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特許7575378出発材料としての2-置換4-ヒドロキシ-4-メチル-テトラヒドロピランからの2-置換4-メチル-テトラヒドロピランの調製
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】出発材料としての2-置換4-ヒドロキシ-4-メチル-テトラヒドロピランからの2-置換4-メチル-テトラヒドロピランの調製
(51)【国際特許分類】
   C07D 309/04 20060101AFI20241022BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20241022BHJP
【FI】
C07D309/04
C07B61/00 300
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021523253
(86)(22)【出願日】2019-10-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(86)【国際出願番号】 EP2019079322
(87)【国際公開番号】W WO2020089134
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2022-10-26
(31)【優先権主張番号】18203122.9
(32)【優先日】2018-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュトック,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】デ ウィスペラエレ,アイリーン
(72)【発明者】
【氏名】ブルンナー,ベルンハルト
(72)【発明者】
【氏名】クラウゼ,ヴォルフガング
(72)【発明者】
【氏名】ガルリヒス,フロリアン
【審査官】伊佐地 公美
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-506552(JP,A)
【文献】米国特許第04429144(US,A)
【文献】特表2011-522781(JP,A)
【文献】特開2001-163866(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
C07B
CAplus/REGISTRY(STN)
CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】
[式中、R1
直鎖又は分枝状のC1~C12-アルキル(ここで、アルキルは非置換である)
非置換であるか又はC1~C12-アルキルから選択される1つ、2つ、3つ若しくは4つの置換基で置換された合計3から20個の炭素原子を有するシクロアルキル
から選択される]の化合物を調製する方法であって、
a)一般式(II)
【化2】
(式中、R1は上に定義したとおりである)
の少なくとも1種の化合物を用意するステップ、
b)化合物(II)を酸性条件下水素化触媒の存在下で水素化するステップ
を含み、ワンポット合成である方法。
【請求項2】
R1が直鎖又は分枝状のC1~C6-アルキル(ここで、アルキルは非置換である)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
R1がメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、n-ペンチル又はn-ヘキシルである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
R1がイソブチルである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
化合物(I)のcis:transの異性体比が10:90から90:10の範囲内である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
化合物(I)のcis:transの異性体比が65:35から90:10の範囲内である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ステップb)における水素化が少なくとも1種のプロトン酸、少なくとも1種のルイス酸、少なくとも1種の酸性イオン交換体、少なくとも1種の酸化物酸性固体、少なくとも1種の酸性分子元素化合物及びそれらの混合物から選択される酸の存在下で実施される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ステップb)における水素化が塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、酢酸、ギ酸、トリフルオロメタンスルホン酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、塩化アルミニウム、三フッ化ホウ素、塩化亜鉛、五フッ化リン、三フッ化ヒ素、四塩化スズ、四塩化チタン、五フッ化アンチモン及びそれらの混合物から選択される酸の存在下で実施される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ステップb)における水素化が酸性カチオン交換体の存在下で実施される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ステップb)における水素化がゼオライト、シリケート、アルミネート、アルミノシリケート及びクレイから選択される酸化物酸性固体の存在下で実施される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
触媒がPd、Pt、Ni、Rh、Ru、Co、Fe、Zn、Cu、Re又はそれらの混合物から選択される少なくとも1種の遷移金属を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
水素化触媒が担持触媒である、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
