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特許7575288波長可変レーザ装置および波長可変レーザ装置の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】波長可変レーザ装置および波長可変レーザ装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/042 20060101AFI20241022BHJP
【FI】
H01S5/042 630
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021020925
(22)【出願日】2021-02-12
(65)【公開番号】P2022123548
(43)【公開日】2022-08-24
【審査請求日】2023-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】屋冨祖 良貴
(72)【発明者】
【氏名】山本 篤司
(72)【発明者】
【氏名】木村 賢宜
【審査官】高椋 健司
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-095690(JP,A)
【文献】特開平07-240717(JP,A)
【文献】特開2000-350051(JP,A)
【文献】特開平03-257611(JP,A)
【文献】特開2000-089178(JP,A)
【文献】特開2015-159471(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0030045(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00- 5/50
H04B 10/00-10/90
H04J 14/00-14/08
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長可変レーザ装置であって、
波長を変更可能なレーザ光を出力する波長可変光源と、
レーザ光を光増幅する半導体光増幅器と、
少なくとも、前記半導体光増幅器を作動停止するよう制御可能であるとともに、前記波長可変レーザ装置をリセットするよう制御可能であるコントローラと、
前記波長可変レーザ装置の電源電圧の所定の条件を満たす低下を検知した場合に検知信号を出力する検知回路と、
前記コントローラに入力される電源電圧の低下を遅延する第一遅延回路と、
を備え、
前記コントローラは、
前記波長可変光源の作動が停止する場合には、当該波長可変光源の作動が停止する前に、前記半導体光増幅器の作動を停止し、
前記検知信号の入力に応じて前記半導体光増幅器の作動を停止する第一停止制御部を有した、波長可変レーザ装置。
【請求項2】
前記コントローラは、前記第一停止制御部の制御により前記半導体光増幅器の作動が停止した後に前記電源電圧の低下によっては前記波長可変レーザ装置がシャットダウンしなかった場合に前記波長可変レーザ装置をリセットする第一リセット制御部を有した、請求項に記載の波長可変レーザ装置。
【請求項3】
前記第一リセット制御部は、前記検知信号の入力後所定時間経過した場合に前記波長可変レーザ装置をリセットする、請求項に記載の波長可変レーザ装置。
【請求項4】
前記検知回路に入力される前記電源電圧の波形を鈍らせる第一フィルタ回路を備えた、請求項のうちいずれか一つに記載の波長可変レーザ装置。
【請求項5】
波長可変レーザ装置であって、
波長を変更可能なレーザ光を出力する波長可変光源と、
レーザ光を光増幅する半導体光増幅器と、
少なくとも、前記半導体光増幅器を作動停止するよう制御可能であるとともに、前記波長可変レーザ装置をリセットするよう制御可能であるコントローラと、
前記コントローラに入力されるリセット信号を遅延する第二遅延回路と、
を備え、
前記コントローラは、
前記波長可変光源の作動が停止する場合には、当該波長可変光源の作動が停止する前に、前記半導体光増幅器の作動を停止し、
前記第二遅延回路を経由して前記リセット信号が入力される第一ポートと、
前記第二遅延回路を経由せずに前記リセット信号が入力される第二ポートと、
前記第二ポートを介して入力された前記リセット信号に応じて前記半導体光増幅器の作動を停止する第二停止制御部と、
前記第一ポートを介して入力された前記リセット信号に応じて前記波長可変レーザ装置をリセットする第二リセット制御部と、
を有した、波長可変レーザ装置。
【請求項6】
前記コントローラは、前記第二停止制御部の制御により前記半導体光増幅器の作動が停止した後に前記波長可変レーザ装置が前記第二リセット制御部によってリセットされなかった場合に前記波長可変レーザ装置をリセットする第三リセット制御部を有した、請求項に記載の波長可変レーザ装置。
