(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】D級増幅回路
(51)【国際特許分類】
H03F 1/52 20060101AFI20241022BHJP
H03F 3/217 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
H03F1/52 220
H03F3/217
(21)【出願番号】P 2020215717
(22)【出願日】2020-12-24
【審査請求日】2023-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 康之
【審査官】柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-252251(JP,A)
【文献】特開2009-225392(JP,A)
【文献】特開2007-288431(JP,A)
【文献】特開2015-162732(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0184309(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F 1/52
H03F 3/217
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電圧から第1の傾きをもって第2の電圧まで上昇する電源に接続されるプラス側の電源端子にドレイン及びソースの一方が接続され、出力端子にドレイン及びソースの他方が接続された第1のパワートランジスタと、
前記出力端子にドレインが接続され、グラウンド電位に接続されるマイナス側の電源端子にソースが接続された第2のパワートランジスタと、
前記第1のパワートランジスタを駆動する第1のドライバと、
前記第2のパワートランジスタを駆動する第2のドライバと、
前記プラス側の電源端子及び前記マイナス側の電源端子の間の電源電圧が、前記第1の電圧より大きく、かつ、前記第2の電圧より小さい第3の電圧以上のときに検出信号を出力する過電圧検出回路と、
前記検出信号に応じて前記第1のドライバ及び前記第2のドライバにより前記第1のパワートランジスタ及び前記第2のパワートランジスタをオフさせる論理回路と、
前記プラス側の電源端子に接続された第1のスイッチと、
前記マイナス側の電源端子に接続された第2のスイッチと、
前記第1のスイッチ及び前記出力端子の間に接続された第1の抵抗と、
前記第2のスイッチ及び前記出力端子の間に接続された第2の抵抗と
を有し、前記検出信号に応じて前記第1のスイッチ及び前記第2のスイッチをオンすることにより、前記出力端子を前記プラス側の電源端子及び前記マイナス側の電源端子の間の端子間電位にバイアスする出力電圧バイアス回路と
を具備するD級増幅回路。
【請求項2】
前記出力端子に接続されるLCフィルタと、前記第1の抵抗と、前記第2の抵抗とにより規定される前記出力端子の時定数は、前記第1の傾きより小さい、請求項1に記載のD級増幅回路。
【請求項3】
前記出力電圧バイアス回路は、
前記プラス側の電源端子に接続された第3のスイッチと、
前記マイナス側の電源端子に接続された第4のスイッチと、
前記第3のスイッチ及び前記出力端子の間に接続された第3の抵抗と、
前記第4のスイッチ及び前記出力端子の間に接続された第4の抵抗と
をさらに有し、
前記検出信号に応じて前記第1のスイッチ、前記第2のスイッチ、前記第3のスイッチ及び前記第4のスイッチをオンすることにより前記端子間電位への前記出力端子のバイアスを開始した後、前記第3のスイッチ及び前記第4のスイッチをオフした状態で前記端子間電位への前記出力端子のバイアスを継続する、
請求項1に記載のD級増幅回路。
【請求項4】
前記第3の抵抗の抵抗値は、前記第1の抵抗の抵抗値より小さく、
前記第4の抵抗の抵抗値は、前記第2の抵抗の抵抗値より小さく、
前記出力端子に接続されるLCフィルタと、前記第3の抵抗と、前記第4の抵抗とにより規定される前記出力端子の時定数は、前記第1の傾きより小さい、
請求項3に記載のD級増幅回路。
【請求項5】
前記出力電圧バイアス回路は、前記第3のスイッチ及び前記第4のスイッチがオンされてから予め定められた時間が経過したときに、前記第3のスイッチ及び前記第4のスイッチをオフさせるための信号を出力するタイマーをさらに有する、請求項3又は請求項4に記載のD級増幅回路。
【請求項6】
前記出力電圧バイアス回路は、前記出力端子の電位が、前記端子間電位から所定の電位差以内であるとき、前記第3のスイッチ及び前記第4のスイッチをオフさせるための信号を出力するウィンドウコンパレータをさらに有する、請求項3から請求項5のうちのいずれか一項に記載のD級増幅回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の実施形態は、D級増幅回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、安全性向上のために先進運転支援システム(ADAS:Advanced Driver-Assistance Systems)を搭載する自動車がある。このADASを搭載する自動車では、例えば警告音を発する用途でオーディオアンプ(増幅回路)が使用されている。車載のオーディオアンプとしては、環境への負荷を低減する観点から、電力効率が高いことが好ましい。例えばD級増幅回路は、他の増幅回路に比べて損失が小さく、高効率であることが知られている。
【0003】
このような中、オーディオアンプなどの車載アプリケーションは、車載のバッテリに直接接続される場合がある。この場合、バッテリのロードダンプに起因して、オーディオアンプに瞬間的に大電圧が印加される場合がある。このため、車載のオーディオアンプ(増幅回路)には、高耐圧仕様のパワートランジスタが要求される場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、高耐圧仕様のパワートランジスタを使用する場合、そのオン抵抗の大きさから増幅回路の電力効率が低下する場合があった。
