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特許7575632(メタ)アクリル系重合体の再生装置、(メタ)アクリル系重合体の再生方法、および(メタ)アクリル基を有するモノマーの製造方法
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  • 特許-(メタ)アクリル系重合体の再生装置、(メタ)アクリル系重合体の再生方法、および(メタ)アクリル基を有するモノマーの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】(メタ)アクリル系重合体の再生装置、(メタ)アクリル系重合体の再生方法、および(メタ)アクリル基を有するモノマーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 11/12 20060101AFI20241022BHJP
   C07C 67/48 20060101ALI20241022BHJP
   C07C 69/54 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
C08J11/12 ZAB
C07C67/48
C07C69/54 Z
C08J11/12
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2024078241
(22)【出願日】2024-05-13
【審査請求日】2024-05-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】角谷 英則
(72)【発明者】
【氏名】安富 陽一
(72)【発明者】
【氏名】塚本 昌利
(72)【発明者】
【氏名】徳永(江本) 雄一
【審査官】葛谷 光平
(56)【参考文献】
【文献】特許第7304500(JP,B1)
【文献】特開2003-321571(JP,A)
【文献】入谷 英司,集じん,化学工学便覧,第6版,丸善株式会社 鈴木 信夫,2009年12月10日,819
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 11/12
C07C 67/48
C07C 69/54
B29B 17/00
B09B 3/60-5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル系重合体の熱分解を行って熱分解ガスを得る熱分解部と、
熱分解ガスに含まれる不純物を捕集する捕集部と、
前記捕集部で不純物が捕集された後の熱分解ガスを処理するガス処理部と、を備え、
前記捕集部は、慣性衝突、さえぎり、拡散及び静電作用から選択される少なくとも1種の捕集機構により不純物を捕集し、前記捕集部で捕集される不純物はミスト状である、(メタ)アクリル系重合体の再生装置。
【請求項2】
前記捕集部に供給される熱分解ガスは、(メタ)アクリル基を有するモノマーを含む気体中に不純物を含む液滴が存在する状態である、請求項1に記載の再生装置。
【請求項3】
前記捕集部で捕集される不純物は、(メタ)アクリル基を有するモノマーよりも高い温度で凝縮する成分を含む、請求項1又は請求項2に記載の再生装置。
【請求項4】
熱分解ガスに含まれる不純物の少なくとも一部を凝縮する分縮部をさらに備える、請求項1又は請求項2に記載の再生装置。
【請求項5】
前記分縮部は前記熱分解部と前記捕集部との間に配置される、請求項4に記載の再生装置。
【請求項6】
熱分解ガスに含まれる不純物を捕集する第2の捕集部をさらに備え、
前記第2の捕集部は、重力作用により不純物を捕集する、請求項1又は請求項2に記載の再生装置。
【請求項7】
前記捕集部に連結した廃液処理部をさらに備える、請求項1又は請求項2に記載の再生装置。
【請求項8】
前記ガス処理部は、熱分解ガスを冷却する冷却部、及び熱分解ガスを精製する精製部からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1又は請求項2に記載の再生装置。
【請求項9】
(メタ)アクリル系重合体の熱分解を行って熱分解ガスを得る熱分解工程と、
熱分解ガスに含まれる不純物を捕集する捕集工程と、
前記捕集工程で不純物が捕集された後の熱分解ガスを処理するガス処理工程と、を備え、
前記捕集工程は、慣性衝突、さえぎり、拡散及び静電作用から選択される少なくとも1種の捕集機構により不純物を捕集し、前記捕集工程で捕集される不純物はミスト状である、
(メタ)アクリル系重合体の再生方法。
【請求項10】
(メタ)アクリル系重合体の熱分解を行って熱分解ガスを得る熱分解工程と、
熱分解ガスに含まれる不純物を捕集する捕集工程と、
前記捕集工程で不純物が捕集された後の熱分解ガスを処理するガス処理工程と、を備え、
前記捕集工程は、慣性衝突、さえぎり、拡散及び静電作用から選択される少なくとも1種の捕集機構により不純物を捕集し、前記捕集工程で捕集される不純物はミスト状である、(メタ)アクリル基を有するモノマーの製造方法。
【請求項11】
(メタ)アクリル系重合体の熱分解を行って熱分解ガスを得る熱分解部と、
熱分解ガスに含まれる不純物を捕集する捕集部と、
前記捕集部で不純物が捕集された後の熱分解ガスを処理するガス処理部と、を備え、
前記捕集部は、慣性衝突、さえぎり、拡散及び静電作用から選択される少なくとも1種の捕集機構により不純物を捕集する第1の捕集部と、重力作用により不純物を捕集する第2の捕集部とを含む、(メタ)アクリル系重合体の再生装置。
【請求項12】
(メタ)アクリル系重合体の熱分解を行って熱分解ガスを得る熱分解工程と、
熱分解ガスに含まれる不純物を捕集する捕集工程と、
前記捕集工程で不純物が捕集された後の熱分解ガスを処理するガス処理工程と、を備え、
前記捕集工程は、慣性衝突、さえぎり、拡散及び静電作用から選択される少なくとも1種の捕集機構により不純物を捕集する第1の捕集工程と、重力作用により不純物を捕集する第2の捕集工程とを含む、(メタ)アクリル系重合体の再生方法。
【請求項13】
(メタ)アクリル系重合体の熱分解を行って熱分解ガスを得る熱分解工程と、
熱分解ガスに含まれる不純物を捕集する捕集工程と、
前記捕集工程で不純物が捕集された後の熱分解ガスを処理するガス処理工程と、を備え、
