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特許7575309膜厚測定方法、ノッチ部の検出方法、および研磨装置
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  • 特許-膜厚測定方法、ノッチ部の検出方法、および研磨装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】膜厚測定方法、ノッチ部の検出方法、および研磨装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20241022BHJP
   B24B 37/013 20120101ALI20241022BHJP
   B24B 37/30 20120101ALI20241022BHJP
   B24B 49/04 20060101ALI20241022BHJP
   B24B 49/10 20060101ALI20241022BHJP
   B24B 49/12 20060101ALI20241022BHJP
   B24B 37/10 20120101ALI20241022BHJP
【FI】
H01L21/304 622S
B24B37/013
B24B37/30 E
B24B49/04 Z
B24B49/10
B24B49/12
B24B37/10
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021043328
(22)【出願日】2021-03-17
(65)【公開番号】P2022143015
(43)【公開日】2022-10-03
【審査請求日】2023-10-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100174089
【弁理士】
【氏名又は名称】郷戸 学
(74)【代理人】
【識別番号】100186749
【弁理士】
【氏名又は名称】金沢 充博
(72)【発明者】
【氏名】鍋谷 治
(72)【発明者】
【氏名】富樫 真吾
(72)【発明者】
【氏名】並木 計介
【審査官】久宗 義明
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-020242(JP,A)
【文献】特開2019-084614(JP,A)
【文献】特開2003-168663(JP,A)
【文献】特開2012-138442(JP,A)
【文献】特開2018-183820(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0134774(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0164917(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0130131(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B24B 37/013
B24B 37/30
B24B 49/04
B24B 49/10
B24B 49/12
B24B 37/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部が研磨パッドを支持する研磨テーブルに設置された膜厚測定装置を用いた基板の膜厚測定方法であって、
研磨ヘッドによって、前記基板を前記研磨パッドの研磨面上で回転させながら、かつ前記研磨ヘッドに対する前記膜厚測定装置の相対的な位置を制御しながら前記基板の膜厚を測定し、
前記膜厚の測定箇所は前記基板の周縁部であり、
前記研磨ヘッドに対する前記膜厚測定装置の相対的な位置を制御する工程は、前記膜厚の測定位置が、前記基板の周縁部を少なくとも含む領域を蛇行しながら前記基板の周方向に移動するように、前記研磨ヘッドに対する前記膜厚測定装置の相対的な位置を制御する工程である、膜厚測定方法。
【請求項2】
前記研磨ヘッドに対する前記膜厚測定装置の相対的な位置を制御する工程は、
前記研磨ヘッドの回転に合わせて、前記研磨ヘッドを前記研磨面に沿って揺動させる揺動モータおよび前記研磨テーブルを回転させるテーブルモータの少なくとも一方を制御する工程を含む、請求項1に記載の膜厚測定方法。
【請求項3】
前記基板の膜厚の測定中、前記研磨ヘッドが前記基板を前記研磨面に押し付けるように、前記研磨ヘッドの弾性膜によって形成された複数の圧力室の圧力を調整する、請求項1または2に記載の膜厚測定方法。
【請求項4】
前記基板の中央部を吸着しながら、前記基板の外周部を前記研磨面に押し付けるように、前記複数の圧力室の圧力を調整する、請求項3に記載の膜厚測定方法。
【請求項5】
前記膜厚測定装置は、光学式膜厚測定装置または渦電流式膜厚測定装置である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の膜厚測定方法。
【請求項6】
前記研磨ヘッドに対する前記膜厚測定装置の相対的な位置を制御する工程は、前記膜厚の測定位置が前記周縁部の周方向に軌跡を描くように、前記研磨ヘッドの回転角度に基づいて、前記研磨ヘッドに対する前記膜厚測定装置の相対的な位置を制御する工程である、請求項に記載の膜厚測定方法。
【請求項7】
前記研磨ヘッドに対する前記膜厚測定装置の相対的な位置を制御する工程は、前記膜厚の測定位置が、前記基板の周方向における複数の領域において、前記基板の半径方向に移動するように、前記研磨ヘッドに対する前記膜厚測定装置の相対的な位置を制御する工程であり、前記複数の領域は、少なくとも前記基板の周縁部を含む、請求項に記載の膜厚測定方法。
【請求項8】
請求項6乃至のいずれか一項に記載の方法を用いて基板の周縁部の膜厚を測定する工程と、
前記膜厚の測定結果に基づいて、前記基板のノッチ部の位置を決定する工程を含む、ノッチ部の検出方法。
【請求項9】
基板を研磨するための研磨装置であって、
研磨パッドを支持する研磨テーブルと、
前記研磨テーブルを回転させるテーブルモータと、
前記基板を前記研磨パッドの研磨面に押し付ける研磨ヘッドと、
前記研磨ヘッドを回転させる研磨ヘッド回転モータと、
前記研磨ヘッドに連結された研磨ヘッド揺動アームと、
前記研磨ヘッド揺動アームに連結され、前記研磨ヘッドを前記研磨面に沿って揺動させる揺動モータと、
少なくとも一部が前記研磨テーブルに取り付けられ、前記基板の膜厚を測定する膜厚測定装置と、
前記研磨装置の動作を制御する動作制御部を備え、
前記動作制御部は、前記研磨ヘッド回転モータに指令を発して前記研磨ヘッドを回転させることで前記基板を回転させながら、かつ前記研磨ヘッドに対する前記膜厚測定装置の相対的な位置を制御しながら、前記膜厚測定装置に前記基板の膜厚を測定させるように構成されており、
前記動作制御部は、前記研磨ヘッドの回転に合わせて、前記揺動モータおよび前記テーブルモータの少なくとも一方を制御することで、前記研磨ヘッドに対する前記膜厚測定装置の相対的な位置を制御するように構成されており、
前記動作制御部は、前記膜厚の測定位置が、前記基板の周縁部を少なくとも含む領域を蛇行しながら前記基板の周方向に移動するように、前記研磨ヘッドに対する前記膜厚測定装置の相対的な位置を制御するように構成されている、研磨装置。
【請求項10】
基板を研磨するための研磨装置であって、
研磨パッドを支持する研磨テーブルと、
前記研磨テーブルを回転させるテーブルモータと、
前記基板を前記研磨パッドの研磨面に押し付ける研磨ヘッドと、
前記研磨ヘッドを回転させる研磨ヘッド回転モータと、
前記研磨ヘッドに連結された研磨ヘッド揺動アームと、
前記研磨ヘッド揺動アームに連結され、前記研磨ヘッドを前記研磨面に沿って揺動させる揺動モータと、
少なくとも一部が前記研磨テーブルに取り付けられ、前記基板の膜厚を測定する膜厚測定装置と、
前記研磨装置の動作を制御する動作制御部を備え、
前記動作制御部は、前記研磨ヘッド回転モータに指令を発して前記研磨ヘッドを回転させることで前記基板を回転させながら、かつ前記研磨ヘッドに対する前記膜厚測定装置の相対的な位置を制御しながら、前記膜厚測定装置に前記基板の周縁部の膜厚を測定させ、前記膜厚の測定結果に基づいて、ノッチ部の位置を決定するように構成されており、
前記動作制御部は、前記研磨ヘッドの回転に合わせて、前記揺動モータおよび前記テーブルモータの少なくとも一方を制御することで、前記研磨ヘッドに対する前記膜厚測定装置の相対的な位置を制御するように構成されており、
前記動作制御部は、前記膜厚の測定位置が、前記基板の周縁部を少なくとも含む領域を蛇行しながら前記基板の周方向に移動するように、前記研磨ヘッドに対する前記膜厚測定装置の相対的な位置を制御するように構成されている、研磨装置。
【請求項11】
前記動作制御部は、前記膜厚の測定位置が周縁部の周方向に軌跡を描くように、前記研磨ヘッドの回転角度に基づいて、前記研磨ヘッドに対する前記膜厚測定装置の相対的な位置を制御するように構成されている、請求項9または10に記載の研磨装置。
【請求項12】
前記動作制御部は、前記膜厚の測定位置が、前記基板の周方向における複数の領域において、前記基板の半径方向に移動するように、前記研磨ヘッドに対する前記膜厚測定装置の相対的な位置を制御するように構成されており、
前記複数の領域は、少なくとも前記基板の周縁部を含む、請求項9または10に記載の研磨装置。
【請求項13】
前記研磨ヘッドは、前記基板を前記研磨面に押し付けるための弾性膜を備え、
前記研磨ヘッドには、前記弾性膜によって複数の圧力室が形成されており、
前記研磨装置は、前記複数の圧力室に連結された複数の圧力レギュレータをさらに備え、
