(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】基板処理装置及びシャッタ
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20241022BHJP
【FI】
H01L21/302 101B
H01L21/302 101G
(21)【出願番号】P 2023157473
(22)【出願日】2023-09-22
【審査請求日】2023-09-22
(31)【優先権主張番号】P 2022167131
(32)【優先日】2022-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒巻 昂
(72)【発明者】
【氏名】松坂 洸次郎
(72)【発明者】
【氏名】尾形 敦
(72)【発明者】
【氏名】李 黎夫
(72)【発明者】
【氏名】パク ギョンミン
【審査官】加藤 芳健
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-37584(JP,A)
【文献】特開2021-22652(JP,A)
【文献】特開2019-9251(JP,A)
【文献】特開2015-128110(JP,A)
【文献】特開2022-27166(JP,A)
【文献】国際公開第00/075972(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
H01L 21/31
C23C 16/50
H05H 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板処理装置であって、
チャンバと、
前記チャンバ内に配置される基板支持部と、
円筒状の前記チャンバの開口部を開閉する弁体と、前記チャンバの内周側と前記基板支持部との間に配置され、前記基板支持部側の端部に垂直方向の勾配形状が形成されたバッフル板とを備えるシャッタと、
前記基板支持部の側面に設けられ、導電性の弾性部材で形成されたコンタクト部材と、
を有し、
前記シャッタが閉じられた状態において、前記基板支持部側の前記端部と、前記コンタクト部材との接触が維持される、
基板処理装置。
【請求項2】
前記シャッタは、円筒状である、
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記基板支持部側の前記端部は、前記垂直方向の長さが、前記コンタクト部材の前記垂直方向の長さよりも長く形成される、
請求項1又は2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記勾配形状は、前記バッフル板の下面側から上面側に向けて、前記バッフル板の幅が狭くなる形状である、
請求項1又は2に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記バッフル板は、
第1の幅を持つ平面が円環状に設けられ、内周側に前記基板支持部側の前記端部を備える平面部と、
前記平面部の外周側に垂直方向の面が円筒状に設けられる壁面部と、
前記壁面部の上部に第2の幅を持つ平面が円環状に設けられるフランジ部と、
を有する、
請求項1又は2に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記弁体は、前記弁体の底部が前記フランジ部と接続される、
請求項5に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記弁体は、前記底部と前記フランジ部との間に導電性部材を挟み込んで、前記バッフル板と電気的に接続される、
請求項6に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記バッフル板は、前記端部の前記勾配形状の上部と、前記平面部の上面との接続部が、曲面で形成される、
請求項5に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記コンタクト部材は、前記基板支持部の側面を一周するように設けられる、
請求項1又は2に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記コンタクト部材は、前記弾性部材の変形領域に芯材を備える、
請求項1又は2に記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記芯材は、前記基板支持部の径方向の断面が円形状である、
請求項10に記載の基板処理装置。
【請求項12】
前記芯材は、前記基板支持部の径方向の断面が台形状である、
請求項10に記載の基板処理装置。
【請求項13】
前記芯材は、前記基板支持部の径方向の断面がV字形状である、
請求項10に記載の基板処理装置。
【請求項14】
前記芯材は、前記基板支持部の径方向の断面が架橋形状である、
請求項10に記載の基板処理装置。
【請求項15】
前記弁体は、前記弁体の上端部における、前記チャンバ上部の内壁に沿って設けられた導電性の上部部材と接触する導通面に、導電性部材を備え、
前記弁体と前記上部部材とは、前記弁体を上昇させて前記開口部を閉じた場合に、前記導通面が前記上部部材と上下方向に当接し、前記導電性部材により電気的に導通する、
請求項1又は2に記載の基板処理装置。
【請求項16】
前記上部部材と、前記チャンバの天部に設けられたシャワーヘッドとの間を絶縁する絶縁部材を有する、
請求項15に記載の基板処理装置。
【請求項17】
基板処理装置のチャンバの開口部に設けられるシャッタであって、
円筒状の前記チャンバの開口部を開閉する弁体と、
前記チャンバの内周側と、前記チャンバ内に配置される基板支持部との間に配置され、前記基板支持部側の端部に垂直方向の勾配形状が形成されたバッフル板と、
を有し、
前記シャッタが閉じられた状態において、前記基板支持部側の前記端部と、前記基板支持部の側面に設けられ、導電性の弾性部材で形成されたコンタクト部材との接触が維持される、
シャッタ。
【請求項18】
前記コンタクト部材は、前記弾性部材の変形領域に芯材を備える、
