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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】レーザ装置
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/0687 20060101AFI20241022BHJP
   H01S 5/062 20060101ALI20241022BHJP
   H01S 5/065 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
H01S5/0687
H01S5/062
H01S5/065
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021021336
(22)【出願日】2021-02-12
(65)【公開番号】P2022123791
(43)【公開日】2022-08-24
【審査請求日】2023-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 賢宜
(72)【発明者】
【氏名】金堂 晃久
【審査官】右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-013823(JP,A)
【文献】国際公開第2020/166615(WO,A1)
【文献】特開2019-140304(JP,A)
【文献】特開2015-046563(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0323578(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第101471531(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00 - 5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力するレーザ光の周波数を可変とする光源部と、前記レーザ光の周波数に対応するモニタ値を取得するモニタ部と、を備えるレーザ部と、
記憶部と演算部とを有し、制御量を前記レーザ部に供給することによって前記レーザ光の周波数を制御する制御部と、
を備え、
前記モニタ部は、入力する光の周波数に対して透過率が周期的に変化する透過特性を有し、かつ位相が相対的にずれている第1周波数フィルタおよび第2周波数フィルタと、前記レーザ光が前記第1周波数フィルタを透過した後のレーザ光の強度に対応する第1強度を検出する第1検出部と、前記レーザ光が前記第2周波数フィルタを透過した後のレーザ光の強度に対応する第2強度を検出する第2検出部と、を少なくとも備え、
前記制御部は、
前記レーザ光の周波数の制御目標となる目標周波数を取得し、
前記レーザ光の強度に対する前記第1強度の比に相当する第1比と、前記レーザ光の強度に対する前記第2強度の比に相当する第2比と、を取得し、
前記第1比および前記第2比の少なくとも一つを含みかつ前記レーザ光の周波数に相当する複数の周波数パラメータのうち、前記レーザ光の現在の周波数に応じて周波数パラメータを選択し、当該選択した周波数パラメータに基づいて、前記レーザ光の現在の周波数に対応するモニタ値を取得し、
前記複数の周波数パラメータのうち、前記目標周波数に応じて周波数パラメータを選択し、当該選択した周波数パラメータに基づいて、前記目標周波数に対応する目標値を取得し、
前記目標値と前記モニタ値との差の絶対値が小さくなるように前記制御量を制御するフィードバック制御を実行可能に構成されており、
かつ、前記制御部は、
前記レーザ光の目標周波数を第1目標周波数から第2目標周波数に変更する場合は、
前記光源部の動作状態に関するパラメータであって前記レーザ光の周波数と対応関係を有する状態パラメータとして、現在の周波数に対応する現在状態パラメータを取得し、
前記第2目標周波数と前記対応関係とに基づいて、前記第2目標周波数に対応する第2状態パラメータを設定する
レーザ装置。
【請求項2】
前記状態パラメータは前記制御量である
請求項1に記載のレーザ装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記記憶部に記憶された前記対応関係に基づいて、前記現在の周波数から前記第2目標周波数までの間の複数の離散的な中間周波数に対応する複数の中間制御量を順次取るように前記制御量を制御して、前記レーザ光の周波数を前記現在の周波数から前記第2目標周波数に向かって単調に変化させる
請求項2に記載のレーザ装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記制御量が前記第2状態パラメータである制御量から所定の範囲内に到達したと判定したときは、前記モニタ値を取得し、取得した前記モニタ値を前記目標値に設定して、前記フィードバック制御を実行する
請求項3に記載のレーザ装置。
【請求項5】
前記状態パラメータは前記周波数パラメータである
請求項1に記載のレーザ装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記フィードバック制御を停止し、前記記憶部に記憶された前記対応関係に基づいて、前記周波数パラメータが、前記現在の周波数から前記第2目標周波数までの間の複数の離散的な中間周波数に対応する複数の中間周波数パラメータを順次取るように前記制御量を制御して、前記レーザ光の周波数を前記現在の周波数から前記第2目標周波数に単調に変化させ、
前記周波数パラメータが前記第2状態パラメータである周波数パラメータから所定範囲内に到達したと判定したときは、前記フィードバック制御を実行する
請求項5に記載のレーザ装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記レーザ光の現在の周波数に対応する現在のモニタ値に対して所定の値を加算または減算して、新しい目標値を生成し、前記目標値と前記モニタ値との差の絶対値が小さくなるように前記制御量を制御するフィードバック制御を実行し、
前記所定の値は、前記現在の周波数から前記第2目標周波数までの間の複数の離散的な中間周波数に対応する複数の前記目標値を順次取るよう設定される
請求項5に記載のレーザ装置。
【請求項8】
前記周波数パラメータは前記第1比、前記第2比、または前記第1比と前記第2比とを演算して得られる値である
請求項1~7のいずれか一つに記載のレーザ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ装置およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
出力するレーザ光の周波数(レーザ発振周波数とも呼ばれる)を可変とするレーザ装置において、入力する光の周波数に対して透過率が周期的に変化する透過特性を有する2以上の周波数フィルタを用いて、レーザ発振周波数を制御する技術が開示されている(特許文献1)。この2以上の周波数フィルタは、互いに位相がずれるように設計されている。この制御では、レーザ光の制御目標の周波数において、周波数の変化に対する透過率の変化が大きい方の周波数フィルタの透過光が制御に使用され、制御目標の周波数に応じて使用する周波数フィルタが切り替えられる。このような制御は、レーザ光の周波数を目標の周波数に制御するために使用されており、周波数ロック制御または波長ロック制御とも呼ばれる。
【0003】
一方、レーザ装置において、レーザ発振周波数を調整する技術が開示されている(特許文献2、3)。レーザ発振周波数を微調整する技術は、FTF(Fine Tuning Frequency)と呼ばれる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-140304号公報
