽体3Aは、透過部材3Bと、遮蔽部3Cとを備える。透過部材3Bは、例えばアクリルなどの、X線XLが透過可能な部材であり、本実施形態では板状部材である。遮蔽部3Cは、X線を遮蔽可能な部材であり、例えば炭化タングステンなどである。遮蔽部3Cは、透過部材3B内に複数設けられる。遮蔽部3Cは、X軸方向及びY軸方向において、透過部材3Bに所定の間隔、ここでは等間隔で配置される。遮蔽部3Cは、本実施形態では軸状の部材であり、+Z方向に向かうに従って放射方向外側を向くように、透過部材3Bに配置されている。ここでの放射方向外側とは、X線XLの光軸A
XLを中心とした場合において、光軸AXLから離れる方向を指す。なお、遮蔽部3Cは、軸状の部材に限られず、例えば球状であってもよい。この場合、例えば、透過部材3Bに、+Z方向に向かうに従って放射方向外側を向くように形成される複数の開口が設けられ、それぞれの開口内に、球状の遮蔽部3Cが配置される。
【0019】
遮蔽体3Aは、遮蔽部3Cがグリッド状に設けられた部材であるといえる。遮蔽体3Aは、遮蔽部3Cが設けられた領域でX線XLを遮蔽(吸収)し、遮蔽部3Cが設けられない領域で、X線XLを透過する。
【0020】
移動部3Mは、遮蔽体3Aを移動する機構である。移動部3Mは、遮蔽体3Aを移動させることで、方向Zにおいて遮蔽体3AがX線発生装置2の出射部50Bと重なる位置にある重畳状態と、方向Zにおいて遮蔽体3AがX線発生装置2の出射部50Bと重ならない位置にある非重畳状態とを、切り替える。本実施形態では、
図2に示すように、移動部3Mは、遮蔽体3Aを方向Xに沿って移動させることで、重畳状態と非重畳状態とを切り替える。例えば、移動部3Mは、遮蔽体3Aを移動させる駆動部が制御装置7によって駆動されることで、遮蔽体3Aを移動させる。
【0021】
遮蔽装置3は、X線XLの散乱光の強度を算出するために用いられる。
図4は、X線が遮蔽体を通った場合の像の一例を示す図である。
図4の(A)に示す画像P1は、重畳状態において、測定物Sを透過した透過X線の像の一例を示している。すなわち、画像P1は、移動部3Mによって遮蔽体3Aを重畳状態にして、X線発生装置2によりX線XLを測定物Sに照射させた場合の、測定物Sを透過した透過X線の像である。重畳状態においては、遮蔽体3AがX線発生装置2の出射部50Bと重なる位置にあるため、遮蔽体3Aを通ったX線XLが、測定物Sに照射される。遮蔽体3Aは、遮蔽部3Cが設けられた領域ではX線を透過しないため、重畳状態における画像P1は、測定物Sの像P
Sに加え、遮蔽部3Cの像P
Cも含む。一方、
図4の(B)に示す画像P2は、非重畳状態において、測定物Sを透過した透過X線の像の一例を示している。すなわち、画像P2は、移動部3Mによって遮蔽体3Aを非重畳状態にして、X線発生装置2によりX線XLを測定物Sに照射させた場合の、測定物Sを透過した透過X線の像である。非重畳状態においては、遮蔽体3AがX線発生装置2の出射部50Bと重ならない位置にあるため、X線発生装置2からのX線XLが、遮蔽体3Aを通らずに測定物Sに照射される。従って、非重畳状態における画像P2は、遮蔽部3Cの像P
Cを含まず、測定物Sの像P
Sを含む。
【0022】
ここで、遮蔽部3Cは、X線XLを透過しないため、画像P1における遮蔽部3Cの像PCにおける輝度はゼロとなるはずである。しかし、実際には散乱光が含まれるため、遮蔽部3Cの像PCにおける輝度はゼロとならない。従って、画像P1における遮蔽部3Cの像PCにおける輝度から、散乱光の強度(輝度)が算出できる。画像P1に基づき算出した散乱光の強度(輝度)を、画像P2から差し引くことで、散乱光を除去した測定物Sの像を生成することができる。
【0023】
図1に示すように、ステージ装置4は、測定物Sを保持して移動可能なステージ9と、ステージ9を移動する駆動システム10とを備えている。
【0024】
本実施形態において、ステージ9は、基準物体48及び測定物Sを保持する保持部11を有するテーブル12と、テーブル12を移動可能に支持する第1可動部材13と、第1可動部材13を移動可能に支持する第2可動部材14と、第2可動部材14を移動可能に支持する第3可動部材15とを有する。
【0025】
テーブル12は、保持部11に測定物Sを保持した状態で回転可能である。テーブル12は、θY方向に移動(回転)可能である。第1可動部材13は、X軸方向に移動可能である。第1可動部材13がX軸方向に移動すると、第1可動部材13とともに、テーブル12がX軸方向に移動する。第2可動部材14は、Y軸方向に移動可能である。第2可動部材14がY軸方向に移動すると、第2可動部材14とともに、第1可動部材13及びテーブル12がY軸方向に移動する。第3可動部材15は、Z軸方向に移動可能である。第3可動部材15がZ軸方向に移動すると、第3可動部材15とともに、第2可動部材14、第1可動部材13、及びテーブル12がZ軸方向に移動する。
【0026】
本実施形態において、駆動システム10は、第1可動部材13上においてテーブル12をY軸回りに回転させる回転駆動装置16と、第2可動部材14上において第1可動部材13をX軸方向に移動する第1駆動装置17と、第2可動部材14をY軸方向に移動する第2駆動装置18と、第3可動部材15をZ軸方向に移動する第3駆動装置19とを含む。
【0027】
第2駆動装置18は、第2可動部材14が有するナットに配置されるねじ軸20Bと、ねじ軸20Bを回転させるアクチュエータ20とを備える。ねじ軸20Bは、ベアリング21A、21BによってY軸回りに回転可能に支持される。本実施形態において、ねじ軸20Bは、そのねじ軸20Bの軸線とY軸とが実質的に平行となるように、ベアリング21A、21Bに支持される。本実施形態において、第2可動部材14が有するナットとねじ軸20Bとの間にボールが配置される。すなわち、第2駆動装置18は、所謂、ボールねじ駆動機構を含む。
【0028】
第3駆動装置19は、第3可動部材15が有するナットに配置されるねじ軸23Bと、ねじ軸23Bを回転させるアクチュエータ23とを備える。ねじ軸23Bは、ベアリング24A、24Bによって回転可能に支持される。本実施形態において、ねじ軸23Bは、そのねじ軸23Bの軸線とZ軸とが実質的に平行となるように、ベアリング24A、24Bに支持される。本実施形態において、第3可動部材15が有するナットとねじ軸23Bとの間にボールが配置される。すなわち、第3駆動装置19は、所謂、ボールねじ駆動機構を含む。
【0029】