請求項17に記載のシャッタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理装置及びシャッタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体デバイス用の被処理基板であるウェハに所望のプラズマ処理を施すプラズマ処理装置が知られている。プラズマ処理装置は、例えばウェハを収容するチャンバを備え、チャンバ内には、ウェハを載置し下部電極として機能する載置台と、載置台に対向する上部電極とが配置されている。ウェハは、例えば、搬送ロボットによって、チャンバに設けられた開口部を介して、チャンバ内に搬入、又は、チャンバ内から搬出される。また、チャンバの開口部からウェハの外径を超えるチャンバ内パーツ等を搬送するために、例えば、チャンバの開口部を拡大するとともに、チャンバの内周全域に沿う弁体を有するシャッタ機構が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、プラズマリークを抑制することができる基板処理装置及びシャッタを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様による基板処理装置は、チャンバと、チャンバ内に配置される基板支持部と、円筒状のチャンバの開口部を開閉する弁体と、チャンバの内周側と基板支持部との間に配置され、基板支持部側の端部に垂直方向の勾配形状が形成されたバッフル板とを備えるシャッタと、基板支持部の側面に設けられ、導電性の弾性部材で形成されたコンタクト部材とを有し、シャッタが閉じられた状態において、基板支持部側の端部と、コンタクト部材との接触が維持される。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、プラズマリークを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本開示の第1実施形態におけるプラズマ処理システムの一例を示す図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態におけるシャッタの一例を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態におけるシャッタの断面の一例を示す部分拡大図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態におけるシャッタが閉じた状態の断面の一例を示す部分拡大図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態におけるコンタクト部材の一例を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、参考例1のシャッタが閉じた状態の断面の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、参考例2のシャッタが閉じた状態の断面の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、参考例3のシャッタが閉じた状態の断面の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、プラズマリークの実験結果の一例を示す図である。
【
図10】
図10は、コンタクト部材のバリエーションの一例を示す図である。
【
図11】
図11は、第2実施形態におけるコンタクト部材近傍の断面の一例を示す部分拡大図である。
【
図12】
図12は、第2実施形態におけるコンタクト部材の芯材の一例を示す図である。
【
図13】
図13は、第2実施形態におけるコンタクト部材の一例を示す斜視図である。
【
図14】
図14は、第2実施形態におけるコンタクト部材の芯材の他の一例を示す図である。
【
図15】
図15は、第2実施形態におけるコンタクト部材の芯材の他の一例を示す図である。
【
図16】
図16は、第2実施形態におけるコンタクト部材の芯材の他の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、開示する基板処理装置及びシャッタの実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態により開示技術が限定されるものではない。
【0009】
チャンバ内には、チャンバ内で発生するプラズマが排気系に漏れないように、バッフル板が配置されている。シャッタの弁体は、閉じた状態において、弁体の上部がチャンバ上面と接触し、弁体の下部がバッフル板やデポシールド等と接触する。つまり、弁体は、チャンバ上面やバッフル板等と電気的に接続(導通)される。しかしながら、プラズマ処理による入熱により弁体が膨張すると、弁体の上部はチャンバ上面と接触しているものの、弁体の下部がバッフル板やデポシールド等と離れてしまい、プラズマリークが発生する場合がある。そこで、弁体が膨張しても電気的な接続が切れず、プラズマリークを抑制することが期待されている。
【0010】
(第1実施形態)
[プラズマ処理システムの構成]
以下に、プラズマ処理システムの構成例について説明する。
図1は、本開示の第1実施形態におけるプラズマ処理システムの一例を示す図である。
図1に示すように、プラズマ処理システムは、容量結合型のプラズマ処理装置1及び制御部2を含む。容量結合型のプラズマ処理装置1は、プラズマ処理チャンバ10、ガス供給部20、電源30及び排気システム40を含む。また、プラズマ処理装置1は、基板支持部11及びガス導入部を含む。ガス導入部は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理チャンバ10内に導入するように構成される。ガス導入部は、シャワーヘッド13を含む。基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10内に配置される。シャワーヘッド13は、基板支持部11の上方に配置される。一実施形態において、シャワーヘッド13は、プラズマ処理チャンバ10の天部(ceiling)の少なくとも一部を構成する。プラズマ処理チャンバ10は、シャワーヘッド13、プラズマ処理チャンバ10の側壁10a及び基板支持部11により規定されたプラズマ処理空間10sを有する。プラズマ処理チャンバ10は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10sに供給するための少なくとも1つのガス供給口と、プラズマ処理空間10sからガスを排出するための少なくとも1つのガス排出口とを有する。プラズマ処理チャンバ10は接地される。シャワーヘッド13及び基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10の筐体とは電気的に絶縁される。
【0011】
基板支持部11は、本体部111及びリングアセンブリ112を含む。本体部111は、基板Wを支持するための中央領域111aと、リングアセンブリ112を支持するための環状領域111bとを有する。ウェハは基板Wの一例である。本体部111の環状領域111bは、平面視で本体部111の中央領域111aを囲んでいる。基板Wは、本体部111の中央領域111a上に配置され、リングアセンブリ112は、本体部111の中央領域111a上の基板Wを囲むように本体部111の環状領域111b上に配置される。従って、中央領域111aは、基板Wを支持するための基板支持面とも呼ばれ、環状領域111bは、リングアセンブリ112を支持するためのリング支持面とも呼ばれる。
【0012】