【0006】
本発明の目的は、上記に鑑みてなされたものであって、D級増幅回路において、パワートランジスタへの耐圧要求を低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、実施形態に係るD級増幅回路は、第1のパワートランジスタと、第2のパワートランジスタと、第1のドライバと、第2のドライバと、過電圧検出回路と、論理回路と、出力電圧バイアス回路とを備える。前記第1のパワートランジスタは、第1の電圧から第1の傾きをもって第2の電圧まで上昇する電源に接続されるプラス側の電源端子にドレイン及びソースの一方が接続され、出力端子にドレイン及びソースの他方が接続されている。前記第2のパワートランジスタは、前記出力端子にドレインが接続され、グラウンド電位に接続されるマイナス側の電源端子にソースが接続されている。前記第1のドライバは、前記第1のパワートランジスタを駆動する。前記第2のドライバは、前記第2のパワートランジスタを駆動する。前記過電圧検出回路は、前記プラス側の電源端子及び前記マイナス側の電源端子の間の電源電圧が、前記第1の電圧より大きく、かつ、前記第2の電圧より小さい第3の電圧以上のときに検出信号を出力する。前記論理回路は、前記検出信号に応じて前記第1のドライバ及び前記第2のドライバにより前記第1のパワートランジスタ及び前記第2のパワートランジスタをオフさせる。前記出力電圧バイアス回路は、第1のスイッチと、第2のスイッチと、第1の抵抗と、第2の抵抗とを有する。前記第1のスイッチは、前記プラス側の電源端子に接続されている。前記第2のスイッチは、前記マイナス側の電源端子に接続されている。前記第1の抵抗は、前記第1のスイッチ及び前記出力端子の間に接続されている。前記第2の抵抗は、前記第2のスイッチ及び前記出力端子の間に接続されている。前記出力電圧バイアス回路は、前記検出信号に応じて前記第1のスイッチ及び前記第2のスイッチをオンすることにより、前記出力端子を前記プラス側の電源端子及び前記マイナス側の電源端子の間の端子間電位にバイアスする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、D級増幅回路において、パワートランジスタへの耐圧要求を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係るD級増幅回路の構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るD級増幅回路とは異なる、出力端子が抵抗分圧されていない、一般的なD級増幅回路の構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、
図2のD級増幅回路のロードダンプ時の動作波形の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態に係るD級増幅回路のロードダンプ時の動作波形の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、第2の実施形態に係るD級増幅回路の構成の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、第3の実施形態に係るD級増幅回路の構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、D級増幅回路の実施形態について詳細に説明する。以下の実施形態では、同一の参照符号を付した部分は同様の動作を行うものとして、重複する説明は適宜省略する。なお、以下の実施形態において、「接続」とは、「電気的な接続」を意味するものとする。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るD級増幅回路101の構成の一例を示す図である。
【0012】
D級増幅回路101の入力端子INは、
図1に示すように、入力パルス信号源V2を介して、グラウンド電位に接続される。入力端子INには、入力パルス信号源V2からPWM(Pulse Width Modulation)信号などの、例えばオーディオ信号の振幅に応じたパルス幅のパルス信号が入力される。なお、入力端子INには、PWM信号に限らず、ΔΣ変調器としての入力パルス信号源V2からΔΣ変調されたPDM(Pulse Density Modulation)信号が入力されても構わない。
【0013】
D級増幅回路101の出力端子OUTは、
図1に示すように、LCフィルタを介して、グラウンド電位に接続される。LCフィルタは、出力端子OUTから出力される信号をフィルタリングしてアナログ信号に平滑するように構成される。具体的には、LCフィルタは、インダクタL1及びキャパシタC1を有する。また、キャパシタC1は、負荷(図示しない)に並列に接続される。つまり、出力端子OUTは、LCフィルタを介して、負荷に接続される。
【0014】
D級増幅回路101のプラス(+)側の電源端子PVDDは、
図1に示すように、電源V1を介してマイナス(-)側の電源端子VSSに接続される。また、マイナス側の電源端子VSSは、グラウンド電位に接続される。D級増幅回路101が車載アプリケーションに適用される場合、すなわち車載のオーディオアンプとして使用される場合、電源V1は、例えば鉛蓄電池などの車載のバッテリである。なお、以下の説明では、プラス側の電源端子PVDDの電位をPVDDと記載する場合もある。同様に、マイナス側の電源端子VSSの電位をグラウンドと記載する場合もある。また、ロードダンプ時に電源V1からプラス(+)側の電源端子PVDDに供給される電源電圧を、ロードダンプ電圧(第2の電圧)と記載する場合もある。
【0015】
