(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】回転コネクタ装置
(51)【国際特許分類】
H01R 35/04 20060101AFI20241022BHJP
【FI】
H01R35/04 U
(21)【出願番号】P 2022536352
(86)(22)【出願日】2021-07-12
(86)【国際出願番号】 JP2021026178
(87)【国際公開番号】W WO2022014541
(87)【国際公開日】2022-01-20
【審査請求日】2024-02-26
(31)【優先権主張番号】P 2020121326
(32)【優先日】2020-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020196161
(32)【優先日】2020-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142871
【氏名又は名称】和田 哲昌
(74)【代理人】
【識別番号】100094743
【氏名又は名称】森 昌康
(72)【発明者】
【氏名】山上 洋平
(72)【発明者】
【氏名】浜崎 新一
(72)【発明者】
【氏名】荒木 真哉
(72)【発明者】
【氏名】宇都宮 博文
【審査官】石田 佳久
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-016497(JP,A)
【文献】特開平01-258377(JP,A)
【文献】特開2016-074334(JP,A)
【文献】特開2018-045787(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 35/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸線回りに互いに相対回転可能に設けられ、前記回転軸線を取り囲むように設けられるケーブル収容空間を形成する第1ケースおよび第2ケースと、
前記第1ケースおよび前記第2ケースの相対回転を所定の回転角度に制限するように構成されるストッパ構造と、を備え、
前記ストッパ構造は、
前記第1ケースに対して前記第2ケースとともに前記回転軸線回りに回転可能かつ前記回転軸線に沿って定義される軸方向において前記第1ケースおよび前記第2ケースに対して移動可能な可動部材と、
前記第1ケースおよび前記第2ケースの前記相対回転を前記第1ケースおよび前記第2ケースに対する前記可動部材の前記軸方向への移動に変換するように構成される移動変換部と、
前記第1ケースおよび前記第2ケースの少なくとも一方に設けられ前記可動部材と接触可能なストッパと、を含
み、
前記第1ケースは、前記軸方向に延びる中央開口を含み、
前記可動部材、前記移動変換部、および前記ストッパの少なくとも1つは、少なくとも部分的に前記中央開口内に設けられ、
前記第1ケースは、前記中央開口を少なくとも部分的に定義する内周部を含み、
前記移動変換部は、前記第1ケースの前記内周部に設けられる、
回転コネクタ装置。
【請求項2】
前記移動変換部は、前記第2ケースおよび前記可動部材に対して前記第1ケースとともに前記回転軸線回りに回転可能である、
請求項1に記載の回転コネクタ装置。
【請求項3】
前記移動変換部は、前記可動部材の径方向外側に設けられる、
請求項2に記載の回転コネクタ装置。
【請求項4】
前記移動変換部は、前記第1ケースおよび前記第2ケースの前記相対回転を前記可動部材の前記軸方向への前記移動に変換するように構成される変換溝を含み、
前記可動部材は、前記変換溝内に配置される外周部を含む、
請求項1~3のいずれか1項に記載の回転コネクタ装置。
【請求項5】
前記変換溝は、前記回転軸線に関する周方向に延びる、
請求項4に記載の回転コネクタ装置。
【請求項6】
前記変換溝は、前記回転軸線回りに螺旋状に延びる、
請求項4または5に記載の回転コネクタ装置。
【請求項7】
前記第1ケースは、環状の形状を有し前記ケーブル収容空間を部分的に形成するように構成される第1ケース本体と、前記第1ケース本体から前記軸方向に延び前記内周部を含む筒状部と、を含む、
請求項1~6のいずれか1項に記載の回転コネクタ装置。
【請求項8】
前記第2ケースおよび前記可動部材の少なくとも一方は、少なくとも1つの案内開口を含み、
前記第2ケースおよび前記可動部材の少なくとも一方は、前記軸方向に延び前記少なくとも1つの案内開口内に設けられる少なくとも1つの案内突出部を含む、
請求項1~7のいずれか1項に記載の回転コネクタ装置。
【請求項9】
前記少なくとも1つの案内開口は、前記回転軸線に関する周方向に間隔を空けて配置される複数の案内開口を含み、
前記少なくとも1つの案内突出部は、前記周方向に間隔を空けて配置され前記複数の案内開口内にそれぞれ設けられる複数の案内突出部を含む、
請求項8に記載の回転コネクタ装置。
【請求項10】
前記第2ケースは、環状の形状を有し前記ケーブル収容空間を部分的に形成するように構成される第2ケース本体と、前記第2ケース本体とは別部材であって前記第2ケース本体に連結されるスリーブと、を含み、
前記可動部材は、前記軸方向に移動可能に前記スリーブに連結される、
請求項8または9に記載の回転コネクタ装置。
【請求項11】
前記スリーブは、スリーブ本体と、前記スリーブ本体から前記軸方向に突出する前記少なくとも1つの案内突出部と、を含み、
前記可動部材は、前記少なくとも1つの案内開口を含む、
請求項10に記載の回転コネクタ装置。
【請求項12】
前記ストッパ構造の前記所定の回転角度は、第1相対回転位置および第2相対回転位置の間に定義され、
前記可動部材が前記ストッパと接触する状態で、前記第1ケースおよび前記第2ケースは、前記第1相対回転位置に配置される、
請求項1~11のいずれか1項に記載の回転コネクタ装置。
【請求項13】
前記ケーブル収容空間内に設けられる電気ケーブルをさらに備え、
前記第1ケースは、前記ケーブル収容空間を部分的に形成する内周面を含み、
前記第2ケースは、前記内周面の径方向内側に設けられ前記ケーブル収容空間を部分的に形成する外周面を含み、
前記電気ケーブルは、前記第1ケースの前記内周面に沿って巻かれる第1巻き部と、前記第2ケースの前記外周面に沿って巻かれる第2巻き部と、前記第1巻き部と前記第2巻き部との間に設けられ前記第1巻き部を前記第2巻き部に連結する中間部と、を含み、
前記電気ケーブルは、前記第2ケースが前記第1ケースに対して第1回転方向に回転すると前記電気ケーブルの前記第2巻き部が前記外周面に巻かれている長さが減るように、前記ケーブル収容空間内に設けられ、
前記電気ケーブルは、前記第2ケースが前記第1ケースに対して第1回転方向とは反対の第2回転方向に回転すると前記電気ケーブルの前記第2巻き部が前記外周面に巻かれている長さが増えるように、前記ケーブル収容空間内に設けられ、
前記移動変換部は、前記第2ケースが前記第1ケースに対して前記第1回転方向および前記第2回転方向の一方に回転すると、前記可動部材を前記ストッパの方へ第1移動方向に動かすように構成され、
前記移動変換部は、前記第2ケースが前記第1ケースに対して前記第1回転方向および前記第2回転方向の他方に回転すると、前記可動部材を前記第1移動方向とは反対の第2移動方向に動かすように構成される、
請求項12に記載の回転コネクタ装置。
【請求項14】
回転軸線回りに互いに相対回転可能に設けられ、前記回転軸線を取り囲むように設けられるケーブル収容空間を形成する第1ケースおよび第2ケースと、
前記第1ケースおよび前記第2ケースの相対回転を所定の回転角度に制限するように構成されるストッパ構造と、を備え、
前記ストッパ構造は、
前記第1ケースに対して前記第2ケースとともに前記回転軸線回りに回転可能かつ前記回転軸線に沿って定義される軸方向において前記第1ケースおよび前記第2ケースに対して移動可能な可動部材と、
前記第1ケースおよび前記第2ケースの前記相対回転を前記第1ケースおよび前記第2ケースに対する前記可動部材の前記軸方向への移動に変換するように構成される移動変換部と、
前記第1ケースおよび前記第2ケースの少なくとも一方に設けられ前記可動部材と接触可能なストッパと、を含み、
前記ストッパは、前記軸方向を向くストッパ面を含む、
回転コネクタ装置。
【請求項15】
前記ストッパ面は、前記回転軸線に関する周方向に延びる、
請求項14に記載の回転コネクタ装置。
【請求項16】
前記移動変換部は、前記第1ケースおよび前記第2ケースに対する前記可動部材の前記軸方向への移動距離が前記第1ケースおよび前記第2ケースの相対回転角度に比例するように、前記第1ケースおよび前記第2ケースの前記相対回転を前記可動部材の前記軸方向への前記移動に変換するように構成される、
請求項1~15のいずれか1項に記載の回転コネクタ装置。
【請求項17】
回転軸線回りに互いに相対回転可能に設けられ、前記回転軸線を取り囲むように設けられるケーブル収容空間を形成する第1ケースおよび第2ケースと、
前記第1ケースおよび前記第2ケースの相対回転を所定の回転角度に制限するように構成されるストッパ構造と、を備え、
前記ストッパ構造は、
前記第1ケースに対して前記第2ケースとともに前記回転軸線回りに回転可能かつ前記回転軸線に沿って定義される軸方向において前記第1ケースおよび前記第2ケースに対して移動可能な可動部材と、
前記第1ケースおよび前記第2ケースの前記相対回転を前記第1ケースおよび前記第2ケースに対する前記可動部材の前記軸方向への移動に変換するように構成される移動変換部と、
前記第1ケースおよび前記第2ケースの少なくとも一方に設けられ前記可動部材と接触可能なストッパと、を含み、
前記可動部材を前記軸方向に付勢する付勢部材をさらに備える、
回転コネクタ装置。
【請求項18】
前記移動変換部は、前記第1ケースに対して前記第2ケースとともに前記回転軸線回りに回転可能である、
請求項1に記載の回転コネクタ装置。
【請求項19】
前記第1ケースおよび前記第2ケースの少なくとも一方に設けられるインジケータをさらに備え、
前記インジケータは、前記軸方向における前記可動部材と前記インジケータとの位置関係によって前記第1ケースに対して前記第2ケースが中立回転位置に配置されることを示すように構成される、
請求項1~18のいずれか1項に記載の回転コネクタ装置。
【請求項20】
前記インジケータが示す位置に前記可動部材が配置される状態で、前記第1ケースに対して前記第2ケースが前記中立回転位置に配置される、
請求項19に記載の回転コネクタ装置。
【請求項21】
前記可動部材は、前記軸方向を向く第1面と、前記軸方向において前記第1面の裏側に設けられる第2面と、を含み、
前記インジケータは、前記可動部材の前記第1面と前記インジケータとの位置関係によって前記第1ケースに対して前記第2ケースが前記中立回転位置に配置されることを示すように構成される、
請求項19または20に記載の回転コネクタ装置。
【請求項22】
前記インジケータが示す位置に前記可動部材の前記第1面が配置される状態で、前記第1ケースに対して前記第2ケースが前記中立回転位置に配置される、
請求項21に記載の回転コネクタ装置。
【請求項23】
前記第2ケースは、前記第1ケースに対して前記中立回転位置から、第1回転方向に第1回転角度だけ回転可能であり、かつ、前記第1回転方向の反対方向である第2回転方向に第2回転角度だけ回転可能であり、
前記第1回転角度は、前記第2回転角度と概ね等しい、
請求項19~22のいずれか1項に記載の回転コネクタ装置。
【請求項24】
