IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダウ・東レ株式会社の特許一覧

特許7575180水中油型シリコーンエマルジョン組成物およびその用途
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】水中油型シリコーンエマルジョン組成物およびその用途
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/06 20060101AFI20241022BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20241022BHJP
   C08L 71/02 20060101ALI20241022BHJP
   C08K 5/17 20060101ALI20241022BHJP
   C08K 5/5415 20060101ALI20241022BHJP
   C09D 183/06 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
C08L83/06
C08K3/36
C08L71/02
C08K5/17
C08K5/5415
C09D183/06
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021528192
(86)(22)【出願日】2020-06-12
(86)【国際出願番号】 JP2020023278
(87)【国際公開番号】W WO2020255895
(87)【国際公開日】2020-12-24
【審査請求日】2023-06-02
(31)【優先権主張番号】P 2019115216
(32)【優先日】2019-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】719000328
【氏名又は名称】ダウ・東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】兒島 和彦
(72)【発明者】
【氏名】野副 次雄
【審査官】尾立 信広
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-159554(JP,A)
【文献】国際公開第2012/002571(WO,A1)
【文献】特開2010-235930(JP,A)
【文献】特開2010-235931(JP,A)
【文献】特開2003-277238(JP,A)
【文献】国際公開第2019/012899(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C09D 1/00-10/00
C09D 101/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ケイ素原子に結合した水酸基または加水分解性基を1分子中に少なくとも2個有し、25℃における粘度が100,000~20,000,000mPa・sの範囲であるポリオルガノシロキサン100質量部、
(B)5~40質量%のシリカ粒子を水中にコロイド状に分散した水性分散体の形態であるコロイダルシリカ(固形分換算) 45~120質量部、
(C1)イオン性乳化剤1~100質量部、
(C2)ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン共重合型ノニオン乳化剤 0.1~50質量部、および
(D)水 0~500質量部(但し、コロイダルシリカ中の水分を除く)
を含有してなる、水中油型シリコーンエマルジョン組成物。
【請求項2】
組成物全体の25℃における粘度が1,000mPa・s以上である、請求項1に記載の水中油型シリコーンエマルジョン組成物。
【請求項3】
さらに、(E)増粘剤を含有する、請求項1または請求項2に記載の水中油型シリコーンエマルジョン組成物。
【請求項4】
(E)成分が、(E1)粘土鉱物を含む増粘剤および(E2)水溶性有機ポリマーを含む増粘剤から選ばれる1種類以上である、請求項に記載の水中油型シリコーンエマルジョン組成物。
【請求項5】
さらに、(F)R1 aSiX4-a (式中、Rは非置換一価炭化水素基または置換一価炭化水素基であり、Xはアルコキシ基またはアルコキシアルコキシ基であり、aは0,1または2である)で示されるアルコキシシランもしくはアルコキシアルコキシシラン、または前記アルコキシシランもしくはアルコキシアルコキシシランの部分加水分解縮合物 0.1~50質量部を含有する、請求項1~のいずれか1項に記載の水中油型シリコーンエマルジョン組成物。
【請求項6】
さらに、(G)アミン化合物を含有する、請求項1~のいずれか1項に記載の水中油型シリコーンエマルジョン組成物。
【請求項7】
エマルジョン粒子の平均一次粒子径が50~600nmの範囲である、請求項1~のいずれか1項に記載の水中油型シリコーンエマルジョン組成物。
【請求項8】
(A)成分が、(A)成分の前駆体である(a)ケイ素原子に結合した水酸基または加水分解性基を1分子中に少なくとも2個有するポリオルガノシロキサンおよび(b)ケイ素原子に結合したアミノキシ基を1分子中に平均で2個有するアミノキシ基含有有機ケイ素化合物を前記の(C1)成分、および前記の(C2)成分の存在下で乳化重合させてなるポリオリガノシロキサンである、請求項1~のいずれか1項に記載の水中油型シリコーンエマルジョン組成物。
【請求項9】
請求項1~のいずれか1項に記載の水中油型シリコーンエマルジョン組成物を含有する、表面処理剤。
【請求項10】
基材表面を、請求項1~のいずれか1項に記載の水中油型シリコーンエマルジョン組成物またはそれを含有する請求項の表面処理剤により表面処理することを特徴とする、表面処理方法。
【請求項11】
請求項1~のいずれか1項に記載の水中油型シリコーンエマルジョン組成物またはそれを含有する請求項の表面処理剤により表面処理されてなる基材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水中油型シリコーンエマルジョン組成物に関するものであり、詳しくは、比較的多量のコロイダルシリカを含有する水中油型シリコーンエマルジョン組成物およびその用途に関するものであり、さらに詳しくは、水分の除去によってゴム状の弾性を有し、かつ、表面に粘着性がなく、摩擦低減性の硬化皮膜を形成し得る、コロイダルシリカを含有する水中油型シリコーンエマルジョン組成物に関するものである。
【0002】
水分の除去により、離型性、剥離性、撥水性、防汚性、耐熱性を有する硬化皮膜を形成する水中油型シリコーンエマルジョン組成物は、塗料、ペーパーコーティング剤、離型剤、剥離剤、繊維処理剤、化粧品などに使用されている。このような技術として、ヒドロキシル基含有ジオルガノシロキサン、シリコーンレジン、およびアミノキシ基末端ジオルガノシロキサンからなる組成物(例えば、特許文献1参照)や、ヒドロキシル基含有ジオルガノシロキサンや架橋剤として側鎖にアミノキシ基を有する線状シロキサン、環状アミノキシシロキサン、アミノキシシラン、及びそれらの部分的加水分解生成物から選ばれる化合物を混合後、乳化した組成物(例えば、特許文献2参照)などが提案されている。しかし、これらの組成物は、硬化皮膜の強度や硬化皮膜の基材への密着が十分ではなく、さらに、基材表面に粘着性が残るという問題があった。
【0003】