【請求項7】
前記第三リセット制御部は、前記リセット信号の入力後所定時間経過した場合に前記波長可変レーザ装置をリセットする、請求項に記載の波長可変レーザ装置。
【請求項8】
前記第二ポートに入力される前記リセット信号の波形を鈍らせる第二フィルタ回路を備えた、請求項のうちいずれか一つに記載の波長可変レーザ装置。
【請求項9】
請求項1~8のうちいずれか一つに記載の波長可変レーザ装置の、前記コントローラとして作動するコンピュータが、
前記波長可変光源の作動が停止する場合に、当該波長可変光源の作動が停止する前に、前記半導体光増幅器の作動を停止する、波長可変レーザ装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長可変レーザ装置および波長可変レーザ装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、波長を変更可能なレーザ光を出力する波長可変光源と、レーザ光を光増幅する半導体光増幅器と、を有した波長可変レーザ装置が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-140308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の波長可変レーザ装置において、半導体光増幅器が作動している状態で、波長可変光源の作動が停止すると、波長が制御されていない状態で異常な波長のレーザ光が出力されてしまうおそれがあった。
【0005】
そこで、本発明の課題の一つは、例えば、異常な波長のレーザ光の出力を抑制することが可能となるような、改善された新規な波長可変レーザ装置、波長可変レーザ装置の制御方法、およびプログラムを得ること、である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の波長可変レーザ装置は、例えば、波長可変レーザ装置であって、波長を変更可能なレーザ光を出力する波長可変光源と、レーザ光を光増幅する半導体光増幅器と、少なくとも、前記半導体光増幅器を作動停止するよう制御可能であるとともに、前記波長可変レーザ装置をリセットするよう制御可能であるコントローラと、を備え、前記コントローラは、前記波長可変光源の作動が停止する場合には、当該波長可変光源の作動が停止する前に、前記半導体光増幅器の作動を停止する。
【0007】
前記波長可変レーザ装置は、前記波長可変レーザ装置の電源電圧の所定の条件を満たす低下を検知した場合に検知信号を出力する検知回路と、前記コントローラに入力される電源電圧の低下を遅延する第一遅延回路と、を備え、前記コントローラは、前記検知信号の入力に応じて前記半導体光増幅器の作動を停止する第一停止制御部を有してもよい。
【0008】
前記波長可変レーザ装置にあっては、前記コントローラは、前記第一停止制御部の制御により前記半導体光増幅器の作動が停止した後に前記電源電圧の低下によっては前記波長可変レーザ装置がシャットダウンしなかった場合に前記波長可変レーザ装置をリセットする第一リセット制御部を有してもよい。
【0009】
前記波長可変レーザ装置にあっては、前記第一リセット制御部は、前記検知信号の入力後所定時間経過した場合に前記波長可変レーザ装置をリセットしてもよい。
【0010】
前記波長可変レーザ装置は、前記検知回路に入力される前記電源電圧の波形を鈍らせる第一フィルタ回路を備えてもよい。
【0011】
前記波長可変レーザ装置は、前記コントローラに入力されるリセット信号を遅延する第二遅延回路を備え、前記コントローラは、前記第二遅延回路を経由して前記リセット信号が入力される第一ポートと、前記第二遅延回路を経由せずに前記リセット信号が入力される第二ポートと、前記第二ポートを介して入力された前記リセット信号に応じて前記半導体光増幅器の作動を停止する第二停止制御部と、前記第一ポートを介して入力された前記リセット信号に応じて前記波長可変レーザ装置をリセットする第二リセット制御部と、を有してもよい。
【0012】
前記波長可変レーザ装置にあっては、前記コントローラは、前記第二停止制御部の制御により前記半導体光増幅器の作動が停止した後に前記波長可変レーザ装置が前記第二リセット制御部によってリセットされなかった場合に前記波長可変レーザ装置をリセットする第三リセット制御部を有してもよい。
【0013】
前記波長可変レーザ装置にあっては、前記第三リセット制御部は、前記リセット信号の入力後所定時間経過した場合に前記波長可変レーザ装置をリセットしてもよい。
【0014】
前記波長可変レーザ装置は、前記第二ポートに入力される前記リセット信号の波形を鈍らせる第二フィルタ回路を備えてもよい。
【0015】
