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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】検出装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 27/146 20060101AFI20241022BHJP
   H10K 39/32 20230101ALI20241022BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20241022BHJP
   H10K 30/60 20230101ALI20241022BHJP
【FI】
H01L27/146 C
H10K39/32
H01L29/78 613Z
H01L29/78 617N
H10K30/60
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023043797
(22)【出願日】2023-03-20
(62)【分割の表示】P 2021514183の分割
【原出願日】2020-04-15
(65)【公開番号】P2023083277
(43)【公開日】2023-06-15
【審査請求日】2023-03-20
(31)【優先権主張番号】P 2019078926
(32)【優先日】2019-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 卓
(72)【発明者】
【氏名】内田 真
(72)【発明者】
【氏名】多田 正浩
(72)【発明者】
【氏名】望月 真里奈
(72)【発明者】
【氏名】加藤 博文
(72)【発明者】
【氏名】瀧本 昭雄
(72)【発明者】
【氏名】染谷 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】横田 知之
【審査官】渡邊 佑紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-167432(JP,A)
【文献】特開2012-227364(JP,A)
【文献】特開2009-044135(JP,A)
【文献】特開2004-200573(JP,A)
【文献】特開2004-179450(JP,A)
【文献】特開2004-170656(JP,A)
【文献】特開2001-109404(JP,A)
【文献】特開2001-109394(JP,A)
【文献】特開平11-352521(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0067385(US,A1)
【文献】国際公開第2008/062544(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/146
H10K 39/32
H01L 29/786
H10K 30/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトダイオードを有する光センサと、
前記フォトダイオードに接続されて前記フォトダイオードが検出した光量に応じた電荷が蓄積される容量素子と、
前記フォトダイオード及び前記容量素子に接続されて前記容量素子と信号線との間に介在する薄膜トランジスタとを備え、
前記薄膜トランジスタは、
遮光層と、
前記フォトダイオードと前記遮光層との間に設けられ、第1方向に延出した半導体層と、
前記半導体層と前記フォトダイオードとの間に設けられたソース電極と、
平面視において、前記半導体層と交差し、前記第1方向と交差する第2方向に延出したゲート電極と、を有し、
前記ゲート電極に対するゲート駆動信号の供給タイミングに応じて前記容量素子と前記信号線とを電気的に接続するよう動作することで前記光センサから前記信号線への出力タイミングを制御するために利用され、
平面視において、前記半導体層と前記ゲート電極とが重畳する領域にチャネル領域を有し、前記チャネル領域の両側にソース領域およびドレイン領域を有し、
前記ソース電極は、前記ソース領域に電気的に接続され、前記半導体層を挟んで前記遮光層と対向する位置において、前記チャネル領域と重畳し、
平面視において、前記チャネル領域における前記ソース電極の前記第2方向の幅は前記チャネル領域における前記遮光層の第2方向の幅よりも大きい、
検出装置。
【請求項2】
前記フォトダイオードは、平面視において、前記薄膜トランジスタと重畳する、
請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記フォトダイオードは、
光起電力効果を有する有機材料と、
前記有機材料に対して前記薄膜トランジスタ側に設けられる下部電極と、
前記有機材料に対して前記下部電極とは反対側に設けられる上部電極とを備え、
検出面に沿って並ぶ複数の前記フォトダイオードの各々の前記下部電極に対して前記有機材料の層及び前記上部電極の層が前記検出面に沿って連続する、
請求項1又は2に記載の検出装置。
【請求項4】
前記ソース電極は前記下部電極と電気的に接続される、
請求項3に記載の検出装置。
【請求項5】
前記薄膜トランジスタの前記ゲート電極は2つのサブゲート電極を備える
請求項1又は2に記載の検出装置。
【請求項6】
前記薄膜トランジスタは、前記ゲート電極が前記半導体層と前記フォトダイオードの間に設けられる、
請求項1又は2に記載の検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
指紋パターンや静脈パターンを検出可能な光センサが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-32005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光センサからの出力タイミングを制御するために薄膜トランジスタを利用する場合、半導体の光起電力効果による誤動作を抑制するために遮光が必要になる。一方、半導体を挟んで両面に遮光層を設けようとすると、遮光層の形成のためだけに製造工程が増大するため、係る製造工程の増大を抑制するための技術が求められていた。
【0005】
本発明は、より少ない製造工程で薄膜トランジスタの遮光を行う構成を設けることが可能な検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の検出装置は、フォトダイオードと、前記フォトダイオードに接続された薄膜トランジスタとを備え、前記薄膜トランジスタは、遮光層と、前記フォトダイオードと前記遮光層との間に設けられ、第1方向に延出した半導体層と、前記半導体層と前記フォトダイオードとの間に設けられたソース電極と、平面視において、前記半導体層と交差し、前記第1方向と交差する第2方向に延出したゲート電極と、を有し、平面視において、前記半導体層と前記ゲート電極とが重畳する領域にチャネル領域を有し、前記チャネル領域の両側にソース領域およびドレイン領域を有し、前記ソース電極は、前記ソース領域に電気的に接続され、前記半導体層を挟んで前記遮光層と対向する位置において、前記チャネル領域と重畳し、平面視において、前記チャネル領域における前記ソース電極の前記第2方向の幅は前記チャネル領域における前記遮光層の第2方向の幅よりも大きい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態1に係る検出装置を示す平面図である。
図2図2は、実施形態1に係る検出装置の構成例を示すブロック図である。
図3図3は、検出装置を示す回路図である。
図4図4は、複数の部分検出領域を示す回路図である。
図5A図5Aは、センサ部の拡大概略構成図である。
図5B図5Bは、図5AのQ-Q断面図である。
図6図6は、フォトダイオードに入射する光の波長と変換効率との関係を模式的に示すグラフである。
図7図7は、検出装置の動作例を表すタイミング波形図である。
図8図8は、図7における読み出し期間の動作例を表すタイミング波形図である。
図9図9は、検出装置のセンサ部の駆動と、光源の点灯動作との関係を説明するための説明図である。
図10図10は、実施形態1の第1変形例に係るセンサ部の駆動と、光源の点灯動作との関係を説明するための説明図である。
図11図11は、実施形態1に係る検出装置の、センサ部と、第1光源及び第2光源との関係を模式的に示す図である。
図12図12は、実施形態1に係る検出装置の、センサ部と、第1光源及び第2光源との関係を模式的に示す図である。
図13図13は、第2光源と、センサ部と、指内の血管との位置関係の例を示す模式図である。
図14図14は、指と対向するように設けられた複数のフォトダイオードが形成する面状の検出領域を平面視した場合において例示的に設定されたフォトダイオード内の複数の位置を示す模式図である。
図15図15は、図14に示す複数の位置で取得された検出信号の経時変化例を示すグラフである。
図16図16は、所定期間と、フォーカス処理で特定されたフォトダイオードからの出力との関係を説明するためのタイムチャートである。
図17図17は、実施形態1における脈波データの出力に係る処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図18図18は、グループ領域単位での脈波データの取得制御を説明するための模式図である。
図19図19は、グループ領域単位での脈波データの取得制御を説明するための模式図である。
図20図20は、複数の部分検出領域からの出力の平均化処理の例を示す説明図である。
図21図21は、実施形態2における脈波データの出力に係る処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図22図22は、実施形態3及び実施形態4における脈波データの出力に係る処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図23図23は、図22の初回処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図24図24は、実施形態3における図22の位置ずれ対応処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図25図25は、実施形態3の変形例における図22の位置ずれ対応処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図26図26は、実施形態4における図22の位置ずれ対応処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図27図27は、実施形態4の変形例における図22の位置ずれ対応処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図28図28は、手首に装着可能な形態の検出装置の主要構成例を示す模式図である。
図29図29は、図28に示す検出装置による血管の検出例を示す模式図である。
図30図30は、指とセンサ部との間にレンズが設けられる構成例を示す図である。
図31図31は、相互静電容量方式のセンサの主要構成例を示す模式図である。
図32図32は、自己静電容量方式のセンサの主要構成例を示す模式図である。
図33図33は、バンダナに搭載された検出装置のセンサ部の配置例を示す図である。
図34図34は、衣服に搭載された検出装置のセンサ部の配置例を示す図である。
図35図35は、粘着性シートに搭載された検出装置のセンサ部の配置例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0009】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る検出装置を示す平面図である。図1に示すように、検出装置1は、センサ基材21と、センサ部10と、ゲート線駆動回路15と、信号線選択回路16と、検出回路48と、制御回路122と、電源回路123と、第1光源基材51と、第2光源基材52と、少なくとも1つの第1光源61と、少なくとも1つの第2光源62と、を有する。
【0010】
センサ基材21には、フレキシブルプリント基板71を介して制御基板121が電気的に接続される。フレキシブルプリント基板71には、検出回路48が設けられている。制御基板121には、制御回路122及び電源回路123が設けられている。制御回路122は、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)である。制御回路122は、センサ部10、ゲート線駆動回路15及び信号線選択回路16に制御信号を供給して、センサ部10の検出動作を制御する。また、制御回路122は、第1光源61及び第2光源62に制御信号を供給して、第1光源61及び第2光源62の点灯又は非点灯を制御する。電源回路123は、センサ電源信号VDDSNS(図4参照)等の電圧信号をセンサ部10、ゲート線駆動回路15及び信号線選択回路16に供給する。また、電源回路123は、電源電圧を第1光源61及び第2光源62に供給する。
【0011】
センサ基材21は、検出領域AAと、周辺領域GAとを有する。検出領域AAは、センサ部10が有する複数のフォトダイオードPD(図4参照)が設けられた領域である。周辺領域GAは、検出領域AAの外周と、センサ基材21の端部との間の領域であり、フォトダイオードPDと重ならない領域である。
【0012】
ゲート線駆動回路15及び信号線選択回路16は、周辺領域GAに設けられる。具体的には、ゲート線駆動回路15は、周辺領域GAのうち第2方向Dyに沿って延在する領域に設けられる。信号線選択回路16は、周辺領域GAのうち第1方向Dxに沿って延在する領域に設けられ、センサ部10と検出回路48との間に設けられる。
【0013】