【文献】特許第6241931号公報
【文献】特許第6382506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特にレーザ光を出力させた状態でレーザ発振周波数を微調整する場合には、レーザ発振周波数が単調かつ安定的に変化することが望ましく、不連続に変化したり、不安定に変化したりすることは好ましくない。
【0006】
しかしながら、2以上の周波数フィルタを用いてレーザ発振周波数を制御する技術を用いて、レーザ発振周波数を微調整する場合には、以下の問題が生じる場合がある。たとえば、環境温度の変化などに応じて、2以上の周波数フィルタの透過スペクトルが周波数軸方向にシフトする場合がある。この場合、2以上の周波数フィルタのシフトの向きやシフトの量が互いに異なると、特に使用する周波数フィルタが切り替わる周波数領域でレーザ発振周波数を微調整する場合に、レーザ発振周波数が不連続に変化したり、不安定に変化したりしてしまうおそれがある。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、レーザ発振周波数を調整する際に、単調かつ安定的に変化させることができるレーザ装置およびその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様は、出力するレーザ光の周波数を可変とする光源部と、前記レーザ光の周波数に対応するモニタ値を取得するモニタ部と、を備えるレーザ部と、記憶部と演算部とを有し、制御量を前記レーザ部に供給することによって前記レーザ光の周波数を制御する制御部と、を備え、前記モニタ部は、入力する光の周波数に対して透過率が周期的に変化する透過特性を有し、かつ位相が相対的にずれている第1周波数フィルタおよび第2周波数フィルタと、前記レーザ光が前記第1周波数フィルタを透過した後のレーザ光の強度に対応する第1強度を検出する第1検出部と、前記レーザ光が前記第2周波数フィルタを透過した後のレーザ光の強度に対応する第2強度を検出する第2検出部と、を少なくとも備え、前記制御部は、前記レーザ光の周波数の制御目標となる目標周波数を取得し、前記レーザ光の強度に対する前記第1強度の比に相当する第1比と、前記レーザ光の強度に対する前記第2強度の比に相当する第2比と、を取得し、前記第1比および前記第2比の少なくとも一つを含みかつ前記レーザ光の周波数に相当する複数の周波数パラメータのうち、前記レーザ光の現在の周波数に応じて周波数パラメータを選択し、当該選択した周波数パラメータに基づいて、前記レーザ光の現在の周波数に対応するモニタ値を取得し、前記複数の周波数パラメータのうち、前記目標周波数に応じて周波数パラメータを選択し、当該選択した周波数パラメータに基づいて、前記目標周波数に対応する目標値を取得し、前記目標値と前記モニタ値との差の絶対値が小さくなるように前記制御量を制御するフィードバック制御を実行可能に構成されており、かつ、前記制御部は、前記レーザ光の目標周波数を第1目標周波数から第2目標周波数に変更する場合は、前記光源部の動作状態に関するパラメータであって前記レーザ光の周波数と対応関係を有する状態パラメータとして、現在の周波数に対応する現在状態パラメータを取得し、前記第2目標周波数と前記対応関係とに基づいて、前記第2目標周波数に対応する第2状態パラメータを設定する、レーザ装置である。
【0009】
前記状態パラメータは前記制御量であるものでもよい。
【0010】
前記制御部は、前記記憶部に記憶された前記対応関係に基づいて、前記現在の周波数から前記第2目標周波数までの間の複数の離散的な中間周波数に対応する複数の中間制御量を順次取るように前記制御量を制御して、前記レーザ光の周波数を前記現在の周波数から前記第2目標周波数に向かって単調に変化させるものでもよい。
【0011】
前記制御部は、前記制御量が前記第2状態パラメータである制御量から所定の範囲内に到達したと判定したときは、前記モニタ値を取得し、取得した前記モニタ値を前記目標値に設定して、前記フィードバック制御を実行するものでもよい。
【0012】
前記状態パラメータは前記周波数パラメータであるものでもよい。
【0013】
前記制御部は、前記フィードバック制御を停止し、前記記憶部に記憶された前記対応関係に基づいて、前記周波数パラメータが、前記現在の周波数から前記第2目標周波数までの間の複数の離散的な中間周波数に対応する複数の中間周波数パラメータを順次取るように前記制御量を制御して、前記レーザ光の周波数を前記現在の周波数から前記第2目標周波数に単調に変化させ、前記周波数パラメータが前記第2状態パラメータである周波数パラメータから所定範囲内に到達したと判定したときは、前記フィードバック制御を実行するものでもよい。
【0014】
前記制御部は、前記レーザ光の現在の周波数に対応する現在の前記目標値に対して所定の値を加算または減算して、新しい前記目標値を生成し、前記目標値と前記モニタ値との差の絶対値が小さくなるように前記制御量を制御するフィードバック制御を実行し、前記所定の値は、前記現在の周波数から前記第2目標周波数までの間の複数の離散的な中間周波数に対応する複数の前記目標値を順次取るよう設定されるものでもよい。
【0015】
前記周波数パラメータは前記第1比、前記第2比、または前記第1比と前記第2比とを演算して得られる値であるものでもよい。
【0016】
本発明の一態様は、出力するレーザ光の周波数を可変とする光源部を備えるレーザ装置の制御方法であって、前記レーザ光の目標周波数を第1目標周波数から第2目標周波数に変更する場合は、制御部が、前記光源部の動作状態に関するパラメータであって前記レーザ光の周波数と対応関係を有する状態パラメータとして、現在の周波数に対応する現在状態パラメータを取得し、前記第2目標周波数と前記対応関係とに基づいて、前記第2目標周波数に対応する第2状態パラメータを設定するレーザ装置の制御方法である。
【0017】
前記制御部は、前記状態パラメータが前記第2状態パラメータから所定の範囲内に到達したと判定したときは、前記レーザ光の周波数の制御目標となる目標周波数に対応する目標値と、前記レーザ光の現在の周波数に対応するモニタ値との差の絶対値が小さくなるようにフィードバック制御を実行するものでもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、レーザ発振周波数を調整する際に、単調かつ安定的に変化させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、実施形態に係るレーザ装置の構成を示す図である。
図2図2は、レーザ発振周波数の調整の説明図である。
図3図3は、DBR電力、RING電力、レーザ発振周波数の関係の一例を示す図である。
図4図4は、2つのリング共振器光フィルタによる周波数モニタの説明図である。
図5図5は、弁別カーブの周波数特性の変化により発生する問題の一例の説明図である。
図6図6は、レーザ発振周波数の調整量の設定に対する、実際のレーザ発振周波数の変化量の関係の一例を示す図である。
図7図7は、状態パラメータがPhase電力である場合において、Phase電力とレーザ光の周波数との対応関係の一例を示す図である。
図8図8は、制御部が実行する制御の一例を説明するフロー図である。
図9図9は、ヒータ電力の制御の一例を示す図である。
図10図10は、制御部が実行する制御の他の第1例を説明するフロー図である。
図11図11は、制御部が実行する制御の他の第2例を説明するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について説明する。なお、以下に説明する実施形態によって本発明が限定されるものではない。さらに、図面の記載において、同一の部分には適宜同一の符号を付している。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実と異なる場合がある。さらに、図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0021】