前記波長可変レーザ装置にあっては、前記コントローラは、通信によってリセット指示信号を受信した場合に前記半導体光増幅器の作動を停止する第三停止制御部と、前記第三停止制御部の制御により前記半導体光増幅器の作動が停止した後に前記波長可変レーザ装置をリセットする第四リセット制御部と、を有してもよい。
【0016】
本発明の波長可変レーザ装置の制御方法にあっては、例えば、レーザ光を光増幅する半導体光増幅器を有し、波長を変更可能なレーザ光を出力する波長可変光源と、少なくとも、前記半導体光増幅器を作動停止するよう制御可能であるとともに、前記波長可変レーザ装置をリセットするよう制御可能であるコントローラと、を備えた波長可変レーザ装置の、前記コントローラとして作動するコンピュータが、前記波長可変光源の作動が停止する場合に、当該波長可変光源の作動が停止する前に、前記半導体光増幅器の作動を停止する。
【0017】
本発明のプログラムは、例えば、コンピュータを、レーザ光を光増幅する半導体光増幅器を有し、波長を変更可能なレーザ光を出力する波長可変光源と、少なくとも、前記半導体光増幅器を作動停止するよう制御可能であるとともに、前記波長可変レーザ装置をリセットするよう制御可能であるコントローラと、を備えた波長可変レーザ装置の、前記コントローラとして作動させるプログラムであって、前記コントローラは、前記波長可変光源の作動が停止する場合に、当該波長可変光源の作動が停止する前に、前記半導体光増幅器の作動を停止する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、例えば、異常な波長のレーザ光の出力を抑制することが可能となるような、改善された新規な波長可変レーザ装置、波長可変レーザ装置の制御方法、およびプログラムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、第1実施形態の波長可変レーザ装置の例示的な概略構成図である。
図2図2は、第1実施形態の波長可変レーザ装置の制御装置の例示的なブロック図である。
図3図3は、第1実施形態の波長可変レーザ装置において電源電圧が低下した場合の制御装置による処理手順の一例を示すフローチャートである。
図4図4は、第1実施形態の波長可変レーザ装置において電源電圧が低下した場合における各部の信号の出力状態および作動状態の一例を示すタイミングチャートである。
図5図5は、第1実施形態の波長可変レーザ装置において電源電圧が低下した場合における各部の信号の出力状態および作動状態の別の一例を示すタイミングチャートである。
図6図6は、第1実施形態の波長可変レーザ装置においてリセット信号が入力された場合の制御装置による処理手順の一例を示すフローチャートである。
図7図7は、第1実施形態の波長可変レーザ装置においてリセット信号が入力された場合における各部の信号の出力状態および作動状態の一例を示すタイミングチャートである。
図8図8は、第1実施形態の波長可変レーザ装置においてリセット信号が入力された場合における各部の信号の出力状態および作動状態の別の一例を示すタイミングチャートである。
図9図9は、第1実施形態の波長可変レーザ装置においてリセットコマンドを受信した場合の制御装置による処理手順の一例を示すフローチャートである。
図10図10は、第2実施形態の波長可変レーザ装置の例示的な概略構成図である。
図11図11は、第3実施形態の波長可変レーザ装置の例示的な概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の例示的な実施形態が開示される。以下に示される実施形態の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用および結果(効果)は、一例である。本発明は、以下の実施形態に開示される構成以外によっても実現可能である。また、本発明によれば、構成によって得られる種々の効果(派生的な効果も含む)のうち少なくとも一つを得ることが可能である。
【0021】
以下に示される複数の実施形態は、同様の構成を備えている。よって、各実施形態の構成によれば、当該同様の構成に基づく同様の作用および効果が得られる。また、以下では、それら同様の構成には同様の符号が付与されるとともに、重複する説明が省略される場合がある。
【0022】
本明細書において、序数は、回路や、制御部等を区別するために便宜上付与されており、優先順位や順番を示すものではない。
【0023】
[第1実施形態]
図1は、波長可変レーザ装置1の概略構成図である。図1に示されるように、波長可変レーザ装置1は、光源装置10と、制御装置100と、を備えている。光源装置10は、波長可変光源の一例である。また、光源装置10は、半導体光増幅器70を有している。なお、光源装置10のうち半導体光増幅器70を除く部分を、波長可変光源と称してもよい。
【0024】
[波長可変光源]
