(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】熱輸送体
(51)【国際特許分類】
F28D 15/02 20060101AFI20241022BHJP
F28D 15/04 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
F28D15/02 102H
F28D15/02 101H
F28D15/04 G
(21)【出願番号】P 2021130124
(22)【出願日】2021-08-06
【審査請求日】2023-01-24
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100143959
【氏名又は名称】住吉 秀一
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 雅人
(72)【発明者】
【氏名】青木 博史
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第213426736(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2017/0082378(US,A1)
【文献】特許第6442594(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 15/00-15/06
H01L 23/34-23/473
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空洞部が内部に形成された、発熱体と熱的に接続されるコンテナと、前記空洞部に封入された作動流体と、液相の前記作動流体が流通する、前記空洞部に設けられたウィック構造体と、気相の前記作動流体が流通する、前記空洞部に設けられた蒸気流路と、を備える熱輸送体であり、
前記コンテナが、
前記熱輸送体の熱輸送方向に対して直交方向における前記蒸気流路の寸法が第1の厚さを有する第1の部位と、
前記空洞部方向へ窪んだ凹部を有することで、前記熱輸送体の熱輸送方向に対して直交方向における前記蒸気流路の寸法が前記第1の厚さの1/2以下の厚さである第2の厚さを有し、前記熱輸送体の熱輸送方向の中間部に設けられた第2の部位と、
を有し、
前記第2の部位において前記蒸気流路が閉塞され、前記蒸気流路が、複数の独立した蒸気流路部に分割されており、
複数の前記第1の部位が前記第2の部位を介して連設され、複数の前記第1の部位のそれぞれに前記発熱体が熱的に接続される受熱部を有
し、
複数の前記第1の部位のそれぞれに熱的に接続される前記発熱体が、発熱量及び/または耐熱性が異なり、
前記ウィック構造体は、複数の前記第1の部位から前記第2の部位まで連続して伸延し、
前記発熱体が熱的に接続される前記コンテナの第2の面全体が、平坦な平面部位となっている熱輸送体。
【請求項2】
前記第2の部位の熱輸送方向に対して平行方向の寸法が、0.05mm以上5mm以下である請求項
1に記載の熱輸送体。
【請求項3】
前記コンテナが、平面部位を有する第1の面と、前記第1の面に対向した、平面部位を有する
前記第2の面と、を有し、前記第1の面が、前記平面部位に対して前記空洞部方向へ窪んだ凹部位を有することで、前記コンテナが、前記凹部を有する請求項1
または2に記載の熱輸送体。
【請求項4】
前記ウィック構造体が、前記第2の面の内面に設けられている請求項
1乃至3のいずれか1項に記載の熱輸送体。
【請求項5】
前記コンテナが、一方の板状体と前記一方の板状体と対向する他方の板状体とにより形成され、前記一方の板状体が、前記空洞部方向へ窪んだ前記凹部を有する請求項1乃至
4のいずれか1項に記載の熱輸送体。
【請求項6】
前記熱輸送体が、ベーパーチャンバである請求項
3乃至
5のいずれか1項に記載の熱輸送体。
【請求項7】
前記コンテナが、一方の端部の端面と他方の端部の端面とが封止された管状体であり、前記管状体の一部領域に、前記空洞部方向へ窪んだ凹部位が形成されていることで、前記コンテナが、前記凹部を有する請求項1
または2に記載の熱輸送体。
【請求項8】
前記ウィック構造体が、前記コンテナの内周面に設けられている請求項
7に記載の熱輸送体。
【請求項9】
前記熱輸送体が、ヒートパイプである請求項
7または
8に記載の熱輸送体。
【請求項10】
前記コンテナが、前記第2の部位に、前記厚さ方向に形成された段差部を有する請求項1乃至
9のいずれか1項に記載の熱輸送体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発熱量の異なる複数の発熱体が熱的に接続されても、それぞれの発熱体に対して優れた冷却特性を有する熱輸送体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気・電子機器に搭載されている半導体素子等の電子部品は、高機能化に伴って発熱量が増大し、近年、その冷却がより重要となっている。また、電子部品等の発熱体は、電子機器の小型化から、基板に高密度搭載され、狭小空間に複数の電子部品等が配置されることがある。狭小空間に配置された電子部品等の発熱体の冷却方法として、扁平型のコンテナを備えたベーパーチャンバ(平面型ヒートパイプ)や管状体のコンテナを備えたヒートパイプが使用されることがある。
【0003】
狭小空間に配置された中央演算処理装置等の高発熱量の電子部品を冷却する熱輸送体として、筐体と、筐体を内側から支持するように筐体の内部空間に配置された柱と、筐体の内部空間に封入された作動流体と、筐体の内部空間に配置されたウィック構造体と、を有し、筐体の主内面の一部が、筐体の内部空間に露出し、平均深さが10nm以上の細孔を有しているベーパーチャンバが提案されている(特許文献1)。特許文献1の熱輸送体は、筐体の主内面に細孔を設けることで、ウィック構造体でトラップされる不純物ガスの量を低減して、熱輸送体の熱輸送特性を向上させるものである。引用文献1の柱は、筐体の内部空間を内側から支持して、気相の作動流体が流通する蒸気流路を確保することで、良好な熱輸送特性を得るために設けられている。
【0004】
一方で、狭小空間に複数の電子部品等が配置されている場合、1つの熱輸送体にて複数の電子部品等を冷却することがある。しかし、電子部品等の発熱量は、その機能等により様々であることから、1つの熱輸送体に熱的に接続される複数の電子部品等は、その発熱量が相違することがある。1つの熱輸送体に発熱量の異なる複数の電子部品等が熱的に接続されると、気相の作動流体が熱輸送体のコンテナ全体にわたって流通することにより、発熱量の高い電子部品等から発熱量の低い電子部品等へ熱が輸送されて、発熱量の低い電子部品等に対する冷却特性が低下してしまうことがあった。また、電子部品等の耐熱性は、その機能等により様々であることから、1つの熱輸送体に熱的に接続される複数の電子部品等は、その耐熱性が相違することがある。1つの熱輸送体に耐熱性の異なる複数の電子部品等が熱的に接続されると、気相の作動流体が熱輸送体のコンテナ全体にわたって流通することにより、耐熱性の高い電子部品等と耐熱性の低い電子部品等との間で熱が輸送されて、耐熱性の低い電子部品等に対する冷却特性が低下して動作寿命が低下してしまうことがあった。
