(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】ダイボンド材、発光装置、及び、発光装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 33/62 20100101AFI20241022BHJP
H01L 33/56 20100101ALI20241022BHJP
H01L 21/52 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
H01L33/62
H01L33/56
H01L21/52 E
(21)【出願番号】P 2021037302
(22)【出願日】2021-03-09
【審査請求日】2023-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108419
【氏名又は名称】大石 治仁
(72)【発明者】
【氏名】三浦 迪
(72)【発明者】
【氏名】宮脇 学
(72)【発明者】
【氏名】井村 俊文
【審査官】小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-176212(JP,A)
【文献】国際公開第2020/067454(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/62
H01L 33/56
H01L 21/52
H01L 23/28-23/29
H01L 21/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)成分、(B)成分、及び溶媒を含有するダイボンド材であって、
(B)成分の含有量が、(A)成分100質量部に対して0質量部超、0.6質量部以下であり、
自動硬化時間測定装置にて、100℃に加熱されたステンレス板上に0.20mLのサンプルを投入して、撹拌翼の自転回転数が300rpm、撹拌翼の公転回転数が120rpm、ギャップ(前記ステンレス板と撹拌翼間の距離)が0.2mmの条件にて撹拌翼で撹拌したとき、撹拌開始から撹拌トルクが0.049N・cmとなるまでの時間が200~2500秒であるダイボンド材。
(A)成分:下記式(a-1)で示される繰り返し単位を有する硬化性ポリシルセスキオキサン化合物であって、下記要件A1、及び要件A2を満たすことを特徴とする硬化性ポリシルセスキオキサン化合物
【化1】
〔R
1は、組成式:C
mH
(2m-n+1)F
nで表されるフルオロアルキル基を表す。mは1~10の整数、nは2以上、(2m+1)以下の整数を表す。Dは、R
1とSiとを結合する連結基(ただし、アルキレン基を除く)又は単結合を表す。〕
〔要件A1〕
硬化性ポリシルセスキオキサン化合物の
29Si-NMRを測定したときに、-62ppm以上-52ppm未満の領域〔領域(2)〕に1又は2以上のピークが観測され、-52ppm以上-45ppm未満の領域〔領域(1)〕と-73ppm以上-62ppm未満の領域〔領域(3)〕の少なくとも一方の領域に1又は2以上のピークが観測され、かつ、下記式で導かれるZ2が、20~40%である。
【数1】
P1:領域(1)における積分値
P2:領域(2)における積分値
P3:領域(3)における積分値
〔要件A2〕
硬化性ポリシルセスキオキサン化合物の質量平均分子量(Mw)が、3,500~11,000である。
(B)成分:熱酸発生剤
【請求項2】
前記硬化性ポリシルセスキオキサン化合物が、式(a-1)で示される繰り返し単位の割合が、全繰り返し単位に対して25mol%以上のものである、請求項1に記載のダイボンド材。
【請求項3】
前記硬化性ポリシルセスキオキサン化合物が、さらに、下記式(a-2)で示される繰り返し単位を有するものである、請求項1又は2に記載のダイボンド材。
【化2】
〔R
2は、無置換の炭素数1~10のアルキル基、又は、置換基を有する、若しくは無置換の炭素数6~12のアリール基を表す。〕
【請求項4】
前記硬化性ポリシルセスキオキサン化合物が、式(a-2)で示される繰り返し単位の割合が、全繰り返し単位に対して0mol%超、75mol%以下のものである、請求項3に記載のダイボンド材。
【請求項5】
前記硬化性ポリシルセスキオキサン化合物の
29Si-NMRを測定したときに、領域(3)に1又は2以上のピークが観測され、かつ、下記式で導かれるZ3が、60~80%である、請求項1~4のいずれか一項に記載のダイボンド材。
【数2】
【請求項6】
(A)成分の含有量が、ダイボンド材の固形分中40質量%以上、100質量%未満である、請求項1~5のいずれか一項に記載のダイボンド材。
【請求項7】
(B)成分が、オニウム塩系熱酸発生剤である、請求項1~6のいずれか一項に記載のダイボンド材。
【請求項8】
(B)成分が、下記要件B1を満たすものである、請求項1~7のいずれか一項に記載のダイボンド材。
〔要件B1〕
(B)成分について、温度範囲が30~300℃、昇温速度が10℃/分の条件で示差走査熱量測定を行って得られる最大吸熱ピークのピーク温度(酸発生温度)が、80~180℃である。
【請求項9】
さらに、下記(C)成分を含有する、請求項1~8のいずれか一項に記載のダイボンド材。
(C)成分:シランカップリング剤
【請求項10】
一対のリード電極と、前記一対のリード電極と一体に成形された成形体と、を備え、かつ、凹部を有する素子収容器であって、前記凹部の底が、前記一対のリード電極で構成されている素子収容器と、
前記凹部の底を構成する前記一対のリード電極の少なくとも一方の上に、接着部材を介して固定された発光素子と、
を備え、
前記接着部材が、請求項1~9のいずれか一項に記載のダイボンド材の硬化物である、発光装置。
【請求項11】
前記発光素子を固定した前記接着部材は、25℃において0.3mm/secで前記発光素子を側面から押して、前記発光素子と前記接着部材との間で破断が生じたときに測定されるダイシェア強度が650gf以上のものである請求項10に記載の発光装置。
【請求項12】
前記発光素子を固定した前記接着部材は、150℃において0.3mm/secで前記発光素子を側面から押して、前記発光素子と前記接着部材との間で破断が生じたときに測定されるダイシェア強度が300gf以上のものである請求項10に記載の発光装置。
【請求項13】
前記素子収容器は、下記式で導かれる反射率維持率(α)が99.8%以上のものである請求項10~12のいずれか一項に記載の発光装置。
【数3】
(R
iは、波長450nmにおける、室温(25℃)、未加熱時の反射率測定値であり、R
iiは、100℃で100分加熱後に室温(25℃)まで冷却した後の波長450nmにおける反射率測定値である。)
【請求項14】
前記発光素子の発光ピーク波長が、445nm以上465nm以下である、請求項10~13のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項15】
前記発光素子が、窒化物半導体(In
xAl
yGa
1-x-yN、0≦x、0≦y、x+y≦1)を含むものである、請求項10~14のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項16】
一対のリード電極と、前記一対のリード電極と一体に成形された成形体と、を備え、かつ、凹部を有する素子収容器であって、前記凹部の底が、前記一対のリード電極で構成されている素子収容器と、
前記凹部の底を構成する前記一対のリード電極の少なくとも一方の上に、接着部材を介して固定された発光素子と、
を備える発光装置の製造方法であって、
前記発光素子を、請求項1~9のいずれか一項に記載の前記ダイボンド材を用いて、前記一対のリード電極の少なくとも一方に固定する発光素子実装工程を含む、発光装置の製造方法。
【請求項17】
前記発光素子実装工程は、
前記ダイボンド材を前記一対のリード電極の少なくとも一方に塗布し、
前記ダイボンド材上に、前記発光素子を配置し、
前記ダイボンド材を95℃以上105℃以下の温度で硬化させるものである、請求項16に記載の発光装置の製造方法。
【請求項18】
前記発光素子の発光ピーク波長が、445nm以上465nm以下である、請求項16又は17に記載の発光装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子を所定の位置に固定する際に好適に用いられるダイボンド材、このダイボンド材由来の接着部材を有する発光装置、及びこの発光装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、硬化性組成物は用途に応じて様々な改良がなされ、光学部品や成形体の原料、接着剤、コーティング剤等として産業上広く利用されてきている。
特に、シリコーン系化合物含有硬化性組成物は、発光素子の封止材料や発光素子用ダイボンド材等として注目されてきている。
例えば、特許文献1~4には、発光装置の製造に好適に用いられる硬化性組成物として、ポリシルセスキオキサン化合物を含有する硬化性組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-359933号公報
【文献】特開2005-263869号公報
【文献】特開2006-328231号公報
【文献】WO2017/110948号(US2018/0355111 A1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、より高性能なダイボンド材や発光装置、及びこの発光装置の製造方法を提供することを目的になされたものである。
すなわち、本発明は、発光素子を所定の位置に固定する際に好適に用いられるダイボンド材、このダイボンド材由来の接着部材を有する発光装置、及びこの発光装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、硬化性ポリシルセスキオキサン化合物を含有するダイボンド材について鋭意検討を重ねた。
その結果、特定の硬化性ポリシルセスキオキサン化合物、熱酸発生剤、及び溶媒を含有するダイボンド材は、発光素子の固定用材料として適することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
かくして本発明によれば、下記〔1〕~〔9〕のダイボンド材、〔10〕~〔12〕の発光装置、及び〔13〕~〔15〕の発光装置の製造方法が提供される。
【0007】
〔1〕下記(A)成分、(B)成分、及び溶媒を含有するダイボンド材であって、(B)成分の含有量が、(A)成分100質量部に対して0質量部超、0.6質量部以下であり、自動硬化時間測定装置にて、100℃に加熱されたステンレス板上に0.20mLのサンプルを投入して、撹拌翼の自転回転数が300rpm、撹拌翼の公転回転数が120rpm、ギャップ(前記ステンレス板と撹拌翼間の距離)が0.2mmの条件にて撹拌翼で撹拌したとき、撹拌開始から撹拌トルクが0.049N・cmとなるまでの時間が200~2500秒であるダイボンド材。
(A)成分:下記式(a-1)で示される繰り返し単位を有する硬化性ポリシルセスキオキサン化合物であって、下記要件A1、及び要件A2を満たすことを特徴とする硬化性ポリシルセスキオキサン化合物
【0008】
【0009】
〔R1は、組成式:CmH(2m-n+1)Fnで表されるフルオロアルキル基を表す。mは1~10の整数、nは2以上、(2m+1)以下の整数を表す。Dは、R1とSiとを結合する連結基(ただし、アルキレン基を除く)又は単結合を表す。〕
〔要件A1〕
硬化性ポリシルセスキオキサン化合物の29Si-NMRを測定したときに、-62ppm以上-52ppm未満の領域〔領域(2)〕に1又は2以上のピークが観測され、-52ppm以上-45ppm未満の領域〔領域(1)〕と-73ppm以上-62ppm未満の領域〔領域(3)〕の少なくとも一方の領域に1又は2以上のピークが観測され、かつ、下記式で導かれるZ2が、20~40%である。
【0010】
【0011】
P1:領域(1)における積分値
P2:領域(2)における積分値
P3:領域(3)における積分値
〔要件A2〕
硬化性ポリシルセスキオキサン化合物の質量平均分子量(Mw)が、3,500~11,000である。
(B)成分:熱酸発生剤
〔2〕前記硬化性ポリシルセスキオキサン化合物が、式(a-1)で示される繰り返し単位の割合が、全繰り返し単位に対して25mol%以上のものである、〔1〕に記載のダイボンド材。
〔3〕前記硬化性ポリシルセスキオキサン化合物が、さらに、下記式(a-2)で示される繰り返し単位を有するものである、〔1〕又は〔2〕に記載のダイボンド材。
【0012】
【0013】
〔R2は、無置換の炭素数1~10のアルキル基、又は、置換基を有する、若しくは無置換の炭素数6~12のアリール基を表す。〕
〔4〕前記硬化性ポリシルセスキオキサン化合物が、式(a-2)で示される繰り返し単位の割合が、全繰り返し単位に対して0mol%超、75mol%以下のものである、〔3〕に記載のダイボンド材。
〔5〕前記硬化性ポリシルセスキオキサン化合物の29Si-NMRを測定したときに、領域(3)に1又は2以上のピークが観測され、かつ、下記式で導かれるZ3が、60~80%である、〔1〕~〔4〕のいずれか一に記載のダイボンド材。
【0014】
【0015】
〔6〕(A)成分の含有量が、ダイボンド材の固形分中40質量%以上、100質量%未満である、〔1〕~〔5〕のいずれか一に記載のダイボンド材。
〔7〕(B)成分が、オニウム塩系熱酸発生剤である、〔1〕~〔6〕のいずれか一に記載のダイボンド材。
〔8〕(B)成分が、下記要件B1を満たすものである、〔1〕~〔7〕のいずれか一に記載のダイボンド材。
〔要件B1〕
(B)成分について、温度範囲が30~300℃、昇温速度が10℃/分の条件で示差走査熱量測定を行って得られる最大吸熱ピークのピーク温度(酸発生温度)が、80~180℃である。
〔9〕さらに、下記(C)成分を含有する、〔1〕~〔8〕のいずれか一に記載のダイボンド材。
