IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 独立行政法人産業技術総合研究所の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】化合物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 7/18 20060101AFI20241022BHJP
   C07F 7/04 20060101ALI20241022BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20241022BHJP
【FI】
C07F7/18 X CSP
C07F7/04 E
C07B61/00 300
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021078754
(22)【出願日】2021-05-06
(65)【公開番号】P2022172690
(43)【公開日】2022-11-17
【審査請求日】2024-02-07
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「有機ケイ素機能性化学品製造プロセス技術開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 正安
(72)【発明者】
【氏名】野澤 竹志
(72)【発明者】
【氏名】松本 朋浩
(72)【発明者】
【氏名】八木橋 不二夫
(72)【発明者】
【氏名】渕瀬 啓太
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 一彦
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-184395(JP,A)
【文献】国際公開第2019/054498(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0010012(US,A1)
【文献】KAWAHARA, K. et al.,Dendritic, Nanosized Building Block for Siloxane-Based Materials: A Spherosilicate Dendrimer,Chemistry - A European Journal,2011年,(2011), 17, 47,13188-13196
【文献】KAWAHARA, K. et al.,Stepwise silylation of double-four-ring (D4R) silicate into a novel spherical siloxane with a defined architecture,Journal of Materials Chemistry,2008年,(2008), 18, 27,3193-3195
【文献】KAZMIERCZAK, J. et al.,Ru-Catalyzed Dehydrogenative Silylation of POSS-Silanols with Hydrosilanes: Its Introduction to One-Pot Synthesis,Inorganic Chemistry,2019年,(2019), 58, 2,1201-1207
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 7/18
C07B 61/00
C07F 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物と、下記一般式(2)で表される化合物とを、脱水素触媒の存在下反応させることにより、下記一般式(3)で表される化合物を得る、化合物の製造方法。
【化1】
(式中、pは0、1又は2であり、Rは置換基を有していてもよいアルキル基である。iは0又は1である。)
H(Si(RO)Si(OR・・・(2)
(式中、R及びRは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基であり、jは、0、1、2、3、4又は5である。)
【化2】
(式中、Zは、下記一般式(4)又は下記一般式(5)で表される基であり、(2p+6)個のZは互いに同一でも異なっていてもよく、ただし、1個又は2個以上のZは、前記一般式(5)で表される基であり;pは、上記と同じである。)
-(Si(RO)H ・・・(4)
-(Si(RO)-(Si(RO)Si(OR・・・(5)
式中、R、R、R、i及びjは、上記と同じである。
【請求項2】
下記一般式(35)で表される化合物。
【化3】
(式中、Z35は、下記一般式(4)又は下記一般式(52)で表される基であり、(2p+6)個のZ35は互いに同一でも異なっていてもよく、ただし、1個又は2個以上のZ35は、下記一般式(52)で表される基であり;pは0、1又は2である。)
-(Si(RO)H ・・・(4)
-(Si(RO)-(Si(RO)Si(OR・・・(52)
式中、R、R及びRは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基である。iは0又は1である。iが0のとき、jは1、2、3、4又は5であり、iが1のとき、jは0、1、2、3、4又は5である。
【請求項3】
下記一般式(351)で表される化合物。
【化4】
(式中、Z35は、下記一般式(4)又は下記一般式(52)で表される基であり、8個のZ35は互いに同一でも異なっていてもよく、ただし、1個又は2個以上のZ35は、前記一般式(52)で表される基である。)
-(Si(RO)H ・・・(4)
-(Si(RO)-(Si(RO)Si(OR・・・(52)
式中、R、R及びRは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基である。iは0又は1である。iが0のとき、jは1、2、3、4又は5であり、iが1のとき、jは0、1、2、3、4又は5である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物及びその製造方法に関する。より詳細には、かご型の骨格を有する新規なシロキサン化合物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オルトケイ酸の縮合物又はその誘導体と見做せる、かご型の骨格を有する一群のシロキサン化合物は、機能性ケイ素材料として種々の分野で有望であり、新規化合物の探索と、その製造方法が種々検討されている。
【0003】
例えば、非特許文献1には、このようなかご型シロキサン化合物の1種として、以下に示す合成ルートによって、下記式(90)で表される化合物(本明細書においては、「化合物(90)」と称することがある)を原料として、下記式(91)で表される化合物(本明細書においては、「化合物(91)」と称することがある)を得たことが開示されている。
【0004】
【化1】
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Main Group Metal Chemistry 20 (1997) 515.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、非特許文献の化合物(91)の合成方法では、化合物(91)を得るために、原料である化合物(90)に対して、クロロジメチルシラン((CHHSiCl)を大過剰量使用する必要があるという問題点があった。これは、シリケート化合物である化合物(90)が、大量の水和水を含んでいるためである。
