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特許7575215光増幅ファイバ、光ファイバ増幅器および光通信システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】光増幅ファイバ、光ファイバ増幅器および光通信システム
(51)【国際特許分類】
   H01S 3/067 20060101AFI20241022BHJP
   H01S 3/10 20060101ALI20241022BHJP
   G02B 6/032 20060101ALI20241022BHJP
   G02B 6/036 20060101ALI20241022BHJP
   G02B 6/02 20060101ALI20241022BHJP
   H04B 10/291 20130101ALI20241022BHJP
【FI】
H01S3/067
H01S3/10 D
G02B6/032
G02B6/036
G02B6/02 461
G02B6/02 386
H04B10/291
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020137386
(22)【出願日】2020-08-17
(65)【公開番号】P2021153166
(43)【公開日】2021-09-30
【審査請求日】2023-05-23
(31)【優先権主張番号】P 2020052514
(32)【優先日】2020-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、総務省、「研究開発課題「新たな社会インフラを担う革新的光ネットワーク技術の研究開発」技術課題II「マルチコア大容量光伝送システム技術」」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高坂 繁弘
(72)【発明者】
【氏名】前田 幸一
(72)【発明者】
【氏名】相曽 景一
(72)【発明者】
【氏名】荒井 慎一
(72)【発明者】
【氏名】杉崎 隆一
(72)【発明者】
【氏名】武笠 和則
(72)【発明者】
【氏名】土田 幸寛
(72)【発明者】
【氏名】高橋 正典
【審査官】佐竹 政彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0069019(US,A1)
【文献】国際公開第2012/172997(WO,A1)
【文献】特開2018-100206(JP,A)
【文献】特開2017-183564(JP,A)
【文献】特開2011-145520(JP,A)
【文献】国際公開第2017/203696(WO,A1)
【文献】GOTO et al.,Impact of Air Hole on Crosstalk Suppression and Spatial Core Density of Multi-Core Fiber,JOURNAL OF LIGHTWAVE TECHNOLOGY,IEEE,2018年10月15日,VOL. 36, NO. 20,P.4819-4825
【文献】SAKAMOTO et al.,Crosstalk Suppressed Hole-assisted 6-core Fiber with Cladding Diameter of 125 um,39th European Conference and Exhibition on Optical Communication (ECOC 2013),IEEE,2013年10月28日,Mo.3.A.3
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 3/067
H01S 3/10
H04B 10/291
G02B 6/02
G02B 6/036
IEEE Xplore
Google Scholar
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
希土類元素を添加した複数のコア部と、
前記複数のコア部を取り囲み、各コア部の最大屈折率よりも低い屈折率を有する内側クラッド部と、
前記内側クラッド部を取り囲み、前記内側クラッド部の屈折率よりも低い屈折率を有する外側クラッド部と、
を備える光増幅ファイバであって、
前記内側クラッド部は複数の気泡を含み、
前記気泡の直径は前記内側クラッド部を伝搬する光の波長の1/2000倍以上2倍以下であり、
前記光増幅ファイバの軸方向に直交する断面における前記気泡の存在位置が、前記軸方向において位置が異なる断面毎に異なり、
前記複数のコア部のうち、前記光増幅ファイバの中心を軸として前記中心から最も離間したコア部を通る円管状の境界の内側と外側とに、前記気泡が存在し、かつ前記内側と前記外側とで、前記気泡の存在密度が異なる
光増幅ファイバ。
【請求項2】
前記光増幅ファイバの軸方向に直交する断面において、前記内側クラッド部の断面積に対する前記複数の気泡の断面積の総計が0.1%以上30%以下である
請求項1に記載の光増幅ファイバ。
【請求項3】
前記気泡は、前記光増幅ファイバの軸方向に直交する断面において、前記コア部から、コア径以上離間した円環状の領域に存在する
請求項1または2に記載の光増幅ファイバ。
【請求項4】
前記気泡は、前記光増幅ファイバの各コア部の径方向において、略一様に分布している
請求項1~3のいずれか一つに記載の光増幅ファイバ。
【請求項5】
前記気泡は、前記光増幅ファイバの軸方向において、略一様に分布している
請求項1~4のいずれか一つに記載の光増幅ファイバ。
【請求項6】
前記気泡は、前記光増幅ファイバの各コア部の軸回り方向において、略一様に分布している
請求項1~5のいずれか一つに記載の光増幅ファイバ。
【請求項7】
前記希土類元素はエルビウムを含む
請求項1~のいずれか一つに記載の光増幅ファイバ。
【請求項8】
前記内側クラッド部には、前記光増幅ファイバの軸方向に直交する断面において、径方向において前記気泡の存在密度が疎または密の層が2層以上存在する
請求項1~のいずれか一つに記載の光増幅ファイバ。
【請求項9】
前記気泡は、前記光増幅ファイバの軸方向に直交する断面において、前記コア部から、コア径以上離間した位置に存在する
請求項1~のいずれか一つに記載の光増幅ファイバ。
【請求項10】
前記気泡の存在領域は、前記光増幅ファイバの中心を軸とした回転対称の位置にある
請求項1~のいずれか一つに記載の光増幅ファイバ。
【請求項11】
前記気泡の存在領域は、前記光増幅ファイバの軸方向に直交する断面において六方最密格子を規定した場合に、その格子点の位置にある
請求項1~のいずれか一つに記載の光増幅ファイバ。
【請求項12】
前記気泡は、前記光増幅ファイバの軸方向に直交する断面において六方最密格子を規定した場合に、或る格子点を中心とし、格子点間距離の1/2以下の半径の円環状に存在する
請求項1~のいずれか一つに記載の光増幅ファイバ。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一つに記載の光増幅ファイバと、
前記光増幅ファイバの前記希土類元素を光励起する励起光を出力する励起光源と、
前記励起光を前記内側クラッド部に光学結合させる光結合器と、
を備える
光ファイバ増幅器。
【請求項14】
複数の前記コア部を備え、前記複数のコア部の間の利得差が3dB以下である
請求項13に記載の光ファイバ増幅器。
【請求項15】
請求項13または14に記載の光ファイバ増幅器を備える
光通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光増幅ファイバ、光ファイバ増幅器および光通信システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、海底光通信等の用途において、光増幅器としてマルチコアEDFA(Erbium-Doped optical Fiber Amplifier)を用いることによって、光増幅器の消費電力が削減されることが期待されている。
【0003】
マルチコアEDFAについては、マルチコア光増幅ファイバとしてダブルクラッド型のマルチコアEDFを用いて、クラッド励起方式によってコア部に含まれる希土類元素であるエルビウム(Er)を光励起する構成が知られている(非特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Kazi S Abedin et al, “Multimode Erbium Doped Fiber Amplifiers for Space Division Multiplexing Systems”, JOURNAL OF LIGHTWAVE TECHNOLOGY,VOL.32,NO.16,AUGUST 15,2014 pp.2800-2808.