この問題を解決するために、コロイダルシリカを含有する水中油型シリコーンエマルジョン組成物が提案されており、例えば特許文献3~6等が提案されており、また、本件出願人らは特許文献7において、硬化触媒として有機錫化合物が不要であり、揮発性のシロキサンオリゴマーの含有量が少なく、水分の除去によってゴム状の弾性を有する硬化皮膜を形成しうる水中油型シリコーンエマルジョン組成物およびその用途を提案している。
【0004】
しかしながら、これらの組成物は、硬化皮膜の強度や硬化皮膜の基材への密着性において依然として改善の余地を残しており、かつ、硬化皮膜の表面に粘着性が残るため、特に、滑らかな表面/感触が求められる基材、摩擦低減性の表面を求められる基材用途に対して適用することができないという問題を残している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平06-73291号公報
【文献】特開平11-193349号公報
【文献】特開昭56-16553号公報
【文献】特開昭59-152972号公報
【文献】特開平09-165554号公報
【文献】特開平10-168393号公報
【文献】国際公開公報パンフレットWO2012/002571(特許登録5848704号)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、基材に対して均一に塗布することが可能であり、水分を除去することにより、表面粘着性(タック)が少なく、基材に対する密着性および皮膜強度に優れる硬化皮膜を形成し得る水中油型シリコーンエマルジョン組成物、その用途および製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく、鋭意検討の結果、本発明者らは、(A)ケイ素原子に結合した水酸基または加水分解性基を1分子中に少なくとも2個有し、25℃における粘度が100,000~20,000,000mPa・sの範囲であるポリオルガノシロキサン100質量部、(B)コロイダルシリカ(固形分換算) 45~120質量部、(C1)イオン性乳化剤1~100質量部、(D)水 0~500質量部(但し、コロイダルシリカ中の水分を除く)を含有してなる、水中油型シリコーンエマルジョン組成物、好ましくは、さらに、(C2)ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン共重合型ノニオン乳化剤 0.1~50質量部を含む水中油型シリコーンエマルジョン組成物およびその表面処理剤としての使用により上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。当該水中油型シリコーンエマルジョン組成物は、上記の構成により、基材に対する密着性および皮膜強度に優れる硬化皮膜を形成し得るものであり、かつ、(A)成分に対して比較的多量のコロイダルシリカ(固形分換算)を含有するので、形成された硬化皮膜の表面が平滑かつ粘着性を生じないタックフリーな状態となり、基材表面に滑らかで摩擦低減性に優れる硬化皮膜を形成可能である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の水中油型シリコーンエマルジョン組成物は、基材表面に対して均一に塗布することが可能であり、(A)成分に対して比較的多量のコロイダルシリカ(固形分換算)を含有するので、水分を除去することにより、表面粘着性(タック)が少なく、基材に対する密着性および皮膜強度に優れる硬化皮膜を形成し得る。当該水中油型シリコーンエマルジョン組成物は、水分の除去によってゴム状の弾性を有し、かつ、表面に粘着性がなく、摩擦低減性の硬化皮膜を形成し得るため、表面処理剤として好適に使用することができ、かつ、当該硬化皮膜を備えた基材を提供することができる。
【0009】
本発明の水中油型シリコーンエマルジョン組成物の製造方法によれば、本発明の水中油型シリコーンエマルジョン組成物を効率よく製造することができる。また、本発明の表面処理方法によれば、広範な種類の基材表面に十分な強度、すなわちゴム状の弾性と基材に対する十分な密着性を有し、かつ、表面粘着性(タック)が少なく、基材表面に滑らかで摩擦低減性に優れる硬化皮膜を効率よく形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の水中油型シリコーンエマルジョン組成物について、詳細に説明する。
【0011】
[(A)成分]
(A)成分は、ケイ素原子に結合した水酸基、アルコキシ基およびアルコキシアルコキシ基からなる群から選択される基を1分子中に少なくとも2個有し、25℃における粘度が100,000~20,000,000mPa・sの範囲であるポリオルガノシロキサンであり、本発明の水中油型シリコーンエマルジョン組成物の主成分である。(A)成分のポリオルガノシロキサンの分子構造は、直鎖状、環状、分岐状、樹枝状、網目状の何れであってもよいが、直鎖状または一部分岐を有する直鎖状であることが好ましい。水酸基、アルコキシ基およびアルコキシアルコキシ基からなる群から選択される基は分子鎖末端に存在してもよく、分子鎖側鎖に存在してもよく、その両方に存在してもよい。アルコキシ基としては、メトキシ基,エトキシ基,n-プロポキシ基,イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、t-ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基などの炭素原子数1~10のアルコキシ基であることが好ましく、アルコキシアルコキシ基としては、メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基、エトキシメトキシ基、メトキシプロポキシ基などの炭素原子数2~10アルコキシアルコキシ基であることが好ましい。
【0012】
水酸基、アルコキシ基およびアルコキシアルコキシ基からなる群から選択される基以外のケイ素原子に結合する有機基としては、非置換一価炭化水素基または置換一価炭化水素基が例示される。非置換一価炭化水素基は、乳化補助作用の点で炭素原子数1~10のものが好ましく、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数6~10のアリール基、炭素原子数2~10のアルケニル基であることが好ましく、特には、メチル基またはフェニル基であることが好ましい。
【0013】
置換一価炭化水素基として、前記の非置換一価炭化水素基、特には炭素原子数1~10のアルキル基またはフェニル基の水素原子の一部又は全部が、フッ素、塩素などのハロゲン原子;エポキシ官能基;メタクリル官能基;アクリル官能基;アミノ官能基;含硫黄官能基;アルコキシ基;ヒドロキシカルボニル基;アルコキシカルボニル基などの置換基で置換された基が例示される。
【0014】
本発明の水中油型シリコーンエマルジョン組成物の水分の除去により得られる硬化皮膜の強度や基材に対する密着性、および、(B)成分を含む硬化皮膜の表面粘着性(タック)の低減および摩擦低減性の見地から、(A)成分の25℃における粘度は、100,000mPa・s~20,000,000mPa・sの範囲であり、300,000mPa・s~10,000,000mPa・sの範囲であることがより好ましく、500,000mPa・s~5,000,000mPa・sの範囲であることがさらに好ましく、750,000mPa・s~3,500,000mPa・sの範囲であることが最も好ましい。(A)成分の粘度が前記の下限未満であると(B)成分の量が後述の範囲であっても、水中油型シリコーンエマルジョン組成物から水分を除去して得られる硬化皮膜の強度および基材への密着性が不十分となる場合があり、また、硬化皮膜の表面粘着性が生じ、平滑面が実現できない場合がある。他方、(A)成分の粘度が前記の上限を超えると、乳化重合では合成が困難であるほか、常法では安定した乳化物を得ることが難しいという問題を生じる。
