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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】気泡塔反応器
(51)【国際特許分類】
   B01J 19/24 20060101AFI20241022BHJP
   C07C 11/02 20060101ALI20241022BHJP
   C07C 2/08 20060101ALI20241022BHJP
   C08F 2/01 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
B01J19/24 A
C07C11/02
C07C2/08
C08F2/01
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023514818
(86)(22)【出願日】2022-07-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-22
(86)【国際出願番号】 KR2022009666
(87)【国際公開番号】W WO2023106533
(87)【国際公開日】2023-06-15
【審査請求日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】10-2021-0177025
(32)【優先日】2021-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ムン・スブ・ファン
(72)【発明者】
【氏名】ホン・ミン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ソク・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・フン・ソン
(72)【発明者】
【氏名】キョン・ソグ・ユク
【審査官】河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0224401(US,A1)
【文献】特表2017-522180(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03231506(EP,A1)
【文献】特開平09-276689(JP,A)
【文献】特表2022-510750(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0094213(US,A1)
【文献】米国特許第05939582(US,A)
【文献】韓国特許第10-1221088(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 19/00 - 19/32
B01J 8/00 - 8/46
C07B 31/00 - 61/00
C07B 63/00 - 63/04
C07C 1/00 - 409/44
C08F 2/00 - 2/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダウンチャンバと、
前記ダウンチャンバの上部に備えられた分散板と、
前記分散板の上部に備えられ、液相の反応媒体内で気相反応物の反応が行われる反応領域と、
前記反応領域の上部に備えられ、前記反応領域から上昇する第1気体ストリームが導入される分離区域(disengaging section)と、
前記分離区域の上部に備えられ、前記分離区域から上昇する第2気体ストリームが導入される凝縮領域(condensation zone)と、
前記反応領域に連結され、前記液相の反応媒体を前記反応領域に供給する反応媒体供給ラインと、
前記ダウンチャンバに連結され、前記気相反応物を前記ダウンチャンバに供給する気相反応物供給配管と、
を含み、
前記凝縮領域の直径は、前記分離区域の直径より大きい、気泡塔反応器。
【請求項2】
前記凝縮領域の直径は、前記分離区域の直径の1.3倍~3倍である、請求項1に記載の気泡塔反応器。
【請求項3】
前記凝縮領域の直径は、前記分離区域の直径の1.5倍~2倍である、請求項1に記載の気泡塔反応器。
【請求項4】
前記凝縮領域は、冷却コイルを含み、
前記冷却コイルは、巻き取られた状態で、前記凝縮領域内部の上部から下部まで備えられる、請求項1又は2に記載の気泡塔反応器。
【請求項5】
前記冷却コイルは、第1冷却コイルおよび第2冷却コイルを含み、
前記第1冷却コイルおよび第2冷却コイルは、それぞれ巻き取られた状態で前記凝縮領域内部の上部から下部まで備えられる、請求項4に記載の気泡塔反応器。
【請求項6】
前記第1冷却コイルおよび第2冷却コイルは、互いに並列に連結され、