回転軸線回りに互いに相対回転可能に設けられ、前記回転軸線を取り囲むように設けられるケーブル収容空間を形成する第1ケースおよび第2ケースと、
前記第1ケースおよび前記第2ケースの相対回転を所定の回転角度に制限するように構成されるストッパ構造と、を備え、
前記ストッパ構造は、
前記第1ケースに対して前記第2ケースとともに前記回転軸線回りに回転可能かつ前記回転軸線に沿って定義される軸方向において前記第1ケースおよび前記第2ケースに対して移動可能な可動部材と、
前記第1ケースおよび前記第2ケースの前記相対回転を前記第1ケースおよび前記第2ケースに対する前記可動部材の前記軸方向への移動に変換するように構成される移動変換部と、
前記第1ケースおよび前記第2ケースの少なくとも一方に設けられ前記可動部材と接触可能なストッパと、を含み、
前記第1ケースおよび前記第2ケースの少なくとも一方に設けられるインジケータをさらに備え、
前記インジケータは、前記軸方向における前記可動部材と前記インジケータとの位置関係によって前記第1ケースに対して前記第2ケースが中立回転位置に配置されることを示すように構成され、
前記第2ケースは、環状の形状を有し前記ケーブル収容空間を部分的に形成するように構成される第2ケース本体と、前記第2ケース本体とは別部材であって前記第2ケース本体に連結されるスリーブと、を含み、
前記可動部材は、前記軸方向に移動可能に前記スリーブに連結され、
前記インジケータは、前記スリーブに設けられる、
回転コネクタ装置。
【請求項25】
前記インジケータは、前記スリーブに設けられるマークおよび基準面の少なくとも一方を含む、
請求項24に記載の回転コネクタ装置。
【請求項26】
前記スリーブは、径方向内側を向く内側面を含み、
前記インジケータは、少なくとも部分的に前記スリーブの前記内側面に設けられる、
請求項25に記載の回転コネクタ装置。
【請求項27】
前記インジケータの前記マークは、前記スリーブの前記内側面に設けられる、
請求項26に記載の回転コネクタ装置。
【請求項28】
前記インジケータの前記基準面は、前記スリーブに設けられ前記軸方向に概ね垂直な第1基準面を含む、
請求項25~27のいずれか1項に記載の回転コネクタ装置。
【請求項29】
前記可動部材は、前記軸方向を向く第1面と、前記軸方向において前記第1面の裏側に設けられる第2面と、を含み、
前記軸方向において前記可動部材の前記第1面が前記基準面と一致する状態で、前記第1ケースに対して前記第2ケースが前記中立回転位置に配置される、
請求項25~28のいずれか1項に記載の回転コネクタ装置。
【請求項30】
前記インジケータは、前記移動変換部の径方向内側に配置される、
請求項19~29のいずれか1項に記載の回転コネクタ装置。
【請求項31】
前記第1ケースは、前記軸方向に延びる中央開口を含み、
前記可動部材、前記移動変換部、および前記インジケータの少なくとも1つは、少なくとも部分的に前記中央開口内に設けられ、
請求項19~30のいずれか1項に記載の回転コネクタ装置。
【請求項32】
前記第1ケースは、車体に固定されるように構成されるステータであり、
前記第2ケースは、前記ステータに対して前記回転軸線回りに回転可能な回転体であり、
前記ストッパは、少なくとも前記ステータに設けられる、
請求項1~31のいずれか1項に記載の回転コネクタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願に開示される技術は、回転コネクタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、回転コネクタ装置は、固定部材、回転部材、および電気ケーブルを含む。回転コネクタ装置が車体に取り付けられる際、固定部材は車体に固定され、回転部材にはステアリングが連結される。固定部材および回転部材の間には、電気ケーブルが配置される収容空間が形成される。電気ケーブルは、収容空間内において周方向に巻かれており、固定部材に対する回転部材の回転を所定の範囲で許容しつつ、車体に設けられる電子部品とステアリングに設けられる電子部品とを電気的に接続する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
回転コネクタ装置は、固定部材に対する回転部材の回転角度が時計回りおよび反時計回りに等しくなる中立回転位置を有する。回転コネクタ装置を車体に取り付ける際には、中立回転位置の状態で取り付けるのが好ましい。
【0004】
そこで、回転コネクタ装置の中立回転位置を確認するための視認窓が提案されている(例えば、特許文献2参照)。この回転コネクタ装置では、視認窓から電気ケーブルの位置を確認することで回転部材が中立回転位置にあるか否かを判断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-218639号公報
【文献】特開2014-032762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
回転コネクタ装置のケーブルの状態を安定させるために、ステータに対する回転体の回転角度を所定の回転角度に制限するのが好ましい。特許文献1に記載の回転コネクタでは、ストッパ部材が回転規制部に係合することで固定ケースに対する回転ケースの回転が停止する。
【0007】
しかし、特許文献1に記載の回転コネクタでは、ケーブルから作用する力によってストッパ部材を回転規制部と離れる方向に移動させたり回転規制部の方へ移動させたりする。このため、製品の個体差や経年劣化の影響でケーブルの状態が想定している状態と異なる場合に、ストッパ部材の挙動が安定せず、例えば、所望の回転角度で回転ケースの回転が停止しない、あるいは、所望の回転角度に達する前に回転ケースの回転が停止する可能性がある。ストッパ部材の挙動の安定化は、一般的な課題であるケーブルの断線抑制に対しても有効である。
【0008】
また、一般的な回転コネクタ装置では、回転部材が中立回転位置にない状態(例えば、中立回転位置から回転部材が2回転した状態)でも、電気ケーブルが視認窓から見える場合もある。したがって、視認窓を有する回転コネクタ装置では、回転部材が中立回転位置にあるか否かを確実に判断できない場合もある。
【0009】
本願に開示される技術の課題は、ステータに対する回転体の回転角度を所定の回転角度に制限するストッパ構造の動作を安定させることにある。
【0010】
本願に開示される技術の別の課題は、中立回転位置の判断を確実に行える回転コネクタ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の特徴によれば、回転コネクタ装置は、第1ケース、第2ケース、およびストッパ構造を備える。第1ケースおよび第2ケースは、回転軸線回りに互いに相対回転可能に設けられ、回転軸線を取り囲むように設けられるケーブル収容空間を形成する。ストッパ構造は、第1ケースおよび第2ケースの相対回転を所定の回転角度に制限するように構成される。ストッパ構造は、可動部材、移動変換部、およびストッパを含む。可動部材は、第1ケースに対して第2ケースとともに回転軸線回りに回転可能かつ回転軸線に沿って定義される軸方向において第1ケースおよび第2ケースに対して移動可能である。移動変換部は、第1ケースおよび第2ケースの相対回転を第1ケースおよび第2ケースに対する可動部材の軸方向への移動に変換するように構成される。ストッパは、第1ケースおよび第2ケースの少なくとも一方に設けられ可動部材と接触可能である。
【0012】
第1の特徴に係る回転コネクタ装置では、第1ケースおよび第2ケースが相対回転すると、移動変換部が第1ケースおよび第2ケースに対して可動部材を軸方向に動かす。可動部材が軸方向に移動すると、可動部材がストッパに接触し、第1ケースおよび第2ケースに相対回転が制限される。したがって、ストッパ構造の動作の安定化を図ることができ、ケーブルの断線をより確実に抑制できる。
【0013】
第2の特徴によれば、第1の特徴に係る回転コネクタ装置において、移動変換部は、第2ケースおよび可動部材に対して第1ケースとともに回転軸線回りに回転可能である。
【0014】
第2の特徴に係る回転コネクタ装置では、移動変換部と可動部材との相対回転を利用して移動変換部が可動部材を軸方向に動かすことができる。
【0015】
第3の特徴によれば、第2の特徴に係る回転コネクタ装置において、移動変換部は、可動部材の径方向外側に設けられる。
【0016】
第3の特徴に係る回転コネクタ装置では、移動変換部を設けるために必要なスペースを確保しやすくなる。
【0017】
第4の特徴によれば、第1~第3のいずれか1つの特徴に係る回転コネクタ装置において、第1ケースは、軸方向に延びる中央開口を含む。可動部材、移動変換部、およびストッパの少なくとも1つは、少なくとも部分的に中央開口内に設けられる。
【0018】
第4の特徴に係る回転コネクタ装置では、ストッパ構造を設けるために必要なスペースとして中央開口を有効利用でき、ストッパ構造を設けることに伴う回転コネクタ装置の大型化を抑制できる。
【0019】
第5の特徴によれば、第4の特徴に係る回転コネクタ装置において、第1ケースは、中央開口を少なくとも部分的に定義する内周部を含む。移動変換部は、第1ケースの内周部に設けられる。
【0020】
第5の特徴に係る回転コネクタ装置では、移動変換部を配置する部分として第1ケースの内周部を有効利用でき、ストッパ構造を設けることに伴う回転コネクタ装置の大型化をより確実に抑制できる。
【0021】
第6の特徴によれば、第5の特徴に係る回転コネクタ装置において、移動変換部は、第1ケースおよび第2ケースの相対回転を可動部材の軸方向への移動に変換するように構成される変換溝を含む。可動部材は、変換溝内に配置される外周部を含む。
【0022】
第6の特徴に係る回転コネクタ装置では、変換溝を用いることで、移動変換部の構造を簡素化できる。
【0023】
第7の特徴によれば、第6の特徴に係る回転コネクタ装置において、変換溝は、回転軸線に関する周方向に延びる。
【0024】
第7の特徴に係る回転コネクタ装置では、移動変換部の構造をより簡素化できる。
【0025】
第8の特徴によれば、第6または7の特徴に係る回転コネクタ装置において、変換溝は、回転軸線回りに螺旋状に延びる。
【0026】
第8の特徴に係る回転コネクタ装置では、移動変換部の構造をより簡素化できる。
【0027】
第9の特徴によれば、第5~第8のいずれか1つの特徴に係る回転コネクタ装置において、第1ケースは、環状の形状を有しケーブル収容空間を部分的に形成するように構成される第1ケース本体と、第1ケース本体から軸方向に延び内周部を含む筒状部と、を含む。
【0028】
第9の特徴に係る回転コネクタ装置では、筒状部により第1ケースに内周部を設けやすくなる。
【0029】
第10の特徴によれば、第1~第9のいずれか1つの特徴に係る回転コネクタ装置において、第2ケースおよび可動部材の少なくとも一方は、少なくとも1つの案内開口を含む。第2ケースおよび可動部材の少なくとも一方は、軸方向に延び少なくとも1つの案内開口内に設けられる少なくとも1つの案内突出部を含む。
【0030】
第10の特徴に係る回転コネクタ装置では、第2ケースおよび可動部材が軸方向に相対移動可能かつ回転軸線回りに一体で回転可能な構成を簡素な構造により実現できる。
【0031】
第11の特徴によれば、第10の特徴に係る回転コネクタ装置において、少なくとも1つの案内開口は、回転軸線に関する周方向に間隔を空けて配置される複数の案内開口を含む。少なくとも1つの案内突出部は、周方向に間隔を空けて配置され複数の案内開口内にそれぞれ設けられる複数の案内突出部を含む。