【0015】
このような(A)成分は、好適には、分子鎖両末端水酸基封鎖ジオルガノポリシロキサンであることが好ましい。このような分子鎖両末端水酸基封鎖ジオルガノポリシロキサンとしては、一般式:HO(R SiO)Hで示されるポリオルガノシロキサンが例示される。なお、式中、Rは前記の水酸基または加水分解性基以外のケイ素原子に結合する非置換または置換の一価炭化水素基と同様であり、中でも、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数6~10のアリール基、炭素原子数2~10のアルケニル基であることが好ましく、特には、メチル基またはフェニル基であることが好ましい。mは2以上の整数であり、25℃における粘度が上記の粘度範囲、100,000mPa・sから20,000,000mPa・sとなる数であることが好ましい。
【0016】
このような(A)成分として、上記構造のポリオルガノポリシロキサンを使用することができ、その製造方法について特に制限されるものではなく、平衡重合法等の公知の製法により得たポリオルガノポリシロキサンを、後述する(C1)成分等の乳化剤により水中に乳化したものであってもよいが、製造時の取り扱い作業性、および、乳化分散時の粒子径や安定性の点から、(A)成分の前駆体であるより低重合度のオルガノポリシロキサンを用いて、乳化重合により得られたオルガノポリシロキサンが好適に使用可能である。
【0017】
特に好適には、(A)成分の前駆体である(a)ケイ素原子に結合した水酸基または加水分解性基を1分子中に少なくとも2個有するポリオルガノシロキサンおよび(b)ケイ素原子に結合したアミノキシ基を1分子中に平均で2個有するアミノキシ基含有有機ケイ素化合物を後述する(C1)成分、より好適には、さらに(C2)成分の存在下で乳化重合させてなるポリオルガノシロキサンである。
【0018】
(A)成分の前駆体である(a)ケイ素原子に結合した水酸基または加水分解性基を1分子中に少なくとも2個有するポリオルガノシロキサンは、上記の(A)成分を構成する原料成分であり、(A)成分より低粘度、かつ、分子鎖の両末端にケイ素原子に結合した水酸基または加水分解性基を有する鎖状のポリオルガノシロキサンであることが好ましい。より具体的には、(a)成分は、25℃における粘度が、(A)成分より低い、特に、100,000mPa・s以下、好ましくは50~50,000mPa・sの範囲にある分子鎖両末端水酸基封鎖ジオルガノポリシロキサン、最も好適には、HO(R SiO)Hで示されるポリオルガノシロキサンであって、nは25℃における(a)成分の粘度が上記の粘度範囲、好適には、50~50,000mPa・sの範囲となる数であることが好ましい。式中、Rは前記の水酸基または加水分解性基以外のケイ素原子に結合する非置換または置換の一価炭化水素基と同様であり、特には、メチル基またはフェニル基であることが好ましい。
【0019】
(b)ケイ素原子に結合したアミノキシ基を1分子中に平均で2個有するアミノキシ基含有有機ケイ素化合物は、(a)成分同士を反応・架橋させることで、粘着感の無い良好な表面硬さとゴム状の弾性を有する硬化皮膜の形成を促進するための成分である。
【0020】
(b)成分は、1分子中に平均して2個のケイ素原子に結合したアミノキシ基を含有し、アミノキシ基は分子鎖側鎖のみに平均で2個存在してもよく、分子鎖両末端のみに存在してもよく、分子鎖末端と分子鎖側鎖の両方に平均で1個ずつ存在してもよい。(b)成分中のアミノキシ基が1分子中に平均して3個以上であると、乳化の際に乳化装置内部や乳化前のプレ混合工程で混合物のゲル化が起こりやすく、製造装置にゲル物が付着する場合があること、また、得られる硬化皮膜の伸びが劣る場合がある。
【0021】
このようなアミノキシ基含有有機ケイ素化合物としては、分子鎖両末端アミノキシ基封鎖ポリジオルガノシロキサン、分子鎖片末端アミノキシ基封鎖ジオルガノシロキサン・オルガノアミノキシシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリオルガノシリル基封鎖ジオルガノシロキサン・オルガノアミノキシシロキサン共重合体、環状ジオルガノシロキサン・オルガノアミノキシシロキサン共重合体、ジアミノキシジオルガノシランが例示される。中でも、分子鎖両末端アミノキシ基封鎖ポリジオルガノシロキサンが好ましい。(b)成分の配合量は、(a)成分100質量部に対して0.1~100質量部であり、0.5~50質量部であることが好ましく、1~20質量部であることがより好ましい。
【0022】
(b)成分は、好ましくは、一般式:
SiO(RSiO)(R SiO)SiR
で示される。上式中、Rは前記と同じであり、中でも炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数6~10のアリール基、炭素原子数2~10のアルケニル基であることが好ましく、特には、メチル基またはフェニル基であることが好ましい。Rはアミノキシ基である。nが0のときRはアミノキシ基であり;nが1のときRのうち一個はアミノキシ基であり、残余のRは炭素原子数1~10の非置換一価炭化水素基、炭素原子数1~10ハロゲン置換一価炭化水素基、水酸基、炭素原子数1~10アルコキシ基および炭素原子数2~10アルコキシアルコキシ基からなる群から選ばれる基であり;nが2のときRは炭素原子数1~10の非置換一価炭化水素基、炭素原子数1~10ハロゲン置換一価炭化水素基、水酸基、炭素原子数1~10アルコキシ基および炭素原子数2~10アルコキシアルコキシ基からなる群から選ばれる基である。
【0023】
非置換一価炭化水素としては、前記と同様の基が例示され、中でも炭素原子数1~10アルキル基、炭素原子数6~10アリール基、炭素原子数2~10アルケニル基であることが好ましく、特には、メチル基またはフェニル基であることが好ましい。ハロゲン置換一価炭化水素基としては前記の非置換一価炭化水素基の水素原子の一部または全部が、ハロゲン原子で置換された基であり、クロロメチル基,3,3,3-トリフルオロプロピル基,3,3,4,4,5,5,5-ヘプタフルオロペンチル,ジフルオロモノクロルプロピル基等のハロゲン置換アルキル基であることが好ましい。アルコキシ基、アルコキシアルコキシ基としては前記と同様の基が例示される。
【0024】
アミノキシ基としては、-ON(R4)2および下記式で表される基から選択される基が例示される。
【化1】
式中Rは炭素原子数1~5の直鎖状または分岐状のアルキル基である。式中Rは炭素原子数2~15の二価の炭化水素基または3~17個の炭素原子と1~3個の窒素原子または1~2個の酸素原子からなる分子鎖主鎖を有する二価の有機基であり、-(CH22-, -(CH25-, -(CH26-, -(CH27-, -(CH22-O-(CH22-, -(CH=CH)-(CH=CH)-, -(CH=N)-(CH=CH)-, -(C6H4)-(CH22-が例示される。中でも-(CH26-, -(CH22-O-(CH22-,であることが好ましい。中でも炭素原子数1~5のアルキル基が窒素原子に結合したジアルキルアミノキシ基であることが好ましく、好ましいアミノキシ基としては、例えば、ジメチルアミノキシ基,ジエチルアミノキシ基,ジプルピルアミノキシ基,ジブチルアミノキシ基、ジヘプチルアミノキシ基,エチルメチルアミノキシ基、プロピルメチルアミノキシ基、プロピルエチルアミノキシ基、ブチルメチルアミノキシ基、ブチルエチルアミノキシ基、ブチルプロピルアミノキシ基、ヘプチルメチルアミノキシ基、ヘプチルエチルアミノキシ基、ヘプチルプロピルアミノキシ基、ヘプチルブチルアミノキシ基が例示され、ジエチルアミノキシ基であることが好ましい。