第3可動部材15は、第2可動部材14をY軸方向にガイドするガイド機構25を有する。ガイド機構25は、Y軸方向に延びるレール状のガイド部材25A、25Bを含む。アクチュエータ20、及びねじ軸20Bを支持するベアリング21A、21Bを含む第2駆動装置18の少なくとも一部は、第3可動部材15に支持される。アクチュエータ20がねじ軸20Bを回転させることによって、第2可動部材14は、ガイド機構25にガイドされながら、Y軸方向に移動する。
【0030】
本実施形態において、検査装置100は、ベース部材26を有する。ベース部材26は、チャンバ部材6に支持される。本実施形態において、ベース部材26は、支持機構を介して、チャンバ部材6の内壁(内面)に支持される。ベース部材26の位置は、所定の位置で固定される。
【0031】
ベース部材26は、第3可動部材15をZ軸方向にガイドするガイド機構27を有する。ガイド機構27は、Z軸方向に延びるレール状のガイド部材27A、27Bを含む。アクチュエータ23、及びねじ軸23Bを支持するベアリング24A、24Bを含む第3駆動装置19の少なくとも一部は、ベース部材26に支持される。アクチュエータ23がねじ軸23Bを回転することによって、第3可動部材15は、ガイド機構27にガイドされながら、Z軸方向に移動する。
【0032】
なお、図示は省略するが、本実施形態において、第2可動部材14は、第1可動部材13をX軸方向にガイドするガイド機構を有する。第1駆動装置17は、第1可動部材13をX軸方向に移動可能なボールねじ機構を含む。回転駆動装置16は、テーブル12をθY方向に移動(回転)可能なモータを含む。
【0033】
本実施形態において、テーブル12上には基準物体48が設置されており、測定物Sは基準物体48上に設置されている。テーブル12上に保持された基準物体48及び測定物Sは、駆動システム10によって、X軸、Y軸、Z軸、及びθY方向の4つの方向に移動可能である。
【0034】
なお、駆動システム10は、テーブル12に保持された測定物Sを、X軸、Y軸、Z軸、θX、θY、及びθZ方向の6つの方向に移動させてもよい。また、本実施形態においては、駆動システム10は、ボールねじ駆動機構を含むこととしたが、例えば、ボイスコイルモータを含んでもよい。例えば、駆動システム10は、リニアモータを含んでもよいし、平面モータを含んでもよい。
【0035】
本実施形態において、ステージ9は、内部空間SPにおいて移動可能である。ステージ9は、射出部8の+Z側に配置される。ステージ9は、内部空間SPのうち、射出部8よりも+Z側の空間で移動可能である。ステージ9の少なくとも一部は、射出部8と対向可能である。ステージ9は、保持した測定物Sを、射出部8と対向する位置に配置可能である。ステージ9は、射出部8から射出されたX線XLが通過する経路上に、測定物Sを配置可能である。ステージ9は、射出部8から射出されたX線XLの照射範囲内に、配置可能である。
【0036】
本実施形態において、検査装置100は、ステージ9の位置を計測する計測システム28を備えている。本実施形態において、計測システム28は、エンコーダシステムを含む。
【0037】
計測システム28は、テーブル12の回転量(θY方向に関する位置)を計測するロータリーエンコーダ29と、X軸方向に関する第1可動部材13の位置を計測するリニアエンコーダ30と、Y軸方向に関する第2可動部材14の位置を計測するリニアエンコーダ31と、Z軸方向に関する第3可動部材15の位置を計測するリニアエンコーダ32とを有する。
【0038】
本実施形態において、ロータリーエンコーダ29は、第1可動部材13に対するテーブル12の回転量を計測する。リニアエンコーダ30は、第2可動部材14に対する第1可動部材13の位置(X軸方向に関する位置)を計測する。リニアエンコーダ31は、第3可動部材15に対する第2可動部材14の位置(Y軸方向に関する位置)を計測する。リニアエンコーダ32は、ベース部材26に対する第3可動部材15の位置(Z軸方向に関する位置)を計測する。
【0039】
ロータリーエンコーダ29は、例えば第1可動部材13に配置されたスケール部材29Aと、テーブル12に配置され、スケール部材29Aの目盛を検出するエンコーダヘッド29Bとを含む。スケール部材29Aは、第1可動部材13に固定されている。エンコーダヘッド29Bは、テーブル12に固定されている。エンコーダヘッド29Bは、スケール部材29A(第1可動部材13)に対するテーブル12の回転量を計測可能である。
【0040】
リニアエンコーダ30は、例えば第2可動部材14に配置されたスケール部材30Aと、第1可動部材13に配置され、スケール部材30Aの目盛を検出するエンコーダヘッド30Bとを含む。スケール部材30Aは、第2可動部材14に固定されている。エンコーダヘッド30Bは、第1可動部材13に固定されている。エンコーダヘッド30Bは、スケール部材30A(第2可動部材14)に対する第1可動部材13の位置を計測可能である。
【0041】
リニアエンコーダ31は、第3可動部材15に配置されたスケール部材31Aと、第2可動部材14に配置され、スケール部材31Aの目盛を検出するエンコーダヘッド31Bとを含む。スケール部材31Aは、第3可動部材15に固定されている。エンコーダヘッド31Bは、第2可動部材14に固定されている。エンコーダヘッド31Bは、スケール部材31A(第3可動部材15)に対する第2可動部材14の位置を計測可能である。
【0042】
リニアエンコーダ32は、ベース部材26に配置されたスケール部材32Aと、第3可動部材15に配置され、スケール部材32Aの目盛を検出するエンコーダヘッド32Bとを含む。スケール部材32Aは、ベース部材26に固定されている。エンコーダヘッド32Bは、第3可動部材15に固定されている。エンコーダヘッド32Bは、スケール部材32A(ベース部材26)に対する第3可動部材15の位置を計測可能である。
【0043】
検出器5は、内部空間SPにおいて、X線発生装置2及びステージ9よりも+Z側に配置される。検出器5の位置は、所定の位置で固定される。なお、検出器5が移動可能でもよい。ステージ9は、内部空間SPのうち、X線発生装置2と検出器5との間の空間を移動可能である。
【0044】
検出器5は、測定物Sを透過した透過X線を含むX線発生装置2からのX線XLが入射する入射面33を有するシンチレータ部34と、シンチレータ部34において発生した光を受光する受光部35とを有する。検出器5の入射面33は、ステージ9に保持された測定物Sと対向可能である。