(C)成分:シランカップリング剤
〔10〕一対のリード電極と、前記一対のリード電極と一体に成形された成形体と、を備え、かつ、凹部を有する素子収容器であって、前記凹部の底が、前記一対のリード電極で構成されている素子収容器と、前記凹部の底を構成する前記一対のリード電極の少なくとも一方の上に、接着部材を介して固定された発光素子と、を備え、前記接着部材が、〔1〕~〔9〕のいずれか一に記載のダイボンド材の硬化物である、発光装置。
〔11〕前記発光素子を固定した前記接着部材は、25℃において0.3mm/secで前記発光素子を側面から押して、前記発光素子と前記接着部材との間で破断が生じたときに測定されるダイシェア強度が650gf以上のものである〔10〕に記載の発光装置。
〔12〕前記発光素子を固定した前記接着部材は、150℃において0.3mm/secで前記発光素子を側面から押して、前記発光素子と前記接着部材との間で破断が生じたときに測定されるダイシェア強度が300gf以上のものである〔10〕に記載の発光装置。
〔13〕前記素子収容器は、下記式で導かれる反射率維持率(α)が99.8%以上のものである請求項〔10〕~〔12〕のいずれか一に記載の発光装置。
【0016】
【0017】
(Riは、波長450nmにおける、室温(25℃)、未加熱時の反射率測定値であり、Riiは、100℃で100分加熱後に室温(25℃)まで冷却した後の波長450nmにおける反射率測定値である。)
〔14〕前記発光素子の発光ピーク波長が、445nm以上465nm以下である、〔10〕~〔13〕のいずれか一に記載の発光装置。
〔15〕前記発光素子が、窒化物半導体(InxAlyGa1-x-yN、0≦x、0≦y、x+y≦1)を含むものである、〔10〕~〔14〕のいずれか一に記載の発光装置。
〔16〕一対のリード電極と、前記一対のリード電極と一体に成形された成形体と、を備え、かつ、凹部を有する素子収容器であって、前記凹部の底が、前記一対のリード電極で構成されている素子収容器と、前記凹部の底を構成する前記一対のリード電極の少なくとも一方の上に、接着部材を介して固定された発光素子と、を備える発光装置の製造方法であって、前記発光素子を、〔1〕~〔9〕のいずれか一に記載の前記ダイボンド材を用いて、前記一対のリード電極の少なくとも一方に固定する発光素子実装工程を含む、発光装置の製造方法。
〔17〕前記発光素子実装工程は、前記ダイボンド材を前記一対のリード電極の少なくとも一方に塗布し、前記ダイボンド材上に、前記発光素子を配置し、前記ダイボンド材を95℃以上105℃以下の温度で硬化させるものである、〔16〕に記載の発光装置の製造方法。
〔18〕前記発光素子の発光ピーク波長が、445nm以上465nm以下である、〔16〕又は〔17〕に記載の発光装置の製造方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、発光素子を所定の位置に固定する際に好適に用いられるダイボンド材、このダイボンド材由来の接着部材を有する発光装置、及びこの発光装置の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る発光装置の概略正面図である。
【
図2】本発明の一実施の形態に係る発光装置であって、
図1のA-A断面における概略断面図である。
【
図3】本発明の一実施の形態に係る発光装置であって、
図1のB-B断面における概略断面図である。
【
図4】本発明の一実施の形態に係る発光装置であって、
図1の概略下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を、1)ダイボンド材、2)発光装置、及び、3)発光装置の製造方法、に項分けして詳細に説明する。
【0021】
1)ダイボンド材
本発明のダイボンド材は、下記(A)成分、(B)成分、及び溶媒を含有するダイボンド材であって、(B)成分の含有量が、(A)成分100質量部に対して0質量部超、0.6質量部以下であり、所定の硬化性を有するものである。
(A)成分:上記式(a-1)で示される繰り返し単位を有する硬化性ポリシルセスキオキサン化合物であって、上記要件A1、及び要件A2を満たすことを特徴とする硬化性ポリシルセスキオキサン化合物〔硬化性ポリシルセスキオキサン化合物(A)〕
(B)成分:熱酸発生剤
本発明において、「硬化性ポリシルセスキオキサン化合物」とは、加熱等の所定の条件を満たすことにより、単独で硬化物に変化するポリシルセスキオキサン化合物、又は、硬化性組成物(ダイボンド材)において硬化性成分として機能するポリシルセスキオキサン化合物をいう。
【0022】
〔(A)成分〕
本発明のダイボンド材を構成する(A)成分は、下記式(a-1)で示される繰り返し単位を有する硬化性ポリシルセスキオキサン化合物であって、上記要件A1、及び要件A2を満たすことを特徴とする硬化性ポリシルセスキオキサン化合物である。
【0023】
【0024】
〔R1は、組成式:CmH(2m-n+1)Fnで表されるフルオロアルキル基を表す。mは1~10の整数、nは2以上、(2m+1)以下の整数を表す。Dは、R1とSiとを結合する連結基(ただし、アルキレン基を除く)又は単結合を表す。〕
【0025】
式(a-1)中、R1は、組成式:CmH(2m-n+1)Fnで表されるフルオロアルキル基を表す。mは1~10の整数、nは2以上、(2m+1)以下の整数を表す。mは、好ましくは1~5の整数、より好ましくは1~3の整数である。
R1を有する硬化性ポリシルセスキオキサン化合物を用いることで、屈折率が低いダイボンド材を得ることができる。
【0026】
組成式:CmH(2m-n+1)Fnで表されるフルオロアルキル基としては、CF3、CF3CF2、CF3(CF2)2、CF3(CF2)3、CF3(CF2)4、CF3(CF2)5、CF3(CF2)6、CF3(CF2)7、CF3(CF2)8、CF3(CF2)9等のパーフルオロアルキル基;CF3CH2CH2、CF3(CF2)3CH2CH2、CF3(CF2)5CH2CH2、CF3(CF2)7CH2CH2等のハイドロフルオロアルキル基;が挙げられる。
【0027】
式(a-1)中、Dは、R1とSiとを結合する連結基(ただし、アルキレン基を除く)又は単結合を表す。
Dの連結基としては、1,4-フェニレン基、1,3-フェニレン基、1,2-フェニレン基、1,5-ナフチレン基等の炭素数が6~20のアリーレン基が挙げられる。
【0028】
硬化性ポリシルセスキオキサン化合物(A)は、1種の(R1-D)を有するもの(単独重合体)であっても、2種以上の(R1-D)を有するもの(共重合体)であってもよい。
硬化性ポリシルセスキオキサン化合物(A)が共重合体である場合、硬化性ポリシルセスキオキサン化合物(A)は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体、交互共重合体等のいずれであってもよいが、製造容易性等の観点からは、ランダム共重合体が好ましい。
また、硬化性ポリシルセスキオキサン化合物(A)の構造は、ラダー型構造、ダブルデッカー型構造、籠型構造、部分開裂籠型構造、環状型構造、ランダム型構造のいずれの構造であってもよい。
【0029】
硬化性ポリシルセスキオキサン化合物(A)に含まれる式(a-1)で示される繰り返し単位の割合は、全繰り返し単位に対して好ましくは25mol%以上、より好ましくは25~90mol%、さらに好ましくは25~85mol%である。
式(a-1)で示される繰り返し単位の割合が、全繰り返し単位に対して25mol%以上の硬化性ポリシルセスキオキサン化合物(A)を用いることで、屈折率がより低いダイボンド材を得ることができる。
【0030】
硬化性ポリシルセスキオキサン化合物(A)は、さらに、下記式(a-2)で示される繰り返し単位を有するもの(共重合体)であってもよい。
【0031】
【0032】
式(a-2)中、R2は、無置換の炭素数1~10のアルキル基、又は、置換基を有する、若しくは無置換の炭素数6~12のアリール基を表す。
【0033】
R2の無置換の炭素数1~10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基等が挙げられる。
【0034】
R2の無置換の炭素数6~12のアリール基としては、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等が挙げられる。
R2の置換基を有する炭素数6~12のアリール基の置換基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基等のアルキル基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;が挙げられる。
【0035】
これらの中でも、R2としては、接着強度がより高く、耐熱性により優れる硬化物が得られ易いことから、無置換の炭素数1~10のアルキル基が好ましく、無置換の炭素数1~6のアルキル基がより好ましく、無置換の炭素数1~3のアルキル基が特に好ましい。
【0036】
硬化性ポリシルセスキオキサン化合物(A)が式(a-2)で示される繰り返し単位を有するものである場合、硬化性ポリシルセスキオキサン化合物(A)は、1種のR2を有するものであっても、2種以上のR2を有するものであってもよい。
【0037】
硬化性ポリシルセスキオキサン化合物(A)が式(a-2)で示される繰り返し単位を有するものである場合、その割合は、全繰り返し単位に対して好ましくは0mol超、75mol%以下、より好ましくは10~75mol%、さらに好ましくは15~75mol%である。
式(a-2)で示される繰り返し単位の割合が上記範囲内の硬化性ポリシルセスキオキサン化合物(A)を用いることで、接着強度がより高く、耐熱性により優れる硬化物が得られ易くなる。
【0038】
硬化性ポリシルセスキオキサン化合物(A)中の、式(a-1)や式(a-2)で示される繰り返し単位の割合は、例えば、硬化性ポリシルセスキオキサン化合物(A)の1H-NMRを測定することにより求めることができる。
【0039】
硬化性ポリシルセスキオキサン化合物(A)は、アセトン等のケトン系溶媒;ベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒;ジメチルスルホキシド等の含硫黄系溶媒;テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;酢酸エチル等のエステル系溶媒;クロロホルム等の含ハロゲン系溶媒;及びこれらの2種以上からなる混合溶媒;等の各種有機溶媒に可溶であるため、これらの溶媒を用いて、硬化性ポリシルセスキオキサン化合物(A)の溶液状態での1H-NMRを測定することができる。
【0040】
式(a-1)で示される繰り返し単位や、式(a-2)で示される繰り返し単位は、下記式(a-3)で示されるものである。
【0041】
【0042】
〔Gは、(R1-D)又はR2を表す。R1、D、R2は、それぞれ上記と同じ意味を表す。O1/2とは、酸素原子が隣の繰り返し単位と共有されていることを表す。〕
【0043】
式(a-3)で示されるように、硬化性ポリシルセスキオキサン化合物(A)は、一般にTサイトと総称される、ケイ素原子に酸素原子が3つ結合し、それ以外の基(Gで表される基)が1つ結合してなる部分構造を有する。
硬化性ポリシルセスキオキサン化合物(A)に含まれるTサイトとしては、下記式(a-4)~(a-6)で示されるものが挙げられる。
【0044】
【0045】
式(a-4)、(a-5)及び(a-6)中、Gは、上記と同じ意味を表す。R3は、水素原子又は炭素数1~10のアルキル基を表す。R3の炭素数1~10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基等が挙げられる。複数のR3同士は、すべて同一であっても相異なっていてもよい。また、上記式(a-4)~(a-6)中、*には、ケイ素原子が結合している。
【0046】
式(a-4)及び式(a-5)で示されるTサイトは、重縮合反応に寄与し得る基(R3-O)を含む。したがって、これらのTサイトを多く含むポリシルセスキオキサン化合物は反応性に優れる。また、このようなポリシルセスキオキサン化合物を含有するダイボンド材は硬化性に優れる。
一方、式(a-5)及び式(a-6)で示されるTサイトは、2以上のケイ素原子(隣のTサイト)と結合している。したがって、これらのTサイトを多く含むポリシルセスキオキサン化合物は、大きな分子量を有する傾向がある。
【0047】
したがって、式(a-5)で示されるTサイトを多く含むポリシルセスキオキサン化合物は、比較的大きな分子量を有し、かつ、十分な反応性を有する。
以下に説明するように、本発明に用いる硬化性ポリシルセスキオキサン化合物(A)は、これらの特性を有するものである。
【0048】
まず、硬化性ポリシルセスキオキサン化合物(A)は、以下の要件A1を満たす。
〔要件A1〕
硬化性ポリシルセスキオキサン化合物の29Si-NMRを測定したときに、-62ppm以上-52ppm未満の領域〔領域(2)〕に1又は2以上のピークが観測され、-52ppm以上-45ppm未満の領域〔領域(1)〕と-73ppm以上-62ppm未満の領域〔領域(3)〕の少なくとも一方の領域に1又は2以上のピークが観測され、かつ、下記式で導かれるZ2が、20~40%である。
なお、「領域(1)に観測されるピーク」とは、ピークトップが、領域(1)の範囲にあることをいう。「領域(2)に観測されるピーク」、「領域(3)に観測されるピーク」についても同様である。
【0049】
【0050】
P1:領域(1)における積分値
P2:領域(2)における積分値
P3:領域(3)における積分値
【0051】
本明細書において、「領域(1)における積分値」、「領域(2)における積分値」、「領域(3)における積分値」とは、それぞれ、-52ppm~-45ppm、-62ppm~-52ppm、-73ppm~-62ppmを積分範囲として計算して得られた値をいう。