【文献】Kazi S Abedin et al, “Cladding-pumped erbium-doped multicore fiber amplifier”, OPTICS EXPRESS Vol.20,No.18 27 August 2012 pp.20191-20200.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通信トラフィックは常に増加しているので、通信容量の増量のためにも、マルチコア光増幅ファイバの特性にはさらに好適なものが求められている。
【0006】
特に、マルチコア光増幅ファイバの励起効率を改善できれば、マルチコア光ファイバ増幅器の消費電力の削減の観点から好ましい。ここで、励起効率とは、たとえば、マルチコア光増幅ファイバに入力された励起光のエネルギーに対する、光増幅に使用された励起光のエネルギーの比率で表される。なお、励起効率の改善は、マルチコア光増幅ファイバに限らず、シングルコアの光増幅ファイバにおいても有益である。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、励起効率が改善された光増幅ファイバ、ならびにこれを用いた光ファイバ増幅器および光通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様は、希土類元素を添加した少なくとも一つのコア部と、前記少なくとも一つのコア部を取り囲み、各コア部の最大屈折率よりも低い屈折率を有する内側クラッド部と、前記内側クラッド部を取り囲み、前記内側クラッド部の屈折率よりも低い屈折率を有する外側クラッド部と、を備え、前記内側クラッド部は複数の気泡を含む光増幅ファイバである。
【0009】
前記マルチコア光増幅ファイバの軸方向に直交する断面において、前記内側クラッド部の断面積に対する前記複数の気泡の断面積の総計が0.1%以上30%以下であるものでもよい。
【0010】
前記気泡の直径は前記内側クラッド部を伝搬する光の波長の1/2000倍以上2倍以下であるものでもよい。
【0011】
前記気泡は、前記マルチコア光増幅ファイバの軸方向に直交する断面において、前記コア部から、コア径以上離間した円環状の領域に存在するものでもよい。
【0012】
前記気泡は、前記マルチコア光増幅ファイバの各コア部の径方向において、略一様に分布しているものでもよい。
【0013】
前記気泡は、前記マルチコア光増幅ファイバの軸方向において、略一様に分布しているものでもよい。
【0014】
前記気泡は、前記マルチコア光増幅ファイバの各コア部の軸回り方向において、略一様に分布しているものでもよい。
【0015】
複数の前記コア部を備え、前記複数のコア部のうち、前記マルチコア光増幅ファイバの中心を軸として前記中心から最も離間したコア部を通る円管状の境界の内側と外側とで、前記気泡の存在密度が異なるものでもよい。
【0016】
前記希土類元素はエルビウムを含むものでもよい。
【0017】
前記内側クラッド部には、前記光増幅ファイバの軸方向に直交する断面において、径方向において前記気泡の存在密度が疎または密の層が2層以上存在するものでもよい。
【0018】
前記気泡は、前記光増幅ファイバの軸方向に直交する断面において、前記コア部から、コア径以上離間した位置に存在するものでもよい。
【0019】
前記気泡の存在領域は、前記光増幅ファイバの中心を軸とした回転対称の位置にあるものでもよい。
【0020】
前記気泡の存在領域は、前記光増幅ファイバの軸方向に直交する断面において六方最密格子を規定した場合に、その格子点の位置にあるものでもよい。
【0021】
前記気泡は、前記光増幅ファイバの軸方向に直交する断面において六方最密格子を規定した場合に、或る格子点を中心とし、格子点間距離の1/2以下の半径の円環状に存在するものでもよい。
【0022】
本発明の一態様は、前記光増幅ファイバと、前記光増幅ファイバの前記希土類元素を光励起する励起光を出力する励起光源と、前記励起光を前記内側クラッド部に光学結合させる光結合器と、を備える光ファイバ増幅器である。
【0023】
前記複数のコア部の間の利得差が3dB以下であるものでもよい。
【0024】
本発明の一態様は、前記光ファイバ増幅器を備える光通信システムである。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、励起効率が改善された光増幅ファイバを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、実施形態1に係るマルチコア光増幅ファイバの模式的な断面図である。
図2図2は、図1に示すマルチコア光増幅ファイバの図1とは別の断面における模式的な断面図である。
図3図3は、実施形態2に係るマルチコア光増幅ファイバの模式的な断面図である。
図4図4は、実施形態3に係るマルチコア光増幅ファイバの模式的な断面図である。
図5図5は、実施形態4に係るマルチコア光増幅ファイバの模式的な断面図である。
図6図6は、実施形態5に係るマルチコア光増幅ファイバの模式的な断面図である。
図7図7は、実施形態6に係るマルチコア光増幅ファイバの模式的な断面図である。
図8図8は、実施形態7に係るマルチコア光増幅ファイバの模式的な断面図である。
図9図9は、実施形態8に係るマルチコア光増幅ファイバの模式的な断面図である。
図10図10は、実施形態8に係るマルチコア光増幅ファイバの製造方法の一例の説明図である。
図11図11は、実施形態9に係るマルチコア光増幅ファイバの模式的な断面図である。
図12図12は、実施形態9に係るマルチコア光増幅ファイバの製造方法の一例の説明図である。
図13図13は、実施形態10に係るマルチコア光増幅ファイバの模式的な断面図である。
図14図14は、実施形態10に係るマルチコア光増幅ファイバの製造方法の一例の説明図である。
図15図15は、実施形態11に係るマルチコア光ファイバ増幅器の構成を示す模式図である。
図16図16は、実施例のマルチコア光増幅ファイバの吸収スペクトルを示す図である。
図17図17は、実施形態12に係る光通信システムの構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、図面を参照して実施形態について説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一または対応する要素には適宜同一の符号を付している。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。また、本明細書においては、カットオフ波長とは、ITU-T(国際電気通信連合)G.650.1で定義するケーブルカットオフ波長を意味する。また、その他、本明細書で特に定義しない用語についてはG.650.1およびG.650.2における定義、測定方法に従うものとする。
【0028】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係るマルチコア光増幅ファイバの模式的な断面図であり、マルチコア光増幅ファイバの軸方向に垂直な断面を示している。マルチコア光増幅ファイバ1は、複数のコア部としての7個のコア部1aと、コア部1aを取り囲む内側クラッド部1bと、内側クラッド部1bを取り囲む外側クラッド部1cと、を備えているダブルクラッド型かつ7コア型のマルチコア光ファイバである。
【0029】
図1では、図面に垂直な方向がマルチコア光増幅ファイバ1の軸方向Dzである。また、図1では、マルチコア光増幅ファイバ1の径方向Dr、軸回り方向Dtが規定されている。なお、その他の図でも、図1と同様に、軸方向Dz、径方向Dr、軸回り方向Dtを同様に規定することができる。