D級増幅回路101は、電源V1からの電源電圧を用いて入力パルス信号源V2からのパルス信号を増幅し、ハイレベルがPVDD、かつ、ローレベルがグラウンドのパルス信号を出力端子OUTから出力するように構成される。具体的には、D級増幅回路101は、
図1に示すように、パワートランジスタM101H,M101L、ドライバX101H,X101L、過電圧検出回路102、論理回路103及び出力電圧バイアス回路104を有する。
【0016】
ここで、パワートランジスタM101Hは、第1のパワートランジスタの一例である。また、パワートランジスタM101Lは、第2のパワートランジスタの一例である。また、ドライバX101Hは、第1のドライバの一例である。また、ドライバX101Lは、第2のドライバの一例である。
【0017】
過電圧検出回路102は、プラス側の電源端子PVDD及びマイナス側の電源端子VSSに接続される。過電圧検出回路102は、プラス側の電源端子PVDD及びマイナス側の電源端子VSSの間の電位差、すなわちプラス側の電源端子PVDDの電位に応じて、ハイレベルの信号「H」又はローレベルの信号「L」を出力するように構成される。具体的には、過電圧検出回路102は、PVDDの値が検出電圧値(第3の電圧)より小さいとき、「L」を出力するように構成される。一方で、過電圧検出回路102は、PVDDの値が検出電圧値(第3の電圧)以上のとき、「H」を出力するように構成される。ここで、ハイレベルの信号「H」は、検出信号の一例である。
【0018】
ここで、検出電圧値とは、各パワートランジスタM101H,M101Lの電圧値に関する耐圧条件に応じて予め定められた所定の電圧値である。具体的には、検出電圧値は、負荷に応じて決定される動作電圧(第1の電圧)より大きく、かつ、ロードダンプ電圧(第2の電圧)より小さい。また、検出電圧値は、各パワートランジスタM101H,M101Lにおいて許容される最大の電圧値より小さい。
【0019】
論理回路103は、入力端子INからのパルス信号と、過電圧検出回路102からの信号とに応じて、各ドライバX101H,X101Lの動作を制御するための信号を出力するように構成される。論理回路103は、過電圧検出回路102からの「L」に応じて、各ドライバX101H,X101Lにより各パワートランジスタM101H,M101Lを、入力端子INからのパルス信号に応じてスイッチングさせる。また、論理回路103は、過電圧検出回路102からの「H」(検出信号)に応じて、各ドライバX101H,X101Lにより各パワートランジスタM101H,M101Lを、オフさせる。具体的には、論理回路103は、インバータ(NOTゲート)X102,X103及びANDゲートX104,X105を有する。インバータX102の入力端は、入力端子INに接続される。インバータX103の入力端は、過電圧検出回路102の出力端に接続される。ANDゲートX104の一対の入力端は、それぞれ、各インバータX102,X103の各出力端に接続される。ANDゲートX105の一対の入力端は、それぞれ、入力端子IN及びインバータX103の出力端に接続される。
【0020】
各ドライバX101H,X101Lは、それぞれ論理回路103からの信号に応じて、各パワートランジスタM101H,M101Lを駆動する信号、すなわちオン/オフを制御するための信号を出力するように構成されたパワートランジスタドライブ回路である。具体的には、ハイサイドのドライバX101Hの入力端は、ANDゲートX104の出力端に接続される。ドライバX101Hの出力端は、パワートランジスタM101Hのゲートに接続される。ローサイドのドライバX101Lの入力端は、ANDゲートX105の出力端に接続される。ドライバX101Lの出力端は、パワートランジスタM101Lのゲートに接続される。
【0021】
各パワートランジスタM101H,M101Lは、各ドライバX101H,X101Lからの信号に応じてオン/オフ動作するNMOSトランジスタである。具体的には、ハイサイドのパワートランジスタM101Hのドレインは、プラス側の電源端子PVDDに接続される。パワートランジスタM101Hのソースは、ローサイドのパワートランジスタM101Lのドレインに接続される。パワートランジスタM101Lのソースは、マイナス側の電源端子VSSに接続される。また、ハイサイドのパワートランジスタM101Hのソースと、ローサイドのパワートランジスタM101Lのドレインとの間は、出力端子OUTに接続される。
【0022】
出力電圧バイアス回路104は、過電圧検出回路102からの信号が「L」であるとき、すなわちPVDDの値が検出電圧値より小さいとき、各パワートランジスタM101H,M101Lの間の電位をそのまま出力端子OUTに伝達するように構成される。一方で、出力電圧バイアス回路104は、過電圧検出回路102からの信号が「H」であるとき、すなわちPVDDの値が検出電圧値以上であるとき、出力端子OUTをPVDDより小さい電位(端子間電位)にバイアスするように構成される。具体的には、出力電圧バイアス回路104は、抵抗R101H,R101L,R102、PMOSトランジスタM102H及びNMOSトランジスタM102L,M103を有する。
【0023】
ここで、PMOSトランジスタM102Hは、第1のスイッチの一例である。また、NMOSトランジスタM102Lは、第2のスイッチの一例である。また、抵抗R101Hは、第1の抵抗の一例である。また、抵抗R101Lは、第2の抵抗の一例である。
【0024】
NMOSトランジスタM103のゲートは、過電圧検出回路102の出力端に接続される。NMOSトランジスタM103のドレインは、抵抗R102を介して、プラス側の電源端子PVDDに接続される。NMOSトランジスタM103のソースは、マイナス側の電源端子VSSに接続される。
【0025】
PMOSトランジスタM102Hのゲートは、抵抗R102とNMOSトランジスタM103のドレインとの間に接続される。PMOSトランジスタM102Hのソースは、プラス側の電源端子PVDDに接続される。PMOSトランジスタM102Hのドレインは、ハイサイドの抵抗R101Hとローサイドの抵抗R101Lとを介して、NMOSトランジスタM102Lのドレインに接続される。