本実施形態では、一例として、光源装置10は、SG-DBR部20(SG-DBR:sampled-grating distributed Bragg reflector)と、位相調整部30と、利得部40と、接続部50と、リング共振器フィルタ60と、半導体光増幅器70と、を備えている。光源装置10は、バーニア効果を利用した波長可変型のレーザ共振器を有し、波長を変更可能なレーザ光を出力する波長可変光源を構成している。
【0025】
光源装置10は、例えば、半導体積層基板11上に設けられたメサ12において、導波路層や活性層など(不図示)の所定の機能を持つように構成されている。
【0026】
SG-DBR部20、位相調整部30、利得部40、接続部50、リング共振器フィルタ60、および半導体光増幅器70は、例えば、InP系半導体材料で作られる。
【0027】
SG-DBR部20は、分布型ブラッグ反射型のサンプルドグレーティング(SG-DBR)の構成を含む導波路を有している。SG-DBR部20は、レーザ共振器の一方の反射部を構成している。
【0028】
利得部40は、活性層を有している。利得部40には、互いに離間した一対の電極(不図示)が設けられており、当該一対の電極に電圧を印加することにより、活性層に電流が流れ、光増幅効果が得られる。これにより、レーザ発振が生じる。
【0029】
接続部50は、利得部40と光学的に接続された例えば1×2MMIカプラのような分岐部で分岐され、それぞれZ方向の反対方向に見た平面視において折れ曲がった二つのメサ12を備えている。各メサ12の導波路層は、結合部Cにおいて、リング共振器フィルタ60のオーバル状あるいは円環状のメサ12の導波路層と、2×2MMIカプラ等によって、光学的に接続されている。
【0030】
リング共振器フィルタ60は、接続部50との組み合わせで、SG-DBR部20とは周期が異なる櫛形のピークを有する反射スペクトル特性を有しており、レーザ共振器のもう一方の反射部を構成している。
【0031】
半導体光増幅器70は、活性層を有している。半導体光増幅器70には、互いに離間した一対の電極(不図示)が設けられており、当該一対の電極に電圧を印加することにより、活性層に電流が流れ、光増幅効果が得られる。
【0032】
上記の構成において、活性層は、例えば、GaInAsP系半導体材料、またはAlGaInAs系半導体材料からなる多重量子井戸(MQW)構造を有している。受動型の導波路は、例えば、バンドギャップ波長が1300[nm]のi型GaInAsP系半導体材料で作られる。SG-DBR構成の導波路は、例えば、GaInAsP系半導体材料、またはAlGaInAs系半導体材料によって作られ、屈折率が互いに異なる部分が、回折格子が形成されるように周期的に配置されている。
【0033】
SG-DBR部20、位相調整部30は、およびリング共振器フィルタ60には、それぞれヒータ層(不図示)が設けられている。ヒータ層は、所謂抵抗発熱体であり、電流の供給に応じて発熱する。ヒータ層には、電流を供給するための電極や導体層のような配線構造が設けられている。
【0034】
SG-DBR部20は、回折格子の周期の逆数に応じて周期的な周波数間隔のコム状の反射ピークを有する。SG-DBR部20とリング共振器フィルタ60とでは、その周期が異なり、バーニア型と呼ばれる方法によってレーザ光の周波数の粗調が可能な構成となっている。ヒータ層がSG-DBR部20を加熱することにより、当該SG-DBR部20の屈折率が変化し、これにより、コム状の反射ピークが周波数軸方向にシフトする。同様に、ヒータ層がリング共振器フィルタ60を加熱することにより、当該リング共振器フィルタ60の屈折率が変化し、コム状の反射ピークが周波数軸方向にシフトする。
【0035】
また、位相調整部30のヒータ層(不図示)の加熱により、導波路層の屈折率を変更し、これにより、レーザ共振器の光学長を調整することができる。レーザ共振器の光学長を調整することにより、共振器モード(キャビティモード)の周波数を微調整しながら周波数軸方向にシフトすることができる。共振器モードの微調整によって、レーザ発振における共振器モードの選択が可能になるとともに、僅かな範囲での周波数の変化が可能となる。なお、位相調整部30は、本実施形態では、一例として、接続部50の一部に設けられているが、位相調整部30が設けられる位置は、接続部50には限定されない。
【0036】
上述したような半導体光増幅器70を有した光源装置10において、半導体光増幅器70の作動が停止している状態では、波長可変光源が作動しても、当該波長可変光源から出力されたレーザ光は、半導体光増幅器70で吸収されるため、光源装置10からは出力されない。しかしながら、半導体光増幅器70が作動している状態で、波長可変光源の作動が停止すると、波長が制御されていない状態で異常な波長のレーザ光が出力されてしまう虞がある。そこで、本実施形態では、光源装置10の作動を制御する制御装置100は、このような異常な波長のレーザ光の出力を抑制する機能を備えている。