前記動作制御部は、前記基板の膜厚の測定中、前記複数の圧力レギュレータに指令を発して、前記研磨ヘッドが前記基板を前記研磨面に押し付けるように、前記複数の圧力室の圧力を調整させるように構成されている、請求項乃至12のいずれか一項に記載の研磨装置。
【請求項14】
前記複数の圧力室に連結された複数の気体移送ラインと、
前記複数の気体移送ラインのうちの1つに連通する真空ラインと、
前記複数の気体移送ラインのうちの1つに接続された切替弁をさらに備え、
前記弾性膜には、前記複数の圧力室のうちの1つに連通する貫通孔が形成されており、
前記動作制御部は、前記基板の膜厚の測定中、前記複数の圧力レギュレータに指令を発して、前記基板の外周部を前記研磨面に押し付けるように、前記複数の圧力室の圧力を調整させながら、前記切替弁に指令を発して、前記複数の気体移送ラインのうちの1つと前記真空ラインを連通させることで基板の中央部を吸着させるように構成されている、請求項13に記載の研磨装置。
【請求項15】
前記膜厚測定装置は、光学式膜厚測定装置または渦電流式膜厚測定装置である、請求項乃至14のいずれか一項に記載の研磨装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハなどの基板の膜厚を測定する膜厚測定方法および研磨装置に関する。また、本発明は、そのような膜厚測定方法を用いたノッチ部の検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスの高集積化・高密度化に伴い、回路の配線がますます微細化し、多層配線の層数も増加している。回路の微細化を図りながら多層配線を実現しようとすると、下側の層の表面凹凸を踏襲しながら段差がより大きくなるので、配線層数が増加するに従って、薄膜形成における段差形状に対する膜被覆性(ステップカバレッジ)が悪くなる。したがって、多層配線するためには、このステップカバレッジを改善し、然るべき過程で平坦化処理しなければならない。
【0003】
したがって、半導体デバイスの製造工程においては、半導体デバイス表面の平坦化がますます重要になっている。この表面の平坦化において最も重要な技術は、化学機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)である。この化学機械研磨(以下、CMPという)は、シリカ(SiO)等の砥粒を含んだ研磨液を研磨パッドの研磨面上に供給しつつウェーハなどの基板を研磨面に摺接させて研磨を行うものである。
【0004】
CMPを行うための研磨装置は、研磨面を有する研磨パッドを支持する研磨テーブルと、基板を保持するための研磨ヘッドを備えている。このような研磨装置は、研磨テーブルと研磨ヘッドとを相対運動させ、さらにスラリーなどの研磨液を研磨パッドの研磨面上に供給しながら、研磨ヘッドにより基板を研磨パッドの研磨面に押し付けるように構成される。基板の表面は、研磨液の存在下で研磨面に摺接し、研磨液の化学的作用、および研磨液に含まれる砥粒の機械的作用により、基板の表面は平坦かつ鏡面に研磨される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-138442号公報
【文献】特開2005-205594号公報
【文献】特開2015-193068号公報
【文献】特開2015-217445号公報
【文献】特開2020-104201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
通常、ウェーハなどの基板は、その全面に亘って均一な膜厚分布を有することが必要とされるが、CMPの前工程や研磨の不均一性に起因して基板の膜厚がばらつく場合がある。CMPの前工程での膜厚ばらつきの要因としては、基板の平坦度や膜付け処理装置でのばらつきに起因するものがある。
【0007】
基板の膜厚がばらつく場合、ばらつきを解消するための研磨が必要となるが、ばらつきを解消させるためには基板の膜厚分布を正確に把握する必要がある。従来から研磨テーブルに設置された膜厚センサを用いて基板の研磨中に基板の膜厚を測定する方法がある。このような方法では、膜厚センサが基板を横切る間に基板上の複数の測定点における膜厚を測定するが、測定点は、基板の回転速度、膜厚センサの設置位置、研磨時間などに依存するため、精密な膜厚測定が行えないことがある。
【0008】
また、研磨装置とは別に設置された膜厚測定器で基板の膜厚分布を測定する方法があるが、そのような膜厚測定器で測定された膜厚分布に基づいて、膜厚のばらつきを解消するための研磨を行う場合、研磨中、膜厚測定器で測定した基板の膜厚の測定値に対応する基板上の位置を把握することが難しいという問題がある。
【0009】
本発明は、上述した従来の問題点に鑑みてなされたもので、基板の膜厚分布を正確に把握することができる膜厚測定方法および研磨装置を提供することを目的とする。さらに本発明は、膜厚の複数の測定値に対応する基板上の位置を把握するために基板のノッチ部の位置を正確に検出する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一態様では、少なくとも一部が研磨パッドを支持する研磨テーブルに設置された膜厚測定装置を用いた基板の膜厚測定方法であって、研磨ヘッドによって、前記基板を前記研磨パッドの研磨面上で回転させながら、かつ前記研磨ヘッドに対する前記膜厚測定装置の相対的な位置を制御しながら前記基板の膜厚を測定する、膜厚測定方法が提供される。
【0011】
一態様では、前記研磨ヘッドに対する前記膜厚測定装置の相対的な位置を制御する工程は、前記研磨ヘッドの回転に合わせて、前記研磨ヘッドを前記研磨面に沿って揺動させる揺動モータおよび前記研磨テーブルを回転させるテーブルモータの少なくとも一方を制御する工程を含む。
一態様では、前記基板の膜厚の測定中、前記研磨ヘッドが前記基板を前記研磨面に押し付けるように、前記研磨ヘッドの弾性膜によって形成された複数の圧力室の圧力を調整する。
一態様では、前記基板の中央部を吸着しながら、前記基板の外周部を前記研磨面に押し付けるように、前記複数の圧力室の圧力を調整する。
一態様では、前記膜厚測定装置は、光学式膜厚測定装置または渦電流式膜厚測定装置である。
一態様では、前記膜厚の測定箇所は前記基板の周縁部である。
一態様では、前記研磨ヘッドに対する前記膜厚測定装置の相対的な位置を制御する工程は、前記膜厚の測定位置が前記周縁部の周方向に軌跡を描くように、前記研磨ヘッドの回転角度に基づいて、前記研磨ヘッドに対する前記膜厚測定装置の相対的な位置を制御する工程である。
一態様では、前記研磨ヘッドに対する前記膜厚測定装置の相対的な位置を制御する工程は、前記膜厚の測定位置が、前記基板の周方向における複数の領域において、前記基板の半径方向に移動するように、前記研磨ヘッドに対する前記膜厚測定装置の相対的な位置を制御する工程であり、前記複数の領域は、少なくとも前記基板の周縁部を含む。
一態様では、前記研磨ヘッドに対する前記膜厚測定装置の相対的な位置を制御する工程は、前記膜厚の測定位置が、前記基板の周縁部を少なくとも含む領域を蛇行しながら前記基板の周方向に移動するように、前記研磨ヘッドに対する前記膜厚測定装置の相対的な位置を制御する工程である。
【0012】
一態様では、上記方法を用いて基板の周縁部の膜厚を測定する工程と、前記膜厚の測定結果に基づいて、前記基板のノッチ部の位置を決定する工程を含む、ノッチ部の検出方法が提供される。
【0013】
一態様では、基板を研磨するための研磨装置であって、研磨パッドを支持する研磨テーブルと、前記研磨テーブルを回転させるテーブルモータと、前記基板を前記研磨パッドの研磨面に押し付ける研磨ヘッドと、前記研磨ヘッドを回転させる研磨ヘッド回転モータと前記研磨ヘッドに連結された研磨ヘッド揺動アームと、前記研磨ヘッド揺動アームに連結され、前記研磨ヘッドを前記研磨面に沿って揺動させる揺動モータと、少なくとも一部が前記研磨テーブルに取り付けられ、前記基板の膜厚を測定する膜厚測定装置と、前記研磨装置の動作を制御する動作制御部を備え、前記動作制御部は、前記研磨ヘッド回転モータに指令を発して前記研磨ヘッドを回転させることで前記基板を回転させながら、かつ前記研磨ヘッドに対する前記膜厚測定装置の相対的な位置を制御しながら、前記膜厚測定装置に前記基板の膜厚を測定させるように構成されている、研磨装置が提供される。
【0014】
一態様では、基板を研磨するための研磨装置であって、研磨パッドを支持する研磨テーブルと、前記研磨テーブルを回転させるテーブルモータと、前記基板を前記研磨パッドの研磨面に押し付ける研磨ヘッドと、前記研磨ヘッドを回転させる研磨ヘッド回転モータと、前記研磨ヘッドに連結された研磨ヘッド揺動アームと、前記研磨ヘッド揺動アームに連結され、前記研磨ヘッドを前記研磨面に沿って揺動させる揺動モータと、少なくとも一部が前記研磨テーブルに取り付けられ、前記基板の膜厚を測定する膜厚測定装置と、前記研磨装置の動作を制御する動作制御部を備え、前記動作制御部は、前記研磨ヘッド回転モータに指令を発して前記研磨ヘッドを回転させることで前記基板を回転させながら、かつ前記研磨ヘッドに対する前記膜厚測定装置の相対的な位置を制御しながら、前記膜厚測定装置に前記基板の周縁部の膜厚を測定させ、前記膜厚の測定結果に基づいて、ノッチ部の位置を決定するように構成されている、研磨装置が提供される。
【0015】
一態様では、前記動作制御部は、前記研磨ヘッドの回転に合わせて、前記揺動モータおよび前記テーブルモータの少なくとも一方を制御することで、前記研磨ヘッドに対する前記膜厚測定装置の相対的な位置を制御するように構成されている。