図1は、実施形態に係るレーザ装置の構成図である。このレーザ装置100は、波長可変レーザ装置であって、レーザ部10と、制御部20と、を備えている。
【0022】
レーザ部10は、熱電素子であるペルチェ素子11の上に、波長可変レーザ素子12と、半導体光増幅器13と、平面光波回路(PLC)14と、光検出部15と、温度センサ16とが搭載された構成を有する。波長可変レーザ素子12は、出力するレーザ光の周波数を可変とする光源部の一例である。平面光波回路14と光検出部15とは、波長可変レーザ素子12が出力するレーザ光の周波数に相当するモニタ値を取得するモニタ部17を構成している。
【0023】
波長可変レーザ素子12は、たとえば特許文献1に開示されるバーニア型の波長可変レーザ素子である。波長可変レーザ素子12は、基板121上に、第1反射ミラー122と、利得部123と、第2反射ミラー124とが集積された構成を有する。第1反射ミラー122は、反射スペクトルが周波数に対して周期的にピークを有するリング共振器ミラーである。第1反射ミラー122は、リング共振器と、リング共振器と光学的に結合する2つのアームを有する分岐部とを備えている。第2反射ミラー124は、反射スペクトルが周波数に対して、第2反射ミラー124とは異なる周期で周期的にピークを有する標本化回折格子(Sampled Grating)を備える分布ブラッグ反射(DBR)ミラーである。第1反射ミラー122、第2反射ミラー124によってレーザ共振器Rが構成される。なお、第1反射ミラー122および第2反射ミラー124の反射ピークは、周波数に対して周期的であるが、波長に対しても略周期的であるので、本明細書では、波長に対して周期的にピークを有すると記載する場合もある。利得部123は、レーザ共振器R内に配置されており、駆動電力を供給されることによって光利得を発生する。
【0024】
第1反射ミラー122のリング共振器上には、リング状の第1反射ミラー用ヒータ125が設けられている。第1反射ミラー用ヒータ125は、制御部20から駆動電力を供給されることによって第1反射ミラー122のリング共振器を加熱する。この加熱によって第1反射ミラー122の反射スペクトルが制御される。第1反射ミラー122の一方のアーム上には、位相調整用ヒータ126が設けられている。位相調整用ヒータ126は、制御部20から駆動電力を供給されることによってアームを加熱する。この加熱によってレーザ共振器Rの共振器長が調整される。共振器長を調整することによってレーザ共振器Rの縦モード(共振器モード)の周波数を制御できる。第2反射ミラー124上には、第2反射ミラー用ヒータ127が設けられている。第2反射ミラー用ヒータ127は、制御部20から駆動電力を供給されることによって第2反射ミラー124を加熱する。この加熱によって第2反射ミラー124の反射スペクトルが制御される。
【0025】
波長可変レーザ素子12は、第1反射ミラー用ヒータ125、位相調整用ヒータ126、第2反射ミラー用ヒータ127のそれぞれに供給される駆動電力が調整されることによって、第1反射ミラー122の反射ピークとレーザ共振器Rの共振器モードと第2反射ミラー124の反射ピークとが一致した波長でレーザ発振し、CW(連続波)光であるレーザ光L0を出力する。
【0026】
半導体光増幅器13は、制御部20から駆動電力を供給されることによってレーザ光L0を光増幅してレーザ光L1として出力する。
【0027】
モニタ部17は、波長可変レーザ素子12のレーザ発振周波数(レーザ光L0の周波数)をモニタする。
【0028】
平面光波回路14は、空間結合光学系(図示略)により第1反射ミラー122の一方のアームに光学的に結合している。そして、レーザ光L0と同様に波長可変レーザ素子12におけるレーザ発振により発生したレーザ光L2は、アームから平面光波回路14に入力される。なお、レーザ光L2は、レーザ光L0の周波数と同一の周波数を有し、レーザ光L0のパワーに比例したパワーを有する。この平面光波回路14は、光分岐部141と、光導波路142と、リング共振器光フィルタ143aを有する光導波路143と、リング共振器光フィルタ144aを有する光導波路144とを備える。
【0029】
光分岐部141は、入力したレーザ光L2を3つのレーザ光L3、L4、L5に分岐する。そして、光導波路142は、レーザ光L3を光検出部15に導波する。また、光導波路143は、レーザ光L4を光検出部15に導波する。さらに、光導波路144は、レーザ光L5を光検出部15に導波する。
【0030】
ここで、光導波路143、144が備えるリング共振器光フィルタ143a、144aは、入力する光の周波数に対して透過率が周期的に変化する透過特性を有し、かつ位相が相対的にずれているその結果、光導波路143、144は、周波数に応じた透過率でレーザ光L4、L5をそれぞれ透過する。一方、レーザ光L3は、周波数に略依存しない透過率を有する光導波路142を透過するので、周波数に依存する損失を略受けないで光検出部15に到達する。
【0031】
たとえば、リング共振器光フィルタ143a、144aは、周期は同じであるが、1周期の1/3~1/5の範囲で互いに位相が異なる透過特性を有する。リング共振器光フィルタ143a、144aは、それぞれ、第1周波数フィルタ、第2周波数フィルタの一例である。
【0032】
光検出部15は、PD(Photo Diode)151、152、153を備える。第1検出部としてのPD152は、リング共振器光フィルタ143aを含む光導波路143を透過したレーザ光L4を受光し、受光強度に応じた第1電流信号を出力する。第1電流信号は、レーザ光L0がリング共振器光フィルタ143aを透過した後のレーザ光L0の強度に対応する第1強度に応じた大きさの電流信号である。第2検出部としてのPD153は、リング共振器光フィルタ144aを含む光導波路144を透過したレーザ光L5を受光し、受光強度に応じた第2電流信号を出力する。第2電流信号は、レーザ光L0がリング共振器光フィルタ144aを透過した後のレーザ光L0の強度に対応する第2強度に応じた大きさの電流信号である。第3光検出部としてのPD151は、光導波路142を透過したレーザ光L3を受光し、受光強度に応じた第3電流信号を出力する。第3電流信号は、レーザ光L0が光導波路142を透過した後のレーザ光L0の強度に対応する第3強度に応じた大きさの電流信号である。
【0033】
温度センサ16は、たとえばサーミスタで構成されている。温度センサ16は、波長可変レーザ素子12の温度を検出する。温度センサ16は、検出した温度の情報を含む検出信号を出力する。
【0034】
ペルチェ素子11は、波長可変レーザ素子12を搭載しており、波長可変レーザ素子12の温度を調整することができる。
【0035】
つぎに、制御部20について説明する。制御部20は、利得部123、第1反射ミラー用ヒータ125、位相調整用ヒータ126、第2反射ミラー用ヒータ127、半導体光増幅器13、ペルチェ素子11に供給する電力を制御する。
【0036】
制御部20は、演算部21と、記憶部22と、入力部23と、出力部24と、電力供給部25と、を少なくとも備えている。演算部21は、たとえばCPU(Central Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、DSP(Digital Signal Processor)、GPU(Graphics Processing Unit)などのプロセッサを含んでおり、制御のための各種演算処理を行う。記憶部22は、演算部21が演算処理を行うために使用する各種プログラムやデータ等が格納されるROMなどの記憶部と、演算部21が演算処理を行う際の作業スペースや演算部21の演算処理の結果等を記憶する等のために使用されるRAMなどの記憶部とを備えている。記憶部22は、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)などの補助記憶装置を備えていてもよい。