【0030】
コア部1aは、最密充填状態を実現する三角格子状に配置されている。すなわち、1個のコア部1aが、内側クラッド部1bの中心または中心の近傍に配置されている。このコア部1aを中心に、6個のコア部1aは、正六角形の角の位置となるように配置されている。コア部1aは、マルチコア光増幅ファイバ1の軸方向に直交する断面において六方最密格子を規定した場合に、その格子点の位置にあるということもできる。コア部1aは、屈折率を高める屈折率調整用ドーパントとして、たとえばゲルマニウム(Ge)やアルミニウム(Al)を含む。また、コア部1aは、増幅媒体である希土類元素として、エルビウム(Er)を含む。Erは、たとえば波長1530nm付近の吸収係数のピークが2.5dB/m~11dB/mとなる濃度で添加されている。また、たとえば、添加濃度は250ppm~2000ppmである。ただし、吸収係数や添加濃度は特に限定されない。なお、AlはErの濃度消光を抑制する機能も有する。
【0031】
内側クラッド部1bは、各コア部1aの最大屈折率よりも低い屈折率を有する。内側クラッド部1bは、たとえば屈折率調整用のドーパントを含まない純石英ガラスからなる。これにより各コア部1aと内側クラッド部1bとの屈折率プロファイルはステップインデックス型となる。なお、内側クラッド部1bが、各コア部1aのそれぞれの外周に位置するトレンチ部を有していてもよい。この場合、トレンチ部はフッ素(F)などの屈折率を低める屈折率調整用ドーパントが添加された石英ガラスからなり、トレンチ部の屈折率は、純石英ガラスからなる内側クラッド部1bの他の部分の屈折率よりも低い屈折率を有する。この場合、各コア部1aと内側クラッド部1bとの屈折率プロファイルはトレンチ型となる。
【0032】
内側クラッド部1bのガラスに対する各コア部1aの比屈折率差をコアΔとすると、本実施形態では各コア部1aのコアΔは略等しく、たとえば波長1550nmにて0.35%~2%である。コア部1aのコア径は、コアΔとの関係で、希土類元素が光増幅可能な光増幅波長帯よりも短いカットオフ波長を実現するように設定されることが好ましい。光増幅波長帯は、Erの場合、Cバンドと呼ばれるたとえば1530nm~1565nmや、Lバンドと呼ばれるたとえば1565nm~1625nmである。コア径は、たとえば5μm~10μm程度である。
【0033】
外側クラッド部1cは、内側クラッド部1bの屈折率よりも低い屈折率を有しており、たとえば樹脂からなる。なお、内側クラッド部1bがトレンチ部を有している場合、外側クラッド部1cの屈折率はトレンチ部の屈折率よりも高くてもよいが、内側クラッド部1bの他の部分の屈折率および内側クラッド部1bの平均屈折率よりも低い。
【0034】
また、マルチコア光増幅ファイバ1の内側クラッド部1bは、複数の気泡1dを含んでいる。気泡1dは独立気泡であり、たとえば、大気圧よりも低い圧力のガスを含んでいる。
【0035】
内側クラッド部1bに、Erを光励起できる波長の励起光、たとえば976nmなどの900nm波長帯の励起光が入力されると、励起光は内側クラッド部1bの内部を伝搬しながら、各コア部1aに添加されたErを光励起する。これにより、各コア部1aは、各コア部1aに入力された信号光を光増幅可能となる。このようにマルチコア光増幅ファイバ1は、クラッド励起方式を適用可能に構成されている。
【0036】
マルチコア光増幅ファイバ1では、複数の気泡1dが、内側クラッド部1bを伝搬する励起光を散乱させる。その結果、内側クラッド部1bを伝搬する励起光のうち、コア部1aに到達する成分が多くなる。たとえは、マルチコア光増幅ファイバ1のようなクラッド励起方式の場合、通常はコア部1aに到達しないように伝搬するスキュー成分Sのような励起に寄与しない未使用成分が存在する。しかしながら、マルチコア光増幅ファイバ1では、スキュー成分Sなどの未使用成分が気泡1dによって散乱されてその一部がコア部1aに到達し、Erの光励起に使用され得る。なお、励起光は内側クラッド部1bをマルチモードで伝搬するため、スキュー成分Sも様々な角度で伝搬するモードがあり得る。これらの様々なスキュー成分Sが気泡1dによって散乱されることで、その一部がコア部1aに到達し、Erの光励起に使用され易くなり得る。
【0037】
また、マルチコア光増幅ファイバ1では、内側クラッド部1bの外側クラッド部1cとの境界近傍の領域には気泡1dが存在しない。これにより、スキュー成分Sの散乱が適度に調整され、内側クラッド部1bの外側クラッド部1cとの境界近傍においてコア部1aから離れるように進行する散乱光の発生を抑制することができる。
【0038】
以上のように構成されたマルチコア光増幅ファイバ1では、複数の気泡1dが内側クラッド部1bを伝搬する励起光を散乱させることで励起光のうちコア部1aに到達する成分が多くなるので、励起効率が改善される。
【0039】
なお、マルチコア光増幅ファイバ1において、図1に示すような軸方向Dzに直交する断面において、内側クラッド部1bの断面積に対する複数の気泡1dの断面積の総計を断面積比とすると、断面積比は、たとえば0.1%以上30%以下が好ましく、1%以上がさらに好ましい。断面積比が0.1%以上であれば、複数の気泡1dによる励起効率の改善効果が発揮され易く、1%以上であればさらに改善効果が発揮され易い。また、断面積比が30%以下であれば、マルチコア光増幅ファイバ1を所望の光学特性(増幅特性など)で製造することが容易である。また、断面積比が30%より大きい場合は、励起光を散乱させる効果が強くなりすぎ、内側クラッド部1bにおける励起光の伝搬損失が増大する場合がある。この場合、気泡が励起光を散乱することにより励起効率が改善される効果を、伝搬損失の増大により励起効率が劣化する効果が上回ることがある。
【0040】
また、図1のような断面における気泡1dの直径は、内側クラッド部1bを伝搬する光(励起光)の波長の1/2000倍以上2倍以下であるが好ましい。散乱体である気泡1dの直径が励起光の波長の1/20倍以上2倍以下である場合、気泡1dによる光の散乱は主にミー散乱である。気泡1dの直径が励起光の波長の1/2000倍以上1/20倍以下である場合、気泡1dによる光の散乱は主にレイリー散乱である。このように、粒子状の物質や屈折率変化に光波が衝突する場合、その大きさによって散乱の種類が異なる。ここで、ミー散乱では前方散乱が主であり、レイリー散乱は等方散乱であるが、いずれの散乱も励起効率の改善に寄与すると考えられる。たとえば、これらの散乱の散乱方向の特性を利用して、コア部1aの配置や内側クラッド部1bにおける励起光の電界分布等に応じて、直径が異なる気泡1dを空間的に分布させて、励起効率の改善の度合いを高めてもよい。たとえば、レイリー散乱は、伝搬方向を大きく変更させるほうが効果的な場合は、励起効率の改善に対する貢献が大きい。気泡1dの直径を制御する方法については後に詳述する。
【0041】
なお、気泡1dの断面が円形ではない場合、気泡1dの直径は、その気泡1dの断面積に等しい円の直径として定義してもよい。
【0042】
また、複数の気泡1dは、内側クラッド部1b内でランダムに存在していれば、励起光散乱効果が各コア部1aに対して均一に作用し易いので好ましい。複数の気泡1dが内側クラッド部1b内でランダムに存在しているとは、内側クラッド部1b内で気泡1dの分布に偏りがなく、略一様に分布していると言い換えることができる。したがって、たとえば、気泡1dは、軸方向Dzにおいて略一様に分布していることが好ましい。
【0043】