前記第1冷却コイルの下端は、上方向に延び、前記第2冷却コイルの上端と連結される、請求項5に記載の気泡塔反応器。
【請求項7】
前記第1冷却コイルは、上端に備えられた第1冷却コイルの入口を含み、
前記第1冷却コイルの入口に導入される冷媒の温度は、-10℃~-5℃である、請求項6に記載の気泡塔反応器。
【請求項8】
前記第1冷却コイルおよび前記第2冷却コイルは互いに離隔し、
前記第1および第2冷却コイルの上端に備えられたそれぞれの入口に冷媒が導入され、前記第1および第2冷却コイルの下端に備えられたそれぞれの出口から冷媒が排出される、請求項5に記載の気泡塔反応器。
【請求項9】
前記凝縮領域の高さH2と前記分離区域の高さH1との割合H2/H1は、1.2~2.0である、請求項1に記載の気泡塔反応器。
【請求項10】
前記気相反応物は、エチレン単量体を含む、請求項1に記載の気泡塔反応器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年12月10日付けの韓国特許出願第10-2021-0177025号に基づく優先権の利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、気泡塔反応器に関し、より詳細には、オリゴマーの製造時に、反応器の内部で固体および液体が飛沫同伴される量を減少させて全工程の安定化を向上させるための気泡塔反応器に関する。
【背景技術】
【0003】
アルファオレフィン(alpha-olefin)は、共単量体、洗浄剤、潤滑剤、可塑剤などに使用される重要な物質として商業的に広く使用され、特に、1-ヘキセンと1-オクテンは、直鎖相低密度ポリエチレン(LLDPE)の製造時に、ポリエチレンの密度を調節するための共単量体として多く使用されている。
【0004】
前記アルファオレフィンは、代表的に、エチレンのオリゴマー化反応により製造されている。前記エチレンのオリゴマー化反応が行われる反応器の形態として、気相のエチレンを反応物として使用して触媒を含む液相の反応媒体を含む反応領域との接触により、エチレンのオリゴマー化反応(三量体化反応または四量体化反応)を行う気泡塔反応器(bubble column reactor)が使用されている。
【0005】
気泡塔反応器の場合、反応領域で液体の反応媒体とともに反応物である気体が互いに混在して2相として存在し、触媒反応の結果として、少量の高分子が副生成物として生成され、これは、液体の反応媒体の中に浮遊する。ここで、多量の気相反応物が反応領域内に多量の気泡状で導入される速度によって固体である前記高分子と液体である反応媒体の飛沫同伴(entrainment)が必ず発生する。
【0006】
このような飛沫同伴によって、副生成物である高分子が反応器の内壁だけでなく、凝縮器、配管、バルブなどの後段工程装置に蓄積され、ファウリング(fouling)が発生する問題がある。このように、前記反応器の後段工程装置にファウリングが発生する場合、装置の能力低下および機械的な損傷を引き起こし、最悪の場合、全工程の運転を中断(shut down)しなければならないため、運転時間の減少による生産量の減少だけでなく、洗浄過程でかかる費用が増加する問題がある。
【0007】
したがって、前記のような問題を解決するためには、気泡塔反応器の内部での高分子が含まれた固体および液体が飛沫同伴される量を減少させるための研究が必要な状況である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、上記発明の背景技術で言及した問題を解決するために、反応器内で目的とする生成物以外の高分子物質を含む副生成物が飛沫同伴されることを防止して全工程の安定化を向上させるための気泡塔反応器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するための本発明の一実施形態によると、本発明は、液相の反応媒体内で気相反応物の反応が行われる反応領域と、前記反応領域の上部に備えられ、前記反応領域から上昇する第1気体ストリームが導入される分離区域(disengaging section)と、前記分離区域の上部に備えられ、前記分離区域から上昇する第2気体ストリームが導入される凝縮領域(condensation zone)とを含み、前記凝縮領域の直径は、前記分離区域の直径より大きい気泡塔反応器を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の気泡塔反応器によると、気泡塔反応器の反応領域の上部に凝縮領域が備えられることで、従来、気泡塔反応器の外部に別の凝縮器を備える場合に比べて、飛沫同伴による凝縮器自体に対するファウリング現象を防止することができる。
【0011】
