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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】ケーブル、ケーブルの製造方法、
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/285 20060101AFI20241022BHJP
   H01B 13/26 20060101ALI20241022BHJP
   H01B 7/18 20060101ALI20241022BHJP
   H01B 13/32 20060101ALI20241022BHJP
   H01B 13/10 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
H01B7/285
H01B13/26 C
H01B7/18 C
H01B7/18 H
H01B13/32
H01B13/10
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020088387
(22)【出願日】2020-05-20
(65)【公開番号】P2021182540
(43)【公開日】2021-11-25
【審査請求日】2023-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】朝倉 豊充
(72)【発明者】
【氏名】今田 栄治
(72)【発明者】
【氏名】黒木 美充
【審査官】中嶋 久雄
(56)【参考文献】
【文献】実開昭54-093789(JP,U)
【文献】特公昭51-020710(JP,B1)
【文献】実開昭54-015781(JP,U)
【文献】特開昭59-159843(JP,A)
【文献】特開平03-068640(JP,A)
【文献】特開昭53-141483(JP,A)
【文献】特開昭54-021586(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/285
H01B 13/26
H01B 7/18
H01B 13/32
H01B 13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルコア部と、
前記ケーブルコア部の最外周に設けられる外被と、
前記外被の内側に配置され、前記ケーブルコア部の外周に巻き付けられるラミネートテープと、
を具備するケーブルであって
前記ラミネートテープは、樹脂層と、金属層とが積層されて構成され、前記ラミネートテープの両端部が重ね合わされるラップ部を形成して、前記ケーブルコア部の外周に巻き付けられ、
前記樹脂層は、ベース樹脂がポリプロピレンで、無水マレイン酸を添加してグラフト化したものであり、
前記ラミネートテープの前記ラップ部および近傍の樹脂量が、前記ラップ部以外の前記樹脂量より多く、
前記外被は、中密度ポリエチレン以上の密度のポリエチレン製であり、
前記ケーブルの両端を保持し、75℃で、前記ケーブルの一端をある方向に90度捻じり元の位置に戻し、更に前記方向と逆の方向に90度捻じり元の位置に戻すことを90度の捻回の1往復とし、前記90度の捻回を8往復行う捻回試験後に前記ラミネートテープの座屈及び前記外被に亀裂が発生しないことを特徴とするケーブル。
【請求項2】
前記ラップ部の周方向におけるラップ長さが7mm~15mmであることを特徴とする請求項1記載の光ケーブル。
【請求項3】
前記無水マレイン酸を添加してグラフト化した前記ポリプロピレンは、JIS K 7210-1(2014)で規定されるメルトマスフローレイトが0.2g/10min以上20g/10min以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のケーブル。
【請求項4】
前記メルトマスフローレイトが1.0g/10min以上15g/10min以下であることを特徴とする請求項3記載のケーブル。
【請求項5】
前記外被は、高密度ポリエチレン製であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のケーブル。
【請求項6】
前記外被と前記ラミネートテープの前記樹脂層とが長手方向に連続して接合されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のケーブル。
【請求項7】
前記ラミネートテープの前記ラップ部において、前記ラップ部以外の部位における前記樹脂層の厚さよりも、前記樹脂層の厚さが厚い部位が形成されることを特徴とする請求項1から請求項のいずれかに記載のケーブル。
【請求項8】
前記ラミネートテープの前記ラップ部に、防水用樹脂が注入されるとともに、前記ラップ部の外部の段差部分に前記防水用樹脂が塗布されて、段差が埋められてなだらかに形成されることを特徴とする請求項1から請求項のいずれかに記載のケーブル。
【請求項9】
前記防水用樹脂は、前記ラミネートテープの前記樹脂層と同じ材料であることを特徴とする請求項記載のケーブル。
【請求項10】
前記外被の厚さは前記ケーブルの外径の10%以下であることを特徴とする請求項1から請求項のいずれかに記載のケーブル。
【請求項11】
前記外被の厚さは前記ケーブルの外径の8%以下であることを特徴とする請求