【0032】
第11の特徴に係る回転コネクタ装置では、複数の案内開口および複数の案内突出部により、第2ケースおよび可動部材の回転方向の連結強度を高めることができる。
【0033】
第12の特徴によれば、第10または第11の特徴に係る回転コネクタ装置において、第2ケースは、環状の形状を有しケーブル収容空間を部分的に形成するように構成される第2ケース本体と、第2ケース本体とは別部材であって第2ケース本体に連結されるスリーブと、を含む。可動部材は、軸方向に移動可能にスリーブに連結される。
【0034】
第12の特徴に係る回転コネクタ装置では、可動部材を支持する部分としてスリーブを利用でき、第2ケースおよび可動部材の連結構造の簡素化を実現できる。
【0035】
第13の特徴によれば、第12の特徴に係る回転コネクタ装置において、スリーブは、スリーブ本体と、スリーブ本体から軸方向に突出する少なくとも1つの案内突出部と、を含む。可動部材は、少なくとも1つの案内開口を含む。
【0036】
第13の特徴に係る回転コネクタ装置では、第2ケースおよび可動部材の連結構造の簡素化をより確実に実現できる。
【0037】
第14の特徴によれば、第1~第13のいずれか1つの特徴に係る回転コネクタ装置において、ストッパ構造の所定の回転角度は、第1相対回転位置および第2相対回転位置の間に定義される。可動部材がストッパと接触する状態で、第1ケースおよび第2ケースは、第1相対回転位置に配置される。
【0038】
第14の特徴に係る回転コネクタ装置では、可動部材およびストッパにより第1ケースおよび第2ケースの相対回転を第1相対回転位置で止めることができる。
【0039】
第15の特徴によれば、第14の特徴に係る回転コネクタ装置において、ケーブル収容空間内に設けられる電気ケーブルをさらに備える。第1ケースは、ケーブル収容空間を部分的に形成する内周面を含む。第2ケースは、内周面の径方向内側に設けられケーブル収容空間を部分的に形成する外周面を含む。電気ケーブルは、第1ケースの内周面に沿って巻かれる第1巻き部と、第2ケースの外周面に沿って巻かれる第2巻き部と、第1巻き部と第2巻き部との間に設けられ第1巻き部を第2巻き部に連結する反転部と、を含む。電気ケーブルは、第2ケースが第1ケースに対して第1回転方向に回転すると電気ケーブルの第2巻き部が外周面に巻かれている長さが減るように、ケーブル収容空間内に設けられる。電気ケーブルは、第2ケースが第1ケースに対して第1回転方向とは反対の第2回転方向に回転すると電気ケーブルの第2巻き部が外周面に巻かれている長さが増えるように、ケーブル収容空間内に設けられる。移動変換部は、第2ケースが第1ケースに対して第1回転方向および第2回転方向の一方に回転すると、可動部材をストッパの方へ第1移動方向に動かすように構成される。移動変換部は、第2ケースが第1ケースに対して第1回転方向および第2回転方向の他方に回転すると、可動部材を第1移動方向とは反対の第2移動方向に動かすように構成される。
【0040】
第15の特徴に係る回転コネクタ装置では、電気ケーブルが緩む第1回転方向に第2ケースが第1ケースに対して回転する際に、可動部材およびストッパにより第1ケースおよび第2ケースの相対回転を第1相対回転位置で止めることができる。したがって、電気ケーブルが緩み過ぎるのを抑制できる。
【0041】
第16の特徴によれば、第1~第15のいずれか1つの特徴に係る回転コネクタ装置において、ストッパは、軸方向を向くストッパ面を含む。
【0042】
第16の特徴に係る回転コネクタ装置では、可動部材をストッパ面で止めることにより、第1ケースおよび第2ケースの相対回転を止めることができる。
【0043】
第17の特徴によれば、第16の特徴に係る回転コネクタ装置において、ストッパ面は、回転軸線に関する周方向に延びる。
【0044】
第17の特徴に係る回転コネクタ装置では、ストッパ面をより広く確保でき、ストッパ構造の強度を確保しやすくなる。
【0045】
第18の特徴によれば、第1~第17のいずれか1つの特徴に係る回転コネクタ装置において、移動変換部は、第1ケースおよび第2ケースに対する可動部材の軸方向への移動距離が第1ケースおよび第2ケースの相対回転角度に比例するように、第1ケースおよび第2ケースの相対回転を可動部材の軸方向への移動に変換するように構成される。
【0046】
第18の特徴に係る回転コネクタ装置では、ストッパ構造で設定される所定の回転角度に基づく各部の設計が容易になる。
【0047】
第19の特徴によれば、第1~第18のいずれか1つの特徴に係る回転コネクタ装置は、可動部材を軸方向に付勢する付勢部材をさらに備える。
【0048】
第19の特徴に係る回転コネクタ装置では、付勢部材により異音の発生を抑制できる。
【0049】
第20の特徴によれば、第1の特徴に係る回転コネクタ装置において、移動変換部は、第1ケースに対して第2ケースとともに回転軸線回りに回転可能である。
【0050】
第21の特徴によれば、第1~第20のいずれか1つの特徴に係る回転コネクタ装置は、インジケータをさらに備える。インジケータは、第1ケースおよび第2ケースの少なくとも一方に設けられる。インジケータは、軸方向における可動部材とインジケータとの位置関係によって第1ケースに対して第2ケースが中立回転位置に配置されることを示すように構成される。
【0051】
第21の特徴に係る回転コネクタ装置では、可動部材とインジケータとの位置関係を視認することで、第1ケースに対して第2ケースが中立回転位置に配置されているか否かを確実に判断することができる。
【0052】
第22の特徴によれば、第21の特徴に係る回転コネクタ装置において、インジケータが示す位置に可動部材が配置される状態で、第1ケースに対して第2ケースが中立回転位置に配置される。
【0053】
第22の特徴に係る回転コネクタ装置では、可動部材およびインジケータにより回転コネクタ装置の中立回転位置を視認しやすくなる。
【0054】
第23の特徴によれば、第21または第22の特徴に係る回転コネクタ装置において、可動部材は、軸方向を向く第1面と、軸方向において第1面の裏側に設けられる第2面と、を含む。インジケータは、可動部材の第1面とインジケータとの位置関係によって第1ケースに対して第2ケースが中立回転位置に配置されることを示すように構成される。
【0055】
第23の特徴に係る回転コネクタ装置では、可動部材の第1面とインジケータとの位置関係を視認することで、第1ケースに対して第2ケースが中立回転位置に配置されているか否かをより確実に判断することができる。
【0056】
第24の特徴によれば、第23の特徴に係る回転コネクタ装置において、インジケータが示す位置に可動部材の第1面が配置される状態で、第1ケースに対して第2ケースが中立回転位置に配置される。
【0057】
第24の特徴に係る回転コネクタ装置では、可動部材の第1面およびインジケータにより回転コネクタ装置の中立回転位置をより視認しやすくなる。
【0058】
第25の特徴によれば、第21から第24の特徴のいずれか1つに係る回転コネクタ装置において、第2ケースは、第1ケースに対して中立回転位置から、第1回転方向に第1回転角度だけ回転可能であり、かつ、第1回転方向の反対方向である第2回転方向に第2回転角度だけ回転可能である。第1回転角度は、第2回転角度と概ね等しい。
【0059】
第25の特徴に係る回転コネクタ装置では、回転コネクタ装置の中立回転位置をより確実に第2ケースの全回転角度の中央に設けることができる。
【0060】
第26の特徴によれば、第21から第25の特徴のいずれか1つに係る回転コネクタ装置において、第2ケースは、第2ケース本体およびスリーブを含む。第2ケース本体は、環状の形状を有し、ケーブル収容空間を部分的に形成するように構成される。スリーブは、第2ケース本体とは別部材であり、第2ケース本体に連結される。可動部材は、軸方向に移動可能にスリーブに連結される。インジケータは、スリーブに設けられる。
【0061】
第26の特徴に係る回転コネクタ装置では、インジケータを視認しやすい位置に配置できる。
【0062】
第27の特徴によれば、第26の特徴に係る回転コネクタ装置において、インジケータは、スリーブに設けられるマークおよび基準面の少なくとも一方を含む。
【0063】
第27の特徴に係る回転コネクタ装置では、インジケータの構成を簡素化できる。
【0064】
第28の特徴によれば、第27の特徴に係る回転コネクタ装置において、スリーブは、径方向内側を向く内側面を含む。インジケータは、少なくとも部分的にスリーブの内側面に設けられる。
【0065】
第28の特徴に係る回転コネクタ装置では、インジケータをより視認しやすい位置に配置できる。
【0066】
第29の特徴によれば、第28の特徴に係る回転コネクタ装置において、インジケータのマークは、スリーブの内側面に設けられる。
【0067】
第29の特徴に係る回転コネクタ装置では、マークをより視認しやすい位置に配置できる。
【0068】
第30の特徴によれば、第27から第29の特徴のいずれか1つに係る回転コネクタ装置において、インジケータの基準面は、スリーブに設けられ軸方向に概ね垂直な第1基準面を含む。
【0069】
第30の特徴に係る回転コネクタ装置では、基準面をより視認しやすい位置に配置できる。
【0070】
第31の特徴によれば、第21から第30の特徴のいずれか1つに係る回転コネクタ装置において、可動部材は、軸方向を向く第1面と、軸方向において第1面の裏側に設けられる第2面と、を含む。軸方向において可動部材の第1面が基準面と一致する状態で、第1ケースに対して第2ケースが中立回転位置に配置される。
【0071】
第31の特徴に係る回転コネクタ装置では、可動部材の第1面および基準面を用いて回転コネクタ装置の中立回転位置をより視認しやすくなる。
【0072】
第32の特徴によれば、第21から第31の特徴のいずれか1つに係る回転コネクタ装置において、インジケータは、移動変換部の径方向内側に配置される。
【0073】
第32の特徴に係る回転コネクタ装置では、移動変換部の径方向内側のスペースをインジケータ用のスペースとして利用できる。
【0074】
第33の特徴によれば、第21から第32の特徴のいずれか1つに係る回転コネクタ装置において、第1ケースは、軸方向に延びる中央開口を含む。可動部材、移動変換部、およびインジケータの少なくとも1つは、少なくとも部分的に中央開口内に設けられる。
【0075】
第33の特徴に係る回転コネクタ装置では、可動部材、移動変換部、およびインジケータの少なくとも1つを設けるために必要なスペースとして中央開口を有効利用できる。
【0076】
第34の特徴によれば、第1~第34のいずれか1つの特徴に係る回転コネクタ装置において、第1ケースは、車体に固定されるように構成されるステータである。第2ケースは、ステータに対して回転軸線回りに回転可能な回転体である。ストッパは、少なくともステータに設けられる。
【0077】
第34の特徴に係る回転コネクタ装置では、可動部材がストッパと接触した際に過重をステータで受けることができるので、ストッパ構造の強度を高めることができる。
【発明の効果】
【0078】
本願に開示される技術であれば、簡素な構造によりステータに対する回転体の回転角度を所定の回転角度に制限できる回転コネクタ装置を提供できる。
【0079】
本願に開示される技術であれば、中立回転位置の判断を確実に行える回転コネクタ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【
図1】