【0045】
シンチレータ部34は、X線が当たることによって、そのX線とは異なる波長の光を発生させるシンチレーション物質を含む。受光部35は、光電子倍増管を含む。光電子倍増管は、光電効果により光エネルギーを電気エネルギーに変換する光電管を含む。受光部35は、シンチレータ部34において発生した光を増幅し、電気信号に変換して出力する。
【0046】
検出器5は、シンチレータ部34を複数有する。シンチレータ部34は、XY平面内において複数配置される。シンチレータ部34は、アレイ状に配置される。検出器5は、複数のシンチレータ部34のそれぞれに接続するように、受光部35を複数有する。なお、検出器5は、入射するX線を、光に変換することなく直接電気信号に変換してもよい。
【0047】
移動機構46は、検出器5を移動可能に支持する。移動機構46は、検出器5を少なくともZ軸方向(X線発生装置2及びステージ9に対して進退する方向)に移動させる駆動装置を備えている。移動機構46は、ステージ9と同様に、検出器5をX軸方向、Y軸方向、Z軸方向、及びθY方向に移動させる機構としてもよい。
【0048】
次に、X線発生装置の構造について説明する。
図5は、本実施形態に係るX線発生装置の模式的な断面図である。
図5に示すように、本実施形態に係るX線発生装置2は、筐体50と、電子放出部52と、収納部54と、X線放出部56と、減圧部58と、電源60、62と、配線収納部64と、配線L1、L2とを備える。筐体50は、収納部54とX線放出部56とを内部に収納する筐体である。筐体50は、+Z方向側の表面50Aに、出射部50Bが設けられる。出射部50Bは、表面50Aにおける開口ではなく、表面50Aにおいて閉塞された部分であるが、周囲よりも厚みが小さくなっている。ただし、出射部50Bの形状は任意であり、周囲より厚みが小さくなっていることに限られない。筐体50は、例えばアルミニウムなどの軽元素部材で構成されているため、出射部50Bも、例えばアルミニウムなどの軽元素部材で構成されている。軽元素部材とは、後述のX線放出部56(例えばタングステン)よりも原子番号が小さい元素を含む部材であり、より好ましくはアルミニウムである。
【0049】
筐体50は、減圧部58に接続されている。減圧部58は、筐体50内の空間SP内の気体を排出して、空間SP内を真空にする装置である。減圧部58は、例えば排気ポンプである。筐体50は、減圧部58に内部の気体を排出されることで、空間SP内を真空に保持する。ただし、空間SP内は、真空であることに限られず、大気よりも、酸素などの気体の分圧が低ければよい。すなわち、筐体50は、内部の空間SPを、減圧または真空に保持する。
【0050】
電子放出部52は、電子線E(電子)を放出する機構である。電子放出部52は、電子源筐体52Aと、電子源52Bと、中間電極52Cとを備える。電子源筐体52Aは、内部に電子源52Bを収納する筐体である。電子源筐体52Aは、筐体50に接続されており、内部の空間SP1が筐体50の空間SPと連通している。従って、電子源筐体52Aの内部の空間SP1も、減圧部58によって、減圧または真空に保持されている。本実施形態では、電子放出部52(電子源筐体52A)は、筐体50の+Y方向側の面50Cに接続されている。すなわち、電子放出部52は、筐体50の出射部50Bが設けられる表面50Aとは異なる表面50Cに接続されている。ただし、電子放出部52は、表面50Cに限られず、任意の位置に設けられてもよい。
【0051】
電子源52Bは、電子線Eを放出する機構であり、本実施形態ではフィラメントである。電子源52Bは、例えばタングステンを含む材料により構成され、X線放出部56に向けて鋭く尖った先端を有するように構成されている。中間電極52Cは、電子源52Bよりも、X線放出部56が設けられる側、ここでは-Y方向側に配置されている。中間電極52Cは、電子源52B側の表面からX線放出部56側の表面までを貫通する開口52Dが設けられる。
【0052】
収納部54は、内部にX線放出部56を収納する部材である。収納部54は、空間54Cと入射経路70と出射経路72とが形成される。また、収納部54には、挿入部材76と、軽元素を少なくとも一部に含む部材80とが取付けられる。部材80は、軽元素を含む軽元素部材80である。
【0053】
図6は、本実施形態に係る収納部の模式的な拡大断面図である。収納部54は、X線XLを吸収可能な部材で構成されている。本実施形態では、収納部54は、タングステンを含む材料で構成されており、さらに言えば、タングステンで構成される。収納部54は、内部に空間54Cが形成されており、空間54C内にX線放出部56を収納する。入射経路70は、収納部54に形成される開口であり、一方の端部70Aから他方の端部70Bまでにわたって設けられている。入射経路70の端部70Aは、収納部54の表面54Aに形成されており、入射経路70の端部70Bは、空間54Cに連通している。すなわち、入射経路70は、表面54Aから空間54Cまでにわたって設けられている。なお、表面54Aは、収納部54の、電子放出部52側の表面であり、本実施形態では+Y方向側の表面である。従って、入射経路70は、電子放出部52とX線放出部56との間に形成される経路であるといえ、さらに言えば、筐体50内(収納部54内)に配置されて、電子放出部52からの電子線EがX線放出部56に至る経路であるといえる。
【0054】
入射経路70は、本実施形態では、円柱状に形成された開口であり、端部70Aから端部70Bまでにわたって内径が一定である。また、入射経路70の中心軸を軸AX1とすると、軸AX1は、Z軸方向に対して交差している。本実施形態では、軸AX1は、-Y方向側に向かうに従って、+Z方向側(X線放出部56から出射部50Bに向かう方向側)に傾斜している。ただし、入射経路70は円柱状に限られず、軸AX1の方向も上記で説明したものに限られない。
【0055】
出射経路72は、収納部54に形成される開口であり、一方の端部72Aから他方の端部72Bまでにわたって設けられている。出射経路72の端部72Aは、収納部54の表面54Bに形成されており、出射経路72の端部72Bは、空間54Cに連通している。すなわち、出射経路72は、表面54Bから空間54Cまでにわたって設けられている。出射経路72は、端部72Bにおいて入射経路70の端部70Aと接続されているため、出射経路72と入射経路70とは、連通している。なお、表面54Bは、収納部54の、出射部50B側の表面であり、本実施形態では+Z方向側の表面である。従って、出射経路72は、X線放出部56と出射部50Bとの間に形成される経路であるといえ、さらに言えば、筐体50内(収納部54内)に配置されて、X線放出部56からのX線XLが出射部50Bに至る経路であるといえる。