【0026】
NMOSトランジスタM102Lのソースは、マイナス側の電源端子VSSに接続される。NMOSトランジスタM102Lのゲートは、過電圧検出回路102の出力端に接続される。
【0027】
ハイサイドの抵抗R101Hと、ローサイドの抵抗R101Lとの間は、出力端子OUTに接続される。
【0028】
なお、抵抗R101Hと、抵抗R101Lとは同じ抵抗値とする。また、PMOSトランジスタM102Hのオン抵抗と、NMOSトランジスタM102Lのオン抵抗とは、それぞれ抵抗R101H及び抵抗R101Lの抵抗値より十分小さいとする。
【0029】
前述のとおり、車載のオーディオアンプとしては、環境への負荷を低減する観点から、電力効率が高いことが好ましく、D級増幅回路は、他の増幅回路に比べて損失が小さく、高効率であることが知られている。
【0030】
ここで、一般的なD級増幅回路501について、
図2及び
図3を参照しつつ説明する。ここでは、
図1のD級増幅回路101との相違点を主に説明する。
【0031】
図2は、実施形態に係るD級増幅回路101とは異なる、出力端子OUTが抵抗分圧されていない、一般的なD級増幅回路501の構成の一例を示す図である。D級増幅回路501には、過電圧検出回路102及び出力電圧バイアス回路104が設けられていない。また、D級増幅回路501の論理回路503は、インバータX102を有し、入力端子INからのパルス信号に応じて、各ドライバX101H,X101Lの動作を制御するための信号を出力するように構成される。ハイサイドのドライバX101Hの入力端は、インバータX102の出力端に接続される。ローサイドのドライバX101Lの入力端は、入力端子INに接続される。
【0032】
D級増幅回路501は、入力パルス信号源V2からのPWM信号などのパルス信号が入力端子INに入力されると、入力されたパルス信号に応じて動作する各ドライバX101H,X101Lにより各パワートランジスタM101H,M101Lを駆動する。D級増幅回路501は、入力されたパルス信号に応じて各パワートランジスタM101H,M101Lを交互にスイッチングすることにより、ハイレベルがPVDD、かつ、ローレベルがグラウンドのパルス信号を生成し、出力端子OUTから出力する。
【0033】
このような中、オーディオアンプなどの車載アプリケーションは、バッテリに直接接続される場合がある。この場合、バッテリのロードダンプに起因して、オーディオアンプに瞬間的に大電圧(ロードダンプ電圧,サージ電圧)が印加される場合がある。一例として、オーディオアンプが12Vや14Vの車載バッテリに接続されている場合であっても、ロードダンプ時には、オルタネータで発生した40V程度の電圧がオーディオアンプに印加される場合がある。このため、車載のオーディオアンプ(増幅回路)には、高耐圧仕様のパワートランジスタが要求される場合があった。
【0034】
図3は、
図2のD級増幅回路501のロードダンプ時の動作波形の一例を示す図である。
図3は、ロードダンプ時のプラス側の電源端子PVDDと、出力端子OUTとの電圧波形を例示する。具体的には、
図3は、ロードダンプ時に電源V1からの電源電圧(PVDD)が、負荷に応じて決定される動作電圧からある傾きをもってロードダンプ電圧まで上昇するときの電圧波形を例示する。なお、
図3は、ロードダンプ時の電圧波形の急峻な立ち上がりを模式的に例示している。
【0035】
上述したように、D級増幅回路501は、ハイレベルがPVDD、かつ、ローレベルがグラウンドのパルス信号を出力端子OUTから出力する。このため、D級増幅回路501をバッテリ直結アプリケーションとして使用する場合、
図3に示すように、ロードダンプ時においても、出力端子OUTからの出力電圧は、PVDDの増加に伴い増加する。したがって、各パワートランジスタM101H,M101Lとして、ロードダンプ電圧以上のドレイン‐ソース間耐圧をもつ素子を選定することが要求される。
【0036】
このような中、車載向けアプリケーションは、一般に使用動作温度が高い。このため、ジャンクション温度上昇を抑えるためには、高効率化が要求される。ここで、負荷として接続されるスピーカのインピーダンスをRLとし、D級増幅回路101,501の各パワートランジスタM101H,M101Lのオン抵抗をRONとすると、D級増幅回路101,501の効率は、以下の式(1)により表現することができる。
【0037】
【0038】
式(1)によれば、D級増幅回路101,501の高効率化を図るためには、各パワートランジスタM101H,M101Lのオン抵抗をR
ONの低オン抵抗化が必要である。しかしながら、高耐圧化と低オン抵抗化は、トレードオフの関係にある。このため、
図2のD級増幅回路501では、高耐圧仕様のパワートランジスタの使用に伴い、そのオン抵抗の大きさから電力効率が低下する場合があった。また、電力効率の低下により、発熱量が増加し、例えば放熱板のスペースが増大する場合があった。また、高耐圧仕様のパワートランジスタの使用や放熱板の増大などに伴い、低コスト化及び小型化が困難であった。
【0039】
例えば、パワートランジスタのドレイン-ソース間電圧が所定の電圧を超えるとパワートランジスタのゲートが制御されて所定の電圧以下となるよう制御するD級増幅回路において、ロードダンプ電圧などのより大きな電圧が印加される場合には、ハイサイド及びローサイドの各パワートランジスタを同時にオン(あるいはオフ)させる技術が知られている。この技術によれば、各パワートランジスタの合計の耐圧で各パワートランジスタを保護できるため、ロードダンプ電圧より低い耐圧仕様のパワートランジスタを使用してもロードダンプに対応することができる。
【0040】