【0052】
領域(1)、領域(2)、領域(3)に観測されるピークは、それぞれ、式(a-4)、式(a-5)、式(a-6)で示されるTサイト中のケイ素原子に由来するものである。
【0053】
したがって、要件A1を満たす硬化性ポリシルセスキオキサン化合物は、式(a-5)で示されるTサイトを、Tサイト全体に対して20~40%含むものである。
この硬化性ポリシルセスキオキサン化合物は、上記のように、比較的大きな分子量を有し、かつ、十分な反応性を有するものであり、ダイボンド材の硬化性成分として有用である。
【0054】
要件A1中、Z2の値は、好ましくは24~36%、より好ましくは27~32%である。Z2が小さ過ぎる硬化性ポリシルセスキオキサン化合物は、反応性が十分でなく、Z2が大き過ぎるとダイボンド材の貯蔵安定性が低下する。
【0055】
硬化性ポリシルセスキオキサン化合物(A)は、29Si-NMRを測定したときに、領域(3)に1又は2以上のピークが観測され、かつ、下記式で導かれるZ3が、60~80%であることが好ましい。
【0056】
【0057】
Z3が60~80%である硬化性ポリシルセスキオキサン化合物(A)は、式(a-6)で示されるTサイトを、Tサイト全体に対して60~80%含むものである。
Z3の値が60~80%の範囲内の硬化性ポリシルセスキオキサン化合物(A)は、分子量と反応性のバランスにより優れるものである。
この効果がより得られ易いことから、Z3の値は、64~76%がより好ましく、68~73%がさらに好ましい。
【0058】
Z2やZ3の値は、例えば、実施例に記載の条件で29Si-NMRを測定し、P1~P3を得、上記式に従って算出することができる。
【0059】
硬化性ポリシルセスキオキサン化合物(A)は、上記要件A2を満たすものである。
すなわち、硬化性ポリシルセスキオキサン化合物(A)の質量平均分子量(Mw)は、3,500~11,000であり、好ましくは4,000~8,000、より好ましくは5,000~7,000である。
【0060】
上記のように、要件A1を満たす硬化性ポリシルセスキオキサン化合物は、比較的大きな分子量を有する傾向がある。要件A2は、その分子量の範囲を明確にするものである。
質量平均分子量(Mw)が上記範囲内にある硬化性ポリシルセスキオキサン化合物(A)を硬化性成分として用いることで、接着強度が高く、耐熱性に優れる硬化物を与えるダイボンド材を得ることができる。
【0061】
硬化性ポリシルセスキオキサン化合物(A)の分子量分布(Mw/Mn)は、特に制限されないが、通常1.0~10.0、好ましくは1.1~6.0の範囲である。分子量分布(Mw/Mn)が上記範囲内にある硬化性ポリシルセスキオキサン化合物(A)を硬化性成分として用いることで、接着性及び耐熱性により優れる硬化物を与えるダイボンド材を得ることができる。
質量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、例えば、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレン換算値として求めることができる。
【0062】
硬化性ポリシルセスキオキサン化合物(A)は、例えば、下記式(a-7)で示される化合物(以下、「シラン化合物(1)」ということがある。)、又は、シラン化合物(1)及び下記式(a-8)で示される化合物(以下、「シラン化合物(2)」ということがある。)を、重縮合触媒の存在下に重縮合させることにより製造することができる。
【0063】
【0064】
式(a-7)、(a-8)中、R1、R2、Dは、上記と同じ意味を表す。R4、R5は、それぞれ独立に炭素数1~10のアルキル基を表し、X1、X2は、それぞれ独立にハロゲン原子を表し、p、qは、それぞれ独立に0~3の整数を表す。複数のR4、R5、及び複数のX1、X2は、それぞれ、互いに同一であっても、相異なっていてもよい。
【0065】
R4、R5の炭素数1~10のアルキル基としては、R2の炭素数1~10のアルキル基として示したものと同様のものが挙げられる。
X1、X2のハロゲン原子としては、塩素原子、及び臭素原子等が挙げられる。
【0066】
シラン化合物(1)としては、CF3Si(OCH3)3、CF3CF2Si(OCH3)3、CF3CF2CF2Si(OCH3)3、CF3CF2CF2CF2Si(OCH3)3、CF3CH2CH2Si(OCH3)3、CF3CF2CF2CF2CH2CH2Si(OCH3)3、CF3CF2CF2CF2CF2CF2CH2CH2Si(OCH3)3、CF3CF2CF2CF2CF2CF2CF2CF2CH2CH2Si(OCH3)3、CF3(C6H4)Si(OCH3)3(4-(トリフルオロメチル)フェニルトリメトキシシラン)、CF3Si(OCH2CH3)3、CF3CF2Si(OCH2CH3)3、CF3CF2CF2Si(OCH2CH3)3、CF3CF2CF2CF2Si(OCH2CH3)3、CF3CH2CH2Si(OCH2CH3)3、CF3CF2CF2CF2CH2CH2Si(OCH2CH3)3、CF3CF2CF2CF2CF2CF2CH2CH2Si(OCH2CH3)3、CF3CF2CF2CF2CF2CF2CF2CF2CH2CH2Si(OCH2CH3)3、CF3(C6H4)Si(OCH2CH3)3(4-(トリフルオロメチル)フェニルトリエトキシシラン)等のフルオロアルキルトリアルコキシシラン化合物類;
CF3SiCl(OCH3)2、CF3CF2SiCl(OCH3)2、CF3CF2CF2SiCl(OCH3)2、CF3SiBr(OCH3)2、CF3CF2SiBr(OCH3)2、CF3CF2CF2SiBr(OCH3)2、
CF3CF2CF2CF2SiCl(OCH3)2、CF3CH2CH2SiCl(OCH3)2、CF3CF2CF2CF2CH2CH2SiCl(OCH3)2、CF3CF2CF2CF2CF2CF2CH2CH2SiCl(OCH3)2、CF3CF2CF2CF2CF2CF2CF2CF2CH2CH2SiCl(OCH3)2、CF3(C6H4)SiCl(OCH3)2(4-(トリフルオロメチル)フェニルクロロジメトキシシラン)、CF3SiCl(OCH2CH3)2、CF3CF2SiCl(OCH2CH3)2、CF3CF2CF2SiCl(OCH2CH3)2、CF3CF2CF2CF2SiCl(OCH2CH3)2、CF3CH2CH2SiCl(OCH2CH3)2、CF3CF2CF2CF2CH2CH2SiCl(OCH2CH3)2、CF3CF2CF2CF2CF2CF2CH2CH2SiCl(OCH2CH3)2、CF3CF2CF2CF2CF2CF2CF2CF2CH2CH2SiCl(OCH2CH3)2、CF3(C6H4)SiCl(OCH2CH3)2(4-(トリフルオロメチル)フェニルクロロジエトキシシラン)等のフルオロアルキルハロゲノジアルコキシシラン化合物類;
CF3SiCl2(OCH3)、CF3CF2SiCl2(OCH3)、CF3CF2CF2SiCl2(OCH3)、CF3CF2CF2CF2SiCl2(OCH3)、CF3CH2CH2SiCl2(OCH3)、CF3CF2CF2CF2CH2CH2SiCl2(OCH3)、CF3CF2CF2CF2CF2CF2CH2CH2SiCl2(OCH3)、CF3CF2CF2CF2CF2CF2CF2CF2CH2CH2SiCl2(OCH3)、CF3(C6H4)SiCl2(OCH3)(4-(トリフルオロメチル)フェニルジクロロメトキシシラン)、CF3SiCl2(OCH2CH3)、CF3CF2SiCl2(OCH2CH3)、CF3CF2CF2SiCl2(OCH2CH3)、CF3CF2CF2CF2SiCl2(OCH2CH3)、CF3CH2CH2SiCl2(OCH2CH3)、CF3CF2CF2CF2CH2CH2SiCl2(OCH2CH3)、CF3CF2CF2CF2CF2CF2CH2CH2SiCl2(OCH2CH3)2、CF3CF2CF2CF2CF2CF2CF2CF2CH2CH2SiCl2(OCH2CH3)、CF3(C6H4)SiCl2(OCH2CH3)(4-(トリフルオロメチル)フェニルジクロロエトキシシラン)等のフルオロアルキルジハロゲノアルコキシシラン化合物類;
CF3SiCl3、CF3CF2SiCl3、CF3SiBr3、CF3CF2SiBr3、CF3CF2CF2SiCl3、CF3CF2CF2CF2SiCl3、CF3CH2CH2SiCl3、CF3CF2CF2CF2CH2CH2SiCl3、CF3CF2CF2CF2CF2CF2CH2CH2SiCl3、CF3CF2CF2CF2CF2CF2CF2CF2CH2CH2SiCl3、CF3(C6H4)SiCl3(4-トリフルオロメチルフェニルトリクロロシラン)等のフルオロアルキルトリハロゲノシラン化合物類;が挙げられる。
シラン化合物(1)は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、シラン化合物(1)としては、フルオロアルキルトリアルコキシシラン化合物類に含まれるものが好ましい。
【0067】
シラン化合物(2)としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、n-プロピルトリプロポキシシラン、n-プロピルトリブトキシシラン、n-ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、n-ペンチルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリメトキシシラン、イソオクチルトリエトキシシラン等のアルキルトリアルコキシシラン化合物類;
【0068】
メチルクロロジメトキシシラン、メチルクロロジエトキシシラン、メチルジクロロメトキシシラン、メチルブロモジメトキシシラン、エチルクロロジメトキシシラン、エチルクロロジエトキシシラン、エチルジクロロメトキシシラン、エチルブロモジメトキシシラン、n-プロピルクロロジメトキシシラン、n-プロピルジクロロメトキシシラン、n-ブチルクロロジメトキシシラン、n-ブチルジクロロメトキシシラン等のアルキルハロゲノアルコキシシラン化合物類;
【0069】
メチルトリクロロシラン、メチルトリブロモシラン、エチルトリクロロシラン、エチルトリブロモシラン、n-プロピルトリクロロシラン、n-プロピルトリブロモシラン、n-ブチルトリクロロシラン、イソブチルトリクロロシラン、n-ペンチルトリクロロシラン、n-ヘキシルトリクロロシラン、イソオクチルトリクロロシラン等のアルキルトリハロゲノシラン化合物類;等が挙げられる。
シラン化合物(2)は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、シラン化合物(2)としては、アルキルトリアルコキシシラン化合物類に含まれるものが好ましい。
【0070】
上記シラン化合物を重縮合させる方法は特に限定されず、公知の方法を利用することができる。
特に、要件A1及び要件A2を満たす硬化性ポリシルセスキオキサン化合物は、比較的穏やかな条件で、時間をかけて重縮合反応を行うことで得られやすい。
具体的には、溶媒中、又は無溶媒で、適量の酸触媒を用いて、所定温度でシラン化合物の重縮合反応を行って製造中間体を含む反応液を得た後、塩基を加えて反応液を中和し、さらに重縮合反応を行うことで、硬化性ポリシルセスキオキサン化合物(A)を製造することができる。
【0071】
溶媒としては、水;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、s-ブチルアルコール、t-ブチルアルコール等のアルコール類;等が挙げられる。これらの溶媒は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
溶媒を使用する場合、その使用量は、シラン化合物の総mol量1mol当たり、通常0.001~10.000リットル、好ましくは0.010~0.9リットルである。
【0072】
酸触媒としては、リン酸、塩酸、ホウ酸、硫酸、硝酸等の無機酸;クエン酸、酢酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等の有機酸;等が挙げられる。これらの中でも、リン酸、塩酸、ホウ酸、硫酸、クエン酸、酢酸、及びメタンスルホン酸から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
酸触媒の使用量は、シラン化合物の総mol量に対して、通常0.01~2.00mol%、好ましくは0.05~1.00mol%、より好ましくは0.10~0.30mol%の範囲である。
【0073】
酸触媒存在下での反応の反応温度は、通常20~90℃、好ましくは25~80℃である。
酸触媒存在下での反応の反応時間は、通常1~48時間、好ましくは3~24時間である。
【0074】
酸触媒存在下の反応により得られる製造中間体の質量平均分子量(Mw)は、通常800~5,000、好ましくは1,200~4,000である。
【0075】
反応液を中和する際に用いる塩基としては、アンモニア水;トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン、アニリン、ピコリン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、イミダゾール等の有機塩基;水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム等の有機水酸化物;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムt-ブトキシド、カリウムt-ブトキシド等の金属アルコキシド;水素化ナトリウム、水素化カルシウム等の金属水素化物;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等の金属水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム等の金属炭酸塩;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の金属炭酸水素塩;等が挙げられる。