一実施形態において、本体部111は、基台1110及び静電チャック1111を含む。基台1110は、導電性部材を含む。基台1110の導電性部材は下部電極として機能し得る。静電チャック1111は、基台1110の上に配置される。静電チャック1111は、セラミック部材1111aとセラミック部材1111a内に配置される静電電極1111bとを含む。セラミック部材1111aは、中央領域111aを有する。一実施形態において、セラミック部材1111aは、環状領域111bも有する。なお、環状静電チャックや環状絶縁部材のような、静電チャック1111を囲む他の部材が環状領域111bを有してもよい。この場合、リングアセンブリ112は、環状静電チャック又は環状絶縁部材の上に配置されてもよく、静電チャック1111と環状絶縁部材の両方の上に配置されてもよい。また、後述するRF(Radio Frequency)電源31及び/又はDC(Direct Current)電源32に結合される少なくとも1つのRF/DC電極がセラミック部材1111a内に配置されてもよい。この場合、少なくとも1つのRF/DC電極が下部電極として機能する。後述するバイアスRF信号及び/又はDC信号が少なくとも1つのRF/DC電極に供給される場合、RF/DC電極はバイアス電極とも呼ばれる。なお、基台1110の導電性部材と少なくとも1つのRF/DC電極とが複数の下部電極として機能してもよい。また、静電電極1111bが下部電極として機能してもよい。従って、基板支持部11は、少なくとも1つの下部電極を含む。
【0013】
リングアセンブリ112は、1又は複数の環状部材を含む。一実施形態において、1又は複数の環状部材は、1又は複数のエッジリングと少なくとも1つのカバーリングとを含む。エッジリングは、導電性材料又は絶縁材料で形成され、カバーリングは、絶縁材料で形成される。
【0014】
また、基板支持部11は、静電チャック1111、リングアセンブリ112及び基板のうち少なくとも1つをターゲット温度に調節するように構成される温調モジュールを含んでもよい。温調モジュールは、ヒータ、伝熱媒体、流路1110a、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。流路1110aには、ブラインやガスのような伝熱流体が流れる。一実施形態において、流路1110aが基台1110内に形成され、1又は複数のヒータが静電チャック1111のセラミック部材1111a内に配置される。また、基板支持部11は、基板Wの裏面と中央領域111aとの間の間隙に伝熱ガスを供給するように構成された伝熱ガス供給部を含んでもよい。
【0015】
シャワーヘッド13は、ガス供給部20からの少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10s内に導入するように構成される。シャワーヘッド13は、少なくとも1つのガス供給口13a、少なくとも1つのガス拡散室13b、及び複数のガス導入口13cを有する。ガス供給口13aに供給された処理ガスは、ガス拡散室13bを通過して複数のガス導入口13cからプラズマ処理空間10s内に導入される。また、シャワーヘッド13は、少なくとも1つの上部電極を含む。なお、ガス導入部は、シャワーヘッド13に加えて、側壁10aに形成された1又は複数の開口部に取り付けられる1又は複数のサイドガス注入部(SGI:Side Gas Injector)を含んでもよい。
【0016】
ガス供給部20は、少なくとも1つのガスソース21及び少なくとも1つの流量制御器22を含んでもよい。一実施形態において、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスを、それぞれに対応のガスソース21からそれぞれに対応の流量制御器22を介してシャワーヘッド13に供給するように構成される。各流量制御器22は、例えばマスフローコントローラ又は圧力制御式の流量制御器を含んでもよい。さらに、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスの流量を変調又はパルス化する1又はそれ以上の流量変調デバイスを含んでもよい。
【0017】
電源30は、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介してプラズマ処理チャンバ10に結合されるRF電源31を含む。RF電源31は、少なくとも1つのRF信号(RF電力)を少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に供給するように構成される。これにより、プラズマ処理空間10sに供給された少なくとも1つの処理ガスからプラズマが形成される。従って、RF電源31は、プラズマ処理チャンバ10において1又はそれ以上の処理ガスからプラズマを生成するように構成されるプラズマ生成部の少なくとも一部として機能し得る。また、バイアスRF信号を少なくとも1つの下部電極に供給することにより、基板Wにバイアス電位が発生し、形成されたプラズマ中のイオン成分を基板Wに引き込むことができる。
【0018】
一実施形態において、RF電源31は、第1のRF生成部31a及び第2のRF生成部31bを含む。第1のRF生成部31aは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に結合され、プラズマ生成用のソースRF信号(ソースRF電力)を生成するように構成される。一実施形態において、ソースRF信号は、10MHz~150MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第1のRF生成部31aは、異なる周波数を有する複数のソースRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のソースRF信号は、少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に供給される。
【0019】
第2のRF生成部31bは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して少なくとも1つの下部電極に結合され、バイアスRF信号(バイアスRF電力)を生成するように構成される。バイアスRF信号の周波数は、ソースRF信号の周波数と同じであっても異なっていてもよい。一実施形態において、バイアスRF信号は、ソースRF信号の周波数よりも低い周波数を有する。一実施形態において、バイアスRF信号は、100kHz~60MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第2のRF生成部31bは、異なる周波数を有する複数のバイアスRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のバイアスRF信号は、少なくとも1つの下部電極に供給される。また、種々の実施形態において、ソースRF信号及びバイアスRF信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。
【0020】