一方、気泡塔反応器の凝縮領域の直径を反応領域と凝縮領域との間に備えられる分離区域の直径より大きく形成して、凝縮領域での気体上昇速度を減少させて非蒸気の沈降効果を向上させることができる。なお、分離区域に比べて相対的に直径が大きい凝縮領域内で発生する渦流によって気体の進路が変更され、凝縮領域内での均一な混合およびこれによる均一な凝縮の効果を得ることができる。
【0012】
一方、凝縮領域内で冷却コイルの配置により、凝縮領域内での均一な温度分布を実現することができ、これによる前記気相ストリーム内の溶媒および高分子を効果的に凝縮させて反応領域に還流させることができる。
【0013】
これにより、固体および液体などの非蒸気が飛沫同伴される量を減少させて全工程の安定化を向上させることができ、究極的には、反応器の後段工程装置にファウリングが発生することを防止して、反応器の運転停止周期を効果的に伸ばすことができ、後段工程装置のファウリングによる効率低下を防止して、エネルギー費用を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態による気泡塔反応器およびこれに関連する工程フローチャートである。
図2】本発明の一実施形態による気泡塔反応器およびこれに関連する工程フローチャートである。
図3】従来技術による気泡塔反応器およびこれに関連する工程フローチャートである。
図4】従来技術による気泡塔反応器およびこれに関連する工程フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の説明および請求の範囲にて使用されている用語や単語は、通常的または辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適宜定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念に解釈すべきである。
【0016】
本発明において、用語「ストリーム(stream)」は、工程内の流体(fluid)の流れを意味し得、また、移動ライン(配管)内で流れる流体自体を意味し得る。具体的には、前記「ストリーム」は、各装置を連結する配管内で流れる流体自体および流体の流れを同時に意味し得る。また、前記流体は、気体(gas)、液体(liquid)および固体(solid)のいずれか一つ以上が含まれたものを意味し得る。
【0017】
本発明において「#」が正の整数である「C#」という用語は、#個の炭素原子を有するすべての炭化水素を示すものである。したがって、「C10」という用語は、10個の炭素原子を有する炭化水素化合物を示すものである。また、「C#+」という用語は、#個以上の炭素原子を有するすべての炭化水素分子を示すものである。したがって、「C10+」という用語は、10個以上の炭素原子を有する炭化水素の混合物を示すものである。
【0018】
以下、本発明に関する理解を容易にするために、下記図1を参照して、本発明をより詳細に説明する。
【0019】
本発明の一実施形態による気泡塔反応器100は、液相の反応媒体内で気相反応物の反応が行われる反応領域と、前記反応領域の上部に備えられ、前記反応領域から上昇する第1気体ストリームが導入される分離区域(disengaging section)と、前記分離区域の上部に備えられ、前記分離区域から上昇する第2気体ストリームが導入される凝縮領域(condensation zone)とを含み、前記凝縮領域の直径は、前記分離区域の直径より大きいことができる。
【0020】
本発明の一実施形態によると、前記気泡塔反応器100は、触媒および溶媒(solvent)の液相の反応媒体内で単量体(monomer)を含む気相反応物をオリゴマー化反応させてオリゴマー生成物(product)を製造するためのものであることができる。
【0021】
より具体的には、前記気泡塔反応器100は、反応領域300を含み、前記反応領域300の一側面に連結される1以上の反応媒体供給ライン310を介して、反応媒体が反応領域300に供給されることができる。ここで、前記反応媒体は、触媒、助触媒、および溶媒を含むことができる。前記触媒、助触媒、および溶媒は、それぞれ別の反応媒体供給ライン310を介して供給されることができ、2以上の反応媒体の成分が混合された状態で、反応媒体供給ライン310を介して反応領域300に供給されることもできる。
【0022】
本発明の一実施形態によると、前記単量体は、エチレン単量体を含むことができる。具体的な例として、前記エチレン単量体を含む気相反応物は、後述する気泡塔反応器100のダウンチャンバ200内に供給されて、オリゴマー化反応を経て目的とするアルファオレフィン生成物を製造することができる。
【0023】