【0076】
反応液の中和に用いる塩基の量は、シラン化合物の総mol量に対して、通常0.01~2.00mol%、好ましくは0.05~1.00mol%、より好ましくは0.10~0.70mol%の範囲である。
また反応液の中和に用いる塩基の量(mol)は、1工程前で用いた酸触媒の量(mol)の0.5~5.0倍が好ましく、より好ましくは0.8~3.0倍、より更に好ましくは1.0~2.0倍である。
中和後の反応液のpHは、通常6.0~8.0、好ましくは6.2~7.0であり、より好ましくは6.4~6.9である。
【0077】
中和後の反応の反応温度は、通常40~90℃、好ましくは50~80℃である。
中和後の反応の反応時間は、通常20~200分間、好ましくは30~150分間である。
【0078】
上記の製造方法では、酸触媒存在下での反応においては、加水分解を主な目的とし、中和後の反応においては、脱水縮合を主な目的としている。
このようにしてシラン化合物の重縮合反応を行うことで、硬化性ポリシルセスキオキサン化合物(A)を効率よく製造することができる。
【0079】
反応終了後は、公知の精製処理を行い、硬化性ポリシルセスキオキサン化合物(A)を単離することができる。
【0080】
本発明のダイボンド材において、硬化性ポリシルセスキオキサン化合物(A)は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0081】
本発明のダイボンド材中の硬化性ポリシルセスキオキサン化合物(A)の含有量は、ダイボンド材の固形分全体を基準として、好ましくは40質量%以上、100質量%未満であり、より好ましくは48~95質量%、さらに好ましくは56~90質量%である。
本発明において、「固形分」とは、ダイボンド材中の溶媒以外の成分をいう。
【0082】
〔(B)成分〕
本発明のダイボンド材を構成する(B)成分は、熱酸発生剤である。
熱酸発生剤とは、加熱により、ルイス酸やブレンステッド酸等の酸成分を発生させる化合物をいう。
本発明のダイボンド材は、熱酸発生剤を含有するため、低温硬化性及び貯蔵安定性に優れる。
本発明において、低温硬化性とは、ダイボンド材が穏やかな加熱条件で硬化する特性をいう。
【0083】
熱酸発生剤としては、温度範囲が30~300℃、昇温速度が10℃/分の条件で示差走査熱量測定を行って得られる最大吸熱ピークのピーク温度(酸発生温度)が、80~180℃のものが好ましい。
上記条件における酸発生温度が80℃以上の熱酸発生剤を含有するダイボンド材は貯蔵安定性により優れる。また、上記条件における酸発生温度が180℃以下の熱酸発生剤を含有するダイボンド材は低温硬化性により優れる。
これらの効果がより得られ易いことから、上記条件における酸発生温度は、好ましくは90~170℃、より好ましくは100~160℃である。
【0084】
熱酸発生剤としては、オニウム塩系熱酸発生剤が挙げられる。オニウム塩系熱酸発生剤は、オニウムカチオン成分とアニオン成分とを含む熱酸発生剤である。
オニウムカチオン成分としては、有機スルホニウムイオン、有機アンモニウムイオン、有機ホスホニウムイオン、有機ヨードニウムイオン等が挙げられる。
【0085】
オニウム塩系熱酸発生剤を構成する有機スルホニウムイオンとしては、下記式(b-1)で表されるカチオンが挙げられる。
【0086】
【0087】
式(b-1)中、R6、R7、R8は、それぞれ独立に、無置換の炭素数1~10のアルキル基、置換基を有する炭素数1~10のアルキル基、無置換の炭素数6~12のアリール基、及び、置換基を有する炭素数6~12のアリール基からなる群から選ばれる基である。
【0088】
R6~R8で表される「無置換の炭素数1~10のアルキル基」の炭素数は、1~6が好ましく、1~3がより好ましい。
「無置換の炭素数1~10のアルキル基」としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基等が挙げられる。
【0089】
R6~R8で表される「置換基を有する炭素数1~10のアルキル基」の炭素数は、1~6が好ましく、1~3がより好ましい。なお、この炭素数は、置換基を除いた部分(アルキル基の部分)の炭素数を意味するものである。したがって、R6~R8が「置換基を有する炭素数1~10のアルキル基」である場合、R6~R8の炭素数は10を超える場合もあり得る。
「置換基を有する炭素数1~10のアルキル基」のアルキル基としては、「無置換の炭素数1~10のアルキル基」として示したものと同様のものが挙げられる。
【0090】
「置換基を有する炭素数1~10のアルキル基」の置換基の原子数(ただし水素原子の数を除く)は、通常1~30、好ましくは1~20である。
「置換基を有する炭素数1~10のアルキル基」の置換基としては、フェニル基、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等のアリール基が挙げられる。
【0091】
R6~R8で表される「無置換の炭素数6~12のアリール基」の炭素数は6が好ましい。
「無置換の炭素数6~12のアリール基」としては、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等が挙げられる。
【0092】
R6~R8で表される「置換基を有する炭素数6~12のアリール基」の炭素数は6が好ましい。なお、この炭素数は、置換基を除いた部分(アリール基の部分)の炭素数を意味するものである。したがって、R6~R8が「置換基を有する炭素数6~12のアリール基」である場合、R6~R8の炭素数は12を超える場合もあり得る。
「置換基を有する炭素数6~12のアリール基」のアリール基としては、「無置換の炭素数6~12のアリール基」として示したものと同様のものが挙げられる。
【0093】
「置換基を有する炭素数6~12のアリール基」の置換基の原子数(ただし水素原子の数を除く)は、通常1~30、好ましくは1~20である。
「置換基を有する炭素数6~12のアリール基」の置換基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;ヒドロキシ基;アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基等のアシルオキシ基;メチルチオ基、エチルチオ基等のアルキルチオ基;等が挙げられる。
【0094】
オニウム塩系熱酸発生剤を構成する有機アンモニウムイオンとしては、下記式(b-2)で表されるカチオンが挙げられる。
【0095】
【0096】
式(b-2)中、R9、R10、R11、R12は、それぞれ独立に、無置換の炭素数1~10のアルキル基、置換基を有する炭素数1~10のアルキル基、無置換の炭素数6~12のアリール基、及び、置換基を有する炭素数6~12のアリール基からなる群から選ばれる基である。
R9~R12としては、R6~R8として表したものと同様のものが挙げられる。
【0097】
オニウム塩系熱酸発生剤を構成する有機ホスホニウムイオンとしては、下記式(b-3)で表されるカチオンが挙げられる。
【0098】
【0099】
式(b-3)中、R13、R14、R15、R16は、それぞれ独立に、無置換の炭素数1~10のアルキル基、置換基を有する炭素数1~10のアルキル基、無置換の炭素数6~12のアリール基、及び、置換基を有する炭素数6~12のアリール基からなる群から選ばれる基である。
R13~R16としては、R6~R8として表したものと同様のものが挙げられる。
【0100】
オニウム塩系熱酸発生剤を構成する有機ヨードニウムイオンとしては、下記式(b-4)で表されるカチオンが挙げられる。
【0101】
【0102】
式(b-4)中、R17、R18は、それぞれ独立に、無置換の炭素数1~10のアルキル基、置換基を有する炭素数1~10のアルキル基、無置換の炭素数6~12のアリール基、及び、置換基を有する炭素数6~12のアリール基からなる群から選ばれる基である。
R17、R18としては、R6~R8として表したものと同様のものが挙げられる。
【0103】
これらの中でも、ダイボンド材の硬化性と貯蔵安定性の両立の観点から、オニウムカチオン成分としては有機スルホニウムイオン又は有機アンモニウムイオンが好ましく、下記式(b-5)で表される有機スルホニウムイオンがより好ましい。
【0104】
【0105】
式(b-5)中、Arは、フェニル基、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等の置換基を有する、又は、置換基を有しないアリール基を表す。
【0106】
オニウム塩系熱酸発生剤のアニオン成分としては、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、ヘキサフルオロリン酸アニオン、ヘキサフルオロアンチモン酸アニオン、パーフルオロブタンスルホン酸アニオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸アニオン、テトラフルオロホウ酸アニオン等が挙げられる。
【0107】
これらの中でも、光学特性に優れた硬化物が得られやすいことから、アニオン成分としてはヘキサフルオロリン酸アニオン、ヘキサフルオロアンチモン酸アニオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸アニオンが好ましく、ヘキサフルオロリン酸アニオンがより好ましい。
【0108】
熱酸発生剤は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
熱酸発生剤の含有量は、ポリシルセスキオキサン化合物(A)100質量部に対して通常0質量部超、0.6質量部以下であり、好ましくは0.001~0.6質量部、より好ましくは0.005~0.5質量部である。
熱酸発生剤が多過ぎると、硬化物の接着性が低下するおそれがある。
【0109】
〔溶媒〕
本発明のダイボンド材を構成する溶媒は、本発明のダイボンド材の成分を溶解又は分散し得るものであれば特に限定されない。
溶媒としては、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、1,6-ヘキサンジオールジアセテート等のアセテート類;トリプロピレングリコール-n-ブチルエーテル;グリセリンジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ネオペンチルグリコールグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、アルキレンジグリシジルエーテル、ポリグリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル等のジグリシジルエーテル類;トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル等のトリグリシジルエーテル類;4-ビニルシクロヘキセンモノオキサイド、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、メチル化ビニルシクロヘキセンジオキサイド等のビニルヘキセンオキサイド類;等が挙げられる。
溶媒は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0110】
本発明のダイボンド材は、固形分濃度が、好ましくは50質量%以上、100質量%未満、より好ましくは60~90質量%、より更に好ましくは65~85質量%になる量である。固形分濃度がこの範囲内であることで、塗布工程における作業性に優れるダイボンド材が得られ易くなる。
【0111】
〔(C)成分〕
本発明のダイボンド材は、(C)成分として、シランカップリング剤を含有してもよい。シランカップリング剤を含有するダイボンド材を用いることで、接着性により優れる硬化物を形成し易くなる。
シランカップリング剤とは、ケイ素原子と、官能基と、前記ケイ素原子に結合した加水分解性基とを有するシラン化合物をいう。
官能基とは、他の化合物(主に有機物)と反応性を有する基をいい、例えば、アミノ基、置換アミノ基、イソシアネート基、ウレイド基、イソシアヌレート骨格を有する基等の窒素原子を有する基;酸無水物基;ビニル基;アリル基;エポキシ基;(メタ)アクリル基;メルカプト基;等が挙げられる。
本発明において、シランカップリング剤は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0112】
本発明のダイボンド材がシランカップリング剤を含有する場合、その含有量は特に限定されず、目的に応じて適宜決定することができる。
シランカップリング剤の含有量は、硬化性ポリシルセスキオキサン化合物(A)100質量部に対して通常95質量部以下、好ましくは65質量部以下、より好ましくは35質量部以下である。
【0113】
シランカップリング剤としては、分子内に窒素原子を有するシランカップリング剤や分子内に酸無水物構造を有するシランカップリング剤が好ましい。
【0114】
分子内に窒素原子を有するシランカップリング剤や分子内に酸無水物構造を有するシランカップリング剤を含有するダイボンド材は、耐熱性及び接着性により優れる硬化物を与える傾向がある。
【0115】
分子内に窒素原子を有するシランカップリング剤としては、例えば、下記式(c-1)で表されるトリアルコキシシラン化合物、式(c-2)で表されるジアルコキシアルキルシラン化合物又はジアルコキシアリールシラン化合物等が挙げられる。
【0116】
【0117】
上記式中、Raは、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、t-ブトキシ基等の炭素数1~6のアルコキシ基を表す。複数のRa同士は同一であっても相異なっていてもよい。