【0005】
そこで、発熱量や耐熱性の異なる複数の電子部品等のそれぞれに、別の熱輸送体を熱的に接続して、複数の電子部品等を冷却することがある。しかし、狭小空間に配置された複数の電子部品等の場合には、それぞれの電子部品等に別の熱輸送体を熱的に接続することは難しく、また、複数の熱輸送体を用意する必要がある点で、費用が増大し、熱輸送体の設置作業が繁雑となるという問題があった。
【0006】
また、電子部品等は動作中に発熱量が変動することがあるところ、熱輸送体には、熱的に接続される電子部品等の発熱量の変動の範囲を踏まえて、最適な作動流体量が封入されている。そこで、1つの熱輸送体に複数の電子部品等が熱的に接続される場合には、熱輸送体には、複数の電子部品等のうちのいずれかの熱輸送体の発熱量に対して最適となる作動流体量が封入されることがある。しかし、熱輸送体にいずれかの熱輸送体の発熱量に最適となる作動流体量が封入されると、複数の電子部品等に対する冷却特性向上の点で、改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記事情に鑑み、本発明は、発熱量や耐熱性の異なる複数の発熱体が熱的に接続されても、それぞれの発熱体に対して優れた冷却特性を発揮できる熱輸送体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の構成の要旨は、以下の通りである。
[1]空洞部が内部に形成された、発熱体と熱的に接続されるコンテナと、前記空洞部に封入された作動流体と、液相の前記作動流体が流通する、前記空洞部に設けられたウィック構造体と、気相の前記作動流体が流通する、前記空洞部に設けられた蒸気流路と、を備える熱輸送体であり、
前記コンテナが、
前記熱輸送体の熱輸送方向に対して直交方向における前記蒸気流路の寸法が第1の厚さを有する第1の部位と、
前記空洞部方向へ窪んだ凹部を有することで、前記熱輸送体の熱輸送方向に対して直交方向における前記蒸気流路の寸法が前記第1の厚さの1/2以下の厚さである第2の厚さを有し、前記熱輸送体の熱輸送方向の中間部に設けられた第2の部位と、
を有する熱輸送体。
[2]前記第2の部位において前記蒸気流路が閉塞され、前記蒸気流路が、複数の独立した蒸気流路部に分割されている[1]に記載の熱輸送体。
[3]前記蒸気流路の第2の厚さが、0mm超0.15mm以下である[1]に記載の熱輸送体。
[4]前記第2の部位の熱輸送方向に対して平行方向の寸法が、0.05mm以上5mm以下である[1]乃至[3]のいずれか1つに記載の熱輸送体。
[5]前記ウィック構造体が、前記第1の部位から前記第2の部位まで連続して伸延している[1]乃至[4]のいずれか1つに記載の熱輸送体。
[6]前記コンテナが、平面部位を有する第1の面と、前記第1の面に対向した、平面部位を有する第2の面と、を有し、前記第1の面が、前記平面部位に対して前記空洞部方向へ窪んだ凹部位を有することで、前記コンテナが、前記凹部を有する[1]乃至[5]のいずれか1つに記載の熱輸送体。
[7]前記ウィック構造体が、前記第2の面の内面に設けられている[6]に記載の熱輸送体。
[8]前記コンテナが、一方の板状体と前記一方の板状体と対向する他方の板状体とにより形成され、前記一方の板状体が、前記空洞部方向へ窪んだ前記凹部を有する[1]乃至[7]のいずれか1つに記載の熱輸送体。
[9]前記熱輸送体が、ベーパーチャンバである[6]乃至[8]のいずれか1つに記載の熱輸送体。
[10]前記コンテナが、一方の端部の端面と他方の端部の端面とが封止された管状体であり、前記管状体の一部領域に、前記空洞部方向へ窪んだ凹部位が形成されていることで、前記コンテナが、前記凹部を有する[1]乃至[5]のいずれか1つに記載の熱輸送体。
[11]前記ウィック構造体が、前記コンテナの内周面に設けられている[10]に記載の熱輸送体。
[12]前記熱輸送体が、ヒートパイプである[10]または[11]に記載の熱輸送体。
[13]前記コンテナが、前記第2の部位に、前記厚さ方向に形成された段差部を有する[1]乃至[12]のいずれか1つに記載の熱輸送体。
[14]前記第1の部位が、前記発熱体と熱的に接続される受熱部を有する[1]乃至[13]のいずれか1つに記載の熱輸送体。
【0010】
上記[1]の態様では、コンテナが、熱輸送体の熱輸送方向に対して直交方向における蒸気流路の寸法が第1の厚さを有する第1の部位と、空洞部方向へ窪んだ凹部を有することで、熱輸送体の熱輸送方向に対して直交方向における蒸気流路の寸法が第1の厚さの1/2以下の厚さである第2の厚さを有し、熱輸送体の熱輸送方向の中間部に設けられた第2の部位と、を有するので、第1の部位では、熱輸送体の熱輸送方向に気相の作動流体が円滑に流通しつつ、熱輸送体の熱輸送方向の中間部に設けられた第2の部位では、蒸気流路の厚さ方向の寸法が低減されて熱輸送体の熱輸送方向における気相の作動流体の流通が制限されている。
【0011】
また、上記[1]の態様では、熱輸送体の熱輸送方向の中間部に第2の部位を有するので、第2の部位を介して、複数の第1の部位が連設されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の熱輸送体の態様によれば、コンテナの第1の部位では熱輸送体の熱輸送方向に気相の作動流体が円滑に流通しつつ、コンテナの中間部に設けられた第2の部位では熱輸送体の熱輸送方向における気相の作動流体の流通が制限されているので、連設されている複数の第1の部位のそれぞれに発熱体が熱的に接続されても、第2の部位にて、第1の部位間の気相の作動流体の流通が制限されている。従って、本発明の熱輸送体では、第1の部位間における熱輸送が制限されていることから、複数の第1の部位のそれぞれに発熱量や耐熱性の異なる発熱体が熱的に接続されても、それぞれの発熱体に対して優れた冷却特性を発揮できる。また、本発明の熱輸送体の態様によれば、第2の部位にて、第1の部位間の気相の作動流体の流通が制限されているので、複数の第1の部位のそれぞれに熱的に接続される発熱体に対して作動流体量を最適化でき、それぞれの発熱体に対して優れた冷却特性を発揮できる。
【0013】
本発明の熱輸送体の態様によれば、第2の部位において前記蒸気流路が閉塞され、前記蒸気流路が、複数の独立した蒸気流路部に分割されていることにより、第1の部位間の気相の作動流体の流通が防止されているので、複数の第1の部位のそれぞれに熱的に接続される発熱体に対して、さらに優れた冷却特性を発揮できる。
【0014】
本発明の熱輸送体の態様によれば、蒸気流路の第2の厚さが0.15mm以下であることにより、第1の部位間の気相の作動流体の流通がより確実に制限されるので、複数の第1の部位のそれぞれに熱的に接続される発熱体に対して、さらに優れた冷却特性を発揮できる。