一態様では、前記動作制御部は、前記膜厚の測定位置が周縁部の周方向に軌跡を描くように、前記研磨ヘッドの回転角度に基づいて、前記研磨ヘッドに対する前記膜厚測定装置の相対的な位置を制御するように構成されている。
一態様では、前記動作制御部は、前記膜厚の測定位置が、前記基板の周方向における複数の領域において、前記基板の半径方向に移動するように、前記研磨ヘッドに対する前記膜厚測定装置の相対的な位置を制御するように構成されており、前記複数の領域は、少なくとも前記基板の周縁部を含む。
一態様では、前記動作制御部は、前記膜厚の測定位置が、前記基板の周縁部を少なくとも含む領域を蛇行しながら前記基板の周方向に移動するように、前記研磨ヘッドに対する前記膜厚測定装置の相対的な位置を制御するように構成されている。
一態様では、前記研磨ヘッドは、前記基板を前記研磨面に押し付けるための弾性膜を備え、前記研磨ヘッドには、前記弾性膜によって複数の圧力室が形成されており、前記研磨装置は、前記複数の圧力室に連結された複数の圧力レギュレータをさらに備え、前記動作制御部は、前記基板の膜厚の測定中、前記複数の圧力レギュレータに指令を発して、前記研磨ヘッドが前記基板を前記研磨面に押し付けるように、前記複数の圧力室の圧力を調整させるように構成されている。
一態様では、前記複数の圧力室に連結された複数の気体移送ラインと、前記複数の気体移送ラインのうちの1つに連通する真空ラインと、前記複数の気体移送ラインのうちの1つに接続された切替弁をさらに備え、前記弾性膜には、前記複数の圧力室のうちの1つに連通する貫通孔が形成されており、前記動作制御部は、前記基板の膜厚の測定中、前記複数の圧力レギュレータに指令を発して、前記基板の外周部を前記研磨面に押し付けるように、前記複数の圧力室の圧力を調整させながら、前記切替弁に指令を発して、前記複数の気体移送ラインのうちの1つと前記真空ラインを連通させることで基板の中央部を吸着させるように構成されている。
一態様では、前記膜厚測定装置は、光学式膜厚測定装置または渦電流式膜厚測定装置である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、研磨ヘッドに対する膜厚測定装置の相対的な位置を制御しながら、基板の膜厚を測定する。これにより、膜厚の測定精度を向上させることができ、基板の膜厚分布を正確に把握することができ、基板のノッチ部の位置を正確に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】基板の周縁部を示す拡大断面図である。
図2】基板のノッチ部を模式的に示す平面図である。
図3】研磨装置の一実施形態を示す模式図である。
図4】処理システムによって生成されたスペクトルの一例を示す図である。
図5】基板Wの表面(被研磨面)上の複数の測定点の一例を示す模式図である。
図6】局所荷重付与装置を示す斜視図である。
図7】研磨ヘッドの断面図である。
図8】ローラーと円環レールとを示す斜視図である。
図9】基板の研磨方法の一実施形態を示すフローチャートである。
図10】基板の研磨方法の一実施形態を示すフローチャートである。
図11】膜厚センサの位置を示す図である。
図12】膜厚の測定位置の軌跡を示す図である。
図13】膜厚の測定位置の軌跡を示す図である。
図14】膜厚測定方法の他の実施形態を示す模式図である。
図15】膜厚測定方法の他の実施形態を示す模式図である。
図16】基板の周縁部の膜厚分布の一例を示す模式図である。
図17図16に示す基板を修正研磨したときの局所加重の大きさと基板角度の関係を示すグラフである。
図18図16に示す基板を修正研磨したときの研磨ヘッドの回転速度と基板角度の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
本明細書では、基板の周縁部を、基板の最外周に位置するベベル部と、このベベル部の半径方向内側に位置するトップエッジ部およびボトムエッジ部と、結晶方位を特定するために基板の周縁部に形成されたノッチ部とを含む領域として定義する。
【0019】
図1は、基板の周縁部を示す拡大断面図である。ベベル部は、基板Wの最外周面を構成する部分(符号Bで示す)である。トップエッジ部は、ベベル部Bよりも半径方向内側に位置する平坦部E1である。ボトムエッジ部は、トップエッジ部とは反対側に位置し、ベベル部Bよりも半径方向内側に位置する平坦部E2である。トップエッジ部E1は、デバイスが形成された領域を含むこともある。
【0020】
図2は、基板のノッチ部を模式的に示す平面図である。図2の基板Wにおいてノッチ部は、符号Nで示す周縁部に形成された切り欠きである。
【0021】
図3は、研磨装置の一実施形態を示す模式図である。図3に示すように、研磨装置は、研磨パッド2を支持する研磨テーブル3と、研磨テーブル3を回転させるテーブルモータ6と、ウェーハなどの基板Wを研磨パッド2に押し付けて回転させる研磨ヘッド1と、研磨ヘッド1を回転させる研磨ヘッド回転モータ12と、支軸14の上端に連結された研磨ヘッド揺動アーム16と、研磨ヘッド揺動アーム16の自由端に取り付けられたヘッドシャフト10と、研磨パッド2上にスラリーなどの研磨液を供給するための研磨液供給ノズル5と、基板Wの膜厚を測定する膜厚測定装置40と、研磨装置の動作を制御するための動作制御部9を備えている。研磨パッド2の上面は、基板Wを研磨する研磨面2aを構成する。研磨ヘッド揺動アーム16は、研磨テーブル3の上方に配置されており、研磨パッド2の研磨面2aと平行に配置されている。
【0022】
研磨ヘッド1はヘッドシャフト10に連結されており、研磨ヘッド揺動アーム16は、ヘッドシャフト10を介して研磨ヘッド1に連結されている。ヘッドシャフト10は、研磨ヘッド回転モータ12に連結されている。研磨ヘッド回転モータ12は、研磨ヘッド1をヘッドシャフト10とともに矢印で示す方向に回転させる。ヘッドシャフト10は、図示しない昇降装置に連結されている。研磨ヘッド1は、昇降装置によってヘッドシャフト10とともに上昇および下降されるようになっている。本実施形態では、研磨ヘッド回転モータ12は、研磨ヘッド揺動アーム16内に配置されているが、一実施形態では、研磨ヘッド回転モータ12は、研磨ヘッド揺動アーム16の外側に配置されてもよい。
【0023】
研磨装置は、研磨ヘッド揺動アーム16に連結され、研磨ヘッド1を研磨面2aに沿って揺動させる揺動モータ15をさらに備えている。本実施形態では、揺動モータ15は、支軸14内に配置されている。研磨ヘッド揺動アーム16は、揺動モータ15によって支軸14を中心に回転可能に構成されている。研磨ヘッド1は、研磨ヘッド揺動アーム16の旋回により、基板Wの図示しない受取位置と研磨テーブル3の上方位置との間を移動される。
【0024】
一実施形態では、研磨ヘッド揺動アーム16は支軸14に固定され、揺動モータ15は支軸14に連結されていてもよく、揺動モータ15は、支軸14の回転軸を中心に支軸14と研磨ヘッド揺動アーム16とを一体に回転させるように構成されていてもよい。
【0025】
研磨テーブル3はテーブルモータ6に連結されており、テーブルモータ6は研磨テーブル3および研磨パッド2を矢印で示す方向に回転させるように構成されている。研磨ヘッド1および研磨テーブル3の回転方向は、本実施形態に限定されない。
【0026】
以下、本明細書では、テーブルモータ6、研磨ヘッド回転モータ12、および揺動モータ15を総称して、モータ6,12,15と呼ぶことがある。モータ6,12,15は、それらの回転角度を制御可能に構成されている、モータ6,12,15の例としてサーボモータが挙げられる。テーブルモータ6には、研磨テーブル3の回転角度を検出する角度検出器17が取り付けられており、研磨ヘッド回転モータ12には、研磨ヘッド1の回転角度を検出する角度検出器18が取り付けられており、揺動モータ15には、研磨ヘッド揺動アーム16の回転角度(すなわち、研磨ヘッド1の支軸14周りの回転角度)を検出する角度検出器19が取り付けられている。角度検出器17,18,19の例としてロータリーエンコーダが挙げられる。
【0027】
動作制御部9は、プログラムが格納された記憶装置9aと、プログラムに含まれる命令に従って演算を実行する演算装置9bを備えている。演算装置9bは、記憶装置9aに格納されているプログラムに含まれる命令に従って演算を行うCPU(中央処理装置)またはGPU(グラフィックプロセッシングユニット)などを含む。記憶装置9aは、演算装置9bがアクセス可能な主記憶装置(例えばランダムアクセスメモリ)と、データおよびプログラムを格納する補助記憶装置(例えば、ハードディスクドライブまたはソリッドステートドライブ)を備えている。動作制御部9は、少なくとも1台のコンピュータから構成されている。ただし、動作制御部9の具体的構成はこの例に限定されない。
【0028】
動作制御部9は、図示しない昇降装置、モータ6,12,15、角度検出器17,18,19、膜厚測定装置40、および研磨液供給ノズル5に電気的に接続されている。昇降装置、モータ6,12,15、角度検出器17,18,19、膜厚測定装置40、および研磨液供給ノズル5の動作は動作制御部9によって制御される。
【0029】
膜厚測定装置40の一部は、研磨テーブル3に取り付けられている。本実施形態の膜厚測定装置40は、基板Wの表面に光を導き、基板Wからの反射光の強度測定データに基づいて基板Wの膜厚を決定する光学式膜厚測定装置である。光学式膜厚測定装置40は、膜厚センサ41と、膜厚センサ41に連結された処理システム49を備えている。膜厚センサ41は、研磨テーブル3に取り付けられており、研磨テーブル3および研磨パッド2とともに一体に回転する。膜厚センサ41は、光を発する光源44と、分光器47と、光源44および分光器47に連結された光学センサヘッド7と、を備えている。処理システム49は、分光器47に連結されている。光学センサヘッド7の位置は、研磨テーブル3および研磨パッド2が一回転するたびに研磨パッド2上の基板Wの表面を横切る位置である。一実施形態では、膜厚測定装置40の全体が研磨テーブル3に取り付けられていてもよい。