しかしながら、上記のD級増幅回路においては、オン状態で各パワートランジスタを保護する場合、各パワートランジスタを動作させるための各ドライバを常時動作させる必要があった。このため、スタンバイ時の電流を小さくすることができず、電力効率が低下する場合があった。また、オフ状態で各パワートランジスタを保護する場合、出力端子がハイインピーダンス状態となるため、各パワートランジスタそれぞれのドレイン-ソース間電圧は、不定である。したがって、各パワートランジスタそれぞれのドレイン-ソース間電圧が耐圧を超える可能性があった。
【0041】
そこで、本実施形態に係るD級増幅回路101は、
図1を参照して上述したように、過電圧検出回路102、論理回路103及び出力電圧バイアス回路104を搭載する。これにより、各パワートランジスタM101H,M101Lへの耐圧要求の低減を図る。なお、以下の説明では、主として
図2のD級増幅回路501との相違点を説明する。
【0042】
図4は、実施形態に係るD級増幅回路101のロードダンプ時の動作波形の一例を示す図である。
図4は、
図3と同様に、ロードダンプ時のプラス側の電源端子PVDDと、出力端子OUTとの電圧波形を例示する。具体的には、
図4は、ロードダンプ時に電源V1からの電源電圧(PVDD)が、負荷に応じて決定される動作電圧(第1の電圧)からある傾き(
図4のA,第1の傾き)をもってロードダンプ電圧(第2の電圧)まで上昇するときの電圧波形を例示する。なお、
図4は、
図3と同様に、ロードダンプ時の電圧波形の急峻な立ち上がりを模式的に例示している。
【0043】
D級増幅回路101は、入力パルス信号源V2からのPWM信号などのパルス信号が入力端子INに入力されると、入力されたパルス信号に応じて動作する各ドライバX101H,X101Lにより各パワートランジスタM101H,M101Lを駆動する。ここで、過電圧検出回路102は、ロードダンプが発生していないとき、すなわちPVDDの値が検出電圧値より小さいとき、「L」を出力している。これにより、D級増幅回路101は、入力されたパルス信号に応じて各パワートランジスタM101H,M101Lを交互にスイッチングすることができる。つまり、ロードダンプが発生していないとき、出力端子OUTから出力されるパルス信号は、
図2のD級増幅回路501と同様に、ハイレベルがPVDD、かつ、ローレベルがグラウンドの信号である。
【0044】
一方で、過電圧検出回路102は、ロードダンプが発生しているときなど、PVDDの値が検出電圧値以上であるとき、「H」を出力する。このとき、各パワートランジスタM101H,M101Lは、インバータX103から各ANDゲートX104,X105に「L」が入力されることに伴いオフされる。各パワートランジスタM101H,M101Lがオフされたことにより、出力端子OUTの電圧は、
図4に示すように、検出電圧値以下に低下する。
【0045】
また、各パワートランジスタM101H,M101Lがオフされると同時に、出力電圧バイアス回路104において、NMOSトランジスタM102L,M103は、過電圧検出回路102からの「H」に応じてオンされる。また、PMOSトランジスタM102Hは、NMOSトランジスタM103がオンされたことに伴い抵抗R102で発生した電圧降下に応じてオンされる。
【0046】
このように、過電圧検出回路102によりロードダンプの発生が検出されたとき、出力電圧バイアス回路104において、出力端子OUTは、抵抗R101H,R101Lにより、電源電圧(PVDD)の中点電位(端子間電位)にバイアスされる。換言すれば、出力電圧バイアス回路104は、過電圧検出回路102からの「H」(検出信号)に応じてPMOSトランジスタM102H(第1のスイッチ)及びNMOSトランジスタM102L(第2のスイッチ)をオンすることにより、出力端子OUTをプラス側の電源端子PVDD及びマイナス側の電源端子VSSの間の中点電位(端子間電位)にバイアスする。
【0047】
ここで、出力端子OUTは、インダクタL1及びキャパシタC1により構成されるLCフィルタに接続されていることから、所定の時定数を有する。このため、出力端子OUTの電位を電源電圧の中点電位に維持するためには、出力端子OUTの電位をロードダンプの電圧変化に追随させることが要求される。
【0048】
通常、インダクタL1のインピーダンスは、ロードダンプの電圧変化に対して十分小さく影響しない。このため、出力端子OUTの時定数は、抵抗R101H,R101Lの各抵抗値と、キャパシタC1の静電容量とにより決定される。換言すれば、出力端子OUTの時定数は、出力端子OUTに接続されるLCフィルタと、抵抗R101H(第1の抵抗)と、抵抗R101L(第2の抵抗)とにより規定される。ここで、キャパシタC1のキャパシタ定数(静電容量)をC、抵抗R101H,R101Lの抵抗定数(抵抗値)を2Rとすると、インパルス応答VOUT(t)は、以下の式(2)により表現することができる。
【0049】
【0050】
出力端子OUTのインパルス応答VOUT(t)の変化がロードダンプの電圧変化よりも十分大きければ、出力端子OUTの電位は、PVDDに追随することができる。このため、以下の式(3)が成立するとき、出力端子OUTの電位は、PVDDに追随することができる。式(3)において、Aは、ロードダンプ電圧の傾きの最大値であるとする。
【0051】
【0052】
実施形態に係るD級増幅回路101において、キャパシタC1のキャパシタ定数と、抵抗R101H,R101Lの抵抗定数とは、式(3)を満たすように設定される。つまり、出力端子OUTの時定数は、ロードダンプ電圧の傾きの最大値(第1の傾き)より小さい。これにより、出力端子OUTの電位は、ロードダンプが発生している場合であっても、
図4に示すように、その電圧変化(PVDDの変化)に追随することができる。
【0053】
以上説明したように、実施形態に係るD級増幅回路101は、過電圧検出回路102、論理回路103及び出力電圧バイアス回路104を搭載する。これにより、D級増幅回路101は、ロードダンプが発生しているときなど、PVDDの値が検出電圧値以上であるとき、各パワートランジスタM101H,M101Lのドレイン-ソース間電圧が、電源電圧の中点電位(PDVV/2)になるように動作する。したがって、各パワートランジスタM101H,M101Lの素子耐圧の要求を、