なお、第1方向Dxは、センサ基材21と平行な面内の一方向である。第2方向Dyは、センサ基材21と平行な面内の一方向であり、第1方向Dxと直交する方向である。なお、第2方向Dyは、第1方向Dxと直交しないで交差してもよい。また、第3方向Dzは、第1方向Dx及び第2方向Dyと直交する方向であり、センサ基材21の法線方向である。
【0014】
複数の第1光源61は、第1光源基材51に設けられ、第2方向Dyに沿って配列される。複数の第2光源62は、第2光源基材52に設けられ、第2方向Dyに沿って配列される。第1光源基材51及び第2光源基材52は、それぞれ、制御基板121に設けられた端子部124、125を介して、制御回路122及び電源回路123と電気的に接続される。
【0015】
複数の第1光源61及び複数の第2光源62は、例えば、無機LED(Light Emitting Diode)や、有機EL(OLED:Organic Light Emitting Diode)等が用いられる。複数の第1光源61及び複数の第2光源62は、それぞれ異なる波長の第1光L61及び第2光L62(図11等参照)を出射する。第1光L61と第2光L62は、それぞれ異なる発光極大波長を有する。発光極大波長とは、第1光L61及び第2光L62のそれぞれの波長と発光強度との関係を示す発光スペクトルにおいて、最大の発光強度を示す波長である。以後、単に波長の数値を記載した場合、想定された発光極大波長を示すものとする。
【0016】
第1光源61から出射された第1光L61は、主に指Fg等の被検出体の表面で反射されセンサ部10に入射する。これにより、センサ部10は、指Fg等の表面の凹凸の形状を検出することで指紋を検出することができる。第2光源62から出射された第2光L62は、主に指Fg等の内部で反射し又は指Fg等を透過してセンサ部10に入射する。これにより、センサ部10は、指Fg等の内部の生体に関する情報を検出できる。生体に関する情報とは、例えば、指Fgや掌の脈波、脈拍、血管像等である。
【0017】
一例として、第1光L61は、520nm以上600nm以下の波長を有し、第2光L62は、780nm以上900nm以下、例えば850nm程度の波長を有していてもよい。この場合、第1光L61は、青色又は緑色の可視光であり、第2光L62は、赤外光である。センサ部10は、第1光源61から出射された第1光L61に基づいて、指紋を検出することができる。第2光源62から出射された第2光L62は、指Fg等の被検出体の内部で反射し又は指Fg等を透過・吸収されてセンサ部10に入射する。これにより、センサ部10は、指Fg等の内部の生体に関する情報として脈波や血管像(血管パターン)を検出できる。
【0018】
又は、第1光L61は、600nm以上700nm以下、例えば660nm程度の波長を有し、第2光L62は、780nm以上900nm以下、例えば850nm程度の波長を有していてもよい。この場合、第1光源61から出射された第1光L61及び第2光源62から出射された第2光L62に基づいて、センサ部10は、生体に関する情報として、脈拍や血管像に加えて、血中酸素飽和度を検出することができる。このように、検出装置1は、第1光源61及び複数の第2光源62を有しているので、第1光L61に基づいた検出と、第2光L62に基づいた検出とを行うことで、種々の生体に関する情報を検出することができる。
【0019】
なお、図1に示す第1光源61及び第2光源62の配置は、あくまで一例であり適宜変更することができる。例えば、第1光源基材51及び第2光源基材52のそれぞれに、複数の第1光源61及び複数の第2光源62が配置されていてもよい。この場合、複数の第1光源61を含むグループと、複数の第2光源62を含むグループとが、第2方向Dyに並んで配置されていてもよいし、第1光源61と第2光源62とが交互に第2方向Dyに配置されていてもよい。また、第1光源61及び第2光源62が設けられる光源基材は1つ又は3つ以上であってもよい。
【0020】
図2は、実施形態1に係る検出装置の構成例を示すブロック図である。図2に示すように、検出装置1は、さらに検出制御部11と検出部40を有する。検出制御部11の機能の一部又は全部は、制御回路122に含まれる。また、検出部40のうち、検出回路48以外の機能の一部又は全部は、制御回路122に含まれる。
【0021】
センサ部10は、光電変換素子であるフォトダイオードPDを有する光センサである。センサ部10が有するフォトダイオードPDは、照射される光に応じた電気信号を信号線選択回路16へ出力する。信号線選択回路16は検出制御部11からの選択信号ASWに従い順次信号線SGLを選択する。これによって、当該電気信号は、検出信号Vdetとして検出部40へ出力される。また、センサ部10は、ゲート線駆動回路15から供給されるゲート駆動信号Vgclにしたがって検出を行う。
【0022】
検出制御部11は、ゲート線駆動回路15、信号線選択回路16及び検出部40にそれぞれ制御信号を供給し、これらの動作を制御する回路である。検出制御部11は、スタート信号STV、クロック信号CK、リセット信号RST1等の各種制御信号をゲート線駆動回路15に供給する。また、検出制御部11は、選択信号ASW等の各種制御信号を信号線選択回路16に供給する。また、検出制御部11は、各種制御信号を第1光源61及び第2光源62に供給して、それぞれの点灯及び非点灯を制御する。
【0023】
ゲート線駆動回路15は、各種制御信号に基づいて複数のゲート線GCL(図3参照)を駆動する回路である。ゲート線駆動回路15は、複数のゲート線GCLを順次又は同時に選択し、選択されたゲート線GCLにゲート駆動信号Vgclを供給する。これにより、ゲート線駆動回路15は、ゲート線GCLに接続された複数のフォトダイオードPDを選択する。
【0024】
信号線選択回路16は、複数の信号線SGL(図3参照)を順次又は同時に選択するスイッチ回路である。信号線選択回路16は、例えばマルチプレクサである。信号線選択回路16は、検出制御部11から供給される選択信号ASWに基づいて、選択された信号線SGLと検出回路48とを接続する。これにより、信号線選択回路16は、フォトダイオードPDの検出信号Vdetを検出部40に出力する。
【0025】
検出部40は、検出回路48と、信号処理部44と、座標抽出部45と、記憶部46と、検出タイミング制御部47と、画像処理部49と、出力処理部50とを備える。検出タイミング制御部47は、検出制御部11から供給される制御信号に基づいて、検出回路48と、信号処理部44と、座標抽出部45と、画像処理部49と、が同期して動作するように制御する。
【0026】
検出回路48は、例えばアナログフロントエンド回路(AFE、Analog Front End)である。検出回路48は、例えば、検出信号増幅部42及びA/D変換部43の機能を有する信号処理回路である。検出信号増幅部42は、検出信号Vdetを増幅する。A/D変換部43は、検出信号増幅部42から出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換する。
【0027】
信号処理部44は、検出回路48の出力信号に基づいて、センサ部10に入力された所定の物理量を検出する論理回路である。信号処理部44は、指Fgが検出領域AAに接触又は近接した場合に、検出回路48からの信号に基づいて指Fgや掌の表面の凹凸を検出できる。また、信号処理部44は、検出回路48からの信号に基づいて生体に関する情報を検出できる。生体に関する情報は、例えば、指Fgや掌の血管像、脈波、脈拍、血中酸素飽和度等である。
【0028】
ヒトの血中酸素飽和度を取得する場合、例えば、第1光L61として660nm(この範囲は500nm~700nm)が採用され、第2光L62として約850nm(この範囲は800nm~930nm)が採用される。ヘモグロビンが酸素を取り込んだ量によって光の吸収量が変化するので、照射した第1光L61、第2光L62から血液(ヘモグロビン)に吸収された光を差し引いた量の光をフォトダイオードPDで検出する。血中酸素のほとんどは赤血球中のヘモグロビンと可逆的に結合しており、ごく一部が血漿中に溶解している。より具体的には、血液全体として、その許容量の何%の酸素が結合しているかの値を酸素飽和度(SpO)と呼ぶ。第1光L61と第2光L62の2波長にて、照射した光から血液(ヘモグロビン)に吸収された光を差し引いた量から血中酸素飽和度を算出することが可能となる。
【0029】
また、信号処理部44は、複数のフォトダイオードPDにより同時に検出された検出信号Vdet(生体に関する情報)を取得し、これらを平均化する処理を実行してもよい。この場合、検出部40は、ノイズや、指Fg等の被検出体とセンサ部10との相対的な位置ずれに起因する測定誤差を抑制して、安定した検出が可能となる。
【0030】
記憶部46は、信号処理部44で演算された信号を一時的に保存する。記憶部46は、例えばRAM(Random Access Memory)、レジスタ回路等であってもよい。
【0031】
座標抽出部45は、信号処理部44において指の接触又は近接が検出されたときに、指等の表面の凹凸の検出座標を求める論理回路である。また、座標抽出部45は、指Fgや掌の血管の検出座標を求める論理回路である。画像処理部49は、センサ部10の各フォトダイオードPDから出力される検出信号Vdetを組み合わせて、指Fg等の表面の凹凸の形状を示す二次元情報及び指Fgや掌の血管の形状を示す二次元情報を生成する。なお、座標抽出部45及び画像処理部49は省略されてもよい。
【0032】
出力処理部50は、複数のフォトダイオードPDからの出力に基づいた処理を行う処理部として機能する。具体的には、実施形態の出力処理部50は、少なくとも、信号処理部44を経て取得された検出信号Vdetに基づいて、少なくとも脈波データを含むセンサ出力Voを出力する。実施形態では、後述する各フォトダイオードPDの検出信号Vdetの出力の変化(振幅)を示すデータを信号処理部44が出力し、どの出力がセンサ出力Voに採用されるかを出力処理部50が決定するが、この両方を信号処理部44又は出力処理部50が行うようにしてもよい。なお、出力処理部50は、座標抽出部45が求めた検出座標、画像処理部49が生成した二次元情報等をセンサ出力Voに含めるようにしてもよい。また、出力処理部50の機能は、他の構成(例えば、画像処理部49等)に統合されてもよい。
【0033】
尚、脈波等の検出装置を人体に装着すると、呼吸や姿勢の変化、人体の運動等に伴うノイズも検出されるため、信号処理部44は、必要に応じてノイズフィルタを設けてもよい。呼吸や姿勢の変化によって生じるノイズの周波数成分は例えば1Hz以下とされ、脈波の持つ周波数成分よりも十分に低い周波数であるため、ノイズフィルタとしてバンドパスフィルタを用いることで除去することができる。バンドパスフィルタは、例えば検出信号増幅器42に設けることができる。人体の運動等によって生じるノイズの周波数成分は例えば数Hz~100Hz程度とされ脈波の持つ周波数成分と重なる場合がある。しかし、この場合の周波数は一定の周波数ではなく周波数のゆらぎを有するため、ゆらぎ成分を有する周波数に対して除去を行うノイズフィルタを用いる。ゆらぎ成分を有する周波数を除去する方法の一例(第1のゆらぎ成分除去方法)として、脈波は人体の測定場所によってピーク値のタイムラグが生じるという性質を利用してもよい。すなわち、脈波は人体の測定箇所によってタイムラグが生じ、人体の運動等によって生じるノイズはタイムラグが生じないか、あるいは脈波に比べてタイムラグが小さい。従って、少なくとも2点の異なる場所において脈波を測定し、異なる複数の場所で測定されたピーク値が所定時間以内であればノイズとして除去する。この場合においても、ノイズによる波形と脈波による波形が偶然重なる場合が考えられるが、この場合は異なる複数の場所の一方の場所のみで2つの波形が重なることになるため、ノイズによる波形と脈波による波形の判別が可能となる。この処理は、例えば信号処理部44にて実施することができる。ゆらぎ成分を有する周波数を除去する方法の他の一例(第2のゆらぎ成分除去方法)として、信号処理部44にて位相が異なる周波数成分を除去する。この場合、例えば短時間フーリエ変換を行い、ゆらぎ成分を除去し、逆フーリエ変換を行ってもよい。更に、商用周波数電源(50Hz、60Hz)もノイズ源となるが、この場合も人体の運動等によって生じるノイズと同様に異なる複数の場所で測定されたピーク値のタイムラグが生じないか脈波によるタイムラグよりも小さい。このため、上記の第1のゆらぎ成分除去方法と同様の方法にてノイズ除去が可能である。あるいは、検出器の検出面と反対側の面にシールドを設けることで商用周波数電源によって生じるノイズを除去してもよい。
【0034】
次に、検出装置1の回路構成例について説明する。図3は、検出装置を示す回路図である。図4は、複数の部分検出領域を示す回路図である。なお、図4では、検出回路48の回路構成も併せて示している。
【0035】
図3に示すように、センサ部10は、マトリクス状に配列された複数の部分検出領域PAAを有する。複数の部分検出領域PAAには、それぞれフォトダイオードPDが設けられている。
【0036】
ゲート線GCLは、第1方向Dxに延在し、第1方向Dxに配列された複数の部分検出領域PAAと接続される。また、複数のゲート線GCL(1)、GCL(2)、…、GCL(8)は、第2方向Dyに配列され、それぞれゲート線駆動回路15に接続される。なお、以下の説明において、複数のゲート線GCL(1)、GCL(2)、…、GCL(8)を区別して説明する必要がない場合には、単にゲート線GCLと表す。また、図3では説明を分かりやすくするために、8本のゲート線GCLを示しているが、あくまで一例であり、ゲート線GCLは、M本(Mは8以上、例えばM=256)配列されていてもよい。
【0037】
信号線SGLは、第2方向Dyに延在し、第2方向Dyに配列された複数の部分検出領域PAAのフォトダイオードPDに接続される。また、複数の信号線SGL(1)、SGL(2)、…、SGL(12)は、第1方向Dxに配列されて、それぞれ信号線選択回路16及びリセット回路17に接続される。なお、以下の説明において、複数の信号線SGL(1)、SGL(2)、…、SGL(12)を区別して説明する必要がない場合には、単に信号線SGLと表す。