【0037】
[制御装置]
図2は、制御装置100A(100)の概略構成を示すブロック図である。図2に示されるように、制御装置100Aは、コントローラ110と、主記憶部120と、補助記憶装置130と、を有している。
【0038】
コントローラ110は、少なくとも、半導体光増幅器70の作動を停止する機能と、波長可変レーザ装置1をリセットする機能と、を有している。
【0039】
コントローラ110は、例えば、CPU(central processing unit)のようなプロセッサ(回路)である。主記憶部120は、例えば、RAM(random access memory)や、ROM(read only memory)である。また、補助記憶装置130は、例えば、SSD(solid state drive)やHDD(hard disk drive)のような不揮発性の記憶装置である。
【0040】
コントローラ110は、主記憶部120や補助記憶装置130に記憶されたプログラムを読み出して各処理を実行することにより、第一停止制御部110a、第二停止制御部110b、第三停止制御部110c、通信制御部110d、第一リセット制御部110e、第二リセット制御部110f、第三リセット制御部110g、および第四リセット制御部110h、として作動する。プログラムは、それぞれインストール可能な形式または実行可能な形式のファイルで、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供されうる。記録媒体は、プログラムプロダクトとも称されうる。プログラムおよびプロセッサによる演算処理で用いられる値や、テーブル、マップ等の情報は、主記憶部120や補助記憶装置130に予め記憶されてもよいし、通信ネットワークに接続されたコンピュータの記憶部に記憶され、当該通信ネットワーク経由でダウンロードされることによって補助記憶装置130に記憶されてもよい。補助記憶装置130は、プロセッサによって書き込まれたデータを記憶する。また、コントローラ110による演算処理は、少なくとも部分的に、ハードウエアによって実行されてもよい。この場合、コントローラ110には、例えば、FPGA(field programmable gate array)や、ASIC(application specific integrated circuit)等が含まれてもよい。
【0041】
さらに、制御装置100Aは、第一遅延回路211と、検知回路212と、第二遅延回路221と、を有している。
【0042】
第一遅延回路211は、コントローラ110に入力される電源電圧の低下を遅延する遅延回路である。
【0043】
検知回路212は、波長可変レーザ装置1の電源電圧の所定の条件を満たす低下を検知した場合に、検知信号を出力する。検知回路212は、例えば集積回路として構成される。
【0044】
第二遅延回路221は、コントローラ110に入力されるリセット信号を遅延する。
【0045】
コントローラ110には、四つのポートP1~P4が設けられている。
【0046】
ポートP1には、第一遅延回路211により遅延された電源電圧が入力される。
【0047】
ポートP2には、検知回路212から出力された検知信号が入力される。
【0048】
ポートP3には、第二遅延回路221を経由し、当該第二遅延回路221によって遅延されたリセット信号が入力される。リセット信号は、例えば、所定のハイレベルの電位から所定のローレベルの電位となって再び所定のハイレベルの電位となる信号である。ポートP3は、第一ポートの一例である。
【0049】
また、ポートP4には、第二遅延回路221を経由せず、すなわち当該第二遅延回路221によって遅延されることなく、リセット信号が入力される。ポートP4は、第二ポートの一例である。
【0050】
さらに、コントローラ110には、通信信号のポートPr,Ptが設けられている。ポートPrには、外部機器からの受信信号が入力され、ポートPtからは、外部機器への送信信号が出力される。
【0051】
[コントローラの作動(1):電源電圧が低下した場合]
波長可変レーザ装置1に供給される電源電圧が低下した場合、波長可変光源は作動を停止する。この場合、コントローラ110は、波長可変光源が作動を停止する前に、半導体光増幅器70の作動を停止する制御を実行する。
【0052】
図3は、電源電圧が低下した場合のコントローラ110による処理手順を示すフローチャートである。
【0053】
検知回路212は、電源電圧の所定の条件を満たす低下を検知すると、検知信号を出力する(S11)。当該検知信号は、ポートP2を介して、コントローラ110へ入力される。
【0054】
次に、コントローラ110は、第一停止制御部110aとして作動し、当該検知信号の入力に応じて、例えば、半導体光増幅器70への電源ラインに設けられたスイッチング素子をオフすることにより、当該半導体光増幅器70の作動を停止する(S12)。