図2の構成ではPVDD以上であることに対して、PVDD/2以上にまで低減することができる。換言すれば、実施形態に係る技術によれば、D級増幅回路101において、各パワートランジスタM101H,M101Lへの耐圧要求を低減することができる。各パワートランジスタM101H,M101Lへの耐圧要求の低減は、コスト抑制に寄与する。
【0054】
(第2の実施形態)
図5は、第2の実施形態に係るD級増幅回路201の構成の一例を示す図である。ここでは、
図1の第1の実施形態に係るD級増幅回路101との相違点を主に説明する。
【0055】
例えばロードダンプの変化が大きい場合やLCフィルタのキャパシタ定数が大きい場合、出力端子OUTの電位のPVDDへの追随性を確保するためには、抵抗R101H,R101Lの抵抗定数を小さく設定することが要求される。しかしながら、抵抗R101H,R101Lに低抵抗を用いると、ロードダンプ発生時に印加されるロードダンプ電圧により抵抗R101H,R101Lが焼損する可能性がある。このため、抵抗R101H,R101Lの抵抗値は、ロードダンプ電圧により焼損しない程度に大きく設定されている。そこで、第2の実施形態では、ロードダンプの変化が大きい場合やLCフィルタのキャパシタ定数が大きい場合であっても出力端子OUTの電位のPVDDへの追随性を確保しつつ、各パワートランジスタM101H,M101Lへの耐圧要求を低減することができるD級増幅回路201について説明する。
【0056】
本実施形態に係るD級増幅回路201は、出力電圧バイアス回路104に代えて、出力電圧バイアス回路204を有すること以外は、
図1の第1の実施形態に係るD級増幅回路101と同様である。
【0057】
出力電圧バイアス回路204は、
図5に示すように、
図1の出力電圧バイアス回路104の各要素に加えて、抵抗R203H,R203L,R204、PMOSトランジスタM204H、NMOSトランジスタM204L,M205、タイマー205、ANDゲートX206を有する。
【0058】
ここで、PMOSトランジスタM204Hは、第3のスイッチの一例である。また、NMOSトランジスタM204Lは、第4のスイッチの一例である。また、抵抗R203Hは、第3の抵抗の一例である。また、抵抗R203Lは、第4の抵抗の一例である。
【0059】
タイマー205は、ロードダンプが発生してからの経過時間に応じて、ハイレベルの信号「H」又はローレベルの信号「L」を出力するように構成される。具体的には、タイマー205は、過電圧検出回路102によりロードダンプの発生が検出された後、予め定められた所定の時間が経過するまでは「H」を出力するように構成される。一方で、タイマー205は、ロードダンプの発生から予め定められた所定の時間が経過した後には「L」を出力するように構成される。所定の時間としては、出力端子OUTが電源電圧の中点電位にバイアスされた後、ロードダンプ電圧の上昇に伴い抵抗R203H,R203Lが焼損するまでの時間より短い時間が予め定められている。
【0060】
ANDゲートX206の一対の入力端は、それぞれ過電圧検出回路102の出力端と、タイマー205の出力端とに接続される。
【0061】
NMOSトランジスタM205のゲートは、ANDゲートX206の出力端に接続される。NMOSトランジスタM205のドレインは、抵抗R204を介して、プラス側の電源端子PVDDに接続される。NMOSトランジスタM205のソースは、マイナス側の電源端子VSSに接続される。
【0062】
PMOSトランジスタM204Hのゲートは、R204とNMOSトランジスタM205のドレインとの間に接続される。PMOSトランジスタM204Hのソースは、プラス側の電源端子PVDDに接続される。PMOSトランジスタM204Hのドレインは、ハイサイドの抵抗R203Hとローサイドの抵抗R203Lとを介して、NMOSトランジスタM204Lのドレインに接続される。
【0063】
NMOSトランジスタM204Lのソースは、マイナス側の電源端子VSSに接続される。NMOSトランジスタM204Lのゲートは、ANDゲートX206の出力端に接続される。
【0064】
ハイサイドの抵抗R203Hと、ローサイドの抵抗R203Lとの間は、出力端子OUTに接続される。
【0065】
なお、抵抗R203Hと、R203Lとは同じ抵抗値とする。また、抵抗R203H,R203Lの抵抗値は、抵抗R101H,R101Lの抵抗値より十分小さいとする。また、抵抗R203H,R203Lの抵抗値(抵抗定数)は、第1の実施形態の抵抗R101H,R101Lと同様に、式(3)を満たすように設定される。つまり、出力端子OUTに接続されるLCフィルタと、抵抗R203H(第3の抵抗)と、抵抗R203L(第4の抵抗)とにより規定される出力端子OUTの時定数は、ロードダンプ電圧の傾きの最大値(第1の傾き)より小さい。また、PMOSトランジスタM204Hのオン抵抗と、NMOSトランジスタM204Lのオン抵抗とは、それぞれ抵抗R203H及び抵抗R203Lの抵抗値より十分小さいとする。
【0066】
過電圧検出回路102によりロードダンプの発生が検出されたとき、D級増幅回路101と同様に、各パワートランジスタM101H,M101Lは、オフされる。また、NMOSトランジスタM102L,M103と、PMOSトランジスタM102Hとは、オンされる。
【0067】
また、NMOSトランジスタM204L,M205は、過電圧検出回路102からの「H」と、タイマー205からの「H」とがANDゲートX206に入力されることに伴いオンされる。また、PMOSトランジスタM204Hは、NMOSトランジスタM205がオンされたことに応じてオンされる。
【0068】