【0025】
また、上式中、nは0、1または2であり、0または2であることが好ましく、0であることがより好ましい。nが0の場合、上式中Rは、アミノキシ基であり、nが1の場合、上式中Rのうち少なくとも1方は、アミノキシ基である。中でも、上式中nが0でRがアミノキシ基であることが入手の容易さの点から好ましい。
【0026】
式中、pは0以上の整数であり、pの上限は特に限定されないが、乳化のしやすさから、pは0~1000の範囲の整数であることが好ましく、2~200の範囲の整数であることがより好ましく、4~140の範囲の整数であることが最も好ましい。
【0027】
このようなアミノキシ基含有有機ケイ素化合物としては、下記式で表されるアミノキシ基含有有機ケイ素化合物が例示される。なお、式中Meはメチル基を、Etはエチル基をPrはプロピル基を示す。
(Et2NO)Me2SiOSiMe2(ONEt2)
(Et2NO)Me2SiO(Me2SiO)12SiMe2(ONEt2)
(Et2NO)Me2SiO(Me2SiO)40SiMe2(ONEt2)
(Et2NO)Me2SiO(Me2SiO)80SiMe2(ONEt2)
Me2Si(ONEt2)2
Me3SiO(MeSi(ONEt2)O)2SiMe3
Me3SiO(Me2SiO)4(MeSi(ONEt2)O)2SiMe3
Me3SiO(Me2SiO)15(MeSi(ONEt2)O)2SiMe3
Me3SiO(Me2SiO)3(MeSi(ONEt2)O)7SiMe3
【0028】
また、水中油型シリコーンエマルジョン組成物中に(b)成分が残存している場合、当該(A)成分と(B)成分との反応・架橋に寄与する成分であり、粘着感の無い良好な表面硬さとゴム状の弾性を有する硬化皮膜を形成可能である。
【0029】
[(B)成分]
(B)コロイダルシリカは、硬化皮膜の強度や基材に対する密着性を向上させるための成分であり、本発明の組成物において、固形分換算で、(A)成分に対して比較的大量のコロイダルシリカを含むことで、表面粘着性(タック)が少なく、基材表面に滑らかで摩擦低減性に優れる硬化皮膜を形成可能な成分である。
【0030】
コロイダルシリカは、5~40質量%のシリカ粒子を水中にコロイド状に分散した水性分散体として入手可能であり、多くのシラノール基を表面に有し、粒子径は一般的に約1nm~1μmである。このようなコロイダルシリカとしては、ナトリウムイオンまたはアンモニウムイオンにより安定化された塩基性の水性分散体であることが好ましい。塩基性水性分散体としてのコロイダルシリカのpHは7.0以上であることが好ましく、9.0を超えることがより好ましい。コロイダルシリカのシリカ微粒子の形状は特に限定されず、球状であることが一般的であるが、細長い形状のものやパールネックレス状のものを使用してもよい。
【0031】
本発明において、(B)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して、その固形分換算で、45~120質量部の範囲であることが必要であり、好ましくは、50~110質量部の範囲であり、55~100質量部の範囲であることが特に好ましい。
【0032】
ここでコロイダルシリカの固形分とは、不揮発性のシリカ粒子分であり、(B)成分の配合量が前記範囲内であると、本発明の水中油型シリコーンエマルジョン組成物から水を除去してなり、主として(A)成分またはその架橋反応物からなる硬化皮膜表面に平滑性を付与することができる。これに対して、(B)成分の配合量が前記下限未満では、硬化皮膜表面に粘着性(タック)を生じる場合がある。また、(B)成分の配合量が前記上限を超えると、硬化皮膜の柔軟性、ゴム弾性および基材表面に対する追従性および密着性が不十分となる場合があり、得られる硬化皮膜のクラックや剥落、さらに、硬化皮膜表面に粘着性(タック)を生じる場合がある。
【0033】
(B)成分のコロイダルシリカは、(A)成分のポリオルガノシロキサンが乳化重合で得られる場合、重合中に添加することも可能であり、重合後に添加することも可能である。具体的には、(A)成分のポリオルガノシロキサンを含む乳化物に、水を含むコロイダルシリカ粒子の水性分散体を添加してもよく、(A)成分の前駆体である前記の(a)成分等を含む乳化物中にコロイダルシリカ粒子の水性分散体を添加して乳化重合反応を進めてもよい。
【0034】
このようなコロイダルシリカとしては、日産化学工業(株)製のスノーテックス20,スノーテックス30等;旭電化工業(株)製のアデライトAT-20等;クラリアントジャパン(株)製のクレボゾール30R9等;デュポン社製のルドックス(商標)HS-40等;触媒化成工業(株)製のカタロイドS-20L等;日本化学工業(株)製のシリカドール-20等が例示される。
【0035】
[(C1)成分]
(C1)成分のイオン性乳化剤は、(A)成分および必要に応じて(F)成分を(D)成分中に安定に乳化させる成分である。(C1)成分の配合量は(A)成分100質量部に対して1~100質量部であり、1~50質量部であることが好ましく、1~20質量部であることがより好ましい。
【0036】
(C1)成分のイオン性乳化剤としては、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤および両性界面活性剤を使用できる。イオン性乳化剤としては、このような界面活性剤の一種を単独で用いてもよく、種類の異なる界面活性剤を2種類以上併用してもよい。
【0037】
アニオン系界面活性剤として、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、アルキルナフチルスルホン酸塩、不飽和脂肪族スルホン酸塩、水酸化脂肪族スルホン酸塩が例示される。
【0038】
カチオン系界面活性剤として、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライドなどのアルキルトリメチルアンモニウム塩;ジオクタデシルジメチルアンモニウムクロライド、ジヘキサデシルジメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムクロライドなどのジアルキルジメチルアンモニウム塩などの第4級アンモニウム型塩の界面活性剤が例示される。
【0039】
両性界面活性剤として、アルキルベタイン、アルキルイミダゾリンが例示される。
【0040】
本発明の水中油型シリコーンエマルジョン組成物は、その安定性の見地から、(C1)イオン性乳化剤を、他のノニオン性乳化剤と併用することが好ましい。
【0041】
本発明において使用可能なノニオン性乳化剤として、公知のノニオン系界面活性剤を使用することができる。ノニオン系界面活性剤として、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン共重合体型ノニオン系乳化剤が例示される。
【0042】
[(C2)成分]
特に、本発明の水中油型シリコーンエマルジョン組成物は、ノニオン性乳化剤として、(C2)ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン共重合型ノニオン乳化剤をさらに含むことが好ましい。前記の(C1)成分と(C2)成分を併用することで、(A)成分および(F)成分を、分散媒である(D)成分中に小粒子径で安定に乳化することができ、特に、(A)成分を乳化重合により形成させる場合に、乳化重合反応を安定して進行させ、安定性の高い乳化重合反応物である、(A)成分の乳化物を与えることができる。