【0038】
また、説明を分かりやすくするために、12本の信号線SGLを示しているが、あくまで一例であり、信号線SGLは、N本(Nは12以上、例えばN=252)配列されていてもよい。また、センサの解像度は例えば508dpi(dot per inch)とされ、セル数は252×256とされる。また、図3では、信号線選択回路16とリセット回路17との間にセンサ部10が設けられている。これに限定されず、信号線選択回路16とリセット回路17とは、信号線SGLの同じ方向の端部にそれぞれ接続されていてもよい。また、1つのセンサの実質的な面積は例えば実質50×50μmとされ、検出領域AAの面積は例えば12.6×12.8mmとされる。
【0039】
ゲート線駆動回路15は、スタート信号STV、クロック信号CK、リセット信号RST1等の各種制御信号を、制御回路122(図1参照)から受け取る。ゲート線駆動回路15は、各種制御信号に基づいて、複数のゲート線GCL(1)、GCL(2)、…、GCL(8)を時分割的に順次選択する。ゲート線駆動回路15は、選択されたゲート線GCLにゲート駆動信号Vgclを供給する。これにより、ゲート線GCLに接続された複数の第1スイッチング素子Trにゲート駆動信号Vgclが供給され、第1方向Dxに配列された複数の部分検出領域PAAが、検出対象として選択される。
【0040】
なお、ゲート線駆動回路15は、指紋の検出及び異なる複数の生体に関する情報(脈波、脈拍、血管像、血中酸素飽和度等)のそれぞれの検出モードごとに、異なる駆動を実行してもよい。例えば、ゲート線駆動回路15は、複数のゲート線GCLを束ねて駆動してもよい。
【0041】
具体的には、ゲート線駆動回路15は、制御信号に基づいて、ゲート線GCL(1)、GCL(2)、…、GCL(8)のうち、所定数のゲート線GCLを同時に選択してもよい。例えば、ゲート線駆動回路15は、6本のゲート線GCL(1)からゲート線GCL(6)を同時に選択し、ゲート駆動信号Vgclを供給する。ゲート線駆動回路15は、選択された6本のゲート線GCLを介して、複数の第1スイッチング素子Trにゲート駆動信号Vgclを供給する。これにより、第1方向Dx及び第2方向Dyに配列された複数の部分検出領域PAAを含むグループ領域PAG1、PAG2が、それぞれ検出対象として選択される。ゲート線駆動回路15は、所定数のゲート線GCLを束ねて駆動し、所定数のゲート線GCLごとに順次ゲート駆動信号Vgclを供給する。以下、グループ領域PAG1,PAG2のようにそれぞれ異なるグループ領域の各々の位置を特に区別しない場合、グループ領域PAGと記載する。
【0042】
信号線選択回路16は、複数の選択信号線Lselと、複数の出力信号線Loutと、第3スイッチング素子TrSと、を有する。複数の第3スイッチング素子TrSは、それぞれ複数の信号線SGLに対応して設けられている。6本の信号線SGL(1)、SGL(2)、…、SGL(6)は、共通の出力信号線Lout1に接続される。6本の信号線SGL(7)、SGL(8)、…、SGL(12)は、共通の出力信号線Lout2に接続される。出力信号線Lout1、Lout2は、それぞれ検出回路48に接続される。
【0043】
ここで、信号線SGL(1)、SGL(2)、…、SGL(6)を第1信号線ブロックとし、信号線SGL(7)、SGL(8)、…、SGL(12)を第2信号線ブロックとする。複数の選択信号線Lselは、1つの信号線ブロックに含まれる第3スイッチング素子TrSのゲートにそれぞれ接続される。また、1本の選択信号線Lselは、複数の信号線ブロックの第3スイッチング素子TrSのゲートに接続される。
【0044】
具体的には、選択信号線Lsel1、Lsel2、…、Lsel6は、それぞれ信号線SGL(1)、SGL(2)、…、SGL(6)に対応する第3スイッチング素子TrSと接続される。また、選択信号線Lsel1は、信号線SGL(1)に対応する第3スイッチング素子TrSと、信号線SGL(7)に対応する第3スイッチング素子TrSと、に接続される。選択信号線Lsel2は、信号線SGL(2)に対応する第3スイッチング素子TrSと、信号線SGL(8)に対応する第3スイッチング素子TrSと、に接続される。
【0045】
制御回路122(図1参照)は、選択信号ASWを順次選択信号線Lselに供給する。これにより、信号線選択回路16は、第3スイッチング素子TrSの動作により、1つの信号線ブロックにおいて信号線SGLを時分割的に順次選択する。また、信号線選択回路16は、複数の信号線ブロックでそれぞれ1本ずつ信号線SGLを選択する。このような構成により、検出装置1は、検出回路48を含むIC(Integrated Circuit)の数、又はICの端子数を少なくすることができる。
【0046】
なお、信号線選択回路16は、複数の信号線SGLを束ねて検出回路48に接続してもよい。具体的には、制御回路122(図1参照)は、選択信号ASWを同時に選択信号線Lselに供給する。これにより、信号線選択回路16は、第3スイッチング素子TrSの動作により、1つの信号線ブロックにおいて複数の信号線SGL(例えば6本の信号線SGL)を選択し、複数の信号線SGLと検出回路48とを接続する。これにより、各グループ領域PAGで検出された信号が検出回路48に出力される。この場合、グループ領域PAG単位で複数の部分検出領域PAA(フォトダイオードPD)からの信号が統合されて検出回路48に出力される。
【0047】
ゲート線駆動回路15及び信号線選択回路16の動作により、グループ領域PAGごとに検出を行うことで、1回の検出で得られる検出信号Vdetの強度が向上するのでセンサ感度を向上させることができる。また、検出に要する時間を短縮することができる。このため、検出装置1は、検出を短時間で繰り返し実行することができるので、S/N比を向上させることができ、又、脈波等の生体に関する情報の時間的な変化を精度よく検出することができる。
【0048】
図3に示すように、リセット回路17は、基準信号線Lvr、リセット信号線Lrst及び第4スイッチング素子TrRを有する。第4スイッチング素子TrRは、複数の信号線SGLに対応して設けられている。基準信号線Lvrは、複数の第4スイッチング素子TrRのソース又はドレインの一方に接続される。リセット信号線Lrstは、複数の第4スイッチング素子TrRのゲートに接続される。
【0049】
制御回路122は、リセット信号RST2をリセット信号線Lrstに供給する。これにより、複数の第4スイッチング素子TrRがオンになり、複数の信号線SGLは基準信号線Lvrと電気的に接続される。電源回路123は、基準信号COMを基準信号線Lvrに供給する。これにより、複数の部分検出領域PAAに含まれる容量素子Ca(図4参照)に基準信号COMが供給される。
【0050】
図4に示すように、部分検出領域PAAは、フォトダイオードPDと、容量素子Caと、第1スイッチング素子Trとを含む。図4では、複数のゲート線GCLのうち、第2方向Dyに並ぶ2つのゲート線GCL(m)、GCL(m+1)を示す。また、複数の信号線SGLのうち、第1方向Dxに並ぶ2つの信号線SGL(n)、SGL(n+1)を示す。部分検出領域PAAは、ゲート線GCLと信号線SGLとで囲まれた領域である。第1スイッチング素子Trは、フォトダイオードPDに対応して設けられる。第1スイッチング素子Trは、薄膜トランジスタにより構成されるものであり、この例では、nチャネルのMOS(Metal Oxide Semiconductor)型のTFT(Thin Film Transistor)で構成されている。
【0051】
第1方向Dxに並ぶ複数の部分検出領域PAAに属する第1スイッチング素子Trのゲートは、ゲート線GCLに接続される。第2方向Dyに並ぶ複数の部分検出領域PAAに属する第1スイッチング素子Trのソースは、信号線SGLに接続される。第1スイッチング素子Trのドレインは、フォトダイオードPDのカソード及び容量素子Caに接続される。
【0052】
フォトダイオードPDのアノードには、電源回路123からセンサ電源信号VDDSNSが供給される。また、信号線SGL及び容量素子Caには、電源回路123から、信号線SGL及び容量素子Caの初期電位となる基準信号COMが供給される。
【0053】
部分検出領域PAAに光が照射されると、フォトダイオードPDには光量に応じた電流が流れ、これにより容量素子Caに電荷が蓄積される。第1スイッチング素子Trがオンになると、容量素子Caに蓄積された電荷に応じて、信号線SGLに電流が流れる。信号線SGLは、信号線選択回路16の第3スイッチング素子TrSを介して検出回路48に接続される。これにより、検出装置1は、部分検出領域PAAごとに、又はグループ領域PAGごとにフォトダイオードPDに照射される光の光量に応じた信号を検出できる。
【0054】
検出回路48は、読み出し期間Pdet(図7参照)にスイッチSSWがオンになり、信号線SGLと接続される。検出回路48の検出信号増幅部42は、信号線SGLから供給された電流の変動を電圧の変動に変換して増幅する。検出信号増幅部42の非反転入力部(+)には、固定された電位を有する基準電位(Vref)が入力され、反転入力端子(-)には、信号線SGLが接続される。実施形態1では、基準電位(Vref)として基準信号COMと同じ信号が入力される。また、検出信号増幅部42は、容量素子Cb及びリセットスイッチRSWを有する。リセット期間Prst(図7参照)において、リセットスイッチRSWがオンになり、容量素子Cbの電荷がリセットされる。
【0055】
次に、センサ部10の製造方法の概略及びフォトダイオードPDの形成プロセス(OPD形成プロセス)について説明する。図5Aは、センサ部10の拡大概略構成図である。図5Bは、図5AのQ-Q断面図である。
【0056】
(製造方法の概略)
センサ部10の製造方法の概略を述べる。センサ基材21に成膜されたポリイミド25上に積層されたアンダーコート26、遮光層27及びインシュレータ上に、LTPS(Low Temperature Polysilicon)22を含むバックプレーンBPを形成する。ポリイミド25の厚みは、例えば10μmである。バックプレーンBPを形成するためのデバイスは、バックプレーンBPを形成するための全てのプロセスが終了後にLLO(Laser lift off)でセンサ基材から剥離する。バックプレーンBPは、第1スイッチング素子Trとして機能する。なお、実施形態では、半導体層としてLTPS22が採用されているが、これに限られるものでなく、アモルファスシリコン等、他の半導体によってもよい。
【0057】
各第1スイッチング素子Trは、2個のNMOSトランジスタが接続されたダブルゲートTFTから構成されている。当該NMOSは、例えば、チャネル長4.5μm、チャネル幅2.5μm、移動度約40~70cm/Vsである。LTPSのTFTの形成に係り、まず一酸化珪素(SiO)、窒化ケイ素(SiN)、SiO、アモルファスシリコン(a-Si)の4つの材料を用いて成膜した後に、エキシマレーザーによるアニールでa-Siを結晶化させてポリシリコンを形成する。また、周りのドライバ部分の回路は、PMOSトランジスタとNMOSトランジスタからなるCMOS(Complementary MOS)回路で形成されている。当該PMOSトランジスタは、例えば、チャネル長4.5μm、チャネル幅3.5μm、移動度約40~70cm/Vsである。当該NMOSトランジスタは、例えば、前述と同様、チャネル長4.5μm、チャネル幅2.5μm、移動度約40~70cm/Vsである。ポリシリコンの形成後に、ホウ素(Boron:B)とリン(Phosphorus:P)をドーピングすることで、PMOSとNMOSの電極を形成する。
【0058】
その後、絶縁膜23aとしてSiOが成膜され、ダブルゲートTFTの2個のゲート電極GA,GBとしてモリブデンタングステン合金(MoW)が成膜される。絶縁膜23aの厚みは、例えば70nmである。ゲート電極GA,GBを形成するためのMoWの厚みは、例えば250nmである。
【0059】
MoWの成膜後、中間膜23bが成膜され、ソース電極28a、ドレイン電極28bを形成するための電極層28が成膜される。電極層28は、例えばアルミニウム合金である。なお、ソース電極28a、ドレイン電極28bと、ドーピングによって形成されたLTPS22のPMOS、NMOSの電極との接続を行うためのビアV1、ビアV2がドライエッチングによって形成される。絶縁膜23aと中間膜23bは、ゲート線GCLとして機能するゲート電極GA,GBと、LTPS22及び電極層28とを隔てる絶縁層23として機能する。
【0060】
このようにして形成されたバックプレーンBPは、遮光層27に対してフォトダイオードPD側に積層されるLTPS22と、LTPS22とフォトダイオードPDとの間に積層されて第1スイッチング素子Trのソース電極28a及びドレイン電極28bが形成される電極層28と、を含む。ソース電極28aは、LTPS22を挟んで遮光層27と対向する位置に延出する。
【0061】
バックプレーンBPを製造後、上部に有機フォトディテクタの層を形成するために、厚さ2μmの平滑層29が形成される。図示しないが、平滑層29に、さらに封止膜が形成される。また、バックプレーンBPとフォトダイオードPDとの接続を行う為のビアV3がエッチングによって形成される。
【0062】
次に、大気安定な逆型構造の有機フォトダイオード(Organic Photodiode:OPD)をフォトダイオードPDとしてバックプレーンBP上部に形成する。有機センサであるセンサ部10のフォトダイオードPDのアクティブ層31は、近赤外光(例えば、波長850nmの光)に感度を持つ材料を用いている。透明電極であるカソード電極35にはITO(Indium Tin Oxide)を用いており、ビアV3を通じてバックプレーンBPと接続されている。さらに、図示しないが、ITOの表面に酸化亜鉛(Zinc Oxide:ZnO)層35aを形成することで、電極の仕事関数を調整している。