図1は、実施形態に係る回転コネクタ装置の斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1のラインII-IIにおける回転コネクタ装置の断面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示される回転コネクタ装置の部分断面斜視図である。
【
図4】
図4は、
図1に示される回転コネクタ装置のスリーブおよび可動部材の斜視図である。
【
図5】
図5は、
図1に示される回転コネクタ装置の部分断面図である。
【
図6】
図6は、変形例に係る回転コネクタ装置の部分断面図である。
【
図7】
図7は、変形例に係る回転コネクタ装置の部分断面図である。
【
図8】
図8は、
図1に示される回転コネクタ装置の部分断面斜視図である(中立回転位置)。
【
図9】
図9は、
図1に示される回転コネクタ装置の部分断面斜視図である(第1相対回転位置)。
【
図10】
図10は、
図1に示される回転コネクタ装置の部分断面斜視図である(第2相対回転位置)。
【
図11】
図11は、変形例に係る回転コネクタ装置の部分断面図である。
【
図12】
図12は、変形例に係る回転コネクタ装置の斜視図である。
【
図13】
図13は、変形例に係る回転コネクタ装置の別の斜視図である。
【
図15】
図15は、変形例に係る回転コネクタ装置の部分側面図である。
【
図16】
図16は、変形例に係る回転コネクタ装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0081】
以下、実施形態について図面を参照しながら説明する。図中において同じ符号は、対応するまたは同一の構成を示している。
【0082】
図1に示すように、回転コネクタ装置1は、第1ケース10および第2ケース20を備える。第1ケース10および第2ケース20は、回転軸線A1回りに互いに相対回転可能に設けられる。本実施形態では、例えば、第1ケース10は車体に固定されるように構成される。第2ケース20はステアリングホイールとともに回転するように構成される。すなわち、第1ケース10は、車体に固定されるように構成されるステータである。第2ケース20は、ステータに対して回転軸線A1回りに回転可能な回転体である。すなわち、第1ケース10は、ステータ10と称し得る。第2ケース20は、回転体20と称し得る。しかし、第1ケース10が回転体であってもよく、第2ケース20がステータであってもよい。すなわち、本願においては、ステータ10に設けられる構成が回転体20に設けられてもよく、回転体20に設けられる構成がステータ10に設けられてもよい。
【0083】
回転コネクタ装置1は、第1電気コネクタ30および第2電気コネクタ40を備える。第1電気コネクタ30は第1ケース10に取り付けられる。第2電気コネクタ40は第2ケース20に取り付けられる。第1電気コネクタ30は、例えば、車両本体に設けられる電気機器(例えば、制御装置およびバッテリー)と電気的に接続されるように構成される。第2電気コネクタ40は、例えば、ステアリングホイールのスイッチ類やエアバッグ装置等の電気回路と電気的に接続されるように構成される。
【0084】
図2に示すように、第1ケース10および第2ケース20は、回転軸線A1を取り囲むように設けられるケーブル収容空間50を形成する。例えば、ケーブル収容空間50は、環状であり、回転軸線A1に対して周方向D3に延びる。回転コネクタ装置1は、ケーブル収容空間50内に設けられる電気ケーブル60をさらに備える。電気ケーブル60は、第1電気コネクタ30および第2電気コネクタ40(
図1)に電気的に接続される。電気ケーブル60は、可撓性を有し、平坦な形状を有する。電気ケーブル60はフレキシブルフラットケーブルとも称し得る。本実施形態では、電気ケーブル60は複数のフラットケーブル61を含む。
【0085】
第1ケース10は、ケーブル収容空間50を部分的に形成する内周面10Bを含む。第2ケース20は、内周面10Bの径方向内側に設けられケーブル収容空間50を部分的に形成する外周面20Bを含む。電気ケーブル60は、第1巻き部60A、第2巻き部60B、および反転部60Cを含む。第1巻き部60Aは、第1ケース10の内周面10Bに沿って巻かれる。第2巻き部60Bは、第2ケース20の外周面20Bに沿って巻かれる。反転部60Cは、第1巻き部60Aと第2巻き部60Bとの間に設けられ、第1巻き部60Aを第2巻き部60Bに連結する。
【0086】
第1巻き部60Aは、第1電気コネクタ30に電気的に接続される。第2巻き部60Bは、第2電気コネクタ40(
図1)に電気的に接続される。反転部60Cは、第1巻き部60Aと第2巻き部60Bとの間でたわんでいる。反転部60Cは、例えば、第1回転方向D21に突出する湾曲形状を有する。複数のフラットケーブル61のそれぞれは、第1巻き部60A、第2巻き部60B、および反転部60Cを含む。
【0087】
電気ケーブル60は、第2ケース20が第1ケース10に対して第1回転方向D21に回転すると電気ケーブル60の第2巻き部60Bが外周面20Bに巻かれている長さが減るように、ケーブル収容空間50内に設けられる。電気ケーブル60は、第2ケース20が第1ケース10に対して第1回転方向D21とは反対の第2回転方向D22に回転すると電気ケーブル60の第2巻き部60Bが外周面20Bに巻かれている長さが増えるように、ケーブル収容空間50内に設けられる。言い換えると、電気ケーブル60は、第2ケース20が第1ケース10に対して第1回転方向D21に回転すると電気ケーブル60の第1巻き部60Aが内周面10Bに巻かれている長さが増えるように、ケーブル収容空間50内に設けられる。電気ケーブル60は、第2ケース20が第1ケース10に対して第2回転方向D22に回転すると電気ケーブル60の第1巻き部60Aが内周面10Bに巻かれている長さが減るように、ケーブル収容空間50内に設けられる。
【0088】
しかし、第1ケース10および第2ケース20が相対回転し過ぎると、例えば、電気ケーブル60が緩んでしまい、電気ケーブル60の反転部60Cの状態が崩れる可能性がある。
【0089】
そこで、
図3に示すように、回転コネクタ装置1は、第1ケース10および第2ケース20の相対回転を所定の回転角度に制限するように構成されるストッパ構造70を備える。ストッパ構造70は、可動部材71、移動変換部72、およびストッパ73を含む。すなわち、回転コネクタ装置1は、可動部材71、移動変換部72、およびストッパ73を備える。
【0090】
可動部材71は、第1ケース10に対して第2ケース20とともに回転軸線A1回りに回転可能である。可動部材71は、回転軸線A1に沿って定義される軸方向D1において第1ケース10および第2ケース20に対して移動可能である。移動変換部72は、第1ケース10および第2ケース20の相対回転を第1ケース10および第2ケース20に対する可動部材71の軸方向D1への移動に変換するように構成される。ストッパ73は、第1ケース10および第2ケース20の少なくとも一方に設けられる。ストッパ73は、第1ケース10および第2ケース20の相対回転を所定の回転角度に制限するように構成される。ストッパ73は、可動部材71と接触可能である。本実施形態では、ストッパ73は、第1ケース10に設けられる。ストッパ73は、可動部材71と軸方向D1に接触可能である。ストッパ73は、少なくともステータ10に設けられる。ストッパ73は、ステータ10に設けられる。しかし、ストッパ73が、第2ケース20にのみ設けられてもよく、第1ケース10および第2ケース20の両方に設けられてもよい。また、ストッパ73は回転コネクタ装置1から省略されてもよい。
【0091】
移動変換部72は、第2ケース20および可動部材71に対して第1ケース10とともに回転軸線A1回りに回転可能である。すなわち、第2ケース20および可動部材71は、第1ケース10および移動変換部72に対して回転軸線A1回りに回転可能である。
【0092】
移動変換部72は、可動部材71の径方向外側に設けられる。第1ケース10は、軸方向D1に延びる中央開口11を含む。可動部材71、移動変換部72、およびストッパ73の少なくとも1つは、少なくとも部分的に中央開口11内に設けられる。
【0093】
本実施形態では、可動部材71、移動変換部72、およびストッパ73は、中央開口11内に設けられる。しかし、可動部材71、移動変換部72、およびストッパ73の少なくとも1つが部分的に中央開口11内に設けられてもよい。可動部材71、移動変換部72、およびストッパ73の少なくとも1つが中央開口11の外側に設けられてもよい。移動変換部72が可動部材71の径方向内側に設けられてもよい。
【0094】
第1ケース10は、中央開口11を少なくとも部分的に定義する内周部12を含む。移動変換部72は、第1ケース10の内周部12に設けられる。第1ケース10は、第1ケース本体14および筒状部15を含む。第1ケース本体14は、環状の形状を有し、ケーブル収容空間50を部分的に形成するように構成される。筒状部15は、第1ケース本体14から軸方向D1に延び、内周部12を含む。
【0095】
図1に示すように、第1ケース本体14は、第1環状体16および第2環状体17を含む。第2環状体17は、第1環状体16と別部材であり、第1環状体16に連結される。第1環状体16は、第1環状プレート16Aを含む。第2環状体17は、外周壁17A(
図1)を含む。筒状部15は、第1環状プレート16Aの内周から軸方向D1に延びる。
【0096】
第2ケース20は、第2ケース本体21およびスリーブ22を含む。第2ケース本体21は、環状の形状を有し、ケーブル収容空間50を部分的に形成するように構成される。スリーブ22は、第2ケース本体21とは別部材であり、第2ケース本体21に連結される。可動部材71は、軸方向D1に移動可能にスリーブ22に連結される。第2ケース本体21は、第2環状プレート23および内周壁24を含む。内周壁24は第2環状プレート23から軸方向D1に延びる。
【0097】
第2ケース20および可動部材71の少なくとも一方は、少なくとも1つの案内開口74を含む。第2ケース20および可動部材71の少なくとも一方は、軸方向D1に延びる少なくとも1つの案内突出部75を含む。少なくとも1つの案内突出部75は少なくとも1つの案内開口74内に設けられる。少なくとも1つの案内開口74は、回転軸線A1に関する周方向D3に間隔を空けて配置される複数の案内開口74を含む。少なくとも1つの案内突出部75は、周方向D3に間隔を空けて配置され複数の案内開口74内にそれぞれ設けられる複数の案内突出部75を含む。
【0098】
図4に示すように、スリーブ22は、スリーブ本体22Aと、スリーブ本体22Aから軸方向D1に突出する少なくとも1つの案内突出部75と、を含む。可動部材71は、少なくとも1つの案内開口74を含む。本実施形態では、スリーブ本体22Aは、環状の形状を有する。第2ケース20は、スリーブ本体22Aから軸方向D1に突出する複数の案内突出部75を含む。可動部材71が複数の案内開口74を含む。しかし、第2ケース20(
図3)が少なくとも1つの案内開口74を含んでいてもよい。可動部材71が少なくとも1つの案内突出部75を含んでいてもよい。
【0099】
可動部材71は、環状の形状を有する。可動部材71は、外周部71Aを含む。複数の案内開口74は、切欠き74Aと、複数の案内孔74Bと、を含む。複数の案内突出部75は、切欠き74Aおよび複数の案内孔74B内に配置される。複数の案内開口74は、切欠き74Aのみ、あるいは、案内孔74Bのみを含んでいてもよい。