項1から請求項10のいずれかに記載のケーブル。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれかに記載のケーブルの製造方法であって、
前記ラミネートテープを巻き付けた後、前記外被を押し出す前に、前記ラップ部における前記ラミネートテープ同士の間に防水用樹脂を注入し、
前記外被を、200℃以上の温度で押出成形することを特徴とするケーブルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブルコア部の外周にラミネートテープが巻き付けられたケーブル等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、通信ケーブル等として、例えば、光ファイバや被覆導線からなるケーブルコアと、このケーブルコアの外周に金属層をもつ管状に形成されたラミネートテープと、このラミネートテープの外周に被覆されたポリエチレン等の樹脂製シースとを含むものが知られている。ここで使用されるラミネートテープとしては、例えば、薄板状の金属層と、この金属層に積層されたポリオレフィン系樹脂からなる融着樹脂層とからなる。
【0003】
ラミネートテープは、その幅方向の両端部同士を長手方向に重複せしめて管状に形成される。この内部にケーブルコアが収納され、ラミネートテープの外周に外被を押出被覆することで、ケーブルが形成される。この際、ケーブル成形時の熱で融着樹脂層が溶融し、互いに重複した融着層の端部同士が固化することにより接着接合される(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平05-314825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この様にラミネートテープを配設し、その構成層である金属層により、ケーブルコア内部への水の侵入を防ぎ、伝送特性の劣化を防止できる。
【0006】
一方、近年の異常気象やグローバル化に伴い、日中の最高気温記録は国内でも約41℃であり、海外に至っては50℃を超える場合もある。さらには日照による温度上昇を加味すると、従来の耐環境温度では十分とは言えない状況となっている。耐環境温度以上の温度で使用すると、ラミネートテープの樹脂層が軟化し、接着が剥がれて強度低下を引き起こしたり、ラミネートテープのラップ部で凸部が発生したりする不具合が発生する。
【0007】
これに対し、耐高温特性の良い熱可塑性樹脂をベースに例えば無水マレイン酸をグラフト化している樹脂を用いてラミネートテープを形成し、このラミネートテープでケーブルコアを縦添えし、ポリエチレンの外被を形成する方法がある。しかし、このような無水マレイン酸をグラフト化した耐高温特性の良い樹脂層を用いた際に、ラップ部が接合されにくいという問題がある。このため、ケーブルの止水性が低下する恐れがある。また、ケーブルは地下など現地で設置される際に曲げられたり、曲げられた状態で維持されることがしばしばある。このため、特に高温において曲げやねじりが加えられた際に、止水効果が十分に得られないおそれがある。
【0008】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、高温時でも止水性に優れたケーブル等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するため、第1の発明は、ケーブルコア部と、前記ケーブルコア部の最外周に設けられる外被と、前記外被の内側に配置され、前記ケーブルコア部の外周に巻き付けられるラミネートテープと、を具備するケーブルであって、前記ラミネートテープは、樹脂層と、金属層とが積層されて構成され、前記ラミネートテープの両端部が重ね合わされるラップ部を形成して、前記ケーブルコア部の外周に巻き付けられ、前記樹脂層は、ベース樹脂がポリプロピレンで、無水マレイン酸を添加してグラフト化したものであり、前記ラミネートテープの前記ラップ部および近傍の樹脂量が、前記ラップ部以外の前記樹脂量より多く、前記外被は、中密度ポリエチレン以上の密度のポリエチレン製であり、前記ケーブルの両端を保持し、75℃で、前記ケーブルの一端をある方向に90度捻じり元の位置に戻し、更に前記方向と逆の方向に90度捻じり元の位置に戻すことを90度の捻回の1往復とし、前記90度の捻回を8往復行う捻回試験後に前記ラミネートテープの座屈及び前記外被に亀裂が発生しないことを特徴とするケーブルである。
前記ラップ部の周方向におけるラップ長さが7mm~15mmであることが望ましい。
前記無水マレイン酸を添加してグラフト化した前記ポリプロピレンは、JIS K 7210-1(2014)で規定されるメルトマスフローレイトが0.2g/10min以上20g/10min以下であることが望ましい。更に、前記メルトマスフローレイトが1.0g/10min以上15g/10min以下であることが望ましい。
【0010】
前記外被は、高密度ポリエチレン製であることが望ましい。
【0011】
前記外被と前記ラミネートテープの前記樹脂層とが長手方向に連続して接合されることが望ましい。
【0012】
前記ラミネートテープの前記ラップ部において、前記ラップ部以外の部位における前記樹脂層の厚さよりも、前記樹脂層の厚さが厚い部位が形成されてもよい。
【0013】
前記ラミネートテープの前記ラップ部に、防水用樹脂が注入されるとともに、前記ラップ部の外部の段差部分に前記防水用樹脂が塗布されて、段差が埋められてなだらかに形成されていることが望ましい。