【0015】
本発明の熱輸送体の態様によれば、前記第2の部位の熱輸送方向に対して平行方向の寸法が0.05mm以上5mm以下であることにより、第1の部位間の気相の作動流体の流通がより確実に防止される。
【0016】
本発明の熱輸送体の態様によれば、前記ウィック構造体が前記第1の部位から前記第2の部位まで連続して伸延していることにより、第1の部位間の気相の作動流体の流通が第2の部位にて制限されつつ、液相の作動流体は第1の部位と第2の部位との間をさらに円滑に流通できるので、複数の第1の部位のそれぞれに熱的に接続される発熱体に対して作動流体量をさらに確実に最適化できる。
【0017】
本発明の熱輸送体の態様によれば、前記コンテナが前記第2の部位に前記厚さ方向に形成された段差部を有することにより、複数の第1の部位のそれぞれに熱的に接続される発熱体の高さが相違しても、複数の発熱体に対する熱的接続性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1実施形態例に係る熱輸送体の内部構造の概要を説明する側面断面図である。
【
図2】本発明の第1実施形態例に係る熱輸送体の平面図である。
【
図3】本発明の第2実施形態例に係る熱輸送体の内部構造の概要を説明する側面断面図である。
【
図4】本発明の第3実施形態例に係る熱輸送体の内部構造の概要を説明する側面断面図である。
【
図5】本発明の第4実施形態例に係る熱輸送体の内部構造の概要を説明する側面断面図である。
【
図6】本発明の第5実施形態例に係る熱輸送体の内部構造の概要を説明する側面断面図である。
【
図7】本発明の第6実施形態例に係る熱輸送体の内部構造の概要を説明する側面断面図である。
【
図8】本発明の第7実施形態例に係る熱輸送体の内部構造の概要を説明する側面断面図である。
【
図9】本発明の第8実施形態例に係る熱輸送体の内部構造の概要を説明する側面断面図である。
【
図10】本発明の第9実施形態例に係る熱輸送体の内部構造の概要を説明する側面断面図である。
【
図11】本発明の第10実施形態例に係る熱輸送体の内部構造の概要を説明する側面断面図である。
【
図12】本発明の第1実施形態例に係る熱輸送体の製造方法の概要を説明する側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の第1実施形態例に係る熱輸送体について、図面を用いながら説明する。
図1は、本発明の第1実施形態例に係る熱輸送体の内部構造の概要を説明する側面断面図である。
図2は、本発明の第1実施形態例に係る熱輸送体の平面図である。
【0020】
図1に示すように、本発明の第1実施形態例に係る熱輸送体1は、空洞部13が内部に形成された、発熱体100と熱的に接続されるコンテナ10と、空洞部13に封入された作動流体と、液相の作動流体Lが流通する、空洞部13に設けられたウィック構造体14と、気相の作動流体Gが流通する、空洞部13に設けられた蒸気流路15と、を備えている。
【0021】
コンテナ10は、対向する2枚の板状体、すなわち、一方の板状体11と一方の板状体11と対向する他方の板状体12とにより形成されている。コンテナ10は、一方の板状体11と他方の板状体12とを重ねることにより空洞部13が内部に形成されている。また、コンテナ10は、薄型の板状コンテナ、すなわち、平面型コンテナであり、一方の板状体11が第1の主表面である第1の面21を有し、他方の板状体12が第2の主表面である第2の面22を有している。従って、コンテナ10は、第1の主表面である第1の面21と、第1の面21に対向した、第2の主表面である第2の面22と、を有している。上記から、熱輸送体1は、ベーパーチャンバである。
【0022】
一方の板状体11には、第1の面21の周縁に沿って側壁25が立設されている。第2の面22の内面23の周縁に一方の板状体11の側壁25の先端を対向配置させて当接、接合させることにより、コンテナ10の内部空間である空洞部13が形成される。従って、側壁25にて、コンテナ10の側面が形成されている。空洞部13は、密閉空間であり、脱気処理により減圧されている。
【0023】
図1に示すように、熱輸送体1のコンテナ10は、熱輸送体1の側面視における熱輸送方向Dに対して直交方向Tにおける蒸気流路15の寸法が第1の厚さを有する第1の部位51と、空洞部13方向へ窪んだ凹部16を有することで、熱輸送体1の熱輸送方向Dに対して直交方向Tにおける蒸気流路15の寸法が第1の厚さの1/2以下の厚さである第2の厚さを有する第2の部位52と、を有している。第2の部位52は、コンテナ10のうち、熱輸送体1の熱輸送方向Dの中間部に設けられている。また、第2の部位52は、空洞部13の幅方向全体にわたって延在している。
【0024】
一方の板状体11の第1の面21は、平坦な平面部位32と平面部位32から空洞部13方向、すなわち、内方向へ窪んだ凹部位31を有している。凹部位31の設置数は、熱輸送体1の使用条件等により適宜選択可能であり、熱輸送体1では、凹部位31は1つ設けられている。また、凹部位31の側面は、平面部位32の内面から鉛直方向へ形成されている。一方で、他方の板状体12の第2の面22は、凹部位を有しておらず、第2の面22全体が、平坦な平面部位となっている。第1の面21が平面部位32と平面部位32から空洞部13方向へ窪んだ凹部位31を有していることで、コンテナ10が、平面部17と平面部17から空洞部13方向へ窪んだ凹部16を有している。すなわち、一方の板状体11が、空洞部13方向へ窪んだ凹部16を有している。上記から、平面部17が第1の部位51に対応し、凹部16が第2の部位52に対応する。熱輸送体1では、第1の面21に凹部位31が1つ設けられていることで、コンテナ10が1つの凹部16を有しており、ひいては、1つの第2の部位52を有している。第1の面21における第2の部位52は、曲面、中央部が略平坦面で縁部が曲面、または略平坦面となっている。
図1では、第1の面21における第2の部位52は、平坦面となっている。
【0025】
コンテナ10は、第1の面21に1つの凹部16が設けられており、第2の面22には凹部は設けられていない。上記から、コンテナ10の平面部17と凹部16は、一体成型されている。また、凹部16の側面は、平面部17の内面から鉛直方向へ突出している。
【0026】
図1に示すように、熱輸送体1では、空洞部13にはウィック構造体14が設けられている。ウィック構造体14は、毛細管力を有する部材であり、コンテナ10の主表面に沿って、コンテナ10の一端から他端まで延在している。熱輸送体1では、ウィック構造体14が、第2の面22の内面の略全体にわたって設けられている。なお、熱輸送体1では、第1の面21にはウィック構造体は設けられていない。
【0027】