【0007】
このように、従来のかご型シロキサン化合物には、実用的な方法では製造できないものがあり、製造方法の改良が望まれていた。
また、現状、かご型シロキサン化合物の探索も十分に為されているとは言えず、新規のかご型シロキサン化合物の探索も望まれていた。
【0008】
本発明は、新規のかご型シロキサン化合物と、その製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、下記一般式(1)で表される化合物と、下記一般式(2)で表される化合物とを、脱水素触媒の存在下反応させることにより、下記一般式(3)で表される化合物を得る、化合物の製造方法である。
【0010】
【化2】
【0011】
(式中、pは0、1又は2であり、Rは置換基を有していてもよいアルキル基である。iは0又は1である。)
H(Si(RO)Si(OR・・・(2)
(式中、R及びRは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基であり、jは、0、1、2、3、4又は5である。)
【0012】
【化3】
【0013】
(式中、Zは、下記一般式(4)又は下記一般式(5)で表される基であり、(2p+6)個のZは互いに同一でも異なっていてもよく、ただし、1個又は2個以上のZは、前記一般式(5)で表される基であり;pは、上記と同じである。)
-(Si(RO)H ・・・(4)
-(Si(RO)-(Si(RO)Si(OR・・・(5)
式中、R、R、R、i及びjは、上記と同じである。
【0014】
また、本発明は、下記一般式(35)で表される化合物を提供する。
【0015】
【化4】
【0016】
(式中、Z35は、下記一般式(4)又は下記一般式(52)で表される基であり、(2p+6)個のZ35は互いに同一でも異なっていてもよく、ただし、1個又は2個以上のZは、前記一般式(52)で表される基であり;pは0、1又は2である。)
-(Si(RO)H ・・・(4)
-(Si(RO)-(Si(RO)Si(OR・・・(52)
式中、R、R及びRは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基である。iは0又は1である。iが0のとき、jは1、2、3、4又は5であり、iが1のとき、jは0、1、2、3、4又は5である。
【0017】
また、本発明は、下記一般式(351)で表される化合物を提供する。
【0018】
【化5】
【0019】
(式中、Z35は、下記一般式(4)又は下記一般式(52)で表される基であり、8個のZは互いに同一でも異なっていてもよく、ただし、1個又は2個以上のZ35は、前記一般式(52)で表される基である。)
-(Si(RO)H ・・・(4)
-(Si(RO)-(Si(RO)Si(OR・・・(52)
式中、R、R及びRは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基である。iは0又は1である。iが0のとき、jは1、2、3、4又は5であり、iが1のとき、jは0、1、2、3、4又は5である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、新規のかご型シロキサン化合物と、その製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<<化合物の製造方法>>
本発明の一実施形態に係る化合物の製造方法は、下記一般式(1)で表される化合物と、下記一般式(2)で表される化合物とを、脱水素触媒の存在下反応させることにより、下記一般式(3)で表される化合物を得る。
【0022】
【化6】
【0023】
(式中、pは0、1又は2であり、Rは置換基を有していてもよいアルキル基である。iは0又は1である。)
H(Si(RO)Si(OR・・・(2)
(式中、R及びRは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基であり、jは、0、1、2、3、4又は5である。)
【0024】
【化7】
【0025】
(式中、Zは、下記一般式(4)又は下記一般式(5)で表される基であり、(2p+6)個のZは互いに同一でも異なっていてもよく、ただし、1個又は2個以上のZは、前記一般式(5)で表される基であり;pは、上記と同じである。)
-(Si(RO)H ・・・(4)
-(Si(RO)-(Si(RO)Si(OR・・・(5)
式中、R、R、R、i及びjは、上記と同じである。
【0026】
一般式(3)中、(2p+6)個(すなわち、pが0の場合には6個、pが1の場合には8個、pが2の場合には10個)のZは、互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、(2p+6)個のZは、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよいし、一部のみ同一であってもよい。
【0027】
ただし、一般式(3)中、すべてのZが一般式(4)で表される基:-(Si(RO)Hであることはなく、1個又は2個以上のZは、一般式(5)で表される基:-(Si(RO)-(Si(RO)Si(ORであり、(2p+6)個のZがすべて、一般式(5)で表される基:-(Si(RO)-(Si(RO)Si(ORであることが好ましい。
【0028】
一般式(3)中、1個又は2個以上のZが一般式(4)で表される基:-(Si(RO)Hである場合(すなわち、化合物(3)における、すべてのZが一般式(5)で表される基::-(Si(RO)-(Si(RO)Si(ORであるもの、ではない場合)、前記一般式(4)で表される基:-(Si(RO)Hの結合位置は、特に限定されない。
【0029】
、R及びRにおける前記アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれであってもよい。
【0030】
、R及びRにおける、直鎖状又は分岐鎖状の前記アルキル基の炭素数は、特に限定されないが、1~20であることが好ましい。
このような直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、1-メチルブチル基、n-ヘキシル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、n-ヘプチル基、2-メチルヘキシル基、3-メチルヘキシル基、2,2-ジメチルペンチル基、2,3-ジメチルペンチル基、2,4-ジメチルペンチル基、3,3-ジメチルペンチル基、3-エチルペンチル基、2,2,3-トリメチルブチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基等が挙げられる。
直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基の炭素数は、1~6であることがより好ましく、例えば、1~3、及び1~2のいずれかであってもよい。
【0031】
、R及びRにおける、環状の前記アルキル基は、単環状及び多環状のいずれであってもよい。
環状の前記アルキル基の炭素数は、3以上であれば特に限定されないが、3~20であることが好ましい。