【0030】
処理システム49は、後述するスペクトルの生成および基板Wの膜厚検出を実行するためのプログラムなどのプログラムが格納された記憶装置49aと、プログラムに含まれる命令に従って演算を実行する演算装置49bを備えている。演算装置49bは、記憶装置9aに格納されているプログラムに含まれる命令に従って演算を行うCPU(中央処理装置)またはGPU(グラフィックプロセッシングユニット)などを含む。記憶装置49aは、演算装置49bがアクセス可能な主記憶装置(例えばランダムアクセスメモリ)と、データおよびプログラムを格納する補助記憶装置(例えば、ハードディスクドライブまたはソリッドステートドライブ)を備えている。処理システム49は、少なくとも1台のコンピュータから構成されている。ただし、処理システム49の具体的構成はこの例に限定されない。
【0031】
光源44から発せられた光は、光学センサヘッド7に伝送され、光学センサヘッド7から基板Wの表面に導かれる。光は基板Wの表面で反射し、基板Wの表面からの反射光は光学センサヘッド7によって受けられ、分光器47に送られる。分光器47は反射光を波長に従って分解し、各波長での反射光の強度を測定する。反射光の強度測定データは、処理システム49に送られる。
【0032】
処理システム49は、反射光の強度測定データから反射光のスペクトルを生成するように構成されている。反射光のスペクトルは、反射光の波長と強度との関係を示す線グラフ(すなわち分光波形)として表される。反射光の強度は、反射率または相対反射率などの相対値として表わすこともできる。
【0033】
図4は、処理システム49によって生成されたスペクトルの一例を示す図である。スペクトルは、光の波長と強度との関係を示す線グラフ(すなわち分光波形)として表される。図4において、横軸は基板から反射した光の波長を表わし、縦軸は反射した光の強度から導かれる相対反射率を表わす。相対反射率とは、反射光の強度を示す指標値であり、光の強度と所定の基準強度との比である。各波長において光の強度(実測強度)を所定の基準強度で割ることにより、装置の光学系や光源固有の強度のばらつきなどの不要なノイズを実測強度から除去することができる。
【0034】
基準強度は、各波長について予め測定された光の強度であり、相対反射率は各波長において算出される。具体的には、各波長での光の強度(実測強度)を、対応する基準強度で割り算することにより相対反射率が求められる。基準強度は、例えば、光学センサヘッド7から発せられた光の強度を直接測定するか、または光学センサヘッド7から鏡に光を照射し、鏡からの反射光の強度を測定することによって得られる。あるいは、基準強度は、膜が形成されていないシリコン基板(ベア基板)を研磨パッド2上で水の存在下で水研磨しているとき、または上記シリコン基板(ベア基板)が研磨パッド2上に置かれているときに、分光器47により測定されたシリコン基板からの反射光の強度としてもよい。
【0035】
実際の研磨では、実測強度からダークレベル(光を遮断した条件下で得られた背景強度)を引き算して補正実測強度を求め、さらに基準強度から上記ダークレベルを引き算して補正基準強度を求め、そして、補正実測強度を補正基準強度で割り算することにより、相対反射率が求められる。具体的には、相対反射率R(λ)は、次の式(1)を用いて求めることができる。
【数1】
ここで、λは基板から反射した光の波長であり、E(λ)は波長λでの強度であり、B(λ)は波長λでの基準強度であり、D(λ)は光を遮断した条件下で測定された波長λでの背景強度(ダークレベル)である。
【0036】
光学センサヘッド7は、研磨テーブル3が一回転するたびに、基板Wの表面(被研磨面)に光を導き、基板Wからの反射光を受ける。反射光は分光器47に送られる。分光器47は反射光を波長に従って分解し、各波長での反射光の強度を測定する。反射光の強度測定データは、処理システム49に送られ、処理システム49は反射光の強度測定データから図2に示すようなスペクトルを生成する。さらに、処理システム49は、反射光のスペクトルから基板Wの膜厚を決定する。反射光のスペクトルは、基板Wの膜厚に従って変化する。したがって、処理システム49は、反射光のスペクトルから基板Wの膜厚を決定することができる。反射光のスペクトルから基板Wの膜厚を決定する具体的な方法は、公知の技術を用いることができる。図4に示す例では、反射光のスペクトルは、相対反射率と反射光の波長との関係を示す分光波形であるが、反射光のスペクトルは、反射光の強度自体と、反射光の波長との関係を示す分光波形であってもよい。
【0037】
処理システム49は、決定した基板Wの膜厚データを動作制御部9に送信する。動作制御部9は、基板Wの膜厚に基づいて、基板Wの研磨動作を制御する。例えば、動作制御部9は、後述する圧力レギュレータに指令を発して基板Wの膜厚に基づいて基板Wの研磨面2aに対する押し付け力を調整させる。
【0038】
本実施形態の光学式膜厚測定装置40は、基板W上の複数の測定点での複数の膜厚を測定するように構成されている。本実施形態では、光学センサヘッド7が基板Wを一回横切る間、光学センサヘッド7は基板W上の複数の測定点に光を放ち、これら複数の測定点からの反射光を受ける。
【0039】
本実施形態では、1つの膜厚センサ41のみが研磨テーブル3内に設けられているが、複数の膜厚センサ41が研磨テーブル3内に設けられてもよい。さらに一実施形態では、複数の光学センサヘッド7と、複数の光学センサヘッド7に連結された1つの光源44と、複数の光学センサヘッド7に連結された1つの分光器47が研磨テーブル3内に設けられていてもよい。複数の膜厚センサ41(または複数の光学センサヘッド7)を設けることで基板W上の膜厚の測定点が増え、より正確な膜厚プロファイルを取得することができる。
【0040】
図5は、基板Wの表面(被研磨面)上の複数の測定点の一例を示す模式図である。図5に示すように、光学センサヘッド7は、基板Wを横切るたびに、複数の測定点MPに光を導き、これら複数の測定点MPからの反射光を受ける。したがって、処理システム49は、光学センサヘッド7が基板Wを横切るたびに(すなわち、研磨テーブル3が一回転するたびに)、複数の測定点MPからの反射光の複数のスペクトルを生成し、複数のスペクトルに基づいて、それぞれの測定点MPにおける膜厚を決定する。各測定点MPの位置は、光の照射タイミング、研磨テーブル3の回転速度、研磨ヘッド1の位置、および研磨ヘッド1の回転速度等に基づいて決定される。
【0041】
一実施形態では、膜厚測定装置40は、渦電流式膜厚測定装置であってもよく、膜厚センサ41は、渦電流センサであってもよい。渦電流センサは、そのセンサコイルが基板Wの導電性膜内に磁束を通過させて渦電流を発生させることにより、基板Wの膜厚に応じた渦電流を検出し、渦電流信号を出力する。渦電流信号は、処理システム49に送られる。処理システム49は、渦電流信号に基づいて基板Wの膜厚を決定する。渦電流センサは、研磨テーブル3が一回転するたびに、渦電流を検出し、図5を参照して説明した実施形態と同様に、基板Wを一回横切る間、複数の測定点MPにおける渦電流を検出し、それぞれの測定点MPにおける渦電流信号を出力する。処理システム49は、複数の渦電流信号に基づいて、それぞれの測定点MPにおける膜厚を決定する。
【0042】
研磨ヘッド1は、基板Wを研磨パッド2に押し付けるヘッド本体21と、基板Wを囲むように配置されたリテーナリング60とを備えている。ヘッド本体21およびリテーナリング60は、ヘッドシャフト10と一体に回転するように構成されている。リテーナリング60は、ヘッド本体21とは独立して上下動可能に構成されている。リテーナリング60は、ヘッド本体21から半径方向外側に張り出している。基板Wの研磨中、リテーナリング60は研磨パッド2の研磨面2aに接触し、回転しながら基板Wの外側で研磨パッド2を押し付ける。
【0043】
研磨装置は、内部に複数のローラー(後述する)が配置された回転リング51と、静止リング91をさらに備えている。回転リング51は、リテーナリング60の上面に固定されており、リテーナリング60と共に回転可能に構成されている。静止リング91は、回転リング51上に配置されている。回転リング51は、研磨ヘッド1と共に回転するが、静止リング91は回転せず、静止している。
【0044】
研磨装置は、静止リング91の一部に局所荷重を加える局所荷重付与装置30をさらに備えている。局所荷重付与装置30は、リテーナリング60の上方に配置されており、研磨ヘッド揺動アーム16に固定されている。研磨中のリテーナリング60はその軸心周りに回転するが、局所荷重付与装置30はリテーナリング60とは一体に回転せず、静止している。静止リング91は、局所荷重付与装置30に連結されている。
【0045】
図6は局所荷重付与装置30を示す斜視図である。図6に示すように、局所荷重付与装置30は、静止リング91に下向きの局所荷重を与える2つの押圧ロッド31と、ブリッジ32と、エアシリンダ(荷重発生装置)33と、エアシリンダ33内の圧縮気体の圧力を調節する荷重発生用圧力レギュレータR1と、リニアガイド38と、ガイドロッド39と、ユニットベース34を備えている。以下、荷重発生用圧力レギュレータR1を単に圧力レギュレータR1と呼ぶ。
【0046】