前記捕集工程は、慣性衝突、さえぎり、拡散及び静電作用から選択される少なくとも1種の捕集機構により不純物を捕集する第1の捕集工程と、重力作用により不純物を捕集する第2の捕集工程とを含む、(メタ)アクリル基を有するモノマーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、(メタ)アクリル系重合体の再生装置、(メタ)アクリル系重合体の再生方法、および(メタ)アクリル基を有するモノマーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(メタ)アクリル基を有するモノマーを重合して得られる(メタ)アクリル系重合体は、透明性に優れており、さらには耐候性にも優れている。よって、(メタ)アクリル系重合体は、自動車用部品、看板標識、表示装置等を構成する部材の材料として、広く用いられている。
【0003】
近年の資源価格の高騰、さらには環境問題に対する意識の高まりに伴って、上記のとおりの種々の用途に用いられた(メタ)アクリル系重合体を含む製品(成形体)を回収してリサイクル(再資源化)する動きが広まっている。
【0004】
(メタ)アクリル系重合体を含む成形体のリサイクルの方法としては、例えば、回収された成形体に対し、再度、成形工程を実施して新たな成形体を製造するマテリアルリサイクル、回収された成形体を熱分解(解重合)して得られる(メタ)アクリル基を有するモノマーを回収し、このモノマーを用いて新たな成形体を製造するケミカルリサイクル、および回収された成形体を燃焼して得られる燃焼エネルギーを直接的な熱源あるいは発電機により変換された電力として利用するサーマルリサイクルが挙げられる。
【0005】
(メタ)アクリル系重合体は、300℃から500℃程度の比較的低い温度で加熱することによって熱分解物であるモノマーを高収率で回収することができるため、ケミカルリサイクルによるリサイクルに適している。
【0006】
例えば、特許文献1には、(メタ)アクリル系重合体を含む樹脂製品を加熱窯内で加熱して得られたガス状の熱分解物(以下、熱分解ガスともいう)を冷却して液化し、次いで液化した熱分解物を蒸留により精製する工程を経て(メタ)アクリル基を有するモノマーを回収する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2003-321571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
(メタ)アクリル系重合体のリサイクルシステムの普及促進の観点から、リサイクルにより回収される(メタ)アクリル基を有するモノマーの純度を高めることは重要な課題の一つである。
上記事情に鑑み、本開示の一実施形態は、(メタ)アクリル基を有するモノマーを高純度で回収できる(メタ)アクリル系重合体の再生装置、(メタ)アクリル系重合体の再生処理方法、および(メタ)アクリル酸エステルの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための手段には、以下の実施形態が含まれる。
<1>(メタ)アクリル系重合体の熱分解を行って熱分解ガスを得る熱分解部と、
熱分解ガスに含まれる不純物を捕集する捕集部と、
前記捕集部で不純物が捕集された後の熱分解ガスを処理するガス処理部と、を備え、
前記捕集部は、慣性衝突、さえぎり、拡散及び静電作用から選択される少なくとも1種の捕集機構により不純物を捕集する、(メタ)アクリル系重合体の再生装置。
<2>前記捕集部に供給される熱分解ガスは、(メタ)アクリル基を有するモノマーを含む気体中に不純物を含む液滴が存在する状態である、<1>に記載の再生装置。
<3>前記捕集部で捕集される不純物は、(メタ)アクリル基を有するモノマーよりも高い温度で凝縮する成分を含む、<1>又は<2>に記載の再生装置。
<4>熱分解ガスに含まれる不純物の少なくとも一部を凝縮する分縮部をさらに備える、<1>~<3>のいずれか1項に記載の再生装置。
<5>前記分縮部は前記熱分解部と前記捕集部との間に配置される、<4>に記載の再生装置。
<6>熱分解ガスに含まれる不純物を捕集する第2の捕集部をさらに備え、
前記第2の捕集部は、重力作用により不純物を捕集する、<1>~<5>のいずれか1項に記載の再生装置。
<7>前記捕集部に連結した廃液処理部をさらに備える、<1>~<6>のいずれか1項に記載の再生装置。
<8>前記ガス処理部は、熱分解ガスを冷却する冷却部、及び熱分解ガスを精製する精製部からなる群より選択される少なくとも1種を含む、<1>~<7>のいずれか1項に記載の再生装置。
<9>(メタ)アクリル系重合体の熱分解を行って熱分解ガスを得る熱分解工程と、
熱分解ガスに含まれる不純物を捕集する捕集工程と、
前記捕集工程で不純物が捕集された後の熱分解ガスを処理するガス処理工程と、を備え、
前記捕集工程は、慣性衝突、さえぎり、拡散及び静電作用から選択される少なくとも1種の捕集機構により不純物を捕集する、(メタ)アクリル系重合体の再生方法。
<10>(メタ)アクリル系重合体の熱分解を行って熱分解ガスを得る熱分解工程と、
熱分解ガスに含まれる不純物を捕集する捕集工程と、
前記捕集工程で不純物が捕集された後の熱分解ガスを処理するガス処理工程と、を備え、
前記捕集工程は、慣性衝突、さえぎり、拡散及び静電作用から選択される少なくとも1種の捕集機構により不純物を捕集する、(メタ)アクリル基を有するモノマーの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、(メタ)アクリル基を有するモノマーを高純度で回収できる(メタ)アクリル系重合体の再生装置、(メタ)アクリル系重合体の再生処理方法、および(メタ)アクリル酸エステルの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】再生装置の構成の一例を示す概略的な図である。
図2A】捕集部の構成の一例を示す概略的な図である。
図2B】捕集部の構成の一例を示す概略的な図である。
図2C】捕集部の構成の一例を示す概略的な図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1実施形態>
本開示の第1実施形態は、
(メタ)アクリル系重合体の熱分解を行って熱分解ガスを得る熱分解部と、