【0063】
有機フォトダイオードは、種類の異なる有機半導体材料を活性層にして、2つ別なデバイスを作製している。具体的には、種類の異なる有機半導体材料として、PMDPP3T(Poly[[2,5-bis(2-hexyldecyl)-2,3,5,6-tetrahydro-3,6-dioxopyrrolo[3,4-c]pyrrole-1,4-diyl]-alt-[3‘,3’‘-dimethyl-2,2’:5‘,2’‘-terthiophene]-5,5’‘-diyl])とSTD-001(住友化学)の2種類の材料を用いる。それぞれの材料をフェニルC61酪酸メチルエステル( [6,6]-Phenyl-C61-Butyric Acid Methyl Ester:PCBM)と混合して成膜することでバルクヘテロ構造を実現している。さらに、アノード電極34として、ポリチオフェン系導電性ポリマー(PEDOT:PSS)と銀(Ag)を成膜する。図示しないが、有機フォトダイオードは、厚さ1μmのパリレンで封止を行っており、アナログフロントエンド(Analog Front End:AFE)が実装されたフレキ基板との接続のためにコンタクトパッドとしてクロム及び金(Cr/Au)が上部に成膜されている。
【0064】
封止膜としてパレリンを用いたが、二酸化珪素(SiO)や酸窒化珪素(SiON)であってもよい。アノード電極34としてPEDOT:PSSを10nm、Agを80nm積層したが、膜厚の範囲は、PEDOT:PSSに関し10~30nm、Agに関し10~100nmであってもよい。PEDOT:PSSに関しては、酸化モリブデン(MoOx)などが代替材料として挙げられ、Agに関しては、アルミニウム(Al)や金(Au)などが代替材料として挙げられる。カソード電極35はITO上にZnOを形成しているが、ITO上にポリエチレンイミン(Polyethylenimine:PEI)やエトキシ化PEI(PEI Ethoxylation:PEIE)といったポリマー形成でもよい。
【0065】
(OPD形成プロセス)
チップの表面を300W、10秒(sec)の条件でO2プラズマ処理を行う。次に、ZnO層をスピンコート条件5000rpm、30秒(sec)で成膜し、180℃で30分(min)アニールを行う。ZnO表面に有機層として、PMDPP3T:PCBM溶液またはSTD-001:PCBM溶液をそれぞれ250rpm、4minでスピンコートする。その後、窒素雰囲気化においてPEDOT:PSS(例えば、Al4083)をイソプロピルアルコール(IsoPropyl Alcohol:IPA)で(3:17)に希釈した溶液を0.45μmのPVDFフィルターで濾過した後、2000rpmで30秒(sec)の条件でスピンコート法により成膜する。成膜後、窒素雰囲気化で80℃、5分(min)アニールを行う。最後に、アノード電極34として銀を80nm真空蒸着する。デバイスが完成後、封止膜として1μmのパリレンをCVD(Chemical Vapor Deposition)法にて成膜し、コンタクトパッドとしてCr/Auを真空蒸着する。
【0066】
なお、係る形成プロセスによるフォトダイオードPDは、光起電力効果を有する有機材料であるアクティブ層31と、アクティブ層31に対してバックプレーンBP側に設けられるカソード電極35と、アクティブ層31に対してカソード電極35とは反対側に設けられるアノード電極34とを備える。光を検出可能に設けられたセンサ部10の検出面に沿って並ぶ複数のフォトダイオードPD(図3図4等参照)の各々のカソード電極35に対して、アクティブ層31の層及びアノード電極34の層が検出面に沿って連続する(図5B参照)。すなわち、カソード電極35が各々のフォトダイオードPDで独立して設けられ、アクティブ層31及びアノード電極34は検出領域AAの全域に渡って連続する。
【0067】
図6は、フォトダイオードに入射する光の波長と変換効率との関係を模式的に示すグラフである。図6に示すグラフの横軸は、フォトダイオードPDに入射する光の波長であり、縦軸は、フォトダイオードPDの外部量子効率である。外部量子効率は、例えば、フォトダイオードPDに入射する光の光量子数と、フォトダイオードPDから外部の検出回路48に流れる電流との比で表される。
【0068】
図6に示すように、フォトダイオードPDは、300nmから1000nm程度の波長帯で良好な効率を有する。すなわち、フォトダイオードPDは、第1光源61から出射される第1光L61及び第2光源62から出射される第2光L62の両方の波長に対して感度を有している。このため、1つのフォトダイオードPDで、異なる波長を有する複数の光を検出することができる。
【0069】
次に、検出装置1の動作例について説明する。図7は、検出装置の動作例を表すタイミング波形図である。図7に示すように、検出装置1は、リセット期間Prst、有効露光期間Pex及び読み出し期間Pdetを有する。電源回路123は、リセット期間Prst、有効露光期間Pex及び読み出し期間Pdetに亘って、センサ電源信号VDDSNSをフォトダイオードPDのアノードに供給する。センサ電源信号VDDSNSはフォトダイオードPDのアノード-カソード間に逆バイアスを印加する信号である。例えば、フォトダイオードPDのカソードには実質0.75Vの基準信号COMが印加されているが、アノードに実質-1.25Vのセンサ電源信号VDDSNSを印加することにより、アノード-カソード間は実質2.0Vで逆バイアスされる。また、850nmの波長を検出するとき、2Vの逆バイアスを印加することで、フォトダイオードPDは0.5A/W以上0.7A/W以下、好ましくは0.57A/W程度の高感度を得ることができる。また、フォトダイオードの特性は、2Vの逆バイアスを印加時に暗電流密度(dark current density)が1.0×10-7A/cmであり、出力が実質2.9mW/cmの850nmの波長の光を検出するときに光電流密度(photocurrent density)が1.2×10-3A/cmとなるものを使用する。また、850nmの波長の光を照射時、逆バイアス2V印加時に、外部量子効率(EQE)は約1.0になる。制御回路122は、リセット信号RST2を”H”とした後にゲート線駆動回路15にスタート信号STVおよびクロック信号CKを供給し、リセット期間Prstが開始する。リセット期間Prstにおいて、制御回路122は、基準信号COMをリセット回路17に供給し、リセット信号RST2によってリセット電圧を供給するための第4スイッチングトランジスタTrRをオンさせる。これにより各信号線SGLにはリセット電圧として基準信号COMが供給される。基準信号COMは、例えば0.75Vとされる。
【0070】
リセット期間Prstにおいて、ゲート線駆動回路15は、スタート信号STV、クロック信号CK及びリセット信号RST1に基づいて、順次ゲート線GCLを選択する。ゲート線駆動回路15は、ゲート駆動信号Vgcl{Vgcl(1)~Vgcl(M)}をゲート線GCLに順次供給する。ゲート駆動信号Vgclは、高レベル電圧である電源電圧VDDと低レベル電圧である電源電圧VSSとを有するパルス状の波形を有する。図7では、M本(例えばM=256)のゲート線GCLが設けられており、各ゲート線GCLに、ゲート駆動信号Vgcl(1)、…、Vgcl(M)が順次供給され、複数の第1スイッチング素子Trは各行毎に順次導通され、リセット電圧が供給される。リセット電圧として例えば、基準信号COMの電圧0.75Vが供給される。
【0071】
これにより、リセット期間Prstでは、全ての部分検出領域PAAの容量素子Caは、順次信号線SGLと電気的に接続されて、基準信号COMが供給される。この結果、容量素子Caの容量に蓄積された電荷がリセットされる。尚、部分的にゲート線、および信号線SGLを選択することにより部分検出領域PAAのうち一部の容量素子Caの容量をリセットすることも可能である。
【0072】
露光するタイミングの例として、ゲート線走査時露光制御方法と常時露光制御方法がある。ゲート線走査時露光制御方法においては、検出対象のフォトダイオードPDに接続された全てのゲート線GCLにゲート駆動信号{Vgcl(1)~(M)}が順次供給され、検出対象の全てのフォトダイオードPDにリセット電圧が供給される。その後、検出対象のフォトダイオードPDに接続された全てのゲート線GCLが低電圧(第1スイッチング素子Trがオフ)になると露光が開始され、有効露光期間Pexの間に露光が行われる。露光が終了すると前述のように検出対象のフォトダイオードPDに接続されたゲート線GCLにゲート駆動信号{Vgcl(1)~(M)}が順次供給され、読み出し期間Pdetに読み出しが行われる。常時露光制御方法においては、リセット期間Prst、読み出し期間においても露光を行う制御(常時露光制御)をすることも可能である。この場合は、ゲート駆動信号Vgcl(M)がゲート線GCLに供給された後に、有効露光期間Pex(1)が開始する。ここで、有効露光期間Pex{(1)・・・(M)}とはフォトダイオードPDから容量Caへ充電される期間とされる。なお、各ゲート線GCLに対応する部分検出領域PAAでの、実際の有効露光期間Pex(1)、…、Pex(M)は、開始のタイミング及び終了のタイミングが異なっている。有効露光期間Pex(1)、…、Pex(M)は、それぞれ、リセット期間Prstでゲート駆動信号Vgclが高レベル電圧の電源電圧VDDから低レベル電圧の電源電圧VSSに変化したタイミングで開始される。また、有効露光期間Pex(1)、…、Pex(M)は、それぞれ、読み出し期間Pdetでゲート駆動信号Vgclが電源電圧VSSから電源電圧VDDに変化したタイミングで終了する。各有効露光期間Pex(1)、…、Pex(M)の露光時間の長さは等しい。
【0073】
ゲート線走査時露光制御方法において、有効露光期間Pexでは、各部分検出領域PAAで、フォトダイオードPDに照射された光に応じて電流が流れる。この結果、各容量素子Caに電荷が蓄積される。
【0074】
読み出し期間Pdetが開始する前のタイミングで、制御回路122は、リセット信号RST2を低レベル電圧にする。これにより、リセット回路17の動作が停止する。尚、リセット信号はリセット期間Prstのみ高レベル電圧としてもよい。読み出し期間Pdetでは、リセット期間Prstと同様に、ゲート線駆動回路15は、ゲート線GCLにゲート駆動信号Vgcl(1)、…、Vgcl(M)を順次供給する。
【0075】
具体的には、ゲート線駆動回路15は、期間V(1)において、ゲート線GCL(1)に、高レベル電圧(電源電圧VDD)のゲート駆動信号Vgcl(1)を供給する。制御回路122は、ゲート駆動信号Vgcl(1)が高レベル電圧(電源電圧VDD)の期間に、選択信号ASW1、…、ASW6を、信号線選択回路16に順次供給する。これにより、ゲート駆動信号Vgcl(1)により選択された部分検出領域PAAの信号線SGLが順次、又は同時に検出回路48に接続される。この結果、検出信号Vdetが部分検出領域PAAごとに検出回路48に供給される。尚、ゲート駆動信号Vgcl(1)が高レベルになってから、最初の選択信号ASW1の供給が開始されるまでの時間は、一例として約20μs(実質20μs)とされ、各々の選択信号ASW1、…、ASW6が供給される時間は、一例として約60μs(実質60μs)とされる。このような高速応答性は、移動度が実質40cm/Vsの低温ポリシリコン(LTPS)を用いた薄膜トランジスタ(TFT)を用いることで実現可能となる。
【0076】
同様に、ゲート線駆動回路15は、期間V(2)、…、V(M-1)、V(M)において、ゲート線GCL(2)、…、GCL(M-1)、GCL(M)に、それぞれ高レベル電圧のゲート駆動信号Vgcl(2)、…、Vgcl(M-1)、Vgcl(M)を供給する。すなわち、ゲート線駆動回路15は、期間V(1)、V(2)、…、V(M-1)、V(M)ごとに、ゲート線GCLにゲート駆動信号Vgclを供給する。各ゲート駆動信号Vgclが高レベル電圧となる期間ごとに、信号線選択回路16は選択信号ASWに基づいて、順次信号線SGLを選択する。信号線選択回路16は、信号線SGLごとに順次、1つの検出回路48に接続する。これにより、読み出し期間Pdetで、検出装置1は、全ての部分検出領域PAAの検出信号Vdetを検出回路48に出力することができる。
【0077】
図8は、図7における読み出し期間Readoutに含まれる1つのゲート線の駆動期間の動作例を表すタイミング波形図である。以下、図8を参照して、図7における1つのゲート駆動信号Vgcl(j)の供給期間Readout中の動作例について説明する。図7では、最初のゲート駆動信号Vgcl(1)に供給期間Readoutの符号を付しているが、他のゲート駆動信号Vgcl(2)、…、Vgcl(M)についても同様である。jは、1からMのいずれかの自然数である。
【0078】
図8および図4に示すように、第3スイッチング素子TrSの出力(Vout)は予め基準電位(Vref)にリセットされている。基準電位(Vref)はリセット電圧とされ、例えば0.75Vとされる。次にゲート駆動信号Vgcl(j)がハイレベルとなり当該行の第1スイッチング素子Trがオンし、各行の信号線SGLは当該部分検出領域PAAの容量(容量素子Ca)に蓄積された電荷に応じた電圧になる。ゲート駆動信号Vgcl(j)の立ち上がりから期間t1の経過後、選択信号ASW(k)がハイになる期間t2が生じる。選択信号ASW(k)がハイになって第3スイッチング素子TrSがオンすると、当該第3スイッチング素子TrSを介して検出回路48と接続されている部分検出領域PAAの容量(容量素子Ca)に充電された電荷により、第3スイッチング素子TrSの出力(Vout)(図4参照)が当該部分検出領域PAAの容量(容量素子Ca)に蓄積された電荷に応じた電圧に変化する(期間t3)。図8の例では期間t3のようにこの電圧はリセット電圧から下がっている。その後、スイッチSSWがオン(SSW信号のハイレベル期間t4)すると当該部分検出領域PAAの容量(容量素子Ca)に蓄積された電荷が検出回路48の検出信号増幅部42の容量(容量素子Cb)へ移動し、検出信号増幅部42の出力電圧は容量素子Cbに蓄積された電荷に応じた電圧となる。このとき検出信号増幅部42の反転入力部はオペアンプのイマジナリショート電位となるため、基準電位(Vref)に戻っている。検出信号増幅部42の出力電圧はA/D変換部43で読み出す。図8の例では、各列の信号線SGLに対応する選択信号ASW(k)、ASW(k+1)、…の波形がハイになって第3スイッチング素子TrSを順次オンさせ、同様の動作を順次行うことで当該ゲート線GCLに接続された部分検出領域PAAの容量(容量素子Ca)に蓄積された電荷を順次読み出している。なお図8におけるASW(k)、ASW(k+1)…は、例えば、図7におけるASW1~6のいずれかである。