触媒担体が二酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化バリウム、TiO2-Al2O3、ZrO2-Al2O3、ゼオライト、ハイドロタルサイト、炭化ケイ素、炭化タングステン、二酸化ケイ素、炭素、とりわけ活性炭又は硫酸化炭素、ケイソウ土、クレイ、硫酸バリウム、炭酸カルシウム及びそれらの混合物から選択される、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
ステップb)における温度が60から200℃の範囲内である、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
ステップb)における圧力が900mbarから200barの範囲内である、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
本発明は、出発材料としての2-置換4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピランから2-置換4-メチルテトラヒドロピランを調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
先行技術
アルキル置換テトラヒドロピランはアロマ及び香味料として広く使用されている。このクラスの周知の代表例は2-イソブチル-4-メチルテトラヒドロピラン(ジヒドロローズ(dihydrorose)オキシド又はDihydrorosan(登録商標))であり、これはフローラルグリーンの香調を有する。
【0003】
ジヒドロローズオキシドの最初の合成はM. Julia及びB. Jacquet、Bulletin de la Societe Chimique de France 1963、8~9、1983に記載された。ブタ-2-エン-1-アールから出発して、エチルビニルエーテルとのディールス-アルダー反応及び後続の水素化により環状アセタールが得られた。エタノールの脱離、得られた二重結合の臭化水素化(hydrobromination)及びイソプロピルマグネシウムブロミドとの最後のグリニャール反応の後、cis-及びtrans-ジヒドロローズオキシドのラセミ混合物が得られた。
【0004】
Liuらは、J. Heterocyclic Chem、21、129~132(1984)において、酢酸中PtO2を用いた2-イソブチル-4-メチル-5,6-ジヒドロ-4H-ピランの水素化によるcis-ジヒドロローズオキシドの調製を記載している。
【0005】
Schindler及びVogelは、Perfume & Flavorist、第11巻、29~30(1986)において、出発材料としての3-メチルブタ-3-エン-1-オール及び3-メチルブタナールからのジヒドロローズオキシドの調製であって、cis/trans混合物が70:30の比で得られる調製を概略的に記載している。反応経路も遵守すべき条件もより詳細には記載されていない。
【0006】
EP 0 770 670 B1は2-置換(4R)-cis-4-メチルテトラヒドロ-2H-ピランを含む香料組成物を記載している。同出願には、ローズオキシド及びジヒドロローズオキシドの異性体の香気特性が記載されている。ジヒドロローズオキシドの異性体はローズオキシドの対応する異性体の水素化により合成される。
【0007】
WO 2014/060345はイソプレノール(3-メチルブタ-3-エノール)をアルデヒドと反応させることにより2-置換4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピラン及び2-置換4-メチルテトラヒドロピランを調製する方法を記載している。第1のステップにおいて、イソプレノールを好適なアルデヒドの存在下で反応させ、ここで、2-置換4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピラン、6-置換4-メチル-3,6-ジヒドロ-2H-ピラン、2-置換4-メチレンテトラヒドロピラン、2-置換4-メチル-3,6-ジヒドロ-2H-ピラン及び2-置換4,4-ジメチル-1,3-ジオキサンの混合物が得られる。アルコール化合物を分離する。残存する化合物を水素化に供して、2-置換4-メチルテトラヒドロピラン及びジオキサン化合物を得る。
【0008】
WO 2015/158584は2-置換4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピランを調製する方法を記載している。2-置換4,4-ジメチル-1,3-ジオキサンを強酸と反応させ、ここで、6-置換4-メチル-3,6-ジヒドロ-2H-ピラン、2-置換4-メチレンテトラヒドロピラン及び2-置換4-メチル-3,6-ジヒドロ-2H-ピランの生成物混合物が得られる。生成物混合物を水素化に供する。
【0009】
US 2009/0263336及びEP 2 112 144はいずれも2-アルキル-4-メチルテトラヒドロピラノール化合物の調製を記載している。得られたピラノールを、さらなるステップにおける脱水により、4-メチレン-2-アルキルテトラヒドロピラン、4-メチル-2-アルキル-5,6-ジヒドロピラン及び4-メチル-2-アルキル-3,6-ジヒドロピランの混合物に変換することができる。得られた混合物を任意選択で水素化して、対応する4-メチル-2-アルキルテトラヒドロピランを得ることができる。第1に、これらの文献における方法はワンポット合成ではなかった。各中間化合物を次のステップのために単離しなければならない。第2に、2-アルキル-4-メチルテトラヒドロピラン誘導体は、記述された文献においては、前述の化合物の混合物から水素化により調製される。酸触媒については記述されていない。これらの文献に記述された酸はピラノールの調製においてのみ使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
容易に入手可能な出発材料から2-置換4-メチルテトラヒドロピランを調製する有効な方法が引き続き大いに必要とされている。純物質からの合成に加えて、他の合成方法からの以前は使用できなかった副生成物の使用がこの場合特に興味深い。
【0011】
本発明の目的は、2-置換4-メチルテトラヒドロピランを調製する改善された方法を提供することである。
【0012】
驚くべきことに、2-置換4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピランを酸性条件下水素化触媒の存在下で水素化することにより、これらの化合物を迅速な経路により2-置換4-メチルテトラヒドロピラン、具体的にはジヒドロローズオキシドに変換することができることが今回見出された。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、一般式(I)