ユニットベース34は研磨ヘッド揺動アーム16(図3参照)に固定されている。ユニットベース34にはエアシリンダ33およびリニアガイド38が取り付けられている。エアシリンダ33のピストンロッド33aおよびガイドロッド39は、ブリッジ32に接続されている。ガイドロッド39はリニアガイド38により低摩擦で上下動自在に支持されている。
【0047】
エアシリンダ33によって発生した荷重はブリッジ32に伝えられる。ブリッジ32は2つの押圧ロッド(押圧部材)31により静止リング91に接続されており、押圧ロッド31はブリッジ32に加えられたエアシリンダ33の荷重を静止リング91に伝達する。このようにして、押圧ロッド31は静止リング91の一部に局所荷重を加える。局所荷重付与装置30は、静止リング91および回転リング51を介してリテーナリング60の一部に下向きの局所荷重を与える。すなわち、下向きの局所荷重は、静止リング91および回転リング51を通じてリテーナリング60に伝達される。
【0048】
エアシリンダ33と圧力レギュレータR1との組み合わせは、押圧ロッド31から静止リング91に加えられる局所荷重を調節するアクチュエータを構成する。一実施形態では、上記局所荷重を調節するアクチュエータは、サーボモータと、ボールねじ機構と、モータドライバとの組み合わせから構成されてもよい。
【0049】
エアシリンダ33は、気体移送ラインF1を通じて圧縮気体供給源(図示せず)に接続されている。圧力レギュレータR1は、気体移送ラインF1に設けられている。圧縮気体供給源からの圧縮気体は、圧力レギュレータR1を通ってエアシリンダ33に供給される。圧力レギュレータR1は、動作制御部9に電気的に接続されている。基板Wの研磨中、動作制御部9は、圧力レギュレータR1に指令を出して、エアシリンダ33内の圧縮気体の圧力を調節させる。
【0050】
基板Wは次のようにして研磨される。研磨テーブル3および研磨ヘッド1を図3の矢印で示す方向に回転させながら、研磨液供給ノズル5から研磨液が研磨テーブル3上の研磨パッド2の研磨面2aに供給される。基板Wは研磨ヘッド1によって回転されながら、研磨パッド2上に研磨液が存在した状態で研磨パッド2の研磨面2aに押し付けられる。基板Wの表面は、研磨液の化学的作用と、研磨液に含まれる砥粒または研磨パッド2の機械的作用により研磨される。
【0051】
研磨装置は、必要に応じて局所荷重付与装置30から静止リング91に局所荷重を加えながら基板Wを研磨する。このとき、リテーナリング60は研磨パッド2の研磨面2aに接触し、回転しながら基板Wの外側で研磨パッド2を押し付け、かつ研磨面2aの一部に下向きの局所荷重を与える。基板Wの研磨中にリテーナリング60の一部に下向きの局所荷重を与える理由は、基板Wの周縁部のプロファイルを積極的に制御するためである。
【0052】
リテーナリング60が研磨面2aの一部に下向きの局所荷重を与えると、研磨面2aの一部が上方に盛り上がる。上方に盛り上がった研磨面2aは基板Wに局所的な上向きの力(局所反発力)を加える。局所反発力を受けた部分の基板Wの研磨レートは大きくなる。局所反発力の大きさはリテーナリング60が研磨パッド2を押し付ける力の大きさに依存し、局所反発力の大きさに依存して研磨レートは変化する。すなわち、局所反発力が大きくなるほど、研磨レートは大きくなる。局所反発力が発生する位置は、リテーナリング60が研磨面2aに与える局所荷重位置に依存する。例えば、動作制御部9は、局所荷重を上げたいときは、圧力レギュレータR1に指令を発して、エアシリンダ33内の圧縮気体の圧力を上昇させる。
【0053】
次に、研磨ヘッド1の詳細について説明する。図7は、研磨ヘッド1の断面図である。ヘッド本体21は、ヘッドシャフト10(図1参照)に連結されたキャリア63と、基板Wを研磨面2aに押し付けるための弾性膜(メンブレン)65と、キャリア63に対するリテーナリング60の傾動および上下移動を許容しつつリテーナリング60を支持する球面軸受66とを備えている。リテーナリング60は連結部材75を介して球面軸受66に連結され、支持されている。連結部材75はキャリア63内で上下動可能に配置されている。弾性膜(メンブレン)65は、キャリア63の下面に取り付けられている。
【0054】
弾性膜65の下面は、基板Wを研磨パッド2の研磨面2aに対して押し付ける押圧面65aを構成する。キャリア63と弾性膜65との間には4つの圧力室70,71,72,73が形成されている。中央の圧力室70は円形であり、他の圧力室71,72,73は環状である。これらの圧力室70,71,72,73は、同心上に配列されている。本実施形態では、弾性膜65は、4つの圧力室70~73を形成するが、上述の圧力室の数は例示であり、適宜変更してもよい。
【0055】
圧力室70,71,72,73にはそれぞれ気体移送ラインF2,F3,F4,F5が連結されている。気体移送ラインF2,F3,F4,F5の一端は、研磨装置が設置されている工場に設けられたユーティリティとしての圧縮気体供給源(図示せず)に接続されている。圧縮空気等の圧縮気体は、気体移送ラインF2,F3,F4,F5を通じて圧力室70,71,72,73にそれぞれ供給されるようになっている。圧力室70~73に圧縮気体が供給されることで、弾性膜65が膨らみ、圧力室70~73内の圧縮気体は、弾性膜65を介して基板Wを研磨パッド2の研磨面2aに押し付ける。圧力室70~73は、基板Wを研磨パッド2の研磨面2aに押し付けるためのアクチュエータとして機能する。
【0056】
弾性膜65には、複数の圧力室70~73のうちの1つに連通する貫通孔65bが形成されている。具体的には、圧力室70を構成する弾性膜65の部位には貫通孔65bが形成されており、貫通孔65bは圧力室70に連通している。圧力室70に連通する気体移送ラインF2には切替弁74が接続されている。気体移送ラインF2は、切替弁74を介して真空ラインV1に連結されており、圧力室70内に真空を形成することが可能となっている。真空ラインV1の一端は、図示しない真空ポンプなどの真空装置に接続されている。切替弁74は、動作制御部9に電気的に接続されており、動作制御部9は切替弁74に指令を発して真空ラインV1を気体移送ラインF2に連通させる。これにより、圧力室70に真空が形成される。
【0057】
圧力室70に真空を形成することにより基板Wの中央部が吸着され、基板Wが研磨ヘッド1に吸着保持される。また、この圧力室70に圧縮気体を供給することにより、基板Wが研磨ヘッド1からリリースされる。弾性膜65は、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、ポリウレタンゴム、シリコーンゴム等の強度および耐久性に優れたゴム材によって形成されている。一実施形態では、弾性膜65には、複数の圧力室70~73に連通する複数の貫通孔が形成されていてもよい。さらに一実施形態では、気体移送ラインF2~F5のうちの2つ以上の気体移送ラインに切替弁が接続されていてもよく、2つ以上の気体移送ラインは、切替弁を介して真空ラインに接続されていてもよい。切替弁の一例として三方弁が挙げられる。
【0058】
リテーナリング60は、基板Wおよび弾性膜65の押圧面65aを囲むように配置されている。このリテーナリング60は、研磨パッド2に接触するリング部材60aと、このリング部材60aの上部に固定されたドライブリング60bとを有している。リング部材60aは、図示しない複数のボルトによってドライブリング60bに結合されている。
【0059】
連結部材75は、ヘッド本体21の中心部に配置された軸部76と、この軸部76から放射状に延びる複数のスポーク78とを備えている。軸部76はヘッド本体21の中央部に配置された球面軸受66内を縦方向に延びている。軸部76は、球面軸受66に縦方向に移動自在に支持されている。ドライブリング60bはスポーク78に接続されている。このような構成により、連結部材75およびこれに接続されたリテーナリング60は、ヘッド本体21に対して縦方向に移動可能となっている。
【0060】
球面軸受66は、内輪68と、内輪68の外周面を摺動自在に支持する外輪69とを備えている。内輪68は、連結部材75を介してリテーナリング60に連結されている。外輪69はキャリア63に固定されている。連結部材75の軸部76は、内輪68に上下動自在に支持されている。リテーナリング60は、連結部材75を介して球面軸受66により傾動可能に支持されている。
【0061】
球面軸受66は、リテーナリング60の上下移動および傾動を許容する一方で、リテーナリング60の横方向の移動(水平方向の移動)を制限する。基板Wの研磨中は、リテーナリング60は基板Wと研磨パッド2との摩擦に起因した横方向の力(基板Wの半径方向外側に向かう力)を基板Wから受ける。この横方向の力は球面軸受66によって受けられる。このように、球面軸受66は、基板Wの研磨中に、基板Wと研磨パッド2との摩擦に起因してリテーナリング60が基板Wから受ける横方向の力(基板Wの半径方向外側に向かう力)を受けつつ、リテーナリング60の横方向の移動を制限する(すなわちリテーナリング60の水平方向の位置を固定する)支持機構として機能する。
【0062】
キャリア63には、複数対の駆動カラー80が固定されている。各対の駆動カラー80は各スポーク78の両側に配置されており、キャリア63の回転は、駆動カラー80を介してリテーナリング60に伝達され、これによりヘッド本体21とリテーナリング60とは一体に回転する。駆動カラー80はスポーク78に接触しているだけであり、連結部材75およびリテーナリング60の上下動および傾動を妨げない。
【0063】
リテーナリング60の上部は、環状のリテーナリング押圧機構81に連結されている。このリテーナリング押圧機構81は、リテーナリング60の上面(より具体的には、ドライブリング60bの上面)の全体に均一な下向きの荷重を与え、リテーナリング60の下面(すなわち、リング部材60aの下面)を研磨パッド2の研磨面2aに対して押圧する。