【0079】
具体的には、スイッチSSWがオンになる期間t4が生じると、部分検出領域PAAの容量(容量素子Ca)から検出回路48の検出信号増幅部42の容量(容量素子Cb)へ電荷が移動する。このとき検出信号増幅部42の非反転入力(+)は、基準電位(Vref)(例えば、0.75[V])にバイアスされている。このため、検出信号増幅部42の入力間のイマジナリショートにより第3スイッチング素子TrSの出力(Vout)も基準電位(Vref)になる。また、容量素子Cbの電圧は、選択信号ASW(k)に応じて第3スイッチング素子TrSがオンした箇所の部分検出領域PAAの容量(容量素子Ca)に蓄積された電荷に応じた電圧となる。検出信号増幅部42の出力は、イマジナリショートによって第3スイッチング素子TrSの出力(Vout)が基準電位(Vref)になった後に、容量素子Cbの電圧に応じた容量になり、この出力電圧をA/D変換部43で読み取る。なお、容量素子Cbの電圧とは、例えば、容量素子Cbを構成するコンデンサに設けられる2つの電極間の電圧である。
【0080】
なお、期間t1は、例えば20[μs]である。期間t2は、例えば60[μs]である。期間t3は、例えば44.7[μs]である。期間t4は、例えば0.98[μs]である。
【0081】
なお、図7及び図8では、ゲート線駆動回路15がゲート線GCLを個別に選択する例を示したが、これに限定されない。ゲート線駆動回路15は、2以上の所定数のゲート線GCLを同時に選択し、所定数のゲート線GCLごとに順次ゲート駆動信号Vgclを供給してもよい。また、信号線選択回路16も、2以上の所定数の信号線SGLを同時に1つの検出回路48に接続してもよい。また更には、ゲート線駆動回路15は、複数のゲート線GCLを間引いて走査してもよい。また、ダイナミックレンジは一例として、露光時間Pexが約4.3msのときに約10となる。また、フレームレートを約4.4fps(実質4.4fps)とすることで高解像度を実現することができる。
【0082】
また、検出装置1は、静電容量にて指紋を検出可能である。具体的には、容量素子Caを用いる。まず、全ての容量素子Caに所定の電荷を充電させる。その後、指Fgが検出領域AAに触れることにより、指紋の凹凸に応じた容量が各セルの容量素子Caに付加される。従って、指Fgが接触した状態で、各セルの容量素子Caからの出力が示す容量を、図7及び図8を参照して説明した各部分検出領域PAAからの出力の取得と同様、検出信号増幅部42とA/D変換部43で読み取ることによって指紋パターンを生成できる。この方法により、静電容量方式にて指紋を検出できる。尚、部分検出領域PAAの容量と指紋などの被検出物との距離を100μm~300μmに設定する構造にすることが望ましい。
【0083】
次に、センサ部10、第1光源61及び第2光源62の動作例について説明する。図9は、検出装置のセンサ部の駆動と、光源の点灯動作との関係を説明するための説明図である。
【0084】
図9に示すように、期間t(1)から期間t(4)のそれぞれにおいて、検出装置1は、上述したリセット期間Prst、有効露光期間Pex{(1)・・・(M)}及び読み出し期間Pdetの処理を実行する。リセット期間Prst及び読み出し期間Pdetにおいて、ゲート線駆動回路15は、ゲート線GCL(1)からゲート線GCL(M)まで順次走査する。
【0085】
期間t(1)では、第2光源62が点灯し、第1光源61は非点灯となる。これにより、検出装置1は、第2光源62から出射された第2光L62に基づいて、フォトダイオードPDから信号線SGLを介して検出回路48に電流が流れる。また、期間t(2)では、第1光源61が点灯し、第2光源62は非点灯である。これにより、検出装置1は、第1光源61から出射された第1光L61に基づいて、フォトダイオードPDから信号線SGLを介して検出回路48に電流が流れる。同様に、期間t(3)で第2光源62が点灯し第1光源61が非点灯となり、期間t(4)で第1光源61が点灯し第2光源62が非点灯となる。
【0086】
このように、第1光源61及び第2光源62は、期間tごとに時分割的に点灯する。これにより、第1光L61に基づいてフォトダイオードPDで検出された第1検出信号と、第2光L62に基づいてフォトダイオードPDで検出された第2検出信号とが、時分割で検出回路48に出力される。したがって、第1検出信号と第2検出信号とが重畳して検出回路48に出力されることを抑制することができる。このため、検出装置1は、種々の生体に関する情報を良好に検出することができる。
【0087】
なお、第1光源61及び第2光源62の駆動方法は適宜変更することができる。例えば、図9では、第1光源61及び第2光源62は、期間tごとに交互に点灯しているが、これに限定されない。第1光源61が複数回の期間tで連続して点灯した後、第2光源62が複数回の期間tで連続して点灯してもよい。また、第1光源61及び第2光源62が各期間tに同時に点灯してもよい。また、図9では常時露光制御方法の例を示しているが、ゲート線走査時露光制御方法においても第1光源61及び第2光源62を図9と同様に期間tごとに交互に駆動してもよい。
【0088】
図10は、図9とは異なるセンサ部の駆動と、光源の点灯動作との関係を説明するための説明図である。図10に示す例では、第1光源61及び第2光源62は、有効露光期間Pexで点灯し、リセット期間Prst及び読み出し期間Pdetでは非点灯である。これにより、検出装置1は、検出に要する消費電力を低減することができる。
【0089】
なお、図10に示す例に限定されず、第1光源61及び第2光源62は、リセット期間Prst、有効露光期間Pex及び読み出し期間Pdetの全期間に亘って連続して点灯してもよい。また、有効露光期間Pexに第1光源61及び第2光源62のいずれか一方が点灯し、期間tごとに交互に点灯してもよい。
【0090】
図11及び図12は、実施形態1に係る検出装置の、センサ部と、第1光源及び第2光源との関係を模式的に示す図である。図11及び図12では、指Fgとセンサ部10との相対的な位置関係が異なる場合の動作例を示している。図11及び図12に示すように、センサ基材21は、第1曲面Sa1と、第1曲面Sa1と反対側の第2曲面Sa2とを有する。第1曲面Sa1は、第2曲面Sa2から第1曲面Sa1に向かう方向に凸状に湾曲している。第2曲面Sa2は、指Fgの表面に沿って凹状に湾曲している。第1曲面Sa1には、複数のフォトダイオードPDが設けられる。センサ基材21は、透光性を有するフィルム状の樹脂材料であってもよく、湾曲したガラス基板であってもよい。
【0091】
複数の第1光源61-1、61-2、61-3は、第1曲面Sa1に沿って設けられ、異なる方向に第1光L61を出射する。複数の第2光源62-1、62-2、62-3は、第2曲面Sa2と対向して設けられ、異なる方向に第2光L62を出射する。第1光源61-1と、第2光源62-3とは、指Fgを挟んで配置され、反対の向きに第1光L61及び第2光L62を出射する。同様に、第1光源61-2と、第2光源62-2とは、指Fgを挟んで配置され、反対の向きに第1光L61及び第2光L62を出射する。第1光源61-3と、第2光源62-1とは、指Fgを挟んで配置され、反対の向きに第1光L61及び第2光L62を出射する。
【0092】
なお、以下の説明において第1光源61-1、61-2、61-3を区別して説明する必要がない場合には、第1光源61と表す。また、第2光源62-1、62-2、62-3を区別して説明する必要がない場合には、第2光源62と表す。
【0093】
なお、図11及び図12では、第1光源基材51及び第2光源基材52を省略して示しているが、それぞれ、指Fgの表面に沿った湾曲形状を有している。或いは、1つの光源基材を、指Fgを囲むように環状に形成し、光源基材の内周面に第1光源61及び第2光源62が設けられていてもよい。
【0094】
図13は、第2光源62と、センサ部10と、指Fg内の血管VBとの位置関係の例を示す模式図である。第2光源62(第2光源62-1、62-2、62-3の少なくともいずれか1つ以上)から出射された第2光L62は、指Fgを透過して各部分検出領域PAAのフォトダイオードPDに入射する。このとき、指Fgにおける第2光L62の透過率は、指Fg内の血管VBの脈動に応じて変化する。従って、血管VBの脈動周期以上の期間中における検出信号Vdetの変化(振幅)の周期に基づいて、脈拍数を算出できる。
【0095】
検出信号Vdetの変化(振幅)の周期に基づいた脈拍数の算出では、当該振幅がより大きい検出信号Vdetに基づいて行うことで、脈拍数を算出するための情報をより確実に取得し続けられることになる。
【0096】
図14は、指Fgと対向するように設けられた複数のフォトダイオードPDが形成する面状の検出領域AAを平面視した場合において例示的に設定されたフォトダイオードPD内の複数の部分検出領域PAAの位置(位置P1,P2,P3,P4,P5,P6)を示す模式図である。図15は、図14に示す複数の位置で取得された検出信号Vdetの経時変化例を示すグラフである。図15の線L1は、図14の位置P1の部分検出領域PAAからの検出信号Vdetの経時変化例を示す。図15の線L2は、図14の位置P2の部分検出領域PAAからの検出信号Vdetの経時変化例を示す。図15の線L3は、図14の位置P3の部分検出領域PAAからの検出信号Vdetの経時変化例を示す。図15の線L4は、図14の位置P4の部分検出領域PAAからの検出信号Vdetの経時変化例を示す。図15の線L5は、図14の位置P5の部分検出領域PAAからの検出信号Vdetの経時変化例を示す。図15の線L6は、図14の位置P6の部分検出領域PAAからの検出信号Vdetの経時変化例を示す。
【0097】
例えば、図14において指Fgと対向するフォトダイオードPDのうち指Fgの先端側中央付近の位置P5に設けられた部分検出領域PAAからの検出信号Vdetは、図15の線L5が示すような経時変化を示す。具体的には、線L5は、第1ピークMax1、第1ボトムMin1、第2ピークMax2、第2ボトムMin2、第3ピークMax3、…、のように、値化された検出信号Vdetの出力の上昇と低下とを交互に繰り返す振幅を示している。なお、第1ピークMax1、第2ピークMax2及び第3ピークMax3の出力値は、第1ボトムMin1及び第2ボトムMin2の出力値よりも大きい。従って、線L5では、第1ピークMax1から第1ボトムMin1に向かう第1ピークダウンPd1が生じている。また、線L5では、第1ボトムMin1から第2ピークMax2に向かう第1ピークアップPu1が生じている。また、線L5では、第2ピークMax2から第2ボトムMin2に向かう第2ピークダウンPd2が生じている。また、線L5では、第2ボトムMin2から第3ピークMax3に向かう第2ピークアップPu2が生じている。このように、線L5は、図15で符号を付していない範囲を含めて、ピークアップとピークダウンを繰り返す検出信号Vdetの変化(振幅)を示している。ここで、連続する1回のピークアップとピークダウンの組が、血管VBで生じる1回の脈動に対応する。
【0098】
線L1,L2,L3,L4,L6も線L5と同様、ピークアップとピークダウンを繰り返す検出信号Vdetの変化(振幅)を示す。このように、検出領域AA内のそれぞれ異なる位置P1,P2,P3,P4,P5,P6に設けられた部分検出領域PAAからの検出信号Vdetの出力は、それぞれ血管VBの脈動に応じて変化する第2光L62の透過率に対応した変化を示す。
【0099】
図14及び図15の例で示すように、指Fgに対してどの位置で部分検出領域PAAが対向しているかによって、検出信号Vdetの変化(振幅)の度合いは異なる。例えば、線L1及び線L6の振幅の度合いは、線L5の振幅の度合いに比して明らかに小さい。従って、血管VBで生じる脈動に応じた検出信号Vdetの変化(振幅)を示す情報をより確実に継続して取得したい場合、位置P1、位置P6に設けられている部分検出領域PAAよりも位置P5に設けられている部分検出領域PAAの方がより望ましいと考えられる。
【0100】
また、図11図12とのセンサ部10と指Fgとの位置関係の相違が示すように、センサ部10は、使用中に指Fgのような生体組織との位置ずれを生じることがある。このような位置ずれが生じると、所定時間(例えば、後述する図16の所定期間Pt)を挟んだ前後のタイミングで、部分検出領域PAAが設けられている各位置(例えば、位置P1,…,P6)での、検出信号Vdetの変化(振幅)の度合いが変化することがある。
【0101】
そこで、実施形態の出力処理部50は、検出信号Vdetの変化(振幅)の度合いがより大きい一部の部分検出領域PAAを特定するための処理(フォーカス処理)を行う。具体的には、出力処理部50は、所定期間中の検出信号Vdetを部分検出領域PAA毎に取得する。出力処理部50は、当該所定期間中に複数の部分検出領域PAAからそれぞれ出力される検出信号Vdetで生じたピークダウンとピークアップのうち、ピークとボトムの差が最も大きいものを特定する。出力処理部50は、特定されたピークダウン又はピークアップを生じさせた検出信号Vdetを出力した部分検出領域PAAを特定する。