【0037】
入力部23は、オペレータやレーザ装置100の上位装置などからの指示信号や、光検出部15からの第1~第3電流信号や、温度センサ16からの検出信号の入力を受け付ける。受け付けた信号に含まれる情報は記憶部22に記憶される。入力部23はたとえばアナログ-デジタルコンバータ(ADC)を備えている。出力部24は、演算部21が演算処理により生成した指示信号を受け付け、適当な指示信号に変換して電力供給部25に出力する。出力部24は、たとえばデジタル-アナログコンバータ(DAC)を備えている。電力供給部25は、指示信号に基づいて駆動電力を供給するものであり、たとえばDC電源を備えている。
【0038】
制御部20は、波長可変レーザ素子12のレーザ発振周波数をフィードバック制御可能に構成されている。本実施形態では、制御部20は、以下のフィードバック制御を行う。
【0039】
制御部20は、光検出部15からの第1電流信号の第3電流信号に対する比(以下、適宜第1PD比と記載する場合がある)を演算により取得する。当該第1PD比は、レーザ光L0の強度に対する第1強度の比に相当する第1比の例である。また、制御部20は、光検出部15からの第2電流信号の第3電流信号に対する比(以下、適宜第2PD比と記載する場合がある)を演算により取得する。当該第2PD比は、レーザ光L0の強度に対する第2強度の比に相当する第2比の例である。また、第1PD比、第2PD比は、第1比および第2比の少なくとも一つを含み、かつレーザ光L0の周波数に相当する周波数パラメータの一例である。制御部20は、第1PD比または第2PD比とレーザ発振周波数との対応関係に基づいて、レーザ光L0の現在の周波数に対応するモニタ値を取得する。このとき、第1PD比、第2PD比のうち、レーザ光L0の現在の周波数に応じていずれかのPD比を選択し、当該選択したPD比に基づいてモニタ値を取得する。レーザ光L0の周波数と選択すべきPD比との対応関係は実験等によって事前に求められ、記憶部22にたとえばテーブルデータとして記憶されている。
【0040】
また、制御部20は、オペレータや上位装置などからの指示信号を受け付け、レーザ光L0の周波数の制御目標となる目標周波数を取得する。そして、第1PD比、第2PD比のうち、目標周波数に応じてPD比を選択し、当該選択したPD比に基づいて、目標周波数に対応するPD比の目標値をたとえば記憶部22に記憶されたテーブルデータなどから取得する。そして、制御部20は、目標値とモニタ値との差の絶対値が小さくなる、たとえば設定された制御誤差以下になるように位相調整用ヒータ126への駆動電力を制御する。これによって波長可変レーザ素子12のレーザ発振周波数をフィードバック制御できる。このような制御は、レーザ光L0の周波数を目標周波数にロックするための制御であり、周波数ロック制御または波長ロック制御と呼ばれる。
【0041】
(レーザ発振周波数の調整)
ここで、レーザ発振周波数の調整について具体的に説明する。図2は、レーザ発振周波数の調整の説明図である。上段は、第2反射ミラー124(DBR)の反射スペクトルを示し、中段は、第1反射ミラー122(RING)の反射スペクトルを示し、下段は、共振器モードのスペクトルを示す。
【0042】
供給する駆動電力を調整して第2反射ミラー用ヒータ127(DBRヒータ)を制御すると、その反射スペクトルは実線で示す形状から太矢線で示すように破線で示す形状に周波数軸上でシフトする。同様に、第1反射ミラー用ヒータ125(RINGヒータ)を制御すると、その反射スペクトルは実線で示す形状から破線で示す形状に周波数軸上でシフトする。同様に、位相調整用ヒータ126(Phaseヒータ)を制御すると、そのスペクトルは実線で示す形状から破線で示す形状に周波数軸上でシフトする。
【0043】
実線に示す状態では、第1反射ミラー122の反射ピークとレーザ共振器Rの共振器モードと第2反射ミラー124の反射ピークとが一致した周波数f1でレーザ発振している。この状態にするためには、DBRヒータおよびRINGヒータは、供給される電力に基づいて、DBR、RINGの反射スペクトルがピークとなる周波数位置を各々設定する。Phaseヒータは、供給される電力に基づいて、共振器モードがピークとなる周波数位置を設定する。各ヒータの制御によって破線に示す状態にすると、第1反射ミラー122の反射ピークとレーザ共振器Rの共振器モードと第2反射ミラー124の反射ピークとが一致する周波数を周波数f2とできるので、レーザ発振周波数を周波数f2に調整できる。各ヒータの制御の際に駆動電力を細かく調整することで、共振器モードと2つの反射ピークとの一致を維持したままレーザ発振周波数を微調整できる。なお、各ヒータへ供給する駆動電力は制御量の一例である。すなわち、制御部20は、制御量である駆動電力をレーザ部10に供給することによってレーザ光L0の周波数を制御する。なお、制御量は、駆動電力を設定するために制御される駆動電流値でもよい。
【0044】
レーザ発振周波数と各ヒータへの駆動電力の関係の一例について説明する。図3は、DBR電力、RING電力、レーザ発振周波数の関係の一例を示す図である。DBR電力はDBRヒータに供給される駆動電力である。RING電力はRINGヒータに供給される駆動電力である。図3において、fa1、fa2、・・・、fak、・・・、fb1、fb2、・・・、fbk、・・・、fn1、fn2、・・・、fnk、・・・は、特定のRING電力とDBR電力との組み合わせによって得られるレーザ発振周波数を示しており、互いに異なる周波数である。また、たとえばfa1、fa2、・・・、fak、・・・は互いに近接する周波数である。なお、近接する周波数とは、fAB(A=a,b,c・・・n、B=1,2,3・・・k)とfA(B±1)との波長の差が、fABとfA‘B(A’≠A)との波長差より小さくなっていることを示している。同様に、fb1、fb2、・・・、fbk、・・・も互いに近接する周波数であり、fn1、fn2、・・・、fnk、・・・も互いに近接する周波数である。したがって、FTFを行う等レーザ発振周波数を連続的に変化させたい場合は、たとえばfa1、fa2、・・・、fak、・・・を結んでいる傾斜した破線に沿うように、RING電力とDBR電力との組み合わせを変化させ、かつPhaseヒータに対する電流もそれに応じて変化させればよい。
【0045】
ここで、本実施形態のように、2つのリング共振器フィルタによる周波数モニタを行う場合について、図4を参照して説明する。図4はPD比の特性を示している。横軸は光の周波数である。
【0046】
カーブC1は光導波路143のリング共振器光フィルタ143aによる特性であり、PD152が出力する第1電流信号の第3電流信号に対する第1PD比を示している。また、カーブC2は光導波路144のリング共振器光フィルタ144aによる特性であり、PD153が出力する第2電流信号の第3電流信号に対する第2PD比を示している。図4では2つのカーブC1、C2ともおよそ1/2周期分のみ図示しているが、実際にはカーブC1、C2は周波数軸方向において周期的な複数のカーブで構成されている。
【0047】