【0064】
リテーナリング押圧機構81は、ドライブリング60bの上部に固定された環状のピストン82と、ピストン82の上面に接続された環状のローリングダイヤフラム83とを備えている。ローリングダイヤフラム83の内部には圧力室84が形成されている。この圧力室84は、気体移送ラインF6を介して上記圧縮気体供給源に連結されている。圧縮気体は、気体移送ラインF6を通じて圧力室84内に供給される。
【0065】
上記圧縮気体供給源から圧力室84に圧縮気体を供給すると、ローリングダイヤフラム83がピストン82を下方に押し下げ、ピストン82はリテーナリング60の全体を下方に押し下げる。このようにして、リテーナリング押圧装置81は、リテーナリング60の下面を研磨パッド2の研磨面2aに押し付ける。
【0066】
気体移送ラインF2,F3,F4,F5,F6は、ヘッドシャフト10に取り付けられたロータリージョイント25を経由して延びている。研磨装置は、複数の圧力室70,71,72,73,84に連結された複数の圧力室用圧力レギュレータR2,R3,R4,R5,R6をさらに備えている。以下、圧力室用圧力レギュレータR2,R3,R4,R5,R6を単に圧力レギュレータR2,R3,R4,R5,R6と呼ぶ。
【0067】
圧力レギュレータR2,R3,R4,R5,R6は、気体移送ラインF2,F3,F4,F5,F6にそれぞれ設けられている。圧縮気体供給源からの圧縮気体は、圧力レギュレータR2~R6を通って圧力室70~73、および圧力室84内にそれぞれ独立に供給される。圧力レギュレータR2~R6は、圧力室70~73、および圧力室84内の圧縮気体の圧力を調節するように構成されている。圧力レギュレータR2~R6は、動作制御部9に接続されている。
【0068】
圧力レギュレータR2~R6は、圧力室70~73、および圧力室84の内部圧力を互いに独立して変化させることが可能であり、これにより、基板Wの対応する4つの領域、すなわち、中央部、内側中間部、外側中間部、およびエッジ部における基板Wの研磨面2aに対する押し付け力、およびリテーナリング60の研磨パッド2への押し付け力を独立に調整することができる。以下、本明細書では、基板Wの対応する3つの領域、すなわち、内側中間部、外側中間部、およびエッジ部を総称して外周部と呼ぶことがある。本実施形態では、弾性膜65は、4つの圧力室70~73を形成するが、一実施形態では、弾性膜65は4つよりも少ない、または4つよりも多い圧力室を形成してもよい。
【0069】
図3に示す膜厚測定装置40によって測定された基板Wの複数の測定点での複数の膜厚に関する膜厚データは、動作制御部9に送られる。動作制御部9は、圧力レギュレータR2~R5に指令を発して、膜厚測定装置40によって測定された複数の膜厚に基づいて基板Wの対応する4つの領域における基板Wの研磨面2aに対する押し付け力を独立に調整させる。一例として、動作制御部9は、基板Wの中央部の膜厚を他の領域の膜厚と比較し、中央部の膜厚が他の領域の膜厚よりも大きいときは、動作制御部9は、圧力レギュレータR2に指令を発し、圧力室70の内部圧力を増加させる。
【0070】
回転リング51は、複数のローラー52と、これらローラー52をそれぞれ支持するローラーシャフト54と、ローラーシャフト54が固定されるローラーハウジング55とを備えている。ローラーハウジング55は環状の形状を有しており、リテーナリング60の上面に固定されている。ローラー52は、ローラーシャフト54に取り付けられた軸受(図示せず)を有しており、ローラー52はローラーシャフト54を中心として回転自在となっている。
【0071】
静止リング91は、ローラー52の頂部に接触する円環レール92と、円環レール92が固定される環状のレールベース94とを備えている。円環レール92の下面には、環状溝が形成されており、各ローラー52の頂部は環状溝に接触している。ローラー52は、円環レール92に転がり接触しながら回転するように構成されている。レールベース94の上部には押圧ロッド31が連結されている。
【0072】
図8は、ローラー52と円環レール92とを示す斜視図である。ウェーハの研磨中、複数のローラー52はリテーナリング20と一体に回転する一方で、円環レール92は静止している。したがって、各ローラー52は、円環レール92に転がり接触する。ローラー52は、荷重の作用点(押圧ロッド31の直下)を通過する際にのみ荷重を受ける。局所荷重付与装置30の下向きの局所荷重は円環レール92からローラー52に伝達され、ローラー52を通じてリテーナリング20に伝達される。
【0073】
以下、基板Wの膜厚測定方法、およびそのような方法を用いて測定した膜厚に基づいて基板Wの膜厚ばらつきを修正する研磨方法、およびノッチ部の検出方法について、図9および図10に示すフローチャートに従って説明する。図9および図10は、基板Wの研磨方法の一実施形態を示すフローチャートである。本実施形態では、基板Wの膜厚測定方法、基板Wの膜厚ばらつきを修正する研磨方法、およびノッチ部の検出方法は一連の研磨工程に組み込まれている。以下、一例として基板Wの周縁部の膜厚測定方法および周縁部の膜厚ばらつきを修正する研磨方法について説明する。
【0074】
ステップ1~ステップ5では、研磨装置は初期研磨工程を実施する。初期研磨工程では、研磨装置は、基板W上の複数の測定点での複数の膜厚を測定し、複数の膜厚に基づいて基板Wの研磨面2aに対する押し付け力を調整しながら基板Wを研磨する。初期研磨工程は、基板Wの膜厚が予め定められた膜厚しきい値に到達するか、または研磨時間が予め定められた初期研磨終了時間に到達するまで行われる。
【0075】
ステップ1では研磨装置は、研磨を開始する。すなわち、テーブルモータ6は、研磨テーブル3を研磨パッド2と一体に一定の回転速度で回転させ、研磨ヘッド回転モータ12は研磨ヘッド1を一定の回転速度で回転させることで、基板Wを一定の回転速度で回転させる。研磨ヘッド1は、さらに基板Wを研磨パッド2の研磨面2aに押し付けて、基板Wの研磨を開始する。
【0076】
ステップ2では、膜厚測定装置40は、基板W上の複数の測定点での複数の膜厚を測定する。具体的には、光学式膜厚測定装置40は、光学センサヘッド7が基板Wを横切るとき、基板Wに複数回光を照射し、複数の反射光の各波長での強度を測定する。光学式膜厚測定装置40は、複数の反射光の強度測定データから反射光の複数のスペクトルを生成する。光学式膜厚測定装置40は、複数のスペクトルに基づいて、各測定点における複数の膜厚を決定する。動作制御部9は、光学式膜厚測定装置40に指令を発してステップ2を実行させる。
【0077】
ステップ3では、ステップ2で測定された複数の膜厚に基づいて基板Wの研磨面2aに対する押し付け力を調整する。具体的には、動作制御部9は、ステップ2で測定された膜厚データを光学式膜厚測定装置40から取得し、複数の膜厚に基づいて、研磨ヘッド1の圧力室70~73の内部圧力を決定し、圧力レギュレータR2~R5のうちの少なくとも1つに指令を発して基板Wの研磨面2aに対する押し付け力を調整させる。
【0078】
ステップ4では、動作制御部9は、基板Wの膜厚を表す膜厚指標値を、予め定められた膜厚しきい値と比較する。膜厚指標値が膜厚しきい値に達していない場合、ステップ2に戻り、膜厚指標値が膜厚しきい値に達した場合、後述するステップ5を実行する。一実施形態では、動作制御部9は、取得した複数の測定点における複数の膜厚データに基づいて、基板Wの膜厚の平均値を算出し、膜厚の平均値を膜厚指標値としてもよく、複数の膜厚の最大値または最小値を膜厚指標値としてもよく、複数の測定点から任意に選択された1つの測定点における膜厚を膜厚指標値としてもよい。
【0079】
さらに一実施形態では、動作制御部9は、現在の研磨時間を予め定められた初期研磨終了時間と比較し、研磨時間が初期研磨終了時間に達していない場合、ステップ2に戻り、研磨時間が初期研磨終了時間に達した場合、後述するステップ5を実行してもよい。上述した膜厚しきい値および初期研磨終了時間は、後述する修正研磨工程で、基板Wの膜厚のばらつきを修正するために必要な膜厚または研磨時間に基づいて決定される。
【0080】
ステップ5では、動作制御部9は、基板Wの周縁部の複数の測定点における複数の膜厚のばらつきを算出する。一実施形態では、周縁部の膜厚のばらつきは、標準偏差で表されてもよく、周縁部における複数の膜厚の最大値と最小値との差を周縁部の膜厚ばらつきとしてもよい。一実施形態では、動作制御部9は、基板W上の複数の位置と、複数の位置における複数の膜厚の関係を表す膜厚プロファイルを生成し、上記膜厚プロファイルから周縁部の膜厚ばらつきを算出してもよい。
【0081】
ステップ6では、動作制御部9は、算出された周縁部の膜厚ばらつきと、所定の基準範囲を比較する。周縁部の膜厚ばらつきが基準範囲内であれば、基板Wの研磨を終了し、周縁部の膜厚ばらつきが基準範囲外であれば、後述する周縁部膜厚測定工程(ステップ7およびステップ8)を実行する。ステップ2の方法でも周縁部の膜厚を測定することができるが、周縁部膜厚測定工程によって、より精密に基板Wの周縁部の膜厚を測定することができる。
【0082】
ステップ7では、動作制御部9は、膜厚測定装置40(より具体的には膜厚センサ41)を基板Wの任意の箇所の膜厚を測定可能な位置に位置させる。具体的には、動作制御部9は、膜厚測定装置40を基板Wの周縁部の膜厚を測定可能な位置に位置させる。より具体的には、図11に示すように動作制御部9は、テーブルモータ6(図11には図示せず)に指令を発し、膜厚センサ41(膜厚測定装置40が光学式膜厚測定装置の場合は光学センサヘッド7)が基板Wの任意の膜厚の測定位置(周縁部)の真下に位置するように研磨テーブル3の回転を停止させる。膜厚センサ41の位置は、研磨ヘッド1、研磨テーブル3、研磨ヘッド揺動アーム16の回転角度に基づいて算出することができる。