【0014】
前記防水用樹脂は、前記ラミネートテープの前記樹脂層と同じ材料であることが望ましい。
【0015】
前記外被の厚さは前記ケーブルの外径の10%以下であってもよく、前記外被の厚さは前記ケーブルの外径の8%以下であってもよい。
【0016】
第1の発明によれば、ラミネートテープの樹脂層がポリプロピレンであり、外被の樹脂を、中密度ポリエチレン以上の密度のポリエチレン製とすることで、外被を押し出す際に、確実にラミネートのラップ部の樹脂層を溶融することができる。このため、ラミネートテープのラップ部を確実に接合することができる。この結果、ラミネートテープをケーブルコア部の外周に隙間なく巻き付けることができるため、高い遮水性を確保することができる。
【0017】
なお、ベース樹脂がポリプロピレンで無水マレイン酸をグラフト化しており、無水マレイン酸を0.1質量%以上3質量%以下添加することで、75℃以上の軟化温度を確保することができ、高い耐環境温度を得ることができるとともに、JIS K6922-2で規定されるメルトマスフローレイトが所定の範囲になり、高温対応の設備変更が少なく製造でき、製造性にも優れる。このようにベース樹脂がポリプロピレンで無水マレイン酸をグラフト化させることで、高温にも対応できるとともに、外被が中密度ポリエチレン以上でも、樹脂層と外被とを確実に密着させることができる。
【0018】
また、ラミネートテープのラップ部の樹脂層の厚さを、ラップ部以外の部位よりも厚くすることで、より確実にラップ部を接合させることができる。
【0019】
また、外被とラミネートテープの樹脂層とが長手方向に連続して接合されていることで、より高い止水性を確保することができる。
【0020】
また、ラミネートテープのラップ部に、防水用樹脂が注入されていれば、ラップ部の口開きを抑制し、ラップ部の接合部村をなくして確実にラップ部を接合して、より高い止水性を確保することができる。
【0021】
また、外被の厚さをケーブルの外径の10%以下、さらには8%以下とすることで、ケーブルの外径を小さくすることができる。
【0022】
第2の発明は、第1の発明にかかるケーブルの製造方法であって、前記ラミネートテープを巻き付けた後、前記外被を押し出す前に、前記ラップ部における前記ラミネートテープ同士の間に防水用樹脂を注入し、前記外被を、200℃以上の温度で押出成形することを特徴とするケーブルの製造方法である。
【0023】
第2の発明によれば、ラミネートテープのラップ部を確実に接合させて止水性を高めることができる。
【0024】
特に、外被を押し出す前に、ラミネートテープのラップ部の隙間に防水用樹脂を注入することで、ラップ部の口開きを抑制し、より高い止水性を確保することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、止水性に優れたケーブル等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】ラミネートテープ1の断面図。
図2】ラミネートテープ1を用いたメタリックケーブル30aの斜視図。
図3】ラミネートテープ1を用いたメタリックケーブル30aの断面図。
図4】(a)は、図3のA部拡大図、(b)は(a)の他の形態を示す図。
図5図4(a)のさらに他の形態を示す図。
図6】ラミネートテープ1を用いたメタリックケーブル30bの斜視図。
図7】ラミネートテープ1を用いたメタリックケーブル30cの断面図。
図8】ラミネートテープ1を用いた光ケーブル40の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。図1は、ラミネートテープ1の断面図である。ラミネートテープ1は、樹脂層5と、樹脂層5に積層される金属層3を有する。ラミネートテープ1は、ケーブルの外被の内側に巻き付けられて用いられる。
【0028】
ラミネートテープ1の金属層3としては、特に限定されないが、アルミニウム(アルミニウム合金を含む)、ステンレス、銅(銅合金を含む)またはスチールを適用可能である。なお、金属層3の両面に樹脂層5を積層させてもよい。
【0029】
ラミネートテープ1の樹脂層5は、ベース樹脂がMDPE、HDPE、ポリプロピレン(PP)等の少なくとも一つを含む。ポリプロピレンを適用することで、軟化温度を75℃以上とすることができる。なお、樹脂の軟化温度は、例えばJIS K7196(1991)で測定することができる。
【0030】
樹脂層5を構成するベース樹脂は、MDPE、HDPE、ポリプロピレン(PP)等の少なくとも一つを含み、無水マレイン酸を0.1質量%以上3質量%以下添加しグラフト化する。好ましくは、樹脂層5を構成するポリエチレンまたはポリプロピレンに、無水マレイン酸を0.1質量%以上1.5質量%以下、より好ましくは無水マレイン酸を0.3質量%以上0.6質量%以下又は0.9質量%以上1.2質量%以下添加することでグラフト化することが望ましい。このようにすることで、樹脂層5を構成するMDPE、HDPE、ポリプロピレン(PP)等のメルトマスフローレイトをJIS K 7210-1(2014)で規定されるメルトマスフローレイトが0.2g/10min以上20g/10min以下とすることができる。なお、より望ましくは、樹脂層5を構成するMDPE、HDPE、ポリプロピレン(PP)等のメルトマスフローレイトは1.0g/10min以上15g/10min以下である。