前記溶媒は、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、オクタン、シクロオクタン、デカン、ドデカン、ベンゼン、キシレン、1,3,5-トリメチルベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンおよび卜リクロロベンゼンからなる群から選択される1種以上を含むことができる。
【0024】
前記触媒は、遷移金属供給源を含むことができる。前記遷移金属供給源は、例えば、クロム(III)アセチルアセトネート、クロム(III)クロライドテトラヒドロフラン、クロム(III)2-エチルヘキサノエート、クロム(III)トリス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオネート)、クロム(III)ベンゾイルアセトネート、クロム(III)ヘキサフルオロ-2,4-ペンタンジオネート、クロム(III)アセテートヒドロキシド、クロム(III)アセテート、クロム(III)ブチレート、クロム(III)ペンタノエート、クロム(III)ラウレートおよびクロム(III)ステアレートからなる群から選択される1種以上を含む化合物であることができる。
【0025】
前記助触媒は、例えば、トリメチルアルミニウム(trimethyl aluminium)、トリエチルアルミニウム(triethyl aluminium)、トリイソプロピルアルミニウム(triisopropyl aluminium)、トリイソブチルアルミニウム(triisobutyl aluminum)、エチルアルミニウムセスキクロライド(ethylaluminum sesquichloride)、ジエチルアルミニウムクロライド(diethylaluminum chloride)、エチルアルミニウムジクロライド(ethyl aluminium dichloride)、メチルアルミノキサン(methylaluminoxane)、修飾メチルアルミノキサン(modified methylaluminoxane)およびボレート(Borate)からなる群から選択される1種以上を含むことができる。
【0026】
一方、前記気泡塔反応器100内の反応領域300で触媒、助触媒、および溶媒を含む液体状態の反応媒体内で単量体とのオリゴマー化反応が行われることができる。このように、単量体のオリゴマー化反応が行われる反応媒体からなる領域を反応領域300と定義し得る。前記オリゴマー化反応は、単量体が小重合される反応を意味し得る。重合される単量体の個数に応じて、三量体化(trimerization)、四量体化(tetramerization)と称し、これをまとめて多量体化(multimerization)とする。
【0027】
前記アルファオレフィンは、共単量体、洗浄剤、潤滑剤、可塑剤などに使用される重要な物質として商業的に広く使用され、特に、1-ヘキセンと1-オクテンは、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)の製造時に、ポリエチレンの密度を調節するための共単量体として多く使用されている。前記1-ヘキセンおよび1-オクテンのようなアルファオレフィンは、例えば、エチレンの三量体化反応または四量体化反応により製造することができる。
【0028】
前記気泡塔反応器100は、前記反応領域300に連結され、前記反応媒体供給ラインの他側に備えられた生成物排出ライン320を含むことができ、前記生成物排出ラインを介してオリゴマー化反応の生成物であるアルファオレフィンを含む生成物が排出されることができる。すなわち、前記生成物排出ライン320は、オリゴマー化反応により生成されたオリゴマー生成物および溶媒を含むことができ、前記オリゴマー生成物と溶媒は、さらなる分離装置により分離されることができる。分離された溶媒は、オリゴマー製造工程内で再使用されることができる。また、前記単量体として、エチレン単量体を用いてオリゴマー化反応を行った場合を例に挙げると、オリゴマー生成物は、1-ヘキセンおよび1-オクテンを含むことができる。前記反応媒体の反応領域300への供給および生成物の反応領域300からの排出は、連続して行われることができる。
【0029】
一方、前記オリゴマー化反応のための単量体を含む気相反応物は、気相反応物供給配管210を介して気泡塔反応器100の下部に位置するダウンチャンバ200内に供給された後、分散板350を通過して液相の反応媒体が含まれた反応領域300に供給されることができる。
【0030】
すなわち、前記分散板350は、前記ダウンチャンバ200と前記反応領域300との間に備えられることができるが、前記分散板350の中心部および円周に沿って等間隔で形成されたホールを介して気相反応物、例えば、単量体がダウンチャンバ200から反応媒体が備えられた反応領域300に均一に分散され供給されることができる。