図2は、図1に示すマルチコア光増幅ファイバ1の図1とば別の断面における模式的な断面図である。図2に示す断面は、たとえば、図1に示す断面から、軸方向Dzに、マルチコア光増幅ファイバ1の長さの1%~5%程度の、長さに対して小さい距離だけ移動した位置での断面である。図2に示す断面では、軸方向Dzに少し移動しただけで図1に示す断面とは気泡1dの存在位置が異なる。このように断面毎に気泡1dの存在位置が異なってもよい。
【0044】
また、同様に、たとえば、気泡1dは、径方向Drにおいて略一様に分布していることが好ましい。また、気泡1dは、各コア部1aの径方向において略一様に分布していることが好ましい。また、たとえば、気泡1dは、軸回り方向Dtにおいて略一様に分布していることが好ましい。この場合、軸回り方向Dtにおいて基準角度位置から0度~60度の範囲での気泡1dの存在位置と、60度~120度の範囲での気泡1dの存在位置とが異なってもよい。また、気泡1dは、各コア部1aの軸回り方向において略一様に分布していることが好ましい。
【0045】
マルチコア光増幅ファイバ1は、たとえばスタック法や穿孔法などの公知のマルチコアファイバの製造方法を利用して製造することができる。なお、気泡1dは、公知の方法、たとえば特開2018-162170号公報に記載のような微粒子を用いる方法を用いて、たとえば内側クラッド部1b内に形成することができる。
【0046】
また、微粒子を用いる方法において、たとえば、結晶石英微粒子と石英ガラス微粒子とを混合した微粒子を用いてもよい。このとき、結晶石英微粒子には、固溶度が石英ガラス微粒子における固溶度よりも高いガス、たとえばヘリウムガスを固溶させておいてもよい。これにより、熱処理にて結晶石英微粒子が溶けるとヘリウムガスが発泡し、内側クラッド部1b内に気泡1dが形成される。
【0047】
(実施形態2)
図3は、実施形態2に係るマルチコア光増幅ファイバの模式的な断面図であり、マルチコア光増幅ファイバの軸方向に垂直な断面を示している。マルチコア光増幅ファイバ2は、実施形態1に係るマルチコア光増幅ファイバ1と比較して、内側クラッド部1bにおける気泡1dの存在密度が低く、断面積比が小さい点で異なる。
【0048】
以上のように構成されたマルチコア光増幅ファイバ2では、マルチコア光増幅ファイバ1と同様に、励起効率が改善される。
【0049】
(実施形態3)
図4は、実施形態3に係るマルチコア光増幅ファイバの模式的な断面図であり、マルチコア光増幅ファイバの軸方向に垂直な断面を示している。マルチコア光増幅ファイバ3は、実施形態1に係るマルチコア光増幅ファイバ1と比較して、内側クラッド部1bに、各コア部1aを取り囲む領域R1が存在する点で異なる。
【0050】
各領域R1は、各コア部1aと同心円状の領域であり、取り囲むコア部1aのコア径のたとえば3倍以上の直径を有し、各コア部1aに沿って軸方向Dzに伸びている円管状の領域である。そして、この領域R1には気泡1dは含まれていない。
【0051】
以上のように構成されたマルチコア光増幅ファイバ3では、気泡1dは、マルチコア光増幅ファイバ3の軸方向Dzに直交する断面において、各コア部1aから、コア径以上離間、たとえばコア径の3倍以上離間した位置に存在する。その結果、マルチコア光増幅ファイバ3では、マルチコア光増幅ファイバ1、2と同様に、励起効率が改善される。さらに、一度気泡1dによって散乱されてコア部1aに向かった励起光がコア部1aの近傍の気泡によって再度散乱されてしまうことを抑制することができる。また、さらには、気泡1dが、各コア部1aから比較的離れているので、各コア部1aの光伝搬特性に影響を与えることを抑制することもできる。
【0052】
マルチコア光増幅ファイバ3は、公知のマルチコアファイバの製造方法を利用して製造することができる。たとえば、スタック法の場合は、コア部1aとなる部分と領域R1となる部分を含む7本のガラスロッドであるコアロッドを、内側クラッド部1bの一部となるガラス管の中にスタックする。つづいて、コアロッドとガラス管との間の隙間に、線引き後に内部や外周面において気泡の発生が起きやすく、かつ内側クラッド部1bの一部となるガラスロッドをスタックし、母材を形成する。つづいて、この母材を線引きし、外側クラッド部1cを形成する。また、穿孔法の場合は、内側クラッド部1bの一部となる、線引き後に内部や外周面において気泡の発生が起きやすい比較的太径のガラスロッドである母材ロッドに、軸方向に平行に延びる孔を7つ形成し、各孔にコアロッドを挿入し、母材を形成する。つづいて、この母材を線引きし、外側クラッド部1cを形成する。線引き後に内部や外周面において気泡の発生が起きやすいガラスロッドとは、たとえば、ガラスロッド表面の粗さによって、気泡の発生密度や気泡直径を制御できるガラスロッドや、コア部よりも低い屈折率を持つように割合が調整された複数の添加物を含むガラスロッドや、周辺のガラス材料とは線引き炉温における粘度が異なり、かつ、コア部よりも低い屈折率を持つように割合が調整された複数の添加物を含むガラスロッドである。ここで、添加物は、Ge、Al、F、ホウ素(B)、ランタン(La)、塩素(Cl)などの、光ファイバ用添加物として利用可能な物質である。
【0053】
(実施形態4)
図5は、実施形態4に係るマルチコア光増幅ファイバの模式的な断面図であり、マルチコア光増幅ファイバの軸方向に垂直な断面を示している。マルチコア光増幅ファイバ4は、実施形態3に係るマルチコア光増幅ファイバ3と比較して、内側クラッド部1bにおける気泡1dの存在密度が低く、断面積比が小さい点で異なる。
【0054】
以上のように構成されたマルチコア光増幅ファイバ4では、マルチコア光増幅ファイバ3と同様に、励起効率が改善され、励起光の再度の散乱を抑制できるとともに、気泡1dが各コア部1aの光伝搬特性に影響を与えることを抑制することができる。
【0055】
(実施形態5)
図6は、実施形態5に係るマルチコア光増幅ファイバの模式的な断面図であり、マルチコア光増幅ファイバの軸方向に垂直な断面を示している。マルチコア光増幅ファイバ5は、実施形態1に係るマルチコア光増幅ファイバ1と比較して、内側クラッド部1bに領域R2、R3が存在している点で異なる。なお、図6では、気泡の図示を省略している。
【0056】
領域R2は、内側クラッド部1bにおいて、正六角形の角の位置となるように配置されている6個のコア部1aの中心を通り、軸方向Dzに伸びている円筒状の領域である。領域R3は、内側クラッド部1bにおいて、領域R2の外周側に位置し、軸方向Dzに伸びている円管状の領域である。領域R2と領域R3との境界は、マルチコア光増幅ファイバ5の中心から最も離間したコア部1aを通る円管状の境界の一例である。なお、境界の軸はマルチコア光増幅ファイバ5の中心である。
【0057】
マルチコア光増幅ファイバ5は、境界の内側の領域R2と、境界の外側の領域R3とで気泡1dの存在密度が異なる。たとえば、領域R2における存在密度は、領域R3における存在密度よりも高い。またたとえば、領域R2における存在密度は、領域R3における存在密度よりも低い。
【0058】
以上のように構成されたマルチコア光増幅ファイバ5では、マルチコア光増幅ファイバ1と同様に、励起効率が改善される。また、マルチコア光増幅ファイバ5では、コア部1aが主に存在する領域R2と、内側クラッド部1bの外縁側でスキュー成分が比較的多い領域R3とで、散乱光の発生の程度を異ならせることができる。たとえば、領域R2における気泡の存在密度を高くして、コア部1aが主に存在する領域R2で散乱を多数発生させてもよいし、領域R3における気泡の存在密度を高くして、スキュー成分の散乱を多数発生させてもよい。各領域における存在密度の設計は、マルチコア光増幅ファイバ5の設計や要求特性に応じて適宜設定することができる。
【0059】