熱分解ガスに含まれる不純物を捕集する捕集部と、
前記捕集部で不純物が捕集された後の熱分解ガスを処理するガス処理部と、を備え、
前記捕集部は、慣性衝突、さえぎり、拡散及び静電作用から選択される少なくとも1種の捕集機構により不純物を捕集する、(メタ)アクリル系重合体の再生装置である。
【0013】
本実施形態の再生装置は、再生装置に供給される(メタ)アクリル系重合体を熱分解して(メタ)アクリル基を有するモノマーを回収する。すなわち、本実施形態の再生装置は(メタ)アクリル系重合体のケミカルリサイクルに使用される。
ケミカルリサイクルの原料となる(メタ)アクリル系重合体は、(メタ)アクリル系重合体以外の材料を伴っている場合があるため、熱分解部で得られる熱分解ガスは(メタ)アクリル基を有するモノマー以外の成分を不純物として含んでいる場合がある。
本開示の再生装置は、熱分解部で得られる熱分解ガスに含まれる不純物(より詳細には、ミスト化された不純物)を捕集する捕集部を備えることで、(メタ)アクリル基を有するモノマーの高純度での回収を可能にしている。
【0014】
なお、(メタ)アクリル基を有するモノマーの純度を高める方法としては、熱分解ガスを処理するガス処理部において公知の精製工程(蒸留など)を実施する方法もあるが、精製に要する消費エネルギーや設備コストを抑制する観点から、ガス処理部で処理される前の熱分解ガスに含まれる不純物の量を低減することが望ましい。したがって、本開示の再生装置はガス処理部で処理される前の熱分解ガスに含まれる不純物の量を低減し、ガス処理部における熱分解ガスの処理に要する消費エネルギーや設備コストを抑制する観点からも有用である。
さらに、熱分解ガスに含まれる不純物は再生装置の配管の閉塞の原因となるおそれがある。再生装置が捕集部を備えることにより、熱分解ガスに含まれる不純物による配管の閉塞を抑制することができる。
【0015】
((メタ)アクリル系重合体)
本開示において「(メタ)アクリル系重合体」は、(メタ)アクリル基を有するモノマーに由来する構造単位を有する重合体を意味する。
本開示において「(メタ)アクリル」には、アクリル、メタクリルおよびこれらの組み合わせが含まれる。
【0016】
(メタ)アクリル系重合体は、(メタ)アクリル単独重合体であっても(メタ)アクリル共重合体であってもよい。
(メタ)アクリル単独重合体としては、例えば、炭素原子数1~4のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルに由来する単量体単位のみを含む(メタ)アクリル単独重合体が挙げられる。
(メタ)アクリル共重合体としては、例えば、炭素原子数1~4のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルに由来する単量体単位の割合が85質量%以上100質量%未満であり、炭素原子数1~4のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルに由来する単量体単位と共重合可能な他のビニル単量体に由来する単量体単位の割合が0質量%を超えて15質量%以下である(メタ)アクリル共重合体が挙げられる。
【0017】
炭素原子数1~4のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキル」とは、例えばCH=C(CH)COOR(Rは炭素原子数1~4のアルキル基である。)で表される化合物である。
【0018】
炭素原子数1~4のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルと共重合可能なビニル単量体とは、炭素原子数1~4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルと共重合可能であり、かつビニル基を有する単量体である。
【0019】
炭素原子数1~4のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸tert-ブチル、メタクリル酸sec-ブチル、およびメタクリル酸イソブチルが挙げられる。炭素原子数1~4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルは、好ましくはメタクリル酸メチルである。
【0020】
炭素原子数1~4のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルと共重合可能なビニル単量体としては、例えば、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸モノグリセロールなどのメタクリル酸エステル(ただし、炭素原子数1~4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルを除く。);アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、アクリル酸モノグリセロール等のアクリル酸エステル;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸などの不飽和カルボン酸またはこれらの酸無水物;アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ジアセトンアクリルアミド、メタクリル酸ジメチルアミノエチル等の窒素含有モノマー;アリルグリシジルエーテル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有単量体;スチレン、α-メチルスチレンなどのスチレン系単量体が挙げられる。
【0021】
(メタ)アクリル系重合体は、(メタ)アクリル酸メチル(MMAまたはMA)の重合体であるポリ(メタ)アクリル酸メチル(PMMAまたはPMA)であってもよい。
【0022】
再生装置に供給される(メタ)アクリル系重合体は、(メタ)アクリル系重合体の成形体の状態であってもよい。成形体の種類は特に制限されず、キャスト成形体、押出成形体、射出成形体等の公知の成形体から選択できる。
【0023】
(メタ)アクリル系重合体の成形体は、(メタ)アクリル系重合体のみからなっても、(メタ)アクリル系重合体と、(メタ)アクリル系重合体と異なる成分を含んでいてもよい。