【0056】
出射経路72は、本実施形態では、円錐台形状に形成された開口となっており、端部72Bに向かうに従って、すなわち出射部50Bに向かうに従って、内径が大きくなる。また、出射経路72は、端部72A側の内径が、入射経路70の内径より小さいことが好ましい。さらに言えば、+Z方向側から見た場合の出射経路72のX線放出部56と重畳していない領域の面積は、小さい方が好ましく、その領域の面積が、入射経路70の内径より小さいことが好ましい。また、出射経路72の中心軸を軸AX2とすると、軸AX2は、入射経路70の軸AX1と交差している。すなわち、出射経路72と入射経路70とは、交差している。本実施形態では、出射経路72の軸AX2は、Z軸方向に沿っている。ただし、出射経路72は円錐台形状に限られず、軸AX2の方向も上記で説明したものに限られない。
【0057】
X線放出部56は、収納部54の空間54C内に設けられる。X線放出部56は、いわゆるターゲットであり、電子が衝突することでX線を発生する部材である。X線放出部56は、本実施形態ではタングステンを含む材料で構成されており、さらに言えば、タングステンで構成される。X線放出部56は、電子放出部52からの電子線Eが照射されることでX線XLを放出する。本実施形態では、X線放出部56は、表面が曲面形状となっており、入射経路70から電子線Eが照射されることで、出射経路72に向けて、すなわち+Z方向に向けて、X線XLを放出する。ただし、X線放出部56の形状は曲面に限られず任意である。
【0058】
挿入部材76は、入射経路70に挿入される部材である。挿入部材76は、X線XLを吸収可能な部材で構成されている。本実施形態では、挿入部材76は、タングステンを含む材料で構成されており、さらに言えば、タングステンと銅との合金で構成される。挿入部材76は、一方の端部76Aから他方の端部76Bまで延在する管状の部材であり、端部76Aから端部76Bまでにわたって開口している。端部76Aは、フランジが設けられている。挿入部材76は、端部76B側から入射経路70に挿入されることで、端部76Bが入射経路70の端部70B側に位置し、端部76Aが入射経路70の端部70A側に位置している。ただし、挿入部材76の端部76Bは、入射経路70の端部70Bよりも端部70A側に位置しており、空間54C(X線放出部56)までには至っていない。挿入部材76の端部76Bと空間54C(X線放出部56)との間には、後述する軽元素部材82が設けられる。
【0059】
軽元素部材80は、X線放出部56からのX線XLが出射部50Bに至る経路中に配置される部材である。軽元素部材80は、X線放出部56(ここではタングステン)より原子番号が小さい元素を含む部材である。軽元素部材80は、本実施形態では、例えばアルミニウムである。
【0060】
なお、軽元素部材80は、アルミニウムに限られず、銅でも構わない。
また、例えば、軽元素部材80は、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)などの軽金属系の材料、炭化ケイ素(SiC;Silicon Carbide)などのセラミックス系の材料、パイログラファイト等のカーボン系の材料でも構わない。なお、パイログラファイトは、炭化水素ガスを黒鉛や炭素繊維の基材に沈積させることにより製造する炭素材料である。熱分解黒鉛やパイロカーバイトとも呼ばれる。
また、例えば、軽元素部材80は、アルミニウム合金やチタン合金であってもよい。また、進路中の部材の少なくとも一部は、上記材料(アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金、炭化ケイ素、パイログラファイトなど)で構成される場合に限られず、上記材料又は上記材料を少なくも一部に含む材料で被覆されてもよい。
また、後述する二次X線の発生を抑制による測定不良を抑制できれば、軽元素部材80にX線放出部材が含まれていても構わない。例えば、X線放出部材がタングステンである場合に、軽元素部材80にタングステンが含まれていても構わない。例えば、タングステンと、タングステンに対する軽元素のアルミ二ウムとを含む合金を用いる場合に、タングステンが重量比で10%含まれていてもかまない。重量比はこれに限られず、5%でも20%でも構わない。測定不良を抑制すべき程度に応じてタングステンや他の物質が含まれていても、構わない。
【0061】
軽元素部材80は、第1軽元素部材82と、第2軽元素部材84と、第3軽元素部材86とを含む。第1軽元素部材82は、入射経路70と出射経路72との間に設けられる。入射経路70の端部70Bと出射経路72の端部72Bとは接続されているため、第1軽元素部材82は、入射経路70の端部70Bと出射経路72の端部72Bとの接続箇所に設けられているといえる。また、入射経路70と出射経路72とは、連通しており互いに交差しているため、第1軽元素部材82は、入射経路70と出射経路72とが交差する部分78に配置されるともいえる。
【0062】
より具体的には、第1軽元素部材82は、管部82Aと壁部82Bとを有する。管部82Aは、入射経路70内に設けられて、一方の端部82Aaから他方の端部82Abまで開口する管状の部材である。管部82Aは、入射経路70の端部70Bの箇所に設けられ、入射経路70の端部70Bの箇所の内周面を覆っている。管部82Aは、挿入部材76と空間54C(X線放出部56)との間に設けられており、挿入部材76と空間54C(X線放出部56)との間の、入射経路70の内周面を覆っている。本実施形態では、管部82Aの端部82Aaは、挿入部材76の端部76Bと接触する。管部82Aの端部82Abは、X線放出部56側(-Z方向側)において、X線放出部56の表面の近傍に位置しているが、X線放出部56の表面に接触せず、X線放出部56の表面から離れていることが好ましい。
【0063】