【0055】
他方、電源電圧は、第一遅延回路211を介してコントローラ110に入力される。ここで、第一遅延回路211による遅延時間は、検知回路212によって電源電圧の低下が検知されてから、当該検知に基づいて第一停止制御部110aの作動によって半導体光増幅器70の作動が停止するまでの所要時間よりも、十分に長く設定されている。したがって、通常の電源電圧の低下であった場合、波長可変レーザ装置1は、S12の後に、当該電源電圧の低下に伴ってシャットダウンする(S13でYes)。このような構成および制御によれば、S13の波長可変レーザ装置1のシャットダウンにおいて波長可変光源の作動が停止する前に、S12において半導体光増幅器70の作動が停止し、波長可変レーザ装置1からのレーザ光の出力が停止するので、波長可変レーザ装置1が異常な波長のレーザ光を出力する事態を回避することができる。
【0056】
図4は、この場合の各部の信号の出力状態および作動状態を示すタイミングチャートである。図4に示されるように、検知回路212によって電源電圧の閾値に対する低下が検知されると(t=t0)、検知回路212の出力としての検知信号が、L(ロー)レベルからH(ハイ)レベルとなる。これにより、第一停止制御部110aの制御信号は、LレベルからHレベルとなり、これに伴って、半導体光増幅器70(SOA)が、ON状態からOFF状態となる、すなわち作動を停止する。
【0057】
他方、第一遅延回路211の出力は、時刻t0から時間T1だけ遅れた時刻t1において閾値を下回る。これにより、第一リセット制御部110eの制御信号は、HレベルからLレベルとなり、光源装置10(LD)が、ON状態からOFF状態となる、すなわち作動を停止する。これにより、波長可変レーザ装置1は、シャットダウン状態となる。なお、光源装置10をON状態からOFF状態とする制御主体は、第一リセット制御部110eでなくてもよい。
【0058】
また、電源電圧において、例えば、瞬断が生じたり、何らかのノイズが混入したり、サージが生じたりしたような場合にあっては、検知回路212は電源電圧の低下を検知し、これに応じて第一停止制御部110aが半導体光増幅器70の作動を停止したものの、波長可変レーザ装置1がシャットダウンしないような場合も想定される。この場合、波長可変レーザ装置1において、半導体光増幅器70が作動を停止したものの他の部位は作動しているという異常な作動状態となる。
【0059】
そこで、本実施形態では、S12において半導体光増幅器70の作動が停止した後、波長可変レーザ装置1がシャットダウンしなかった場合にあっては(S13でNo)、コントローラ110は、第一リセット制御部110eとして作動し、波長可変レーザ装置1をリセットする(S14)。このような制御によれば、波長可変レーザ装置1は、例えば、半導体光増幅器70が作動を停止し他の部位が作動している異常な作動状態から抜け出すことができる。
【0060】
この際、第一リセット制御部110eは、検知信号が入力されてからの経過時間を計測するタイマを有し、当該経過時間が所定の閾値に到達した時点で、S14の処理を実行してもよい。このような制御により、半導体光増幅器70が作動を停止し他の部位が作動しているという異常な作動状態から、より確実にあるいは速やかに抜け出すことができる。
【0061】
図5は、この場合の各部の信号の出力状態および作動状態を示すタイミングチャートである。図5に示されるように、検知回路212によって電源電圧の閾値に対する低下が検知されると(t=t0)、検知回路212の出力としての検知信号が、LレベルからHレベルとなる。これにより、第一停止制御部110aの制御信号は、LレベルからHレベルとなり、半導体光増幅器70が、ON状態からOFF状態となる、すなわち作動を停止する。ここまでは、図4の場合と同じである。
【0062】
しかしながら、図5の場合、第一遅延回路211の出力は、閾値を下回ることがない。このような場合には、第一リセット制御部110eの制御信号が、時刻t0から時間T1よりも長い所定時間T2が経過した時刻t2において、HレベルからLレベルとなり、これに伴って、光源装置10は、ON状態からOFF状態となる。ただし、この場合は、通信によって取得されるイネーブルコマンドによって光出力の再開が可能な、作動待機状態(リセット待機状態)となる。この後、当該イネーブルコマンドの受信に応じて、波長可変レーザ装置1が作動を再開する(不図示)。
【0063】
[コントローラの作動(2):リセット信号が入力された場合]
波長可変レーザ装置1がリセットされる場合も、波長可変光源は起動する前に作動を停止する。よって、この場合も、コントローラ110は、リセットにおいて波長可変光源が作動を停止する前に、半導体光増幅器70の作動を停止する制御を実行する。