Rbは、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基等の炭素数1~6のアルキル基;又は、フェニル基、4-クロロフェニル基、4-メチルフェニル基、1-ナフチル基等の、置換基を有する、又は置換基を有さないアリール基;を表す。
【0118】
Rcは、窒素原子を有する、炭素数1~10の有機基を表す。また、Rcは、さらに他のケイ素原子を含む基と結合していてもよい。
Rcの炭素数1~10の有機基の具体例としては、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピル基、3-アミノプロピル基、N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)アミノプロピル基、3-ウレイドプロピル基、N-フェニル-アミノプロピル基等が挙げられる。
【0119】
上記式(c-1)又は(c-2)で表される化合物のうち、Rcが、他のケイ素原子を含む基と結合した有機基である場合の化合物としては、イソシアヌレート骨格を有するシランカップリング剤(イソシアヌレート系シランカップリング剤)や、ウレア骨格を有するシランカップリング剤(ウレア系シランカップリング剤)が挙げられる。
【0120】
これらの中でも、分子内に窒素原子を有するシランカップリング剤としては、接着性により優れる硬化物が得られ易いことから、イソシアヌレート系シランカップリング剤、及びウレア系シランカップリング剤が好ましく、さらに、分子内に、ケイ素原子に結合したアルコキシ基を4以上有するものが好ましい。
ケイ素原子に結合したアルコキシ基を4以上有するとは、同一のケイ素原子に結合したアルコキシ基と、異なるケイ素原子に結合したアルコキシ基との総合計数が4以上という意味である。
【0121】
ケイ素原子に結合したアルコキシ基を4以上有するイソシアヌレート系シランカップリング剤としては、下記式(c-3)で表される化合物が挙げられる。ケイ素原子に結合したアルコキシ基を4以上有するウレア系シランカップリング剤としては、下記式(c-4)で表される化合物が挙げられる。
【0122】
【0123】
式中、Raは上記と同じ意味を表す。t1~t5はそれぞれ独立して、1~10の整数を表し、1~6の整数であるのが好ましく、3であるのが特に好ましい。
【0124】
これらの中でも、分子内に窒素原子を有するシランカップリング剤としては、1,3,5-N-トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5-N-トリス(3-トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート(以下、「イソシアヌレート化合物」という。)、N,N’-ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ウレア、N,N’-ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ウレア(以下、「ウレア化合物」という。)、及び、上記イソシアヌレート化合物とウレア化合物との組み合わせを用いるのが好ましい。
【0125】
本発明のダイボンド材が分子内に窒素原子を有するシランカップリング剤を含有する場合、その含有量は特に限定されないが、その量は、上記(A)成分と分子内に窒素原子を有するシランカップリング剤の質量比〔(A)成分:分子内に窒素原子を有するシランカップリング剤〕で、好ましくは100:0.1~100:90、より好ましくは100:0.3~100:60、より好ましくは100:1~100:50、さらに好ましくは100:3~100:40、特に好ましくは100:5~100:35となる量である。
このような割合で(A)成分及び分子内に窒素原子を有するシランカップリング剤を含有するダイボンド材の硬化物は、耐熱性及び接着性により優れたものになる。
【0126】
分子内に酸無水物構造を有するシランカップリング剤は、一つの分子中に、酸無水物構造を有する基と、加水分解性基の両者を併せ持つ有機ケイ素化合物である。具体的には下記式(c-5)で表される化合物が挙げられる。
【0127】
【0128】
式中、Qは酸無水物構造を有する基を表し、Rdは炭素数1~6のアルキル基、又は、置換基を有する、若しくは置換基を有さないフェニル基を表し、Reは炭素数1~6のアルコキシ基又はハロゲン原子を表し、i、kは1~3の整数を表し、jは0~2の整数を表し、i+j+k=4である。jが2であるとき、Rd同士は同一であっても相異なっていてもよい。kが2又は3のとき、複数のRe同士は同一であっても相異なっていてもよい。iが2又は3のとき、複数のQ同士は同一であっても相異なっていてもよい。
Qとしては、下記式で表される基等が挙げられ、(Q1)で表される基が特に好ましい。
【0129】
【0130】
式中、hは0~10の整数を表す。
【0131】
分子内に酸無水物構造を有するシランカップリング剤としては、2-(トリメトキシシリル)エチル無水コハク酸、2-(トリエトキシシリル)エチル無水コハク酸、3-(トリメトキシシリル)プロピル無水コハク酸、3-(トリエトキシシリル)プロピル無水コハク酸等の、トリ(炭素数1~6)アルコキシシリル(炭素数2~8)アルキル無水コハク酸;
2-(ジメトキシメチルシリル)エチル無水コハク酸等の、ジ(炭素数1~6)アルコキシメチルシリル(炭素数2~8)アルキル無水コハク酸;
2-(メトキシジメチルシリル)エチル無水コハク酸等の、(炭素数1~6)アルコキシジメチルシリル(炭素数2~8)アルキル無水コハク酸;
【0132】
2-(トリクロロシリル)エチル無水コハク酸、2-(トリブロモシリル)エチル無水コハク酸等の、トリハロゲノシリル(炭素数2~8)アルキル無水コハク酸;
2-(ジクロロメチルシリル)エチル無水コハク酸等の、ジハロゲノメチルシリル(炭素数2~8)アルキル無水コハク酸;
2-(クロロジメチルシリル)エチル無水コハク酸等の、ハロゲノジメチルシリル(炭素数2~8)アルキル無水コハク酸;等が挙げられる。
【0133】
これらの中でも、分子内に酸無水物構造を有するシランカップリング剤としては、トリ(炭素数1~6)アルコキシシリル(炭素数2~8)アルキル無水コハク酸が好ましく、3-(トリメトキシシリル)プロピル無水コハク酸又は3-(トリエトキシシリル)プロピル無水コハク酸が特に好ましい。
【0134】
本発明のダイボンド材が分子内に酸無水物構造を有するシランカップリング剤を含有する場合、その含有量は特に限定されないが、その量は、上記(A)成分と分子内に酸無水物構造を有するシランカップリング剤の質量比〔(A)成分:分子内に酸無水物構造を有するシランカップリング剤〕で、好ましくは100:0.1~100:30、より好ましくは100:0.3~100:20、より好ましくは100:0.5~100:15、さらに好ましくは100:1~100:10となる量である。
このような割合で(A)成分及び分子内に酸無水物構造を有するシランカップリング剤を含有するダイボンド材の硬化物は、接着性により優れたものになる。
【0135】
本発明のダイボンド材は、本発明の目的を阻害しない範囲で、上記(A)~(C)成分以外の他の成分を含有してもよい。
他の成分としては、微粒子、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等が挙げられる。
【0136】
微粒子を添加すると、塗布工程における作業性に優れるダイボンド材を得ることができる場合がある。微粒子の材質としては、金属;金属酸化物;鉱物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の金属炭酸塩;硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の金属硫酸塩;水酸化アルミニウム等の金属水酸化物;珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム等の金属珪酸塩;シリカ等の無機成分;シリコーン;アクリル系重合体等の有機成分;等が挙げられる。
また、用いる微粒子は表面が修飾されたものであってもよい。
【0137】
これらの微粒子は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。微粒子の含有量は特に限定されないが、(A)成分に対して、通常50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、35質量%以下がより更に好ましい。
【0138】
酸化防止剤は、加熱時の酸化劣化を防止するために添加される。酸化防止剤としては、リン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤等が挙げられる。
【0139】
リン系酸化防止剤としては、ホスファイト類、オキサホスファフェナントレンオキサイド類等が挙げられる。フェノール系酸化防止剤としては、モノフェノール類、ビスフェノール類、高分子型フェノール類等が挙げられる。硫黄系酸化防止剤としては、ジラウリル-3,3’-チオジプロピオネート、ジミリスチル-3,3’-チオジプロピオネート、ジステアリル-3,3’-チオジプロピオネート等が挙げられる。
【0140】
これらの酸化防止剤は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。酸化防止剤の使用量は、(A)成分に対して、通常10質量%以下である。
【0141】
紫外線吸収剤は、得られる硬化物の耐光性を向上させる目的で添加される。
紫外線吸収剤としては、サリチル酸類、ベンゾフェノン類、ベンゾトリアゾール類、ヒンダードアミン類等が挙げられる。
紫外線吸収剤は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
紫外線吸収剤の使用量は、(A)成分に対して、通常10質量%以下である。
【0142】
光安定剤は、得られる硬化物の耐光性を向上させる目的で添加される。
光安定剤としては、例えば、ポリ[{6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル}{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジン)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジン)イミノ}]等のヒンダードアミン類等が挙げられる。
これらの光安定剤は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。光安定剤の使用量は、(A)成分に対して、通常20質量%以下である。
【0143】
本発明のダイボンド材は、例えば、上記(A)成分、(B)成分、及び溶媒、並びに、所望により他の成分を所定割合で混合し、脱泡することにより調製することができる。
混合方法、脱泡方法は特に限定されず、公知の方法を利用することができる。
【0144】
本発明のダイボンド材は(A)成分を含有する。したがって、本発明のダイボンド材は屈折率が低い。
本発明のダイボンド材の25℃における屈折率(nD)は、好ましくは1.410~1.430であり、より好ましくは1.412~1.428である。
ダイボンド材の屈折率(nD)は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0145】
本発明のダイボンド材は(B)成分を含有する。したがって、本発明のダイボンド材は、低温硬化性を有し、さらに、貯蔵安定性に優れている。
【0146】
本発明のダイボンド材が低温硬化性を有することは、例えば、実施例に記載の方法により確認することができる。
すなわち、自動硬化時間測定装置(株式会社サイバー製、商品名「まどか」)を用い、100℃に加熱されたステンレス板上にダイボンド材のサンプルを投入して撹拌すると、撹拌トルクが上昇する。したがって、撹拌トルクが、0.049N・cmになるまでの時間を測定することにより、ダイボンド材の低温硬化性(100℃という比較的穏やかな加熱条件下におけるダイボンド材の硬化性)を数値化することができる。
撹拌トルクが0.049N・cmになるまでの時間は、200~2500秒が好ましく、220~2000秒がより好ましく、240~1500秒がさらに好ましい。
【0147】
本発明のダイボンド材が貯蔵安定性に優れることは、例えば、実施例に記載の方法により確認することができる。
すなわち、レオメーターにて、半径50mm、コーン角度0.5°のコーンプレートを用い、25℃でせん断速度が2s-1時の粘度を測定して初期粘度を得た後、サンプルを25℃で24時間静置し、同様の条件で粘度を測定し、静置後の粘度を得る。
得られた測定値から、下記式に基づいて粘度の上昇率を算出することで、貯蔵安定性を数値化することができる。
[粘度上昇率]=[静置後の粘度]/[初期粘度]
上記測定条件における粘度上昇率は、1.40以下が好ましく、1.25以下がより好ましく、1.10以下がよりさらに好ましい。
【0148】
上記のように、本発明のダイボンド材は貯蔵安定性に優れる。したがって、本発明のダイボンド材は冷凍保存や冷蔵保存をしなくても長期間保存することができる。
【0149】
本発明のダイボンド材は、加熱することで硬化させることができる。
硬化させるときの加熱温度は、通常80~140℃であり、より好ましくは90~120℃である。加熱時間は、通常10分から20時間であり、好ましくは30分~15時間である。
本発明のダイボンド材を硬化させる際、加熱温度が高い場合は、短時間で硬化させることができる。一方、長時間加熱する場合は、加熱温度を低くすることができる。
このように本発明のダイボンド材は比較的低い温度でも硬化し得るものである。したがって、後述するように、周囲に樹脂製部材等の耐熱性を考慮すべき部材が存在するときは、生産性等も考慮し、95℃以上105℃以下のような加熱温度を採用することができる。
【0150】