環状の前記アルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、1-アダマンチル基、2-アダマンチル基、トリシクロデシル基等が挙げられる。
環状のアルキル基の炭素数は、3~15であることがより好ましく、例えば、3~10、及び3~6のいずれかであってもよいし、5~15及び5~10のいずれかであってもよい。
【0032】
、R及びRにおける前記アルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状の鎖状構造と、環状構造と、が混在したものであってもよい。
このような鎖状構造と環状構造が混在した前記アルキル基としては、例えば、シクロペンチルメチル基、1-シクロペンチルエチル基、シクロヘキシルメチル基、1-シクロヘキシルエチル基等の、上述の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基における1個又は2個以上の水素原子が、上述の環状のアルキル基で置換された構造を有する基;メチルシクロペンチル基、エチルシクロペンチル基、メチルシクロヘキシル基、エチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基等の、上述の環状のアルキル基における1個又は2個以上の水素原子が、上述の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基で置換された構造を有する基等が挙げられる。
鎖状構造と環状構造が混在した前記アルキル基の炭素数は、4以上であれば特に限定されないが、4~25であることが好ましく、例えば、6~15であってもよい。
【0033】
、R及びRにおける前記アルキル基は、置換基を有していてもよい。「置換基を有していてもよい」と記載する場合、アルキル基中の水素原子(-H)を1価の基で置換する場合と、メチレン基(-CH-)を2価の基で置換する場合との両方を含む。すなわち、前記置換基としては、1価の置換基であってもよく、2価の置換基であってもよい。1価の置換基としては、ハロゲン原子、1価の不飽和炭化水素基、又はアリール基等が挙げられる。
ハロゲン原子としては、前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。2価の置換基としては、酸素原子、硫黄原子、2価の不飽和炭化水素基、エステル基、カルボニル基等が挙げられる。
【0034】
本実施形態の製造方法によれば、従来の化合物(91)の製造方法等とは異なり、原料化合物を大過剰量使用することなく、実用的な方法で、かご型シロキサン化合物を製造できる。
以下、まず、目的物である化合物(3)について説明する。
【0035】
<化合物(3)>
化合物(3)は前記一般式(3)で表される。
一般式(1)中、pは、化合物(3)のかごのサイズを規定しており、0、1又は2である。
すなわち、pが0である場合の化合物(3)は、下記一般式(30)で表され(本明細書においては、この化合物を「化合物(30)」と称することがある)、pが1である場合の化合物(3)は、下記一般式(31)で表され(本明細書においては、この化合物を「化合物(31)」と称することがある)、pが2である場合の化合物(3)は、下記一般式(32)で表される(本明細書においては、この化合物を「化合物(32)」と称することがある)。
【0036】
【化8】
【0037】
すなわち、pが0であって、前記iが0である場合の化合物(3)(化合物(300))の製造方法は、下記一般式(10)で表される化合物と、下記一般式(2)で表される化合物とを、脱水素触媒の存在下反応させることにより、下記一般式(300)で表される化合物を得る、化合物(300)の製造方法である。
【0038】
【化9】
【0039】
H(Si(RO)Si(OR・・・(2)
(式中、R及びRは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基であり、jは、0、1、2、3、4又は5である。)
【0040】
【化10】
【0041】
(式中、Z30は、水素原子又は下記一般式(50)で表される基であり、6個のZ30は互いに同一でも異なっていてもよく、ただし、1個又は2個以上のZ30は、前記一般式(5)で表される基である。)
-(Si(RO)Si(OR・・・(50)
式中、R、R及びjは、上記と同じである。
【0042】
また、pが0であって、前記iが1である場合の化合物(3)(化合物(301))の製造方法は、下記一般式(11)で表される化合物と、下記一般式(2)で表される化合物とを、脱水素触媒の存在下反応させることにより、下記一般式(301)で表される化合物を得る、化合物(301)の製造方法である。
【0043】
【化11】
【0044】
H(Si(RO)Si(OR・・・(2)
(式中、R及びRは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基であり、jは、0、1、2、3、4又は5である。)
【0045】
【化12】
【0046】
(式中、Z31は、下記式(41)又は下記一般式(51)で表される基であり、6個のZ31は互いに同一でも異なっていてもよく、ただし、1個又は2個以上のZ31は、前記一般式(5)で表される基である。)
-Si(ROH ・・・(41)
-(Si(RO)-(Si(RO)Si(OR・・・(51)
式中、jは、上記と同じである。
【0047】
また、pが1であって、前記iが0である場合の化合物(3)(化合物(310))の製造方法は、下記一般式(20)で表される化合物と、下記一般式(2)で表される化合物とを、脱水素触媒の存在下反応させることにより、下記一般式(310)で表される化合物を得る、化合物(310)の製造方法である。
【0048】
【化13】
【0049】
H(Si(RO)Si(OR・・・(2)
(式中、R及びRは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基であり、jは、0、1、2、3、4又は5である。)
【0050】
【化14】
【0051】
(式中、Z30は、水素原子又は下記一般式(50)で表される基であり、8個のZ30は互いに同一でも異なっていてもよく、ただし、1個又は2個以上のZ30は、前記一般式(50)で表される基である。)
-(Si(RO)Si(OR・・・(50)
式中、R、R及びjは、上記と同じである。
【0052】
また、pが1であって、前記iが1である場合の化合物(3)(化合物(311))の製造方法は、下記一般式(21)で表される化合物と、下記一般式(2)で表される化合物とを、脱水素触媒の存在下反応させることにより、下記一般式(311)で表される化合物を得る、化合物(311)の製造方法である。
【0053】
【化15】
【0054】
H(Si(RO)Si(OR・・・(2)
(式中、R及びRは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基であり、jは、0、1、2、3、4又は5である。)
【0055】
【化16】
【0056】
(式中、Z31は、下記式(41)又は下記一般式(51)で表される基であり、8個のZ31は互いに同一でも異なっていてもよく、ただし、1個又は2個以上のZ31は、前記一般式(51)で表される基である。)
-Si(ROH ・・・(41)
-(Si(RO)-(Si(RO)Si(OR・・・(51)
式中、R、R、R及びjは、上記と同じである。
【0057】