熱輸送体1の熱輸送方向Dに対して直交方向Tの蒸気流路15の寸法について、第2の部位52における蒸気流路15の第2の厚さが第1の部位51における蒸気流路15の第1の厚さの1/2以下であれば、特に限定されないが、第2の部位52における蒸気流路15の第2の厚さは低減されているほど好ましく、蒸気流路15の第2の厚さは蒸気流路15の第1の厚さの1/3以下が好ましく、1/4以下が特に好ましい。熱輸送体1では、コンテナ10の第2の部位52において、凹部16の先端がウィック構造体14と当接している。上記から、第2の部位52における蒸気流路15の第2の厚さは0mmであり、第2の部位52では、蒸気流路15が形成されていない。従って、コンテナ10の第2の部位52において、蒸気流路15が閉塞され、蒸気流路15が、複数(熱輸送体1では2つ)の独立した蒸気流路部15-1、15-2に分割されている。熱輸送体1の蒸気流路15では、蒸気流路部15-1は蒸気流路部15-2と連通しておらず、蒸気流路部15-1を流通する気相の作動流体Gは、蒸気流路部15-2へは流通できず、蒸気流路部15-2を流通する気相の作動流体Gは、蒸気流路部15-1へは流通できない態様となっている。
【0028】
熱輸送体1では、蒸気流路15が複数(熱輸送体1では2つ)の独立した蒸気流路部15-1、15-2に分割されていることに対応して、第1の部位51は、第2の部位52を介して複数(熱輸送体1では2つ)の独立した内部空間を有しており、複数(熱輸送体1では2つ)の第1の部位51が第2の部位52を介して連設されている。
【0029】
蒸気流路部15-1を有する第1の部位51では、気相の作動流体Gが蒸気流路15のうち蒸気流路部15-1を熱輸送体1の熱輸送方向Dに円滑に流通できる。また、蒸気流路部15-2を有する第1の部位51では、気相の作動流体Gが蒸気流路15のうち蒸気流路部15-2を熱輸送体1の熱輸送方向Dに円滑に流通できる。一方で、第2の部位52では、蒸気流路15の厚さ方向の寸法が低減されて熱輸送体1の熱輸送方向Dにおける気相の作動流体Gの流通が制限されている。
【0030】
一方で、ウィック構造体14は、複数の第1の部位51から第2の部位52まで連続して伸延している。上記から、液相の作動流体Lは、ウィック構造体14内部を流通することで、空洞部13全体にわたって流通することができる。従って、液相の作動流体Lは、ウィック構造体14の毛細管力により、蒸気流路部15-1を有する第1の部位51から第2の部位52を介して蒸気流路部15-2を有する第1の部位51へ流通でき、また、蒸気流路部15-2を有する第1の部位51から第2の部位52を介して蒸気流路部15-1を有する第1の部位51へ流通することができる。
【0031】
第2の部位52の熱輸送方向Dに対して平行方向の寸法は、特に限定されないが、その下限値は、複数の第1の部位51間における気相の作動流体Gの流通がより確実に防止される点から、0.05mmが好ましく、0.1mmが特に好ましい。一方で、第2の部位52の熱輸送方向Dに対して平行方向の寸法の上限値は、熱輸送体1全体としての蒸気流路15を十分に確保して気相の作動流体Gの流通特性を向上させ、より確実に優れた冷却特性を得る点から、5mmが好ましく、3mmが特に好ましい。
【0032】
図2に示すように、熱輸送体1では、コンテナ10の平面視(コンテナ10の平面部17に対して鉛直方向から視認した状態)の形状は、四角形状となっている。コンテナ10の平面視の形状が四角形状となっていることに対応して、空洞部13の平面視の形状も四角形状となっている。また、第2の部位52は、空洞部13の幅方向全体にわたって延在している。なお、コンテナ10の平面視の形状は、特に限定されず、四角形状以外の多角形状、円形状、楕円形状、直線部と湾曲部を有する形状等、熱輸送体1の使用条件等に応じて適宜選択可能である。
【0033】
コンテナ10の材質は、特に限定されず、例えば、熱伝導率に優れた点から銅、銅合金、軽量性の点からアルミニウム、アルミニウム合金、機械的強度の改善の点からステンレス等の金属を挙げることができる。また、熱輸送体1の使用状況に応じて、コンテナ10の材質として、スズ、スズ合金、チタン、チタン合金、ニッケル及びニッケル合金等を用いてもよい。
【0034】
熱輸送体1の厚さとしては、例えば、0.1mm以上1.0mm以下を挙げることができる。一方の板状体11の厚さと他方の板状体12の厚さは、同じでも、異なっていてもよく、熱輸送体1では、一方の板状体11の厚さと他方の板状体12の厚さは、略同じとなっている。熱輸送体1では、一方の板状体11の厚さは、一方の板状体11の全体にわたって略均一となっている。また、他方の板状体12の厚さは、他方の板状体12の全体にわたって略均一となっている。一方の板状体11と他方の板状体12の厚さは、例えば、それぞれ、0.03mmを挙げることができる。
【0035】
また、一方の板状体11の周縁部と他方の板状体12の周縁部を接触させた状態で全周にわたって接合することで、密閉容器であるコンテナ10が形成され、空洞部13が封止される。周縁部の接合方法としては、特に限定されず、例えば、拡散接合、ろう付け、ファイバレーザ等によるレーザ溶接、超音波溶接、摩擦接合、圧接接合等を挙げることができる。
【0036】
また、コンテナ10の空洞部13に封入される作動流体としては、コンテナ10の材質に応じて、適宜選択可能であり、例えば、水、代替フロン、パーフルオロカーボン、シクロペンタン、エチレングリコール等を挙げることができる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0037】
ウィック構造体14の部材としては、例えば、金属粉を含む粉体の焼結体、金属細線からなるメッシュ、金属編組体、不織布、金属線材、コンテナ10の内面に形成されたグルーブ(細溝)等が挙げられる。
【0038】
次に、
図1を用いて、本発明の第1実施形態例に係る熱輸送体1の使用方法例を説明する。
図1に示すように、コンテナ10の外面のうち、第1の部位51に冷却対象である発熱体100が熱的に接続される。具体的には、第1の部位51のうち、ウィック構造体14が設けられている第2の面22の外面に、発熱体100が熱的に接続される。上記から、第1の部位51が、発熱体100と熱的に接続される受熱部を有している。
【0039】
熱輸送体1は、例えば、基板(図示せず)に搭載された複数の発熱体100を冷却対象としている。熱輸送体1では、1つの第1の部位51に対して、1つの発熱体100が熱的に接続されている。従って、熱輸送体1では、第1の部位51が2つ設けられていることに対応して、コンテナ10に2つの発熱体100-1、100-2が熱的に接続されている。発熱体100としては、例えば、中央演算処理装置等の半導体部品が挙げられる。
【0040】
次に、本発明の第1実施形態例に係る熱輸送体1の動作について説明する。コンテナ10のうち、蒸気流路部15-1を有する第1の部位51の外面に、発熱体100-1が熱的に接続される。蒸気流路部15-1を有する第1の部位51の外面のうち、発熱体100-1と接触している部位が、受熱部として機能する。また、コンテナ10のうち、蒸気流路部15-2を有する第1の部位51の外面に、発熱体100-2が熱的に接続される。蒸気流路部15-2を有する第1の部位51の外面のうち、発熱体100-2と接触している部位が、受熱部として機能する。