2つのPD比のカーブC1、C2(弁別カーブとも呼ばれる)のうち、レーザ発振周波数の変化に対して変化が大きい、すなわちカーブの傾きが大きい方が、周波数モニタの精度が高い。したがって、レーザ発振周波数に応じて傾きの大きい弁別カーブが選択され、使用される。どちらの弁別カーブを使用するかは、第1PD比、第2PD比のうち、レーザ光L0の現在の周波数または目標周波数に応じていずれかのPD比を選択し、当該選択したPD比に基づいてモニタ値または目標値を取得することに相当する。図4に示す太線は具体的に周波数の制御ポイント(ロックポイント)の範囲を示しており、周波数に応じて傾きが大きい方のカーブが選択され、選択されたカーブの太線上にロックポイントが設定される。たとえば、図4の場合、カーブC1、C2が交差する点Pの周波数はf12である。そこで、たとえば、レーザ光L0の周波数がf11以上f12未満に対応するPD比であれば、カーブC2が選択され、f12以上f13未満に対応するPD比であれば、カーブC1が選択される。
【0048】
そして、たとえば、レーザ光L0の目標周波数がf14からf15に変更される場合には、周波数ロックのために周波数モニタに使用される弁別カーブは、周波数f12に対応するPD比においてカーブC2からカーブC1に切り替えられる。f14は第1目標周波数の一例であり、f15は第2目標周波数の一例である。
【0049】
レーザ光L0の目標周波数を現在の第1目標周波数から第2目標周波数(ターゲット周波数とも呼ばれる)に変更する際に、このような弁別カーブを用いてフィードバック制御を用いる場合、第2目標周波数まで一気にフィードバック制御を行うと、レーザ発振周波数が瞬間的に変化したり、不安定に変化したりする場合がある。また、波長可変レーザ素子の発振周波数を本実施形態のようにバーニア制御を用いて制御する場合や、第1目標周波数から第2目標周波数まで周波数を調整する際に使用する弁別カーブを途中で切り替える場合に、レーザ発振周波数が不安定に変化するおそれがある。さらに、FTFによりレーザ発振周波数が微小に変化するように制御した場合には、このようなレーザ発振周波数が不安定に変化する状態でレーザ光を発振してしまうおそれがある。
【0050】
これに対して、制御部20は、現在の周波数(第1目標周波数に近く、たとえば第1目標周波数と等しい)から第2目標周波数までの間で離散的に設けられた中間周波数に対応する複数の中間制御量(電力値)を記憶部22に記憶している。そして、レーザ発振周波数を第2目標周波数に変更する指令を受けると、これらの中間周波数に対応する複数の中間制御量を順次取るように各ヒータを制御し、レーザ発振周波数を単調変化させる。このように、現在の周波数から第2目標周波数までの間に離散的な中間周波数を設定し、これらの中間周波数に対応する中間制御量を設定して、中間制御量を順次取るようにすることで、レーザ発振周波数を調整する際に、単調かつ安定的に変化させることができる。
【0051】
ところで、弁別カーブの透過特性は、たとえばモニタ部17の環境温度の変化などによって変化する場合がある。弁別カーブの周波数特性の変化は、たとえば透過スペクトルの周波数軸方向へのシフトとして現れる。このとき、弁別カーブのシフトの向きやシフトの量が互いに異なると、弁別カーブを途中で切り替える場合に、以下のような問題が生じるおそれがある。
【0052】
図5は、弁別カーブの周波数特性の変化により発生する問題の一例の説明図である。図4に示す場合が、モニタ部17が第1状態である場合とすると、カーブC1、C2が、モニタ部17の第1状態から第2状態への変化によって周波数軸方向へ互いに異なる向きにシフトし、それぞれカーブC1a、C2aになったとする。この場合、カーブC2からカーブC1に切り替えられるべきPD比のカーブC1a、C2a上の点も、交差点である点Pから、互いに異なる周波数である点P1、P2になる。
【0053】
図6は、このような第2状態においても第1状態の場合と同じ制御を行った場合の、レーザ発振周波数の調整量の設定に対する、実際のレーザ発振周波数の変化量の関係の一例を示す図である。図6の横軸に示すように、制御上、レーザ発振周波数が滑らかに変化するように設定し、制御しても、実際には縦軸に示すようにレーザ発振周波数が急に不連続に変化してしまい、好ましくない。
【0054】
これに対して、制御部20は、レーザ光L0の目標周波数を第1目標周波数から第2目標周波数に変更する場合において、弁別カーブを途中で切り替える場合、すなわち、第1PD比、第2PD比のうち選択するPD比(周波数パラメータ)を切り替える場合、一例として以下の制御ステップを行う。
【0055】
当該制御ステップにおいては、制御部20は、波長可変レーザ素子12の動作状態に関するパラメータであってレーザ光L0の周波数と対応関係(第1対応関係)を有する状態パラメータとして、現在の周波数に対応する現在状態パラメータを取得し、第2目標周波数と第1対応関係とに基づいて、第2目標周波数に対応する第2状態パラメータを設定する設定ステップを行う。なお、現在の周波数は、第1目標周波数に近く、たとえば第1目標周波数と等しい。現在の周波数が第1目標周波数と等しい場合は、第1状態パラメータと記載する場合がある。
【0056】
設定ステップにつづいて、制御部20は、前記対応関係に基づいて、現在の周波数から第2目標周波数までの間の複数の離散的な中間周波数に対応する複数の中間制御量を順次取るように制御量を制御する変更制御ステップを実行して、レーザ光L0の周波数を現在の周波数から第2目標周波数に向かって単調に変化させる。
【0057】
以下、状態パラメータが、制御量の一例であるPhase電力である場合を例に説明する。Phase電力はPhaseヒータに供給される駆動電力である。
【0058】
図7は、状態パラメータがPhase電力である場合において、Phase電力とレーザ光L0の周波数との対応関係の一例を示す図である。Phase電力はPhaseヒータに供給される駆動電力である。このような対応関係は、通常、連続的なデータであるか、または離散的なデータであっても内挿または外挿により滑らかな補完が可能である。このような対応関係のデータは、たとえば、記憶部22にテーブルデータや関数データとして記憶されている。
【0059】
設定ステップでは、制御部20は、対応関係データを記憶部22から読み出し、現在の周波数に対応する現在のPhase電力を取得し、第2目標周波数と対応関係データとに基づいて、第2目標周波数に対応する第2Phase電力を設定する。現在の周波数が第1目標周波数と等しい場合は、現在のPhase電力を第1Phase電力と記載する場合がある。
【0060】
つづいて、制御部20は、対応関係データに基づいて、現在の周波数から第2目標周波数までの間の複数の離散的な中間周波数に対応する複数の中間制御量を順次取るように制御量を制御する変更制御ステップを実行して、レーザ光L0の周波数を現在の周波数から第2目標周波数に向かって単調に変化させる。
【0061】
このような、レーザ光L0の周波数と対応関係を有する状態パラメータを用いた第2制御ステップを実行することによって、図5のような弁別カーブの周波数特性の変化が生じたとしても、図6のようなレーザ発振周波数の不連続な変化を抑制することができる。
【0062】
また、制御部20は、状態パラメータを使用する制御と使用しない制御とを、状況に応じて選択的に実行することができる。また、レーザ光L0の目標周波数を第1目標周波数から第2目標周波数に変更する場合において、弁別カーブを途中で切り替えない場合には、状態パラメータを使用する制御によって変更を実施してもよいし、状態パラメータを使用しない制御によって変更を実施してもよい。
【0063】
図8は、制御部20が、目標周波数を第1目標周波数から第2目標周波数に変更するFTFを実行する制御の一例を説明するフロー図である。図8の制御は、制御部20がフィードバック制御を実行している間に実行される。まず、ステップS101において、制御部20は、上位装置などからFTFコマンドを受信したかを判定する。FTFコマンドは、第2目標周波数に関する情報を含む。FTFコマンドを受信していないと判定した場合(S101、No)、制御は終了する。FTFコマンドを受信したと判定した場合(S101、Yes)、制御はステップS102に進む。