【0100】
スリーブ22は、少なくとも1つのスリーブ連結部22Bを含む。少なくとも1つのスリーブ連結部22Bは、スリーブ本体22Aを第2ケース本体21に連結する。少なくとも1つのスリーブ連結部22Bは、少なくとも1つの案内突出部75から軸方向D1に突出する。本実施形態では、スリーブ22は、複数の案内突出部75から軸方向D1に突出する複数のスリーブ連結部22Bを含む。しかし、スリーブ連結部22Bは、案内突出部75とは異なる位置に配置されてもよい。
【0101】
スリーブ22は、軸方向突出部76を含む。軸方向突出部76は、スリーブ本体22Aから軸方向D1に突出する。軸方向突出部76は、複数の案内突出部75の径方向内側に配置される。軸方向突出部76は、環状の形状を有する。可動部材71は、開口71Dを含む。軸方向突出部76の外径は、開口71Dの内径よりも小さい。
【0102】
図5に示すように、移動変換部72は、変換溝72Aを含む。変換溝72Aは、第1ケース10および第2ケース20の相対回転を可動部材71の軸方向D1への移動に変換するように構成される。可動部材71の外周部71Aは、変換溝72A内に配置される。
【0103】
変換溝72Aは、回転軸線A1に関する周方向D3に延びる。変換溝72Aは、回転軸線A1に垂直な基準面RPに対して傾斜する。変換溝72Aは、回転軸線A1回りに螺旋状に延びる。実施形態では、移動変換部72は、1本の螺旋状の変換溝72Aを有する雌ネジを含む。例えば、変換溝72Aは、ネジ径がM55、ピッチが1.5mmの雌ネジを構成する。しかし、雌ネジの寸法は上記の寸法に限定されない。また、変換溝72Aは、周方向D3に断続的に設けられてもよい。
【0104】
また、可動部材71の外周部71Aは雄ネジを含む。外周部71Aの雄ネジは、変換溝72Aにより構成される雌ネジにねじ込まれている。本実施形態では、可動部材71の軸方向D1の厚みは、軸方向D1における変換溝72Aの幅の1.25倍に相当する。しかし、可動部材71の厚みは上記の寸法に限定されない。
【0105】
なお、後述するように、移動変換部72が可動部材71の径方向内側に配置される変形例では、例えば、第2ケース20または可動部材71が雌ネジを含み、移動変換部72が雄ネジを含む。このような変形例では、例えば、移動変換部72がスリーブ22に設けられ、可動部材71が第1ケース10とともに回転可能かつ第1ケース10に対して軸方向D1に移動可能に構成される。
【0106】
ストッパ73は、軸方向D1を向くストッパ面73Aを含む。ストッパ面73Aは、回転軸線A1に関する周方向D3に延びる。ストッパ73は、第1ケース10から径方向内側に突出する。ストッパ73は、第1ケース10の筒状部15から径方向内側に突出する。本実施形態では、ストッパ73およびストッパ面73Aは、環状の形状を有する。しかし、ストッパ73およびストッパ面73Aの形状は環状に限定されない。
【0107】
可動部材71は、軸方向D1を向く第1面71Bと、軸方向D1において第1面71Bの裏側に設けられる第2面71Cと、を含む。第1面71Bは、ストッパ面73Aの方を向くように配置される。第1面71Bはストッパ面73Aと接触可能である。第2面71Cは、スリーブ本体22Aの方を向くように配置される。
【0108】
図3に示すように、移動変換部72は、第2ケース20が第1ケース10に対して第1回転方向D21および第2回転方向D22の一方に回転すると、可動部材71をストッパ73の方へ第1移動方向D41に動かすように構成される。移動変換部72は、第2ケース20が第1ケース10に対して第1回転方向D21および第2回転方向D22の他方に回転すると、可動部材71を第1移動方向D41とは反対の第2移動方向D42に動かすように構成される。言い換えると、移動変換部72は、第2ケース20が第1ケース10に対して第1回転方向D21および第2回転方向D22の他方に回転すると、可動部材71をスリーブ本体22Aの方へ動かすように構成される。第2回転方向D22は、第1回転方向D21の反対方向である。
【0109】
本実施形態では、移動変換部72は、第2ケース20が第1ケース10に対して第1回転方向D21に回転すると、可動部材71をストッパ73の方へ第1移動方向D41に動かすように構成される。移動変換部72は、第2ケース20が第1ケース10に対して第2回転方向D22に回転すると、可動部材71を第2移動方向D42に動かすように構成される。しかし、移動変換部72は、第2ケース20が第1ケース10に対して第1回転方向D21に回転すると、可動部材71を第2移動方向D42に動かすように構成されてもよい。移動変換部72は、第2ケース20が第1ケース10に対して第2回転方向D22に回転すると、可動部材71を第1移動方向D41に動かすように構成されてもよい。
【0110】
図2に示すように、第1ケース10および第2ケース20は、ステアリングの中立位置に対応する中立回転位置P10を有する。ストッパ構造70の所定の回転角度は、第1相対回転位置P11および第2相対回転位置P12の間に定義される。例えば、可動部材71がストッパ73と接触する状態で、第1ケース10および第2ケース20は、第1相対回転位置P11に配置される。第2ケース20は、第1ケース10に対して中立回転位置P10から、第1回転方向D21に第1回転角度だけ回転可能であり、かつ、第2回転方向D22に第2回転角度だけ回転可能である。第1回転角度は、第2回転角度と概ね等しい。
【0111】
具体的には、
図2および
図5に示すように、第2ケース20が第1ケース10に対して中立回転位置P10から第1回転方向D21に回転すると、可動部材71は、中立位置P20からストッパ73の方へ第1移動方向D41に移動する。可動部材71がストッパ73と接触すると、可動部材71は第1ストッパ位置P21で停止し、第2ケース20は第1相対回転位置P11で停止する。本実施形態では、中立位置P20から第1ストッパ位置P21までは、軸方向D1における変換溝72Aの幅の1.75倍に相当する。したがって、中立回転位置P10から第1相対回転位置P11までの第1回転角度は、630度である(例えば、
図2の矢印AR1参照)。すなわち、移動変換部72は、第1ケース10および第2ケース20に対する可動部材71の軸方向D1への移動距離が第1ケース10および第2ケース20の相対回転角度に比例するように、第1ケース10および第2ケース20の相対回転を可動部材71の軸方向D1への移動に変換するように構成される。
【0112】
一方、第2ケース20が第1ケース10に対して中立回転位置P10から第2回転方向D22に回転すると、可動部材71は、中立位置P20から第2移動方向D42に移動する。この結果、電気ケーブル60の複数の反転部60Cのうち少なくとも1つが完全に引き延ばされ、電気ケーブル60が第1ケース10および第2ケース20の間で引っ張られ、その結果、第2ケース20が第1ケース10に対して第2相対回転位置P12で停止する。本実施形態では、中立回転位置P10から第2相対回転位置P12までの第2回転角度は、中立回転位置P10から第1相対回転位置P11までの第1回転角度と同じ角度に設定されている(例えば、
図2の矢印AR2参照)。したがって、可動部材71は、軸方向D1における変換溝72Aの幅の1.75倍の距離だけ第2移動方向D42に移動するが、スリーブ本体22Aには接触することなく第2ストッパ位置P22で停止する。
【0113】
しかし、可動部材71を第1ケース10および第2ケース20の少なくとも一方に接触させることで、第2相対回転位置P12を定義してもよい。例えば、電気ケーブル60が第1ケース10および第2ケース20の間で引っ張られる前に、可動部材71をスリーブ本体22Aに接触させることで、第2相対回転位置P12を定義してもよい。例えば、
図6に示すように、ストッパ73のストッパ面73Aを第1ケース10に設ける代わりに、あるいは、ストッパ73のストッパ面73Aを第1ケース10に設けることに加えて、ストッパ73としてストッパ面73Bをスリーブ22に設けてもよい。また、ストッパ構造70の所定の回転角度は1260度であるが、所定の回転角度は他の角度であってもよい。中立回転位置P10から第2相対回転位置P12までの回転角度が、中立回転位置P10から第1相対回転位置P11までの回転角度と異なる角度に設定されてもよい。
【0114】
なお、
図7に示すように、回転コネクタ装置1は、可動部材71を軸方向D1に付勢する付勢部材80をさらに備えていてもよい。例えば、付勢部材80は、軸方向D1において可動部材71とスリーブ22との間に配置される。付勢部材80は、可動部材71をストッパ73の方に付勢する。本変形例では、付勢部材80は、コイルスプリングを含む。しかし、付勢部材80は、コイルスプリングに限定されない。可動部材71を付勢していない状態では、可動部材71の雄ネジと移動変換部72の雌ネジとの間に生じる隙間の分だけ、可動部材71が移動変換部72に対して動いてしまう。その結果、可動部材71の雄ネジが移動変換部72の雌ネジと接触して、異音が発生する。しかし、付勢部材80を設けることで、そのような異音の発生を抑制できる。なお、付勢部材80の圧縮時の高さを考慮して、スリーブ本体22Aと中立位置P20に配置される可動部材71との間の空間を軸方向D1に広げてもよい。
【0115】
図8に示すように、回転コネクタ装置1は、インジケータ90を備える。インジケータ90は、第1ケース10および第2ケース20の少なくとも一方に設けられる。インジケータ90は、軸方向D1における可動部材71とインジケータ90との位置関係によって第1ケース10に対して第2ケース20が中立回転位置P10(
図2参照)に配置されることを示すように構成される。インジケータ90が示す位置に可動部材71が配置される状態で、第1ケース10に対して第2ケース20が中立回転位置P10(
図2参照)に配置される。インジケータ90が示す位置に可動部材71が配置される状態で、可動部材71は、中立位置P20(
図5参照)に配置される。
【0116】
本実施形態では、インジケータ90は、第2ケース20に設けられる。インジケータ90は、可動部材71の第1面71Bとインジケータ90との位置関係によって第1ケース10に対して第2ケース20が中立回転位置P10に配置されることを示すように構成される。インジケータ90が示す位置に可動部材71の第1面71Bが配置される状態で、第1ケース10に対して第2ケース20が中立回転位置P10に配置される。
【0117】
インジケータ90は、移動変換部72の径方向内側に配置される。インジケータ90は、スリーブ22に設けられる。スリーブ22は、径方向内側を向く内側面22Cを含む。本実施形態では、案内突出部75が内側面22Cを含む。しかし、案内突出部75以外の部分に内側面22Cが設けられてもよい。また、
図4に示すように、回転コネクタ装置1は複数のインジケータ90(例えば、4つのインジケータ90)を備え、各案内突出部75にインジケータ90が設けられる。しかし、インジケータ90の総数は本実施形態に開示される総数に限定されない。
【0118】
可動部材71、移動変換部72、およびインジケータ90の少なくとも1つは、少なくとも部分的に中央開口11内に設けられる。本実施形態では、可動部材71、移動変換部72、およびインジケータ90は、中央開口11内に設けられる。しかし、可動部材71、移動変換部72、およびインジケータ90のうち少なくとも1つが少なくとも部分的に中央開口11の外側に設けられてもよい。
【0119】