【0041】
熱輸送体1が、蒸気流路部15-1を有する第1の部位51の受熱部にて発熱体100-1から受熱すると、蒸気流路部15-1を有する第1の部位51の空洞部13に封入された液相の作動流体Lが、受熱部にて液相から気相へ相変化し、相変化した気相の作動流体Gが、蒸気流路部15-1を流通して、蒸気流路部15-1を有する第1の部位51の受熱部から蒸気流路部15-1全体にわたって拡散する。蒸気流路部15-1全体にわたって拡散した気相の作動流体Gは、潜熱を放熱して、気相から液相へ相変化する。このとき、放出された潜熱は、蒸気流路部15-1を有する第1の部位51全体から熱輸送体1の外部環境へ放出される。気相から液相へ相変化した作動流体Lは、ウィック構造体14の毛細管力により、蒸気流路部15-1全体から発熱体100-1が熱的に接続されている受熱部へ還流される。
【0042】
また、熱輸送体1が、蒸気流路部15-2を有する第1の部位51の受熱部にて発熱体100-2から受熱すると、蒸気流路部15-2を有する第1の部位51の空洞部13に封入された液相の作動流体Lが、受熱部にて液相から気相へ相変化し、相変化した気相の作動流体Gが、蒸気流路部15-2を流通して、蒸気流路部15-2を有する第1の部位51の受熱部から蒸気流路部15-2全体にわたって拡散する。蒸気流路部15-2全体にわたって拡散した気相の作動流体Gは、潜熱を放熱して、気相から液相へ相変化する。このとき、放出された潜熱は、蒸気流路部15-2を有する第1の部位51全体から熱輸送体1の外部環境へ放出される。気相から液相へ相変化した作動流体Lは、ウィック構造体14の毛細管力により、蒸気流路部15-2全体から発熱体100-2が熱的に接続されている受熱部へ還流される。
【0043】
熱輸送体1では、蒸気流路部15-1を有する第1の部位51と蒸気流路部15-2を有する第1の部位51では、それぞれ、熱輸送体1の熱輸送方向Dに気相の作動流体Gが円滑に流通しつつ、蒸気流路部15-1と蒸気流路部15-2を区分する第2の部位52では、熱輸送体1の熱輸送方向Dにおける気相の作動流体Gの流通が制限されている。熱輸送体1では、蒸気流路部15-1を有する第1の部位51と蒸気流路部15-2を有する第1の部位51では、それぞれ、気相の作動流体Gが独立して流通する。従って、蒸気流路部15-1を有する第1の部位51に発熱体100-1が熱的に接続され、蒸気流路部15-2を有する第1の部位51に発熱体100-2が熱的に接続されても、第2の部位52にて、蒸気流路部15-1と蒸気流路部15-2間の気相の作動流体Gの流通が制限されている。このように、熱輸送体1では、蒸気流路部15-1を有する第1の部位51と蒸気流路部15-2を有する第1の部位51との間における熱輸送が制限されていることから、蒸気流路部15-1を有する第1の部位51に熱的に接続される発熱体100-1と蒸気流路部15-2を有する第1の部位51に熱的に接続される発熱体100-2が、発熱量や耐熱性の異なる発熱体100でも、発熱体100-1、100-2のいずれに対しても優れた冷却特性を発揮できる。
【0044】
また、熱輸送体1では、第2の部位52にて、蒸気流路部15-1を有する第1の部位51と蒸気流路部15-2を有する第1の部位51との間における気相の作動流体Gの流通が制限されているので、発熱体100-1が熱的に接続される第1の部位51の作動流体量を発熱体100-1に最適化でき、発熱体100-2が熱的に接続される第1の部位51の作動流体量を発熱体100-2に最適化できる。従って、熱輸送体1では、複数の第1の部位51のそれぞれに熱的に接続される発熱体100に対して作動流体量を最適化できることから、それぞれの発熱体100に対して優れた冷却特性を発揮できる。
【0045】
また、熱輸送体1では、第2の部位52において蒸気流路15が閉塞され、蒸気流路15が、複数の独立した蒸気流路部15-1、15-2に分割されていることにより、蒸気流路部15-1を有する第1の部位51と蒸気流路部15-2を有する第1の部位51間の気相の作動流体Gの流通が防止されているので、複数の第1の部位51のそれぞれに熱的に接続される発熱体100に対して、さらに優れた冷却特性を発揮できる。
【0046】
また、熱輸送体1では、ウィック構造体14が第1の部位51から第2の部位52まで連続して伸延していることにより、蒸気流路部15-1を有する第1の部位51と蒸気流路部15-2を有する第1の部位51間の気相の作動流体Gの流通が第2の部位52にて防止されつつ、液相の作動流体Lは第1の部位51と第2の部位52との間を円滑に流通できるので、複数の第1の部位51のそれぞれに熱的に接続される発熱体100の発熱量が変動しても、発熱体100に対して作動流体量をさらに確実に最適化できる。
【0047】
次に、本発明の第2実施形態例に係る熱輸送体について詳細を説明する。第2実施形態例に係る熱輸送体は、第1実施形態例に係る熱輸送体と主要な構成要素が共通しているので、第1実施形態例に係る熱輸送体と同じ構成要素については同じ符号を用いて説明する。
図3は、本発明の第2実施形態例に係る熱輸送体の内部構造の概要を説明する側面断面図である。
【0048】
第1実施形態例に係る熱輸送体1では、コンテナ10は平面型コンテナとなっており、ベーパーチャンバであったが、
図3に示すように、第2実施形態例に係る熱輸送体2は、コンテナ10が、一方の端部41の端面と他方の端部42の端面とが封止された管状体40であり、熱輸送体2は、ヒートパイプとなっている。管状体40の一部領域(管状体40の長手方向の中間部)に、空洞部13方向へ窪んだ凹部位31が形成されていることで、コンテナ10が凹部16を有する態様となっている。凹部16は、管状体40の径方向全体にわたって形成されている。
【0049】
熱輸送体2では、凹部16の形成されていない領域が第1の部位51であり、凹部16が第2の部位52となっている。熱輸送体2でも、第2の部位52において蒸気流路15が閉塞され、蒸気流路15が、複数の独立した蒸気流路部15-1、15-2に分割されている。凹部16における第2の部位52の表面は、曲面、中央部が略平坦面で縁部が曲面、または略平坦面となっている。
図3では、凹部16における第2の部位52の表面は、平坦面となっている。
【0050】
なお、熱輸送体2では、ウィック構造体14は、コンテナ10の内周面に設けられており、具体的には、コンテナ10の内周面全体に設けられている。また、第1の部位51の長手方向に対して直交方向の形状は、特に限定されないが、例えば、円形状、楕円形状、扁平形状等が挙げられる。
【0051】