マルチコア光増幅ファイバ5は、公知のマルチコアファイバの製造方法を利用して製造することができる。たとえば、穿孔法の場合は、気泡の存在密度が場所によって異なるように、内側クラッド部1bの一部となる母材ロッドを形成する。このような母材ロッドは、たとえばジャケット法によって作製することができる。つづいて、この母材ロッドに、軸方向に平行に延びる孔を7つ形成し、各孔にコア部1aとなる部分と内側クラッド部1bの一部となる部分とを含むコアロッドを挿入し、母材を形成する。つづいて、この母材を線引きし、外側クラッド部1cを形成する。また、スタック法の場合は、コアロッドを、内側クラッド部1bの一部となるガラス管の中にスタックする。つづいて、コアロッドとガラス管との間の隙間に、線引き後に内部や外周面において気泡の発生が起きやすく、かつ、内側クラッド部1bの一部となるガラスロッドをスタックし、母材を形成する。この際、スタックする場所に応じて、気泡の存在密度が異なるガラスロッドを用いることで、気泡の存在密度が場所によって異なるようにできる。
【0060】
(実施形態6)
図7は、実施形態6に係るマルチコア光増幅ファイバの模式的な断面図であり、マルチコア光増幅ファイバの軸方向に垂直な断面を示している。マルチコア光増幅ファイバ6は、実施形態1に係るマルチコア光増幅ファイバ1と比較して、内側クラッド部1bに領域R4が存在し、領域R4にのみ気泡1dが存在している点で異なる。なお、図7では、気泡の図示を省略している。
【0061】
各領域R4は、各コア部1aと同心円状の領域であり、各コア部に沿って軸方向Dzに伸びている円管状の領域である。各領域R4は、マルチコア光増幅ファイバ6の軸方向Dzに直交する断面において、各コア部1aから、コア径以上離間した円環状の領域に存在してもよい。
【0062】
以上のように構成されたマルチコア光増幅ファイバ6では、マルチコア光増幅ファイバ3~5と同様に、励起効率が改善される。また、マルチコア光増幅ファイバ6では、励起光の再度の散乱を抑制できるとともに、気泡1dが各コア部1aの光伝搬特性に影響を与えることを抑制することができる。また、各コア部1aに対する領域R4での気泡の存在密度を互いに異なる値とすれば、各コア部1aに対する気泡の効果を異なる程度に調整できる。
【0063】
マルチコア光増幅ファイバ6は、公知のマルチコアファイバの製造方法を利用して製造することができる。たとえば、穿孔法の場合は、母材ロッドに、軸方向に平行に延びる孔を7つ形成し、各孔にコア部1aとなる部分と内側クラッド部1bの一部となる部分とを含むガラスロッドであるコアロッドを挿入し、母材を形成する。つづいて、この母材を線引きし、外側クラッド部1cを形成する。
【0064】
上記方法において、コアロッドの外周面またはガラスロッドの孔の内表面を比較的粗くすると、その後の熱処理において、コアロッドの外周面とガラスロッドの孔の内表面との界面に気泡が発生する。気泡が発生する熱処理は、たとえば母材の脱水工程や母材ロッドとコアロッドとの一体化工程や線引き工程である。これにより、領域R4となる、気泡が存在する気泡領域が形成される。コアロッドの外周面またはガラスロッドの孔の内表面を比較的粗くする方法としては、たとえば以下の方法がある。たとえば、当該表面をフッ酸などの化学処理にて表面粗処理を行なう。この場合、表面に、複数の孔が開いたテフロン(登録商標)などのマスク層を形成し、マスク層の上から化学処理を行ってもよい。または、当該表面に長手方向に沿って複数の直線状の溝や、1または複数の螺旋状の溝を形成して粗くしてもよい。
【0065】
また、母材を形成する際に、ガラスロッドの孔とコアロッドとの間の隙間に多数のガラス管を挿入し、熱処理にてガラス管の孔が閉塞しないように線引きまでを行えば、長手方向に連続した気泡が形成される。
【0066】
(実施形態7)
図8は、実施形態7に係るマルチコア光増幅ファイバの模式的な断面図である。このマルチコア光増幅ファイバ7は、図1に示す実施形態1に係るマルチコア光増幅ファイバ1において、内側クラッド部1bを内側クラッド部1eに置き換えた構成を有する。
【0067】
内側クラッド部1eは、断面が円形の内側クラッド部1eaと、内側クラッド部1eaを取り囲む円環状かつ層状の気泡領域1ebと、気泡領域1ebを取り囲む円環状かつ層状の内側クラッド部1ecと、内側クラッド部1ecを取り囲む円環状かつ層状の気泡領域1edと、気泡領域1edを取り囲む円環状かつ層状の内側クラッド部1eeと、を備えている。内側クラッド部1ea、1ec、1eeと、気泡領域1eb、1edとは、いずれも内側クラッド部1bと同様のガラス材料で構成できる。気泡領域1eb、1edは、ガラス材料に複数の気泡1dを含む領域である。内側クラッド部1ea、1ec、1eeは、本実施形態では気泡を含んでいないが、気泡領域1eb、1edよりも低い存在密度で気泡を含んでいてもよい。
【0068】
内側クラッド部1ec、1eeを気泡の存在密度が疎の層、気泡領域1eb、1edを気泡の存在密度が密の層とすると、内側クラッド部1eには、径方向において気泡の存在密度が疎または密の層が2層以上である4層存在する。
【0069】
以上のように構成されたマルチコア光増幅ファイバ7では、マルチコア光増幅ファイバ3~6と同様に、励起効率が改善される。また、径方向において気泡の存在密度が疎または密の層の数や厚さや気泡の存在密度の調整によって、気泡の効果を調整できる。たとえば、気泡の存在密度が疎または密の層は、それぞれ1層以上、合計2層以上となるように適宜設計できる。
【0070】
マルチコア光増幅ファイバ7は、公知のマルチコアファイバの製造方法を利用して製造することができる。たとえば、穿孔法の場合は、母材ロッドに、軸方向に平行に延びる孔を7つ形成し、各孔にコア部1aとなる部分と内側クラッド部1eaの一部となる部分とを含むガラスロッドであるコアロッドを挿入し、母材を形成する。つづいて、この母材を線引きし、外側クラッド部1cを形成する。
【0071】
上記方法において用いる母材ロッドは、たとえば、VAD(Vapor-phase Axial Deposition)法、OVD(Outside Vapor Deposition)法、MCVD(Modified Chemical Vapor Deposition)法、またはプラズマCVD法を用いて作製することができる。このとき、母材ロッドは、ガラス微粒子からなるスート層として、内側クラッド部1eaとなるスート層、内側クラッド部1ecとなるスート層、内側クラッド部1eeとなるスート層を堆積し、熱処理によって脱水、ガラス化して形成する。このとき、隣接するスート層として、互いに組成が異なる材料である異組成材料からなるスート層を堆積すると、その後の熱処理において、スート層の界面に気泡が発生し、気泡領域1eb、1edとなる部分が形成される。異組成材料は、たとえば、フッ素(F)、ゲルマニウム(G)、リン(P)、ナトリウム(Na)やカリウム(K)などのアルカリ金属、塩素(Cl)などのドーパントを添加した石英ガラスである。上記ドーパントは、石英ガラスの粘性を変化させるドーパントの一例である。上記ドーパントの添加により、熱処理において異組成材料の界面に応力が掛かり、気泡が発生すると考えられる。なお、上記ドーパントは石英ガラスの屈折率を変化させるドーパントでもある。上記ドーパントから選ばれる1または複数のドーパントを添加する、またはドーパントを添加しないことによって、スート層同士の屈折率を等しくすることが好ましい。
【0072】
上記方法において用いる母材ロッドは、ジャケット法でも作製できる。この場合、内側クラッド部1eaとなるガラスロッドを、内側クラッド部1ecとなるジャケット管に挿入し、これをさらに内側クラッド部1eeとなるジャケット管に挿入し、熱処理によって一体化して形成する。ジャケット法の場合は、異組成材料からなるガラスロッドとジャケット管を用いてもよいし、コアロッドの外周面またはジャケット管の内外表面を比較的粗くしてもよい。