【0014】
【化1】
[式中、R1
直鎖又は分枝状のC1~C12-アルキル(ここで、アルキルは非置換であるか又はアリール、C1~C12-アルコキシ及びC1~C12-アルキルカルボニルから選択される少なくとも1つの置換基を有する)、
非置換であるか又はC1~C12-アルキル、C1~C12-アルコキシ、C1~C12-アルキル、C1~C12-アルコキシ、フェニル及びベンジルから選択される1つ、2つ、3つ若しくは4つの置換基で置換された合計3から20個の炭素原子を有するシクロアルキル
から選択される]の化合物を調製する方法であって、
a)一般式(II)
【0015】
【化2】
(式中、R1は上に定義したとおりである)
の少なくとも1種の化合物を用意するステップ、
b)化合物(II)を酸性条件下水素化触媒の存在下で水素化するステップ
を含み、ワンポット合成である方法に関する。
【0016】
本発明はさらに、一般式(I)
【0017】
【化3】
[式中、R1
直鎖又は分枝状のC1~C12-アルキル(ここで、アルキルは非置換であるか又はアリール、C1~C12-アルコキシ及びC1~C12-アルキルカルボニルから選択される少なくとも1つの置換基を有する)、
非置換であるか又はC1~C12-アルキル、C1~C12-アルコキシ、C1~C12-アルキル、C1~C12-アルコキシ、フェニル及びベンジルから選択される1つ、2つ、3つ若しくは4つの置換基で置換された合計3から20個の炭素原子を有するシクロアルキル
から選択される]の化合物を調製する方法であって、
a)一般式(II)
【0018】
【化4】
(式中、R1は上に定義したとおりである)
の少なくとも1種の化合物を用意するステップ、
b)化合物(II)を酸性条件下水素化触媒の存在下で水素化するステップ
を含む方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明による方法は以下の利点を有する:
- 本発明により提供される反応は2-置換4-メチルテトラヒドロピラン、具体的にはジヒドロローズオキシド/Dihydrorosan(登録商標)の入手を可能にし、これは1つの反応ステップのみを必要とする(ワンポット合成)。
- 2-置換4-メチルテトラヒドロピラン、具体的にはジヒドロローズオキシドの調製において、さらなる高価な且つ/又は潜在的に有害な試薬、例えばグリニャール試薬又は錯体水素化物、例えば水素化アルミニウムリチウムの使用が回避される。
【0020】
本発明の文脈において、ワンポット合成とは、1つの反応ステップのみを必要とする合成を表す。中間体は単離されない。本発明による反応はin situで行われる。換言すれば、ステップa)及びb)において本発明による方法に必要な物質はすべて反応容器中に最初から既に存在し、又は反応の過程で、ただし反応を停止させずに添加される。反応が完了するとすぐに、所望の生成物が得られる。生成物を当業者に公知の慣習的な精製方法、例えば濾過、蒸留、抽出又はそれらの組合せにより任意選択で精製することができる。
【0021】
以下により詳細な別段の定めがない限り、「2-置換4-メチルテトラヒドロピラン」、「2-(2-メチルプロピル)-4-メチルテトラヒドロピラン」、「2-イソブチル-4-メチルテトラヒドロピラン」(=「ジヒドロローズオキシド」又は「Dihydrorosan(登録商標)」)、「2-置換4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピラン」、「2-(2-メチルプロピル)-4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピラン」及び「2-イソブチル-4-メチルテトラヒドロピラン-4-オール」という用語は、本発明の文脈において、任意の組成のcis/trans混合物及び純粋な立体配座異性体も指す。上述の用語はさらに、純粋な形態のすべてのエナンチオマー並びにこれらの化合物のエナンチオマーのラセミ及び光学活性混合物を指す。
【0022】
化合物(I)又は(II)のcis及びtransジアステレオ異性体について以後で論じられている場合、各場合においてエナンチオマー形態の1つのみが示される。2-(2-メチルプロピル)-4-メチルテトラヒドロピラン(I)(ジヒドロローズオキシド/Dihydrorosan(登録商標))の異性体を単に例示目的で以下に示す:
【0023】
【化5】
【0024】
本発明の文脈において、直鎖又は分枝状のアルキルという表現は、好ましくはC1~C6-アルキル、特に好ましくはC1~C4-アルキルを意味する。特に、アルキルはメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル(2-メチルプロピル)、sec-ブチル(1-メチルプロピル)、tert-ブチル(1,1-ジメチルエチル)、n-ペンチル又はn-ヘキシルである。アルキルはとりわけメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル又はイソブチルである。
【0025】
本発明の文脈において、アリールで置換されたアルキルという表現は、好ましくはアリールで置換されたC1~C6-アルキル、特に好ましくはアリールで置換されたC1~C4-アルキルを意味する。アリールで置換されたアルキルは特にベンジル、1-フェネチル又は2-フェネチルである。
【0026】
本発明の文脈において、直鎖又は分枝状のアルコキシという表現は、好ましくはC1~C6-アルコキシ、特に好ましくはC1~C4-アルコキシを意味する。特に、アルコキシはメトキシ、エトキシ、n-プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、n-ブチルオキシ、イソブチルオキシ、sec-ブチルオキシ、tert-ブチルオキシ、n-ペンチルオキシ又はn-ヘキシルオキシである。アルコキシはとりわけメトキシ、エトキシ、n-プロピルオキシ、イソプロピルオキシ又はイソブチルオキシである。
【0027】
本発明の文脈において、シクロアルキルとは、好ましくは3から10個、特に好ましくは5から8個の炭素原子を有する環状脂肪族基を指す。シクロアルキル基の例は特にシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル又はシクロオクチルである。シクロアルキルはとりわけシクロヘキシルである。