また、電源30は、プラズマ処理チャンバ10に結合されるDC電源32を含んでもよい。DC電源32は、第1のDC生成部32a及び第2のDC生成部32bを含む。一実施形態において、第1のDC生成部32aは、少なくとも1つの下部電極に接続され、第1のDC信号を生成するように構成される。生成された第1のバイアスDC信号は、少なくとも1つの下部電極に印加される。一実施形態において、第2のDC生成部32bは、少なくとも1つの上部電極に接続され、第2のDC信号を生成するように構成される。生成された第2のDC信号は、少なくとも1つの上部電極に印加される。
【0021】
種々の実施形態において、第1及び第2のDC信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。この場合、電圧パルスのシーケンスが少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に印加される。電圧パルスは、矩形、台形、三角形又はこれらの組み合わせのパルス波形を有してもよい。一実施形態において、DC信号から電圧パルスのシーケンスを生成するための波形生成部が第1のDC生成部32aと少なくとも1つの下部電極との間に接続される。従って、第1のDC生成部32a及び波形生成部は、電圧パルス生成部を構成する。第2のDC生成部32b及び波形生成部が電圧パルス生成部を構成する場合、電圧パルス生成部は、少なくとも1つの上部電極に接続される。電圧パルスは、正の極性を有してもよく、負の極性を有してもよい。また、電圧パルスのシーケンスは、1周期内に1又は複数の正極性電圧パルスと1又は複数の負極性電圧パルスとを含んでもよい。なお、第1及び第2のDC生成部32a,32bは、RF電源31に加えて設けられてもよく、第1のDC生成部32aが第2のRF生成部31bに代えて設けられてもよい。
【0022】
排気システム40は、例えばプラズマ処理チャンバ10の底部に設けられたガス排出口10eに接続され得る。排気システム40は、圧力調整弁及び真空ポンプを含んでもよい。圧力調整弁によって、プラズマ処理空間10s内の圧力が調整される。真空ポンプは、ターボ分子ポンプ、ドライポンプ又はこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0023】
プラズマ処理チャンバ10の側壁10aには、基板Wの搬入・搬出用の開口部50が設けられ、開口部50を開閉するゲートバルブ51が配置される。プラズマ処理チャンバ10内には、プラズマ処理チャンバ10の内壁に沿ってデポシールド52が着脱自在に設けられている。デポシールド52の上部には、例えば、アルミナ(Al2O3)若しくはイットリア(Y2O3)からなる環状の絶縁部材54が気密に配置されている。デポシールド52は、プラズマ処理チャンバ10の開口部50より上部に設けられている。デポシールド52の下部は、後述するシャッタ60の弁体61の上部と接触することで開口部50を閉じる。デポシールド52は、例えばアルミニウム材にY2O3等のセラミックスを被覆することにより構成され得る。なお、デポシールド52の下部は、接触する弁体61と導通可能なように導電性の材質、例えばステンレススチールやニッケル合金等で被覆されている。なお、デポシールド52は、導電性の上部部材の一例である。絶縁部材54は、シャワーヘッド13とデポシールド52との間を絶縁する部材である。つまり、絶縁部材54は、シャッタ60が閉じられた際に互いに導通する側壁10a、デポシールド52及び弁体61と、シャワーヘッド13との間を絶縁する部材である。また、シャッタ60の下部は、後述するバッフル板70の基板支持部11側の端部75が、摺動可能に本体部111の側壁と接している。
【0024】
基板Wは、ゲートバルブ51を開閉させて搬入・搬出される。ただし、ゲートバルブ51はプラズマ処理チャンバ10の外側(搬送室側)に配置されているため、開口部50が搬送室側に突出した空間が形成されている。そのため、プラズマ処理チャンバ10内で生成したプラズマがその空間まで拡散して、プラズマの均一性の悪化や、ゲートバルブ51のシール部材の劣化が起こる。同様に、プラズマ処理チャンバ10内で生成したプラズマが、ガス排出口10e側の空間まで拡散して、プラズマの均一性の悪化が起こる。そこで、シャッタ60によってデポシールド52と、本体部111の側壁との間を遮断することで、プラズマ処理チャンバ10の開口部50及びガス排出口10eと、プラズマ処理空間10sとを遮断する。また、シャッタ60を駆動する昇降機構53は、例えば弁体61の下方に配置される。昇降機構53は、例えば、弁体61と接続されるロッドと、エアシリンダやモータ等によりロッドを上下に昇降させる駆動部とを有する。シャッタ60は、昇降機構53により上下に駆動され、開口部50を開閉する。また、昇降機構53は、複数、例えば3つ設置されるのが好ましい。なお、シャッタ60には、昇降機構53を含めてもよい。
【0025】
制御部2は、本開示において述べられる種々の工程をプラズマ処理装置1に実行させるコンピュータ実行可能な命令を処理する。制御部2は、ここで述べられる種々の工程を実行するようにプラズマ処理装置1の各要素を制御するように構成され得る。一実施形態において、制御部2の一部又は全てがプラズマ処理装置1に含まれてもよい。制御部2は、処理部2a1、記憶部2a2及び通信インターフェース2a3を含んでもよい。制御部2は、例えばコンピュータ2aにより実現される。処理部2a1は、記憶部2a2からプログラムを読み出し、読み出されたプログラムを実行することにより種々の制御動作を行うように構成され得る。このプログラムは、予め記憶部2a2に格納されていてもよく、必要なときに、媒体を介して取得されてもよい。取得されたプログラムは、記憶部2a2に格納され、処理部2a1によって記憶部2a2から読み出されて実行される。媒体は、コンピュータ2aに読み取り可能な種々の記憶媒体であってもよく、通信インターフェース2a3に接続されている通信回線であってもよい。処理部2a1は、CPU(Central Processing Unit)であってもよい。記憶部2a2は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。通信インターフェース2a3は、LAN(Local Area Network)等の通信回線を介してプラズマ処理装置1との間で通信してもよい。
【0026】
[シャッタ60の詳細]
図2は、第1実施形態におけるシャッタの一例を示す斜視図である。
図3は、第1実施形態におけるシャッタの断面の一例を示す部分拡大図である。
図2及び
図3に示すように、シャッタ60は、弁体61と、バッフル板70とを有する。弁体61は、プラズマ処理チャンバ10の内周に沿う円筒状の弁体である。弁体61は、開口部50を閉じたときにデポシールド52と当接する上部62と、バッフル板70と接続される底部63とを有する。また、上部62には、デポシールド52との導通を確保するための導電性部材64が設けられる。導電性部材64は、コンダクタンスバンドやスパイラルとも呼ばれ、導電性の弾性部材である。導電性部材64は、例えば、ステンレススチールやニッケル合金等を用いることができる。導電性部材64は、例えば、帯状の部材を螺旋状に巻いて形成される。また、導電性部材64は、例えば、U字状のジャケット付きの斜め巻きコイルスプリングを用いてもよい。