インジケータ90は、スリーブ22に設けられるマーク91および基準面92の少なくとも一方を含む。インジケータ90は、少なくとも部分的にスリーブ22の内側面22Cに設けられる。インジケータ90のマーク91は、スリーブ22の内側面22Cに設けられる。インジケータ90の基準面92は、スリーブ22に設けられ軸方向D1に概ね垂直な第1基準面22Dを含む。第1基準面22Dは軸方向D1を向くように設けられる。本実施形態では、スリーブ22の軸方向突出部76の端部に第1基準面22Dが設けられる。
【0120】
図9に示すように、中立回転位置P10は、第1ケース10および第2ケース20の相対回転をストッパ73が制限する制限状態における第1ケース10および第2ケース20の回転位置と異なる。本実施形態では、第1ケース10および第2ケース20の相対回転をストッパ73が制限する制限状態において、可動部材71は中立回転位置P10を示すインジケータ90から軸方向D1にずれている。より詳細には、第1ケース10および第2ケース20の相対回転をストッパ73が制限する制限状態において、可動部材71は中立回転位置P10を示すインジケータ90からストッパ73の方にずれている。
【0121】
図10に示すように、インジケータ90のマーク91は、線91Aおよび図形91Bを含む。線91Aは、スリーブ22の内側面22Cに設けられ、周方向D3に延びる。図形91Bは、例えば三角を含み、線91Aと隣接して配置される。
【0122】
図8に示すように、可動部材71の第1面71Bがインジケータ90の線91Aと一致する状態で、第1ケース10に対して第2ケース20が中立回転位置P10(
図2参照)に配置される。可動部材71の第1面71Bが線91Aと一致する状態で線91Aが視認できるよう、線91Aは太線で描かれる。また、図形91Bは、可動部材71の第1面71Bが線91Aと一致する状態で中央開口11(
図3参照)から視認できる位置に配置される。
【0123】
また、軸方向D1において可動部材71の第1面71Bが基準面92(例えば、第1基準面22D)と一致する状態で、第1ケース10に対して第2ケース20が中立回転位置P10に配置される。基準面92(例えば、第1基準面22D)は、軸方向D1において可動部材71の第1面71Bが基準面92(例えば、第1基準面22D)と一致する状態で中央開口11から視認できる位置に配置される。
【0124】
なお、インジケータ90は、マーク91および基準面92に限定されない。インジケータ90は、マーク91および基準面92の一方のみであってもよい。また、マーク91は、線91Aおよび図形91Bの一方のみを含んでいてもよい。さらに、マークが基準面に設けられてもよい。また、スリーブ22の内側面22Cを軸方向D1において複数の色で色分けして、色分けされる複数の領域の境界の位置をインジケータ90の示す位置としてもよい。この場合、色分けされる複数の領域がインジケータ90のマークとなり、色分けされる複数の領域の境界が、マークに含まれる線および図形の少なくとも一方となり得る。
【0125】
回転コネクタ装置1の特徴を以下にまとめる。
(1)回転コネクタ装置1は、第1ケース10、第2ケース20、およびストッパ構造70を備える。第1ケース10および第2ケース20は、回転軸線A1回りに互いに相対回転可能に設けられ、回転軸線A1を取り囲むように設けられるケーブル収容空間50を形成する。ストッパ構造70は、第1ケース10および第2ケース20の相対回転を所定の回転角度に制限するように構成される。ストッパ構造70は、可動部材71、移動変換部72、およびストッパ73を含む。可動部材71は、第1ケース10に対して第2ケース20とともに回転軸線A1回りに回転可能かつ回転軸線A1に沿って定義される軸方向D1において第1ケース10および第2ケース20に対して移動可能である。移動変換部72は、第1ケース10および第2ケース20の相対回転を第1ケース10および第2ケース20に対する可動部材71の軸方向D1への移動に変換するように構成される。ストッパ73は、第1ケース10および第2ケース20の少なくとも一方に設けられ可動部材71と接触可能である。
【0126】
回転コネクタ装置1では、第1ケース10および第2ケース20が相対回転すると、移動変換部72が第1ケース10および第2ケース20に対して可動部材71を軸方向D1に動かす。可動部材71が軸方向D1に移動すると、可動部材71がストッパ73に接触し、第1ケース10および第2ケース20に相対回転が制限される。したがって、ストッパ構造70の動作の安定化を図ることができ、電気ケーブル60の断線をより確実に抑制できる。
(2)移動変換部72は、第2ケース20および可動部材71に対して第1ケース10とともに回転軸線A1回りに回転可能である。これにより、移動変換部72と可動部材71との相対回転を利用して移動変換部72が可動部材71を軸方向D1に動かすことができる。
(3)移動変換部72は、可動部材71の径方向外側に設けられる、これにより、移動変換部72を設けるために必要なスペースを確保しやすくなる。
(4)第1ケース10は、軸方向D1に延びる中央開口11を含む。可動部材71、移動変換部72、およびストッパ73の少なくとも1つは、少なくとも部分的に中央開口11内に設けられる。これにより、ストッパ構造70を設けるために必要なスペースとして中央開口11を有効利用でき、ストッパ構造70を設けることに伴う回転コネクタ装置1の大型化を抑制できる。
(5)第1ケース10は、中央開口11を少なくとも部分的に定義する内周部12を含む。移動変換部72は、第1ケース10の内周部12に設けられる。これにより、移動変換部72を配置する部分として第1ケース10の内周部12を有効利用でき、ストッパ構造70を設けることに伴う回転コネクタ装置1の大型化をより確実に抑制できる。
(6)移動変換部72は、第1ケース10および第2ケース20の相対回転を可動部材71の軸方向D1への移動に変換するように構成される変換溝72Aを含む。可動部材71は、変換溝72A内に配置される外周部71Aを含む。これにより、変換溝72Aを用いることで、移動変換部72の構造を簡素化できる。
(7)変換溝72Aは、回転軸線A1に関する周方向D3に延びる。これにより、移動変換部72の構造をより簡素化できる。
(8)変換溝72Aは、回転軸線A1回りに螺旋状に延びる。これにより、移動変換部72の構造をより簡素化できる。
(9)第1ケース10は、環状の形状を有しケーブル収容空間50を部分的に形成するように構成される第1ケース本体14と、第1ケース本体14から軸方向D1に延び内周部12を含む筒状部15と、を含む。筒状部15により第1ケース10に内周部12を設けやすくなる。
(10)第2ケース20および可動部材71の少なくとも一方は、少なくとも1つの案内開口74を含む。第2ケース20および可動部材71の少なくとも一方は、軸方向D1に延び少なくとも1つの案内開口74内に設けられる少なくとも1つの案内突出部75を含む。これにより、第2ケース20および可動部材71が軸方向D1に相対移動可能かつ回転軸線A1回りに一体で回転可能な構成を簡素な構造により実現できる。
(11)少なくとも1つの案内開口74は、回転軸線A1に関する周方向D3に間隔を空けて配置される複数の案内開口74を含む。少なくとも1つの案内突出部75は、周方向D3に間隔を空けて配置され複数の案内開口74内にそれぞれ設けられる複数の案内突出部75を含む。複数の案内開口74および複数の案内突出部75により、第2ケース20および可動部材71の回転方向の連結強度を高めることができる。
(12)第2ケース20は、環状の形状を有しケーブル収容空間50を部分的に形成するように構成される第2ケース本体21と、第2ケース本体21とは別部材であって第2ケース本体21に連結されるスリーブ22と、を含む。可動部材71は、軸方向D1に移動可能にスリーブ22に連結される。これにより、可動部材71を支持する部分としてスリーブ22を利用でき、第2ケース20および可動部材71の連結構造の簡素化を実現できる。
(13)スリーブ22は、スリーブ本体22Aと、スリーブ本体22Aから軸方向D1に突出する少なくとも1つの案内突出部75と、を含む。可動部材71は、少なくとも1つの案内開口74を含む。これにより、第2ケース20および可動部材71の連結構造の簡素化をより確実に実現できる。
(14)ストッパ構造70の所定の回転角度は、第1相対回転位置P11および第2相対回転位置P12の間に定義される。可動部材71がストッパ73と接触する状態で、第1ケース10および第2ケース20は、第1相対回転位置P11に配置される。可動部材71およびストッパ73により第1ケース10および第2ケース20の相対回転を第1相対回転位置P11で止めることができる。
(15)回転コネクタ装置1は、ケーブル収容空間50内に設けられる電気ケーブル60をさらに備える。第1ケース10は、ケーブル収容空間50を部分的に形成する内周面10Bを含む。第2ケース20は、内周面10Bの径方向内側に設けられケーブル収容空間50を部分的に形成する外周面20Bを含む。電気ケーブル60は、第1巻き部60A、第2巻き部60B、および反転部60Cを含む。第1巻き部60Aは、第1ケース10の内周面10Bに沿って巻かれる。第2巻き部60Bは、第2ケース20の外周面20Bに沿って巻かれる。反転部60Cは、第1巻き部60Aと第2巻き部60Bとの間に設けられ、第1巻き部60Aを第2巻き部60Bに連結する。複数のフラットケーブル61のそれぞれは、第1巻き部60A、第2巻き部60B、および反転部60Cを含む。電気ケーブル60は、第2ケース20が第1ケース10に対して第1回転方向D21に回転すると電気ケーブル60の第2巻き部60Bが外周面20Bに巻かれている長さが減るように、ケーブル収容空間50内に設けられる。電気ケーブル60は、第2ケース20が第1ケース10に対して第1回転方向D21とは反対の第2回転方向D22に回転すると電気ケーブル60の第2巻き部60Bが外周面20Bに巻かれている長さが増えるように、ケーブル収容空間50内に設けられる。移動変換部72は、第2ケース20が第1ケース10に対して第1回転方向D21および第2回転方向D22の一方に回転すると、可動部材71をストッパ73の方へ第1移動方向D41に動かすように構成される。移動変換部72は、第2ケース20が第1ケース10に対して第1回転方向D21および第2回転方向D22の他方に回転すると、可動部材71を第1移動方向D41とは反対の第2移動方向D42に動かすように構成される。これにより、電気ケーブル60が緩む第1回転方向D21に第2ケース20が第1ケース10に対して回転する際に、可動部材71およびストッパ73により第1ケース10および第2ケース20の相対回転を第1相対回転位置P11で止めることができる。したがって、電気ケーブル60が緩み過ぎるのを抑制できる。
(16)ストッパ73は、軸方向D1を向くストッパ面73Aを含む。可動部材71をストッパ面73Aで止めることにより、第1ケース10および第2ケース20の相対回転を止めることができる。
(17)ストッパ面73Aは、回転軸線A1に関する周方向D3に延びる。これにより、ストッパ面73Aをより広く確保でき、ストッパ構造70の強度を確保しやすくなる。
(18)移動変換部72は、第1ケース10および第2ケース20に対する可動部材71の軸方向D1への移動距離が第1ケース10および第2ケース20の相対回転角度に比例するように、第1ケース10および第2ケース20の相対回転を可動部材71の軸方向D1への移動に変換するように構成される。これにより、ストッパ構造70で設定される所定の回転角度に基づく各部の設計が容易になる。
(19)