【0043】
(C2)成分である、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン共重合型ノニオン乳化剤は、通常、下記一般式(1)または一般式(2)で表される化合物である。
HO(CH2CH2O)a(CH(CH3)CH2O)b(CH2CH2O)CH (1)
HO(CH(CH3)CH2O)d(CH2CH2O)e(CH(CH3)CH2O)fH (2)
一般式(1)、(2)において、a、b、c、d、e及びfは、エチレンオキシドないしプロピレンオキシドの平均付加モル数であり、それぞれ独立して、1~350の数である。(C2)成分の重量平均分子量は、1,000~18,000が好ましく、より好ましくは1,500~10,000である。(C2)成分が固体状である場合は、水溶液にして使用することも可能である。
【0044】
(C2)成分である化合物は、より具体的には、(株)ADEKA製の「プルロニック(登録商標)L」シリーズ、「プルロニック(登録商標)P」シリーズ、「プルロニック(登録商標)F」シリーズ、「プルロニック(登録商標)TR」シリーズ;花王(株)製のエマルゲンPP-290;日本乳化剤(株)製のニューコール3240が例示され、これらは市場において入手可能である。
【0045】
(C2)成分の配合量は(A)成分100質量部に対して0.1~50質量部であり、1~20質量部であることが好ましい。なお、(C2)成分は、(C1)成分と併用して(A)成分又はその前駆体成分、およびその他の(F)成分等の任意成分を乳化した場合、各成分単独に比べて、得られるエマルジョン粒子の粒子径を小さくすることができ、エマルジョン組成物の安定性を改善することができる。
【0046】
(C1)成分と(C2)成分の配合量の合計は、一般的には、(A)成分と必要に応じて配合される(F)成分の合計量の1~30質量%であることが好ましく、2~20質量%であることがより好ましい。また、(C1)成分の配合量と(C2)成分の配合量の比率は、3:1 ~100:1の範囲であることが好ましい。
【0047】
上記の(C1)および(C2)成分の乳化剤を用いて、環状シロキサン、分子鎖両末端水酸基封鎖ジオルガノポリシロキサン、オルガノアルコキシシラン等を水中に乳化分散した後、必要に応じて、酸,アルカリ性物質等の触媒を添加して重合反応を行うことも可能であり、また、上記の乳化剤を用いて、ケイ素原子に結合した水酸基、アルコキシ基およびアルコキシアルコキシ基からなる群から選択される基を1分子中に少なくとも2個有するポリオルガノシロキサンと、ケイ素原子に結合したアミノキシ基を1分子中に平均で2個有するアミノキシ基含有有機ケイ素化合物を水中に乳化分散した後、重合反応を行うことも可能であり、特に、高粘度の(A)成分を含む安定な乳化物を得ることができる点で好適である。
【0048】
[(D)成分]
(D)成分の水は、安定な水性エマルジョン状態を保つのに十分な量であればよく、配合量は特に限定されないが、通常、(A)成分100質量部に対して0~500質量部、好ましくは10~200質量部配合される。
【0049】
本組成物において、(D)成分は、(B)成分と独立して添加される水である。ここで、本発明の水中油型エマルジョン組成物には、水は必須成分であるが、(B)成分のコロイダルシリカは上記のとおり、水性分散体の形態であり、(B)成分の配合時に含まれる水分(例えば、固形分量30質量%のコロイダルシリカの水性分散体は、70質量%の水分を含む)があれば、(D)成分の水の量は0質量部であってもよい。なお、本エマルジョン組成物全体を100質量%とした場合、(B)成分および(D)成分に由来して含まれる水の量は、組成物全体の5~95質量%の範囲であることが一般的である。
【0050】
[(E)成分]
本発明の水中油型エマルジョン組成物には、さらに、その塗布性等の作業性の向上と組成物の保存安定性、特に(B)成分の分散安定性を改善する見地から、1種類以上の(E)増粘剤を含有することが好ましい。特に、水溶性アクリル樹脂などの水溶性有機ポリマーまたは粘土鉱物等の無機系の増粘剤を含む増粘剤を使用することで、水の粘度を高め、本発明の技術的効果および硬化皮膜の耐熱性/難燃性を実質的に損なうことなく、本発明の水中油型エマルジョン組成物またはそれを含む表面処理剤の基材への塗布性および作業性を改善することができる利点がある。(E)増粘剤の添加量は、任意であり、増粘剤を用いる場合には、組成物全体が、後述する粘度範囲(25℃で1,000mPas以上)となる量を適宜選択することが好ましい。
【0051】
本発明において用いる増粘剤は特に限定されないが、好ましい増粘剤として、(E1)粘土鉱物を含む増粘剤および(E2)水溶性有機ポリマーを含む増粘剤から選ばれる1種類以上が例示される。
【0052】
粘土鉱物は、天然物または合成物のいずれであってもよく、例えば、粘土鉱物を主成分とするベントナイト等の天然または合成のスメクタイトクレーや、このスメクタイトクレーとポリアクリル酸、カルボキシビニルポリマー等のアニオン性ポリマーなどとからなる親水性複合物が挙げられる。すなわち、(E)成分は、粘土鉱物以外の水溶性有機ポリマーからなる増粘剤を含んでもよく、かつ、好ましい。
【0053】
詳細には、天然または合成の(E1)粘土鉱物を含む増粘剤として、ベントナイト、モンモリロナイト、ヘクトライト、サポナイト、ソーコナイト、バイデライトおよびノントロナイト等の天然または合成のスメクタイトクレー;ケイ酸アルミニウムマグネシウム;および、これらとカルボキシビニルポリマーなどの水溶性有機ポリマーとの複合品が例示され、好ましくは、ベントナイトやモンモリロナイトなどのスメクタイトクレーである。このような、スメクタイトクレーとしては、例えば、水熱合成品であるスメクトンSA(クニミネ工業株式会社製)、天然精製品であるベンゲル(株式会社ホージュン製)が入手可能である。
【0054】
本発明の水中油型シリコーンエマルジョン組成物を塗布してなる基材(例えば、エアバック用布帛や建築材料)に対して、耐熱性および難燃性を付与する場合、これらのスメクタイトクレーのpHは、pH5.0~9.0の範囲内であることが好ましい。
【0055】
(E2)水溶性有機ポリマーを含む増粘剤は、高分子多糖類や水溶性アクリル樹脂などの水溶性有機ポリマーが例示でき、これらは単独で使用してもよく、粘土鉱物と共に親水性複合物の形態で使用してもよい。特に、カルボキシレート基を含んだ水溶性有機ポリマーの使用が好適であり、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム又はポリメタクリル酸ナトリウム等のカルボキシル含有付加重合体であるポリアクリル酸類が好適に例示される。なお、これらの水溶性有機ポリマーからなる増粘剤の量が過剰であると、本発明の水中油型シリコーンエマルジョン組成物から水分を除去してなる硬化皮膜の耐熱性および難燃性が損なわれる場合があるので、用途に応じて使用量を選択することが好ましい。
【0056】
(E)成分は、上記の粘土鉱物や水溶性有機ポリマーからなる増粘剤の水分散液の形態であってもよく、特に、粘土鉱物である無機系増粘剤の含有量は、水100質量部に対して0.1~10質量部の範囲内、あるいは0.5~5質量部の範囲内であることが好ましい。
【0057】
[(F)成分]