【0028】
置換シクロアルキル基は環のサイズに応じて1つ以上の置換基(例えば1つ、2つ、3つ、4つ又は5つ)を有し得る。これらは好ましくはC1~C6-アルキル、C1~C6-アルコキシ、フェニル及びベンジルから、特に好ましくはC1~C6-アルキル及びC1~C6-アルコキシからそれぞれ独立して選択される。置換の場合、シクロアルキル基は好ましくは1つ以上、例えば1つ、2つ、3つ、4つ又は5つのC1~C6-アルキル基を有する。置換シクロアルキル基の例は特に2-及び3-メチルシクロペンチル、2-及び3-エチルシクロペンチル、2-、3-及び4-メチルシクロヘキシル、2-、3-及び4-エチルシクロヘキシル、2-、3-及び4-プロピルシクロヘキシル、2-、3-及び4-イソプロピルシクロヘキシル、2-、3-及び4-ブチルシクロヘキシル並びに2-、3-及び4-イソブチルシクロヘキシルである。
【0029】
本発明の文脈において、アルキルカルボニルという表現は、好ましくは上に定義したアルキルがカルボニル基を介して分子の残部に結合している(C1~C6-アルキル)カルボニルを意味する。
【0030】
本発明の文脈において、「アリール」という表現は、典型的には6から18個、好ましくは6から14個、特に好ましくは6から10個の炭素原子を有する単環式又は多環式の芳香族炭化水素基を包含する。アリールの例は特にフェニル、ナフチル、インデニル、フルオレニル、アントラセニル、フェナントレニル、ナフタセニル、クリセニル、ピレニル等、とりわけフェニル又はナフチルである。
【0031】
置換アリールはその環系の数及びサイズに応じて1つ以上の置換基(例えば1つ、2つ、3つ、4つ又は5つ)を有し得る。これらはC1~C6-アルキル及びC1~C6-アルコキシからそれぞれ好ましくは独立して選択される。置換アリール基の例は2-、3-及び4-メチルフェニル、2,4-、2,5-、3,5-及び2,6-ジメチルフェニル、2,4,6-トリメチルフェニル、2-、3-及び4-エチルフェニル、2,4-、2,5-、3,5-及び2,6-ジエチルフェニル、2,4,6-トリエチルフェニル、2-、3-及び4-プロピルフェニル、2,4-、2,5-、3,5-及び2,6-ジプロピルフェニル、2,4,6-トリプロピルフェニル、2-、3-及び4-イソプロピルフェニル、2,4-、2,5-、3,5-及び2,6-ジイソプロピルフェニル、2,4,6-トリイソプロピルフェニル、2-、3-及び4-ブチルフェニル、2,4-、2,5-、3,5-及び2,6-ジブチルフェニル、2,4,6-トリブチルフェニル、2-、3-及び4-イソブチルフェニル、2,4-、2,5-、3,5-及び2,6-ジイソブチルフェニル、2,4,6-トリイソブチルフェニル、2-、3-及び4-sec-ブチルフェニル、2,4-、2,5-、3,5-及び2,6-ジ-sec-ブチルフェニル、2,4,6-トリ-sec-ブチルフェニル、2-、3-及び4-tert-ブチルフェニル、2,4-、2,5-、3,5-及び2,6-ジ-tert-ブチルフェニル、2,4,6-トリ-tert-ブチルフェニル、1-メチル-2-ナフチル、3-メチル-2-ナフチル、1,3-ジメチル-2-ナフチル、5,6,7,8-テトラメチル-2-ナフチル、5-メチル-2-ナフチル、6-メチル-2-ナフチル、7-メチル-2-ナフチル、8-メチル-2-ナフチルである。
【0032】
式(I)及び(II)の化合物におけるR1は好ましくは直鎖又は分枝状のC1~C12-アルキル(ここで、アルキルは非置換であるか又はアリールで置換されている)である。R1は特に好ましくは直鎖又は分枝状のC1~C6-アルキル(ここで、アルキルは非置換であるか又はフェニル及びC1~C6-アルコキシから選択される少なくとも1つの置換基を有する)である。
【0033】
したがって、R1基についての本発明による好ましい定義は例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル又はn-ヘプチル、好ましくはメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、とりわけ好ましくはイソブチル(2-メチルプロピル)である。
【0034】
したがって、本発明は、好ましい実施形態の文脈において、式(Ia)の2-(2-メチルプロピル)-4-メチルテトラヒドロピラン(ジヒドロローズオキシド/Dihydrorosan(登録商標))を調製し、単離する方法に関する。
【0035】
【化6】
【0036】
ステップa)
ステップa)における使用に好適な出発材料は、式(II)
【0037】
【化7】
[式中、R1
直鎖又は分枝状のC1~C12-アルキル(ここで、アルキルは非置換であるか又はアリール、C1~C12-アルコキシ及びC1~C12-アルキルカルボニルから選択される少なくとも1つの置換基を有する)、
非置換であるか又はC1~C12-アルキル、C1~C12-アルコキシ、C1~C12-アルキル、C1~C12-アルコキシ、フェニル及びベンジルから選択される1つ、2つ、3つ若しくは4つの置換基で置換された合計3から20個の炭素原子を有するシクロアルキル
から選択される]の少なくとも1種の化合物であり得る。
【0038】
R1は好ましくは直鎖又は分枝状のC1~C6-アルキル(ここで、アルキルは非置換であるか又はフェニル及びC1~C6-アルコキシから選択される少なくとも1つの置換基を有する)から選択される。
【0039】
R1は特に好ましくはメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル及びフェニルから選択される。
【0040】
R1はとりわけ好ましくはメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、n-ペンチル及びn-ヘキシルから選択される。
【0041】
特定の実施形態では、R1はイソブチル(2-メチルプロピル)である。
【0042】
式(II)の化合物の調製のための合成経路はWO 2010/133473、WO 2015/158454及びWO 2014/060345に記載されている。
【0043】
ステップb)
本発明によれば、式(II)の化合物を脱離とそれに続く酸性条件下水素化触媒の存在下での水素化に供する。ステップb)における脱離及び水素化は式(II)の化合物を式(I)の対応する化合物に変換する。
【0044】