【0073】
(実施形態8)
図9は、実施形態8に係るマルチコア光増幅ファイバの模式的な断面図である。このマルチコア光増幅ファイバ8は、図1に示す実施形態1に係るマルチコア光増幅ファイバ1において、内側クラッド部1bを内側クラッド部1fに置き換えた構成を有する。内側クラッド部1fは、内側クラッド部1bに、断面が円環状の気泡領域1faが複数設けられた構成を有する。本実施形態では気泡領域1faの数は6であるが、その数は限定されない。気泡領域1faは気泡の存在領域の一例である。
【0074】
気泡領域1faは、コア部1aが形成する正六角形の外周側に位置する。また、気泡領域1faは、マルチコア光増幅ファイバ8の中心を軸とした回転対称の位置にあり、本実施形態では6回回転対称の位置にある。また、各気泡領域1faは、マルチコア光増幅ファイバ8の軸方向に直交する断面において六方最密格子を規定した場合に、その格子点の位置にある。
【0075】
以上のように構成されたマルチコア光増幅ファイバ8では、マルチコア光増幅ファイバ3~7と同様に、励起効率が改善される。また、気泡領域1faの位置や回転対称性の調整によって、気泡の効果を調整できる。たとえば、回転対称は2回回転対称や3回回転対称でもよい。
【0076】
なお、気泡領域1faは、コア部1aが形成する正六角形の内周側または同一周上に位置してもよい。
【0077】
マルチコア光増幅ファイバ8は、公知のマルチコアファイバの製造方法を利用して製造することができる。たとえば、穿孔法の場合を、図10を参照して説明する。
【0078】
すなわち、図10に示すように、内側クラッド部1fの一部となる母材ロッド81に、軸方向に平行に延びる孔81aを7つ、孔81bを6つ形成する。そして、孔81aにコアロッド82を挿入し、孔81bにガラスロッド83を挿入し、母材を形成する。なお、コアロッド82は、コア部1aとなるコア部82aと、コア部82aを取り囲み、内側クラッド部1fの一部となるクラッド部82bとを備えるものである。つづいて、この母材を線引きし、外側クラッド部1cを形成する。
【0079】
母材ロッド81とガラスロッド83とは、互いに異組成材料からなる。これにより、その後の熱処理において、母材ロッド81とガラスロッド83との界面に気泡が発生し、気泡領域1faとなる部分が形成される。なお、母材ロッド81とガラスロッド83を異組成材料からなるものとする方法に換えて、またはその方法と合わせて、ガラスロッド83の外周面または孔81bの内表面を比較的粗くしてもよい。さらには、これらの方法とは別に、またはこれらの方法と組み合わせて、孔81bとガラスロッド83との間の隙間に多数のガラス管を挿入し、熱処理にてガラス管の孔が閉塞しないように線引きまでを行ない、長手方向に連続した気泡を形成する方法を行ってもよい。
【0080】
(実施形態9)
図11は、実施形態9に係るマルチコア光増幅ファイバの模式的な断面図である。このマルチコア光増幅ファイバ9は、図1に示す実施形態1に係るマルチコア光増幅ファイバ1において、内側クラッド部1bを内側クラッド部1gに置き換えた構成を有する。内側クラッド部1gは、内側クラッド部1bに、断面が円形状の気泡領域1gaが複数設けられた構成を有する。本実施形態では気泡領域1gaの数は12であるが、その数は限定されない。気泡領域1gaは気泡の存在領域の一例である。
【0081】
気泡領域1gaは、コア部1aが形成する正六角形の外周側に位置する。また、気泡領域1gaは、マルチコア光増幅ファイバ9の中心を軸とした回転対称の位置にあり、本実施形態では6回回転対称の位置にある。また、各気泡領域1gaは、マルチコア光増幅ファイバ9の軸方向に直交する断面において六方最密格子を規定した場合に、その格子点の位置にある。さらには、本実施形態では、各コア部1aおよび各気泡領域1gaが、同じ六方最密格子の格子点の位置にある。
【0082】
以上のように構成されたマルチコア光増幅ファイバ9では、マルチコア光増幅ファイバ3~8と同様に、励起効率が改善される。また、気泡領域1gaの位置や数や回転対称性の調整によって、気泡の効果を調整できる。
【0083】
なお、気泡領域1gaは、コア部1aが形成する正六角形の内周側または同一周上に位置してもよい。また、気泡領域1gaの数は12から適宜増減させてもよい。
【0084】
マルチコア光増幅ファイバ9は、公知のマルチコアファイバの製造方法を利用して製造することができる。たとえば、スタック法の場合を、図12を参照して説明する。
【0085】
すなわち、図12に示すように、7本のコアロッド82を、内側クラッド部1gの一部となるガラス管91の中にスタックする。それとともに、コアロッド82とガラス管91との間の隙間93に、線引き後に内部や外周面において気泡の発生が起きやすい、12本のガラスロッド92をスタックし、母材を形成する。ここで、コアロッド82とガラスロッド92との直径を等しくすることによって、各コア部1aおよび各気泡領域1gaが、同じ六方最密格子の格子点の位置にある構造とすることができる。また、隙間93の残りの部分にも、線引き後に内部や外周面において気泡の発生が起きやすいガラスロッドをスタックする。つづいて、この母材を線引きし、外側クラッド部1cを形成する。この場合、各気泡領域1gaにおいて、気泡は、六方最密格子の或る格子点を中心とし、格子点間距離の1/2以下の半径の円環状に存在することとなる。格子点間距離は、たとえば、コアロッド82の中心と、これに隣接するガラスロッド92の中心との距離である。なお、気泡領域1gaの数を12から減少させるには、12本のガラスロッド92のうちの1以上を、線引き後に内部や外周面において気泡の発生しないガラスロッドに置き換えればよい。
【0086】
また、ガラスロッド92に換えて、多数のガラス管をスタックし、熱処理にてガラス管の孔が閉塞しないように線引きまでを行ない、長手方向に連続した気泡を形成する方法を行ってもよい。
【0087】
(実施形態10)
図13は、実施形態10に係るマルチコア光増幅ファイバの模式的な断面図である。このマルチコア光増幅ファイバ10は、図1に示す実施形態1に係るマルチコア光増幅ファイバ1において、内側クラッド部1bを内側クラッド部1hに置き換えた構成を有する。内側クラッド部1hは、内側クラッド部1bに、断面が円環状の気泡領域1haが複数設けられた構成を有する。本実施形態では気泡領域1haの数は12であるが、その数は限定されない。気泡領域1haは気泡の存在領域の一例である。また、内側クラッド部1hにおける気泡領域1haの内側の領域と、気泡領域1haの外側の領域とは、互いに異組成材料からなり、屈折率は同じでも異なっていてもよい。
【0088】
気泡領域1haは、コア部1aが形成する正六角形の外周側に位置する。また、気泡領域1haは、マルチコア光増幅ファイバ10の中心を軸とした回転対称の位置にあり、本実施形態では6回回転対称の位置にある。また、各気泡領域1haは、マルチコア光増幅ファイバ10の軸方向に直交する断面において六方最密格子を規定した場合に、その格子点の位置にある。さらには、本実施形態では、各コア部1aおよび各気泡領域1haが、同じ六方最密格子の格子点の位置にある。
【0089】
以上のように構成されたマルチコア光増幅ファイバ10では、マルチコア光増幅ファイバ3~9と同様に、励起効率が改善される。また、気泡領域1haの位置や数や回転対称性の調整によって、気泡の効果を調整できる。
【0090】
なお、気泡領域1gaは、コア部1aが形成する正六角形の内周側または同一周上に位置してもよい。また、気泡領域1gaの数は12から適宜増減させてもよい。