壁部82Bは、板状(壁状)の部材であり、管部82Aの端部82Abから延在する。壁部82Bは、管部82Aの端部82Abの全周にわたって設けられておらず、管部82Aの端部82Abの全周のうち、端部82Abの出射経路72側(+Z方向側)の部分に設けられている。壁部82Bは、端部82Baが、管部82Aの端部82Abの出射経路72側(+Z方向側)の部分に接続され、端部82Baから端部82Bbまで、空間54C(X線放出部56)側、ここでは-Y方向側に向けて延在する。さらに言えば、管部82Aの端部82Abの出射経路72側(+Z方向側)の部分は、入射経路70と出射経路72とが交差する部分78に位置している。従って、壁部82Bは、入射経路70と出射経路72とが交差する部分78から、空間54C(X線放出部56)側に向けて延在しているといえる。従って、壁部82Bは、入射経路70と出射経路72との間に設けられるといえ、入射経路70と出射経路72とが交差する部分78に設けられ、部分78から空間54C(X線放出部56)側に向けて延在しているといえる。壁部82Bは、このような位置に設けられるため、Z軸方向から見ると、出射経路72に重なっており、出射経路72の少なくとも一部を遮っている。壁部82Bは、X線放出部56からのX線が出射部50Bに至る経路中に配置されているといえる。
【0064】
なお、管部82Aの端部82Aaから端部82Abまでの方向である延在方向は、入射経路70の延在方向、すなわち軸AX1に沿っている。一方、壁部82Bは、端部82Baから端部82Bbまでの方向である延在方向は、軸AX1に対して傾斜していることが好ましい。壁部82Bは、端部82Baから端部82Bbに向かうに従って、軸AX1に対して、-Z方向側(出射部50BからX線放出部56に向かう方向側)に傾斜していることが好ましい。ただし、壁部82Bの端部82Baから端部82Bbまでの方向である延在方向も、入射経路70の延在方向、すなわち軸AX1に沿っていてもよい。また、軸AX1に沿った方向において、挿入部材76の内周面を軸AX1に沿って仮想的に延長した場合に、挿入部材76の内周面が占める空間を、空間ARとする(
図6参照)。この場合、壁部82Bは、空間ARの内側に入ることなく、空間ARの外側に位置していることが好ましい。すなわち、空間ARは、入射経路70において、電子放出部52からの電子線Eが通る空間であり、壁部82Bは、この入射経路70において電子放出部52からの電子線Eが通る空間AR外にあることが好ましい。
【0065】
また、壁部82Bの端部82Bbは、X線放出部56の表面の近傍に位置しているが、X線放出部56の表面に接触せず、X線放出部56の表面から離れていることが好ましい。
【0066】
このように、第1軽元素部材82は、管部82Aと壁部82Bとを含むが、管部82Aと壁部82Bとの少なくとも一方を含めばよい。
【0067】
第2軽元素部材84は、出射経路72に設けられる。さらに言えば、第2軽元素部材84は、管状の部材であり、出射経路72の内周面に設けられ、出射経路72の内周面を覆う。第2軽元素部材84は、出射経路72の端部72Aから端部72Bまでにおいて、出射経路72の内周面を覆うことが好ましい。また、第2軽元素部材84は、出射経路72の端部72Aから、入射経路70と出射経路72とが交差する部分78までにわたって設けられ、端部72Aから部分78までにおいて、出射経路72の内周面を覆うことが好ましいともいえる。第2軽元素部材84は、出射経路72の形状に合わせて、端部72Aに向かうに従って、径が大きくなっている。
【0068】
第3軽元素部材86は、出射経路72に設けられる。さらに言えば、第3軽元素部材86は、板状(壁状)の部材であり、出射経路72の端部72Aに設けられる。第3軽元素部材86は、Z軸方向から見て、出射経路72の端部72Aに重なるように設けられ、Z軸方向から見て、出射経路72の端部72Aの全域に重なる。すなわち、第3軽元素部材86は、Z軸方向から見て、出射経路72を遮っている。ただし、第3軽元素部材86は、出射経路72の全域に重畳することに限られず、Z軸方向から見て、出射経路72の少なくとも一部に重なればよい。
【0069】
図5に示すように、電源60は、配線L1を介して電子源52Bに接続されている。また、筐体50、電子源筐体52A、及び中間電極52Cは、接地されることでグラウンド電位に保持されている。電源60は、グラウンド電位である中間電極52Cに対して負の電圧(例えば-225kV)を、電子源52Bに印加する。また、電源62は、配線L2を介してX線放出部56に接続されている。配線L2は、筐体50内において、配線収納部64に覆われている。電源62は、グラウンド電位である中間電極52Cに対して正の電圧(例えば+225kV)を、X線放出部56に印加する。従って、電子源52Bは、X線放出部56に対して大きな負の電圧(例えば-450kV)が印加されることとなる。なお、収納部54は、接地されることでグラウンド電位に保持されている。また、軽元素部材80は、収納部54と接触するため、収納部54を介して接地されて、グラウンド電位に保持されている。
【0070】
このように負の電圧を電子源52Bに印加し、電子源52Bに別途加熱電流を流すことによって、電子源52Bは加熱され、電子源52Bの先端から、電子線E(熱電子)が、照射される。すなわち、電子源52Bは、電源60により高電圧が印加されると、電子線Eを放出するカソードとして機能する。なお、上記説明の通り、本実施形態ではフィラメント加熱による熱電子を使用したカソードであるが、カソードを加熱することなく、カソードの周囲に強い電界を形成されることにより電子線Eを放出されるものや、ショットキー効果を利用したカソードなどであってもよい。
【0071】
図7及び
図8は、X線の発生を説明する模式図である。電子源52Bから放出された電子線Eは、電子源52BとX線放出部56との間の電位差(例えば450kV)により加速されながらX線放出部56に向かう。すなわち、電子源52Bから放出された電子線Eは、電子放出部52に備えられた不図示の電子光学部材により集束され、
図5に示すように、中間電極52Cの開口52D、筐体50の空間SPを通って、収納部54の入射経路70に入射する。
図7に示すように、電子線Eは、入射経路70の端部70Aから入射経路70内に入射し、入射経路70内を通ってX線放出部56の表面に照射される。X線放出部56は、電子線Eが照射されることで、+Z方向に向けて、X線XLを発生させる。X線放出部56が発生させるX線XLは、出射経路72の端部72Bから出射経路72内に入射し、出射経路72内を進行して、出射経路72の端部72Aから、収納部54の外部、すなわち筐体50の空間SPに出て、