脱離とそれに続く水素化は好ましくは1つの反応段階で(ワンポット合成)、すなわち中間化合物の単離なしに実施される。
【0045】
本発明の文脈において、「酸性条件下」という表現は、反応が酸の存在下で行われることを意味すると理解される。酸とは、ブレンステッド又はルイス酸性を有する任意の物質を意味すると理解される。
【0046】
そのような物質は好ましくはプロトン供与体、電子受容体及びそれらの混合物から選択される。
【0047】
プロトン供与体は好ましくは分子プロトン酸、イオン交換体及びそれらの混合物から選択される。
【0048】
電子受容体は好ましくは酸性分子元素化合物(acidic molecular element compound)、酸化物酸性固体(oxidic acidic solid)及びそれらの混合物から選択される。
【0049】
好適な分子プロトン酸は例えば塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、酢酸、ギ酸、トリフルオロメタンスルホン酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸及びそれらの混合物である。
【0050】
好適な酸性分子元素化合物は例えば塩化アルミニウム、三フッ化ホウ素、塩化亜鉛、五フッ化リン、三フッ化ヒ素、四塩化スズ、四塩化チタン、五フッ化アンチモン及びそれらの混合物である。
【0051】
好適な酸化物酸性固体は例えばゼオライト、シリケート、アルミネート、アルミノシリケート、クレイ及びそれらの混合物である。
【0052】
好適なイオン交換体は酸性カチオン性イオン交換体である。
【0053】
本発明の文脈において、「酸性カチオン交換体」という表現は、酸性基、通常はスルホン酸基を有し、そのマトリックスがゲル様又はマクロ多孔性であり得るH+形態のカチオン交換体を意味すると理解される。よって、本発明による方法の好ましい実施形態は、スルホン酸基を含有する又は含む酸性カチオン交換体が使用されることを特徴とする。
【0054】
酸性カチオン交換体は特にH+形態のイオン交換樹脂である。これらの有用な例には以下が含まれる:
- ポリスチレンをベースとし、H+形態のスルホン酸基を有する担体マトリックスとしてのスチレン及びジビニルベンゼンのコポリマーを含む酸性イオン交換体(例えばAmberlyst、Amberlite、Dowex、Lewatit、Purolite、Serdolit)、
- スルホン酸基(-SO3H)で官能化されたイオン交換基。
【0055】
イオン交換体はそのポリマー骨格の構造が異なり、ゲル様樹脂及びマクロ多孔性樹脂間で区別される。酸性イオン交換樹脂は一般に塩酸及び/又は硫酸を使用して再生される。
【0056】
Nafion(登録商標)はペルフルオロ化ポリマーイオン交換樹脂のDupont Companyの名称である。これらはフルオロカーボンベースの鎖及びスルホン酸基を含むペルフルオロ化側鎖からなるペルフルオロ化イオン交換材料である。それらの樹脂はペルフルオロ化され、末端が不飽和であり、スルホニルフルオリドで官能化されたエトキシレートとペルフルオロエテンとの共重合により生成される。Nafion(登録商標)はゲル様イオン交換樹脂の1種である。1種のそのようなペルフルオロ化ポリマーイオン交換樹脂の例はNafion(登録商標)>NR-50である。
【0057】
酸性カチオン交換体は一般にH+形態で使用され、イオン交換体はスルホン酸基を含有するポリマー骨格を含み、ゲル形態であるか又はマクロ多孔性樹脂を含む。
【0058】
本発明による方法の非常に特に好ましい実施形態は、イオン交換体がスルホン酸基を有するポリスチレン骨格又はスルホン酸基を有するペルフルオロ化イオン交換樹脂をベースとすることを特徴とする。
【0059】
市販の酸性カチオン交換体はLewatit(登録商標)(Lanxess)、Purolite(登録商標)(The Purolite Company)、Dowex(登録商標)(Dow Chemical Company)、Amberlite(登録商標)(Rohm and Haas Company)、Amberlyst(商標)(Rohm and Haas Company)という商品名で知られている。本発明に従って好ましい酸性カチオン交換体には例えば以下が含まれる:Lewatit(登録商標)K 1221、Lewatit(登録商標)K 1461、Lewatit(登録商標)K 2431、Lewatit(登録商標)K 2620、Lewatit(登録商標)K 2621、Lewatit(登録商標)K 2629、Lewatit(登録商標)K 2649、Amberlite(登録商標)IR 120、Amberlyst(商標)131、Amberlyst(商標)15、Amberlyst(商標)31、Amberlyst(商標)35、Amberlyst(商標)36、Amberlyst(商標)39、Amberlyst(商標)46、Amberlyst(商標)70、Purolite(登録商標)SGC650、Purolite(登録商標)C100H、Purolite(登録商標)C150H、Dowex(登録商標)50X8、Dowex(登録商標)88、Serdolit(登録商標)red及びNafion(登録商標)NR-50。
【0060】
好ましい実施形態の文脈において、本発明による実施すべき化合物(II)の反応は、Lewatit(登録商標)K 1221、Lewatit(登録商標)K 2629、Amberlyst(商標)131、Amberlyst(商標)35、Purolite(登録商標)SGC650、Purolite(登録商標)C100H、Purolite(登録商標)C15OH、Amberlite(登録商標)IR 120、Dowex(登録商標)88及びDowex(登録商標)50X8を含むカチオン交換体の群から選択される少なくとも1種の酸性カチオン交換体の存在下で実施される。
【0061】
本発明による特に好ましい酸性カチオン交換体はカチオン交換体Amberlyst(商標)35、Dowex(登録商標)88及び/又はAmberlite(登録商標)IR 120である。
【0062】
本発明による非常に特に好ましい酸性カチオン交換体はAmberlyst(商標)35であり、これは記述されたその他のカチオン交換体と同様に市販されている。
【0063】
酸性イオン交換樹脂は一般に塩酸及び/又は硫酸を使用して再生される。
【0064】