図7に示すように、回転コネクタ装置1が可動部材71を軸方向D1に付勢する付勢部材80を備える場合、付勢部材80により異音の発生を抑制できる。
(20)回転コネクタ装置1は、第1ケース10、第2ケース20、可動部材71、移動変換部72、およびインジケータ90を備える。第1ケース10および第2ケース20は、回転軸線A1回りに互いに相対回転可能に設けられ、回転軸線A1を取り囲むように設けられるケーブル収容空間50を形成する。可動部材71は、第1ケース10に対して第2ケース20とともに回転軸線A1回りに回転可能、かつ、回転軸線A1に沿って定義される軸方向D1において第1ケース10および第2ケース20に対して移動可能である。移動変換部72は、第1ケース10および第2ケース20の相対回転を第1ケース10および第2ケース20に対する可動部材71の軸方向D1への移動に変換するように構成される。インジケータ90は、第1ケース10および第2ケース20の少なくとも一方に設けられる。インジケータ90は、軸方向D1における可動部材71とインジケータ90との位置関係によって第1ケース10に対して第2ケース20が中立回転位置P10に配置されることを示すように構成される。
【0127】
回転コネクタ装置1では、可動部材71とインジケータ90との位置関係を視認することで、第1ケース10に対して第2ケース20が中立回転位置P10に配置されているか否かを確実に判断することができる。
(21)インジケータ90が示す位置に可動部材71が配置される状態で、第1ケース10に対して第2ケース20が中立回転位置P10に配置される。これにより、可動部材71およびインジケータ90により回転コネクタ装置1の中立回転位置P10を視認しやすくなる。
【0128】
なお、第2ケース20が中立回転位置P10に配置される状態で可動部材71の位置がインジケータ90の示す位置と一致するのが好ましいが、可動部材71およびインジケータ90により中立回転位置P10を判断できるのであれば、中立回転位置P10の状態で可動部材71の位置がインジケータ90の示す位置からずれていてもよい。
(22)可動部材71は、軸方向D1を向く第1面71Bと、軸方向D1において第1面71Bの裏側に設けられる第2面71Cと、を含む。インジケータ90は、可動部材71の第1面とインジケータ90との位置関係によって第1ケース10に対して第2ケース20が中立回転位置P10に配置されることを示すように構成される。したがって、可動部材71の第1面71Bとインジケータ90との位置関係を視認することで、第1ケース10に対して第2ケース20が中立回転位置P10に配置されているか否かをより確実に判断することができる。
【0129】
なお、第1面71Bの代わりに、あるいは、第1面71Bに加えて、可動部材71の第2面71Cを中立回転位置P10の判断に利用してもよい。また、可動部材71の他の部分を中立回転位置P10の判断に利用してもよい。
(23)インジケータ90が示す位置に可動部材71の第1面71Bが配置される状態で、第1ケース10に対して第2ケース20が中立回転位置P10に配置される。したがって、可動部材71の第1面71Bおよびインジケータ90により回転コネクタ装置1の中立回転位置P10をより視認しやすくなる。
【0130】
なお、第2ケース20が中立回転位置P10に配置される状態で可動部材71の第1面71Bの位置がインジケータ90の示す位置と一致するのが好ましいが、可動部材71の第1面71Bおよびインジケータ90により中立回転位置P10を判断できるのであれば、中立回転位置P10の状態で可動部材71の第1面71Bの位置がインジケータ90の示す位置からずれていてもよい。
(24)第2ケース20は、第1ケース10に対して中立回転位置P10から、第1回転方向D21に第1回転角度だけ回転可能であり、かつ、第1回転方向D21の反対方向である第2回転方向D22に第2回転角度だけ回転可能である。第1回転角度は、第2回転角度と概ね等しい。これにより、回転コネクタ装置1の中立回転位置P10をより確実に第2ケース20の全回転角度の中央に設けることができる。
【0131】
なお、第1回転角度が第2回転角度と異なっていてもよい。すなわち、中立回転位置P10が第2ケース20の全回転角度の中央からずれていてもよい。
(25)第2ケース20は、第2ケース本体21およびスリーブ22を含む。第2ケース本体21は、環状の形状を有し、ケーブル収容空間50を部分的に形成するように構成される。スリーブ22は、第2ケース本体21とは別部材であり、第2ケース本体21に連結される。可動部材71は、軸方向D1に移動可能にスリーブ22に連結される。インジケータ90は、スリーブ22に設けられる。これにより、インジケータ90を視認しやすい位置に配置できる。
【0132】
なお、インジケータ90は、スリーブ22に設ける代わりに、あるいは、スリーブ22に設けることに加えて、スリーブ22以外の部材に設けられてもよい。また、インジケータ90は、第1ケース10のみ、あるいは、第1ケース10および第2ケース20の両方に設けられてもよい。
(26)インジケータ90は、スリーブ22に設けられるマーク91および基準面92の少なくとも一方を含む。したがって、インジケータ90の構成を簡素化できる。
【0133】
なお、インジケータ90は、マーク91および基準面92の一方のみを含んでいてもよく、マーク91および基準面92以外の構成を含んでいてもよい。
(27)スリーブ22は、径方向内側を向く内側面22Cを含む。インジケータ90は、少なくとも部分的にスリーブ22の内側面22Cに設けられる。したがって、インジケータ90をより視認しやすい位置に配置できる。
【0134】
なお、インジケータ90は、スリーブ22の内側面22C以外の部分に設けられてもよい。
(28)インジケータ90のマーク91は、スリーブ22の内側面22Cに設けられる。したがって、マーク91をより視認しやすい位置に配置できる。
【0135】
なお、マーク91は、スリーブ22の内側面22C以外の部分に設けられてもよい。
(29)インジケータ90の基準面92は、スリーブ22に設けられ軸方向D1に概ね垂直な第1基準面22Dを含む。したがって、基準面92をより視認しやすい位置に配置できる。
【0136】
なお、基準面92は、スリーブ22の内側面22C以外の部分に設けられてもよい。
(30)軸方向D1において可動部材71の第1面71Bが基準面92と一致する状態で、第1ケース10に対して第2ケース20が中立回転位置P10に配置される。したがって、可動部材71の第1面71Bおよび基準面92を用いて回転コネクタ装置1の中立回転位置P10をより視認しやすくなる。
(31)インジケータ90は、移動変換部72の径方向内側に配置される。これにより、移動変換部72の径方向内側のスペースをインジケータ90用のスペースとして利用できる。
【0137】
なお、インジケータ90は、移動変換部72の径方向内側のスペース以外に設けられてもよい。
(32)第1ケース10は、軸方向D1に延びる中央開口11を含む。可動部材71、移動変換部72、およびインジケータ90の少なくとも1つは、少なくとも部分的に中央開口11内に設けられる。したがって、可動部材71、移動変換部72、およびインジケータ90の少なくとも1つを設けるために必要なスペースとして中央開口11を有効利用できる。
【0138】
なお、可動部材71、移動変換部72、およびインジケータ90の少なくとも1つは、少なくとも部分的に中央開口11の外側に設けられてもよい。
(33)第1ケース10は、車体に固定されるように構成されるステータである。第2ケース20は、ステータ10に対して回転軸線A1回りに回転可能な回転体である。ストッパ73は、少なくともステータ10に設けられる。これにより、可動部材71がストッパ73と接触した際に過重をステータ10で受けることができるので、ストッパ構造70の強度を高めることができる。
【0139】
なお、移動変換部72は、変換溝72Aの代わりに、あるいは、変換溝72Aに加えて、他の構造を含んでいてもよい。
【0140】
図11に示すように、回転コネクタ装置1が検出部100を備えていてもよい。検出部100は、第1ケース10に対して第2ケース20が第1相対回転位置P11に配置されることを検出するように構成される。検出部100は、第1ケース10および第2ケース20のうち少なくとも一方に設けられる。
図11に示す変形例では、検出部100は第1ケース10に設けられる。検出部100は、第1ケース10に対して可動部材71が第1ストッパ位置P21に配置されることを検出する。検出部100は、ストッパ面73Aに設けられる。検出部100は、第1ケース10に対して第2ケース20が第1相対回転位置P11に配置される状態で、電気信号を生成するように構成される。
図11に示す変形例では、例えば、検出部100は押しボタンスイッチを含む。検出部100の例としては、例えば、接触式センサ(押しボタンスイッチ、タッチセンサ)および非接触式センサ(磁気センサ、光学式センサ)が挙げられる。検出部100は、例えば、電気信号を送信する送信部、検出結果をユーザに知らせる報知部、およびバッテリなどに電気的に接続される。
【0141】
なお、検出部100は、スリーブ22または可動部材71に設けられてもよいし、検出部100に加えて、別の検出部がスリーブ22または可動部材71に設けられてもよい。スリーブ22に設けられる検出部は、例えば、第1ケース10に対して第2ケース20が第2相対回転位置P12に配置されることを検出するように構成される。
【0142】
前述の実施形態では、
図3に示すように、移動変換部72は、第2ケース20および可動部材71に対して第1ケース10とともに回転軸線A1回りに回転可能である。しかし、回転コネクタ装置1は、
図12~
図14に示す構造を有していてもよい。
【0143】
具体的には、
図12に示すように、変形例に係る回転コネクタ装置201は、ストッパ構造270を備える。ストッパ構造270は、可動部材271、移動変換部272、およびストッパ273を含む。可動部材271は、第1ケース10に対して第2ケース20とともに回転軸線A1回りに回転可能である。可動部材271は、回転軸線A1に沿って定義される軸方向D1において第1ケース10および第2ケース20に対して移動可能である。移動変換部272は、第1ケース10および第2ケース20の相対回転を第1ケース10および第2ケース20に対する可動部材271の軸方向D1への移動に変換するように構成される。ストッパ273は、第1ケース10および第2ケース20の少なくとも一方に設けられ、可動部材271と接触可能である。本変形例では、ストッパ273は、第2ケース20に設けられる。しかし、ストッパ273は、第1ケース10または第1ケース10および第2ケース20の両方に設けられてもよい。
【0144】
移動変換部272は、第1ケース10に対して第2ケース20とともに回転軸線A1回りに回転可能である。回転コネクタ装置201の第2ケース20は、スリーブ222を含む。スリーブ222は、第1実施形態のスリーブ22と実質的に同じ構造を有する。軸方向D1において定義されるスリーブ222の長さは、軸方向D1において定義されるスリーブ22の長さよりも長い。移動変換部272は、スリーブ222に設けられる。移動変換部272は、スリーブ222の外周面上に設けられる。移動変換部272は、スリーブ222の外周面に沿って螺旋状に延びる変換溝272Aを含む。より詳細には、移動変換部272は、スリーブ222の外周面に沿って螺旋状に延びる雄ネジ272Tを含む。雄ネジ272Tは、変換溝272Aを定義する。
【0145】