(メタ)アクリル系重合体と異なる成分としては、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン、ポリエステル等の(メタ)アクリル系重合体と異なる重合体、添加剤等が挙げられる。
添加剤としては、フィラー、着色剤、紫外線防止剤、離型剤等が挙げられる。
【0024】
再生装置に供給される(メタ)アクリル系重合体は、スクラップの状態であってもよく、圧縮物の状態であってもよい。本開示において「スクラップ」とは、所定の用途に使用された後に回収された廃棄品、製品の製造工程で発生する不良品や端材、これらの廃棄品、不良品及び端材の粉砕物などを意味する。「圧縮物」とは、スクラップに記載した物を圧縮した物を意味する。スクラップ及び圧縮物は、熱分解処理に適するように形状およびサイズが調整されていてもよい。
【0025】
以下、本実施形態の再生装置に含まれる構成要素について説明する。
【0026】
(熱分解部)
本実施形態の再生装置は、熱分解部を含む。熱分解部は、(メタ)アクリル系重合体の熱分解を行って熱分解ガスに変換する。
本開示において(メタ)アクリル系重合体の熱分解とは、加熱によって(メタ)アクリル系重合体をモノマーに分解することを意味する。
【0027】
熱分解部としては、(メタ)アクリル系重合体を熱分解する機能を有する装置を特に制限なく使用できる。
(メタ)アクリル系重合体の熱分解に採用される方式(プロセス)としては、溶融金属バスプロセス(Molten metal bath process)、ニーダープロセス、流動床プロセス、マイクロ波プロセス、押出機プロセス等が挙げられる。
【0028】
熱分解部の材質は特に制限されず、公知の材質を特に制限なく採用することができる。
熱分解部に供給される(メタ)アクリル系重合体が塩素および水を含有する場合は、塩素と水分との反応により塩酸が発生するおそれがある。このため、熱分解部の(メタ)アクリル系重合体又はその熱分解ガスと接触する部分は、耐腐食性に優れる材質からなることが好ましい。耐腐食性に優れる材質としては、Ti、Zr、Ta、ハステロイ(登録商標)等が挙げられる。
【0029】
熱分解部で(メタ)アクリル系重合体の熱分解を実施する際の条件は特に限定されず、処理対象の(メタ)アクリル系重合体の性状、組成等を考慮して設定できる。
【0030】
熱分解部の方式としてマイクロ波プロセスを採用する場合、例えば、反応器の外側からマイクロ波を照射して、(メタ)アクリル系重合体の熱分解を行う。マイクロ波を使用することで、通常の加熱プロセスとは異なり、対象物に光速かつ直接・選択的にエネルギーを与えることができる。(メタ)アクリル系重合体のようなプラスチックは、一般的にマイクロ波に対する吸収能力が低い。このため、マイクロ波に対する吸収能力の高い成分を(メタ)アクリル系重合体に添加して熱分解を促してもよい。
【0031】
熱分解の処理効率の観点からは、熱分解部は、押出機であることが好ましい。
本開示において「押出機」とは、筒状の部材(シリンダ)の内部に配置されたスクリューを回転させて、シリンダの上流側から投入された原料を溶融状態にして下流側に搬送する機構を備える装置を意味する。
【0032】
押出機の種類は特に制限されず、公知の二軸押出機または一軸押出機を利用できる。(メタ)アクリル系重合体の熱分解を効率よく行う観点からは、押出機は、二軸同方向回転押出機、二軸異方向回転押出機などの二軸押出機であることが好ましい。
押出機を構成するシリンダ、スクリュー等の構成要素としては、公知の構成を特に制限なく採用することができる。
【0033】
押出機の圧力は、空気の系内への漏れ込み防止および熱分解ガスの系外への漏洩防止の観点から、好ましくは0.005MPa~1.5MPaであり、より好ましくは0.01MPa~0.3MPaである。
【0034】
押出機のシリンダ内温度は、熱分解の処理効率の観点から、通常は400℃~500℃とすることができる。熱分解の対象が純粋な(メタ)アクリル系重合体である場合には、好ましくは450℃~470℃である。
【0035】
押出機のスクリュー回転数は、押出機の安定運転の観点から、通常は500rpm~1500rpmとすることができる。熱分解の対象が純粋な(メタ)アクリル系重合体である場合には、好ましくは500rpm~1000rpmである。
【0036】
押出機への(メタ)アクリル系重合体の供給量は、押出機の規模によって異なり、通常は10kg/時間~5000kg/時間とすることができる。例えば、押出機のシリンダの径が47mmである場合には、好ましくは40kg/時間~90kg/時間である。
【0037】
(捕集部)
本実施形態の再生装置は、捕集部を含む。
捕集部は、慣性衝突、さえぎり、拡散及び静電作用から選択される少なくとも1種の捕集機構により熱分解ガスに含まれる不純物を捕集する。不純物の捕集効率の観点からは、捕集部の捕集機構は慣性衝突を含むことが好ましい。
【0038】
捕集部において、熱分解ガスに含まれる不純物を慣性衝突、さえぎり、拡散及び静電作用から選択される少なくとも1種の捕集機構によって捕集する観点からは、捕集部に供給される熱分解ガスはミスト状であることが好ましい。すなわち、捕集部に供給される熱分解ガスは部分的に冷却されて高凝縮点成分等が液化されてミスト化された状態((メタ)アクリル基を有するモノマーを含む気体中に不純物を含む液滴が存在する状態)であることが好ましい。
捕集部に供給される熱分解ガスがミスト状であることは、捕集部で捕集される不純物が(メタ)アクリル基を有するモノマーと同程度か、それよりも高い温度で凝縮する成分(以下、高凝縮点成分ともいう)を含むことを意味する。すなわち、捕集部は熱分解ガスに含まれる高凝縮点成分を捕集対象とすることを意味する。
捕集部に供給される熱分解ガスがミスト状である場合、不純物を含む液滴の大きさは50μm以下、40μm以下、又は30μm以下であってもよい。不純物を含む液滴の大きさは0.1μm以上、1μm以上、又は5μm以上であってもよい。
【0039】
捕集部は、熱分解ガスの導入口及び排出口を備えるタンクと、タンクの内部に配置される捕集装置と、を備えていてもよい。
タンクは捕集装置を収容するとともに、捕集装置を通過しない成分(すなわち、熱分解ガスに含まれる不純物)を貯留するものであってもよい。
熱分解ガスの導入口及び排出口は、熱分解ガスがタンク内で捕集装置を通過できるように配置されてもよい。