【0091】
マルチコア光増幅ファイバ10は、公知のマルチコアファイバの製造方法を利用して製造することができる。たとえば、スタック法の場合を、図14を参照して説明する。
【0092】
すなわち、図14に示すように、7本のコアロッド82を、内側クラッド部1hの一部となるガラス管91の中にスタックする。それとともに、コアロッド82とガラス管91との間の隙間93に、12本のガラスロッド94をスタックし、母材を形成する。ガラスロッド94と、ガラス管91およびコアロッド82のクラッド部83bとは、互いに異組成材料からなる。ここで、コアロッド82とガラスロッド94との直径を等しくすることによって、各コア部1aおよび各気泡領域1haが、同じ六方最密格子の格子点の位置にある構造とすることができる。また、隙間93の残りの部分にも、気泡を含むまたは含まない、ガラス管91と同組成のガラスロッドをスタックする。これにより、その後のいずれかの熱処理によって、ガラスロッド94とその周囲の部分との界面に、気泡領域1haとなる部分が形成される。なお、気泡領域1haの数を12から減少させるには、12本のガラスロッド94のうちの1以上をガラス管91と同組成材料からなるガラスロッドに置き換えればよい。
【0093】
なお、ガラスロッド94と、ガラス管91およびコアロッド82のクラッド部83bとを異組成材料からなるものとする方法に換えて、またはその方法と合わせて、ガラスロッド94の外周面を比較的粗くしてもよい。または、ガラスロッド92に換えて、多数のガラス管をスタックし、熱処理にてガラス管の孔が閉塞しないように線引きまでを行ない、長手方向に連続した気泡を形成する方法を行ってもよい。
【0094】
(気泡の直径の制御方法)
つぎに、気泡1dの直径を制御する方法について詳述する。スート層を堆積し、熱処理によって脱水、ガラス化して母材ロッドやガラスロッドなどのガラス部材を形成する場合、焼結工程において不活性ガスを流しながら熱処理を行うことが通常行われる。たとえば、ガラス化においてOH基を減らすためにヘリウム(He)ガスを流す。このHeガスは、ガラス微粒子の間の隙間に入り込むが、スート層が稠密化してガラス化してくると、ガラスの内部に閉じ込められて気泡となる。ここで、Heガスを流す場合は、比較的大きな気泡が形成されやすい。
【0095】
この現象について本発明者らが鋭意検討したところ、Heは原子量または分子量が小さいため、スートが稠密化してもある程度スート内部を拡散しやすいので、凝集して比較的大きな気泡を形成しやすいことが解った。そこで、本発明者は、ガラス化の際に流すガスの原子量または分子量を変更することで、気泡の直径を制御できることに想到した。たとえば、不活性ガスとして、希ガスであるアルゴン(Ar)ガスやキセノン(Xe)ガスなどの、Heよりも原子量または分子量が大きい大分子量ガスを流せば、拡散のし易さや凝集の程度がHeよりも低いので、比較的小さな気泡を形成できる。さらには、Heガスと大分子量ガスとの混合ガスを流してもよい。この場合、混合ガスにおける大分子量ガスの分圧または流量比を高めると、気泡の直径を比較的小さくすることができ、分圧や流量比の制御によって直径の制御ができる。
【0096】
(実施形態11)
図15は、実施形態11に係るマルチコア光ファイバ増幅器の構成を示す模式図である。以下、マルチコア光ファイバ増幅器を単に光増幅器と記載する場合がある。光増幅器100は、7個の光アイソレータ110、光ファイバファンイン(FAN IN)120、半導体レーザ130、光結合器140、実施形態1に係るマルチコア光増幅ファイバ1、ポンプストリッパ150、光ファイバファンアウト(FAN OUT)160、および7個の光アイソレータ170、を備えている。なお、図中「×」の記号は光ファイバの融着接続点を示している。
【0097】
光ファイバファンイン120は、束ねられた7本のシングルモード光ファイバと、7個のコア部を有する1本のマルチコアファイバとを備えており、結合部において7本のシングルモード光ファイバの各コア部がマルチコアファイバの各コア部に光学結合するように構成されている。なお、7本のシングルモード光ファイバは、たとえばITU-TG.652に定義される標準のシングルモード光ファイバであり、それぞれ光アイソレータ110が設けられている。光アイソレータ110、170は矢印が示す方向に光を通過させ、逆方向への光の通過を遮断する。光ファイバファンイン120のマルチコアファイバは光結合器140に接続されている。なお、束ねられた7本のシングルモード光ファイバおよびマルチコアファイバの光学結合する端面は、反射抑制のため光軸に対して斜めに加工されているが、光軸に対して垂直であってもよい。なお、7個の光アイソレータ110、170に換えて、複数(本実施形態では7本)のシングルモード光ファイバが集積された構成の光アイソレータを用いてもよい。
【0098】
光ファイバファンイン120のマルチコアファイバは、マルチコア光増幅ファイバ1と同様に、三角格子状に配置された7個のコア部と、各コア部の外周に位置し、各コア部の最大屈折率よりも屈折率が低いクラッド部とを備えている。光ファイバファンイン120の各シングルモード光ファイバに信号光を入力すると、各光アイソレータ110は各信号光を通過させ、マルチコアファイバの各コア部は各信号光を伝搬する。
【0099】
励起光源である半導体レーザ130は、横マルチモード半導体レーザであり、励起光を出力する。励起光の波長は、Erの900nm波長帯における吸収ピークの波長と略同一な976nmである。これにより、励起光はエルビウムイオンを光励起できる。半導体レーザ130は、マルチモード光ファイバから励起光を出力する。このマルチモード光ファイバは、コア径/クラッド径が例えば105μm/125μmのステップインデックス型であり、NAが例えば0.16や0.22である。
【0100】
光結合器140は、主光ファイバと、励起光供給用光ファイバとを備えている。主光ファイバは、光ファイバファンイン120のマルチコアファイバのコア部と同様に三角格子状に配置された7個のコア部と、各コア部の外周に位置し、各コア部の最大屈折率よりも屈折率が低い内側クラッド部と、内側クラッド部の外周に位置し、内側クラッド部よりも屈折率が低い外側クラッド部とを備えるダブルクラッド型の光ファイバである。コア部と内側クラッド部とは石英系ガラスからなり、外側クラッド部は樹脂からなる。
【0101】
励起光供給用光ファイバは、別の一端が半導体レーザ130のマルチモード光ファイバと接続された同種のマルチモード光ファイバであり、コア径/クラッド径が例えば105μm/125μmのステップインデックス型であり、NAが例えば0.16や0.22である。励起光供給用光ファイバは、励起光が半導体レーザ130から入力され、この励起光を主光ファイバに供給する。内側クラッド部は励起光を伝搬する。
【0102】
光結合器140の主光ファイバは、一端が光ファイバファンイン120のマルチコアファイバに接続されている。マルチコアファイバの各コア部は主光ファイバの各コア部に接続されている。したがって、マルチコアファイバの各コア部を伝搬した各信号光は、主光ファイバに入力すると、各コア部に光学結合する。各コア部は各信号光を伝搬する。励起光と信号光とは、主光ファイバからマルチコア光増幅ファイバ1へと出力される。
【0103】
マルチコア光増幅ファイバ1は、一端が光結合器140の主光ファイバに接続されている。マルチコア光増幅ファイバ1の各コア部1aは主光ファイバの各コア部に接続されている。また、マルチコア光増幅ファイバ1の内側クラッド部1bは主光ファイバの内側クラッド部に接続されている。したがって、主光ファイバを伝搬した各信号光および励起光は、マルチコア光増幅ファイバ1に入力すると、それぞれ各コア部1aと内側クラッド部1bとを同一方向に伝搬する。励起光は内側クラッド部1bを伝搬しながら各コア部1a内のErを光励起する。各コア部1aを伝搬する各信号光はErの誘導放出の作用により光増幅される。マルチコア光増幅ファイバ1は、光増幅された各信号光と、光増幅に寄与しなかった励起光とを出力する。