図5に示すように、空間SPを通って、出射部50Bから、筐体50の外部に出射される。X線放出部56から放出されるX線XLは、円錐状のいわゆるコーンビーム状となっている。なお、X線放出部56に照射される電子線Eの進行方向は、軸AX1に沿っており、X線放出部56から放出されるX線XLの進行方向は、軸AX2に沿っている。従って、本実施形態において、X線放出部56に入射する電子線Eの進行方向と、X線放出部56から放出されるX線XLの進行方向とは、異なる。
【0072】
ここで、X線放出部56は、照射された電子線Eの一部を反射する場合がある。反射された電子線Eは、収納部54の内周面などに衝突し、収納部54からX線が発生する。また、収納部54でも電子線Eが反射され、反射された電子線Eが、収納部54の他の部分やX線放出部56に衝突し、そこからもX線が発生する場合がある。以下、X線放出部56から放出され、出射部50B及び測定物Sを透過して検出器5に到達するX線XLを、一次X線とし、一次X線以外のX線を、二次X線とする。すなわち、二次X線は、散乱光ということもでき、X線放出部56や収納部54で反射された電子線Eにより発生したX線などを含む。このような二次X線は、出射部50Bを通って検出器5に到達する場合がある。さらに、二次X線は、X線発生部の広がりが大きいため、例えば測定物Sを透過せずに検出器5に到達する場合もある。検出器5は、測定物Sを透過した一次X線に加え、このように測定物Sを透過せずに検出器5に到達した二次X線も検出するため、測定物Sの検出に誤差を生じさせるおそれがある。従って、測定物Sの検査精度の低下を抑えるためには、二次X線が検出器5に到達することを抑制することが有効となる。
【0073】
さらに言えば、反射された電子線Eが出射部50B側に向かうと、電子線Eが例えば出射経路72の内周面などにあたり、出射経路72の内周面から、出射部50B側、すなわち検出器5側に向かう二次X線が発生してしまう。従って、二次X線が検出器5に到達することを抑制するためには、出射部50B側に向かう電子線Eが、出射経路72の内周面などに当たることを抑制することが重要となる。本実施形態に係るX線発生装置2は、軽元素部材80によって出射部50B側に向かう電子線Eを吸収することで、検出器5に到達する二次X線の発生を抑制している。すなわち、軽元素部材80は、X線放出部56より原子番号が小さいため、電子線Eが照射されてもX線を発生させることなく、電子線Eを吸収することができる。さらに、軽元素部材80は、X線放出部56からのX線が出射部50Bに至る経路中に配置されている。従って、軽元素部材80は、出射部50Bに向かう電子線Eを受け止めて吸収することができる。そのため、本実施形態に係るX線発生装置2によると、検出器5に到達する二次X線の起因となる電子線Eを吸収して、二次X線が検出器5に到達することを抑制することができる。
【0074】
さらに、軽元素部材80は、入射経路70と出射経路72との間に配置された第1軽元素部材82を含む。第1軽元素部材82は、入射経路70と出射経路72との間に配置されることで、出射経路72の少なくとも一部を遮蔽する。従って、X線発生装置2は、出射経路72に向かう電子線E、すなわち出射部50Bに向かう電子線Eを、第1軽元素部材82で吸収することが可能となり、二次X線が検出器5に到達することを抑制することが可能となる。さらに、第1軽元素部材82の壁部82Bは、端部82Bbに向かうに従って、軸AX1に対して、-Z方向側(出射部50BからX線放出部56に向かう方向側)に傾斜している。従って、例えば軽元素部材80が、照射された電子線E1(
図7参照)の一部を反射した場合にも、反射された電子線E2(
図7参照)を入射経路70側に向かわせることが可能となり、反射された電子線E2がX線放出部56に照射されてX線放出部56から二次X線が発生することを抑制することができる。
【0075】
さらに、軽元素部材80の第1軽元素部材82は、入射経路70に配置された管部82Aを有する。入射経路70に管部82Aを設けることで、入射経路70の内周面に向けて照射される電子線E1を、管部82Aで吸収することが可能となり、入射経路70の内周面から二次X線が発生することを抑制することができる。
【0076】
さらに、軽元素部材80は、出射経路72の内周面に設けられる第2軽元素部材84を含む。従って、本実施形態に係るX線発生装置2によると、
図8に示すように、出射経路72の内周面に向けて照射される電子線E1を吸収して、出射経路72の内周面から二次X線が放出されることを抑制して、二次X線が検出器5に到達することを抑制することが可能となる。さらに、軽元素部材80は、出射経路72の端部72Aに設けられる第3軽元素部材86を含む。従って、本実施形態に係るX線発生装置2によると、
図8に示すように、出射経路72から出射される電子線E1を吸収することが可能となる。
【0077】
なお、軽元素部材80は、第1軽元素部材82と第2軽元素部材84と第3軽元素部材86との少なくとも1つを含むものであればよく、言い換えれば、X線放出部56からのX線が出射部50Bに至る経路中に配置されていればよい。軽元素部材80がX線放出部56からのX線が出射部50Bに至る経路中に配置されることで、検出器5に到達する二次X線の起因となる電子線Eを吸収して、二次X線が検出器5に到達することを抑制することができる。
【0078】
検出器5に到達するX線の強度の、シミュレーションによる算出結果を以下で説明する。
図9は、検出器に到達するX線の強度の、シミュレーションによる計算結果を説明する図である。シミュレーションとして、モンテカルロシミュレータを用いて、軸AX1とX線放出部56が交差するZ座標におけるXY平面でのX線の強度の二次元分布を算出した。
図9の画像Pは、検出器5に到達するX線情報から算出した、軸AX1とX線放出部56が交差するZ座標におけるXY平面でのX線の強度分布のシミュレーション結果の一例を示している。画像Pの中心Cは、X線の中心点を指し、例えば、軸AX2が重なる位置である。上述のように、二次X線は、一次X線よりもX線発生部の広がりが大きい。従って、画像Pに示すように、二次X線が検出器5に到達する場合、検出器5は、中心C近傍に収束する一次X線の像Paに加え、像Paよりも放射方向外側にある二次X線の像Pbを検出する。軽元素部材80を設けない場合、二次X線の検出器5への到達が抑制できないため、一次X線の強度(像Paの輝度)に対する、二次X線の強度(像Pbの輝度)の割合が高くなる。
【0079】