【0027】
バッフル板70は、平面部71と、壁面部72と、フランジ部73とを有する。平面部71は、本体部111の側壁と後述するコンタクト部材116を介して接するような所定の幅を持つ円環状の板である。平面部71の幅は、第1の幅の一例である。なお、平面部71には、図示しない貫通孔が設けられ、プラズマ処理空間10sから排気が可能となっている。壁面部72は、平面部71の外周側に垂直方向の面(壁)として円筒状に設けられ、上部がフランジ部73と接続される。フランジ部73は、壁面部72の上部に円環状に設けられ、弁体61と接続される。つまり、フランジ部73には、弁体61を載置可能な幅を持つ平面が円環状に設けられている。フランジ部73の上面(平面)の幅は、第2の幅の一例である。すなわち、弁体61とバッフル板70とが一体としてシャッタ60を構成し、シャッタ60の開閉の際には、弁体61とともにバッフル板70も上下に移動する。
【0028】
フランジ部73の上面73aは、弁体61の底部63の下面63aと接する。上面73aと下面63aとの間には、弁体61とバッフル板70との導通を確保するための導電性部材74が設けられる。導電性部材74は、導電性部材64と同様の導電性の弾性部材である。また、平面部71の内周側、つまり、基板支持部11側の端部75には、本体部111の側壁に設けられた、後述するコンタクト部材116と接する垂直方向の勾配形状76が形成される。なお、勾配形状76の上部と、平面部71の上面との接続部は、エッジが立たないように曲面で形成される。
【0029】
次に、
図4を用いてシャッタが閉じた状態におけるシャッタ60と本体部111の側壁との接触の状態について説明する。
図4は、第1実施形態におけるシャッタが閉じた状態の断面の一例を示す部分拡大図である。
図4に示すように、シャッタ60の弁体61は、上部62がプラズマ処理チャンバ10の上部のシャワーヘッド13近傍に設けられたデポシールド52と当接され、導電性部材64が押し潰された状態となる。このとき、弁体61とデポシールド52とは導通が確保されている。
【0030】
また、本体部111の側壁には、リング状のシールド部材115が設けられている。なお、シールド部材115の上部は、リングアセンブリ112の直下まで設けるようにしてもよい。シールド部材115は、本体部111等の基板支持部11の下部をプラズマから保護する部材である。シールド部材115の表面には、Y2O3等の溶射膜が形成されている。また、シールド部材115には、コンタクト部材116を設けるための円周方向の溝115aが形成されている。溝115aの底部(本体部111の側面)は、溶射膜が形成されず、シールド部材115とコンタクト部材116とが接触することで導通が確保されている。
【0031】
コンタクト部材116は、溝115aに設けられ、導電性の弾性部材で形成されている。コンタクト部材116は、バッフル板70の端部75の勾配形状76と当接するバネ部117を有する。すなわち、コンタクト部材116は、シールド部材115とバッフル板70との導通を確保する部材である。また、端部75は、垂直方向の長さが、コンタクト部材116の垂直方向の長さよりも長く形成される。このように、シャッタ60が閉じた状態では、デポシールド52と、弁体61と、バッフル板70と、コンタクト部材116と、シールド部材115との導通が確保されている状態である。
【0032】
図5は、第1実施形態におけるコンタクト部材の一例を示す斜視図である。
図5に示すように、コンタクト部材116は、複数のバネ部117が円周方向に連なって形成されている。バネ部117は、シャッタ60が閉じる際に、端部75の勾配形状76に沿って溝115a側に押し込まれる。つまり、シャッタ60が閉じられた状態において、バッフル板70の基板支持部11側の端部75と、コンタクト部材116との接触が維持される。
【0033】
[参考例]
続いて、
図6から
図8を用いて参考例1~3について説明する。
図6は、参考例1のシャッタが閉じた状態の断面の一例を示す図である。なお、
図6から
図8では、各部の詳細については省略している部分がある。
図6に示すシャッタ200は、弁体201と、バッフル板202とを有する。また、本体部111の側壁には、リング状のシールド部材210が設けられている。参考例1では、シャッタ200は、閉じた状態であり、弁体201の上部は、プラズマ処理チャンバ10の上部のシャワーヘッド13近傍に設けられたデポシールド52と接触している。一方、バッフル板202の本体部111側の端部203は、シールド部材210との間に隙間204が空いている状態である。つまり、参考例1は、従来、シールド部材210に固定されていたバッフル板202を、弁体201とともに上下に移動可能にした状態である。この場合、バッフル板202とシールド部材210との導通がとれていないため、プラズマリークが発生する。
【0034】
図7は、参考例2のシャッタが閉じた状態の断面の一例を示す図である。
図7に示すシャッタ220は、弁体221と、バッフル板222とを有する。また、本体部111の側壁には、参考例1と同様にリング状のシールド部材210が設けられている。参考例2では、シャッタ220は、閉じた状態であり、弁体221の上部は、プラズマ処理チャンバ10の上部のシャワーヘッド13近傍に設けられたデポシールド52と接触している。一方、バッフル板222の本体部111側の端部223の側面には、導電性部材224が設けられ、シールド部材210と接触している状態である。つまり、参考例2は、参考例1のバッフル板202とシールド部材210との間を導電性部材224によって導通を確保したものである。導電性部材224は、上述の導電性部材64と同様の導電性の弾性部材である。この場合、導電性部材224は、押し潰される力に対する反発力が発生するので、バッフル板222に径方向の応力が掛かり、バッフル板222が歪んで破損する可能性がある。また、シャッタ220を駆動した際に、導電性部材224がシールド部材210と接触したまま上下に摺動するので、導電性部材224が破損する可能性がある。なお、導電性部材224をシールド部材210側に設けた場合でも、例えば、シャッタ220を駆動した際に、端部223がシールド部材210の壁面と平行に動くので、導電性部材224に対して押しつぶす方向ではない力が掛かり、導電性部材224が破損する可能性がある。
【0035】
図8は、参考例3のシャッタが閉じた状態の断面の一例を示す図である。