【0104】
ポンプストリッパ150は、光増幅に寄与しなかった励起光を排除する公知のデバイスである。ポンプストリッパ150は、例えば、7個のコアを有するダブルクラッド型マルチコアファイバの外側クラッドの一部が除去されており、除去された部分の内側クラッド部の表面から励起光を取り出して放熱板などに照射し、吸収させて励起光のエネルギーを熱エネルギーに変換して放熱する構成を有する。ポンプストリッパ150はマルチコアファイバによって各信号光を伝搬させるとともに、励起光を、光増幅器100から出力されても問題の無い程度のパワーまで低減させる。
【0105】
光ファイバファンアウト160は、光ファイバファンイン120と同様に、束ねられた7本のシングルモード光ファイバと、7個のコア部を有する1本のマルチコアファイバとを備えており、結合部において7本のシングルモード光ファイバの各コア部がマルチコアファイバの各コア部に光学結合するように構成されている。各シングルモード光ファイバには、それぞれ光アイソレータ170が設けられている。マルチコアファイバはポンプストリッパ150に接続されている。なお、束ねられた7本のシングルモード光ファイバおよびマルチコアファイバの光学結合する端面は、反射抑制のため光軸に対して斜めに加工されているが、光軸に対して垂直であってもよい。
【0106】
ポンプストリッパ150のマルチコアファイバの各コア部から光ファイバファンアウト160の各コア部に信号光が入力すると、各信号光は各シングルモード光ファイバの各コア部を伝搬し、光アイソレータ170を通って出力する。
【0107】
この光増幅器100は、励起効率が改善されたマルチコア光増幅ファイバ1を用いて光増幅を行うので、同一の増幅特性を得るための半導体レーザ130の消費電力を削減できる。
【0108】
なお、光増幅器100において、マルチコア光増幅ファイバ1に換えてマルチコア光増幅ファイバ2~10のいずれかを用いてもよい。
【0109】
(実施例)
実施例として、図15に示す構成の光増幅器を作製した。なお、マルチコア光増幅ファイバとしては図7に示す構成のものを用いた。なお、このマルチコア光増幅ファイバは、気泡の断面の平均が、内側クラッド径の直径の0.022倍程度であり、断面積比が4.8%であった。また、マルチコア光増幅ファイバの一つのコア部の吸収スペクトルを測定したところ、図16に示すように吸収ピーク値は約3.1dB/mであった。他のコア部についても測定したところ、同様の吸収スペクトルが得られた。
【0110】
マルチコア光増幅ファイバの長さを35mとし、半導体レーザから16Wのパワーの励起光を供給した。そして、光ファイバファンインの各シングルモード光ファイバから、1530nm~1565nmまで等波長間隔で並べた8チャネルのWDM信号光を、総パワーが-5dBmとなるように調整して入力させた。すると、光ファイバファンアウトの各シングルモード光ファイバから、1コア部当たりの総パワーが19.0dBmという、20dBmに近い比較的高いパワーの、増幅されたWDM信号光が得られた。なお、増幅されたWDM信号光のチャネル間のパワー偏差は4dB以下であった。また、マルチコア光増幅ファイバのコア部の間の利得差は、各チャネルにおいて3dB以下であった。
【0111】
なお、比較例として、気泡の無い様々なマルチコア光増幅ファイバを用いた光増幅器を作製し、上記と同様の励起光の条件およびWDM信号光の条件にて実験を行ったところ、いずれも1コア部当たりの総パワーが15dBm程度であった。
【0112】
(実施形態12)
図17は、実施形態12に係る光通信システムの構成を示す模式図である。光通信システム1000は、光送信装置1010と、光受信装置1020と、実施形態11に係る光増幅器100と、14本のシングルコア光ファイバである光伝送ファイバ1031~1037、1041~1047と、を備えている。
【0113】
光送信装置1010は、7個の送信器1011~1017を備えている。送信器1011~1017は、それぞれ、信号光を送信する。7本の光伝送ファイバ1031~1037は、送信器1011~1017のそれぞれから出力された信号光を伝送し、光増幅器100に入力させる。光増幅器100は、光伝送ファイバ1031~1037から入力された7つの信号光を一括して光増幅し、7本の光伝送ファイバ1041~1047のそれぞれに出力する。光伝送ファイバ1041~1047は、増幅された信号光を伝送し、光受信装置1020に入力させる。光受信装置1020は、7個の受信器1021~1027を備えている。受信器1021~1027は、光伝送ファイバ1041~1047が伝送した、増幅された信号光を受信し、電気信号に変換する。
【0114】
光通信システム1000は、同一の増幅特性を得るための消費電力が削減された光増幅器100を用いているので、消費電力が削減された光通信を実現できる。なお、本実施形態では、光伝送ファイバは7本のシングルコア光ファイバであるが、1本の7コア型マルチコアファイバからなる光伝送ファイバを用いてもよい。
【0115】
光通信システム1000が長距離通信システムなどであれば、光増幅器100をリピータアンプ、プリアンプ、またはブースターアンプとして利用できる。光通信システム1000がROADM(Reconfigurable Optical Add/Drop Multiplexer)を用いたネットワークシステムなどであれば、光増幅器100を損失補償に利用できる。
【0116】
なお、上記実施形態では、マルチコア光増幅ファイバのコア部は希土類元素としてErのみを含むが、Er以外の希土類元素、たとえばイッテルビウム(Yb)のみを含んでいてもよいし、Er、Ybの両方を含んでいてもよい。
【0117】
また、上記実施形態では、マルチコア光増幅ファイバにおけるコア部は三角格子状に配置されているが、正方格子状に配置されていてもよい。マルチコア光増幅ファイバにおけるコア部の数も、複数であれば特に限定されない。また、上記実施形態では、光増幅ファイバはマルチコア光増幅ファイバであるが、実施形態としては、内側クラッド部に囲まれたコア部を1つだけ有するシングルコア型の光増幅ファイバでもよい。
【0118】
また、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0119】
1、2、3、4、5、6、7、8、9、10 マルチコア光増幅ファイバ
1a コア部
1b、1e、1ea、1ec、1ee、1f、1g、1h 内側クラッド部
1c 外側クラッド部
1d 気泡
1eb、1ed、1fa、1ga、1ha 気泡領域
81 母材ロッド
81a、81b 孔
82 コアロッド
82a コア部
82b クラッド部
83、92、94 ガラスロッド
91 ガラス管
93 隙間
110、170 光アイソレータ
120 光ファイバファンイン
130 半導体レーザ
140 光結合器
150 ポンプストリッパ
160 光ファイバファンアウト
100 光増幅器
1000 光通信システム
1010 光送信装置
1020 光受信装置
1011~1017 送信器
1021~1027 受信器
1031~1037、1041~1047 光伝送ファイバ
Dr 径方向
Dt 軸回り方向
Dz 軸方向
R1、R2、R3、R4 領域
S スキュー成分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17