図10は、検出器に到達するX線の強度の、シミュレーションによる計算結果を説明するグラフである。
図10の横軸は、軸AX1とX線放出部56が交差するZ座標におけるXY平面における中心Cからの距離を指し、縦軸は、X線の強度比率を指す。すなわち、
図10は、XY平面の全域におけるX線の強度の合計値に対する、中心Cから距離が離れる毎のX線の強度の比率の、積算値を示している。一次X線は二次X線よりも中心C近傍に収束するため、二次X線の検出器5への到達が抑制されるほど、すなわち二次X線の強度の割合が小さいほど、X線の強度の比率の積算値は、中心Cから距離が近い側で高くなる。逆に、二次X線の検出器5への到達が抑制されない場合、X線の強度の比率の積算値は、中心Cから距離が近い側において低い値となる。
図10の線分Dは、本実施形態のように軽元素部材80を設けた場合のX線の強度比率を示し、
図10の線分DXは、比較例として、軽元素部材80を設けない場合のX線の強度比率を示している。線分Dに示すように、軽元素部材80を設けた場合、軽元素部材80を設けない線分DXと比較して、X線の強度の比率の積算値は、中心Cから距離が近い側で高くなっていることが分かる。すなわち、軽元素部材80を設けると、二次X線の検出器5への到達が抑制されることが、シミュレーションで示されているといえる。
【0080】
以上説明したように、本実施形態に係るX線発生装置2は、電子(電子線E)を放出する電子放出部52と、電子放出部52からの電子が照射されてX線を放出するX線放出部56と、X線放出部56からのX線が出射される出射部50Bを有する筐体50と、軽元素部材80と、を有する。軽元素部材80は、X線放出部56からのX線が出射部50Bに至る出射経路72に配置され、X線放出部56より原子番号が小さい元素を少なくとも一部に含む。本実施形態に係るX線発生装置2は、X線放出部56からのX線が出射部50Bに至る経路中に軽元素部材80を配置することで、検出器5に到達する二次X線の起因となる電子線Eを吸収して、二次X線が検出器5に到達することを抑制することができる。従って、本実施形態に係るX線発生装置2によると、測定物Sの検査精度の低下を抑えることができる。
【0081】
また、X線発生装置2は、X線放出部56を収納する収納部54を備え、収納部54内に出射経路72が形成され、出射経路72に軽元素部材80が配置される。本実施形態に係るX線発生装置2は、収納部54内に出射経路72を設けることで、出射経路72内に適切に軽元素部材80を配置できる。
【0082】
また、軽元素部材80(第2軽元素部材82)は、出射経路72の内周面に配置される。出射経路72に軽元素部材80を設けることで、出射経路72の内周面に向けて照射される電子線Eを吸収して、二次X線の発生を抑制することができる。
【0083】
また、出射経路72は、出射部50Bに向かうに従って内径が大きくなる。このように出射経路72の内径を出射部50Bに向けて大きくすることで、コーンビームであるX線XLを、適切に出射部50Bに導くことができる。
【0084】
また、X線発生装置2は、収納部54内に、X線放出部56からの電子(電子線E)がX線放出部56に至る入射経路70が形成される。軽元素部材80は、入射経路70と出射経路72との間に設けられる。本実施形態に係るX線発生装置2は、入射経路70と出射経路72との間に軽元素部材80を設けることで、出射部50Bに向かう電子線Eを吸収することが可能となり、二次X線が検出器5に到達することを抑制することが可能となる。
【0085】
また、X線発生装置2は、入射経路70と出射経路72とが交差する部分78に、軽元素部材80が配置される。交差する部分78に軽元素部材80を配置することで、出射部50Bに向かう電子線Eを吸収することが可能となり、二次X線が検出器5に到達することを抑制することが可能となる。
【0086】
また、X線発生装置2は、電子放出部52からの電子がX線放出部56に至る、筐体50内に配置される入射経路70と、X線放出部56からのX線が出射部50Bに至る、筐体50内に配置される出射経路72と、を備える。軽元素部材80(第1軽元素部材82)は、入射経路70と出射経路72との間に設けられる。本実施形態に係るX線発生装置2は、入射経路70と出射経路72との間に軽元素部材80を設けることで、出射部50Bに向かう電子線Eを吸収することが可能となり、二次X線が検出器5に到達することを抑制することが可能となる。
【0087】
また、入射経路70と出射経路72とは交差しており、軽元素部材80(第1軽元素部材82)は、入射経路70の延在方向(軸AX1)に沿って配置されている。軽元素部材80が軸AX1に沿って配置されることで、軽元素部材80から電子線Eが反射された場合でも、反射された電子線Eが電子放出部52に照射されることを抑えて、二次X線の発生を抑制することができる。
【0088】
また、軽元素部材80(第1軽元素部材82の管部82A)は、入射経路70に設けられる。入射経路70に軽元素部材80を設けることで、入射経路70の内周面に向けて照射される電子線Eを吸収して、二次X線の発生を抑制することができる。
【0089】
また、軽元素部材80は、導電性を有する部材であり、電気的に接地されている。軽元素部材80は、接地されることで、電子線Eが照射されても帯電が抑えられる。また、軽元素部材80は、真空状態でガス放出量が少ない材料であることが望ましい。
【0090】
また、筐体50は、内部を減圧または真空に保持する。筐体50の内部を減圧又は真空に保持することで、適切にX線XLを発生させることができる。
【0091】
また、本実施形態に係る検査装置100は、X線発生装置2と、出射部50Bから出射されるX線XLが照射される測定物Sを保持するステージ9と、測定物Sに照射されて透過したX線XLを検出する検出器5と、を備える。検査装置100は、X線発生装置2により、二次X線が検出器5に到達することを抑制して、測定対象となる測定物Sの検査精度の低下を抑制できる。
【0092】
なお、X線放出部56の形状は、以上説明したものに限られない。
図11は、X線発生装置の他の例を示す模式的な断面図である。
図5で示したX線放出部56は、円筒状であり回転しない構成であったが、
図11のX線放出部56aに示すように、円筒状でなく、回転する構成であってもよい。例えば、
図11のX線放出部56aは、円錐台形状となっており、円錐台の中心軸を中心として回転する。X線放出部56aは、円錐台の側面に電子線Eが照射され、側面からX線XLを発生させる。