本発明の水中油型シリコーンエマルジョン組成物は、硬化被膜の強度や密着性の向上の点から、さらに、(F)一般式:R aSiX4-aで示されるアルコキシシランもしくはアルコキシアルコキシシラン、または前記アルコキシシランもしくはアルコキシアルコキシシランの部分加水分解縮合物を含有することが好ましい。式中Rは前記と同様であり、中でも、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数6~10のアリール基、炭素原子数2~10のアルケニル基であることが好ましく、特には、メチル基またはフェニル基であることが好ましい。Xは炭素原子数1~10のアルコキシ基または炭素原子数2~10のアルコキシアルコキシ基であり、前記と同様の基が例示される。aは0,1または2であるが、0か1が好ましい。特に、(F)成分は、テトラアルコキシシラン、アルキルトリアルコキシシラン、テトラアルコキシアルコキシシラン、アルキルトリアルコキシアルコキシシランであることが好ましく、テトラアルコキシシランまたはアルキルアルコキシシランであることがより好ましい。
【0058】
(F)成分は、前記オルガノアルコキシシラン、オルガノアルコキシアルコキシシラン、テトラアルコキシシランもしくはテトラアルコキシアルコキシシランの部分加水分解縮合物であってもよい。
【0059】
(F)成分は、硬化皮膜の強度および基材密着性の改善の見地から、(A)成分の100質量部に対し、0.1~50質量部配合することが好ましく、1~15質量部配合することがさらに好ましい。(F)成分の配合量が、(A)成分100質量部に対して0.1質量部未満であると生成した水性シリコーンエマルジョン組成物から水分を除去してなる硬化皮膜の強度の向上が十分でない場合があり、50質量部を超えると副生するアルコール量が増加し、環境や人体に悪影響を与えることや、硬化皮膜の形成性が経時で変化する場合があるために好ましくない。
【0060】
[(G)成分]
本発明の水中油型シリコーンエマルジョン組成物は、(G)アミン化合物をpH調整剤として配合することが好ましい。アミン化合物としては、ジエチルアミンが好ましい。これらの(G)成分は、水分除去時に、後述する硬化触媒としても機能するため、各成分の縮合反応を促進し、特に、錫等の重金属フリーの硬化反応性を実現することが可能である。
【0061】
pH調整剤としての(G)成分の配合量は、好ましくは、本発明の水中油型シリコーンエマルジョン組成物全体に対して0.01~5質量%の範囲であり、より好ましくは0.1~2質量%の範囲である。
【0062】
[その他の任意成分]
本発明の水中油型シリコーンエマルジョン組成物には、必要に応じて他の成分、例えば、顔料、消泡剤,浸透剤,帯電防止剤,無機粉体,防腐剤,防錆剤,ビス(トリメトキシシリルプロピル)-ジスルフィドなどの(F)成分以外のシランカップリング剤,(G)成分以外のpH調整剤,緩衝剤,紫外線吸収剤、硬化触媒、水溶性樹脂、有機樹脂エマルジョン、顔料および固形潤滑剤、染料、難燃剤などを適宜配合することができる。なお、本発明の水中油型シリコーンエマルジョン組成物をコーティング用途に使用する場合、実用上、硬化触媒、顔料および固形潤滑剤、難燃剤から選ばれる成分を配合することが特に好ましい。
【0063】
[硬化触媒]
硬化触媒の配合は任意であるが、本発明の組成物の成分を縮合反応により素早く架橋硬化させるために配合するができ、具体的にはジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、オクテン酸錫、ジブチル錫ジオクテート、ラウリン酸錫、ジオクチル錫ジバーサテート、ジオクチル錫ジアセテート、ジブチル錫ビスオレイルマレート等の有機錫化合物;テトラブチルチタネート、テトラプロピルチタネート、ジブトキシビス(エチルアセトアセテート)チタン等の有機チタン化合物;その他、塩酸、硫酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等の酸性化合物;アンモニア、水酸化ナトリウム等のアルカリ性化合物;n-ヘキシルアミン、グアニジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン(DBU)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)等のアミン系化合物;ジルコニウムテトラプロピレート、ジルコニウムテトラブチレート等の有機ジルコニウムエステル;ジルコニウムトリブトキシアセチルアセトネート、ジルコニウムブトキシアセチルアセトネートビスエチルアセトアセテート、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート等の有機ジルコニウムキレート;ジルコニウムビス(2-エチルヘキサノエート)オキサイド、ジルコニウムアセチルアセトネート(2-エチルヘキサノエート)オキサイド等のオキソジルコニウム化合物等のジルコニウム系縮合助触媒;アルミニウムトリエチレート、アルミニウムトリイソプロピレート、アルミニウムトリ(sec-ブチレート)等のアルミニウムアルコレート;ジイソプロポキシアルミニウム(エチルアセトアセテート)アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)等のアルミニウムキレート化合物;ヒドロキシアルミニウムビス(2-エチルヘキサノエート)等のアルミニウムアシロキシ化合物等のアルミニウム系縮合助触媒;ステアリン酸亜鉛、オクチル酸亜鉛、酢酸亜鉛、オクチル酸鉄等の有機酸金属塩などの縮合反応触媒を挙げることができる。なお、これらの硬化触媒は水溶性である場合を除き、予め界面活性剤を用いて水中に乳化分散したエマルジョンの形態にしておくことが望ましい。また、上記のアミン化合物は(G)成分と共通する成分であり、これらの成分を使用することで、スズ(錫)等の金属を含有する硬化触媒を含まない組成も設計可能であり、環境影響の低減の見地から、好ましい。なお、本発明の組成物において、縮合反応触媒の使用量は特に限定されず、縮合反応促進の目的が達成される範囲で任意の量であることができる。なお、縮合反応触媒の使用は任意であり、本組成物において使用しなくてもよい
【0064】
[顔料および固形潤滑剤]
本発明の水中油型シリコーンエマルジョン組成物は、顔料または固形潤滑剤を配合してもよく、かつ、好ましい。特に、層状ケイ酸塩としても既知のフィロシリケートに代表される固形潤滑剤を配合することで、得られる硬化皮膜に摩擦および/またはブロッキングを低減する減摩性を付与し、その摩擦低減性をさらに改善することができる。
【0065】
具体的には、本発明において固形潤滑剤としての使用に適したフィロシリケートの例としては、マイカ、タルク、例えば、タルク微小球、カオリナイト、スメクタイト、セリサイト及びクロライトが挙げられる。
【0066】
顔料として、例えば、水酸化アルミニウム、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、酸化チタン、硫酸バリウム、活性白土、炭酸マグネシウム、アルミナ、酸化アルミニウムなど無機顔料や、たとえば、ポリスチレン樹脂粒子、尿素- ホルマリン樹脂粒子、ポリオレフィン粒子などの有機顔料などが選択できる。
【0067】
[難燃剤]