【0031】
メルトマスフローレイトが低すぎると、ケーブル外被を形成する押し出し時に押し出しスクリューの抵抗が大きくなり、押し出し速度が低下し製造性が悪化する。一方、メルトマスフローレイトが高すぎると、製造時における形状維持性に問題が生じるおそれがある。なお、メルトマスフローレイトは、例えば、JIS K7210-1(2014)で測定することができる。
【0032】
次に、ラミネートテープ1が使用されたケーブルの一例について説明する。図2は、メタリックケーブル30aを示す斜視図であり、図3は断面図である。
【0033】
メタリックケーブル30aは、主に、内部側から順に、複数の被覆導線31と押さえ巻きテープ37とラミネートテープ1と外被17等から構成される。被覆導線31は、導体と、導体を被覆する絶縁被覆とからなる。
【0034】
被覆導線31の導体は、例えばアルミニウム製や銅製であり、図示した様な単線のものや図には無いが撚線のものも使用することができる。導体の外周には、絶縁被覆が設けられる。絶縁被覆は、導体の略全長にわたって形成される。絶縁被覆は、絶縁性を有する樹脂によって形成される。なお、導体と絶縁被覆を含めた被覆導線31は単線でも使用されるが、2本を撚り合わせてペア線としたり、4本を撚り合わせてカッド線とすることもある。
【0035】
複数の被覆導線31は粗巻き紐33によって束ねられる。複数の被覆導線31からなる複数の束の外周には、さらに、一括して押さえ巻きテープ37が巻き付けられる。なお、メタリックケーブル30aにおいては、押さえ巻きテープ37で束ねられた複数の被覆導線31をケーブルコア部25とする。押さえ巻きテープ37は複数の被覆導線31を束ねられればよいため、粗巻き紐などでもよい。
【0036】
ここで、ケーブルコア部25を形成するにあたり、ペア線やカッド線を撚り合わせてユニット化し、ユニットをさらに撚り合わせて形成する方法や、中心層に単心線、ペア線、カッド線を撚り合わせてさらにその上層に1層目、2層目と単心線、ペア線、カッド線を撚り合わせる方法など多様である。
【0037】
押さえ巻きテープ37の外周には、ラミネートテープ1が巻き付けられる。ラミネートテープ1は、幅方向の両端部が周方向に重ね合わされるように縦添え巻で巻き付けられる。すなわち、ケーブルコア部25の軸方向とラミネートテープ1の長手方向とを合わせてラミネートテープ1をケーブルコア部25の外周に巻き付ける。この際、ラミネートテープ1の両端部が重ね合わされたラップ部23は、ケーブルコア部25の軸方向に略直線状に形成される。
【0038】
ラミネートテープ1の外周には、外被17が設けられる。外被17は、ラミネートテープ1の外周を覆うように設けられる。すなわち、ケーブルコア部25の外周に巻き付けられるラミネートテープ1は、外被17の内側に配置され、外被17はケーブルコア部25の最外周に設けられる。
【0039】
外被17は、中密度ポリエチレン以上の密度(930kg/m以上)のポリエチレン製であり、より望ましくは高密度ポリエチレン製(942kg/m以上)である。なお、外被17には、カーボンブラック等が添加されてもよい。
【0040】
ここで、通常は外被17の材質としては、製造性や可撓性を得るために低密度ポリエチレン(LDPE)を選択するのが一般的である。しかし、従来のLDPEを用いて外被17を押し出しで形成すると、LDPEに適した比較的低温の押し出し温度では、ラミネートテープ1の樹脂層5を溶融するには熱不足であり、ラップ部23で樹脂層5と金属層3が接着接合されないおそれがある。
【0041】
しかし、中密度ポリエチレン(MDPE)以上のポリエチレンで外被17を形成すると、MDPEの押し出しに適した温度とラミネートテープ1の樹脂層5の接着温度領域が近くなり、ラップ部23で樹脂層5と金属層3が接着接合でき、ケーブルコア部25を密閉することができる。
【0042】
さらに、外被17を高密度ポリエチレン(HDPE)で形成すると、MDPEを押し出す際よりさらに高温にする必要があるが、薄肉化しても同程度の剛性を維持することができる。このため、外被17の厚さをメタリックケーブル30aの外径の10%以下とすることができ、さらに望ましくは、メタリックケーブル30aの外径の8%以下とすることができる。例えば、一般的な外被の肉厚は2mm程度であるが、1.7mm程度とすることができる。このようにすることで、メタリックケーブル30aを軽量化できるとともに、ケーブルを曲げやすくすることもでき、ケーブルの施工性を向上することができる。
【0043】
メタリックケーブル30aにおいては、ラミネートテープ1は、透湿防止層として機能する。すなわち、ラミネートテープ1のラップ部23は接着接合されて、さらに、ラミネートテープ1の樹脂層5と外被17とが長手方向に連続して接合されていることで湿度の浸入経路を制限することが可能となる。
【0044】
なお、外被17は、1層だけでなく2層以上であってもよく、この場合には、ラミネートテープ1はいずれの外被17の内層に配置しても使用できる。またラミネートテープ1は2層以上で使用してもよく、ラミネートテープ1とは別に、他の層として目的に合った金属外装を施してもよい。
【0045】
メタリックケーブル30aは、ラミネートテープ1とケーブルコア部25の間に引き裂き紐35が配置される。引き裂き紐35を引き出すことで、ラミネートテープ1と外被17とを引き裂いて、内部の被覆導線31を取り出すことが可能である。