熱輸送体2でも、蒸気流路部15-1を有する第1の部位51と蒸気流路部15-2を有する第1の部位51間の気相の作動流体の流通が防止されているので、蒸気流路部15-1を有する第1の部位51に熱的に接続される発熱体100-1と蒸気流路部15-2を有する第1の部位51に熱的に接続される発熱体100-2が、発熱量や耐熱性の異なる発熱体100でも、発熱体100-1、100-2のいずれに対しても優れた冷却特性を発揮できる。また、熱輸送体2でも、ウィック構造体14が第1の部位51から第2の部位52まで連続して伸延していることにより、液相の作動流体は第1の部位51と第2の部位52との間を円滑に流通できるので、複数の第1の部位51のそれぞれに熱的に接続される発熱体100の発熱量が変動しても、発熱体100に対して作動流体量をさらに確実に最適化できる。
【0052】
次に、本発明の第3実施形態例に係る熱輸送体について詳細を説明する。第3実施形態例に係る熱輸送体は、第1、第2実施形態例に係る熱輸送体と主要な構成要素が共通しているので、第1、第2実施形態例に係る熱輸送体と同じ構成要素については同じ符号を用いて説明する。
図4は、本発明の第3実施形態例に係る熱輸送体の内部構造の概要を説明する側面断面図である。
【0053】
第1実施形態例に係る熱輸送体1では、平面型であるコンテナ10の第2の部位52において、蒸気流路15が閉塞され、蒸気流路15が、複数の独立した蒸気流路部15-1、15-2に分割されていたが、
図4に示すように、第3実施形態例に係る熱輸送体3では、コンテナ10の第2の部位52において、凹部16の先端は対向するウィック構造体14と当接していない。従って、蒸気流路15の第2の部位52における第2の厚さは、0mm超となっている。また、熱輸送体3では、第1の部位51における蒸気流路15の第1の厚さに対する第2の部位52における蒸気流路15の第2の厚さが、1/2以下に低減されており、第2の部位52において、蒸気流路15が閉塞されていない態様となっている。従って、熱輸送体3では、第2の部位52においても蒸気流路15が形成されている。
【0054】
熱輸送体3では、蒸気流路15が閉塞されていない第2の部位52を介して、蒸気流路部15-1を有する第1の部位51と蒸気流路部15-2を有する第1の部位51が連設されている。蒸気流路15の第2の部位52における第2の厚さとしては、例えば、0.15mm以下が挙げられる。
【0055】
熱輸送体3でも、第2の部位52において、蒸気流路部15-1を有する第1の部位51と蒸気流路部15-2を有する第1の部位51間の気相の作動流体の流通が制限されているので、蒸気流路部15-1を有する第1の部位51に熱的に接続される発熱体100-1と蒸気流路部15-2を有する第1の部位51に熱的に接続される発熱体100-2が、発熱量や耐熱性の異なる発熱体100でも、発熱体100-1、100-2のいずれに対しても優れた冷却特性を発揮できる。また、熱輸送体3でも、ウィック構造体14が第1の部位51から第2の部位52まで連続して伸延していることにより、液相の作動流体は第1の部位51と第2の部位52との間を円滑に流通できるので、複数の第1の部位51のそれぞれに熱的に接続される発熱体100の発熱量が変動しても、発熱体100に対して作動流体量をさらに確実に最適化できる。また、熱輸送体3では、凹部16の先端は対向するウィック構造体14と当接していないので、ウィック構造体14の変形が確実に防止されて、液相の作動流体の還流特性がさらに向上する。
【0056】
次に、本発明の第4実施形態例に係る熱輸送体について詳細を説明する。第4実施形態例に係る熱輸送体は、第1~第3実施形態例に係る熱輸送体と主要な構成要素が共通しているので、第1~第3実施形態例に係る熱輸送体と同じ構成要素については同じ符号を用いて説明する。
図5は、本発明の第4実施形態例に係る熱輸送体の内部構造の概要を説明する側面断面図である。
【0057】
第2実施形態例に係る熱輸送体2では、コンテナ10が管状体40であり、コンテナ10の第2の部位52において蒸気流路15が閉塞され、蒸気流路15が、複数の独立した蒸気流路部15-1、15-2に分割されていたが、
図5に示すように、第4実施形態例に係る熱輸送体4では、コンテナ10の第2の部位52において、凹部16の先端は対向するウィック構造体14と当接していない。熱輸送体4では、第1の部位51における蒸気流路15の第1の厚さに対する第2の部位52における蒸気流路15の第2の厚さが、1/2以下に低減されており、第2の部位52において、蒸気流路15が閉塞されていない態様となっている。従って、熱輸送体4では、第2の部位52においても蒸気流路15が形成されている。
【0058】
熱輸送体4では、蒸気流路15が閉塞されていない第2の部位52を介して、蒸気流路部15-1を有する第1の部位51と蒸気流路部15-2を有する第1の部位51が連設されている。蒸気流路15の第2の部位52における第2の厚さとしては、例えば、0.15mm以下が挙げられる。
【0059】
熱輸送体4でも、第2の部位52において、蒸気流路部15-1を有する第1の部位51と蒸気流路部15-2を有する第1の部位51間の気相の作動流体の流通が制限されているので、蒸気流路部15-1を有する第1の部位51に熱的に接続される発熱体100-1と蒸気流路部15-2を有する第1の部位51に熱的に接続される発熱体100-2が、発熱量や耐熱性の異なる発熱体100でも、発熱体100-1、100-2のいずれに対しても優れた冷却特性を発揮できる。また、熱輸送体4でも、ウィック構造体14が第1の部位51から第2の部位52まで連続して伸延していることにより、液相の作動流体は第1の部位51と第2の部位52との間を円滑に流通できるので、複数の第1の部位51のそれぞれに熱的に接続される発熱体100の発熱量が変動しても、発熱体100に対して作動流体量をさらに確実に最適化できる。
【0060】
次に、本発明の第5実施形態例に係る熱輸送体について詳細を説明する。第5実施形態例に係る熱輸送体は、第1~第4実施形態例に係る熱輸送体と主要な構成要素が共通しているので、第1~第4実施形態例に係る熱輸送体と同じ構成要素については同じ符号を用いて説明する。
図6は、本発明の第5実施形態例に係る熱輸送体の内部構造の概要を説明する側面断面図である。
【0061】
第1実施形態例に係る熱輸送体1では、コンテナ10には1つの凹部16が設けられて、蒸気流路15が2つの独立した蒸気流路部15-1、15-2に分割されていたが、
図6に示すように、第5実施形態例に係る熱輸送体5では、コンテナ10には2つの凹部16が設けられて、蒸気流路15が3つの独立した蒸気流路部15-1、15-2、15-3に分割されている。従って、熱輸送体5では、第1の部位51が3つ設けられ、第2の部位52が2つ設けられている。また、3つの第1の部位51が第2の部位52を介して連設されている。
【0062】
熱輸送体5では、第1の部位51が3つ設けられていることから、冷却対象として3つの発熱体100-1、100-2、100-3を熱的に接続することができる。
【0063】