本発明の水中油型シリコーンエマルジョン組成物を、エアバッグコーティング等の用途に適用する場合、実用上、さらに、難燃剤を含んでもよい。例えば、本発明にかかる組成物は、基材表面の摩擦および/またはブロッキングを低減する減摩性の乾燥塗膜を形成するためエアバッグ等の表面コーティングに適するが、エアバッグ等の基材は、その性質上、着火しにくく、燃焼を支援しないことが重要であり、当該用途に適用され得る厳しい可燃性試験を通過するために、一般的に難燃剤の添加が必要である。本発明の水中油型シリコーンエマルジョン組成物をシリコーンゴムを被覆したエアバッグ等の基材上に塗布(=上塗り)される場合には、一般的に可燃性が抑制されるが、難燃剤を含まない上塗りが有機樹脂を被覆したエアバッグに塗布される場合には、米国連邦自動車安全規格試験(US Federal Motor Vehicles Safety StandardsTest)FMVSS#302(これ以降は、「FMVSS#302」と称する)等の可燃性試験を通過しないことがある場合があり、難燃剤の添加が実用上重要である。
【0068】
特に、本発明にかかる組成物はエアバッグ、又は、その後エアバッグへと形成される被覆ファブリックの上塗り等の不燃性/難燃性が要求される用途に用いるコーティング剤に適し、難燃剤の効果は当該上塗り中に存在する場合に、最も効果的であることが多い。好ましい難燃剤の例は、好ましくは表面処理されていないアルミニウムトリヒドレートである。また、難燃剤としては、水酸化マグネシウム等の他の金属水酸化物、フェライト酸化物及び酸化チタン等の金属酸化物、炭酸亜鉛等の炭酸塩、及び、カーボンブラックが挙げられる。これらの難燃性成分の含有量は、組成物全体に対して、2~40質量%、好ましくは5~25質量%の範囲であってよく、難燃剤として少なくとも一部がアルミニウムトリヒドレートである成分を選択してよく、かつ、好ましい。
【0069】
[組成物の全体粘度および粘度測定方法]
本発明の水中油型シリコーンエマルジョン組成物は、均一塗布性および作業性の見地から、その粘度が1000mPa・s以上であることが好ましい。粘度は、20mm直径の2°テーパーコーンを具えたウェルズ-ブルックフィールドコーン/プレート粘度計(Wells-Brookfield Cone/Plate Viscometer)を使用し、1s-1のせん断率で、25℃で測定される(ASTM D4287)。特に示さない限り、本明細書に記載する粘度は、上記と同じ手法で測定されたものである。また、上記粘度は、必要に応じて固形潤滑剤、増粘剤等を含む水中油型シリコーンエマルジョン組成物の全体粘度である。
【0070】
本発明の水中油型シリコーンエマルジョン組成物中のシリコーンエマルジョン粒子の平均粒子径(平均一次粒子径)は、貯蔵安定性や硬化皮膜の形成性、および水希釈時の安定性の点から、50~600nmの範囲であってよく、300nm以下であることが好ましく、250nm以下であることが特に好ましい。エマルジョン粒子の平均粒子径は、動的光散乱法などにより測定できる。
【0071】
[製造方法]
本発明の水中油型シリコーンエマルジョン組成物は、
工程(I):(A)成分、(C1)成分、必要に応じて、任意で(C2)成分および(D)成分の一部をホモミキサー、ホモジナイザー、コロイドミル、コンビミキサー、インライン式連続乳化機,真空乳化機,超音波乳化機、連続混合装置などの乳化機を用いて乳化分散する工程、および、
工程(II):前記工程で得られた乳化物に(B)成分および残余の(D)成分を配合し分散させる工程
を含む製造方法で製造することができる。
【0072】
ここで、(B)成分、(E)成分、(F)成分および(G)成分は必要に応じて、前記の何れの工程で配合してもよく、両方の工程で分割して配合してもよい。
【0073】
本発明の水中油型シリコーンエマルジョン組成物の製造時に、(A)成分であるポリオリガノシロキサンは、乳化重合反応により得られたものであってよい。具体的には、本発明の水中油型シリコーンエマルジョン組成物の製造方法は、(A)成分の前駆体である(a)ケイ素原子に結合した水酸基または加水分解性基を1分子中に少なくとも2個有するポリオルガノシロキサンおよび(b)ケイ素原子に結合したアミノキシ基を1分子中に平均で2個有するアミノキシ基含有有機ケイ素化合物を前記の(C1)成分、および、任意で前記の(C2)成分の存在下で乳化重合させてなるポリオリガノシロキサンを得る工程を有するものであってよい。この場合、乳化重合後のポリオリガノシロキサンである(A)成分を含む水分散体は、(A)成分、(C1)成分、任意で(C2)成分、および(D)水の一部が乳化分散した乳化物となっており、上記の工程(I)と同時または工程(I)の一部として行ってよい。なお、後続して、上記の工程(II)を行ってもよく、(B)成分、(E)成分、(F)成分および(G)成分は必要に応じ乳化重合反応の前に乳化物中に添加してもよい。
【0074】
本発明の水中油型シリコーンエマルジョン組成物は、その必要に応じ、4~5個のシロキサン単位からなるシロキサンオリゴマーの含有量の総量が2質量%以下になるように低減してもよく、1質量%以下、0.5質量%以下であってもよい。4~5個のシロキサン単位からなるシロキサンオリゴマーとしては、オクタオルガノテトラシクロシロキサン、デカオルガノペンタシクロシロキサンなどの4~5量体の環状シロキサンオリゴマー;分子鎖両末端ヒドロキシジオルガノシロキシ基封鎖テトラオルガノジシロキサン、分子鎖両末端ヒドロキシジオルガノシロキシ基封鎖ヘキサオルガノトリシロキサンなどの4~5量体の直鎖状シロキサンオリゴマーが例示される。本発明の水中油型シリコーンエマルジョン組成物中のシロキサンオリゴマーの含有量は、ガスクロマトグラフィーにより測定できる。
【0075】
[上記の水中油型シリコーンエマルジョン組成物の用途:表面処理剤/表面改質剤]
上記の水中油型シリコーンエマルジョン組成物は、基材表面に塗布し、水分を蒸発/加熱等により除去することで、ゴム状の弾性を有し、かつ、表面に粘着性がなく、摩擦低減性の硬化皮膜を形成するため、基材表面の改質を目的とした表面処理剤として利用することができる。
【0076】
すなわち、本発明の表面処理方法は、基材表面を上記の水中油型シリコーンエマルジョン組成物を含む表面処理剤で表面処理することを特徴とし、基材表面の少なくとも一部を、上記の硬化皮膜により被覆し、その表面状態を改質することができる。ここで、当該表面処理剤は、上記の水中油型シリコーンエマルジョン組成物またはその水希釈物であってもよく、任意で、その他の添加剤を含むものであってもよい。
【0077】
本発明の表面処理剤を適用可能な基材としては、特に限定されるものではなく、金属、セラミック、コンクリート、セメント、モルタル、紙、繊維、天然繊維織物、合成繊維織物、不織布、布帛、プラスチック、ガラス、ゴム、木材、石材、その他の前記基材の複合材料が例示される。特に、本発明の表面処理剤は、水分の除去によって、基材表面に、ゴム状の弾性を有し、かつ、表面に粘着性がなく、摩擦低減性の硬化皮膜を形成できることから、エアバッグ、航空機及び熱気球の緊急シュート等の機能性布帛、コンクリート等の建築材料の表面処理に用いることで、その機能を改善することができる。また、必要に応じ、各種の基材表面にシリコーン弾性体に起因する撥水性、耐候性、耐薬品性、柔らかな風合い等を付与することができ、さらに、シリコーン弾性体に由来する耐熱性および難燃性の改善が期待される。
【0078】
基材表面を上記の水中油型シリコーンエマルジョン組成物で表面処理する方法としては、(I)基材表面に水中油型シリコーンエマルジョン組成物を塗工する工程、および、(II)基材表面上の水中油型シリコーンエマルジョン組成物中の水を除去して硬化皮膜を形成する工程からなることが好ましい。
【0079】