本発明のダイボンド材を硬化させて得られる硬化物は、耐熱性及び接着性に優れることが好ましい。
硬化物の耐熱性や接着性は、例えば、次のようにして確認することができる。すなわち、シリコンチップのミラー面に、本発明のダイボンド材を所定量塗布し、塗布面を被着体の上に載せ、圧着し、加熱処理して硬化させる。これを、予め所定温度(例えば、100℃)に加熱したボンドテスターの測定ステージ上に30秒間放置し、被着体から100μmの高さの位置より、接着面に対し水平方向(せん断方向)に応力をかけ、試験片と被着体との接着力を測定する。
【0151】
硬化物の接着力は、実施例に記載の測定条件において、15N/4mm2以上であることが好ましく、25N/4mm2以上であることがより好ましく、30N/4mm2以上であることがさらに好ましい。
本明細書において、「4mm2」とは、「2mm square」、すなわち、2mm×2mm(1辺が2mmの正方形)を意味する。
【0152】
本発明のダイボンド材は、下記要件Xを満たすものが好ましい。
〔要件X〕
ダイボンド材の硬化物の固体Si核磁気共鳴スペクトルを測定したときに、-80ppm以上-40ppm未満の領域にピークが観測され、かつ、そのピークの半値幅が500Hz以上900Hz以下である。
【0153】
ピークの半値幅とは、固体Si核磁気共鳴スペクトルのピークの値(高さ)の半分の値でピーク形状を切ったときの横幅である。例えば、ピークの値の半分の値でピーク形状を切ったときのピークの値を、それぞれa(ppm)、b(ppm)とすると(b>aとする)、式:(b-a)×M(単位はHz,Mは共鳴周波数を示す)で表すことができる。
-80ppm以上-40ppm未満の領域に観測されるピークの半値幅は、好ましくは500Hz以上900Hz以下、より好ましくは500Hz以上800Hz以下、さらに好ましくは500Hz以上700Hz以下、特に好ましくは500Hz以上600Hz以下である。
-80ppm以上-40ppm未満の領域に観測されるピークの半値幅が500Hz以上900Hz以下であることで、接着力により優れる硬化物になるダイボンド材が得られ易くなる。
【0154】
-80ppm以上-40ppm未満の領域に複数のピークが重なって観測される場合は、ガウス関数やローレンツ関数を用いる波形分離解析を行うことで、各ピークの半値幅を決定することができる。
なお、硬化物の固体Si核磁気共鳴スペクトルを測定したときに、-80ppm以上-40ppm未満の領域に複数のピークが観測される場合、上記要件Xを満たすダイボンド材とは、この領域に含まれる少なくとも1つのピークの半値幅が上記範囲内にあるものをいう。
固体Si核磁気共鳴スペクトルは、室温(例えば25℃)で、常法に従って測定することができる。
【0155】
化学シフトが-80ppm以上-40ppm未満の領域のピークの半値幅は、繰り返し単位中の(R1-D)やR2の種類や、(A)成分以外の成分の影響を受ける。
したがって、硬化性ポリシルセスキオキサン化合物(A)を得、その硬化物の固体Si核磁気共鳴スペクトルを測定して、前記領域のピークの半値幅を求めた後、その値に応じて、(A)成分以外の成分の添加量等を適宜決定することにより、上記要件Xを満たすダイボンド材を効率よく得ることができる。
【0156】
なお、固体Si核磁気共鳴スペクトルを測定する際の測定試料として、ダイボンド材を十分に硬化させて得られた硬化物を用いる限り、通常、化学シフトやピークの半値幅は、硬化条件等に依存しない。
本発明のダイボンド材であれば、例えば、170℃で、2時間硬化反応を行うことで、測定試料として適する硬化物を得ることができる。
また、硬化反応が十分に進行し、測定試料として適したものであるか否かは、例えば、示差熱熱重量測定(TG-DTA)にて昇温による重量減がほとんどないことにより確認することができる。
【0157】
本発明のダイボンド材は、発光素子を所定の位置に固定する際に好適に用いられる。
すなわち、本発明のダイボンド材を用いることで、発光素子を強固に固定することができる。
さらに、後述するように、本発明のダイボンド材を用いることで、発光装置の光取り出し効率の向上という効果を得ることもできる。
本発明のダイボンド材を用いて発光素子を所定の位置に固定する方法の詳細は、発光装置の製造方法の発明の説明の中に記載する。
【0158】
2)発光装置
本発明の発光装置は、一対のリード電極と、前記一対のリード電極と一体に成形された成形体と、を備え、かつ、凹部を有する素子収容器であって、前記凹部の底が、前記一対のリード電極で構成されている素子収容器と、前記凹部の底を構成する前記一対のリード電極の少なくとも一方の上に、接着部材を介して固定された発光素子と、を備え、前記接着部材が、本発明のダイボンド材の硬化物である、発光装置である。
【0159】
以下、発明の実施の形態について適宜図面を参照して説明する。但し、以下に説明する発光装置は、本発明の技術思想を具体化するためのものであって、特定的な記載がない限り、本発明を以下のものに限定しない。また、図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張していることがある。
【0160】
なお以下、可視波長域は波長が380nm以上780nm以下の範囲とし、青色域は波長が420nm以上480nm以下の範囲、緑色乃至黄色域は波長が500nm以上590nm以下の範囲、赤色域は波長が610nm以上750nm以下の範囲とする。
【0161】
<実施の形態1>
図1及び
図4は其々実施の形態1に係る発光装置1100の概略正面図(概略前面図)及び概略下面図であり、
図2は
図1のA-A断面における概略断面図、
図3は
図1のB-B断面における概略断面図である。
【0162】
実施の形態1に係る発光装置1100は、素子収容器110と2つの発光素子121を備えている。この発光装置1100及び素子収容器110は、横方向(
図1中では左右方向)に長い。素子収容器110は、凹部110aを有している。凹部110aは、素子収容器110と同様に、横方向に長い。素子収容器110は、第1リード電極111及び第2リード電極112(一対のリード電極111,112)と、第1リード電極111及び第2リード電極112と一体に成形された成形体115と、を含んでいる。第1リード電極111及び第2リード電極112は、横方向に並んでいる。第1リード電極111及び第2リード電極112は、凹部110aの底を構成している。成形体115は、凹部110aの側壁を構成している。2つの発光素子121は、凹部110a内に収容されている。
【0163】
より詳細には、発光装置1100は、発光ダイオード(LED)である。凹部110aは、素子収容器110の側面の1つ(前面)に設けられている。成形体115は、白色顔料及び充填剤を含有し、特に白色顔料により光反射性を有している。このため、発光装置1100の発光領域(意図しない漏光は考慮に入れない)は、前面における凹部110aの開口に略一致している。本実施の形態1の第1リード電極111及び第2リード電極112は、発光装置1100(素子収容器110)の横方向の中央を基準として対称である。凹部110aの底は、成形体115の表面と第1リード電極111及び第2リード電極112の表面で構成されている。この凹部110aの底を構成する第1リード電極111及び第2リード電極112の部位は、発光素子121の接着領域及びワイヤ150の接続領域を含む第1素子実装部111a及び第2素子実装部112aである。2つの発光素子121は、凹部110aの底の第1リード電極111(第1素子実装部111a)上と、第2リード電極112(第2素子実装部112a)上にそれぞれ接着部材160を介して固定(実装)されている。また、第2リード電極112の部位は、ワイヤ150の接続領域を含む。さらにまた、第1リード電極111及び第2リード電極112は、成形体115の外側にある部位として、第1外部接続端子部111b及び第2外部接続端子部112bを有している。第1外部接続端子部111b及び第2外部接続端子部112bは、成形体115の下面に沿うように折り曲げられている。発光装置1100は、第1外部接続端子部111b及び第2外部接続端子部112bが回路基板等にはんだ付けされることで実装される。よって、発光装置1100(素子収容器110)の実装側主面は下面である。より具体的には、成形体115の下面は、その左右に第1外部接続端子部111b及び第2外部接続端子部112bが各々配置される領域(左領域または右領域)があり、成形体115の下面の中央領域から左領域または右領域にわたって段付きになっている。これに伴って、素子収容器110(成形体115)の前面の形状、及び凹部110aの開口の形状は、中央領域が左領域または右領域よりも下方側に幅広に(即ち縦方向の幅が大きく)形成されている。
【0164】
成形体115は、凹部110aの縦方向(
図1中では上下方向)に向かい合う2つの側壁1151,1152同士を結ぶ補強部117を有している。補強部117の高さは、凹部110aの底の第1リード電極111及び第2リード電極112の表面より高く且つ発光素子121の上面(前面)の高さより低い。
【0165】
補強部117は、凹部110aの横方向の略中央かつ第1リード電極111及び第2リード電極112を隔てる離隔領域1150上にあって、離隔領域1150と連続している。詳細には、補強部117は、2つの発光素子121の間にあり、その一部が凹部110aの底の第1リード電極111及び第2リード電極112の周縁部の上を覆っている。成形体115の離隔領域1150の近傍は、成形体115のひび割れ等の損傷を生じやすい部位であるため、補強部117によって、成形体115の離隔領域1150の近傍を補強することができる。これにより、第1リード電極111及び第2リード電極112を成形体115によって強固に保持することができる。
【0166】
補強部117は、発光素子121の光の遮りを適度に抑えられ発光装置1100の配光に影響を及ぼしにくく、且つ成形体115の機械的強度を効果的に高めて変形を抑制することができる。したがって、外力のほか、リフローはんだ実装時における加熱、並びに/又は、発光素子121及び後述する波長変換物質140の発熱などによる温度変化に対して変形しにくく、且つ所望の配光を得やすい素子収容器110が得られる。
【0167】
発光装置1100は、側面発光型(サイドビュー型)であることが好ましい。
【0168】
発光装置1100は、封止部材130を備えている。封止部材130は、凹部110a内に充填されている。封止部材130は、発光素子121が発する光を異なる波長の光に変換する波長変換物質140を含有している。波長変換物質140は、緑色光乃至黄色光を発する第1蛍光体と、赤色光を発する第2蛍光体と、を含んでいる。この場合、発光素子121は、青色光を発する素子であると良い。このような構成により、色再現性又は演色性に優れる発光が可能となる。
【0169】
さらに、第2蛍光体は、マンガンで賦活されたフッ化物蛍光体を含むことが好ましい。マンガンで賦活されたフッ化物蛍光体は、赤色域においてスペクトル半値幅の狭い発光が可能である。
【0170】
封止部材130の母材は、フェニル基を含むシリコーン系樹脂であることが好ましい。シリコーン系樹脂は、熱硬化性樹脂であって優れた耐熱性及び耐光性を有し、フェニル基を含むことで耐熱性が更に強化されている。フェニル基を含むシリコーン系樹脂は、シリコーン系樹脂の中ではガスバリア性が比較的高いため、マンガンで賦活されたフッ化物蛍光体の水分による劣化を抑制しやすい。加えて、第1リード電極111及び第2リード電極112と後述のワイヤ150の硫黄含有ガス等の腐食性ガスによる劣化を抑制しやすい。なお、マンガンで賦活されたフッ化物蛍光体は、水分及び熱による劣化を抑制するため、封止部材130中において、前方側より後方側に即ち凹部110aの底側に多く存在していることが好ましい。
【0171】
発光装置1100は、第1リード電極111及び第2リード電極112と発光素子121を接続するワイヤ150を備えている。ワイヤ150は、凹部110a内に収容され、封止部材130に封止されている。ワイヤ150は、光反射性を高める観点において、銀を含むことが好ましい。すなわち、ワイヤ150は、少なくとも表面が銀若しくは銀合金で構成されていることが好ましく、銀線若しくは銀合金線であることがより好ましい。また、破断抑制の観点から、銀を含むワイヤ150は、特に、表面に銀若しくは銀合金の被膜を有する金線、又は金を含む銀合金線であることが好ましい。
【0172】
なお、成形体115は、第1リード電極111及び第2リード電極112の後面を覆う後方成形部にゲート痕115aを有している。このような成形体115は、主として、射出成形法により成形されたものである。射出成形法では、溶融粘度の比較的高い樹脂をゲートから金型のキャビティ内に勢いよく注入する。このため、樹脂の圧力により、第1リード電極111及び第2リード電極112の前面、特に第1素子実装部111a、第2素子実装部112aが金型に押し付けられ、第1素子実装部111a上、第2素子実装部112a上へのバリの発生が抑制される。また、このように、成形体115が第1リード電極111及び第2リード電極112の前面及び後面の両方を覆うことで、第1リード電極111及び第2リード電極112を成形体115によって強固に保持することができる。例えば、熱可塑性樹脂及び不飽和ポリエステル系樹脂は、第1リード電極111及び第2リード電極112との密着性が比較的得られにくいため、このような成形体115の構成が好適である。なお、「ゲート痕」とは、金型のキャビティ内への樹脂の注入口であるゲートの痕跡として成形体115に形成される突起である。また、成形体115の前方成形部は、主として、凹部110a周囲の側壁を構成する。
【0173】
以下、本発明の一実施の形態に係る発光装置における各構成要素について説明する。
【0174】
(発光装置1100)
発光装置は、発光素子が素子収容器に収容され一対のリード電極と電気的に接続されて構成され、好ましくは更に封止部材により封止されて構成される。発光装置は、例えば「発光ダイオード(LED)」等と呼ばれるものであってよい。