【0083】
一実施形態では、ステップ7の前に研磨テーブル3および/または研磨ヘッド1の回転を停止させてもよい。その場合、動作制御部9は、テーブルモータ6に指令を発し、研磨テーブル3を回転させた後、膜厚センサ41が基板Wの周縁部の真下に位置するように研磨テーブル3の回転を停止させる。
【0084】
ステップ8では、動作制御部9は、研磨ヘッド回転モータ12に指令を発して研磨ヘッド1を回転させることで基板Wを回転させながら、かつ研磨ヘッド1に対する膜厚測定装置40(より具体的には膜厚センサ41)の相対的な位置を制御しながら、膜厚測定装置40に基板Wの周縁部の膜厚を測定させる。具体的には、研磨ヘッド1は基板Wを研磨パッド2の研磨面2a上で回転させる。一実施形態では、ステップ1から研磨ヘッド1の回転を継続させてもよい。
【0085】
図12に示すように、リテーナリング60の内径は、基板Wの外径よりも1~3mm大きいため、基板Wは、研磨工程中、回転しながらリテーナリング60の内側で下流側(研磨テーブル3の回転方向に関して下流側)に偏る。基板Wがリテーナリング60の内壁の一部に偏った状態で、基板Wの膜厚を測定するために研磨ヘッド1を回転させた場合、基板Wは、基板Wの中心Oを中心に回転しながら、研磨ヘッド1の中心Pを中心に偏心回転する。したがって、図12に示すように、研磨ヘッド1に対する膜厚測定装置40(膜厚センサ41)の相対位置を固定した状態で基板Wを回転させながら周縁部の膜厚を測定した場合、その測定位置の軌跡(基板Wから見た場合の測定位置の軌跡)は、基板Wの周縁部からずれるため、周縁部の膜厚を正しく測定できない。
【0086】
そこで、記動作制御部9は、研磨ヘッド1の回転に合わせて、揺動モータ15およびテーブルモータ6の少なくとも一方を制御することで、研磨ヘッド1に対する膜厚測定装置40の相対的な位置を制御する。
【0087】
具体的には、図13に示すように、動作制御部9は、膜厚の測定位置が基板Wの周縁部の周方向に軌跡を描くように、研磨ヘッド1の回転角度に基づいて、揺動モータ15およびテーブルモータ6の少なくとも一方を制御することで、研磨ヘッド1に対する膜厚測定装置40の相対位置を制御(トレース制御)する。言い換えれば、動作制御部9は、膜厚の測定位置が基板Wの周縁部をトレースするように、研磨テーブル3および/または研磨ヘッド1を基板Wの研磨ヘッド1の中心Pに対する偏心分だけ研磨ヘッド1の回転に合わせて移動(回転または揺動)させる。膜厚測定装置40は、基板Wが1回転する間の測定位置の軌跡上の複数の測定点において複数の膜厚を測定する。膜厚の測定位置は、基板Wの中心Oを中心とする周縁部上の円周上を一周する。
【0088】
リテーナリング60の内径と、基板Wの外径から研磨ヘッド1の中心Pに対する基板Wの偏心量を推測することができる。また、基板Wは、研磨工程中、研磨テーブル3の回転方向に関して下流側に偏るため、研磨ヘッド1に対する基板Wの偏心方向(中心Pに対する偏心方向)を推測することができる。したがって、研磨ヘッド1に対する膜厚測定装置40の相対位置を制御することで、基板Wに対する膜厚測定装置40の相対位置を制御することができる。研磨ヘッド1の回転に合わせて研磨ヘッド1に対する膜厚測定装置40の相対位置を制御することで、周縁部の膜厚を正確に測定することができる。
【0089】
一実施形態では、膜厚の測定位置が、基板Wの中心Oを中心とする周縁部上の円周上を一周した後、研磨ヘッド1の半径方向に膜厚測定装置40の位置をずらし、基板Wの直径が異なる他の円周上の複数の測定点において膜厚を測定してもよい。基板Wの周縁部上の複数の円周上で膜厚を測定することによってより精密な膜厚測定を行うことができる。
【0090】
一実施形態では、基板Wの偏心分を含めて膜厚測定を行ってもよい。具体的には、図14に示すように、動作制御部9は、膜厚の測定位置が、基板Wの周方向における複数の領域において、基板Wの半径方向に移動するように、研磨ヘッド1の回転に合わせて揺動モータ15およびテーブルモータ6の少なくとも一方を制御する(研磨テーブル3および/または研磨ヘッド1を研磨ヘッド1の回転に合わせて移動させる)ことで、研磨ヘッド1に対する膜厚測定装置40の相対的な位置を制御してもよい。上記複数の領域は、少なくとも基板Wの周縁部を含む。
【0091】
膜厚の測定位置は、半径方向に移動しながら周方向にも移動し、基板Wを一周する。膜厚測定装置40は、基板Wが1回転する間の測定位置の軌跡上の複数の測定点において複数の膜厚を測定する。図14に実線で示す矢印は、膜厚測定装置40が膜厚を測定しているときの基板Wから見たときの測定位置の軌跡を示し、図14に点線で示す矢印は、膜厚測定装置40が膜厚を測定していないときの基板Wから見たときの膜厚センサ41の軌跡を示す。周方向における測定位置の軌跡の数を増やすことでより精密な膜厚測定を行うことができる。
【0092】
本実施形態では、基板Wに対する膜厚測定装置40の相対位置が基板Wの内側から外側に移動しているときに膜厚を測定する。一実施形態では、基板Wに対する膜厚測定装置40の相対位置が基板Wの外側から内側に移動しているときに膜厚を測定してもよい。半径方向における最も内側の測定点は、基板Wの周縁部の最内周または周縁部の最内周よりも半径方向内側の点であり、半径方向における最も外側の測定点は、基板Wの周縁部の最外周または、リテーナリング60の内径の点である。上述した最も内側の測定点および最も外側の測定点は、研磨ヘッド1の回転角度、研磨テーブル3の回転角度、中心Pに対する基板Wの偏心量(偏心方向)などから決定することができる。また、基板Wの外の領域を測定することで、基板Wの周縁部の位置を正確に把握することができる。これは基板Wの外周縁では膜厚測定結果がゼロになるからで、半径方向への移動による測定毎に周縁部のどこを測定しているのかを正確に把握することが可能である。一実施形態では、図14を参照して説明した実施形態においても、研磨ヘッド1の回転角度に基づいて研磨ヘッド1に対する膜厚測定装置40の相対的な位置を制御してもよい。
【0093】
さらに一実施形態では、図15に示すように、動作制御部9は、前記膜厚の測定位置が、前記基板の周縁部を少なくとも含む領域を蛇行しながら前記基板の周方向に移動するように、研磨ヘッド1の回転に合わせて揺動モータ15およびテーブルモータ6の少なくとも一方を制御する(研磨テーブル3および/または研磨ヘッド1を研磨ヘッド1の回転に合わせて移動させる)ことで、研磨ヘッド1に対する膜厚測定装置40の相対的な位置を制御してもよい。膜厚の測定位置は、蛇行しながら基板Wを一周する。膜厚測定装置40は、基板Wが1回転する間の測定位置の軌跡上の複数の測定点において複数の膜厚を測定する。半径方向における最も内側の測定点は、基板Wの周縁部の最内周または周縁部の最内周よりも半径方向内側の点であり、半径方向における最も外側の測定点は、基板Wの周縁部の最外周または、リテーナリング60の内径の点である。
【0094】
一実施形態では、図15を参照して説明した実施形態においても、研磨ヘッド1の回転角度に基づいて研磨ヘッド1に対する膜厚測定装置40の相対的な位置を制御してもよい。
【0095】
図14を参照して説明した測定方法では、膜厚の測定位置と、膜厚の測定値との関連付けが容易ではあるが、測定時間が長くなる。図15を参照して説明した実施形態では、座標変換などの手法により、膜厚の測定位置を算出する必要があるが、連続した動作で測定できるので測定時間が短くなる。
【0096】
基板Wの周縁部の測定中、基板Wを研磨パッド2に密着させ、研磨ヘッド1に対して基板Wが滑らないように研磨ヘッド1によって基板Wを加圧する。具体的には、動作制御部9は、基板Wの周縁部の膜厚の測定中、複数の圧力レギュレータR2~R5に指令を発して、研磨ヘッド1が基板Wを研磨面2aに押し付けるように、複数の圧力室70~73の圧力を調整させる。
【0097】
一実施形態では、動作制御部9は、基板Wの周縁部の膜厚の測定中、複数の圧力レギュレータR3~R5に指令を発して、基板Wの外周部を研磨面2aに押し付けるように、圧力室71~73の圧力を調整させながら、切替弁74に指令を発して、気体移送ラインF2と真空ラインV1を連通させることで基板Wの中央部を吸着させてもよい。この場合、基板Wの変形を抑制するため、動作制御部9は、昇降装置に指令を発し、研磨ヘッド1の高さを下げることにより、圧力室71~73の膨張を小さくしてもよい。
【0098】
上述のように、本実施形態では、研磨ヘッド1に対する膜厚測定装置40の相対的な位置を制御しながら、基板Wの周縁部の膜厚を測定する。これにより、周縁部の膜厚の測定精度を向上させることができ、周縁部の膜厚分布を正確に把握することができる。
【0099】
さらに一実施形態では、動作制御部9は、基板Wのノッチ部の位置を検出するために上述した周縁部膜厚測定工程を実行してもよい。動作制御部9は、周縁部膜厚測定工程における基板Wの周縁部の膜厚の測定結果に基づいて、ノッチ部の位置を決定する。ノッチ部では、基板Wが切り欠かれているため、膜厚の測定結果がエラーとなることから、動作制御部9は、膜厚測定装置40がエラー信号を出力したときの研磨ヘッド1の回転角度に基づいて、基板Wのノッチ部の位置を検出することができる。研磨装置とは別体で設置された膜厚測定器(以下、スタンドアローン型膜厚測定器という)で基板Wの膜厚を測定し、その測定結果に基づいて後述する修正研磨工程を行う場合は、修正研磨中、スタンドアローン型膜厚測定器で測定した基板Wの膜厚の測定値に対応する基板W上の位置を把握する必要がある。周縁部膜厚測定工程を実行してノッチ部を検出することにより、ノッチ部を基準として複数の膜厚の測定値に対応する基板W上の複数の位置を把握することができる。