【0102】
なお、検出信号Vdetの変化(振幅)の度合いを取得する箇所は、位置P1,P2,P3,P4,P5,P6に限られない。出力処理部50は、センサ部10に設けられた複数の部分検出領域PAAの全てについて個別に検出信号Vdetの変化(振幅)の度合いを取得するようにしてもよいし、一部の部分検出領域PAAであって複数の部分検出領域PAAをサンプリング的に抽出して個別に検出信号Vdetの変化(振幅)の度合いを取得するようにしてもよい。
【0103】
実施形態では、出力処理部50は、センサ部10に設けられた複数の部分検出領域PAAの全てについて個別に検出信号Vdetの変化(振幅)の度合いを取得してフォーカス処理を行い、フォーカス処理で特定された部分検出領域PAAからの検出信号Vdetに基づいたデータを脈波データとして出力する。脈波データは、所定期間中に生じた振幅の回数を示す情報を含むデータであってもよいし、脈拍数の単位時間(例えば、分)と所定期間との関係に基づいた所定の演算式に基づいて出力処理部50が算出した脈拍数の値を示す情報を含むデータであってもよいし、線L1等で描画可能な検出信号Vdetの変化そのものを示す情報を含むデータであってもよい。
【0104】
図16は、所定期間Ptと、フォーカス処理で特定された部分検出領域PAAからの出力との関係を説明するためのタイムチャートである。実施形態では、第1タイミングTaから第2タイミングTbまでの所定期間Ptの間に取得された各部分検出領域PAAからの検出信号Vdetのうち、当該所定期間Pt中の変化の度合いが最も大きい検出信号Vdetが特定される。特定された検出信号Vdetに基づいたデータIaが、第1タイミングTaから第2タイミングTbまでの所定期間Pt中の脈波データとして出力される。また、第2タイミングTbから第3タイミングTcまでの所定期間Ptの間に取得された各部分検出領域PAAからの検出信号Vdetのうち、当該所定期間Pt中の変化の度合いが最も大きい検出信号Vdetが特定される。特定された検出信号Vdetに基づいたデータIbが、第2タイミングTbから第3タイミングTcまでの所定期間Pt中の脈波データとして出力される。また、第3タイミングTcから第4タイミングTdまでの所定期間Ptの間に取得された各部分検出領域PAAからの検出信号Vdetのうち、当該所定期間Pt中の変化の度合いが最も大きい検出信号Vdetが特定される。特定された検出信号Vdetに基づいたデータIcが、第3タイミングTcから第4タイミングTdまでの所定期間Pt中の脈波データとして出力される。第4タイミングTd以降についても、同様に、所定期間Pt単位で脈波データが出力される。
【0105】
なお、所定期間Ptは、連続したピークアップとピークダウンの組み合わせによる振幅波形が1回以上導出される、複数回の検出信号Vdetの出力を含む期間である。所定期間Ptは、予め設定される。所定期間Ptは、例えば4秒であるが、これに限られるものでなく、適宜変更可能である。
【0106】
図17は、実施形態1における脈波データの出力に係る処理の流れの一例を示すフローチャートである。出力処理部50は、光センサ(例えば、フォトダイオードPD)の各々の出力(検出信号Vdet)を取得する(ステップS1)。出力処理部50は、所定期間Ptが経過するまで(ステップS2;No)、ステップS1の処理を繰り返す。所定期間Ptが経過すると(ステップS2;Yes)、出力処理部50は、光センサ(フォトダイオードPD)の各々の出力(検出信号Vdet)の変化の度合いを取得する(ステップS3)。出力処理部50は、ステップS3の処理で取得された出力(検出信号Vdet)の変化の度合いのうち、変化の度合いが最も大きい光センサを特定する(ステップS4)。出力処理部50は、ステップS4の処理で特定された光センサの出力(検出信号Vdet)に基づいたデータを脈波データとして採用する(ステップS5)。検出装置1の動作が終了していない場合(ステップS6;No)、再度ステップS1の処理が行われる。検出装置1の動作が終了した場合(ステップS6;Yes)、処理が終了される。
【0107】
なお、これまでは、変化の度合いが最も大きい検出信号Vdetに基づいた脈波データの取得について説明してきたが、変化の度合いが最も大きい検出信号Vdetに代えて、ピーク値(Max1、Max2、Max3・・・)が最も高い検出信号Vdetを採用してもよい。すなわち、ピーク値が最も高い検出信号Vdetに基づいた脈波データの取得を行ってもよい。
【0108】
以上、実施形態1によれば、検出装置1は、検出領域AAに配置された複数の光センサ(例えば、フォトダイオードPD)と、被検出物(例えば、指Fg)に照射されて光センサに検出される光を発する光源(例えば、第1光源61、第2光源62)と、複数の光センサからの出力に基づいた処理を行う処理部(例えば、出力処理部50)とを備える。処理部は、所定期間(例えば、所定期間Pt)周期で得られる複数の光センサの各々の出力に基づいて、複数の光センサのうち出力が採用される光センサを決定する。これによって、光センサと被検出物との位置関係が変化した場合であっても、所定期間周期で出力が採用される光センサを適宜決定するので、所定期間周期で当該位置の変化に対応した出力を得られる。従って、光センサと被検出物との位置関係の変化に対応できる。
【0109】
また、処理部(例えば、出力処理部50)は、所定期間(例えば、所定期間Pt)中に生じた出力又は所定期間中に生じた出力の変化の度合いが最も大きい光センサ(例えば、フォトダイオードPD)の出力を採用する。これによって、脈波データを含むセンサ出力Voを得るために最も適当な出力として、所定期間中に生じた出力又は所定期間中に生じた出力の変化の度合いが最も大きい光センサの出力を採用することで、光センサと被検出物との位置関係が変化した場合であっても、脈波データの精度をより高められる。従って、光センサと被検出物との位置関係の変化に対応できる。
【0110】
(実施形態2)
次に、実施形態2について説明する。実施形態2の説明に係り、実施形態1と同様の構成については同じ符号を付して説明を省略する。
【0111】
実施形態1では、出力(検出信号Vdet)の変化の度合いが最も大きい光センサ(フォトダイオードPD)を特定し、当該光センサからの出力に基づいたデータを脈波データとして採用している。これに対し、実施形態2の脈波データは、出力(検出信号Vdet)の変化の度合いが最も大きい光センサ(フォトダイオードPD)を含むグループ領域(グループ領域PAG)からの出力に基づいたデータであるという点で実施形態1と異なる。
【0112】
図18及び図19は、グループ領域PAG単位での脈波データの取得制御を説明するための模式図である。図18及び図19は、例えば図14の位置P5付近を拡大した模式図であるが、これに限られるものでない。図18及び図19では、例示的に、x×y=6×6[個]のグループ領域PAGがマトリクス状に配置されたセンサ部10の検出領域を示している。また、x×y=6×6[個]のグループ領域PAGの各々の位置を区別する目的で、第1方向Dxに座標x1,x2,x3,x4,x5,x6を付し、第2方向Dyに座標y1,y2,y3,y4,y5,y6を付している。例えば、(x1,y1)のグループ領域PAGと記載した場合、座標x1と座標y1との組み合わせの位置に対応するグループ領域PAGをさす。また、図18及び図19では、例示的に、マトリクス状に配置された複数の部分検出領域PAAを、所定数(例えば、x×y=6×6[個])単位で1つのグループ領域PAGとしている。
【0113】
図18では、血管VBが座標y2,y3,y4の範囲内にある例を示している。ここで、図18に示す部分検出領域PAAのうち、出力(検出信号Vdet)の変化の度合いが最も大きい部分検出領域PAAの位置は、(x5,y3)のグループ領域PAG内の位置Pmax1であるとする。
【0114】
一方、図19では、血管VBが座標y3,y4,y5の範囲内にある例を示している。図18図19との差、すなわち、血管VBの位置の差は、例えば指Fgに対するセンサ部10の位置ずれによって生じる(図11図12参照)。図18の状態から図19の状態になる位置ずれが生じた場合、出力(検出信号Vdet)の変化の度合いが最も大きい部分検出領域PAAの位置は、位置Pmax1から、(x5,y4)のグループ領域PAG内の位置Pmax2にずれる。
【0115】
実施形態1では、位置ずれ前(図18参照)の所定期間Pt中の出力として位置Pmax1の部分検出領域PAAからの出力(検出信号Vdet)を採用し、位置ずれ後(図19参照)の所定期間Pt中の出力として位置Pmax2の部分検出領域PAAからの出力(検出信号Vdet)を採用する。一方、実施形態2では、位置ずれ前(図18参照)の所定期間Pt中の出力として位置Pmax1の部分検出領域PAAを含む(x5,y3)のグループ領域PAGに設けられた複数の部分検出領域PAAからの出力(検出信号Vdet)を採用し、位置ずれ後(図19参照)の所定期間Pt中の出力として位置Pmax2の部分検出領域PAAを含む(x5,y4)のグループ領域PAGに設けられた複数の部分検出領域PAAからの出力(検出信号Vdet)を採用する。このように、実施形態2では、出力(検出信号Vdet)の変化の度合いが最も大きい部分検出領域PAAを含むグループ領域PAGからの出力が採用される。
【0116】
図20は、複数の部分検出領域PAAからの出力の平均化処理の例を示す説明図である。実施形態2では、出力(検出信号Vdet)の変化の度合いが最も大きい部分検出領域PAAを含むグループ領域PAGに設けられた複数の部分検出領域PAAからの出力(検出信号Vdet)の採用に際して、複数の部分検出領域PAAからの出力の平均を取る平均化処理が行われる。平均化処理では、各部分検出領域PAAの出力(検出信号Vdet)をアナログ・デジタル変化処理で値化して出力値とし、複数の部分検出領域PAAの出力値を足し合わせ、出力値が足し合わされた部分検出領域PAAの数で除算する処理が行われる。
【0117】
図20では、表の「出力値」欄で、複数の部分検出領域PAAの各々からの出力(検出信号Vdet)を数値化した出力値を示している。当該表では、複数の部分検出領域PAAの各々の位置を区別する目的で、第1方向Dxに座標xa,xb,xcを付し、第2方向Dyに座標ya,yb,yc,yd,ye,yf,ygを付している。すなわち、当該表の1つのセルの値が、1つの部分検出領域PAAの出力値を示す。なお、各セルの値はあくまでも例示的なものであり、複数の部分検出領域PAAの各々からの出力値がこれに限定されることを示すものでない。
【0118】
なお、図20の「平均化処理なし」、「平均化処理例1(3つ)」及び「平均化処理例2(5つ)」の「出力値」欄の各セルの値は同一である。また、これらの表の各セルで示す出力値は、あるタイミングの出力値であるが、「グラフ」欄で示す出力値のグラフは、当該タイミングを含む期間(例えば、所定期間Pt)における複数回の出力値が当該期間内でどのように変化したかを示すグラフである。
【0119】
図20の「平均化処理なし」のグラフにおける線Laでは、各部分検出領域PAAの出力値がそのまま採用された場合の出力値の経時変化が示されている。一方、「平均化処理例1(3つ)」のグラフにおける線Lbでは、一方向(例えば、第2方向Dy)に連続して並ぶ3つの部分検出領域PAAの出力値の平均値が採用されている。「平均化処理例1(3つ)」のグラフで示すように、平均化処理を行うことで、出力値に対するノイズの影響が緩和され、出力値の経時変化が示すピークとボトムの周期性がより顕在化する。また、「平均化処理例2(5つ)」のグラフにおける線Lcでは、当該一方向に連続して並ぶ5つの部分検出領域PAAの出力値の平均値が採用されている。出力値が平均化される対象になる部分検出領域PAAの数をより多くすることで、出力値における素子ばらつき、電源ノイズ等の各種ノイズの影響がより緩和され、出力値の経時変化が示すピークとボトムの周期性がさらに顕在化する。
【0120】
図20において出力値が平均化される対象になる部分検出領域PAAの数(所定数)は、あくまで平均化処理を説明するための一例であって実施形態をこれに限るものでない。実施形態2では、例えば、出力(検出信号Vdet)の変化の度合いが最も大きい部分検出領域PAAを含む1つのグループ領域PAGに設けられた複数の部分検出領域PAAの出力値を平均化し、当該グループ領域PAGからの出力値として採用する。また、実施形態2では、当該1つのグループ領域PAG及び当該1つのグループ領域PAG付近のグループ領域PAGに設けられた複数の部分検出領域PAAの出力値を平均化し、当該グループ領域PAGからの出力値として採用するようにしてもよい。ここで、当該1つのグループ領域PAG付近のグループ領域PAGは、例えば、第1方向Dx又は第2方向Dyに沿って当該1つのグループ領域PAGと隣接するグループ領域PAGであってもよいし、第1方向Dx又は第2方向Dyの一方に沿って当該1つのグループ領域PAGと連続して並ぶ複数のグループ領域PAGであってもよい。
【0121】
図21は、実施形態2における脈波データの出力に係る処理の流れの一例を示すフローチャートである。図21に示す実施形態2の処理の流れは、図17に示す実施形態1の処理の流れにおけるステップS5の処理がステップS15の処理に置換されている点を除いて、実施形態1の処理と同様である。
【0122】
ステップS15の処理として、出力処理部50は、ステップS4の処理で特定された光センサ(部分検出領域PAAのフォトダイオードPD)を含むグループ領域(グループ領域PAG)の出力を平均化する平均化処理を行い、平均化処理によって得られた出力値の経時変化が示す振幅に基づいて脈波データを取得する。
【0123】
以上、特筆した事項を除いて、実施形態2は、実施形態1と同様である。
【0124】