図8に示すシャッタ230は、弁体231と、バッフル板232とを有する。また、本体部111の側壁には、リング状のシールド部材211が設けられている。シールド部材211には、バッフル板232の端部233の上面と接するように、フランジ部212が設けられている。参考例3では、シャッタ230は、閉じた状態であり、弁体231の上部は、プラズマ処理チャンバ10の上部のシャワーヘッド13近傍に設けられたデポシールド52と接触している。一方、バッフル板232の本体部111側の端部233の上面には、導電性部材234が設けられている。導電性部材234は、シャッタ230が閉じることで押し潰され、フランジ部212と端部233との間で導通を確保する。導電性部材234は、上述の導電性部材64と同様の導電性の弾性部材である。つまり、参考例3は、参考例2と比較して、バッフル板とシールド部材との接触の方向を変更したものである。この場合、バッフル板232とシールド部材211との接触を上下方向で行うので、シャッタ230を駆動した際に、バッフル板232に上下方向の応力が掛かり、バッフル板232が歪んで破損する可能性がある。また、プラズマによる入熱によりシャッタ230が熱膨張すると、フランジ部212と端部233とが離れてしまい、導通が確保出来なくなる可能性がある。
【0036】
[実験結果]
次に、
図9を用いて、プラズマリークの実験結果について説明する。
図9は、プラズマリークの実験結果の一例を示す図である。
図9に示す表90は、参考例4と、参考例1と、本実施形態に係る実施例とについて、条件1~4のプラズマ処理を行った場合におけるプラズマリークの発光の有無を示している。発光は、プラズマ処理チャンバ10のガス排出口10e近傍ののぞき窓から撮影した画像に基づいている。ここで、参考例4は、バッフル板がシールド部材に固定され、プラズマ処理チャンバの側壁の一部が開口し、その開口を開閉するシャッタを備える従来のプラズマ処理装置の場合である。参考例1は、
図6に示すシャッタ200を用いたプラズマ処理装置の場合である。条件1は、ソースRF信号として2kW、バイアスDC信号として0kVを供給した場合である。条件2は、ソースRF信号として2kW、バイアスDC信号として4kVを供給した場合である。条件3は、ソースRF信号として0kW、バイアスDC信号として5kVを供給した場合である。条件4は、ソースRF信号として0kW、バイアスDC信号として6kVを供給した場合である。条件1~4は、条件1から条件4の順に供給される電力が大きくなる。
【0037】
条件1~3では、参考例4と実施例において、発光は観測されず(発光なし)プラズマリークは発生していない。これに対して、参考例1では、発光が観測され(発光あり)、プラズマリークが発生している。条件4では、実施例において、発光は観測されず(発光なし)プラズマリークは発生していない。これに対して、参考例4と参考例1では、発光が観測され(発光あり)、プラズマリークが発生している。すなわち、本実施形態のシャッタ60では、参考例4の従来のプラズマ処理装置におけるシャッタよりも、プラズマリークを抑制することができる。
【0038】
このように、本実施形態に係る実施例では、プラズマ処理による入熱により弁体61やバッフル板70が膨張しても、端部75とコンタクト部材116との電気的な接続が切れず、プラズマリークを抑制することができる。また、水平方向への熱膨張についても、バネ部117によって吸収することができるので、シャッタ60に掛かる熱応力を緩和することができる。さらに、シャッタ60の駆動方向における接触応力についても同様に緩和することができる。
【0039】
[コンタクト部材のバリエーション]
続いて、
図10を用いてコンタクト部材116のバリエーションについて説明する。
図10は、コンタクト部材のバリエーションの一例を示す図である。
図10に示すように、コンタクト部材116は、上述の実施形態におけるコンタクト部材116であって、1つのバネ部117の部分を代表として表したものである。
図10の例では、コンタクト部材116の断面を表している。
【0040】
コンタクト部材116aは、バネ部の形状を円形としたコンタクト部材のバリエーションである。
図10の例では、コンタクト部材116aの断面を表している。コンタクト部材116bは、バネ部の形状をくの字形としたコンタクト部材のバリエーションである。
図10の例では、コンタクト部材116bの断面を表している。コンタクト部材116a,116bは、コンタクト部材116と同様に、本体部111の円周方向に連続して設けることができる。また、コンタクト部材116a,116bは、コンタクト部材116と同様に、端部75とコンタクト部材116との電気的な接続が切れず、プラズマリークを抑制することができる。また、水平方向への熱膨張や、シャッタ60の駆動方向における接触応力についても、それぞれ円形や、くの字形のバネ部によって吸収することができる。
【0041】
(第2実施形態)
上記の第1実施形態では、バネ部117の弾性によって、コンタクト部材116と、バッフル板70の端部75との接触が維持されていたが、バネ部117の変形を芯材で調整してもよく、この場合の実施の形態につき、第2実施形態として説明する。なお、第2実施形態におけるプラズマ処理装置は、コンタクト部材116が備える芯材を除いて上述の第1実施形態と同様であるので、その重複する構成及び動作の説明については省略する。
【0042】
プラズマ処理装置1におけるプラズマ処理では、例えば、WF6といった腐食ガスを処理ガスとして用いる場合がある。この場合、長時間の稼働後において、腐食ガスによりコンタクト部材116のバネ部117が塑性変形し、バネ部117の弾性が低下、つまり、反力が低下することが考えられる。そこで、第2実施形態では、バネ部117の変形領域に芯材を設けることで、バネ部117の反力を維持する形態について説明する。
【0043】
図11は、第2実施形態におけるコンタクト部材近傍の断面の一例を示す部分拡大図である。
図11に示すように、第2実施形態では、第1実施形態と同様に、シールド部材115に形成された溝115aに、コンタクト部材116が設けられている。コンタクト部材116のバネ部117は、バッフル板70の端部75の勾配形状76と当接することで、変形領域118側に押し込まれて弾性変形する。コンタクト部材116の変形領域118には、芯材119が設けられる。
【0044】
図12は、第2実施形態におけるコンタクト部材の芯材の一例を示す図である。
図12に示すように、芯材119は、基板支持部11の径方向の断面がV字形状である。芯材119は、例えば、FFKM(パーフルオロエラストマー)系等のラジカル耐性が強い材料で形成される。つまり、芯材119は、例えば、フッ素ゴム等の弾性部材で形成される。また、芯材119は、例えば、PFA(パーフルオロアルコキシアルカン)等の樹脂で形成されてもよい。芯材119は、金属材料と比較して、消耗及び腐食による反力低下が起こりにくい。芯材119は、当該断面においてV字形状の上部に左右方向から力が加わるとV字が閉じるように弾性変形することで、バネ部117の弾性変形の量を調整する。すなわち、芯材119は、シャッタ60が開いてバッフル板70の端部75とコンタクト部材116とが接触しなくなった際に、バネ部117を元の形状まで押し戻すことで、バネ部117の反力を維持する。