【0093】
上記実施形態の検査装置100は、1台の装置で処理を行ったが複数組み合わせてもよい。
図12は、検査装置を有するシステムの構成を示す模式図である。次に、
図12を用いて、検査装置を有する製造システム300について説明する。製造システム300は、検査装置100と、複数台(
図12では2台)の検査装置100aと、プログラム作成装置302とを、有する。検査装置100、100a、プログラム作成装置302は、有線または無線の通信回線で接続されている。検査装置100aは検査装置100と同様の構成である。プログラム作成装置302は、上述した検査装置100の制御装置で作成する種々の設定やプログラムを作成する。プログラム作成装置302は、作成したプログラムや、データを検査装置100、100aに出力する。検査装置100aは、領域及び範囲の情報や検査プログラムを検査装置100や、プログラム作成装置302から取得し、取得したデータ、プログラムを用いて、処理を行う。製造システム300は、検査装置100や、プログラム作成装置302で作成したデータ、プログラムを用いて、検査装置100aで検査を実行することで、作成したデータ、プログラムを有効活用することができる。
【0094】
次に、上述した検査装置を備えた製造システムについて、
図13を参照して説明する。
図13は、製造システムのブロック構成図である。本実施形態の製造システム200は、上記の実施形態において説明したような検査装置100と、設計装置202と、成形装置203と、制御装置204と、リペア装置205とを備える。制御装置204は、内部構造記憶部210及び判断部211を備える。
【0095】
設計装置202は、測定物Sの形状や組成に関する設計情報を作成し、作成した設計情報を成形装置203に送信する。また、設計装置202は、作成した設計情報を制御装置204の内部構造記憶部210に記憶させる。
【0096】
成形装置203は、設計装置202から入力された設計情報に基づいて、測定物Sを作成する。検査装置100は、作成された測定物Sの内部構造を検査し、検査結果(例えば画像データ)を制御装置204へ送信する。
【0097】
制御装置204の内部構造記憶部210は、設計情報を記憶する。制御装置204の判断部211は、内部構造記憶部210から設計情報を読み出す。判断部211は、検査装置100から受信した測定物Sの形状の測定結果と、内部構造記憶部210から読み出した設計情報とを比較する。判断部211は、比較結果に基づき、測定物Sが設計情報通りに成形されたか否かを判定する。換言すれば、判断部211は、作成された測定物Sが良品であるか否かを判定する。判断部211は、測定物Sが設計情報通りに成形されていない場合に、測定物Sが修復可能であるか否か判定する。判断部211は、測定物Sが修復できる場合、比較結果に基づいて不良部位と修復内容を算出し、リペア装置205に不良部位を示す情報と修復内容を示す情報とを送信する。
【0098】
リペア装置205は、制御装置204から受信した不良部位を示す情報と修復内容を示す情報とに基づき、構造物の不良部位を修復する。
【0099】
図14は、製造システムによる処理の流れを示したフローチャートである。製造システム200は、まず、設計装置202が測定物Sに関する設計情報を作成する(ステップS101)。次に、成形装置203は、設計情報に基づいて測定物Sを作成する(ステップS102)。次に、検査装置100は、作成された測定物Sの形状を検査(測定)する(ステップS103)。次に、制御装置204の判断部211は、検査装置100で得られた検査結果と上記の設計情報とを比較することにより、測定物Sが設計情報通りに作成されたか否か検査する(ステップS104)。
【0100】
次に、制御装置204の判断部211は、作成された測定物Sが良品であるか否かを判定する(ステップS105)。製造システム200は、作成された測定物Sが良品であると判断部211が判定した場合(ステップS105でYes)、その処理を終了する。また、判断部211は、作成された測定物Sが良品でないと判定した場合(ステップS105でNo)、作成された測定物Sが修復できるか否か判定する(ステップS106)。
【0101】
製造システム200は、作成された測定物Sが修復できると判断部211が判定した場合(ステップS106でYes)、リペア装置205が測定物Sの修復を実施し(ステップS107)、ステップS103の処理に戻る。製造システム200は、作成された測定物Sが修復できないと判断部211が判定した場合(ステップS106でNo)、その処理を終了し、不良品を回収する。以上で、製造システム200は、
図14に示すフローチャートの処理を終了する。
【0102】
本実施形態の製造システム200は、上記の実施形態における検査装置100が測定物Sの内部構造を高精度に検査することができるので、作成された測定物Sが良品であるか否か判定することができる。また、製造システム200は、測定物Sが良品でない場合、測定物Sを修復することができる。
【0103】
なお、本実施形態におけるリペア装置205が実行するリペア工程は、成形装置203が成形工程を再実行する工程に置き換えられてもよい。その際には、制御装置204の判断部211が修復できると判定した場合、成形装置203は、成形工程を再実行する。
【0104】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。前述の実施形態の各構成要素は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。また、法令が許容される限りにおいて、前述の各実施形態で引用した検査装置などに関するすべての公開公報の開示を援用して本文の記載の一部とする。前述した実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態及び運用技術等は、すべて本実施形態の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0105】
1 測定装置
2 X線発生装置
5 検出器
50 筐体
50B 出射部
52 電子放出部
54 収納部
56 X線放出部
54C 空間
70 入射経路
72 出射経路
80 軽元素部材(部材)
82 第1軽元素部材
82A 管部
82B 壁部
84 第2軽元素部材
86 第3軽元素部材
100 検査装置
E 電子線
S 測定物
XL X線