【0064】
ステップS102において、制御部20は、FTFの途中で弁別カーブが切り替わるかを判定する。この判定は、現在の目標周波数である第1目標周波数と、FTFコマンドから取得した第2目標周波数と、記憶部22に記憶されたレーザ光L0の周波数と選択すべきPD比との対応関係のデータとを用いて実行される。弁別カーブが切り替わらないと判定した場合(S102、No)、制御はステップS103に進み、状態パラメータを用いない制御が実行される。
【0065】
ステップS103において、制御部20は、第2目標周波数に対応する目標値(PD比の目標値)を取得する。
【0066】
ステップS104において、制御部20は、フィードバック制御を停止する。
【0067】
ステップS105において、制御部20は、DBRヒータ、RINGヒータ、Phaseヒータの駆動電力を1ステップ分増加する。このとき、制御部20は、たとえば図9に示すように、駆動電力を増加する。図9は、いずれかのヒータに供給する駆動電力(ヒータ電力)の制御の一例を示す図である。図9では、横軸はレーザ発振周波数を第2目標周波数に変更する指令を受けてからの時間である。図9に示す例では、ヒータ電力を時間に対してステップ状に変化させている。各ステップでのヒータ電力は、中間周波数でレーザ発振するために設定された駆動電力である。このようにステップ状にヒータ電力を変化させるには、たとえば、各ヒータそれぞれに供給する駆動電力値を時間に対して当該ステップ状に変化させることで実現することができる。なお、各ヒータにおけるヒータ電力とレーザ発振周波数との関係は、図9のような関係がテーブルデータとして記憶部22に記憶されており、演算部21が適宜読み出して演算に使用する。図9は或るヒータに対する一例であり、ステップ幅(増加量)などのステップ形状はヒータ間で互いに異なっていてもよい。具体的には、共振器モードと2つの反射ピークとの一致を維持したままレーザ発振周波数が変化するように各ヒータ電力が設定されている。
【0068】
なお、各ヒータ電力におけるステップ幅は均等にしてよいが、図9のように最初はステップ幅を大きくし、その後小さくすることが好ましい。これにより、第2目標周波数への変更を完了するまでの時間を短くでき、かつレーザ発振周波数が第2目標周波数を超えてしまう事態の発生を抑制できるので、単調変化の観点から好ましい。ターゲット周波数を超過しないためには、ターゲット周波数付近ではステップ幅を小さく設定する必要がある。一方で、ターゲット周波数と現在の周波数の差分が大きい場合は、ステップ幅を大きくしても超過する懸念がない。よって、ターゲット周波数に近づくほどステップ幅を小さくすることは時間短縮につながる。
【0069】
ステップS105において制御部20がDBRヒータ、RINGヒータ、Phaseヒータの駆動電力を1ステップ分増加するのに対応して、制御部20は、当該目標値に対応するDBR電力、RING電力、Phase電力をDBRヒータ、RINGヒータ、Phaseヒータへ供給する。なお、図9における各ステップの駆動電力値は、各々中間周波数に対応する値となっている。これにより、第1反射ミラー122の1つの反射ピークと、第2反射ミラー124の1つの反射ピークと、共振器モードの1つのピークとが、現在の周波数から隣接する中間周波数に移動し、レーザ発振周波数も当該中間周波数に移動する。なお、DBRヒータ、RINGヒータ、Phaseヒータの駆動電力の増加は同時に行なっても良いし、同時でなくてもよい。
【0070】
ステップS106において、制御部20は、モニタ値に基づいてレーザ光L0の周波数を取得し、取得した周波数が第2目標周波数から所定範囲内(±αGHz以内、αは所定の定数であり、例えば1)であるかを判定する。所定範囲内ではない場合(ステップS106、No)、制御はステップS105に戻り、ステップS105、S106を繰り返す。ステップS105を繰り返すと、第1反射ミラー122の1つの反射ピークと、第2反射ミラー124の1つの反射ピークと、共振器モードの1つのピークとが、隣接する中間周波数に順次移動し、レーザ発振周波数も順次移動する。一方、所定範囲内である場合(ステップS106、Yes)、制御はステップS107に進む。
【0071】
ステップS107において、制御部20は、フィードバック制御を再開する。制御部20はその後制御フローの実行を終了する。
【0072】
ここで、±αGHzは、その範囲内であればフィードバック制御を開始してもレーザ発振周波数が単調かつ安定的に変化することができる値に設定することが好ましい。
【0073】
一方、ステップS102において、制御部20が、FTFの途中で弁別カーブが切り替わると判定した場合(S102、Yes)、制御はステップS108に進み、状態パラメータを用いる制御が実行される。
【0074】
ステップS108において、制御部20は、現在のPhase電力を取得し、記憶部22に書き込む。
【0075】
ステップS109において、制御部20は、対応関係データを記憶部22から読み出し、第2目標周波数と対応関係データとに基づいて、第2目標周波数に対応する第2Phase電力を設定する。
【0076】
ステップS110において、制御部20は、フィードバック制御を停止する。
【0077】
ステップS111において、制御部20は、DBRヒータ、RINGヒータ、Phaseヒータの駆動電力を1ステップ分増加する。
【0078】
ステップS112において、制御部20は、Phase電力を取得し、取得したPhase電力が第2Phase電力から所定範囲内(±βmW以内、βは所定の定数であり、例えばPhaseヒータの駆動電力の1ステップ分以内の数値)に到達したかを判定する。所定範囲内に到達していないと判定した場合(ステップS112、No)、制御はステップS111に戻り、ステップS111、S112を繰り返す。ステップS111を繰り返すと、第1反射ミラー122の1つの反射ピークと、第2反射ミラー124の1つの反射ピークと、共振器モードの1つのピークとが、隣接する中間周波数に順次移動する。一方、所定範囲内に到達したと判定した場合(ステップS112、Yes)、制御はステップS113に進む。
【0079】
ステップS113において、制御部20は、現在のモニタ値を取得する。
【0080】
ステップS114において、制御部20は、取得したモニタ値を目標値に設定して、フィードバック制御を再開する。制御部20はその後制御フローの実行を終了する。
【0081】
ここで、±βmWは、その範囲内であればフィードバック制御を開始してもレーザ発振周波数が単調かつ安定的に変化することができる値に設定することが好ましい。
【0082】
(他の制御の第1例)
制御部20は、レーザ光L0の目標周波数を第1目標周波数から第2目標周波数に変更する場合において、弁別カーブを途中で切り替える場合、他の第1例として以下の制御ステップを行ってもよい。
【0083】
他の第1例としての制御ステップにおいては、状態パラメータは、レーザ光L0の周波数と対応関係(第2対応関係)を有する周波数パラメータである。そして、制御部20は、現在の周波数に対応する周波数パラメータを取得し、第2目標周波数と第2対応関係とに基づいて第2周波数パラメータを設定する設定ステップを行う。
【0084】
設定ステップにつづいて、制御部20は、レーザ光L0の現在の周波数に対応するモニタ値を取得し、取得したモニタ値に対して所定の値を加算または減算してフィードバック制御の目標値を生成し、目標値とモニタ値との差の絶対値が小さくなるように制御量を制御するフィードバック制御を実行する。このとき、所定の値は、現在の周波数から第2目標周波数までの間の複数の離散的な中間周波数に対応する複数の目標値を順次取るよう設定される。また、第2目標周波数が第1目標周波数よりも大きい場合に加算が行われ、第1目標周波数が第2目標周波数よりも大きい場合に減算が行われる。