【0045】
図13は、第2実施形態におけるコンタクト部材の一例を示す斜視図である。
図13に示すように、コンタクト部材116は、複数のバネ部117が円周方向に連なって形成されており、複数のバネ部117に渡って芯材119が設けられている。つまり、芯材119は、円周方向に連続して設けられることで、バネ部117間の隙間を埋め、シールド効果をより高めることができる。すなわち、第2実施形態では、芯材119を設けることで、バネ部117の反力を維持できるとともに、プラズマリークをより抑制することができる。言い換えると、第2実施形態では、コンタクト部材116のバネ部117の塑性変形を抑制することができる。
【0046】
次に、
図14から
図16を用いて、芯材119の他の断面形状について説明する。
図14から
図16は、第2実施形態におけるコンタクト部材の芯材の他の一例を示す図である。
図14に示す芯材119aは、コンタクト部材116におけるバネ部117の変形領域118に配置され、基板支持部11の径方向の断面が円形状である。芯材119aは、当該断面において円形状に左右方向から力が加わると円が押し潰されるように弾性変形することで、バネ部117の弾性変形の量を調整する。なお、芯材119aは、中実構造の他に、PFA等の樹脂で形成される場合、中空構造であってもよい。
【0047】
図15に示す芯材119bは、コンタクト部材116におけるバネ部117の変形領域118に配置され、基板支持部11の径方向の断面が台形状である。芯材119bは、変形領域118の断面形状と合うように、台形の上底が下底よりも長い台形状である。芯材119bは、当該断面において台形状に左右方向から力が加わると台形が押し潰されるように弾性変形することで、バネ部117の弾性変形の量を調整する。
【0048】
図16に示す芯材119cは、コンタクト部材116におけるバネ部117の変形領域118に配置され、基板支持部11の径方向の断面が架橋形状である。芯材119cは、コンタクト部材116から取り外した状態では、断面がH字形状である。芯材119cは、変形領域118の断面形状と合うように、H字形状の下側の幅が狭くなるように変形した状態で配置される。つまり、芯材119cは、コンタクト部材116の形状に合わせて配置しやすい形状である。芯材119cは、当該断面において架橋形状(H字形状)に左右方向から力が加わると架橋部分(H字の中央の横方向部分)が押し潰されるように弾性変形することで、バネ部117の弾性変形の量を調整する。なお、芯材119,119a~119cの断面の形状は、バネ部117を元の形状まで押し戻すことができる弾性部材であれば、これらの形状に限定されない。
【0049】
このように、第2実施形態の芯材119を備えるコンタクト部材116は、バネ部117の反力を維持することができるとともに、バネ部117間の隙間を埋め、シールド効果をより高めることができる。つまり、第2実施形態の芯材119を備えるコンタクト部材116は、バネ部117の反力を維持できるとともに、プラズマリークをより抑制することができる。なお、コンタクト部材116は、導電性の弾性部材として、例えば、ステンレス鋼を用いてもよく、さらに高耐食性の金属(例えば、ニッケル合金等)を用いるようにしてもよい。
【0050】
以上、各実施形態によれば、基板処理装置(プラズマ処理装置1)は、チャンバ(プラズマ処理チャンバ10)と、チャンバ内に配置される基板支持部11と、シャッタ60と、コンタクト部材116とを有する。シャッタ60は、円筒状のチャンバの開口部50を開閉する弁体61と、チャンバの内周側と基板支持部11との間に配置され、基板支持部11側の端部75に垂直方向の勾配形状76が形成されたバッフル板70とを備える。コンタクト部材116は、基板支持部11の側面に設けられ、導電性の弾性部材で形成される。基板処理装置は、シャッタ60が閉じられた状態において、基板支持部11側の端部75と、コンタクト部材116との接触が維持される。その結果、プラズマリークを抑制することができる。
【0051】
また、各実施形態によれば、シャッタ60は、円筒状である。その結果、チャンバの開口部50から基板Wの外径を超えるチャンバ内パーツ等を搬送することができる。
【0052】
また、各実施形態によれば、基板支持部11側の端部75は、垂直方向の長さが、コンタクト部材116の垂直方向の長さよりも長く形成される。その結果、弁体61やバッフル板70が膨張しても、端部75とコンタクト部材116との電気的な接続(導通)が切れず、プラズマリークを抑制することができる。
【0053】
また、各実施形態によれば、勾配形状76は、バッフル板70の下面側から上面側に向けて、バッフル板70の幅が狭くなる形状である。その結果、シャッタ60が閉じられる際に、端部75とコンタクト部材116とがスムーズに接触することができる。
【0054】
また、各実施形態によれば、バッフル板70は、平面部71と、壁面部72と、フランジ部73とを有する。平面部71は、第1の幅を持つ平面が円環状に設けられ、内周側に基板支持部11側の端部75を備える。壁面部72は、平面部71の外周側に垂直方向の面が円筒状に設けられる壁面である。フランジ部73は、壁面部72の上部に第2の幅を持つ平面が円環状に設けられる。その結果、プラズマリークを抑制することができる。
【0055】
また、各実施形態によれば、弁体61は、弁体61の底部63がフランジ部73と接続される。その結果、弁体61とバッフル板70とを一体として駆動することができる。
【0056】
また、各実施形態によれば、弁体61は、底部63とフランジ部73との間に導電性部材74を挟み込んで、バッフル板70と電気的に接続される。その結果、弁体61とバッフル板70とを同電位とすることができる。
【0057】
また、各実施形態によれば、バッフル板70は、端部75の勾配形状76の上部と、平面部71の上面との接続部が、曲面で形成される。その結果、シャッタ60が閉じられる際に、端部75とコンタクト部材116とがスムーズに接触することができる。
【0058】
また、各実施形態によれば、コンタクト部材116は、基板支持部11の側面を一周するように設けられる。その結果、プラズマリークを抑制することができる。
【0059】
また、第2実施形態によれば、コンタクト部材116は、弾性部材(バネ部117)の変形領域118に芯材(芯材119,119a~119c)を備える。その結果、バネ部117の反力を維持できるとともに、プラズマリークをより抑制することができる。
【0060】
また、第2実施形態によれば、芯材119aは、基板支持部11の径方向の断面が円形状である。その結果、バネ部117の反力を維持できるとともに、プラズマリークをより抑制することができる。
【0061】
また、第2実施形態によれば、芯材119bは、基板支持部11の径方向の断面が台形状である。その結果、バネ部117の反力を維持できるとともに、プラズマリークをより抑制することができる。