また、pが2であって、前記iが0である場合の化合物(3)(化合物(320))の製造方法は、下記一般式(30)で表される化合物と、下記一般式(2)で表される化合物とを、脱水素触媒の存在下反応させることにより、下記一般式(320)で表される化合物を得る、化合物(320)の製造方法である。
【0058】
【化17】
【0059】
H(Si(RO)Si(OR・・・(2)
(式中、R及びRは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基であり、jは、0、1、2、3、4又は5である。)
【0060】
【化18】
【0061】
(式中、Z30は、水素原子又は下記一般式(50)で表される基であり、10個のZ30は互いに同一でも異なっていてもよく、ただし、1個又は2個以上のZ30は、前記一般式(50)で表される基である。)
-(Si(RO)Si(OR・・・(50)
式中、R、R及びjは、上記と同じである。
【0062】
また、pが2であって、前記iが1である場合の化合物(3)(化合物(321))の製造方法は、下記一般式(31)で表される化合物と、下記一般式(2)で表される化合物とを、脱水素触媒の存在下反応させることにより、下記一般式(321)で表される化合物を得る、化合物(321)の製造方法である。
【0063】
【化19】
【0064】
H(Si(RO)Si(OR・・・(2)
(式中、R及びRは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基であり、jは、0、1、2、3、4又は5である。)
【0065】
【化20】
【0066】
(式中、Z31は、下記式(41)又は下記一般式(51)で表される基であり、10個のZ31は互いに同一でも異なっていてもよく、ただし、1個又は2個以上のZ31は、前記一般式(51)で表される基である。)
-Si(ROH ・・・(41)
-(Si(RO)-(Si(RO)Si(OR・・・(51)
式中、R、R、R及びjは、上記と同じである。
【0067】
次に、原料である化合物(1)、化合物(2)及び脱水素触媒について、順次説明する。
【0068】
<化合物(1)>
化合物(1)は、前記一般式(1)で表される。
一般式(1)中のpは、一般式(3)中のpと同じであり、Rは一般式(3)中のRと同じである。
【0069】
化合物(1)は、iが0のとき、例えば、国際公開第2018/193732号に開示された方法で製造できる。
【0070】
化合物(1)は、iが1のとき、例えば、「Naoto Sato et al., Chem. Eur. J. 2018, Vol. 24, 17033-17038」に開示された方法で製造できる。
【0071】
化合物(1)としては、その製造時における操作(例えば、洗浄条件、取り出し条件、精製条件等)を適宜選択することで、水和水を含まないものを調製できる。このような、水和水を含まない化合物(1)(例えば結晶)を用いることで、化合物(2)、脱水素触媒等の、化合物(3)の製造原料を大過剰量使用することが避けられ、化合物(3)を効率よく、良好な収率で製造できる。
【0072】
化合物(1)は、溶媒成分の分子を含まないものであってもよいし、水以外の溶媒成分の分子を含むものであってもよい。前記溶媒成分としては、例えば、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)等が挙げられる。DMAcの分子を含む化合物(1)は、製造が容易で、かつ水和水を含まない化合物(1)として、好ましいものの一例である。化合物(1)は、iが0のとき、DMAcの分子を含む結晶であることが好ましい。
【0073】
1分子の化合物(1)が含む溶媒成分の分子数は、化合物(1)の製造時における操作条件によって、調節できる。
例えば、DMAcの分子を含む化合物(1)において、1分子の化合物(1)が含むDMAcの分子数は、例えば、1~20のいずれかであってもよいが、これは一例である。
【0074】
<化合物(2)>
化合物(2)は、一般式(2)で表される。
H(Si(RO)Si(OR・・・(2)
(式中、R及びRは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基であり、jは、0、1、2、3、4又は5である。)
【0075】
及びRは、上記と同じである。
化合物(2)は、市販品を用いることができるほか、特開2001-139582号公報、特開平9-268191号公報、Polymer Chemistry, 2020, Vol.11, 7625-7636.(Supplementaly files)等を参考に合成することができる。
以下に、化合物(2)として好ましい化合物の具体例を列挙する。化合物(2)はこれらに限られない。
【0076】
HSi(OCH
HSi(OCHCH
HSi(OCHCHCH
HSi(OCH(CH
HSi(OCHCHCHCH
【0077】
HSi(CHOSi(OCH
H(Si(CHO)Si(OCH
H(Si(CHO)Si(OCH
H(Si(CHO)Si(OCH
HSi(CHCHOSi(OCH
H(Si(CHCHO)Si(OCH
H(Si(CHCHO)Si(OCH
H(Si(CHCHO)Si(OCH
HSi(CHCHOSi(OCHCH
H(Si(CHCHO)Si(OCHCH
H(Si(CHCHO)Si(OCHCH
H(Si(CHCHO)Si(OCHCH
【0078】
<脱水素触媒>
脱水素触媒としては、白金族元素が好ましく、Ru(ルテニウム)、Os(オスミウム)、Rh(ロジウム)、Ir(イリジウム)、Pd(パラジウム)、及びPt(白金)からなる群より選択される少なくとも一種が挙げられる。
脱水素触媒としての白金族元素は担体の表面に担持されていてよい。前記担体は、活性炭素(C)であることが好ましい。
脱水素触媒として、活性炭素(C)に担持されたPd(パラジウム)、すなわち、パラジウム炭素が好ましい。
【0079】
脱水素触媒として白金族元素を使用する場合、白金族元素の使用量は、例えば、化合物(1)の使用量に対して、0.1~1.6倍モル量であることが好ましく、0.2~0.8倍モル量であってもよい。脱水素触媒としての白金族元素の使用量は、例えば、化合物(1)の使用量に対して、(2p+6)の0.01~0.2倍モル量であることが好ましく、(2p+6)の0.02~0.1倍モル量であってもよい。白金族元素の前記使用量が前記下限値以上であることで、化合物(3)の生成が速やかに進行する。白金族元素の前記使用量が前記上限値以上以下であることで、白金族元素の過剰使用が抑制される。
【0080】
次に、化合物(1)と化合物(2)とを反応させる方法全般について、説明する。
【0081】
<化合物(1)と化合物(2)との反応条件>
化合物(3)は、化合物(1)と化合物(2)とを脱水素反応させることにより得られる。
反応に供する脱水素触媒は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、目的とする化合物(3)の構造に応じて、適宜選択すればよい。
脱水素触媒を2種以上用いる場合には、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて適宜調節できる。
【0082】
なお、本明細書においては、化合物(1)、(2)、(3)及び脱水素触媒の種類数に関する記載では、特に断りのない限り、立体異性体を考慮していない。
【0083】
化合物(2)の使用量は、目的とする化合物(3)の構造等に応じて、適宜調節できる。