【0031】
前記分散板350を介して気相反応物が液相の反応媒体を含む反応領域300に流入されると同時に分散され、分散された気体の力によって渦流(turbulence)が発生し、液相の反応媒体と気相反応物の自然な混合が行われる。ここで、分散板350を介して反応領域300に流入される気相反応物の分散力は、前記液相の反応媒体から下方に作用する水頭圧に比べて大きく維持されることで、前記液相の反応媒体が前記反応領域300内に滞留することができる。
【0032】
一方、上述のように、前記気泡塔反応器100の反応領域300に供給された気相反応物は、溶媒および触媒が存在する液体状態の反応媒体内で触媒反応することができ、具体的には、前記触媒反応は、オリゴマー化反応であることができる。この場合、反応領域300内で気相反応物と反応媒体が互いに混在し、2相として存在する。一方、前記反応領域300内では、気相反応物の触媒反応の結果、少量の高分子が副生成物として生成されることができ、これは、液体の反応媒体の中に浮遊する。一方、多量の気相反応物が多量の気泡状で反応領域300内に導入され、未反応の気相反応物は、気体状態で反応媒体を通過して上昇する。上昇する気相反応物の流量および速度によって固体である前記高分子と液体である反応媒体の飛沫同伴(entrainment)が発生することができる。すなわち、未反応の気相反応物が反応領域300を経て上部に移動する際、未反応の気相反応物だけでなく、これとともに副生成物である高分子と一部気化した溶媒がともに上部に移動する。この場合、飛沫同伴された高分子は、高分子の粘着性によって気泡塔反応器100の後段工程装置に沈積し、流体の流動性を阻害するファウリング現象を引き起こす。
【0033】
したがって、本発明の一実施形態による気泡塔反応器100は、反応領域300の上部に備えられる分離区域(disengaging section;DS)と凝縮領域(condensation zone;CZ)を備えることで、高分子を含む副生成物が飛沫同伴されることを防止して、後段工程装置においてファウリングを防止し、全工程の安定化を向上させることができる。
【0034】
より具体的には、反応領域300での第1気体ストリームが分離区域DSに導入されることができる。前記第1気体ストリームは、未反応の気相反応物以外にも混合気体として気化した溶媒および飛沫同伴される高分子を含むことができる。このような未反応の気相反応物および混合気体を含む第1気体ストリームは、分離区域DSを通過することで、上向き移動速度が減少し得、飛沫同伴された高分子および溶媒の一部、特に、比重が相対的に重い固体物質である高分子非蒸気の一部が先に反応領域300で沈降し得る。
【0035】
一方、前記分離区域DSの高さH1、すなわち、前記反応領域300の上面から前記分離区域DSの上面までの長さは、気泡塔反応器100の全長の10%~40%であることができる。前記分離区域DSの高さH1の高さが気泡塔反応器100の全長の10%以上である場合には、前記第1気体ストリーム内に飛沫同伴された高分子および溶媒の沈降に必要な十分な時間および空間を付与することができ、40%以下である場合には、前記分離区域DSが、効率的な沈降効果に加え、気泡塔反応器100が占める空間を最小化することができる。
【0036】
次いで、前記分離区域DSから上昇する気体ストリームは、第2気体ストリームとして、分離区域DSの上部に備えられている凝縮領域CZに導入されることができる。
【0037】
前記凝縮領域CZは、前記分離区域DSに比べて内部温度が低く維持される空間であり、第2気体ストリームが前記凝縮領域CZを通過する過程で第2気体ストリーム内で気化した溶媒および飛沫同伴された高分子の凝縮および沈降が行われる。特に、気化した溶媒の凝縮による液化が可能であり、液化した溶媒は、沈降して反応領域300に還流することができる。
【0038】
一方、従来、気泡塔反応器を示す図3を参照すると、気泡塔反応器は、内部にダウンチャンバ、反応領域、分離区域を順に備えているが、気泡塔反応器の内部に本発明のような凝縮領域を備えることはない。すなわち、気泡塔反応器の上部に排出される未反応の蒸気を外部の熱交換器により凝縮させ、次に、溶媒などの凝縮した成分と未反応の気体反応物を分離装置、例えば、フラッシュドラムにより気液分離が行われていた。この場合、気泡塔反応器の上部に飛沫同伴される高分子成分がそのまま排出され、このような高分子成分は、熱交換器、フラッシュドラム、およびこれらを連結する配管に沈積し、ファウリング現象が頻繁に発生する恐れがある。
【0039】