【0040】
捕集部における熱分解ガスの流動方向は特に制限されず、重力方向、水平方向、斜め方向などであってよい。熱分解ガスの流動方向は直線状であってもよく、回転、屈曲などを伴っていてもよい。
不純物の捕集効率の観点からは、熱分解ガスの流動方向は、重力方向において下方から上方に向かう方向であることが好ましい。
捕集部における熱分解ガスの導入口及び排出口が配置される位置は特に制限されず、熱分解ガスの流動方向に応じて設定できる。
不純物の捕集効率の観点からは、熱分解ガスの導入口は重力方向において捕集装置よりも下方に配置され、熱分解ガスの排出口は重力方向において捕集装置よりも上方に配置されることが好ましい。
【0041】
捕集部に含まれる捕集装置の種類は特に制限されず、捕集装置に接触させる熱分解ガス又は熱分解ガスに含まれる不純物の状態(例えば、不純物を含むミストの液滴の大きさ)に応じて設定できる。
【0042】
捕集装置の材質は、特に制限されない。耐熱性、耐食性及び耐薬品性の観点から、捕集装置の材質は金属であることが好ましく、ステンレス鋼、ニッケル、チタン又は銅であることがより好ましい。
【0043】
本開示のある実施形態において、捕集部は、捕集装置としてデミスターを含んでもよい。本開示においてデミスターとは、ワイヤーからなるメッシュ状物を所望の形状及び大きさに成形して得られる物体(ワイヤーメッシュデミスター又はミストセパレータともいう)を意味する。
【0044】
デミスターによる対象物の捕集は、例えば、捕集の対象物が液滴状で含まれる気体をデミスターに通過させて行う。具体的には、デミスターを通過する気体に含まれる液滴状の対象物は、デミスターを構成するワイヤーに衝突してワイヤーの表面に捕捉される。対象物のワイヤーへの衝突が繰り返されると表面張力による対象物の集合、ワイヤー間の毛細管現象などの作用によって、ワイヤーの表面に捕捉された対象物はより大きな液滴に成長する。適当な大きさに成長した対象物は、デミスターの表面から離れて重力により下方に落下する。以上の工程を経て、デミスターを通過する成分と、デミスターを通過しない成分とが分離される。
【0045】
捕集部による捕集効率の観点からは、捕集部に供給される熱分解ガスを部分的に冷却させて高凝縮点成分等は液化されてミスト化したミスト状にすることが好ましい。熱分解ガスをミスト状にする方法は特に制限されず、熱分解部から導出される熱分解ガスがミスト状である場合もあるし、熱分解ガスを冷却してミスト状にしてもよい。冷却する方法としては、熱分解ガスの自然冷却により行っても、熱分解ガスの強制冷却により行ってもよい。熱分解ガスを効率よくミスト状にする観点からは、熱分解ガスをミスト状にする工程は、後述する分縮部により行ってもよい。
【0046】
(分縮部)
再生装置は、分縮部をさらに備えてもよい。
分縮部は、熱分解ガスを(メタ)アクリル基を有するモノマーの凝縮点以上、かつ、熱分解ガスに含まれる不純物の凝縮点未満の温度まで冷却する。すなわち、分縮部は、熱分解ガスを(メタ)アクリル基を有するモノマーを含む気体中に不純物が凝縮して形成される液滴が存在する状態に変換することができる。
【0047】
分縮部によって冷却された後の熱分解ガスの温度は、熱分解ガスに含まれる成分の種類に応じて設定できる。例えば、熱分解ガスが(メタ)アクリル基を有するモノマーとして(メタ)アクリル酸メチルを含む場合には、分縮部によって冷却された後の熱分解ガスの温度は100℃~420℃とすることが好ましく、100℃~300℃とすることがより好ましく、100℃~200℃とすることがさらに好ましい。
【0048】
再生装置が分縮部を備える場合、分縮部は熱分解部と捕集部との間に配置されることが好ましい。分縮部は、例えば、熱分解ガスの温度を調節する温度調節機構を含んでもよい。
【0049】
(第2の捕集部)
再生装置は、熱分解ガスに含まれる不純物を重力作用により捕集する第2の捕集部をさらに備えてもよい。
第2の捕集部に供給される熱分解ガスは、(メタ)アクリル基を有するモノマーを含む気体中に不純物を含む液滴が存在する状態(ミスト状)であることが好ましい。
第2の捕集部は不純物の捕集に重力作用を利用する。このため、慣性衝突、さえぎり、拡散及び静電作用から選択される少なくとも1種の捕集機構では捕集できない不純物(例えば、液滴の大きさが大きすぎる不純物)を捕集する場合に有効である。
【0050】
第2の捕集部は、例えば、熱分解ガスの温度を調整する第一の温度調節機構と、熱分解ガスを導入するための捕集タンクと、捕集した不純物の温度を調整する第2の温度調節機構とを備えてもよい。この場合、捕集タンクに導入される前の熱分解ガスは第1の温度調節機構によって冷却又は保温又は加熱される。第1の温度調節機構で温度が調節された熱分解ガスが捕集タンクに導入されると、熱分解ガスに不純物として含まれる液化または固化された成分の流速が低下する。このため、重力作用による不純物の捕集をより効果的に行うことができる。
【0051】
捕集タンクに捕集された不純物の温度は、第2の温度調節機構によって(メタ)アクリル重合体の軟化点以上かつ(メタ)アクリル酸メチルの発火点未満の温度に調節される。これにより、捕捉した残渣が液体状態となり、未分解成分を含む液体状の残渣として分離されて捕集タンク内に貯留される。
【0052】
(ガス処理部)
本開示の再生装置は、熱分解部で発生する熱分解ガスを処理するガス処理部を備えていてもよい。
熱分解ガスの処理方法は特に制限されず、公知の方法から選択できる。熱分解ガスを処理する手段としては、熱分解ガスを冷却して液化する冷却器、熱分解物ガスに含まれる(メタ)アクリル基を有するモノマーの純度を高めるための精製器、冷却により液化した(メタ)アクリル基を有するモノマーを貯蔵するタンク等の公知の手段を特に制限なく、必要に応じて組み合わせて採用することができる。
ガス処理部は、熱分解ガスを冷却する冷却部、及び熱分解ガスを精製する精製部からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0053】
(原料供給部)
本開示の再生装置は、原料としての(メタ)アクリル系重合体を熱分解部に供給する原料供給部をさらに備えていてもよい。
原料の供給方法は特に制限されず、公知の方法から選択できる。