【0046】
なお、メタリックケーブル30aにおいて、ケーブルコア部25を構成する被覆導線31の本数や、束数は図示した例には限られない。また、さらに、光ファイバ等が配置された複合ケーブルであってもよい。
【0047】
前述したように、ラミネートテープ1は、ラップ部23を有する。図4(a)は、図3のA部拡大図であり、ラップ部23の拡大図である。ラミネートテープ1は、樹脂層5を外側にしてケーブルコア部25の外周に巻き付けられる。すなわち、外被17と樹脂層5とが接着接合する。また、ラップ部23においては、ラップ部23の外側の端部の金属層3と内側の端部の樹脂層5とが接着接合する。
【0048】
ここで、ラップ部23の周方向におけるラップ長さ(図中B)は、1mm以上かつメタリックケーブル30aの外径の2.0倍以下であることが望ましく、より望ましくは外径の1.5倍以下であることがよい。例えば、ラップ部の長さは、7mm~20mm程度である。ラップ長が短すぎると、メタリックケーブル30aの曲げ時等において、ラップ部23の口空きよる遮水性の悪化等のおそれがある。一方、ラップ長が長すぎると、透湿防止層が厚くなり可撓性にも影響がでる。
【0049】
なお、図4(b)に示すように、ラミネートテープ1の少なくとも一方の端部において、樹脂層5の厚みが厚い部分を形成してもよい。このようにすることで、ラミネートテープ1のラップ部23における内側の樹脂層5の厚さ(図中C)を、ラップ部23以外の部位における樹脂層5の厚さよりも厚くすることができる。なお、樹脂層全面を厚くする方法も考えられるが、ラップ部以外も同様に厚くすると材料費のコストアップにつながるため、ラップ部のみ厚くすることが良い
【0050】
例えば、ラミネートテープ1の端部同士をラップ部23で合わせる時、樹脂層5の厚みが50μm程度であると、ケーブルコア部25の外周の凹凸を吸収できず、ラミネートテープ1の端部が浮いてしまう恐れがある。このため、ラップ部23における樹脂層5の厚みを厚く(例えば100μm程度)することで、ラップ部23に隙間が空くことを抑制することができる。
【0051】
また、図5に示すように、ラミネートテープ1のラップ部23に、防水用樹脂27が注入されてもよい。ラップ部23の外周からラミネートテープ1のラップ部23の隙間に防水用樹脂27を注入することで、ラップ部23近傍の樹脂の総厚み(樹脂層5+防水用樹脂27)をラップ部23以外の部位の樹脂層5の厚みよりも厚くすることができる。すなわち、ラミネートテープ1のラップ部23及び近傍の樹脂量が、ラップ部23以外の樹脂量よりも多くすることで、前述したようなラップ部23の口開きを抑制して、ラップ部23を確実に接合することができる。なお、図4(b)に示すように、ラップ部23の樹脂層5の厚みを厚くしておき、さらに防水用樹脂27を注入してもよい。
【0052】
また、防水用樹脂27をラップ部23に注入する際には、ラップ部23の外部の段差部分にも防水用樹脂27が塗布されるため、ラップ部23の端部の段差を埋めてなだらかにすることができる。このため、外被17と樹脂層5とを確実に接着させて隙間が生じることを抑制することができる。なお、防水用樹脂27は、例えば、樹脂層5と同一の材質を適用することができる。
【0053】
次に、メタリックケーブル30aの製造方法について説明する。導体の外周に、例えば押出加工で絶縁被覆を形成して、被覆導線31を形成する。次に、被覆導線31を撚り合わせ集合機にてペア線やカッド線、ユニットとその撚り合わせ、または多層のペア線やカッド線の撚り合わせを行って、必要に応じて粗巻き紐33で束ね、複数の束を一括して押さえ巻きテープ37で巻き付けて、ケーブルコア部25を形成する。押さえ巻きテープ37は粗巻き紐などでもよく、集合したコアを束ねることができればよい。予め樹脂層5と金属層3等を貼り合わせたラミネートテープ1を供給して、フォーミングマシン等によって、押さえ巻きテープ37(ケーブルコア部25)の外周に縦巻きフォーミングして透湿防止層が形成される。
【0054】
ここで、前述したように、ラミネートテープ1をフォーミングして筒状とした際に、ラミネートテープ1の両端部が互いに重なり合うラップ部23が形成される。この状態では、ラップ部23において、ラミネートテープ1同士は融着等していないため、重なり合った部分が多少開いて隙間が生じた状態となる恐れがある。このまま外被を押し出すと、隙間の空気が残ったままラップ部23が形成されてしまい、ラップ部23の樹脂層5と金属層3との接合が不完全となる恐れがある。
【0055】
そこで、このような隙間を埋めるように、ラミネートテープ1を巻き付けた後、外被17を押し出す前に、ラップ部23におけるラミネートテープ1同士の間に防水用樹脂27を注入することが望ましい。例えば、ラミネートテープ1を巻いた後に、ラップ部23の外部のつなぎ目にノズルや針を当てて、そこから防水用樹脂27を注入する。また、必要に応じて、防水用樹脂27の注入後にラップ部23を外周から押さえて均す。なお、防水用樹脂27の塗布厚は、1mm以下程度である。すなわち、防水用樹脂27の一部は、ラップ部23からはみ出す程度の量が注入される。このようにすることで、外被17の押出前に、ラップ部23を塞ぎ、予めラップ部23を部分的に接着接合することができる。また、ラップ部23に形成される段差を多少なだらかにすることができる。