ステップb)における水素化は先行技術の水素化触媒を使用して従来の様式で実施され得る。水素化は気相中又は液相中で触媒的に実施され得る。ステップb)における水素化は好ましくは不均一水素化触媒及び水素含有ガスの存在下で液相中で実施される。
【0065】
好適な水素化触媒には原則として不飽和有機化合物を水素化するのに好適なすべての均一及び不均一触媒が含まれる。これらには例えば金属、金属酸化物、その様々な金属化合物又はそれらの混合物が含まれる。好適な水素化触媒は好ましくは少なくとも1種の遷移金属、好ましくは元素周期表の遷移族I及びVIからVIIIからのものを含む。これらには好ましくはPd、Pt、Ni、Rh、Ru、Co、Fe、Zn、Cu、Re又はそれらの混合物が含まれる。
【0066】
水素化触媒は上に記載された金属とは異なる少なくとも1種のさらなる金属/元素を含み得る。さらなる金属/元素は好ましくはアルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミニウム、ケイ素、ランタノイド及びそれらの混合物から選択される。
【0067】
さらなる金属/元素の割合は好ましくは水素化触媒の活性部分(担体を除く)の総重量に対して0.1重量%から10重量%の範囲内である。
【0068】
触媒は活性成分のみからなってもよく、又は活性成分が担体に加えられてもよい。好適な担体材料は例えば二酸化ジルコニウム、酸化バリウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、TiO2-Al2O3、ZrO2-Al2O3、ゼオライト、ハイドロタルサイト、炭化ケイ素、炭化タングステン、二酸化ケイ素、炭素、とりわけ活性炭又は硫酸化炭素、ケイソウ土、クレイ、硫酸バリウム、炭酸カルシウム及び混合物である。
【0069】
一実施形態では、担体材料は同時に本発明に従って使用される酸を含むか又はそれからなる。
【0070】
触媒活性を増加させるために、ラネー触媒の形態を含むNi、Cu若しくはCo、Pd、Pt、Rh、Ru、Co、Fe、Zn、Cu又はそれらの混合物を非常に大きい表面積を有する金属スポンジの形態で使用することができる。
【0071】
炭素担持パラジウム(palladium on carbon)、Al2O3担持パラジウム(palladium on Al2O3)、SiO2担持パラジウム(palladium on SiO2)又は炭素担持白金(platinum on carbon)は、好ましくは本発明による方法のステップb)における水素化に有利に使用される。炭素担持パラジウムが特に好ましくは有利に使用される。
【0072】
他の好適な触媒は例えば80重量%から100重量%のニッケル及び/又はコバルト並びに最大20重量%の活性化金属、例えば銅及び/又はクロムを含む。そのような触媒は担持触媒として特に有利に使用される。
【0073】
担体材料が炭素であるそのような担持触媒中の触媒活性金属の含有量は、一般に触媒活性金属及び担体の和に対して0.05重量%から10重量%である。
【0074】
担体材料が酸化物、例えばAl2O3又はSiO2であるそのような担持触媒中の触媒活性金属の含有量は、一般に触媒活性金属及び担体の和に対して0.01から1重量%である。
【0075】
ステップb)における水素化のための触媒は成形体の形態で使用され得る。例は触媒押出物、例えばリブ付き押出物(ribbed extrudate)及び他の押出物形態、卵殻触媒、錠剤、リング、球、小片等を含む。
【0076】
ステップb)における水素化を60から200℃、好ましくは120から150℃、とりわけ135から145℃の温度で実施することが好ましい。
【0077】
反応が気相中で実施される場合、圧力は好ましくは0.9から50bar、特に好ましくは1から20barの範囲内である。
【0078】
反応が液相中で実施される場合、圧力は好ましくは0.9から200bar、特に40から80barの範囲内である。
【0079】
ステップb)における水素化は1つの反応器中で又は直列に接続された複数の反応器中で実施することができる。水素化は連続的に又はバッチ式で行うことができる。バッチ式水素化には、例えば圧力容器が使用され得る。好適な圧力容器は例えば反応器内容物を加熱及び撹拌するための装置を備えたオートクレーブである。水素化は好ましくは固定床上の液相中で、好ましくは液相方式若しくはトリクル(trickle)方式で又は懸濁触媒作用の形態で実施される。固定床方式での操作は例えば液相方式で又はトリクル方式で実行することができる。この場合、触媒は好ましくは成形体の形態で、例えば圧縮された円柱、錠剤、ペレット、車輪、リング、星又は押出物、例えば固体押出物、ポリローブ状(polylobal)押出物、中空押出物、ハニカム等の形態で使用される。
【0080】
懸濁方式では、不均一触媒が同様に使用される。不均一触媒は通常は微粉化状態で使用され、反応媒体中の微細懸濁液の状態である。
【0081】
固定床上での水素化の場合、固定床が内部に配置され、それを通って反応媒体が流れる反応器が使用される。固定床は単一床から又は複数床から形成され得る。各床は1つ以上のゾーンを有してもよく、ゾーンの少なくとも1つは水素化触媒として活性な材料を含む。各ゾーンは1種以上の異なる触媒活性材料及び/又は1種以上の異なる不活性材料を有し得る。異なるゾーンはそれぞれ同一の又は異なる組成を有し得る。例えば不活性床により互いに分離された複数の触媒活性ゾーンを設けることも可能である。個々のゾーンは異なる触媒活性を有してもよい。このために、異なる触媒活性材料を使用すること及び/又は不活性材料をゾーンの少なくとも1つに添加することが可能である。本発明による固定床を通って流れる反応媒体は少なくとも1つの液相を含む。反応媒体はまた気相をさらに含んでもよい。
【0082】
懸濁液中での水素化に使用される反応器はとりわけループ装置、例えばジェットループ又はプロペラループ、撹拌槽反応器カスケードとして構成されてもよい撹拌槽反応器、バブルカラム又はエアリフト反応器である。
【0083】
ステップb)における水素化は好ましくは懸濁方式で実施される。
【0084】
水素化は溶媒を添加して又は添加せずに実施することができる。有用な溶媒にはアルコール、エーテル及び炭化水素、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ジオキサン、テトラヒドロフラン、n-ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン等が含まれる。ステップb)における水素化は好ましくは溶媒を添加せずに実施される。