【0085】
以下、状態パラメータが、周波数パラメータの一例であるPD比である場合を例に説明する。
【0086】
たとえば、レーザ光L0の現在の周波数が、第2PD比が選択される、すなわちリング共振器光フィルタ144aの弁別カーブが選択される周波数であるとし、第2目標周波数が、第1PD比が選択される、すなわちリング共振器光フィルタ143aの弁別カーブが選択される周波数であるとする。この場合、制御部20は、現在の周波数に対応する周波数パラメータとして、第2目標周波数に対して選択されるべき弁別カーブにおいて、現在の周波数に対応する第1PD比を取得する。そして、第2目標周波数と第2対応関係とに基づいて第2周波数パラメータとしての第1PD比を設定する設定ステップを行う。この場合、第2対応関係は、リング共振器光フィルタ143aの弁別カーブで表される関係である。
【0087】
設定ステップにつづいて、制御部20は、レーザ光L0の現在の周波数に対応する第1PD比のモニタ値を取得し、取得したモニタ値に対して所定の値を加算または減算してフィードバック制御の目標値を生成し、目標値とモニタ値との差の絶対値が小さくなるように制御量を制御するフィードバック制御を継続して実行する。このとき、所定の値は、第1PD比が、現在の周波数から第2目標周波数までの間の複数の離散的な中間周波数に対応する複数の中間的な目標値を順次取るように設定される。レーザ光L0の周波数を現在の周波数から第2目標周波数に向かって単調に変化させる。所定の値は、たとえば記憶部22に記憶されている。
【0088】
このような、レーザ光L0の周波数と対応関係を有する状態パラメータとして、周波数パラメータの一例であるPD比を用いた制御ステップを実行することによって、図5のような弁別カーブの周波数特性の変化が生じたとしても、図6のようなレーザ発振周波数の不連続な変化を抑制することができる。
【0089】
また、現在のPD比に対応する周波数に、第2目標周波数と第1目標周波数との差分(FTF変更分とも呼ばれる)を加算または減算した値を新たな第2目標周波数としてもよい。このようにすれば、弁別カーブのシフトなどによって現在のPD比に対応する周波数が第1目標周波数からずれていたとしても、レーザ光L0の周波数を、所望のFTF変更分だけ確実に変更させることができる。
【0090】
また、制御部20は、状態パラメータを使用する制御と使用しない制御とを、状況に応じて選択的に実行することができる。また、レーザ光L0の目標周波数を第1目標周波数から第2目標周波数に変更する場合において、弁別カーブを途中で切り替えない場合には、状態パラメータを使用する制御によって変更を実施してもよいし、状態パラメータを使用しない制御によって変更を実施してもよい。
【0091】
図10は、制御部20が、目標周波数を第1目標周波数から第2目標周波数に変更するFTFを実行する制御の他の第1例を説明するフロー図である。図10の制御は、制御部20がフィードバック制御を実行している間に実行される。まず、ステップS201において、制御部20は、上位装置などからFTFコマンドを受信したかを判定する。FTFコマンドは、第2目標周波数に関する情報を含む。FTFコマンドを受信していないと判定した場合(S201、No)、制御は終了する。FTFコマンドを受信したと判定した場合(S201、Yes)、制御はステップS202に進む。
【0092】
ステップS202において、制御部20は、第2目標周波数に応じた弁別カーブ、すなわちPD比を選択する。
【0093】
ステップS203において、制御部20は、FTFの途中で弁別カーブが切り替わるかを判定する。この判定は、現在の目標周波数である第1目標周波数と、FTFコマンドから取得した第2目標周波数と、選択された弁別カーブのデータとを用いて実行される。弁別カーブが切り替わらないと判定した場合(S203、No)、制御はステップS204に進む。
【0094】
ステップS204において、制御部20は、第2目標周波数に対応する目標値(PD比の目標値)を取得する。このとき、現在のPD比に対応する周波数にFTF変更分を加算または減算した値を新たな第2目標周波数としてもよい。
【0095】
ステップS205において、制御部20は、DBRヒータ、RINGヒータの駆動電力を1ステップ分増加する。このときの1ステップ分は、Phaseヒータの駆動電力を用いたフィードバック制御を維持したままでレーザ光L0が出力される程度の電力量とする。
【0096】
ステップS206において、制御部20は、DBRヒータ、RINGヒータの駆動電力の1ステップ分増加したときのレーザ光L0の周波数変化量に対応するPD比の変化量を取得し、当該変化量を現在のPD比のモニタ値に対して加算(または減算)して、新たな目標のPD比とする。当該変化量は所定の値の一例である。所定の値は、現在の周波数から第2目標周波数までの間の複数の離散的な中間周波数に対応する複数の目標値を順次取るよう設定される。
【0097】
ステップS207において、制御部20は、新たな目標のPD比が第2目標周波数に対応する目標のPD比に対して所定の範囲内に入っているかを判定する。所定の範囲内に到達していないと判定した場合(ステップS207、No)、制御はステップS205に戻り、ステップS205、S206、S207を繰り返す。一方、所定の範囲内に入っていると判定した場合(ステップS207、Yes)、制御部20は制御フローの実行を終了する。ここで、所定範囲は、DBRヒータ、RINGヒータの駆動電力の1ステップ分相当に設定することが好ましい。
【0098】
一方、ステップS203において、制御部20が、FTFの途中で弁別カーブが切り替わると判定した場合(S203、Yes)、制御はステップS208に進む。
【0099】
ステップS208において、制御部20は、選択した弁別カーブにて現在のPD比(モニタ値)に基づいてレーザ発振周波数を取得する。
【0100】
ステップS209において、制御部20は、第2目標周波数と選択した弁別カーブとに基づいて目標のPD比を設定する。このとき、現在のPD比に対応する周波数にFTF変更分を加算または減算した値を新たな第2目標周波数としてもよい。
【0101】
ステップS210において、制御部20は、DBRヒータ、RINGヒータの駆動電力を1ステップ分増加する。このときの1ステップ分は、Phaseヒータの駆動電力を用いたフィードバック制御を維持したままでレーザ光L0が出力される程度の電力量とする。
【0102】
ステップS211において、制御部20は、DBRヒータ、RINGヒータの駆動電力の1ステップ分増加したときのレーザ光L0の周波数変化量に対応するPD比の変化量を取得し、当該変化量を現在のPD比のモニタ値に対して加算(または減算)して、新たな目標のPD比とする。当該変化量は所定の値の一例である。所定の値は、現在の周波数から第2目標周波数までの間の複数の離散的な中間周波数に対応する複数の目標値を順次取るよう設定される。
【0103】
ステップS212において、制御部20は、新たな目標のPD比が第2目標周波数に対応する目標のPD比に対して所定の範囲内に入っているかを判定する。所定範囲内に入っていないと判定した場合(ステップS212、No)、制御はステップS210に戻り、ステップS210、S211、S212を繰り返す。一方、所定範囲内に入っていると判定した場合(ステップS212、Yes)、制御部20は制御フローの実行を終了する。
【0104】
ここで、所定範囲は、DBRヒータ、RINGヒータの駆動電力の1ステップ分相当に設定することが好ましい。
【0105】
(他の制御の第2例)
つぎに、他の第2例としての制御ステップについて説明する。第2例においては、設定ステップは、第1例と同様である。
【0106】