【0056】
次に、ラミネートテープ1により形成された透湿防止層の外周に、外被17が押出加工されて一体化される。なお、外被17は、中密度ポリエチレン又は高密度ポリエチレンであるため、従来の一般的なポリエチレンの押し出し温度よりも高温で押出を行う。例えば、外被17を、200℃以上の温度で押出成形することが望ましい。このようにすることで、樹脂層5、金属層3及び防水用樹脂27が確実に接着接合される。以上によりメタリックケーブル30aが製造される。
【0057】
以上、本実施の形態によれば、樹脂層5に耐高温特性の良い熱可塑性樹脂をベースに無水マレイン酸をグラフト化している樹脂であるため、軟化温度が高く、高温時にもラップ部23の接合を確実に維持することができる。また、さらに外被17を中密度ポリエチレン又は高密度ポリエチレンとすることで、マレイン酸を含む樹脂層5と金属層3とが確実に接合されて塞がれるため、止水性を高めることができる。また、外被17と樹脂層5とが長手方向に連続して確実に接合されるため、ラミネートテープ1の座屈を抑制することができる。
【0058】
また、ラップ部23の樹脂層5を厚くすることで、より確実にラップ部23を接合することができる。例えば、ケーブルコア部25の外周面は、必ずしも平坦(完全に均一な曲面)ではないため、ラミネートテープ1を巻き付けた際に、樹脂層5にも、多少の凹凸が生じる。このまま外被17を押し出してしまうと、ラップ部23で対向する樹脂層5と金属層3との隙間がそのまま残ってしまう恐れがある。これに対し、樹脂層5の厚みを厚くすることで、外被17の押し出し時に樹脂層5がクッションの役割を果たしてラップ部23をより確実に接合することができる。
【0059】
また、ラップ部23へ防水用樹脂27を注入しても同様の効果を得ることができる。また、防水用樹脂27を注入することで、さらに、ラップ部23の段差をなだらかにして、外被17の押出の際に、エアだまり等が生じることを抑制することができる。
【0060】
また、外被17が中密度ポリエチレン又は高密度ポリエチレンであるため、可撓性は多少悪化するものの、外被17の厚みを薄くすることができるため、ケーブルを軽量化及び曲げやすくなりケーブルの施工性を向上することができる。
【0061】
次に、第2の実施形態について説明する。図6は、メタリックケーブル30bを示す斜視図である。なお、以下の説明において、メタリックケーブル30aと同様の構成については、図1図5と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0062】
メタリックケーブル30bは、メタリックケーブル30aとほぼ同様の構成であるが、ラミネートテープ1に、波付加工が施される点で異なる。ラミネートテープ1の波付形状は、ケーブルコア部25の長手方向に対して山谷が繰り返され、山部と谷部のそれぞれが周方向に連続するように形成される。波付形状を施さずに平滑としてもよい。
【0063】
ラミネートテープ1の波付形状は、ラミネートテープ1の製造時に行って、波付形状のラミネートテープ1をケーブルコア部25の外周に送って巻きつけてもよく、または、ラミネートテープ1をフォーミングする際に、同時に波付け加工を行ってもよい。
【0064】
このように、ラミネートテープ1は、必要に応じて波付け加工が施されて使用することもできる。なお、この場合でも、ラップ部23において、樹脂層5の厚みを厚くしてもよく、又は、防水用樹脂27を注入してもよい。このようにラップ部23を形成することは、以下の他の実施形態も同様である。
【0065】
次に、第3の実施形態について説明する。図7は、メタリックケーブル30cを示す断面図である。メタリックケーブル30cは、内部シース39を有する。メタリックケーブル30cは、メタリックケーブル30a、30bと同様に、複数の被覆導線31が粗巻き紐33で束ねられ、この複数の束の外周に押さえ巻きテープ37が巻き付けられる。押さえ巻きテープ37は複数の束を束ねることができればよく、粗巻き紐などでもよい。また、押さえ巻きテープ37(ケーブルコア部25)の外周には、第1のラミネートテープ1がラップ部23を形成して縦添え巻される。
【0066】
メタリックケーブル30cでは、第1のラミネートテープ1の外周に、内部シース39が形成される。内部シース39は、例えば押出によって成形される。内部シース39の外周には、さらに第2のラミネートテープ1が巻き付けられる。
【0067】
外側の第2のラミネートテープ1の外周であって、メタリックケーブル30cの最外周には、外被17が設けられる。すなわち、第2のラミネートテープ1は、外被17の内側に配置される。外被17は、第2のラミネートテープ1の外周を覆うように設けられて、第2のラミネートテープ1の樹脂層5と接着される。すなわち、メタリックケーブル30cは、外被17と内部シース39の2層の樹脂層を有し、外被17と内部シース39のそれぞれの内側に、ラミネートテープ1が2層に巻き付けられる。なお外被17と内部シース39の2層の樹脂層を有する場合において、ラミネートテープ1は外被17か内部シース39のいずれかの内側のみの1層としてもよく、この場合には、ラミネートテープ1を配置していない外被17か内部シース39の内側には目的に合った外装を施してもよい。外装の例として、鉄やステンレスを巻き付けて鳥獣害対策としてもよい。
【0068】