原料供給部は、原料の破砕等の加工を行う加工器、原料に含まれる異物を検知する検知器、原料の投入量を制御する計量器等を備えてもよい。
【0054】
(原料乾燥部)
本実施形態の再生装置は、原料乾燥部を含んでいてもよい。原料乾燥部は、熱分解部に供給される(メタ)アクリル系重合体に含まれる水を乾燥して除去する。
以下、(メタ)アクリル系重合体に含まれる水を乾燥して除去する処理を「(メタ)アクリル系重合体の乾燥処理」ともいう。
本開示において、(メタ)アクリル系重合体の乾燥処理には、(メタ)アクリル系重合体に含まれる水を部分的に除去する処理と、(メタ)アクリル系重合体に含まれる水を完全に除去する処理とが含まれる。
【0055】
乾燥処理前の(メタ)アクリル系重合体の水分含有率は特に制限されない。例えば、脱水処理前の(メタ)アクリル系重合体の水分含有率が5質量%以上、10質量%、又は15質量%以上であると、乾燥処理を行うことの効果がより大きい。
(メタ)アクリル系重合体の乾燥処理は、例えば、乾燥処理後の(メタ)アクリル系重合体の水分含有率が1質量%以下となるように行うことが好ましい。
【0056】
(メタ)アクリル系重合体を乾燥させる際に、温度、相対湿度、気流、気圧等の(メタ)アクリル系重合体の周囲環境の条件の1つ又は2つ以上を調節して(メタ)アクリル系重合体に含まれる水の蒸発を促進してもよい。(メタ)アクリル系重合体の乾燥後の水分量をコントロールしやすい観点から、温度又は気流のいずれか一方を調整する方法を少なくとも採用する方法が好ましく、温度及び気流の両方を調整する方法を採用してもよい。
【0057】
(不純物ガス処理部)
本開示の再生装置は、熱分解部で発生する不純物ガスを処理する不純物ガス処理部を備えていてもよい。
本開示において不純物ガスとは、熱分解部で発生する熱分解ガスに含まれる(メタ)アクリル基を有するモノマー以外の成分をいう。不純物ガスとしては、塩素ガス、水蒸気などが挙げられる。
不純物ガスの処理方法は特に制限されず、公知の方法から選択できる。
不純物ガスを処理する手段としては、吸着剤、吸収剤、金属触媒、フィルター等の公知の手段を特に制限なく、必要に応じて組み合わせて採用することができる。
吸着剤として具体的には、アルミナ、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酸化鉄、水酸化鉄、炭素、ゼオライト、酸化鉄および/または金属鉄と炭素とからなる複合体、酸化カルシウムと炭素とからなる複合体、酸化鉄および/または金属鉄と炭酸カルシウムおよび/または酸化カルシウムと炭素とからなる複合体などが挙げられる。
吸収剤として具体的には、還元剤と塩基とを含む水溶液が挙げられる。この水溶液と熱分解ガスとを接触させることで、熱分解ガス中の不純物を吸収することができる。塩基は、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム及び炭酸水素ナトリウム(NaHCO)からなる群から選択することが好ましい。また還元剤は、亜硫酸ナトリウム、過酸化水素、チオ硫酸ナトリウム及び重亜硫酸(又は亜硫酸水素)ナトリウム(NaHSO)からなる群から選択することが好ましい。
不純物ガス処理部で使用する吸着剤又は吸収剤は、1種でも2種以上であってもよい。
【0058】
熱分解ガスからの不純物ガスの除去効率を高める観点からは、吸着剤又は吸収剤は、熱分解ガスとの接触面積が大きいことが好ましい。かかる観点から、吸着剤又は吸収剤は粒子状であることが好ましい。
【0059】
(残渣貯蔵部)
本開示の再生装置は、熱分解部から排出された残渣を貯蔵する残渣貯蔵部をさらに備えていてもよい。
残渣の貯蔵方法は特に制限されず、公知の方法から選択できる。
残渣貯蔵部は、残渣を処分可能な状態に加工する加工器等を備えてもよい。
残渣の貯蔵方法は特に制限されず、公知の方法から選択できる。
【0060】
<第2実施形態>
本開示の第2実施形態は、
(メタ)アクリル系重合体の熱分解を行って熱分解ガスを得る熱分解工程と、
熱分解ガスに含まれる不純物を捕集する捕集工程と、
前記捕集工程で不純物が捕集された後の熱分解ガスを処理するガス処理工程と、を備え、
前記捕集工程は、慣性衝突、さえぎり、拡散及び静電作用から選択される少なくとも1種の捕集機構により不純物を捕集する、(メタ)アクリル系重合体の再生方法である。
本実施形態の再生方法は、第1実施形態の再生装置を用いて実施してもよい。
【0061】
熱分解工程、捕集工程及びガス処理工程の実施に関する詳細及び好ましい態様は、第1実施形態の再生装置における熱分解部、捕集部及びガス処理部に関する詳細及び好ましい態様と同様である。
【0062】
本実施形態の再生方法は、熱分解ガスに含まれる不純物の少なくとも一部を凝縮する分縮工程をさらに備えてもよい。
本実施形態の再生方法が分縮工程を備える場合、分縮工程は熱分解工程と捕集工程との間に配置されることが好ましい。
分縮工程の実施に関する詳細及び好ましい態様は、第1実施形態の再生装置における分縮部に関する詳細及び好ましい態様と同様である。
【0063】
本実施形態の再生方法は、熱分解ガスに含まれる不純物を重力作用により捕集する第2の捕集工程をさらに備えてもよい。
第2の捕集工程の実施に関する詳細及び好ましい態様は、第1実施形態の再生装置における第2の捕集部に関する詳細及び好ましい態様と同様である。
【0064】
本実施形態の再生方法は、(メタ)アクリル系重合体を供給する原料供給工程、(メタ)アクリル系重合体を乾燥する原料乾燥工程、及び/又は熱分解部で発生する不純物ガスを処理する不純物ガス処理工程をさらに備えてもよい。
原料供給工程、原料乾燥工程及び不純物ガス処理工程の実施に関する詳細及び好ましい態様は、第1実施形態の再生装置における原料供給部、原料乾燥部、及び不純物ガス処理部に関する詳細及び好ましい態様と同様である。
【0065】
本実施形態の再生方法によれば、原料に含まれる(メタ)アクリル系重合体が熱分解によって(メタ)アクリル基を有するモノマーの状態に再生される。
再生された(メタ)アクリル基を有するモノマーは、例えば、(メタ)アクリル系重合体の原料モノマーとして利用される。
【0066】
本実施形態の再生方法で得られる(メタ)アクリル基を有するモノマーは、(メタ)アクリル酸メチルを含んでもよい。