実施形態2によれば、検出領域AAは、複数のグループ領域(例えば、グループ領域PAG)を含む。複数のグループ領域はそれぞれ、複数の光センサ(例えば、フォトダイオードPD)を含む。出力処理部50は、所定期間(例えば、所定期間Pt)中に生じた出力又は所定期間中に生じた出力の変化の度合いが最も大きい光センサを含むグループ領域の出力を採用する。これによって、脈波データを含むセンサ出力Voを得るために最も適当な出力として、所定期間中に生じた出力又は所定期間中に生じた出力の変化の度合いが最も大きい光センサを含むグループ領域の出力を採用することで、光センサと被検出物との位置関係が変化した場合であっても、脈波データの精度をより高められる。従って、光センサと被検出物との位置関係の変化に対応できる。
【0125】
また、複数の光センサ(例えば、フォトダイオードPD)は、検出領域AAにマトリクス状に配置される。出力処理部50は、隣接する2つ以上の光センサであって、かつ、全ての光センサでない所定数の光センサの出力を平均化する平均化処理を行い、平均化処理で平均化された出力に基づいて出力が採用される光センサを決定する。これによって、出力値における各種ノイズの影響がより緩和され、出力値の経時変化が示すピークとボトムの周期性がさらに顕在化する。従って、脈波データ等、センサ出力Voの精度をより高められる。なお、平均化処理の具体的な内容についてはこれに限られるものでなく、適宜変更可能である。例えば、少なくとも1つのゲート線GCLと複数の信号線SGL、あるいは複数のゲート線と少なくとも1つの信号線SGLを束ねて、隣接する複数の部分検出領域PAAからの出力を同時に読み取ってもよい。
【0126】
(実施形態3)
次に、実施形態3について説明する。実施形態3の説明に係り、実施形態1、実施形態2と同様の構成については同じ符号を付して説明を省略する。
【0127】
実施形態3では、図11及び図12で説明したように、指Fgの指紋パターンの生成による指紋の検出が行われる。この指紋の検出は、所定期間Pt毎に行われる。出力処理部50は、最初に検出された指紋パターン(初回の指紋パターン)の位置と、それ以降に検出された指紋パターンの位置との位置関係の相違に基づいて、指Fgに対するフォトダイオードPDのずれ量を算出する。出力処理部50は、算出されたずれ量に基づいて、採用される出力として扱われる光センサ(部分検出領域PAA)の位置ずれを補正する。
【0128】
なお、指紋検出の具体的な方法としては、第1光源61、第2光源62の少なくとも一方からの光の検出に基づいた光学センサとしてのセンサ部10を利用して指紋パターンを生成する方法、容量素子Caの容量を利用した静電容量センサによって指紋の凹凸を認識する方法のいずれも利用可能である。
【0129】
実施形態3では、一例として、第1光L61は、360nm以上800nm未満、例えば500nm程度の波長を有する。第2光L62は、800nm以上930nm以下、例えば850nm程度の波長を有する。つまり、第2光L62の波長は、第1光L61の波長よりも長い。この場合、第1光L61は、可視光である。第2光L62は、赤外光である。
【0130】
上述の第1光L61、第2光L62の2波長の光の一方で指紋を検出し、他方で血管及び脈波パターンを検出する場合、第1光L61が指紋の検出に用いられ、第2光L62が血管及び脈波パターンの検出に用いられる。なお、第2光L62の1波長の光で指紋と血管両方を検出するようにしてもよい。
【0131】
図22は、実施形態3及び後述する実施形態4における脈波データの出力に係る処理の流れの一例を示すフローチャートである。実施形態3及び後述する実施形態4では、まず初回処理が行われる(ステップS21)。その後、位置ずれ対応処理が行われる(ステップS22)。ステップS22の処理は、検出装置1の動作が終了するまで繰り返される(ステップS23;No)。検出装置1の動作が終了すると(ステップS23;Yes)、処理が終了される。
【0132】
図23は、図22の初回処理の流れの一例を示すフローチャートである。初回処理は、図21に示すフローチャートからステップS6の処理が省略されている点を除いて、図21に示すフローチャートを参照して説明した処理と同様である。図23のステップS15の処理後のリターンは、図22に示すステップS21の処理(初回処理)が終了し、次の処理であるステップS22の処理(位置ずれ対応処理)に移行することを示す。
【0133】
図24は、実施形態3における図22の位置ずれ対応処理の流れの一例を示すフローチャートである。まず、指紋パターンの取得が行われる(ステップS31)。ステップS31の指紋パターンの取得は、例えば、初回処理中における各光センサ(フォトダイオードPD)の出力に基づいて行われる。初回処理中であればどのタイミングの出力に基づいて指紋パターンを生成するかは任意であるが、予め定められている(例えば、初回)。
【0134】
出力処理部50は、光センサ(フォトダイオードPD)の各々の出力(検出信号Vdet)を取得する(ステップS32)。出力処理部50は、所定期間Ptが経過するまで(ステップS33;No)、ステップS32の処理を繰り返す。所定期間Ptが経過すると(ステップS33;Yes)、指紋パターンの取得が行われる(ステップS34)。ステップS34の指紋パターンの取得は、例えば、最新の各光センサ(フォトダイオードPD)の出力に基づいて行われるが、これに限られるものでなく、所定期間Pt以上溯らない期間内の各光センサ(フォトダイオードPD)の出力であればよい。
【0135】
出力処理部50は、初回の指紋パターンに対する最新の指紋パターンのずれ量を算出する(ステップS35)。具体的には、出力処理部50は、ステップS35の処理として、ステップS31の処理で得られた指紋パターンと複数の部分検出領域PAAとの位置関係と、ステップS34の処理で得られた指紋パターンと複数の部分検出領域PAAとの位置関係とを比較する。出力処理部50は、指紋パターンに含まれる特徴点検出等の照合処理に基づいて、同じ指紋パターンと判断される凸凹が検出された部分検出領域PAAの位置がずれているか否かの判定及びずれている場合にそのずれ量を部分検出領域PAAの第1方向Dx及び第2方向Dyのずれ量として数値化する処理を行う。
【0136】
出力処理部50は、初回処理におけるステップS4の処理で出力の変化の度合いが最も大きい光センサ(フォトダイオードPD)として特定された光センサの位置から、ステップS35の処理で算出されたずれ量だけずれた位置にある光センサ(フォトダイオードPD)を特定する(ステップS36)。出力処理部50は、ステップS36の処理で特定された光センサを含むグループ領域(グループ領域PAG)の出力を平均化して得られた出力値の振幅から脈波データを取得する(ステップS37)。ステップS37の処理は、グループ領域を決める基準が、ステップS4の処理で特定された光センサからステップS36の処理で特定された光センサに変わる点を除いて、ステップS15の処理と同様である。図24及び後述する図26のステップS37の処理後のリターンは、図22に示すステップS22の処理(位置ずれ対応処理)が終了し、次の処理であるステップS23の処理に移行することを示す。
【0137】
なお、図22図23図24を参照した説明では、指紋検出を脈波測定時、すなわち、脈波を取得するための出力の変化(振幅)が生じる所定期間Pt毎に毎回行っているが、これに限られるものではない。後述する全動作期間に指紋検出を行い、それ以外の期間には指紋検出を行わないようにして、複数の脈波測定毎に1回の指紋検出を行う(間引き指紋測定)ようにしてもよい。以上、特筆した事項を除いて、実施形態3は、実施形態2と同様である。
【0138】
実施形態3によれば、検出領域AAは、指Fgと対向する(図11図12参照)。出力処理部50は、複数の部分検出領域PAAの各々の出力に基づいて生成された指紋パターンに基づいて複数の光センサ(例えば、フォトダイオードPD)のうち出力が採用される光センサを決定する。これによって、光センサと指Fgとの位置関係が変化した場合であっても、検出された指紋パターンの位置ずれに基づいて採用される出力を決定するので、所定期間周期で当該位置の変化に対応した出力を得られる。従って、光センサと指Fgとの位置関係の変化に対応できる。
【0139】
(実施形態3の変形例)
次に、実施形態3におけるステップS35からステップS37の処理を他の処理に置き換えた変形例について説明する。具体的には、当該変形例では、初回の指紋パターン(ステップS31参照)に対する最新の指紋パターン(ステップS34参照)のずれの有無によって処理を分岐させる。
【0140】
図25は、実施形態3の変形例における図22の位置ずれ対応処理の流れの一例を示すフローチャートである。ステップS31からステップS34までの処理は、図24を参照して説明した処理と同様である。
【0141】
出力処理部50は、初回の指紋パターンに対する最新の指紋パターンのずれの有無を判定する(ステップS45)。具体的には、出力処理部50は、ステップS45の処理として、ステップS31の処理で得られた指紋パターンと複数の部分検出領域PAAとの位置関係と、ステップS34の処理で得られた指紋パターンと複数の部分検出領域PAAとの位置関係とを比較する。出力処理部50は、指紋パターンに含まれる特徴点検出等の照合処理に基づいて、同じ指紋パターンと判断される凸凹が検出された部分検出領域PAAの位置がずれているか否かの判定を行う。
【0142】
出力処理部50は、ステップS45の処理でずれがあると判定された場合(ステップ46;Yes)、ステップS3の処理、ステップS4の処理、ステップS15の処理を順次行う。一方、ステップS45の処理でずれがないと判定された場合(ステップS46;No)、出力処理部50は、初回処理のステップS4の処理で出力の変化の度合いが最も大きいと判定された光センサ(フォトダイオードPD)を含むグループ領域(グループ領域PAGの出力を平均化して得られた出力値の振幅から脈波データを取得する(ステップS47)。図25及び後述する図27のステップS15の処理後及びステップS47の処理後のリターンは、図22に示すステップS22の処理(位置ずれ対応処理)が終了し、次の処理であるステップS23の処理に移行することを示す。
【0143】
以上、特筆した事項を除いて、実施形態3の変形例は、実施形態3と同様である。
【0144】
(実施形態4)
次に、実施形態4について説明する。実施形態4の説明に係り、実施形態1、実施形態2、実施形態3と同様の構成については同じ符号を付して説明を省略する。
【0145】
実施形態3では、位置ずれ対応処理で指紋パターンを利用していたが、実施形態4では、検出領域AAに対向する血管VBの形状に基づいて生成される血管パターンを利用する点で実施形態3と異なる。具体的には、実施形態4では、図22を参照して説明した処理の流れにおける初回処理については、実施形態3と同様であり、位置ずれ対応処理の一部が実施形態3と異なる。
【0146】
図26は、実施形態4における図22の位置ずれ対応処理の流れの一例を示すフローチャートである。実施形態4では、実施形態3におけるステップS31の処理に代わるステップS51の処理として、血管パターンの取得が行われる。ステップS51の血管パターンの取得は、例えば、初回処理中における各光センサ(フォトダイオードPD)の出力に基づいて行われる。初回処理中であればどのタイミングの出力に基づいて血管パターンを生成するかは任意であるが、予め定められている(例えば、初回)。
【0147】
また、実施形態4では、実施形態3におけるステップS34の処理に代わるステップS54の処理として、血管パターンの取得が行われる。ステップS54の血管パターンの取得は、例えば、最新の各光センサ(フォトダイオードPD)の出力に基づいて行われるが、これに限られるものでなく、所定期間Pt以上溯らない期間内の各光センサ(フォトダイオードPD)の出力であればよい。
【0148】
また、実施形態4では、実施形態3におけるステップS35の処理に代わるステップS55の処理が行われる。ステップS55の処理で、出力処理部50は、初回の血管パターンに対する最新の血管パターンのずれ量を算出する。具体的には、出力処理部50は、ステップS51の処理で得られた血管パターンと複数の部分検出領域PAAとの位置関係と、ステップS54の処理で得られた血管パターンと複数の部分検出領域PAAとの位置関係とを比較する。出力処理部50は、血管パターンに含まれる特徴点検出等の照合処理に基づいて、同じ血管パターンが検出された部分検出領域PAAの位置がずれているか否かの判定及びずれている場合にそのずれ量を部分検出領域PAAの第1方向Dx及び第2方向Dyのずれ量として数値化する処理を行う。
【0149】
以上、特筆した事項を除いて、実施形態4は、実施形態3と同様である。なお、実施形態4では、血管VBに対応する血管パターンが採用されているが、血管VBは、動脈、静脈その他の種別を特に問われない。
【0150】
実施形態4によれば、検出領域AAは、内側に血管(例えば、血管VB)を含む生体組織(例えば、指Fg又は後述する手首Wr)と対向する。出力処理部50は、複数の光センサ(例えば、フォトダイオードPD)の各々の出力に基づいて生成された血管パターン(例えば、血管VBのパターン)に基づいて複数の光センサのうち出力が採用される光センサを決定する。これによって、光センサと生体組織との位置関係が変化した場合であっても、検出された血管パターンの位置ずれに基づいて採用される出力を決定するので、所定期間周期で当該位置の変化に対応した出力を得られる。従って、光センサと生体組織との位置関係の変化に対応できる。
【0151】
(実施形態4の変形例)
次に、実施形態4におけるステップS55、ステップS36、ステップS37の処理を他の処理に置き換えた変形例について説明する。具体的には、実施形態3における指紋パターンが実施形態4において血管パターンに置換されたことと同様、実施形態3の変形例における指紋パターンが、実施形態4の変形例では血管パターンに置換される。すなわち、実施形態4の変形例では、初回の血管パターン(ステップS51参照)に対する最新の血管パターン(ステップS54参照)のずれの有無によって処理を分岐させる。