【0100】
これにより、スタンドアローン型膜厚測定器で測定した周縁部の膜厚の測定結果を用いて後述する修正研磨工程を実行することができる。本実施形態では、研磨ヘッド1に対する膜厚測定装置40の相対的な位置を制御しながら、基板Wの周縁部の膜厚を測定するため、基板Wのノッチ部の位置を正確に検出することができる。
【0101】
研磨装置は、周縁部膜厚測定工程の後、修正研磨工程(ステップ9~ステップ11)を実行する。修正研磨工程は、周縁部膜厚測定工程で測定した基板Wの周縁部の膜厚に基づいて、周縁部の膜厚ばらつきを修正する工程である。
【0102】
ステップ9では、研磨装置は、研磨を再開する。ステップ9では、ステップ1およびステップ2と同様の方法により基板Wの膜厚を測定しながら基板Wを研磨する。
ステップ10では、研磨装置は、基板Wを研磨している状態で、周縁部膜厚測定工程において測定された周縁部の膜厚の測定結果またはスタンドアローン型膜厚測定装置器で測定された周縁部の膜厚の測定結果に基づいて、かつ研磨ヘッド1の回転角度に同期させてリテーナリング60に対する局所荷重を周期的に変更する。
【0103】
具体的には、動作制御部9は、基板Wの周縁部の膜厚が大きい箇所(基板W上の研磨レートを上げたい箇所)が局所荷重付与装置30による局所反発力を受ける位置にあるときに、局所荷重付与装置30に局所荷重を発生させる。より具体的には、動作制御部9は、基板Wの膜厚が大きい箇所が局所荷重付与装置30による局所反発力を受ける位置にあるときに、圧力レギュレータR1に指令を発して、エアシリンダ33内の圧縮気体の圧力を上昇させる。これにより、局所反発力を受けた箇所の研磨が周縁部の他のエリアと比較して相対的に加速される。一実施形態では、膜厚の大きさに応じて局所荷重の大きさ(すなわちエアシリンダ33内の圧縮気体の圧力の大きさ)を変更してもよい。
【0104】
図16は、基板Wの周縁部の膜厚分布の一例を示す模式図であり、図17は、図16に示す基板Wを修正研磨したときの局所加重の大きさと基板角度の関係を示すグラフである。図16に示すようにノッチ部Nを0度として基板角度を定義する。図17の縦軸は、局所荷重付与装置30が発生させる局所加重の大きさを示し、図17の横軸は、局所加重を受ける位置における基板角度を示している。
【0105】
図16に示す例では、約180度から約350度までの領域で膜厚が大きくなっている。約180度から約270度までの領域における膜厚は、約270度から約350度までの領域における膜厚よりも大きい。このとき、動作制御部9は、図17に示すように局所荷重付与装置30を制御する。基板角度0度から約180度までは局所荷重付与装置30の動作を停止し、約180度から約360度までの領域において、基板Wの膜厚に基づいて局所加重の大きさを制御しながら局所荷重付与装置30を駆動させる。これは局所荷重付与装置30の、荷重が高くなると研磨したい領域の研磨量が高くなる特性を利用した場合である。
【0106】
一実施形態では、研磨ヘッド1の回転角度に同期させて研磨ヘッド1の回転速度を周期的に変化させてもよい。例えば、局所荷重付与装置30が局所荷重を発生させている間は、局所荷重付与装置30が局所荷重を発生させていないときよりも研磨ヘッド1の回転速度を遅くしてもよい。これにより、基板Wが局所反発力を受ける時間を長くすることができ、より研磨レートを上げることができる。一実施形態では、研磨レートを遅くしたいときは、所荷重付与装置30が局所荷重を発生させているときよりも研磨ヘッド1の回転速度を速くしてもよい。
【0107】
さらに一実施形態では、局所荷重付与装置30を使用せずに、周縁部膜厚測定工程において測定された周縁部の膜厚の測定結果またはスタンドアローン型膜厚測定装置器で測定された周縁部の膜厚の測定結果に基づいて、かつ研磨ヘッド1の回転角度に同期させて研磨ヘッド1の回転速度を周期的に変化させてもよい。周縁部の研磨レートは研磨テーブル3の回転方向に対して不均一であり、研磨テーブル3の回転方向に関して下流側の基板Wの領域で研磨レートが増加する傾向がある。これは、基板Wのリテーナリング60に接触している箇所において研磨パッド2の方向(下方向)に向かう力が発生するためである。したがって、この方法では局所荷重付与装置30を使用せずに、研磨ヘッド1の回転速度だけで周縁部の修正研磨を行うことができる。
【0108】
具体的には、動作制御部9は、基板Wの周縁部の膜厚が大きい箇所(基板W上の研磨レートを上げたい箇所)が研磨テーブル3の回転方向に関して下流側にあるとき(下流側でリテーナリング60に接触しているとき)に、研磨ヘッド回転モータ12に指令を発し、基板Wの周縁部の膜厚が大きい箇所が研磨テーブル3の回転方向に関して下流側にないとき(下流側でリテーナリング60に接触していないとき)よりも研磨ヘッド1の回転速度を遅くさせる。一実施形態では、動作制御部9は、基板Wの周縁部の膜厚が大きい箇所(基板W上の研磨レートを上げたい箇所)が研磨テーブル3の回転方向に関して下流側にないとき(下流側でリテーナリング60に接触していないとき)に、研磨ヘッド回転モータ12に指令を発し、基板Wの周縁部の膜厚が大きい箇所が研磨テーブル3の回転方向に関して下流側にあるとき(下流側でリテーナリング60に接触しているとき)よりも研磨ヘッド1の回転速度を速くさせる。
【0109】
図18は、研磨ヘッド1の回転角度に同期させて研磨ヘッド1の回転速度を周期的に変化させながら、図16に示す基板Wを修正研磨したときの研磨ヘッド1の回転速度と基板角度の関係を示すグラフである。図17の横軸は、下流側でリテーナリング60に接触する位置における基板角度を示している。
【0110】
このように、周縁部の膜厚の測定結果に基づいて、かつ研磨ヘッド1の回転角度に同期させてリテーナリング40に対する局所荷重または研磨ヘッド1の回転速度を周期的に変更する(変化させる)ことによって、周縁部の膜厚のばらつきを修正し、解消することができる。
【0111】
ステップ11では、基板Wを研磨しながら、ステップ4と同様の方法により基板Wの膜厚指標値を算出し、膜厚指標値と研磨終点を比較する。膜厚指標値が研磨終点に達した場合、研磨を終了する。膜厚指標値が研磨終点に達していない場合は、ステップ10に戻る。
【0112】
初期研磨工程と、修正研磨工程とは、同じ場所で実行してもよく、互いに異なる場所で実行してもよい。
【0113】
さらに一実施形態では、上述した膜厚測定(ステップ7およびステップ8)と修正研磨の範囲は周縁部だけでなく、中央部など任意の場所に適用してもよい。この場合も、動作制御部9は、研磨ヘッド1を回転させることで基板Wを研磨面2a上で回転させながら、かつ研磨ヘッド1に対する膜厚測定装置40(より具体的には膜厚センサ41)の相対的な位置を制御しながら、膜厚測定装置40に基板Wの膜厚(具体的には、基板W上の任意の領域の膜厚)を測定させる。さらに一実施形態では、動作制御部9は、基板Wの膜厚の測定中、複数の圧力レギュレータR2~R5に指令を発して、研磨ヘッド1が基板Wを研磨面2aに押し付けるように、複数の圧力室70~73の圧力を調整させてもよく、複数の圧力レギュレータR3~R5に指令を発して、基板Wの外周部を研磨面2aに押し付けるように、圧力室71~73の圧力を調整させながら、切替弁74に指令を発して、気体移送ラインF2と真空ラインV1を連通させることで基板Wの中央部を吸着させてもよい。
【0114】
上述のように、本実施形態では、研磨ヘッド1に対する膜厚測定装置40の相対的な位置を制御しながら、基板Wの膜厚を測定する。これにより、基板Wの膜厚の測定精度を向上させることができ、基板Wの膜厚分布を正確に把握することができる。基板Wの膜厚測定工程、すなわち、基板W上の任意の領域の膜厚測定工程の後、修正研磨工程を実行し、基板Wの膜厚測定工程で測定した膜厚に基づいて、基板Wの膜厚ばらつきを修正してもよい。
【0115】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0116】
1 研磨ヘッド
2 研磨パッド
2a 研磨面
3 研磨テーブル
5 研磨液供給ノズル
6 テーブルモータ
7 光学センサヘッド
8 トルク測定装置
9 動作制御部
10 ヘッドシャフト
12 研磨ヘッド回転モータ
14 支軸
15 揺動モータ
16 研磨ヘッド揺動アーム
17,18,19 角度検出器
21 ヘッド本体
25 ロータリージョイント
30 局所荷重付与装置
31 押圧ロッド
32 ブリッジ
33 エアシリンダ(荷重発生装置)
34 ユニットベース
38 リニアガイド
39 ガイドロッド
40 膜厚測定装置(光学式膜厚測定装置)
41 膜厚センサ
44 光源
47 分光器
49 処理システム
51 回転リング
52 ローラー
54 ローラーシャフト
55 ローラーハウジング
60 リテーナリング
63 キャリア
65 弾性膜
66 球面軸受
68 内輪
69 外輪
70,71,72,73,84 圧力室
74 切替弁
75 連結部材
76 軸部
78 スポーク
80 駆動カラー
81 リテーナリング押圧機構
82 ピストン
83 ローリングダイヤフラム
91 静止リング
92 円環レール
94 レールベース
R1 荷重発生用圧力レギュレータ
R2,R3,R4,R5,R6 圧力室用圧力レギュレータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18