【0062】
また、第2実施形態によれば、芯材119は、基板支持部11の径方向の断面がV字形状である。その結果、バネ部117の反力を維持できるとともに、プラズマリークをより抑制することができる。
【0063】
また、第2実施形態によれば、芯材119cは、基板支持部11の径方向の断面が架橋形状である。その結果、バネ部117の反力を維持できるとともに、プラズマリークをより抑制することができる。
【0064】
また、各実施形態によれば、弁体61は、弁体61の上端部における、チャンバ上部の内壁に沿って設けられた導電性の上部部材(デポシールド52)と接触する導通面(上部62)に、導電性部材64を備える。弁体61と上部部材とは、弁体61を上昇させて開口部50を閉じた場合に、導通面が上部部材と上下方向に当接し、導電性部材により電気的に導通する。その結果、シャッタ60をプラズマ処理チャンバ10と同じ電位にすることができる。
【0065】
また、各実施形態によれば、基板処理装置は、上部部材と、チャンバの天部に設けられたシャワーヘッド13との間を絶縁する絶縁部材54を有する。その結果、上部部材(デポシールド52)及び弁体61と、シャワーヘッド13との間の短絡を、より抑制することができる。
【0066】
今回開示された各実施形態は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。上記の各実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形体で省略、置換、変更されてもよい。
【0067】
また、上記した各実施形態では、コンタクト部材116として、バネ部117が連続して連なる形態について説明したが、これに限定されない。例えば、
図5に示すコンタクト部材116において、バネ部117を1つ飛ばしで配置してもよい。
【0068】
また、上記した各実施形態では、バッフル板70の端部75は、上部が平面部71と接続する形態であったが、これに限定されない。例えば、端部75の下部と、平面部71の底面とが接続する形態、つまり、平面部71から上側に凸となる端部75を設けるようにしてもよい。
【0069】
また、上記した各実施形態では、プラズマ源として容量結合型プラズマを用いて基板Wに対してエッチング等の処理を行うプラズマ処理装置1を例に説明したが、開示の技術はこれに限られない。プラズマを用いて基板Wに対して処理を行う装置であれば、プラズマ源は容量結合プラズマに限られず、例えば、誘導結合プラズマ、マイクロ波プラズマ、マグネトロンプラズマ等、任意のプラズマ源を用いることができる。
【0070】
なお、本開示は以下のような構成も取ることができる。
(1)
基板処理装置であって、
チャンバと、
前記チャンバ内に配置される基板支持部と、
円筒状の前記チャンバの開口部を開閉する弁体と、前記チャンバの内周側と前記基板支持部との間に配置され、前記基板支持部側の端部に垂直方向の勾配形状が形成されたバッフル板とを備えるシャッタと、
前記基板支持部の側面に設けられ、導電性の弾性部材で形成されたコンタクト部材と、
を有し、
前記シャッタが閉じられた状態において、前記基板支持部側の前記端部と、前記コンタクト部材との接触が維持される、
基板処理装置。
(2)
前記シャッタは、円筒状である、
前記(1)に記載の基板処理装置。
(3)
前記基板支持部側の前記端部は、前記垂直方向の長さが、前記コンタクト部材の前記垂直方向の長さよりも長く形成される、
前記(1)又は(2)に記載の基板処理装置。
(4)
前記勾配形状は、前記バッフル板の下面側から上面側に向けて、前記バッフル板の幅が狭くなる形状である、
前記(1)~(3)のいずれか1つに記載の基板処理装置。
(5)
前記バッフル板は、
第1の幅を持つ平面が円環状に設けられ、内周側に前記基板支持部側の前記端部を備える平面部と、
前記平面部の外周側に垂直方向の面が円筒状に設けられる壁面部と、
前記壁面部の上部に第2の幅を持つ平面が円環状に設けられるフランジ部と、
を有する、
前記(1)~(4)のいずれか1つに記載の基板処理装置。
(6)
前記弁体は、前記弁体の底部が前記フランジ部と接続される、
前記(5)に記載の基板処理装置。
(7)
前記弁体は、前記底部と前記フランジ部との間に導電性部材を挟み込んで、前記バッフル板と電気的に接続される、
前記(6)に記載の基板処理装置。
(8)
前記バッフル板は、前記端部の前記勾配形状の上部と、前記平面部の上面との接続部が、曲面で形成される、
前記(5)~(7)のいずれか1つに記載の基板処理装置。
(9)
前記コンタクト部材は、前記基板支持部の側面を一周するように設けられる、
前記(1)~(8)のいずれか1つに記載の基板処理装置。
(10)
前記コンタクト部材は、前記弾性部材の変形領域に芯材を備える、
前記(1)~(9)のいずれか1つに記載の基板処理装置。
(11)
前記芯材は、前記基板支持部の径方向の断面が円形状である、
前記(10)に記載の基板処理装置。
(12)
前記芯材は、前記基板支持部の径方向の断面が台形状である、
前記(10)に記載の基板処理装置。
(13)
前記芯材は、前記基板支持部の径方向の断面がV字形状である、
前記(10)に記載の基板処理装置。
(14)
前記芯材は、前記基板支持部の径方向の断面が架橋形状である、
前記(10)に記載の基板処理装置。
(15)
前記弁体は、前記弁体の上端部における、前記チャンバ上部の内壁に沿って設けられた導電性の上部部材と接触する導通面に、導電性部材を備え、
前記弁体と前記上部部材とは、前記弁体を上昇させて前記開口部を閉じた場合に、前記導通面が前記上部部材と上下方向に当接し、前記導電性部材により電気的に導通する、
前記(1)~(14)のいずれか1つに記載の基板処理装置。
(16)
前記上部部材と、前記チャンバの天部に設けられたシャワーヘッドとの間を絶縁する絶縁部材を有する、
前記(15)に記載の基板処理装置。
(17)
基板処理装置のチャンバの開口部に設けられるシャッタであって、
円筒状の前記チャンバの開口部を開閉する弁体と、
前記チャンバの内周側と、前記チャンバ内に配置される基板支持部との間に配置され、前記基板支持部側の端部に垂直方向の勾配形状が形成されたバッフル板と、
を有し、
前記シャッタが閉じられた状態において、前記基板支持部側の前記端部と、前記基板支持部の側面に設けられ、導電性の弾性部材で形成されたコンタクト部材との接触が維持される、
シャッタ。
(18)
前記コンタクト部材は、前記弾性部材の変形領域に芯材を備える、
前記(17)に記載のシャッタ。
【符号の説明】
【0071】
1 プラズマ処理装置
10 プラズマ処理チャンバ
11 基板支持部
50 開口部
52 デポシールド
54 絶縁部材
60 シャッタ
61 弁体
63 底部
70 バッフル板
71 平面部
72 壁面部
73 フランジ部
74 導電性部材
75 端部
76 勾配形状
111 本体部
116 コンタクト部材
117 バネ部
119,119a~119c 芯材
W 基板