本実施形態の再生方法で得られる(メタ)アクリル基を有するモノマーは、(メタ)アクリル酸メチルと、不可避的に含まれうる(メタ)アクリル酸メチル以外のモノマー(イソ酪酸メチル、プロピオン酸メチル、アクリル酸メチル等)との混合物であってもよい。この場合、混合物中の(メタ)アクリル酸メチル以外のモノマーは除去しても、除去しなくてもよい。
【0067】
<第3実施形態>
本開示の第3実施形態は、
(メタ)アクリル系重合体の熱分解を行って熱分解ガスを得る熱分解工程と、
熱分解ガスに含まれる不純物を捕集する捕集工程と、
前記捕集工程で不純物が捕集された後の熱分解ガスを処理するガス処理工程と、を備え、
前記捕集工程は、慣性衝突、さえぎり、拡散及び静電作用から選択される少なくとも1種の捕集機構により不純物を捕集する、(メタ)アクリル基を有するモノマーの製造方法である。
本実施形態の製造方法は、第1実施形態の再生装置を用いて実施してもよい。
【0068】
熱分解工程、捕集工程及びガス処理工程の実施に関する詳細及び好ましい態様は、第1実施形態の再生装置における熱分解部、捕集部及びガス処理部に関する詳細及び好ましい態様と同様である。
【0069】
本実施形態の製造方法は、熱分解ガスに含まれる不純物の少なくとも一部を凝縮する分縮工程をさらに備えてもよい。
本実施形態の製造方法が分縮工程を備える場合、分縮工程は熱分解工程と捕集工程との間に配置されることが好ましい。
分縮工程の実施に関する詳細及び好ましい態様は、第1実施形態の再生装置における分縮部に関する詳細及び好ましい態様と同様である。
【0070】
本実施形態の製造方法は、熱分解ガスに含まれる不純物を重力作用により捕集する第2の捕集工程をさらに備えてもよい。
第2の捕集工程の実施に関する詳細及び好ましい態様は、第1実施形態の再生装置における第2の捕集部に関する詳細及び好ましい態様と同様である。
【0071】
本実施形態の製造方法は、(メタ)アクリル系重合体を供給する原料供給工程、(メタ)アクリル系重合体を乾燥する原料乾燥工程、及び/又は熱分解部で発生する不純物ガスを処理する不純物ガス処理工程をさらに備えてもよい。
原料供給工程、原料乾燥工程及び不純物ガス処理工程の実施に関する詳細及び好ましい態様は、第1実施形態の再生装置における原料供給部、原料乾燥部、及び不純物ガス処理部に関する詳細及び好ましい態様と同様である。
【0072】
本実施形態の製造方法によれば、原料に含まれる(メタ)アクリル系重合体の熱分解物としての(メタ)アクリル基を有するモノマーが得られる。
熱分解物として得られた(メタ)アクリル基を有するモノマーは、例えば、(メタ)アクリル系重合体の原料モノマーとして利用される。
【0073】
本実施形態の製造方法で得られる(メタ)アクリル基を有するモノマーは、例えば、(メタ)アクリル系重合体の原料モノマーとして利用される。
【0074】
本実施形態の製造方法で得られる(メタ)アクリル基を有するモノマーは、(メタ)アクリル酸メチルを含んでもよい。
本実施形態の製造方法で得られる(メタ)アクリル基を有するモノマーは、(メタ)アクリル酸メチルと、不可避的に含まれうる(メタ)アクリル酸メチル以外のモノマー(イソ酪酸メチル、プロピオン酸メチル、アクリル酸メチル等)との混合物であってもよい。この場合、混合物中の(メタ)アクリル酸メチル以外のモノマーは除去しても、除去しなくてもよい。
【0075】
以下、図面を参照して本開示の実施形態について具体的に説明する。なお、各図面に示される構成要素は本開示の要旨から逸脱しない範囲で改変可能である。
【0076】
図1は、第1実施形態の再生装置の構成の一例を概略的に示す図である。
図1に示す再生装置10は、熱分解部11と、分縮部12と、捕集部13と、ガス処理部14と、を備えている。
【0077】
熱分解部11では、再生装置10に供給された(メタ)アクリル系重合体の熱分解を行って熱分解ガスを得る。
分縮部12では、熱分解部11で得られた熱分解ガスに含まれる不純物の少なくとも一部を凝縮する。
捕集部13では、分縮部12で不純物の少なくとも一部が凝縮された熱分解ガスに含まれる不純物を捕集する。
ガス処理部14では、捕集部13で不純物が捕集された後の熱分解ガスを処理する。
【0078】
図2Aは、第1実施形態の再生装置に含まれる捕集部の構成の一例を概略的に示す図である。図中の矢印は熱分解ガスの流動方向を示す。
図2Aに示す捕集部20は、熱分解ガスの導入口23及び排出口24を備えるタンク21と、タンク21の内部に配置される捕集装置22と、を備えている。熱分解ガスの導入口23及び排出口24は、タンク21における熱分解ガスが捕集装置22を通過し、かつ、熱分解ガスの流動方向が重力方向になるように配置されている。具体的には、熱分解ガスの導入口23は重力方向において捕集装置22よりも下方に配置され、熱分解ガスの排出口24は捕集装置22よりも上方に配置されている。
【0079】
タンク21に導入される熱分解ガスは、(メタ)アクリル基を有するモノマーを含む気体中に液滴状の不純物を含む状態(ミスト状)である。
タンク21に導入された熱分解ガスに含まれる気体状の(メタ)アクリル基を有するモノマーは、捕集装置22を通過して排出口24から排出される。
タンク21に導入された熱分解ガスに含まれる液滴状の不純物25は、捕集装置22によって捕集され、液滴径が成長した後に落下し、タンク21に貯留される。タンク21に貯留された不純物25は、タンク21に連結された図示しない廃液処理部によって処理されてもよい。
【0080】
図2Bは、第1実施形態の再生装置に含まれる捕集部の構成の一例を概略的に示す図である。図2Bに示す捕集部20は、熱分解ガスの導入口23が重力方向において捕集装置22よりも上方に配置され、熱分解ガスの排出口24が捕集装置22よりも下方に配置されている点において、図2Aに示す捕集部20と異なっている。
【0081】
図2Cは、第1実施形態の再生装置に含まれる捕集部の構成の一例を概略的に示す図である。図2Cに示す捕集部20は、熱分解ガスの流動方向が水平方向となるように捕集装置22、熱分解ガスの導入口23、及び熱分解ガスの排出口24が配置されている点において、図2Aに示す捕集部20と異なっている。
【実施例
【0082】
以下、実施例に基づいて本開示の実施形態を具体的に説明する。なお、本開示は以下の実施例に制限されるものではない。
【0083】
<実施例1>