【0085】
ステップb)における水素化のために、ステップa)において得られた式(II)の化合物を水素含有ガス及び水素化触媒と接触させることができる。好適な水素含有ガスは水素及び水素と少なくとも1種の不活性ガスとの混合物から選択される。好適な不活性ガスは例えば窒素又はアルゴンである。ステップb)における水素化のために、水素は好ましくは非希釈形態で、典型的には約99.9体積%の純度で使用される。
【0086】
ステップb)における水素化は式(II)の化合物を2-置換4-メチルテトラヒドロピラン(I)に変換する。水素化に使用される出発材料は好ましくは式(II)の化合物を含み、式中、R1基は上に定義したとおりである。R1は好ましくはイソブチルである。
【0087】
特定の実施形態では、ステップb)における水素化は化合物(II)を2-イソブチル-4-メチル-テトラヒドロピラン(Ia)(ジヒドロローズオキシド)に変換する。
【0088】
ステップb)において得られた式(I)の化合物は、好ましくは10:90から90:10、特に好ましくは65:35から90:10の範囲内のcis-ジアステレオマーとtrans-ジアステレオマーとのジアステレオマー比を有する。
【0089】
ステップb)において得られた式(I)の化合物は単純な精製ステップにより商業使用に好適な形態に変換することができる。
【0090】
所望の場合、ステップb)において得られた式(I)の化合物をさらなる処理に供することができる。この目的で、ステップb)において得られた化合物(I)を原則として当業者に公知の慣習的な精製プロセスに供することができる。これには例えば濾過、中和、蒸留、抽出又はそれらの組合せが含まれる。
【0091】
2-置換4-メチルテトラヒドロピラン(I)に富む画分及び2-置換4-メチルテトラヒドロピラン(I)に乏しい画分を好ましくはステップb)において得られた水素化生成物から単離する。
【0092】
ステップb)において得られた化合物(I)を好ましくは蒸留分離に供する。蒸留分離に好適な装置は蒸留カラム、例えばバブルキャップ、シーブプレート、シーブトレイ、構造化パッキング、ランダムパッキング、バルブ、側面抜取口(side draw)等を備えていてもよいトレイカラム(tray column)、蒸発器、例えば薄膜蒸発器、流下膜式蒸発器、強制循環蒸発器、Sambay蒸発器等及びそれらの組合せを含む。
【0093】
ステップb)において得られた化合物(I)を好ましくはステップc)において分離内部構造物(internal)が設けられた少なくとも1つの蒸留カラム中で蒸留分離に供する。
【0094】
2-置換4-メチル-テトラヒドロピラン(I)に富む画分を好ましくはステップb)において得られた化合物(I)からステップc)において単離し、cis-ジアステレオマーとtrans-ジアステレオマーとのジアステレオマー比は10:90から90:10、好ましくは65:35から90:10の範囲内である。
【0095】
さらなる水溶性不純物を除去するために、ステップc)において得られた2-置換4-メチルテトラヒドロピラン(I)に富む画分を少なくとも1回の水による洗浄ステップに供してもよい。或いは又は加えて、ステップc)において得られた2-置換4-メチルテトラヒドロピラン(I)に富む画分をさらなる蒸留精製に供してもよい。
【0096】
以下の実施例は本発明を決して限定することなく本発明を説明するのに役立つ。
【0097】
[実施例]
ガスクロマトグラフィー分析を以下の方法に従って実施した:
カラム:DB WAX 30m×0.32mm、
FT 0.25μm、
注入器温度:200℃、検出器温度280℃、
温度プログラム:開始温度:50℃、3℃/分で170°Cまで、
20℃/分で230℃まで、7分等温、
保持時間:2-イソブチル-4-メチルテトラヒドロピラン-4-オール tR=28.9分及び30.4
cis-ジヒドロローズオキシド tR=8.77分
trans-ジヒドロローズオキシド tR=10.09分
【0098】
得られた粗生成物の濃度(重量%)を内部標準物質を使用したGC分析により決定した。
【0099】
1. メタノール中の2-イソブチル-4-メチルテトラヒドロピラン-4-オールから出発する2-イソブチル-4-メチルテトラヒドロピランの調製
12gの2-イソブチル-4-メチルテトラヒドロピラン-4-オール(異性体比24:76)、28gのメタノール、0.2gのPd/C触媒(C担持10%Pd)及び0.2gのAmberlyst 35 dryをオートクレーブ中に秤量する。これを閉鎖し、窒素及び水素でそれぞれ1回フラッシュする。オートクレーブを最初に30barの水素で加圧し、次いで140℃に加熱し、反応温度に達した後、圧力を50barに調整する。実験物(experiment)をこれらの条件下で12時間撹拌し、圧力を50barに保つためにオートクレーブを1時間、3時間及び5時間後に水素で再加圧する。次いで、オートクレーブを減圧し、冷却する。触媒及びイオン交換体を濾別し、得られた溶液は無色透明である。
【0100】
>99%の2-イソブチル-4-メチルテトラヒドロピラン-4-オール変換率で、2-イソブチル-4-メチルテトラヒドロピランが2-イソブチル-4-メチルテトラヒドロピラン-4-オールに対して86%の選択性で形成された。cis/trans比は5.33:1である。
【0101】
2. 無溶媒の2-イソブチル-4-メチルテトラヒドロピラン-4-オールから出発する2-イソブチル-4-メチルテトラヒドロピランの調製
36gの2-イソブチル-4-メチルテトラヒドロピラン-4-オール(異性体比24:76)、0.4gのPd/C触媒(C担持10%Pd)及び0.4gのAmberlyst 35 dryをオートクレーブ中に秤量する。これを閉鎖し、窒素及び水素でそれぞれ1回フラッシュする。オートクレーブを最初に30barの水素で加圧し、次いで140℃に加熱し、反応温度に達した後、圧力を50barに調整する。実験物をこれらの条件下で12時間撹拌し、圧力を50barに保つためにオートクレーブを1時間、3時間及び5時間後に水素で再加圧する。次いで、オートクレーブを減圧し、冷却する。触媒及びイオン交換体を濾別し、得られた溶液は無色透明である。
【0102】
60%の2-イソブチル-4-メチルテトラヒドロピラン-4-オール変換率で、2-イソブチル-4-メチルテトラヒドロピランが2-イソブチル-4-メチルテトラヒドロピラン-4-オールに対して50%の選択性で形成された。cis/trans比は6.1:1である。