熱輸送体5では、蒸気流路部15-1を有する第1の部位51と蒸気流路部15-2を有する第1の部位51と蒸気流路部15-3を有する第1の部位51との間の気相の作動流体の流通が防止されているので、蒸気流路部15-1を有する第1の部位51に熱的に接続される発熱体100-1と蒸気流路部15-2を有する第1の部位51に熱的に接続される発熱体100-2と蒸気流路部15-3を有する第1の部位51に熱的に接続される発熱体100-3が、発熱量や耐熱性の異なる発熱体100でも、発熱体100-1、100-2、100-3のいずれに対しても優れた冷却特性を発揮できる。また、熱輸送体5でも、ウィック構造体14が第1の部位51から第2の部位52まで連続して伸延していることにより、液相の作動流体は第1の部位51と第2の部位52との間を円滑に流通できるので、複数の第1の部位51のそれぞれに熱的に接続される発熱体100の発熱量が変動しても、発熱体100に対して作動流体量をさらに確実に最適化できる。
【0064】
次に、本発明の第6実施形態例に係る熱輸送体について詳細を説明する。第6実施形態例に係る熱輸送体は、第1~第5実施形態例に係る熱輸送体と主要な構成要素が共通しているので、第1~第5実施形態例に係る熱輸送体と同じ構成要素については同じ符号を用いて説明する。
図7は、本発明の第6実施形態例に係る熱輸送体の内部構造の概要を説明する側面断面図である。
【0065】
第4実施形態例に係る熱輸送体4では、管状体40であるコンテナ10には1つの凹部16が設けられて、第1の部位51が2つ形成されていたが、
図7に示すように、第6実施形態例に係る熱輸送体6では、コンテナ10には2つの凹部16が設けられて、蒸気流路15が3つの蒸気流路部15-1、15-2、15-3を有している。従って、熱輸送体6では、第1の部位51が3つ設けられ、第2の部位52が2つ設けられている。また、3つの第1の部位51が第2の部位52を介して連設されている。熱輸送体6では、2つの凹部16は、いずれも、その先端は対向するウィック構造体14に当接しておらず、第1の部位51における蒸気流路15の第1の厚さに対する第2の部位52における蒸気流路15の第2の厚さが、1/2以下に低減されている。従って、第2の部位52において、蒸気流路15は閉塞されていない態様となっている。
【0066】
熱輸送体6では、第1の部位51が3つ設けられていることから、冷却対象として3つの発熱体100-1、100-2、100-3を熱的に接続することができる。
【0067】
熱輸送体6では、蒸気流路部15-1を有する第1の部位51と蒸気流路部15-2を有する第1の部位51と蒸気流路部15-3を有する第1の部位51との間の気相の作動流体の流通が制限されているので、蒸気流路部15-1を有する第1の部位51に熱的に接続される発熱体100-1と蒸気流路部15-2を有する第1の部位51に熱的に接続される発熱体100-2と蒸気流路部15-3を有する第1の部位51に熱的に接続される発熱体100-3が、発熱量や耐熱性の異なる発熱体100でも、発熱体100-1、100-2、100-3のいずれに対しても優れた冷却特性を発揮できる。また、熱輸送体6でも、ウィック構造体14が第1の部位51から第2の部位52まで連続して伸延していることにより、液相の作動流体は第1の部位51と第2の部位52との間を円滑に流通できるので、複数の第1の部位51のそれぞれに熱的に接続される発熱体100の発熱量が変動しても、発熱体100に対して作動流体量をさらに確実に最適化できる。
【0068】
次に、本発明の第7実施形態例に係る熱輸送体について詳細を説明する。第7実施形態例に係る熱輸送体は、第1~第6実施形態例に係る熱輸送体と主要な構成要素が共通しているので、第1~第6実施形態例に係る熱輸送体と同じ構成要素については同じ符号を用いて説明する。
図8は、本発明の第7実施形態例に係る熱輸送体の内部構造の概要を説明する側面断面図である。
【0069】
第1実施形態例に係る熱輸送体1では、蒸気流路部15-1を有する第1の部位51に発熱体100-1が熱的に接続され、蒸気流路部15-2を有する第1の部位51に発熱体100-2が熱的に接続されていた。すなわち、熱輸送体1では、複数の第1の部位51のいずれにも発熱体100が熱的に接続されていたが、
図8に示すように、第7実施形態例に係る熱輸送体7では、複数の第1の部位51には、発熱体100が熱的に接続されている第1の部位51と発熱体100が熱的に接続されていない第1の部位51とがある。
【0070】
熱輸送体7では、蒸気流路部15-1を有する第1の部位51に発熱体100-1が熱的に接続され、蒸気流路部15-2を有する第1の部位51には、発熱体は熱的に接続されていない。熱輸送体7でも、コンテナ10の第2の部位52において、蒸気流路15が閉塞され、蒸気流路15が、複数(熱輸送体7では2つ)の独立した蒸気流路部15-1、15-2に分割されている。上記から、蒸気流路部15-1を有する第1の部位51と蒸気流路部15-2を有する第1の部位51間の気相の作動流体の流通が防止されている。従って、熱輸送体7では、蒸気流路部15-1を有する第1の部位51に熱的に接続された発熱体100-1を冷却しつつ、蒸気流路部15-1を有する第1の部位51から蒸気流路部15-2を有する第1の部位51へ発熱体100-1からの熱が輸送されることを防止できる。上記から、例えば、平面型であるコンテナ10のうち、蒸気流路部15-2を有する第1の部位51の部分は、筐体の一部として機能することができる。
【0071】
次に、本発明の第8実施形態例に係る熱輸送体について詳細を説明する。第8実施形態例に係る熱輸送体は、第1~第7実施形態例に係る熱輸送体と主要な構成要素が共通しているので、第1~第7実施形態例に係る熱輸送体と同じ構成要素については同じ符号を用いて説明する。
図9は、本発明の第8実施形態例に係る熱輸送体の内部構造の概要を説明する側面断面図である。
【0072】
第2実施形態例に係る熱輸送体2では、蒸気流路部15-1を有する第1の部位51に発熱体100-1が熱的に接続され、蒸気流路部15-2を有する第1の部位51に発熱体100-2が熱的に接続されていた。すなわち、熱輸送体2では、複数の第1の部位51のいずれにも発熱体100が熱的に接続されていたが、
図9に示すように、第8実施形態例に係る熱輸送体8では、複数の第1の部位51には、発熱体100が熱的に接続されている第1の部位51と発熱体100が熱的に接続されていない第1の部位51とがある。
【0073】
熱輸送体8では、蒸気流路部15-1を有する第1の部位51に発熱体100-1が熱的に接続され、蒸気流路部15-2を有する第1の部位51には発熱体は熱的に接続されていない。熱輸送体8でも、コンテナ10の第2の部位52において、蒸気流路15が閉塞され、蒸気流路15が、複数(熱輸送体8では2つ)の独立した蒸気流路部15-1、15-2に分割されている。上記から、蒸気流路部15-1を有する第1の部位51と蒸気流路部15-2を有する第1の部位51間の気相の作動流体の流通が防止されている。従って、熱輸送体8では、蒸気流路部15-1を有する第1の部位51に熱的に接続された発熱体100-1を冷却しつつ、蒸気流路部15-1を有する第1の部位51から蒸気流路部15-2を有する第1の部位51へ発熱体100-1からの熱が輸送されることを防止できる。上記から、例えば、管状体40であるコンテナ10のうち、蒸気流路部15-2を有する第1の部位51の部分は、筐体の一部として機能することができる。