すなわち、本発明の一実施形態によると、気泡塔反応器100の内部に凝縮領域CZが備えられることで、気泡塔反応器の外部に別の凝縮器を備える場合と比較して、別の配管などの設備がなくても迅速な混合気体の凝縮および沈降効果を得ることができる。さらに、飛沫同伴される高分子による気泡塔反応器と外部の凝縮器との間の配管でのファウリング問題または凝縮器自体内でのファウリング問題を根本的に解決することができる。
【0040】
一方、前記気泡塔反応器100は、横断面が円形である円筒型であることができ、前記反応領域300、前記凝縮領域CZ、および前記分離区域DSの横断面も円形であることができる。前記分離区域DSの直径は、前記反応領域300の直径と同一であることができ、前記凝縮領域CZの直径は、前記分離区域DSの直径より大きく形成されることができる。ここで、前記凝縮領域CZの直径は、具体的には、前記凝縮領域CZの横断面の直径を意味し、前記分離区域DSの直径は、具体的には、前記分離区域DSの横断面の直径を意味する。
【0041】
前記凝縮領域CZの直径が前記分離区域DSの直径より大きく形成される場合、相対的に狭い断面積の分離区域DSを通過した第2気体ストリームの進路が前記凝縮領域CZの入口で変化することで渦流が発生する。このような渦流によって第2気体ストリームは凝縮領域CZの入口で混合され、均一に分布して上昇することができる。さらに、凝縮領域CZの直径が大きくなるため、上昇していた第2気体ストリームの上昇速度が減少し、気化した溶媒の凝縮および飛沫同伴された高分子の沈降効果に優れる。このような均一に混合された第2気体ストリームが減少した速度で凝縮領域CZを通過することで、凝縮領域CZの凝縮効率をより増加させることができる。
【0042】
具体的には、前記凝縮領域CZの直径は、前記分離区域DSの直径の1.3倍~3倍であることができ、より具体的には1.5倍~2倍であることができる。前記直径の割合が1.3倍以上である場合、上記の第2気体ストリームの均一な混合および上昇速度の減少による優れた非蒸気沈降効果を奏することができる。一方、前記の割合が3倍以下である場合、第2気体ストリームが前記凝縮領域CZを通過するための最小限の上昇圧が維持されることができる。
【0043】
一方、前記凝縮領域CZは、冷却コイルを含むことができ、前記冷却コイルは、巻き取られた状態で前記凝縮領域CZの内部の上部から下部まで備えられることができる。前記冷却コイルは、内部で冷媒が流れることができる配管形態であり、前記冷却コイルは、前記凝縮領域CZの上部の冷却コイルに冷媒が導入されることができる冷却コイル入口、および前記凝縮領域CZの下部の冷却コイルに冷媒が排出されることができる冷却コイル出口が備えられることができる。
【0044】
一方、本発明の前記凝縮領域CZの上部に供給される冷媒の温度は、-10℃~-5℃の範囲であることができ、凝縮領域CZの下部から排出される冷媒の温度は、0℃~5℃の範囲であることができる。
【0045】
前記反応領域300でのオリゴマー化反応温度を考慮すると、気相ストリームの凝縮のためには、前記凝縮領域CZに供給される冷媒の温度は、少なくとも-5℃より低い温度である必要がある。また、可用な反応温度範囲およびエネルギー低減の必要に応じて供給される冷媒の温度は-10℃以上である必要がある。
【0046】
一方、所定のオリゴマー化反応温度から気相排出物ストリーム550の温度を下げるために、冷媒の供給温度と排出される冷媒の温度との差は10℃程度が好ましく、このような面で、排出される冷媒の温度は0℃~5℃の範囲であることができる。
【0047】
前記凝縮領域CZの直径が相対的に増加するに伴い、前記凝縮領域CZの内部の適切な冷却温度の維持が重要になる。したがって、前記冷却コイルは、第1冷却コイル500および第2冷却コイル600を含むことができ、前記第1および第2冷却コイルは、それぞれ巻き取られた状態で、前記凝縮領域CZ内部の上部から下部まで備えられることができる。
【0048】
図1を参照すると、本発明の一実施形態による前記第1冷却コイル500および第2冷却コイル600は、前記凝縮領域CZ内で並列連結され、前記第1冷却コイル500の下端は、上方向に延びて、前記第2冷却コイルの上端と連結された形態であることができる。
【0049】
具体的には、前記第1冷却コイル500の上部には、冷媒が導入されるための第1冷却コイル500の入口510が備えられることができ、前記第1冷却コイル500の入口510に導入された冷媒は、コイル状に巻き取られた第1冷却コイル500の内部に沿って下に移動しながら前記第2気体ストリームと熱交換されることができる。前記第1冷却コイル500の下部に移動した冷媒は、前記第2冷却コイル600の上部に再導入されることができる。次いで、冷媒は、コイル状に巻き取られた前記第2冷却コイル600の内部に沿って移動しながら前記第2気体ストリームと熱交換されることができる。冷媒は、前記第2冷却コイル600の下部に備えられた第2冷却コイル600の出口520を介して反応器の外部に排出されることができる。