可動部材271は、第1ケース10および第2ケース20に対して軸方向D1に移動可能である。可動部材271は、可動体271Aおよび雌ネジ271Tを含む。可動体271Aは、第1ケース10に対して軸方向D1に移動可能に連結される。例えば、ストッパ構造270は、ガイド279を含む。ガイド279は、第1ケース10に固定され、第1ケース10から軸方向D1に延びる。可動体271Aは、ガイド279に対して軸方向D1に移動可能にガイド279に取り付けられる。ガイド279は、第1ケース10に対する可動体271Aの回転を制限する。
【0146】
雌ネジ271Tは、可動体271Aに固定され、可動体271Aとともに第1ケース10および第2ケース20に対して軸方向D1に移動可能である。雌ネジ271Tは、スリーブ222の外周面に沿って螺旋状に延びる。雌ネジ271Tは、移動変換部272の雄ネジ272Tに係合する。雌ネジ271Tは、移動変換部272の変換溝272A内に移動可能に配置される。
【0147】
図13に示すように、雌ネジ271Tは、第1端部271T1および第2端部271T2を含む。雌ネジ271Tは、第1端部271T1および第2端部271T2の間においてスリーブ222の外周面に沿って螺旋状に延びる。第1端部271T1および第2端部271T2は、間隔を空けて配置され、可動体271Aに固定される。
【0148】
図14に示すように、可動体271Aは、孔271Bを含む。ガイド279は、孔271Bを通って軸方向D1に延びる。
【0149】
図15に示すように、ストッパ273は、第2ケース20のスリーブ222の外周面に設けられる。ストッパ273は、雌ネジ271Tと接触可能である。ストッパ273は、雌ネジ271Tの第1端部271T1と接触可能である。
【0150】
ストッパ273は、接触面273Aを含む。接触面273Aは、可動部材271の雌ネジ271Tの第1端部271T1と接触可能である。接触面273Aは、スリーブ222の周方向に対して傾斜している。接触面273Aは、スリーブ222の径方向から見た場合に湾曲している。可動部材271の雌ネジ271Tの第1端部271T1がストッパ273の接触面273Aと接触すると、第1ケース10に対する第2ケース20の回転は停止する。
【0151】
しかし、接触面273Aが傾斜しているので、第2ケース20に付与される回転力が所定のレベルを超えると、雌ネジ271Tの第1端部271T1が接触面273Aを乗り越える。したがって、雌ネジ271Tの第1端部271T1がストッパ273の接触面273Aと接触した後に、第2ケース20に所定のレベルを超える回転力が付与されると、第2ケース20の第2回転方向D22への回転が許容される。
【0152】
図12に示すように、移動変換部272は、第2ケース20が第1ケース10に対して第1回転方向D21および第2回転方向D22の一方に回転すると、可動部材271をストッパ273の方へ第1移動方向D41に動かすように構成される。本変形例では、移動変換部272は、第2ケース20が第1ケース10に対して第2回転方向D22に回転すると、可動部材271をストッパ273の方へ第1移動方向D41に動かすように構成される。移動変換部272は、第2ケース20が第1ケース10に対して第1回転方向D21に回転すると、可動部材271を第2移動方向D42に動かすように構成される。しかし、移動変換部272は、第2ケース20が第1ケース10に対して第2回転方向D22に回転すると、可動部材271を第2移動方向D42に動かすように構成されてもよい。移動変換部272は、第2ケース20が第1ケース10に対して第1回転方向D21に回転すると、可動部材271を第1移動方向D41に動かすように構成されてもよい。
【0153】
本変形例では、可動部材271がストッパ273と接触すると、第2ケース20は第2相対回転位置P12(
図16参照)で停止する。具体的には、可動部材271の雌ネジ271Tの第1端部271T1がストッパ273の接触面273Aと接触すると、第2ケース20は第2相対回転位置P12(
図2参照)で停止する。しかし、可動部材271がストッパ273と接触した場合に第2ケース20が第1相対回転位置P11(
図16参照)で停止するようにストッパ構造270を構成してもよい。
【0154】
図16に示すように、ストッパ構造270は、空転領域275を含む。空転領域275は、第2相対回転位置P12と第3相対回転位置P13との間に定義される。第3相対回転位置P13は、第1ケース10に対して第2ケース20が第2相対回転位置P12から第2回転方向D22にさらに回転した第2ケース20の位置である。第2ケース20が第3相対回転位置P13に配置されている状態では、電気ケーブル60の反転部60Cのたわみがなくなり、反転部60Cが第1ケース10と第2ケース20との間で引っ張られる。したがって、第1ケース10に対する第2回転方向D22への第2ケース20の回転は第3相対回転位置P13において停止する。空転領域275では、移動変換部272は可動部材271を第1移動方向D41へ実質的に案内しない。したがって、空転領域275では、第2ケース20の回転はストッパ273によって制限されない。一方、電気ケーブル60の反転部60Cが引っ張られる状態で(例えば、第2ケース20が第3相対回転位置P13で停止する状態で)、ステアリングに付与される第2回転方向D22への回転力が所定のレベルを超えると、電気ケーブル60が断線する。この場合、ステアリングによる操作を第3相対回転位置P13を超えて行えるので、車両操作における安全性を確保することができる。
【0155】
回転コネクタ装置201では、第2ケース20の回転が第2相対回転位置P12に達した場合、可動部材271がストッパ273に接触するので、運転者がステアリングの回転が重くなったと感じる。すなわち、ストッパ273により運転者がステアリングの終端を認識できる。
【0156】
一般的に、ステアリングが中立位置の場合に可動部材271の位置が中立位置P20(
図14)からずれた状態で回転コネクタ装置201が車体に取り付けられる可能性がある。例えば、可動部材271が中立位置P20から第2ストッパ位置P22の方にずれている場合、第2ケース20の第2回転方向D22への回転範囲が狭くなる。
【0157】
しかし、回転コネクタ装置201では、可動部材271がストッパ273と接触した後に第2ケース20に所定のレベルを超える回転力が付与されると、第2ケース20の第2回転方向D22への回転が許容される。したがって、ステアリングが中立位置の場合に可動部材271の位置が中立位置P20からずれている場合であっても、ステアリングの回転範囲が狭くなるのを抑制できる。
【0158】
なお、雄ネジ272Tおよび雌ネジ271Tのネジの向きは逆向きであってもよい。雄ネジ272Tおよび雌ネジ271Tのネジの向きが逆向きの場合、第2ケース20が第1ケース10に対して第1回転方向D21に回転すると、可動部材271が第1移動方向D41に移動する。第2ケース20が第1ケース10に対して第2回転方向D22に回転すると、可動部材271が第2移動方向D42に移動する。可動部材271がストッパ273と接触すると、例えば、第2ケース20は第1相対回転位置P11(
図16参照)で停止する。空転領域275は、第1相対回転位置P11から第1回転方向D21に定義される。
【0159】
また、空転領域275はストッパ構造270から省略されてもよい。その場合、ストッパ273の接触面273Aは、例えば、可動部材271の雌ネジ271Tが乗り越えないような形状(例えば、周方向を向く平面)を有する。
【0160】
また、
図14に示すように、本変形例では、移動変換部272の雄ネジ272Tは、スリーブ222の少なくとも一部と1個の部材として一体的に設けられる。雌ネジ271Tは、可動体271Aと別部材である。ガイド279は、第1ケース10の少なくとも一部と1個の部材として一体的に設けられる。しかし、移動変換部272の雄ネジ272Tは、スリーブ222と別部材であってもよい。雌ネジ271Tは、可動体271Aの少なくとも一部と1個の部材として一体的に設けられてもよい。ガイド279は、第1ケース10と別部材であってもよい。
【0161】
また、
図13に示すガイド279に、前述のインジケータ90が設けられてもよい。この場合、インジケータ90は、軸方向D1における可動部材271とインジケータ90との位置関係によって第1ケース10に対して第2ケース20が中立回転位置P10(
図16参照)に配置されることを示すように構成される。
【0162】
本願においては、「備える」およびその派生語は、構成要素の存在を説明する非制限用語であり、記載されていない他の構成要素の存在を排除しない。これは、「有する」、「含む」およびそれらの派生語にも適用される。
【0163】
本願において、「第1」や「第2」などの序数は、単に構成を識別するための用語であって、他の意味(例えば特定の順序など)は有していない。例えば、「第1要素」があるからといって「第2要素」が存在していることを暗に意味しているわけではなく、また「第2要素」があるからといって「第1要素」が存在していることを暗に意味しているわけではない。
【0164】
また、本開示における「平行」「直交」および「一致」の表現は、厳密に解釈されるべきではなく、「実質的な平行」「実質的な直交」および「実質的な一致」の意味をそれぞれ含む。また、その他の配置に関する表現も、厳密に解釈されるものではない。
【0165】
また、本開示における「AおよびBのうち少なくとも1つ」という表現は、例えば、(1)Aのみ、(2)Bのみ、および(3)AおよびBの両方、のいずれも包含している。「A、BおよびCのうち少なくとも1つ」という表現は、例えば、(1)Aのみ、(2)Bのみ、(3)Cのみ、(4)AおよびB、(5)BおよびC、(6)AおよびC、(7)A、BおよびCの全て、のいずれも包含している。本開示では、「AおよびBのうち少なくとも1つ」という表現は、「Aのうち少なくとも1つおよびBのうち少なくとも1つ」とは解釈されない。
【0166】
上記の開示内容から考えて、本発明の種々の変更や修正が可能であることは明らかである。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、本願の具体的な開示内容とは別の方法で本発明が実施されてもよい。
【符号の説明】
【0167】
1、201:回転コネクタ装置
10 :第1ケース、ステータ
11 :中央開口
12 :内周部
14 :第1ケース本体
15 :筒状部
16 :第1環状体
16A :第1環状プレート
17 :第2環状体
17A :外周壁
20 :第2ケース、回転体
21 :第2ケース本体
22 :スリーブ
22A :スリーブ本体
22B :スリーブ連結部
22C :内側面
22D :第1基準面
23 :第2環状プレート
24 :内周壁
30 :第1電気コネクタ
40 :第2電気コネクタ
50 :ケーブル収容空間
60 :電気ケーブル
70 :ストッパ構造
71、271:可動部材
71A :外周部
71B :第1面
71C :第2面
72、272:移動変換部
72A :変換溝
73、273:ストッパ
73A :ストッパ面
74 :案内開口
75 :案内突出部
90 :インジケータ
91 :マーク
91B :図形
92 :基準面
A1 :回転軸線
D1 :軸方向
D21 :第1回転方向
D22 :第2回転方向
D3 :周方向
D41 :第1移動方向
D42 :第2移動方向
P10 :中立回転位置
P11 :第1相対回転位置
P12 :第2相対回転位置
P20 :中立位置
P21 :第1ストッパ位置
P22 :第2ストッパ位置
RP :基準面