【0152】
図27は、実施形態4の変形例における図22の位置ずれ対応処理の流れの一例を示すフローチャートである。実施形態4の変形例におけるステップS51からステップS54までの処理は、実施形態4(図26参照)と同様である。
【0153】
出力処理部50は、初回の血管パターンに対する最新の血管パターンのずれの有無を判定する(ステップS65)。具体的には、出力処理部50は、ステップS65の処理として、ステップS51の処理で得られた血管パターンと複数の部分検出領域PAAとの位置関係と、ステップS54の処理で得られた血管パターンと複数の部分検出領域PAAとの位置関係とを比較する。出力処理部50は、血管パターンに含まれる特徴点検出等の照合処理に基づいて、同じ血管パターンが検出された部分検出領域PAAの位置がずれているか否かの判定を行う。
【0154】
出力処理部50は、ステップS65の処理でずれがあると判定された場合(ステップ46;Yes)、ステップS3の処理、ステップS4の処理、ステップS15の処理を順次行う。一方、ステップS65の処理でずれがないと判定された場合(ステップS46;No)、出力処理部50は、ステップS47の処理を行う。
【0155】
以上、特筆した事項を除いて、実施形態4の変形例は、実施形態4と同様である。
【0156】
これまでの説明では、所定期間Pt中に複数の光センサ(フォトダイオードPD)の全てからの出力を繰り返し取得する方法について説明したが、複数の光センサの動作制御はこれに限られるものでない。検出制御部11は、所定期間周期で複数の光センサ(フォトダイオードPD)を全て動作させる全動作期間を生じさせ、全動作期間以外の期間には、全動作期間中に生じた出力又は全動作期間中に生じた出力の変化の度合いが最も大きい光センサを含む一部の光センサを動作させるようにしてもよい。この場合、図2の破線で示すように、出力処理部50から検出制御部11に、全動作期間中に生じた出力又は全動作期間中に生じた出力の変化の度合いが最も大きい光センサの位置又は当該光センサを含むグループ領域PAGを示す情報がフィードバックされる。検出制御部11は、出力処理部50からフィードバックされた情報に基づいて、全動作期間中に生じた出力又は全動作期間中に生じた出力の変化の度合いが最も大きい光センサを含む一部の光センサを特定し、動作させる。
【0157】
例えば、図16における第1タイミングTaから第2タイミングTbまでの所定期間Pt中、複数の部分検出領域PAAを全て動作させる全動作期間Baが設定される。当該全動作期間Ba中の変化の度合いが最も大きい検出信号Vdetが特定され、特定された検出信号Vdetを出力した部分検出領域PAAを含むグループ領域PAGに設けられた部分検出領域PAA又は当該グループ領域PAGを含み、かつ、複数の部分検出領域PAAの全てを含まない領域に設けられた部分検出領域PAAが全動作期間以外の期間Aaに動作する部分検出領域PAAとして決定される。そして、全動作期間Ba及び期間Aa中の変化の度合いが最も大きい検出信号Vdetが特定され、特定された検出信号Vdetの変化の度合いが最も大きい部分検出領域PAAを含むグループ領域PAGからの出力に基づいたデータが脈波データとして出力される。検出信号Vdetの変化の度合いが最も大きい部分検出領域PAAを含むグループ領域PAGからの出力に基づいた脈波データとは、例えば平均化処理を経て得られた脈波データである。第2タイミングTbから第3タイミングTcまでの所定期間Pt中に設定される全動作期間Bbと期間Abとの関係についても、全動作期間Baと期間Aaにおける動作制御と同様である。第3タイミングTcから第4タイミングTdまでの所定期間Pt中に設定される全動作期間Bcと期間Acとの関係についても、全動作期間Baと期間Aaにおける動作制御と同様である。それ以降の所定期間Pt中に設定される全動作期間と全動作期間以外の期間における動作制御についても、全動作期間Baと期間Aaにおける動作制御と同様である。
【0158】
なお、全動作期間(例えば、全動作期間Ba,Bb,Bc)中の変化の度合いが最も大きい検出信号Vdetを出力した部分検出領域PAAを含むグループ領域PAGを含み、かつ、複数の部分検出領域PAAの全てを含まない領域とは、例えばグループ領域PAGと第1方向Dxの位置又は第2方向Dyの位置が同じである複数のグループ領域PAGを含む領域であるが、当該領域はこれに限られるものでなく、適宜変更可能である。
【0159】
このように、複数の光センサ(例えば、フォトダイオードPD)の動作を制御する検出制御部11は、所定期間(例えば、所定期間Pt)周期で複数の光センサを全て動作させる全動作期間(例えば、全動作期間Ba,Bb,Bc)を生じさせる。また、全動作期間以外の期間(例えば、期間Aa,Ab,Ac)には、全動作期間中に生じた出力又は全動作期間中に生じた出力の変化の度合いが最も大きい光センサを含む一部の光センサを動作させる。これによって、全動作期間以外の期間に動作させる光センサをより少なくすることができる。従って、全動作期間以外の期間に動作させる光センサのリフレッシュレートをより高めやすくなる。
【0160】
また、平均化処理の対象となる検出信号Vdetは、1つのグループ領域PAGに設けられた部分検出領域PAAからの検出信号Vdetに限られない。例えば、変化の度合いが最も大きい検出信号Vdetを出力した部分検出領域PAAの検出信号Vdetと、当該部分検出領域PAAとの位置関係が所定条件を満たす部分検出領域PAAの検出信号Vdetとを平均化してもよい。所定条件は、例えば、変化の度合いが最も大きい検出信号Vdetを出力した部分検出領域PAAの位置を基準として、第1方向Dxの位置及び第2方向Dyの少なくとも一方の位置が同じであること、当該部分検出領域PAAとの間に介在する他の部分検出領域PAAの数が所定個以内であること、これらの組み合わせによる条件を満たすこと等が挙げられる。所定個の値は、複数の部分検出領域PAAの第1方向Dxの並び数及び第2方向Dyの並び数に対して十分に小さい値であることが望ましい。
【0161】
また、平均化処理は必須でない。例えば、全動作期間(例えば、全動作期間Ba,Bb,Bc)中に変化の度合いが最も大きい検出信号Vdetを出力した部分検出領域PAAを含むグループ領域PAGを対象として、全動作期間以外の期間(例えば、期間Aa,Ab,Ac)に当該グループ領域PAGのゲート線GCL及び信号線SGLの少なくとも一方をまとめて駆動し、当該グループ領域PAGに設けられた複数の部分検出領域PAAからの検出信号Vdetを統合してもよい。
【0162】
また、部分検出領域PAAの大きさ及び特性は均一でなくてもよい。例えば、感度の異なる複数種類のフォトダイオードPDを互い違いに配置し、部分検出領域PAA全体のダイナミックレンジをより広くするようにしてもよい。
【0163】
また、検出装置1の具体的形態は、図11から図13を参照して説明した形態に限られない。図28は、手首Wrに装着可能な形態の検出装置1Aの主要構成例を示す模式図である。図29は、図28に示す検出装置1Aによる血管VBの検出例を示す模式図である。図28に示すように、検出装置1Aのセンサ基材21は、手首Wrを取り巻く環状に変形可能な可撓性を有する。フォトダイオードPD、第1光源61及び第2光源62は、当該環状のセンサ基材21に沿って円弧状に配置される。
【0164】
また、センサ部10は生体組織と直接当接していなくてもよい。図30は、指Fgとセンサ部10との間にレンズOpが設けられる構成例である。図30に示すように、生体組織(例えば、指Fg)を挟んで光源60と対向する位置であって、当該生体組織とセンサ部10との間に介在する位置にレンズOpが設けられてもよい。光源60は、第1光源61及び第2光源62の少なくとも一方を含む。レンズOpは、例えば、光源60からセンサ部10に向かう光を集束させる光学レンズである。
【0165】
また、検出装置1や検出装置1Aには、フォトダイオードPDと異なるセンサとして、静電容量方式で指紋等を検出可能な構成がさらに設けられてもよい。
【0166】
図31は、相互静電容量方式のセンサ130の主要構成例を示す模式図である。センサ130は、対向配置される第1基板102と第2基板103とを備える。第1基板102と第2基板103は、対向方向(Z方向)に直交する平面(X-Y平面)に沿う。なお、X-Y平面は、固定された不動の平面である必要はない。センサ基材21の可撓性に応じた、第1方向Dx-第2方向Dy平面の湾曲等と同様、変位が許容される。ただし、以下の説明では、分かりやすさを目的として、図31のZ方向に直交する平面(X-Y平面)に沿う2方向をX方向とY方向とする。X方向とY方向とは直交する。
【0167】
第1基板102には、長手方向がX方向に沿い、Y方向に沿って並ぶ複数の第1電極TXが設けられる。第2基板103には、長手方向がY方向に沿い、X方向に沿って並ぶ複数の第2電極RXが設けられる。複数の第1電極TXと複数の第2電極RXは、非接触状態でZ方向に対向する。センサ130は、第2基板103側で指Fg等の外部の物と近接又は当接するよう設けられる。
【0168】
複数の第1電極TXに対して駆動パルスを順次与える走査Scanが行われると、第2電極RXと駆動パルスが与えられた第1電極TXとの間に静電容量が生じる。第2電極RXに対する指Fg等の近接又は当接が生じた場合、当該静電容量に変化が生じる。当該静電容量の変化の有無及び変化の度合いを検出信号Vdet1として第2電極RXから取得することで、指紋等の検出を行うことができる。
【0169】
なお、センサ130の位置は予めセンサ部10の位置と対応が取られている。センサ130は、例えばセンサ部10を挟んで指Fgと対向するよう検出装置1等に配置されるが、これに限られるものでない。例えば、第1電極TX及び第2電極RXをITO(Indium Tin Oxide)等による透明電極とし、センサ部10に対して指Fg側に配置してもよい。また、複数の第1電極TXと複数の第2電極RXを各々個別に駆動して自己容量方式のセンサとしてもよい。
【0170】
図32は、自己静電容量方式のセンサ210の主要構成例を示す模式図である。センサ210は、複数の電極220を備える。複数の電極220は、例えばマトリクス状に配置される。各電極220が保持する自己静電容量は、指Fg等の近接又は当接が生じた場合に変化が生じる。複数の電極220と配線230を介して接続された制御部240は、当該自己静電容量の変化の有無及び変化の度合いを検出する回路である。
【0171】
なお、センサ210の位置は予めセンサ部10の位置と対応が取られている。センサ210は、例えばセンサ部10を挟んで指Fgと対向するよう検出装置1等に配置されるが、これに限られるものでない。例えば、電極220をITO(Indium Tin Oxide)等による透明電極とし、センサ部10に対して指Fg側に配置してもよい。
【0172】
また、検出装置1は、生体組織への当接又は近接が想定された各種の製品に搭載可能である。図33図34及び図35を参照して、検出装置1の搭載例を説明する。
【0173】
図33は、バンダナKeに搭載された検出装置1のセンサ部10の配置例を示す図である。図34は、衣服TSに搭載された検出装置1のセンサ部10の配置例を示す図である。図35は、粘着性シートPSに搭載された検出装置1のセンサ部10の配置例を示す図である。例えば、図33のバンダナKe、図34の衣服TS、図35の粘着性シートPSのように、生体組織に当接する運用がなされる製品に検出装置1を組み込んでもよい。この場合、少なくともセンサ部10は、製品の使用時に生体組織に当接することが想定される部位に設けられることが望ましい。また、図示を省略しているが、第1光源61、第2光源62等の光源は、センサ部10と生体組織との位置関係を考慮して配置されることが望ましい。なお、製品はバンダナKe、衣服TS、粘着性シートPSに限られるものでなく、使用時に生体組織に当接することが想定されるあらゆる製品に検出装置1を組み込み可能である。なお、粘着性シートPSは、例えば外用鎮痛・消炎シートのように、粘着性が付加されたシート状の製品である。
【0174】
なお、各実施形態において、ゲート線駆動回路15が、複数のゲート線GCLに順次ゲート駆動信号Vgclを供給する時分割選択駆動を行う場合を示したがこれに限定されない。センサ部10は、符号分割選択駆動(以下、CDM(Code Division Multiplexing)駆動と表す)により、の検出を行ってもよい。CDM駆動及び駆動回路は、例えば特願2018-005178号公報に記載されているので、特願2018-005178号公報の記載を各実施形態及び変形例(実施形態等)に含め、記載を省略する。
【0175】
また、ゲート線GCLは、大まかな血流の方向に沿うことが望ましい。具体的には、指Fgや手首Wrに巻き付けられる環状のセンサ基材21に沿って円弧を描くセンサ部10におけるゲート線GCLが、当該環の中心軸に沿うことが望ましい。
【0176】
以上、本発明の好適な実施形態等を説明したが、本発明はこのような実施形態等に限定されるものではない。実施形態等で開示された内容はあくまで一例にすぎず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で行われた適宜の変更についても、当然に本発明の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0177】
1,1A 検出装置
10 センサ部
11 検出制御部
21 センサ基材
22 TFT層
23 絶縁層
31 アクティブ層
34 アノード電極
35 カソード電極
48 検出回路
50 出力処理部
61 第1光源
62 第2光源
AA 検出領域
GCL ゲート線
PAA 部分検出領域
PD フォトダイオード
SGL 信号線
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
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