このように、内部シース39を設ける際には、内周側の第1のラミネートテープ1と押さえ巻きテープ37(ケーブルコア部25)との間と、内部シース39と外周側の第2のラミネートテープ1の間に、それぞれ引き裂き紐35a、35bが配置される。このようにすることで、引き裂き紐35bを引き出すことで、外側のラミネートテープ1と外被17とを引き裂いて、内部シース39を露出させることができる。また、さらに引き裂き紐35aを引き出すことで、内側のラミネートテープ1と内部シース39とを引き裂いて、内部の被覆導線31を取り出すことが可能である。
【0069】
なお、本実施形態では、押さえ巻きテープ37までをケーブルコア部25としたが、内部シース39を含めてケーブルコア部25としてもよい。いずれの場合でも、ラミネートテープ1は、ケーブルコア部の外周に巻き付けられることとなる。なお、内部シース39の内側にはラミネートテープ1を設けずに樹脂だけとしてもよい。
【0070】
このように、メタリックケーブル30a、30b、30cにラミネートテープ1を適用することで、遮水性を確保することができるとともに、耐環境性にも優れたメタリックケーブルを得ることができる。
【0071】
また、メタリックケーブル30cのように、内部シース39を設け、引き裂き紐35a、35bをそれぞれの部位に設けることで、外被17等と内部シース39等とを別々に引き裂くことができるため、引き裂き作業が容易であり、引き裂き紐の破断等を抑制することができる。
【0072】
次に、第4の実施形態について説明する。図8は、光ケーブル40を示す断面図である。光ケーブル40は、テンションメンバ41、スペーサ43、光ファイバテープ心線47、内部シース39、ラミネートテープ1、外被17等から構成される。
【0073】
スペーサ43は、可撓性を有する樹脂で構成される。スペーサ43の外周には、複数の溝45が設けられ、溝45は、スペーサ43の長手方向に対して一方向に螺旋状、または両方向にSZ状に繰り返して連続して形成される。スペーサ43の中央には、テンションメンバ41が設けられる。溝45内には、複数の光ファイバテープ心線47が収容される。光ファイバテープ心線47は、例えば、長手方向に対して隣り合う光ファイバ同士がUV樹脂で接着された光ファイバテープ心線である。
【0074】
スペーサ43の外周には、押さえ巻きテープ49が縦添えや螺旋巻などで巻き付けられる。押さえ巻きテープ49(ケーブルコア部25)の外周には内部シース39が設けられる。内部シース39は、例えば押出成形で形成される。また、内部シース39の外周には、保護テープ53が巻き付けられる。内部シース39及び保護テープ53は樹脂製であり、内部シース39と保護テープ53は接着されない。
【0075】
保護テープ53の外周には、ラミネートテープ1が巻き付けられる。前述したように、ラミネートテープ1は、樹脂層5を外周にして、ラップ部23を設けて縦添え巻きされる。
【0076】
なお、本実施形態では、押さえ巻きテープ49までをケーブルコア部25としたが、内部シース39および保護テープ53を含めてケーブルコア部としてもよく、保護テープ53を使用せずに内部シース39だけを含めてケーブルコア部としてもよい。前述したように、いずれの場合でも、ラミネートテープ1は、ケーブルコア部の外周に巻き付けられるとする。すなわち、本発明において、ケーブルコア部の外周にラミネートテープ1が巻き付けられるとは、ケーブルコア部とラミネートテープ1の間に保護テープ53等の他の構成が設けられていることを含むものである。さらに前述のメタリックケーブルと同様にラミネートテープ1は平滑でもよいが波付け加工を施してもよく、ラミネートテープ1を施さない層には目的に合った外装を施してもよい。
【0077】
ラミネートテープ1の外周であって、光ケーブル40の最外周には、外被17が設けられる。すなわち、ラミネートテープ1は、外被17の内側に配置される。外被17は、ラミネートテープ1の外周を覆うように設けられて、ラミネートテープ1の樹脂層5と接着される。
【0078】
なお、光ケーブル40においても、ラミネートテープ1とケーブルコア部25の間に引き裂き紐が配置される。図示した例では、押さえ巻きテープ49(ケーブルコア部25)と内部シース39との間に引き裂き紐35aが配置され、さらに、保護テープ53とラミネートテープ1との間に引き裂き紐35bが配置される。引き裂き紐35bを引き出すことで、ラミネートテープ1と外被17とを引き裂いて、内部の保護テープ53等を露出させることができる。また、さらに引き裂き紐35aを引き出すことで、内部シース39と保護テープ53とを引き裂いて、内部の光ファイバテープ心線47を取り出すことが可能である。
【0079】
なお、光ケーブル40において、溝45の形状、配置数、深さや、光ファイバテープ心線47等の構成は図示した例には限られない。また、内部シース39及び保護テープ53は、必ずしも必要ではない。
【0080】
このように、光ケーブル40にラミネートテープ1を適用することで、遮水性を確保することができるとともに、耐環境性にも優れた光ケーブルを得ることができる。また、ラミネートテープ1のラップ部23が着き易くなるように樹脂層5を形成し、さらに遮水性を向上させることも可能である。
【0081】
また、引き裂き紐35bと内部シース39との間に、保護テープ53を巻き付けることで、引き裂き紐35bが、内部シース39に食い込んだり密着したりして、引き出すことが困難となることを抑制することができる。