下記の工程(1)~(4)を含む(メタ)アクリル系重合体のケミカルリサイクルを実施した。(メタ)アクリル系重合体としては、無色透明のPMMA成形体を使用した。
ケミカルリサイクルを実施して得られたモノマー(メタクリル酸メチル)の純度、高凝縮点不純物の含有率、透明度、及び着色度を評価した。結果を表1に示す。
【0084】
(1)熱分解工程
二軸押出機(TEX-44、スクリューL/D:60、日本製鋼所社製)を使用し、スクリュー回転数を500rpm、シリンダ温度を450℃、原料供給量を50kg/時間とする条件で(メタ)アクリル系重合体の熱分解を実施した。
(2)分縮工程
二軸押出機で得られた熱分解ガスの温度(出口ガス温度)が100℃となるように調整して、凝縮点が100℃より高い不純物が液滴状に含まれるミスト状の熱分解ガスを得た。
(3)捕集工程
分縮工程で得られたミスト状の熱分解ガスに含まれる不純物の捕集を、慣性衝突により3μm以上の液滴を99%捕集可能なデミスターを使用して実施した。
(4)ガス処理工程
捕集工程で不純物が捕集された後の熱分解ガスを冷却して液状のモノマーを得た。
【0085】
<比較例1>
工程(3)を実施しないこと以外は実施例1と同様にして(メタ)アクリル系重合体のケミカルリサイクルを実施し、得られたモノマーの評価を実施した。結果を表1に示す。
【0086】
<比較例2>
工程(2)及び工程(3)を実施しないこと以外は実施例1と同様にして(メタ)アクリル系重合体のケミカルリサイクルを実施し、得られたモノマーの評価を実施した。結果を表1に示す。
【0087】
<実施例2>
無色透明のPMMA成形体に代えて着色されたPMMA成形体を使用したこと以外は実施例1と同様にして(メタ)アクリル系重合体のケミカルリサイクルを実施し、得られたモノマーの評価を実施した。結果を表1に示す。
【0088】
<比較例3>
工程(3)を実施しないこと以外は実施例2と同様にして(メタ)アクリル系重合体のケミカルリサイクルを実施し、得られたモノマーの評価を実施した。結果を表1に示す。
【0089】
<比較例4>
工程(2)及び工程(3)を実施しないこと以外は実施例2と同様にして(メタ)アクリル系重合体のケミカルリサイクルを実施し、得られたモノマーの評価を実施した。結果を表1に示す。
【0090】
<実施例3>
工程(1)における二軸押出機のスクリュー回転数を500rpm、シリンダ温度を430℃、原料供給量を40kg/時間に変更したこと以外は実施例1と同様にして(メタ)アクリル系重合体のケミカルリサイクルを実施し、得られたモノマーの評価を実施した。結果を表1に示す。
【0091】
【表1】
【0092】
表1に記載のメタクリル酸メチルの純度及び高凝縮点不純物含有率の測定は、(メタ)アクリル系重合体のケミカルリサイクルを実施して得られたモノマーを測定試料とし、ガスクロマトグラフィー装置を用いて下記の条件にて測定した。
【0093】
(測定条件)
装置:GC-2010 Plus((株)島津製作所製)
カラム:DB-1(アジレント・テクノロジー(株)社製)
検出器:FID 2010 Plus((株)島津製作所製)
カラムオーブン条件
初期温度:40℃(ホールド時間1分)
昇温速度:8℃/分
中間温度:120℃(ホールド時間0分)
昇温速度:20℃/分
最終温度:300℃(ホールド時間10分)
試料気化条件
気化室温度:300℃
キャリアガス:ヘリウム
圧力:50kPa
全流量:220.1mL/分
カラム流量:1.08mL/分
線速度:31.1cm/秒
パージ線量:3.0mL/分
スプリット比:200
検出器条件
検出器温度:300℃
サンプリングレート:40msec
メイクアップガス:N2
メイクアップ流量:30mL/分
H2流量:40mL/分
Air流量:400mL/分
オートサンプラー条件
注入量:1μL
【0094】
上記の測定条件でガスクロマトグラフィーを実施したときに検出されるメタクリル酸メチル(リテンションタイム4.13分)に対応するピーク面積(a1)と全体のピーク面積(b1)を測定した。そして、これらのピーク面積から、ピーク面積比A(=a1/b1)を求めて、メタクリル酸メチルの純度を算出した。
【0095】
さらに、4.13分以降22分までのピーク面積の総和(a2)を高凝縮点不純物に対応するピーク面積として測定した。そして、このピーク面積とb1から、ピーク面積比B(=a2/b1)を求めて、高凝縮点不純物含有率を算出した。
【0096】
表1に記載の透明度は、(メタ)アクリル系重合体のケミカルリサイクルを実施して得られたモノマーを測定試料とし、目視により評価した。具体的には、測定試料を50mlの透明ガラス製サンプル瓶に入れたときの光の透過性を下記基準により評価した。
A 透明
B 半透明
C 不透明(不透過)
【0097】
表1に記載の着色度は、(メタ)アクリル系重合体のケミカルリサイクルを実施して得られたモノマーを測定試料とし、目視により評価した。具体的には、測定試料を50mlの透明ガラス製サンプル瓶に入れた状態で観察される色味を評価した。
【0098】
表1に示すように、(メタ)アクリル系重合体のケミカルリサイクルにおいて捕集工程を実施して得られた実施例のモノマーは、(メタ)アクリル系重合体のケミカルリサイクルにおいて捕集工程を実施せずに得られた比較例のモノマーに比べてMMA純度が高く、高凝縮点不純物の含有率が低く、目視による透明度及び着色度の評価が良好であった。
【符号の説明】
【0099】
10 再生装置
11 熱分解部
12 分縮部
13 捕集部
14 ガス処理部
20 捕集部
21 タンク
22 捕集装置
23 熱分解ガスの導入口
24 熱分解ガスの排出口
25 不純物
【要約】
【課題】(メタ)アクリル基を有するモノマーを高純度で回収できる(メタ)アクリル系重合体の再生装置、(メタ)アクリル系重合体の再生処理方法、および(メタ)アクリル酸エステルの製造方法を提供する。
【解決手段】(メタ)アクリル系重合体の熱分解を行って熱分解ガスを得る熱分解部と、熱分解ガスに含まれる不純物を捕集する捕集部と、捕集部で不純物が捕集された後の熱分解ガスを処理するガス処理部と、を備え、前記捕集部は、慣性衝突、さえぎり、拡散及び静電作用から選択される少なくとも1種の捕集機構により不純物を捕集する、(メタ)アクリル系重合体の再生装置。
【選択図】図1
図1
図2A
図2B
図2C