【0103】
3. メタノール中の2-イソブチル-4-メチルテトラヒドロピラン-4-オールから出発する2-イソブチル-4-メチルテトラヒドロピランの調製
12gの2-イソブチル-4-メチルテトラヒドロピラン-4-オール(異性体比24:76)、28gのメタノール、0.4gのPd/C触媒(C担持5%Pd)及び0.4gのAmberlyst 35 dryをオートクレーブ中に秤量する。これを閉鎖し、窒素及び水素でそれぞれ1回フラッシュする。オートクレーブを最初に30barの水素で加圧し、次いで140℃に加熱し、反応温度に達した後、圧力を50barに調整する。実験物をこれらの条件下で12時間撹拌し、圧力を50barに保つためにオートクレーブを1時間、3時間及び5時間後に水素で再加圧する。次いで、オートクレーブを減圧し、冷却する。触媒及びイオン交換体を濾別し、得られた溶液は無色透明である。
【0104】
>81.2%の2-イソブチル-4-メチルテトラヒドロピラン-4-オール変換率で、2-イソブチル-4-メチルテトラヒドロピランが2-イソブチル-4-メチルテトラヒドロピラン-4-オールに対して65.6%の選択性で形成された。cis/trans比は6.06:1である。
【0105】
4. メタノール中の2-イソブチル-4-メチルテトラヒドロピラン-4-オールから出発する2-イソブチル-4-メチルテトラヒドロピランの調製
12gの2-イソブチル-4-メチルテトラヒドロピラン-4-オール(異性体比24:76)、28gのメタノール、0.7gのPd/C触媒(C担持5%Pd)及び0.7gのAmberlyst 35 dryをオートクレーブ中に秤量する。これを閉鎖し、窒素及び水素でそれぞれ1回フラッシュする。オートクレーブを最初に30barの水素で加圧し、次いで120℃に加熱し、反応温度に達した後、圧力を80barに調整する。実験物をこれらの条件下で12時間撹拌し、圧力を50barに保つためにオートクレーブを1時間、3時間及び5時間後に水素で再加圧する。次いで、オートクレーブを減圧し、冷却する。触媒及びイオン交換体を濾別し、得られた溶液は無色透明である。
【0106】
56.7%の2-イソブチル-4-メチルテトラヒドロピラン-4-オール変換率で、2-イソブチル-4-メチルテトラヒドロピランが2-イソブチル-4-メチルテトラヒドロピラン-4-オールに対して62%の選択性で形成された。cis/trans比は5.17:1である。

本発明は例えば以下の実施形態を含む。
[項1]
一般式(I)
【化8】
[式中、R1
直鎖又は分枝状のC1~C12-アルキル(ここで、アルキルは非置換であるか又はアリール、C1~C12-アルコキシ及びC1~C12-アルキルカルボニルから選択される少なくとも1つの置換基を有する)、
非置換であるか又はC1~C12-アルキル、C1~C12-アルコキシ、C1~C12-アルキル、C1~C12-アルコキシ、フェニル及びベンジルから選択される1つ、2つ、3つ若しくは4つの置換基で置換された合計3から20個の炭素原子を有するシクロアルキル
から選択される]の化合物を調製する方法であって、
a)一般式(II)
【化9】
(式中、R1は上に定義したとおりである)
の少なくとも1種の化合物を用意するステップ、
b)化合物(II)を酸性条件下水素化触媒の存在下で水素化するステップ
を含み、ワンポット合成である方法。
[項2]
R1が直鎖又は分枝状のC1~C6-アルキル(ここで、アルキルは非置換であるか又はフェニル及びC1~C6-アルコキシから選択される少なくとも1つの置換基を有する)である、項1に記載の方法。
[項3]
R1がメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル又はフェニル、好ましくはイソブチルである、項1又は2に記載の方法。
[項4]
化合物(I)のcis:transの異性体比が10:90から90:10の範囲内、好ましくは65:35から90:10の範囲内である、項1から3のいずれか一項に記載の方法。
[項5]
ステップb)における水素化が少なくとも1種のプロトン酸、少なくとも1種のルイス酸、少なくとも1種の酸性イオン交換体、少なくとも1種の酸化物酸性固体、少なくとも1種の酸性分子元素化合物及びそれらの混合物から選択される酸の存在下で実施される、項1から4のいずれか一項に記載の方法。
[項6]
ステップb)における水素化が塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、酢酸、ギ酸、トリフルオロメタンスルホン酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、塩化アルミニウム、三フッ化ホウ素、塩化亜鉛、五フッ化リン、三フッ化ヒ素、四塩化スズ、四塩化チタン、五フッ化アンチモン及びそれらの混合物から選択される酸の存在下で実施される、項1から5のいずれか一項に記載の方法。
[項7]
ステップb)における水素化が酸性カチオン交換体の存在下で実施される、項1から5のいずれか一項に記載の方法。
[項8]
ステップb)における水素化がゼオライト、シリケート、アルミネート、アルミノシリケート及びクレイから選択される酸化物酸性固体の存在下で実施される、項1から5のいずれか一項に記載の方法。
[項9]
触媒がPd、Pt、Ni、Rh、Ru、Co、Fe、Zn、Cu、Re又はそれらの混合物から選択される少なくとも1種の遷移金属を含む、項1から8のいずれか一項に記載の方法。
[項10]
水素化触媒が担持触媒である、項1から9のいずれか一項に記載の方法。
[項11]
触媒担体が二酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化バリウム、TiO2-Al2O3、ZrO2-Al2O3、ゼオライト、ハイドロタルサイト、炭化ケイ素、炭化タングステン、二酸化ケイ素、炭素、とりわけ活性炭又は硫酸化炭素、ケイソウ土、クレイ、硫酸バリウム、炭酸カルシウム及びそれらの混合物から選択される、項1から10のいずれか一項に記載の方法。
[項12]
ステップb)における温度が60から200℃の範囲内、好ましくは120から150℃の範囲内である、項1から11のいずれか一項に記載の方法。
[項13]
ステップb)における圧力が900mbarから200bar、好ましくは40から80barの範囲内である、項1から12のいずれか一項に記載の方法。