工程(I)の具体的手段としては、塗料やコーティング剤に利用される塗布方法および塗工方法が、特に制限なく利用可能であり、刷毛塗り、スプレー塗布、浸漬(ディッピング)、フローコーター、ディスペンサー塗布、グラビアローラー等のローラ塗布、ナイフコート、スピンコートなどが例示され、1回塗りだけでなく、複数回塗り重ねてもよい。さらに、塗装前に、被塗装物/被塗工物の表面を予め清掃;乾燥し、プライマー塗布しておいてもよい。また、その塗布/塗工量についても特に制限されるものではなく、エアバッグ等の機能性布帛またはそのシリコーンゴム被覆表面に薄く塗工して、軽量化を図ってもよく、基材表面に厚く塗工して、厚く耐久性に優れる硬化皮膜を形成させてもよい。
【0080】
工程(II)の水分除去は、常温で放置して風乾してもよく、20~200℃に調整した雰囲気温度下に放置してもよく、赤外線、紫外線その他の高エネルギー線を照射してもよい。
【実施例
【0081】
以下、本発明を実施例と比較例によって詳しく説明する。実施例中、粘度は25℃における測定値であり、配合量を表す部は質量部を意味し、含有量を表す%は質量%を意味する。式中Meはメチル基を、Etはエチル基を示す。
【0082】
エマルジョン粒子の平均粒子径は、サブミクロン粒子アナライザー(コールターエレクトロニクス社製のCOULTER MODEL N4 MD)を用いて25℃で動的光散乱法により測定し、単分散モード解析で算出した。
【0083】
エマルジョン組成物の粘度は、20mm直径の2°テーパーコーンを具えたウェルズ-ブルックフィールドコーン/プレート粘度計(Wells-Brookfield Cone/Plate Viscometer)を使用し、1s-1のせん断率で、25℃で測定した(ASTM D4287)
【0084】
[硬化皮膜の評価]
各実験例の水中油型シリコーンエマルジョン組成物(塗膜形成性組成物)を、織られたナイロンエアバッグファブリックの被覆表面にグラビアローラコーティングによって塗布し、140℃で熱硬化し、以下の項目について、評価を行った。

・均一性:塗膜組成物を20g/m2塗布した際の塗膜の均一性を目視により評価した。
・減摩性:初期減摩製の指標としては、塗膜組成物を25g/m2塗布した際の動摩擦係数を測定することにより、評価を行った。
・スクラビング後の減摩性:指で10回スクラビングした後、指で触感によって評価した。
【0085】
[実施例1]
(a)粘度2,400mPa・sの分子鎖両末端ヒドロキシジメチルシロキシ基封鎖ポリジメチルシロキサン92.5部、
(b)式(1): Et2NO(Me2SiO)7NEt2 で示されるアミノキシ基含有ポリシロキサン7.5部を、
(C2)あらかじめ混合し均一にしたポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン共重合体型ノニオン系乳化剤(アデカ製 製品名プルロニック(登録商標)F108)7.5部、(C1)アルカンスルホン酸ナトリウムの40%水溶液12.5部の分散液と均一に混合し、乳化機で乳化を行った。
(D)水86部、(B-1)コロイダルシリカ(日産化学製 商品名スノーテックス30、有効成分30%、pH10、表面がナトリウムで安定化されているコロイダルシリカ)44.0部、(G)ジエチルアミン1.25部を得られた乳化物に投入し、均一に混合した。さらに、(F)メチルトリエトキシシラン2.5部を加えて均一に混合し、2週間室温で静置した後、(B-2)コロイダルシリカ(日産化学製 商品名スノーテックス30、有効成分30%、pH10、表面がナトリウムで安定化されているコロイダルシリカ)をさらに125部投入し、均一に混合することで、水中油型シリコーンエマルジョン(No.1)を調製した。シリカ粒子の総量は、50.7部であった。
【0086】
乳化重合により得られるオルガノポリシロキサン(A)の反応後の粘度は、下記の手順で測定した。(a)粘度2,400mPa・sの分子鎖両末端ヒドロキシジメチルシロキシ基封鎖ポリジメチルシロキサン92.5部、(b)式(1): Et2NO(Me2SiO)7NEt2 で示されるアミノキシ基含有ポリシロキサン7.5部を、(C2)あらかじめ混合し均一にしたポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン共重合体型ノニオン系乳化剤(アデカ製 製品名プルロニック(登録商標)F108)7.5部と(C1)アルカンスルホン酸ナトリウムの40%水溶液12.5部の分散液と均一に混合し、乳化機で乳化を行った。1週間静置した後、調製したエマルション10gにイソプロピルアルコール10gを攪拌しながら、添加し、析出したジメチルシロキサンのみを105℃で3時間乾燥したものをBrookfield型の粘度計により測定した。25℃における粘度は、1,800,000mPasであった。
【0087】
(E)1.5%のアニオン系ポリマー複合精製ベントナイト(製品名:ベンゲルW100U:ホージュン株式会社)水溶液73部とタルク粉末15部を混合した分散物に、上記で得られたシリコーンエマルジョン(No.1)12部を均一に混合し、本発明の水中油型シリコーンエマルジョン組成物(=塗膜組成物)を得た。
【0088】
得られた水中油型シリコーンエマルジョンを25℃で放置したところ6ヶ月後でも分離などは認められず分散状態は安定であった。また、前記の方法で評価した場合、硬化皮膜を形成することができた。評価結果を表1に示す。
【0089】
[実施例2]
シリカ粒子の総量を65.7部に変更した以外は、実施例1と同様の手順で、シリコーンエマルジョン(No.2)、および塗膜組成物を調整し、実施例1と同様の手順で評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0090】
[実施例3]
シリカ粒子の総量を73.2部に変更した以外は、実施例1と同様の手順で、シリコーンエマルジョン(No.3)、および塗膜組成物を調整し、実施例1と同様の手順で評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0091】
[比較例1]
シリカ粒子の総量を24.75部に変更した以外は、実施例1と同様の手順で、シリコーンエマルジョン(No.C1)、および塗膜組成物を調整し、実施例1と同様の手順で評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0092】
[比較例2]
シリカの粒子の総量を35.7部に変更した以外は、実施例1と同様の手順で、シリコーンエマルジョン(No.C2)、および塗膜組成物を調整し、実施例1と同様の手順で評価を行った。
【0093】
【表1】
【0094】
[総括]
実施例1~3の水中油型シリコーンエマルジョン組成物(=塗膜組成物)は、コロイダルシリカの固形分が本発明の範囲内にあり、均一性に優れる塗膜を形成し、かつ、初期~スクラビング後の減摩性にすぐれ、滑らかな硬化皮膜を基材上に形成することが出来た。一方、比較例1、2においては、実施例に比べて、塗膜の均一性が不十分かつ、減摩性に劣り、また、塗膜の表面粘着性(タック)の低減を実現できないものである。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明の水中油型シリコーンエマルジョン組成物は、コロイダルシリカを配合していても貯蔵安定性が良好であり、かつ基材に塗布あるいは含浸した後、水分を除去するとゴム状の弾性を有する、すなわち強度に優れた硬化皮膜を形成するので、水系塗料やインク、感熱紙やインクジェット用紙などに使用されるペーパーコーティング剤、金型やゴム用の離型剤、自動車ウェザーストリップ、ガスケット、ゴムホースなどに使用される樹脂コーティング剤、衣料やエアバッグに使用される繊維処理剤、剥離剤、化粧品、建築材料などとして有用である。