【0082】
このように、ラミネートテープ1は、各種のケーブルに好適に適用することができる。
【実施例
【0083】
次に、図1に示すケーブルについて、樹脂層や外被等を変更していくつかのサンプルを試作して、外観異常と捻回試験後のラミネートテープの座屈の有無を評価した。用いたラミネートテープは、金属層を150μmのステンレス製とし、樹脂層は100μmの低密度ポリエチレン製とした。ケーブルは、全体として約23mm径であり、1.5mに切り分けて評価した。各条件及び結果を表1に示す。
【0084】
【表1】
【0085】
無水マレイン酸のグラフト化有無は、ベース樹脂のHDPEに無水マレイン酸を添加しグラフト化の有無を示したものである。また、「ラップ部の樹脂量がた領域よりも多い」は、前述したように、ラップ部における樹脂層の厚みが厚い場合(防水用樹脂の注入)を「○」とし、ラップ部に樹脂の厚み変化がないものを「×」とした。
【0086】
捻回試験は、75℃で行った。まず、ケーブルの両端を保持し、もう一端をある方向に90度捻じり、元の位置に戻し、逆の方向に90度捻じりもとの位置に戻した。これを90度の捻回の1往復とし、捻回90度×8往復の試験を行った。この際に、外観異常と同様に、ラミネートテープの座屈や外被に亀裂が発生していない場合は〇とし、ラミネートテープの座屈や外被に亀裂が見られた物を×とした。
【0087】
実施例1から実施例7は、外被が中密度ポリエチレン(MDPE)又は高密度ポリエチレン(HDPE)であり、かつ、ラミネートテープのベース樹脂を中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、又はポリプロピレン(PP)とし無水マレイン酸が1%含まれてグラフト化しているため、外観異常も捻回試験も合格(○)となった。
【0088】
一方、比較例1のように、無水マレイン酸を添加していない樹脂で形成した樹脂層を用いたラミネートテープを用い、HDPEを押し出して外被を形成したケーブルでは、ラミネートテープのラップ部での浮きが見られ、さらに一部に座屈が見られた。これは、ケーブルの長手方向でラミネートテープと外被とが連続的に接合されていなかったためと考えられる。
【0089】
ケーブルの長手方向でラミネートテープと外被とが連続的に接合されていないと、ラミネートテープまたは外被のいずれかで捻回の力に対抗しなければならなく、過大に負荷がかかるため、ラミネートテープのラップ部での浮きや、座屈が発生しやすくなる。これに対し、ケーブルの長手方向でラミネートテープと外被とが連続的に接合されていれば、ラミネートテープと外被の両方で捻回にかかる力に対抗することができるためである。このため、比較例1は、捻回試験で不合格(×)であった。
【0090】
また、比較例2は、外被が低密度ポリエチレンであり、押出温度も低いため、捻回試験で不合格(×)であった。
【0091】
また、比較例3はラップ部の樹脂量が防水樹脂等の増加がなく他部分と同じであるため、捻回試験は不合格(×)であった。これは、ケーブルを捻回すると防水樹脂の注入がないためラップ部で剥がれが生じる場合がある。この捻回試験は使用環境下で捻りが加わったまま設置された場合を想定した加速度試験を想定しており、ラップ部の剥離は、長期間、ラミネートテープのラップ部に応力がかかり続け、接着部が耐えきれなくなり起こる現象と考えられる。このため、ラミネートテープでケーブルコアを縦添えした際に、ラップ部に追加でラミネートテープの樹脂層と同じ樹脂で埋めた状態で外被を形成することで、長期のケーブルを曲げた状態でもラップ部で剥がれることが無くなるものと考えられる。
【0092】
比較例4は、ラミネートテープの樹脂層のベース樹脂が低密度ポリエチレン(LDPE)であるため、比較例5でもラミネートテープの樹脂層のベース層がエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)であるため、捻回試験時にラミネートテープの樹脂層のベース樹脂が軟化しラップ部がはがれて外被が損傷していた。
また比較例6で外被樹脂を低密度ポリエチレン(LDPE)、ラミネートテープの樹脂層のベース樹脂も低密度ポリエチレン(LDPE)で押し出し温度を230℃にするとやはり捻回試験時にラミネートテープの樹脂層のベース樹脂が軟化してラップ部がはがれ外被が損傷した。
【0093】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0094】
例えば、前述した各実施形態の各構成は、互いに組み合わせることができることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0095】
1………ラミネートテープ
3………金属層
5………樹脂層
17………外被
23………ラップ部
25………ケーブルコア部
27………防水用樹脂
30a、30b、30c………メタリックケーブル
31………被覆導線
33………粗巻き紐
35、35a、35b………引き裂き紐
37………押さえ巻きテープ
39………内部シース
40………光ケーブル
41………テンションメンバ
43………スペーサ
45………溝
47………光ファイバテープ心線
49………押さえ巻きテープ
53………保護テープ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8