例えば、化合物(3)中の、一般式(5)で表される基の数に応じて、化合物(2)の使用量を調節できる。
【0084】
例えば、pの値によらず、化合物(2)の使用量が、化合物(1)の使用量に対して、1~2倍モル量である場合には、1分子中の前記一般式(5)で表される基の数が1~2個である化合物(3)が好適に得られる。
例えば、pの値によらず、化合物(2)の使用量が、化合物(1)の使用量に対して、3~4倍モル量である場合には、1分子中の前記一般式(5)で表される基の数が3~4個である化合物(3)が好適に得られる。
例えば、pの値によらず、化合物(2)の使用量が、化合物(1)の使用量に対して、5~6倍モル量である場合には、1分子中の前記一般式(5)で表される基の数が5~6個である化合物(3)が好適に得られる。
例えば、pが0である場合、化合物(2)の使用量が、化合物(1)の使用量に対して、6倍モル量以上である場合には、1分子中の前記一般式(5)で表される基の数が6個である化合物(3)が、より高収率で得られる。
例えば、pが1又は2である場合、化合物(2)の使用量が、化合物(1)の使用量に対して、7~8倍モル量である場合には、1分子中の前記一般式(5)で表される基の数が7~8個である化合物(3)が好適に得られる。
例えば、pが1である場合、化合物(2)の使用量が、化合物(1)の使用量に対して、8倍モル量以上である場合には、1分子中の前記一般式(5)で表される基の数が8個である化合物(3)が、より高収率で得られる。
例えば、pが2である場合、化合物(2)の使用量が、化合物(1)の使用量に対して、9~10倍モル量である場合には、1分子中の前記一般式(5)で表される基の数が9~10個である化合物(3)が好適に得られる。
例えば、pが2である場合、化合物(2)の使用量が、化合物(1)の使用量に対して、10倍モル量以上である場合には、1分子中の前記一般式(5)で表される基の数が10個である化合物(3)が、より高収率で得られる。
【0085】
化合物(2)の使用量は、例えば、化合物(1)の使用量に対して、(2p+6)の1.2~3倍モル量であってもよい。このような使用量は、例えば、前記置換数が(2p+6)個である(すなわち、すべてのZが一般式(5)で表される基である)場合に好適である。これは、pが1である場合であれば、化合物(2)の使用量は、化合物(1)の使用量に対して8~16倍モル量であってもよく、このような使用量は、例えば、前記置換数が8である(すなわち、すべてのZが一般式(5)で表される基である)場合に好適である、ことを意味する。
【0086】
なお、ここまでで説明した化合物(2)の使用量は、目的とする化合物(3)を効率よく、良好な収率で得るための一例であり、化合物(2)の使用量は、化合物(3)の製造条件全般を考慮して、適宜調節できる。
また、ここまでで説明した化合物(2)の使用量は、2種以上の化合物(2)を用いる場合には、用いる化合物(2)の全種類の合計使用量を意味する。
【0087】
[溶媒]
化合物(1)と化合物(2)との反応は、溶媒を用いずに行ってもよいが、溶媒を用いて行うことが好ましい。溶媒を用いることにより、反応液の流動性が向上し、化合物(1)と化合物(2)との反応がより円滑に進行し、副生成物の生成量も低減できる。
【0088】
前記溶媒は、化合物(1)、化合物(2)、脱水素触媒等の、反応に用いる成分との反応性を有しないものが好ましい。
前記溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、1,4-ジオキサン、テトラヒドロピラン、ジブチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン等のエーテル(エーテル結合を有する化合物);N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)等のアミド;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル;1,2-ジクロロエタン、塩化メチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素(置換基としてハロゲン原子を有する炭化水素);プロピオニトリル、アセトニトリル等のニトリル(シアノ基を有する化合物);トルエン、n-ヘキサン、メチルシクロヘキサン等の炭化水素等が挙げられる。
【0089】
溶媒を用いる場合、前記溶媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて適宜調節できる。
【0090】
溶媒を用いる場合、溶媒の使用量は、特に限定されないが、例えば、化合物(1)1mmolに対して、0~200mLであることが好ましく、化合物(1)1mmolに対して、10~150mLであることがより好ましい。溶媒の使用量が前記下限値以上であることで、溶媒を用いたことによる効果がより顕著に得られる。溶媒の前記使用量が前記上限値以下であることで、溶媒の過剰使用が抑制される。
【0091】
[他の成分]
化合物(1)と化合物(2)との反応時には、本発明の効果を損なわない範囲内において、化合物(1)と、化合物(2)と、脱水素触媒と、前記溶媒と、のいずれにも該当しない他の成分を用いてもよい。
前記他の成分の種類は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択できる。
【0092】
前記他の成分を用いる場合、前記他の成分は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて適宜調節できる。
【0093】
前記他の成分を用いる場合、前記他の成分の使用量は、特に限定されず、前記他の成分の種類に応じて、任意に選択できる。
【0094】
[他の反応条件]
反応温度は、適宜調節すればよく、特に限定されない。
反応温度は、10~40℃であることが好ましく、例えば、18~30℃等の室温であってもよい。
【0095】
反応時間は、化合物(3)の生成量が増大するように、反応温度等、他の条件に応じて適宜調節すればよく、特に限定されない。
反応時間は、例えば、パラジウム炭素を用いる場合であれば10~240分間であることが好ましく、30~180分間であることがより好ましい。
【0096】
本実施形態においては、反応終了後、必要に応じて公知の手法によって後処理を行った後、公知の手法によって化合物(3)を取り出すことができる。
例えば、反応終了後、適宜必要に応じて、ろ過、洗浄、抽出、pH調整、脱水、濃縮等の後処理操作をいずれか単独で、又は2種以上組み合わせて行い、次いで、濃縮、結晶化、再沈殿、カラムクロマトグラフィー等により、化合物(3)を取り出すことができる。また、取り出した化合物(3)は、さらに必要に応じて、結晶化、再沈殿、カラムクロマトグラフィー、抽出、溶媒による結晶の撹拌洗浄等の操作をいずれか単独で、又は2種以上組み合わせて、1回又は2回以上行うことによって、精製してもよい。
反応終了後に、化合物(3)を用いる他の工程を引き続き行う場合には、反応終了後に、必要に応じて公知の手法によって後処理を行った後、化合物(3)を取り出すことなく、引き続き前記他の工程を行ってもよい。
【0097】
化合物(1)と化合物(2)との反応によって、複数種の化合物(3)が生成している場合、上述の後処理操作及び精製操作のいずれか一方又は両方を、適宜選択して行うことにより、目的とする化合物(3)を得られる。複数種の化合物(3)が生成していても、化合物(3)の構造からその特性を推測できるため、その特性に適した後処理操作又は精製操作を選択することにより、目的とする化合物(3)の収率を向上させることができる。