このように、過電圧検出回路102によりロードダンプの発生が検出されたとき、出力電圧バイアス回路204において、出力端子OUTは、抵抗R101H,R101Lと、抵抗R203H,R203Lとの各々により、電源電圧(PVDD)の中点電位にバイアスされる。換言すれば、出力電圧バイアス回路204は、過電圧検出回路102からの「H」(検出信号)に応じてPMOSトランジスタM102H,M204H(第1,第3のスイッチ)及びNMOSトランジスタM102L,M204L(第2,第4のスイッチ)をオンする。これにより、出力電圧バイアス回路204は、電源電圧(PVDD)の中点電位(端子間電位)への出力端子OUTのバイアスを開始する。
【0069】
また、出力端子OUTが電源電圧の中点電位にバイアスされた後、抵抗R203H,R203Lが焼損するよりも早い時点でタイマー205から「L」が出力される。換言すれば、タイマー205は、PMOSトランジスタM204H(第3のスイッチ)及びNMOSトランジスタM204L(第4のスイッチ)がオンされてから予め定められた時間が経過したときに、PMOSトランジスタM204H及びNMOSトランジスタM204Lをオフさせるための信号「L」を出力する。NMOSトランジスタM204L,M205は、タイマー205からの「L」の出力に伴いオフされる。また、NMOSトランジスタM205がオフされたことに応じて、PMOSトランジスタM204Hがオフされる。
【0070】
一方で、PMOSトランジスタM204H及びNMOSトランジスタM204Lがオフされた後であっても、PVDDが検出電圧値以上であるとき、PMOSトランジスタM102H及びNMOSトランジスタM102Lはオンし続けている。換言すれば、出力電圧バイアス回路204は、電源電圧(PVDD)の中点電位(端子間電位)への出力端子OUTのバイアスを開始した後、PMOSトランジスタM204H(第3のスイッチ)及びNMOSトランジスタM204L(第4のスイッチ)をオフする。出力電圧バイアス回路204は、PMOSトランジスタM204H(第3のスイッチ)及びNMOSトランジスタM204L(第4のスイッチ)をオフした状態で、電源電圧(PVDD)の中点電位(端子間電位)への出力端子OUTのバイアスを継続する。
【0071】
このように、第2の実施形態に係るD級増幅回路201においては、ロードダンプ電圧により焼損し得る小さい抵抗値の抵抗R203H,R203Lにより出力端子OUTのバイアス電圧を維持することによりPVDDへの追随性を確保することができる。また、ロードダンプ電圧が抵抗R203H,R203Lが焼損し得る電圧まで上昇するより早い時点で、焼損しないような十分大きな抵抗値の抵抗R101H,R101Lにより出力端子OUTのバイアス電圧を維持するように切り替える。これにより、ロードダンプの変化が大きい場合やLCフィルタのキャパシタ定数が大きい場合であっても、出力端子OUTの電位のPVDDへの追随性を確保しつつ、各パワートランジスタM101H,M101Lへの耐圧要求を低減することができる。
【0072】
(第3の実施形態)
図6は、第3の実施形態に係るD級増幅回路301の構成の一例を示す図である。ここでは、
図5の第2の実施形態に係るD級増幅回路201との相違点を主に説明する。
【0073】
第2の実施形態では、出力端子OUTのバイアス電圧を維持する構成をタイマー205により切り替えるD級増幅回路201を例示したが、出力端子OUTのバイアス電圧を維持する構成は、タイマー205の他の構成により切り替えることもできる。
【0074】
本実施形態に係るD級増幅回路301は、出力電圧バイアス回路204に代えて、出力電圧バイアス回路304を搭載すること以外は、上述の各D級増幅回路101,201と同様である。より具体的には、本実施形態に係るD級増幅回路301は、タイマー205に代えて、ウィンドウコンパレータ305を有すること以外は、
図5の第2の実施形態に係るD級増幅回路201と同様である。
【0075】
出力電圧バイアス回路304は、
図5の出力電圧バイアス回路204の構成において、タイマー205に代えてウィンドウコンパレータ305を有する。ウィンドウコンパレータ305は、
図6に示すように、抵抗R305,R306,R307、コンパレータX307,X308を有する。
【0076】
各コンパレータX307,X308は、反転入力端子(-)と非反転入力端子(+)との間の電位差に応じた比較結果を出力する差動増幅回路(比較回路)である。コンパレータX307の非反転入力端子(+)は、抵抗R305を介してプラス側の電源端子PVDDに接続されるとともに、抵抗R306を介してコンパレータX308の反転入力端子(-)に接続される。コンパレータX308の反転入力端子(-)は、抵抗R307を介して、マイナス側の電源端子VSSに接続される。また、コンパレータX307の反転入力端子(-)及びコンパレータX308の非反転入力端子(+)は、それぞれ出力端子OUTに接続される。また、各コンパレータX307,X308の出力端は、それぞれ、ANDゲートX206の入力端に接続される。
【0077】
ウィンドウコンパレータ305は、以下の式(4)及び式(5)により規定される2つの閾値を有する。具体的には、出力端子OUTが電源電圧(PVDD)の中点電位にバイアスされた後、出力端子OUTのバイアス電圧がPVDDの中点電位に追随するまでは、式(4)及び式(5)がともに成立し、各コンパレータX307,X308から「H」が出力される。
【0078】
【0079】
【0080】
過電圧検出回路102によりロードダンプの発生が検出されたとき、
図5のD級増幅回路201と同様に、出力電圧バイアス回路304において、出力端子OUTは、抵抗R101H,R101Lと、抵抗R203H,R203Lとの各々により、電源電圧(PVDD)の中点電位にバイアスされる。
【0081】