【0074】
次に、本発明の第9実施形態例に係る熱輸送体について詳細を説明する。第9実施形態例に係る熱輸送体は、第1~第8実施形態例に係る熱輸送体と主要な構成要素が共通しているので、第1~第8実施形態例に係る熱輸送体と同じ構成要素については同じ符号を用いて説明する。
図10は、本発明の第9実施形態例に係る熱輸送体の内部構造の概要を説明する側面断面図である。
【0075】
図10に示すように、第9実施形態例に係る熱輸送体9では、第1実施形態例に係る熱輸送体1の第2の部位52に、さらに段差部60が設けられている態様となっている。具体的には、熱輸送体9では、平面型であるコンテナ10の第2の部位52に、コンテナ10の厚さ方向に形成された段差部60を有している。段差部60により、蒸気流路部15-2を有する第1の部位51が、蒸気流路部15-1を有する第1の部位51よりも発熱体100が搭載された基板(図示せず)方向に位置している。また、蒸気流路部15-1を有する第1の部位51に熱的に接続される発熱体100-1の高さが、蒸気流路部15-2を有する第1の部位51に熱的に接続される発熱体100-2の高さよりも高くなっている。
【0076】
熱輸送体9では、コンテナ10が第2の部位52にコンテナ10の厚さ方向に形成された段差部60を有することにより、蒸気流路部15-1を有する第1の部位51に熱的に接続される発熱体100-1の高さが、蒸気流路部15-2を有する第1の部位51に熱的に接続される発熱体100-2の高さと相違しても、発熱体100-1、100-2のいずれに対しても熱的接続性を向上させることができる。
【0077】
次に、本発明の第10実施形態例に係る熱輸送体について詳細を説明する。第10実施形態例に係る熱輸送体は、第1~第9実施形態例に係る熱輸送体と主要な構成要素が共通しているので、第1~第9実施形態例に係る熱輸送体と同じ構成要素については同じ符号を用いて説明する。
図11は、本発明の第10実施形態例に係る熱輸送体の内部構造の概要を説明する側面断面図である。
【0078】
図11に示すように、第10実施形態例に係る熱輸送体110では、第2実施形態例に係る熱輸送体2の第2の部位52に、さらに段差部60が設けられている態様となっている。具体的には、熱輸送体110では、管状体40であるコンテナ10の第2の部位52に、コンテナ10の厚さ方向に形成された段差部60を有している。段差部60により、蒸気流路部15-2を有する第1の部位51が、蒸気流路部15-1を有する第1の部位51よりも発熱体100が搭載された基板(図示せず)方向に位置している。また、蒸気流路部15-1を有する第1の部位51に熱的に接続される発熱体100-1の高さが、蒸気流路部15-2を有する第1の部位51に熱的に接続される発熱体100-2の高さよりも高くなっている。
【0079】
熱輸送体110では、コンテナ10が第2の部位52にコンテナ10の厚さ方向に形成された段差部60を有することにより、蒸気流路部15-1を有する第1の部位51に熱的に接続される発熱体100-1の高さが、蒸気流路部15-2を有する第1の部位51に熱的に接続される発熱体100-2の高さと相違しても、発熱体100-1、100-2のいずれに対しても熱的接続性を向上させることができる。
【0080】
次に、本発明の熱輸送体の製造方法について説明する。ここでは、本発明の第1実施形態例に係る熱輸送体1を用いて、熱輸送体の製造方法について説明する。
図12は、本発明の第1実施形態例に係る熱輸送体の製造方法の概要を説明する側面断面図である。
【0081】
本発明の熱輸送体は、コンテナに第1の部位と第2の部位が形成されていない従来の熱輸送体の製造工程に、コンテナに対する変形工程を追加することで製造することができる。具体的には、以下の通りである。
【0082】
図12に示すように、まず、他方の板状体12の主表面にウィック構造体14を搭載する。次に、ウィック構造体14を設けた側から、他方の板状体12上に一方の板状体11を重ね合わせて、閉塞した内部空間である空洞部13を形成し、空洞部13にウィック構造体14を収納する。そして、一方の板状体11の周縁部と他方の板状体12の周縁部が当接している当接部を接合してコンテナ10を作製する。次に、空洞部13をコンテナ10外部環境に連通させるための注液管120を、コンテナ10の側面に取り付ける。次に、注液管120を介して空洞部13を脱気処理する。次に、注液管120から液相の作動流体Lを空洞部13へ注入する。次に、注液管120の根元部を封止処理して、空洞部13を封止された空間とする。次に、注液管120を切断することで、空洞部13が内部に形成されたコンテナ10と、空洞部13に封入された作動流体と、液相の作動流体Lが流通する、空洞部13に設けられたウィック構造体14と、気相の作動流体が流通する、空洞部13に設けられた蒸気流路15と、を備えている熱輸送体を得ることができる。
【0083】
次に、一方の板状体11の主表面に、押圧治具を用いた塑性変形等の変形処理を施してコンテナ10に凹部16を形成することで、コンテナに第1の部位51と第2の部位52が形成された第1実施形態例に係る熱輸送体1を製造することができる。
【0084】
上記の通り、本発明の熱輸送体は、従来の熱輸送体の製造工程に、コンテナに対する変形工程を追加することで製造できるので、製造工程が簡易であり、歩留まりを向上させることができる。
【0085】
次に、本発明の他の実施形態例について説明する。平面型コンテナを用いた上記第1、第3、第5、第7、第9実施形態例の熱輸送体では、コンテナの両主表面のうち、一方の主表面にはウィック構造体は設けられていなかったが、これに代えて、コンテナの両主表面にウィック構造体が設けられていてもよい。
【0086】
また、管状体のコンテナを用いた上記第2、第4、第6、第8、第10実施形態例の熱輸送体では、ウィック構造体はコンテナの内周面全体に設けられていたが、これに代えて、コンテナの内周面のうち、凹部の先端に対向した部位と該部位からコンテナの長手方向に延在した部位にウィック構造体が設けられ、他の部位にはウィック構造体が設けられていない態様としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明の熱輸送体は、発熱量や耐熱性の異なる複数の発熱体が熱的に接続されても、それぞれの発熱体に対して優れた冷却特性を発揮できるので、例えば、狭小空間に複数設置された発熱特性の異なる発熱体を冷却する分野で利用価値が高い。
【符号の説明】
【0088】
1、2、3、4、5、6、7、8、9、110 熱輸送体
10 コンテナ
13 空洞部
14 ウィック構造体
15 蒸気流路
16 凹部
17 平面部
21 第1の面
22 第2の面
51 第1の部位
52 第2の部位