また、化合物(2)の使用量、その他の反応条件等を調節することで、目的とする化合物(3)の生成率を向上させることによって、化合物(3)の収率を向上させることができる。
【0098】
化合物(3)の構造は、例えば、核磁気共鳴(NMR)分光法、質量分析法(MS)、赤外分光法(IR)、紫外・可視分光法(UV-VIS吸収スペクトル)、元素分析法等の公知の手法によって、確認できる。
【0099】
<<化合物>>
本発明の一実施形態に係る化合物は、下記一般式(35)で表される。
【0100】
【化21】
【0101】
(式中、Z35は、下記一般式(4)又は下記一般式(52)で表される基であり、(2p+6)個のZ35は互いに同一でも異なっていてもよく、ただし、1個又は2個以上のZ35は、前記一般式(52)で表される基であり;pは0、1又は2である。)
-(Si(RO)H ・・・(4)
-(Si(RO)-(Si(RO)Si(OR・・・(52)
式中、R、R及びRは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基である。iは0又は1である。iが0のとき、jは1、2、3、4又は5であり、iが1のとき、jは0、1、2、3、4又は5である。
【0102】
本実施形態の化合物(本明細書においては、「化合物(35)」と称することがある)は、機能性ケイ素材料として利用可能であり、有用性が高い。
【0103】
一般式(35)中、pは、化合物(35)のかごのサイズを規定しており、0、1又は2である。
一般式(35)中のpは、先に説明した一般式(3)中のpと同じである。
【0104】
すなわち、pが0である場合の化合物(35)は、下記一般式(350)で表され(本明細書においては、この化合物を「化合物(350)」と称することがある)、pが1である場合の化合物(35)は、下記一般式(351)で表され(本明細書においては、この化合物を「化合物(351)」と称することがある)、pが2である場合の化合物(35)は、下記一般式(352)で表される(本明細書においては、この化合物を「化合物(352)」と称することがある)。
【0105】
【化22】
【0106】
一般式(350)、(351)及び(352)中のZ35は、それぞれ、先に説明した一般式(35)中のZ35と同じである。
一般式(350)、(351)及び(352)中の、複数個のZ35は、それぞれ、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0107】
が0である場合に、特に好ましい化合物(350)の一例としては、例えば、下記一般式(3506)で表される化合物が挙げられる。
【0108】
【化23】
【0109】
式中、Z36は、下記一般式(52)で表される基である。
-(Si(RO)-(Si(RO)Si(OR・・・(52)
式中、R、R及びRは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基である。iは0又は1である。iが0のとき、jは1、2、3、4又は5であり、iが1のとき、jは0、1、2、3、4又は5である。
【0110】
また、pが1である場合に、特に好ましい化合物(351)の一例としては、例えば、下記一般式(3516)で表される化合物が挙げられる。
【0111】
【化24】
【0112】
式中、Z36は、下記一般式(52)で表される基である。
-(Si(RO)-(Si(RO)Si(OR・・・(52)
式中、R、R及びRは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基である。iは0又は1である。iが0のとき、jは1、2、3、4又は5であり、iが1のとき、jは0、1、2、3、4又は5である。
【0113】
また、pが2である場合に、特に好ましい化合物(352)の一例としては、例えば、下記一般式(3526)で表される化合物が挙げられる。
【0114】
【化25】
【0115】
式中、Z36は、下記一般式(52)で表される基である。
-(Si(RO)-(Si(RO)Si(OR・・・(52)
式中、R、R及びRは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基である。iは0又は1である。iが0のとき、jは1、2、3、4又は5であり、iが1のとき、jは0、1、2、3、4又は5である。
【0116】
好ましい化合物(351)の例を以下に列挙する。ただし、化合物(351)はこれらに限定されない。なお、以下の化学式においてMeはメチル基を表す。
【0117】
【化26】
【0118】
【化27】
【0119】
【化28】
【0120】
【化29】
【0121】
【化30】
【0122】
【化31】
【0123】
【化32】
【0124】
【化33】
【0125】
【化34】
【0126】
【化35】
【0127】
【化36】
【0128】
【化37】
【0129】
【化38】
【0130】
【化39】
【0131】
【化40】
【0132】
好ましい化合物(350)の例を以下に列挙する。ただし、化合物(350)はこれらに限定されない。
【0133】
【化41】
【0134】
【化42】
【0135】
【化43】
【0136】
【化44】
【0137】
好ましい化合物(352)の例を以下に列挙する。ただし、化合物(352)はこれらに限定されない。
【0138】
【化45】
【0139】
【化46】
【0140】
【化47】
【0141】
【化48】
【0142】
【化49】
【0143】
【化50】
【0144】
【化51】
【実施例
【0145】
以下、具体的実施例により、本発明についてより詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に、何ら限定されるものではない。
【0146】
本実施例で用いている略称の意味を以下に示す。
THF:テトラヒドロフラン
DMAc:N,N-ジメチルアセトアミド
DMF:N,N-ジメチルホルムアミド
Me:メチル基
Et:エチル基
TMA:テトラメチルアンモニウム
TfOH:トリフルオロメタンスルホン酸
RT:室温
【0147】
以下に示す化合物(1)の収率は、化合物(3)を基準としている。
以下において、「mmol」は「10-3モル」を示す。
以下においては、化合物(3)、化合物(1)の個々の化合物の名称を、これら化合物を表す式に付した符号を用いて決定している。例えば、後述する「式(3111)で表される化合物」は、「化合物(3111)」と称する。
【0148】
[合成例1]
次式(110)で示されるシロキサン化合物(110)は次の方法で合成した。
次式(101)で示される[Si12][OTMA]・48.7HO、8.062g(4.00mmol)をTHF200mLに懸濁させた分散液に硝酸2.12mL(33.5mmol)を加え、5分間撹拌することで懸濁液を得た。この懸濁液をフィルターろ過(THF50mLで洗浄)した。ろ液にDMAc80mLを加えてから減圧留去して濃縮し、貧溶媒法により-5℃にて再結晶化することによりシロキサン化合物(110)を無色固体として得た。シロキサン化合物(110)は、DMAcの分子を含み、水和水を含まない結晶である。シロキサン化合物(110)が次式(110)で示されることは、H-NMR、および29Si-NMRにより確認した。