設定ステップにつづいて、フィードバック制御を停止し、制御部20は、記憶部22に記憶された第2対応関係に基づいて、周波数パラメータが、現在の周波数から第2目標周波数までの間の複数の離散的な中間周波数に対応する複数の中間周波数パラメータを順次取るように制御量を制御する変更制御ステップを実行して、レーザ光L0の周波数を現在の周波数から第2目標周波数に向かって単調に変化させる。
【0107】
以下、状態パラメータが、周波数パラメータの一例であるPD比である場合を例に説明する。
【0108】
図11は、制御部20が、目標周波数を第1目標周波数から第2目標周波数に変更するFTFを実行する制御の他の第2例を説明するフロー図である。図11の制御は、制御部20がフィードバック制御を実行している間に実行される。まず、ステップS301において、制御部20は、上位装置などからFTFコマンドを受信したかを判定する。FTFコマンドは、第2目標周波数に関する情報を含む。FTFコマンドを受信していないと判定した場合(S301、No)、制御は終了する。FTFコマンドを受信したと判定した場合(S301、Yes)、制御はステップS302に進む。
【0109】
ステップS302において、制御部20は、第2目標周波数に応じた弁別カーブ、すなわちPD比を選択する。
【0110】
ステップS303において、制御部20は、FTFの途中で弁別カーブが切り替わるかを判定する。この判定は、現在の目標周波数である第1目標周波数と、FTFコマンドから取得した第2目標周波数と、選択された弁別カーブのデータとを用いて実行される。弁別カーブが切り替わらないと判定した場合(S303、No)、制御はステップS304に進む。
【0111】
ステップS304において、制御部20は、第2目標周波数に対応する目標値(PD比の目標値)を取得する。このとき、現在のPD比に対応する周波数にFTF変更分を加算または減算した値を新たな第2目標周波数としてもよい。
【0112】
ステップS305において、制御部20は、フィードバック制御を停止する。
【0113】
ステップS306において、制御部20は、DBRヒータ、RINGヒータ、Phaseヒータの駆動電力を1ステップ分増加する。これにより、第1反射ミラー122の1つの反射ピークと、第2反射ミラー124の1つの反射ピークと、共振器モードの1つのピークとが、現在の周波数から隣接する中間周波数に移動し、レーザ発振周波数も当該中間周波数に移動する。
【0114】
ステップS307において、制御部20は、モニタ値に基づいてレーザ光L0の周波数を取得し、取得した周波数が第2目標周波数から所定範囲内(±αGHz以内)であるかを判定する。所定範囲内ではない場合(ステップS307、No)、制御はステップS306に戻り、ステップS306、S307を繰り返す。ステップS306を繰り返すと、第1反射ミラー122の1つの反射ピークと、第2反射ミラー124の1つの反射ピークと、共振器モードの1つのピークとが、隣接する中間周波数に順次移動し、レーザ発振周波数も順次移動する。一方、所定範囲内である場合(ステップS307、Yes)、制御はステップS308に進む。
【0115】
ステップS308において、制御部20は、フィードバック制御を再開する。制御部20はその後制御フローの実行を終了する。
【0116】
一方、ステップS303において、制御部20が、FTFの途中で弁別カーブが切り替わると判定した場合(S303、Yes)、制御はステップS309に進む。
【0117】
ステップS309において、制御部20は、選択した弁別カーブにて現在のPD比(モニタ値)に基づいてレーザ発振周波数を取得する。
【0118】
ステップS310において、制御部20は、第2目標周波数と選択した弁別カーブとに基づいて目標のPD比を設定する。このとき、現在のPD比に対応する周波数にFTF変更分を加算した値を新たな第2目標周波数としてもよい。
【0119】
ステップS311において、制御部20は、フィードバック制御を停止する。
【0120】
ステップS312において、制御部20は、DBRヒータ、RINGヒータ、Phaseヒータの駆動電力を1ステップ分変化させる。
【0121】
ステップS313において、制御部20は、モニタ値が目標のPD比から所定範囲内(±γ以内、γは所定の定数であり、例えば0.1GHz)に到達したかを判定する。所定範囲内に到達していないと判定した場合(ステップS313、No)、制御はステップS312に戻り、ステップS312、S313を繰り返す。一方、所定範囲内に到達したと判定した場合(ステップS313、Yes)、制御はステップS314に進む。
【0122】
ステップS314において、制御部20は、目標のPD比を目標値に設定して、フィードバック制御を再開する。制御部20はその後制御フローの実行を終了する。
【0123】
ここで、±γは、その範囲内であればフィードバック制御を開始してもレーザ発振周波数が単調かつ安定的に変化することができる値に設定することが好ましい。
【0124】
なお、上記実施形態では、第1比および第2比の少なくとも一つを含みかつレーザ光L0の周波数に相当する周波数パラメータとして第1PD比(第1比の一例)、第2PD比(第2比の一例)を用いているが、周波数パラメータとしては、第1比、第2比に加えて、第1比と第2比との和もしくは差、または第1比と第2比とのそれぞれに係数を乗算したものの和もしくは差などの、第1比と第2比との演算から得られる値を用いてもよい。このような技術は、たとえば本出願人による特願2020-022624に記載されている。これらの周波数パラメータを適宜組み合わせて使用することによって、弁別カーブの不感帯の影響によるレーザ光の周波数の制御精度の低下を抑制できるなどの効果が得られる。
【0125】
また、上述したように、制御部20は、レーザ光L0の目標周波数を第1目標周波数から第2目標周波数に変更する場合において、弁別カーブを途中で切り替えない場合には、状態パラメータを使用する制御によって変更を実施してもよいし、状態パラメータを使用しない制御によって変更を実施してもよい。したがって、たとえば図8のフローでステップS102~S107を削除してもよい。図10、11においても同様である。
【0126】
また、上記実施形態では、光源部である波長可変レーザ素子12はバーニア型の波長可変レーザ素子であるが、光源部は、素子温度調整にてレーザ発振周波数を可変とするレーザ素子、たとえばDFBレーザ素子でもよい。この場合、制御量は、素子温度調整に用いられる電力や電流である。また、上記実施形態では、リング共振器フィルタによる周波数モニタを行っているが、リング共振器フィルタに換えて、入力する光の周波数に対して透過率が周期的に変化する透過特性を有する光フィルタを適宜用いることができる。このような光フィルタとしては、マッハツェンダ干渉(MZI)フィルタやエタロンフィルタなどがある。
【0127】
また、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0128】
10 :レーザ部
11 :ペルチェ素子
12 :波長可変レーザ素子
13 :半導体光増幅器
14 :平面光波回路
15 :光検出部
16 :温度センサ
17 :モニタ部
20 :制御部
21 :演算部
22 :記憶部
23 :入力部
24 :出力部
25 :電力供給部
100 :レーザ装置
121 :基板
122 :第1反射ミラー
123 :利得部
124 :第2反射ミラー
125 :第1反射ミラー用ヒータ
126 :位相調整用ヒータ
127 :第2反射ミラー用ヒータ
141 :光分岐部
142、143、144:光導波路
143a、144a :リング共振器光フィルタ
C1、C2、C1a、C2a :カーブ
L0、L1、L2、L3、L4、L5 :レーザ光
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11