【0064】
図6は、リセット信号が入力された場合のコントローラ110による処理手順を示すフローチャートである。
【0065】
第二停止制御部110bとして作動するコントローラ110は、ポートP4を介して入力されたリセット信号の所定条件を満たす変化、例えば、所定の閾値よりも高いハイレベルから所定の閾値より低いローレベルへの変化を検知すると(S21)、半導体光増幅器70の作動を停止する(S22)。
【0066】
他方、リセット信号は、第二遅延回路221を介して、ポートP3からコントローラ110に入力される。ここで、第二遅延回路221による遅延時間は、第二停止制御部110bがリセット信号を受信し、半導体光増幅器70の作動が停止するまでの所要時間よりも、十分に長く設定されている。したがって、通常のリセット信号の入力であった場合、コントローラ110は、第二リセット制御部110fとして作動し、ポートP3への入力に基づいて、S22の後に、波長可変レーザ装置1をリセットする(S23でYes)。このような構成および制御によれば、S23の波長可変レーザ装置1のリセットにおいて波長可変光源の作動が停止する前に、S22において半導体光増幅器70の作動が停止し、波長可変レーザ装置1からのレーザ光の出力が停止するので、波長可変レーザ装置1が異常な波長のレーザ光を出力する事態を回避することができる。
【0067】
図7は、この場合の各部の信号の出力状態および作動状態を示すタイミングチャートである。図7に示されるように、リセット信号が閾値を下回ると(t=t0)、第二停止制御部110bの制御信号は、LレベルからHレベルとなり、半導体光増幅器70(SOA)が、ON状態からOFF状態となる、すなわち作動を停止する。
【0068】
他方、ポートP3への入力は、時刻t0から時間T3だけ遅れた時刻t3において下閾値を下回る。これにより、第二リセット制御部110fの制御信号は、HレベルからLレベルとなり、光源装置10は、ON状態からOFF状態となる。ただし、この場合は、通信によって取得されるイネーブルコマンドによって光出力の再開が可能な、作動待機状態(リセット待機状態)となる。この後、当該イネーブルコマンドの受信に応じて、波長可変レーザ装置1が作動を再開する(不図示)。なお、ポートP3への入力が上閾値を上回ると、第二リセット制御部110fの制御信号は、LレベルからHレベルに戻る。
【0069】
また、第二遅延回路221の経由の有無によってポートP3,P4とでリセット信号の波形に差異が生じ、第二停止制御部110bはリセット信号を検知して半導体光増幅器70の作動を停止したものの、第二リセット制御部110fはリセット信号を検知できず波長可変レーザ装置1をリセットしないような場合も想定される。この場合、波長可変レーザ装置1において、半導体光増幅器70が作動を停止したものの他の部位は作動しているという異常な作動状態となる。
【0070】
そこで、本実施形態では、S22において半導体光増幅器70の作動が停止した後、波長可変レーザ装置1がリセットされなかった場合にあっては(S23でNo)、コントローラ110は、第三リセット制御部110gとして作動し、波長可変レーザ装置1をリセットする(S24)。このような制御によれば、波長可変レーザ装置1は、例えば、半導体光増幅器70が作動を停止し他の部位が作動している異常な作動状態から抜け出すことができる。
【0071】
この際、第三リセット制御部110gは、リセット信号が入力されてからの経過時間を計測するタイマを有し、当該経過時間が所定の閾値に到達した時点で、S24の処理を実行してもよい。このような制御により、半導体光増幅器70が作動を停止し他の部位が作動しているという異常な作動状態から、より確実にあるいは速やかに抜け出すことができる。
【0072】
図8は、この場合の各部の信号の出力状態および作動状態を示すタイミングチャートである。図8に示されるように、リセット信号が閾値を下回ると(t=t0)、第二停止制御部110bの制御信号は、LレベルからHレベルとなり、半導体光増幅器70(SOA)が、ON状態からOFF状態となる、すなわち作動を停止する。ここまでは、図7の場合と同じである。
【0073】
しかしながら、図8の場合、ポートP3への入力は、閾値を下回ることがない。このような場合には、第三リセット制御部110gの制御信号が、時刻t0から時間T3よりも長い所定時間T4が経過した時刻t4において、HレベルからLレベルとなり、光源装置10は、ON状態からOFF状態となる。ただし、この場合は、通信によって取得されるイネーブルコマンドによって光出力の再開が可能な、作動待機状態(リセット待機状態)となる。この後、当該イネーブルコマンドの受信に応じて、波長可変レーザ装置1が作動を再開する(不図示)。
【0074】
[コントローラの作動(3):通信によりリセットコマンドが入力された場合]