H-NMR(THF-d):6.41ppm、29Si-NMR(THF-d):-100.0ppm
【0149】
【化52】
【0150】
[合成例2]
次式(111)で示されるシロキサン化合物を、次に示す方法で合成した。
次式(102)で示される[Si12][OSiMeH]、10.2g(10.0mmol)をTHF100mLに溶解させた。この溶液に10%パラジウム炭素(106mg、Pdとして0.10mmol)及び、HO、3.6mLとTHF50mLの混合液を加え、室温で1時間撹拌した。その後反応溶液をセライトろ過し、無水硫酸マグネシウムで脱水したのちに、溶媒を留去することでシロキサン化合物(111)を得た。シロキサン化合物(111)は、水和水を含まない結晶である。シロキサン化合物(111)が次式(111)で示されることは、H-NMR、13C-NMR及び、29Si-NMRにより確認した。
H-NMR(THF-d):0.11ppm、5.68ppm、13C-NMR(THF-d):0.12ppm、29Si-NMR(THF-d):-11.4ppm、-109.5ppm
【0151】
【化53】
【0152】
[合成例3]
次式(201)で示されるトリメトキシシリル置換シロキサン化合物(201)を、次に示す方法で合成した。
HSiMeOSi(OMe)・・・(201)
【0153】
1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン(HMeSiOSiMeH、19.2g、0.143mol)、Si(OMe)(107g、0.703mol)、及び酢酸(8.56g、0.143mol)の混合物にTfOH(15μL、0.17mmol)を加え、50℃で3時間撹拌した。室温で、EtN(70μL、0.50mmol)を加えた後、減圧蒸留(64Torr、47-57℃)により精製を行うことでトリメトキシシリル置換シロキサン化合物(201)(27.5mmol、収率10%)をSi(OMe)と(HSiMeO)Si(OMe)との混合物として12.5g得た。
【0154】
トリメトキシシリル置換シロキサン化合物(201)が式(201)で示されること、及び、得られた生成物が次式(202)で示されるシロキサン化合物(202)、及び、次式(203)で示されるシロキサン化合物(203)の混合物であることを、H-NMR、13C-NMR、及び、29Si-NMRにより確認した。
Si(OMe)・・・(202)
(HSiMeO)Si(OMe)・・・(203)
H-NMR(CDCN):0.26ppm、3.51ppm、4.73ppm
13C-NMR(CDCN):0.5ppm、51.5ppm
29Si-NMR(CDCN):-2.1ppm、-83.6ppm
【0155】
【化54】
【0156】
[合成例4]
次式(204)で示されるトリメトキシシリル置換シロキサン化合物(204)を、次に示す方法で合成した。
H(SiMeO)Si(OMe)・・・(204)
【0157】
1,1,3,3,5,5-ヘキサメチルトリシロキサン(H(SiMeO)SiMeH、41.7g、0.20mol)にジクロロメタン360mLを加えた。この溶液にジクロロヒダントイン(19.7g、0.10mol)とジクロロメタン140mLの混合溶液を滴下した後に、水浴に浸した状態で1時間、水浴を外して3時間撹拌した。溶媒を留去し、ペンタン100mLを加えてセライトろ過により不要物を除いた。得られたろ液から溶媒を留去し、減圧蒸留(30Torr、53-66℃)により精製を行うことで、シロキサン化合物(205)(0.091mol)(収率46%)、シロキサン化合物(206)、及び、シロキサン化合物(207)を含む混合物22.2gを得た。続いて得られたシロキサン化合物(205)(0.021mol)、シロキサン化合物(206)、及び、シロキサン化合物(207)を含む混合物4.98gとNaHCO(5.17g、0.062mol)にジエチルエーテルを23mL加え、24時間室温で撹拌した。得られた溶液に水100mLを加え、水層をジエチルエーテル50mLで3回抽出した。その後得られたジエチルエーテル溶液を水50mLで3回水洗し、NaSOを40g加えて乾燥した。NaSOをろ過により除き、溶媒を留去後、クーゲル蒸留(30Torr、90-110℃)することで、シラノール化合物(208)を3.69g得た(16.4mmol、収率80%)。続いてシラノール化合物(208)(3.69g、16.4mmol)とSi(OMe)(25.0g、166mmol)の混合溶液にCa(OH)(0.123g、1.66mmol)を加え122℃で30分加熱撹拌した。その後室温まで冷却した溶液にヘキサン90mLを加え、メンブレンフィルターろ過を行い、溶媒を留去した。さらに、得られた溶液をクーゲル蒸留(3.8-6.1Torr、90-100℃)により精製することでトリメトキシシリル置換シロキサン化合物(204)を4.38g得た(収率77%)。
H(SiMeO)SiMeCl・・・(205)
H(SiMeO)SiMeH・・・(206)
Cl(SiMeO)SiMeCl・・・(207)
H(SiMeO)SiMeOH・・・(208)
【0158】
トリメトキシシリル置換シロキサン化合物(204)が式(204)で示されることは、H-NMR、13C-NMR、及び29Si-NMRにより確認した。
H-NMR(C):0.20ppm0.21ppm、0.26ppm、3.50ppm、5.02ppm
13C-NMR(C):0.8ppm、0.8ppm、1.0ppm、51.5ppm
29Si-NMR(C):-6.2ppm、-18.9ppm、-19.2ppm、-84.6ppm
【0159】
【化55】
【0160】
[合成例5]
次式(209)で示されるトリメトキシシリル置換シロキサン化合物(209)を、次に示す方法で合成した。
H(SiMeO)Si(OMe)・・・(209)
【0161】
初めに、J. Am. Chem. Soc. 2016, Vol.138, 4210-4218に記載の方法に沿って、次に示す方法で、次式(210)で示されるシロキサン化合物(210)を合成した。
H(SiMeO)SiMeCl・・・(210)
【0162】
ヘキサメチルシクロトリシロキサン(114g、0.512mol)とHMeSiCl(56.6g、0.598mol)にDMF1.38mLとアセトニトリル27mLを加え室温で24時間撹拌した。この溶液を減圧蒸留(300Pa、60℃)により精製することで、次式(210)で示されるシロキサン化合物(210)を145g得た(収率89%)。続いて得られたシロキサン化合物(210)(4.87g、15mmol)とNaHCO(3.88g、0.046mol)にジエチルエーテルを17mL加え、24時間室温で撹拌した。得られた溶液に水100mLを加え、水層をトルエン50mLで3回抽出した。その後得られたトルエン溶液を水50mLで3回水洗し、NaSOを40g加えて乾燥した。NaSOをろ過により除き、溶媒を留去することで、シラノール化合物(211)を4.24g得た(収率91%)。続いてシラノール化合物(211)(4.13g、14mmol)とSi(OMe)(21.0g、140mmol)の混合溶液にCa(OH)(0.102g、1.4mmol)を加え122℃で30分加熱撹拌した。その後室温まで冷却した溶液にヘキサン75mLを加え、メンブレンフィルターろ過を行い、溶媒を留去した。さらに、得られた溶液をクーゲル蒸留(2.3Torr、90-115℃)により精製することでトリメトキシシリル置換シロキサン化合物(209)を5.06g得た(収率88%)。