【0175】
(素子収容器110)
素子収容器は、発光素子を収容し、その発光素子に外部から給電するための電極(端子)を有する容器である。素子収容器は、少なくとも、一対のリード電極と、成形体と、により構成される。素子収容器は、例えば「パッケージ」等と呼ばれるものであってよい。
【0176】
(第1リード電極111、第2リード電極112)
一対のリード電極(第1リード電極及び第2リード電極)は、素子収容器における正負一対の電極(端子)を構成する。1つの素子収容器において、リード電極は、少なくとも一対あればよいが、複数対あってもよい。リード電極は、亜鉛、鉄、銅、鉛、リン、又はこれらの合金の平板に、プレス(打ち抜き含む)、エッチング、圧延など各種の加工を施したものが母体となる。リード電極は、これらの金属又は合金の積層体で構成されてもよいが、単層で構成されるのが簡便で良い。特に、銅を主成分とする銅合金(燐青銅、鉄入り銅など)が好ましい。また、その表面に、ニッケル、パラジウム、金、銀又はこれらの合金などの光反射膜が設けられていてもよく、なかでも光反射性に優れる銀又は銀合金が好ましい。特に、硫黄系光沢剤を用いた銀又は銀合金の膜(例えばめっき膜)は、膜の表面が平滑で、極めて高い光反射性が得られる。
【0177】
(成形体115)
成形体は、素子収容器における容器の母体をなす。成形体は、素子収容器の外形の一部を構成している。成形体は、光反射性の観点から、発光素子の発光ピーク波長における光反射率が、75%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。さらに、成形体は、白色であることが好ましい。成形体は、硬化前には流動性を有する状態つまり液状(ゾル状又はスラリー状を含む)を経る。成形体は、射出成形法、トランスファ成形法などにより成形することができる。
【0178】
(成形体の母材)
成形体の母材としては、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂を用いることができる。なお、以下に示す樹脂は、その変性樹脂、及びハイブリッド樹脂も含むものする。熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂が挙げられる。また、成形体の母材としては、熱可塑性樹脂も好ましい。一般的に、熱可塑性樹脂は、熱硬化性樹脂に比べ、安価であるが、耐熱性及び耐光性に劣っており、変形しやすいためである。熱可塑性樹脂としては、9Cナイロン(登録商標)樹脂、9Tナイロン(登録商標)樹脂などのポリアミド樹脂が挙げられる。成形体は、光反射性、機械的強度、熱伸縮性などの観点から、母材中に、以下のような白色顔料と充填剤を含有することが好ましいが、これに限定されない。
【0179】
(白色顔料)
白色顔料としては、酸化チタンが挙げられる。酸化チタンは、屈折率が比較的高く、光隠蔽性に優れるため、好ましい。白色顔料の形状は、特に限定されず、不定形(破砕状)でもよいが、流動性の観点では球状が好ましい。白色顔料の粒径(以下「粒径」は例えば平均粒径D50で定義される)は、特に限定されず、例えば0.01μm以上1μm以下であり、好ましくは0.1μm以上0.5μm以下である。成形体中の白色顔料の含有量は、特に限定されず、成形体の光反射性の観点では多いほうが良いが、流動性への影響を考慮して、20質量%以上70質量%以下が好ましく、30質量%以上60質量%以下がより好ましい。なお、質量%は、全構成材料の総重量に対する各材料の重量の比率を表す。
【0180】
(成形体の充填剤)
充填剤としては、珪酸カルシウム(ワラストナイト)が挙げられる。珪酸カルシウム(ワラストナイト)は強化剤として好ましく、比較的径が小さいため薄型又は小型の成形体に好適である。具体的には、強化剤の平均繊維径は、特に限定されず、例えば0.05μm以上100μm以下であり、0.1μm以上50μm以下が好ましく、1μm以上30μm以下がより好ましく、2μm以上15μm以下がよりいっそう好ましい。強化剤の平均繊維長は、特に限定されず、例えば0.1μm以上1mm以下であり、1μm以上200μm以下が好ましく、3μm以上100μm以下がより好ましく、5μm以上50μm以下がよりいっそう好ましい。強化剤の平均アスペクト比(平均繊維長/平均繊維径)は、特に限定されず、例えば2以上300以下であり、2以上100以下が好ましく、3以上50以下がより好ましく、5以上30以下がよりいっそう好ましい。充填剤の形状は、特に限定されず、不定形(破砕状)でもよいが、強化剤としての機能の観点では繊維状(針状)又は板状(鱗片状)が好ましく、流動性の観点では球状が好ましい。成形体中の充填剤の含有量は、特に限定されず、成形体の熱膨張係数、機械的強度等を考慮して適宜決めればよいが、10質量%以上80質量%以下が好ましく、30質量%以上60質量%以下がより好ましい(うち強化剤は5質量%以上30質量%以下が好ましく、5質量%以上20質量%以下がより好ましい)。
【0181】
(発光素子121)
発光素子としては、半導体発光素子を用いることができる。発光素子は、多くの場合に基板を有するが、少なくとも、種々の半導体で構成される素子構造と、正負(pn)一対の電極と、を有するものであればよい。特に、紫外から可視域の発光が可能な窒化物半導体(InxAlyGa1-x-yN、0≦x、0≦y、x+y≦1)を含む発光素子が好ましい。発光素子の発光ピーク波長は、発光効率、他の光源の光との混色関係、波長変換物質の励起効率などの観点から、445nm以上465nm以下の範囲が好ましい。正負一対の電極が同一面側に設けられている発光素子の場合、各電極をワイヤで一対のリード電極と接続される(フェイスアップ実装)。1つの素子収容器に搭載される発光素子の個数は1つでも複数でもよい。複数の発光素子は、ワイヤにより直列又は並列に接続することができる。
【0182】
(封止部材130)
封止部材は、発光素子を封止して、埃や水分、外力などから保護する部材である。封止部材は、電気的絶縁性を有し、発光素子から出射される光に対して透光性(好ましくは発光素子の発光ピーク波長における光透過率が70%以上、より好ましくは85%以上)を有する部材であればよい。封止部材は、これらの母材中に、少なくとも波長変換物質を含有することが好ましいが、これに限定されない。
【0183】
(封止部材の母材)
封止部材の母材としては、フェニル基を含むシリコーン系樹脂、変性シリコーン樹脂を用いることができる。
【0184】
(波長変換物質140)
波長変換物質は、発光素子から出射される一次光の少なくとも一部を吸収して、一次光とは異なる波長の二次光を出射する。これにより、可視波長の一次光及び二次光の混色光(例えば白色光)を出射する発光装置とすることができる。波長変換物質は、以下に示す具体例のうちの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0185】
(第1蛍光体)
第1蛍光体は、緑色光乃至黄色光を発する。第1蛍光体の発光ピーク波長は、発光効率、他の光源の光との混色関係などの観点から、緑色域(500nm以上560nm以下の範囲)が好ましく、520nm以上560nm以下の範囲がより好ましい。具体的には、イットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(例えばY3(Al,Ga)5O12:Ce)、ルテチウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(例えばLu3(Al,Ga)5O12:Ce)、シリケート系蛍光体(例えば(Ba,Sr)2SiO4:Eu)、クロロシリケート系蛍光体(例えばCa8Mg(SiO4)4Cl2:Eu)、βサイアロン系蛍光体(例えばSi6-ZAlZOZN8-Z:Eu(0<Z<4.2))などが挙げられる。
【0186】
(第2蛍光体)
第2蛍光体は、赤色光を発する。第2蛍光体の発光ピーク波長は、発光効率、他の光源の光との混色関係などの観点から、620nm以上670nm以下の範囲が好ましい。具体的には、窒素含有アルミノ珪酸カルシウム(CASN又はSCASN)系蛍光体(例えば(Sr,Ca)AlSiN3:Eu)などが挙げられる。また、マンガンで賦活されたフッ化物蛍光体は、一般式(I):A2[M1-aMnaF6]で表される蛍光体である(但し、上記一般式(I)中、Aは、K、Li、Na、Rb、Cs及びNH4からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、Mは、第4族元素及び第14族元素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、aは0<a<0.2を満たす)。このフッ化物蛍光体の代表例としては、フッ化珪酸カリウム系蛍光体(例えばK2SiF6:Mn)がある。
【0187】
(封止部材の充填剤)
封止部材の充填剤としては、二酸化珪素(シリカ)が挙げられる。シリカは、封止部材の熱膨張係数の低減剤として好ましい。封止部材の充填剤の形状は、特に限定されず、不定形(破砕状)でもよいが、流動性の観点では球状が好ましい。
【0188】
(ワイヤ150)
ワイヤは、発光素子の電極と、リード電極と、を接続する導線である。具体的には、金、銅、銀、白金、アルミニウム、パラジウム又はこれらの合金の金属線を用いることができる。
【0189】
(接着部材160)
接着部材は、発光素子をリード電極に固定する部材である。本発明の発光装置において、接着部材は本発明のダイボンド材の硬化物である。
【0190】
3)発光装置の製造方法
本発明の発光装置の製造方法は、一対のリード電極と、前記一対のリード電極と一体に成形された成形体と、を備え、かつ、凹部を有する素子収容器であって、前記凹部の底が、前記一対のリード電極で構成されている素子収容器と、前記凹部の底を構成する前記一対のリード電極の少なくとも一方の上に、接着部材を介して固定された発光素子と、を備える発光装置の製造方法であって、前記発光素子を、本発明のダイボンド材を用いて、前記一対のリード電極の少なくとも一方に固定する発光素子実装工程を含む、発光装置の製造方法である。
この製造方法により得られる発光装置は、上記した本発明の発光装置と同様のものであり、その詳細な説明は省略する。
【0191】
本発明の発光装置の製造法においては、発光素子実装工程以外の工程は、公知の方法を適宜利用することができる。
【0192】
発光素子の実装工程は、例えば、前記ダイボンド材を前記一対のリード電極の少なくとも一方に塗布し、前記ダイボンド材(塗布物)上に前記発光素子を配置し、前記ダイボンド材を95℃以上105℃以下の温度で硬化させることで行うことができる。
【0193】
本発明のダイボンド材の塗布量は、特に限定されない。ダイボンド材の塗布量は、ダイボンド材の塗膜の厚さが、通常0.5~5μm、好ましくは1~3μmとなる量である。
【0194】
ダイボンド材を加熱硬化させる際の加熱温度は、用いるダイボンド材等にもよるが、好ましくは95℃以上105℃以下である。加熱時間は、通常10分から20時間、好ましくは30分から15時間である。
加熱温度が95℃以上105℃以下の範囲内であることで、周囲の部材の劣化を防ぎつつ、発光装置を効率よく製造することができる。
【実施例】
【0195】
以下、本発明に係る実施例について詳述する。なお、本発明は以下に示す実施例のみに限定されないことは言うまでもない。
【0196】
(平均分子量測定)
製造例で得た硬化性ポリシルセスキオキサン化合物の質量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、標準ポリスチレン換算値とし、以下の装置及び条件にて測定した。
装置名:HLC-8220GPC、東ソー株式会社製
カラム:TSKgelGMHXL、TSKgelGMHXL、及び、TSKgel2000HXLを順次連結したもの
溶媒:テトラヒドロフラン
注入量:80μl
測定温度:40℃
流速:1ml/分
検出器:示差屈折計
【0197】
(IRスペクトルの測定)
製造例で得た硬化性ポリシルセスキオキサン化合物のIRスペクトルは、フーリエ変換赤外分光光度計(パーキンエルマー社製、Spectrum100)を使用して測定した。
【0198】
(29Si-NMR測定)
製造例で得た硬化性ポリシルセスキオキサン化合物の繰り返し単位とその量を調べるために、以下の条件で29Si-NMR測定を行った。
装置:ブルカー・バイオスピン社製 AV-500
29Si-NMR共鳴周波数:99.352MHz
プローブ:5mmφ溶液プローブ
測定温度:室温(25℃)
試料回転数:20kHz
測定法:インバースゲートデカップリング法
29Si フリップ角:90°
29Si 90°パルス幅:8.0μs
繰り返し時間:5s
積算回数:9200回
観測幅:30kHz
【0199】
(29Si-NMR試料作製方法)
緩和時間短縮のため、緩和試薬としてFe(acac)3を添加し測定した。
硬化性ポリシルセスキオキサン化合物濃度:30質量%
Fe(acac)3濃度:0.7質量%
測定溶媒:アセトン
内部標準:TMS
【0200】
(波形処理解析)
フーリエ変換後のスペクトルの各ピークについて、ピークトップの位置によりケミカルシフトを求め、積分を行った。
【0201】
(熱酸発生剤の酸発生温度の測定)
各熱酸発生剤に対し、開始温度30℃、測定温度範囲30~300℃、昇温速度10℃/分の条件下で、示差走査熱量計(TAインスツルメンツ社製;製品名:DSC Q2000Auto)を用いて示差走査熱量測定を行った。得られたDSC曲線から、最大吸熱ピークのピーク温度(℃)を算出し、各熱酸発生剤の酸発生温度を得た。
【0202】
<製造例1>