この場合も、波長可変レーザ装置1がリセットされる際に波長可変光源は停止するため、上記(2)とは手順が異なるものの、コントローラ110は、リセットにおいて波長可変光源が作動を停止する前に、半導体光増幅器70の作動を停止する制御を実行する。
【0075】
図9は、リセットコマンドを受信した場合のコントローラ110による処理手順を示すフローチャートである。
【0076】
通信制御部110dとして作動するコントローラ110は、外部機器との通信によりポートPrを介して当該外部機器からのリセットコマンドを受信すると(S31)、当該リセットコマンドに対する当該外部機器へのレスポンスをポートPtを介して送信する(S32)。
【0077】
次に、コントローラ110は、第三停止制御部110cとして作動し、半導体光増幅器70の作動を停止し(S33)、その後、第四リセット制御部110hとして作動し、波長可変レーザ装置1をリセットする(S34)。このような制御によれば、S34の波長可変レーザ装置1のリセットにおいて波長可変光源の作動が停止する前に、S33において半導体光増幅器70の作動が停止するので、波長可変レーザ装置1が異常な波長のレーザ光を出力する事態を回避することができる。
【0078】
以上、説明したように、本実施形態によれば、(1):電源電圧が低下した場合、(2):リセット信号が入力された場合、および(3):通信によりリセットコマンドが入力された場合において、波長可変光源の作動が停止する前に、半導体光増幅器70の作動が停止する。このような構成によれば、波長可変レーザ装置1が異常な波長のレーザ光を出力する事態を回避することができる、という利点が得られる。
【0079】
[第2実施形態]
図10は、第2実施形態の制御装置100B(100)の概略構成を示すブロック図である。図10に示されるように、本実施形態では、制御装置100Bは、検知回路212に入力される電源電圧の波形を鈍らせるフィルタ回路213を有している。フィルタ回路213は、第一フィルタ回路の一例である。
【0080】
このような構成により、検知回路212が電源電圧のレベル変動に過敏に反応して本来不要であった半導体光増幅器70の作動停止が生じるのを、抑制することができる。
【0081】
また、本実施形態では、制御装置100Bは、第二遅延回路221を経由せずポートP4に入力されるリセット信号の波形を鈍らせるフィルタ回路222を有している。フィルタ回路222は、第二フィルタ回路の一例である。
【0082】
このような構成により、第二停止制御部110bがリセット信号のレベル変動に過敏に反応して本来不要であった半導体光増幅器70の作動停止が生じるのを、抑制することができる。
【0083】
[第3実施形態]
図11は、第3実施形態の波長可変レーザ装置1Aの概略構成図である。図11に示されるように、光源装置10Aは、波長可変光源部10aと半導体光増幅器70とを有している。波長可変光源部10aには、第1実施形態の構成には限定されず、種々の構成の光源を採用することができる。すなわち、本発明は、波長可変光源部10aの構成によらず、当該波長可変光源部10aの作動および作動停止と半導体光増幅器70の作動および作動停止とを制御装置100によってそれぞれ独立して制御可能な波長可変レーザ装置1Aに対して適用することができる。
【0084】
以上、本発明の実施形態が例示されたが、上記実施形態は一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各構成や、形状、等のスペック(構造や、種類、方向、型式、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質等)は、適宜に変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0085】
1,1A…波長可変レーザ装置
10,10A…光源装置
10a…波長可変光源部
11…半導体積層基板
12…メサ
20…SG-DBR部
30…位相調整部
40…利得部
50…接続部
60…リング共振器フィルタ
70…半導体光増幅器
100,100A,100B…制御装置
110…コントローラ
110a…第一停止制御部
110b…第二停止制御部
110c…第三停止制御部
110d…通信制御部
110e…第一リセット制御部
110f…第二リセット制御部
110g…第三リセット制御部
110h…第四リセット制御部
120…主記憶部
130…補助記憶装置
211…第一遅延回路
212…検知回路
213…フィルタ回路(第一フィルタ回路)
221…第二遅延回路
222…フィルタ回路(第二フィルタ回路)
C…結合部
P1,P2…ポート
P3…ポート(第一ポート)
P4…ポート(第二ポート)
Pr,Pt…ポート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11