その後、出力端子OUTのバイアス電圧がPVDDの中点電位に追随した後には、式(4)及び式(5)の少なくとも一方が成立せず、各コンパレータX307,X308の少なくとも一方から「L」が出力される。換言すれば、ウィンドウコンパレータ305は、出力端子OUTの電位が、中点電位(端子間電位)から所定の電位差以内であるとき、PMOSトランジスタM204H及びNMOSトランジスタM204Lをオフさせるための信号「L」を出力する。つまり、ウィンドウコンパレータ305は、出力端子OUTのバイアス電圧が2つの閾値の間にバイアスされたことを検出する。そして、PMOSトランジスタM204H及びNMOSトランジスタM204Lは、ウィンドウコンパレータ305の2つの出力端の少なくとも一方からの「L」がANDゲートX206に入力されることに伴いオフされる。一方で、PMOSトランジスタM204H及びNMOSトランジスタM204Lがオフされた後であっても、PVDDが検出電圧値以上であるとき、PMOSトランジスタM102H及びNMOSトランジスタM102Lはオンされ続けている。
【0082】
このように、第3の実施形態に係るD級増幅回路301の構成であっても、
図5のD級増幅回路201と同様に、出力端子OUTのバイアス電圧を維持する構成を切り替えることにより、PVDDへの追随性を確保しつつ、ロードダンプ電圧による抵抗R203H,R203Lの焼損を抑止することができる。
【0083】
なお、第2の実施形態に係る技術と、第3の実施形態に係る技術とは、適宜組み合わせることもできる。
【0084】
なお、第2の実施形態に係るD級増幅回路201は、例えば出力端子OUTの時定数あるいはその範囲が予め定められている場合に適用されることが好ましい。また、第2の実施形態に係るD級増幅回路201は、第3の実施形態に係るD級増幅回路301と比較して部品点数が少ないため、低コスト化への寄与が大きい。一方で、第3の実施形態に係るD級増幅回路301は、第2の実施形態に係るD級増幅回路201より部品点数が増加するものの、例えば接続される負荷が定められていない場合など、出力端子OUTの時定数によらずに適用することができるため、汎用性が高い。
【0085】
なお、上述の各実施形態では、出力端子OUTが電源電圧の中点電位(端子間電位)にバイアスされる場合を例示したが、これに限らない。上述の各実施形態に係るD級増幅回路101,201,301は、出力端子OUTを電源電圧(PVDD)とグラウンドとの間の任意の電位(端子間電位)にバイアスする構成とすることもできる。
【0086】
例えば、
図1のD級増幅回路101において、抵抗R101Hと、抵抗R101Lとは異なる抵抗値とする。この場合、出力端子OUTは、電源電圧(PVDD)とグラウンドとの間の抵抗R101Hと、抵抗R101Lとの抵抗分圧に応じた電位にバイアスされる。一例として、抵抗R101Hと、抵抗R101Lとの抵抗比を1:3に設定した場合、40Vのロードダンプ電圧に対して、ハイサイドのパワートランジスタM101Hの耐圧値を40Vから10Vまで低減することができる。同様に、ローサイドのパワートランジスタM101Lの耐圧値を40Vから30Vまで低減することができる。つまり、各パワートランジスタM101H,M101Lの耐圧値を、共通のパワートランジスタを使用する場合であっても、ロードダンプ電圧の3/4倍の耐圧値まで低減することができる。
【0087】
図2及び
図3の各D級増幅回路201,301においては、さらに抵抗R203Hと、抵抗R203Lとの抵抗比を、抵抗R101Hと、抵抗R101Lとの抵抗比に等しく設定すればよい。
【0088】
このように、上述の各実施形態に係るD級増幅回路101,201,301は、出力端子OUTを抵抗R101H,R101Lの抵抗比に応じた電源電圧の抵抗分圧の電位にバイアスする構成とした場合であっても、各パワートランジスタM101H,M101Lへの耐圧要求を低減することができる。このとき、各パワートランジスタM101H,M101Lのドレイン-ソース間の耐圧要求は、ロードダンプ電圧の抵抗分圧、あるいはロードダンプ電圧の抵抗分圧に応じて予め定められた検出電圧値のうちのいずれか高い電圧値以上である。
【0089】
なお、上述の実施形態で説明したように、抵抗R101H,R101Lの抵抗比が1である場合に、各パワートランジスタM101H,M101Lへの耐圧要求を最大限に低減することができる。このとき、各パワートランジスタM101H,M101Lのドレイン-ソース間の耐圧要求は、ロードダンプ電圧の半分、あるいはロードダンプ電圧の半分の電圧値に応じて予め定められた検出電圧値のうちのいずれか高い電圧値以上である。
【0090】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。上記新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。例えば上記実施形態では、ハイサイドのパワートランジスタM101HとしてNMOSトランジスタとしているが、PMOSトランジスタを用いても問題ない。その場合は、ハイサイドのパワートランジスタM101Hのソースがプラス側の電源端子PVDDに接続され、ドレインが出力端子OUTに接続される。また、論理回路103のハイサイドのドライバX101Hへの出力が逆になるように構成する。例えば、ANDゲートX104をNANDゲートに置き換えればよい。これら実施形態は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0091】
101,201,301,501 D級増幅回路
102 過電圧検出回路
103,503 論理回路
104,204,304 出力電圧バイアス回路
205 タイマー
305 ウィンドウコンパレータ
C1 キャパシタ
L1 インダクタ
M101H,M101L パワートランジスタ
M102H,M204H PMOSトランジスタ
M102L,M103,M204L,M205 NMOSトランジスタ
R101H,R101L,R102,R203H,R203L,R204,R305,R306,R307 抵抗
V1 電源
V2 入力パルス信号源
X101H,X101L ドライバ
X102,X103 インバータ
X104,X105,X206 ANDゲート
X307,X308 コンパレータ