H(SiMeO)SiMeOH・・・(211)
【0163】
トリメトキシシリル置換シロキサン化合物(209)が式(209)で示されることは、H-NMR、13C-NMR、及び29Si-NMRにより確認した。
H-NMR(C):0.19ppm、0.20ppm0.25ppm、0.28ppm、3.50ppm、5.02ppm
13C-NMR(C):0.8ppm、0.9ppm、1.0ppm、1.2ppm、50.9ppm
29Si-NMR(C):-6.3ppm、-19.3ppm、-19.3ppm、-20.7ppm、-84.6ppm
【0164】
【化56】
【0165】
<<化合物(3)の製造>>
[実施例1]
化合物(111)Si20[SiMeOH]と化合物HSi(OCHを用い、化合物(3111)Si20[SiMeOSi(OCHを製造した。より具体的には以下のとおりである。
【0166】
化合物(111)Si20[SiMeOH](22.9mg、0.02mmol)を乾燥THF1mLに溶解した。この溶液にHSi(OCH(58.7mg、0.48mmol)を加えた後に、さらに10%パラジウム炭素(8.5mg、Pdとして0.008mmol)を加え、室温で3時間撹拌した。得られた溶液の各種NMRスペクトルから、下記化合物(3111)(組成式:Si245240120、「Si20[SiMeOSi(OCH」)が生成していることを確認した。
【0167】
【化57】
【0168】
得られた化合物(3111)のNMRデータを以下に示す。
H-NMR(THF-d):0.22ppm、3.52ppm
13C-NMR(THF-d):0.3ppm、51.2ppm
29Si-NMR(THF-d):-16.8ppm、-85.4ppm、-110.2ppm
【0169】
[実施例2]
化合物(111)Si20[SiMeOH]と化合物HSiMeOSi(OCHを用い、化合物(3112)Si20[(SiMeO)Si(OCHを製造した。より具体的には以下のとおりである。
【0170】
化合物(111)Si20[SiMeOH](1.146g、1.00mmol)を乾燥THF50mLに溶解した溶液に、HSiMeOSi(OCHとSi(OCHと(HSiMeO)Si(OCHの混合物4.384g(HSiMeOSi(OCHの純度43%、含有量9.60mmol)を加えた。この溶液に10%パラジウム炭素(0.426g、Pdとして0.40mmol)を徐々に加えた後、室温で1時間撹拌した。この溶液の各種NMRスペクトルから、化合物(3112)(組成式:Si326056168、「Si20[(SiMeO)Si(OCH」)が生成していることを確認した。
この溶液をセライトろ過し、ろ液を濃縮した。さらに、クーゲルロール蒸留(2.8×10-2Pa、80℃)で副生成物を留去し、残留分として化合物(3112)を2.373g得た(収率88%)。
【0171】
【化58】
【0172】
得られた化合物(3112)のNMRデータを以下に示す。
H-NMR(THF-d):0.19ppm、0.21ppm、3.51ppm
13C-NMR(THF-d):0.9ppm、1.0ppm、51.1ppm
29Si-NMR(THF-d):-18.4ppm、-19.1ppm、-85.3ppm、-110.0ppm
【0173】
[実施例3]
化合物(110)Si20と化合物H(SiMeO)Si(OCHを用い、化合物(3113)Si20[(SiMeO)Si(OCHを製造した。より具体的には以下のとおりである。
【0174】
DMAcを含む化合物(110)Si20(29.8mg、0.02mmol)と化合物H(SiMeO)Si(OCH(82.7mg、0.24mmol)を乾燥THF3mLに溶解した。この溶液に10%パラジウム炭素(8.5mg、Pdとして0.008mmol)を徐々に加えた後、室温で1時間撹拌した。この溶液の各種NMRスペクトルから、化合物(3113)(組成式:Si406872216、「Si20[(SiMeO)Si(OCH」)が生成していることを確認した。
【0175】
【化59】
【0176】
得られた化合物(3113)のNMRデータを以下に示す。
H-NMR(THF-d):0.15ppm、0.16ppm、0.20ppm、3.51ppm
13C-NMR(THF-d):0.9ppm、1.0ppm、1.4ppm、51.1ppm
29Si-NMR(THF-d):-18.8ppm、-19.9ppm、-20.5ppm、-85.4ppm、-110.0ppm
【0177】
[実施例4]
化合物(111)Si20[SiMeOH]と化合物H(SiMeO)Si(OCHを用い、化合物(3114)Si20[(SiMeO)Si(OCHを製造した。より具体的には以下のとおりである。
【0178】
化合物(111)Si20[SiMeOH](22.9mg、0.02mmol)と化合物H(SiMeO)Si(OCH(165.4mg、0.48mmol)を乾燥THF1mLに溶解した。この溶液に10%パラジウム炭素(8.5mg、Pdとして0.008mmol)を徐々に加えた後、室温で1時間撹拌した。この溶液の各種NMRスペクトルから、化合物(3114)(組成式:Si487688264、「Si20[(SiMeO)Si(OCH」)が生成していることを確認した。
【0179】
【化60】
【0180】
得られた化合物(3114)のNMRデータを以下に示す。
H-NMR(THF-d):0.13ppm、0.15ppm、0.15ppm、0.20ppm、3.51ppm
13C-NMR(THF-d):0.9ppm、1.1ppm、1.3ppm、1.5ppm、51.1ppm
29Si-NMR(THF-d):-19.0、-20.1ppm、-20.9ppm、-21.3ppm、-85.4ppm、-110.0ppm
【0181】
[実施例5]
化合物(110)Si20と化合物H(SiMeO)Si(OCHを用い、化合物(3115)Si20[(SiMeO)Si(OCHを製造した。より具体的には以下のとおりである。
【0182】
DMAcを含む混合結晶である化合物(110)Si20(89.6mg、0.06mmol)と化合物H(SiMeO)Si(OCH(301.3mg、0.72mmol)を乾燥THF3mLに溶解した。この溶液に10%パラジウム炭素(25.5mg、Pdとして0.024mmol)を徐々に加えた後、室温で3時間撹拌した。この溶液の各種NMRスペクトルから、化合物(3115)(組成式:Si487688264、「Si20[(SiMeO)Si(OCH」)が生成していること、化合物(3115)は、化合物(3114)と同一の化合物であることを確認した。
この溶液をセライトろ過し、ろ液を濃縮した。さらに、クーゲルロール蒸留(2.2×10-2Pa、166℃)で副生成物を留去し、残留分として化合物(3115)を224.2mg得た(収率96%)。
【0183】
【化61】
【0184】
得られた化合物(3115)のNMRデータを以下に示す。
H-NMR(THF-d):0.13ppm、0.15ppm、0.15ppm、0.19ppm、3.51ppm
13C-NMR(THF-d):0.8ppm、1.1ppm、1.3ppm、1.5ppm、51.1ppm
29Si-NMR(THF-d):-19.0ppm、-20.1ppm、-20.9ppm、-21.3ppm、-85.4ppm、-110.0ppm
【産業上の利用可能性】
【0185】
本発明は、機能性ケイ素材料又はその中間体として、さらに、これらの製造方法として、利用可能である。