【0050】
このように、本発明の気泡塔反応器100は、凝縮領域CZ内に第1および第2冷却コイルを含むことで、前記凝縮領域CZの直径が前記分離区域DSの直径より大きく形成されるにもかかわらず、凝縮領域CZ内で冷却コイルと第2気体ストリームとの間の十分な熱交換面積を確保することができ、これにより、凝縮領域CZの均一な冷却温度分布を達成することができる。なお、第2冷却コイル600の冷媒として、第1冷却コイル500に供給された冷媒を使用することができ、エネルギー低減の効果を奏することができる。
【0051】
また、前記分離区域DSで、第1気体ストリーム内の相対的に比重が大きい飛沫同伴された高分子および気化した溶媒の一部の自然的沈降が発生し、それ以外の残りの前記高分子および気化した溶媒が上昇する時に、前記凝縮領域CZの直径の増加によって上昇速度が減少し、渦流によって進行方向が変更される。したがって、前記凝縮領域CZ内において均一な混合およびこれによる均一な凝縮が行われ、一方、非接触面積(dead zone)を減少させて高分子および気化した溶媒が沈降もしくは凝縮されず、前記凝縮領域CZを通過する現象を防止することができる。
【0052】
一方、図4を参照すると、気泡塔反応器の凝縮領域CZが1列の冷却コイルを含む場合、冷却コイルの周辺では凝縮が起きるが冷却コイルと離れた地点では相対的に凝縮があまり行われず、非接触面積(dead zone)が増加し得る。このような従来の1列の冷却コイルでは直径が増加した凝縮領域CZ内の第2気体ストリームに含まれた気化した溶媒の効率的な凝縮および非蒸気の沈降効率が低下するため、凝縮領域CZの直径が相対的に増加する場合には、前記凝縮領域CZ内部の適切な冷却温度の維持が難しくなる問題がある。
【0053】
本発明の他の実施形態によると、前記第1冷却コイル500および前記第2冷却コイル600は、互いに分離されて離隔することができる。具体的には、図2を参照すると、前記第1冷却コイル500および第2冷却コイル600の上端に備えられたそれぞれの入口510、610に冷媒が導入され、冷媒は、コイル状に巻き取られた第1および第2冷却コイル500、600の内部に沿って下方に移動しながら前記第2気体ストリームと熱交換されることができる。次いで、前記第1および第2冷却コイル500、600の下端に備えられたそれぞれの出口520、620から冷媒が排出されることができる。この場合、前記凝縮領域CZの径方向に温度偏差を最小化することができ、凝縮領域CZの内部温度がより均一に制御されることができる。
【0054】
一方、前記凝縮領域の高さH2と前記分離区域の高さH1との割合H2/H1は、1.2~2.0であることができる。前記高さの割合の範囲内である場合、前記分離区域DSで第1気体ストリーム内に飛沫同伴された高分子および溶媒の沈降に必要な十分な時間と空間が可能であり、優れた非蒸気沈降の効果が発生する。このように、凝縮領域CZ内での優れた非蒸気沈降の効果により、前記分離区域DSの高さを減少させることができ、気泡塔反応器100が占める空間を最小化することができる効果がある。
【0055】
このように、本発明の一実施形態による場合、前記凝縮領域CZで前記第2気体ストリーム内の気化した溶媒および高分子のような非蒸気が凝縮および沈降されることができ、前記凝縮領域CZの上部には、未反応の単量体、例えば、気相のエチレンを含む気相排出物ストリーム550が気泡塔反応器100の上部に排出されることができる。この場合、気相排出物ストリーム550には、前記第1排出物ストリームに含まれた混合気体(気化した溶媒および飛沫同伴される高分子)のほとんどが除去された状態で排出されることができる。
【0056】
以上、本発明による気泡塔反応器について記載および図面に図示しているが、前記の記載および図面の図示は、本発明を理解するための核心的な構成のみを記載および図示したものであって、前記記載および図面に図示した工程および装置以外に、別に記載および図示していない工程および装置は、本発明による気泡塔反応器を実施するために適切に応用され用いられることができる。
【符号の説明】
【0057】
100・・・・気泡塔反応器
100'・・・気泡塔反応器
200・・・・ダウンチャンバ
210・・・・気相反応物供給配管
300・・・・反応領域
310・・・・反応媒体供給ライン
320・・・・生成物排出ライン
350・・・・分散板
500・・・・第1冷却コイル
510・・・・入口
520・・・・出口
550・・・・気相排出物ストリーム
600・・・・第2冷却コイル
610・・・・入口
620・・・・出口
DS・・・・・分離区域
CZ・・・・・凝縮領域
H1・・・・・分離区域の高さ
H2・・・・・凝縮領域の高さ
図1
図2
図3
図4