300mLのナス型フラスコに、3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン17.0g(77.7mmol)、及び、メチルトリエトキシシラン32.33g(181.3mmol)を仕込んだ後、これを撹拌しながら、蒸留水14.0gに35質量%塩酸0.0675g(HClの量が0.65mmol,シラン化合物の合計量に対して、0.25mol%)を溶解して得られた水溶液を加え、全容を30℃にて2時間、次いで70℃に昇温して20時間撹拌した。
内容物の撹拌を継続しながら、そこに、28質量%アンモニア水0.0394g(NH3の量が0.65mmol)と酢酸プロピル46.1gの混合溶液を加えて反応液のpHを6.9にし、そのまま70℃で40分間撹拌した。
反応液を室温まで放冷した後、そこに、酢酸プロピル50g及び水100gを加えて分液処理を行い、反応生成物を含む有機層を得た。この有機層に硫酸マグネシウムを加えて乾燥処理を行った。硫酸マグネシウムを濾別除去した後、有機層をエバポレーターで濃縮し、次いで、得られた濃縮物を真空乾燥することにより、硬化性ポリシルセスキオキサン化合物(1)〔硬化性PSQ(A1)〕を得た。硬化性PSQ(A1)の質量平均分子量(Mw)は5,500、分子量分布は3.40であった。
硬化性PSQ(A1)のIRスペクトルデータを以下に示す。
Si-CH3:1272cm-1,1409cm-1,Si-O:1132cm-1,C-F:1213cm-1
また、29Si-NMRスペクトル測定を行った結果、T1、T2、T3のピーク積分値比は、2:27:71であった。
【0203】
実施例及び比較例で用いた化合物を以下に示す。
(A成分)
硬化性PSQ(A1)
【0204】
(B成分及び比較用化合物)
熱酸発生剤(B1):下記式で示される化合物(酸発生温度:150℃)
【0205】
【0206】
熱酸発生剤(B2):下記式で示される化合物(酸発生温度:125℃)
【0207】
【0208】
熱酸発生剤(B3):下記式で示される化合物(酸発生温度:125℃)
【0209】
【0210】
硬化促進剤(X1):塩酸
硬化促進剤(X2):Ti錯体
【0211】
(C成分)
シランカップリング剤(C1):1,3,5-N-トリス〔3-(トリメトキシシリル)プロピル〕イソシアヌレート
シランカップリング剤(C2):3-(トリメトキシシリル)プロピルコハク酸無水物
【0212】
(実施例1)
硬化性PSQ(A1)100質量部に、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート:トリプロピレングリコール-n-ブチルエーテル=40:60(質量比)の混合溶剤、シランカップリング剤(C1)30質量部、及びシランカップリング剤(C2)3質量部を加え、全容を撹拌した。このものに、熱酸発生剤(B1)0.05質量部(10質量%酢酸エチル溶液として添加)を添加し、全容を十分に混合することにより、ダイボンド材を得た。
【0213】
(実施例2~6、比較例1~3)
実施例1において、各成分を第1表に示すものに変更したこと以外は、実施例1と同様にしてダイボンド材を得た。
【0214】
【0215】
実施例、及び比較例で得たダイボンド材を用いて、それぞれ以下の測定、試験を行った。結果を第2表に示す。
【0216】
[屈折率測定]
ダイボンド材を水平面上に吐出し、ペン屈折計(ATAGO社製、PEN-RI)の測定面を、25℃で圧着させることで屈折率(nD)を測定した。
【0217】
[硬化性評価]
自動硬化時間測定装置「まどか」(株式会社サイバー製)を用いて、以下の方法によりダイボンド材の硬化時間を測定した。
100℃に加熱されたステンレス板上に、0.20mLのサンプルを投入し、撹拌した。経時的に撹拌トルクが上昇するため、撹拌トルクが0.049N・cmになるまでの時間(秒)を測定した。撹拌条件は以下のとおりである。
・撹拌翼の自転回転数: 300rpm
・撹拌翼の公転回転数: 120rpm
・ギャップ(加熱板と撹拌翼間の距離): 0.2mm
【0218】
[粘度上昇率評価]
レオメーター(Anton Paar社製、MCR301)にて、半径50mm、コーン角度0.5°のコーンプレートを用い、25℃でせん断速度が2s-1時の粘度(初期粘度)を測定した。
サンプルを25℃で24時間静置した後、同様の条件で粘度を測定した。
得られた測定値から、下記式に基づいて粘度の上昇率を算出した。
[粘度上昇率]=[静置後の粘度]/[初期粘度]
【0219】
[接着強度評価]
一辺の長さが2mmの正方形(面積が4mm2)のシリコンチップのミラー面に、実施例及び比較例で得たダイボンド材を、それぞれ、厚さが約2μmになるように塗布し、塗布面を被着体(銀メッキ銅板)の上に載せ圧着した。その後、100℃で2時間加熱処理して硬化させて試験片付被着体を得た。この試験片付被着体を、予め100℃に加熱したボンドテスター(デイジ社製、シリーズ4000)の測定ステージ上に30秒間放置し、被着体から100μmの高さの位置より、スピード200μm/sで接着面に対し水平方向(せん断方向)に応力をかけ、100℃における、試験片と被着体との接着力(N/4mm2)を測定した。
【0220】
[固体Si-NMR測定]
実施例3で得られたダイボンド材を、170℃で、2時間加熱して硬化させて得られた硬化物について、以下の条件で固体Si-NMR測定した。結果を第3表に示す。
装置:ブルカー・バイオスピン社製AV-500
29Si-NMR共鳴周波数:99.352MHz
プローブ:7.0mmφCP-MAS用プローブ
外部標準:ヘキサメチルシクロトリシロキサン(-9.66ppm)
測定温度:25℃
試料回転数:4kHz
測定法:パルスプログラムhpdec(ハイパワーデカップリング)
29Si 90°パルス幅:5.5μs
繰り返し時間:600s
積算回数:128回
観測幅:30kHz
ブロードニングファクター:20Hz
【0221】
<データ処理法>
固体Si-NMR測定においては、time domain sizeを1024として測定データを取り込み、8192ポイントにゼロフィリングしてフーリエ変換した。
【0222】
<波形分離解析法>
フーリエ変換後のスペクトルの各ピークについて、ピーク形状の化学シフト、高さ、半値幅、Gauss波形とLorentz波形の成分比を可変パラメータとして、非線形最小二乗法により最適化計算を行った。
【0223】
【0224】
【0225】
<実施例6>
実施例6の発光装置は、
図1~4に示す例の発光装置1100の構造を有する側面発光型のLEDである。この発光装置(素子収容器)の大きさは、横幅(左右方向の幅)4.2mm、奥行き(前後方向の幅)1.0mm、厚さ(上下方向の幅)0.6mmである。
【0226】
素子収容器110は、成形体115が第1リード電極111(負極)及び第2リード電極112(正極)と一体に成形されて成っている。素子収容器110は、前面に横3.6mm、縦0.46mm(左右幅狭部0.36mm)、深さ0.3mmの凹部110aを有している。
【0227】
成形体115は、ポリアミド樹脂の母材中に、酸化チタンの白色顔料(40質量%)と、繊維状の珪酸カルシウム(ワラストナイト;10質量%)の充填剤を含有している。成形体115は、射出成形法により成形されており、(後方成形部の)後面の略中心にゲート痕115aを有している。第1リード電極111及び第2リード電極112は、銅合金の母体上に硫黄系光沢剤を用いた銀めっきが施された厚さ0.11mmの金属小片である。凹部110aの側壁面は成形体115の表面で構成され、凹部110aの底は成形体115の表面と、第1リード電極111及び第2リード電極112の表面で構成されている。この凹部110aの底を構成する第1リード電極111と第2リード電極112の部位は、第1素子実装部111aと第2素子実装部112aである。また、第1リード電極111及び第2リード電極112は、成形体115の外側にある部位として、第1外部接続端子部111b及び第2外部接続端子部112bを有している。第1外部接続端子部111b及び第2外部接続端子部112bは、成形体115の下面から延出してその下面に沿うように折り曲げられ、更に左端面または右端面に沿うように折り曲げられている。
成形体115は、凹部110aの縦方向に向かい合う2つの側壁1151,1152を結ぶ補強部117を有している。補強部117は、第1リード電極111と第2リード電極112を隔てる離隔領域1150上にあり、かつ凹部110aの横方向の略中央にある。補強部117の前面視形状は矩形状(幅のある直線状)であり、断面視形状は台形状である。
【0228】
素子収容器の凹部110a内には、2つの発光素子121(第1発光素子121と第2発光素子121)が収容されている。この発光素子121は、サファイア基板上に、窒化物半導体のn型層、活性層、p型層が順次積層された、青色(発光ピーク波長約455nm)発光可能な、縦0.24mm、横0.85mm、厚さ0.12mmの略直方体の半導体発光素子である。第1発光素子121と第2発光素子121は、第1素子実装部111a上と第2素子実装部112a上とにそれぞれ接着部材160を介して固定されている。第1発光素子121のn電極と第1素子実装部111a、第1発光素子121のp電極と第2発光素子121のn電極、第2発光素子121のp電極と第2素子実装部112aがワイヤ150により各々接続されている。本発明の発光装置においては、接着部材160は、実施例3のダイボンド材の硬化物である。ワイヤ150は、線径25μmの銀-金合金線(銀約80%/金約20%)である。
【0229】
素子収容器の凹部110a内には、封止部材130が発光素子121を被覆するように充填されている。封止部材130は、メチル・フェニルシリコーン樹脂を母材とし、その中にβサイアロン系蛍光体である緑色(発光ピーク波長約540nm)発光可能な第1蛍光体とフッ化珪酸カリウム系蛍光体である赤色(発光ピーク波長約630nm)発光可能な第2蛍光体からなる波長変換物質140と、を含有している。封止部材130の前面は、成形体115の前面と略同一面(硬化収縮により若干の凹面)となっている。波長変換物質140は、封止部材130中において、凹部110aの底面側に多く存在している。
【0230】
<評価1:素子収容器の成形体を構成する樹脂の耐熱性評価(樹脂反射率の変化)>
素子収容器の成形体を構成する樹脂の耐熱性を調べるために以下の実験を行った。
酸化チタンと繊維状のワラストナイトを含有するポリアミド樹脂(酸化チタン含有量40質量%、ワラストナイト含有量10質量%)の薄膜板(厚さ4mm)をサンプルとして用いて、CMS-35SP(村上色彩技術研究所製)にて、波長450nmにおける初期反射率(Ri)を室温(25℃)で測定した。
次いで、初期反射率(Ri)を測定した面を上にして、オーブンにて、100℃で100分、135℃で100分、又は150℃で100分の条件でサンプルを加熱した。サンプルを室温(25℃)まで冷却した後、波長450nmでの反射率(Rii)を同様にして測定し、下記式により反射率維持率(α)を算出した。結果を第3表に示す。
【0231】
【0232】
【0233】
目的の性能を有する発光装置を製造するためには、発光装置の製造過程で加熱したときに、素子収容器の反射率維持率(α)が99.8%以上であることが好ましい。上記の実験より、ポリアミド樹脂製の素子収容器に関しては、発光素子の実装工程における加熱温度を100℃程度に低くすることができれば、その劣化を抑制し得ることが分かる。
【0234】
<評価2:接着部材のダイシェア強度>
評価2においては、実施例3のダイボンド材により発光素子をリード電極上に固定する工程までを行った、実施例6に係る製造過程の発光装置を用いて、その効果を確認した。本実施例では、説明のために、実施例6に係る製造過程の発光装置と称することがある。本明細書において製造過程の発光装置とは、リード電極上に、ダイボンド材を塗布し、そのダイボンド材(塗布物)上に発光素子を配置した後、そのダイボンド材を硬化(実装)させた状態を示す。このときのダイボンド材の硬化条件は、100℃で400分(参考例1)、100℃で500分(実施例7)、100℃で600分(実施例8)、及び100℃で800分(実施例9)である。得られたサンプルについて、25℃又は150℃に設定したステージ温度でのダイシェア強度を測定した。測定装置はボンディングテスターPTR1000(レスカ製)を用い、センサーは2kgf用を使用した。シェア速度は0.3mm/sec、ツール高さは35μmとし、発光素子を側面から押して、発光素子と接着部材との間で破断が生じたときの強度(ダイシェア強度)を測定した。測定した値の平均値(n=24)を第5表に示す。
なお、評価2で用いた発光素子の大きさは縦0.24mm、横0.85mm、厚さ0.12mmの略直方体であった。
【0235】
【0236】
上記のように、実施例3のダイボンド材を100℃で硬化させる場合、加熱時間を500分以上にすることで、十分な強度を有する接着部材を得ることができる。
【0237】
上記の実験結果から、低温硬化性を有するダイボンド材を適切な条件で硬化させることで、周囲の樹脂製部材等の劣化を抑制しつつ、十分な強度を有する接着部材を得ることができる。この結果、光束が維持された発光装置を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0238】
本発明の一実施の形態に係る発光装置は、液晶ディスプレイのバックライト装置、各種照明器具、大型ディスプレイ、広告や行き先案内等の各種表示装置、プロジェクタ装置、さらには、デジタルビデオカメラ、ファクシミリ、コピー機、スキャナ等における画像読取装置などに利用することができる。
【符号の説明】
【0239】
110…素子収容器(110a…凹部)
111…第1リード電極
112…第2リード電極
111a…第1素子実装部
112a…第2素子実装部
111b…第1外部接続端子部
112b…第2外部接続端子部
115…成形体(115a…ゲート痕、1150…離隔領域、1151,1152…側壁、117…補強部)
121…発光素子
130…封止部材
140…波長変換物質
150…ワイヤ
160…接着部材
1100…発光装置